(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099489
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】保護構造用の摩擦紐材を有するエネルギー散逸装置
(51)【国際特許分類】
F16F 7/14 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
F16F7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000125
(22)【出願日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】102023000000306
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】512027452
【氏名又は名称】オフィシネ マッカフェリイ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガリアルディ,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ナダリニ,マッテオ
【テーマコード(参考)】
3J066
【Fターム(参考)】
3J066AA22
3J066AA30
3J066BA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地滑り関連の出来事または雪関連の出来事が発生するたびに必ずしも交換する必要がなく、かつ、安定した制動効果を有し、好ましくは衝撃荷重の増加に応じて徐々に制動効果が高まる、防護ネット用のエネルギー散逸装置を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔54を有する板52と、複数の貫通孔54を板52の一方の側と他方の側とで交互に順次通過して、曲がりくねった形状をとっているロープ16とを備えている。複数の貫通孔54の少なくとも1つが、板52の面の垂線に対して傾斜した軸を有している。追加的または代替的に、複数の貫通孔54の少なくとも1つは、板52の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する材料で作成されたスライドブッシュ55が設けられる。追加的または代替的に、板52は少なくとも3つの孔54を備え、3つの孔54において、少なくとも隣り合う孔54の対は他の隣り合う孔54の対と異なる間隔を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護構造用の摩擦紐材を有するエネルギー散逸装置であって、
・複数の貫通孔を有する板と、
・前記複数の貫通孔を前記板の一方の側と他方の側とで交互に順次通過して、曲がりくねった形状をとっているロープと、
を備え、
・前記複数の貫通孔の少なくとも1つが、前記板の面の垂線に対して傾斜した軸を有し、
・追加的または代替的に、前記複数の貫通孔の少なくとも1つは、前記板の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する材料で作成されたスライドブッシュが設けられ、
・追加的または代替的に、前記板は少なくとも3つの孔を備え、前記3つの孔において、少なくとも隣り合う孔の対が他の隣り合う孔の対と異なる間隔を有している、
ことを特徴とするエネルギー散逸装置。
【請求項2】
前記ロープは前記保護構造への接続用である端部を備え、
前記端部に最も近い前記孔が、
・前記板の前記面の垂線に対して傾斜した軸を有し、および/または、
・前記板の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する材料で作成されたスライドブッシュが設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー散逸装置。
【請求項3】
少なくとも4つの孔を備え、
隣り合う前記孔の対は、少なくとも2つの異なる寸法の間隔を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエネルギー散逸装置。
【請求項4】
少なくとも5つまたは6つの孔を備え、
隣り合う前記孔の対は、少なくとも2つの異なる寸法の間隔を有することを特徴とする請求項3に記載のエネルギー散逸装置。
【請求項5】
隣り合う孔同士が前記板の面の垂線に対して鏡面的に傾斜している軸を有していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエネルギー散逸装置。
【請求項6】
