(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099426
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】タイヤ試験機およびタイヤ試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240718BHJP
G01M 1/16 20060101ALI20240718BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01M17/02
G01M1/16
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003366
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住谷 敬志
【テーマコード(参考)】
2G021
3D131
【Fターム(参考)】
2G021AB01
2G021AC03
2G021AC19
2G021AD06
2G021AF09
3D131BC55
3D131BC57
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】上下スピンドルの嵌合時の損傷を抑制しながら、効率的に両スピンドルを嵌合させ試験を開始することが可能なタイヤ試験機およびタイヤ試験方法を提供する。
【解決手段】タイヤ試験機1は、下スピンドル21と、上スピンドル22と、昇降ユニット50と、ロック部2Rと、上スピンドル回転支持部220とを備える。上スピンドル回転支持部220は、昇降ユニット50に支持され、下スピンドル21の受入部Xに対する挿入部222の挿入時に上スピンドル21が中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する一方、挿入部222の挿入後に上スピンドル21の前記微動を阻止することが可能なように、上スピンドル21を回転可能に支持する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験機であって、
円柱状の挿入部を有し、前記タイヤに装着される上リムを保持し、前記上リムを介して前記タイヤを支持する上スピンドルと、
前記挿入部を受け入れ可能な円筒状の受入部を有し、前記上リムの反対側で前記タイヤに装着される下リムを保持し、前記下リムを介して前記タイヤを支持する下スピンドルと、
前記挿入部を前記受入部に対して挿脱するように、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して昇降させることが可能な昇降部と、
前記上リムと前記下リムとの間隔が所定の間隔となるように、前記挿入部と前記受入部とをロックすることが可能なロック部と、
前記昇降部に支持され、前記受入部に対する前記挿入部の挿入時に前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する一方、前記挿入部の挿入後に前記上スピンドルの前記微動を阻止することが可能なように、前記上スピンドルを回転可能に支持する上スピンドル回転支持部と、
を備える、タイヤ試験機。
【請求項2】
前記上スピンドル回転支持部は、
前記昇降部に固定された固定部と、
前記固定部上に載置され、前記固定部に対して前記移動面に沿った第1方向に相対移動可能な第1支持体と、
前記第1支持体上に載置され、前記第1支持体に対して前記移動面に沿った前記第1方向と直交する第2方向に相対移動可能であり、前記上スピンドルを支持する第2支持体と、
を有する、請求項1に記載のタイヤ試験機。
【請求項3】
前記固定部には固定ピン孔が形成され、前記第1支持体には第1ピン孔が形成され、前記第2支持体には第2ピン孔が形成されており、
前記上スピンドル回転支持部は、前記固定ピン孔と前記第1ピン孔と前記第2ピン孔とに挿通されることで、前記固定部に対する前記第1支持体および前記第2支持体の相対移動を阻止する移動阻止ピンを更に備える、請求項2に記載のタイヤ試験機。
【請求項4】
前記上スピンドル回転支持部は、
前記第1支持体が前記固定部に対して前記第1方向に相対移動可能なように、前記固定部と前記第1支持体との間に介在する第1クロスローラガイドと、
前記第2支持体が前記第1支持体に対して前記第2方向に相対移動可能なように、前記第1支持体と前記第2支持体との間に介在する第2クロスローラガイドと、
を更に有する、請求項2に記載のタイヤ試験機。
【請求項5】
前記中心軸に沿って見た場合、前記挿入部が前記受入部に対して前記中心軸回りの所定の回転位置に配置されたときに前記挿入部が前記受入部に挿入可能であり、
前記ロック部は、前記挿入部が前記受入部に挿入され前記中心軸回りに所定の角度分だけ相対回転されると、前記挿入部と前記受入部とをロックすることが可能であり、
前記上スピンドルを前記所定の回転位置に拘束することが可能な回転拘束部と、
前記上スピンドルの前記中心軸回りの回転位置を検知可能な回転検知部と、
前記回転検知部の検知結果に応じて前記挿入部が前記所定の回転位置に至るまで前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対回転させることが可能な回転機構と、
を更に備える、請求項1に記載のタイヤ試験機。
【請求項6】
前記回転機構は、前記下スピンドルを前記受入部の中心軸回りに回転させることで、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対回転させる、請求項5に記載のタイヤ試験機。
【請求項7】
前記上スピンドル回転支持部は、上下一対のアンギュラーベアリングにより前記上スピンドルを回転可能に支持する、請求項1乃至6の何れか1項に記載のタイヤ試験機。
【請求項8】
円柱状の挿入部を有し、前記タイヤに装着される上リムを保持し、前記上リムを介して前記タイヤを支持する上スピンドルと、前記挿入部を受け入れ可能な円筒状の受入部を有し、前記上リムの反対側で前記タイヤに装着される下リムを保持し、前記下リムを介して前記タイヤを支持する下スピンドルとを備え、タイヤを回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験方法であって、
前記上スピンドルを昇降させることが可能な昇降部に対して、前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸回りに相対回転することを阻止する第1相対回転阻止工程と、
前記下リムと前記上リムとの間に前記タイヤを配置した状態で、前記上スピンドルが前記下スピンドルに対して前記挿入部の中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する第1微動許容工程と、
前記昇降部による前記上スピンドルの下降によって前記上スピンドルの前記挿入部を前記下スピンドルの前記受入部に挿入し、前記下リムと前記上リムとによって前記タイヤを挟む挿入工程と、
前記上スピンドルの前記移動面に沿った前記微動を阻止する微動阻止工程と、
前記上リム、前記タイヤおよび前記下リムで囲まれた空間にエアを導入するエア導入工程と、
前記昇降部に対して、前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸回りに相対回転することを許容する相対回転許容工程と、
前記上スピンドル、前記タイヤおよび前記下スピンドルを一体回転させて前記試験を行う試験工程と、
前記昇降部に対して、前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸回りに相対回転することを再度阻止する第2相対回転阻止工程と、
前記空間からエアを排出するエア排出工程と、
前記上スピンドルが前記下スピンドルに対して前記移動面に沿って微動することを再度許容する第2微動許容工程と、
前記昇降部による前記上スピンドルの上昇によって前記上スピンドルの前記挿入部を前記下スピンドルの前記受入部から脱離する脱離工程と、
を備えるタイヤ試験方法。
【請求項9】
前記第1微動許容工程および前記第2微動許容工程は、第1支持体が前記昇降部に固定された固定部に対して前記移動面に沿った第1方向に相対移動することを許容するとともに、前記上スピンドルを支持する第2支持体が前記第1支持体に対して前記移動面に沿った前記第1方向と直交する第2方向に相対移動することを許容することを含み、
前記微動阻止工程は、前記第1支持体が前記固定部に対して前記第1方向に相対移動することを阻止するとともに、前記第2支持体が前記第1支持体に対して前記第2方向に相対移動することを阻止することを含む、請求項8に記載のタイヤ試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに所定の試験を行うためのタイヤ試験機およびタイヤ試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのユニフォミティなどを測定するタイヤ試験機が知られている。当該タイヤ試験機は、タイヤを上下方向に延びる回転中心軸回りに回転可能に支持するスピンドルと、スピンドルの回転中心軸と平行な回転中心軸回りに回転可能に支持され且つタイヤの外周面に当接可能とされた回転ドラムと、回転ドラムに加わる荷重を計測可能なロードセルと、を有する。
