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特開2024-99476界面活性剤を分離するためのクロマトグラフィーカラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099476
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】界面活性剤を分離するためのクロマトグラフィーカラム
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/283 20060101AFI20240718BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20240718BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240718BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240718BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B01J20/283
B01J20/281 G
B01J20/281 Y
B01J20/281 X
G01N30/88 C
G01N30/26 A
G01N30/34 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210465
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】63/479,585
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/503,722
(32)【優先日】2023-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ロォン
(72)【発明者】
【氏名】チェンチェン・フゥー
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ・コンダヴィーティ
(72)【発明者】
【氏名】タ・チェン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ・マックウェイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】界面活性剤の純度を特徴付けるためのクロマトグラフィー分離媒体及び分離カラムを提供する。
【解決手段】分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基およびペンダントシアノ官能基を有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を有する分離媒体を備える。多孔質基材は、約50Åから約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有する。カラムは、約1.0から100mm、例えば4.6mmの内径、および約10mmから約250mmの長さを有する。特徴付けられる界面活性剤が、ポリソルベート80PS80などの非イオン界面活性剤である。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤の純度を特徴付けるためのクロマトグラフィー分離カラムであって、
ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体であって、前記多孔質基材が約50Åから約500Åの細孔径と約1.0μmから約100μmの平均粒径とを有する分離媒体と、
前記分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムであって、約1.0から100mmの内径と約10mmから約250mmの長さを有するカラムと
を備えるクロマトグラフィー分離カラム。
【請求項2】
前記特徴付けられる界面活性剤が、非イオン界面活性剤を含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤が、ポリソルベート-80を含む、請求項2に記載のカラム。
【請求項4】
前記多孔質基材が、水和金属酸化物、水和半金属酸化物または有機ポリマーを含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項5】
前記多孔質基材が、シリカを含む、請求項4に記載のカラム。
【請求項6】
前記多孔質基材が、約3.5μmの粒径を有する、請求項1に記載のカラム。
【請求項7】
前記多孔質基材が、約300Åの細孔径を有する、請求項1に記載のカラム。
【請求項8】
前記カラムの内径が、2.1mmである、請求項1に記載のカラム。
【請求項9】
前記長さが、約50mmから150mmである、請求項1に記載のカラム。
【請求項10】
前記分離媒体が、1.0から8.0のpH範囲における分解に耐えることができる、請求項1に記載のカラム。
【請求項11】
前記分離媒体が、約20から80℃の温度範囲で使用できる、請求項1に記載のカラム。
【請求項12】
前記カラムは、約400barまでの操作圧で使用できる、請求項1に記載のカラム。
【請求項13】
ポリソルベート80の特徴付けを促す方法であって、
ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料を用意するステップと、
クロマトグラフィー分離カラムを用意するステップと
を含み、前記カラムが、
ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体であって、前記多孔質基材が約50Åから約500Åの細孔径と約1.0μmから約100μmの平均粒径とを有する分離媒体と、
前記分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムであって、約1.0から100mmの内径と約10mmから約250mmの長さを有するカラムと
を備える、方法。
【請求項14】
用意された前記クロマトグラフィー分離カラムの前記多孔質基材が、シリカを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
用意された前記クロマトグラフィー分離カラムの前記多孔質基材が、約3.5μmの粒径を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
用意された前記クロマトグラフィー分離カラムの前記多孔質基材が、約300Åの細孔径を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
用意された前記クロマトグラフィー分離カラム方法の前記内径が、2.1mmである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
用意された前記クロマトグラフィー分離カラムの前記長さが、約50mmから約150mmである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物が、1つまたは複数の長鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン、アルデヒド、ケトン、ギ酸、酢酸および過酸化物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記クロマトグラフィー分離カラムを、液体クロマトグラフィー機器に据え付けるステップをさらに含む、請求項13から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
移動相を用意して、前記ポリソルベート80および前記ポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物の分離を達成するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記移動相が、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、アンモニア、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノールおよびアセトンの1つまたは複数を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記移動相を使用した、グラジエントに基づく分離のための説明書を用意するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
界面活性剤の前記特徴付けのためのクロマトグラフィー分離カラムであって、ジイソプロピル側鎖基およびペンダントシアノ官能基を有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体、約300Åの細孔径、および約3.5μmの平均粒径を有する前記多孔質基材;ならびに前記分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムを含み、前記カラムが、約2.1mmの内径および約50mmから150mmの長さを有する、クロマトグラフィー分離カラム。
【請求項25】
分離される前記界面活性剤が、非イオン界面活性剤を含む、請求項24に記載のカラム。
【請求項26】
前記非イオン界面活性剤が、ポリソルベート80を含む、請求項25に記載のカラム。
【請求項27】
ポリソルベート80を特徴付ける方法であって、
ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料を調製するステップと、
前記試料をクロマトグラフィー分離カラム中に注入するステップであって、前記カラムが、ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体であって、前記多孔質基材が約50Åから約500Åの細孔径と約1.0μmから約100μmの平均粒径とを有する分離媒体と、前記分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムであって、約1.0から100mmの内径と約10mmから約250mmの長さを有するカラムとを備える、ステップと、
