IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小松精練株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-上着 図1A
  • 特開-上着 図1B
  • 特開-上着 図2
  • 特開-上着 図3
  • 特開-上着 図4
  • 特開-上着 図5
  • 特開-上着 図6A
  • 特開-上着 図6B
  • 特開-上着 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099458
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】上着
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
A41D13/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021076
(22)【出願日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023002928
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】中川 英治
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AC01
3B011AC13
3B011AC21
3B211AA01
3B211AC01
3B211AC13
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】着用感の低下を抑制することができる上着を提供する。
【解決手段】前身頃12と、後身頃14と、設置部16と、ベルト18と、を備えた上着10である。設置部16は、熱源又は冷却源を有する温度調整部46を後身頃14の内側に固定可能である。ベルト18は、一対の先端部78を上着10の左右内側から前方へ向けて配置した状態で、設置部16より左右方向外側の後身頃14の内側に支持されており、先端部78に連結具84を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、後身頃と、設置部と、ベルトと、を備えた上着であって、
前記設置部は、熱源又は冷却源を有する温度調整部を前記後身頃の内側に固定可能であり、
前記ベルトは、
一対の先端部を前記上着の左右内側から前方へ向けて配置した状態で、
前記設置部より左右方向外側の前記後身頃の内側に支持されており、
前記先端部に連結具を有する、上着。
【請求項2】
前記設置部は、前記ベルトが前記上着に支持された位置の高さと重複する位置に、少なくとも1つ設けられている、請求項1に記載の上着。
【請求項3】
前記設置部に温度調整部が設けられている、請求項1又は2に記載の上着。
【請求項4】
前記後身頃の内側に前記温度調整部を覆うように設けられた熱伝導材を有し、前記熱伝導材の熱伝導率は前記後身頃より高い、請求項3に記載の上着。
【請求項5】
前記温度調整部はペルチェ素子を有する、請求項3に記載の上着。
【請求項6】
前記設置部は、前記後身頃を厚み方向に貫通する貫通穴を有する、請求項5に記載の上着。
【請求項7】
前記前身頃は、ポケットと、連絡部とを有し、
前記連絡部は前記上着の内側から外側へ貫通している、請求項1又は2に記載の上着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上着に関する。
【背景技術】
【0002】
温度調整部を備えた衣服として、特許文献1は、ベストの内側の前面または任意の箇所に面ファスナー雌を設け、ヒーター部は裏面に面ファスナー雄を設けた金属ヒーター収納体に収納し、バッテリー部は面ファスナー雄を端部に有しベストの腰部付近の両端からベスト前部裏面に設けたベルト通しに挿通するサイド調整ベルトに設けたバッテリー収納部に収納したヒーター装着具を開示している。
【0003】
また特許文献2は、外側シェルと、外側シェルと一体化したベスト本体の腰部に着脱保持可能にした腰ベルトを構成し、腰ベルトの後身頃位置に取り外し可能に装着した小型熱源とを備える暖房ウェアを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3005930号公報