傾斜している軸を有する孔の少なくとも1つが、前記板の前記面の垂線に対して10°から80°の間の傾斜を有し、好ましくは20°から70°の間の傾斜を有し、より好ましくは30°から60°の間の傾斜を有し、さらに好ましくは40°から50°の間の傾斜を有していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のエネルギー散逸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、制動装置とも呼ばれ、安全構造用の摩擦紐材を有するエネルギー散逸装置に関する。
【0002】
この制動装置は、例えば安全網を備えるタイプの防護柵と関連付けることができ、当該安全網は、様々な方法で地面に固定され、梁、支柱、パイロン、ロープ、および/またはその他の支持構造により適切に支持されて、安全構造を形成している。本発明は、膨大な量のエネルギーを散逸する必要がある、または前述の安全網やその支持構造にかかる負荷を制限して抑制する必要がある、あらゆる安全構造の製造に使用される。このような用途の非限定的な例として、落石防止壁、土石流防止壁、土地の起伏を安定化させる構造、雪崩防止構造または降雪保護構造などが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
安全柵自体に衝突する物質の運動エネルギーを吸収するために、この安全柵と連動した制動装置を使用することが知られている。落石安全構造物に使用する場合、制動装置を使用することにより、地盤の沈下に起因し地滑りに関連する物質の運動エネルギーを吸収することができ、落石防止ネットの破損や、その結果として生じる、例えば山道や住宅地など危険な地域への地滑りに関連する物質の滑り落ちを防止することができる。このような制動装置は、保護構造に衝突する雪の塊のエネルギーを吸収することを目的として、雪崩保護構造物や降雪構造物に使用されるときにも同様の役目を担っている。
【0004】
このような制動装置には、地滑りに関連する物質の落下や雪崩を止めることを目的として、地面に固定されている支持物と安全網または防護柵との間に介在している塑性変形可能な要素を使用した様々なタイプのものが知られている。これらの制動装置は、変形することにより、落石防止ネットや安全柵に衝突する物体の運動エネルギーを吸収して、当該落石防止ネットや安全柵への損傷を防止している。
【0005】
これらの周知の塑性変形を伴う制動装置の1つが、インコフィル テック エス.アール.エル(Incofil Tech S.r.l)の名前で欧州特許第3401443号に記載されている。この制動装置は、開放されたリング状の本体により形成されており、当該本体の端はロープを用いて係合され、一方の端が安全柵や安全網に係合されており、他方の端が地面に係合されている。岩や雪の塊が防護ネットや安全柵に衝撃を与えた結果として、これらのロープが牽引されると、この制動装置はリングの両端が離れる方向に動かす力を受け、当該リングが塑性変形することにより開いて衝撃力を吸収している。
【0006】
塑性変形を伴う制動装置の主な欠点は、当該制動装置の変形が不可逆的であるため、制動装置が作動した後に交換する必要があることである。さらに、このことは、当該制動装置が2回の連続する衝撃を適切に吸収するように作動できないため定期的に検査する必要があり、特に地滑り関連の出来事や雪崩の直後には検査する必要があるということを意味している。
【0007】
曲がりくねった経路で拘束されたロープにより与えられた摩擦を利用する、他のタイプの制動装置も知られている。特に、ロープが金属板に形成された一連の孔を曲がりくねって通過する、いわゆる「スネークブレーキ(snake brakes)」が知られている。例えば、このロープにより支持されている防護ネットや安全柵に衝撃が加わることにより、当該ロープが牽引状態にされると、このロープがより直線的な形状をとる傾向があり、したがって、このロープが金属板の孔において滑らかに動いて、曲がりくねった配置のループを減少させている。このようにして、ロープの金属板を通過する部分は、孔の壁や孔の縁に対して滑り摩擦を与えている。衝撃荷重の運動エネルギーが摩擦によりすべて散逸されると、金属板の孔におけるロープの滑走が停止する。
【0008】
摩擦紐材を使用したブレーキ装置の主な欠点は、望ましいことであるが、衝撃荷重が増加すると制動力が均一にならない、または段階的に増加するという事実である。動摩擦力は最初の離れる動作(initial detachment action)の静止摩擦力よりも小さいため、ロープが金属板に対してまだ停止しているときに前述の制動力が小さな衝撃荷重に対して最大になり、衝撃荷重が一定値を超えるとき、この制動力が急激に減少して、ロープが金属板の孔において滑走し始める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の目的は、地滑り関連の出来事または雪関連の出来事が発生するたびに必ずしも交換する必要がなく、かつ、安定した制動効果を有し、好ましくは衝撃荷重の増加に応じて徐々に制動効果が高まる、防護ネット用の制動装置または安全柵用の制動装置とも称されるエネルギー散逸装置を提供することにより、従来技術の欠点を克服することである。
