(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099486
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】鋼材の疵検出装置及び、鋼材の疵検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240718BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240718BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01N21/892 B
G06T7/00 610B
G06T7/00 350B
G01N21/89 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219094
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023003000
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】剱持 光俊
(72)【発明者】
【氏名】石山 和誉
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB02
2G051CA04
2G051CA06
2G051DA06
2G051EB05
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA02
5L096EA05
5L096EA43
5L096FA06
5L096FA17
5L096FA59
5L096FA64
5L096FA65
5L096FA67
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】 搬送装置によって搬送された鋼材の疵の検査を容易に行うことが可能な鋼材の疵検出装置及び、鋼材の疵検出方法を提供する。
【解決手段】
搬送装置によって搬送された鋼材の疵検出装置である。鋼材の疵検出装置は、下面を有する鋼材の前記下面を臨むように設けられた撮像部と、前記撮像部が撮像した前記鋼材の前記下面を含む撮像データを取得する撮像データ取得部と、前記撮像データに基づいて、前記鋼材の前記下面の疵の検出に関する検出データを生成する検出データ生成部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって搬送された鋼材の疵検出装置であって、
下面を有する鋼材の前記下面を臨むように設けられた撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記鋼材の前記下面を含む撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記撮像データに基づいて、前記鋼材の前記下面の疵の検出に関する検出データを生成する検出データ生成部と、
を有する、鋼材の疵検出装置。
【請求項2】
前記鋼材の疵の基準となる基準データを取得する基準データ取得部を有し、
前記検出データ生成部は、前記撮像データ及び、前記基準データに基づいて、前記検出データを生成する、請求項1に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項3】
前記基準データは、前記疵として検出される優先度が前記疵の形態に応じて設定され、
前記検出データ生成部は、前記撮像データ及び、前記基準データの一致度に応じて前記検出データを生成しかつ、優先度が高い前記基準データから順に前記一致度を求める、請求項2に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項4】
前記鋼材は、前記搬送装置によって一の方向に搬送され、
前記優先度は、前記一の方向に沿って形成された前記疵が、他の形態の前記疵よりも高く設定されている、請求項3に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項5】
前記鋼材は、複数のテーブルロールを有する搬送テーブルで搬送され、
前記優先度は、前記テーブルロールの形状に応じた形状の前記疵が、他の形態の前記疵よりも高く設定されている、請求項3に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項6】
前記基準データは、前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを用いて生成される、請求項2に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項7】
前記基準データは、前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを用いて生成される、請求項3に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項8】
前記検出データ生成部は、
前記撮像データを入力とし、前記検出データを出力する機械学習モデルを有する、請求項1に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項9】
前記機械学習モデルは、
前記撮像データを入力とし、前記鋼材の前記下面の画像を出力する第1機械学習モデルと、
前記鋼材の前記下面の画像を入力とし、前記検出データを出力する第2機械学習モデルと、を有する、請求項8に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項10】
前記機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有する画像及び、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする画像が教師データとして用いられて生成され、
