(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099421
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】化粧料容器
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
A45D33/00 615F
A45D33/00 615E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003357
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】長田 達明
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋史
(57)【要約】
【課題】落下などの衝撃によっても固形化粧料にひびや欠け等が起こり難く、部品点数及び製造工数を削減でき、小型化や薄型化を図ることが可能な化粧料容器を提供する。
【解決手段】化粧料が充填される中皿と、中皿を収容する容器本体と、容器本体の上面開口を開閉可能な蓋体とを備え、容器本体は、中皿を置く底面に、凸部及び/又は凹部を有し、中皿は、容器本体と当接する底面に、容器本体の凸部及び/又は凹部に対応した形状でなる係止部が形成され、中皿の側壁の周囲全周には空隙を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料が充填される中皿と、前記中皿を収容する容器本体と、前記容器本体の上面開口を開閉可能な蓋体とを備え、
前記容器本体は、前記中皿を置く底面に、凸部及び/又は凹部を有し、
前記中皿は、前記容器本体と当接する底面に、前記容器本体の前記凸部及び/又は凹部に対応した形状でなる係止部が形成され、
前記中皿の側壁の周囲全周には空隙を有すること
を特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
前記中皿の前記係止部は、前記中皿を前記容器本体の前記底面に置くことで前記容器本体の前記凸部及び/又は凹部と嵌合可能な形状でなることを特徴とする請求項1に記載の化粧料容器。
【請求項3】
前記中皿と前記蓋体との間に塗布具が収容され、前記塗布具は、弾性材によって形成され、前記蓋体が閉じられた状態における前記中皿の上端部と前記蓋体との間を埋めることができる厚さを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料容器。
【請求項4】
前記容器本体の前記凸部及び/又は凹部は、1以上の凸部であって、前記中皿の前記係止部は、前記1以上の凸部に対応した形状でなる凹部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料容器。
【請求項5】
前記中皿は、接着手段又は磁力による吸着手段によって、前記容器本体の前記底面に固着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファンデーションのような粉末化粧料は、打型や湿式充填等の方法で固化された状態で中皿(化粧皿)に充填され、この中皿を化粧料容器(コンパクト容器)に装着して使用されるものが多く知られている。
【0003】
固形粉末化粧料は、衝撃を受けることによりひびや欠け等の破損し易いものであるため、従来より化粧料容器としては中皿に対する衝撃吸収機構のあるものが種々提案されている。
【0004】
このような衝撃吸収機構を備える化粧料容器としては、一例として、特許文献1や特許文献2のように、中皿の周囲に緩衝効果のある弾性材を配置することにより、中皿の周囲に掛かる衝撃に対する物理的な衝撃吸収機構を備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-153866号公報
【特許文献2】特開2019-187991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のような従来の衝撃吸収機構によると、緩衝効果のある弾性材が必須の構成部材となるため、部品点数及び製造工数が増加し、また、弾性材を設置するためのスペースを確保する必要があった。