(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099483
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】有機廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240718BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20240718BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/16 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C02F3/12 D ZAB
C02F3/12 H
C02F3/34 Z
C02F11/02
C12N1/00 S
C12N1/14 Z
C12N1/16 Z
C12N1/20 D
C12N1/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217756
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023003248
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】森 幸治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正人
(72)【発明者】
【氏名】東 正樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 信弘
【テーマコード(参考)】
4B065
4D028
4D040
4D059
【Fターム(参考)】
4B065AA01
4B065AA15X
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4D059DB31
4D059EB06
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】低温又は高温環境下においても高い溶菌作用を維持でき、高い汚泥減容効果を有する有機廃水の処理方法の提供。
【解決手段】活性汚泥法による有機廃水の処理方法であって、活性汚泥を含む槽の少なくとも1つに対し、活性汚泥を溶菌する微生物と、サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方とを添加することを含む、有機廃水の処理方法。前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥、前記微生物、並びに前記サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を含む混合物の温度は、例えば10~20℃である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥法による有機廃水の処理方法であって、活性汚泥を含む槽の少なくとも1つに対し、活性汚泥を溶菌する微生物と、サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方とを添加することを含む、有機廃水の処理方法。
【請求項2】
前記サポニンの添加量が、前記微生物の添加菌数1.0×106個に対し、5mg~500mgである、請求項1に記載の有機廃水の処理方法。
【請求項3】
前記フルボ酸の添加量が、前記微生物の添加菌数1.0×106個に対し、0.5mg~50mgである、請求項1に記載の有機廃水の処理方法。
【請求項4】
前記サポニンの添加量が、前記微生物の添加菌数1.0×106個に対し、5mg~500mgであり、前記フルボ酸の添加量が、前記微生物の添加量に対し、0.5mg~50mgである、請求項1に記載の有機廃水の処理方法。
【請求項5】
前記微生物が、EM菌、バチルス属細菌及び片岡菌からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の菌を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
【請求項6】
前記微生物が、バチルス属細菌、ラクトバチルス属細菌、チューメバチルス属細菌、シュードモナス属細菌、ユーロチウム属菌、ストレプトマイセス属細菌、ムコール属菌、サッカロマイセス属菌、セルロサイマイクロビウム属細菌、ナイセリア属細菌、エキシグオバクテリウム属細菌、ブレビバチルス属細菌、リゾープス属菌及びアスペルギルス属菌からなる群から選ばれる少なくとも一種の菌を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
【請求項7】
前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥、前記微生物、並びに前記サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を含む混合物の温度が、10~20℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
【請求項8】
前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥、前記微生物、並びに前記サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を含む混合物の温度が、40~45℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃水の処理方法に関する。より具体的には、本発明は、活性汚泥を用いた好気性処理による有機廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機廃水を生物処理する際に用いられる活性汚泥法は、処理水質が良好で、メンテナンスが容易であるなどの利点がある。このことから、活性汚泥法は、生活排水、下水、食品工場、パルプ工場及び化学工場などから排出される有機廃水の浄化処理に広く用いられている。
