(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099493
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】感染抵抗性腸内菌株及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240718BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240718BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240718BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240718BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20240718BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240718BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61K35/741
A23L33/135
C12N1/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001564
(22)【出願日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】10-2023-0004607
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523348896
【氏名又は名称】エスエヌジェー ファーマ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SNJ PHARMA INC
【住所又は居所原語表記】MRL Bldg 3F, 1124 W Carson St. Torrance, California 90502, US
(71)【出願人】
【識別番号】524013193
【氏名又は名称】キム,ヒョン ジン
【氏名又は名称原語表記】KIM, Hyeon Jin
【住所又は居所原語表記】1124 W Carson St MRL Bldg 3F, Torrance, California 90502, US
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソン チュル
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジニ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヒャグワ,エンフチメ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ス ラ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ ミ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD85
4B018ME09
4B018MF13
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087NA14
4C087ZB33
4C087ZB35
(57)【要約】
【課題】本発明は、感染抵抗性腸内菌株及びその用途に関し、より詳しくは、病原性微生物による感染疾患に対する予防または治療効果を付与する感染抵抗性腸内菌株及びその用途を提供する。
【解決手段】本発明による感染抵抗性腸内菌株は、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択されることを特徴とする。本発明による感染抵抗性腸内菌株は、摂取時に宿主に病原性微生物による感染疾患に抵抗性を持たせるという効果を有する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される、感染抵抗性腸内菌株。
【請求項2】
前記感染抵抗性腸内菌株は、病原性微生物による感染性疾患に対する予防または治療効果を持つことを特徴とする、請求項1に記載の感染抵抗性腸内菌株。
【請求項3】
オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される1以上の感染抵抗性腸内菌株またはその培養物を有効成分として含む、感染性疾患予防または治療用組成物。
【請求項4】
感染性疾患は、病原性ウイルス、病原性細菌または病原性真菌の感染による疾患であることを特徴とする、請求項3に記載の感染性疾患予防または治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染抵抗性腸内菌株及びその用途に関し、より詳しくは、病原性微生物による感染疾患に対する予防または治療効果を付与する感染抵抗性腸内菌株及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有史以来、人類は病原菌と絶え間ない生存競争をして来ていたが、抗生剤、抗ウイルス剤及びワクチンが続々と開発されるに伴い、感染病の問題が相当解決されて来た。しかし、近年、地球温暖化など気候及び環境の変化、生活環境及び行動の変化、微生物の進化特性によって、一層致命的な新変種の病原菌が出現している。特に、結核、エボラウイルス、メルス、サスのみならず、2019年末に出現したSARS-CoV-2ウイルスは、世界人類全体に莫大な被害を誘発させている。新型コロナ-ウイルス感染症(COVID-19)の深刻性によって予防ワクチンが種々開発された。伝統的なワクチン以外にも、mRNAワクチンが開発されており、2022年12月を基準として、人類の70%以上が最小限1回以上COVID-19ワクチン接種を受けた状態である。しかし、国民の87%がmRNAワクチンの接種を受けた韓国の1人当りCOVID-19の発病率は、世界最高であって、これは接種率が10~30%水準である第3世界の国の10倍以上である。そこで、既存のワクチンの技術と異なり、病原菌の種類や変異に関係なく、感染疾患予防効果を持つ画期的なワクチンの開発が急がれている。
