(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009951
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】レラコリラント、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリングルココルチコイド受容体調節物質の治療用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4745 20060101AFI20240116BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240116BHJP
A61P 5/38 20060101ALI20240116BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240116BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240116BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240116BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61P3/00
A61P5/38
A61P3/10
A61P9/12
A61P25/28
A61P25/24
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023176874
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2021549571の分割
【原出願日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】62/809,327
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/814,441
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/833,517
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モライティス、アンドレアス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コルチゾール過剰に関連した、又はそれによって引き起こされる種々の障害及び疾患(高コルチゾール血症又は副腎皮質ホルモン過剰症)を治療するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】レラコリラント((R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン)の有効量を含む、高コルチゾール血症の症状又は合併症を治療するための組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高コルチゾール血症、及びその症状又は合併症を有する患者を治療する方法であって、
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン構造を有する非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)又はオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を有する非ステロイド系選択的GRMの有効量を対象に投与すること、を含む方法であり、
前記高コルチゾール血症の症状又は合併症を治療するために有効な方法であり、
前記高コルチゾール血症の症状又は合併症は:
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインAUCグルコースと比較した場合に、患者のAUCグルコースを有意に低下させるのに有効である、高血糖症;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースライン血圧と比較した場合に、患者の血圧を有意に低下させるのに有効である、高血圧症;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースライン肝臓酵素レベルと比較した場合に、患者の肝臓酵素レベルの異常を有意に低下させるのに有効である、肝臓酵素レベルの異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインフルクトサミンレベルと比較した場合に、患者のフルクトサミンレベルの異常を有意に改善するのに有効である、フルクトサミンレベルの異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースライン血清オステオカルシンレベルと比較した場合に、患者の血清オステオカルシンレベルの異常を有意に改善するのに有効である、血清オステオカルシンレベルの異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの心拍間隔又は心拍数中央値と比較した場合に、患者の心拍間隔又は心拍数中央値の異常を有意に改善するのに有効である、心拍間隔又は心拍数中央値の異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースライン血液凝固と比較した場合に、患者の血液凝固度の異常を有意に改善するのに有効である、血液凝固度の異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの血液細胞の程度と比較した場合に、患者の血液細胞の程度の異常を有意に改善するのに有効である、血液細胞の程度の異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)レベル又はプロオピオメラノコルチン(POMC)レベルと比較した場合に、患者のACTHレベル又はPOMCレベルの異常を有意に改善するのに有効である、ACTHレベル又はPOMCレベルの異常;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの生活の質と比較した場合に、患者の生活の質を有意に改善するのに有効である、クッシング病患者(Cushing’s patient)における生活の質を改善する;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの認知と比較した場合に、患者の認知を有意に改善するのに有効である、クッシング病患者(Cushing’s patient)における認知を改善する;
前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインのうつ病と比較した場合に、うつ病の心理学的尺度によって測定された患者のうつ病を有意に低減するのに有効である、患者のうつ病を軽減する;
のうちの1又は複数であり、
高コルチゾール血症及びその症状又は合併症を有する患者が治療され、前記症状又は合併症が改善される、方法。
【請求項2】
前記その症状又は合併症が高血糖症であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインのグルコース調節と比較した場合に、患者のグルコース調節を改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記その症状又は合併症が高血糖症であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインHbA1cと比較した場合に、患者のヘモグロビンA1c(HbA1c)を少なくとも約0.5%低下させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記その症状又は合併症が高血糖症であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインAUCグルコースと比較した場合に、患者のAUCグルコースを少なくとも約15%低下させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記その症状又は合併症が高血圧症であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースライン血圧と比較した場合に、患者の24時間平均収縮期血圧又は24時間平均拡張期血圧を少なくとも約5水銀柱ミリメートル(mmHg)低下させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記その症状又は合併症が心拍間隔又は心拍数中央値の異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの心拍QT間隔又はECG心拍数中央値と比較した場合に、患者の心拍QT間隔又はECG心拍数中央値の異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記その症状又は合併症が異常な肝臓酵素レベルであり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)肝臓酵素レベル又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)肝臓酵素レベルと比較した場合に、患者のALT肝臓酵素レベル若しくはAST肝臓酵素レベル、又はその両方、を有意に低下させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記その症状又は合併症がフルクトサミンレベルの異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインフルクトサミンレベルと比較した場合に、患者のフルクトサミンレベルの異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記その症状又は合併症がオステオカルシンレベルの異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインオステオカルシンレベルと比較した場合に、患者のオステオカルシンレベルの異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記その症状又は合併症が血液凝固因子レベルの異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの第IX因子レベル又は第X因子レベルと比較した場合に、第IX因子レベルの異常又は第X因子レベルの異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記その症状又は合併症が血液凝固の程度の異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインのトロンビン-アンチトロンビン(ATT)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)と比較した場合に、ATTの異常又はaPTTの異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記その症状又は合併症が好酸球の程度の異常又は血小板数の異常から選択される血液細胞の量の異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインの好酸球の量又は血小板数の異常と比較した場合に、患者の好酸球の量の異常又は血小板数の異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記その症状又は合併症が副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)レベル又はプロオピオメラノコルチン(POMC)レベルの異常であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインのACTHレベル又はPOMCレベルと比較した場合に、患者のACTHレベル又はPOMCレベルの異常を有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記その症状又は合併症がクッシング病患者(Cushing’s patient)における生活の質の低下であり、前記治療が、クッシング病QOLスコア(Cushing Quality of Life Score)で測定される患者の生活の質を、治療前に同様に測定された患者のベースラインの生活の質と比較して、有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記その症状又は合併症がクッシング病患者(Cushing’s patient)における認知の低下であり、前記治療が、認知検査によって測定される患者の認知を、治療前に前記認知検査によって測定された患者のベースラインの認知と比較して、有意に改善するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記認知検査がトレイルメイキングテストである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記その症状又は合併症がベックうつ病尺度(Beck Depression Scale)で評価されるうつ病であり、前記治療が、ベックうつ病尺度によって示される患者のうつ病を、治療前に同様に測定された患者のベースラインのうつ病と比較して、有意に低減させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、レラコリラント、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記式を有する、
【化1】
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、「CORT122928」と称される、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、下記式を有する、
【化2】
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、「CORT113176」と称される、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記式を有する、
【化3】
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(「CORT125281」)であり、下記の構造を有する、
【化4】
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、「CORT125329」と称される、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、下記の式を有する、
【化5】
請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、レラコリラント、CORT122928、及びCORT113176から選択されるヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項24】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、CORT125281及びCORT125329から選択されるオクタヒドロ縮合アザデカリン化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、レラコリラント、CORT122928、及びCORT113176から選択されるヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項26】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、CORT125281及びCORT125329から選択されるオクタヒドロ(octahdryo)縮合アザデカリン化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項27】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、レラコリラント、CORT122928、及びCORT113176から選択されるヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項28】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、CORT125281及びCORT125329から選択されるオクタヒドロ縮合アザデカリン化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項29】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、レラコリラント、CORT122928、及びCORT113176から選択されるヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項30】
