(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099415
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】懸垂マシンの組み立てキット
(51)【国際特許分類】
A63B 23/00 20060101AFI20240718BHJP
A63B 23/12 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A63B23/00 J
A63B23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003347
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】519242355
【氏名又は名称】株式会社無限
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】秦 祐介
(57)【要約】
【課題】懸垂マシンが組み立てられたときに、がたつきが発生することを回避しつつ、組み立てキットの大型化を回避する。
【解決手段】開示の組み立てキットは、ハンドルバーを支持する左側部材及び右側部材を備え、前記左側部材及び前記右側部材それぞれは、第1支柱と、前記第1支柱の上部に結合する第2支柱と、前記第1支柱の上部から前方に延設されるアームバーと、前記アームバーの前部に設けられたグリップ支持部と、前記グリップ支持部によって下方から支持されるように、前記グリップ支持部から上方に延設された縦グリップ部材と、を備える。前記第1支柱と、前記アームバーと、及び前記グリップ支持部とは、組み立て前において一体化された部材である。前記グリップ支持部と前記縦グリップ部材とは、組み立て前において別部材であり、機械的接合によって組み立てられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸垂マシンの組み立てキットであって、
懸垂のためのハンドルバーを支持するように組み立てられる左側部材及び右側部材を備え、
前記左側部材及び前記右側部材それぞれは、
第1支柱と、
前記第1支柱の上部に結合するよう組み立てられて前記ハンドルバーを支持する第2支柱と、
前記第1支柱の上部から前方に延設され、上側にアームレストが取り付けられるアームバーと、
前記アームバーの前部に設けられたグリップ支持部と、
前記グリップ支持部によって下方から支持されるように、前記グリップ支持部から上方に延設された縦グリップ部材と、
を備え、
前記第1支柱と、前記アームバーと、及び前記グリップ支持部とは、組み立て前において一体化された部材であり、
前記グリップ支持部と前記縦グリップ部材とは、組み立て前において別部材であり、機械的接合によって組み立てられるよう構成されている、
懸垂マシンの組み立てキット。
【請求項2】
前記グリップ支持部と前記縦グリップ部材とは、前記グリップ支持部の上部及び前記縦グリップ部材の下部のうちの一方が他方に対して挿入可能に構成されているとともに、前記グリップ支持部の上部及び前記縦グリップ部材の下部のうちの一方が他方に対して挿入された状態で、前記機械的接合によって接合されるよう構成されている、
請求項1に記載の懸垂マシンの組み立てキット。
【請求項3】
前記グリップ支持部の上部は、前記第1支柱の上部よりも低い、又は、同じ高さである
請求項1又は請求項2に記載の懸垂マシンの組み立てキット。
【請求項4】
縦、横、及び高さの3辺の合計が200cm以内の容器で包装された、
請求項3に記載の懸垂マシンの組み立てキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、懸垂マシンの組み立てキットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、懸垂のための身体鍛錬具を開示している。特許文献1の身体鍛錬具は、左右一対の支柱下と、左右一対の支柱上と、を備える。特許文献1において、支柱下の上端近傍には、前方に延びる突出アームバーが取り付けられており、突出アームバー上面にはアームパッドが載置される。さらに、突出アームバーの先端近傍には、L字グリップが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許文献1において、突出アームバーと支柱下との結合は、ボルトとナットとで締結して行われる。したがって、特許文献1においては、ボルトとナットとで締結されて組み立てられる前において、突出アームバーと支柱下とは別部材である。
【0005】
また、特許文献1において、L字グリップは、突出アームバーに対して溶接で固定されている。つまり、L字グリップと突出アームバーとは、溶接によって、予め一体化されている。
【0006】
