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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099428
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】マイクロチャネル型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/00 20060101AFI20240718BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20240718BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240718BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240718BHJP
【FI】
F28F3/00 301Z
F28D9/00
H01M8/04 J
H01M8/0606
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003368
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰健
(72)【発明者】
【氏名】八木 裕
(72)【発明者】
【氏名】西原 達夫
(72)【発明者】
【氏名】三橋 顕一郎
【テーマコード(参考)】
3L103
5H127
【Fターム(参考)】
3L103AA08
3L103BB50
3L103CC27
3L103DD15
3L103DD55
5H127FF20
(57)【要約】
【課題】冷却媒体又は水素ガスが流れる複数の流路を有する層での熱応力の局所的で且つ集中的な発生を抑える。
【解決手段】マイクロチャネル型熱交換器10は、冷却媒体によって水素ガスを冷却するための熱交換器であって、冷却媒体を流通させる複数の媒体流路が形成された冷却側層と、水素ガスを流通させる複数の水素流路33と、複数の水素流路33に水素ガスを流入させる第1導入口37と、が形成された高温側層12と、を備える。第1導入口37は、円形又は楕円形である。第1導入口37の周面に複数の水素流路33のそれぞれの流入端が接続している。水素流路33は、第1導入口37から第1導出口38まで分岐することなく延びている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体によって水素ガスを冷却するためのマイクロチャネル型熱交換器であって、
前記冷却媒体を流通させる複数の媒体流路が形成された冷却側層と、
前記冷却側層に重ね合わされ、前記水素ガスを流通させる複数の水素流路と、前記複数の水素流路に前記水素ガスを流入させるための導入口と、が形成された高温側層と、
を備え、
前記導入口は、円形又は楕円形であり、
前記導入口の周面に前記複数の水素流路のそれぞれの流入端が接続されており、
前記冷却側層及び前記高温側層は、両者が重ね合わされる方向において、前記複数の媒体流路と前記複数の水素流路とが重なり合う熱交換領域を含み、
前記複数の水素流路は、前記流入端から前記熱交換領域まで分岐することなく延びている、マイクロチャネル型熱交換器。
【請求項2】
前記複数の水素流路の前記流入端は、前記導入口の前記周面の全体に亘り、互いに間隔をおいて接続されている、請求項1に記載のマイクロチャネル型熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換領域を通過した水素ガスを前記高温側層から流出させる導出口を備え、
前記複数の水素流路は、前記導入口から前記導出口まで分岐することなく延びている、請求項1に記載のマイクロチャネル型熱交換器。
【請求項4】
水素ステーションのプレクーラとして用いられる、請求項1に記載のマイクロチャネル型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチャネル型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。また、水素ガスを自動車等のタンクに充填するための水素ステーションも知られている。一方で、水素ガスの冷却用に用いられるものではないが、下記特許文献1及び2に開示されているように、マイクロチャネル型熱交換器も知られている。マイクロチャネル型熱交換器は、第1の流体を流通させる多数の溝状の第1流路が形成された第1伝熱板と、第2の流体を流通させる多数の溝状の第2流路が形成された第2伝熱板とを有し、これら伝熱板が重ね合わされた状態で接合された構成となっている。
【0003】
