(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099457
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】油脂含有造粒顆粒
(51)【国際特許分類】
C11B 11/00 20060101AFI20240718BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C11B11/00
A23D9/00 518
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023012322
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
【テーマコード(参考)】
4B026
4H059
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC03
4B026DG20
4B026DK05
4B026DL02
4B026DL05
4B026DP06
4B026DP10
4B026DX08
4H059BA14
4H059BA16
4H059BA22
4H059BA26
4H059BA83
4H059BB14
4H059BB45
4H059BC13
4H059DA16
4H059EA32
(57)【要約】
【課題】 本発明は、劣化臭の発生を抑え、保存安定性を高めた油脂含有顆粒及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 油脂粉末に対して、レシチンと、クルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒して得られる油脂含有造粒顆粒が、劣化臭の発生が抑えられ、高い保存安定性を有することを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末油脂に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒してなる造粒顆粒である、油脂含有造粒顆粒。
【請求項2】
バインダー液にさらに塩基性アミノ酸を含む、請求項1記載の油脂含有造粒顆粒。
【請求項3】
クルクミノイドがテトラヒドロクルクミノイドである、請求項1又は2記載の油脂含有造粒顆粒。
【請求項4】
湿式造粒して得られる造粒顆粒全体の70重量%以上が16メッシュ(目開き1mm)をパスするものである、請求項1又は2記載の油脂含有造粒顆粒。
【請求項5】
粉末油脂に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒し、造粒顆粒を得ることを特徴とする、油脂含有造粒顆粒の製造方法。
【請求項6】
バインダー液にさらに塩基性アミノ酸を含む、請求項5記載の油脂含有造粒顆粒の製造方法。
【請求項7】
クルクミノイドがテトラヒドロクルクミノイドである、請求項5又は6記載の油脂含有造粒顆粒の製造方法。
【請求項8】
湿式造粒して得られる造粒顆粒全体の70重量%以上が16メッシュ(目開き1mm)をパスする造粒顆粒を得ることを特徴とする、請求項5又は6記載の油脂含有造粒顆粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含む造粒顆粒等に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂は酸化により劣化することが知られており、粉粒化にあたり、酸化を防ぐことが課題とされてきた。特に、多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、種々の機能性が知られており、幅広い利用が求められているが、酸化し易いため、保存安定性の向上が各種検討されてきた。
【0003】
特許文献1には、モノグリセリドを含む高度不飽和脂肪酸含有油脂中に存在するモノグリセリド含有量が重量比で0.1%以上であることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末が開示されており、特許文献2には、高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-172782号公報
【特許文献2】特許第6337599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、劣化臭の発生を抑え、保存安定性を高めた油脂含有顆粒及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、油脂粉末に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒して得られる油脂含有造粒顆粒が、劣化臭が抑えられ、高い保存安定性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]の態様に関する。
[1]油脂粉末に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒してなる造粒顆粒である、油脂含有造粒顆粒。