【0003】
腸内菌叢またはマイクロバイオームは、肥満、糖尿、認知症、癌、心血管疾患などのような各種疾病を含めて宿主の全般的な健康に多大な影響を及ぼす。最近20年間の活発な研究結果、各種病原菌に露出する環境である腸内で群集を形成する腸内菌株は、感染疾患に対する宿主の抵抗性に影響を及ぼすと知られている。その結果、同じ病原菌に露出しても感染されないか、無症状であるか、または深刻な重症であるかなど宿主の抵抗性が多様であると考えられている。
【0004】
前述した理由によって、病原性微生物による感染疾患を予防または治療することができる感染抵抗性腸内細菌を開発しようと次のような技術が開発された。
【0005】
米国特許登録第11471495号は、病原性細菌クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)の感染を予防するための腸内菌株として、C.scindens、C.hiranonis、C.hylemonae、C.perfringens、C.sordelli、Proteocatella sphenisci、Lachnospiraceae 5_1_57FAA、Barnesiella intestihominis、Blautia hansenii、およびPseudoflavonifractor菌株を提供する。
【0006】
WO2021066585、US20220347229Aは、一部の病原性細菌に対して免疫増強効果を持つ腸内菌株として、Staphylococcus epidermidis菌株を提供する。
【0007】
WO2016086161は、プロフィラキシス(prophylaxis)治療のための腸内菌株として、Ruminococcus obeum、C.hathewayi、Eubacterium desmolans、Dorea longicatena、R.lactaris(Blautia producta)、Eubacterium contorum、R.faecis、Holdemania filiformis、およびC.sordelli菌株を提供する。
【0008】
US010195273Bは、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤機能の腸内菌株として、AkkermansiaまたはFaecalibacterium菌株を提供する。
【0009】
WO2019028402、US20200376044A、JP2020529478A、EP03661525Aは、代謝性疾患を治療するためのRoseburia hominis、Eubacterium eligens菌株を提供する。
【0010】
WO2018117263、EP03559209Aは、坑癌治療効果を持つPhascolarctobacterium faecium LN998073、Fusobacterium ulcerans KR822463、Bacteroides dorei CP011531、B. uniformis NR_112945、Subdoligranulum sp. 4_3_54A2FAA、Paraprevotella xylaniphila AB331897、Parabacteroides johnsonii AB261128、Alistipes sp.JC136 NZ-CAEG00000000、P. gordonii AB470343、Eubacterium limosum AB595134、P. distasonis HE974920、B. cellulosilyticus_NR_112933、B. clarus_AB490801、B. salyersiae_AY608696、B. fragilis_CR626927、B. uniformis_AB247141、B. eggerthii_NR_112935菌株を提供する。
【0011】
WO2021194281は、炎症性疾患の予防と治療のためにAkkermansia muciniphila微生物またはその産物を提供する。
【0012】
WO2013032744、JP2014528925A、EP02797606Aは、腸内菌株菌叢において、Bacteroidetes phylumの割合に比べてファーミキューテス(Firmicutes)を増加させる組成物を提供する。
【0013】
WO2016172658及びUS20200009168Aは、糖、糖アルコール、アミノ酸、ペプチド、微量営養素、脂肪酸またはポリフェノールをマイクロバイオームレギュレーター組成物として提供する。
【0014】
US20210332323Aは、サイトカインの分泌量を増加させて抗ウイルス及び免疫調節効果を持つL.plantarum CJLP475菌株を飼料添加剤として提供する。
【0015】
しかし、これらの前記技術は、感染抵抗性の効果が足りず、病原性微生物による深刻な感染疾患を予防または治療することができる腸内菌株の成功事例はない。COVID-19の場合、最も数多くの試みにもかかわらず、SARS-CoV-2ウイルスに対する抵抗性の腸内菌株が種の水準で確認されたことはない。したがって、各種病原性細菌及びウイルスの感染疾患を予防または治療するための腸内菌株の開発が急がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許登録第11471495号
【特許文献2】WO2021066585
【特許文献3】US20220347229A
【特許文献4】WO2016086161
【特許文献5】US010195273B
【特許文献6】WO2019028402
【特許文献7】US20200376044A
【特許文献8】JP2020529478A
【特許文献9】EP03661525A
【特許文献10】WO2018117263
【特許文献11】EP03559209A
【特許文献12】WO2021194281
