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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099491
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】太陽電池搭載外装材
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20180101AFI20240718BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E04D13/18
E04F13/08 Z ETD
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000946
(22)【出願日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2023002811
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義仁
【テーマコード(参考)】
2E108
2E110
【Fターム(参考)】
2E108KK00
2E108LL00
2E108MM00
2E108NN07
2E110AA04
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110CA04
2E110GB01X
(57)【要約】
【課題】供用期間終了後にフィルム型太陽電池の交換が容易な太陽電池搭載外装材を提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽電池搭載外装材1は、金属板からなり、設置状態において屋外側となる表面を金属素地、めっき、樹脂塗装、フィルムラミネートのいずれかとした外装材基板3と、外装材基板3の設置状態において屋外側となる屋外側表面に一体化するように貼り付けたフィルム型太陽電池5とを備えてなる太陽電池搭載外装材1であって、フィルム型太陽電池5を外装材基板3から容易に剥離可能に接着したことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板からなり、設置状態において屋外側となる表面を金属素地、めっき、樹脂塗装、フィルムラミネートのいずれかとした外装材基板と、該外装材基板の設置状態において屋外側となる屋外側表面に一体化するように貼り付けたフィルム型太陽電池とを備えてなる太陽電池搭載外装材であって、
前記フィルム型太陽電池を前記外装材基板から容易に剥離可能に接着したことを特徴とする太陽電池搭載外装材。
【請求項2】
前記フィルム型太陽電池の裏面の保護フィルム表面又は前記外装材基板の屋外側表面の少なくとも一方を、難接着性樹脂層としたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項3】
前記外装材基板の屋外側表面を難接着性樹脂層とし、該難接着性樹脂層を、フッ素樹脂を含有する塗膜、あるいはラミネートフィルムによって形成したことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項4】
前記フィルム型太陽電池の裏面の保護フィルム表面及び前記外装材基板の屋外側表面が難接着性樹脂層で形成され、該難接着性樹脂層のうち前記保護フィルム側又は前記屋外側表面側のいずれか一面を表面改質して接着性を向上させたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項5】
フィルム型太陽電池の表面保護フィルムの外周が裏面保護フィルムよりも拡大されてなり、前記表面保護フィルムの前記外装材基板に面する側の面の少なくとも拡大された部分は難接着性樹脂層で形成され、かつ表面改質によって接着性が高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項6】
前記フィルム型太陽電池と前記外装材基板表面は粘着層を介して一体化され、該粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムの少なくとも発電層よりも外側となる外周部の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項7】
前記フィルム型太陽電池と前記外装材基板表面は粘着層を介して一体化され、該粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムの発電層よりも外側となる外周部の範囲、および保護フィルムの発電層の各稜角部に三角形となるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項8】
前記フィルム型太陽電池の外周部の範囲に粘着層が設けられると共に、前記外周部の少なくとも一つの稜角部先端に粘着層のない欠損部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項9】