【0003】
しかし、有機廃水中の有機物の処理量に比例して活性汚泥中の微生物が増殖していき、分解処理したBOD(生物化学的酸素要求量ともいう)の3~6割程度が汚泥へと変換される。そのため、大量に余剰汚泥が発生する。
【0004】
余剰汚泥は、浄化処理施設の系外へ排出され、その一部はバイオマス発電燃料や肥料として活用されている。一方でそれ以外の大部分は、余剰汚泥廃棄物となる。余剰汚泥廃棄物は、脱水、運搬及び焼却などを要し、現状では大量のエネルギーを投入して処分されている。
【0005】
そのため、省エネルギー、焼却時の温室効果ガス排出抑制、処分にかかる手間及びコストの削減といった観点から、余剰汚泥を減容させる技術が様々に検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、汚水の生物処理工程に用いられる生物処理槽とは別に、余剰汚泥減量化槽を設け、余剰汚泥に溶菌作用を有する粘液細菌を接種し好気条件で作用させる方法が提案されている。
【0007】
特許文献2では、排水処理工程に加え、汚泥分解処理工程として、高アルカリ性及び高温で汚泥を溶菌すると同時に、微生物の生育には不適な環境下でも生育可能な微生物によって汚泥の分解を行う工程を設けることで、さらなる汚泥の減容化もしくは発生をなくす方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-106198号公報
【特許文献2】特開2000-139449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1~2で提案された方法では、活性汚泥を溶菌する微生物を利用することから、温度に依存して活性が変化し、汚泥の減容量が変化する。例えば水温が10℃~15℃程度まで低下してしまう冬場や緯度の高い地域のような低温環境下や、水温が40~45℃程度まで上昇してしまう夏場や緯度の低い地域のような高温環境下においては、活性汚泥を溶菌する微生物の活性が、春又は秋のような比較的微生物にとって快適な環境下と比較して5割~8割程度まで低下してしまう。活性の低下を補うために微生物の添加量を増やすと、コストが増大する。
【0010】
以上に鑑み、本発明は、低温又は高温環境下においても高い溶菌作用を維持でき、高い汚泥減容効果を有する有機廃水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]活性汚泥法による有機廃水の処理方法であって、活性汚泥を含む槽の少なくとも1つに対し、活性汚泥を溶菌する微生物と、サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方とを添加することを含む、有機廃水の処理方法。
[2]前記サポニンの添加量が、前記微生物の添加菌数1.0×106個に対し、5mg~500mgである、[1]に記載の有機廃水の処理方法。
[3]前記フルボ酸の添加量が、前記微生物の添加菌数1.0×106個に対し、0.5mg~50mgである、[1]に記載の有機廃水の処理方法。
[4]前記サポニンの添加量が、前記微生物の添加菌数1.0×106個に対し、5mg~500mgであり、前記フルボ酸の添加量が、前記微生物の添加量に対し、0.5mg~50mgである、[1]に記載の有機廃水の処理方法。
[5]前記微生物が、EM菌、バチルス属細菌及び片岡菌からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の菌を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
[6]前記微生物が、バチルス属細菌、ラクトバチルス属細菌、チューメバチルス属細菌、シュードモナス属細菌、ユーロチウム属菌、ストレプトマイセス属細菌、ムコール属菌、サッカロマイセス属菌、セルロサイマイクロビウム属細菌、ナイセリア属細菌、エキシグオバクテリウム属細菌、ブレビバチルス属細菌、リゾープス属菌及びアスペルギルス属菌からなる群から選ばれる少なくとも一種の菌を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
[7]前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥、前記微生物、並びに前記サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を含む混合物の温度が、10~20℃である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
[8]前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥、前記微生物、並びに前記サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を含む混合物の温度が、40~45℃である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、低温又は高温環境下においても高い溶菌作用を維持でき、高い汚泥減容効果を有する有機廃水の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る有機廃水の処理方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、汚濁負荷量設計値LP,Dは、有機廃水処理設備固有の値である。より詳しくは、有機廃水処理設備の汚濁負荷量設計値LP,Dは、例えば工場の生産能力や処理を引き受ける世帯数などで想定される処理負荷、採用した好気性処理の方式、及び処理設備が立地する地域において達成するべき濃度基準や水質総量規制を勘案し、有機廃水処理設備の設計段階から定められる値である。一般的に、当該設備の完成図書中に記載される、又は完成図書中の数値から容易に計算することができる。
