(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099429
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両用表示制御装置、車両用表示制御方法及び車両用表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240718BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003369
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松延 剛
(72)【発明者】
【氏名】石丸 和寿
【テーマコード(参考)】
3D344
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AA21
3D344AA26
3D344AA30
3D344AC25
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】自車両の前方側の物体に重畳するように重畳画像を表示する場合に、ユーザの違和感を低減させることができる車両用表示制御装置、車両用表示制御方法及び車両用表示制御プログラムを得る。
【解決手段】車両用表示制御装置10は、自車両の前方側の物体を認識する認識部60と、自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された物体の車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる表示制御部66と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方側の物体を認識する認識部と、
表示領域上において前記自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された前記物体の車両幅方向の両側に、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる表示制御部と、
を有する車両用表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記物体の車両幅方向の両側に表示された前記重畳画像の間隔を前記自車両と前記物体との間の距離に応じて変化させる、請求項1に記載の車両用表示制御装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記自車両と前記物体との距離によらず、前記重畳画像の車両上下方向の長さを一定の長さで表示する、請求項1又は請求項2に記載の車両用表示制御装置。
【請求項4】
自車両の前方側の物体を認識し、
表示領域上において前記自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された前記物体の車両幅方向の両側に、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる、
車両用表示制御方法。
【請求項5】
自車両の前方側の物体を認識し、
表示領域上において、前記自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された前記物体の車両幅方向の両側に、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる、処理をコンピュータに実行させる、
車両用表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示制御装置、車両用表示制御方法及び車両用表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両前方の先行車に対して追従走行するときに先行車の後方に重畳するように車両幅方向に長い画像を表示させる車両用表示装置が開示されている。また、この特許文献1では、先行車と前記自車両との間の距離が大きい場合は、距離が小さい場合に比べて画像の強調度合を高くすることで、運転者が容易に画像を認識することができるようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2017/046937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、車両前方側の物体の後方に重畳するように車両幅方向に長い画像を表示させる場合、自車両と物体との間の距離が変化する際に、ユーザが、前方の物体に対する画像の表示位置のずれを感じ易くなる。また、自車両と物体との間の距離が大きくなるにつれて、遠近感の表現性能の限界に起因して、物体よりも手前の位置で画像が浮いて見えるといった違和感をユーザに与える場合がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、自車両の前方側の物体に重畳するように重畳画像を表示する場合に、ユーザの違和感を低減させることができる、車両用表示制御装置、車両用表示制御方法及び車両用表示制御プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用表示制御装置は、自車両の前方側の物体を認識する認識部と、表示領域上において前記自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された前記物体の車両幅方向の両側に、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる表示制御部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用表示制御装置によれば、自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された物体の車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる。これにより、自車両と物体との間の距離が変化する際に、ユーザが、前方の物体に対する重畳画像の表示位置のずれを感じにくくなる。また、車両上下方向に長い重畳画像は、表示画像の奥行方向に長くなるため、ユーザが、遠近感の表現性能の限界を感じにくくなる。その結果、物体よりも手前の位置で重畳画像が浮いて見えるといった視覚効果を与えにくい。このようにして、車両用表示制御装置では、自車両の前方側の物体に重畳するように重畳画像を表示する場合に、ユーザの違和感を低減させることができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る車両用表示制御装置は、請求項1に記載の構成において、前記表示制御部は、前記物体の車両幅方向の両側に表示された前記重畳画像の間隔を前記自車両と前記物体との間の距離に応じて変化させる。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る車両用表示制御装置によれば、物体の車両幅方向の両側に表示された重畳画像の間隔を自車両と物体との間の距離に応じて変化させる。例えば、車両前方側の物体との距離が大きくなるほど自車両の位置から見える物体は小さくなるため、物体の車両幅方向の両側に表示された重畳画像の間隔が小さくなるように変化させる。これにより、自車両と物体との間の距離の変化をユーザが直感的にとらえやすくなり、遠近感の表現性能を高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る車両用表示制御装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記表示制御部は、前記自車両と前記物体との距離によらず、前記重畳画像の車両上下方向の長さを一定の長さで表示する。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る車両用表示制御装置によれば、自車両と物体との距離によらず、重畳画像の車両上下方向の長さを一定の長さで表示する。これにより、表示の一貫性を保持することができるため、ユーザが、重畳画像の表示に基づいて前方側の物体を把握し易くなる。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る車両用表示制御方法は、自車両の前方側の物体を認識し、表示領域上において前記自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された前記物体の車両幅方向の両側に、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる。
【0013】
請求項5に記載の本発明に係る車両用表示制御プログラムは、自車両の前方側の物体を認識し、表示領域上において、前記自車両の前方側の景色に重畳するように、認識された前記物体の車両幅方向の両側に、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る車両用表示制御装置、車両用表示制御方法及び車両用表示制御プログラムでは、自車両の前方側の物体に重畳するように重畳画像を表示する場合に、ユーザの違和感を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る車両用表示制御装置が適用された車両における車室内の前部を車両後方側から見た概略図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用表示制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用表示制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】自車両と物体との間の距離に応じて重畳画像の間隔を変化させる一例を示す図であって、(A)は、自車両と先行車両との距離が近い状態を示しており、(B)は、(A)の状態よりも、自車両と先行車両との距離が大きい状態を示しており、(C)は、(B)の状態よりも、自車両と先行車両との距離が大きい状態を示している。
【
図5】自車両の前方に複数の物体が存在する場合の重畳画像の表示の一例であり、(A)は、自車両から第1距離L1以内に一つの物体が存在する場合を示しており、(B)は、自車両から第1距離L1以内に複数の物体が存在する場合を示しており、(C)は、自車両から第2距離L2以内に複数の物体が存在する場合を示しており、(D)は、自車両から第2距離L2以内に一つの物体が存在する場合を示している。
【
図6】本実施形態における表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示す画像生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図7を参照して、実施形態に係る車両用表示制御装置10が適用された車両12について説明する。
【0017】
図1に示されるように、車両12における車室内の前部には、インストルメントパネル14が設けられている。インストルメントパネル14は、車両幅方向に延在されており、このインストルメントパネル14の車両右側にはステアリングホイール16が設けられている。すなわち、本実施形態では一例として、右側にステアリングホイール16が設けられた右ハンドル車とされており、運転席28が車両右側に設定されている。
【0018】