【0011】
本願発明の別の目的は、信頼性が高く経済的であり、設置が容易で、検査が容易で、かつ必要に応じて交換が容易な制動装置を提供することである。
【0012】
これらの目的やその他の目的を達成するために、本発明は、添付の特許請求の範囲に示される特徴を有する制御装置に関する。
【0013】
第1の態様によれば、保護構造用の摩擦紐材を有するエネルギー散逸装置について記載されており、当該エネルギー散逸装置は、複数の貫通孔を有する板とロープを備えており、当該ロープは、複数の孔を前記板の一方の側と他方の側とで交互に順次通過して、曲がりくねった形状をとっている。これらの貫通孔の内の少なくとも1つが、前記板の面の垂線に対して傾斜した軸を有していてもよい。追加的または代替的に、これらの貫通孔の内の少なくとも1つが、前記板の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する材料で作成されたスライドブッシュを備えている。追加的または代替的に、前記板は少なくとも3つの孔を備え、当該3つの孔において、少なくとも隣り合う孔の対が他の隣り合う孔の対と異なる間隔を有している。これらの孔が同一直線上に並んでいない場合、所定の孔の隣にある孔とは、他の連続する孔の全てに対して、当該所定の孔に対してより短い距離で配置され、前記板の両端にある孔の一つから順次数えられている、連続する孔であると理解されることを意図している。
【0014】
特定の態様によると、前記ロープは、前記保護構造への接続用である端部を備えている。この端部に最も近い前記孔が、前記板の面の垂線に対して傾斜した軸を有していてもよい。追加的または代替的に、この端部に最も近い前記孔が、前記板の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する材料で作られたスライドブッシュを備えていてもよい。
【0015】
他の特定の態様によると、前記エネルギー散逸装置が少なくとも4つの孔を備えていてもよく、この場合、隣り合う前記孔の対は、少なくとも2つの異なる寸法の間隔を有していてもよい。
【0016】
他の特定の態様によると、前記エネルギー散逸装置が少なくとも5つまたは6つの孔を備えていてもよい。この場合、隣り合う前記孔の対は、少なくとも2つの異なる寸法の間隔を有していてもよい。
【0017】
他の特定の態様によると、前記エネルギー散逸装置の隣り合う孔同士が前記板の面の垂線に対して鏡面的に傾斜している軸を有していてもよい。
【0018】
他の特定の態様によると、前記エネルギー散逸装置は、傾斜している軸を有する孔の少なくとも1つが、前記板の面の垂線に対して10°から80°の間の傾斜を有していてもよく、好ましくは20°から70°の間の傾斜を有していてもよく、より好ましくは30°から60°の間の傾斜を有していてもよく、さらに好ましくは40°から50°の間の傾斜を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
さらなる特徴および利点が、単に非限定的な例として与えられる添付図面を参照して、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から理解されるだろう。
【
図1】本発明の態様を組み込んだ制動装置の第1の実施形態を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の態様を組み込んだ制動装置の第2の実施形態を示す概略側面図である。
【
図3】本発明の態様を組み込んだ制動装置の第3の実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の例示的な実施形態において、本発明を実施することを可能にする特徴が記載されている。記載された特徴は、様々な態様で互いに組み合わせることができ、図面および関連する説明は参照する詳細な実施形態に必ずしも限定されない。換言すると、以下の説明を読んでいる当該分野における当業者であれば、本明細書、段落、語句または図面の特定の定式化が、記載され図示された特徴の1つまたは複数を、記載され図示された他の特徴の1つまたは複数と組み合わせるために分離する可能性に対する制限を構成することなく、記載された特徴の1つまたは複数を、記載された他の特徴の1つまたは複数と組み合わせることにより実施する方法を知るための有用な情報項目を得る方法を知ることができる。より詳細には、本明細書では、他の異なる特徴を機能的に適用する必要なく、特徴を機能的に組み合わせる可能性を理解する当該分野の当業者の能力および知識を考慮して、特徴が他の異なる特徴と並置されるか、または他の異なる特徴と組み合わされる可能性がある特定の文脈から特徴が個々に抽出される場合を含め、任意の2つの明示的に記載された特徴の任意の組み合わせが明示的に記載されると理解される必要がある。別段の指定がない限り、本明細書において記載され図示される各々および任意の要素、部材、手段、システム、構成要素、物体は、個々に記載されており、独立して変更可能であり、記載され図示される各々および任意の他の要素、部材、手段、システム、構成要素、物体から分離および/またはこれらと組み合わせることが可能であると理解される必要がある。記載され図示された材料、形態および機能は、本発明を限定するものではなく、非排他的ではあるが好ましい実施形態に従って当業者が本発明を理解し実施できるようにするために単に記載されたものである。