前記フィルム型太陽電池の外周部の範囲に粘着層が設けられると共に、前記外周部の少なくとも一つの稜角部先端に粘着層のない欠損部を設けたことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項10】
前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高くなっており、前記外装材基板から前記フィルム型太陽電池を剥離する際に、粘着層の過半が前記フィルム型太陽電池側に残置されるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項11】
前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高くなっており、前記外装材基板から前記フィルム型太陽電池を剥離する際に、粘着層の過半が前記フィルム型太陽電池側に残置されるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項12】
前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高くなっており、前記外装材基板から前記フィルム型太陽電池を剥離する際に、粘着層の過半が前記フィルム型太陽電池側に残置されるようにしたことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項13】
前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高くなっており、前記外装材基板から前記フィルム型太陽電池を剥離する際に、粘着層の過半が前記フィルム型太陽電池側に残置されるようにしたことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池搭載外装材。
【請求項14】
前記フィルム型太陽電池と前記外装材基板表面は粘着層を介して一体化され、
前記外装材基板表面に粘着層残りがないようにするために、前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高く、かつ前記外装材基板側の粘着層の接着強度を20kN/m未満としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の太陽電池搭載外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の金属外装材に関し、特に、外装材基板とフィルム型太陽電池を一体にした太陽電池搭載外装材に関する。
本明細書における太陽電池搭載外装材とは、例えば建築構造物の外装材として配置された状態で、外装材基板にフィルム型太陽電池が搭載されていることを言い、完工時に搭載されていればよく、外装材出荷時に搭載されているか、あるいは建設工事によって搭載されるかを問わない。
【背景技術】
【0002】
2050年カーボンニュートラルに向け、太陽光発電の普及が期待されている。
しかし、大型の太陽光発電所建設の適地は少なくなり、建築物等への設置が求められる一方で、屋根の耐荷重が小さい既築住宅・建築物や、住宅・建築物の壁面等には設置が容易でないという技術的な課題も存在する。
【0003】
建築物への太陽電池の設置は、先ず、結晶型の太陽電池パネルを、屋根上に架台を設置して配する方法や、屋根材に太陽電池をビルトインしたもの等が見られる。また、屋根以外では、ガラスなどに可視光透過型の有機薄膜太陽電池(以下、OPV)に代表される、フィルム型太陽電池が貼り付けられ、あるいはガラスに挟持されて用いられる。
【0004】
フィルム型太陽電池の概略構成は、発電層が表裏の樹脂製保護フィルムで被覆された構成になっており、表裏のフィルムは熱融着や、(接合面を表面改質したうえで、)ホットメルト接着剤によって接合されているものもある。
新設、既設を問わず、結晶型太陽電池を用いると、架台も含めて重量がかさむ問題があるが、フィルム型太陽電池は軽量で外装材に貼り付ければよく、各種考案がなされている。
【0005】
特許文献1には、太陽電池と、端子ボックス収納部が形成された金属製縦葺き屋根材が、所定の間隔で複数箇所に点付けされた弾性接着剤で一体化された金属製縦葺き屋根材が開示されている。そして、太陽電池と金属製縦葺き屋根材の間において、弾性接着剤同士の間隙が、屋根の流れ方向に連通するように形成されている。
金属製縦葺き屋根材の溝板部および斜面部には、太陽電池が接着されている。コスト削減及び施工性向上を実現するため、架台及び金具を必要としない太陽電池付き金属製縦葺き屋根材を提供するものである。
【0006】
特許文献2には、太陽電池モジュール用の裏面保護シートに関し、基材樹脂層の表裏面に融点の異なる熱融着樹脂層を有し、裏面側の融点を低くし、建材と一体化されてなる建材一体型太陽電池モジュールが開示されている。そして、裏面側の融点を低くすることによって、建材と一体化する工程において、発電層側の熱融着樹脂層を溶融させない工夫によって、裏面側の熱融着樹脂層が前記建材に接合されている。