前記非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体調節物質(選択的GRM)が、CORT125281及びCORT125329から選択されるオクタヒドロ縮合アザデカリン化合物である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/809,327号;2019年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/814,441号;及び2019年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/833,517号に基づく優先権及びその利益を主張するものであり、上記出願全ての全内容は全体として参照によって本明細書に援用されたものとする。
【背景技術】
【0002】
コルチゾールは、グルココルチコイド受容体に結合するグルココルチコイド(GC)ホルモンである。コルチゾールは、コルチゾール受容体とも称される、コルチゾール及び/又はデキサメタゾンなどのコルチゾール類似体に特異的に結合する細胞内受容体である、II型グルココルチコイド受容体(GR)に結合することにより作用する(例えば、Turner及びMuller、J.Mol.Endocrinol.、35巻(2号):頁283-292(2005年)を参照)。GRという用語には、GRのアイソフォーム、組換え型GR、及び変異型GRが包含される。別のグルココルチコイド受容体として、I型GRがあり、「ミネラルコルチコイド受容体(MR)」とも称され、アルドステロンに対する反応を仲介する。
【0003】
コルチゾールは副腎で産生されるが、副腎の異常(例えば、副腎腫瘍)により、過剰なコルチゾールが生じる場合がある。コルチゾールの過剰は、過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が脳下垂体から放出され、副腎に作用し、過剰なコルチゾールが産生されることによって引き起こされ得る。コルチゾール過剰は、「高コルチゾール血症」又は「副腎皮質ホルモン過剰症」と称される場合がある。高コルチゾール血症患者は、過剰な血糖(高血糖症)も示す場合が多く、低カリウム(低カリウム血症)、高血圧、心障害などの障害を呈する場合がある。過剰なコルチゾール(II型GRの過剰な活性化に繋がる)はクッシング症候群を特徴付けその原因となるものであるが、クッシング症候群は、高コルチゾール値に起因する消耗性の慢性疾患であり、高血糖、高血圧、心拍リズム障害、体重増加(首又は背中の特徴的な「こぶ」を含む)、多毛症、うつ病などの症状を特徴とする。
【0004】
下垂体からのACTH放出過剰がコルチゾール過剰を引き起こした場合、その障害は「クッシング病」と称される。このような下垂体からのACTH放出過剰は、通常、下垂体腫瘍によって引き起こされる。クッシング病に対する第一選択治療は、下垂体腫瘍を除去するための手術を含むが;多くの症例で、腫瘍の全てを切除できるわけではなく(例えば、腫瘍がトルコ鞍の外側の頭側領域に浸潤していた場合、又は骨に浸潤していた場合、又は他の理由で)、あるいは、腫瘍が再度成長する場合がある、あるいは、腫瘍が転移している場合がある(下垂体腫瘍の場合よりも非下垂体性(異所性)腫瘍の場合に多い)。いくつかの症例では、放射線療法が手術後に適用される。他の腫瘍に対してはしばしば用いられる従来の化学療法による治療は、下垂体腫瘍には適用できない場合がある、あるいは、下垂体腫瘍患者に対して好適でない場合がある。特に外科手術後に症状が持続している場合、コルチゾール産生を抑制する、又はコルチゾールの作用を遮断する内科療法(例えば、ミフェプリストン(KORLYM(登録商標)として処方))が施行される場合が多い。放射線及び標準的な化学療法は、重篤な副作用を示す場合があり、クッシング病患者(Cushing’s patient)に不適当とされる場合がある。そのため、クッシング病の原因となる下垂体腫瘍に対する内科(すなわち、非外科的)療法が必要とされており、治療法の改善が有益となることであろう。
【0005】
他の障害を有する患者も過剰なコルチゾールを呈する場合があり、過剰なコルチゾールはそのような障害の原因である場合がある。例えば、精神病性大うつ病患者は典型的に過剰なコルチゾールを呈する。しかし、コルチゾールの作用を低減するために有効な、特に過剰なコルチゾールの作用を低減するために有効な、方法及び組成物が、依然として不足している。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、コルチゾール過剰に関連した、又はそれによって引き起こされる種々の障害及び疾患(高コルチゾール血症又は副腎皮質ホルモン過剰症)を治療するための新規方法、並びに、コルチゾールの効果又は作用を抑制することにより治療又は症状改善され得る種々の障害及び疾患を治療するための新規方法が開示される。このような疾患及び障害としては、クッシング症候群、クッシング病、高コルチゾール血症に続発する高血糖症、肝疾患(例えば、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、肝線維症及びその他の肝臓障害)、心障害(例えば、QT間隔延長などの心拍リズム障害を含む)、高血圧、過凝固障害(hypercoagulopathy)、がん、骨障害、血液凝固障害、心理的障害、体重増加(精神病治療を原因とする体重増加を含む)、メタボリックシンドローム、前糖尿病又は糖尿病、骨粗しょう症、性腺機能低下症、偽性先端巨大症(pseudoacromegaly)、下垂体腫瘍、機能性副腎皮質ホルモン過剰症、ACTH分泌性腫瘍、末梢神経障害、脂質以上症などの疾患及び障害を挙げることができるが、これらに限定はされない。コルチゾール過剰は、メタボリックシンドローム、前糖尿病又は糖尿病を有する患者などに見られる場合もあり;あるいは、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、肝線維症などの肝障害を有する患者などに見られる場合もある。上記方法は免疫療法的治療を含む場合がある。高コルチゾールの作用を低減することにより、高コルチゾール又はその作用に苦しむ患者の生活の質を改善することができる。高コルチゾールの作用を低減することにより、高コルチゾール又はその作用に苦しむ患者の心理的状態を改善することができる。
【0007】
上記の方法は、このようなコルチゾール過剰の作用を抑制するための有効量のグルココルチコイド受容体調節物質(GRM)を対象に投与することを含み、いくつかの実施形態においては、別の治療(例えば、別の医薬組成物、又は外科手術、又は放射線、又は精神療法などの治療)と共に、有効量のGRMを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、GRMは非ステロイド系GRMである。いくつかの実施形態において、GRMは非ステロイド系選択的GRMである。いくつかの実施形態において、GRMは非ステロイド系ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン選択的GRM化合物又は非ステロイド系オクタヒドロ縮合アザデカリン選択的GRM化合物である。好ましい実施形態では、GRMは、下記式を有する、「レラコリラント」と称される、化学名(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンを有する、非ステロイド系ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン選択的GRM化合物である。
【化1】
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMレラコリラントなどのGRMの、そのような治療を必要としている患者への投与により、クッシング症候群;クッシング病;高コルチゾール血症に続発する高血糖症;メタボリックシンドローム、前糖尿病、又は糖尿病;肝疾患(例えば、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、肝線維症などの肝障害);心障害(例えば、左室肥大(LVH)を伴う又は伴わない、QT間隔延長などの心拍リズム障害を含む);高血圧;がん;心理的障害(例えば、精神病性大うつ病などのうつ病);体重増加(精神病治療を原因とする体重増加を含む)などの疾患及び障害から選択される障害を治療することを含む。レラコリラントなどのGRMは単独療法として患者に投与することができ;いくつかの実施形態においては、レラコリラントなどのGRMは、別の治療と共に、患者に投与することができる。GRMは、別の治療の前、後、又は一緒に、あるいはそれらのあらゆる組み合わせにおいて、投与することができる。さらに、本明細書で開示される方法は、例えばクッシング病などの障害を診断するために、レラコリラントなどのGRMを診断を必要としている患者への投与することを含む。
【0009】
いくつかの場合で、GRM(例えば、レラコリラント)は経口投与される。いくつかの実施形態において、GRMは食物と共に投与される。いくつかの実施形態において、GRMは絶食患者に投与される。いくつかの場合で、GRM(例えば、レラコリラント)は少なくとも1つの医薬品と共に投与される。いくつかの場合で、GRM(例えば、レラコリラント)は、対象又は患者が少なくとも1つの他の医薬品を投与された後に投与される。いくつかの場合で、GRM(例えば、レラコリラント)は、対象又は患者が少なくとも1つの他の医薬品を投与される前に投与される。いくつかの場合で、GRM(例えば、レラコリラント)は、対象又は患者が外科手術を受けた後に、対象に投与される。いくつかの場合で、GRM(例えば、レラコリラント)は、対象又は患者が外科手術を受ける前に、対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】HbA1c、2時間のoGTT、又は抗糖尿病薬の使用において臨床的に意味のある抑制を達成した患者。
【
図2】高血圧症(高血圧)において臨床的に意味のある改善を達成した患者。
【
図3】凝固に対するレラコリラントの効果。クッシング症候群患者において血栓事象のリスクが高いが;レラコリラント治療を受けたクッシング症候群患者は凝固因子における改善を示した。この結果は、血栓事象のリスクが高いクッシング症候群患者における、術前凝固制御(クッシング症候群に対する外科手術の前)の改善に、レラコリラントが有用であり得ることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(序論)
本明細書で開示される方法を用いることで、有効量のグルココルチコイド受容体調節物質(GRM)を投与することにより、障害を有する患者を治療することができ、上記GRMは例えば選択的グルココルチコイド受容体調節物質(SGRM)であり、好ましい実施形態ではレラコリラントである(「RELA」と称される場合もある)。各実施形態において、本明細書で開示される方法は、レラコリラントなどのGRMの、そのような治療を必要としている患者への投与により、以下から選択される障害を治療することを含む:クッシング症候群;クッシング病;高コルチゾール血症に続発する高血糖症;メタボリックシンドローム、前糖尿病、又は糖尿病;肝疾患(例えば、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、肝線維症などの肝障害);心障害(例えば、左室肥大(LVH)を伴う又は伴わない、QT間隔延長などの心拍リズム障害を含む);高血圧;過凝固障害(hypercoagulopathy);がん;心理的障害(例えば、精神病性大うつ病などのうつ病);体重増加(精神病治療を原因とする体重増加を含む);骨障害;血液凝固障害などの血液障害;骨粗しょう症、性腺機能低下症、偽性先端巨大症(pseudoacromegaly)、下垂体腫瘍、機能性副腎皮質ホルモン過剰症、ACTH分泌性腫瘍、末梢神経障害、脂質異常症などの疾患及び障害。レラコリラントなどのGRM又はSGRMは、チェックポイント阻害剤などの免疫療法剤、又は他の医薬品と共に投与されてもよい。本明細書で開示される方法を用いることで、表1に開示されている結果が示すいずれの障害を有する患者も治療することができる。本明細書で開示される方法を用いることで、患者において、表1に開示されている結果が示すいずれの診断結果も正常化することができる。
【0012】
レラコリラントなどのGRMを投与することを含む本明細書で開示される方法を用いることで、以下から選択される障害を有することが疑われる患者を診断することができる:クッシング症候群;クッシング病;高コルチゾール血症に続発する高血糖症;メタボリックシンドローム、前糖尿病、又は糖尿病;肝疾患(例えば、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、肝線維症などの肝障害);心障害(例えば、左室肥大(LVH)を伴う又は伴わない、QT間隔延長などの心拍リズム障害を含む);高血圧;過凝固障害(hypercoagulopathy);がん;心理的障害(例えば、精神病性大うつ病などのうつ病);体重増加(精神病治療を原因とする体重増加を含む);骨障害;血液凝固障害などの疾患及び障害。レラコリラントなどのGRMを投与することを含む本明細書で開示される方法を用いることで、患者の生活の質を向上させることができる。レラコリラントなどのGRMを投与することを含む本明細書で開示される方法は、表1に開示されている結果が示すいずれの障害を有することが疑われる患者の診断に使用することができる。
【0013】
レラコリラントなどのGRM又はSGRMは単独療法として患者に投与することができ;いくつかの実施形態においては、レラコリラントなどのGRMは、別の治療と共に、患者に投与することができる。GRMは、別の治療の前、後、又は一緒に、あるいはそれらのあらゆる組み合わせにおいて、投与することができる。さらに、本明細書で開示される方法は、例えばクッシング病などの障害を診断するために、レラコリラントなどのGRMを診断を必要としている患者への投与する¥ことを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、GRMは非ステロイド系GRMである。
【0015】
いくつかの場合で、GRM(例えば、SGRM)は、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド系化合物である。いくつかの場合で、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン化合物は下記の式を有し、
【化2】
式中、R
1は、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するヘテロアリール環であり、所望によりR
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で置換されている;それぞれのR
1aは、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキル、及びC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群から選択され、上記のヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子と、を有し;それぞれのR
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、及びC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群から独立して選択され、上記のヘテロシクロアルキル基は1~4個のR
2c基で所望により置換されており;あるいは、同じ炭素に結合した2個のR
2基が一緒になってオキソ基(=O)を形成しており;あるいは、2個のR
2基が一緒になって、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環であって、1~3個のR
