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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099422
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】吹付け装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240718BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20240718BHJP
   B24C 3/06 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E04G21/02 103B
B05B13/04
B24C3/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003359
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 重洋
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
(72)【発明者】
【氏名】丈達 康太
(72)【発明者】
【氏名】長塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖司
【テーマコード(参考)】
2E172
4F035
【Fターム(参考)】
2E172AA06
2E172DC00
4F035AA04
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD06
4F035CD12
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】吹付け施工の省力化を図りつつ、処理対象面に吹付け材料を噴射したのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することである。
【解決手段】処理対象面を吹付け施工するための吹付け装置であって、前記処理対象面に対向して配置されるフレームと、該フレーム内を移動し、前記処理対象面に吹付け材料を噴射する噴射ノズルと、を備え、前記フレームは、平面形状のフレーム本体と、該フレーム本体に沿って上下方向に移動するガーダと、該ガーダ上を左右方向に移動するトロリーと、を有し、該トロリーに、前記噴射ノズルが搭載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象面を吹付け施工するための吹付け装置であって、
前記処理対象面に対向して配置されるフレームと、
該フレーム内を移動し、前記処理対象面に吹付け材料を噴射する噴射ノズルと、を備え、
前記フレームは、
平面形状のフレーム本体と、
該フレーム本体に沿って上下方向に移動するガーダと、
該ガーダ上を左右方向に移動するトロリーと、を有し、
該トロリーに、前記噴射ノズルが搭載されることを特徴とする吹付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記トロリーに、前記噴射ノズルと前記処理対象面との間隔を調整する位置調整機構が設けられ、
該位置調整機構に、前記噴射ノズルが設置されることを特徴とする吹付け装置。
【請求項3】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記フレームに、前記フレーム本体を前記処理対象面に沿って移動自在に支持するフレーム移動機構を備えることを特徴とする吹付け装置。
【請求項4】
請求項3に記載の吹付け装置において、
前記フレーム移動機構が、前記フレーム本体に設ける移動体と、該移動体の移動方向をガイドするガイド部材と、を備え、
該ガイド部材に、前記処理対象面に近接して設けた足場に支持可能な支持部が形成されていることを特徴とする吹付け装置。
【請求項5】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記フレームに、前記フレーム本体を前記処理対象面に対して取り外し自在に固定する固定機構が設けられることを特徴とする吹付け装置。
【請求項6】
請求項5に記載の吹付け装置において、
前記固定機構に、マグネット工具を備えることを特徴とする吹付け装置。
【請求項7】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記吹付け材料が、研削材であることを特徴とする吹付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や構造物に設定された処理対象面を吹付け施工するために用いる吹付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吹付け材料を構造物の壁面などに噴射する吹付け施工は、人力で実施する場合、作業員が噴射ノズルを備えた吹付けガンを担ぎながら、位置・向きを調整する。さらには、噴射ノズルに接続されたホースの取り回しなどを行う必要があるなど、多大な労力を要する。また、作業員の技能によっては、吹付け材料を噴射させたのちの吹付け面にムラが生じるなど、出来形に不具合を生じる場合もある。