【0003】
スピンドルに装着されたタイヤに空気が充填されタイヤの外周面に回転ドラムが押し付けられると、タイヤがスピンドルによって回転され、ロードセルがタイヤの荷重変動データを計測する。計測された荷重変動データに基づいて、タイヤの均一性(ユニフォミティ)が評価される。スピンドルは、上スピンドルと下スピンドルとを有する。タイヤをスピンドルに装着する際には、タイヤサイズに応じた上リムおよび下リムがタイヤの両側面にそれぞれ装着され、これらのリムを介してスピンドルがタイヤを回転可能に支持する。
【0004】
特許文献1には、上リムと下リムとの間隔を調整可能なタイヤ試験機が開示されている。具体的に、当該タイヤ試験機は、内部空間を有し、下リムを支持する円筒状の下スピンドルと、上リムを支持する円柱状の上スピンドルとを備える。下スピンドルは内部にロックピースを有する。挿入部の内部空間への挿入量が調整され、ロックピースの複数のロック係合部と、挿入部の複数の挿入係合部とが係合することで、タイヤの幅に応じて下リムと上リムとの間隔が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、上スピンドルの挿入部を下スピンドルの内部空間に挿入する前に、予め両スピンドルの中心軸を精度良く合わせる必要があった。両スピンドルの中心軸同士がずれている、又は、相対的に傾いている場合、嵌め合い面にかじりや焼き付きが生じて、スピンドルに傷が生じやすくなる。また、このような傷を避けるために、中心軸を合わせるためには、多くの手間と作業時間が必要になり、効率的な試験を行うことが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、上下スピンドルの嵌合時の損傷を抑制しながら、効率的に両スピンドルを嵌合させ試験を開始することが可能なタイヤ試験機およびタイヤ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるのは、タイヤを回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験機であって、円柱状の挿入部を有し、前記タイヤに装着される上リムを保持し、前記上リムを介して前記タイヤを支持する上スピンドルと、前記挿入部を受け入れ可能な円筒状の受入部を有し、前記上リムの反対側で前記タイヤに装着される下リムを保持し、前記下リムを介して前記タイヤを支持する下スピンドルと、前記挿入部を前記受入部に対して挿脱するように、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して昇降させることが可能な昇降部と、前記上リムと前記下リムとの間隔が所定の間隔となるように、前記挿入部と前記受入部とをロックすることが可能なロック部と、前記昇降部に支持され、前記受入部に対する前記挿入部の挿入時に前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する一方、前記挿入部の挿入後に前記上スピンドルの前記微動を阻止することが可能なように、前記上スピンドルを回転可能に支持する上スピンドル回転支持部と、を備える。
【0009】
本構成によれば、上スピンドルの挿入部の挿入時に、挿入部の中心軸と受入部の中心軸とがずれている場合であっても、挿入部の外周面が受入部の内周面に沿ってスムーズに挿入されるように、上スピンドルが前記移動面に沿って微動することができる。この結果、挿入部の挿入時に、嵌め合い面にかじりや焼き付きが生じて各スピンドルに傷が生じることを抑止することができ、中心軸を合わせるために必要であった多くの手間と作業時間を削減でき、速やかにタイヤ試験を開始することができる。また、挿入部の挿入後には、上スピンドルの微動が阻止されるため、タイヤの試験時に下スピンドルおよび上スピンドルを安定して一体で回転させることができる。これにより、タイヤのユニフォミティほかの所定試験の繰り返し精度が向上する。
【0010】
上記の構成において、前記上スピンドル回転支持部は、前記昇降部に固定された固定部と、前記固定部上に載置され、前記固定部に対して前記移動面に沿った第1方向に相対移動可能な第1支持体と、前記第1支持体上に載置され、前記第1支持体に対して前記移動面に沿った前記第1方向と直交する第2方向に相対移動可能であり、前記上スピンドルを支持する第2支持体と、を有するものでもよい。
【0011】
本構成によれば、第1支持体および第2支持体がもたらす互いに直交する2つの方向への上スピンドルの移動構造によって、上スピンドルの前記移動面に沿った微動を容易かつスムーズに実現することができる。
【0012】
上記の構成において、前記固定部には固定ピン孔が形成され、前記第1支持体には第1ピン孔が形成され、前記第2支持体には第2ピン孔が形成されており、前記上スピンドル回転支持部は、前記固定ピン孔と前記第1ピン孔と前記第2ピン孔とに挿通されることで、前記固定部に対する前記第1支持体および前記第2支持体の相対移動を阻止する移動阻止ピンを更に備えるものでもよい。
【0013】
本構成によれば、各支持体および固定部に形成されたピン孔に移動阻止ピンを挿入することで、上スピンドルの微動を簡単な構成で容易に阻止することができる。これは、第1支持体および第2支持体が互いに直交する2つの方向へのみ移動することができるので、回転方向のずれが生じず移動阻止ピンを挿入しやすいことによる。
【0014】
上記の構成において、前記上スピンドル回転支持部は、前記第1支持体が前記固定部に対して前記第1方向に相対移動可能なように、前記固定部と前記第1支持体との間に介在する第1クロスローラガイドと、前記第2支持体が前記第1支持体に対して前記第2方向に相対移動可能なように、前記第1支持体と前記第2支持体との間に介在する第2クロスローラガイドと、を更に有するものでもよい。
【0015】
本構成によれば、第1支持体および第2支持体の移動のためにクロスローラガイドを用いることで、公知の金属摺動ガイドや無給油低摩擦プレートのような摺動ガイドと比較して摩擦力を小さくすることができるため、上スピンドルの微動をスムーズに実現し、各スピンドルに傷が入ることをより確実に抑止することができる。加えて、クロスローラガイドは許容荷重が大きいので、大きな荷重がかかるタイヤ試験機の微動機構として極めて好適である。
【0016】
上記の構成において、前記中心軸に沿って見た場合、前記挿入部が前記受入部に対して前記中心軸回りの所定の回転位置に配置されたときに前記挿入部が前記受入部に挿入可能であり、前記ロック部は、前記挿入部が前記受入部に挿入され前記中心軸回りに所定の角度分だけ相対回転されると、前記挿入部と前記受入部とをロックすることが可能であり、前記上スピンドルを前記所定の回転位置に拘束することが可能な回転拘束部と、前記上スピンドルの前記中心軸回りの回転位置を検知可能な回転検知部と、前記回転検知部の検知結果に応じて前記挿入部が前記所定の回転位置に至るまで前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対回転させることが可能な回転機構と、を更に備えるものでもよい。
【0017】
本構成によれば、回転拘束部によって上スピンドルを所定の回転位置に拘束して、上スピンドルの挿入動作を安定して行うことができる。また、上スピンドルの拘束が解除された状態で、上スピンドルが回転した場合には、回転検知部の検知結果に基づいて上スピンドルを下スピンドルに対して相対回転させることができる。このため、下スピンドルと上スピンドルとを互いの嵌め合い位置に位置決めでき、機械を停止させることなく確実な操業ができる。
【0018】
上記の構成において、前記回転機構は、前記下スピンドルを前記受入部の中心軸回りに回転させることで、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対回転させるものでもよい。
【0019】
本構成によれば、上下スピンドルの嵌め合いを円滑化し、かつ、上スピンドルの回転装置を省略することができる。特に、タイヤ試験時に各スピンドルを回転させるための下スピンドルの回転機構を利用することで、タイヤ試験機の装置構成を簡素化することができる。
【0020】
上記の構成において、前記上スピンドル回転支持部 は、上下一対のアンギュラーベアリングにより前記上スピンドルを回転可能に支持するものでもよい。
【0021】
本構成によれば、前記上下一対のアンギュラーベアリングが、ラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に支えることができ、かつ、所望の方向にある程度傾くことができるため、前記上スピンドルの微動と相乗的に作用して、前記上スピンドルの昇降時に発生するキズをより確実に防止することができる。
【0022】