インストルメントパネル14の前端部にはウインドシールドガラス18が設けられている。ウインドシールドガラス18は、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて車室内部と車室外部とを区画している。
【0019】
運転席28の前方側において、ウインドシールドガラス18には、ヘッドアップディスプレイ表示領域26(以下、単に「表示領域26」と称する)が設けられている。表示領域26は、車両用表示装置としてのヘッドアップディスプレイ装置48(
図2参照)によって投影された投影面によって構成されている。具体的には、インストルメントパネル14の車両前方側にヘッドアップディスプレイ装置48が設けられており、このヘッドアップディスプレイ装置48からウインドシールドガラス18の表示領域26へ画像が投影されるように構成されている。すなわち、表示領域26は、ヘッドアップディスプレイ装置48の投影面とされたウインドシールドガラス18の一部とされている。
【0020】
ここで、車両12には、車両用表示制御装置10が設けられている。本実施形態の車両用表示制御装置10は、例えば、一つ又は複数のECU(Electronic Control Unit)で構成されている。
【0021】
(車両用表示制御装置10のハードウェア構成)
図2は、車両用表示制御装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、車両用表示制御装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)30、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)34、ストレージ36、通信I/F(通信インタフェース)38及び入出力I/F(入出力インタフェース)40を含んで構成されている。各構成は、バス42を介して相互に通信可能に接続されている。
【0022】
CPU30は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU30は、ROM32又はストレージ36からプログラムを読み出し、RAM34を作業領域としてプログラムを実行する。CPU30は、ROM32又はストレージ36に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0023】
ROM32は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM34は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ36は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0024】
通信I/F38は、車両用表示制御装置10が外部サーバ及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネッ
ト(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0025】
入出力I/F40には、画像撮像装置44、ナビゲーション装置46及びヘッドアップディスプレイ装置48と、物体検出センサ50とに電気的に接続されている。
【0026】
画像撮像装置44は、例えば、車載カメラで構成されており、車両12の周辺(前方、後方、側方)を撮影する。ナビゲーション装置46は、図示しないGPS(Global Positioning System)センサと地図データとを含んで構成され、公知のナビゲーションシステムを構築する。ナビゲーション装置46は、GPS(Global Positioning System)センサからの信号に基づいて車両12の現在位置を特定し、地図データに基づいて、車両12の現在位置からユーザによって設定された目的地までの走行経路を設定する。
【0027】
ヘッドアップディスプレイ装置48は、ウインドシールドガラス18の表示領域26に所定の情報を表示させる。ヘッドアップディスプレイ装置48によって表示される情報には、重畳画像が含まれる。重畳画像は、AR画像である。AR画像は、拡張現実(Augmented Reality)技術を用いて描画される画像である。即ち、表示領域26には、ウインドシールドガラス18越しに車両12の前方側の景色が見えており、この景色に対して、重畳画像が重畳して表示される。重畳画像として表示される情報には、ナビゲーション装置46によって設定された走行経路に関する経路情報や作動中の運転システムに関する情報が表示される。本実施係では特に、表示領域26には、車両12の前方側に存在する物体の位置を示す重畳画像が表示される。
【0028】
物体検出センサ50は、車両の周辺に存在する物体を検出する。物体検出センサは、例えば、車載カメラ、超音波センサ、ミリ波レーダ、ライダー等に代表される公知のセンサの一つ又はこれらの組み合わせによって構成することができる。
【0029】
(車両用表示制御装置10の機能構成)
車両用表示制御装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用表示制御装置10が実現する機能構成について
図3を参照して説明する。
【0030】
図3に示されるように、車両用表示制御装置10は、機能構成として、認識部60、距離算出部62、画像生成部64及び表示制御部66を含んで構成されている。各機能構成は、CPU30がROM32又はストレージ36に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0031】