前記ポリソルベート80および前記ポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物が、少なくとも3の分解能で分解されるようなグラジエント移動相を使用して、前記ポリソルベート80および前記ポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を溶出するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記ポリソルベート80および前記ポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物が、少なくとも5の分解能で分解される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記粒状多孔質基材が、約300Åの細孔径、および約3.5μmの平均粒径を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記カラムが、約2.1mmの内径および約50mmの長さを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記グラジエント移動相が、酢酸アンモニウムおよびメタノールを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリソルベート80および前記ポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物の溶出が、10分未満に発生する、請求項28から31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願のクロスリファレンス]
本出願は、2023年1月12日に出願された米国特許出願第63/479,585号に対する優先権を主張し、その全体の内容は、参照により本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0002】
本明細書で開示されている態様および実施形態は、全般的に、医薬製品における界面活性剤、例えばポリソルベートを検出および分離するためのカラムに関連している。
【発明の概要】
【0003】
一態様によれば、界面活性剤の純度を特徴付けるためのクロマトグラフィー分離カラムが提供される。クロマトグラフィー分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体を備え得る。多孔質基材は、約50から約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有し得る。クロマトグラフィー分離カラムは、分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムも備え得る。このカラムは、約1.0から100mmの内径および約10mmから約250mmの長さを有し得る。
【0004】
いくつかの実施形態では、特徴付けられる界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、非イオン界面活性剤は、ポリソルベートを含み得る。ある実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート80であり得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、水和金属酸化物、水和半金属酸化物または有機ポリマーであり得る。具体的な実施形態では、多孔質基材は、シリカ、例えばシリカ粒子、例として、シラノール表面を有するシリカ粒子であり得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、約3.5μmの粒径を有し得る。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、約300Åの細孔径を有し得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、カラムの内径は、2.1mmであり得る。いくつかの実施形態では、カラムの長さは、約50mmであり得る。いくつかの実施形態では、カラムの長さは、約100mmであり得る。いくつかの実施形態では、カラムの長さは、約150mmであり得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、分離媒体は、1.0から8.0のpH範囲における分解に耐えることができる。ある実施形態では、分離媒体は、約20から80℃の温度範囲で使用することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、カラムは、約400barまでの操作圧で使用することができる。
【0010】
一態様によれば、ポリソルベート80の特徴付けを促す方法が提供される。この方法は、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料を用意するステップを含み得る。この方法は、クロマトグラフィー分離カラムを用意するステップも含み得る。クロマトグラフィー分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体を備え得る。多孔質基材は、約50から約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有し得る。クロマトグラフィー分離カラムは、分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムも備え得る。このカラムは、約1.0から100mmの内径および約10mmから約250mmの長さを有し得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの多孔質基材は、シリカを含み得る。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの多孔質基材は、約3.5μmの粒径を有し得る。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの多孔質基材は、約300Åの細孔径を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラム方法の内径は、約2.1mmであり得る。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの長さは、約50mmであり得る。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの長さは、約100mmであり得る。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの長さは、約150mmであり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、試料におけるポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物は、1つまたは複数の長鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン、アルデヒド、ケトン、ギ酸、酢酸および過酸化物を含み得る。
【0014】
さらなる実施形態では、この方法は、クロマトグラフィー分離カラムを、液体クロマトグラフィー機器に据え付けるステップを含み得る。
【0015】
さらなる実施形態では、この方法は、移動相を用意して、ポリソルベート80およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物の分離を達成するステップを含み得る。移動相は、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、アンモニア、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノールおよびアセトンの1つまたは複数を含み得る。例えば、具体的な実施形態では、移動相は、酢酸アンモニウム、例えば10mM酢酸アンモニウム、およびメタノールの1つまたは両方を含み得る。さらなる実施形態では、移動相は、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、例として水中のTFA、例として水中の0.1%TFA、およびメタノールの1つまたは両方を含み得る。
【0016】
さらなる実施形態では、この方法は、移動相を使用した、グラジエントに基づく分離のための説明(instructions)を用意するステップを含み得る。
【0017】
一態様によれば、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80の特徴付けのためのクロマトグラフィー分離カラムが提供される。クロマトグラフィー分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体を備え得る。多孔質基材は、約300Åの細孔径、および約3.5μmの平均粒径を有し得る。クロマトグラフィー分離カラムは、分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムも備え得る。このカラムは、約2.1mmの内径および約50mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約100mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約150mmの長さを有し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、特徴付けられる界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、非イオン界面活性剤は、ポリソルベートを含み得る。ある実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート80であり得る。
【0019】
一態様によれば、ポリソルベート80を特徴付ける方法が提供される。この方法は、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料を調製するステップを含み得る。この方法は、試料をクロマトグラフィー分離カラムに注入するステップを含み得る。クロマトグラフィー分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基とペンダントシアノ官能基とを有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体を備え得る。多孔質基材は、約50Åから約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有し得る。カラムは、約1.0mmから約100mmの内径、および約10mmから約250mmの長さを有し得る。この方法は、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物が、少なくとも3の分解能で分解されるようなグラジエント移動相を使用して、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を溶出するステップをさらに含み得る。