【0007】
特許文献3には、アクリル系粘着剤を両面に塗布したアクリルフォーム、すなわち両面テープによってフレキシブル太陽電池と基材(建材)を結合した太陽電池一体型の複合構造が開示されている。そして、基材に対するフレキシブル太陽電池シートの90度引き剥がし接着力が10mm当り15N以上の性能を有するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-199979号公報
【特許文献2】特開2019-161038号公報
【特許文献3】実用新案登録第3164871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィルム型太陽電池は、供用中に飛散しないように、強固に接着等により固定されているが、フィルム型太陽電池の耐久性は、現段階では、せいぜい10年程度と言われており、高耐久化が進んでいる外装材の耐久性とのギャップが拡大している。
そのため、外装材の供用期間中に、フィルム型太陽電池が劣化して機能を果たさなくなった場合、その状態で放置されるか、交換する必要が生じる。
交換する場合、フィルム型太陽電池が外装材に強固に固定されているほど、外装材に損傷なくフィルム型太陽電池を剥離することは困難になる。場合によっては、剥離作業時に外装材に損傷を与え外装材の耐久性を低下させる可能性もある。
【0010】
この点、特許文献1~3のいずれにおいても、太陽電池の交換について言及されていない。
【0011】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、供用期間終了後にフィルム型太陽電池の交換が容易な太陽電池搭載外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る太陽電池搭載外装材は、金属板からなり、設置状態において屋外側となる表面を金属素地、めっき、樹脂塗装、フィルムラミネートのいずれかとした外装材基板と、該外装材基板の設置状態において屋外側となる屋外側表面に一体化するように貼り付けたフィルム型太陽電池とを備えてなる太陽電池搭載外装材であって、
前記フィルム型太陽電池を前記外装材基板から容易に剥離可能に接着したことを特徴とするものである。
【0013】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記フィルム型太陽電池の裏面の保護フィルム表面又は前記外装材基板の屋外側表面の少なくとも一方を、難接着性樹脂層としたことを特徴とするものである。
【0014】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記外装材基板の屋外側表面を難接着性樹脂層とし、該難接着性樹脂層を、フッ素樹脂を含有する塗膜、あるいはラミネートフィルムによって形成したことを特徴とするものである。
【0015】
(4)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記フィルム型太陽電池の裏面の保護フィルム表面及び前記外装材基板の屋外側表面が難接着性樹脂層で形成され、該難接着性樹脂層のうち前記保護フィルム側又は前記屋外側表面側のいずれか一面を表面改質して接着性を向上させたことを特徴とするものである。
【0016】
(5)また、上記(1)に記載のものにおいて、フィルム型太陽電池の表面保護フィルムの外周が裏面保護フィルムよりも拡大されてなり、前記表面保護フィルムの前記外装材基板に面する側の面の少なくとも拡大された部分は難接着性樹脂層で形成され、かつ表面改質によって接着性が高くなっていることを特徴とするものである。
【0017】
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記フィルム型太陽電池と前記外装材基板表面は粘着層を介して一体化され、該粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムの少なくとも発電層よりも外側となる外周部の範囲に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
(7)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記フィルム型太陽電池と前記外装材基板表面は粘着層を介して一体化され、該粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムの発電層よりも外側となる外周部の範囲、および保護フィルムの発電層の各稜角部に三角形となるように設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
(8)また、上記(6)又は(7)に記載のものにおいて、前記フィルム型太陽電池の外周部の範囲に粘着層が設けられると共に、前記外周部の少なくとも一つの稜角部先端に粘着層のない欠損部を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