2d基で所望により置換されているヘテロシクロアルキル環を形成しており;R
2a及びR
2bは、それぞれ独立して、水素及びC
1-6アルキルからなる群から選択され;それぞれのR
2cは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CN、及び-NR
2aR
2bからなる群から選択され;それぞれのR
2dは、独立して、水素及びC
1-6アルキルからなる群から選択され、あるいは、同じ環原子に結合した2個のR
2d基が一緒になって(=O)を形成しており;R
3は、それぞれ1~4個のR
3a基で所望により置換されているフェニル及びピリジルからなる群から選択され;それぞれのR
3aは、独立して、水素、ハロゲン、及びC
1-6ハロアルキルからなる群から選択され;下付き数字nは0~3の整数である;あるいは、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン化合物は、その塩及び異性体である。このような化合物は、レラコリラントが挙げられ、米国特許第8,559,784号などに開示されており、上記米国特許はその全内容が全体として参照によって本明細書に援用されたものとする。このような化合物に関する用途及び考察が、米国特許第9,273,047号;同第9,943,505号;同第9,707,223号;同第9,956,216号;同第10,117,852号;及び同第10,151,763号などにさらに開示されてお
り、上記米国特許はその全内容が全体として参照によって本明細書に援用されたものとする。
【0016】
好ましい実施形態では、GRMは、下記式を有する、「レラコリラント」と称される、化学名(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンを有する、非ステロイド系ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化3】
いくつかの実施形態において、GRMは、下記の式を有する、「CORT122928」と称される、(R)-(1-(4-フルオロ(fluro)フェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンという化学名を有する化合物である、非ステロイド系ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化4】
いくつかの実施形態において、GRMは、下記の式を有する、「CORT113176」
と称される、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンという化学名を有する、非ステロイド系ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化5】
【0017】
いくつかの場合で、GRM(例えば、SGRM)は、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド系化合物である。オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとしては、米国特許第10,047,082号に記載のものが挙げられ、これらは上記米国特許に記載された通りに作製でき、上記米国特許の開示はその全体が本明細書に援用される。このような例示的なGRMはSGRMであってもよい。いくつかの場合で、オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は下記の式を有し、
【化6】
式中、
R
1は、5~6個の環員とそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であり、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で所望により置換されている;
それぞれのR
1aは、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC
3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
環Jは、アリール環、並びに5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環からなる群から選択され;
それぞれのR
2は、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、並びにN、O、及びSからなる群からそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
あるいは、隣接し合う環原子上の2個のR
2基が一緒になって、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環であって、1~3個のR
2c基で所望により置換されているヘテロシクロアルキル環を形成しており;
R
2a、R
2b、及びR
2cは、それぞれ独立して、水素及びC
1-6アルキルからなる群から選択され;
それぞれのR
3aは、独立して、ハロゲンであり;
下付き数字nは0~3の整数である;
又は、その塩及び異性体である。
【0018】
いくつかの実施形態において、オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は下記の式を有し、
【化7】
式中、R
1は、所望によりそれぞれ独立してR
1aから選択される1~4個の基で置換されているピリジン及びチアゾールからなる群から選択され;それぞれのR
1aは、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC
3-8シクロアルキルからなる群から選択され;環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群から選択され;それぞれのR
2は、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、及び-CNからなる群から選択され;R
3aはFであり;下付き数字nは0~3の整数である;あるいは、R
1はその塩及び異性体から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、GRMは、下記の式を有する「CORT125281」と称される、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンという化学名を有する、非ステロイド系オクタヒドロ縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化8】
いくつかの実施形態において、GRMは、下記の式を有し、「CORT125329」と称され、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンという化学名を有する、非ステロイド系オクタヒドロ縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化9】
【0020】
(定義)
本明細書で使用される場合、用語「対象」又は「患者」とは、ヒト又はヒト以外の生物を指す。すなわち、本明細書に記載の方法及び組成物は、ヒト及び動物の両方の疾患に適用可能である。ある実施形態では、対象は「患者」、すなわち、疾患又は状態に対する医療を受けている生存しているヒトである。これには、確定した病気を持たず、病変の徴候について調査を受けている人が含まれる。本発明の組成物及び方法によって治療され得る
疾患の一例である、クッシング症候群の診断を既に受けている対象が好ましい。
【0021】
不快感、窮迫、又は不健全状態を引き起こす疾患、障害、異常、有害事象、又は状態は、「病的状態」と称される場合がある。例えば高コルチゾール血症、クッシング症候群、クッシング病などの疾患又は障害に伴う病的状態は、「合併症」と称される場合がある。
【0022】
本明細書で使用される頭字語として以下が含まれる:
ACTH 副腎皮質刺激ホルモン
proACTH ACTHのプロタンパク質
POMC プロオピオメラノコルチン
aPTT 活性化部分トロンボプラスチン時間
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ(又は「血清グルタミン酸-ピルビン酸アミノ基転移酵素」(SGPT))
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(又は「血清グルタミン酸-オキサロ酢酸アミノ基転移酵素」(SGOT))
AUC 濃度-時間曲線下面積
AUC0-24h 24時間に亘る濃度-時間曲線下面積
AUCグルコース グルコースに関する濃度-時間曲線下面積
AUCインスリン グルコースに関する濃度-時間曲線下面積
BDI ベックうつ病質問票(Beck Depression Inventory)は、うつ病を評価する21の質問からなる自己申告の質問票である。
BDI-II合計スコア(BDI-II Total Score)は、ベックうつ病質問票II(Beck Depression Inventory II)の合計スコアである。
クッシング症候群QOLスコア(Cushing QOL Score) クッシング症候群生活の質スコア(Cushing Quality of Life Score)。
クッシング症候群患者における健康に関する生活の質を評価する患者質問票
ECG 心電図
HOMA-IR ホメオスタシスモデル評価(HOMA)インスリン抵抗性(IR)
IR インスリン抵抗性
HbA1c 糖化ヘモグロビン
IGT 耐糖能障害(oGTTと診断される場合もある)
mITT 修正治療意図(modified intention to treat)mPP 修正プロトコル集団(modified protocol population)
NTx 1型コラーゲンのN-テロペプチド(N-telopeptides of type 1 collagen)
oGTT 経口糖負荷試験(oral glucose tolerance test)
PR間隔 P波の開始からR(QRS群のピーク)の開始までの時間
QRS時間 Q波の開始からS波のベースラインに戻るまでの時間
QT間隔 QRS群の開始からT波がベースラインに戻る時間までの時間
QTcB間隔 補正QT間隔(バゼット補正)
RR間隔 2つのR波(QRS群のピーク)間の時間
UFC 尿中遊離コルチゾール
Urinary NTx 尿中架橋N-テロペプチド(Urinary N-telopeptides cross-links)
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「副腎皮質刺激ホルモン」(ACTH)とは、細胞のグルコース合成を助け、タンパク質を異化し、遊離脂肪酸を動員し、アレルギー反応における炎症を阻害する、グルココルチコイドホルモンを分泌するように副腎皮質を刺激する脳下垂体前葉によって産生されるペプチドホルモンを指す。このようなグルココルチコイドホルモンの1つとしてコルチゾールがあり、これは炭水化物代謝、脂肪代謝、及びタンパク質代謝の制御を行う。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」又は「治療量」とは、治療されている疾患の少なくとも1つの症状を治療、除去、又は軽減するために有効な、薬物の量を指す。いくつかの場合で、「治療有効量」又は「有効量」とは、検出可能な治療作用又は阻害作用を示す効果がある、機能的薬剤又は医薬組成物の量を指していることがある。この効果は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ法で検出できる。有効量は、コルチゾール過剰、高血糖症、高血圧、肝脂肪、肝線維症、若しくはうつ病といった症状を低減する、又は、患者の改善に関連した他の所望の有益な臨床結果を達成するために有効な量とすることができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」、「投与すること」、「投与された」、又は「投与」とは、化合物又は組成物(例えば、本明細書に記載の化合物又は組成物)を、対象又は患者に与えることを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「絶食」とは、対象又は患者が、少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、又は少なくとも3時間、又は少なくとも4時間、又はそれ以上の時間、食事をしていないことを指す。好ましい実施形態では、絶食状態の対象又は患者は、少なくとも4時間食事をしていないものである。医薬組成物が絶食状態の対象又は患者に投与される場合、医薬組成物は食物なしで投与され、対象又は患者は薬剤投与後に少なくとも1時間食事を行わないものとする。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「高コルチゾール血症」及び「副腎皮質ホルモン過剰症」は、同義であり、コルチゾールが過剰であることを指す。高コルチゾール血症患者はクッシング症候群を有しており、そのようなコルチゾール過剰によって引き起こされる、又はそれに関連した、症状及び他の障害を有する場合がある。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「クッシング症候群」とは、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰な活性によって引き起こされる障害を指す。内因性クッシング症候群は、20~50歳の大人に最も多く発症する奇病である。多くの症例で、この疾患は下垂体腫瘍、又は副腎腫瘍を原因とする。症状にはばらつきがあるが、ほとんどの場合以下の症状のうちの1又は複数を発現する:高血糖、メタボリックシンドローム、前糖尿病、若しくは糖尿病、高血圧、上半身肥満症、丸顔、頸部周辺の脂肪増加、腕及び脚の痩せ細り、重度の疲労感、並びに筋力低下。また、易刺激性、不安、認知障害、及びうつ病もよく見られる。クッシング症候群は、身体のあらゆる臓器系に影響を及ぼす可能性があり、効果的に治療されない場合致死となる可能性がある。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「メタボリックシンドローム」とは、高血糖、高血圧、体脂肪過剰(特に腰回り)、高レベルの血液脂質などの要素を特徴とする症候群を指す。メタボリックシンドロームは、心血管疾患、糖尿病、肝疾患などの疾患のリスク増加を示す場合がある。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「前糖尿病」とは、対象が、血糖上昇、糖負荷試験結果の異常、並びに例えば血圧上昇、過剰体重、過剰血液脂質などの他の症状、のうちの1又は複数を有する場合があり、そのような過剰又は異常が軽微であり得る、状態を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「糖尿病」とは、高血糖値、インスリン反応障害、尿中のケトンの存在又は高レベルの尿中ケトン、及び臨床分野で公知の他の症状を特徴とする、血糖の障害を指す。患者は多くの場合、口渇、頻尿、疲労、易刺激性などの症状を呈する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「免疫療法」とは、患者の免疫系に影響を与える(例えば、その作用を活性化又は抑制することによる)、疾患治療、典型的にはがん治療、を指す。いくつかの免疫療法は、免疫系T細胞の作用を増強することでがん細胞を攻撃する、「チェックポイント阻害剤」の投与を含む。いくつかの免疫療法は、がん細胞又はがんマーカーに暴露された患者T細胞の使用により、当該患者におけるがんの治療を増強することを含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「チェックポイント阻害剤」とは、例えば小分子薬剤であってもよく、あるいは抗体であってもよい、薬剤であって、T細胞のがん細胞を攻撃する能力を低減又は遮断するタンパク質の作用又は免疫系細胞の他の側面を阻害する薬剤を指す。チェックポイント阻害剤の標的は、T細胞内又はT細胞上に存在する場合があり、あるいは、がん細胞内又はがん細胞上に存在する場合がある。チェックポイント阻害剤の標的としては、PD-1、PDL-1、CTLA-4、B7-1、B7-2などのタンパク質が挙げられる。チェックポイント阻害剤としては、PD-1、PDL-1、CTLA-4、B7-1、B7-2などに対する抗体が挙げられる。