【0015】
本明細書において、好気性処理とは、散気や撹拌などの手段で酸素が系中に供給される条件(例えば曝気下)において微生物と有機廃水に含まれる汚濁物質とを接触させることと定義する。好気性処理とは、例えば曝気槽において微生物と有機廃水に含まれる汚濁物質とを接触させることを含む。有機廃水の汚濁物質は、炭化水素、蛋白質などの有機物を含む。
本明細書において、嫌気性処理とは、酸素供給を断った状態において微生物と有機廃水に含まれる汚濁物質とを接触させることと定義する。
【0016】
本実施形態の有機廃水の処理方法は、活性汚泥法による有機廃水の処理方法であって、活性汚泥を含む槽の少なくとも1つに対し、活性汚泥を溶菌する微生物と、サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方とを添加することを含む、有機廃水の処理方法である。
【0017】
本実施形態の有機廃水の処理方法は、活性汚泥法の処理を含む。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機廃水の処理方法を説明する概略図である。本発明の一実施形態に係る有機廃水の処理方法は、有機廃水処理設備1で行うことができる。有機廃水処理設備1は、好気性処理を行う槽12、沈殿槽13、汚泥濃縮槽14、汚泥貯留槽15及びポンプ16を含む。好気性処理を行う槽12は一般的に曝気槽や反応タンクなどと呼ばれる。有機廃水11は、活性汚泥を含む好気性処理を行う槽12において有機廃水11に含まれる汚濁物質が分解され、処理水とされる。好気性処理を行う槽12から排出された処理水は、沈殿槽13で静置される。沈殿槽13で静置された処理水のうち、上澄み17は、直接、又は適宜中和、消毒及びろ過などの後処理が施された後に河川、海及び下水などの環境へ放流される。沈殿槽13の沈殿物、すなわち汚泥は、ポンプ16で吸い上げられ、その大部分は、返送汚泥として好気性処理を行う槽12に返送され、再利用される。汚泥の一部は余剰汚泥として汚泥濃縮槽14に送られる。余剰汚泥は、ポンプ16で吸い上げられた後、汚泥濃縮槽14で水分が除去され濃縮されて濃縮汚泥となる。濃縮時に除去された水分である脱離液18は、処理水と同様、直接、又は適宜中和、消毒、ろ過などの後処理が施された後に河川や海、下水などの環境へ放流されるか、又は好気性処理を行う槽12へ返送される。濃縮汚泥19は、汚泥貯留槽15で保管され、最終的に有機廃水処理設備1の系外へ排出され処分される。
【0018】
図1の有機廃水処理設備1は、好気性処理を行う槽12を2つ有しているが、本実施形態はこれに限定されず、好気性処理を行う槽12が1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、
図1の有機廃水処理設備1は、汚泥濃縮槽14及び汚泥貯留槽15を有しているが、本実施形態はこれに限定されず、汚泥濃縮槽14及び汚泥貯留槽15が設けられていなくてもよい。また、
図1の有機廃水処理設備1は、有機廃水11が好気性処理を行う槽12に導入されているが、本実施形態はこれに限定されない。必要に応じて、好気性処理を行う槽12に導入する前に沈殿槽(沈砂池)にて有機廃水11からゴミ及び砂を分離してもよい。有機廃水11は、別途設けられる嫌気性処理を行う槽へまず導入されて嫌気性処理が行われた後、好気性処理を行う槽12で処理されてもよい。
【0019】
以下、
図1に基づいて本実施形態について説明する。本実施形態に用いられる好気性処理を行う槽12は、生活排水、下水、食品工場又は化学工場などから排出される有機廃水11が導入される。有機廃水11と、好気性処理を行う槽12中に含まれる活性汚泥とを混合しつつ、散気管やエアレーターなどを通して空気の散気を行い、適宜ポンプやスクリューなどで槽内を撹拌することにより、有機廃水11中の有機物を分解させる。好気性処理を行う槽12として、従来の標準活性汚泥法又はその他各種変法の好気性処理を行う槽を採用できる。また、高負荷処理を行うために、好気性処理を行う槽12に、固定された担体に汚泥を担持した固定床を用いたり、汚泥を担持しつつ槽内を水流に乗って流動する流動床を用いたりすることもできる。さらに、好気性処理を行う槽12は、後述する固液分離処理を行う槽としての能力を担わせる方式、具体的には膜分離式や回分式の槽などであってもよい。
【0020】
本実施形態の有機廃水の処理方法は、活性汚泥を含む槽の少なくとも1つに対し、活性汚泥を溶菌する微生物を添加する。活性汚泥を溶菌する微生物を添加する槽としては、活性汚泥を含む槽であればいずれの槽であってもよく、好気性処理を行う槽12、沈殿槽13、汚泥濃縮槽14及び汚泥貯留槽15のいずれであってもよい。活性汚泥を溶菌する微生物を好気性処理を行う槽12に添加すると、後段の処理に送られる汚泥の量を減らすことができ好ましい。活性汚泥を溶菌する微生物は、有機廃水11を処理することで増殖した活性汚泥(余剰汚泥ともいう)を好気性条件下で溶菌し、余剰汚泥を減容する役割を担う。なお、溶菌され水中に溶けた活性汚泥は、再び活性汚泥中の微生物群によって、有機廃水11中の有機物と同様に処理される。
【0021】