【0021】
ここで
図1を参照すると、本願発明の態様を組み込んだ制動装置10の第1の実施形態が概略側面図として示されている。制動装置10は板12を備えており、当該板12は、例えば鋼製やアルミニウム製の金属板が好ましい。板12は、図中の描画平面X-Xに延びている。板12には複数の孔14が形成されており、当該複数の孔14にはロープ16が挿入され、当該ロープ16は、ある孔と次の孔との間に曲がりくねるように導入されて、
図1に示された板12の配置において上方と下方を交互に通過して、ある孔と次の孔との間に一連のループ15を形成するようにしている。孔14は、わずかな遊びを伴いつつ、好ましくは固有の摩擦を伴い、その中を通ってロープ16がスライドすることができる直径を有する。孔14は、板12の2つの面の領域において広がっている(flared)ことが好ましい。
【0022】
板12は追加の固定孔17を有しており、当該固定孔において、周知のシステムを用いてアンカーロープ(図示せず)が係合されている。ロープ16は、板12のもう一つの側に端部18を有しており、当該端部18は、防護ネットや安全柵において、あるいは支持部およびアンカーロープやその部材と、様々な方法で係合させること、および/または固定させることが意図されている。この目的を達成するため、小孔19を形成するようにロープ16の端部18が形成されてもよく、当該小孔19は、例えば接合部20により、または他の同様の締め付け部材により閉じられており、当該小穴19が先端部22により補強されていることが好ましい。ロープ16の他端部23には、移動を制限して止めるロープロック(travel limit stop rope lock)24を設けてもよい。
【0023】
板12に形成されている孔14は、当該孔14の軸線がY-Y方向に対して傾斜しており、当該Y-Y方向は、板12が延びている描画平面X-Xと垂直である。板12が水平に延びている
図1の描写において、孔14は当該孔14の軸が垂直方向に向けられていない。例えば、
図1では6つの孔14を図示しており、当該6つの孔14は、描画平面X-Xに対してすべて略45°傾斜している孔14の軸を有している。いずれにしても、それぞれの孔14の軸の傾斜は、他の孔14の傾斜に依存していても、していなくてもよく、それぞれの孔14の軸の傾斜は板12の面に対する垂線に対して、10°から80°の間であり、20°から70°の間であるのが好ましく、30°から60°の間であるのがより好ましく、40°から50°の間であるのがさらに好ましい。
【0024】
これらの孔14の軸を傾斜させることにより、ロープ16が孔14を通過する間に、曲率を急激に変化させることなくロープ16の曲がりくねった進行を促進している。
図1では、隣接する孔14同士が鏡面反射性の傾斜を有している。この
図1に示されるように、例えば、最も左側の孔14は、描画平面X-Xに垂直な方向に対して時計回り方向に傾斜しており、板12に対して左から右へと孔14に挿入され、また下から上へと孔14に挿入されるロープ16の通過に伴うようにしている。すぐに連続する孔14、すなわち
図1において左から2番目の孔14は、当該孔14自体の軸を有し、当該軸は、前述のY-Y方向に対して反時計回りに傾斜しており、左から右へと孔14に挿入され、また上から下へと孔14に挿入されるロープ16の通過に伴っている。左から右へと連続する孔14は、最後の孔14までY-Y方向に対して時計回り方向と反時計回り方向とに交互に傾斜している、これら孔14の軸を有しており、当該最後の孔14は、
図1において最も右側にあり、当該最後の孔14の軸は、ロープ16が下方向に出発してロープロック24のある端部23の方に進み続けるような方法で、Y-Y方向に対して反時計回り方向に傾斜している。
【0025】
当然ながら、板12において異なる数の孔14が設けられていてもよい。例えば5つの穴が設けられている場合は、ロープ16がこれらの孔14から上方に出現して、端部23の方に進み続けるだろう。板12において任意の数の孔14を設けることが可能であり、当該孔14は、描画平面X-Xの垂線に対してそれぞれ逆の方向に傾斜している孔14の軸をそれぞれ有している。いずれの場合にしても、本発明の目的のためには、孔14のすべてが、描画平面X-Xに垂直なY-Y方向に対して傾斜させた孔14の軸を有する必要はない。実際には、一部の孔14のみが、そして単一の孔14が、Y-Y方向に対して傾斜させたその孔14自体の軸/それらの孔14自体の軸を有することが、単に必要であるかもしれない。好ましくは、しかしながら非限定的な方法において、少なくとも