【特許文献13】WO2013032744
【特許文献14】JP2014528925A
【特許文献15】EP02797606A
【特許文献16】WO2016172658
【特許文献17】US20200009168A
【特許文献18】US20210332323A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、感染抵抗性腸内菌株及びその用途に関する。また、本発明は、病原性微生物による感染疾患の予防または治療効果を付与する感染抵抗性の腸内菌株及びその用途に関する。
【0018】
本発明が解決しようとする技術的課題は上述した技術的課題に制限されず、上述していない別の技術的課題は以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるであろう。
【0019】
本発明の目的は、感染抵抗性腸内菌株を提供することにある。
【0020】
本発明のまた他の目的は、病原性微生物による感染疾患に対する予防または治療効果を付与する感染抵抗性腸内菌株及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、病原性微生物による感染疾患に対する予防または治療効果を付与する感染抵抗性腸内菌株として、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される感染抵抗性腸内菌株を提供する。
【0022】
本発明はまた、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される1以上の感染抵抗性腸内菌株またはその培養物を有効成分として含む感染性疾患予防または治療用組成物を提供する。
【0023】
本発明はまた、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される1以上の感染抵抗性腸内菌株またはその培養物を哺乳動物に投与して感染性疾患を予防または治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明による感染抵抗性腸内菌株は、摂取時に宿主に病原性微生物による感染疾患に抵抗性を持たせるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における感染程度によって区分された群の体温測定結果のイメージ(上図)とグラフ(下図)である(A:対照群、B:重症感染群、C:軽症感染群、D:無感染群)。
【
図2】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における感染程度によって区分されたグループの肺写真及び肺組職のH&E染色写真である(A:対照群、B:重症感染群、C:軽症感染群、D:無感染群)。
【
図3】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオーム(gut microbiome)の相対存在量(relative abundance)を、門(Phylum)と目(Order)の水準で分析した結果である。
【
図4】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオームの多様性(diversity)をα多様性(Alpha diversity)で示した結果である。
【
図5】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオームの共起(Co-occurrence)ネットワーク分析(network analysis)を再起動アルゴリズム(ReBoot algorithm)で比べた結果である。
【
図6】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオームの組成を比較したヒートマップ(Heat map)の結果である。
【
図7】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオームの分布を比較した非計量多次元尺度構成法(non-metric multidimensional scaling;NMDS)プロットの結果である。
【
図8】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオームの(A)の主成分分析(PCoA)と(B)グループ重心(group centroid)までの距離の結果である。
【
図9】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)と無感染群(NI)の群間腸内マイクロバイオームの差次的存在量(differential abundance)、すなわち群間差別的に増加された微生物を種水準で分析するためにDESeq2分析を用いて各OTU別log2フォルドチェンジ(fold change)で示した結果である。
【
図10】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)と無感染群(NI)との群間の腸内マイクロバイオームの差次的存在量、すなわち群別に差別的に増加された微生物を種の水準で分析するためにDESeq2分析を用いて各OTU別クラスタされたヒートマップ(clustered heatmap)で示した結果である。
【
図11】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)と無感染群(NI)との群間の差次的存在量、すなわち群別に差別的に増加された微生物であるJBO3-101の相対存在量を示した結果である。
【
図12】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)と無感染群(NI)との群間の差次的存在量、すなわち群別に差別的に増加された微生物であるJBR5-501の相対存在量を示した結果である。
【