活性汚泥を溶菌する微生物としては、活性汚泥を溶菌できるものであれば特に限定されないが、汚泥を溶菌する能力が高い微生物を用いれば、汚濁負荷量が高くとも安定的に汚泥を減容できるため、高負荷処理が可能となる。具体的には、好気菌や通性嫌気菌などが挙げられ、汚泥を溶菌する能力が高いという観点から、EM菌(例えば株式会社EM研究所製や有限会社Ueta Lab製)、バチルス(Bacillus)属細菌及び片岡菌(例えば株式会社片岡バイオ研究所製)からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の菌からなるとよい。これらの菌又は菌群は、活性汚泥をなす細菌の細胞壁(主にペプチドグリカン)の加水分解酵素(例えば、リゾチームなど)を産生しやすい。そのため、活性汚泥中にこれらの菌又は菌群を添加すると、死菌となり細胞壁を守る粘性物質を産生できなくなった汚泥を選択的に分解し、余剰汚泥を効率的に溶菌する。また、活性汚泥を溶菌する微生物は、バチルス属細菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、チューメバチルス(Tumebacillus)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、ユーロチウム(Eurotium)属菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌、ムコール(Mucor)属菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属菌、セルロサイマイクロビウム(Cellulosimicrobium)属細菌、ナイセリア(Neisseria)属細菌、エキシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属細菌、ブレビバチルス(Brevibacillus)属細菌、リゾープス(Rhizopus)属菌及びアスペルギルス(Aspergillus)属菌からなる群から選ばれる少なくとも一種の菌であってもよい。
【0022】
1日当たりの活性汚泥を溶菌する微生物の添加量MD(個/日)は、有機廃水処理設備の汚濁負荷量設計値LP,D×1.0×106~有機廃水処理設備の汚濁負荷量設計値LP,D×2.0×109であることが好ましく、有機廃水処理設備の汚濁負荷量設計値LP,D×2.0×106~有機廃水処理設備の汚濁負荷量設計値LP,D×7.0×108であることがより好ましい。
【0023】
活性汚泥を溶菌する微生物は、活性汚泥を含む槽中に適宜の方法で添加される。例えば、添加される活性汚泥を溶菌する微生物の形態としては、活性汚泥を溶菌する微生物を多量に含む粉末又は液体である微生物製剤であってもよく、さらにこれらに活性を向上させるための添加剤及び保存安定化剤等の少なくとも1種を含む微生物製剤であってもよい。微生物製剤は、定期的に少量ずつ活性汚泥を含む槽中に添加されてもよいし、一度に所定の量が添加されてもよい。
【0024】
また、本実施形態の有機廃水の処理方法においては、活性汚泥を溶菌する微生物が添加される活性汚泥を含む槽に対して、さらにサポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を添加する。サポニンやフルボ酸を添加することで、活性汚泥を溶菌する微生物の活性を向上させ、低温環境下(例えば10~20℃、さらには10~15℃)、又は高温環境下(例えば40~45℃)においても高い溶菌作用を維持することができる。
サポニンは、ステロイドやトリテルペン骨格などからなるサポニゲンと、糖とからなる配糖体の総称であり、一般的に植物の根、葉、茎などから抽出される。サポニンとしては、大豆サポニン、高麗人参サポニン、茶実サポニンなどが挙げられる。
フルボ酸は、植物が微生物によって分解された最終生成物質である腐食物質の内、酸に可溶な成分の総称である。
サポニン及びフルボ酸は、いずれか一方のみを添加してもよく、両方を添加してもよい。添加効果を高めるために高濃度で添加する際には、それぞれを高濃度で添加すると下記不利な効果が発生するおそれがあるため、サポニン及びフルボ酸の両方を添加することが好ましい。
【0025】
サポニンの添加量は、活性汚泥を溶菌する微生物の添加菌数1.0×106個に対し、5mg~500mgが好ましく、10mg~250mgがより好ましい。サポニンの添加量が前記下限値以上であると、サポニンの添加効果が得られ易い。サポニンの添加量が前記上限値を超えると、サポニンの界面活性効果で処理水が泡立ち、固液分離処理が難しくなるおそれがある。
なお、本明細書において活性汚泥を溶菌する微生物の菌数の測定方法は、JIS K0350-10-10(2002) 用水・排水中の一般細菌試験方法に記載の方法に準じる。植菌方法は塗抹法とする。
【0026】
フルボ酸の添加量は、活性汚泥を溶菌する微生物の添加菌数1.0×106個に対し、0.5mg~50mgが好ましく、1mg~25mgがより好ましい。フルボ酸の添加量が前記下限値以上であると、フルボ酸の添加効果が得られ易い。フルボ酸の添加量が前記上限値を超えると、フルボ酸の水に対する溶解性の低さや水質のpH変化によって沈殿が発生し、処理水質が悪化するおそれがある。
【0027】
サポニンとフルボ酸の両方を添加する場合、サポニンの添加量が、活性汚泥を溶菌する微生物の添加菌数1.0×106個に対し、5mg~500mgであり、かつフルボ酸の添加量が、活性汚泥を溶菌する微生物の添加量に対し、0.5mg~50mgであることが好ましく、サポニンの添加量が、活性汚泥を溶菌する微生物の添加菌数1.0×106個に対し、10mg~250mgであり、かつフルボ酸の添加量が、活性汚泥を溶菌する微生物の添加量に対し、1mg~25mgであることがより好ましい。
【0028】
