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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099464
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】建築用システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/00 20060101AFI20240718BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240718BHJP
【FI】
E04G21/00 ESW
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075160
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2023003311の分割
【原出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】517113303
【氏名又は名称】新日本建工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 真史
(72)【発明者】
【氏名】奈良 孝一
(72)【発明者】
【氏名】入江 祥太郎
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】施工現場での作業を削減でき、作業者の負担を軽減できる建築用システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 BIMシステム10と、加工情報算出システム20、とを備えており、加工情報算出システム20は、材料情報記憶部21と、現場情報記憶部22と、施工手順情報と施工形状情報とが記憶された施工仕様情報記憶部23と、施工場所に対応する建築物モデルMの部位の形状に対応する施工形状情報を施工仕様情報記憶部23から取得し、現場情報記憶部22から取得した施工場所に関する情報と施工形状情報と材料情報記憶部21から取得した材料情報とに基いて、施工場所に施工される建築用材料を加工する加工情報を算出する加工情報算出部24と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を構成する構造体の3Dモデルと該構造体の3Dモデルの属性情報とを関連づけたBIM情報が記憶されたBIM情報記憶部と、該BIM情報記憶部に記憶されている前記BIM情報を利用して構造体を画面上にレイアウトして建築物モデルを設計し設計された建築物モデルの情報を記憶する建築物設計部と、を有するBIMシステムと、
施工場所の情報と、該施工場所に対応する前記建築物モデルの部位に使用する建築用材料の情報と、に基づいて、該建築用材料を加工するための加工情報を算出する加工情報算出システム、とを備えており、
該加工情報算出システムは、
前記建築物モデルの各部位に使用する建築用材料に関する材料情報が記憶された材料情報記憶部と、
前記施工場所に関する情報が記憶される現場情報記憶部と、
前記建築用材料を前記施工場所に施工する施工手順であって前記施工場所の形状に応じた施工手順に関する情報を含む施工手順情報と、前記建築用材料を前記施工場所の形状に応じた施工手順に沿って施工する際に使用される該建築用材料の形状に関する施工形状情報と、が記憶された施工仕様情報記憶部と、
前記施工場所に対応する前記建築物モデルの部位の形状に対応する施工形状情報を前記施工仕様情報記憶部から取得し、前記現場情報記憶部から取得した前記施工場所に関する情報と前記施工形状情報と前記材料情報記憶部から取得した材料情報とに基いて、前記施工場所に施工される前記建築用材料を加工する加工情報を算出する加工情報算出部と、を有している
ことを特徴とする建築用システム。
【請求項2】
前記施工場所に関する情報には、
前記施工場所を撮影した画像に基づいて得られる情報画像情報および/または該施工場所において測定された寸法に関する寸法情報が記憶されており、
前記加工情報算出部は、
前記画像情報および/または前記寸法情報に基づいて施工場所の形状を算出する機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項3】
前記施工場所が一対の壁面間に設けられた壁面であり、
前記建築用材料が、前記一対の壁面間に設けられた壁面に設置される板状の下地材であり、
前記施工仕様情報記憶部には、
該下地材を前記一対の壁面間に設けられた壁面に設置する施工手順として、前記一対の壁面間に設けられた壁面の中央部から該一対の壁面に向かって前記下地材を設置する手順が記憶されている
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項4】
前記施工場所が一対の壁面間に設けられた、矩形の開口を有する有開口壁面であり、
前記建築用材料が、前記有開口壁面に設置される板状の下地材であり、
前記施工形状情報における下地材として、前記矩形の開口の角部が配置される凹みを有する形状の下地材が含まれている
および/または
前記施工形状情報における下地材として、前記矩形の開口の前記有開口壁面の上端縁および/または前記有開口壁面の下端縁との間に設置される下地材が含まれている
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項5】
前記施工場所が壁面であり、
前記建築用材料が、
前記壁面に設置される板状の第一下地材と、
前記壁面に設置された前記第一下地材の表面に設置される第二下地材と、を有しており、
該第二下地材および前記第一下地材を壁面に設置する施工手順として、前記第一下地材同士の境界を前記第二下地材で覆うように該第二下地材を配置する手順が記憶されている
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項6】
前記建築用材料を加工する加工情報には、
該加工情報に基づいて加工された前記建築用材料に付与する識別ラベルに関する識別情報が含まれており、
該識別情報は、
前記加工情報に基づいて加工された前記建築用材料を、該建築用材料の寸法に応じて少なくとも2つの区分に分類する情報である
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項7】
前記識別ラベルが、
前記区分ごとに設定された着色である
ことを特徴とする請求項6記載の建築用システム。
【請求項8】
前記識別ラベルには、
前記建築用材料の形状および寸法に関する形状情報と、
該建築用材料を施工する施工場所に関する場所情報と、
該施工場所において前記建築用材料を施工する位置に関する位置情報と、が含まれている
ことを特徴とする請求項6記載の建築用システム。
【請求項9】
前記識別ラベルを読み込み、該識別ラベルに含まれる前記形状情報、前記場所情報および前記位置情報に基づいて前記建築用材料を前記施工場所における所定の位置に配置した施工画像を形成する画像形成部を有している
ことを特徴とする請求項8記載の建築用システム。
【請求項10】
複数の前記施工場所における作業工程に関する作業工程情報と、複数の前記施工場所における現状での施工状況に関する施工状況情報と、が入力されて記憶される施工状況情報記憶部と、
該施工状況情報記憶部に記憶されている前記作業工程情報と前記施工状況情報とに基づいて、前記加工情報によって加工された前記建築用材料を配送する配送タイミングを決定する配送決定部と、を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項11】
前記加工情報算出システムの加工情報算出部は、
前記施工状況情報記憶部に記憶されている前記作業工程情報と前記施工状況情報とに基づいて、前記加工情報算出システムにおいて前記加工情報を作成する前記施工場所および/または前記建築用材料を決定する機能を有している
ことを特徴とする請求項10記載の建築用システム。
【請求項12】
前記配送決定部は、
前記建築用材料の現在の場所の情報および/または前記建築用材料の配送状況の情報を含む配送情報が入力されこれらの情報を記憶する配送状況記憶機能を有しており、
前記配送情報に基づいて、前記配送タイミングを決定する機能を有している
ことを特徴とする請求項10記載の建築用システム。
【請求項13】
前記建築物モデルの情報と、前記配送情報と、に基づいて、前記建築用材料の現在の所在地を前記建築物モデルの画像に重ねて表示する機能を備えている
ことを特徴とする請求項12記載の建築用システム。
【請求項14】
耐震補強する個所に使用される耐震構造材の情報が記憶された耐震構造材記憶部と、