特許文献1に開示されたマイクロチャネル型熱交換器では、図5に示すように、一方の流体を第1流路81に導入させるための導入路82が第1伝熱板83及び第2伝熱板84を貫通するように設けられている。そして、図6に示すように、導入路82の周面に1本の中継流路85が接続されており、多数の第1流路81は、この中継流路85から分岐するように中継流路85に接続している。
【0004】
特許文献2に開示されたマイクロチャネル型熱交換器でも同様に、導入路が第1伝熱板及び第2伝熱板を貫通するように設けられている。ただし、特許文献2に開示された熱交換器では、図7に示すように、複数の中継流路85が導入路82の周面に接続されており、多数の第1流路81が複数の中継流路85から分岐するように中継流路85に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-180984号公報
【特許文献2】特許第5847913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されたマイクロチャネル型熱交換器では、導入路82の断面が円形になっているため、1本又は複数本の中継流路85が導入路82の周面に接続されているとしても、当該接続部分において、熱応力が局所的に発生することが抑制されている。すなわち、導入路82は、断面が円形となっていて、半円形のような角部が形成されていないため、導入路82において応力集中が生じ難い。しかしながら、導入路82の断面が円形となっているだけでは、応力集中を抑制するには不十分である。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マイクロチャネル型熱交換器において、冷却媒体又は水素ガスが流れる複数の流路を有する層での熱応力の局所的で且つ集中的な発生を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、マイクロチャネル型熱交換器において、流路を形成するための伝熱板に熱応力が局所的に集中して発生することがあることに鑑み、鋭意研究を重ねた。その結果、導入路の断面形状により熱応力の局所的な大きさが異なること、また、導入路に接続された流路の分岐の有無によっても熱応力の局所的な大きさが異なることを突き止めた。本発明はこの研究結果に基づいて創案されたものである。
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係るマイクロチャネル型熱交換器は、冷却媒体によって水素ガスを冷却するためのマイクロチャネル型熱交換器であって、前記冷却媒体を流通させる複数の媒体流路が形成された冷却側層と、前記冷却側層に重ね合わされ、前記水素ガスを流通させる複数の水素流路と、前記複数の水素流路に前記水素ガスを流入させるための導入口と、が形成された高温側層と、を備える。前記導入口は、円形又は楕円形である。前記導入口の周面に前記複数の水素流路のそれぞれの流入端が接続されている。前記冷却側層及び前記高温側層は、両者が重ね合わされる方向において、前記複数の媒体流路と前記複数の水素流路とが重なり合う熱交換領域を含む。前記複数の水素流路は、前記流入端から前記熱交換領域まで分岐することなく延びている。
【0010】
本発明に係るマイクロチャネル型熱交換器では、冷却媒体によって水素ガスを冷却する際に、冷却媒体と水素ガスとの温度差に起因して高温側層又は冷却側層に熱応力が生じる。また、例えば水素ステーション向けの水素ガスを供給する場合のように高圧の水素ガスを流通させる場合には、熱交換器内部が高い圧力に晒されることになるため、マイクロチャネル型熱交換器に生ずる応力がより大きくなる。ただし、水素ガスを流入させるための導入口が円形又は楕円形の断面を有する形状となっているため、導入口の周面に複数の水素流路が繋がる部分において、前記熱応力等の応力が局所的に集中して生ずることが抑制される。すなわち、導入口が半円形の場合には、半円の角部において局所的に温度差の影響(高圧の水素ガスを流通させる場合には、内圧の影響も加わる)による応力が生ずることがあるが、導入口が円形又は楕円形であるため、応力集中が生じ難い。また、水素流路は、冷却媒体によって冷却される前の水素ガスが流れる範囲においては分岐していないため、前記温度差に起因する熱応力(高圧の水素ガスを流通させる場合には、内圧に起因する応力が加わる)が局所的に集中して生ずることも抑制できる。すなわち、水素流路のうち、冷却媒体によって冷却される前の水素ガスが流れる部位においては、冷却媒体と水素ガスとの温度差が大きいことに起因して熱応力が高くなり易くなるため、この部分で分岐が設けられていると、分岐部分において熱応力が集中して生じやすい。しかし、この部分においては、水素流路の分岐個所が設けられていないため、熱応力が局所的に集中して生ずることが抑制される。また、高圧の水素ガスを流通させる場合には、内圧に起因する応力が生じ得るが、その場合においても、水素流路の分岐個所が設けられていないため、内圧に起因する応力が局所的に集中して生ずることが抑制される。