図1において最も左にある孔14をY-Y方向に対して傾斜させていることが有利であり、すなわち防護ネットや安全柵に係合させるロープ16の端部18に最も近い孔14が制動装置10の最初の孔14であり、当該最初の孔14において、防護ネットや安全柵に対する衝撃の結果としてロープ16が牽引を受けるときに、このロープ16が滑走し始める。孔14の傾斜は、そのすべてが同一でなければならない必要はなく、孔14のそれぞれに対して、または孔14のグループに対して、異なる角度を有する傾斜をもたらすことが可能である。例えば、孔14の傾斜を徐々に変化させることが可能であり、ここで、板12の端部18に最も近い孔14(またはその逆で端部18から最も離れた孔14)が、連続する孔14に対して(または最も離れた孔14に対して)より傾斜しており、ロープ16の最初の離れる動作のための摩擦に打ち勝つために必要な荷重を徐々に変化させるようにしており、また周知の装置に対して、制動装置10のより均一な制動挙動を得るようにしている。
【0026】
制動装置10は、例えば、この制動装置10が設置されている防護ネットや安全柵に衝撃を及ぼした結果として牽引状態にされるとき、ロープ16が牽引状態にされて、孔14に出入りするループ15により形成された曲がりくねった形状を真っすぐにする傾向がある。この制動効果は、孔14を通過しているロープ16の摩擦と、孔14自体の外縁に対して擦り付けているループ15の湾曲部の両方により与えられる。孔14の傾斜により、当該ロープ16の摩擦、特に特定の荷重値まで作用する最初の離れる動作のための静止摩擦を低減させることができ、孔14におけるロープ16の動作から発生する動摩擦を安定させており、当該動摩擦は、板12でのループ15の幅が狭くなるにつれて徐々に大きくなり、孔14の縁でより多く擦り付ける。
【0027】
ここで
図2を参照すると、本願発明の態様を組み込んだ制動装置30の第2の実施形態が概略側面図として示されている。
図1に対して上述したものに対応している要素は、同一の参照数字で示されるだろう。制動装置30は板32を備えており、当該板32は、例えば鋼製やアルミニウム製の金属板が好ましい。板32は、図中の描画平面X-Xに延びている。板32には複数の孔34が形成されており、当該複数の孔34にはロープ16が挿入され、当該ロープ16は、ある孔と次の孔との間に曲がりくねるように導入されて、
図2に示された板32の配置において上方と下方を交互に通過して、ある孔と次の孔との間に一連のループ15を形成するようにしている。孔34は、わずかな遊びを伴いつつ、好ましくは固有の摩擦を伴い、その中を通ってロープ16がスライドすることができる直径を有する。孔34は、板32の2つの面の領域において広がっている(flared)ことが好ましい。前述したように、板32は追加の固定孔17を有している。ロープ16は、この場合も、板32のもう一つの側に端部18を有しており、当該端部18は、小孔19を形成するために形成されてもよく、当該小孔19は、防護ネットや安全柵に対して、あるいは支持部や固定部材と当該小孔19のロープ16とを、様々な方法で係合させること、および/または固定させることが意図されている。この場合、ロープ16の他端部23には、移動を制限して止めるロープロック(travel limit stop rope lock)24を設けてもよい。
【0028】
板32に形成された孔34同士の間の間隔、すなわち隣接して整列している孔34同士の間の相互距離は、すべてが等しいわけではない。
図2の非限定的な例において、例えば右から1番目の孔と2番目のとの間、または左から1番目の孔と2番目のとの間の広い間隔Lと、例えば例えば右から2番目の孔と3番目のとの間、または左から2番目の孔と3番目のとの間の狭い間隔Sが交互に配置されている。当然ながら、孔34同士をお互いにすべて異なる間隔に設けることもでき、または、他のすべての孔34同士の間隔とは異なるただ一つの間隔を設けることもでき、例えば非限定的な方法において、防護ネットや安全柵と係合するように意図されたロープ16の端部18に最も近い1番目の孔と2番目のとの間である、左側の一番目の間隔を、当該ただ一つの間隔として設けることができる。
【0029】
図2においてすべての孔34は、その軸線が描画平面X-Xに対して垂直である一方で、
図1の例に関連して説明したように、一部または全部の孔34を、それら孔34の軸線を傾斜させた状態で形成することができる。換言すると、本明細書で説明され図示された、第1の実施形態の孔14の特徴と第2の実施形態の孔34の特徴とをお互いに入り混じった状態で備える制動装置を構成することができる。