【0020】
ある実施形態では、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物は、少なくとも5の分解能で分解される。
【0021】
いくつかの実施形態では、粒状多孔質基材は、約300Åの細孔径、および約3.5μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約50mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約100mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約150mmの長さを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、グラジエント移動相は、酢酸アンモニウム、例えば、10mM酢酸アンモニウム、およびメタノールを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリソルベート80およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物の溶出は、10分未満で発生する。
【0024】
添付の図面は、スケール通りには描かれていない。図面では、様々な図で例示されている同一またはほぼ同一の各要素は、同じ符号により表される。明確性の目的のために、すべての要素が、すべての図面において標識されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】一実施形態に係る分離媒体の多孔質粒子形態を例示する図であり、完全多孔質粒子を例示する図である。図1Bは、固体コアおよび多孔質シェルを有する粒子を例示する図である。
図1B】一実施形態に係る分離媒体の多孔質粒子形態を例示する図であり、固体コアおよび多孔質シェルを有する粒子を例示する図である。
図2】一実施形態に係るクロマトグラフィー分離カラムを例示する図である。
図3】ジイソプロピルシアノプロピルシランで官能基化した後の、1.8μm、300Å媒体粒子の走査電子顕微鏡法(SEM)画像を例示する図である。
図4】ジイソプロピルシアノプロピルシランで官能基化した後の、2.7μm、120Åコアシェル媒体粒子のSEM画像を例示する図である。
図5A】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、緩衝液選択の効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、水中0.1%TFA緩衝液でのクロマトグムを例示する図である。
図5B】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、緩衝液選択の効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、10mM酢酸アンモニウム緩衝液でのクロマトグラムを例示する図である。
図6A】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、分離媒体の細孔径の効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、80Åの細孔を有する分離媒体でのクロマトグラムを例示する図である。
図6B】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、分離媒体の細孔径の効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、300Åの細孔を有する分離媒体でのクロマトグラムを例示する図である。
図7A】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、分離媒体の粒径の効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、3.5μm直径粒子を有する分離媒体でのクロマトグラムを例示する図である。
図7B】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、分離媒体の粒径の効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、1.8μm直径粒子を有する分離媒体でのクロマトグラムを例示する図である。
図8A】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、クロマトグラフィーカラムの長さの効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、長さ50mmのクロマトグラフィーカラムでのクロマトグラムを例示する図である。
図8B】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、クロマトグラフィーカラムの長さの効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、長さ150mmのクロマトグラフィーカラムでのクロマトグラムを例示する図である。
図9A】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、分離媒体粒子タイプの効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、2.7μm直径コアシェル粒子を有する分離媒体でのクロマトグラムを例示する図である。
図9B】オレイン酸およびポリソルベート80エステルを含有する試料の分離に対する、分離媒体粒子タイプの効果を示すクロマトグラムを例示する図であり、1.9μm直径コアシェル粒子を有する分離媒体でのクロマトグラムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ポリソルベートは、エトキシ化ソルビタンまたはイソソルビドに由来する、また、長鎖脂肪酸でエステル化した、食品およびバイオ医薬製品の両方に普通に使用される非イオン界面活性剤である。バイオ医薬製品では、ポリソルベートは、典型的にはタンパク質の表面への吸着、凝集および粒子形成を防止するために使用される。これらの化合物は、薬物の製造、運送または保存中に機械的応力を受けると、タンパク質分子の界面損傷を阻害することが公知である。医薬的適用のためのポリソルベートの普及は、主に、好都合な生体適合性、低い毒性、およびタンパク質の有効な安定化のためである。商用市場に使用される最も普通のポリソルベートであるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(PS80)は、ポリエトキシ化ソルビタンおよびオレイン酸に由来する、粘性のある水溶性黄色液体であり、ここで親水基は、ポリオキシエチレン側鎖で構成される。市販のPS80は不均質であり、最も普通のプロセスに関連した亜種は、ポリオキシエチレン(POE)基、POEイソソルビドモノエステル、ならびにPOEソルビタン/イソソルビドジ-、トリ-およびテトラ-エステルである。
【0027】
市販のPS80およびPS20は、高度に複雑な化学物質混合物である。産業上の製造プロセスのため、市販のポリソルベートは、構造的に関連した分子の粗混合物で構成される。PS80(ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート)およびPS20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)で予想される構造では、全体の材料のおよそ30%しか明らかにならないことが多い。この極端な不均質性は、プロセスに関連した不純物、特定のベンダーからのロット間のばらつき、異なる合成経路および原料の利用、ならびに様々なレベルの副生成物の組合せから生じる。ポリソルベートは、固有の不均質性に加えて、複数の酸化および加水分解経路を通して分解することも公知であり、このため、複数の分解生成物の形成によりさらに複雑さが増す。ポリソルベートは、自己酸化機構を経由して、また、化学的または酵素的に促進された加水分解により分解することが公知である。
【0028】
ポリソルベートの酸化は、光、上昇温度または様々な遷移金属により加速し得、これによりPEGエステル、ならびにアルカン、ケトン、アルデヒドおよび酸のような分解物が得られる。光への曝露中、ポリソルベート80の水溶液は、ペンダントポリオキシエチレン鎖の自動酸化を受け、これにより、過酸化物誘導体の生成が引き起こされる。これらの過酸化物は、次いで製剤をなす任意のタンパク質分子に酸化損傷を誘導し、また、有効性を低下させることがある。ポリソルベートの加水分解は、極端なpHで発生し(塩基または酸で触媒される)、宿主細胞に由来する酵素によっても促進され得る。ポリソルベートの加水分解は、脂肪酸エステル結合の切断を引き起こし、遊離脂肪酸および親水性種、例えばPEG、PEGソルビタンおよびPEGイソソルビドを生成する。長期間の保存中、ポリソルベートの加水分解では、最終的に薬物製剤における化合物の粒子として沈殿し、生成物の性能を阻害する遊離脂肪酸の蓄積も生じ得る。しかし、ポリソルベートの下流酸化分解生成物、例えば、長鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン、アルデヒド、ケトン、ギ酸、酢酸、過酸化物および他の反応性酸化種は、全体的な治療安定性および効き目に影響を与え得、非経口製剤に使用される場合、さらなる問題、例えば注入部位の刺激を引き起こし得ることが懸念される。この使用のため、広汎な使用を考慮して、ポリソルベート、具体的にはポリソルベート80の完全性をモニターする分析法の開発に大きな関心が持たれている。
【0029】
ポリソルベート、例えばポリソルベート80の特徴付けは、難易度が高かった。現在利用できるクロマトグラフィー分離方法は、異なる生成物の分解能(および後続の同定)を改善するために、典型的には長い実行時間を伴い、試料調製手順を複雑化している。既存のカラムの使用、より短いカラム、操作圧の増加、カラム固定相のより小さい粒径を通じてより速い流れを使用することにより分析時間を減少する試みは、他のエステルおよび分解物と共に2つの重要なポリソルベート80種、ポリソルベート80の主な加水分解生成物であるオレイン酸、およびモノ-エステル形態のポリソルベート80の第一級エステルの分解能の損失をもたらした。したがって、医薬製品開発における重要な問題で、前記化学物質を用いる好適な分離化学物質および分析法の開発。また、したがって、改善した分離基材、ならびに、上で詳述されている欠乏に対応する、かつ/または、無傷のポリソルベートおよび/もしくは分解されたポリソルベート生成物を検出できる、ポリソルベートの検出方法を提供する必要性がある。