また、本実施形態の有機廃水の処理方法においては、活性汚泥を溶菌する微生物が添加される活性汚泥を含む槽に対し、さらに光合成細菌を添加することが好ましい。光合成細菌は、活性汚泥に含まれうる硫酸塩還元菌を捕食してアミノ酸を産生する菌である。光合成細菌は、硫酸塩還元菌の代謝により発生する悪臭の原因である硫化水素の発生を抑制する効果と、産生するアミノ酸が活性汚泥を溶菌する微生物の活性を向上させ、汚泥減容を促進させる効果とを発揮する。
光合成細菌として、具体的には、紅色硫黄細菌、緑色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌及び緑色非硫黄細菌が挙げられる。中でも硫化物イオンを電子受容体として利用する能力が高く、かつ微好気性条件で増殖させられ、安価に入手できる紅色硫黄細菌が好ましい。
【0029】
光合成細菌の添加菌数は、活性汚泥を溶菌する微生物が添加される活性汚泥を含む槽が保持する活性汚泥(MLSS;Mixed Liquor Suspended Solids)1kgに対して、5.00×103個~5.00×109個であることが好ましく、5.00×103個~5.00×106個であることがより好ましく、1.00×104個~1.00×106個であることが特に好ましい。光合成細菌の添加菌数がMLSS1kgに対して5.00×103個以上であると、上述の効果が得られやすい。光合成細菌の添加菌数がMLSS1kgに対して5.00×109個以下であると、光合成細菌が放つ悪臭を抑えることができる。
なお、本明細書において光合成細菌の菌数の測定方法は、JIS K0350-10-10(2002) 用水・排水中の一般細菌試験方法に記載の方法に準じる。植菌方法は塗抹法とする。
【0030】
光合成細菌は、活性汚泥を溶菌する微生物と同様に、活性汚泥を含む槽中に適宜の方法で添加される。例えば、添加される光合成細菌の形態としては、光合成細菌を多量に含む粉末又は液体である光合成細菌製剤であってもよく、さらにこれらに活性を向上させるための添加剤及び保存安定化剤等の少なくとも1種を含む光合成細菌製剤であってもよい。光合成細菌製剤は、定期的に少量ずつ活性汚泥を含む槽中に添加されてもよいし、一度に所定の量が添加されてもよい。
【0031】
活性汚泥を溶菌する微生物の活性を向上させるために、活性汚泥を溶菌する微生物が添加される活性汚泥を含む槽に対し、さらに、サポニン及びフルボ酸以外の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、糖質、アミノ酸、ミネラル及びステロイド並びにその配糖体(ただし、サポニンを除く)及び腐植物質(ただし、フルボ酸を除く)などが挙げられる。
【0032】
活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥、前記微生物、並びに前記サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を含む混合物の温度は、例えば10~45℃である。
低温環境下においても高い溶菌作用を維持できることの有用性が高い点では、前記混合物の温度は、10~20℃が好ましく、10~15℃がより好ましい。
前記混合物の温度は、40~45℃であってもよい。前記混合物の温度が高すぎると、水への酸素の溶解性が低下し、前記微生物の溶菌作用が低下するが、サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方を添加することで、このような高温環境下でも高い溶菌作用を維持できる。
【0033】
本実施形態の有機廃水の処理方法においては、活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥及び前記微生物を含む混合物の銀-塩化銀電極に対する酸化還元電位を0mV以上310mV以下に維持することが好ましい。前記酸化還元電位が0mV以上であれば、汚泥の腐敗を抑制することで臭気の発生を抑制するとともに、活性汚泥を溶菌する微生物による汚泥の減容効果を高く維持できる。また、前記酸化還元電位が310mV以下であれば、活性汚泥中のフロックの解体を抑制し、後述する固液分離処理において処理水と汚泥との分離を容易にすることができる。好ましい酸化還元電位として、50mV以上であってもよいし、200mV以下であってもよいし、150mV以下であってもよい。特に、後述する汚泥濃縮槽内で前記酸化還元電位を調整するよう適用する場合には、汚泥が腐敗しやすいため、50mV以上が好ましく、80mV以上がより好ましい。前記酸化還元電位の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0034】
前記酸化還元電位が低くなった場合には、微生物への添加剤の投与、共生菌の添加又は散気量を増加させるなどの方法により酸化還元電位を上昇させることができる。添加剤としては、上述のものが挙げられる。共生菌としては、上述の細菌が挙げられる。また、前記酸化還元電位が高くなった場合には、活性汚泥を含む槽に蓋をするなどして閉塞したり、散気量を減少させたりなどの方法により酸化還元電位を低下させることができる。即効性を有しかつ制御が容易であるとの観点から、前記酸化還元電位の制御は、散気量の制御により行うことが好ましい。なお、前記酸化還元電位の測定値を入力し、入力された測定値に対して散気量を自動で増減させるシステムを用い、前記酸化還元電位を0mV以上310mV以下に維持してもよい。
【0035】
本実施形態の有機廃水の処理方法においては、好気性処理を行う槽のBOD-SS負荷を0.1kg/kg・日未満に保ってもよい。好気性処理を行う槽のBOD-SS負荷を0.1kg/kg・日未満に保つことにより、発生する余剰汚泥を大幅に減らし、条件によっては余剰汚泥の発生を無くすことができる。より好ましい好気性処理を行う槽のBOD-SS負荷の範囲は、0.08kg/kg・日未満である。好気性処理を行う槽のBOD-SS負荷の下限値は、特に限定されないが、BOD-SS負荷が0.015kg/kg・日以上であれば廃水処理量を確保できる。