(9)また、上記(6)乃至(8)のいずれかに記載のものにおいて、前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高くなっており、前記外装材基板から前記フィルム型太陽電池を剥離する際に、粘着層の過半が前記フィルム型太陽電池側に残置されるようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
(10)また、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載のものにおいて、前記フィルム型太陽電池と前記外装材基板表面は粘着層を介して一体化され、前記外装材基板表面に粘着層残りがないようにするために、前記粘着層は、前記フィルム型太陽電池の保護フィルムとの接着強度が前記外装材基板との接着強度よりも高く、かつ前記外装材基板側の粘着層の粘着力を20kN/m未満としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、フィルム型太陽電池を外装材基板から容易に剥離可能に接着したことにより、フィルム型太陽電池の劣化した場合、フィルム型太陽電池を容易に交換できる。これによって、外装材を耐久年度まで利用することができ、経済的なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態に係る太陽電池搭載外装材を屋根材とした設置状況を示す外観図である。
図2】フィルム型太陽電池の上面図である。
図3】フィルム型太陽電池裏面の粘着層の配置を示す平面図である(その1)。
図4】フィルム型太陽電池裏面の粘着層の配置を示す平面図である(その2)。
図5】フィルム型太陽電池裏面の粘着層の配置を示す平面図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施の形態に係る太陽電池搭載外装材1は、図1に示すように、金属板からなる外装材基板3と、外装材基板3の屋外側となる屋外側表面に一体化するように貼り付けたフィルム型太陽電池5とを備えたものである。
そして、フィルム型太陽電池5は外装材基板3から容易に剥離可能に接着されている。
太陽電池搭載外装材1の用途は、屋根材や外壁材のような建築構造物の外装材や、あるいは、防音壁や遮音壁など、建築以外の構造物の外装材も含まれるが、図1では、屋根材とした場合を示している。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0025】
<外装材基板>
外装材基板3は、例えば矩形の金属成型板からなり、該外装材基板3の設置状態において屋外側となる表面を金属素地、めっき、樹脂塗装、フィルムラミネートのいずれかとしたものである。外装材基板3の耐久性は20年以上を想定している。
【0026】
フィルム型太陽電池5を容易に剥離可能に接着するため、外装材基板3の屋外側表面、すなわちフィルム型太陽電池5を貼付する面を難接着性樹脂層としてもよい。そして難接着性樹脂層は、例えばフッ素樹脂を含有する塗膜、あるいはラミネートフィルムによって形成する。
難接着性樹脂層を、フッ素樹脂を含有する塗膜、あるいはラミネートフィルムによって形成すると耐久性向上と難接着性を両立できる。
【0027】
<フィルム型太陽電池>
フィルム型太陽電池5は、外装材基板3の設置状態において屋外側となる屋外側表面に一体化し、かつ容易に剥離可能に貼り付けられている。
フィルム型太陽電池5は、有機薄膜太陽電池(OPV)、薄膜系結晶シリコン太陽電池、または、ペロブスカイト太陽電池であり、図2に示すように、発電層7の表裏を保護フィルム9によって被覆されている。
【0028】
フィルム型太陽電池5を外装材基板3から容易に剥離可能に接着するため、フィルム型太陽電池5の裏面の保護フィルム9の表面を難接着性樹脂層としてもよい。
難接着性樹脂層としては、例えばフッ素樹脂やポリイミド樹脂等を用いればよく、これらは単層でもよいし、あるいは、フッ素樹脂やポリイミド樹脂等を外装材基板3側に用いてPET樹脂等の樹脂をその内面側に用いた複層構造としてもよい。要するに、フッ素樹脂やポリイミド樹脂等の難接着性樹脂層を最も外装材基板3側にすればよく、その内面側の樹脂層は特に限定されない。
なお、フィルム型太陽電池5の耐久性は10年程度を想定している。
【0029】
<容易に剥離可能に接着する態様>
接着方法としては、例えば両面テープによって粘着層を形成するもの、熱融着によるもの、ホットメルト接着剤等の接着剤によるものが想定される。
そして、容易に剥離可能に接着するための態様としては、前述したように、外装材基板3又はフィルム型太陽電池5の保護フィルム9の表面を難接着性樹脂層とすればよい。
難接着性樹脂層とするのはフィルム型太陽電池5の裏面又は外装材基板3の屋外側表面のいずれか一方であってもよいし、両方であってもよい。
一方が難接着性樹脂層でもう一方がそのような加工等がされていない場合、難接着性樹脂層側が剥離容易となる。
この場合、外装材基板3側を剥離容易とするのが好ましい。これにより、フィルム型太陽電池5の交換時に外装材基板3に接着層等が残置しないので、外装材基板3を整備する手間が少なくなる。