【特許文献2】特開2000-45107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2は、いずれもベストであるので、上着をさらに重ねて着用する必要がるため、ベストと上着を着たり脱いだりする手間が煩雑であり、ベストと上着を重ねて着用する分だけ着用者の動きが妨げられる懸念があった。また、上着を着用せずベストのみで着用した場合、ベルトが外部から視認できるので見栄えがよいとはいえないため、結果として着用感の低下を招きやすい。
【0006】
温度調整部を備えた上着は、着用者の身体に対し大き過ぎると後身頃と共に温度調整部が動くことによって上着が着用者の身体に対しずれやすくなり、着用感が低下する可能性がある。一方、上着は、着用者の身体にフィットしていると身体の骨格が目立つことによって着用感の低下を招く懸念がある。
【0007】
本発明は、着用感の低下を抑制することができる上着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の上着は以下の通りである。
【0009】
前身頃と、後身頃と、設置部と、ベルトと、を備えた上着であって、前記設置部は、熱源又は冷却源を有する温度調整部を前記後身頃の内側に固定可能であり、前記ベルトは、一対の先端部を前記本体の左右内側から前方へ向けて配置した状態で、前記設置部より左右方向外側の前記後身頃の内側に支持されており、前記一対の先端部に連結具を有する、上着。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着用感の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】一実施形態に係る上着の正面図である。
図1B】一実施形態に係る上着の背面図である。
図2】一実施形態に係る上着の図1BにおけるII-II線端面図である。
図3】一実施形態に係る上着の前身頃を開いた状態を示す正面図である。
図4】一実施形態に係る胸ポケットの拡大図である。
図5】変形例(1)に係る脇ポケットの拡大図である。
図6A】変形例(2)に係る脇ポケットを前身頃の内側からみた拡大図である。
図6B】変形例(2)に係る脇ポケットを前身頃の外側から見た拡大図である。
図7】変形例(3)に係る胸ポケットの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、以下の態様に関する。
【0013】
[1]
前身頃と、後身頃と、設置部と、ベルトと、を備えた上着であって、
前記設置部は、熱源又は冷却源を有する温度調整部を前記後身頃の内側に固定可能であり、
前記ベルトは、
一対の先端部を前記上着の左右内側から前方へ向けて配置した状態で、
前記設置部より左右方向外側の前記後身頃の内側に支持されており、
前記先端部に連結具を有する、上着。
【0014】
(効果)
設置部に温度調整部が設置された状態で、ベルトの一対の先端部同士が着用者の腹側で連結具によって連結される。上着は、ベルトを着用者の身体に締め付けることによって、後身頃を着用者の背中に引き寄せることができる。これにより上着は、後身頃に設けられた温度調整部を着用者の背中に密着させることができる。したがって上着は、温度調整部に冷却源または加熱源を設けることにより着用者の身体を冷却又は加熱し得る。
ベルトは設置部の左右方向外側で後身頃に支持されているので、後身頃と共に後身頃に設置された設置部を着用者に密着させることにより、背中側で後身頃が余ることを抑制する。したがって上着は、着用者の動きを妨げにくい。
上着は、ベルトが後身頃の内側に設けられているので、前身頃を閉じることによってベルトを上着の内部に隠すことができる。また上着は、ベルトを締め付ける力が前身頃に作用しにくい。したがって上着は、前身頃が着用者の身体に密着しにくいため、着用者の身体の骨格が目立ちにくい。
結果として上着は、着用感の低下を抑制することができる。
【0015】
[2]
前記設置部は、前記ベルトが前記上着に支持された位置の高さと重複する位置に、少なくとも1つ設けられている、[1]に記載の上着。
(効果)
上着は、ベルトが後身頃に支持された位置の高さと重複する位置に設置部が設けられていることによって、ベルトを着用者の身体に締め付ける力が直接設置部に作用する。したがって上着は設置部をより確実に着用者の背中に密着させることができる。
【0016】
[3]
前記設置部に温度調整部が設けられている、[1]又は[2]に記載の上着。
(効果)
上着は、設置部に温度調整部が設けられていることによって、着用者の背中を冷却又は加熱することができる。
【0017】
[4]
前記後身頃の内側に前記温度調整部を覆うように設けられた熱伝導材を有し、前記熱伝導材の熱伝導率は前記後身頃より高い、[3]に記載の上着。