例えば、抗体医薬ペンブロリズマブ(キイトルーダ(Keytruda))、ニボルマブ(オプジーボ(Opdivo))、及びセミプリマブ(リブタヨ(Libtayo))はPD-1を阻害し、抗体医薬アテゾリズマブ(テセントリク(Tecentriq))、アベルマブ(バベンチオ(Bavencio))、及びデュルバルマブ(イミフィンジ(Imfinzi))はPDL-1を阻害する。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「併用療法」とは、疾患を治療するための少なくとも2種類の医薬品の対象への投与を指す。これら2種類の薬剤は、同時に投与されてもよく、あるいは、治療期間の全体又は一部の間に任意の順番で順次に投与されてもよい。これら少なくとも2種類の薬剤は、同じ投与計画に従って投与されてもよく、あるいは異なる投与計画に従って投与されてもよい。場合により、一方の薬剤は予定された計画に従って投与され、他方の薬剤は断続的に投与される。場合により、両方の薬剤が断続的に投与される。いくつかの実施形態では、一方の医薬品、例えばSGRM、が毎日投与され、他方の医薬品、例えば医薬品、が2日毎、3日毎、又は4日毎に投与される。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「化合物」は、固有の同定可能な化学構造の分子的成分を表すために用いられる。分子的成分(「化合物」)は、他の分子と結び付いていない遊離種形態で存在している場合がある。化合物は、他の分子と結び付いて、ただしその化学的同一性を保持したまま、より大きな集合体の一部として存在している場合もある。溶媒和物は、化学構造が定義された分子的成分(「化合物」)が溶媒の分子と結び付いたものであるが、これはこのような結合形態の一例である。水和物は、結合した溶媒が水である溶媒和物である。「化合物」と言う場合、遊離形態で存在しているか結合形態で存在しているかは問わず、(構造が示された)分子的成分それ自体を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「薬剤的に許容できる担体」は、薬剤投与に適合する、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、抗真菌剤、等張化剤、吸収遅延剤などを包含することが意図される。薬剤的に活性な物質へのこのような媒体及び薬剤の使用は当該技術分野において周知である。従来の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合性でない限り、組成物中のその使用が企図される。補足的な活性化合物を組成物に組み入れることもできる。
【0037】
用語「グルココルチコイド」(「GC」)又は「グルココルチコステロイド」とは、一様に、グルココルチコイド受容体に結合するステロイドホルモンを指す。GC類は、典型的には、21個の炭素原子を有し、環Aにα,β-不飽和ケトンを有し、α-ケトール基が環Dに結合していることを特徴とする。GC類は、C-11、C-17、及びC-19における酸素化又は水酸化の程度が異なる。Rawn、「Biosynthesis and Transport of Membrane Lipids and Formation of Cholesterol Derivatives」、Biochemistry、Daisyら(編)、1989年、頁567を参照されたい。
【0038】
ミネラルコルチコイド受容体(MR)は、I型グルココルチコイド受容体(GRI)としても知られており、ヒトにおいてはアルドステロンによって活性化される。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「グルココルチコイド受容体」(「GR」)とは、コルチゾール及び/又はコルチゾール類似体に特異的に結合する細胞内受容体ファミリーを指す。グルココルチコイド受容体はコルチゾール受容体とも称される。この用語はGRのアイソフォーム、組換え型GR、及び変異型GRを包含する。「グルココルチコイド受容体」(「GR」)とは、コルチゾール及び/又はデキサメタゾンなどのコルチゾール類似体に特異的に結合するII型GRを指す(例えば、Turner及びMuller、J.Mol.Endocrinol.、2005年10月1日、35巻、頁283-292を参照)。
【0040】
「グルココルチコイド受容体調節物質」(GRM)とは、GRのアゴニストへの結合に関連した任意の生物学的反応を調節する任意の化合物を指す。例えば、デキサメタゾンなどのGRアゴニストは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC、英国)において、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を増加させる。よって、本発明のGR調節物質は、当該化合物のデキサメタゾンの効果を調節する能力を測定することにより、同定することができる。TAT活性は、A.Aliらによる文献、J.Med.Chem.、2004年、47巻、頁2441-2452に要約されているように、測定することができる。調節物質は、EC50(50%効果濃度)が10マイクロモル未満の化合物である。下記の実施例1を参照されたい。
【0041】
本明細書で使用される場合 、用語「選択的グルココルチコイド受容体調節物質」(SGRM)とは、GRのアゴニストへの結合に関連した任意の生物学的反応を調節する任意の組成物又は化合物を指す。「選択的」であることにより、この薬剤は、プロゲステロン受容体(PR)、ミネラルコルチコイド受容体(MR)、又はアンドロゲン受容体(AR)などの他の核内受容体ではなく、GRに優先的に結合する。選択的グルココルチコイド受容体調節物質は、MR、AR、若しくはPR、MR及びPRの両方、MR及びARの両方、AR及びPRの両方、又は、MR、AR、及びPRに対するその親和性よりも10倍大きい親和性(Kd値の1/10)でGRと結合することが好ましい。より好ましい実施形態では、選択的グルココルチコイド受容体調節物質は、MR、AR、若しくはPR、MR及びPRの両方、MR及びARの両方、AR及びPRの両方、又はMR、AR、及びPRに対するその親和性よりも100倍高い親和性(Kd値の1/100)でGRと結合する。別の実施形態では、選択的グルココルチコイド受容体調節物質は、MR、AR、若しくはPR、MR及びPRの両方、MR及びARの両方、AR及びPRの両方、又はMR、AR、及びPRに対するその親和性よりも1000倍高い親和性(Kd値の1/1000)でGRと結合する。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「選択的グルココルチコイド受容体調節物質」及び「SGRM」は、ORG34517、又は11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジ
エン誘導体、又は下記式の11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン誘導体を包含しない:
【化10】
式中、Aは、互いに結合しておらず、独立してO及びSから選択される2個のヘテロ原子を含有し、所望により1又は複数のハロゲン原子で置換されている、5員環又は6員環の残基であり、あるいは、Aは、二重C-C結合が存在せず、O及びSから選択される1個のヘテロ原子を含有し、ヘテロ原子がアステリスクで示された位置でフェニル基に結合しており、所望により1又は複数のハロゲン原子で置換されている、5員環又は6員環の残基であり;R
lは、H又はI-オキソ(1~4C)アルキルであり;R
2は、H、(1~8C)アルキル、ハロゲン、又はCF3であり;Xは、(H、OH)、O、及びNOHから選択され;破線は任意の結合を表す(例えば、米国特許第8,658,128号の請求項1を参照)。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、上記化合物、その互変異性型、その誘導体、その類似体、その立体異性体、その多形、その重水素化種、その薬剤的に許容できる塩、エステル、エーテル、代謝産物、異性体混合物、その薬剤的に許容できる溶媒和物、及び薬剤的に許容できる組成物などの特定の成分を特定の量含む生成物、並びに、特定の量の特定の成分の組み合わせから直接的又は間接的に得られるあらゆる生成物を包含することが意図される。医薬組成物に関しての係る用語は、有効成分と、担体を構成する不活性成分と、を含む生成物、並びに、直接的又は間接的に、任意の2以上の成分の組み合わせ、複合体形成、若しくは凝集をもたらす、又は1若しくは複数の成分の解離から生じる、又は1若しくは複数の成分の他の種類の反応若しくは相互作用から生じる、あらゆる生成物、を包含することが意図される。これを受けて、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬剤的に許容できる担体とを混合することにより作製されるあらゆる組成物を包含することが意図される。
【0044】
いくつかの実施形態では、用語「から実質的になる」とは、製剤中の組成物の唯一の有効成分が表示された有効成分であることを指すが、製剤の安定化、保存などのための、ただし表示の有効成分の治療効果に直接関与しない、他の化合物が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、用語「から実質的になる」は、組成物が、有効成分と、当該有効成分の放出を促進する成分とを含有することを指していることがある。例えば、組成物は、対象への長期的な有効成分の持続放出をもたらす1又は複数の成分を含有することができる。いくつかの実施形態では、用語「なる」とは、組成物が、有効成分と、薬剤的に許容できる担体又は医薬品添加物とを含有することを指す。
【0045】
「薬剤的に許容できる医薬品添加物」及び「薬剤的に許容できる担体」とは、対象への活性薬剤の投与(及び対象による吸収)を助け、患者に重大な有害毒性効果を引き起こさずに本発明の組成物に含ませることができる、物質を指す。薬剤的に許容できる医薬品添加物の非限定例としては、水、NaCl、生理食塩液、乳酸加リンガー液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、甘味剤、加香剤、及び着色剤などが挙げられる。他の医薬品添加物が本発明において有用であることは、当業者には理解される。
【0046】
本明細書で使用される場合、SGRMに関連しての「非ステロイド系骨格」という表現は、SGRMが、17個の炭素原子を含有しそれらが4個の縮合環の中で結合し合っているステロイド骨格を有するコルチゾールと、構造的相同性を共有していないこと、あるいはその修飾体(modification)ではないこと、を指す。このような化合物は、合成のタンパク質模倣剤及びタンパク質類似体を包含し、例えば部分的にペプチド性の分子的実体、疑似ペプチド性の分子的実体、及び非ペプチド性の分子的実体が挙げられる。
【0047】
非ステロイド系SGRM化合物は、縮合アザデカリン構造(縮合アザデカリン骨格と称する場合もある)を含むSGRM、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造(ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格と称する場合もある)を含むSGRM、及びオクタヒドロ縮合アザデカリン構造(オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格と称する場合もある)を含むSGRMを包含する。縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド系グルココルチコイド受容体調節物質の例としては、米国特許第7,928,237号及び同第8,461,172号に記載のものが挙げられる。ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド系グルココルチコイド受容体調節物質の例としては、米国特許第8,859,774号及びその継続刊行物に記載のものが挙げられる。オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド系グルココルチコイド受容体調節物質の例としては、米国特許第10,047,082号に記載のものが挙げられる。本明細書で参照された全ての特許及び特許出願の全内容は、それらの全体が参照によって本明細書に援用されたものとする。
【0048】
置換基が左から右に書かれた従来の化学式で特定される場合、右から左に構造を書くことにより得られるものと化学的に同一の置換基が同等に含まれ、例えば、-CH2O-は-OCH2-と等しい。
【0049】
「アルキル」とは、表示の炭素原子数を有する、直鎖又は分岐鎖状の、飽和した、脂肪族遊離基を指す。アルキルはあらゆる数の炭素を含むことができ、例えば、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6、及びC5-6などである。例えば、C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0050】
「アルコキシ」とは、アルキル基を結合点に接続する酸素原子を有するアルキル基を指す:アルキル-O-。アルキル基については、アルコキシ基はC1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが挙げられる。
【0051】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0052】
「ハロアルキル」とは、上記で定義された通りのアルキルにおいて、いくつか又は全ての水素原子がハロゲン原子に置換されたものを指す。アルキル基については、ハロアルキル基はC1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有することができ、トリフルオロメチル、フルオロメチルなどが挙げられる。
【0053】
用語「ペルフルオロ」は、全ての水素がフッ素と置換された化合物又は遊離基の定義に用いることができる。例えば、ペルフルオロメタンは1,1,1-トリフルオロメチルを包含する。
【0054】
「ハロアルコキシ」とは、アルコキシ基において、いくつか又は全ての水素原子がハロゲン原子と置換されたものを指す。アルキル基については、ハロアルコキシ基はC1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基は、1個、2個、3個、又はそれ以上のハロゲンで置換されていてもよい。全ての水素がハロゲンと、例えばフッ素によって置換されている場合、この化合物は、全置換された、例えば全フッ素化された化合物である。ハロアルコキシとしては、トリフルオロメトキシ、2,2,2,-トリフルオロエトキシ、及びペルフルオロエトキシが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0055】
「シクロアルキル」とは、3~12個の環原子又は表示の原子数を含む、飽和又は部分不飽和の、単環式、縮合二環式、又は架橋多環式の、環集合体を指す。シクロアルキルは、任意の数の炭素を含むことができ、例えばC3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、及びC3-12などである。飽和単環式シクロアルキル環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式シクロアルキル環及び飽和多環式シクロアルキル環としては、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン、及びアダマンタンが挙げられる。シクロアルキル基は、環内に1又は複数の二重結合又は三重結合を有する、部分不飽和とすることもできる。代表的な部分不飽和シクロアルキル基としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-異性体及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-異性体、1,4-異性体、及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルエナジンが挙げられるが、これらに限定はされない。シクロアルキルが飽和単環式C3-8シクロアルキルである場合、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定はされない。シクロアルキルが飽和単環式C3-6シクロアルキルである場合、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0056】