前記建築物モデルにおける耐震補強する個所に前記耐震構造材を設置する施工手順を含む施工仕様の情報が記憶された耐震施工仕様情報記憶部と、
耐震補強する個所と対応する部位の前記建築物モデルの情報と前記耐震構造材の情報と前記施工仕様の情報とに基づいて、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に前記耐震構造材を配置した耐震補強モデルを形成する耐震補強モデル設計部と、を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項15】
前記現場情報記憶部には、
前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に配置される設備に関する設備情報が記憶されており、
前記耐震補強モデル設計部は、
前記設備情報に基づいて、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に設備を配置した設備レイアウトモデルを形成する機能を有しており、
該耐震補強モデル設計部は、
前記耐震構造材を配置した耐震補強モデルを形成した後、前記設備レイアウトモデルを形成する、
または、
該耐震補強モデル設計部は、
前記設備レイアウトモデルを形成した後、前記耐震補強モデルを形成する
ことを特徴とする請求項14記載の建築用システム。
【請求項16】
施工状況に関する情報を管理する作業管理部を備えており、
該作業管理部は、
施工作業が完了した場所および完了日時を特定する作業完了情報と施工作業を実施した作業者に関する作業者情報とを関連付けて記憶する積算情報記憶部と、
前記作業完了情報と前記作業者情報とに基づいて作業管理データを作成するデータ作成部と、を有している
ことを特徴とする請求項1記載の建築用システム。
【請求項17】
前記作業管理部は、
施工場所を示す施工場所画像を表示し、該施工場所画像に作業管理者が施工完了場所を入力する情報入力機能と、
該情報入力機能によって入力された情報に基づいて、前記施工場所画像において施工完了場所と対応する位置に施工完了を示すマークが表示された作業状況画像を形成する作業状況画像形成データ作成機能と、を備えている
ことを特徴とする請求項16記載の建築用システム。
【請求項18】
前記作業状況画像における施工完了場所を示すマークが、前記施工場所画像における施工部位の色付けである
ことを特徴とする請求項17記載の建築用システム。
【請求項19】
作業管理者が施工完了場所を入力するもととなる情報が、
ディスプレイに表示した前記施工場所画像に作業者が施工した場所を入力した画像情報である、
および/または、
前記施工場所画像を印刷した書面に作業者が施工場所を着色した書面である
ことを特徴とする請求項16記載の建築用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや商業施設、マンションなどの建物では、躯体が施工された後、内装工事が行われる。
内装工事では、例えば、空間を区切るための天井や床の下地材を設置する軽鉄工事(鋼 製下地組立)や、天井やクロスの下地材である石こうボードを壁や天井に貼っていく作業(ボード工事(ボード張り)が行われる。
【0003】
かかる内装工事では、通常、規格品であるボードや軽量鉄骨等の資材を実際に施工される場所(作業現場)の形状に合わせて、作業現場において加工が行われている。例えば、作業現場では、作業現場の形状を作業者が測定し、その測定結果に基づいて、サンダー等の工具を使用してボードや軽量鉄骨等の切断等の加工を作業者が実施する。しかし、切断等の加工作業には危険を伴うこと、また、火花が発生することから火災などの危険性も伴うという問題があるため、作業現場における作業者による資材の加工作業を軽減することが望まれている。
【0004】
作業現場における作業者による資材の加工作業を低減する技術として、特許文献1に開示された技術がある。この技術では、ボードや軽量鉄骨等の資材を施工する現場の状況をあらかじめ測定しておき、その測定データをBIMに供給してBIMに資材を加工するデータを作成させることによって、作業現場に納入する前に、資材を現場寸法に合わせてプレカットして現場に搬入する。すると、現場において資材を加工しなくてもよくなるので作業の安全性を高めることができるし、加工作業が不要になるので作業時間の短縮も可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第679934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した技術は、作業の安全性向上や作業時間の短縮の点で有効であるが、資材などの加工の際に、実際の作業現場における加工手順は十分に考慮されていない。
【0007】
また、施工現場によっては、施工現場に納品されるプレカットされた資材は、その寸法や形状が似通ったものが多くなる場合がある。すると、作業者による資材の取り違えが生じやすくなったり作業者が資材を探す手間と時間がかかったりする場合がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、施工現場での作業を削減でき、作業者の負担を軽減できる建築用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<プレカット>
第1発明の建築用システムは、建築物を構成する構造体の3Dモデルと該構造体の3Dモデルの属性情報とを関連づけたBIM情報が記憶されたBIM情報記憶部と、該BIM情報記憶部に記憶されている前記BIM情報を利用して構造体を画面上にレイアウトして建築物モデルを設計し設計された建築物モデルの情報を記憶する建築物設計部と、を有するBIMシステムと、施工場所の情報と、該施工場所に対応する前記建築物モデルの部位に使用する建築用材料の情報と、に基づいて、該建築用材料を加工するための加工情報を算出する加工情報算出システム、とを備えており、該加工情報算出システムは、前記建築物モデルの各部位に使用する建築用材料に関する材料情報が記憶された材料情報記憶部と、前記施工場所に関する情報が記憶される現場情報記憶部と、前記建築用材料を前記施工場所に施工する施工手順であって前記施工場所の形状に応じた施工手順に関する情報を含む施工手順情報と、前記建築用材料を前記施工場所の形状に応じた施工手順に沿って施工する際に使用される該建築用材料の形状に関する施工形状情報と、が記憶された施工仕様情報記憶部と、前記施工場所に対応する前記建築物モデルの部位の形状に対応する施工形状情報を前記施工仕様情報記憶部から取得し、前記現場情報記憶部から取得した前記施工場所に関する情報と前記施工形状情報と前記材料情報記憶部から取得した材料情報とに基いて、前記施工場所に施工される前記建築用材料を加工する加工情報を算出する加工情報算出部と、を有していることを特徴とする。
第2発明の建築用システムは、第1発明において、前記施工場所に関する情報には、前記施工場所を撮影した画像に基づいて得られる情報画像情報および/または該施工場所において測定された寸法に関する寸法情報が記憶されており、前記加工情報算出部は、前記画像情報および/または前記寸法情報に基づいて施工場所の形状を算出する機能を有していることを特徴とする。
第3発明の建築用システムは、第1発明において、前記施工場所が一対の壁面間に設けられた壁面であり、前記建築用材料が、前記一対の壁面間に設けられた壁面に設置される板状の下地材であり、前記施工仕様情報記憶部には、該下地材を前記一対の壁面間に設けられた壁面に設置する施工手順として、前記一対の壁面間に設けられた壁面の中央部から該一対の壁面に向かって前記下地材を設置する手順が記憶されていることを特徴とする。
第4発明の建築用システムは、第1発明において、前記施工場所が一対の壁面間に設けられた、矩形の開口を有する有開口壁面であり、前記建築用材料が、前記有開口壁面に設置される板状の下地材であり、前記施工形状情報における下地材として、前記矩形の開口の角部が配置される凹みを有する形状の下地材が含まれているおよび/または前記施工形状情報における下地材として、前記矩形の開口の前記有開口壁面の上端縁および/または前記有開口壁面の下端縁との間に設置される下地材が含まれていることを特徴とする。
第5発明の建築用システムは、第1発明において、前記施工場所が壁面であり、前記建築用材料が、前記壁面に設置される板状の第一下地材と、前記壁面に設置された前記第一下地材の表面に設置される第二下地材と、を有しており、該第二下地材および前記第一下地材を壁面に設置する施工手順として、前記第一下地材同士の境界を前記第二下地材で覆うように該第二下地材を配置する手順が記憶されていることを特徴とする。
<ピッキング>
第6発明の建築用システムは、第1発明において、前記建築用材料を加工する加工情報には、該加工情報に基づいて加工された前記建築用材料に付与する識別ラベルに関する識別情報が含まれており、該識別情報は、前記加工情報に基づいて加工された前記建築用材料を、該建築用材料の寸法に応じて少なくとも2つの区分に分類する情報であることを特徴とする。