特許文献1のように、突出アームバーと支柱下とを別部材とし、両者をボルトとナットとで締結して組み立てる構造の場合、装置の使用時に、がたつきが生じやすいという問題がある。すなわち、突出アームバーの先端に設けられたL字グリップは、使用者が体重をかけた状態で把持される。このため、使用者が、突出アームバー先端にあるL字グリップを把持して体重をかけると、突出アームバーの基部と支柱下との結合部に大きな負荷がかかる。この結果、突出アームバーの基部と支柱下との結合部が強固に締結されていても、当該結合部において、がたつきが生じる。結合部に、がたつきが発生すると、安定性が低下したり、使用時の異音の発生を招いたりするおそれがあり、懸垂マシンの使用感が低下する。
【0007】
このようながたつきを防止するには、突出アームバーと支柱下とL字グリップとを、全て、溶接等によって固定して一体化しておくことが考えられる。しかし、単に、これらの部材を一体化すると、一体化された部材が大型化する。部材の大型化は、例えば、懸垂マシンの組み立てキットが収容される段ボールなどの包装容器の大型化を招き不利である。例えば、包装容器の大型化は、懸垂マシンの購入者へ、懸垂マシンの組み立てキットを配送する際に、配送料の高額化を招くおそれがある。
【0008】
懸垂マシンの組み立てキットが収容される包装容器の大型化を回避するには、特許文献1のように、突出アームバーと支柱下とを別部材とするのが簡便であるが、前述のように、突出アームバーと支柱下とを別部材とすると、がたつきが発生するという問題が生じる。
【0009】
したがって、懸垂マシンが組み立てられたときに、がたつきが発生することを回避しつつ、懸垂マシンの組み立てキットの大型化を回避することが望まれる。
【0010】
本開示のある側面は、懸垂マシンの組み立てキットである。開示の組み立てキットは、懸垂のためのハンドルバーを支持するように組み立てられる左側部材及び右側部材を備え、前記左側部材及び前記右側部材それぞれは、第1支柱と、前記第1支柱の上部に結合するよう組み立てられて前記ハンドルバーを支持する第2支柱と、前記第1支柱の上部から前方に延設され、上側にアームレストが取り付けられるアームバーと、前記アームバーの前部に設けられたグリップ支持部と、前記グリップ支持部によって下方から支持されるように、前記グリップ支持部から上方に延設された縦グリップ部材と、を備え、前記第1支柱と、前記アームバーと、及び前記グリップ支持部とは、組み立て前において一体化された部材であり、前記グリップ支持部と前記縦グリップ部材とは、組み立て前において別部材であり、機械的接合によって組み立てられるよう構成されている。
【0011】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3は、懸垂マシンの部分拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、容器に収容された懸垂マシンの組み立てキットの平面写真である。
【
図5】
図5は、懸垂マシンの組み立て方を示す左側面図である。
【
図6】
図6は、組み立てられた懸垂マシンの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.懸垂マシンの組み立てキットの概要>
【0014】
(1)実施形態に係る懸垂マシンの組み立てキットは、懸垂のためのハンドルバーを支持するように組み立てられる左側部材及び右側部材を備え得る。前記左側部材及び前記右側部材それぞれは、第1支柱と、前記第1支柱の上部に結合するよう組み立てられて前記ハンドルバーを支持する第2支柱と、前記第1支柱の上部から前方に延設され、上側にアームレストが取り付けられるアームバーと、前記アームバーの前部に設けられたグリップ支持部と、前記グリップ支持部によって下方から支持されるように、前記グリップ支持部から上方に延設された縦グリップ部材と、を備え得る。第2支柱は、組み立て前において前記第1支柱とは別部材である。
【0015】
前記第1支柱と、前記アームバーと、及び前記グリップ支持部とは、組み立て前において一体化された部材であり得る。前記第1支柱と、前記アームバーと、及び前記グリップ支持部が一体化されているため、がたつきを効果的に防止できる。前記グリップ支持部と前記縦グリップ部材とは、組み立て前において別部材であり、機械的接合によって組み立てられるよう構成され得る。グリップ支持部と前記縦グリップ部材とが別部材であることで、組み立てキットの大型化を回避できる。また、この結果、がたつきが発生することを回避しつつ、装置の組み立てキットの大型化を回避することができる。
【0016】
前記第1支柱と、前記アームバーと、及び前記グリップ支持部とは、材料的接合若しくは化学的接合によって一体化された部材、又は、一体成形されることで一体化された部材であるのが好ましい。
【0017】