【0003】
このため、従来より吹付け施工の省人化が進められている。例えば、特許文献1には、構造物の表面処理に使用する表面処理装置が開示されている。特許文献1の表面処理装置は、処理対象面に沿って敷設されるガイドレールと、ガイドレール上を移動する表面処理ロボットを備える。
【0004】
表面処理ロボットには、マニピュレータとノズルが設けられており、表面処理ロボットをガイドレール上で移動させつつ、マニピュレータを動作プログラムに従って可動させる。これにより、マニピュレータに取り付けられているノズルの位置や姿勢を制御し、処理対象面を表面処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-214081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、表面処理ロボットを採用することで、吹付け施工の省人化を図ることができる。また、表面処理の均質化を図ることができる。ところが、表面処理ロボットの導入は、動作プログラムの構築が煩雑であり、また、多大な費用を要する。さらには、処理対象面が狭隘な環境下にあると、表面処理ロボットの搬出入や設置スペースの確保が困難となる場合があるなど、様々な課題を生じていた。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、吹付け施工の省力化を図りつつ、処理対象面に吹付け材料を噴射したのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の吹付け装置は、処理対象面を吹付け施工するための吹付け装置であって、前記処理対象面に対向して配置されるフレームと、該フレーム内を移動し、前記処理対象面に吹付け材料を噴射する噴射ノズルと、を備え、前記フレームは、平面形状のフレーム本体と、該フレーム本体に沿って上下方向に移動するガーダと、該ガーダ上を左右方向に移動するトロリーと、を有し、該トロリーに、前記噴射ノズルが搭載されることを特徴とする。
【0009】
本発明の吹付け装置は、前記トロリーに、前記噴射ノズルと前記処理対象面との間隔を調整する位置調整機構が設けられ、該位置調整機構に、前記噴射ノズルが設置されることを特徴とする。
【0010】
本発明の吹付け装置は、請求項1に記載の吹付け装置において、前記フレームに、前記フレーム本体を前記処理対象面に沿って移動自在に支持するフレーム移動機構を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の吹付け装置は、前記フレーム移動機構が、前記フレーム本体に設ける移動体と、該移動体の移動方向をガイドするガイド部材と、を備え、
該ガイド部材に、前記処理対象面に近接して設けた足場に支持可能な支持部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の吹付け装置は、前記フレームに、前記フレーム本体を前記処理対象面に対して取り外し自在に固定する固定機構が設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の吹付け装置は、前記固定機構に、マグネット工具が備えられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の吹付け装置は、前記吹付け材料が、研削材であることを特徴とする。
【0015】
上記の吹付け装置によれば、平面形状のフレーム本体に上下方向に移動するガーダと、ガーダ上を左右方向に移動するトロリーを設け、このトロリーに噴射ノズルを搭載する。これにより作業員は、噴射ノズルを備える吹付けガンを担ぐことなく、吹付け装置を操作することで吹付け施工を実施できる。これにより、吹付け施工の大幅な省力化を図ることができる。
【0016】
また、トロリーの移動速度を調整する、もしくは位置調整機構を利用して噴射ノズルと処理対象面との間隔を調整することも可能であり、処理対象面に吹付け材料を吹付けたのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することが可能となる。
【0017】
さらに、吹付け装置全体がスリムな形状であるだけでなく、処理対象面に近接して足場がある場合には、足場を利用して設置することもできる。このため、処理対象面が狭隘な環境下にあっても、現場への搬出入が容易であるとともに、吹付け装置の設置スペースを確保しやすい。
【0018】
また、フレーム移動機構を利用してフレーム本体を、処理対象面に沿って移動させることができるとともに、吹付け施工時には、固定機構を利用してフレーム本体を、処理対象面が設定された構造物などに安定して固定することができる。これにより、例えば、十分な作業空間を確保することが困難な道路橋の更新工事において、長大な鋼桁に横方向に広域な処理対象面が設定されている場合にも、吹付け装置を導入し、フレーム本体を鋼桁に沿って移動させつつ断続的に吹付け施工を実施できる。
【0019】