前記鋼材の前記下面が前記疵を有しない前記画像の前記教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、請求項8に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項11】
前記第2機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有する画像及び、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする画像が教師データとして用いられて生成され、
前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする前記教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、請求項9に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項12】
前記撮像部は、前記鋼材の形状に沿って移動する駆動部を有する、請求項1~11のいずれかに記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項13】
前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを表示する表示部を有する、請求項1~11のいずれかに記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項14】
前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを表示する表示部を有する、請求項13に記載の鋼材の疵検出装置。
【請求項15】
搬送装置によって搬送された鋼材の疵検出方法であって、
下面を有する鋼材の前記下面を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された前記鋼材の前記下面を含む撮像データを取得する撮像データ取得工程と、
前記撮像データに基づいて、前記鋼材の前記下面の疵の検出に関する検出データを生成する検出データ生成工程と、
を有する、鋼材の疵検出方法。
【請求項16】
前記鋼材の疵の基準となる基準データを取得する基準データ取得工程を有し、
検出データ生成工程は、前記撮像データ及び、前記基準データに基づいて、前記検出データを生成する、請求項15に記載の鋼材の疵検出方法。
【請求項17】
前記検出データ生成工程では、
前記撮像データを入力とし、前記検出データを出力する機械学習モデルを用いて前記検出データが生成される、請求項15に記載の鋼材の疵検出方法。
【請求項18】
前記機械学習モデルは、
前記撮像データを入力とし、前記鋼材の前記下面の画像を出力する第1機械学習モデルと、
前記鋼材の前記下面の画像を入力とし、前記検出データを出力する第2機械学習モデルと、を有する、請求項17に記載の鋼材の疵検出方法。
【請求項19】
前記機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする、前記検出データの教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、請求項17に記載の鋼材の疵検出方法。
【請求項20】
前記第2機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする、前記検出データの教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、請求項18に記載の鋼材の疵検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置によって搬送された鋼材の疵を検出する鋼材の疵検出装置及び、鋼材の疵検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚鋼板等の鋼材を製造するプロセスでは、製造時に発生した表面の疵の有無を確認するために鋼材の疵を検査することが行われている。このような検査に用いる装置としては、例えば、レーザ投光器で鋼材の表面に向けてレーザ光を照射し、その反射光を受光器で受けて電圧強度信号に変換する疵検査装置が特許文献1に開示されている。特許文献1においては、当該疵検査装置が製造ライン上に設置され、当該製造ライン上の鋼材に対して疵検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造ラインで疵検査が行われた鋼材は、搬送装置によって保管場所まで搬送されて保管される。鋼材が一定の品質であることを確保するためには、製造ラインで疵検査が行われてから保管場所に到着するまでの間に鋼材に新たな疵が形成されていないか確認する必要がある。
【0005】
このため、従来では保管場所に鋼材が到着すると再度鋼材に疵が形成されていないか検査することが行われている。保管場所における鋼材の疵の検査は、鋼材の下面が搬送装置と接触した状態で搬送されるため、上面については検査を容易に行えるが、下面については鋼材を反転しなければ行うことができない問題がある。
【0006】
鋼材の反転には、反転機と呼ばれる機械を用いて行われている。しかしながら、反転機まで鋼材を移動させるために多くの時間を要し鋼材の疵の検査が長くなる問題がある。したがって、商品が発注されてから納品されるまでの時間や日数である、いわゆるリードタイムも長くなる問題がある。
【0007】
また、保管場所のスペースには限りがあるため大掛かりな検査装置を設けることは困難である。このため、保管場所ではユーザの目視にて鋼材の疵を確認することが行われており、ユーザの技量に応じて検査の精度が低くなる問題がある。また、ユーザの目視による検査では、鋼材の表面性状(色味、薄い疵等)によっては疵の視認が困難となる問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、搬送装置によって搬送された鋼材の疵の検査を容易に行うことが可能な鋼材の疵検出装置及び、鋼材の疵検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0010】