図13】本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株から取り出された「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)およびJBR5-501(B)のグラム染色の写真である。
【
図14】本発明の実施例2によって「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌させた実験動物にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後、感染対照群(Control)と比較して7日間毎日測定した体重の結果である。
【
図15】本発明の実施例2によって「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌させた実験動物にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後、感染対照群(Control)と比較して7日間毎日測定した生存率の結果である。
【
図16】本発明の実施例2によって「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌させた実験動物にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後、感染対照群(Control)と比較した8日目肺組職の形態学的写真である。
【
図17】本発明の実施例2によって「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌させた実験動物にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後、感染対照群(Control)と比較した8日目肺組職切片のH&E染色の写真である。
【
図18】本発明の実施例2によって「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌させた実験動物にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後、感染対照群(Control)と比較した8日目の肺組職のウイルスRT-PCRの結果である。
【
図19】本発明の実施例3によって流感ウイルスを感染させた実験動物に「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌後、感染対照群(Control)と比較した肺組職の流感ウイルスRT-PCRの結果である。
【
図20】本発明の実施例4によって「感染抵抗性菌株」JBO3-101(A)、JBR5-501(B)、JBO3-101/JBR5-501(C)、または対照群菌株((D)、Lactobacillus sp.)を1週間給餌後、実験動物に結核菌を感染させた後、感染対照群(Control)と比較した肺組職の結核菌CFUの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
腸内菌株菌叢またはマイクロバイオームは、肥満、糖尿、認知症、癌、心血管疾患などのような各種疾病を含めて宿主の全般的な健康に多大な影響を及ぼす。各種病原菌に露出する環境である腸内で群集を形成する腸内菌株は、感染疾患に対する宿主の抵抗性に影響を及ぼすと知られている。その結果、同じ病原菌に露出しても感染されないか、無症状であるか、または深刻な重症であるかなど宿主の抵抗性が多様であると考えられている。
【0027】
本発明者らは、病原性微生物に露出しても感染されない者の腸内には感染抵抗性腸内菌株が集落を形成しているはずであるという点に着目して本発明を完成するに至った。
【0028】
そこで、本発明者らは、COVID-19ペンデミック期間の間ウイルスに露出してもCOVID-19にかかったことがない「感染抵抗性ヒト」の大便を用意した。次に、COVID-19モデル実験動物を抗生・抗菌複合剤を処理した後、「感染抵抗性ヒト」の大便試料を摂取させて、SARS-CoV-2ウイルスに感染させた。スクリーニングの結果、SARS-CoV-2感染以後にも感染症状が全然現われない「感染抵抗性動物」を確保することに成功し、これらの腸内マイクロバイオーム分析(gut microbiome analysis)を通じて2種の「感染抵抗性菌株」であるJBO3-101及びJBR5-501を確認した。そして、これらに対する16sRNAシーケンシング結果、新種であることを確認した。
【0029】
本発明者らは、「感染抵抗性菌株」として見出されたJBO3-101及びJBR5-501菌株を利用したde novo マイクロバイオームを形成させた実験動物で、SARS-CoV-2ウイルス感染に対する予防効果を確認した。
【0030】
本発明者らは、また、ウイルス感染治療効果を確認するために、最もありふれたウイルス性感染疾患の微生物であるインフルエンザウイルス(influenza virus)に感染させた実験動物を、感染抵抗性菌株であるJBO3-101及びJBR5-501菌株で治療し、流感治療効果を確認した。
【0031】
本発明者らは、最も深刻な細菌性感染疾病を起こす結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する予防効果を確認するために、「感染抵抗性菌株」として見出されたJBO3-101及びJBR5-501菌株を利用して実験動物にde novoマイクロバイオームを形成させてから、結核菌感染予防効果を確認した。
【0032】
本発明の一実施例では、病原性微生物による感染疾患に対する予防または治療効果を付与する感染抵抗性腸内菌株及びその用途を提供する。
【0033】
したがって、本発明は、一態様において、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される感染抵抗性腸内菌株に関する。
【0034】
本発明はまた、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される1以上の感染抵抗性腸内菌株またはその培養物を有効成分として含む感染性疾患予防または治療用組成物に関する。