このように、吹付け装置は、処理対象面が狭隘な環境下にある場合にも導入が容易で、かつ作業ロボットなどと比較して手軽に使用でき、吹付け施工の施工性を大幅に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、処理対象面に対向して配置されるフレームに、フレーム内を移動する噴射ノズルを設ける簡略な構成で、吹付け施工の省力化を図りつつ、処理対象面に吹付け材料を噴射したのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態における吹付け装置を示す図である。
図2】本実施の形態における吹付け装置の断面(A-A)を示す図である。
図3】本実施の形態における吹付け装置の断面(B-B)を示す図である。
図4】本実施の形態におけるトロリーの詳細を示す図である。
図5】本実施の形態におけるフレーム移動機構の設置位置の他の事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、建物や構造物に設定された処理対象面に、吹付け材料を噴射して吹付け面を形成する、吹付け施工に用いられるものであり、特に、処理対象面が狭隘な環境下にある場合に好適な装置である。吹付け装置は、ブラスト作業、塗装作業、モルタル吹付け作業など、いずれの吹付け材を噴射して吹付け施工する場合にも採用可能である。
【0023】
本実施の形態では、橋梁の床版取替工事において、既設の鋼桁を処理対象面に設定し、ブラスト作業を実施する場合を事例に挙げ、図1図5を参照しつつ、その詳細を説明する。
【0024】
≪≪≪吹付け装置≫≫≫
吹付け装置100は、図1で示すように、鋼桁80のウェブ面に設定された処理対象面Fに対向して配置されており、フレーム10と、吹付けガン70と、コントロールボックスCとを備えている。
【0025】
≪≪フレーム≫≫
フレーム10は、フレーム本体20と、固定機構30と、フレーム移動機構40と、ノズル移動機構50と、位置調整機構60とを備えている。
【0026】
≪フレーム本体≫
フレーム本体20は、間隔を設けて対をなして配置された支柱21と、これらに跨るようにして配置された上梁221及び下梁222とにより構成されて平面形状をなしている。上梁221及び下梁222は、対応する連結金具Mを介して支柱21の上側及び下側にそれぞれ設置され、支柱21の離間間隔や上梁221と下梁222の配置間隔は、適宜変更自在に組み立てられている。
【0027】
上梁221にはその両端部に、固定機構30が設けられている。また、下梁222にはその下方に、フレーム移動機構40が設けられている。
【0028】
≪固定機構≫
固定機構30は、図2で示すように、マグネット工具31と取付部材32とにより構成されている。マグネット工具31は、付属のレバー312の向きを変えることで、前面に設けられた吸着面311の処理対象面Fに対する吸着力を、入状態(吸着力有り)、切状態(吸着力無し)に切り替えることのできる工具である。
【0029】
取付部材32は、棒状部材により構成され、マグネット工具31の背面から吸着面311に直交する方向へ突出するようにして、設けられている。そして、連結金具Mを介してフレーム本体20の上梁221に接続されている。これにより、フレーム本体20は、固定機構30を介して処理対象面Fが設定された鋼桁80のウェブ面に、着脱自在に取り付けられる。
【0030】
≪フレーム移動機構≫
フレーム移動機構40は、図2で示すように、下梁222に設けられた車輪41と、車輪41の走行方向を案内するガイド部材42とにより構成されている。ガイド部材42は車輪41が走行する溝を有するレールであり、図1で示すように、処理対象面Fに沿って延在している。
【0031】
なお、フレーム移動機構40の走行手段に車輪41を採用したが、これに限定するものではなく、滑り移動するものなどを採用してもよい。また、ガイド部材42も車輪41に対応した適宜の形状のものを採用できる。さらに、ガイド部材42の設置位置もいずれでもよい。
【0032】
例えば、ガイド部材42は図2で示すように、隣り合う鋼桁80を連結するように配置される中段足場90を利用して、設置している。具体的には、中段足場90を鋼桁80の下フランジ81に支持させる際に用いる掴み金具91の上部にガイド部材42を設置している。
【0033】
このため、ガイド部材42にはその下部に、掴み金具91の上部に対応する形状の支持部421を形成している。この支持部421を利用して、掴み金具91の上部に載置、もしくは挟持金具などを用いて固定する。
【0034】
これにより、フレーム移動機構40に支持されるフレーム本体20は、鋼桁80に設定した処理対象面Fに対向して立設した姿勢となる。そして、固定機構30のマグネット工具31が切状態(吸着力無し)のとき、処理対象面Fに沿って移動可能となる。
【0035】
一方、マグネット工具31が入状態(吸着力有り)のとき、フレーム本体20を安定して停止状態にできる。このように処理対象面Fに沿って移動もしくは固定可能なフレーム本体20に、ノズル移動機構50が設置されている。
【0036】
≪ノズル移動機構≫
ノズル移動機構50は、図1で示すように、ガーダ51、トロリー52、及び昇降機構53を備え、トロリー52に吹付けガン70が搭載されている。ガーダ51は、上梁221及び下梁222と平行に配置される長尺部材により構成され、トロリー52の走行路をなす。