そのため、化粧料容器を大きく又は厚く設計しなければならない、換言すれば、化粧料容器の小型化や薄型化が難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、落下などの衝撃によっても固形化粧料にひびや欠け等が起こり難く、部品点数及び製造工数を削減でき、小型化や薄型化を図ることが可能な化粧料容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の化粧料容器は、化粧料が充填される中皿と、前記中皿を収容する容器本体と、前記容器本体の上面開口を開閉可能な蓋体とを備え、前記容器本体は、前記中皿を置く底面に、凸部及び/又は凹部を有し、前記中皿は、前記容器本体と当接する底面に、前記容器本体の前記凸部及び/又は凹部に対応した形状でなる係止部が形成され、前記中皿の側壁の周囲全周には空隙を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第2の化粧料容器は、前記第1の化粧料容器における前記中皿の前記係止部が、前記中皿を前記容器本体の前記底面に置くことで前記容器本体の前記凸部及び/又は凹部と嵌合可能な形状でなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の化粧料容器は、前記第1又は第2の化粧料容器において、前記中皿と前記蓋体との間に塗布具が収容され、前記塗布具は、弾性材によって形成され、前記蓋体が閉じられた状態における前記中皿の上端部と前記蓋体との間を埋めることができる厚さを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第4の化粧料容器は、前記第1乃至第3のいずれかの化粧料容器における前記容器本体の前記凸部及び/又は凹部が、1以上の凸部であって、前記中皿の前記係止部は、前記1以上の凸部に対応した形状でなる凹部であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第5の化粧料容器は、前記第1乃至第4のいずれかの化粧料容器における前記中皿が、接着手段又は磁力による吸着手段によって、前記容器本体の前記底面に固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、落下などの衝撃によっても固形化粧料にひびや欠け等が起こり難く、部品点数及び製造工数を削減でき、小型化や薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧料容器の分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る化粧料容器の組み立て工程を示す図であり、(a)は、化粧料が充填された状態の中皿を示す斜視図、(b)は、容器本体に中枠が装着された状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る化粧料容器の組み立て工程を示す図であり、中枠が装着された容器本体に中皿が装着された化粧料容器と塗布具とを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る化粧料容器の容器本体、中枠及び中皿の装着状態を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る化粧料容器の端面図であり、(a)は、
図4のA-A線における端面図、(b)は、
図4のB-B線における端面図である。
【
図6】比較例(従来技術)に係る化粧料容器を示す図であり、(a)は、第1比較例の平面図、(b)は、第1比較例のC-C線端面図、(c)は、第2比較例の平面図、(d)は、第2比較例のD-D線端面図、(e)は、第3比較例の平面図、(f)は、第3比較例のE-E線端面図である。
【
図7】本発明の効果を確認するための実験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ファンデーションのような粉末固形化粧料を充填した中皿を収容及び固定した従来の化粧料容器が、落下などによって衝撃を受けた場合、その衝撃は、容器本体から中皿の側壁へ、更に、中皿の側壁から化粧料へと伝達される結果、化粧料は中皿の側壁側からひび割れ、亀裂、欠けを生じることが、本発明の発明者の研究により見出された。
【0016】
そこで、本発明では、化粧料容器が落下などによって衝撃を受けた場合に、その衝撃が、容器本体から中皿の側壁へ伝達されることを防止しつつ、中皿の底面側に伝達されるための構造が採用されている。
【0017】
本発明に係る化粧料容器は、化粧料が充填される中皿と、中皿を収容する容器本体と、容器本体の上面開口を開閉可能な蓋体とを備え、容器本体は、中皿を置く底面に、凸部及び/又は凹部を有し、中皿は、容器本体と当接する底面に、容器本体の凸部及び/又は凹部に対応した形状でなる係止部が形成され、中皿の側壁の周囲全周には空隙を有するものである。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る化粧料容器について、図面を参照して説明する。本発明に係る化粧料容器は、ファンデーションのような固形粉末化粧料の容器として特に好適である。