(効果)
後身頃より高い熱伝導率を有する熱伝導材が、着用者の背中と温度調整部の間に存在することによって、温度調整部により冷却又は加熱する面積を広げることができる。温度調整部によって加熱する場合、温度調整部が発する熱を広い範囲に拡散することもできる。
【0018】
[5]
前記温度調整部はペルチェ素子を有する、[3]に記載の上着。
(効果)
上着は、必要に応じペルチェ素子を起動させることによって、所望のタイミングで着用者の背中を冷却又は加熱することができる。またペルチェ素子は、電流の方向を変えることで冷却及び加熱を切り替えることができる。さらに、ペルチェ素子は、設置部に固定する際の表裏を変更することによって、冷却及び加熱を切り替えることができる。
【0019】
[6]
前記設置部は、前記後身頃を厚み方向に貫通する貫通穴を有する、[5]に記載の上着。
(効果)
設置部は、後身頃を厚み方向に貫通する貫通穴を通じて、前記ペルチェ素子の放熱をすることができる。
【0020】
[7]
前記前身頃は、ポケットと、連絡部とを有し、
前記連絡部は前記上着の内側から外側へ貫通している、[1]~[6]のいずれか1つに記載の上着。
(効果)
温度調整部が電源を用いて冷却又は加熱をする場合、温度調整部と電源とは配線を通じて電気的に接続される。電源は、ポケットに収納される。配線は、連絡部を通すことによって上着の内側から外側へスムーズに引き出される。したがって配線が上着の外部に露出することを抑制するので着用者の動きを妨げにくい。
【0021】
[8]
前記前身頃は、胸ポケットと、連絡部を有し、
前記胸ポケットは、前記前身頃の外側表面に設けられた、前記胸ポケットの開口を覆うフラップを有し、
前記連絡部は、前記前身頃の内側から前記胸ポケット内に貫通しており、
前記フラップと前記前身頃の前記外側表面との間にスリットが設けられている、[1]~[6]のいずれか1つに記載の上着。
(効果)
温度調整部が電源を用いて冷却又は加熱をする場合、温度調整部と電源とは配線を通じて電気的に接続される。電源は、胸ポケットに収納される。例えば、配線は、電源のオンオフを切り替えるスイッチが設けられる。配線は、温度調整部とスイッチとを接続する第1配線と、スイッチと電源とを接続する第2配線とを有してもよい。第1配線は、先端が温度調整部に接続され、基端が胸ポケットの後身頃の内側へ貫通する連絡部に挿入され、フラップと前身頃の外側表面との間のスリットから上着の外側へ引き出され、スイッチと接続される。スイッチをフラップの外側に配置した状態で、第2配線は、先端がスイッチに接続され、基端がフラップの下側から胸ポケットの開口を通じて胸ポケット内に挿入され、胸ポケット内の電源に接続される。
このように上着は、連絡部とスリットとを有することによって、上着の内部で温度調整部と電源とを接続することによって、配線が上着の外部に露出することを抑制できる。
【0022】
[9]前記前身頃は、脇ポケットと、連絡部を有し、
前記連絡部は、前記前身頃と前記後身頃の間に設けられたスリットである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の上着。
(効果)
スリットから配線を上着の内側から外側へ引出し、脇ポケット内に収納した電源と配線を接続することによって、配線が上着の外部に露出することを抑制できる。
【0023】
[10]前記前身頃は、脇ポケットと、連絡部を有し、
前記連絡部は、前記前身頃の内側から前記脇ポケット内に貫通している、[1]~[6]のいずれか1つに記載の上着。
(効果)
前身頃の内側から脇ポケット内に貫通している連絡部に配線を通し、脇ポケット内に収納した電源と配線を接続することによって、配線が上着の外部に露出することを抑制できる。
【0024】
(実施形態)
本発明の上着は、例えば、酷暑や酷寒の環境下において作業を行う作業者が着用する作業着に適用できる。以下、本発明の一実施形態に係る上着について図面を参照して説明する。図1Aは一実施形態に係る上着の正面図、図1Bは一実施形態に係る上着の背面図、図2は一実施形態に係る上着の図1BにおけるII-II線端面図、図3は一実施形態に係る上着の前身頃を開いた状態を示す正面図、図4は一実施形態に係る胸ポケットの拡大図である。
【0025】