【0030】
制動装置30は、例えば、この制動装置30が設置されている防護ネットや安全柵に衝撃を及ぼした結果として牽引状態にされるとき、ロープ16が牽引状態にされて、孔14に出入りするループ15により形成された曲がりくねった形状を真っすぐにする傾向がある。この制動効果は、孔34を通過しているロープ16の摩擦と、孔34自体の外縁に対して擦り付けているループ15の湾曲部の両方により与えられる。孔34同士の間隔がお互いに異なるため、関連するループ15の曲率も異なる。例えば
図2に参照されるように、最も広い間隔Lに影響するループがより小さい曲率を有し、すなわち、より狭い間隔Sの領域におけるループ15の曲率に対して、より大きな曲率半径を有している。このことは、孔34がロープ16に与える摩擦、特に孔34の縁がロープ16に与える摩擦も、対応している最も広い間隔Lと最も狭い間隔Sとに関して、最も広いループ15と最も狭いループ15との領域において異なることを意味している。用途、ロープ16の種類や直径、および板32の材質に応じて孔34同士の間の異なる間隔を適切な方法で構成することにより、制動装置30の介在を調整して、防護ネットや安全柵に衝撃を及ぼした結果としての牽引の後に、当該制動装置30の制動動作を安定させることができる。
【0031】
ここで
図3を参照すると、本願発明の態様を組み込んだ制動装置50の第3の実施形態が概略側面図として示されている。
図1および
図2に対して上述したものに対応している要素は、同一の参照数字で示されるだろう。制動装置50は板52を備えており、当該板52は、例えば鋼製やアルミニウム製の金属板が好ましい。板52は、図中の描画平面X-Xに延びている。板52には複数の孔54が形成されており、当該複数の孔54にはロープ16が挿入され、当該ロープ16は、ある孔と次の孔との間に曲がりくねるように導入されて、
図3に示された板52の配置において上方と下方を交互に通過して、ある孔と次の孔との間に一連のループ15を形成するようにしている。孔54はスライドブッシュ55を用いて形成されており、当該スライドブッシュ55により、板52に形成されてスライドブッシュ55よりも大きな直径を有する孔において閉塞が起こっている。スライドブッシュ55は、その両側の一方に、アバットメントリング56を有することが可能であり、当該アバットメントリング56は、板52において直径のより大きい孔に形成されている対応する段差に対して当接して入っている(moves into abutment)。
【0032】
スライドブッシュ55は、板52の材料よりも小さい摩擦係数を有する材料で作成されており、板52は、その代わりに、より耐久性があるがより安価な材料で作成されている。例えばスライドブッシュ55は、テフロン(登録商標)または摩擦係数の低い他の材料から作成されてもよい。スライドブッシュ55は、それぞれの孔54ごとに異なる摩擦係数を有する材料、または孔54のグループごとに異なる摩擦係数を有する材料から作成できる。スライドブッシュ55を設ける孔54は、1つだけ用意されてもよく、または一部の孔54だけ用意されてもよい。さらに、前述の例の解決策を完全または部分的に組み合わせることもでき、描画平面X-Xの垂線に対して傾斜している軸を有するいくつかの孔54を形成することが可能であり、当該描画平面X-Xにおいて、板52が延びており、および/または孔54の対の間が異なる間隔を形成している。
【0033】
制動装置50は、例えば、この制動装置50が設置されている防護ネットや安全柵に衝撃を及ぼした結果として牽引状態にされるとき、ロープ16が牽引状態にされて、孔54に出入りするループ15により形成された曲がりくねった形状を真っすぐにする傾向がある。この制動効果は、孔54を通過しているロープ16の摩擦と、孔54自体の外縁に対して擦り付けているループ15の湾曲部の両方により与えられる。孔54の全部または一部にはスライドブッシュ55が設けられているため、ロープ16に与えられる摩擦は、板52の材料に与えられる摩擦(または、いくつかの孔54がスライドブッシュ55を有していない場合では実質的に与えられる摩擦)とは異なり、より小さいことが好ましい。用途、ロープ16の種類や直径、および板52の材質に応じてスライドブッシュ55、特にスライドブッシュ55の材質を適切な方法で構成することにより、ロープ16に与えられる最初の離れる動作のための摩擦を低減することが可能であり、また制動装置50の介在を調整して、防護ネットや安全柵に衝撃を及ぼした結果としてのロープ16に対する牽引の後に、当該制動装置50の制動動作を安定させることができる。
【0034】
当然ながら、本発明の原理は同じ状態のままであり、実施形態の形態および構造の詳細は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載および図示されたものに対して広く変化させてもよい。
【外国語明細書】