【0019】
本実施形態に係る化粧料容器について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る化粧料容器の分解斜視図、
図2は、本発明の実施形態に係る化粧料容器の組み立て工程を示す図であり、(a)は、化粧料が充填された状態の中皿を示す斜視図、(b)は、容器本体に中枠が装着された状態を示す斜視図、
図3は、本発明の実施形態に係る化粧料容器の組み立て工程を示す図であり、中枠が装着された容器本体に中皿が装着された化粧料容器と塗布具とを示す図、
図4は、本発明の実施形態に係る化粧料容器の容器本体、中枠及び中皿の装着状態を示す平面図、
図5は、本発明の実施形態に係る化粧料容器の端面図であり、(a)は、
図4のA-A線端面図、(b)は、
図4のB-B線における端面図である。なお、
図4では蓋体20の図示は省略している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る化粧料容器1は、容器本体10と、蓋体20と、中枠30と、中皿40と、を備える。
【0021】
容器本体10は、中皿40を収容するものであって、
図1に示すように、中皿40が置かれる底面11と、底面11の周縁部から立ち上げて形成された側壁12とを備えて構成される。
【0022】
容器本体10は、一例として合成樹脂製とすることができるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0023】
各図においては、容器本体10は、平面視、一例として略角丸四角形状に形成されたものを表しているが、容器本体10の外形形態は特に限定されるものではない。
【0024】
図1等に示すように、容器本体10の後端側には、後述の蓋体20の支持突起22aが嵌合可能な支持凹部12aが形成されている。
【0025】
図1等に示すように、容器本体10の前端側(支持凹部12aと反対側)には、後述の蓋体20のフック22bの係止状態を解除することが可能なフックピース12bが設けられている。
【0026】
図1等に示すように、容器本体10の側壁12の上部には、後述の中枠30が嵌合可能な段部12cが形成されている。
【0027】
図1等に示すように、容器本体10の底面11には、1以上の凸部11aが形成されている。本実施形態では一例として、平面視正方形で垂直方向(
図1等のZ軸方向)に突出した4つの凸部11aが、前後方向(
図1等のY軸方向)及び左右方向(
図1等のX軸方向)にそれぞれ離間配置されたものを説明するが、正方形以外にも他の多角形や円形など任意の形状でもよく、その個数も限定されるものではない。
【0028】
また、凸部11aの配置位置は、容器本体10の底面11のうち、後述の中皿40が当接する範囲内であれば特に限定されない。
【0029】
蓋体20は、容器本体10の上面開口を開閉可能にするものであり、
図1に示すように、天面21と、天面21の周縁部から垂下形成された側壁22とを備えて構成される。
【0030】
蓋体20は、一例として合成樹脂製とすることができるが、本発明においては特に限定されるものではない。蓋体20の下面には、鏡23が固定されている。
【0031】
蓋体20の側壁22は、蓋体20を容器本体10に閉じ合わせた際に、蓋体20の下端部が容器本体10の側壁12の上端部と合致する形状に形成されている。
【0032】
図1に示すように、蓋体20は、その後端側に、容器本体10の支持凹部12aに嵌合可能な支持突起22aが形成されている。
【0033】
支持突起22aが支持凹部12aに嵌合した状態で、ヒンジピン(不図示)が容器本体10の側壁12の後端側と支持突起22aとを貫通する(
図1の一点鎖線及び破線を参照)。
【0034】
これにより、容器本体10と蓋体20とを連結させる蝶番部Hが形成され、この蝶番部Hを中心にして蓋体20は容器本体10を開閉することができるようになっている。
【0035】
図1に示すように、蓋体20は、その前端側(支持突起22aと反対側)に、フック22bが垂下形成されている。フック22bが容器本体10に係止されると、蓋体20の閉止状態が保持され、化粧料容器1は携帯に適した状態となる。
【0036】
また、フックピース12bが外側からY軸方向に押し込まれることにより、フック22bの容器本体10に対する係止状態が解除され、化粧料容器1は、蓋体20が開いた状態とすることができる。
【0037】
これにより、後述の中皿40が露出されて中皿40に充填された化粧料をパフなどの塗布具Pでの擦り取りが可能となり、化粧料容器1は使用に適した状態となる。
【0038】
蓋体20は、その内側にパフ等の塗布具Pを収納するための空間を形成する。
【0039】
中枠30は、容器本体10と中皿40の間の空隙G(