図1A及び図1Bに示す上着(温度調整機能付き上着)10は、互いに直交する上下方向V、前後方向L、及び左右方向Hの長さをそれぞれ有する。上下方向Vは、上着10を着用者が着用したときの、着用者の丈の方向を意味し、鉛直方向と同義である。前後方向Lは、上下方向Vと直交する方向であり着用者の前方向及び後方向を意味する。左右方向Hは、上下方向V及び前後方向Lと直交する方向であり、水平方向と同義である。上着では、着用者の頭部に向かう向き及び側をそれぞれ上下方向Vの上向き及び上側とし、着用者の脚部に向かう向き及び側をそれぞれ下向き及び下側とする。また、着用者から見て右へ向かう向き及び側をそれぞれ左右方向Hの右向き及び右側とし、着用者から見て左へ向かう向き及び側をそれぞれ左右方向Hの左向き及び左側とする。さらに、上着では、着用者の身体に近い側を内側とし、着用者の身体から遠い側を外側とする。前面と腹(腹側)、及び背面と背(背側)は、着用者を基準とする。
【0026】
本明細書において接合とは、縫合である場合に限らず、接着剤を用いる場合、及び熱融着による場合を含み、生地の材料に合わせて適宜選択される。また、ある基準に「沿う」とは、ある基準に対して±45°未満の範囲の方向に沿うことを含むものとする。ある部材等のある方向の端部とは、その部材のその方向の端縁から、その部材等のその方向での全体の長さの1/5(好ましくは1/10)以下の長さの範囲をいう。
【0027】
上着10は、生地で形成され、前身頃12と、後身頃14と、設置部16と、ベルト18とを備える。生地を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維のような合成繊維、アセテート繊維のような半合成繊維、キュプラやビスコースレーヨンのような再生繊維、綿、麻及び羊毛のような天然繊維を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。本実施形態における生地の形態としては特に限定されず、織物、編物、不織布等、目的に応じていずれの形態でも使用できる。
【0028】
また、前記生地には、撥水加工、吸水加工、吸湿加工、吸湿発熱加工、冷感加工、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、カレンダー加工、エンボス加工、柄の印刷などが施されていてもよい。前記機能加工を行う場合には、機能加工を施しやすい合成繊維製の生地を用いるとよい。
【0029】
前身頃12は、図1Aに示すように、右半部20と、左半部22と、開閉部24とを備えている。右半部20と左半部22とは、それぞれ胸ポケット26と脇ポケット28とを有してもよい。胸ポケット26は、上部開口を覆うフラップ32を有している。フラップ32は、左右方向Hに延びる帯状であって、上端部13が前身頃12に接合されている。
【0030】
開閉部24は、右半部20と左半部22との間である左右方向Hの中心に設けられている。開閉部24は、スライドファスナーを適用でき、前身頃12の裾36から襟元38に亘って設けられている。スライドファスナーは、一対のテープ状部材と、これらのテープ状部材の長手の端縁部に相互に向き合うようにそれぞれ配置された、一対のエレメント列と、これらの一対のエレメント列を開閉するスライダー部とを有している。開閉部24は、スライドファスナーに限らず、面ファスナー、スナップボタンなどの留め具を適用してもよい。
【0031】
後身頃14は、上下方向Vに延びる脇切り替え線40を介して前身頃12に接合されている。脇切り替え線40は、前身頃12の左右方向Hの端部の縫い代と、後身頃14の左右方向Hの端部の縫い代とを重ねて接合することによって形成されている。なお、前身頃12と後身頃14とは、厳密に規定されるものではなく、上着10を着用者が着用した場合、脇の下から前側を前身頃12、後側を後身頃14とする。後身頃は、脇の下の前後方向Lの中心から前側へ、右半部又は左半部の左右方向Hの最大長さの10%又は5%の範囲を含む。
【0032】
上着10は、右袖42と左袖44とを有してもよい。右袖42と左袖44とは、それぞれ筒状であって、先端に袖口43を有し、基端において前身頃12と後身頃14に接合されている。
【0033】
設置部16は、図1Bに示すように、後身頃14に設けられている。設置部16は、温度調整部46を後身頃14に取り外し可能に固定する。設置部16は、右袖42と左袖44が前身頃12と後身頃14にそれぞれ接合されている箇所より下方、すなわち両脇の下方にそれぞれ設けられている。図1Bに示す設置部16は、後身頃14の上部中央に1個と、左右両脇にそれぞれ1個ずつ、合計3個設けられている。
【0034】
温度調整部46は、加熱源又は冷却源である。加熱源は、例えば使い捨てカイロ、ジュール熱を利用したヒーターや熱電素子を用いてもよい。冷却源は、例えば保冷剤や熱電素子を用いてもよい。本実施形態の場合、温度調整部46は、熱電素子であるペルチェ素子を有する。