認識部60は、車両12の周辺情報に基づいて車両12の前方側に存在する物体を認識する。一例として、認識部60は、画像撮像装置44によって車両12の前方側を撮影した画像に基づいて周辺情報を取得し、車両12の前方側に存在する物体を認識する。認識部60では、例えば、四輪車や二輪車等の車両、自転車、歩行者などが物体として認識される。本実施形態では、認識部60は、車両12の走行車線上に存在する物体を認識する。
【0032】
また、認識部60は、車両12の走行車線を認識する。具体的に、認識部60は、画像撮像装置44によって車両12の前方側を撮影した画像に基づいて、区画線、アスファルト、草、土、縁石などの境界から走行車線を認識する。
【0033】
距離算出部62は、車両12と車両12の前方側の物体との距離を算出する。一例として、距離算出部62は、物体検出センサ50から受信した信号に基づいて、車両12と車両12の前方側の物体との距離を算出する。
【0034】
画像生成部64は、表示領域26に表示される重畳画像を生成する。この重畳画像は、認識部60で認識された物体を表示領域26越しに見た場合に、当該物体に重畳するように表示される。重畳画像は、ユーザに車両12の前方側に存在する物体の位置を示すために表示される。この重畳画像は、例えば、検出物体と車両12との接触を回避するための停止システムや発進システム、ACC(アダプティブクルーズコントロール)システム及びLTA(レーントレーシングアシスト)システム、LCA(レーンチェンジアシスト)などの公知のADAS(Advanced Driving Assistant System)に代表される運転システムの作動中に表示される。
【0035】
ここで、重畳画像は、車両前方側の物体の両側において、互いに離間するように表示される二つの画像で構成される。各画像は、車両上下方向に長い意匠となっている。例えば、
図4に示されるように、重畳画像80は、車両上下方向に長い線形状の画像が、物体(先行車両V)の両側において車両幅方向に互いに離間するように表示される画像で構成される。なお、重畳画像80の意匠は一例に過ぎず、種々の態様で実施することができる。本発明に係る重畳画像は、「物体の車両幅方向の両側において車両上下方向に長い」態様であればよく、図示の例のように、一対の線形状の画像に限定されるものではない。また、ここでいう「車両上下方向に長い」場合には、実際の車両上下方向に対して傾斜した方向に長い場合も含まれる広い概念である。
【0036】
ここで画像生成部64は、車両12の前方側に複数の物体が存在している場合に、所定の条件により、複数の物体を一つの重畳対象と認識して重畳画像を表示させる。即ち、
図5に示されるように、複数の物体(二輪車B1,B2)の車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる。具体的には、車両12の前方側で車両12との距離Lが第1距離L1未満となる範囲に複数の物体が存在する場合、画像生成部64は、当該複数の物体を一つの重畳対象として認識する。そして、画像生成部64は、複数の物体の車両幅方向の両側に表示される重畳画像を生成する。さらに、複数の物体の両側に重畳画像を表示した後、複数の物体のうち少なくとも一つが車両12から遠ざかる方向に移動した場合、当該物体と車両12との距離Lが第1距離L1以上でかつ第2距離L2未満である条件において、画像生成部64は、継続して複数の物体を一つの重畳対象として認識する。例えば、第1距離L1は30mに設定され、第2距離L2は、50mに設定される。
【0037】
表示制御部66は、車両の前方側の景色に重畳するように、画像生成部64で生成した重畳画像を表示領域26に表示させる。即ち、表示制御部66は、認識部60で認識された物体の車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる。車両上下方向に長い重畳画像は、運転席28に着座したユーザから見て、表示領域26の奥行方向に長い画像となる。従って、車両上下方向に長い重畳画像は、車両幅方向に長い画像を物体に重畳して表示する場合と比較して、重畳画像の表示位置のずれを感じにくい意匠であるとともに、遠近感の表現性能の向上を図ることができる意匠となっている。
【0038】
ここで、表示制御部66は、物体の車両幅方向の両側に表示された重畳画像の間隔を自車両と物体との間の距離に応じて変化させる。具体的には、自車両と物体との距離が大きくなるほど、物体の車両幅方向の両側に表示された重畳画像の間隔が小さくなるように変化させる。これにより、自車両から遠ざかるほど小さくなる物体の大きさに合わせて重畳画像を表示させることができる。
【0039】
また、表示制御部66は、自車両と物体との距離によらず、重畳画像の車両上下方向の長さを一定の長さで表示する。このため、物体が自車両から遠ざかると、物体の車両幅方向の両側に表示された画像の間隔が小さくなることで重畳画像全体としては小さくなる一方、車両上下方向の長さを一定にすることで表示の一貫性を保持することができる。
【0040】
図4(A)~
図4(C)を参照して一例を説明する。
図4(A)~
図4(C)には、ウインドシールドガラス18に設けられた表示領域26が示されている。この図に示されるように、表示領域26を介して、ウインドシールドガラス18越しには、車両12の前方側に存在する物体として検出された先行車両Vが見える。また、この先行車両Vに重畳するように、表示領域26には、重畳画像80が表示されている。重畳画像80は、先行車両Vの車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い画像80A,80Bが互いに離間して配置されるように表示される。
図4(A)~
図4(C)に示されるように、重畳画像80は、先行車両Vが遠ざかるにつれて、画像80Aと画像80Bの車両幅方向の間隔が小さくなるように変化する。一方、車両12と先行車両Vとの距離によらず、画像80Aと画像80Bの車両上下方向の長さは一定の長さで表示される。
【0041】