「ヘテロシクロアルキル」とは、3~12個の環員と1~4個のN、O、及びSヘテロ原子とを有する飽和環系を指す。B、Al、Si、及びPを含むがこれらに限定はされない、さらなるヘテロ原子が有用である場合もある。ヘテロ原子は酸化されていてもよく、例えば-S(O)-及び-S(O)2-などがあるが、これらに限定はされない。ヘテロシクロアルキル基は、任意の数の環原子を含むことができ、例えば、3~6個、4~6個、5~6個、3~8個、4~8個、5~8個、6~8個、3~9個、3~10個、3~11個、又は3~12個の環員を含むことができる。任意の好適な数のヘテロ原子をヘテロシクロアルキル基に含ませることができ、例えば、1個、2個、3個、若しくは4個、又は1~2個、1~3個、1~4個、2~3個、2~4個、若しくは3~4個を含ませることができる。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-異性体、1,3-異性体、及び1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソキサリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、又はジチアンなどの基を挙げることができる。ヘテロシクロアルキル基は、芳香族系又は非芳香環系と縮合させて、インドリンを含むがこれに限定はされない構成要素を形成させることもできる。
【0057】
ヘテロシクロアルキルが3~8個の環員と1~3個のヘテロ原子を含む場合、代表的な構成要素としては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、及びジチアンが挙げられるが、これらに限定はされない。ヘテロシクロアルキルは、5~6個の環員と1~2個のヘテロ原子とを有する環を形成することもでき、代表的な構成要素として、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、及びモルホリンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0058】
「アリール」とは、任意の好適な数の環原子と任意の好適な数の環を有する芳香環系を指す。アリール基は、任意の好適な数の環原子を含むことができ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個の環原子を含むことができ、また、6~10個、6~12個、又は6~14個の環員を含むことができる。アリール基は、単環式であってもよく、縮合して二環式又は三環式の基を形成していてもよく、あるいは結合により連結してビアリール基を形成していてもよい。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。他のアリール基としては、メチレンを連結基として有するベンジルが挙げられる。いくつかのアリール基は6~12個の環員を有し、例えばフェニル、ナフチル、又はビフェニルなどである。他のアリール基は6~10個の環員を有し、例えばフェニル又はナフチルなどである。いくつかの他のアリール基は6個の環員を有し、例えばフェニルである。アリール基は置換されていても非置換であってもよい。
【0059】
「ヘテロアリール」とは、5~16個の環原子を含有し、環原子のうちの1~5個がN、O、又はSなどのヘテロ原子である、単環式、縮合した二環式、又は三環式の芳香環集合体を指す。B、Al、Si、及びPを含むがこれらに限定はされない、さらなるヘテロ原子が用いられる場合もある。ヘテロ原子は酸化されていてもよく、例えばN-オキシド、-S(O)-及び-S(O)2-などがあるが、これらに限定はされない。ヘテロアリール基は、任意の数の環原子を含むことができ、例えば、3~6個、4~6個、5~6個、3~8個、4~8個、5~8個、6~8個、3~9個、3~10個、3~11個、又は3~12個の環員を含むことができる。任意の好適な数のヘテロ原子をヘテロアリール基に含ませることができ、例えば、1個、2個、3個、4個、若しくは5個;又は1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、2~3個、2~4個、2~5個、3~4個、若しくは3~5個を含ませることができる。ヘテロアリール基は、5~8個の環員と1~4個のヘテロ原子、又は5~8個の環員と1~3個のヘテロ原子、又は5~6個の環員と1~4個のヘテロ原子、又は5~6個の環員と1~3個のヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロアリール基としては、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体、及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソキサゾールなどの基を挙げることができる。ヘテロアリール基を、フェニル環などの芳香環系に縮合させることで、インドール及びイソインドールなどのベンゾピロール、キノリン及びイソキノリンなどのベンゾピリジン、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、フタラジン及びシンノリンなどのベンゾピリダジン、ベンゾチオフェン、並びにベンゾフランを含むがこれらに限定はされない構成要素を形成させることもできる。他のヘテロアリール基としては、ヘテロアリール環同士が結合によって連結したものが挙げられ、例えばビピリジンである。ヘテロアリール基は置換されていても非置換であってもよい。
【0060】
ヘテロアリール基は環上のいずれの位置に結合されていてもよい。例えば、ピロールは1-、2-、及び3-ピロールを包含し;ピリジンは2-、3-、及び4-ピリジンを包含し;イミダゾールは1-、2-、4-、及び5-イミダゾールを包含し;ピラゾールは1-、3-、4-、及び5-ピラゾールを包含し;トリアゾールは1-、4-、及び5-トリアゾールを包含し;テトラゾールは1-及び5-テトラゾールを包含し;ピリミジンは2-、4-、5-、及び6-ピリミジンを包含し;ピリダジンは3-及び4-ピリダジンを包含し;1,2,3-トリアジンは4-及び5-トリアジンを包含し;1,2,4-トリアジンは3-、5-、及び6-トリアジンを包含し;1,3,5-トリアジンは2-トリアジンを包含し;チオフェンは2-及び3-チオフェンを包含し;フランは2-及び3-フランを包含し;チアゾールは2-、4-、及び5-チアゾールを包含し;イソチアゾールは3-、4-、及び5-イソチアゾールを包含し;オキサゾールは2-、4-、及び5-オキサゾールを包含し;イソキサゾールは3-、4-、及び5-イソキサゾールを包含し;インドールは1-、2-、及び3-インドールを包含し;イソインドールは1-及び2-イソインドールを包含し;キノリンは2-、3-、及び4-キノリンを包含し;イソキノリンは1-、3-、及び4-イソキノリンを包含し;キナゾリンは2-及び4-キナゾリン(quinoazoline)を包含し;シンノリンは3-及び4-シンノリンを包含し;ベンゾチオフェンは2-及び3-ベンゾチオフェンを包含し;ベンゾフランは2-及び3-ベンゾフランを包含する。
【0061】
いくつかのヘテロアリール基として、5~10個の環員と、N、O、又はSを含む1~3個の環原子とを有するものが挙げられ、例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体、及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、及びベンゾフランなどである。他のヘテロアリール基として、5~8個の環員と1~3個のヘテロ原子とを有するものが挙げられ、例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体、及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソキサゾールなどである。いくつかの他のヘテロアリール基として、9~12個の環員と1~3個のヘテロ原子とを有するものが挙げられ、例えば、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、及びビピリジンなどである。さらに他のヘテロアリール基として、5~6個の環員と、N、O、又はSを含む1~2個の環ヘテロ原子とを有するものが挙げられ、例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソキサゾールなどである。
【0062】
いくつかのヘテロアリール基は、5~10個の環員と、ヘテロ原子として窒素のみを有し、例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体、及び1,3,5-異性体)、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、及びシンノリンなどである。他のヘテロアリール基は、5~10個の環員と、ヘテロ原子として酸素のみを含み、例えば、フラン及びベンゾフランなどである。いくつかの他のヘテロアリール基は、5~10個の環員と、ヘテロ原子として硫黄のみを含み、例えば、チオフェン及びベンゾチオフェンなどである。さらに他のヘテロアリール基は、5~10個の環員と、少なくとも2個のヘテロ原子とを含み、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体、及び1,3,5-異性体)、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、及びシンノリンなどである。
【0063】
「ヘテロ原子」とは、O、S、又はNを指す。
【0064】
「塩」とは、本発明の方法で使用される化合物の酸性塩又は塩基性塩を指す。薬剤的に許容できる塩の例としては、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸などの)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸などの)塩、及び四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなどの)塩がある。これらの薬剤的に許容できる塩は無毒性であると理解される。好適な薬剤的に許容できる塩に関するさらなる情報は、参照によって本明細書に援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、マック出版社(Mack Publishing Company)、イーストン、ペンシルベニア州、1985年に見出すことができる。
【0065】
「異性体」とは、同じ化学式を有するが、構造が区別可能な化合物を指す。
【0066】
「互変異性体」とは、平衡状態で存在し、ある形態から別の形態へと容易に変換される、2以上の構造異性体のうちの1つである。
【0067】
本発明の化合物の記載は、当業者に公知の化学結合の原則による制限を受ける。すなわち、基が1又は複数のいくつかの置換基で置換されていてもよい場合、このような置換は、化学結合の原則に適合するように、且つ、実質的に不安定でなく、且つ/又は当業者であれば水溶液条件、中性条件、若しくは生理的条件などの周囲条件下で不安定になる可能性があることを知っている、化合物が生成されるように、選択される。
【0068】
本明細書で開示される方法は、以下を原因とする、又は以下を特徴とする、又は以下を症状として含む、クッシング症候群、クッシング病などの障害を有する患者を治療するために適用できる:コルチゾール過剰(高コルチゾール血症);高コルチゾール血症に続発する高血糖症;メタボリックシンドローム、前糖尿病、又は糖尿病;肝疾患(例えば、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、肝線維症などの肝障害);心障害(例えば、左室肥大(LVH)を伴う又は伴わないQT間隔延長などの心拍リズム障害を含む);高血圧;がん;心理的障害(例えば、精神病性大うつ病などのうつ病);体重増加(精神病治療を原因とする体重増加を含む)などの疾患及び障害。
【0069】
一般に、コルチゾール過剰(高コルチゾール血症)の治療は、有効量の医薬品と、任意の化学構造又は作用機序の有効量のグルココルチコイド受容体調節物質(GRM)とを組み合わせて投与することによって、達成できる。いくつかの実施形態において、GRMは選択的GRM(SGRM)である。いくつかの実施形態において、コルチゾール過剰の治療は、有効量の医薬品と、有効量のSGRMとを組み合わせて投与することによって達成できる。好ましい実施形態では、コルチゾール過剰の治療は、有効量の医薬品と、有効量の非ステロイド系SGRMとを組み合わせて投与することによって達成できる。本明細書では、例示的なGRMクラス、特に、例示的な非ステロイド系SGRMクラス、及びそのようなクラスの特定のメンバーが提供される。しかし、当業者には、本明細書に記載の治
療法で使用できる、他の関連又は無関連のGRM及びSGRMが容易に認識される。
【0070】
ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとしては、米国特許第8,859,774号で開示された通りに作製でき、その全体が本明細書に援用される、上記米国特許に記載のものが挙げられる。このような例示的なGRMはSGRMであってもよい。いくつかの場合では、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含むGRMは、下記の構造を有し、
【化11】
式中、
R
1は、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するヘテロアリール環であり、所望によりR
1aから選択される1~4個の基でそれぞれ独立して置換されている;
それぞれのR
1aは、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキル、及びC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群から選択され、上記のヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子と、を有し;
それぞれのR
2は、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、及びC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、上記のヘテロシクロアルキル基は1~4個のR
2c基で所望により置換されており;
あるいは、同じ炭素に結合した2個のR
2基が一緒になってオキソ基(=O)を形成しており;
あるいは、2個のR
2基が一緒になって、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成しており、所望により1~3個のR
2d基で置換されている;
R
2a及びR
2bは、それぞれ独立して、水素及びC
1-6アルキルからなる群から選択され;
それぞれのR
2cは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CN、及び-NR
2aR
2bからなる群から選択され;
それぞれのR
2dは、独立して、水素及びC
1-6アルキルからなる群から選択され、あるいは、同じ環原子に結合した2個のR
2d基が一緒になって(=O)を形成しており;
R
3は、それぞれ1~4個のR
3a基で所望により置換されているフェニル及びピリジルからなる群から選択され;
それぞれのR
3aは、独立して、水素、ハロゲン、及びC
1-6ハロアルキルからなる群から選択され;
下付き数字nは0~3の整数である;
又は、その塩及び異性体である。
【0071】
好ましい実施形態では、GRMは、下記式を有する、「レラコリラント」と称される、化学名(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンを有する、非ステロイド系ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化12】
【0072】
オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとしては、米国特許第10,047,082号に記載のものが挙げられ、これらは上記米国特許に記載された通りに作製でき、上記米国特許の開示はその全体が本明細書に援用される。このような例示的なGRMはSGRMであってもよい。いくつかの場合では、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むGRMは、下記の構造を有し、
【化13】
式中、
R
1は、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するヘテロアリール環であり、所望によりそれぞれ独立してR