【0035】
本実施形態の場合、設置部16は、図2に示すように、後身頃14を厚み方向に貫通する貫通穴45を有する。温度調整部46は、ケース48と、カバー50とを有する。ケース48は、円柱状のケース本体52と、フランジ54とを有する。ケース本体52は、ペルチェ素子(図示しない)が内蔵されている。温度調整部46は、ケース48の一方の底面に第1熱交換部56、他方の底面に第2熱交換部58を有する。ペルチェ素子は、P型とN型の熱電半導体を電極板に挟んだ構造を有し、一方の電極板が第1熱交換部56に、他方の電極板が第2熱交換部58にそれぞれ熱的に接続されている。温度調整部46は、ペルチェ素子へ直流電流を流すことによって、第1熱交換部56から吸熱し第2熱交換部58から放熱し、電流の向きを逆向きにすることによって第1熱交換部56から放熱し第2熱交換部58から吸熱する。なお、ケース本体52は角柱など他の形状でもよいが、円柱状であると、温度調整部46が身体に接触した際にも違和感を低減できる。
【0036】
フランジ54は、当該ケース48の軸方向の中央から半径方向に突出した環状であって、円筒面49に一体に設けられている。ケース本体52は、円筒面49のフランジ54から先端側の範囲に、雄ネジが形成されている。カバー50は、環状であって、穴の内面にケース48の雄ネジに対応した雌ネジが設けられている。
【0037】
温度調整部46は、後身頃14の内側からケース48の先端を貫通穴45に挿入し、雄ネジを後身頃14の外側に突出させる。フランジ54は、後身頃14の内側表面に接している。後身頃14の外側からケース48の先端の雄ネジにカバー50の雌ネジをねじ込み、フランジ54とカバー50との間に後身頃14を挟むことによって、温度調整部46が後身頃14に固定される。温度調整部46は、第1熱交換部56が後身頃14の内側に配置され、第2熱交換部58が後身頃14の外側に露出している。
【0038】
上着10は、後身頃14の内側にさらに熱伝導材(図示しない)を有してもよい。熱伝導材は、シート状の部材である。熱伝導材は、温度調整部46を覆うように設けられている。熱伝導材の熱伝導率は、後身頃14より高い。熱伝導材は、温度調整部46のうち後身頃14の内側に露出する部分、すなわち図2の場合、第1熱交換部56を覆う。熱伝導材の着用者の背中と接する部分は、温度調整部46が着用者の背中と接する部分の面積より大きい面積を有することが好ましい。温度調整部46の内側に露出する部分が熱伝導材で覆われていることにより、着用者の背中と温度調整部46の間に熱伝導材が配置される。熱伝導材は、第1熱交換部56に接することによって、冷却される。熱伝導材は、第1熱交換部56に比べ大きい面積を有することによって、着用者の背中のより広い範囲を冷却することができる。
【0039】
熱伝導材としては、例えば、後見頃14がポリエステル繊維からなる生地である場合には、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)繊維、銅や銀などの金属繊維、金属で表面をコーティングした繊維などの高熱伝導繊維を含む織物や編物、もしくは金属箔、シリコーン樹脂、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、グラファイトなどの高熱伝導素材を含むシートが用いられる。柔軟性および伸縮性が高いとの観点から、高熱伝導繊維を含む編物が好ましく、さらに熱伝導率が高く冷却及び加熱される面積を広げる効果が高いとの観点から、金属繊維または金属で表面をコーティングした繊維を含む編物であることがより好ましい。なお、前記織物や編物は、構成する繊維全てが高熱伝導繊維である必要はなく、高熱伝導繊維を混紡や混繊した糸を用いてもよいし、高熱伝導繊維を交織、交編して得られた織物や編物を用いてもよい。また、前記シートは高熱伝導素材そのものである必要はなく、高熱伝導素材を樹脂中に分散したシートや、高熱伝導素材を含むシートに別の素材からなる保護シートを積層したものであってもよい。さらに、熱伝導剤には、冷感を強調するための親水化加工や接触冷感加工を施したり、温感を強調するための吸湿発熱加工を施したりしてもよい。
【0040】
熱伝導材は、後見頃14の内側に設置されており、温度調整部46を覆うことができる形態であれば、その設置方法や熱伝導材の大きさは特に限定されない。例えば、熱伝導材は、開口部を有し、温度調整部46を内包する袋状の部材で後見頃14の内側に接合されていてもよい。また熱伝導材は、シート状の部材で、面ファスナーやスナップボタンなどの留め具を介して、温度調整部46を覆うように後見頃14に着脱可能に設置できるものであってもよい。