[1]
搬送装置によって搬送された鋼材の疵検出装置であって、
下面を有する鋼材の前記下面を臨むように設けられた撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記鋼材の前記下面を含む撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記撮像データに基づいて、前記鋼材の前記下面の疵の検出に関する検出データを生成する検出データ生成部と、
を有する、鋼材の疵検出装置。
[2]
前記鋼材の疵の基準となる基準データを取得する基準データ取得部を有し、
前記検出データ生成部は、前記撮像データ及び、前記基準データに基づいて、前記検出データを生成する、[1]に記載の鋼材の疵検出装置。
[3]
前記基準データは、前記疵として検出される優先度が前記疵の形態に応じて設定され、
前記検出データ生成部は、前記撮像データ及び、前記基準データの一致度に応じて前記検出データを生成しかつ、優先度が高い前記基準データから順に前記一致度を求める、[2]に記載の鋼材の疵検出装置。
[4]
前記鋼材は、前記搬送装置によって一の方向に搬送され、
前記優先度は、前記一の方向に沿って形成された前記疵が、他の形態の前記疵よりも高く設定されている、[3]に記載の鋼材の疵検出装置。
[5]
前記鋼材は、複数のテーブルロールを有する搬送テーブルで搬送され、
前記優先度は、前記テーブルロールの形状に応じた形状の前記疵が、他の形態の前記疵よりも高く設定されている、[3]に記載の鋼材の疵検出装置。
[6]
前記基準データは、前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを用いて生成される、[2]又は[3]に記載の鋼材の疵検出装置。
[7]
前記検出データ生成部は、
前記撮像データを入力とし、前記検出データを出力する機械学習モデルを有する、[1]に記載の鋼材の疵検出装置。
[8]
前記機械学習モデルは、
前記撮像データを入力とし、前記鋼材の前記下面の画像を出力する第1機械学習モデルと、
前記鋼材の前記下面の画像を入力とし、前記検出データを出力する第2機械学習モデルと、を有する、[7]に記載の鋼材の疵検出装置。
[9]
前記機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有する画像及び、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする画像が教師データとして用いられて生成され、
前記鋼材の前記下面が前記疵を有しない前記画像の前記教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、[7]に記載の鋼材の疵検出装置。
[10]
前記第2機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有する画像及び、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする画像が教師データとして用いられて生成され、
前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする前記教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、[8]に記載の鋼材の疵検出装置。
[11]
前記撮像部は、前記鋼材の形状に沿って移動する駆動部を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の鋼材の疵検出装置。
[12]
前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを表示する表示部を有する、[1]~[11]のいずれかに記載の鋼材の疵検出装置。
[13]
前記検出データの生成に用いられた前記撮像データのうち、前記鋼材の前記下面に前記疵が検出された前記撮像データを表示する表示部を有する、[12]に記載の鋼材の疵検出装置。
[14]
搬送装置によって搬送された鋼材の疵検出方法であって、
下面を有する鋼材の前記下面を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された前記鋼材の前記下面を含む撮像データを取得する撮像データ取得工程と、
前記撮像データに基づいて、前記鋼材の前記下面の疵の検出に関する検出データを生成する検出データ生成工程と、
を有する、鋼材の疵検出方法。
[15]
前記鋼材の疵の基準となる基準データを取得する基準データ取得工程を有し、
検出データ生成工程は、前記撮像データ及び、前記基準データに基づいて、前記検出データを生成する、[14]に記載の鋼材の疵検出方法。
[16]
前記検出データ生成工程では、
前記撮像データを入力とし、前記検出データを出力する機械学習モデルを用いて前記検出データが生成される、[14]に記載の鋼材の疵検出方法。
[17]
前記機械学習モデルは、
前記撮像データを入力とし、前記鋼材の前記下面の画像を出力する第1機械学習モデルと、
前記鋼材の前記下面の画像を入力とし、前記検出データを出力する第2機械学習モデルと、を有する、[16]に記載の鋼材の疵検出方法。
[18]
前記機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする、前記検出データの教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、[16]に記載の鋼材の疵検出方法。
[19]