【0030】
一態様によれば、本開示は、分離媒体、すなわち、例えば、界面活性剤純度の測定のように、界面活性剤生成物の特徴付けを可能にする物理的および化学的性質の組合せを有する基材を含むクロマトグラフィーカラムを提供する。例えば、本明細書で開示されているクロマトグラフィー分離カラムは、複雑な非イオン界面活性剤、例えばポリソルベート80の反応、例えば加水分解または酸化の生成物およびエステルを、既存の分離技術と比較して増進した分解能および速度で分離できる。分離媒体は、一般的に、シランのケイ素原子に付着した単一の立体保護基を含有する共有結合で付着した単官能性シランを有する基材を含む。基材は、粒状の水和金属酸化物、半金属酸化物、または固体有機ポリマー基材を含み得る。例えば、分離媒体は、米国特許第4847159号、米国特許第4874518号、米国特許第5032266号、および米国特許第5108595号に記載されている分離媒体であり得、それぞれの開示の全体は、いかなる目的でも参照により本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0031】
本明細書で開示されているように、本発明の基材は、1つまたは複数の官能基化反応の支持体として使用するための固体材料である。ある実施形態では、これは、金属酸化物または半金属酸化物、例えば酸化ケイ素、酸化クロムおよび酸化スズであり得る。別法として、基材は、適用された一定の応力下で流れることとなる有機ポリマーまたはプラスチックであり得る。一般的に、基材は、ある範囲の温度、例えば約0から150℃にわたって安定である。いくつかの実施形態では、基材は、200℃を超える温度にて安定である。基材は、粒状材料、例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子であり得る。いくつかの実施形態では、基材は、複合材料であり得る。例えば、基材は、反応性を改善するためにさらに修飾できる金属-または半金属-酸化物フィルムによりコーティングされている、あるタイプの酸化物材料であり得る。非限定的な例として、チタニアは、シリカの薄膜でコーティングされていることがあり、これは次いで、本明細書で開示されているように加水分解および反応させることができる。
【0032】
分離媒体における粒子の大きさは、試料内における分離される分子(複数可)の物理的または化学的性質、例えば大きさ、極性などに基づいて調整され得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、分離媒体における粒子の大きさは、ある大きさの範囲の分子の分離を最適化するように、特定の試料タイプに対して分離媒体の表面積を調整するように、または、液体クロマトグラフィー機器に取り付けられる場合のある範囲の動作条件、すなわち溶媒流量および圧力を指定するように、選択され得る。より小さい粒子、例えば直径100μm未満を有する粒子、例としての直径5μm未満を有する粒子、例として3.5μmの直径を有する粒子は、検体のためにより短い拡散経路を備え得、ひいては分離効率および分解能の1つまたは両方を改善し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、基材のための粒子は、約1.0μmから約100μm、例えば、約1.0μmから約10μm、約1.2μmから約12μm、約1.4μmから約14μm、約1.6μmから約16μm、約1.8μmから約18μm、約2.0μmから約20μm、約2.2μmから約22μm、約2.4μmから約24μm、約2.6μmから約26μm、約2.8μmから約28μm、約3.0μmから約30μm、約3.2μmから約32μm、約3.4μmから約34μm、約3.6μmから約36μm、約3.8μmから約38μm、約4.0μmから約40μm、約5.2μmから約52μm、約5.4μmから約54μm、約5.6μmから約56μm、約5.8μmから約58μm、約6.0μmから約60μm、約6.2μmから約62μm、約6.4μmから約64μm、約6.6μmから約66μm、約6.8μmから約68μm、約7.0μmから約70μm、約7.2μmから約72μm、約7.4μmから約74μm、約7.6μmから約76μm、約7.8μmから約78μm、約8.0μmから約80μm、約8.2μmから約82μm、約8.4μmから約84μm、約8.6μmから約86μm、約8.8μmから約88μm、約9.0μmから約90μm、約9.2μmから約92μm、約9.4μmから約94μm、約9.6μmから約96μm、約9.8μmから約98μmまたは約10.0μmから約100μmの直径を有し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、基材のための粒子は、約1.0μm、約1.2μm、約1.4μm、約1.6μm、約1.8μm、約2.0μm、約2.2μm、約2.4μm、約2.6μm、約2.8μm、3.0μm、約3.2μm、約3.4μm、約3.6μm、約3.8μm、約4.0μm、約4.2μm、約4.4μm、約4.6μm、約4.8μm、約5.0μm、約5.2μm、約5.4μm、約5.6μm、約5.8μm、約6.0μm、約6.2μm、約6.4μm、約6.6μm、約6.8μm、約7.0μm、約7.2μm、約7.4μm、約7.6μm、約7.8μm、約8.0μm、約8.2μm、約8.4μm、約8.6μm、約8.8μm、約9.0μm、約9.2μm、約9.4μm、約9.6μm、約9.8μm、約10μm、約12μm、約14μm、約16μm、約18μm、約20μm、約22μm、約24μm、約26μm、約28μm、30μm、約32μm、約34μm、約36μm、約38μm、約40μm、約42μm、約44μm、約46μm、約48μm、約50μm、約52μm、約54μm、約56μm、約58μm、約60μm、約62μm、約64μm、約66μm、約68μm、約70μm、約72μm、約74μm、約76μm、約78μm、約80μm、約82μm、約84μm、約86μm、約88μm、約90μm、約92μm、約94μm、約96μm、約98μmまたは約100μmの直径を有し得る。具体的な実施形態では、基材の粒径は、1.8μmである。具体的な実施形態では、基材の粒径は、3.5μmである。分離媒体の粒径が小さい、例えば3.5μmまたは1.8μm、ほど、分離媒体の表面積は増加し、分離、すなわち界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、例としてポリソルベート80における1つまたは複数の分解生成物の分解能が改善することが判定された。
【0035】
ポリソルベート80の特徴付けおよび分析に好適なクロマトグラフィーカラム、例えば1.8または3.5μm粒子を有するカラムは、必ずしもポリソルベート80にしか使用されないわけではない。他の界面活性剤、例えばポロキサマー188、すなわち、Pluronic F-68、他のポリソルベート、例えばポリソルベート20、およびTriton X-100も、本明細書で開示されている物理的および化学的特性を有するカラムを使用して分離され得る。さらに、本明細書で開示されている物理的および化学的特性を有するカラムは、生物学的に関連性がある試料、例えば脂質ナノ粒子、例としてコレステロール、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMP-PEG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPG)および1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、ウイルス-様粒子、例えば組換えヒトパピローマウイルス型16 L1タンパク質およびウイルスベクター、例としてアデノ随伴ウイルスセロタイプ1(AAV1)の分離に使用され得る。
【0036】
本明細書で開示されている分離媒体に使用される多孔質粒子は、完全多孔質粒子またはコアシェル形態のものであり得る。例えば、図1Aに例示したように、直径2μm未満、例えば1.8μmの粒子は、粒子の全体が多孔質の完全多孔質であり得る。別法として、図1Bに例示したように、大きい、すなわち5μm以上の粒子は、粒子が内部固体、すなわち無孔の核および多孔質シェルを有し、これにより、液体がシェルを通って流れることが可能となるコアシェル形態のものであり得る。分離媒体における多孔質粒子での細孔のサイズは、試料内における分離される分子(複数可)の物理的または化学的性質、例えば大きさ、極性などに基づいて選択され得る。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、分離媒体における多孔質粒子での細孔のサイズは、分離される、試料内における分子(複数可)の大きさと直線的に相関している、すなわち、多孔質粒子がより大きいと、試料におけるより大きい分子の分離が改善できる。いくつかの実施形態では、基材は、約50Åから約500Å、例えば、約50Åから約150Å、約100Åから約200Å、約150Åから約250Å、約200Åから約300Å、約250Åから約350Å、約300Åから約400Å、約350Åから約450Å、または約400Åから約500Å、例えば、約50Å、約60Å、約70Å、約80Å、約90Å、約100Å、約110Å、約120Å、約130Å、約140Å、約150Å、約160Å、約170Å、約180Å、約190Å、約200Å、約210Å、約220Å、約230Å、約240Å、約250Å、約260Å、約270Å、約280Å、約290Å、約300Å、約310Å、約320Å、約330Å、約340Å、約350Å、約360Å、約370Å、約380Å、約390Å、約400Å、約410Å、約420Å、約430Å、約440Å、約450Å、約460Å、約470Å、約480Å、約490Åまたは約500Åの細孔径を備える。具体的な実施形態では、基材の細孔径は、300Åである。
【0037】
本明細書で開示されているように、基材は、1つまたは複数の官能基化化学物質、例えばシラン試薬と反応することとなる表面を有し得る。例えば、無機固体、例として酸化ケイ素、酸化クロムおよび酸化スズは、一般的に加水分解され、その結果、表面のヒドロキシル、すなわちOH基は、官能基化に利用できるようになる。別法として、これらの材料の表面は、さらなる官能基化を可能にする他の適切な官能基で修飾され得る。例えば、乾燥させた酸化ケイ素粒子の表面は、四塩化ケイ素または塩化チオニルで塩素化され得る。この塩素化された表面は、次いで、反応性Si-HまたはSi-OH基を含有するシラン官能基化試薬と反応させて、より大きい官能基を調整する追加の反応のために、基材を調製することができる。