図5等参照)から内部を見え難くすることで見栄えを向上させるための任意の構成要素であり、略環状に形成されている。中枠30は、一例として合成樹脂製とすることができるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0040】
中枠30は、容器本体10の段部12cに嵌合する外周面31を備えており、外周面31は、本実施形態においては、段部12cの内周面に対応した、平面視略角丸四角形状の外形を備えた垂直面で構成されている。
【0041】
また、
図2等に示すように、中枠30は、中枠30が容器本体10の段部12cに装着された時に、容器本体10の側壁12の上端部よりもわずかに突出する高さ寸法で形成されている。
【0042】
これにより、中枠30が装着された容器本体10に対して蓋体20が閉じられる際、中枠30の上端部が、蓋体20の側壁22の内周面に入り込むリブの役割を果たす。
【0043】
中枠30の内周面32は、その上端側から下端側に向かって徐々に縮径するように窄まる傾斜面で構成されている。
図4に示すように、容器本体10、中枠30、及び、中皿40がセットされた状態において、中枠30の内周面32の下端側は、中皿40の側壁42に接近する。
【0044】
中枠30の外周面31は、その後端側に蓋体20の支持突起22aとの干渉を回避する第1回避部33と、その前端側に蓋体20のフック22bとの干渉を回避する第2回避部34とが、それぞれ形成されている。
【0045】
中皿40は、化粧料が充填されるものであり、
図1に示すように、底面41と、底面41の周縁部から立ち上げて形成された側壁42とを備えて構成される。中皿40は、一例としてアルミニウムにより一体成形したものを用いることができるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0046】
各図においては、中皿40は、平面視、一例として略角丸四角形状に形成されたものを表しているが、中皿40の外形形態は特に限定されるものではない。
【0047】
図1等に示すように、中皿40の底面41の外側には、容器本体10の底面11に形成された1以上の凸部11aに対応した形状でなる係止部として、1以上の凹部41aが形成されている。
【0048】
本実施形態では一例として、平面視正方形で垂直方向(
図1等のZ軸方向)に穿設された4つの凹部41aが、前後方向(
図1等のY軸方向)及び左右方向(
図1等のX軸方向)にそれぞれ離間配置されたものを説明するが、正方形以外にも他の多角形や円形など、凸部11aに対応した任意の形状でもよく、その個数も限定されるものではない。また、凹部41aの配置位置は、中皿40の底面41の範囲内であって凸部11aに対応した位置であれば特に限定されない。
【0049】
中皿40の係止部である凹部41aは、中皿40を容器本体10の底面11に置くという垂直移動(
図1等のZ軸方向)のみによって、容器本体10の凸部11aと嵌合可能な形状となっている。
【0050】
これにより、中皿40は、極めて簡易な構成によって容器本体10に対する横ズレ(
図1等におけるX軸方向やY軸方向)を防止することができ、ひいては化粧料容器1の薄型化をも図ることができる。
【0051】
次に、化粧料容器1の組み立てについて説明する。
【0052】
図2(a)に示すように、ファンデーション等の粉末化粧料が、打型や湿式充填等の方法で充填固化された中皿40を準備する。
【0053】
図2(b)に示すように、容器本体10の段部12c(
図1参照)に中枠30を嵌合させて、容器本体10に中枠30を装着させる。
【0054】
図3に示すように、容器本体10の底面11に中皿40を置くことで、中皿40の凹部41aを容器本体10の凸部11aに嵌合させる。
【0055】
最後に、塗布具Pを中皿40の上面に置いた状態で、フック22bが容器本体10に係止されるまで蓋体20を閉じる。このとき、塗布具Pは、中皿40と蓋体20との間に収容される。
【0056】
図5に示すように、化粧料容器1の容器本体10、中枠30及び中皿40を装着した状態において、中皿40の側壁42の周囲全周には空隙Gを有する。
【0057】
これにより、化粧料容器1を床に落下等した場合であっても、中皿40の側壁42が、図中のX軸方向又はY軸方向の隣接物に接触することを防止し、中皿40の側壁42側から化粧料に対して衝撃が加わることを避けることができる。
【0058】
本実施形態による化粧料容器1において、中皿40の側壁42のX軸方向又はY軸方向の隣接物は容器本体10の側壁12であり、空隙Gは、中皿40の側壁42と容器本体10の側壁12(の内面)との間に形成されている。
【0059】
空隙Gは、中皿40と、中皿40の隣接物との接触を確実に防止するために、2mm以上に設定されることが好ましい。