[2]バインダー液にさらに塩基性アミノ酸を含む、[1]記載の油脂含有造粒顆粒。
[3]クルクミノイドがテトラヒドロクルクミノイドである、[1]又は[2]記載の油脂含有造粒顆粒。
[4]湿式造粒して得られる造粒顆粒全体の70重量%以上が16メッシュ(目開き1mm)をパスするものである、[1]~[3]の何れかに記載の油脂含有造粒顆粒。
[5]粉末油脂に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒し、造粒顆粒を得ることを特徴とする、油脂含有造粒顆粒の製造方法。
[6]バインダー液にさらに塩基性アミノ酸を含む、[5]記載の油脂含有造粒顆粒の製造方法。
[7]クルクミノイドがテトラヒドロクルクミノイドである、[5]又は[6]記載の油脂含有造粒顆粒の製造方法。
[8]湿式造粒して得られる造粒顆粒全体の70重量%以上が16メッシュ(目開き1mm)をパスする造粒顆粒を得ることを特徴とする、[5]~[7]の何れかに記載の油脂含有造粒顆粒の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、劣化臭の発生が抑えられ、高い保存安定性を有する油脂含有造粒顆粒を提供することができ、保存安定性が高まったことで、幅広い商品への利用が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の油脂含有造粒顆粒は、油脂粉末に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒してなる油脂含有造粒顆粒であって、レシチンとクルクミノイドとを含むバインダー液を粉末油脂に噴霧して乾燥させる、湿式造粒を行うことで得られる。
【0010】
本発明に記載のバインダー液中のレシチンは、本発明の油脂含有造粒顆粒が得られれば特に限定されないが、大豆レシチン、ヒマワリレシチン、卵黄レシチン等が例示でき、レシチン分解酵素の一種であるホスホリパーゼA1又はA2で分解した酵素処理レシチンでもよく、市販品を使用してもよい。レシチン中のリン脂質含有量は、40重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、80重量%以上が特に好ましい。油脂含有造粒顆粒中のバインダー液由来のレシチン含有量は、0.1~20重量%が好ましく、0.2~15重量%がより好ましく、0.5~10重量%がさらに好ましい。また、油脂含有造粒顆粒中の油脂100重量%に対して、バインダー液由来のレシチン含有量は0.5~40重量%が好ましく、1~30重量%がより好ましく、1.5~20重量%が特に好ましく、15重量%以下が最も好ましい。また、油脂含有造粒顆粒中の多価不飽和脂肪酸(PUFA)100重量%に対して、バインダー液由来のレシチン含有量は1~80重量%が好ましく、2~60重量%がより好ましく、3~40重量%が特に好ましく、20重量%以下でもよい。
【0011】
本発明に記載のバインダー液中のクルクミノイドは、本発明の油脂含有造粒顆粒が得られれば特に限定されないが、クルクミノイドを含有する市販のウコン抽出物を利用でき、還元型ウコン抽出物が好ましい。クルクミノイドは、ウコン抽出物中に含まれるクルクミノイドであればよく、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、還元型ウコン抽出物中に含まれるテトラヒドロクルクミン等のテトラヒドロクルクミノイド等が例示でき、テトラヒドロクルクミノイドは、白色、無臭であり、油脂含有造粒顆粒への影響が少ないため、好ましい。油脂含有造粒顆粒中の、バインダー液由来のクルクミノイド含有量は、0.02~20重量%が好ましく、0.05~10重量%がより好ましく、0.1~5重量%がさらに好ましく、0.2~2重量%が特に好ましい。また、油脂含有造粒顆粒中の油脂100重量%に対して、バインダー液由来のクルクミノイド含有量は0.05~40重量%が好ましく、0.08~30重量%がより好ましく、0.1~20重量%が特に好ましい。また、油脂含有造粒顆粒中のPUFA100重量%に対して、バインダー液由来のクルクミノイド含有量は0.2~50重量%が好ましく0.5~40重量%がより好ましく、1~30重量%が特に好ましく、20重量%以下でもよい。
【0012】
本発明に記載のバインダー液は、レシチンと共にクルクミノイドを含んでいればよいが、さらに、アミノ酸を含むのが好ましい。アミノ酸は特に限定されないが、アルギニン、リジン又はヒスチジンの塩基性アミノ酸が好ましく、アルギニンがより好ましく、市販品を使用できる。油脂含有造粒顆粒中の、バインダー液由来のアミノ酸含有量は、0.05~40重量%が好ましく、0.08~30重量%がより好ましく、0.1~20重量%がさらに好ましい。また、油脂含有造粒顆粒中の油脂100重量%に対して、バインダー液由来のアミノ酸含有量は0.1~60重量%が好ましく、0.2~50重量%がより好ましく、0.5~40重量%が特に好ましく、30重量%以下が最も好ましい。また、油脂含有造粒顆粒中のPUFA100重量%に対して、バインダー液由来のアミノ酸含有量は0.5~60重量%が好ましく1~50重量%がより好ましく、2~40重量%が特に好ましく、30重量%以下でもよい。
【0013】