【0038】
本明細書で開示されているように、基材は、様々な検体に選択性を付与する官能基を調整する、1つまたは複数の異なる化学物質で官能基化され得る。官能基化化学物質のある分類は、基材表面と非反応性シランの反応による。基材を調製するために使用されるシランは、典型的には単官能性であり、シランのケイ素原子に付着している少なくとも1つの立体的保護部分を含む。したがって、本発明で具体化されるシランは、以下の構造
【0039】
【化1】
(式中、X=反応基、例えば塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、水素、--C-C--を含有する基などであり;R、RおよびRは、独立して、アルカン、置換アルカン、アルケン、置換アルケン、アリールまたは置換アリールであるが、R=R=R=H、R=R=R=CH、R=R=HおよびR=CH、R=R=CHおよびR=Hである構造は特に排除される)を有し得る。便宜のため、これらのシランは、立体的保護シランという。本開示に有用なシランは、シランのケイ素原子に付着している、少なくとも1つのジメチルで置換されている第三級炭素部分を含有する。この部分に関連するR基は、メチル(単純なtブチル基)であり得るが、このケースでは、シランのR基が、メチルであってもならず;RおよびRが両方とも水素である構造も特に排除される。R=メチルを有する構造は、一般的に好ましいが、但し、Rがメチルではないことも条件とする。単純なtブチル基を含有するそのような構造は、容易に合成され、シランを基材に付着させるSi-O-結合の立体的保護に一般的に有効である。R基は、より大きい官能基、例えばエチルまたはイソプロピル、例としてジイソプロピルからもなり得る。例えば、基材は、ジイソプロピルシアノプロピルシラン化合物で官能基化され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示のシランは、結合したシランを加水分解から保護することを可能にする立体的性質を有する官能基を含有する。シランにおけるRおよびR基は、同一の官能基であってもなくてもよい。特定の実施形態では、RおよびRは、立体因子のため、シランが基材の表面に配置して、その結果相互反応する目的の化学種への到達を増加させるように異なる大きさであり得る。非限定的な例として、R=メチルまたはイソプロピルは、加水分解に対するシランの安定化を助け、R=Cは、逆相クロマトグラフィーのための強い疎水性の特徴を固定相に付与する。RおよびR基の適切な操作により、固定相が変性する、すなわち、立体配座の変化を生物学的分子、例えばタンパク質に引き起こす傾向を最小化する材料を調製することが実現可能である。さらに、R基により示される立体障害は、シロキサン結合、例えば、シリカ粒子と単官能性シランとの間における結合を、ある範囲の溶媒/溶液pH値にわたり加水分解作用から保護する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている分離媒体は、pH範囲1.0から8.0、例えば、pH1.0からpH3.0、pH2.0からpH4.0、pH3.0からpH5.0、pH4.0からpH6.0、pH5.0からpH7.0、またはpH6.0からpH8.0、例えば、pH1.0から、pH1.5、pH2.0、pH2.5、pH3.0、pH3.5、pH4.0、pH4.5、pH5.0、pH5.5、pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH7.5、またはpH8.0にわたり分解に耐えることができる。
【0041】
本明細書で開示されている分離媒体を調製するために利用されるシランは、意図される用途に合う多彩な官能基を含み得る。官能基は、シラン構造のR基に組み込まれる。例えば、分離媒体が、逆相クロマトグラフィーにおける使用を意図される場合、シランのRは、アルキルまたはアリール基、例えばC、C、n-Cおよびn-C18を含んで、保持に望ましい疎水性相互反応が発生することを可能にし得る。分離媒体が、イオン交換クロマトグラフィーにおける使用を意図される場合、R基は、イオン交換能力を有する官能基、例えば、アニオン交換体としての(CH(CH、およびカチオン交換体としての-(CH-C-SOHを含み得る。特に高度に極性の水溶性生体高分子、例えばタンパク質の分離のためのサイズ排除クロマトグラフィーでは、基材の表面が、高度に極性のR基、例えば-(CH-O-CH(OH)-CHOH、いわゆる「ジオール」官能基で修飾され得る。疎水性相互反応クロマトグラフィーでは、基材に対して弱疎水性固定相が望ましい。例えば、R=メチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルは、この様式のクロマトグラフィーの保持では、穏当な疎水性相互反応を備える。順相クロマトグラフィーのケースでは、極性官能基がシランにR基、例えば-(CH-NHおよび-(CH-CNとして組み込まれる。
【0042】
アフィニティークロマトグラフィー支持構造では、基材は最初に、反応性R-基、例えば-(CH-NHを含有する単官能性シランと反応し得る。これらの基は、次いで特定の生物学的活性のリガンドとさらに反応させて、適切に反応性のR-基、例えば-(CHNHの望ましいシングを行うのに必要なアフィニティー支持構造を生成することができる。これらの基は、次いで特定の生物学的活性のリガンドとさらに反応させて、適切に反応性のR基、例えば-(CH-NHの望ましいシングを行うのに必要なアフィニティー支持構造を生成することができる。これらの基は、次いで特定の生物学的活性のリガンドとさらに反応させて、適切に反応性のR基、例えば-(CH-NHの望ましいシングを行うのに必要なアフィニティー支持構造を生成することができる。これらの基は、次いで特定の生物学的活性のリガンドとさらに反応させて、望ましい分離を行うのに必要なアフィニティー支持構造を生成することができる。Rが、エポキシド基を含有する場合、タンパク質またはペプチドのアミノ末端、すなわちRNHは、直接的反応により連結して、タイプ:-CH(-OH)-CH-NHRの構造を形成し得る。エポキシドも最初に加水分解させて、「ジオール」基を形成し、次いで多彩な他の試薬で活性化することができる。
【0043】
立体的保護単官能性シラン試薬も、液相反応用の触媒としての用途を有する基材を調製するために使用される。酸性または塩基性触媒としての使用では、強酸性のスルホン酸基または強塩基性の四級化アミン基がそれぞれ、上のイオン交換クロマトグラフィー充填について記載されているものと同一の手法で、シラン構造に組み込まれ得る。金属、例えば白金およびパラジウムをイオンとして、または有機金属錯体で含有するリガンドは、酸化または還元による選択的触媒のために本発明の基材に組み入れられ得る。
【0044】
一実施形態では、基材は、ジイソプロピル側鎖基およびペンダントシアノ官能基を有する単官能性シランを含み、例えば、逆相クロマトグラフィーカラムは、固定相に固定化されたシアノ基を含む。シアノ基は、-CN基を含有する任意の化合物を含む。本明細書で開示されているように、任意の好適なシアノ基は、-CNを基材の表面に添加する官能基化反応の一部として使用され得る。CN基を含むカラムは、Agilent ZORBAX(登録商標)SB300-CNまたはAgilent InfinityLab POROSHELL(登録商標)120 SB-CNを含む。
【0045】
ある実施形態では、カラムは、例えば約50Åから約500Å、例として約80Å以上の細孔径を有するシリカ粒子カラムであり得る。ある実施形態では、細孔径は、大きさ約120Åから約300Åの間である。例えば、約300Åの細孔径が使用され得る。好適なシリカカラムの例は、Agilent ZORBAX(登録商標)SB300-CNまたはAgilent InfinityLab POROSHELL(登録商標)120 SB-CNを含むが、それらに限定されない。カラムは加熱され得、例えば、カラムの温度は、約20℃から約80℃の間、または約40℃から約60℃、または約50℃であり得る。
【0046】
分離媒体、例えばシリカ粒子を収容または含有するのに使用されるカラムは、適切な直径、長さおよび材料の任意の好適なカラムであり得る。例えば、カラムは、金属材料、例えばステンレス鋼、またはクロマトグラフィー分離に適切な物理的性質、例えば溶媒耐性、圧力耐性を有する別の合金から作られていることがある。他のクロマトグラフィーカラムに好適な材料は、当業界で公知である。
【0047】
カラムの寸法、すなわち内径および長さは、異なる分離特性、および液体クロマトグラフィー機器の操作パラメーターを達成するように選択され得る。一般に、カラムの長さがより短いと、分離実験の実行時間を短縮し、試料における特定の検体の保持時間を短縮する。対照的に、カラムがより長いと、一般的に滞留時間が延長し、これにより、所定の試料に対するクロマトグラムピークの分解能が増進する。クロマトグラフィーカラムの内径は、一般的にピーク高さ応答を増大させ、検出の限界および定量する能力を改善できる。カラムの直径がより大きいと、より大きい試料の装填、およびパーセンテージの低い検体、例えば化学的分解生成物の分析が可能になる。直径カラムがより小さいと、より小さい試料体積の検出感受性を改善できる。これらの変量は、典型的には、バランス要因のうち、溶媒流量、操作圧および試料装填体積によりバランスが取られる。
【0048】