1aから選択される1~4個の基で置換されている、;
それぞれのR
1aは、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC
3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
環Jは、アリール環、並びに5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環からなる群から選択され;
それぞれのR
2は、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、並びにそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
あるいは、隣接し合う環原子上の2個のR
2基が一緒になって、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成しており、所望により1~3個のR
2c基で置換されているヘテロシクロアルキル環;
R
2a、R
2b、及びR
2cは、それぞれ独立して、水素及びC
1-6アルキルからなる群から選択され;
それぞれのR
3aは、独立して、ハロゲンであり;
下付き数字nは0~3の整数である;
又は、その塩及び異性体である。
【0073】
いくつかの実施形態において、オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は下記の式を有し、
【化14】
式中、R
1は、所望によりそれぞれ独立してR
1aから選択される1~4個の基で置換されている、ピリジン及びチアゾールからなる群から選択され;それぞれのR
1aは、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC
3-8シクロアルキルからなる群から選択され;環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群から選択され;それぞれのR
2は、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、及び-CNからなる群から選択され;R
3aはFであり;下付き数字nは0~3の整数である;あるいは、R
1はその塩及び異性体から選択される。
【0074】
オクタヒドロ(octohydro)縮合アザデカリン構造を含む例示的なグルココルチコイド受容体アンタゴニストとしては、米国特許第10,047,082号に記載のものが挙げられる。いくつかの実施形態において、オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は、下記の構造を有する、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(「CORT125281」)という化合物である。
【化15】
【0075】
いくつかの実施形態において、GRMは、下記の式を有し、「CORT125329」と称され、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンという化学名を有する、非ステロイド系オクタヒドロ縮合アザデカリンGRM化合物である。
【化16】
【0076】
試験化合物がSGRMであるかどうかを判定するため、当該化合物をまず、GRに結合してGRを介した活性を阻害するその能力を測定するためのアッセイに供し、当該化合物がグルココルチコイド受容体調節物質かどうかを判定する。グルココルチコイド受容体調節物質であることが確認された場合、この化合物を次に、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、又はミネラルコルチコイド受容体などのGR以外のタンパク質と比較した場合に、当該化合物がGRに特異的に結合できるかどうかを判定するための選択性試験に供する。1つの実施形態では、SGRMは、GR以外のタンパク質に対するよりも、実質的により高い親和性で、例えば、少なくとも10倍高い親和性で、GRに結合する。SGRMは、GR以外のタンパク質への結合力に対し、GRへの結合力が、100倍、1000倍、又はそれ以上の選択性を示す場合がある。
【0077】
試験化合物のグルココルチコイド受容体への結合能は、種々のアッセイを用いて測定することができ、例えば、試験化合物を、グルココルチコイド受容体への結合においてデキサメタゾンなどのグルココルチコイド受容体リガンドと競合する能力についてスクリーニングすることにより、測定することができる。このような競合的結合アッセイを実行するための方法がいくつか存在することは、当業者が認識するところである。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体は、標識されたグルココルチコイド受容体リガンドと共に事前インキュベートされた後、試験化合物と接触させられる。このタイプの競合的結合アッセイは、結合置換アッセイと称される場合もある。グルココルチコイド受容体に結合した標識リガンドの量の減少は、試験化合物がグルココルチコイド受容体に結合していることを示す。いくつかの場合で、標識リガンドは蛍光標識された化合物(例えば、蛍光標識されたステロイド又はステロイド類似体)である。あるいは、標識された試験化合物を用いて、試験化合物のグルココルチコイド受容体への結合性を直接測定することができる。この後者のタイプのアッセイは直接結合アッセイと称される。
【0078】
直接結合アッセイ及び競合的結合アッセイともに、様々なフォーマットで用いることができる。これらのフォーマットは、イムノアッセイ及び受容体結合アッセイで用いられるフォーマットと同様であってもよい。競合的結合アッセイ及び直接結合アッセイを含む、結合アッセイの種々のフォーマットの説明については、それぞれ参照によって本明細書に援用される、Basic and Clinical Immunology、第7版(D.Stites及びA.Terr(編))1991年;Enzyme Immunoassay、E.T.Maggio(編)、CRCプレス社(CRC Press)、ボカラトン、フロリダ州(1980年);及び「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」、P.Tijssen、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、エルゼビア・サイエンス・パブリッシャー社(Elsevier Science Publishers B.V.)、アムステルダム(1985年)を参照されたい。
【0079】
例えば、固相競合的結合アッセイでは、試料化合物を、固体表面に結合した結合剤上の特異的結合部位において、標識された分析物と競合させることができる。このタイプのフォーマットでは、標識された分析物をグルココルチコイド受容体リガンドとすることができ、結合剤を固相に結合したグルココルチコイド受容体とすることができる。あるいは、標識された分析物を標識されたグルココルチコイド受容体とすることができ、結合剤を固相グルココルチコイド受容体リガンドとすることができる。捕捉剤に結合した標識分析物の濃度は、結合アッセイにおける試験化合物の競合能に反比例する。
【0080】
あるいは、競合的結合アッセイは液相で行ってもよく、また、結合した標識タンパク質を未結合の標識タンパク質と分離するために、当該技術分野において公知の任意の種々の技術を用いてよい。例えば、結合リガンドと過剰な結合リガンドとを区別する、又は結合試験化合物と過剰な未結合試験化合物とを区別するための方法が、いくつか開発された。これらは、ショ糖勾配遠心分離法、ゲル電気泳動法、又はゲル等電点電気泳動法による結合した複合体の同定;硫酸プロタミンによる受容体-リガンド複合体の沈殿又はヒドロキシルアパタイト上の吸着;及び、デキストラン被膜炭(DCC)上の吸着又は固定化抗体への結合による未結合の化合物又はリガンドの除去を含む。分離後、結合型のリガンド又は試験化合物の量が求められる。
【0081】
あるいは、分離工程を必要としない相同(homogenous)結合アッセイを行ってもよい。例えば、グルココルチコイド受容体上の標識は、当該グルココルチコイド受容体がそのリガンド又は試験化合物に結合することによって変化する場合がある。標識グルココルチコイド受容体におけるこの変化により、標識が発するシグナルが減少又は増加することとなるため、結合アッセイの最後に標識を測定することで、結合状態のグルココルチコイド受容体の検出又は定量化が可能となる。種々様々な標識を使用できる。成分は、いくつかの方法のうちいずれか1つによって標識できる。有用な放射性標識としては、3H、125I、35S、14C、又は32Pを組み入れるものが挙げられる。有用な非放射性標識としては、フルオロフォア、化学発光物質、リン光物質、電気化学発光物質などを組み入れるものが挙げられる。蛍光物質は、蛍光異方性測定法及び/又は蛍光偏光法などの、タンパク質構造におけるシフトを検出するために用いられる分析法において特に有用である。標識の選択は、必要な感度、化合物との結合のし易さ、安定性の要件、及び利用可能な計測手段に基づく。使用できる種々の標識系又はシグナル生成系の概説については、その全体が全ての目的において参照によって本明細書に援用される米国特許第4,391,904号を参照されたい。標識は、当該技術分野において周知の方法に従って、アッセイの所望の構成成分に直接的又は間接的に結合できる。いくつかの場合では、試験化合物が、GRに対する既知の親和性を有する蛍光標識されたリガンド(例えば、ステロイド又はステロイド類似体)の存在下でGRと接触させられ、結合型及び遊離型の標識リガンドの量が標識リガンドの蛍光偏光の測定により推定される。
【0082】
ii.活性
1)HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
GRに対し所望の結合親和性を示した化合物は、GRを介した活性の阻害におけるその活性について試験される。これらの化合物は、通常、デキサメタゾンによるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性の誘導を阻害する試験化合物の能力を測定する、チロシンアミノトランスフェラーゼアッセイ(TATアッセイ)に供される。実施例1を参照されたい。本明細書で開示される方法に好適なGR調節物質は、10マイクロモル未満のIC50(50%阻害濃度)を有する。以下に記載されるものを含むがこれらに限定はされない、他のアッセイを用いて、化合物のGR調節活性を確認することもできる。
【0083】
2)細胞ベースアッセイ
グルココルチコイド受容体を含む細胞全体又は細胞画分を要する細胞ベースアッセイを用いて、試験化合物の結合力やグルココルチコイド受容体の活性の調節力を測定することもできる。本発明の方法において使用できる例示的な細胞型としては、例えば、白血球(好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、マスト細胞、並びにT細胞及びB細胞などのリンパ球など)、白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、腫瘍細胞(マウス乳癌ウイルス細胞を含む)、内皮細胞、線維芽細胞、心細胞、筋細胞、乳腺腫瘍細胞、卵巣がん癌(ovarian cancer carcinomas)、子宮頸癌、グリア芽腫、肝細胞、腎細胞、及び神経細胞を含む任意の哺乳類細胞が挙げられ、また、酵母を含む真菌細胞も挙げられる。細胞は、初代細胞、又は腫瘍細胞若しくは他の種類の不死細胞株とすることができる。当然ながら、グルココルチコイド受容体は、グルココルチコイド受容体の内在性型を発現しない細胞で発現させることができる。
【0084】
いくつかの場合で、グルココルチコイド受容体の断片と、さらにはタンパク質融合体を、スクリーニングに用いることができる。結合においてグルココルチコイド受容体リガンドと競合する分子が望まれる場合、使用されるGR断片はリガンド(例えば、デキサメタゾン)と結合可能な断片である。あるいは、GRの任意の断片を、グルココルチコイド受容体と結合する分子を同定するための標的として用いることができる。グルココルチコイド受容体断片としては、例えば、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個のアミノ酸からなる任意の断片から、グルココルチコイド受容体の1つを除いた全てのアミノ酸を含むタンパク質に至るまで、挙げることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体活性化によりトリガーされるシグナル伝達の減少が、グルココルチコイド受容体調節物質を同定するために利用される。グルココルチコイド受容体のシグナル伝達活性は多くの方法で測定することができる。例えば、下流の分子現象をモニターすることで、シグナル伝達活性を測定することができる。下流のイベントとしては、グルココルチコイド受容体の刺激の結果として起こる活性又は発現が挙げられる。未変化細胞における転写活性化及び拮抗作用の機能評価において有用な例示的な下流イベントとして、いくつかのグルココルチコイド応答エレメント(GRE)依存的遺伝子(PEPCK、チロシンアミノトランスフェラーゼ、アロマターゼ)の発現上昇が挙げられる。加えて、GR活性化の影響を受けやすい特定の細胞型を用いてもよく、例えば、グルココルチコイドによってダウンレギュレートされる骨芽細胞におけるオステオカルシン発現;グルココルチコイドを介したPEPCK及びグルコース-6-リン酸(G-6-Pase)の発現上昇を示す初代肝細胞などである。また、周知のGRE制御配列(例えば、レポーター遺伝子コンストラクトの上流にトランスフェクトされたマウス乳癌ウイルスプロモーター(MMTV))を用いたトランスフェクト細胞株においても、GREを介した遺伝子発現が示されている。有用なレポーター遺伝子コンストラクトの例としては、ルシフェラーゼ(luc)、アルカリホスファターゼ(ALP)、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。転写抑制の機能評価は、単球又はヒト皮膚線維芽細胞などの細胞株において行うことができる。有用な機能分析としては、トランスフェクト細胞株における、IL-1β刺激によるIL-6発現;コラゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、及び種々のケモカイン(MCP-1、ランテス)のダウンレギュレーション;LPS刺激によるサイトカイン放出、例えば、TNFα;又はNFkB若しくはAP-1転写因子により制御される遺伝子の発現を測定するものが挙げられる。
【0086】
ホールセルアッセイで試験される化合物は、細胞毒性アッセイで試験することもできる。細胞毒性アッセイを用いて、検知された効果がどの程度まで非グルココルチコイド受容体結合細胞効果によるものであるかが求められる。例示的な実施形態では、細胞毒性アッセイは、常時活性型の細胞を試験化合物と接触させることを含む。細胞活性におけるいかなる減少も細胞毒性効果を示すものである。
【0087】
本発明の方法で使用される組成物の同定に用いることができる多くのアッセイのさらなる例示として、インビボにおけるグルココルチコイド活性に基づいたアッセイがある。例えば、グルココルチコイドにより刺激された細胞における3H-チミジンのDNAへの取り込みを阻害する推定GR調節物質の能力を評価するアッセイを用いることができる。あるいは、推定GR調節物質を、肝細胞腫組織培養物GRへの結合において、3H-デキサメタゾンと競合させることもできる(例えば、Choiら、Steroids、57巻:頁313-318、1992年を参照)。別の例としては、3H-デキサメタゾン-GR複合体の核結合をブロックする推定GR調節物質の能力を利用することができる(Alexandrovaら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol、41巻:頁723-725、1992年)。推定GR調節物質のさらなる同定のために、受容体結合カイネティクスによってグルココルチコイドアゴニストと調節物質とを区別できるカイネティクスアッセイを用いることもできる(Jones、Biochem J.、204巻:頁721-729、1982年に記載)。
【0088】
別の例では、抗グルココルチコイド活性を確認するために、Daune、Molec.Pharm.、13巻:頁948-955、1977年;及び米国特許第4,386,085号に記載のアッセイを用いることができる。簡潔に説明すると、副腎を摘出したラットの胸腺細胞を、デキサメタゾンと試験化合物(推定GR調節物質)を様々な濃度で含有する栄養培地中でインキュベートする。3H-ウリジンを細胞培養物に添加し、さらにインキュベートし、ポリヌクレオチドへの放射標識の取り込みの程度を測定する。グルココルチコイドアゴニストは取り込まれる3H-ウリジンの量を減少させる。すなわち、GR調節物質はこの効果と対抗するものである。