本発明によって提供されるのは、円柱状の挿入部を有し、前記タイヤに装着される上リムを保持し、前記上リムを介して前記タイヤを支持する上スピンドルと、前記挿入部を受け入れ可能な円筒状の受入部を有し、前記上リムの反対側で前記タイヤに装着される下リムを保持し、前記下リムを介して前記タイヤを支持する下スピンドルとを備え、タイヤを回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験方法であって、前記上スピンドルを昇降させることが可能な昇降部に対して、前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸回りに相対回転することを阻止する第1相対回転阻止工程と、前記下リムと前記上リムとの間に前記タイヤを配置した状態で、前記上スピンドルが前記下スピンドルに対して前記挿入部の中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する第1微動許容工程と、前記昇降部による前記上スピンドルの下降によって前記上スピンドルの前記挿入部を前記下スピンドルの前記受入部に挿入し、前記下リムと前記上リムとによって前記タイヤを挟む挿入工程と、前記上スピンドルの前記移動面に沿った前記微動を阻止する微動阻止工程と、前記上リム、前記タイヤおよび前記下リムで囲まれた空間にエアを導入するエア導入工程と、前記昇降部に対して、前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸回りに相対回転することを許容する相対回転許容工程と、前記上スピンドル、前記タイヤおよび前記下スピンドルを一体回転させて前記試験を行う試験工程と、前記昇降部に対して、前記上スピンドルが前記挿入部の中心軸回りに相対回転することを再度阻止する第2相対回転阻止工程と、前記空間からエアを排出するエア排出工程と、前記上スピンドルが前記下スピンドルに対して前記移動面に沿って微動することを再度許容する第2微動許容工程と、前記昇降部による前記上スピンドルの上昇によって前記上スピンドルの前記挿入部を前記下スピンドルの前記受入部から脱離する脱離工程と、を備える。
【0023】
本方法によれば、上スピンドルの挿入部の挿入時に、挿入部の中心軸と受入部の中心軸とがずれている場合であっても、挿入部の外周面が受入部の内周面に沿ってスムーズに挿入されるように、上スピンドルが前記移動面に沿って微動することができ、中心軸を合わせるために必要であった多くの手間と作業時間を削減でき、速やかにタイヤ試験を開始することができる。この結果、挿入部の挿入時に、嵌め合い面にかじりや焼き付きが生じて各スピンドルに傷が生じることを抑止することができる。また、挿入部の挿入後には、上スピンドルの微動が阻止されるため、タイヤの試験時に下スピンドルおよび上スピンドルを軸心を保ったまま回転させることができる。これにより、タイヤのユニフォミティほかの所定試験の繰り返し精度が向上する。
【0024】
上記の構成において、前記第1微動許容工程および前記第2微動許容工程は、第1支持体が前記昇降部に固定された固定部に対して前記移動面に沿った第1方向に相対移動することを許容するとともに、前記上スピンドルを支持する第2支持体が前記第1支持体に対して前記移動面に沿った前記第1方向と直交する第2方向に相対移動することを許容することを含み、前記微動阻止工程は、前記第1支持体が前記固定部に対して前記第1方向に相対移動することを阻止するとともに、前記第2支持体が前記第1支持体に対して前記第2方向に相対移動することを阻止することを含むものでもよい。
【0025】
本方法によれば、第1支持体および第2支持体がもたらす互いに直交する2つの方向への上スピンドルの移動構造によって、上スピンドルの前記移動面に沿った微動を容易かつスムーズに実現することができ、機械を停止させることなく確実な操業ができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上下スピンドルの嵌合時の損傷を抑制しながら、効率的に両スピンドルを嵌合させ試験を開始することが可能なタイヤ試験機およびタイヤ試験方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の下スピンドルおよび上スピンドルに下リムおよび上リムがそれぞれ支持された状態の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドルの上部周辺の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドルの上部周辺の側断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドルの上部周辺の断面斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドルの上部周辺の別の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のタイヤ試験機1の一実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1、
図2および
図3は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の平面図、側面図および正面図である。なお、以後の各図面では、タイヤ試験機1の前方に立つ作業者の視点を基準に、前後、上下および左右の各方向が示されているが、当該方向は本発明に係るタイヤ試験機の使用態様を限定するものではない。
【0029】
タイヤ試験機1は、本体フレーム1Sと、スピンドル2と、下スピンドル回転駆動部2K(
図3)(回転機構)と、タイヤ搬送機構3と、回転ドラム4と、昇降ユニット50(昇降部)と、マーキングユニット60(
図3)と、不図示のドラム移動機構およびロードセルと、を備える。タイヤ試験機1は、所定のタイヤ試験位置Pにおいてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記タイヤ回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行う。
【0030】
本体フレーム1Sは、タイヤ試験機1の略中央部に配置されており、その内部にタイヤ試験位置Pが形成されている。また、本体フレーム1Sは、スピンドル2を回転可能に支持する。本体フレーム1Sは、下フレーム100(
図2、
図3)と、ベースフレーム101(
図2)と、アッパーフレーム102(
図2)と、を有する。
【0031】
スピンドル2は、タイヤ試験位置Pにおいて上下方向に延びる基準回転中心軸2S回りにタイヤを回転可能に支持する。スピンドル2は、下スピンドル21と、上スピンドル22と、を有する(
図3)。
【0032】
タイヤ搬送機構3は、平面視でタイヤ試験位置Pを通るように水平な搬送方向D1に沿って配設されており、水平姿勢とされたタイヤをタイヤ試験位置Pに搬入することが可能である一方、タイヤをタイヤ試験位置Pから搬送方向D1に沿って搬出することが可能とされている。
【0033】
回転ドラム4は、本体フレーム1Sのベースフレーム101の内側に回転可能に支持されている。回転ドラム4は、タイヤ搬送機構3で搬送されるタイヤの搬送方向D1とほぼ直交する方向(前後方向)において、タイヤ試験位置P(スピンドル2)に所定の間隔をおいて対向して配置されている。この回転ドラム4は、スピンドル2の基準回転中心軸2Sと平行な方向(上下方向)に延びる回転中心軸回りに回転自在とされた円筒状の部材であり、その外周面にはタイヤが走行する模擬路面4A(
図1)が形成されている。模擬路面4Aがタイヤの外周面に当接することで、回転ドラム4がタイヤに従動して回転する。回転ドラム4の側方にはこの回転ドラム4を水平方向に押し動かす不図示のドラム移動機構が設けられており、ドラム移動機構は、回転ドラム4をタイヤに対して接近および離脱することができる。
【0034】
ロードセル(荷重測定器)は、回転ドラム4の回転中心軸の上下延長線上にそれぞれ配置され、回転ドラム4がタイヤから受ける荷重を測定する。ロードセルは、回転ドラム4を本体フレーム1Sに支持するために用いられており、回転ドラム4の上部と下部とに1つずつ配備され、回転ドラム4に作用するタイヤ荷重方向とタイヤ軸心方向の2軸の荷重を測定する。すなわち、本実施形態に係るタイヤ試験機1は、回転ドラム4をスピンドル2に近接させ、回転ドラム4の模擬路面4Aにタイヤを接触させつつタイヤ回転時の荷重変動をロードセルで計測することで、タイヤの均一性を評価するタイヤユニフォミティマシンとして構成されている。
【0035】
タイヤ搬送機構3は、ベルトコンベア式の構造からなる。タイヤ搬送機構3は、搬入コンベア7と、搬送コンベア8と、搬出コンベア9と、搬入フレーム7Sと、搬出フレーム9Sと、を有する。
図1では、タイヤが右側(上流側)から左側(下流側)に向かって搬送される。
【0036】
搬入コンベア7は、タイヤをタイヤ試験位置Pに向かって搬送する。搬入コンベア7によって搬送されたタイヤは、搬送コンベア8の上流側部分に受け渡される。搬送コンベア8は、搬入コンベア7からタイヤを受け入れるとともに、タイヤをタイヤ試験位置Pに搬入する。搬送コンベア8は、タイヤをタイヤ試験位置Pにおいて一時停止させる。その後、タイヤに所定の試験が施されると、搬送コンベア8は、タイヤを更に下流側に搬送する。搬送コンベア8によって搬送されたタイヤは、搬出コンベア9に受け渡される。搬出コンベア9は、搬送コンベア8からタイヤを受け入れるとともに、タイヤを更に下流側に搬送する。