ここで、機械的接合は、例えば、ボルト又はねじなどの締結具による結合である。材料的接合は、例えば、溶接などの溶融接合、液相接合、又は固相接合である。化学的接合は、例えば、接着剤による接合である。
【0018】
(2)前記グリップ支持部と前記縦グリップ部材とは、前記グリップ支持部の上部及び前記縦グリップ部材の下部のうちの一方が他方に対して挿入可能に構成されているとともに、前記グリップ支持部の上部及び前記縦グリップ部材の下部のうちの一方が他方に対して挿入された状態で、前記機械的接合によって接合されるよう構成され得る。
【0019】
(3)前記(1)又は(2)において、前記グリップ支持部の上部は、前記第1支柱の上部よりも低い、又は、同じ高さであるのが好ましい。また、前記第2支柱の上下方向長さは、前記第1支柱の上下方向長さよりも短いのが好ましい。
【0020】
(4)前記(1)から(3)のいずれか一つにおいて、懸垂マシンの組み立てキットは、縦、横、及び高さの3辺の合計が200cm以内の容器で包装されているのが好ましい。
【0021】
<2.懸垂マシン及びその組み立てキットの例>
【0022】
図1から
図3は、実施形態に係る懸垂マシン10を示している。
図4は、懸垂マシン10の組み立てキットを示している。
図4のキットを構成する各部材が組み立てられることで、
図1~
図3に示す懸垂マシン10が得られる。なお、以下の説明において、懸垂マシン10における前後左右上下の方向は、図面に示されているとおりとする。
【0023】
図1及び
図2に示す懸垂マシン10は、チンニングマシンとも呼ばれる。使用者は、懸垂マシン10を利用して、懸垂等のトレーニングをすることができる。
【0024】
懸垂マシン10は、懸垂マシン10の左側に配置される左側部材20と、懸垂マシン10の右側に配置される右側部材30と、を備える。左側部材20と右側部材とは、連結部材40によって互いに連結される。
【0025】
左側部材20は、上下方向に延びる支柱23,25を備える。支柱23,25は、下側の第1支柱23と、第1支柱23の上部に設けられた第2支柱25と、を備える。第1支柱23と第2支柱25とは、別部材である。第1支柱23及び第2支柱25それぞれは、例えば、金属製である。第2支柱25の下部は、第1支柱23の上部に挿入され、結合される。第1支柱23と第2支柱25との結合は、機械的結合による。機械的結合は、例えば、締結具による結合である。締結具は、例えば、ボルト、又は、ボルト及びナットである(以下、同様)。第1支柱23と第2支柱25の結合は、例えば、第1支柱23の上部と第2支柱25の下部に形成された貫通孔を位置合わせした状態で、当該貫通孔にボルト61,62を挿入して締結されることで行われる。
【0026】
第1支柱23の下部は、ベース部21(土台)に取り付けられる。ベース部21は、第1支柱23とは、別部材であり、例えば、金属製である。また、第1支柱23の下部付近には、第1支柱23から前方に延びて更に下方に延びてベース部21に至る第1支柱-ベース部連結具24が設けられている。第1支柱23と第1支柱-ベース部連結具24とは、溶接等によって一体的に固定されている。ベース部21は、第1支柱23及び第1支柱-ベース部連結具24それぞれに対して、ボルトなどの締結具等による機械的結合によって結合される。
【0027】
支柱23,25の上下方向高さは調整自在である。例えば、第1支柱23に対する第2支柱25の高さを調整することで、支柱23,25全体の高さを調整することができる。第1支柱23に対する第2支柱25の高さの調整は、例えば、第2支柱25の下部において異なる高さ位置に形成された複数の貫通孔のうち、第1支柱23の上部に形成された貫通孔に位置合わせされる貫通孔を変えることで行われる。
【0028】
第1支柱23にはアームバー26が設けられている。アームバー26は、第1支柱23の上部から前方に延設されている。アームバー26は、例えば、金属製である。アームバー26の後端は、第1支柱23に対して、溶接等によって一体的に固定されている。
【0029】
仮に、アームバー26が第1支柱23に対して、締結具等による機械的結合によって結合される場合、アームバー26と第1支柱23との結合部において、がたつきが生じ易い。例えば、懸垂マシン10の使用時に、使用者の体重によって、アームバー26の下方に荷重がかかり、アームバー26と第1支柱23との結合部にも大きな負荷がかかる。この負荷によって、アームバー26と第1支柱23との結合部において、がたつきが生じ易い。これに対して、本実施形態では、アームバー26と第1支柱23との結合部は、溶接等による材料的接合であって、アームバー26と第1支柱23との結合部は、一体化している。このため、アームバー26に大きな荷重がかかっても、がたつきが生じにくく、懸垂マシン10の安定した使用が可能である。なお、アームバー26と第1支柱23との結合は、接着などの化学的結合であってもよい。また、アームバー26と第1支柱23とが一体成形されてもよい。