いくつかの実施形態では、カラムは、内径約1.0mmから約100mm、例えば、約1.0mmから約10mm、約1.2mmから約12mm、約1.4mmから約14mm、約1.6mmから約16mm、約1.8mmから約18mm、約2.0mmから約20mm、約2.2mmから約22mm、約2.4mmから約24mm、約2.6mmから約26mm、約2.8mmから約28mm、約3.0mmから約30mm、約3.2mmから約32mm、約3.4mmから約34mm、約3.6mmから約36mm、約3.8mmから約38mm、約4.0mmから約40mm、約5.2mmから約52mm、約5.4mmから約54mm、約5.6mmから約56mm、約5.8mmから約58mm、約6.0mmから約60mm、約6.2mmから約62mm、約6.4mmから約64mm、約6.6mmから約66mm、約6.8mmから約68mm、約7.0mmから約70mm、約7.2mmから約72mm、約7.4mmから約74mm、約7.6mmから約76mm、約7.8mmから約78mm、約8.0mmから約80mm、約8.2mmから約82mm、約8.4mmから約84mm、約8.6mmから約86mm、約8.8mmから約88mm、約9.0mmから約90mm、約9.2mmから約92mm、約9.4mmから約94mm、約9.6mmから約96mm、約9.8mmから約98mmまたは約10.0mmから約100mmを有し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、カラムは、約1.0mm、約1.2mm、約1.4mm、約1.6mm、約1.8mm、約2.0mm、約2.2mm、約2.4mm、約2.6mm、約2.8mm、3.0mm、約3.2mm、約3.4mm、約3.6mm、約3.8mm、約4.0mm、約4.2mm、約4.4mm、約4.6mm、約4.8mm、約5.0mm、約5.2mm、約5.4mm、約5.6mm、約5.8mm、約6.0mm、約6.2mm、約6.4mm、約6.6mm、約6.8mm、約7.0mm、約7.2mm、約7.4mm、約7.6mm、約7.8mm、約8.0mm、約8.2mm、約8.4mm、約8.6mm、約8.8mm、約9.0mm、約9.2mm、約9.4mm、約9.6mm、約9.8mm、約10mm、約12mm、約14mm、約16mm、約18mm、約20mm、約22mm、約24mm、約26mm、約28mm、30mm、約32mm、約34mm、約36mm、約38mm、約40mm、約42mm、約44mm、約46mm、約48mm、約50mm、約52mm、約54mm、約56mm、約58mm、約60mm、約62mm、約64mm、約66mm、約68mm、約70mm、約72mm、約74mm、約76mm、約78mm、約80mm、約82mm、約84mm、約86mm、約88mm、約90mm、約92mm、約94mm、約96mm、約98mmまたは約100mmの内径を有し得る。具体的な実施形態では、カラムは、約4.6mmの内径を有する。ある実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、カラムは、長さ約10mmから約250mm、例えば、約10mmから約25mm、約15mmから約40mm、約20mmから約50mm、約25mmから約55mm、約30mmから約60mm、約35mmから約70mm、約40mmから約75mm、約50mmから約85mm、約60mmから約100mm、約75mmから約115mm、約85mmから約125mm、約100mmから約150mm、約125mmから約175mm、約140mmから約190mm、約150mmから約200mm、約175mmから約225mm、約190mmから約230mmまたは約200mmから約250mmを有し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、カラムは、約10mm、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、約45mm、約50mm、約55mm、約60mm、約65mm、約70mm、約75mm、約80mm、約85mm、約90mm、約95mm、約100mm、約110mm、約115mm、約120mm、約125mm、約130mm、約135mm、約140mm、約145mm、約150mm、約155mm、約160mm、約165mm、約170mm、約175mm、約180mm、約185mm、約190mm、約195mm、約200mm、約210mm、約215mm、約220mm、約225mm、約230mm、約235mm、約240mm、約245mmまたは約250mmの長さを有し得る。具体的な実施形態では、カラムは、約50mmの長さを有する。具体的な実施形態では、カラムは、約100mmの長さを有する。ある実施形態では、カラムは、約150mmの長さを有する。
【0052】
クロマトグラフィー分離カラムの実施形態は、図2で例示されている。例示されているように、クロマトグラフィー分離カラム100は、カラム112内に配置されている分離媒体102を含む。分離媒体102は、官能基化された表面を得るように修飾されている粒状多孔質基材104、例えば多孔質シリカ粒子を含む。粒状多孔質基材104の官能基化された表面は、ジイソプロピル側鎖基108およびペンダントシアノ官能基110を含む単官能性シラン106を含む。多孔質基材104は、約50Åから約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有する。具体的な実施形態では、多孔質基材104は、300Åの細孔径および3.5μmの粒径を有する。化学的に安定な、緻密にカバーされた立体的保護ジイソプロピルシアノプロピルシラン固定相の1.8μm、300Å細孔径粒子および2.7μm、120Å細孔径粒子のSEM画像は、図3および4で例示されている。カラム112は、約1.0から100mmの内径、および長さ約10mmから約250mmを有する。具体的な実施形態では、カラムは、約50mmの長さを有する。具体的な実施形態では、カラムは、約100mmの長さを有する。ある実施形態では、カラムは、約150mmの長さを有する。操作では、クロマトグラフィー分離カラム100は、クロマトグラフィー機器に取り付けられ得、界面活性剤、例えばポリソルベート80、例としてポリソルベート80モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-エステル、ならびに1つまたは複数の反応生成物を含む試料は、試料の1つまたは複数の成分を分離するために、クロマトグラフィー分離カラム100に向けられ得る。
【0053】
界面活性剤試料における様々な成分は、アイソクラティックまたはグラジエントの溶出条件下で、任意の好適な溶出溶媒または溶媒を使用して分離できる。非限定的な例として、ポリソルベート80、例えばポリソルベート80モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-エステル、ならびに長鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン、アルデヒド、ケトン、ギ酸、酢酸または過酸化物を含むが、それらに限定されないポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物のミックスを含むポリソルベート80試料では、分離は、グラジエント分離移動相を使用して行われ得る。移動相は、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、アンモニア、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノールおよびアセトンの1つまたは複数を含み得る。移動相での溶媒は、ポリソルベート80、例えばポリソルベート80モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-エステル、ならびにポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料の1つまたは複数の成分の分離を最適化するように選択され得る。非限定的な一実施形態では、1つの相が、水中酸または酢酸アンモニウム0.1%から約10%の混合物であるグラジエント分離移動相。酸は、トリフルオロ酢酸(TFA)、ギ酸、酢酸またはジフルオロ酢酸から選択され得る。他の相は、メタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルの1つまたは複数を含む溶媒であり得る。別の非限定的な実施形態では、グラジエント分離移動相は、10mM酢酸アンモニウムおよびメタノールの混合物であり得る。別の非限定的な実施形態では、グラジエント分離移動相は、水およびメタノール中0.1%TFAの混合物であり得る。他の溶媒グラジエントは、本開示の範囲内であり、本開示は、溶媒の選択に決して限定されないし、アイソクラティックまたはグラジエント分離条件下で分離が行われる場合にも決して限定されない。
【0054】
一態様によれば、ポリソルベート80を特徴付ける方法が提供される。方法は、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料を調製するステップを含む。方法は、試料をクロマトグラフィー分離カラム上に注入するステップを含む。クロマトグラフィー分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基およびペンダントシアノ官能基を有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体を含む。多孔質基材は、約50Åから約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有する。カラムは、約1.0mmから約100mmの内径、および長さ約10mmから約250mmを有する。方法は、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物が、少なくとも3の分解能で分解されるようなグラジエント移動相を使用して、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を溶出するステップをさらに含む。
【0055】
ある実施形態では、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物が、少なくとも5の分解能で分解される。
【0056】
いくつかの実施形態では、粒状多孔質基材は、約300Åの細孔径、および約3.5μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約50mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約100mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mmの内径および約150mmの長さを有する。
【0057】
さらなる実施形態では、カラムは、約4.6mmの内径および約50mmの長さを有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、グラジエント移動相は、酢酸アンモニウム、例えば、10mM酢酸アンモニウム、およびメタノールを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリソルベート80、およびポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物の溶出は、10分未満、例えば10分未満、9.5分未満、9分未満、8.5分、8分未満、7.5分、7分未満、6.5分、6分未満、5.5分、5分未満、4.5分、4分未満、3.5分、3分未満、2.5分、2分未満、1.5分または1分未満で発生する。
【0060】