【0037】
なお、搬入コンベア7、搬送コンベア8および搬出コンベア9は、タイヤ搬送機構3が有する不図示の駆動部によって駆動される。更に、搬送コンベア8は、前記駆動部に含まれる不図示のエアシリンダよって昇降可能とされている。タイヤ試験位置Pに搬入されたタイヤは、搬送コンベア8の下降によって下スピンドル21に受け渡される。
図3では、搬送コンベア8が最も下方の下方位置に移動した状態が示されている。搬送コンベア8が最も上方の上方位置に移動されると、搬送コンベア8は搬入コンベア7および搬出コンベア9と同じ高さに配置され、タイヤを搬送可能となる。
【0038】
搬入フレーム7Sは、搬入コンベア7を支持しており、搬出フレーム9Sは、搬出コンベア9を支持している。また、搬出フレーム9Sは、タイヤ試験位置Pにおける試験結果に応じてタイヤに所定のマーキングを施すマーキングユニット60(
図3)も支持している。
【0039】
昇降ユニット50は、昇降フレーム501により上スピンドル22を昇降可能かつ回転可能に支持する。特に、昇降ユニット50は、上スピンドル22の後記の挿入部222を下スピンドル21の受入部Xに対して挿脱するように、上スピンドル22を下スピンドル21に対して昇降させる。昇降ユニット50は、
図2のアッパーフレーム102の一対のガイドフレーム102Aに沿って上下に移動することが可能である。昇降ユニット50とガイドフレーム102Aとの間には不図示のリニアガイドが設けられている。このため、昇降ユニット50の上下方向以外の方向の動きが拘束される。
【0040】
また、昇降ユニット50は、複数のタイヤストリッパTS(
図3)を有する。タイヤストリッパTSは、タイヤと上リム62とが密着して離れないことを防止するために、タイヤを上から押し付けて、上リム62から引きはがす機能を有する。タイヤストリッパTSの下端部には、タイヤが下スピンドル21と共に回転することに対応して、回転可能なローラが配置されている。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機1の下スピンドル21および上スピンドル22に下リム61および上リム62がそれぞれ支持された状態の側断面図である。
図4の下リム61と上リム62との間に、タイヤが配置される。なお、
図4と
図1乃至
図3との間で、同一の符号を付したものは同一のものであるので説明を省略する。
【0042】
なお、タイヤがタイヤ試験位置Pに配置されると、タイヤのタイヤ回転中心軸がスピンドル2の基準回転中心軸2Sと合致する。タイヤ試験機1は、タイヤ試験位置Pにおいて試験を受けるタイヤのサイズ(外径、内径、幅)、形状などに応じて、複数種の下リム61および上リム62を有しており、各タイヤに応じて適切な下リム61および上リム62がタイヤ試験位置Pに配置される。
【0043】
下スピンドル21は、下保持フランジ210A(下保持部)を有する。下保持フランジ210Aは、前記水平姿勢とされたタイヤのうち下側に位置するビード部である下ビード部に装着される下リム61を保持する。下スピンドル21は、前記下リム61を介してタイヤTが基準回転中心軸2S回りに回転可能なように前記タイヤを支持する。
【0044】
下スピンドル21は、タイヤに対する試験時に、
図3の下スピンドル回転駆動部2Kによって基準回転中心軸2S回りに回転駆動される。下スピンドル回転駆動部2Kは、プーリ、ベルト、減速機、下スピンドル駆動モータを含む。また、下スピンドル21は、上スピンドル22と下スピンドル21との回転位相(回転位置)を合わせる際にも、下スピンドル回転駆動部2Kによって回転される。詳しくは、下スピンドル回転駆動部2Kは、後記のロータリエンコーダ81の検知結果に応じて上スピンドル22の挿入部222が特定の回転位置に至るまで、上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対回転させることができる。この際、上スピンドル22の回転が阻止された状態で、下スピンドル21が回転されることで、上記の相対回転が実現される。
【0045】
上スピンドル22は、上保持フランジ221(上保持部)を有する。上保持フランジ221は、前記水平姿勢とされたタイヤTのうち上側に位置するビード部である上ビード部に装着される上リム62を保持する。上スピンドル22は、前記上リム62を介してタイヤが基準回転中心軸2S回りに回転可能なようにタイヤを支持する。
【0046】
上スピンドル22は、軸部22S(
図6)と、上保持フランジ221(
図4)と、下スピンドル21に挿入される挿入部222と、ガイドピース223と、上スピンドル係合部224と、を有する。
【0047】
軸部22S(
図6)は、上スピンドル22の基端部(上端部)を構成する円柱形状を有している。なお、軸部22Sは、前述の昇降ユニット50に支持されている。
【0048】
上保持フランジ221(
図4)は、軸部22Sの下端に接続されており、リング状の上リム62を保持する機能を有している。
【0049】
挿入部222は、上保持フランジ221に下方から接続されている。挿入部222は、上下方向に延びる中心軸を含む円柱形状を有している。なお、挿入部222がリング状の上リム62の内部に挿通されることで、上リム62が上保持フランジ221に到達し保持される。
【0050】
ガイドピース223は、挿入部222の下端部に複数のボルトによって固定されており、挿入部222よりも先に下スピンドル21の後記の内部空間Sに挿入される。
【0051】
上スピンドル係合部224は、挿入部222の外周面の上下方向における略中央部に配置されている。上スピンドル係合部224は、複数の挿入係合部224Aと、複数の挿入凹部とを有する。
【0052】
複数の挿入係合部224Aは、基準回転中心軸2Sの軸方向にそれぞれ延びるとともにタイヤの回転方向に互いに間隔をおいて配置され、挿入部222の外周面の一部をそれぞれ構成する。複数の挿入係合部224Aは、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数の係合突起をそれぞれ含む。
【0053】
一方、複数の挿入凹部は、複数の挿入係合部224Aのうち前記回転方向において互いに隣接する挿入係合部224A同士の間に前記軸方向に延びるようにそれぞれ配置され、挿入部222の外周面の一部を構成する。複数の挿入凹部は、前記軸方向から見て複数の挿入係合部224Aに対して径方向内側に窪んだ形状をそれぞれ有する。なお、上記の複数の係合突起間に形成された空間(溝)の両端部は、隣接する挿入凹部によって画定される空間にそれぞれ連通している。
【0054】
なお、前述のガイドピース223も、後記のロックピース250を通過するために、平面視で、上記の複数の挿入係合部224Aおよび複数の挿入凹部に対応する形状を有している。
【0055】
更に、
図4に示すように、挿入部222は、エア導入部225A、複数のエア供給部225Bを有する。エア導入部225Aは、不図示のエア供給機構に連通しており、エア供給機構からタイヤ内(タイヤ内部空間)に供給するエアを受け入れる。複数のエア供給部225Bは、エア導入部225Aに連通し、エア導入部225Aから放射状に延びている。各エア供給部225Bは、前記タイヤ内部空間に連通し、エアを供給する。なお、エア導入部225Aおよび複数のエア供給部225Bは、タイヤ内部空間にエアが充分に充填された際に、タイヤの破裂を防止するため、過剰なエアを排出させる排出部としても機能し、これらの周辺には前記エアの排出を制御する不図示の制御弁が配置されている。
【0056】
図4を参照して、下スピンドル21は、円筒状のスピンドル本体210と、スピンドル本体210に固定されたリング状のロックピース250と、を有する。スピンドル本体210は、円筒状の本体内周面210Sを有する。また、ロックピース250も、円筒状の内周面を有する。本体内周面210Sおよびロックピース250の内周面は、円筒状のスピンドル内周面21Sを構成する。スピンドル内周面21Sは、前記軸方向において上スピンドル22の挿入部222に対向する開口部(
図4)と当該開口部を通じて挿入部222を受け入れ可能な内部空間Sとをそれぞれ画定する。なお、スピンドル内周面21Sの内径は、挿入部222の外径よりも僅かに大きく設定されている。また、下スピンドル21の前記開口部および内部空間Sは、本発明の受入部X(
図4)を構成する。当該受入部Xは、円筒形状を有し、挿入部222を受け入れ可能である。
【0057】
スピンドル本体210は、円筒状の下保持フランジ210Aと、円筒状の下スピンドル本体部210Bとを含み、上下二分割構造を有している。
図4に示すように、下保持フランジ210Aおよび下スピンドル本体部210Bは、複数のボルトVによって互いに連結されている。下保持フランジ210Aは、下リム61を下方から保持する下保持部として機能する。下保持フランジ210Aの上側部分は、下保持フランジ210Aの下側部分よりも小さな外径を有する。リング形状を有する下リム61の中心に円筒状の下保持フランジ210Aの上側部分が挿通されることで、下保持フランジ210Aの下側部分(フランジ部分)が下リム61を保持する。
【0058】