第7発明の建築用システムは、第6発明において、前記識別ラベルが、前記区分ごとに設定された着色であることを特徴とする。
第8発明の建築用システムは、第6発明において、前記識別ラベルには、前記建築用材料の形状および寸法に関する形状情報と、該建築用材料を施工する施工場所に関する場所情報と、該施工場所において前記建築用材料を施工する位置に関する位置情報と、が含まれていることを特徴とする。
第9発明の建築用システムは、第8発明において、前記識別ラベルを読み込み、該識別ラベルに含まれる前記形状情報、前記場所情報および前記位置情報に基づいて前記建築用材料を前記施工場所における所定の位置に配置した施工画像を形成する画像形成部を有していることを特徴とする。
<物流システム>
第10発明の建築用システムは、第1発明において、複数の前記施工場所における作業工程に関する作業工程情報と、複数の前記施工場所における現状での施工状況に関する施工状況情報と、が入力されて記憶される施工状況情報記憶部と、該施工状況情報記憶部に記憶されている前記作業工程情報と前記施工状況情報とに基づいて、前記加工情報によって加工された前記建築用材料を配送する配送タイミングを決定する配送決定部と、を備えていることを特徴とする。
第11発明の建築用システムは、第10発明において、前記加工情報算出システムの加工情報算出部は、前記施工状況情報記憶部に記憶されている前記作業工程情報と前記施工状況情報とに基づいて、前記加工情報算出システムにおいて前記加工情報を作成する前記施工場所および/または前記建築用材料を決定する機能を有していることを特徴とする。
第12発明の建築用システムは、第10発明において、前記配送決定部は、前記建築用材料の現在の場所の情報および/または前記建築用材料の配送状況の情報を含む配送情報が入力されこれらの情報を記憶する配送状況記憶機能を有しており、前記配送情報に基づいて、前記配送タイミングを決定する機能を有していることを特徴とする。
第13発明の建築用システムは、第12発明において、前記建築物モデルの情報と、前記配送情報と、に基づいて、前記建築用材料の現在の所在地を前記建築物モデルの画像に重ねて表示する機能を備えていることを特徴とする。
<耐震構造>
第14発明の建築用システムは、第1発明において、耐震補強する個所に使用される耐震構造材の情報が記憶された耐震構造材記憶部と、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所に前記耐震構造材を設置する施工手順を含む施工仕様の情報が記憶された耐震施工仕様情報記憶部と、耐震補強する個所と対応する部位の前記建築物モデルの情報と前記耐震構造材の情報と前記施工仕様の情報とに基づいて、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に前記耐震構造材を配置した耐震補強モデルを形成する耐震補強モデル設計部と、を備えていることを特徴とする。
第15発明の建築用システムは、第14発明において、前記現場情報記憶部には、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に配置される設備に関する設備情報が記憶されており、前記耐震補強モデル設計部は、前記設備情報に基づいて、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に設備を配置した設備レイアウトモデルを形成する機能を有しており、該耐震補強モデル設計部は、前記耐震構造材を配置した耐震補強モデルを形成した後、前記設備レイアウトモデルを形成する、または、該耐震補強モデル設計部は、前記設備レイアウトモデルを形成した後、前記耐震補強モデルを形成することを特徴とする。
<出来高管理>
第16発明の建築用システムは、第1発明において、施工状況に関する情報を管理する作業管理部を備えており、該作業管理部は、施工作業が完了した場所および完了日時を特定する作業完了情報と施工作業を実施した作業者に関する作業者情報とを関連付けて記憶する積算情報記憶部と、前記完了作業情報と前記作業者情報とに基づいて作業管理データを作成する機能を有していることを特徴とする。
第17発明の建築用システムは、第16発明において、前記作業管理部は、施工場所を示す施工場所画像を表示し、該施工場所画像に作業管理者が施工完了場所を入力する情報入力部と、該情報入力部からの入力に基づいて、前記施工場所画像において施工完了場所と対応する位置に施工完了を示すマークが表示された作業状況画像を形成する作業状況画像形成部と、を備えていることを特徴とする。
第18発明の建築用システムは、第17発明において、前記作業状況画像における施工完了場所を示すマークが、前記施工場所画像における施工部位の色付けであることを特徴とする。
第19発明の建築用システムは、第16発明において、作業管理者が施工完了場所を入力するもととなる情報が、ディスプレイに表示した前記施工場所画像に作業者が施工した場所を入力した画像情報である、および/または、前記施工場所画像を印刷した書面に作業者が施工場所を着色した書面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
<プレカット>
第1発明によれば、施工手順を考慮して建築用材料を加工するので、作業者の施工を容易にでき、施工時間も短くできる。
第2発明によれば、実際の施工場所を測定した情報に基づいて建築用材料を加工するので、施工精度を高くできる。
第3発明によれば、一対の壁面間に設けられた壁面に適切に下地材を施工することができる。
第4発明によれば、施工場所が矩形の開口を有する壁面であっても、適切に下地材を施工することができる。
第5発明によれば、壁面に第一下地材と第二下地材とを重ねて施工する場合において、施工後の仕上がりがよい状態とすることができる。
<ピッキング>
第6発明によれば、作業現場における建築用材料の取り違えなどを防止できるので、作業者の手間を軽減でき、施工時間も短縮できる。
第7発明によれば、識別ラベルが区分ごとに設定された着色であるので、作業者の建築用材料の区別が容易になる。
第8発明によれば、作業現場における建築用材料の取り違えなどを防止する効果を高くできる。
第9発明によれば、施工画像によって建築用材料を施工する位置を確認できるので、作業現場における建築用材料の取り違えなどを防止する効果を高くできる。
<物流システム>
第10発明によれば、加工された建築用材料を適切なタイミングで施工場所などに配送できるので、施工場所における配送作業を効率化できる。
第11発明によれば、施工状況に合せて建築用材料を加工できるので、施工や配送までの間、建築用材料の保管しておく場所などを少なくできる。
第12発明によれば、建築用材料の配送を適切に管理することができる。
第13発明によれば、建築用材料の配送状況を確認できるので、配送状況の把握や改善を行いやすくなる。
<耐震構造>
第14発明によれば、施工仕様に基づいて耐震補強モデルを形成するので、適切な耐震補強をできる構造を設計できる。
第15発明によれば、耐震補強する個所に設置する設備と耐震補強材との干渉を適切に防止できる。
<出来高管理>
第16発明によれば、完了作業情報と作業者情報に基づいて作業管理データを作成するので、施工作業の管理を適切に実施できる。
第17発明によれば、施工完了した施工完了場所にマークを付するので、施工が完了した作業を認識し易くなるので、作業管理データを作成が容易になる。
第18発明によれば、施工完了した施工部位を色付けするので、施工が完了した作業を認識し易くなるので、作業管理データを作成が容易になる。
第19発明によれば、施工完了した施工部位を画像で把握できるので、作業管理者による作業管理データの作成が容易になるし、施工完了場所の入力ミスも防止しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の建築用システム1の概略ブロック図である。
図2】加工情報算出システム20の処理フロー図である。
図3】壁Wへの下地材Bの施工作業の一例を示した図である。
図4】壁Wへの下地材B1の施工作業の一例を示した図である。
図5】壁Wへの下地材B1の施工作業の一例を示した図である。
図6】壁Wへの下地材B1の施工作業の一例を示した図である。
図7】識別ラベルを建築用材料に付与するの処理フロー図である。
図8】作業管理データを作成する処理フロー図である。
図9】建築用材料を配送する物流システムの処理フロー図である。
図10】(A)は施工完了場所を作業者が記載した図面の一例であり、(B)は作業状況画像の一例であり、(C)は出来高を表示した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態のBIMシステムは、BIMを利用して設計された建築物において、建築用材料の数量を算出するシステムおよび/または施工現場に合う建築用材料の形状を算出するシステムである。