【0011】
前記複数の水素流路の前記流入端は、前記導入口の前記周面の全体に亘り、互いに間隔をおいて接続されていてもよい。
【0012】
この態様では、多くの本数の水素流路を導入口に接続することが可能となる。すなわち、水素流路の数を増やすと、水素ガスの流量を増やすことができるため、それに応じて、冷却媒体と水素ガスとの温度差に起因する熱応力も生じやすくなる。しかしながら、上記の通り、熱応力の局所的な発生を抑制しているため、応力集中による悪影響を抑えつつ水素ガス流量を増やすことができる。
【0013】
前記マイクロチャネル型熱交換器は、前記熱交換領域を通過した水素ガスを前記高温側層から流出させる導出口を備えてもよい。この場合、前記複数の水素流路は、前記導入口から前記導出口まで分岐することなく延びていてもよい。
【0014】
この態様では、水素流路が分岐しない構成であるため、水素流路の全体に亘って応力の局所的な発生を抑えることができる。したがって、マイクロチャネル型熱交換器が、熱応力或いは内圧に起因する応力が生じやすい用途で使用される場合においても、高温側層又は冷却側層の耐久性に対する影響等を抑制できる。
【0015】
前記マイクロチャネル型熱交換器は、水素ステーションのプレクーラとして用いられる熱交換器であってもよい。
【0016】
水素ステーションでは、水素ガスの充填先である燃料電池車等の有無に応じて、水素ガスの供給操作及び停止操作が繰り返されることとなる。このため、プレクーラにおいては、水素ガスの冷却及び停止も繰り返し行われることになる。しかも、プレクーラには、非常に高圧(10MPa以上の圧力)の水素ガスが流通するため、内圧の変動および熱変化によって非常に大きな応力の局所的な発生及びその解除が繰り返されることとなり、マイクロチャネル型熱交換器の耐久性に影響する虞がある。しかしながら、プレクーラとして用いられるマイクロチャネル型熱交換器が、応力が局所的に集中して発生することが抑えられる構成となっているため、マイクロチャネル型熱交換器の耐久性への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、マイクロチャネル型熱交換器において、冷却媒体又は水素ガスが流れる複数の流路を有する層での熱応力の局所的で且つ集中的な発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るマイクロチャネル型熱交換器の側面図である。
図2】前記マイクロチャネル型熱交換器における積層体の部分断面図である。
図3】前記マイクロチャネル型熱交換器の高温側層を構成する金属板の上面図である。
図4】前記マイクロチャネル型熱交換器の冷却側層を構成する金属板の上面図である。
図5】従来のマイクロチャネル型熱交換器の側面図である。
図6】従来のマイクロチャネル型熱交換器を構成する第1伝熱板の上面図である。
図7】従来のマイクロチャネル型熱交換器を構成する第1伝熱板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係るマイクロチャネル型熱交換器は、水素ステーションのプレクーラとして用いられ、冷却媒体によって水素ガスを冷却する熱交換器として構成されている。すなわち、水素ステーションから供給される水素ガスは、たとえば燃料電池車等のタンクに高圧(10MPa以上の圧力)に充填されるため、タンク内において昇温する。このため、プレクーラにおいて、充填前の水素ガスが冷却媒体によって冷却される。なお、冷却媒体として、ブライン、二酸化炭素、代替フロン等を用いることができる。ただし、マイクロチャネル型熱交換器は、水素ガスを冷却するための熱交換器として用いられるのであれば、水素ステーションのプレクーラとして用いられるものに限られない。
【0021】
図1に示すように、マイクロチャネル型熱交換器10は、複数の高温側層12と複数の冷却側層14とを備えている。高温側層12と冷却側層14とは、交互に配置されるとともに厚み方向に重ね合わされている。
【0022】
高温側層12及び冷却側層14はそれぞれ、熱伝導性の高い材質の金属板12a,14aによって構成されている。重ね合わされた金属板12a,14a同士を例えば拡散接合することにより、高温側層12及び冷却側層14の積層体18が構成される。積層方向(図1の上下方向)における積層体18の両側にはそれぞれ端板19a,19bが設けられている。
【0023】
なお、高温側層12及び冷却側層14は、拡散接合によって接合されるものに限られない。金属板12a,14a同士が拡散接合される場合には、高温側層12と冷却側層14との境界が明確に現れているわけではないが、それ以外の接合方法が用いられる場合には、層12,14同士の境界が現れる場合もある。
【0024】