本発明で使用するバインダー液は、湿式造粒に使用する溶液であって、レシチンとクルクミノイドとを含んでいればよい。バインダー液中のレシチンの含有量は、バインダー液中の固形分全体の5~90重量%が好ましく、10~80重量%がより好ましく、20~70重量%がさらに好ましく、バインダー液全体を100重量%とした場合は、0.5~40重量%が好ましく、1~30重量%がより好ましく、2~20重量%がさらに好ましい。バインダー液中のクルクミノイドの含有量は、固形分全体の1~50重量%が好ましく、2~40重量%がより好ましく、5~30重量%がさらに好ましく、バインダー液全体を100重量%とした場合は、0.05~30重量%が好ましく、0.1~20重量%がより好ましく、0.2~10重量%がさらに好ましい。バインダー液にアミノ酸を含む場合のバインダー液中のアミノ酸の含有量は、固形分全体の1~80重量%が好ましく、2~70重量%がより好ましく、5~60重量%がさらに好ましく、バインダー液全体を100重量%とした場合は、0.1~30重量%が好ましく、0.2~20重量%がより好ましく、0.5~10重量%がさらに好ましい。また、油脂粉末100重量%に対するバインダー液の使用量は、1~150重量%が好ましく、5~100重量%がより好ましく、10~50重量%がさらに好ましく、油脂含有造粒顆粒100重量%に対するバインダー液由来の固形分は、0.2~50重量%が好ましく、0.5~40重量%がより好ましく、0.8~30重量%がさらに好ましく、1~20重量%が特に好ましい。
【0014】
本発明の油脂含有造粒顆粒に含まれる油脂は特に限定されず、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ゴマ油、米ぬか油、サフラワー油、綿実油、落花生油、アマニ油、エゴマ油、ブドウ種子油、シソ油、藻類油等の植物性油脂、オキアミ油、魚油、豚脂、鶏油、牛脂、乳脂等の動物性油脂及びこれらの加工油脂(硬化、分別、エステル交換等)が例示でき、多価不飽和脂肪酸(PUFA)であるα-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ミード酸等を含有する油脂でもよく、二種類以上の油脂混合物でもよい。該油脂を含む油脂粉末を原料として使用することで、本発明の油脂含有造粒顆粒が得られる。
【0015】
本発明に記載の油脂粉末は、油脂含有造粒顆粒の原料として湿式造粒に使用するものであって、油脂を含む粉末であれば特に限定されないが、油脂を常法により乳化した水中油型乳化物を乾燥した油脂乳化粉末が好ましく、乾燥は、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー等による乾燥が例示でき、スプレードライヤーによる噴霧乾燥が好ましく、市販の油脂粉末を使用できる。油脂粉末は、油脂、タンパク質及び炭水化物を含むのが好ましく、油脂粉末中の油脂含有量は、10~80重量%が好ましく、15~75重量%がより好ましく、20~70重量%がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましい。
【0016】
本発明に記載の油脂粉末に含まれるタンパク質は特に限定されず、豆類、穀類、乳類、畜肉類、魚介類、藻類、酵母等の微生物、酒粕等が例示でき、酵母エキス、豆類タンパク質、穀類タンパク質、種実類タンパク質等の植物性タンパク質が好ましく、二種類以上のタンパク質を組み合わせて用いてもよく、加水分解処理したタンパク質加水分解物でもよい。油脂粉末中のタンパク質含有量は、1~40重量%が好ましく、2~30重量%がより好ましく、3~20重量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明に記載の油脂粉末に含まれる炭水化物は特に限定されず、乳糖、トレハロース等の二糖類、還元水あめ、マルチトール等の糖アルコール、アラビアガム、キサンタンガム等の増粘多糖類、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ等の澱粉、加工澱粉、水あめ、デキストリン、セルロース等が例示でき、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。油脂粉末中の炭水化物の含有量は、5~80重量%が好ましく、10~70重量%がより好ましく、15~60重量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明では、油脂粉末に、レシチンとクルクミノイドとを含むバインダー液を噴霧して乾燥させる、湿式造粒により、油脂粉末の表面に、レシチンとクルクミノイドが付着した油脂含有造粒顆粒が得られればよく、該湿式造粒により粉末油脂の表面が、レシチンとクルクミノイドとを含む層で被覆されることで油脂の酸化による劣化が抑えられ、劣化臭を抑えた本発明の油脂含有造粒顆粒が得られ、酸化を防ぐ効果が優れているため、酸化され易いPUFAを含む油脂についても同様に酸化を抑え、劣化臭を抑えて保存安定性を高めることができる。バインダー液には、さらに、例えばアルギニン、リジン又はヒスチジンといった塩基性アミノ酸を含んでいてもよい。例えば、水にレシチン及び塩基性アミノ酸を加えて加熱し、クルクミノイドを添加後、必要に応じてクエン酸、酢酸等の有機酸でpH5~9程度に調整してバインダー液とし、該バインダー液及び粉末油脂を用いて、造粒装置にて湿式造粒を行う方法が例示できる。レシチンとクルクミノイドとを含まない溶液をバインダー液とし、油脂粉末にレシチンとクルクミノイドとを加えて粉体混合したものを湿式造粒しても、本発明の油脂含有造粒顆粒は得られない。造粒装置としては、転動流動層装置、遠心流動装置、流動層装置、ワースター型流動層装置、複合型流動層装置等を挙げることができる。