【0037】
ガーダ51及びトロリー52はいずれの形状のものを採用してもよいが、図3及び図4で示すように、ガーダ51にはH形鋼を採用している。ガーダ51として用いるH形鋼は、図3で示すように、ウェブ511が略水平となる姿勢に配置されている。
【0038】
トロリー52は、トロリー本体521と車輪522とにより構成されている。トロリー本体521は、ガーダ51の断面より大きい内空部を有する断面コの字型の外形状を有する。4つの車輪522は、図4(a)及び(b)で示すように、トロリー本体521の内空部であって、ガーダ51を構成するH形鋼の一方のフランジ512と噛み合う位置に、それぞれ設けている。
【0039】
これにより、トロリー52は、図1で示すように、ガーダ51に沿って、フレーム本体20の左右方向(処理対象面Fの横方向)に移動が可能となる。
【0040】
≪昇降機構≫
昇降機構53は、図2で示すように、昇降ガイド531とキャリッジ532とを備えている。キャリッジ532には、ガーダ51の把持部5321が設けられており、支柱21と鋼桁80の間でガーダ51を把持している。
【0041】
キャリッジ532は、昇降ガイド531に案内されて、支柱21に沿って上下移動可能な機構であれば、いずれの構造のものを採用してもよい。例えば、図1では、昇降ガイド531にラックを設けるとともに、キャリッジ532にピニオンを設けている。これにより、ガーダ51は、トロリー52とともに昇降機構53を介して、フレーム本体20の上下方向に移動する。
【0042】
こうして、トロリー52は、フレーム本体20の上下方向及び左右方向に自在に移動することができる。したがって、このトロリー52に吹付けガン70が設けることで、吹付けガン70はフレーム本体20内を自在に移動することが可能となる。
【0043】
≪吹付けガン≫
吹付けガン70は、図2で示すように、市場で取引されているいずれの形状のものも採用可能であり、本実施の形態では、研削材Gを圧縮空気と共に噴射する噴射ノズル71を備えたブラスト加工用のものを採用している。吹付けガン70は、図示を省略しているが、接続配管を介して研削材供給装置やエアコンプレッサ、切削粉回収装置などに接続されている。
【0044】
この吹付けガン70は、トロリー52に直接搭載してもよいが、本実施の形態では、図3で示すように、吹付けガン70と処理対象面Fとの距離を調整可能な位置調整機構60を介して搭載している。
【0045】
≪位置調整機構≫
位置調整機構60は、図4(a)で示すように、調整レール61と調整レール61上を移動するスライダー62との組み合わせを、トロリー52の上面に、2体設けている。
【0046】
調整レール61は、図3で示すように、処理対象面Fに対して直交して設けられている。また、図4(b)で示すように、この2体のスライダー62に跨るように配置された架台63を備えている。この架台63に、図3で示すように、吹付けガン70搭載している。
【0047】
≪コントロールボックス≫
コントロールボックスCは、図1で示すように、ノズル移動機構50のトロリー52及び昇降機構53と電気接続されているとともに、これらの動作を制御する制御部(図示せず)を備えている。また、吹付けガン70を、例えば、上下方向もしくは左右方向に移動させるための操作ボタンが設けられている。
【0048】
作業員が操作ボタンが操作すると、操作ボタンに対応した指令が制御部に入力され、指令を受けた制御部はノズル移動機構50を制御する。したがって、例えば作業員が、吹付けガン70を上昇移動させるための操作ボタンを操作すると、指令を受けた制御部は図2で示すように、昇降機構53のキャリッジ532を昇降ガイド531に沿って上昇させる。
【0049】
これにより、キャリッジ532の把持部5321に把持されているガーダ51が上昇し、ガーダ51に設けられているトロリー52も上昇する。したがって、トロリー52に設置した吹付けガン70が上昇移動する。
【0050】
同様に、作業員がコントロールボックスCを用いて、例えば吹付けガン70を左方向に移動させるための操作ボタンを操作する。すると、指令を受けた制御部は、図1で示すように、トロリー52をガーダ51に沿って左方向に移動させる。したがって、トロリー52に設置した吹付けガン70も左移動する。
【0051】
このようなコントロールボックスCを用いた吹付けガン70の操作は、上述の上下移動や左右移動だけに限定されるものではない。制御部を適宜設定することにより、例えば、移動速度の調整機能や、非常停止機能、原点復帰機能(吹付けガン70を作動開始位置に戻す機能)など、吹付け施工に好適な様々な機能を操作可能とすることができる。
【0052】
上記のとおり、吹付け装置100は、フレーム本体20が平面形状であるなど全体がスリムに形成されている。したがって、処理対象面Fが狭隘な環境下にあっても、現場への搬出入が容易である。また、中段足場90を利用して設置することもでき、設置ペースを確保しやすい。
【0053】
さらに、フレーム10に吹付けガン70を備えた簡略な構成であるため、作業ロボットなどと比較して手軽に使用でき、吹付け施工の施工性を大幅に向上することが可能となる。