前記第2機械学習モデルは、前記鋼材の前記下面が前記疵を有しないとする、前記検出データの教師データとして、前記鋼材の前記下面の形態が含まれている画像を用いて生成される、[17]に記載の鋼材の疵検出方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鋼材の疵検出装置によれば、鋼材の下面を臨むように設けられた撮像部によって撮像された鋼材の下面を含む撮像データに基づいて、鋼材の下面の疵の検出に関する検出データが生成される。このため、ユーザは、鋼材を反転させずに疵の検査を行うことが可能となる。したがって、鋼材の疵の検査を容易に行うことができ、鋼材の疵の検査時間の短縮を図ることができる。その結果、いわゆるリードタイムの短縮を図ることができる。また、鋼材の疵の検査がユーザの目視のみでは行われなくなるため、疵の検出精度が偏ることを抑止することができる。さらに、撮像データを用いて検出データが生成されるため、鋼材の表面性状(色味、薄い疵等)によらず疵を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】鋼材の疵検出装置の概要を示す説明図である。
【
図2】鋼材の疵検出装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】鋼材の疵検出方法の処理を示すフロー図である。
【
図4】表示部に撮像データが表示される態様を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態に係る鋼材の疵検出装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図7】第2機械学習モデルに学習させる教師データの一例を示す説明図である。
【
図8】第2機械学習モデルに学習させる教師データの一例を示す説明図である。
【
図9】第2機械学習モデルに学習させる教師データの一例を示す説明図である。
【
図10】第2実施形態に係る鋼材の疵検出方法の処理を示すフロー図である。
【
図11】実施例及び、比較例の鋼材の下面の疵検出試験に要した時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、鋼材の疵検出装置の概要を示している。
図1に示すように、鋼材の疵検出装置100は、搬送装置10によって搬送された鋼材20の疵を検出する。
【0014】
鋼材20は、下面を有するものであれば、特には限定されない。鋼材20としては、例えば、鋼板、形鋼、レール、棒鋼、鋼管等が挙げられる。本実施形態においては、鋼材20として上面及び、下面を有する鋼板が用いられる例を説明する。
【0015】
搬送装置10は、例えば、製造ラインPLの終端から所定の保管場所までの間に敷設される。搬送装置10としては、いわゆるトランスファーと称される装置を用いることができる。
【0016】
搬送装置10は、上面視が矩形状に形成された基部11と、基部11において一の方向D1に沿って形成された搬送駆動部12を有する。搬送駆動部12は、チェーン等の環状部材及び、当該環状部材と嵌合する複数の歯車(図示せず)を用いて形成され、一の方向D1において循環移動可能に設けられている。搬送駆動部12は、基部11の幅方向において、一の方向D1と平行にして複数敷設されている。したがって、搬送駆動部12上に載置された鋼材20は、搬送駆動部12が稼働すると一の方向D1に沿って搬送される。
【0017】
搬送装置10の終端側には、鋼材20を上方に移動させる移動装置としてリフティングマグネット30が設けられている。リフティングマグネット30の下方には、撮像部40が設けられている。言い換えれば、撮像部40は、鋼材20の下面を臨むように設けられている。
【0018】
尚、鋼材20は、鋼材20の周囲を囲むように枠状に形成された支持部を有する置台(図示せず)に載置される場合がある。このような場合、撮像部40は、置台の支持部の下方において、鋼材20の下面を臨むように設けられるようにしてもよい。
【0019】
撮像部40は、例えば、静止画像を撮像データとして生成可能なカメラを用いることができる。撮像部40は、静止画像を撮像可能なカメラに限られず、動画を撮像可能なカメラを用いてもよい。
【0020】
鋼材の疵検出装置100は、撮像部40によって生成された撮像データを表示する表示部50を有する。表示部50は、撮像データを表示することができるものであればよく、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を用いることができる。
【0021】
鋼材の疵検出装置100は、装置全体を制御する制御部60を有する。制御部60は、撮像部40及び、表示部50と通信可能に接続されている。
【0022】
図2は、鋼材の疵検出装置100の機能ブロックを示している。
図2に示すように、鋼材の疵検出装置100は、撮像部40と、表示部50と、制御部60と、画像データベース(以下、データベースをDBと記載する)70と、を有する。撮像部40と、表示部50と、制御部60と、画像DB70と、は、伝送路80を介して互いに通信可能に接続されている。
【0023】
画像DB70は、特には限定されないが、HDD(hard disk drive)、SSD(solid state drive)等の公知の記憶手段を用いることができる。画像DB70には、撮像部40が撮像した撮像データが記憶されている。
【0024】
撮像データは、鋼材20を特定可能に生成されるとよい。例えば、撮像データは、撮像部40によって撮像された際の時刻と紐づけられているとよい。また、撮像データは、当該撮像データが生成された際の、照明器具の台数、照明器具の照度等の照明環境情報と紐づいて記録されているとよい。
【0025】
また、画像DB70には、鋼材20の疵の基準となる基準データが記憶されている。基準データは、疵が鋼材20に形成された画像データである。基準データは、例えば、鋼材20の疵が検出された撮像データを用いることができる。基準データは、鋼材20の疵の形態ごとに設けられている。
【0026】
基準データは、基準データが生成された際の時刻と紐づけられているとよい。また、基準データは、当該基準データが生成された際の照明環境情報や撮像自体のホワイトバランスと紐づいて記録されているとよい。