【0041】
温度調整部46は、図3に示すように、配線60を通じて電源62に電気的に接続される。電源62は、モバイルバッテリーが用いられる。配線60は、電源62のオンオフを切り替えるスイッチ64が設けられている。配線60は、温度調整部46とスイッチ64とを接続する第1配線66と、スイッチ64と電源62とを接続する第2配線68とを有する。電源62は、上着10の胸ポケット26又は脇ポケット28に配置することができる。電源62を配置するポケットは特に限定されないが、本実施形態の場合、図1Aに示す左側の胸ポケット26に電源62を配置する場合について説明する。左側の胸ポケット26のフラップ32は、前身頃12と接合されている上端部13に、スリット34を有している。胸ポケット26は、連絡部59を有する。連絡部59は、前身頃12の内側から胸ポケット26内へ貫通する通路である。連絡部59は、胸ポケット26を通じて上着10の内側から外側へ通じている。
【0042】
図3に示すように、第1配線66は、先端70が各温度調整部46に電気的に接続され、基端側がコネクター72を介してまとめられる。そして図4に示すように、第1配線66は、胸ポケット26に通じる連絡部59へ挿入されている。第1配線66は、スリット34を介してフラップ32の上端部13から前身頃12の外側へ引き出され、第1配線66の基端73がスイッチ64に電気的に接続されている。
【0043】
第2配線68は、先端74がスイッチ64に電気的に接続されている。第2配線68の基端側は、スイッチ64をフラップ32の外側に配置した状態で、フラップ32の下端から胸ポケット26の開口を通じて胸ポケット26内に挿入され、第2配線68の基端76が胸ポケット26内の電源62に接続される。
【0044】
ベルト18は、図3に示すように、一対の先端部78を上着10の左右内側から前方へ向けて配置した状態で、温度調整部46より左右方向Hの外側で後身頃14に支持されている。ベルト18は、アクリルテープ、革、コットン、ナイロン、ポリエステルなどの素材を用いることができる。本実施形態に係るベルト18は、左右一対であり、それぞれ基端80が後身頃14の内側に接合されている。一対のベルト18の基端80は、脇切り替え線40における縫い代と共に上着10に接合されている。
【0045】
一対のベルト18の基端80が後身頃14に接合されている上下方向Vの位置Pは、着用時において、後身頃14の両脇に設けられた温度調整部46の上下方向Vの位置と重なる位置であるのが好ましい。すなわち、後身頃14に設けられた温度調整部46の少なくとも1つ、本実施形態の場合、両脇に設けられた温度調整部46が、一対のベルト18の基端同士を結ぶ水平方向に沿う仮想線81と重なる位置に設けられていることが好ましい。
【0046】
一対のベルト18は、基端80から先端82までの間に連結具84を有する。本実施形態に係るベルト18は、先端部78に連結具84を有する。連結具84は、面ファスナー、公知のバックルなどを用いることができる。ベルト18は、図示しないが長さ調節機構を有してもよい。長さ調節機構は、長手方向に伸縮する素材を用いてもよいし、公知の長さ調節機構でもよい。
【0047】
着用者は、連結具84を開いた状態の上着10の内側から右袖42と左袖44とにそれぞれ右手と左手とを通して上着10を羽織る。次いで一対のベルト18の連結具84を、腹側で連結する。ベルト18の長さを調節し着用者の身体に締め付けることによって、後身頃14が着用者の背中に引き寄せられる。これによって後身頃14に設けられた温度調整部46の第1熱交換部56が後身頃14と共に着用者の背中に密着する。
【0048】
次いで、着用者は開閉部24を閉じることによって上着10を着用する。ベルト18は上着10の内側に設けられており、開閉部24を閉じることによって前身頃12によって隠れる(図1A)。
【0049】
ベルト18が後身頃14に支持されているので、ベルト18を締め付ける力が前身頃12にほとんど作用しないため前身頃12が着用者の身体に密着しにくい。したがって上着10は、前身頃12が着用者の身体に密着しにくいため、着用者の身体の骨格が目立ちにくい。
【0050】
スイッチ64をオンにすることによって、電源62から配線60を通じて電流が温度調整部46に供給される。温度調整部46は、電流の流れ方向に応じて所定の動作、例えばケース48の第1熱交換部56を冷却し、第2熱交換部58から上着10の外側へ放熱する。温度調整部46は、第1熱交換部56が着用者の身体に接触していることにより、着用者の身体を冷却する。