【0013】
本明細書におけるBIMとは、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略である。このBIM情報には、一般的なBIMを実現するソフトで使用される種々の情報が含まれている。例えば、BIMを実現するソフトにおいて建築物を構成する構造体の3次元モデル(3Dモデル)の情報、つまり、3Dモデルを作成するために必要な設計情報(例えば、各部の寸法等)が含まれている。また、設計情報だけでなく、各構造体に関する種々の情報(属性情報:例えば、素材や数量、仕様、色等)を含んでいる。そして、BIM情報では、構造体の3Dモデルの情報と構造体の3Dモデルの属性情報とが互いに関連づけられている。
【0014】
本明細書における「建築物」には、木造、鉄筋コンクリート構造、鉄骨造、鉄筋・鉄骨コンクリート造、補強コンクリート造、石造、レンガ造等の種々の構造物が含まれるが、必ずしもこれらの構造物に限定されない。
【0015】
本明細書における「建築物モデル」のおける「各部位」とは、建築物の壁、天井等のように建築物を構成する各構造体を意味している。
【0016】
本明細書における「建築物を構成する構造体」には、柱や壁、天井、階段等の建築物を構成する構造物が含まれる。
【0017】
本明細書における「建築用材料」には、鉄筋やコンクリート、鉄骨等の構造材や、断熱材、断熱吹付及び巻きつけ材、構造用合板、プラスターボード(石膏ボード)等の下地材、化粧ケイ酸カルシウム板、ケイ酸カルシウム板、岩綿吸音板、化粧石膏ボード等の壁や天井の仕上げを構成する全般的な壁用、天井用の内装材、床を構成するOAフロアー、木床、フローリング材、タイルカーペット等の床を構成する全般的な床用内装材、等が含まれる。
【0018】
<本実施形態の建築用システム1>
図1に示すように、本実施形態の建築用システム1は、建築物モデルを設計するBIMシステム10と、BIMシステム10が有する建築物モデルMの情報を利用して、建築用材料を加工するための加工情報を算出する加工情報算出システム20と、を備えている。なお、以下では、本実施形態の建築用システム1において加工情報を算出する建築用材料が建築物の内装に使用される内装材等である場合を代表として説明する。
【0019】
<BIMシステム10>
BIMシステム10は、BIM情報記憶部11と、建築物設計部12と、を備えている。
【0020】
BIM情報記憶部11は、建築物を構成する構造体の3Dモデルの情報と構造体の3Dモデルの属性情報とを関連づけたBIM情報が記憶されたものである。このBIM情報記憶部11は、建築物設計部12からの指令に基づいて、建築物設計部12に各構造体のBIM情報を供給することができるようになっている。
【0021】
建築物設計部12は、BIM情報記憶部11に記憶されている構造体のBIM情報を使用して、建築物の3Dモデルである建築物モデルMを設計するものである。例えば、建築物モデルMを設計する設計者の指令に基づいて、BIM情報を利用して構造物である柱や壁を画面上にレイアウトすることによって、家やビル等の建築物モデルMを設計することができるものである。この建築物設計部12は、設計した建築物モデルMに使用されている構造物のBIM情報を、そのレイアウト情報と関連付けて建築物モデルMの情報として記憶する機能も有している。レイアウト情報とは、建築物モデルMを構成する構造体同士の相対的な位置に関する情報や構造体同士の連結状況などに関する情報を含む情報である。したがって、複数の構造体によって形成される各部位の形状やその大きさ(面積や長さ)の情報や各部位を構成する構造体のレイアウト情報が建築物モデルMの情報に含まれることになる。例えば、建築物モデルMの部位に相当する壁の面積の情報や、その壁を挟む天井と床との距離(つまり壁の高さ)、その壁を挟む柱間の距離(つまり壁の幅)などが建築物モデルMの情報に含まれている。
【0022】
なお、BIMシステム10には、市販されている建物設計用の3次元CADを使用することができる。例えば、Revit(登録商標)等を使用することができる。
【0023】
<加工情報算出システム20>
加工情報算出システム20は、施工場所に使用する建築用材料の形状を算出するシステムであり、材料情報記憶部21と、現場情報記憶部22と、施工仕様情報記憶部23と、加工情報算出部24と、を有している。具体的には、この加工情報算出システム20は、材料情報記憶部21、現場情報記憶部22、施工仕様情報記憶部23から取得した情報に基づいて、施工場所に施工される建築用材料を加工する加工情報を加工情報算出部24が算出する機能を有している。例えば、施工場所が内壁であれば、施工場所の形状とその形状に基づく施工手順に基づいて、どの建築用材料(例えば、下地材等)をどのような寸法でどのような形状に加工すればよいか等を加工情報算出部24が算出することができる。
【0024】
<材料情報記憶部21>
材料情報記憶部21は、建築物モデルMの各部位に使用する内装材等に関する材料情報が記憶されたものである。例えば、内装材等が下地材であれば、下地材の形状や下地材の寸法情報(厚さや幅、長さなど)、下地材の素材に関する情報等が、下地材の材料情報として記憶されている。この材料情報記憶部21は、加工情報算出部24からの指令に基づいて、加工情報算出部24に材料情報を供給することができるようになっている。
【0025】
<現場情報記憶部22>
現場情報記憶部22は、実際に施工を実施する施工場所を撮影した画像情報や実際に施工を実施する施工場所を測定した寸法情報を含む現場情報が記憶されている。内装材等は、建築物の基礎や骨組み等が形成された後、その場所(施工場所)に設置されるが、その状態の施工場所に関する情報が現場情報に含まれている。
【0026】
例えば、施工場所を撮影した画像が画像情報として現場情報に含まれている。この画像情報は、撮影した画像そのものと、撮影した画像を画像処理して得られる施工場所の形状や寸法などの情報と、を含んでいる。施工場所の形状や寸法などの情報は、公知の画像処理システムを利用して得ることができる。例えば、撮影した画像を画像処理して、施工場所において内装材等が設置される領域を検出し、検出された領域の寸法などを画像に基づいて算出すれば、施工場所の形状や寸法などの情報を画像から得ることができる。
【0027】
また、施工場所の寸法や形状を作業者が直接測定した場合には、直接測定したりスキャニングしたりして得られた施工場所の形状や寸法などの情報が現場情報に含まれている。施工場所の形状や寸法を測定する方法はとくに限定されない。レーザ距離計やレーザスキャナ、3Dスキャナ、スケール等の種々の測定機器を使用して形状や寸法を測定することができる。
【0028】
また、画像処理して得られる施工場所の形状や寸法などの情報や施工場所で実際に測定された寸法などの情報は、BIMシステム10のBIM情報記憶部11に記憶されている寸法などの情報と対応する情報が含まれていることが望ましい。例えば、施工場所に内壁を設置する場合であれば、BIM情報記憶部11には内壁が設置される壁を挟む天井と床との距離や壁を挟む柱間の距離などが記憶されているが、この場合であれば、現場情報記憶部22には、内壁が設置される壁を挟む天井と床との距離やその壁を挟む柱間の距離などを実際に測定した寸法等が現場情報に含まれていることが望ましい。
【0029】
<施工仕様情報記憶部23>
施工仕様情報記憶部23は、建築用材料を施工場所に施工する施工手順に関する情報である施工手順情報が記憶されている。また、施工手順情報には、施工手順情報に応じた建築用材料の形状も施工手順と関連づけて記憶されている。内装材等は、施工場所に施工される際に、施工場所の形状、例えば、開口部が存在するか否か、また、開口部の位置や形状に応じて施工する手順が異なっており、施工手順が異なれば施工する内装材等の形状も異なる。したがって、施工手順情報には、各内装材等について、施工場所の形状に応じた施工手順の情報と、その施工手順で使用される各内装材等の形状の情報と、が含まれており、両情報を関連付ける情報も含まれている。
【0030】
<加工情報算出部24>
加工情報算出部24は、施工場所に設置する内装材等を加工するための加工情報を算出する機能を有している。つまり、加工情報算出部24は、施工場所の形状と施工手順に合った形状に内装材等を加工するために必要な情報を含む加工情報を算出する機能を有している。この加工情報に含まれる情報はとくに限定されない。施工場所に設置する建築用材料に合せて必要な情報が含まれていればよい。例えば、壁に設置される下地材であれば、その高さや幅、上端縁に対する下端縁の傾き、壁に開口が形成される場合であれば開口に対応して下地材に形成される切り欠きの形状や大きさ、切り欠きの位置などが加工情報に含まれる。また、建築用材料が、天井の下地材であれば、縦幅と横幅、躯体から天井までの距離、天井に開口が形成される場合であれば開口に対応して下地材に形成される切り欠きの形状や大きさ、切り欠きの位置などが加工情報に含まれる。