【0027】
基準データは、疵の形態に応じて検出する優先度を定められているとよい。例えば、優先度は、一の方向D1に沿って形成された鋼材20の疵が、他の形態の疵よりも高く設定されているとよい。このような疵としては、線疵が挙げられる。線疵は、例えば、トランスファーの複数の搬送駆動部12のうちの少なくとも1の搬送駆動部12の動作に不備がある場合に形成される。
【0028】
また、鋼材20は、複数のテーブルロール(図示せず)を有する搬送テーブル(図示せず)で搬送され場合には、優先度は、テーブルロールの形状に応じた形状の疵が、他の形態の疵よりも高く設定されているとよい。このような疵としては、凹み疵が挙げられる。例えば、鋼材20がテーブルロールの表面に突き当たって抉られて凸部が形成された場合、鋼材20が搬送される際に凸部が鋼材20の表面に押し付けられることにより凹状の凹み疵が形成される。
【0029】
制御部60は、CPU,ROM,RAMを含むコンピュータである。制御部60は、撮像部40が撮像した鋼材20の下面の撮像データを取得する撮像データ取得部61と、鋼材20の疵の基準となる基準データを取得する基準データ取得部62と、を有する。制御部60は、撮像データ及び、基準データに基づいて、鋼材20の下面の疵の検出に関する検出データを生成する検出データ生成部63と、を有する。
【0030】
撮像データ取得部61、基準データ取得部62及び、検出データ生成部63は、ROMに格納されているデータ及び、プログラム(コンピュータソフトウェア)を読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することにより実現する。
【0031】
撮像データ取得部61は、画像DB70に記憶されている撮像データを読み出すことにより取得する。撮像データ取得部61は、撮像データに記録されている撮像データが撮像された時刻及び、照明環境情報を取得するとよい。
【0032】
基準データ取得部62は、画像DB70に記憶されている基準データを読み出すことにより取得する。具体的には、基準データ取得部62は、撮像データに記録されている撮像データが撮像された時刻及び、照明環境情報に近い基準データを取得するとよい。
【0033】
検出データ生成部63は、例えば、撮像データ及び、基準データから特徴点を抽出し、その類似性に応じて一致度を求め、当該一致度に応じて検出データを生成する。特徴点は、例えば、撮像データの各画素の周辺に対する変化量を基準として設定される。具体的には、特徴点としては、特定の画素の値が当該特定画素の周辺の画素の値よりも変化量が大きい画素を用いることができる。特徴点の抽出は、例えばSIFT(Scale Invariant Feature Transform)等のアルゴリズムを用いることができる。
【0034】
検出データ生成部63は、一致度が予め定められた基準を越えている場合、鋼材20に疵が形成されているとする検出データを生成する。また、検出データ生成部63は、一致度が予め定められた基準以下である場合、他の基準データについて同様の判定を行う。検出データ生成部63は、全ての基準データについて一致度が予め定められた基準以下である場合、鋼材20に疵が形成されていないとする検出データを生成する。
【0035】
検出データ生成部63は、優先度が高い基準データから順に一致度を求めるとよい。このようにして優先度が高い順に一致度を判定することにより、鋼材20の疵の検出を効率的にかつ、精度よく行うことができる。
【0036】
検出データ生成部63は、検出データを生成する際に、疵の種類や程度も含めて生成するとよい。具体的には、検出データ生成部63は、疵の形態(幅、長さ、面積、方向性、輪郭、輪郭の周長)や、鋼材20における疵の位置や、疵と判定された画素の濃度(輝度)の分布等を含めて検出データを生成するとよい。検出データ生成部63としては、例えば、画像認識ソフトを用いることができる。
【0037】
図3は、鋼材の疵検出方法のフローを示している。鋼材の疵検出方法のフローは、例えば、リフティングマグネット30が稼動すると開始される。
図3に示すように、撮像部40は、鋼材20の下面を撮像して撮像データを生成する(ステップS11)。撮像部40は、ステップS11の撮像工程で生成した撮像データを制御部60に送信する。
【0038】
制御部60は、撮像データを受信すると画像DB70に格納する。撮像データ取得部61は、画像DB70から撮像データを読み出して取得する(ステップS21)。
【0039】
尚、ステップS21の撮像データ取得ステップは、予め画像処理が行われた撮像データが取得されるとよい。画像処理の一例としては、例えば、適応的2値化処理、クロージング・オープニング処理等が挙げられる。
【0040】
適応的2値化処理は、画素ごとに定められた閾値で2値化処理を行う画像処理である。適応的2値化処理においては、例えば、閾値の設定対象となる画素の周囲の画素値の平均値を閾値として設定することができる。適応的2値化処理では、このように閾値が設定されることで、例えば、部分的に明るさが変化するような画像であっても、当該明るさの変動による影響を低減させて2値化処理をすることができる。
【0041】
すなわち、一般的な2値化処理では、1つの画像につき1つの閾値を用いて画像処理がなされる。このため、部分的に明るさが変化するような画像では、当該明るさの変動により、疵以外の領域が強調される不適切な2値化処理がなされるおそれがある。したがって、適応的2値化処理を用いることで、良好な2値化処理画像が得られ、鋼材の疵検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0042】
クロージング・オープニング処理は、2値化処理がなされた画像に対して、膨張処理と収縮処理とが複数回なされる画像処理である。具体的には、膨張処理から収縮処理がなされる過程では、黒いノイズ等を除去することができる。また、収縮処理から膨張処理がなされる過程では、白いノイズ等を除去することができる。クロージング・オープニング処理がなされることによって、このようなノイズ等を除去することができるため、鋼材の疵検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0043】