【0060】
図5に示すように、中皿40は、容器本体10の凸部11aと中皿40の凹部41aとが篏合した状態で、容器本体10に対して装着される構成としたため、中皿40がX軸方向やY軸方向に横ズレせず、中皿40がその隣接物(容器本体10の側壁12等)に接触することが防止され、中皿40の側壁42側から化粧料に対して衝撃が加わることを避けることができる。
【0061】
また、化粧料容器1を落下等した場合の衝撃が、容器本体10の凸部11aと中皿40の凹部41aとを介して、中皿40の底面41に伝達される構成となっている。
【0062】
更に、
図5に示すように、化粧料容器1は、蓋体20が閉じられた状態において中皿40と蓋体20との間に塗布具Pが収容される。
【0063】
塗布具Pは、弾性材によって扁平状に形成されるとともに、蓋体20が閉じられた状態における中皿40の上端部(充填された化粧料の上面)と蓋体20の内面(但し、本実施形態では鏡23)との間を埋めることができる厚さTを備える。
【0064】
これにより、後述(変形例2)のように中皿40が容器本体10に固着されていなくとも、蓋体20が閉じられた状態の化粧料容器1を携帯中に、中皿40がZ軸方向に揺動することや、中皿40が容器本体10から脱落することを防止することができる。また、塗布具Pが、化粧料容器1を蓋体20側から床に落下等した場合に、中皿40に充填された化粧料の破損を守るクッションとして機能し、化粧料に対して衝撃が加わることを避けることができる。
【0065】
以上のように、本実施形態による化粧料容器1は、以下のような効果を奏する。
【0066】
従来の化粧料容器では、中皿の周囲に弾性材などの緩衝効果のある構成要素を隣接させることで、中皿に対する衝撃を吸収又は受け流すことを目的とした衝撃吸収機構が採用されており、それは中皿の外側に掛かる衝撃を和らげるための構造であった。
【0067】
本実施形態による化粧料容器1は、中皿40の外側に掛かる衝撃を和らげるための構造ではなく、衝撃が、中皿40の底面41の領域(中皿40の中央付近)で受ける構造が採用されているため、中皿40に充填された固形化粧料に、中皿40の側壁42側からのひびや欠け等が起こり難いという効果を奏する。
【0068】
また、本実施形態による化粧料容器1は、従来の化粧料容器のように弾性材を用いた衝撃緩衝機構を用いる必要がないため、部品点数及び製造工数を削減でき、小型化や薄型化を図ることができるという効果をも奏する。
【0069】
発明者は、本発明の効果を確認するために、本発明に係る化粧料容器1と、第1比較例である化粧料容器100、第2比較例である化粧料容器200、及び、第3比較例である化粧料容器300との対比実験を行った。
【0070】
以下、
図6及び
図7を参照し、この対比実験について説明する。
図6は、比較例(従来技術)に係る化粧料容器を示す図であり、(a)は、第1比較例の平面図、(b)は、第1比較例のC-C線端面図、(c)は、第2比較例の平面図、(d)は、第2比較例のD-D線端面図、(e)は、第3比較例の平面図、(f)は、第3比較例のE-E線端面図、
図7は、本発明の効果を確認するための実験の結果を示す表である。なお、
図6(a)、(c)、(e)では蓋体の図示は省略している。
【0071】
比較例(従来技術)について、
図6を参照して説明する。なお、以下の説明において前述と同様の構成要素については、同一の符号を付す等により重複する説明を適宜省略する。
【0072】
図6(a)及び(b)に示すように、第1比較例である化粧料容器100は、容器本体110及び中皿140には、本発明に係る化粧料容器1のような凸部11aや凹部41aは設けられていない。また、化粧料容器100は、中枠130によって中皿140が固定されており、中皿140の側壁の周囲全周にわたる空隙は形成されていない。
【0073】
図6(c)及び(d)に示すように、第2比較例である化粧料容器200は、容器本体210及び中皿240には、本発明に係る化粧料容器1のような凸部11aや凹部41aは設けられていない。また、化粧料容器200は、中皿240の四隅に接触して中皿240を保持するための弾性材211が容器本体210の底面から立設されている。
【0074】
図6(e)及び(f)に示すように、第3比較例である化粧料容器300は、容器本体310及び中皿340には、本発明に係る化粧料容器1のような凸部11aや凹部41aは設けられていない。また、化粧料容器300は、中皿340と容器本体310との間に、中皿340の底面及び側壁を外側から囲う弾性材350を有している。
【0075】