ロックピース250は、下保持フランジ210Aと下スピンドル本体部210Bとの間に介在するように配置される。ロックピース250は、上スピンドル22を前記軸方向において拘束するように、前記内部空間Sに挿入された上スピンドル22をロックすることが可能とされている。換言すれば、ロックピース250および前述の上スピンドル係合部224は、本発明のロック部2Rを構成する。ロック部2Rは、下リム61と上リム62との間隔が所定の間隔になるように、挿入部222と受入部Xとをロックすることが可能な構造である。なお、ロックピース250は、スピンドル本体210と一体で基準回転中心軸2S回りに回転する。ロックピース250の周囲には、エア漏れを防ぐシール部材Jが配置されている(
図4)。
【0059】
ロックピース250は、複数のロック係合部250Aと、複数のロック凹部とを有する。
【0060】
複数のロック係合部250Aは、スピンドル内周面21Sにおいて前記軸方向にそれぞれ延びるとともに前記回転方向に互いに間隔をおいて配置されている。複数のロック係合部250Aは、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数のロック用突起をそれぞれ含む。
【0061】
複数のロック凹部は、前記複数のロック係合部250Aのうち前記回転方向において互いに隣接するロック係合部250A同士の間に前記軸方向に延びるように前記スピンドル内周面21Sにそれぞれ配置され、前記軸方向から見て前記複数のロック係合部250Aに対して径方向外側に窪んだ形状をそれぞれ有する。
【0062】
なお、ロック係合部250Aの内径は、前述の挿入凹部224Bの外径よりも大きくかつ挿入係合部224Aの外径よりも小さく、ロック凹部250Bの内径は、前述の挿入係合部224Aの外径よりも大きく設定されている。これらの大きさの相互関係は、不図示のエア供給機構によりタイヤ内部空間に供給されたエアによって、上スピンドル22および下スピンドル21に生じる大きな軸方向の力に耐えうるように設定される。
【0063】
上記のように、上スピンドル22の上スピンドル係合部224および下スピンドル21のロックピース250が、平面視で、同様の凹凸構造を有していることで、上スピンドル22と下スピンドル21とを軸方向における所定の相対位置に固定することができる。換言すれば、前記中心軸に沿って見た場合、挿入部222が受入部Xに対して前記中心軸回りの所定の回転位置に配置されたときに挿入部222が受入部Xに挿入可能である。そして、ロック部2R(上スピンドル係合部224、ロック係合部250A)は、挿入部222が受入部Xに挿入され前記中心軸回りに所定の角度分だけ相対回転されると、挿入部222と受入部Xとをロックすることが可能である。
【0064】
特に、本実施形態では、上スピンドル係合部224の複数の挿入係合部224Aの複数の係合突起は、前記回転方向に進むにつれて前記軸方向における一の方向(上方向)に傾斜するように基準回転中心軸2Sを中心とした螺旋形状を有している。一方、下スピンドル21の複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起は、前記回転方向に進むにつれて前記一の方向に傾斜するように基準回転中心軸2Sを中心とした螺旋形状であって前記回転方向に沿って前記複数の係合突起と係合可能な螺旋形状を有している。換言すれば、上記の複数の係合突起および複数のロック用突起は、基準回転中心軸2Sを中心として所定のリードで形成されたねじの一部(ねじノコ歯)からなる。
【0065】
なお、
図4に示すように、下スピンドル21および上スピンドル22の各寸法は、第1支持部21P、第2支持部21Qの二か所において嵌め合うように設定されている。
【0066】
図5、
図6は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の上スピンドル22の上部周辺の斜視図、側断面図である。
図7、
図8は、それぞれ、上スピンドル22の上部周辺の断面斜視図である。タイヤ試験機1は、
図5に示す上スピンドル回転支持部220を更に備える。
【0067】
図5および
図6を参照して、前述の昇降ユニット50は、昇降フレーム501と、ボールねじ502と、ナット部503とを有する。昇降フレーム501は、上スピンドル回転支持部220を介して上スピンドル22を間接的に支持する。昇降フレーム501は、水平方向に延びるベースフレーム501Hを有する。ボールねじ502は、前述のガイドフレーム102Aに上下方向に沿って配置されている。ナット部503は、ボールねじ502に螺合されるとともに、昇降フレーム501に固定されている。不図示の駆動部がボールねじ502を回転させると、ボールねじ502とナット部503とのねじ構造によってナット部503が昇降する。この結果、昇降フレーム501、上スピンドル回転支持部220を介して、上スピンドル22が昇降する。
【0068】
上スピンドル回転支持部220は、上記の昇降フレーム501に支持されている。上スピンドル回転支持部220は、下スピンドル21の受入部Xに対する上スピンドル22の挿入部222の挿入時に、上スピンドル22が挿入部222の中心軸と直交する移動面(前後左右方向)に沿って微動することを許容する一方、挿入部222の挿入後に上スピンドル22の前記微動を阻止することが可能なように、上スピンドル22を回転可能に支持する。
【0069】
上スピンドル回転支持部220は、テーブル51と、ベアリングハウジング52と、ディスク53と、アンギュラーベアリング55と、を備える。
【0070】
テーブル51は、昇降フレーム501のベースフレーム501H上に固定されている。テーブル51は、ベース板511(固定部)と、中間板512(第1支持体)と、上板513(第2支持体)と、複数の調整ボルト514と、複数のストッパ515と、ディスク53と、クロスローラガイド51A(第1クロスローラガイド)(
図5)と、クロスローラガイド51B(第2クロスローラガイド)(
図6)とを有する。
【0071】
ベース板511は、ベースフレーム501Hに固定された板材である。
図5に示すように、ベース板511は、複数の固定ボルト51Sによってベースフレーム501Hに固定されている。なお、ベース板511には、固定ボルト51Sの軸径よりも大きなボルト穴が開口されており、ベース板511のベースフレーム501Hに対する相対位置を調整することができる。
【0072】
中間板512は、ベース板511上に載置され、ベース板511に対して前後方向(移動面に沿った第1方向)に相対移動可能とされている。
図5に示すように、左右一対のクロスローラガイド51Aが、ベース板511と中間板512との間に介在することで、中間板512の移動が実現される。クロスローラガイド51Aは、クロスローラベアリングを含むリニアガイドである。
【0073】
上板513は、中間板512上に載置され、中間板512に対して左右方向(移動面に沿った前記第1方向と直交する第2方向)に相対移動可能であり、ベアリングハウジング52およびディスク53を介して、上スピンドル22を支持する。
図6に示すように、前後一対のクロスローラガイド51Bが、上板513と中間板512との間に介在することで、上板513の移動が実現される。クロスローラガイド51Bも、クロスローラベアリングを含むリニアガイドである。
【0074】
複数の調整ボルト514(
図5、
図8)は、ベース板511のベースフレーム501Hに対する初期位置を調整する。前述の固定ボルト51Sを緩めた状態で、調整ボルト514の締め込み量を変化させることで、ベース板511がベースフレーム501Hに対して、前後方向および左右方向に微動する。その後、固定ボルト51Sを強く締めこむことで、ベース板511の初期位置を固定することができる。
【0075】
ストッパ515(
図5、
図7)は、前面と左右面に2個ずつ計6個設けられており、上記のベース板511に対する中間板512、上板513の初期位置を調整する際に装着される。前面のストッパ515には図示されているように上部にネジ穴が設けられており、このネジ穴に嵌めたボルトを調整することで位置調整をおこなう。また、ストッパ515は、裏返して装着されることで、中間板512、上板513が狙いの可動範囲を超えて大きく移動することを防止する。
【0076】
ベアリングハウジング52は、テーブル51の上板513に固定されている。ベアリングハウジング52は、上下一対のアンギュラーベアリング55(アンギュラー玉軸受)を保持する(
図6)。これらの一対のアンギュラーベアリング55は、互いの正面が対向するように配置されており(正面組み合わせ)、上スピンドル22の軸部22Sを基準回転中心軸2S回りに回転可能に支持する。これにより、アンギュラーベアリング55は、ラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に支えることができ、かつ所望の方向にある程度傾くことができるため、上スピンドル22の微動と相乗的に作用して、上スピンドル22の昇降時に発生するキズを防止することができる。
【0077】
ディスク53は、ベアリングハウジング52の上方に配置されている。ディスク53は、上スピンドル22の軸部22Sと一体回転可能となるように、軸部22Sに固定されている。