積層体18には、水素ガスを後述の水素流路33に流入させる第1導入ヘッダ21と、水素ガスを水素流路33から流出させる第1導出ヘッダ22と、冷却媒体を後述の媒体流路34に導入させる第2導入ヘッダ23と、冷却媒体を媒体流路34から導出させる第2導出ヘッダ24と、が設けられている。図1では、第1導入ヘッダ21及び第1導出ヘッダ22が積層体18の一面に設けられた構成を示しているが、これに代え、第1導入ヘッダ21と第1導出ヘッダ22とが、積層体18における互いに反対側となる面に分かれて設けられてもよい。第2導入ヘッダ23及び第2導出ヘッダ24についても同様である。
【0025】
第1導入ヘッダ21には、第1導入路27が接続している。第1導入路27は、積層体18の外部(又は第1導入ヘッダ21)から後述の各水素流路33に水素ガスを流れさせるための流路であり、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通するように形成されている。なお、第1導入路27における第1導入ヘッダ21とは反対側の端部は塞がれている。
【0026】
第1導出ヘッダ22には、第1導出路28が接続している。第1導出路28は、後述の各水素流路33を流れた水素ガスを積層体18の外部(又は第1導出ヘッダ22)に導出させるための流路であり、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通するように形成されている。なお、第1導出路28における第1導出ヘッダ22とは反対側の端部は塞がれている。
【0027】
第2導入ヘッダ23には、第2導入路29(図4参照)が接続している。第2導入路29は、積層体18の外部(又は第2導入ヘッダ23)から後述の各媒体流路34に冷却媒体を流れさせるための流路であり、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通するように形成されている。なお、第2導入路29における第2導入ヘッダ23とは反対側の端部は塞がれている。
【0028】
第2導出ヘッダ24には、第2導出路30(図4参照)が接続している。第2導出路30は、後述の各媒体流路34を流れた冷却媒体を積層体18の外部(又は第2導出ヘッダ24)に導出させるための流路であり、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通するように形成されている。なお、第2導出路30における第2導出ヘッダ24とは反対側の端部は塞がれている。
【0029】
図2に示すように、各高温側層12は、複数の水素流路33を含む偏平な領域として形成され、各冷却側層14は、複数の媒体流路34を含む偏平な領域として形成されている。複数の水素流路33は、高温側層12において一方向(図2の横方向)に並ぶように配置され、複数の媒体流路34は、冷却側層14において、媒体流路34が並ぶ方向と平行な方向に並ぶように配置されている。すなわち、複数の溝が金属板12a,14aの一方の面に形成された金属板12a,14a同士を重ね合わせて接合するため、複数の水素流路33が一方向に並ぶとともに、複数の媒体流路34が一方向に並ぶように形成される。そして、積層方向(図2の上下方向)において複数の水素流路33と複数の媒体流路34とが交互に配置されている。なお、水素流路33及び媒体流路34は何れも、断面が半円形状に形成されている。
【0030】
図3に示すように、高温側層12を形成している金属板12aは、上面視で矩形に形成されており、この金属板12aの上面に複数の水素流路33が形成されている。
【0031】
金属板12aには、金属板12aを厚み方向に貫通するように第1導入口37及び第1導出口38が形成されている。第1導入口37は、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通する第1導入路27のうちの当該高温側層12における一部分である。第1導出口38は、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通する第1導出路28のうちの当該高温側層12における一部分である。
【0032】
第1導入口37及び第1導出口38は、円形又は楕円形であり、第1導入口37の周面には、複数の水素流路33の一端(流入端)がそれぞれ接続している。具体的に、各水素流路33の流入端は、互いに間隔をおいて第1導入口37の周面に接続されており、この接続箇所は第1導入口37の周面の全体に亘っている。ここで、「周面の全体に亘る」とは、周面の全体において複数の接続箇所が互いに間隔をおいて存在することを意味している。このため、水素流路33が接続されていない箇所が周面の一部に存在していてもよい。また、複数の接続箇所は等間隔である必要はないため、隣接する接続箇所同士の間隔が他の接続箇所同士の間隔よりも広いところがあってもよく、隣接する接続箇所同士の間隔の幅が何れも周面の1/4(又は1/8)以下であればよい。