【0035】
本発明において、前記感染性疾患とは、病原性ウイルス、病原性細菌または病原性真菌の感染による疾患を意味する。
【0036】
前記ウイルス性感染は、病原性ウイルスによるすべての感染を含み、前記病原性ウイルスの具体例としては、重症急性呼吸器症侯群ウイルス(SARS-CoV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト乳頭種ウイルス、インフルエンザウイルス(influenza virus)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)、エボラウイルス(evola virus)、デングウイルス(dengue virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、ハンタンウイルス(Hantan virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、ロタウイルス(rota virus)、ノロウイルス(noro virus)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
前記細菌性感染は、病原性細菌によるすべての感染を含み、前記病原性細菌の具体例としては、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ジフテリア菌(diphtheria bacillus)、らい菌(Mycobacterium leprae)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、破傷風菌(tetanus bacillus)、チフス菌(Sallmonella typhi)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
前記真菌性感染は、病原性真菌によるすべての感染を含み、前記病原性真菌の具体例としては、アスペルギルス種(Aspergillus sp.)、カンジダ種(Candida sp.)、酵母(Yeast)、ヒストプラスマ種(Histoplasma sp.)、コクシジオイデス種(Coccidioides sp.)、スポロトリクス種(Sporothrix sp.)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
前記感染性疾患の予防または治療用組成物は、特に制限されないが、103~1012cfu/gの菌株を含むことが望ましい。
【0040】
本発明において、前記培養物は前記菌株を培養して得られた培養物それ自体、またはこれから菌株を取り除いて得られた培養上清液、または培養上清液の濃縮物または凍結乾燥物であることができる。
【0041】
本発明における感染性疾患予防または治療用組成物は、ヒトを含む哺乳動物に多様な経路で投与されることができる。投与方式は、通常使われるすべての方式であってもよく、例えば、経口、皮膚、静脈、筋肉または皮下などの経路で投与されることができ、望ましくは、経口で投与されることができる。
【0042】
前記組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含むことができる。治療的使用のための許容可能な担体または希釈剤は、薬学分野によく知られている。好適な担体としては、例えば、ラクトース、でん粉、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。好適な希釈剤としては、例えば、エタノール、グリセロール及び水を含む。薬学的担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図された投与経路及び標準薬剤の実習と係わって選択されることができる。前記組成物は、担体、賦形剤または希釈剤であり、または、これらに加えて、任意の好適な結合剤、滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。
【0043】
前記組成物を製剤化や剤形化する場合には通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は前記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、でん粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜ合わせて調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も用いられる。
【0044】
経口のための液状製剤としては、懸濁剤、耐溶液剤、油剤、シロップ剤などが該当するが、多く使われる単純希釈剤である水、流動パラフィンに加えて、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われることができる。前記成分は有効成分、すなわち、混合死菌体、その培養物、その抽出物またはその菌体成分に組み合わせて追加されてもよい。
【0045】
本発明による薬学的組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に処方されることができ、医師や薬剤師の判断によって、一定時間の間隔で1日1回~数回に分割して投与することもできる。例えば、有効成分含量を基準として1日投与量が0.1~10,000mg/kg、望ましくは、1~2,000mg/kgであることができる。前記投与量は、平均的な場合を例示したもので、投与される最適の投与量は当業者によって決められることができ、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有されている有効成分及び他の成分の含量、剤形の種類、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時使われる薬物をはじめ、多様な因子に従って当業界の専門家によって調節されることができる。