また、表示制御部66は、
図5(A)~
図5(D)に示されるように、車両12の前方側に複数の物体が存在する場合に、所定の条件により複数の物体を一つの重畳対象として認識して重畳画像80を表示する。例えば、
図5(A)には、車両の走行車線70上において、車両12との距離Lが第1距離L1(=30m)未満となる範囲に一台の二輪車B1が存在する。また、車両12との距離Lが第1距離L1以上かつ第2距離L2(=50m)未満となる範囲に一台の二輪車B2が存在する。この場合において、表示制御部66は、一台の二輪車B1のみを重畳対象として認識し、二輪車B1の車両幅方向の両側に重畳画像80を表示する。また、
図5(B)に示されるように、二輪車B2が車両12に接近し、車両12との距離Lが第1距離L1未満となる範囲に二台の二輪車B1,B2が存在するようになる場合、二台の二輪車B1,B2が一つの重畳対象として認識される。これにより、表示制御部66は、二台の二輪車B1,B2の車両幅方向の両側に重畳画像80を表示する。その後、一台の二輪車B2が車両12から第1距離L1以上離れた地点に遠ざかると、
図5(C)に示されるように、二台の二輪車B1,B2が車両12から第1距離L1以上かつ第2距離L2未満となる範囲に存在する場合には、二台の二輪車B1,B2の両側に重畳画像80を表示させる。そして、
図5(D)に示されるように、少なくとも一台の二輪車B2が車両12から第2距離L2以上はなれた地点まで遠ざかった後に、再び、一台の二輪車B1重畳対象として認識し、二輪車B1の両側に重畳画像80を表示させる。このように、車両12の前方に複数の物体が検出された場合には、重畳画像の表示にヒステリシスを与え、重畳対象が頻繁に変化することによってユーザの感じる煩わしさを低減させることができる。
【0042】
(表示処理の動作)
車両用表示制御装置10で実行される表示処理の動作の一例について、
図6に示されるフローチャートを用いて説明する。表示処理は、CPU30がROM32又はストレージ36からプログラムを読み出して、RAM34に展開することによって実行される。
【0043】
図6に示されるように、ステップS10で、CPU30は、車両12の周辺情報を取得する。具体的には、画像撮像装置44で車両12の前方側を撮影した画像を取得する。
【0044】
ステップS11で、CPU30は、物体検出センサ50からの信号に基づいて、車両12の前方側に物体が存在するか否かについて判定する。物体が存在する場合、ステップS11の判定が肯定され、CPU30はステップS12の処理に進む。一方、物体が存在しない場合、ステップS11の判定が否定され、CPU30は表示処理を終了させる。
【0045】
ステップS12で、CPU30は、画像生成処理を実行し、重畳画像を生成する。画像生成処理については後述する。
【0046】
ステップS13で、CPU30は、画像生成処理により生成された画像を出力する。具体的には、CPU30は、生成した画像データをヘッドアップディスプレイ装置48に送信し、送信された画像データがヘッドアップディスプレイ装置48で出力されることで、表示領域26に表示される。
【0047】
ステップS14で、CPU30は、車両12の前方側に物体が存在しなくなったか否かについて判定する。物体が存在しなくなった場合には、対応する運転システムの停止に伴って物体検出センサ50で物体が検出されなくなった場合も含まれる。車両12の前方側に物体が存在しなくなった場合、ステップS14の判定が肯定され、CPU30は、表示処理を終了させる。一方、車両12の前方側に物体が存在する場合、CPU30は、ステップS11の処理に戻る。
【0048】
(画像生成処理)
次に、
図7を参照して、画像生成処理の動作の一例について説明する。この図に示されるように、ステップS20で、CPU30は、車両12の前方側に複数の物体が存在するか否かについて判定する。複数の物体が存在する場合、ステップS20の判定は肯定されて、後述するステップS23の処理に進む。一方、複数の物体が存在しない場合、即ち、一つの物体(単数物体)が存在する場合、ステップS20の判定は否定され、CPU30は、ステップS21の処理に進む。
【0049】
ステップS21で、CPU30は、車両12と前方側の物体との距離Lを算出する。
【0050】
ステップS22で、CPU30は、車両12の前方側に存在する単数物体の両側に配置される重畳画像を生成する。具体的には、
図4(A)及び
図5(A)に示されるように、CPU30は、車両12の前方側の単数物体(V,B1)の車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い重畳画像80A,80Bが互いに離間してなる重畳画像80を生成する。
【0051】
また、ステップS22で生成される重畳画像80は、
図4(A)~
図4(C)に示されるように。車両と単数物体(V)との間の距離に応じて単数物体の車両幅方向の両側に表示された画像80A,80Bの間隔が変化する。一方、重畳画像80は、車両12と単数物体との距離Lによらず、重畳画像80(80A,80B)の車両上下方向の長さを一定の長さで表示する。なお、重畳画像80(80A,80B)の車両上下方向の長さは、一例として、車両12と物体との距離L及び物体の大きさの少なくとも一方を参照して設定される。
【0052】
次に、ステップS20で、車両12の前方側に複数の物体が存在すると判定され、ステップS23の処理に進んだ場合について説明する。ステップS23で、CPU30は、車両12との距離Lが第1距離L1(=30m)未満となる範囲に複数の物体が存在するか否かについて判定する。第1距離L1未満の範囲に複数の物体が存在する場合、ステップS23の判定が肯定され、CPU30は、ステップS24の処理に進む。一方、ステップS23の判定が否定されると、ステップS21の処理に進む。この場合、続くステップS22の処理を経て、