【0036】
本明細書において、BOD-SS負荷とは、好気性処理を行う槽に導入される1日当たりのBOD(生物化学的酸素要求量)の質量を、活性汚泥の質量で除した値として定義する。一般的な活性汚泥法での有機廃水処理においては、BOD-SS負荷は、0.2~0.4kg/kg・日で運転されている場合が多い。
【0037】
好気性処理を行う槽のBOD-SS負荷を低く保つためには、好気性処理を行う槽からの汚泥引抜量を少なくする、又は全く引き抜かず運転すればよいが、単純に汚泥引抜量を少なくするだけではフロックの解体を招き固液分離性が低下し、処理水中に汚泥が流出してしまう事態となる。好気性処理を行う槽に対し、活性汚泥を溶菌する微生物を添加することによって解体した汚泥が溶菌され、好気性処理を行う槽からの汚泥引抜量を少なくする、又は全く引き抜かず運転しても放流水の水質低下を抑制でき、BOD-SS負荷を低く保つことが容易になる。
【0038】
活性汚泥を含む槽に散気を行う場合には、15000個/m3以上のバブル個数濃度で空気バブルを散気するとよい。
バブル個数濃度(単位体積当たりのバブル個数)は、バブルの平均粒径を表す指標であり、バブル個数濃度が大きいほど平均粒径が小さいバブルであることを示す。
バブル個数濃度は、定められた量の水が入った透明な水槽を用い、60秒散気した後に散気を停止して直後に撮影した写真の画像解析によってバブルの個数をカウントすることによって求められる。
【0039】
ここで、粒径が大きいバブルは水中を浮上する力が強く、発生から短時間で水面へと到達する。一方、粒径が小さいバブルは水中を浮上する力が弱く、発生から長時間水中にとどまる性質を有する。また、同一体積の空気を散気した場合において、平均粒径が小さいバブルの方がバブルの表面積の総和は大きくなる。従って、平均粒径が小さい空気を散気すれば、槽中への酸素溶解能力を高められ、散気する空気の量を減らし、投入エネルギーを減らせる効果や、好気性処理を行う槽が浅い場合であっても十分に酸素を溶解させやすい効果を得られる。
散気する空気バブルのバブル個数濃度の上限値は、特に限定されないが、散気管から水や汚泥の圧力に負けず安定して散気できるとの観点から、400000個/m3以下であるとよい。
【0040】
好気性処理を行う槽12で処理された処理水は、処理水に分散している汚泥とともに固液分離処理される。固液分離処理は、公知の方法で行えばよい。例えば、固液分離処理は、
図1に示すように好気性処理を行う槽12とは別の沈殿槽13にて処理水と汚泥を沈殿分離する方法であってもよいし、膜分離モジュールを用いて処理水と汚泥を分離する方法であってもよい。膜分離モジュールは、好気性処理を行う槽12外に設けてもよいし、好気性処理を行う槽12中に設けてもよい。
【0041】
固液分離処理により、
図1では沈殿槽13により分離された汚泥は、大部分が再び好気性処理を行う槽12へ返送される。必要に応じて、適宜の量の汚泥を引き抜き、余剰汚泥として処分してもよい。余剰汚泥の処分は、例えば、
図1に示すように汚泥濃縮槽14で濃縮後乾燥させたり、別途の汚泥減容槽を用いたりするなど、公知の方法で行えばよい。本実施形態の有機廃水の処理方法を用いれば、余剰汚泥の発生量を大幅に減らす、又は余剰汚泥をなくすことができるため、余剰汚泥を処分するための特別な設備や余剰汚泥の処理を省略することができる。
【0042】
なお、一般的な活性汚泥法において、固液分離処理により分離された汚泥は、固形分濃度が0.4~1質量%程度と大部分が水である。そのため、汚泥濃縮処理が施され、固形分濃度が1~4質量%程度となるまで濃縮される。汚泥濃縮処理は、前記好気性処理を行う槽とは別に設けられた汚泥濃縮槽14中で行われる。汚泥濃縮処理の方法は、公知の方法で行えばよく、例えば、重力濃縮、遠心濃縮、常圧浮上濃縮及びベルト式ろ過濃縮などが挙げられる。ただし、本実施の形態の有機廃水の処理方法であれば、余剰汚泥の発生量を大幅に減らしたり、発生をなくしたりすることができるため、汚泥濃縮処理を省略することもできる。
【0043】
汚泥濃縮槽14における汚泥濃縮処理においても、活性汚泥を含む槽で説明した内容と同様にして活性汚泥を溶菌する微生物と、サポニン及びフルボ酸の少なくとも一方とを添加してもよいし、加えて前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥及び前記微生物を含む混合物の銀-塩化銀電極に対する酸化還元電位が0mV以上310mV以下に維持して汚泥を減容してもよい。また、好気性処理槽を行う槽12と、汚泥濃縮槽14との両方で活性汚泥を溶菌する微生物を添加し、かつ前記活性汚泥を含む槽(つまり好気性処理槽を行う槽12及び汚泥濃縮槽14)内の前記有機廃水、前記活性汚泥及び前記微生物を含む混合物の銀-塩化銀電極に対する酸化還元電位が0mV以上310mV以下に維持して前記汚泥を減容してもよい。ここで、汚泥濃縮槽14内における前記混合物の酸化還元電位の下限値は、50mV以上が好ましく、80mV以上がより好ましい。また、汚泥濃縮槽14内における前記混合物の酸化還元電位の上限値は、200mV以下が好ましく、150mV以下がより好ましい。
【0044】
また、汚泥が腐敗しやすいとの観点から、汚泥濃縮槽14にさらに光合成細菌を添加すると、前述した好気性処理を行う槽12に光合成細菌を添加する場合よりもさらに高い効果が得られる。光合成細菌の種類及び添加量は、上述と同じものを使用することができる。
【0045】
汚泥濃縮槽14には、清掃の際に使用する送気管が備わっている場合がほとんどである。そのため、送気管を用いて汚泥濃縮槽14中に散気を行い、前記酸化還元電位の調整を行うことができる。
【0046】