【0030】
アームバー26の上側には、アームレスト26Aが取り付けられる。アームレスト26Aは、クッション性を有する材料によって形成されている。アームレスト26Aには、使用者の腕又は肘を置くことができる。例えば、使用者は、腕をアームレスト26Aに載置させた状態で、後述の縦グリップ29Aを把持して、トレーニングをすることができる。アームバー26へのアームレスト26Aの取付は、例えば、ボルトなどの締結具を用いた機械的結合による。
【0031】
アームバー26と第1支柱23との間には、補強のため、筋かい28が設けられている。筋かい28は、金属製であり、アームバー26及び第1支柱23に対して、溶接などによって一体的に固定されている。
【0032】
アームバー26の前部には、グリップ部27が設けられている。グリップ部27は、一例として、使用者がトレーニングの際に把持する縦グリップ29Aと水平グリップ27Aとを含む。
【0033】
グリップ部27は、アームバー26の前部に対して、溶接等による材料的接合によって一体的に固定されたグリップ支持部27Bを備える。グリップ支持部27Bは、例えば、金属製である。なお、アームバー26とグリップ支持部27Bとの結合は、接着などの化学的結合であってもよい。また、アームバー26とグリップ支持部27Bとが一体成形されてもよい。
【0034】
図示のグリップ支持部27Bは、一例として、L字状部材である。L字状部材であるグリップ支持部27Bは、上下方向に延びておりアームバー26の前部に固定される部分と、当該部分の下端が前方に延びるように屈曲した部分と、を備える。グリップ支持部27Bにおいて、前方に延びる部分には、水平グリップ27Aが設けられている。
【0035】
また、グリップ部27は、グリップ支持部27Bに対して取り付けられる縦グリップ部材29を備える。縦グリップ部材29は、上部に縦グリップ29Aを備え、縦グリップ29Aから下方に延びる挿入部29Bを備える。挿入部29Bは、例えば、金属製である。
【0036】
図3に示すように、縦グリップ部材29は、グリップ支持部27Bとは別部材として構成されており、組み立ての際に、グリップ支持部27Bに結合される。縦グリップ部材29とグリップ支持部27Bとの結合は、ボルト等の締結具による機械的結合による。
【0037】
グリップ支持部27Bと縦グリップ部材29とは、縦グリップ部材29の下部が、グリップ支持部27Bの上部に対して、挿入可能に構成されている。より具体的には、グリップ支持部27Bの上端27Cは、上方から縦グリップ部材29の挿入部29Bを、グリップ支持部27Bの内部に挿入可能なように開口を有する。また、グリップ支持部27Bは、縦グリップ部材29の挿入部29Bを内部に挿入可能なように、中空の筒状に形成されている。さらに、縦グリップ部材29の挿入部29Bは、筒状のグリップ支持部27Bの内部に挿入可能なように、グリップ支持部27Bよりも径がわずかに小さい。なお、これとは逆に、グリップ支持部27Bの上部が、縦グリップ部材29の下部の内部に挿入されてもよい。
【0038】
縦グリップ部材29とグリップ支持部27Bとの結合は、挿入部29Bとグリップ支持部27Bとに形成された貫通孔を位置合わせした状態で、当該貫通孔にボルト64,64を挿入して締結される。
【0039】
このように、本実施形態では、グリップ支持部27Bは、アームバー26に対して一体的に固定されており、別部材である縦グリップ部材29は、上方からグリップ支持部27Bへ差し込むようにして、グリップ支持部27Bに装着される。当該装着状態で、締結具によって機械的結合することで、縦グリップ部材29が別部材であっても、縦グリップ部材29のがたつきを防止できる。
【0040】
仮に、グリップ支持部27Bと縦グリップ部材29とが一体的に形成されたL字グリップ(特許文献1参照)であって、そのL字グリップが、アームバー26とは、別部材である場合、がたつきが生じやすい。すなわち、L字グリップが別部材であって、締結具によってL字グリップとアームバー26とを機械的結合する構成の場合、L字グリップとアームバー26の結合部において、がたつきが生じやすい。例えば、使用者が、縦グリップ29A又は水平グリップ27Aを把持して、トレーニングを行う場合、使用者の体重によって、L字グリップとアームバー26の結合部に、大きな負荷がかかる。この負荷によって、L字グリップとアームバー26の結合部において、がたつきが生じやすい。
【0041】
これに対して、本実施形態では、グリップ支持部27Bとアームバー26とは、一体的に固定されているため、グリップ支持部27Bとアームバー26との結合部でのがたつきは生じない。しかも、使用者が縦グリップ29Aを把持したときにかかる荷重は、重力のため、主に下方へ作用するが、この下方への荷重は、縦グリップ29Aを有する縦グリップ部材29を下方から支持するグリップ支持部27Bによって受け止められる。このため、がたつきが生じにくい。