【0033】
複数の水素流路33の他端(流出端)は、第1導出口38の周面にそれぞれ接続している。そして、各水素流路33は、第1導入口37から第1導出口38までそれぞれ分岐することなく延びている。第1導入路27内の水素ガスは、各高温側層12において、各水素流路33に分流する。各水素流路33を流れる水素ガスは、分流することなく第1導出路28に合流し、第1導出ヘッダ22を通して、マイクロチャネル型熱交換器10の外部へと送られる。
【0034】
なお、水素流路33の流出端においては、水素ガスの温度が冷却媒体の温度に近い温度になっているため、第1導出口38は、円形又は楕円形である必要はなく、たとえば半円形であってもよい。また、第1導出口38への水素流路33の接続箇所は、第1導出口38の周面の全体に亘っている必要はなく、たとえば、周面の2/3の範囲内に存在していてもよい。
【0035】
図4に示すように、冷却側層14を形成している金属板14aは、上面視で矩形に形成されており、金属板14aの上面には、複数の媒体流路34が形成されている。ただし、媒体流路34の数は、水素流路33の数よりも多い。このため、媒体流路34を流れる冷却媒体は、水素ガスと熱交換しても余り温度変化しない。一方で、水素流路33を流れる水素ガスは、冷却媒体と熱交換すると大きく温度変化し、冷却媒体の温度に近づく。つまり、水素ガスの温度変化量は、冷却媒体の温度変化量よりも大きい。
【0036】
金属板14aには、金属板14aを厚み方向に貫通するように第2導入口39及び第2導出口40が形成されている。第2導入口39は、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通する第2導入路29のうちの当該冷却側層14における一部分である。第2導出口40は、複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通する第2導出路30のうちの当該冷却側層14における一部分である。
【0037】
第2導入口39及び第2導出口40は、第1導入口37及び第1導出口38よりも面積の大きな半円形である。すなわち、第2導入路29を通して導入される冷却媒体の流量は、第1導入路27を通して導入される水素ガスの流量よりも大きな流量となる。なお、第2導入口39及び第2導出口40は、冷却媒体の流量が確保できるのであれば、半円形に限られるものではなく、たとえば円形又は楕円形であってもよい。
【0038】
第2導入口39の周面のうちの半円の弦に当たる部分には、複数の媒体流路34の一端(導入端)がそれぞれ接続している。複数の媒体流路34の他端(導出端)は、第2導出口40の周面のうちの半円の弦に当たる部分にそれぞれ接続している。そして、各媒体流路34は、第2導入口39から第2導出口40まで延びている。第2導入路29内の冷却媒体は、各冷却側層14において、各媒体流路34に分流する。各媒体流路34を流れる冷却媒体は、分流することなく第2導出路30(第2導出口40)に合流し、第2導出ヘッダ24を通して、マイクロチャネル型熱交換器10の外部へと送られる。
【0039】
水素流路33のうち、高温側層12及び冷却側層14が重ね合わされる方向(図2における上下方向)において媒体流路34と重なり合う領域は、熱交換領域43となる。すなわち、水素ガスが第1導入口37から水素流路33に流入したとしても、この熱交換領域43に至るまでは、冷却媒体とほとんど熱交換することはない。そして、水素ガスは、この熱交換領域43において水素流路33を流れつつ、媒体流路34を流れる冷却媒体と熱交換する。
【0040】
本実施形態では、各水素流路33は、第1導入口37から第1導出口38までそれぞれ分岐することなく延びているため、少なくとも、第1導入口37から熱交換領域43に至るまでは分岐しておらず、熱交換領域43においても、冷却媒体との温度差が比較的大きな前半部分においても分岐していない。なお、熱交換領域43の後半以降においては、各水素流路33は、分岐していてもよい。
【0041】
水素ガスは、たとえば30℃以上の温度で水素流路33に流入し、冷却媒体は、-30℃以下の温度で媒体流路34に流入する。水素ガスは非常に高圧(10MPa以上の圧力)の状態で流通することもある。そして、熱交換領域43を通過したときには、水素ガスは-30℃以下の温度まで冷却されている。すなわち、水素ガスは、水素流路33を流れる最中にプラスの温度帯からマイナスの温度帯まで温度が変化する。一方、冷却媒体は、熱交換領域43を通過したときでも-30℃以下の温度を有する。すなわち、冷却媒体は、マイナスの温度帯のまま媒体流路34を流れる。