基準データ取得部62は、画像DB70から基準データを読み出して取得する(ステップS22)。基準データ取得部62は、例えば、ステップS21の撮像データ取得工程で取得された撮像データの撮像時刻及び、照明環境情報に近い基準データを取得する。
【0044】
検出データ生成部63は、ステップS21の撮像データ取得工程で取得された撮像データ及び、ステップS22の基準データ取得工程で取得された基準データに基づいて、検出データを生成する(ステップS23)。検出データ生成部63は、生成した検出データが鋼材20に疵が形成されているデータであるかを判定する(ステップS24)。
【0045】
ステップS24の判定において、生成した検出データが鋼材20に疵が形成されていないデータである場合(ステップS24:NO)、処理を終了する。
【0046】
ステップS24の判定において、生成した検出データが鋼材20に疵が形成されているデータである場合(ステップS24:YES)、検出データ生成部63は、当該検出データの生成に用いられた撮像データを表示部50に送信する。
【0047】
表示部50は、撮像データを受信すると、そのデータを表示する(ステップS31)。言い換えれば、表示部50は、検出データの生成に用いられた撮像データのうち、鋼材20の下面に疵が検出された撮像データを表示する。表示部50は、例えば、表示面に確認終了ボタンを表示し、ユーザによって当該ボタンが選択されると、処理を終了する。
【0048】
このように、表示部50に撮像データが表示されることにより、ユーザは、疵が検出された鋼材20の撮像データを目視することができる。したがって、ユーザは当該検出の正誤を確認すればよいため、検査の負荷が大幅に軽減される。尚、ユーザによる確認結果は、基準データにフィードバックさせるとよい。このようにすることで、鋼材の疵検出装置100の疵の検出精度を高めることができる。
【0049】
言い換えれば、基準データは、ステップS23の検出データ生成工程で用いられた撮像データのうち、鋼材20の下面に疵が検出された撮像データ、すなわちステップS24の判定において、「疵があり」と判定された撮像データを用いて生成されるとよい。このように基準データが生成されることにより、基準データの信頼性を高めることができ、疵の検出精度を高めることが可能となる。
【0050】
図4は、
図3のステップS31の表示工程において表示部50に撮像データが表示される態様が示されている。
図4に示されているように、表示部50においては、鋼材20の下面を映した撮像データが表示されている。
【0051】
撮像データには、例えば、図において白の破線の円で示されている画像領域を、疵が形成されている領域として示されている。また、撮像データの下方には、疵が形成されている領域の拡大画像が表示されている。このように表示することで、ユーザは、疵が形成されている位置及び、その形態、表面性状の確認を容易に行うことが可能となる。
【0052】
また、撮像データは、照明環境によって鋼材20の下面の映り方が異なる。
図4においては、照明装置の台数を4台用いて撮像データが生成された例が示されている。図中の左側には、日中の時間帯において生成された撮像データが示され、右側には、夜間の時間帯において生成された撮像データが示されている。このように、照明環境によっては撮像データの背景の写り方が異なる。
【0053】
尚、撮像部40は、鋼材20の大きさや形状や、撮像部40の視野によっては、一の位置においてはその全体を写すことができない場合がある。このような場合には、撮像部40を複数の位置に設け、各々の撮像データを合成して1の撮像データを得るようにしてもよい。
【0054】
また、撮像部40を鋼材20の形状に沿って移動させることにより、複数の位置で撮像した撮像データを合成して1の撮像データを得るようにしてもよい。例えば、撮像部40に駆動部を設けることにより撮像部40を移動させてもよい。
【0055】
図5は、駆動部を有する撮像部40の構成を示している。
図5に示すように、撮像部40の下方には駆動部41が設けられている。駆動部41は、例えば、レール90の溝に嵌合するローラ42を有する。したがって、駆動部41が稼働すると、ローラ42が回転してレール90の敷設方向に撮像部40が移動する。
【0056】
レール90は、鋼材20の形状に応じて敷設するとよい。例えば、鋼材20が矩形の板状である場合には、鋼材20の長手方向に沿ってレール90を敷設するとよい。また、鋼材20が円板状である場合には、環状にレール90を敷設するとよい。このように、レール90を敷設することで撮像部40を鋼材20の形状に沿って移動させることができる。
【0057】
尚、駆動部41はこのような態様に限られず、例えば、複数の車輪で構成してもよい。このように駆動部41を構成した場合には、レール90の代わりに駆動部41を移動させる方向に沿って壁部を設けて移動コースを形成し、撮像部40の移動を移動コースによってガイドさせるようにしてもよい。
【0058】
以上のように本発明の鋼材の疵検出装置100によれば、撮像部40によって撮像された鋼材20の下面の撮像データと、鋼材20の疵の基準となる基準データと、に基づいて、検出データが生成される。このため、ユーザは、鋼材20を反転させずに疵の検査を行うことが可能となる。したがって、鋼材20の疵の検査を容易に行うことができ、鋼材20の疵の検査時間の短縮を図ることができる。その結果、いわゆるリードタイムの短縮を図ることができる。
【0059】
具体的には、鋼材の疵検出装置100は、従来の方法よりも半日以上も検査に要する時間を短縮することが可能となる。鋼材の疵検出装置100によって鋼材20の検出を行うことができるため、ユーザの力量に依らず疵の有無を確認することができる。
【0060】