【0031】
この加工情報算出部24では、以下の手順(ステップ)で実施される加工情報算出処理によって内装材等の加工情報が算出される(図2参照)。なお、施工場所にどの内装材等を設置するかという情報は、現場情報記憶部22に記憶されている現場情報に含まれていてもよいし、加工情報算出システム20に施工場所に設置する内装材等を入力する入力部等を設けてこの入力部等から入力するようにしてもよい。
【0032】
<加工情報算出手順>
まず、現場情報記憶部22に記憶されている現場情報が、加工情報算出部24に供給される。すると、加工情報算出部24は、現場情報から施工場所および施工場所の形状に関する情報を取得するステップを実施する。例えば、施工場所が天井であればその面積や各辺の長さ(壁間の距離)等の施工場所の形状情報を加工情報算出部24は取得する。壁であればその面積やその高さ(床から天井までの距離)や幅(柱間の距離)等の情報を加工情報算出部24は取得する。また、開口部や割付・役物等が存在する場合には、開口部や割付・役物等の位置や形状、大きさの情報も加工情報算出部24は取得する。
【0033】
現場情報から施工場所の形状情報を加工情報算出部24が取得すると、加工情報算出部24は、施工場所に使用される内装材等の形状や寸法に関する情報を材料情報記憶部21から取得するステップを実施する。例えば、壁に使用する下地材や天井に使用するボードであれば、その形状とその厚さや幅、長さ等の情報を加工情報算出部24は取得する。壁に使用する下地材であれば、その形状とその厚さや幅、長さ等の情報を加工情報算出部24は取得する。また、加工情報算出部24は、現場情報から取得した施工場所の形状情報に基づいて、施工仕様情報記憶部23から施工場所の形状情報に対応する施工手順情報を取得し、この取得した施工手順情報から施工場所の形状情報と関連付け得られている建築用材料の形状の情報を取得する。
【0034】
これらの情報が取得されると、施工場所の形状情報と内装材等の形状や寸法に関する情報と施工場所の形状情報と関連付け得られている建築用材料の形状の情報とを利用して、加工情報算出部24は、施工場所の形状と内装材等の形状とを比較して、施工場所に適した内装材等の形状を算出するステップを実施する。
【0035】
<壁面中央から施工する場合>
例えば、図3に示すように、施工場所が壁Wであり、施工場所の形状情報に含まれている壁Wが横長の長方形でありその幅をL1とする。また、寸法情報に含まれている下地材Bが縦長の長方形でありその幅をL2とする。そして、施工手順では、壁Wの中央から端部に向かって下地材Bを施工するようになっている場合とする。この場合、加工情報算出部24は、まず、中央に施工される下地材Bの形状を算出する。例えば、加工情報算出部24は、壁Wの中央に下地材B1を設置した状態を形成する。具体的には、下地材Bの中間線BCと壁Wの中央線WCが一致した状態を形成する。そして、下地材Bと壁Wの形状を比較し、下地材B1の上端縁と壁Wの上端縁と下地材B1の下端縁と壁Wの下端縁とが一致する形状を、壁Wの中央に設置する下地材B1の形状を加工情報として記憶する。例えば、下地材B1の上下端縁の下地材B1の中間線に対する傾き角度や下地材Bの中間線の位置における長さを加工情報として記憶する。ついで、下地材B1が配置された状態から、下地材B1の左右にそれぞれ下地材B2~B5を配置し、壁Wの形状と各下地材B2~B5の形状を比較する。つまり、隣接する下地材B1~B5の側端縁同士が一致するように下地材B2~B5を配置し、壁Wの形状と各下地材B2~B5の形状を比較する。すると、加工情報算出部24は、各下地材B2~B5について、壁Wの形状に合う形状に加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。例えば、下地材B1と同様に、各下地材B2~B5の上下端縁のそれぞれの中間線に対する傾き角度やそれぞれの中間線の位置における長さを加工情報として記憶する。
なお、下地材B4,B5が壁面Wの側端と重なる場合には、側端縁が壁Wの側端縁と一致する形状となるように下地材B4,B5の形状を算出し、かかる下地材B4,B5を加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
【0036】
<開口部を有する場合>
例えば、図4に示すように、施工場所が中央部に開口Whが形成された有開口壁面W2とする。そして、施工手順では、開口Whの角部cに下地材Bを施工し、その後他の部分に下地材Bを施工するようになっている場合とする。この場合、加工情報算出部24は、まず、開口Wh近傍に配置される下地材Be、Bdの形状を算出する。加工情報算出部24は、開口Whの角部cを含むように下地材Bを設置した状態を形成する。具体的には、開口Whの上部の2つの角部cの位置に、各下地材B間に隙間ができないように下地材Bを並べた状態を形成する(図4(A))。そして、下地材Bと有開口壁面W2および開口Whの位置を比較し、上端縁と有開口壁面W2の上端縁が一致し、かつ、開口Whの角部cに対応する切欠きが形成された下地材Beの形状を算出し、この下地材Beを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。また、側端縁と開口Whの側辺bとが一致し、かつ、下地材B1の下端縁と有開口壁面W2の下端縁が一致する形状の下地材Bdの形状を算出し、この下地材Bdを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。ついで、開口Whの位置に、下地材Be、Bdが配置された状態から、下地材Be、Bdの左右にそれぞれ下地材B2、B3を配置し、壁W2の形状と各下地材B2、3の形状を比較する。つまり、隣接する下地材Be,Bd,B6~B9の側端縁同士が一致するように下地材B6~B9を配置し、有開口壁面W2の形状と各下地材B6~B9の形状を比較する。すると、加工情報算出部24は、有開口壁面W2の形状に合う形状の各下地材下地材B6~B9の形状を算出し、各下地材B6~B9を加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
なお、下地材B6~B9が壁面Wの側端と重なる場合には、側端縁が壁Wの側端縁と一致する形状となるように下地材B6~B9の形状を算出し、かかる下地材B6~B9を加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
【0037】
また、有開口壁面W2に下地材Bを施工する手順としては、図4のように開口Whの角部cに対応する切欠きが形成された下地材Beを施工するもの以外にも、図5に示すように切り欠きを有しない下地材Bだけを使用する施工方法もある。この場合も、図4で示した手順と同様に、開口壁面W2の開口Wh部分に各下地材B間に隙間ができないように下地材Bを並べた状態を形成し(図5(A))、その後、開口Whに接する下地材Bf~Bgの形状を算出し、下地材Bf~Bgを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。ついで、開口Whの位置に、下地材Bf~Bgが配置された状態から、下地材Bf,Bhの左右にそれぞれ下地材B10,B11を配置し、壁W2の形状と各下地材B10,B11の形状を比較する。つまり、隣接する下地材Bf,Bh,B10,B11の側端縁同士が一致するように下地材Bf,Bh,B10,B11を配置し、有開口壁面W2の形状と下地材B10,B11の形状を比較する。すると、加工情報算出部24は、有開口壁面W2の形状に合う形状の各下地材B10,B11の形状を算出し、各下地材B10,B11を加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
なお、下地材B10,B11が壁面Wの側端と重なる場合には、側端縁が壁Wの側端縁と一致する形状となるように下地材B10,B11の形状を算出し、かかる下地材B10,B11を加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
【0038】
<二重張りの壁面を形成する場合>