【0051】
上着10は、ベルト18が後身頃14に支持された位置の高さと重複する位置に設置部16が設けられていることによって、ベルト18を着用者の身体に締め付ける力が温度調整部46に直接作用する。したがって上着10は第1熱交換部56を着用者の背中により確実に密着させることができる。
【0052】
上着10は、ベルト18が設置部16の左右方向Hの外側で後身頃14に支持されているので、後身頃14と共に後身頃14に設置された温度調整部46を着用者に密着させる。これにより背中側で後身頃14が余ることを抑制し、温度調整部46が着用者の動きに起因して移動することを抑制する。したがって上着10は、着用者の動きを妨げにくい。
【0053】
温度調整部46は、電流の流れ方向を変えることによって、第1熱交換部56から放熱し、第2熱交換部58から吸熱する。すなわち温度調整部46は、第1熱交換部56が着用者の身体に接触していることにより、着用者の身体を暖めることができる。したがって上着10は、温度環境に応じて温度調整部46の冷却及び加熱を着用者が選択して切り替えることができる。さらに、上着10は、温度環境に応じて温度調整部46の冷却または加熱の強度を調整できるようにしてもよい。
【0054】
上着10は、温度調整部46の表裏を入れ替えて第2熱交換部58を身体に接触させることによって、着用者の身体を加熱することもできる。すなわち、上着10は、第1熱交換部56を上着10の外側に配置し、第2熱交換部58を上着10の内側に配置し、第2熱交換部58が着用者の身体に接触することにより、着用者の身体を加熱する。上着10は、熱伝導材を有する場合、第2熱交換部58の発する熱を広い範囲に拡散することもできる。
【0055】
(変形例)
本発明は、上記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。
【0056】
一実施形態の場合、前身頃12と後身頃14とが脇切り替え線40で接続されている場合について説明したが本発明はこれに限らない。脇切り替え線40を有さず、前身頃12と後身頃14が一体に形成された上着10にも本発明を適用することができる。
【0057】
例えば、上記一実施形態では上着10は右袖42及び左袖44を有する場合について説明したが本発明はこれに限らない。上着10は右袖及び左袖を有さないベストであってもよい。
【0058】
設置部16及び温度調整部46は、3個である場合に限らない。例えば、設置部16及び温度調整部46は、1個、2個、4個以上であってもよい。
【0059】
ベルト18は、左右一対である場合に限らない。例えば、ベルト18は一本の帯状であって、後身頃14を左右方向Hに横断するように後身頃14に接合されてもよい。この場合、ベルト18が少なくとも設置部16より左右方向Hの外側で後身頃14の内側に支持されることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
ベルト18は、基端80が脇切り替え線40において上着10に接合されている場合に限らない。例えば、ベルト18は一本の帯状であって、上着10に設けたベルト通し(図示しない)に支持されていてもよい。ベルト通しが温度調整部46より左右方向Hの外側で後身頃14の内側に設けられていることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。ベルト通しの上下方向Vの位置は、着用時において、後身頃14の両脇に設けられた温度調整部46の上下方向Vの位置と重なる位置であるのが好ましい。
【0061】
設置部16は、貫通穴45を有している場合に限らない。例えば設置部16は、袋でもよい。この場合、設置部16は、後身頃14に接合され、開閉可能な開口部を有するのが好ましい。開口から設置部16内に保冷剤や使い捨てカイロを設けることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また上記した通り、本実施形態においては、袋を構成する素材を、後見頃14よりも高い熱伝導率を有する熱伝導材とするとよい。
【0062】
電源62は、胸ポケット26に設ける場合に限らず、脇ポケット28に設けてもよい。この場合、図5に示すように、連絡部59は、上着10の裾36に設けてもよい。図5は上着10の脇ポケット28部分を外側から見た図である。図5に示す連絡部59は、脇切り替え線40における下方の端部に設けられたスリットであり、上着10の内側から外側へ貫通している。第1配線66を連絡部59から上着10の外側へ引き出し、脇ポケット28に収納した電源62に第2配線68を接続する。すなわち着用者は、脇ポケット28により近い連絡部59を利用することによって、配線60が上着10の外側に露出することを抑制し、脇ポケット28に収納した電源62に配線60をよりスムーズに接続することができる。