【0042】
しかも、本実施形態では、グリップ支持部27Bの上部及び縦グリップ部材29の下部のうちの一方が他方に対して挿入されている挿入構造(嵌合構造)が採用されているため、前後左右方向の荷重がかかっても、がたつきを効果的に防止できる。すなわち、懸垂マシン10の使用者が縦グリップ29Aを把持してトレーニングする際に、縦グリップ部材29に前後左右方向のいずれかの方向の荷重がかかることがある。しかし、本実施形態では、前後左右方向のどの方向に荷重がかかっても、挿入構造(嵌合構造)によって、その荷重を安定的に受け止められるため、がたつきを防止できる。
【0043】
しかも、本実施形態では、縦グリップ部材29を、アームバー26に対して一体的に設けられたグリップ支持部27Bとは別部材として構成することで、懸垂マシン10の組み立てキットの大きさを抑えることに成功している。すなわち、単に、がたつきの防止だけを考慮した場合、第1支柱23、アームバー26、グリップ支持部27B、及び縦グリップ部材29を全て一体的に構成することが考えられる。しかし、そのような一体化をすると、懸垂マシン10の組み立てキットが大型化する。これに対して、本実施形態では、縦グリップ部材29を、別部材にするという、シンプルな手段によって、がたつきの発生を効果的に抑えられており、大型化も防止されている。大型化の防止についての詳細は後述される。
【0044】
図1及び
図2に戻り、右側部材30は、左側部材20と同様の構成を有する。以下では、右側部材30についても簡単に説明するが、右側部材30に関して説明を省略した点については、左側部材20の説明が援用される。
【0045】
右側部材30は、上下方向に延びる支柱33,35を備える。支柱33,35は、下側の第1支柱33と、第1支柱33の上部に設けられた第2支柱35と、を備える。第1支柱23と第2支柱との結合は、ボルト61,62などの締結具等による機械的結合によって行われる。支柱33,35の上下方向高さは調整自在である。
【0046】
第1支柱33の下部は、ベース部31(土台)に取り付けられる。ベース部31は、第1支柱33とは、別部材であり、例えば、金属製である。第1支柱33の下部付近には、第1支柱-ベース部連結具34が設けられている。第1支柱33と第1支柱-ベース部連結具34とは、溶接等によって一体的に固定されている。ベース部31は、第1支柱33及び第1支柱-ベース部連結具34それぞれに対して、ボルトなどの締結具等による機械的結合によって結合される。
【0047】
第1支柱33にはアームバー36が設けられている。アームバー36は、例えば、金属製である。アームバー36の後端は、第1支柱33に対して、溶接等によって一体的に固定されている。このため、がたつきが生じにくい。
【0048】
アームバー36の上には、アームレスト36Aが取り付けられる。アームバー36へのアームレスト36Aの取付は、例えば、ボルトなどの締結具を用いた機械的結合による。
【0049】
アームバー36と第1支柱33との間には、補強のため、筋かい38が設けられている。筋かい38は、金属製であり、アームバー36及び第1支柱33に対して、溶接などによって一体的に固定されている。
【0050】
アームバー36の前部には、グリップ部37が設けられている。グリップ部37は、一例として、使用者がトレーニングの際に把持する縦グリップ39Aと水平グリップ37Aとを含む。
【0051】
グリップ部37は、アームバー36の前部に対して、溶接等によって一体的に固定されたグリップ支持部37Bを備える。グリップ支持部37Bは、例えば、金属製である。L字状部材であるグリップ支持部37Bにおいて、前方に延びる部分には、水平グリップ37Aが設けられている。
【0052】
また、グリップ部37は、縦グリップ部材39を備える。縦グリップ部材39は、上部に縦グリップ39Aを備え、縦グリップ39Aから下方に延びる挿入部39Bを備える。挿入部39Bは、例えば、金属製である。
【0053】
縦グリップ部材39は、グリップ支持部37Bとは別部材として構成されており、組み立ての際に、グリップ支持部37Bに結合される。縦グリップ部材39とグリップ支持部37Bとの結合は、ボルト等の締結具による機械的結合による。
【0054】
縦グリップ部材39とグリップ支持部37Bとの結合は、挿入部39Bとグリップ支持部37Bとに形成された貫通孔を位置合わせした状態で、当該貫通孔にボルト64,64を挿入して締結される。本実施形態では、縦グリップ部材39が別部材であっても、縦グリップ部材29においては、がたつきが生じにくい。
【0055】
前述のように、左側部材20と右側部材とは、連結部材40によって互いに連結される。連結部材40は、例えば、第1連結具41、第2連結具42、及び第3連結具43を含む。これらの連結具41,42,43それぞれは、例えば、金属製である。