例えば、図6に示すように、壁面Wに二重に下地材Bを設置するとする。この場合、壁Wであり、施工場所の形状情報に含まれている壁Wが横長の長方形でありその高さをH1とする。また、寸法情報に含まれている下地材Bが縦長の長方形でありその高さH2(<H1)とする。この場合、加工情報算出部24は、内側に下地材Bを設置した状態を形成する。下地材Bは、その高さH2が壁Wの高さH1よりも短いので、各下地材Bの上端縁と壁面Wの上端縁との間に中間材BSを配置した状態とする。そして、下地材Bの上端縁と中間材BSの下端縁とが一致した状態で積層した状態の形状と壁Wの形状を比較し、下端縁と壁Wの下端縁とが一致する形状となる下地材Bの形状を算出し、下地材Bを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。また 上端縁と壁Wの上端縁が一致する形状となる中間材BSの形状を算出し、中間材BSを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する(図6(A))。
ついで、下地材Bと中間材BSを配置した状態の壁面Wの上に、下地材BGと中間材BFとを積層した状態で配置する。このとき、下地材Bと中間材BSとの境界を隠すように下地材BGを配置する。つまり、下地材BGの上端縁を壁Wの上端縁に合せるように下地材BGと中間材BFとを配置する。そして、下地材BGと中間材BFを下地材Bと中間材BDに積層した状態において、下地材BGと中間材BFの形状と壁Wの形状を比較し、上端縁と壁Wの上端縁が一致する形状となる下地材BGの形状を算出し、下地材BGを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。また、下端縁と壁Wの下端縁が一致する形状となる中間材BFの形状を算出し、中間材BFを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
なお、壁面Wの側端と重なる下地材BGと中間材BFでは、側端縁が壁Wの側端縁と一致する形状となる下地材BGおよび中間材BFの形状を算出し、かかる中間材BFおよび下地材BGを加工するために必要な情報を加工情報として記憶する。
【0039】
以上のように、本実施形態の建築用システム1では、加工情報算出システム20によって内装材等の建築用材料の加工情報を作成するので、施工場所に関する現場情報を作成すれば、加工情報算出システム20によって施工現場の状況に合わせて建築用材料を加工するための加工情報を算出することができる。すると、加工情報に基づいて予め建築用材料を加工しておけば、施工現場での加工作業を削減することができる。
【0040】
しかも、施工場所の施工情報に適した形状に建築用材料の加工できるので、施工現場における加工作業を行い易くなる。
【0041】
<ピッキング>
施工現場に搬入される建築用材料はその形状や大きさが類似するものが多い。また、複数の建築用材料が積み重ねた状態で搬入される場合も多い。そのため、搬入されている建築用材料のうち、本来施工すべき建築材料ではなく形状や大きさが若干異なる建築材料を間違って選択して施工してしまう可能性がある。
【0042】
そこで、加工情報算出システム20によって形成される加工情報に、建築用材料に付与する識別ラベルに関する識別情報を含めるようにしてもよい。そして、加工情報に基づいて建築用材料を加工する際に、識別情報に基づいて識別ラベルを建築用材料に付与するようにしてもよい。かかる識別ラベルを建築用材料に付与すれば、施工現場における建築用材料の取り違えなどを防止できるので、作業者の手間を軽減でき、施工時間も短縮できる。
【0043】
識別ラベルの付与は、図7に示すようなフローで実施することができる。
図7に示すように、上述したように加工情報算出部24は加工情報を作成する際に、加工情報と関連付けた建築用材料に付与する識別ラベルに関する情報(識別情報)を作成する。なお、識別情報自体を加工情報の一部の情報としてもよい。
【0044】
加工情報が作成されると、加工情報は加工情報算出部24から建築用材料を加工する加工機(例えば、パネルカットソーやパネルソー、クロスカットソー、軽鉄下地材切断機等)に送信される。
【0045】
加工情報を受信した加工情報は、加工情報に基づいて建築用材料を所定の寸法および形状に加工する。加工が完了すると(または加工と同時に)、加工機が有するプレカット機能によって建築用材料には識別情報で指定されている識別ラベルが建築用材料に付与される。
【0046】
なお、加工機が識別ラベルを建築用材料に付与する機能を有しない場合には、加工機による加工が終了したのち、建築用材料に所定の識別ラベルを付与できる機器によって加工終了後(または加工途中)に建築用材料に識別ラベルが付与される。この場合には、この機器に対して加工情報算出部24から識別情報が供給されるようにしてもよいし、この機器に対して加工機から識別情報(つまり、加工機が加工情報算出部24から受けとった識別情報)が供給されるようにしてもよい。
【0047】
<識別ラベルについて>
建築用材料に付与される識別ラベルは、作業現場で作業者が建築用材料の情報を認識できるものであればよく、とくに限定されない。つまり、作業現場で作業者が、識別ラベルによって建築用材料の寸法や施工場所などの情報を認識できるものであればよい。
【0048】
識別ラベルとしては、例えば、QRコード(登録商標)やバーコード等のように機器によって読み取ることによって、建築用材料に関する情報を取得できるラベルを使用することができる。かかる識別ラベルを使用する場合には、識別ラベルを読み取る機器を作業者が保有していれば、建築用材料に関する情報を把握できるので、建築用材料の取り違えなどを防止できる。一般的なQRコード(登録商標)であれば、作業者が通常現場で使用するスマートフォンやタブレットにQRコード(登録商標)に含まれている情報を表示等するアプリをインストールしていれば、簡単に建築用材料の情報を作業者が取得することができる。
【0049】
かかる識別ラベルを使用する場合には、複数の情報を識別ラベルに含ませることができる。例えば、建築用材料の形状および寸法に関する形状情報や、施工場所に関する場所情報、施工場所において建築用材料を施工する位置に関する位置情報等を含ませることができる。
【0050】
とくに、建築用材料の形状および寸法に関する形状情報、施工場所に関する場所情報、施工場所において建築用材料を施工する位置に関する位置情報が含まれている場合には、識別ラベルを読み取る機器に、識別ラベルに含まれる情報に基づいて、識別ラベルが付されている建築用材料(つまり付されている識別ラベルを読み取った建築用材料)を施工場所における所定の位置に配置した施工画像を形成する画像形成部を設けておいてもよい。すると、作業者は、施工画像を確認することによって建築用材料がどの位置に施工されるかについても把握できるので、建築用材料の取り違えなどを防止する効果を高くできる。
【0051】
<着色による区分>
また、建築用材料に付与する識別ラベルは複数の情報を有して入れば取り違えなどを防止する効果を高くできる一方、識別ラベルを読み取る機器が必要になる。しかも、識別ラベルを機器によって読み取る作業をしなければ、建築用材料について情報を把握することができないので、建築用材料の情報を把握するために時間を要する。そこで、識別ラベルとして、単に、建築用材料の区分に応じた着色を採用してもよい。識別ラベルを単なる着色とすれば、識別ラベルを読み取る機器が不要になるし、建築用材料の判断を迅速に行うことができる。例えば、建築用材料が軽量鉄骨材であれば、長さの異なるものが複数搬入されるが、識別ラベルとしてその長さに応じた色を付けることで、作業者の選択ミスを防ぐことができる。例えば、区分による色分けとしては、1000mm以下は赤色、1500mm以上は青色、その中間を黄色などとすることができる。また、2000mm以下は赤色、3000mm以上は青色、その中間を黄色などとすることもできる。
【0052】
なお、建築用材料を分ける区分数は、あまり多いと作業者がどの色がどの区分であるか理解しづらくなるので、区分数は2~3区分や5区分、多くても7、8区分程度が好ましい。
【0053】
<作業管理部60>
建築現場では、各施工場所において内装工事や電気設備工事、建具取付工事、クロス貼工事、塗装工事等の複数の工事が複数の作業者(施工業者)によって実施されており、各作業者が同時にまたは順番で施工を実施する。そして、各作業の実施状況に応じて作業者に対して対価が支払われるため、作業を実施した日時や作業量、また、どの作業者がどの作業を実施したか、を把握することは重要である。かかる作業状況は、作業者の報告と施工管理者のチェックとを行うことによって正確性を期しているが、複数の工事が複数の作業者によって実施されるため、各施工場所において全ての作業が完了した状況を確認したのでは、実際の作業状況を把握することは難しい。このため、正確な施工状況を把握するには、作業状況を確認する作業は適宜(好ましくは毎日)実施することが望ましい。しかし、確認作業には、施工現場の測定などの作業が必要であり、また、施工面積や施工量などの数値による方法では、施工状況の迅速な把握と正確性を期すこと難しく、また、作業者や管理者の負担が大きい。
【0054】