【0078】
更に、
図5に示すように、上スピンドル回転支持部220は、回転防止用エアシリンダ71(回転拘束部)と、微動防止用エアシリンダ72と、ロータリエンコーダ81(回転検知部)と、第1カップリング82と、ベアリングユニット83と、第2カップリング84と、下降検知センサ56(
図8)と、を備える。
【0079】
図8に示すように、回転防止用エアシリンダ71は、上スピンドル22を所定の回転位置に拘束することができる。回転防止用エアシリンダ71は、シリンダ本体71Aと、ピストン71Bと、回転防止ストッパピン71Sとを有する。シリンダ本体71Aは、ベアリングハウジング52に固定されている。ピストン71Bは、エアの供給を受けることで、シリンダ本体71Aに対して上下方向に相対移動することができる。回転防止ストッパピン71Sは、ピストン71Bの先端部に固定されている。
【0080】
一方、ディスク53にはディスク孔部53Hが形成され、ベアリングハウジング52にはハウジング孔部52Hが形成されている。なお、各孔部が樹脂などで構成され予め嵌め込まれた円筒状のブッシュを有することで、各孔部および回転防止ストッパピン71Sの損傷が防止される。両孔部は回転防止ストッパピン71Sの外径よりも大きな内径を有する。ピストン71Bがシリンダ本体71Aに対して下方向に相対移動すると、回転防止ストッパピン71Sがディスク孔部53Hおよびハウジング孔部52Hに順に挿通される。この結果、ディスク53の回転が拘束されることで、上スピンドル22の回転が拘束される。一方、この状態から、ピストン71Bがシリンダ本体71Aに対して上方向に相対移動すると、回転防止ストッパピン71Sがハウジング孔部52Hおよびディスク孔部53Hから順に脱離される。この結果、ディスク53の回転が許容されることで、上スピンドル22の回転が許容される。なお、回転防止ストッパピン71Sは、
図8の下降検知センサ56によって検知される。この結果、回転防止ストッパピン71Sが上記の各ピン孔に確実に挿入されていることを検知できる。
【0081】
図7に示すように、微動防止用エアシリンダ72は、下スピンドル21の受入部Xに対する上スピンドル22の挿入部222の挿入時に、上スピンドル22が挿入部222の中心軸と直交する移動面(水平面、前後左右方向)に沿って微動することを許容する。また、微動防止用エアシリンダ72は、挿入部222の挿入後に上スピンドル22の前記微動を阻止する。具体的に、微動防止用エアシリンダ72は、シリンダ本体72Aと、ピストン72Bと、微動防止ストッパピン72S(移動阻止ピン)とを有する。シリンダ本体72Aは、ベアリングハウジング52に固定されている。ピストン72Bは、エアの供給を受けることで、シリンダ本体72Aに対して上下方向に相対移動することができる。微動防止ストッパピン72Sは、ピストン72Bの先端部に固定されている。
【0082】
一方、
図7に示すように、ベース板511には孔部511H(固定ピン孔)が形成され、中間板512には孔部512H(第1ピン孔)が形成され、上板513には孔部513H(第2ピン孔)が形成されている。なお、各孔部が樹脂などで構成され予め嵌め込まれた円筒状のブッシュを有することで、各孔部および微動防止ストッパピン72Sの損傷が防止される。これらの孔部は微動防止ストッパピン72Sの外径よりも大きな内径を有する。ピストン72Bがシリンダ本体72Aに対して下方向に相対移動すると、微動防止ストッパピン72Sが孔部513H、512H、511Hに順に挿通される。この結果、ベース板511に対する中間板512の相対移動(微動)、中間板512に対する上板513の相対移動がそれぞれ阻止されることで、上スピンドル22の微動が阻止される。
【0083】
一方、上記の状態から、ピストン72Bがシリンダ本体72Aに対して上方向に相対移動すると、微動防止ストッパピン72Sが孔部511H、512H、513Hから順に脱離される。この結果、中間板512、上板513の前記相対移動が許容されることで、上スピンドル22の微動が許容される。
【0084】
ロータリエンコーダ81(
図5、
図6)は、上スピンドル22の前記中心軸回りの回転位置を検知することが可能である。
【0085】
第1カップリング82は、ロータリエンコーダ81とベアリングユニット83とを連結する。
【0086】
ベアリングユニット83は、昇降フレーム501に固定され、上スピンドル22の軸部22Sを回転可能に支持する。
【0087】
第2カップリング84は、ベアリングユニット83と軸部22Sの上端部とを連結する。
【0088】
<事前調整作業>
タイヤ試験の事前調整作業として、まず初期位置出し作業を行う。具体的に、作業者は、前述の複数のストッパ515を取り付けることで、ベース板511に対して中間板512および上板513が初期位置に配置されるように調整する。なお、初期位置は、設計的に決められた中間板512、上板513の可動域の中央位置であり、回転防止ストッパピン71Sが各孔部に挿入可能な位置である。この初期位置を設定したのち、回転防止用エアシリンダ71を作動させて回転防止ストッパピン71Sを各孔部に挿入する。次に、上スピンドル22の位置調整作業を行う。具体的に、下スピンドル21、上スピンドル22の各中心軸が合致するように、複数の調整ボルト514を用いて上スピンドル22の位置を調整する。次に、複数のストッパ515を裏返して装着しなおす。この結果、中間板512、上板513の移動ストロークが制限される。なお、上記の事前調整作業の手順は必須なものでなく、一度事前調整が完了したら再度行う必要は無い。また、他の手順、作業内容が行われてもよい。
【0089】
<試験の手順>
次に、タイヤに対する試験を行う手順について説明する。なお、下スピンドル21の回転位相は予め、上スピンドル22と嵌め合う位相に設定されている。また、上スピンドル回転支持部220では、回転防止ストッパピン71Sが各孔部に挿入され、中間板512、上板513が微動可能なように微動防止ストッパピン72Sは各孔部から脱離されている。
【0090】
上記の状態で、タイヤが搬入コンベア7、搬送コンベア8で搬入され、タイヤ試験位置P(
図1)で停止される。
【0091】
次に、搬送コンベア8がタイヤと共に下降し、タイヤが下リム61の上に載置される。更に、搬送コンベア8が、
図3の位置に下降し停止する。
【0092】
次に、昇降ユニット50によって、上スピンドル22が下降され、挿入部222が下スピンドル21の受入部Xに挿入される。予め設定されたリム幅に対応する位置で、上スピンドル22の下降が停止される。この際、タイヤのたわみにより、タイヤと上リムとの間にはわずかに隙間が形成される。そして、タイヤストリッパTSが下降され、タイヤを上から押し付ける。
【0093】
次に、下スピンドル回転駆動部2Kによって下スピンドル21が回転され、挿入係合部224Aとロック係合部250Aとが嵌合する(スピンドルチャックロック)。この際、
タイヤと上リム62とが接触していると、タイヤのビード部に傷がつくことや、タイヤがねじれることがあるため、上記のタイヤストリッパTSの下端部をタイヤに押し付けて、タイヤと上リム62とが接触することを抑止する。
【0094】
更に、昇降ユニット50が上スピンドル22を少し持ち上げて、挿入係合部224Aおよびロック係合部250Aの各歯同士を接触させる。この結果、後のタイヤインフレーション時に発生する軸力によって、各歯が損傷することが防止される(衝撃力緩和対策)。その後、タイヤストリッパTSが、タイヤから離間するように上昇する。
【0095】
次に、微動防止用エアシリンダ72が作動し、微動防止ストッパピン72Sが各孔部に挿入される。この結果、中間板512、上板513の移動、すなわち上スピンドル22の微動が阻止される。
【0096】
次に、
図4のエア導入部225A、エア供給部225Bを通じて、タイヤ内にエアが導入される(タイヤインフレーション)。
【0097】
次に、回転防止用エアシリンダ71が作動し、回転防止ストッパピン71Sが各孔部から脱離される。
【0098】
次に、下スピンドル回転駆動部2Kが下スピンドル21を回転させることで、下スピンドル21、タイヤ、上スピンドル22が一体で回転する。そして、回転ドラム4が前進され、タイヤに所定の荷重が掛かりながら、タイヤおよび回転ドラム4が回転する。その後、タイヤが正回転した状態で各種の計測データがサンプリングされ、次に逆回転した状態で同様に計測データがサンプリングされる。これらの計測データが取得されると、回転ドラム4がタイヤから離間するように後退する。
【0099】
次に、ロータリエンコーダ81の検知結果に応じて、回転防止ストッパピン71Sが各孔部に挿入可能な回転位相となるように、下スピンドル21の回転が停止される。そして、回転防止用エアシリンダ71が作動し、回転防止ストッパピン71Sが各孔部に挿入される。
【0100】
次に、タイヤの内部からエアが排出される(タイヤデフレーション)。
【0101】
次に、微動防止用エアシリンダ72が作動し、微動防止ストッパピン72Sが各孔部から脱離される。そして、タイヤストリッパTSが再び下降する。
【0102】