一態様によれば、ポリソルベート80の特徴付けを促す方法が提供される。方法は、ポリソルベート80、例えば、ポリソルベート80モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-エステル、ならびにポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物を含む試料を用意するステップを含む。方法は、クロマトグラフィー分離カラムを用意するステップも含む。クロマトグラフィー分離カラムは、ジイソプロピル側鎖基およびペンダントシアノ官能基を有する単官能性シランを有する粒状多孔質基材を含む分離媒体を含み得る。多孔質基材は、約50から約500Åの細孔径、および約1.0μmから約100μmの平均粒径を有する。クロマトグラフィー分離カラムは、分離媒体を保持するように構築および配置されているカラムも含む。カラムは、約1.0から100mmの内径、および長さ約10mmから約250mmを有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの多孔質基材は、シリカを含む。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの多孔質基材は、約3.5μmの粒径を有する。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの多孔質基材は、約300Åの細孔径を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラム方法の内径は、約2.1mmである。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの長さは、約50mmである。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの長さは、約100mmである。いくつかの実施形態では、用意されたクロマトグラフィー分離カラムの長さは、約150mmである。
【0063】
いくつかの実施形態では、用意された試料は、ポリソルベート80、例えば、ポリソルベート80モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-エステル、1つまたは複数の長鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン、アルデヒド、ケトン、ギ酸、酢酸および過酸化物を含み得る。
【0064】
さらなる実施形態では、方法は、クロマトグラフィー分離カラムを液体クロマトグラフィー機器に据え付けるステップを含む。
【0065】
さらなる実施形態では、方法は、移動相を付与して、ポリソルベート、例えばポリソルベート80モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-エステル、ならびにポリソルベート80の1つまたは複数の反応生成物の分離を達成するステップを含む。移動相は、例えば酢酸アンモニウム、例として10mM酢酸アンモニウムおよびメタノールの1つまたは両方を含み得る。
【0066】
さらなる実施形態では、方法は、移動相を使用した、グラジエントに基づく分離のための説明書を用意するステップを含む。
【実施例0067】
これらのおよび他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からより良好に理解され得る。これらの実施例は、本質的に例示であることが意図され、本発明の範囲を限定するとは決して考えるべきではない。
【0068】
[実施例1]
緩衝液化学物質の効果
この実施例では、オレイン酸およびポリソルベート80の混合物を分離するためのHPLCを使用して、分解能、ピーク幅、およびピーク高さに対する、異なる緩衝液の効果を調査した。
【0069】
この実施例で使用される計器装備は、1290 Infinity II蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたAgilent 1290 Infinity II HPLC系であった。HPLCオートサンプラーを室温(23℃)にて保持した。ELSDでは、エバポレーター温度は50℃であり、ネブライザー温度50℃、ガス流量は、1分当たり1標準リットル(SLM)であった。出力データ速度は80Hzであり、データ平滑化は3.0秒であった。試料は、混合し、90:10水:メタノール(v/v)の溶液に溶解した5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80であった。
【0070】
移動相は、2つの成分であり、移動相Aは、水中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)、または水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bは、メタノールであり、グラジエントは試料の流動中に使用された。全体の試料の流動は10分の長さであり、時間に応じた移動相グラジエント組成は、表1で指定されている。流量は、0.25mL/分および20μLの試料注入体積に設定した。カラムの温度は、50℃であった。この実施例に使用されるカラムは、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、2.1mm×50mm、3.5μm粒径、300Åの細孔を含んでいた。カラム圧力は、201barであった。
【0071】
【表1】
【0072】
0.1%TFAおよび10mM酢酸アンモニウムを使用した、5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80混合物を分離するための個々のクロマトグラフィートレースは、図5Aおよび5Bでそれぞれ例示されている。例示されているように、緩衝液を0.1%TFA(図5A)から10mM酢酸アンモニウム(図5B)へと切り替えると、2つの主なモノマーピーク、すなわちオレエートとPS80モノエステルとの間における分解能が著しく増進する。
【0073】
[実施例2]
粒子細孔径の効果
この実施例では、オレイン酸およびポリソルベート80の混合物を分離するためのHPLCを使用して、分離媒体細孔径の分解能、ピーク幅およびピーク高さに対する効果を調査した。
【0074】
この実施例で使用される計器装備は、1290 Infinity II蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたAgilent 1290 Infinity II HPLC系であった。HPLCオートサンプラーを室温(23℃)にて保持した。ELSDでは、エバポレーター温度は50℃であり、ネブライザー温度50℃、ガス流量は、1分当たり1標準リットル(SLM)であった。出力データ速度は80Hzであり、データ平滑化は3.0秒であった。試料は、混合した5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80であり、90:10水:メタノール(v/v)の溶液に溶解した。
【0075】
移動相は、2つの成分であり、移動相Aは、水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはメタノールであり、グラジエントは試料の流動中に使用された。全体の試料の流動は10分の長さであり、時間に応じた移動相グラジエント組成は、実施例1の表1で指定されている通りであった。流量は、0.60mL/分および20μLの試料注入体積に設定した。カラムの温度は、50℃であった。この実施例に使用されるカラムは、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、4.6mm×50mm、3.5μm粒径、80Åの細孔、および、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、4.6mm×50mm、3.5μm粒径、300Åの細孔を含んでいた。各カラムにおける圧力は、それぞれ95barおよび104barであった。
【0076】
80Åの細孔および300Åの細孔を有する粒子を用いたZORBAX(登録商標)SB-CNカラムを使用した、5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80混合物を分離するための個々のクロマトグラフィートレースは、図6Aおよび6Bでそれぞれ例示されている。例示されているように、より小さい80Å細孔径(図6A)と比較してより大きい300Å細孔径(図6B)を有するカラムは、2つの化学種間における改善したピーク形状、より少ないベースラインノイズ、およびより高い分解能(3.08vs5.03)により証拠立てられるように、2つの主なモノマーピーク、すなわちオレエートおよびPS80モノエステルの分離について、より良好に作用した。
【0077】
[実施例3]
粒径の効果
この実施例では、オレイン酸およびポリソルベート80の混合物を分離するための、2つの異なる粒径を有するHPLCカラムを使用して、粒径の分解能、ピーク幅およびピーク高さに対する効果を調査した。
【0078】
この実施例で使用される計器装備は、1290 Infinity II蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたAgilent 1290 Infinity II HPLC系であった。HPLCオートサンプラーを、室温(23℃)にて保持した。ELSDでは、エバポレーター温度は50℃であり、ネブライザー温度50℃、ガス流量は、1分当たり1標準リットル(SLM)であった。出力データ速度は80Hzであり、データ平滑化は3.0秒であった。試料は、混合した5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80であり、90:10水:メタノール(v/v)の溶液に溶解した。
【0079】
移動相は、2つの成分であり、移動相Aは、水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはメタノールであり、グラジエントは試料の流動中に使用された。全体の試料の流動は10分の長さであり、時間に応じた移動相グラジエント組成は、実施例1の表1で指定されている通りであった。流量は、0.25mL/分および20μLの試料注入体積に設定した。カラムの温度は、50℃であった。この実施例に使用されるカラムは、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、2.1mm×50mm、3.5μm粒径、300Åの細孔、および、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、2.1mm×50mm、1.8μm粒径、300Åの細孔を含んでいた。各カラムにおける圧力は、それぞれ75barおよび201barであった。