かかる作業者や管理者の負担を軽減しつつ、施工状況の迅速な把握と正確性を期すために、本実施形態の建築用システム1は、施工現場における施工状況に関する情報を管理する作業管理部60を備えている。この作業管理部60は、積算情報記憶部61と、積算情報記憶部61の情報に基づいて作業管理データを作成する機能を有するデータ作成部62と、を有している。
【0055】
積算情報記憶部61は、施工状況に関する種々の情報を記憶する機能を有している。施工状況に関する種々の情報とは、例えば、施工作業が完了した場所とその場所の施工が完了した日時(施工開始日時を含んでもよい)に関する情報を含む完了作業情報や、施工作業を実施した作業者に関する情報を含む作業者情報である。これらの情報は、入力端末などを利用して管理者によって入力される。積算情報記憶部61では、完了作業情報と作業者情報とが関連付けて記憶されており、施工作業の内容と日時を特定するとその作業を実施した作業者の情報を得ることができるように構成されている。もちろん、作業者の情報から、どの作業を実施したか、また、いつその作業を開始し完了したかに関する情報も得ることができるように構成されている。施工作業の内容とは、例えば、施工した場所と、施工した建築用材料、その建築用材料を施工した面積や数量などである。
【0056】
データ作成部62は、積算情報記憶部61から完了作業情報や作業者情報を取得して作業管理データを作成する機能を有している。この作業管理データは、施工作業の内容と日時、作業者の情報を関連付けてリスト化したものである。例えば、作業管理データは、施工場所と、作業日と、作業者と、その作業者が実施した作業内容と作業量(面積や数量等)と、を含む表などである。また、施工場所の全体の施工状況を把握することが目的であれば、作業管理データは、施工場所と、作業日と、施工場所のおける作業内容と作業量(面積や数量等)と、だけで構成してもよい(図10(C)参照)。
【0057】
このような作業管理部60を設ければ、施工状況の管理が容易になるし、作業管理データに基づいた作業者への支払いの管理や、元請けなどに対する請求の管理も容易になる。
【0058】
とくに、データ作成部62がBIM情報記憶部11に記憶されている建築物モデルMを取得し、この建築物モデルMと施工作業と完了作業情報とを連携させる機能を有していれば、作業内容と作業量を正確に把握できる。例えば、データ作成部62に、完了作業情報に含まれる作業内容、つまり、建築用材料と作業量、より詳しく言えば、その建築用材料を施工した場所と施工面積や数量と、に基づいて、その内容を建築物モデルM上に表示する機能を設ける。すると、表示された建築用材料の位置や量(面積)と建築物モデルMとが一致していれば作業管理データの入力、つまり、作業報告とチェックが正確になされたと把握できるし、一致しなければ作業管理データの入力に誤りがあることを把握できる。すると、作業者への支払いや元請けなどに対する請求の間違いが生じることを防止することができる。
【0059】
作業管理部60と建築物モデルMとの連携を行うのであれば、積算情報記憶部61への入力を、建築物モデルMに基づく画像を利用して入力するようにすることが望ましい。例えば、入力端末のディスプレイなどに、情報を入力する対象となる施工場所の建築物モデルMの画像(二次元画像や三次元画像)を表示させて、その画像上の建築用材料を選択することによって、その建築用材料の施工情報、つまり、作業者や作業完了日を入力できるようにする。そして、入力が完了した建築用材料の表示(色等)が変化して施工が完了した建築用材料(施工場所)が建築物モデルMの画像で認識できるようにする。また、入力された情報が建築物モデルMの建築用材料と関連付けられて積算情報記憶部61に記憶されるようにする。
【0060】
かかる構成とした場合、施工の進行状況を画像として把握できるので、施工状況の把握をしやすくなる。しかも、建築物モデルMの建築用材料と建築用材料の施工情報がリンクされているので、データ作成部62が作成する作業管理データにおいて、完了作業情報に含まれる作業内容に応じた作業量が正確に算出できるので、作業者への支払いや元請けなどに対する請求が正確になる。
【0061】
以下に、上記のように、作業管理部60のデータ作成部62がBIM情報と連携している場合に、作業管理データを作成するフローを説明する。
【0062】
まず、施工現場での作業が完了すると、作業を実施した作業者または管理者が施工場所の図面(タブレット端末などの画面に表示された画像でもよいし印刷物でもよい)である施工場所画像において、施工した部分にマークを付した施工場所画像(施工状況画像という)を作成する。このマークはとくに限定されないが、作業した領域および建築用材料などの着色であれば、施工状況画像を見た管理者や他の作業者が作業した場所および建築用材料の把握が容易になる。
【0063】
施工状況画像が作成されると、この施工状況画像に基づいて、作業管理部60に施工状況に関する情報が入力される。つまり、データ入力者が施工情報を入力する指示を作業管理部60に与える。このとき、作業者は施工場所の情報も指定して入力を行う。かかる入力が行われると、データ作成部62は、BIMから指定された施工場所の建築用モデルMの情報を取得し、取得した建築用モデルMに基づいて施工場所画像に所定の情報が入力できる入力画面を作成し、モニターなどに表示させる。
【0064】
入力画面が表示されると、作業者は施工状況画像に基づいて、施工状況に関する情報を入力する。具体的には、施工状況画像においてマークがされている場所や建築用材料を指定し、その施工完了の日時や施工業者などの情報を入力する。そして、入力が完了したことを入力すると、データ作成部62は入力した情報を確認する画像を形成して表示する。具体的には、作業を完了した精工場所や建築用鵜材料の部分が着色された画像が形成されて表示される。そして、管理者などの入力者が画像を確認して問題がなければ、入力終了を指示すると、データ作成部62は、入力された情報を含む作業管理データを作成する。
【0065】
なお。上記のごとき入力方法を採用する場合には、入力端末から作業者が直接作業状況を入力して管理者がその入力を確認する方法を採用してもよい。この場合、作業者自身が作業状況の把握ができるし、実際に作業した場所と見比べて記載内容の確認をできるので、施工完了に関する情報の精度を高めることができる。もちろん、管理者のチェックにおいても、チェックが容易になるし、チェックの正確性を高めることができる。
【0066】
<物流管理部80>
建築現場には多数の施工場所があり、各施工場所にその場所で施工する建築用材料が搬送される。例えば、パレットなどに載せられた状態で複数の建築用材料が搬送される。ここで、各施工場所で使用される建築用材料は、複数の種類の建築用材料が、それぞれ複数使用されるため、使用される建築用材料を各施工場所に全て置いておくことはできず、施工状況等に応じて、適切な建築用材料を各施工場所に搬送することが必要である。
【0067】
そこで、各施工場所に対する建築用材料の搬送を適切に行うために、施工状況等に応じて、適切な建築用材料を各施工場所に搬送するために、施工状況情報記憶部81と、配送決定部82と、有する物流管理部80を設けておくことが望ましい。
【0068】
施工状況情報記憶部81は、建築現場の各施工場所において実施する各施工に関する情報である施工状況情報を記憶する機能を有している。施工状況情報には、例えば、各施工現場でこれまでに完了した施工内容に関する情報や現在実施されている施工の内容に関する情報(これらをまとめて施工状況情報という場合がある)、各施工現場における施工の順序に関する情報である作業工程情報などが記憶されている。また、施工状況情報記憶部81は、入力端末などから現場施工情報が入力されると、その入力情報に基づいて施工状況情報を更新する機能を有している。
【0069】
なお、本実施形態の建築用システム1が上述した作業管理部60を有している場合には、施工状況情報記憶部81は、作業管理部60からの情報に基づいて施工状況情報を取得して各情報を更新してもよいし、施工状況情報記憶部81は、各施工現場における施工の順序に関する情報のみを有するようにしてもよい。しかし、作業管理部60の情報は、各作業日の作業や一定の期間の作業が完了したのちに更新されるので、リアルタイムで施工状況情報を使用するのであれば、施工状況情報記憶部81は、現場施工情報を独自に有していることが望ましい。
【0070】
配送決定部82は、施工状況情報記憶部81に記憶されている作業工程情報と施工状況情報とに基づいて、建築用材料の配送タイミングを決定する機能を有するものである。具体的には、施工状況情報記憶部81における作業工程情報と施工状況情報とに基づいて、各作業現場において必要となる建築材料、つまり、配送する建築用材料を配送タイミングや配送する場所(施工場所やストックヤード等)を決定する機能を有している。例えば、作業工程情報からある施工場所Aにおいて壁の下地材を施工する作業に着手した旨の情報が施工状況情報記憶部81の作業工程情報に入力されるとする。すると、その情報と施工状況情報とに基づいて、下地材を施工する作業が完了するタイミングでは、次に実施する工程で必要となる建築用材料を施工場所Aに配送が完了するように配送タイミングや配送する場所(施工場所やストックヤード等)を決定する機能を有している。なお、決定した配送タイミングや配送する場所の情報は作業者が有する端末に供給され、作業者は配送決定部82の情報に基づいて建築用材料を所定の場所に配送する。