図5(A)に示されるように、車両に最も近い物体(二輪車B1)に重畳する重畳画像80が生成される。
【0053】
ステップS24で、CPU30は、複数の物体を一つの重畳対象として認識し、車両12と複数の物体との距離を算出する。例えば、複数の物体のうち、車両12との距離Lが最も近い物体までの距離を算出する。
【0054】
ステップS25で、CPU30は、
図5(B)に示されるように、車両12の前方側に存在する複数の物体(二台の二輪車B1,B2)の両側に配置される重畳画像80を生成する。
【0055】
ステップS26で、CPU30は、ステップS25で重畳画像80を生成した複数の物体について、複数の物体が、車両12との距離Lが第1距離L1以上かつ第2距離L2(=50m)未満となる範囲に存在するか否かについて判定する。複数の物体が、車両12から第1距離L1以上かつ第2距離L2未満の範囲に存在する場合、ステップS26の判定は肯定され、CPU30は、表示処理のステップS13の処理へと進む。従って、
図5(C)に示されるように、車両前方側の物体としての一台の二輪車B2が車両12から第1距離L1以上遠ざかった場合でも、表示領域26には、二台の二輪車B1,B2の両側に配置される重畳画像80の表示が継続される。
【0056】
一方、ステップS26で、複数の物体が、車両12から第1距離L1以上かつ第2距離L2未満の範囲に存在しない場合、ステップS26の判定が否定され、CPU30は、ステップS21の処理に進む。従って、CPU30は、
図5(D)に示されるようにお、車両12に最も近い一台の二輪車B1のみを重畳対象として認識し、二輪車B1の両側に配置される重畳画像80を生成する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用表示制御装置10では、車両12(自車両)の前方側の景色に重畳するように、前方側に存在する物体の車両幅方向の両側において、車両上下方向に長い重畳画像を互いに離間させて表示させる。これにより、
図4に示されるように、車両12と物体との距離が変化する際に、ユーザが、前方の物体に対する重畳画像80の表示位置のずれを感じにくくなる。また、車両上下方向に長い重畳画像80は、表示画像の奥行方向に長くなるため、ユーザが、遠近感の表現性能の限界を感じにくくなる。その結果、物体が車両12から遠く離れた場合に、物体よりも手前の位置で重畳画像80が浮いて見えるといった視覚効果を与えにくい。このようにして、車両用表示制御装置10では、自車両の前方側の物体に重畳するように重畳画像を表示する場合に、ユーザの違和感を低減させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、物体の車両幅方向の両側に表示された重畳画像80の間隔を自車両と物体との間の距離に応じて変化させる。
図4に示されるように、車両前方側の物体との距離が大きくなるほど、車両12の位置から見える物体は小さくなるため、物体の車両幅方向の両側に表示された重畳画像80(80A,80B)の間隔が小さくなるように変化させる。これにより、車両12と物体との距離の変化をユーザが直感的にとらえやすくなり、遠近感の表現性能を高めることができる。
【0059】
また、本実施形態では、
図4に示されるように、車両12と物体との距離によらず、重畳画像80の車両上下方向の長さを一定の長さで表示する。これにより、表示の一貫性を保持することができるため、ユーザが、重畳画像80の表示に基づいて前方側の物体を把握し易くなる。
【0060】
以上、実施形態に係る車両用表示制御装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、車両12の走行車線70上に存在する物体について重畳画像を生成したが、これに限らず、走行車線70の外側に存在する物体や、走行車線70が存在しない場所で検出される物体に対して重畳画像80を表示してもよい。
【0061】
また、ヘッドアップディスプレイ装置48の表示領域26に画像を表示させる例について説明したが、これに限らない。例えば、インストルメントパネルに設けられたディスプレイ等に重畳画像を表示してもよい。即ち、車両12の前方を撮影した画像に重畳するように重畳画像を表示させ、ディスプレイに出力する。また、表示領域は、外部装置のディスプレイ等でもよい。例えば、遠隔地から車両12の遠隔運転を行うオペレータが操作する操作装置のディスプレイでもよいこの場合、車両12の前方を撮影した画像がネットワークを介して接続された操作装置で受信され、受信された画像に対して重畳画像を表示させる。従って、上記実施形態におけるユーザは、車室内の乗員でもよく、遠隔地にいるオペレータであってもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態でCPU30がプログラムを読み込んで実行した処理を、CPU30以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、仮想アイテム表示処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0063】
さらに、上記実施形態では、ストレージ36に種々のデータを記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体を記憶部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラム及びデータなどが格納されることとなる。
【符号の説明】
【0064】
10 車両用表示制御装置
12 車両(自車両)
26 表示領域
60 認識部
66 表示制御部
80 重畳画像
V 先行車両(物体)
B1,B2 二輪車(物体)