【0046】
本発明はまた、オリバクテリウム種(Oribacterium sp.)JBO3-101菌株(受託番号KACC81250BP)及びルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)JBR5-501菌株(受託番号KACC81249BP)からなる群より選択される1以上の感染抵抗性腸内菌株またはその培養物を哺乳動物に投与して感染性疾患を予防または治療方法に関する。
【実施例0047】
以下、具体的な実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0048】
実施例1:感染抵抗性菌株の検出
本発明者らは感染抵抗性腸内菌株を見出すために病原性微生物に露出しても感染されない「感染抵抗性ヒト」の腸内菌株をスクリーニングした。このために、6週齢のロボロフスキーハムスターSH101実験動物にアジスロマイシン(15mg/kg)、ネオマイシン(25mg/kg)、シプロフロキサシン(20mg/kg)、ミコナゾール(30mg/kg)からなる抗生剤/抗菌剤・複合剤を投与した。次に、COVID-19にかかったことのない「感染抵抗性ヒト」の大便をサンプリングした後、新鮮な状態で0.1g~0.5gの試料として用意して、抗生剤/抗菌剤によって腸内細菌が枯渇した実験動物に摂取させた。一週間後にde novoマイクロバイオームが形成された実験動物の鼻を介して10
5TCID
50のSARS-CoV-2ウイルスを50μlずつ感染させた。その以後、7日間毎日体温を測定し(
図1)、感染8日目の各試験群動物の剖検で肺器官を肉眼で観察して肺組職をH/E染色して病理学的変化を確認した(
図2)。前記の結果を総合してSARS-CoV-2ウイルスの代表的感染症状である発熱と肺組織の感染程度によって重症感染群(Severe infection)、軽症感染群(Mild infection)、無感染(Noinfection)に分けた(表1)。
【0049】
【0050】
SARS-CoV-2ウイルス重症感染群、軽症感染群、無感染群に対して腸内マイクロバイオーム分析を行うために、各群の試験動物から腸内内容物をいずれも採取した後、これらの16Sメタゲノムシーケンシングで16SrRNA超可変領域V3とV4を分析した。各実験群の腸内マイクロバイオームの構成分類単位OTU(Operational Taxonomic Unit)の総個数は2,070個であり、22個の門、153個の科及び278個の属に割り当てられた。
【0051】
感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後、SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)の群別腸内マイクロバイオーム分析のためには、導出されたOTUを利用して、群別の相対存在量、α多様性及び共起ネットワーク分析を比較分析した(
図3~
図5)。総分析されたOTUは、重症感染群(SI)でn=974、軽症感染群(MI)でn=869、無感染群(NI)でn=802であった。群別腸内マイクロバイオームの組成は、ヒートマップで比較した(
図6)。また、群別分布は、非計量多次元尺度構成法(NMDS)プロットで比較した(
図7)。また、群別分布を(A)主成分分析(PCoA)と(B)グループ重心までの距離の結果で比較した(
図8)。
【0052】
さらに、本発明の実施例1によって感染抵抗性ヒトの腸内菌株を摂取させた後、SARS-CoV-2ウイルスを感染させた実験動物における、重症感染群(SI)と無感染群(NI)との群間の腸内マイクロバイオームの差次的存在量を、DESeq2分析を用いて各OTU別log2-フォルドチェンジで分析した(
図9)。また、DESeq2分析を用いて各OTU別クラスタされたヒートマップを分析した(
図10)。
【0053】
前述したように、本発明の実施例1によって「感染抵抗性ヒト」由来のde noveマイクロバイオームを有する実験動物にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後、腸内マイクロバイオームの2,070個のOTUに対して重症感染群(SI)、軽症感染群(MI)、無感染群(NI)間の存在量、多様性、組成、分布を比較分析することで(
図3~
図10)、無感染群特異的OTUを12個見出すことになった(表2)。
【0054】
【0055】
前記12個の無感染群OTUに当たる6種の微生物の中で、特にJBO3-101とJBR5-501菌株は、オリバクテリウム種に属する新規の菌株JBO3-101とルミノコッカス種に属する新規の菌株JBR5-501菌株であって、無感染群(NI)特異性を示した。実際に、重症感染群(SI)との比較時、無感染群(NI)においてJBO3-101(
図11)とJBR5-501(
図12)が顕著に増えた差次的存在量を示すことを確認することで、前記これらの菌株が「感染抵抗性ヒト」に由来する「感染抵抗性菌株」であることが判明した。
【0056】
前記表2に示したように、12個の無感染群の特異的OTUから取り出された「感染抵抗性菌株」JBO3-101及びJBR5-501の形態をグラム染色で確認した(
図13)。その的確な同定のために、16S-rRNA遺伝子配列分析を行った。各菌株からゲノミックDNAを得た後、汎用のプライマーセット、27F-AGA GTT TGA TCC TGG CTC AG(配列番号1)及び149R-GGT TAC CTT GTT ACG ACTT(配列番号2)を利用してPCRで増幅して16SrRNAの塩基配列を得た(配列番号3~4)。各実験菌株の16SrRNAの塩基配列をNCBI-データベースのブラストサーチの結果を利用して同定した。その結果、「感染抵抗性菌株」JBO3-101及びJBR5-501は、それぞれオリバクテリウム種(Oribacterium sp.)に属する新規の菌株JBO3-101(受託番号KACC81250BP)とルミノコッカス種(Ruminococcus sp.)に属する新規の菌株JBR5-501(受託番号KACC81249BP)と確認され、2022年12月20日付けで国立農業科学院生物資源センターに寄託した。