また、本発明の鋼材の疵検出装置100によれば、撮像部40を鋼材20の下面を臨むように設ければ、他の部材については撮像部40と近接した位置に設けなくてもよい。このため、鋼材20の疵検出に使用する保管場所のスペースを最小限とすることができる。さらに、鋼材20の疵の検査がユーザの目視のみでは行われなくなるため、疵の検出精度が偏ることを抑止することができる。さらにまた、撮像データを用いて検出データが生成されるため、鋼材20の表面性状(色味、薄い疵等)によらず疵を検出することが可能となる。具体的には、撮像データは、鋼材20の表面性状(色味、薄い疵等)に応じて、拡大、縮小、画素値の補正等の処理を行うことができ、ユーザの目視による確認よりも精度よく疵を検出することが可能となる。尚、鋼材20の表面性状(色味、薄い疵)に応じて撮像部40の撮影条件(照明、絞りなど)の調整等が適宜行われるとよい。例えば、鋼材20の色味が暗い場合には、撮影条件の絞り値(f値)を低くする調整や、撮影条件の照明の光度を明るくする調整等が行われるとよい。
【0061】
尚、表示部50による撮像データの表示は、任意に行うことができる工程である。例えば、表示部50による撮像データの表示は、鋼材の疵検出装置100による鋼材20の下面の疵の検出精度が高い場合には行わないようにしてもよい。
【0062】
鋼材20の下面の疵の検出精度が高い場合、ステップS24の判定において、「疵があり」と判定された際に、表示部50による撮像データの表示に変えて、スピーカから音声を出力してユーザに知らせるようにしてもよい。
【0063】
(第2実施形態)
上述の実施形態においては、検出データ生成部63は、撮像データ及び、基準データに基づいて、検出データを生成する例を説明した。検出データ生成部は、このような態様に限られず、撮像データを入力とし、検出データを出力する機械学習モデルを含んで構成してもよい。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図6は、第2実施形態に係る鋼材の疵検出装置200の構成を示している。
図6に示すように、制御部60は、検出データ生成部65を有する。検出データ生成部65は、撮像データを入力とし、鋼材の下面の画像を出力する第1機械学習モデル65aと、鋼材の下面の画像を入力とし、検出データを出力する第2機械学習モデル65bと、を有する。
【0065】
第1機械学習モデル65a及び、第2機械学習モデル65bは、ニューラルネットワークやディープラーニングなどの公知の機械学習モデルを挙げることができる。第1機械学習モデル65a及び、第2機械学習モデル65bは、例えば、記憶装置に格納されているデータセットを教師データとして機械学習される。
【0066】
第1機械学習モデル65aは、鋼板の下面を含有する含有画像及び、鋼材の下面を含有しない非含有画像を教師データとして用いて生成される。これらの画像が教師データとして用いられて学習されることにより、第1機械学習モデル65aは、鋼材の下面の形状の特徴を学習することができる。
【0067】
したがって、第1機械学習モデル65aは、画像において鋼材の下面の特徴に合致する領域を当該下面として認識することで、入力データの撮像データから下面を抽出した画像として出力することが可能となる。
【0068】
鋼材の下面のみを撮像した画像では、鋼材と非鋼材との境界を撮像することは困難である。すなわち、第1機械学習モデル65aが下面を抽出した画像を出力することで、鋼材と非鋼材との境界を含んだ状態で画像を出力することが可能となる。これにより、鋼材の端部に形成されている疵を検出することが可能となる。
【0069】
第2機械学習モデル65bは、鋼材の下面が疵を有する画像及び、鋼材の下面が疵を有しないとする画像を教師データとして用いて生成される。これらの画像が教師データとして用いて学習されることにより、第2機械学習モデル65bは、鋼材の下面が疵の特徴を学習することができる。
【0070】
鋼材の下面が疵を有する教師データとしては、例えば、オペレーターによる過去の検査において、任意に定められた基準を満たす疵があるものとして選定された画像が挙げられる。
【0071】
鋼材の下面が疵を有しないとする教師データとしては、例えば、オペレーターによる過去の検査において、任意に定められた基準を満たす疵がないものとして選定された画像が挙げられる。また、当該教師データとしては、当該基準を満たさないものの、目視できる程度の模様や形状が視認された画像を用いることができる。尚、疵の基準は、例えば、深さN(Nは任意の数値)mm以上、幅M(Mは任意の数値)mm以上等によって定めることができる。
【0072】
図7は、第2機械学習モデル65bの学習に用いられる教師データの一例を示している。
図7において、白い点線で囲まれた領域には、点状の模様PT1が鋼材の下面に生成している。点状の模様PT1は、任意に定められた疵の基準を満たさないものの、目視できる程度の模様や形状が視認された画像の例である。点状の模様PT1は、例えば、搬送設備との接触に起因するものや、鋼材のスケール剥離等に起因するものと考えられる。
【0073】
図8は、第2機械学習モデル65bの学習に用いられる教師データの一例を示している。
図8において、黒い点線で囲まれた領域には、斑状の模様PT2が鋼材の下面に生成している。斑状の模様PT2は、任意に定められた疵の基準を満たさないものの、目視できる程度の模様や形状が視認された画像の例である。斑状の模様PT2は、例えば、搬送設備との接触に起因するものや、鋼材のスケール剥離等に起因するものと考えられる。
【0074】
図9は、第2機械学習モデル65bの学習に用いられる教師データの一例を示している。
図9において、白い点線で囲まれた領域には、線状の形状PT3が鋼材の下面に生成している。線状の形状PT3は、任意に定められた疵の基準を満たさないものの、目視できる程度の模様や形状が視認されたものの例である。線状の形状PT3は、搬送設備との接触に起因するものや、鋼材のスケール剥離等に起因するものと考えられる。
【0075】
図10は、第2実施形態に係る疵検出方法の処理を示している。