【0089】
次に、上記で選択されたGR調節物質を選択性アッセイにかけ、SGRMであるかどうかを判定する。通常、選択性アッセイは、グルココルチコイド受容体以外のタンパク質に対する結合の程度について、インビトロにおいてグルココルチコイド受容体と結合する化合物を試験することを含む。選択性アッセイはインビトロで実行されてもよいし、あるいは上記のように細胞ベースの系で実行されてもよい。結合性は任意の適切な非グルココルチコイド受容体タンパク質に対して試験されてよく、例えば抗体、受容体、酵素などが挙げられる。例示的な実施形態では、非グルココルチコイド受容体結合タンパク質は、細胞表面受容体又は核内受容体である。別の例示的な実施形態では、非グルココルチコイド受容体タンパク質は、ステロイド受容体であり、例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、又はミネラルコルチコイド受容体などである。
【0090】
当業者に公知の種々のアッセイを用いて、MRと比較した、GRに対するアンタゴニストの選択性を測定することができる。例えば、MRと比較して、GRへのアンタゴニストの結合能を測定することにより、特異的なアンタゴニストを同定することができる(例えば、米国特許第5,606,021号;同第5,696,127号;同第5,215,916号;同第5,071,773号を参照)。このような分析は、直接結合アッセイを用いて、又は既知リガンドの存在下で精製されたGR若しくはMRに対する競合的結合を評価することによって、行うことができる。例示的なアッセイでは、高レベルでグルココルチコイド受容体又はミネラルコルチコイド受容体を安定発現する細胞(例えば、米国特許第5,606,021号を参照)を、精製された受容体の供給源として用いる。上記受容体に対する上記リガンドの親和性を直接測定する。MRと比較して、GRに対し少なくとも10倍、100倍、しばしば1000倍、より高い親和性を示すGR調節物質を、本発明の方法で使用するために選択する。
【0091】
上記の選択性アッセイは、MRを介した活性は阻害しないが、GRを介した活性を阻害する能力の定量を含んでもよい。このようなGR特異的調節物質を同定する1つの方法は、トランスフェクションアッセイを用いて、アンタゴニストのレポーター構築物の活性化を妨げる能力を評価することである(例えば、Bocquelら、J.Steroid Biochem Molec.Biol.、45巻:頁205-215、1993年;米国特許第5,606,021号、同第5,929,058号を参照)。例示的なトランスフェクションアッセイでは、受容体をコードする発現プラスミドと、受容体特異的な調節エレメントに連結されたレポーター遺伝子を含むレポータープラスミドとを、好適な受容体陰性宿主細胞にコトランスフェクトする。トランスフェクト宿主細胞を次に、上記レポータープラスミドのホルモン応答性プロモーター/エンハンサーエレメントを活性化できる、コルチゾール又はその類似体などのホルモンの存在下及び非存在下で培養する。次に、トランスフェクション及び培養後の宿主細胞を、レポーター遺伝子配列の産生の誘導(すなわち、存在)についてモニターする。最後に、アンタゴニストの存在下及び非存在下でレポーター遺伝子の活性を求めることにより、ホルモン受容体タンパク質(発現プラスミド上の受容体DNA配列にコードされ、トランスフェクション及び培養後の宿主細胞において産生された)の発現及び/又はステロイド結合能を測定する。化合物のアンタゴニスト活性は、受容体GR及びMRの既知のアンタゴニストとの比較において求めてもよい(例えば、米国特許第5,696,127号を参照)。効力は、参照アンタゴニスト化合物と比較した、それぞれの化合物の場合で確認されたパーセント最大反応として報告される。MR、PR、又はARと比較して、GRに対して、少なくとも100倍、しばしば1000倍又はそれ以上の活性を示すGR調節物質を、本明細書で開示される方法で使用するために選択する。
【0092】
本明細書で開示される方法において使用できる非ステロイド系SGRMの一例は、レラコリラント、すなわち、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記の構造を有する。
【化17】
【0093】
(医薬組成物及び投与)
いくつかの実施形態において、本発明は、コルチゾール過剰を治療するための医薬組成物であって、薬剤的に許容できる医薬品添加物とGRMとを含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は薬剤的に許容できる医薬品添加物とSGRMとを含む。好ましい実施形態では、上記医薬組成物は、薬剤的に許容できる医薬品添加物と非ステロイド系(nonsterodial)SGRMとを含む。
【0094】
GRM及びSGRM(本明細書で使用される場合、GRM及びSGRMは非ステロイド系GRM及び非ステロイド系SGRMを包含する)は、様々な経口剤形、非経口剤形、及び局所剤形で作製及び投与できる。経口剤としては、患者による摂取に好適な、錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、菓子錠剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などが挙げられる。GRM及びSGRMは、注射によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内に投与することもできる。また、GRM及びSGRMは吸入によって投与することもでき、例えば、鼻腔内投与することができる。さらに、GRM及びSGRMは経皮投与することができる。よって、本発明は、薬剤的に許容できる担体又は医薬品添加物とGRM又はSGRMとを含む医薬組成物も提供する。
【0095】
GRM及びSGRMから医薬組成物を作製する場合、薬剤的に許容できる担体は固体又は液体のいずれかとすることができる。固形の製剤としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散顆粒剤が挙げられる。固体担体は1種又は複数種の物質とすることができ、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又は封入材として働くものであってもよい。製剤及び投与の技術に関する詳細は、科学文献及び特許文献で十分な説明がなされており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、マック出版社(Maack Publishing Co)、イーストン、ペンシルベニア州(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0096】
散剤において、担体は微細固体であり、微細な有効成分であるGRM又はSGRMとの混合物に含まれる。錠剤において、有効成分は必要な結合特性を有する担体と好適な比率で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0097】
散剤及び錠剤は、5%又は10%から70%の活性化合物を含有することが好ましい。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。用語「製剤」とは、有効成分を、他の担体を含んで又は含まずに、担体が取り囲むことで、担体が有効成分と結び付いた状態にあるカプセルが得られる、担体としての封入材を含んだ活性化合物の製剤を包含することが意図される。同様に、カシェ剤及び菓子錠剤も包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及び菓子錠剤は、経口投与に好適な固体剤形として用いることができる。
【0098】
好適な固体医薬品添加物は、炭水化物又はタンパク質の賦形剤であり、例えば以下が挙げられるが、これらに限定はされない:糖、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトール;トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモなどの植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシルメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;並びに、ガム、例えば、アラビアガム及びトラガントガム;並びに、タンパク質、例えば、ゼラチン及びコラーゲン。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの、崩壊剤又は溶解補助剤を加えてもよい。
【0099】
糖衣錠コアは、濃縮糖液などの好適なコーティングを備え、コーティングはアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー液、並びに好適な有機溶剤又は溶媒混合物を含有していてもよい。製品識別用に、又は活性化合物の含量(すなわち、用量)を示すために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠のコーティングに加えてもよい。本発明の医薬製剤は、例えば、プッシュフィット型ゼラチンカプセル、並びに軟密閉ゼラチンカプセル、及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティング、を用いて経口使用することもできる。プッシュフィット型カプセル剤には、ラクトース又はデンプンなどの賦形剤又は結合剤と、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と、所望により安定剤と混合した、GR調節物質を含有させることができる。軟カプセル剤では、GR調節化合物は、安定剤を含む又は含まない、脂肪油、流動パラフィン、又は液状ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解又は懸濁させてよい。
【0100】
液状製剤としては、水剤、懸濁剤、及び乳剤が挙げられ、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液などである。非経口注射の場合、液状製剤は、ポリエチレングリコール水溶液に溶解させて製剤化できる。
【0101】
経口使用において好適な水溶液は、有効成分を水に溶解し、所望により好適な着色剤、加香剤、安定剤、及び粘稠化剤を添加することで、作製することができる。経口使用に好適な水性懸濁剤は、微細有効成分を、以下を含んだ水に分散させることにより作製することができる:天然又は合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムなどの粘稠性物質、並びに、天然ホスファチド(例えば、レシチン)、酸化アルキレンと脂肪酸の縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)などの分散剤又は湿潤剤。水性懸濁液には、p-ヒドロキシ安息香酸エチル又はp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルなどの1又は複数の保存剤、1又は複数の着色料、1又は複数の香味剤、及びスクロース、アスパルテーム、又はサッカリンなどの1又は複数の甘味剤を含有させることもできる。製剤はモル浸透圧濃度を調整することができる。
【0102】
また、固形製剤も包含され、使用の直前に、経口投与用の液状製剤に変換されることが意図される。このような液体形態としては水剤、懸濁剤、及び乳剤が挙げられる。これらの製剤には、有効成分に加えて、着色剤、加香剤、安定剤、緩衝液、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤、溶解補助剤などを含有させてもよい。
【0103】
油懸濁剤は、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはヤシ油などの植物油、又は流動パラフィンなどのミネラルオイル、又はこれらの混合物中にSGRMを懸濁することにより、製剤化することができる。油懸濁剤には、蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコールなどの粘稠化剤を含有させることができる。口当たりの良い経口剤とするために甘味剤を加えることができ、例えばグリセロール、ソルビトール、又はスクロースなどである。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を加えることで保存することができる。注射用油状担体の例としては、Minto、J.Pharmacol.Exp.Ther.、281巻:頁93-102、1997年を参照されたい。本発明の医薬製剤は水中油型乳剤の形態とすることもできる。油性相は、上記の植物油若しくはミネラルオイル、又はこれらの混合物とすることができる。好適な乳化剤としては、アラビアゴム及びトラガカントゴムなどの天然ゴム、ダイズレシチンなどの天然ホスファチド、ソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル、並びに、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物が挙げられる。乳剤には、シロップ剤及びエリキシル剤を製剤する際のものとして、甘味剤及び香味剤を含有させることもできる。このような製剤には、粘滑剤、保存剤、又は着色剤を含有させることもできる。
【0104】
GRM及びSGRMは、経皮的に、局所経路によって、送達することができ、塗布用スティック、水剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、パスタ剤、ゼリー剤、塗布剤、散剤、及びエアゾール剤として製剤化することができる。
【0105】
GRM及びSGRMは、体内徐放用ミクロスフェアとして送達することもできる。例えば、ミクロスフェアは、皮下にゆっくりと放出する薬剤含有ミクロスフェアの皮内注射を介して(Rao、J.Biomater Sci.Polym.Ed.、7巻:頁623-645、1995年を参照);生分解性注射用ゲル製剤として(例えば、Gao Pharm.Res.、12巻:頁857-863、1995年を参照);又は、経口投与用ミクロスフェアとして(例えば、Eyles、J.Pharm.Pharmacol.、49巻:頁669-674、1997年を参照)、投与することができる。経皮経路及び皮内経路はともに、数週間あるいは数か月間に亘って一定の送達を可能にする。
【0106】
本発明の医薬製剤は、塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定はされない、多くの酸との形成が可能である。塩は、対応する遊離塩基形態である水性又は他のプロトン性溶媒中で、より可溶性となる傾向がある。他の場合では、製剤は、1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中、4.5~5.5の範囲のpHで、凍結乾燥粉末としてもよく、使用前に緩衝液と合わされる。
【0107】
別の実施形態では、本発明の製剤は、細胞膜と融合する、すなわちエンドサイトーシスを起こす、リポソームの使用により、すなわち、リポソームに結合させた、又は、エンドサイトーシスを引き起こす、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合するオリゴヌクレオチドに直接結合させた、リガンドを使用することにより、送達することができる。リポソームを用いることにより、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを担持している場合、又は別の方法で特定の臓器を優先的に対象とする場合、インビボにおけるGR調節物質の標的細胞への送達の集中が可能となる。(例えば、Al-Muhammed、J.Microencapsul.、13巻:頁293-306、1996年;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.、6巻:頁698-708、1995年;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.、46巻:頁1576-1587、1989年を参照)。
【0108】