【0080】
3.5μm粒子および1.8μm粒子を用いたZORBAX(登録商標)SB-CNカラムを使用した、5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80混合物を分離するための個々のクロマトグラフィートレースは、図7Aおよび7Bでそれぞれ例示されている。例示されているように、両方のカラムは、2つの化学種間における実質的に同様のピーク形状、ベースラインノイズ、および分解能(5.13vs5.08)により証拠立てられるように、2つの主なモノマーピーク、すなわちオレエートおよびPS80モノエステルを分離するために同等に作用させ、より小さい粒子が、わずかにより良好な性能を呈した。これは、2つの粒径に対しての保持時間、ピーク幅およびピーク面積について、表2および3で提示されているデータによりさらに証拠立てられる。表2および3で見られるように、両方の粒径を全体的に同等に作用させたが、1.8μm、300Å粒子では、3.5μm、300Å粒子よりわずかに狭いピーク、およびわずかに良好な感受性が得られた。これらの結果から、シアノシラン残基に結合した1.8μm粒子が、主なポリソルベート亜種および個々の分解物生成物すべてを完全に分離する、詳細には、短い50mmカラムを使用して、10分以下のクロマトグラフィーの流動によりオレイン酸からのポリソルベート80を明らかに分離する能力が確認された。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
[実施例4]
カラムの長さの効果
この実施例では、オレイン酸およびポリソルベート80の混合物を分離するための、分解能、ピーク幅およびピーク高さに対する、カラムの長さの効果を調査した。
【0084】
この実施例で使用される計器装備は、1290 Infinity II蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたAgilent 1290 Infinity II HPLC系であった。HPLCオートサンプラーを室温(23℃)にて保持した。ELSDでは、エバポレーター温度は50℃であり、ネブライザー温度50℃、ガス流量は、1分当たり1標準リットル(SLM)であった。出力データ速度は80Hzであり、データ平滑化は3.0秒であった。試料は、混合した5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80であり、90:10水:メタノール(v/v)の溶液に溶解した。
【0085】
移動相は、2つの成分であり、移動相Aは、水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはメタノールであり、グラジエントは試料の流動中に使用された。この実施例に使用されるカラムは、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、2.1mm×50mm、3.5μm粒径、300Åの細孔、および、Agilent ZORBAX(登録商標)SB-CN、2.1mm×150mm、3.5μm粒径、300Åの細孔を含んでいた。各カラムにおける圧力は、それぞれ75barおよび163barであった。カラムの長さにおける差のため、全体の実行時間および移動相グラジエントは、各カラムで異なっていた。長さ50mmのカラムでは、実行時間は10分であり、時間に応じた移動相グラジエント組成は、実施例1の表1で指定されている通りである。長さ150mmのカラムでは、実行時間は15分であり、時間に応じた移動相グラジエント組成は、表4で示されている。両方のカラムで、流量は、0.25mL/分および20μLの試料注入体積に設定した。カラムの温度は、50℃であった。
【0086】
【表4】
【0087】
長さが50mmおよび150mmのZORBAX(登録商標)SB-CNカラムを使用して、5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80混合物を分離するための個々のクロマトグラフィートレースは、図8Aおよび8Bでそれぞれ例示されている。例示されているように、より長い150mmカラム(図8B)は、より短い50mmカラム(図8A)より良好に作用し、2つの化学種でより良好なピーク分解能(7.18vs5.13)を呈示した。
【0088】
[実施例5]
粒子タイプおよび大きさの効果
この実施例では、分解能、ピーク幅およびピーク高さに対する粒径の効果は、オレイン酸およびポリソルベート80の混合物を分離するための、2つの異なる大きさの表面多孔質粒子を有するHPLCカラムを使用して調査した。表面多孔質粒子は、全体の粒子にわたって多孔質ではなく、薄い多孔質シェルに囲まれている固体コアを有する。これらのタイプの粒子は、一般的に、粒子を通した材料の拡散が限定され、より高い圧力で装填できるので、改善した分離速度を呈する。
【0089】
この実施に使用される計器装備は、1290 Infinity II蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたAgilent 1290 Infinity II HPLC系であった。HPLCオートサンプラーを室温(23℃)にて保持した。ELSDでは、エバポレーター温度は50℃であり、ネブライザー温度は50℃、ガス流量は、1分当たり1標準リットル(SLM)であった。出力データ速度は80Hzであり、データ平滑化は3.0秒であった。試料は、混合した5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80であり、90:10水:メタノール(v/v)の溶液に溶解した。
【0090】
移動相は、2つの成分であり、移動相Aは、水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはメタノールであり、グラジエントは試料の流動中に使用された。全体の試料の流動は10分の長さであり、実施例1の表1で指定されている時間に応じた移動相グラジエント組成。流量は、0.25mL/分および20μLの試料注入体積に設定した。カラムの温度は、50℃であった。この実施例に使用されるカラムは、Agilent POROSHELL(登録商標)SB-CN、2.1mm×50mm、2.7μm粒径、120Åの細孔、および、Agilent POROSHELL(登録商標)SB-CN、2.1mm×50mm、1.9μm粒径、120Åの細孔を含んでいた。各カラムにおける圧力は、それぞれ177barおよび201barであった。
【0091】
2.7μm粒子および1.9μm粒子を用いたPOROSHELL(登録商標)SB-CNカラムを使用した、5ppmオレイン酸および20ppmポリソルベート80混合物を分離するための個々のクロマトグラフィートレースは、図9Aおよび9Bでそれぞれ例示されている。例示されているように、2つの化学種間における実質的に同様のピーク形状、ベースラインノイズおよび分解能(5.50vs4.93)により証拠立てられるように、2つの主なモノマーピーク、すなわちオレエートおよびPS80モノエステルの分離について互いと比較して、両方のカラムで同等に作用させ、より小さい粒子は、わずかにより良好な性能を呈した。さらに、両方の大きさのPOROSHELL(登録商標)粒子は、図5Aおよび5Bに例示したように、同等に作用させて、ZORBAX(登録商標)粒子と同様の大きさにした。これは、2つの粒子サイズドで保持時間、ピーク幅およびピーク面積について表5および6で提示されているデータによりさらに証拠立てられた。表5および6で見られるように、両方の粒径を全体的に同等に作用させたが、1.9μm、120Å POROSHELL(登録商標)粒子では、2.7μm、120Å POROSHELL(登録商標)粒子よりわずかに狭いピークが、後で溶出する化合物で得られた。これらの結果から、POROSHELL(登録商標)粒子は、特定の状況において、例えばより高い充填圧力が有利になり得る場合、ZORBAX(登録商標)粒子の代替粒子として使用できることが示唆された。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
本明細書で使用される表現および専門用語は、説明を目的とするものであり、限定と解釈すべきではない。本明細書で使用されている、「複数」という用語は、2つ以上の項目または要素を指す。「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」および「伴う」という用語は、明細書または特許請求の範囲を問わず、非限定的用語であり、すなわち「含むが、それらに限定されない」を意味することになる。したがって、そのような用語の使用は、その後に列挙されている項目、およびそれらの等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。「からなる」および「本質的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ、特許請求の範囲に関する限定的または半限定的な移行句である。序数に関する用語、例えば特許請求の範囲において、特許請求の範囲の要素を修飾する「第1の」、「第2の」、「第3の」などの使用は、それ自体が、ある特許請求の範囲の要素の、別の特許請求の範囲に対するいかなる優先、優位性、または順序、もしくは方法の動作が行われる時間的順序も含意しないが、ある名称を有する、ある特許請求の範囲の要素を、特許請求の範囲の要素を区別するために、同一の名称(序数に関する用語の使用を除いて)を有する別の要素と区別する標識としてのみ使用される。
【0095】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様はこのように説明したが、当業者は、様々な変化、修飾および改善が容易に発生するであろうと認識すべきである。いずれかの実施形態に記載されているいずれかの特徴は、他のいずれかの実施形態のいずれかの特徴に含まれ得る、またはそれで置き換えられ得る。そのような変化、修飾および改善は、本開示の一部であることが意図され、また、本発明の範囲内にあることが意図される。したがって、先述の説明および図面は、単なる例である。
【0096】
当業者は、本明細書に記載されているパラメーターおよび構成は模範であること、また、実際のパラメーターおよび/または構成は、開示されている方法および材料が使用される具体的な用途によって決まることとなることを認識すべきである。当業者は、単なる日常的実験法を使用して、開示されている具体的な実施形態の等価物を把握する、または確かめることもできるはずである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【外国語明細書】