図10に示すように、撮像部40は、鋼材20の下面を撮像して撮像データを生成する(ステップS11)。撮像部40は、ステップS11の撮像工程で生成した撮像データを制御部60に送信する。
【0076】
制御部60は、撮像データを受信すると画像DB70に格納する。撮像データ取得部61は、画像DB70から撮像データを読み出して取得する(ステップS41)。
【0077】
検出データ生成部65は、ステップS41の撮像データ取得工程で取得された撮像データに基づいて、検出データを生成する(ステップS42)。
【0078】
具体的には、検出データ生成部65は、第1機械学習モデル65aを用いて、ステップS41で取得した撮像データを入力とし、鋼材の下面の画像を出力する。また、検出データ生成部65は、第2機械学習モデル65bを用いて、第1機械学習モデル65aから出力された鋼材の下面の画像を入力とし、検出データを出力する。
【0079】
検出データ生成部65は、ステップS42で生成された検出データが鋼材20に疵が形成されているデータであるかを判定する(ステップS43)。
【0080】
ステップS43の判定において、鋼材20に疵が形成されていないデータである場合(ステップS43:NO)、処理を終了する。
【0081】
ステップS43の判定において、生成した検出データが鋼材20に疵が形成されているデータである場合(ステップS43:YES)、検出データ生成部65は、当該検出データの生成に用いられた撮像データを表示部50に送信する。
【0082】
表示部50は、撮像データを受信すると、そのデータを表示する(ステップS31)。表示部50は、例えば、表示面に確認終了ボタンを表示し、ユーザによって当該ボタンが選択されると、処理を終了する。
【0083】
尚、上述の実施形態で説明した第1機械学習モデル65aは、任意に用いることができる。すなわち、第1機械学習モデル65aを用いずに、第2機械学習モデル65bのみで検出データを生成するようにしてもよい。
【0084】
(試験例1)
鋼材の下面の疵検出試験を行った。第1実施形態で説明した鋼材の疵検出装置100を使用した例を実施例とした。また、反転機を用いて鋼材を反転させてユーザの目視により検査を行った例を比較例とした。
【0085】
図11は、実施例及び、比較例の鋼材の下面の疵検出試験に要した時間を示している。
図11に示すように、実施例の時間は11分であり、比較例の時間は251分である。このように、実施例では、比較例よりも検査時間を240分短縮することができる。
【0086】
(試験例2)
第2実施形態で説明した鋼材の疵検出装置200を用いて、鋼材の下面の疵の検出率を確認した。第1機械学習モデル及び、第2機械学習モデルの生成に用いられる教師データを変えて、実施例2~4の鋼材の疵検出装置200を作製した。
【0087】
実施例2は、鋼板の下面を含有する含有画像として、鋼材の下面のみが撮像された画像を教師データに用いて生成された第1機械学習モデル65aを用いた例である。
【0088】
実施例3は、鋼板の下面を含有する含有画像として、鋼材の下面を含む画像及び、非鋼材の画像を含む画像を教師データに用いて生成された第1機械学習モデル65aを用いた例である。
【0089】
実施例4は、鋼板の下面を含有する含有画像として、鋼材の下面を含む画像及び、非鋼材の画像を含む画像を教師データに用いて生成された第1機械学習モデル65aを用いた例である。
【0090】
また、実施例4は、鋼材の下面が疵を有しないとする教師データとしては、任意に定められた疵の基準を満たさないものの、目視できる程度の模様や形状が視認されたものを教師データとして用い生成された第2機械学習モデル65bを用いた例である。
【0091】
実施例2~4の鋼材の疵検出装置200で鋼材の下面を撮像した撮像データについて、疵の検出試験を行い、各々の鋼材の疵検出装置200について疵の検出率(%)を求めた。その結果を表1に示す。尚、実施例2~4の疵の検出率(%)は、鋼材の疵検出装置200によって検出された疵の数を、対象鋼材の仕様で定められた条件に従って疵として検出されるべき疵の数で除することによって求めた。
【0092】
また、実施例2~4では、対象鋼材の仕様で定められた条件に従って、疵には該当しない形態(以下、非疵形態とも称する)に対して、疵として検出(過検出)された割合を疵の過検出率(%)として求めた。疵の過検出率(%)は、過検出が発生した画像の数を、非疵形態を含む画像の数で除することによって求めた。
【0093】
【0094】
検出率の改善率(%)は、実施例2の検出率(%)を基準とし、実施例3又は、実施例4の検出率(%)の当該基準に対する増加割合(%)として求めた。
また、過検出の改善率(%)は、実施例2の過検出率(%)を基準とし、実施例3又は、実施例4の過検出率(%)の当該基準に対する減少割合(%)として求めた。
【0095】
表1に示されるように、実施例3及び、4は、検出率が実施例2よりも高くなることが分かった。実施例3及び、4の第1機械学習モデルにおいては、鋼板の下面を含有する含有画像として、非鋼材の画像を含む画像をも教師データに用いたので、鋼材の下面を含む画像のみを学習データにする場合に比べてデータ数が多い。このため、実施例3及び、4においては検出精度が向上し、実施例3及び、4の検出率が実施例2よりも高くなると考えられる。
【0096】
また、実施例4は、過検出率が実施例2、3よりも低くなり、改善されることが分かった。実施例4の第2機械学習モデルは、鋼材の下面が疵を有しないとする教師データとして、任意に定められた疵の基準を満たさないものの、目視できる程度の模様や形状が視認されたものを教師データとして用い生成されている。したがって、第2機械学習モデルは、疵と模様等の形態とを区分けして認識することができるため、過検出率が改善されたものと考えられる。
【符号の説明】
【0097】
100 鋼材の疵検出装置
200 鋼材の疵検出装置
10 搬送装置
20 鋼材
40 撮像部
41 駆動部
50表示部
60 制御部
61 撮像データ取得部
62 基準データ取得部
63 検出データ生成部
65 検出データ生成部
65a 第1機械学習モデル
65b 第2機械学習モデル