【0030】
なお、外装材基板3及び保護フィルム9の両方を難接着性樹脂層とした場合には、外装材基板3又は保護フィルム9のいずれか一面を表面改質して接着性を向上させるようにすればよい。ここでも、望ましくは、外装材側で剥離容易とするために、フィルム型太陽電池5の保護フィルム9側を表面改質すると良い。
また、保護フィルム9の表面改質にかえて、保護フィルム9における外装材基板3側の表面をフッ素樹脂層として剥離容易とし、保護フィルム9における発電層7側の表面をPET樹脂層として接着性を高めるようにしてもよい。
【0031】
また、フィルム型太陽電池5は、表裏の保護フィルム9を同寸法としてもよいが、表面側の保護フィルム9の外周を裏面保護フィルム9よりも拡大してもよい。この場合、表面の保護フィルム9における外装材基板3に面する側の面について、少なくともその範囲において表面改質を行って接着性を高くしてもよい。この方法によれば、両面テープの粘着力を大きくしたい場合や、現場で熱融着、ホットメルト接着剤を使用する際に、発電層7への熱影響を避けることができる。
【0032】
接着について、両面テープによって粘着層を形成して行う場合について、さらに詳細に説明する。
この場合、フィルム型太陽電池5を外装材基板3から容易に剥離可能にするために、両面テープの表裏で粘着力に差を設けるようにしてもよい。
また、両面テープは、粘着力が高くなる方に先に貼り付けるとよく、より望ましくは、貼り付け後に時間をおいて粘着力が上昇する仕様とし、外装材への貼り直しを容易にするとよい。また、両面テープは粘着層だけで構成したものでも、基材を用いたものでもよいが、基材は粘着層よりも強度を高くする必要がある。
【0033】
フィルム型太陽電池5と外装材基板3とを粘着層を介して一体化する場合、図3に示すように、粘着層11は、保護フィルム9の少なくとも発電層7よりも外側となる外周部の範囲に設ける。
フィルム型太陽電池5の裏面への雨水の侵入、結露による粘着力の低下を抑制する観点からは裏面全面でもよいが、外周部に切れ目なく粘着層11を形成し、フィルム型太陽電池5の裏面に雨水等が侵入しないようにするとよい。
【0034】
貼付けに供する粘着層11の面積について試算する場合、必要面積は、建設地域の外力(作用風圧力)と、供用における、温度(熱)、紫外線による付着力の低下と、雨水等の侵入による粘着面積の減少による粘着力の経年劣化を考慮して決定すればよい。
例えば、建築基準法の定める基準風速34m/sの地域に建設される大型倉庫を例に行った数値流体解析による鉛直上向きの作用風圧力は、最大3.2kN/mであった。
JIS Z0237 に準拠した両面テープの180°ピール試験による結果、粘着力が20kN/mで、経年劣化による粘着力の低下と粘着面積の減少による粘着力低下率を3%/年と仮定したとき、10年供用時の残存粘着力はおよそ60%となる。したがって、外径寸法300mm×1000mmのOPVの場合、必要粘着面積は0.08mとなるから、幅33mm以上のテープを外周に貼ればよいことになる。
【0035】
フィルム型太陽電池5は、風雨にさらされ、特に、陵角部は、2方向から水が浸入しようとするために粘着力が低下しやすく、そこを起点に供用中に剥離する危険がある。
そのため、図4に示すように、粘着層11を保護フィルム9の発電層7よりも外側となる外周部の範囲に加えて保護フィルム9の発電層7の各稜角部に三角形(図4の破線参照)となるように設けると、供用中の剥離から飛散の抑制に有効である。
一方で、フィルム型太陽電池5の交換作業を行う際には、剥離するための起点を設けた方がよく、例えば図5に示すように、外周部の少なくとも一つの稜角部先端に粘着層11のない欠損部13を設け、タブを形成するとよい。
【0036】
なお、粘着層11は、保護フィルム9との接着強度が外装材基板3との接着強度よりも高くなっており、外装材基板3からフィルム型太陽電池5を剥離する際に、粘着層11の過半がフィルム型太陽電池5側に残置されるようにするのが望ましい。
外装材基板3に残置される粘着層11を少なくして、外装材基板3の粘着層剥離作業等の整備作業を少なくするため、さらに望ましくは、外装材基板3側に糊残りがないように設計するのがよい。このために、外装材基板3側の粘着層11の接着強度を20kN/m未満とするとよい。
【0037】
以上のように、本実施の形態の太陽電池搭載外装材1によれば、供用期間中は風雨によりフィルム型太陽電池5が飛散しない。
また、フィルム型太陽電池5の供用後には、外装材からフィルム型太陽電池5を剥離する際に、粘着層11等がフィルム型太陽電池5側に残置され、換言すれば、外装材側に残置せず剥離できる。このため、外装材に損傷を与えず、耐久性を維持すると共に、外装材側の表面を清浄にする作業手間が減少するため、交換作業の手間を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 太陽電池搭載外装材
3 外装材基板
5 フィルム型太陽電池
7 発電層
9 保護フィルム
11 粘着層
13 欠損部
図1
図2
図3
図4
図5