【0063】
また、連絡部59は、図6A及び図6Bに示すように、前身頃12の内側から脇ポケット28へ貫通するように形成してもよい。図6Aは前身頃12の脇ポケット28部分を前身頃12の内側から見た図、図6Bは前身頃12の脇ポケット28部分を前身頃12の外側から見た図である。連絡部59は、前身頃12の内側から脇ポケット28へ貫通しており、脇ポケット28を通じて上着10の内側から外側へ通じている。第1配線66を連絡部59から脇ポケット28内へ引出し、脇ポケット28に収納した電源62に第2配線68を接続する。着用者はスイッチ64を操作した後、当該スイッチ64を脇ポケット28内に収納することができる。すなわち着用者は、脇ポケット28へ貫通する連絡部59を利用することによって、配線60を上着10の外側に露出させずに、脇ポケット28内に電源62及び配線60を収納することができる。
【0064】
さらに、上着10に設けられる胸ポケット26及び脇ポケット28は、電源62を収容する電源用ポケットを有してもよい。すなわち、胸ポケット26及び脇ポケット28は、それぞれ外側ポケットと、当該外側ポケットの内側に電源用ポケットとを有してもよい。
【0065】
電源用ポケットについて、図7を参照して胸ポケットの場合について説明する。胸ポケット26は、外側ポケット86と、当該外側ポケット86の内側に電源用ポケット88とを有する。外側ポケット86は、前身頃12にポケット用布を接合して設けられている。外側ポケット86の上部開口30は、フラップ32で覆われている。前身頃12は、外側ポケット86の上部開口30と同じ高さ又は上部開口30より高い位置に開口87を有する。電源用ポケット88は、前身頃12の内側に配置され、上部開口89が前身頃12の開口87に通じている。電源用ポケット88は、外側の上方の端部90が、前身頃12の開口87の下側端部92に接合されており、内側の上方の端部94が、フラップ32と共に、前身頃12の開口87の上側端部96に接合されている。電源用ポケット88は、連絡部59を有している。電源用ポケット88は、上方の端部の内面にそれぞれ面ファスナー98を有している。当該面ファスナー98を結合して上部開口89を閉塞することによって内部に収納した電源62が上部開口89から脱落することを防止する。胸ポケット26は、外側ポケット86と電源用ポケット88とを有することによって、外側ポケット86に収納する物品と電源62とが混在することを避けることができる。
【0066】
電源用ポケット88は、前身頃12の内側に配置される場合に限らず、前身頃12と外側ポケット86の間に設けてもよい。この場合も電源用ポケット88に連絡部59を設けることによって、前身頃12の内側から電源用ポケット88に第1配線66を通すことができる。
【0067】
上記実施形態の場合、配線60にスイッチ64が設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、配線60がスイッチ64及び第2配線68を有さず、第1配線66の基端73が電源62に電気的に接続されており、電源62に設けたスイッチを操作して温度調整部46を制御する形態でもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 上着
12 前身頃
13 上端部
14 後身頃
16 設置部
18 ベルト
20 右半部
22 左半部
24 開閉部
26 胸ポケット
28 脇ポケット
30、89 上部開口
32 フラップ
34 スリット
36 裾
38 襟元
40 脇切り替え線
42 右袖
43 袖口
44 左袖
45 貫通穴
46 温度調整部
48 ケース
49 円筒面
50 カバー
52 ケース本体
54 フランジ
56 第1熱交換部
58 第2熱交換部
59 連絡部
60 配線
62 電源
64 スイッチ
66 第1配線
68 第2配線
70、74、82 先端
72 コネクター
73、76、80 基端
78 先端部
81 仮想線
84 連結具
86 外側ポケット
87 開口
88 電源用ポケット
90 端部
92 下側端部
94 端部
96 上側端部
98 面ファスナー
H 左右方向
L 前後方向
V 上下方向
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7