実験においては、本発明に係る化粧料容器1、第1比較例である化粧料容器100、第2比較例である化粧料容器200、及び、第3比較例である化粧料容器300のそれぞれを、蝶番部、側面、フック部及び底面を下に向けて、床に見立てたPタイルの上に落下させたときの、中皿に充填された化粧料の状態を観察した。この観察は、50cmの高さから落下させたときの状態と、続けて70cmの高さから落下させたときの状態について、それぞれ行った。
【0076】
本発明に係る化粧料容器1、第1比較例である化粧料容器100、第2比較例である化粧料容器200、及び、第3比較例である化粧料容器300のそれぞれのサンプル数2点乃至3点ずつについての確認結果を、
図7に示す。
【0077】
なお、
図7の表中、「ヒビ」とは、化粧料の表面のみが割れた状態を意味する。「キレツ」とは、化粧料の表面及びその深部まで割れた状態を意味する。また、「カケ」とは、化粧用の一部が欠けた状態を意味する。また、「スキマ」とは、中皿の内側面と化粧料との間に隙間が生じた状態を示す。また、「変化なし」とは、中皿に充填された化粧料が初期状態と比べて変化がなかった状況を示す。
【0078】
また、
図7の表中、「ヒビ」、「キレツ」、「カケ」及び「スキマ」のそれぞれについては、化粧料の破損の程度が軽度なものから重度のものまで、「1」乃至「4」までの4段階で評価した。
【0079】
図7に示すように、第1比較例乃至第3比較例において、都合2回の落下試験に耐えて変化がなかったサンプルはなく、化粧料において何らかの破損が確認された。一方、本発明に係る化粧料容器1においては、サンプル3点ともに、都合2回の落下試験に耐えて変化がなかった。
【0080】
このような結果より、化粧料容器1は、落下などによる衝撃が、容器本体10から中皿40の側壁42へ伝達されることを防止しつつ、中皿40の底面41側に伝達されるための構造が採用されていることにより、中皿40に充填された固形化粧料にひびや欠け等が起こり難いという効果を確認することができた。
【0081】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0082】
<変形例1>
上記実施形態に係る化粧料容器1においては、容器本体10の底面11に凸部11aを有し、中皿40の底面41には、凸部11aに対応した形状でなる凹部41aを有するものを説明した。
【0083】
しかしながら、本発明に係る化粧料容器は、容器本体の底面に形成されるのは凸部及び/又は凹部であればよく、また、中皿の底面に形成されるのは、容器本体の凸部及び/又は凹部に対応した形状でなる係止部であればよい。
【0084】
そのため、上記実施形態に係る化粧料容器1とは反対に、容器本体10の底面に凹部が形成され、中皿40の底面に、その凹部に対応した形状でなる凸部が形成される構成としてもよい。
【0085】
更に、容器本体10の底面に凸部及び凹部が混在させて形成され、この凸部及び凹部のそれぞれに対応した形状でなる係止部として凹部及び凸部が中皿40の底面に形成される構成としてもよい。
【0086】
<変形例2>
上記実施形態に係る化粧料容器1において、中皿40は、接着手段又は磁力による吸着手段によって、容器本体10の底面11に固着されてもよい。
【0087】
接着手段としては、一例として両面テープや接着剤を用いることができる。
【0088】
磁力による吸着手段としては、一例として、中皿40の底面に接着されたステンレス鋼板などの強磁性体と、容器本体10の底面に接着された永久磁石とを用いることができる。
【0089】
このような構成とすることにより、化粧料容器1を使用する際に、中皿40に充填された化粧料を塗布具Pで擦り取るはずみ等により中皿40が容器本体10から外れて脱落することを防止することができる。
【0090】
また、変形例2の構成によれば中皿40が容器本体10に固着されるため、上記実施形態に係る化粧料1のように中皿40と蓋体20との間に塗布具Pを収容させずとも、中皿40に充填される固形化粧料にひびや欠け等が起こり難い。
【0091】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 化粧料容器
10 容器本体
11 底面
11a 凸部(凸部及び/又は凹部)
12 側壁
12a 支持凹部
12b フックピース
12c 段部
20 蓋体
21 天面
22 側壁
22a 支持突起
22b フック
23 鏡
30 中枠
31 外周面
32 内周面
33 第1回避部
34 第2回避部
40 中皿
41 底面
41a 凹部(係止部)
42 側壁
100 化粧料容器(第1比較例)
110 容器本体
130 中枠
140 中皿
200 化粧料容器(第2比較例)
210 容器本体
211 弾性材
240 中皿
300 化粧料容器(第3比較例)
310 容器本体
340 中皿
350 弾性材
G 空隙
H 蝶番部
P 塗布具
T 厚さ