一般的な活性汚泥法において、濃縮された余剰汚泥は、浄化処理施設系外へ排出されるが、余剰汚泥を処理又は搬出するまで一時貯留しておく汚泥貯留槽15へ送られ貯留される。ここで、特に汚泥濃縮を重力濃縮で行う場合、気温や水温の影響を大きく受けて濃縮性が変化し、脱離液18の水質が安定しない場合がある。汚泥貯留槽15を有する有機廃水処理施設において本発明の態様を適用する際、汚泥濃縮槽14において上述の方法で汚泥を減容しようとすると水質の制御が難しい場合がある。このような場合、又は単純に汚泥濃縮槽14を備えていない有機廃水処理設備の場合、汚泥貯留槽15にて汚泥濃縮槽14の説明と同様の方法で活性汚泥を溶菌する微生物と、サポニンおよびフルボ酸の少なくとも一方とを添加してもよいし、加えて前記活性汚泥を含む槽内の前記有機廃水、前記活性汚泥及び前記微生物を含む混合物の銀-塩化銀電極に対する酸化還元電位が0mV以上310mV以下に維持し汚泥を減容する管理を行ってもよい。
【0047】
以上の通り、本実施形態の有機廃水の処理方法を用いれば、冬場や緯度の高い地域などの低温環境下であっても、又は夏場や緯度の低い地域などの高温環境下であっても、少なくとも1つの活性汚泥を含む槽中で余剰汚泥を高効率で溶菌することが可能となる。そのため、汚泥減容のための特別な設備や、汚泥減容のための特殊な処理条件を必要とせず、かつ高い汚泥減容効果が得られる。特に、本実施の形態の有機廃水の処理方法を用いれば、余剰汚泥の発生を無くすことができる場合があり、このような場合は、余剰汚泥を処理するまでの間貯留しておく汚泥貯留槽15を使用しなくとも活性汚泥法による有機性廃水の処理を行うことが可能になる。汚泥貯留槽15を省略できれば、設備の小型化、投入エネルギーの省力化及び貯留している汚泥の腐敗を原因とした悪臭発生の抑制といった利点がより一層得られるため好ましい。
【実施例0048】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。例1-1~例1-3、例2-1、例2-2、例5-1~例5-3、例6-1、例7-1、例8-1、例9-1、例10-1、例11-1は比較例であり、例3-1~例3-3、例4-1、例4-2、例6-2~例6-4、例7-2、例8-2、例9-2~例9-4、例10-2、例11-2は実施例である。
【0049】
(例1-1~例1-3)
曝気槽を模したガラス容器を用い、以下の条件で、好気性処理を行った。
<処理条件>
1)曝気槽容積:1L
2)通風量:2L/min
3)初期MLSS濃度:5,000~7,000mg/L(各試料の初期値が揃うよう濃縮した。)
4)原水:下水汚泥=300mL:700mL
5)測定期間:7日間
6)水温:25℃
具体的には、ガラス容器にて原水と下水汚泥(活性汚泥)とを上記比率で混合し、必要に応じて濃縮することで、MLSS濃度が5,000~7,000mg/Lの混合物を調製した。原水は小松市の農業集落排水施設に流入する廃水を用いた。この混合物に活性汚泥を溶菌する微生物として以下の微生物製剤A、B、Cのいずれか1つを3g(微生物換算で3.0×106個)添加して試料を調製した。その後、ガラス容器内の底部付近に上記通風量で空気を供給(曝気)しながら7日間の好気性処理を行った。このときの水温は、25℃とした。
微生物製剤A:片岡菌を1.0×106個/mLの濃度で含有する微生物製剤(株式会社片岡バイオ研究所製)。
微生物製剤B:EM菌を1.0×106個/mLの濃度で含有する微生物製剤(有限会社Ueta Lab製 ウエタドロン)
微生物製剤C:バチルス属細菌を1.0×106個/mLの濃度で含有する微生物製剤(日之出産業株式会社製 エルビックBZ)。
【0050】
調製直後の試料のMLSS濃度をMLSS計(飯島電子工業株式会社製、IM-100P)にてゼロ校正後に測定し、初期MLSS濃度(mg/L)とした。7日後の試料のMLSS濃度を同じMLSS計にて測定し7日後MLSS濃度(mg/L)とした。
測定結果から以下の式により汚泥減容率(%)を算出した。
汚泥減容率(%)={(7日後MLSS濃度/初期MLSS濃度)-1}×100
【0051】
また、ブランクとして、微生物製剤を添加しない以外は上記と同様にして好気性処理を行い、汚泥減容率(%)を算出した。
ブランクの汚泥減容率(%)に対する各例の汚泥減容率(%)の割合を求め、その値を相対減容率として表1に示した。
【0052】
【0053】
表1に示す通り、活性汚泥を溶菌する微生物を添加することで、汚泥減容率が高くなることが確認された。
【0054】
(例2-1、例2-2)
曝気槽を模したガラス容器を用い、以下の条件で、好気性処理を行った。具体的な手順は例1-1と同様とした。なお、例2-1の処理は例1-1と同じである。
<処理条件>
1)曝気槽容積:1L
2)通風量:2L/min
3)初期MLSS濃度:5,000~7,000mg/L(各試料の初期値が揃うよう濃縮した。)
4)原水:下水汚泥=300mL:700mL
5)測定期間:7日間
6)水温:15℃又は25℃
7)微生物製剤:微生物製剤A
【0055】
好気性処理の後、上記と同様にして汚泥減容率(%)を算出した。
水温25℃での汚泥減容率(%)に対する水温15℃での汚泥減容率(%)の割合を求め、その値を相対減容率として表2に示した。
【0056】
【0057】
表2に示す通り、水温が10℃低下することで、汚泥減容率が4割近く減少することが確認された。
【0058】
(例3-1~例3-3)
曝気槽を模したガラス容器を用い、以下の条件で、好気性処理を行った。具体的な手順は、微生物製剤と共にサポニン及びフルボ酸を添加した以外は、例1-1~例1-3と同様とした。サポニンは株式会社共栄社の天然サポニン粕(粉末状、茶実サポニン)を用いた。フルボ酸は株式会社アートレイの「モフミン液体A」(水溶液状、フルボ酸の固形分として3.6質量%)を用いた。
<処理条件>
1)曝気槽容積:1L
2)通風量:2L/min