【0056】
第1連結具41は、左右一対のベース部21,31を連結する。第1連結具41は、ベース部21,31とは別部材であり、ボルト等の締結具による機械的結合によって、ベース部21,31に結合される。
【0057】
第2連結具42は、第1支柱23,33の下部付近を連結する。第2連結具42は、第1支柱23,33とは別部材であり、ボルト等の締結具による機械的結合によって、第1支柱23,33に結合される。
【0058】
第3連結具43は、第1支柱23,33の上部を連結する。第3連結具43は、第1支柱23,33とは別部材であり、ボルト等の締結具による機械的結合によって、第1支柱23,33に結合される。
【0059】
第3連結具43の前面には、使用者の背中を支持するバックレスト44が取り付けられる。バックレスト44は、クッション性を有する材料によって形成されている。第3連結具43へのバックレスト44の取付は、例えば、ボルトなどの締結具を用いた機械的結合による。
【0060】
第2支柱25,35の上部には、懸垂のためのハンドルバー45が取り付けられる。第2支柱25,25は、ハンドルバー45を支持するように組み立てられる。ハンドルバー45は、使用者が、懸垂又はぶら下がりするために用いられる。ハンドルバー45は、第2支柱25,35とは別部材であり、ボルト等の締結具による機械的結合によって、第2支柱25,35に結合される。
【0061】
上記のように、本実施形態では、左側部材20を構成する部材のうち、第1支柱23,アームバー26、及びグリップ支持部27Bは、組み立て前において既に一体化されている。以下では、これらの一体化された部材23,26,27Bを、左側一体化部材51という。また、右側部材30を構成する部材のうち、第1支柱33,アームバー36、及びグリップ支持部37Bは、組み立て前において既に一体化されている。以下では、これらの一体化された部材33,36,37Bを、右側一体化部材52という。なお、図示の一体化部材51,52では、筋かい28,38及び第1支柱-ベース部連結具24,34も一体化されている。ただし、筋かい28,38及び第1支柱-ベース部連結具24,34は、別部材であってもよい。
【0062】
一体化部材51,52は、懸垂マシン10を構成する他の部材21,25,26A,29,31,35,36A,39,41,42,43,44,45(及び締結具)とともに、各部材が非結合の状態で、包装用の容器70(
図4参照)に収容される。この容器70に収容されたものが、懸垂マシン10として組み立てられる前の組み立てキットである。容器70は、例えば、紙製容器である。容器70は、例えば、段ボール箱である。
【0063】
容器70に収容された部材21,25,26A,29,31,35,36A,39,41,42,43,44,45,51,52を組み立てて、ボルトなどの締結具によって固定することで、懸垂マシン10が完成する。
【0064】
図4に示す容器70は、縦B1×横B2×高さ(深さ)B3の3辺の合計が200cm又はそれ以下になっている。一般に、宅配業者の宅配料金は、荷物の3辺の合計が200cmを超えると、高額化する。このため、容器70の3辺の合計が200cm以下になっていると、懸垂マシン10の配送コストを抑えることができる。
【0065】
図4のように、部材を容器70に収容する場合、部材の太さ等を考慮すると、容器70の高さ(深さ)B3としては、少なくとも、10cm~15cm程度を確保する必要がある。この場合、3辺の合計を200cm以下にするには、容器70の縦B1及び横B2の2辺の合計を、190cm以下、好ましくは、185cm以下にする必要がある。
図4の容器は、例えば、縦B1が123cmであり、横B2が61cmであり、縦横の2辺の合計が、184cmである。つまり、
図4の容器70は、縦横2辺の合計が、190cm以下であるとともに、185cm以下である。
【0066】
本実施形態の懸垂マシン10の組み立てキットにおいて、最大の大きさを持つ部材は、後述のように、一体化部材51,52である。したがって、一体化部材51,52を、
図4に示す容器70に収容できれば、他の部材21,25,26A,29,31,35,36A,39,41,42,43,44,45も容器70に収容できる。そして、
図4に示すように、本実施形態では、一体化部材51,52を
図4に示す容器70に収容できており、他の部材21,25,26A,29,31,35,36A,39,41,42,43,44,45も容器70に収容できている。したがって、組み立てキットの配送料を抑えることができる。
【0067】