次に、上スピンドル22の回転が阻止された状態で下スピンドル回転駆動部2Kが下スピンドル21を回転させ、挿入係合部224Aとロック係合部250Aとの係合を解除する(スピンドルロアンロック状態)。この結果、下スピンドル21に対する上スピンドル22の昇降が可能になる。
【0103】
次に、昇降ユニット50が上スピンドル22を上昇させるとともに、タイヤストリッパTSが上昇する。
【0104】
そして、上リム62とタイヤ、下スピンドル21と上スピンドル22とが完全に離れる程度まで上スピンドル22が上昇すると、所定のマーキング位相位置に至るまで、下スピンドル回転駆動部2Kが下スピンドル21をタイヤとともに回転させ、停止する。
【0105】
次に、搬送コンベア8が上昇し、タイヤが下リム61から搬送コンベア8に受け渡される。その後、搬送コンベア8、搬出コンベア9によってタイヤが搬出されると同時に、下スピンドル回転駆動部2Kが下スピンドル21を回転させ、上スピンドル22とはめあい可能な位相に再び配置される。
【0106】
上記のように、本実施形態では、上スピンドル回転支持部220が、受入部Xに対する挿入部222の挿入時に上スピンドル22が挿入部222の中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する一方、挿入部222の挿入後に上スピンドル22の前記微動を阻止することが可能なように、上スピンドル22を回転可能に支持する。
【0107】
このため、挿入部222の挿入時に、挿入部222の中心軸と受入部Xの中心軸とがずれている場合であっても、挿入部222の外周面が受入部Xの内周面に沿って効率よくスムーズに挿入されるように、上スピンドル22が前記移動面に沿って微動することができる。この結果、挿入部222の挿入時に、嵌め合い面にかじりや焼き付きが生じて各スピンドルに傷が生じることを抑止することができ、中心軸を合わせるために必要であった多くの手間と作業時間を削減でき、速やかにタイヤ試験を開始することができる。
【0108】
また、挿入部222の挿入後には、上スピンドル22の微動が阻止されるため、タイヤの試験時に下スピンドル21および上スピンドル22を安定して一体で回転させることができる。これにより、タイヤのユニフォミティほかの所定試験の繰り返し精度が向上する。
【0109】
特に、本実施形態のように、挿入係合部224Aおよびロック係合部250Aがノコ歯形状からなる場合、前述のタイヤインフレーション時に、各歯に大きな軸力が作用する。この際、歯同士の接触が回転方向に沿って部分的に不均一になることで、下スピンドル21および上スピンドル22の中心軸がずれる可能性がある。このような場合でも、チャックロック動作後に微動防止ストッパピン72Sを挿入することで、下スピンドル21および上スピンドル22の中心軸を合わせることができる。
【0110】
更に、本発明の発明者は、上記のような構成を採用することで、RFV(タイヤに一定の荷重をかけたときに発生するタイヤ半径方向の力の変動)とLFV(タイヤに一定の荷重をかけたときに発生するタイヤ軸方向の力の変動)が、タイヤ試験機1として許容される範囲内に収まることを確認するに至った。具体的に、中間板512、上板513を含む微動機構だけを設置した場合に比べて、前記微動機構と微動防止ストッパピン72Sとを組み合わせた場合には、RFVについては、繰返し精度σ[N]において10~30%程度向上することが可能になるとともに、LFVについては40%程度向上させることが可能になった。
【0111】
また、本実施形態では、上スピンドル回転支持部220が、ベース板511と、前後方向に移動可能な中間板512と、左右方向に移動可能な上板513とを含む。このため、互いに直交する2つの方向への上スピンドル22の移動構造によって、上スピンドル22の移動面に沿った移動を簡単な構成で容易かつスムーズに実現することができる。また、各板部に形成された孔部に微動防止ストッパピン72Sを挿入することで、上スピンドル22の微動を容易に阻止することができる。これは、中間板512および上板513が互いに直交する2つの方向へのみ移動することができるので、回転方向のずれが生じず微動防止ストッパピン72Sを挿入しやすいことによる。
【0112】
特に、本実施形態では、上スピンドル22の微動を実現するために、中間板512および上板513が、互いに直交する方向に移動可能とされている。前述のように、上スピンドル22の挿入部222を下スピンドル21の受入部Xに挿入した後、上下スピンドルの歯と歯を合わせるためには、挿入係合部224Aの歯に対してロック係合部250Aの歯が合うように下スピンドル回転駆動部2Kが下スピンドル21を回転させる(チャックロック動作)。この時に、互いの嵌め合い面の摩擦力によって上スピンドル22が下スピンドル21に連れ回りすることを、予め挿入される回転防止ストッパピン71Sによって防止することができる。この際、上スピンドル22があらゆる方向に自在に微動可能であると、上スピンドル22が回転方向に移動してしまい、回転防止ストッパピン71Sが各孔部に挿入できない可能性があるが、本実施形態では、前述のように、直交する2つの方向に移動が制限されているため、上記のような回転防止ストッパピン71Sの挿入不具合を回避することができる。
【0113】
また、本実施形態では、上記の中間板512、上板513の移動が、クロスローラガイドによって実現されている。このため、公知の金属摺動ガイドや無給油低摩擦プレート(オイレスプレート)のような摺動ガイドと比較して摩擦力を小さくすることができるため、上スピンドル22の微動をスムーズに実現し、各スピンドルに傷が入ることをより確実に抑止することができる。加えて、クロスローラガイドは許容荷重が大きいので、試験時に大きな荷重がかかるタイヤ試験機1の微動機構として極めて好適である。
【0114】
また、タイヤ試験機1では、作業時の突発的な動作異常によって、上下スピンドルが衝突する可能性を完全に排除することは難しい。このような動作異常に対して、中間板512、上板513の移動のために許容荷重の小さいガイドを用いると、ガイド自体が破損する可能性がある。このため、許容荷重が大きなガイドを用いることが望ましい。ガイドの一例として、ブロックとレールとからなるボールリニアガイドを用いても良い。但し、必要な許容荷重を持つボールリニアガイドには比較的大きなスペースが要求されるため、上スピンドル回転支持部220内での配置領域を選択する必要がある。また、耐荷重の大きな転がりガイドとしてローラガイドが例示されるが、その中でも、クロスローラガイドは、簡単に移動方向を規制することが可能であるとともに、コンパクトであるため、上スピンドル回転支持部220内に容易に配置することが可能になる。
【0115】
また、本実施形態では、上スピンドル22を下降させて挿入部222を下スピンドル21の受入部Xに挿入する動作において、予め微動防止用エアシリンダ72の微動防止ストッパピン72Sを抜いた状態とし、中間板512、上板513が自在に動ける状態とされる。このため、仮に、昇降フレーム501をガイドするガイドフレーム102Aが基準回転中心軸2Sに対して傾いていたしても、中間板512、上板513が自在に動けることと、上スピンドル22を支持する上下一対のアンギュラーベアリングが正面組み合せとなっており上スピンドル22の傾きを吸収できるため、上スピンドル22の挿入部222が下スピンドル21の受入部Xに挿入され停止するまで、両スピンドルの第1支持部21P、第2支持部21Qのはめあい面に、大きな接触面圧が発生せず、傷やかじりが発生することが抑止される。
【0116】
また、本実施形態では、回転防止ストッパピン71Sが各孔部に挿入されることで、上スピンドル22を所定の回転位置に拘束して、上スピンドルの挿入動作を安定して行うことができる。また、回転防止ストッパピン71Sが脱離された状態で、上スピンドル22が回転した場合には、ロータリエンコーダ81の検知結果に基づいて上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対回転させることができる。このため、下スピンドル21と上スピンドル22とを互いの嵌め合い位置に安定して位置決めでき、機械を停止させることなく確実な操業ができる。
【0117】
また、本実施形態では、上スピンドル22の挿入部222が所定の位置まで挿入されると、挿入係合部224Aとロック係合部250Aとの各歯が噛み合うように、上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対回転させる。この際、下スピンドル回転駆動部2Kが下スピンドル21を受入部Xの中心軸回りに回転させることで、上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対回転させる。このように、下スピンドル21と上スピンドル22との相対的な回転位相の合わせ込みを、下スピンドル回転駆動部2Kによって実現することで、上下スピンドルの嵌め合いを簡単な工程で実現でき、かつ、上スピンドル22の回転装置を省略することができる。特に、タイヤ試験時に各スピンドルを回転させるための下スピンドル回転駆動部2Kを利用することで、タイヤ試験機1の装置構成を簡素化することができる。
【0118】