3)初期MLSS濃度:5,000~7,000mg/L(各試料の初期値が揃うよう濃縮した。)
4)原水:下水汚泥=300mL:700mL
5)測定期間:7日間
6)水温:15℃
7)サポニン添加量:微生物製剤の添加菌数3.0×106個に対して35mg
8)フルボ酸添加量:微生物製剤の添加菌数3.0×106個に対して乾燥質量で5mg
【0059】
好気性処理の後、上記と同様にして汚泥減容率(%)を算出した。
また、ブランクとして、サポニン及びフルボ酸を添加しない以外は例3-1~例3-3と同様にして好気性処理を行い、汚泥減容率(%)を算出した。
ブランクの汚泥減容率(%)に対する各例の汚泥減容率(%)の割合を求め、その値を相対減容率として表3に示した。
【0060】
【0061】
表3に示す通り、サポニン及びフルボ酸を添加することで、汚泥減容率が向上することが確認された。
【0062】
(例4-1、例4-2)
曝気槽を模したガラス容器を用い、以下の条件で、好気性処理を行った。具体的な手順は、下水汚泥の代わりに化学工場排水汚泥を用いた以外は、例3-1、例3-3と同様とした。
<処理条件>
1)曝気槽容積:1L
2)通風量:2L/min
3)初期MLSS濃度:5,000~7,000mg/L(各試料の初期値が揃うよう濃縮した。)
4)原水:化学工場排水汚泥=300mL:700mL
5)測定期間:7日間
6)水温:15℃
7)サポニン添加量:微生物製剤の添加菌数3.0×106個に対して35mg
8)フルボ酸添加量:微生物製剤の添加菌数3.0×106個に対して乾燥質量で5mg
【0063】
好気性処理の後、上記と同様にして汚泥減容率(%)を算出した。
また、ブランクとして、サポニン及びフルボ酸を添加しない以外は例4-1、例4-2と同様にして好気性処理を行い、汚泥減容率(%)を算出した。
ブランクの汚泥減容率(%)に対する各例の汚泥減容率(%)の割合を求め、その値を相対減容率として表4に示した。
【0064】
【0065】
表4に示す通り、化学工場排水汚泥についても、サポニン及びフルボ酸を添加することで、汚泥減容率が向上することが確認された。
【0066】
(例5-1~例5-3)
試験容器に、活性汚泥濃度が5000~7000mg/Lとなるように小松市の農業集落排水施設に流入する廃水と下水汚泥(活性汚泥)との混合物を調製し、全量を1.8Lとした。この混合物に、活性汚泥を溶菌する微生物として上述の微生物製剤A、B、Cのいずれか1つを6g(微生物換算で6.0×106個)添加して試料を調製した。その後、試験容器内の試料の銀-塩化銀電極に対する酸化還元電位が100mV以上140mV以下となるよう制御しながら14日間の好気性処理を行った。このときの水温は、25℃とした。銀-塩化銀電極に対する酸化還元電位は、ORP計(株式会社堀場製作所製、D-200-1、電極:9300-10D)で測定した。
【0067】
調製直後の試料のMLSS濃度をMLSS計(飯島電子工業株式会社製、IM-100P)にてゼロ校正後に測定し、初期MLSS濃度(mg/L)とした。14日後の試料のMLSS濃度を同じMLSS計にて測定し、14日後MLSS濃度(mg/L)とした。
測定結果から以下の式により汚泥減容率(%)を算出した。
汚泥減容率(%)={(14日後MLSS濃度/初期MLSS濃度)-1}×100
【0068】
また、ブランクとして、微生物製剤を添加しない以外は上記と同様にして好気性処理を行い、汚泥減容率(%)を算出した。
上記それぞれの実験を3回繰り返し、得られた汚泥減容率の平均を算出した。結果を表5に示した。
表5及び後述する表6~7中、「×」はその成分が配合されていないことを示し、「〇」はその成分が配合されていることを示す。
【0069】
【0070】
表5に示す通り、活性汚泥を溶菌する微生物を添加することで、汚泥減容率が高くなることが確認された。
【0071】
(例6-1、例7-1、例8-1)
水温を10℃としたこと以外は例5-1~例5-3と同じ手順で実験を行った。得られた結果を表6に示した。
【0072】
(例6-2)
株式会社共栄社の天然サポニン粕(粉末状、茶実サポニン)を、微生物製剤の添加菌数6.0×106個に対して70mg添加したこと以外は、例6-1と同じ手順で実験を行った。得られた結果を表6に示した。
【0073】
(例6-3)
株式会社アートレイの「モフミン液体A」(水溶液状、フルボ酸の固形分として3.6質量%)を、微生物製剤の添加菌数6.0×106個に対して乾燥質量で10mg添加したこと以外は、例6-1と同じ手順で実験を行った。得られた結果を表6に示した。
【0074】
(例6-4)
前記サポニン及びフルボ酸を、微生物製剤の添加菌数6.0×106個に対してそれぞれ70mg、乾燥質量で10mgずつ添加したこと以外は、例6-1と同じ手順で実験を行った。得られた結果を表6に示した。
【0075】
(例7-2、例8-2)
前記サポニンおよびフルボ酸を、微生物製剤の添加菌数6.0×106個に対してそれぞれ70mg、乾燥質量で10mgずつ添加したこと以外は、例7-1、例8-1と同じ手順で実験を行った。得られた結果を表6に示した。
【0076】
【0077】
表6に示す通り、サポニン及びフルボ酸を添加することで、低温環境下において汚泥減容率が向上することが確認された。
【0078】
(例9-1~例9-4、例10-1~例10-2、例11-1~例11-2)
水温を45℃としたこと以外は、例6-1~例6-4、例7-1~例7-2、例8-1~例8-2と同じ手順で実験を行った。得られた結果を表7に示した。
【0079】
【0080】
表7に示す通り、サポニン及びフルボ酸を添加することで、高温環境下において汚泥減容率が向上することが確認された。
1…有機廃水処理設備、11…有機廃水、12…好気性処理を行う槽、13…沈殿槽、14…汚泥濃縮槽、15…汚泥貯留槽、16…ポンプ、17…上澄み、18…脱離液、19…濃縮汚泥。