図4のように、各部材を、3辺の合計が200cm以下の容器70に収容できたのは、一体化部材51,52から、縦グリップ部材29,39が分離されているためである。縦グリップ部材29が一体化部材51,52に対して一体的に設けられていると、懸垂マシンという製品の性質から要求されるサイズを確保した場合に、3辺の合計が200cm以下の容器70に収容することは、非常に困難になる。かかる問題に対して、本発明者は、鋭意検討の結果、一体化部材51,52から、縦グリップ部材29,39を分離することで、一体化部材51,52の最大寸法を抑えることができるという新規な着想を得た。縦グリップ部材29,39を分離することで、一体化部材51,52の最大寸法を抑えて、3辺の合計が200cm以下の容器70に収容するのが容易になる。
【0068】
なお、単に、3辺の合計が200cm以下の容器70に収容するだけであれば、一体化部材51,52を構成する各部材をすべて別部材とすればよい。しかし、一体化部材51,52を構成する各部材を別部材としておいて組み立て時に結合する場合、前述のように、がたつきが生じ易い。これに対して、第1支柱23,33からアームバー26,26を経てグリップ支持部27Bに至るまでを一体化しておく一方、縦グリップ部材29を分離すると、がたつきを防止しつつ、一体化部材51,52の最大寸法を効果的に抑えることができる。
【0069】
以下、
図5及び
図6を参照しつつ、左側部材20を例に、左側一体化部材51及び左側部材20を構成する他の部材の寸法に関して説明するが、以下の説明は、右側部材30にも当てはまる。
【0070】
左側一体化部材51は、上下方向の最大長さ(高さ)がH1である。ここでの高さH1は、第1支柱23の下端から上端までの長さに相当する。また、左側一体化部材51は、前後方向の最大長さがD1である。ここでの前後方向長さD1は、第1支柱23の後端から、グリップ支持部27Bに設けられた水平グリップ27Aの前端までの長さに相当する。
【0071】
組み立てキットにおいて、一体化部材51(,52)が、最大の大きさをもつ部材であるため、容器70の縦B1及び横B2のサイズは、一体化部材51の高さH1及び前後方向長さD1に合わせて決定される。つまり、容器70の縦B1の長さは、一体化部材51の高さH1と同じか、H1よりもわずかに大きい程度でよい。また、容器70の横B2の長さは、一体化部材51の前後方向長さD1と同じか、D1よりもわずかに大きい程度でよい。
【0072】
ここで、一体化部材51においては、一体化のため、前後方向長さD1が大きくなることが不可避である。つまり、アームバー26及びグリップ支持部27Bは、第1支柱23から前方に延びる部材であるため、これらを一体化すると、前後方向長さD1が大きくなる。そして、アームバー26は、使用者の腕が載置されるアームレスト26Aを支持するため、使用者の腕の長さに応じた長さが必要とされる。例えば、成人男性が支障なく使用できるようにするには、前後方向長さD1は、例えば、55cm~65cm程度必要とされ、典型的には、60cm程度必要とされる。
【0073】
また、第1支柱23は、以下の理由で、ある程度の高さH1を必要とするため、第1支柱23の高さH1が、一体化部材51の上下方向最大長さH1となる場合、一体化部材51の上下方向最大長さH1もある程度大きくならざるを得ない。すなわち、アームレスト26Aを支持するアームバー26を備える懸垂マシン10の場合、使用者が縦グリップ29Aを把持してアームレスト26Aに腕を置いたときに、使用者の足が床面につかないのが好ましい。このため、床面からアームレスト26Aの上面までの高さH6(
図6参照)は、120cm程度以上あることが望まれる。なお、水平グリップ27Aの高さH5は、100cm程度以上あるのが好ましい。これは、使用者が水平グリップ27Aを把持したときに、使用者の足が床面に付くのを回避するためである。
【0074】
そして、アームレスト26Aの高さH6が120cm程度以上必要である結果、アームレスト26Aを支持するアームバー26が一体的に取り付けられる第1支柱23の高さH1は、120cmから130cm程度は必要となる。また、高さH1は、122cmから125cmの間がより好ましいものとなる。これは、アームバー26が一体的に取り付けられる第1支柱23は、アームバー26の高さと同程度かそれ以上の高さが必要になるためである。なお、一体化部材の大型化を回避するためには、高さH1は、130cm以下であるのが好ましく、125cm以下であるのがより好ましい。
【0075】
そして、本実施形態の一体化部材51は、上下方向最大長さH1を、最低限必要な第1支柱23の高さH1に抑えることができており、一体化部材51の上下方向最大長さが、第1支柱23の高さH1を超えることが回避されている。この結果、一体化部材51の大型化が防止され、容器70への収容が可能になっている。例えば、一体化部材51の上下方向最大長さH1が122cmであり、前後方向最大長さD1が60cmであれば、縦B1が123cmであり、横B2が61cmである容器70に収容できる。