【0057】
実施例2.感染抵抗性腸内菌株のCOVID-19予防効果
「感染抵抗性菌株」として見出されたJBO3-101及びJBR5-501菌株を利用して、最も深刻なウイルス性感染疾病であるCOVID-19を引き起こすCOVID-19ウイルスのSARS-CoV-2に対する効果を動物実験で確認した。
【0058】
このために、SARS-CoV-2菌株HB-01は、疾病管理本部(Korea Illness Controland AnticipationOrganization、KDCA)のNCCP(National Culture Collection for Pathogens)から入手した。SARS-CoV-2培養は、Vero E6細胞を10%FBS、100IU/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンの添加されたDMEM培地で37゜C、5%CO2で培養して用意した。
【0059】
実験動物としては、病原性微生物感染に非常に脆弱な動物モデルであるロボロフスキーハムスター(Phodopus roborovskii)strain SH101(Alphabio chemicals Co.社)を利用して、飼料(D12450B;Research Diets Inc.社製)と飲水を制限なしに飼育して全北大学校ABL3研究室で1週間の適応期間を設けた後、実験を開始した。まず、腸内細菌枯渇のために抗生剤混合物であるアジスロマイシン(15mg/kg)、ネオマイシン(25mg/kg)、シプロフロキサシン(20mg/kg)及びミコナゾール(30mg/kg)を投与した。2日後、各ハムスターをランダムにグループ化した後、各グループ別(n=8~10)に当該微生物(Gut Microbe Culture Collection)を1×10
9CFU/100μLPBS/日の水準で経口投与した。1週間の間当該微生物を摂取させた後、SARS-CoV-2ウイルスを10
5TCID
50でSH101ハムスター鼻腔内に50μlを感染させた。感染後毎日体重(
図14)を記録し、感染8日目の死亡/生存率を記録した後(表3、
図15)、すべての試験動物を犠牲させて肺組職の形態学的観察(
図16)及び肺切片のH&E染色(
図17)を行い、肺のウイルス定量化のためにRT-PCRを行った(
図18)。
【0060】
【0061】
前記
図14~
図18の結果において、「感染抵抗性ヒト」に由来する「感染抵抗性菌株」で実験動物の腸内マイクロバイオームを形成した後、SARS-CoV-2ウイルスへの感染時、生存率、体重変化、肺の形態学的及び病理学的観察、ウイルスの数値を定量分析した結果、JBO3-101及びJBR5-501菌株がSARS-CoV-2ウイルス感染に対する感染抵抗性菌株であることを確認した。
【0062】
実施例3.感染抵抗性腸内菌株の流感治療効果
「感染抵抗性菌株」として見出されたJBO3-101及びJBR5-501菌株を利用して、最もありふれたウイルス性感染疾患であるインフルエンザを引き起こす流感ウイルスに対する治療効果を動物実験で確認した。
【0063】
このために、インフルエンザAウイルスH1N1(NCCP43021)とウイルス増殖のための菌株の培養は、MDCK細胞を10%FBS、100IU/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンが添加されたMEM培地で37゜C、5%CO2で培養して用意した。
【0064】
7週齢の実験動物ロボロフスキーハムスターSH101(Alpha biochemicals Co.社)をランダムにグループ化した後、インフルエンザウイルス2×10
3PFU/50μl水準で鼻腔内に感染させた。感染後7日間各グループ別(n=5)に当該微生物JBO3-101(受託番号KACC81250BP)及びJBR5-501(受託番号KACC81249BP)を1×10
9CFU/100μLPBS/日の水準で経口投与した。臨床症状の有無をモニタリングしながら生存率を記録した後(表4)、すべての試験動物を犠牲させて肺組職をサンプリングした後にウイルス定量化のためにRT-PCRを行った(
図19)。
【0065】
【0066】
上記の結果から、インフルエンザウイルスに感染された実験動物に感染抵抗性菌株を給餌した後、生存率とウイルスを定量分析した結果、対照群とは異なり、JBO3-101及びJBR5-501が流感ウイルス感染に対する抵抗性菌株であることを確認した。
【0067】
実施例4.感染抵抗性腸内菌株の結核予防効果
「感染抵抗性菌株」として見出されたJBR5-501とJBO3-101菌株を利用して、最も深刻な細菌性感染疾病を引き起こす結核菌に対する効果を動物実験で確認した。結核菌株Mycobacterium tuberculosis(NCCP15986)は、L当たり50gのアルブミン、20gのデキストロース、8.5gNaCl含まれた7H10寒天培地に接種して37゜Cで10日培養して用意した。実験動物は、実施例2と同様な方式で腸内細菌が枯渇したローブローブスキーハムスターを用意した後、グループ別(n=3)に当該微生物JBO3-101(受託番号KACC81250BP)及びJBR5-501(受託番号KACC81249BP)を1×10
9CFU/100μLPBS/日の水準で1週間経口投与した。次に、感染抵抗性菌株が移植された実験動物に、用意した結核菌培養物を1×10
4CFU/50μlの水準で鼻腔内感染させて、感染後14日間臨床症状の有無をモニタリングしながら生存率を記録した後(表5)、すべての試験動物を犠牲させて肺組職の感染菌CFUを測定した(
図20)。
【0068】
【0069】
上記の結果から、結核菌に感染された実験動物に「感染抵抗性菌株」を給餌後、生存率と結核菌定量を分析した結果、JBO3-101及びJBR5-501が結核菌感染に対する抵抗性菌株であることを確認した。