また、本実施形態では、上スピンドル22が、正面組み合わせとされた上下一対のアンギュラーベアリング55により回転可能に支持されている。このように配置された上下一対のアンギュラーベアリング55は、上スピンドル22にかかるラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に支えることができる。加えて、アンギュラーベアリング55の機構上の特性から、好きな方向にある程度自在に傾くことができる。これは、上スピンドル22の微動によるキズ防止効果と相乗的に作用して、上スピンドル22の昇降時に発生するキズをより確実に防止することができる。
【0119】
また、本実施形態では、タイヤに空気を充填した後、微動防止ストッパピン72Sを各孔部に挿入して、上スピンドル22が微動できないようにする。この結果、エア充填によって上下スピンドルに軸力が作用し、上下スピンドルの同軸度が悪くなっていたとしても、微動防止ストッパピン72Sによって上スピンドル22の傾きが強制的に初期位置に戻されるため、同軸度を矯正することができる。
【0120】
また、本実施形態では、タイヤを回転させながら各種データを計測する間、上スピンドル22は微動できないため、上スピンドル22が下スピンドル21に対して平行度を良好に保ったまま回転することが可能になり、繰り返し安定性のあるユニフォミティ計測結果を得ることができる。
【0121】
更に、本実施形態では、上記のように、タイヤに対する計測が終了し、前述のチャックロック状態を解除すると、微動防止ストッパピン72Sを先に抜いてから上スピンドル22を上昇させる。この結果、上下スピンドルの接触面圧が小さいままで、上スピンドル22が上昇するため、上昇時の傷等の発生を防止することができる。
【0122】
なお、上スピンドル22の位相が、回転防止ストッパピン71Sが入らない位相になった場合には、ロータリエンコーダ81の検知結果(位相)から上下スピンドルが嵌め合う位相を計算し、下スピンドル21をその位相に停止させて両スピンドルのチャッキングを行い、上下スピンドル間に発生する摩擦力を利用して上スピンドル22を回転防止ストッパピン71Sが入る位相まで回転させることで復旧することができる。
【0123】
なお、上記で説明したタイヤ試験機1の試験の手順は、以下のタイヤ試験方法を含む。当該方法は、第1相対回転阻止工程と、第1微動許容工程と、挿入工程と、微動阻止工程と、エア導入工程と、相対回転許容工程と、試験工程と、第2相対回転阻止工程と、エア排出工程と、第2微動許容工程と、脱離工程と、を備える。
【0124】
タイヤ試験機1は、円柱状の挿入部222を有し、前記タイヤに装着される上リム62を保持し、前記上リム62を介して前記タイヤを支持する上スピンドル22と、前記挿入部222を受け入れ可能な円筒状の受入部Xを有し、前記上リム62の反対側で前記タイヤに装着される下リム61を保持し、前記下リム61を介して前記タイヤを支持する下スピンドル21と、を備えている。
第1相対回転阻止工程では、前記上スピンドル22を昇降させることが可能な昇降ユニット50に対して、前記上スピンドル22が前記挿入部222の中心軸回りに相対回転することを阻止する。
第1微動許容工程では、前記下リム61と前記上リム62との間に前記タイヤを配置した状態で、前記上スピンドル22が前記下スピンドル21に対して前記挿入部222の中心軸と直交する移動面に沿って微動することを許容する。
挿入工程では、前記昇降ユニット50による前記上スピンドル22の下降によって前記上スピンドル22の前記挿入部222を前記下スピンドル21の前記受入部Xに挿入し、前記下リム61と前記上リム62とによって前記タイヤを挟持する。
微動阻止工程では、前記上スピンドル22の前記移動面に沿った微動を阻止する。
エア導入工程では、前記上リム62、前記タイヤおよび前記下リム61で囲まれた空間にエアを導入する。
相対回転許容工程では、前記昇降ユニット50に対して、前記上スピンドル22が前記挿入部222の中心軸回りに相対回転することを許容する。
試験工程では、前記タイヤを回転させて前記試験を行う。
第2相対回転阻止工程では、前記昇降ユニット50に対して、前記上スピンドル22が前記挿入部222の中心軸回りに相対回転することを再度阻止する。
エア排出工程では、前記空間からエアを排出する。
第2微動許容工程では、前記上スピンドル22が前記下スピンドル21に対して前記移動面に沿って微動することを再度許容する。
脱離工程では、前記昇降ユニット50による前記上スピンドル22の上昇によって前記上スピンドル22の前記挿入部222を前記下スピンドル21の前記受入部Xから脱離する。
【0125】
このような方法によれば、挿入部222の挿入時に、挿入部222の中心軸と受入部Xの中心軸とがずれている場合であっても、挿入部222が受入部Xにスムーズに挿入されるように、上スピンドル22が前記移動面に沿って微動することができ、中心軸を合わせるために必要であった多くの手間と作業時間を削減でき、速やかにタイヤ試験を開始することができる。この結果、挿入部222の挿入時に、嵌め合い面にかじりや焼き付きが生じて各スピンドルに傷が生じることを抑止することができる。また、挿入部222の挿入後には、上スピンドル22の微動が阻止されるため、タイヤの試験時に下スピンドル21および上スピンドル22を軸心を保ったまま回転させることができる。これにより、タイヤのユニフォミティほかの所定試験の繰り返し精度が向上する。
【0126】
なお、前記第1微動許容工程および前記第2微動許容工程は、中間板512が前記昇降ユニット50に固定されたベース板511に対して前記移動面に沿った第1方向に相対移動することを許容するとともに、前記上スピンドル22を支持する上板513が前記中間板512に対して前記移動面に沿った前記第1方向と直交する第2方向に相対移動することを許容することを含み、
前記微動阻止工程は、前記中間板512が前記ベース板511に対して前記第1方向に相対移動することを阻止するとともに、前記上板513が前記中間板512に対して前記第2方向に相対移動することを阻止することを含むものでもよい。
【0127】
このような方法によれば、互いに直交する2つの方向への上スピンドル22の移動構造によって、上スピンドル22の移動面に沿った移動を容易に実現することができ、機械を停止させることなく確実な操業ができる。
【0128】
以上、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機1について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態が可能である。
【0129】
(1)上記の実施形態では、ロックピース250が単一の部材から構成される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ロックピース250は、2以上の部材に分離されたものでもよく、また、基準回転中心軸2S回りの周方向に互いに間隔をおいて配置されるものでもよい。特に、ロックピース250のうち複数のロック係合部250Aにそれぞれ相当する複数の部材が、周方向に互いに間隔をおいてスピンドル本体210に装着され、当該複数の部材の間の空間が、ロック凹部として機能するものでもよい。
【0130】
(2)上スピンドル係合部224の複数の挿入係合部224Aの複数の係合突起は、基準回転中心軸2Sの軸方向と直交するように、前記回転方向に延びていてもよい。この場合、ロックピース250の複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起も、同様に、前記軸方向と直交するように、前記回転方向に延びていればよい。
【0131】
(3)上記の実施形態では、タイヤのユニフォミティを試験する装置を前提に説明したが、その他の各種タイヤ試験をおこなう装置であっても、本発明は適用可能である。例えば、タイヤのバランスを測定する装置に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 タイヤ試験機
1S 本体フレーム
2 スピンドル
21 下スピンドル
22 上スピンドル
222 挿入部
224 上スピンドル係合部
224A 挿入係合部
22S 軸部
220 上スピンドル回転支持部
250 ロックピース(ロック部)
250A ロック係合部(ロック部)
2K 下スピンドル回転駆動部(回転機構)
2R ロック部
2S 基準回転中心軸
3 タイヤ搬送機構
4 回転ドラム
50 昇降ユニット(昇降部)
501 昇降フレーム
501H ベースフレーム
51 テーブル
511 ベース板(固定部)
511H、512H、513H 孔部(固定ピン孔、第1ピン孔、第2ピン孔)
512 中間板(第1支持体)
513 上板(第2支持体)
51A、51B クロスローラガイド(第1クロスローラガイド、第2クロスローラガイド)
52 ベアリングハウジング
52H ハウジング孔部
53 ディスク
53H ディスク孔部
55 アンギュラーベアリング
61 下リム
62 上リム
71 回転防止用エアシリンダ(回転拘束部)
71S 回転防止ストッパピン
72 微動防止用エアシリンダ
72S 微動防止ストッパピン(移動阻止ピン)
81 ロータリエンコーダ(回転検知部)
P タイヤ試験位置
S 内部空間
X 受入部