【0019】
本発明においては、湿式造粒で得られた油脂含有造粒顆粒について、その全体の70重量%以上が、JIS規格による標準篩を用いて16メッシュ(目開き1mm)をパスすればよく、好ましくは75重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは85重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上であり、該%は、篩別前後の重量差から回収率を算出した。前記回収率を有することで、粒度が揃った造粒顆粒となっており、該造粒顆粒を高い収率で得られる。また、流動性のよい顆粒とする場合は、油脂含有造粒顆粒の安息角は、45度以下が好ましく、42度以下がより好ましく、40度以下がさらに好ましく、安息角については、第十八改正日本薬局方の参考情報「粉体の流動性」に記載の方法に基づき測定する。
【0020】
本発明の油脂含有造粒顆粒は、油脂粉末に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒してなる油脂含有造粒顆粒であれば特に限定されないが、油脂含有造粒顆粒中の油脂含有量は、5~70重量%が好ましく、10~65重量%がより好ましく、15~60重量%がさらに好ましい。油脂含有造粒顆粒中のタンパク質含有量は、2~80重量%が好ましく、3~70重量%がより好ましく、5~60重量%がさらに好ましい。なお、このタンパク質含有量には、タンパク質加水分解物も含まれる。油脂含有造粒顆粒中の炭水化物含有量は、2~60重量%が好ましく、5~55重量%がより好ましく、10~50重量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明の油脂含有造粒顆粒は、上記のとおり、油脂粉末に対して、レシチンとクルクミノイドとを含む液をバインダー液として、湿式造粒することで、油脂の酸化を抑制し、酸化による劣化臭を抑えることができるため、油脂の保存安定性に優れた油脂含有造粒顆粒である。そのため、飲料、食品、調味料、機能性食品、サプリメント等の各種飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料等に幅広く利用できる。添加量は特に限定されないが、好ましくは0.01~50%、より好ましくは0.1~30%、さらに好ましくは0.5~10%である。
【実施例0022】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【0023】
[調製1]
水道水144gに、大豆レシチンとしてSLP(登録商標)-ホワイト(リン脂質含有量:95%以上、辻製油株式会社製)10g、アミノ酸としてアルギニン6gを加え、90℃に加熱して分散させ、還元型ウコン抽出物(ホワイトクルクミノイド(登録商標)、株式会社サビンサジャパンコーポレーション社製、テトラヒドロクルクミノイド含有量:95%)2.5gを加えて分散させた。この溶液に対して、50%クエン酸水溶液8gを用いてpH7に調整することで、バインダー液170.5gを調製した。
【0024】
[調製2]
水道水144gに、大豆レシチンとしてSLP(登録商標)-ホワイト(リン脂質含有量:95%以上)10g、アミノ酸としてアルギニン6gを加え、90℃に加熱して分散させた。この溶液に対して、50%クエン酸水溶液8gを用いてpH7に調整することで、バインダー液168gを調製した。
ドコサヘキサエン酸(DHA)含有油脂を含む油脂粉末(植物性DHAパウダー10E、DHA含有量:10%以上、池田糖化工業株式会社製)500gを、転動流動層装置MP-01(株式会社パウレック製)に入れ、インペラ回転数:400rpm、給気風量:1立法メートル/分、給気温度:70℃の条件下で、調製1のバインダー液170.5gを5g/分の速度で噴霧して、50分間、湿式造粒を行ない、実施品1の油脂含有造粒顆粒475g(収率:90.9%)を得た。得られた造粒物を16メッシュ(目開き1mm)のふるいで篩別し、篩別前後の重量差から回収率を算出したところ、97.7%の回収率だった。尚、実施品1の油脂含有造粒顆粒は、油脂含有量が37.9%、バインダー液由来のレシチン含有量が1.9%、バインダー液由来のテトラヒドロクルクミノイドの含有量が0.48%で、油脂100%に対するレシチン含有量が5.0%、テトラヒドロクルクミノイド含有量が1.3%だった。
表1に示したとおり、実施品1は、原料の油脂粉末と比べて、保存後のDHAの酸化臭(劣化臭)が抑えられており、比較品1よりも酸化臭が弱かった。テトラヒドロクルクミノイドを含むバインダー液を使用して、造粒することで、酸化劣化し易い多価不飽和脂肪酸を含む油脂の劣化を抑えることができ、保存安定性の良い油脂含有造粒顆粒が得られることが分かった。