したがって、第1導入口37から第1導出口38までの水素ガスの温度変化は、第2導入口39から第2導出口40までの冷却媒体の温度変化よりも大きい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、冷却媒体によって水素ガスを冷却する際に、冷却媒体と水素ガスとの温度差に起因して高温側層12又は冷却側層14に熱応力が生じる。また、本実施形態では、マイクロチャネル型熱交換器10が水素ステーション向けとなっており、非常に高圧の水素ガスを流通させるため、熱交換器10内部が高い圧力に晒されることになる。このため、マイクロチャネル型熱交換器10に生ずる応力がより大きくなる。ただし、水素ガスを流入させるための第1導入口37が円形又は楕円形の断面を有する形状となっているため、第1導入口37の周面に複数の水素流路33が繋がる部分において、前記熱応力等の応力が局所的に集中して生ずることが抑制される。すなわち、仮に第1導入口37が半円形の場合には、半円の角部において局所的に応力が生ずることがあるが、第1導入口37が円形又は楕円形であるため、応力集中が生じ難い。また、水素流路33は、冷却媒体によって冷却される前の水素ガスが流れる範囲においては分岐していないため、前記温度差に起因する熱応力及び内圧に起因する応力が局所的に集中して生ずることも抑制できる。すなわち、水素流路33のうち、冷却媒体によって冷却される前の水素ガスが流れる部位においては、高圧の内圧に起因する応力が生ずるだけでなく、冷却媒体と水素ガスとの温度差が大きいことに起因する熱応力が高くなり易くなる。このため、仮に、この部分で分岐が設けられていると、分岐部分において応力が集中して生じやすい。しかし、この部分においては、水素流路33の分岐個所が設けられていないため、応力が局所的に集中して生ずることが抑制される。また、安定した水素ガスの供給に寄与する。
【0043】
また本実施形態では、水素流路33の流入端が第1導入口37の周面の全体に亘っているため、多くの本数の水素流路33を第1導入口37に接続することが可能となる。すなわち、水素流路33の数を増やすと、水素ガスの流量を増やすことができるため、それに応じて、冷却媒体と水素ガスとの温度差に起因する熱応力も生じやすくなる。しかしながら、上記の通り、熱応力の局所的な発生を抑制しているため、応力集中による悪影響を抑えつつ水素ガス流量を増やすことができる。
【0044】
また本実施形態では、水素流路33が第1導入口37から第1導出口38まで分岐しない構成であるため、水素流路33の全体に亘って応力の局所的な発生を抑えることができる。したがって、マイクロチャネル型熱交換器10が、熱応力或いは内圧に起因する応力が生じやすい用途で使用される場合においても、高温側層12又は冷却側層14の耐久性に対する影響等を抑制できる。
【0045】
また本実施形態に係るマイクロチャネル型熱交換器10は、水素ステーションのプレクーラとして用いられる。水素ステーションでは、水素ガスの充填先である燃料電池車等の有無に応じて、水素ガスの供給及び停止が繰り返されることとなる。このため、プレクーラにおいては、水素ガスの冷却及び停止も繰り返し行われることになる。しかも、プレクーラには、非常に高圧(10MPa以上の圧力)の水素ガスが流通するため、内圧の変動および熱変化によって非常に大きな応力の局所的な発生及びその解除が繰り返されることとなり、マイクロチャネル型熱交換器10の耐久性に影響する虞がある。しかしながら、プレクーラとして用いられるマイクロチャネル型熱交換器10が、応力が局所的に集中して発生することが抑えられる構成となっているため、マイクロチャネル型熱交換器10の耐久性への影響を抑制することができる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、第2導入口39及び第2導出口40が複数の高温側層12及び複数の冷却側層14を貫通する第2導入路29又は第2導出路30の一部分として形成されているがこれに限られない。たとえば第2導入口39及び第2導出口40は、高温側層12又は冷却側層14を形成している金属板12a,14aの外周面(側面)に開口していてもよい。この場合、第2導入ヘッダ23は積層体18における、第2導入口39が開口する側面に設けられ、第2導出ヘッダ24は積層体18における、第2導出口40が開口する側面に設けられる。この場合、第2導入路29及び第2導出路30が省略されることになる。
【0047】
また、マイクロチャネル型熱交換器10が配管などを介さずに直接的に前段、後段の装置等と接続されているような場合には、導入ヘッダ21,23、導出ヘッダ22,24は省略されることになる。
【符号の説明】
【0048】
10 :マイクロチャネル型熱交換器
12 :高温側層
14 :冷却側層
33 :水素流路
34 :媒体流路
37 :第1導入口
38 :第1導出口
43 :熱交換領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7