【0054】
≪≪≪施工対象面の吹付け施工方法≫≫≫
吹付け装置100を利用して、処理対象面Fに向けて研削材Gを噴射し吹付け面を形成する、吹付け施工の実施手順の一例を、以下に示す。
【0055】
まず、図3で示すように、フレーム本体20をフレーム移動機構40を介して、中段足場90の掴み金具91上に据え付けるとともに、固定機構30を入状態(吸着力有り)にして処理対象面Fに固定する。また、トロリー52に設けた位置調整機構60に、吹付けガン70を設置する。
【0056】
次に、図3で示すように、位置調整機構60を利用して、処理対象面Fに対する吹付けガン70の噴射ノズル71の離間間隔を調整する。このとき、位置調整機構60の架台63に対する吹付けガン70の設置角度を調整し、処理対象面Fに対する噴射ノズル71の姿勢や向きなどを調整してもよい。これらの作業と前後して、例えばフレーム本体20の左上隅部を原点に設定し、コントロールボックスCを操作して吹付けガン70を原点に配置する。
【0057】
この作業が終了したのち、図1及び図2で示すように、作業員はコントロールボックスCを操作して吹付けガン70を上下方向及び左右方向に移動させつつ、処理対象面Fに向けて噴射ノズル71より研削材Gを噴射する。
【0058】
例えば、吹付けガン70を原点に設定した左上隅部から一筆書き状に、左右方向及び下方向に向けて連続移動させる。すると、処理対象面Fのうちフレーム本体20に対向する範囲全体に研削材Gが吹付けられる。こうして吹付け面が形成されたところで、研削材Gの噴射を一旦停止させる。
【0059】
次いで、固定機構30のマグネット工具31を切状態(吸着力無し)にしてフレーム本体20と処理対象面Fとの固定を解除する。処理対象面Fの未施工範囲がある場合には、この未施工範囲とフレーム本体20が対向するよう、フレーム移動機構40を介してフレーム本体20を移動させる。次に、固定機構30のマグネット工具31を入状態(吸着力有り)にして、フレーム本体20を処理対象面Fの未施工範囲に固定する。
【0060】
こののち、上記のとおりコントロールボックスCを操作して吹付けガン70を上下方向及び左右方向に移動させつつ、処理対象面Fの未施工範囲に向けて噴射ノズル71より噴射する研削材Gを吹付ける。このような作業を、処理対象面Fのすべてに吹付け面が形成されるまで、繰り返し実施する。
【0061】
上記のとおり、吹付け装置100によれば、十分な作業空間を確保することが困難な道路橋の更新工事などにおいて、長大な鋼桁80に横方向に広域な処理対象面Fが設定されている場合にも、吹付け装置100を導入し、フレーム本体20を鋼桁80に沿って移動させつつ、断続的に吹付け施工を実施できる。これにより、吹付け施工の大幅な省力化を図ることができる。
【0062】
また、トロリー52の移動速度を調整する、もしくは位置調整機構60を利用して噴射ノズル71と処理対象面Fとの間隔を調整すれば、これまで作業員の技能によって生じていた吹付けムラが抑制される。したがって、処理対象面Fを研削材Gを吹付けたのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することが可能となる。
【0063】
本発明の吹付け装置は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0064】
例えば、本実施の形態では、フレーム移動機構40を介してフレーム本体20を、中段足場90の掴み金具91上に支持させたが、必ずしもこれに限定するものではない。図5で示すように、中段足場90が存在しない場合には、鋼桁80の下フランジ81に接続金具82を取り付け、この接続金具82を介して、鋼桁80に支持させるなどしてもよい。
【0065】
接続金具82の形状はいずれでもよく、図5では、接続金具82に下フランジ81から張り出す張出し部83を設け、フレーム移動機構40のガイド部材42を支持させる構成を例示している。
【0066】
また、本実施の形態では、位置調整機構60を利用して作業員により、処理対象面Fに対する噴射ノズル71の離間距離を調整するものとした。しかし、これに限定するものではなく、位置調整機構60もコントロールボックスCを用いて作業員が操作できる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 吹付け装置
10 フレーム
20 フレーム本体
21 支柱
221 上梁
222 下梁
30 固定機構
31 マグネット工具(固定具)
311 吸着面
312 レバー
32 取付部材
40 フレーム移動機構
41 車輪
42 ガイド部材
421 支持部
50 ノズル移動機構
51 ガーダ
52 トロリー
521 トロリー本体
522 車輪
53 昇降機構
531 昇降ガイド
532 キャリッジ
5321 把持部
60 位置調整機構
61 調整レール
62 スライダー
63 架台
70 吹付けガン
71 噴射ノズル
80 鋼桁
81 下フランジ
82 接続金具
83 張出し部
90 中段足場
91 掴み金具
M 連結金具
G 研削材(吹付け材料)
C コントロールボックス
F 処理対象面
図1
図2
図3
図4
図5