【0071】
かかる物流管理部80を設けておけば、施工場所に適切なタイミングで適切な量の建築用材料を提供できるので、施工場所に必要な建築用材料がないといった問題や、必要以上の建築用材料が施工場所やストックヤード等に滞留して作業効率が低下するといった問題が生じることを防止できる。
かかる物流管理部80による建築用材料の配送を決定するフローを説明する。
図9示すように、施工状況情報が施工状況情報記憶部81に入力されると、施工状況情報記憶部81は施工状況情報を更新し、配送決定部82は、更新された施工状況情報と作業工程情報とに基づいて配送タイミングや配送する場所、および、配送する建築用材料を含む配送タイミング情報を作成する。
配送タイミング情報が作成されると、配送決定部82は作成された配送タイミング情報を作業者に送信し、作業者はその情報に基づいて、所定の建築用材料を保管場所から所定の作業現場に配送する。
このように、建築用材料を配送するタイミングが決定されるので、適切な場所に適切なタイミングで建築用材料を配送することができる。
【0072】
また、物流管理部80は、各施工場所の位置と施工状況情報、作業工程情報を比較して、建築用材料を配送するタイミングを調整する機能を有していることが望ましい。例えば、施工場所Aと施工場所Bとが同じ作業用エレベータを使用する場合には、施工場所Aの作業状況と施工場所Bの作業状況とを比較して、作業用エレベータをいずれの施工場所に建築用材料を配送するために使用すべきか優先順位を決定するようにする。すると、建築用材料を急いで配送する必要がある施工場所に優先して建築用材料を配送できるので、各施工場所だけでなく複数の施工場所での作業の効率化を図ることができる。とくに、大型の建築用材料を運ぶことができる作業用エレベータの数が限られている場合には、その作業用エレベータを使用して配送する建築用材料を制限したり大型の建築用材料が優先してその作業用エレベータで配送されたりするように、建築用材料を配送するタイミングや配送ルートを調整する機能も有していることが望ましい。
【0073】
また、物流管理部80の施工状況情報記憶部81は、作業者が保有する端末から入力される、建築用材料が配送された場所や時間に関する情報や配送情報を記憶する配送状況記憶機能を有していてもよい。この場合、配送決定部82に、建築物モデルMから作成した配送管理画像を表示し、施工場所画像建築用材料が配送された場所や時間に関する情報や配送情報に基づいて配送管理画像上に建築用材料の位置などを表示する機能を設けてもよい。すると、施工管理者等が配送管理画像を確認することによって配送が適切に行われているのか把握できるし、配送管理画像を作業者が端末などで確認することができれば、必要な建築用材料の配送遅延が生じても、作業者が建築用材料の位置を把握して自ら建築用材料を搬送することも可能になる。
【0074】
また、物流管理部80は、加工情報算出システム20の加工情報算出部24に対して作業工程情報や施工状況情報、配送情報を提供する機能を有していてもよい。この場合、作業工程情報や施工状況情報、配送情報に基づいて、適切なタイミングで、適切な施工場所に配送する建築用材料について加工情報を作成することができる。例えば、施工作業が予定よりも遅れている施工現場では、加工情報を作成して建築用材料を加工しても加工された建築用材料が施工場所に搬送できない場合があるし、搬送されても施工開始まで施工場所に積置かれたままになり、他の作業の邪魔になる可能性もある。また、先に施工する建築用材料の配送の遅れが生じている場合にも、建築用材料が施工場所に搬送されない場合があるし、加工工場に積置かれたままになり他の作業の邪魔になる可能性がある。したがって、物流管理部80から加工情報算出システム20の加工情報算出部24に対して作業工程情報や施工状況情報、配送情報を提供するようにすれば、上記のような問題が生じることを防止できる。つまり、施工が遅れている現場で使用する建築用材料の加工情報が供給された場合には加工を保留し、その情報よりも後から供給された加工情報が建築用材料を提供することによって作業を実施できる状況にある作業現場に提供する建築用材料であれば、その加工情報の建築用材料の加工を優先するようにしてもよい。
【0075】
<耐震構造検討システム70の説明>
図1に示すように、本実施形態の建築用システム1は、上述したBIMシステム10と、加工情報算出システム20と、に加えて、耐震構造検討システム70を備えていてもよい。
【0076】
天井裏や床下、壁等の耐震補強する個所は、作業者が直接寸法測定を行ったり定められた基準を満たした施工をしたりすることが困難である場合がある。例えば、吊天井の天井裏であれば、様々な配管や吊天井を指示する構造物が存在しており、耐震構造材を自由に設置できる空間が無い場合が多い。この場合、耐震構造材として、所望の耐震強度を発揮させることができる耐震構造材を選択し、その中で実際に設置可能なものを選択する必要がある。
【0077】
耐震構造検討システム70は、建築物モデルMにおける耐震補強する個所の情報と、耐震構造材記憶部71に記憶されている耐震構造材の情報に基づいて、耐震補強モデル設計部72が、建築物モデルMにおける耐震補強する個所に耐震構造材を配置した耐震補強モデルを形成する機能を有している。
【0078】
耐震構造材記憶部71は、耐震構造材の情報が記憶されているものである。耐震構造材の情報は、例えば、耐震構造材の耐震強度や適用可能な個所、寸法、形状に関する情報であり、この情報を用いて耐震構造材の3Dモデルを形成できるものである。
【0079】
耐震補強モデル設計部72は、BIMシステム10に記憶されている建築物モデルMの情報に基づいて、建築物において耐震補強を検討する部位の3Dモデルを表示し、この3Dモデルに耐震構造材の3Dモデルを配置して表示するものである。つまり、耐震補強モデル設計部72は、作業者が耐震補強を検討する建築物の部位を入力してその部位の3Dモデルを表示し、作業者が耐震構造材を選択してその建築物の部位の3Dモデル上に耐震構造材の3Dモデルをレイアウトする機能を有している。そして、耐震補強モデル設計部72は、耐震構造材が配置された耐震補強モデルを形成し記憶する機能も有している。
【0080】
上述したように、かかる耐震構造検討システム70では、建築物において耐震補強を検討する部位の3Dモデル上に耐震構造材の3Dモデルを配置できる。すると、耐震補強を検討する部位に様々な部材(配管や構造材等)が存在していても、これらの部材を干渉しないように耐震構造材の配置を検討できる。したがって、吊天井の内部や床下等のように、作業者が直接寸法測定を行ったり定められた基準を満たした施工をしたりすることが困難である個所であっても耐震補強を検討でき、適切な耐震補強モデルを設計するが可能となる。
【0081】
上記例では、建築物モデルMにおける耐震補強する個所に既に設備が設けられている場合を説明した。しかし、建築物モデルMにおいて、適切な耐震補強ができるように耐震構造材を配置したのち、設備を配設する位置を決定するようにしてもよい。例えば、前記設備情報に基づいて、前記建築物モデルにおける耐震補強する個所と対応する部位に設備を配置した設備レイアウトモデルを形成する機能を耐震補強モデル設計部72に設ける。すると、耐震補強モデル設計部72は、耐震補強モデルを設計したのち設備レイアウトモデルを設計できるので、適切な耐震補強ができるように耐震構造材を配置した耐震補強モデルを設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の建築用システムは、鉄筋コンクリート造(RC造)やスチール造(S造)等の建築物の内装等に使用される建築用材料の数値拾いやプレ加工の設計を行うシステムに適している。
【符号の説明】
【0083】
1 BIMシステム
10 BIMシステム
11 BIM情報記憶部
12 建築物設計部
20 加工情報算出システム
21 材料情報記憶部
22 現場情報記憶部
23 施工仕様情報記憶部
24 加工情報算出部
60 作業管理部
61 積算情報記憶部
62 データ作成部
70 耐震構造検討システム
71 耐震構造材記憶部
72 耐震補強モデル設計部
80 物流管理部
81 施工状況情報記憶部
82 配送決定部

図1
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図10