【0076】
仮に、一体化部材51と縦グリップ部材29とが分離しておらず、一体化部材51に縦グリップ部材29が一体化されている場合、一体化部材の上下方向長さは、高さH1ではなく、
図6に示す高さH4になり、前述の容器70に収容できない。ここで、高さH4は、第1支柱23の下端から、縦グリップ部材29の上端までの高さである。高さH4は、使用者が、アームレスト26Aに腕を載置して、縦グリップ29Aを把持する姿勢をとる関係上、十分な高さが必要であり、例えば、130cm~140cm程度、典型的には135cm程度が必要とされる。つまり、第1支柱23の高さH1を必要最低限に抑えたとしても、縦グリップ29Aの高さH4は、第1支柱23の高さH1を超えてしまう。
【0077】
このように、縦グリップ29Aの高さH4が、第1支柱23の高さH1よりも大きい場合、一体化部材51の上下方向最大長さは、高さH1を超え、高さH4になってしまう。この結果、縦グリップ部材29が分離されていないと、一体化部材51の上下方向最大長さが増加する。例えば、縦グリップ部材29が一体化された一体化部材51の上下方向最大長さH4が135cmであり、前後方向長さD1が60cmである場合、H4とD1の合計は、195cmとなる。前述のように、容器70の深さB3としては、10cm~15cm程度は必要であるため、H4とD1の大きさに応じた縦B1及び横B2の長さを持つ容器70の3辺の合計は、200cmを超えてしまう。
【0078】
これに対して、本実施形態の一体化部材51は、上下方向最大長さを、H4ではなく、H1に抑えられているため、大型化が回避されている。
【0079】
ここで、大型化を回避するには、縦グリップ29A及び水平グリップ27Aを備えるグリップ部27全体を一体化された一つの部材としておき、当該グリップ部27をアームバー26から分離することが考えられる。この場合、大型化は回避できるが、グリップ部27とアームバー26とが分離していると、がたつきが生じる。本実施形態では、グリップ部27に含まれる縦グリップ29Aと水平グリップ27Aと、が分離されており、水平グリップ27Aを備えるグリップ支持部27Bがアームバー26に一体化され、大型化の原因となる縦グリップ29Aが別部材とされている。これにより、がたつきを防止しつつ、大型化を回避できる。なお、
図5及び
図6に示すように、第1支柱23の下端からグリップ支持部27B上端までの高さH3は、第1支柱23の高さH1よりも短い。すなわち、グリップ支持部27Bの上部は、第1支柱23の上部よりも低い。なお、グリップ支持部27Bの上部は、第1支柱23の上部と同じ高さであってもよい。
【0080】
なお、
図5に示すように、第2支柱25の上下方向長さH2は、第1支柱23の上下方向長さH1よりも短い。さらに、ベース部21の前後方向長さD2は、第1支柱23の上下方向長さH1よりも短い。また、
図2に示すハンドルバー45の左右方向長さW1は、第1支柱23の上下方向長さH1よりも短い。また、左側部材20及び右側部材30の左右間隔W2は、第1支柱23の上下方向長さH1よりも短い。連結具41,42,43の左右方向長さは、概ね、左右間隔W2と同程度であるから、第1支柱23の上下方向長さH1よりも短い。また、アームレスト26A及びバックレスト44も十分に小さい。さらに、
図3に示すように、縦グリップ部材29の上下方向長さL2も十分に小さい。なお、
図3では、グリップ支持部27Bに差し込まれた状態で、グリップ支持部27Bの上端よりも上方に位置する縦グリップ部材29の長さがL2で示されている。
【0081】
以上のように、実施形態においては、懸垂マシン10の組み立てキットを構成する部材の中で、一体化部材51が最大の大きさを持つため、一体化部材51を収容できる大きさの容器70であれば、他の部材も収容できる。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 :懸垂マシン
20 :左側部材
21 :ベース部
23 :第1支柱
24 :第1支柱-ベース部連結具
25 :第2支柱
26 :アームバー
26A :アームレスト
27 :グリップ部
27A :水平グリップ
27B :グリップ支持部
27C :上端
29 :縦グリップ部材
29A :縦グリップ
29B :挿入部
30 :右側部材
31 :ベース部
33 :第1支柱
34 :第1支柱-ベース部連結具
35 :第2支柱
36 :アームバー
36A :アームレスト
37 :グリップ部
37A :水平グリップ
37B :グリップ支持部
39 :縦グリップ部材
39A :縦グリップ
39B :挿入部
40 :連結部材
41 :第1連結具
42 :第2連結具
43 :第3連結具
44 :バックレスト
45 :ハンドルバー
51 :左側一体化部材
52 :右側一体化部材
61 :ボルト
62 :ボルト
64 :ボルト
70 :容器