医薬製剤は単位用量形態であることが好ましい。そのような形態では、製剤は、適切な量のGRM又はSGRMを有効成分として含有する単位用量に小分けされる。この単位用量形態は、パッケージ化された製剤とすることができ、パッケージは個別量の製剤を含有し、例えば、バイアル又はアンプル内でパッケージ化された錠剤、カプセル剤、及び散剤などである。また、この単位用量形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又は菓子錠剤そのものとすることもできるし、あるいは、これらのいずれかを適切な数だけパッケージ化した形態とすることもできる。
【0109】
単位用量製剤中の有効成分の量は、0.1mg~10000mgの範囲で変更又は調整することができ、より典型的なものとしては1.0mg~6000mg、最も典型的なものとしては50mg~500mgの範囲で変更又は調整することができる。また、好適な用量として、特定の用途や有効成分の効力に応じて、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、又は約2000mgが挙げられる。組成物には、必要であれば、他の適合性の治療薬を含有させることもできる。
【0110】
いくつかの場合で、有効量のGRM(例えば、レラコリラント)は、1~100mg/kg/日の一日量である。いくつかの実施形態において、GRMの一日量は、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mg/kg/日である。いくつかの場合において、GRMは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも13週間、少なくとも14週間、少なくとも15週間、少なくとも16週間、少なくとも17週間、少なくとも18週間、少なくとも19週間、少なくとも20週間、少なくとも25週間、少なくとも30週間、少なくとも35週間、少なくとも40週間、少なくとも45週間、少なくとも50週間、少なくとも55週間、少なくとも60週間、少なくとも65週間、少なくとも70週間、少なくとも75週間、又は少なくとも80週間投与される。
【0111】
患者が必要とし耐容性を示す投与量及び頻度に基づいて、製剤の単回投与又は複数回投与を施行することができる。製剤は、病的状態を効果的に治療するのに十分な量の活性薬剤を与えるものである必要がある。よって、1つの実施形態では、GRMの経口投与用の医薬製剤は、約0.01~約150mg/キログラム体重/日(mg/kg/日)の一日量である。いくつかの実施形態では、一日量は、約1.0~約100mg/kg/日、約5~約50mg/kg/日、約10~約30mg/kg/日、約10~約20mg/kg/日である。特に上記薬剤が、経口投与とは異なって、脳脊髄液(CSF)腔などの解剖学的に隔離された場所に、血流中に、体腔内に、又は臓器の内腔内に投与される場合、より少ない用量を用いることもできる。局所投与では、よりかなり高い用量を用いることができる。非経口投与用製剤を調製するための実際の方法は、公知であるか当業者には明らかなものであり、上記Remington’sなどの刊行物により詳細に説明されている。また、Nieman、「Receptor Mediated Antisteroid Action」、Agarwalら(編)、デ・グロイター社(De Gruyter)、ニューヨーク(1987年)も参照されたい。
【0112】
コルチゾール過剰を低減するためのGRM又はSGRMによる治療時間は、対象における状態の重症度、及び対象のGRMs又はSGRMに対する応答に応じて変更できる。いくつかの実施形態では、GRM及びSGRMは、約1週間~104週間(2年間)の期間、より典型的なものとしては約6週間~80週間の期間、最も典型的なものとしては約9週間~60週間の期間、投与できる。好適な投与期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~104週間が挙げられる。好適な投与期間として、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、24週間、25週間、30週間、32週間、35週間、40週間、45週間、48週間、50週間、52週間、55週間、60週間、64週間、65週間、68週間、70週間、72週間、75週間、80週間、85週間、88週間、90週間、95週間、96週間、100週間、及び104週間も挙げられる。通常、GRM又はSGRMの投与は臨床的に有意な低減又は改善が確認されるまで継続されるべきである。本発明によるGRM又はSGRMを用いた治療は、2年もの間、さらにはそれよりも長く、続いてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、GRM又はSGRMの投与は、連続的ではなく、1又は複数の中止期間と、その後に1又は複数の投与再開期間を置くことができる。好適な投与中止期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~100週間が挙げられる。好適な投与中止期間として、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、24週間、25週間、30週間、32週間、35週間、40週間、45週間、48週間、50週間、52週間、55週間、60週間、64週間、65週間、68週間、70週間、72週間、75週間、80週間、85週間、88週間、90週間、95週間、96週間、及び100週間も挙げられる。
【0114】
投与計画では、当該技術分野において周知の薬物動態学的パラメーター、すなわち、吸収速度、生物学的利用能、代謝、クリアランスなども考慮される(例えば、Hidalgo-Aragones(1996年)、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.、58巻:頁611~617;Groning(1996年)、Pharmazie、51巻:頁337~341;Fotherby(1996年)、Contraception、54巻:頁59~69;Johnson(1995年)、J.Pharm.Sci.、84巻:頁1144~1146;Rohatagi(1995年)、Pharmazie、50巻:頁610~613;Brophy(1983年)、Eur.J.Clin.Pharmacol.、24巻:頁103~108;上記の最新版のRemington’sを参照されたい)。現在の技術水準では、臨床医は、個々の患者、GR調節物質、及び治療される疾患又は状態のそれぞれに対し投与計画を決定することができる。
【0115】
SGRMは、グルココルチコイド受容体を調節する際に有用であることが知られている他の活性薬剤と、又は単独では有効でないが活性薬剤の効力に寄与し得る補助剤と、組み合わせて投与することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、同時投与は、第二の活性薬剤の0.5時間以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、16時間以内、20時間以内、又は24時間以内に、GRM又はSGRMという1種の活性薬剤を投与することを含む。同時投与は、2つの活性薬剤を、同時に、およそ同時に(例えば、互いに約1分間以内、約5分間以内、約10分間以内、約15分間以内、約20分間以内、又は約30分間以内)、又は任意の順番で順次に、投与することを含む。いくつかの実施形態では、同時投与は、配合剤によって、すなわち両方の活性薬剤を含む単一医薬組成物を調製することによって、達成できる。他の実施形態では、上記の活性薬剤は別々に製剤化できる。別の実施形態では、上記の活性薬剤及び/又は補助剤は互いに結合又は複合体化させてもよい。
【0117】
本発明のGR調節物質を含む医薬組成物は、許容できる担体に含ませて製剤化した後、適切な容器に入れて、指定の状態の治療用にラベルすることができる。GRM又はSGRMの投与において、このような標識には、例えば、投与の量、頻度、及び方法に関する指示が含まれるであろう。
【0118】
本発明の医薬組成物は、塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定はされない、多くの酸との形成が可能である。塩は、対応する遊離塩基形態である水性又は他のプロトン性溶媒中で、より可溶性となる傾向がある。他の場合では、製剤は、1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中、4.5~5.5の範囲のpHで、凍結乾燥粉末としてもよく、使用前に緩衝液と合わされる。
【0119】
別の実施形態では、本発明の組成物は、静脈内(IV)投与、又は体腔若しくは臓器の内腔への投与などの、非経口投与に有用である。投与用の製剤は、通常、本発明の組成物が薬剤的に許容できる担体に溶解された溶液を含むこととなる。許容できる担体及び溶媒の中で使用可能なものは、水及び等張食塩水であるリンゲル液である。加えて、無菌の不揮発性油が溶媒又は懸濁媒として従来より使用できる。この目的のために、あらゆる無菌不揮発性油を使用することができ、例えば合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドが挙げられる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸も同様に注射剤の製剤で使用できる。これらの溶液は無菌であり、望ましくない物質を通常含まない。これらの製剤は従来の周知の滅菌法で滅菌されてもよい。製剤には、生理的条件を近似させるために、薬剤的に許容できる補助剤を必要に応じて含有させてもよく、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどのpH調整剤、pH緩衝剤、毒性調整剤などである。これらの製剤中の本発明の組成物の濃度は大幅に変更することができ、主に液量、粘度、体重などに基づいて、選択された特定の投与様式及び患者の要求に従って、選択されることとなる。IV投与の場合、製剤は、無菌の注射用製剤とすることができ、例えば、無菌の注射用の水性又は油性の懸濁液などである。この懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、既知の技術に基づいて製剤化することができる。無菌注射用製剤は、1,3-ブタンジオール溶液などの、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の、無菌注射用の溶液又は懸濁液とすることもできる。
【0120】
I.併用療法
GRM又はSGRMと別の医薬品(小分子薬剤であってもよく、抗体若しくはペプチドなどの大分子であってもよく、免疫療法剤であってもよく、がん化学療法剤であってもよく、あるいはこのような薬剤及び化合物の組み合わせであってもよい)との様々な組み合わせを、患者の治療に用いてもよい。「併用療法」又は「組み合わせて」とは、治療薬同士が、同時に投与されなければならない、且つ/又は、一緒の送達用に製剤化されなければならないことを意味することを意図するものではないが、これらの送達法も本明細書に記載の範囲に含まれる。GRM又はSGRMと医薬品とは、同じ投与計画に従って投与することもできるし、あるいは異なる投与計画に従って投与することもできる。いくつかの実施形態において、GRM又はSGRMと医薬品とは、治療期間の全体又は一部の間に任意の順番で順次に投与される。いくつかの実施形態において、GRM又はSGRMと他の治療薬とは、同時又はおよそ同時に(例えば、互いに約1分以内、約5分以内、約10分以内、約15分以内、約20分以内、又は約30分以内)投与される。例えばGRM又はSGRMと他の治療薬との投与による、併用療法の非限定な例は以下の通りであり、GRM又はSGRMを「A」とし、治療計画(therapeutic regime)の一部として与えられる他の治療薬又は化合物を「B」とする:
【0121】
A/B/AB/A/BB/B/AA/A/BA/B/BB/A/AA/B/B/B B/A/B/B
【0122】
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A
B/B/A/A
【0123】
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A
A/A/B/A
【0124】
治療用の化合物又は薬剤の患者への投与は、そのような化合物を投与するための通常のプロトコルに従うものとし、もしあれば、治療の毒性が考慮される。記載された治療と組み合わせて、外科的処置を適用してもよい。
【0125】
本方法は、手術、放射線、標的療法、免疫療法、増殖因子阻害剤の使用、又は抗血管新生因子の使用などの、他の治療手段と組み合わせることができる。
【0126】
本明細書に記載された全ての特許、特許公報、及び特許出願は、個々の公報又は特許出願が参照により援用されると明確且つ個別に示された場合と同程度に、全体が参照により本明細書に援用されたものとする。
【実施例0127】
以下の実施例は例示のみを目的として提供され、限定を目的とするものではない。当業者であれば、変化又は変更しても本質的に同様の結果を得ることができる種々の重要でないパラメーターを容易に認識できる。
【0128】
実施例1.HEPG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
下記のプロトコルは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC、英国)におけるデキサメタゾンによるTATの誘導を測定するためのアッセイの記述である。HepG2細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清;2mM L-グルタミン、及び1%(v/v)NEAAを添加したMEME培地を用いて、37℃、5%/95%(v/v)CO2/空気の条件で培養する。次に、HepG2細胞を計数し、フェノールレッド非含有RPMI1640、10%(v/v)活性炭処理済みFBS、2mM L-グルタミン中で0.125×106細胞/mlの密度が得られるように調整し、96ウェル無菌組織培養用マイクロタイタープレートに、25,000細胞/ウェルとなるように200μlを播種し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。
【0129】
次に、増殖培地を除去し、アッセイ用培地(フェノールレッド非含有RPMI1640、2mM L-グルタミン+10μMフォルスコリン)と置換する。次に、100nMデキサメタゾン投与に対して、試験化合物のスクリーニング検査を行う。次に、化合物を、10mMストックから、100%(v/v)ジメチルスルホキシド(dimethylsupfoxide)でハーフログ(half log)段階希釈する。次に、8点ハーフログ希釈曲線を作成した後、アッセイ用培地で1:100希釈して10×最終アッセイ化合物濃度を得て、これにより、0.1%(v/v)ジメチルスルホキシド中10~0.003μMの範囲の最終アッセイ化合物濃度を得る。
【0130】
試験化合物を37℃、5/95(v/v)CO2/空気の条件で30分間、マイクロタイタープレート内で細胞とプレインキュベートした後、100nMデキサメタゾンを添加し、その後20時間かけて最適なTAT誘導を行う。
【0131】
次に、HepG2細胞を30μlのプロテアーゼ阻害剤カクテル含有細胞溶解緩衝液により4℃で15分間溶解させる。次に、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中5.4mMチロシンナトリウム塩、10.8mM αケトグルタル酸、及び0.06mMピリドキサール5’リン酸を含有する、155μlの基質混合物が添加され得る。37℃で2時間のインキュベーション後、15μlの10M水酸化カリウム水溶液の添加により反応が終了され得る。プレートは37℃でさらに30分間インキュベートされ得る。TAT活性産物がλ340nmの吸光度で測定され得る。
【0132】
IC50値は、化合物濃度に対して阻害率(100nMデキサメタゾンTAT刺激に対して正規化)をプロットし、4パラメーターロジスティック方程式に対してデータをフィッティングすることにより、算出できる。IC50値はチェン-プルソフ式を用いてKi(平衡解離定数)に変換でき、当該アンタゴニストはデキサメタゾンに対して競合的阻害剤であると仮定される。
【0133】
実施例2.レラコリラントに対する臨床応答
健常対象におけるレラコリラントに対する応答
ヒトボランティアにおけるレラコリラントの試験では、毎日投与によって、7日目までに定常状態レベルが達成されることが示されている。5mg~500mgのレラコリラントの単回投与はヒト対象では耐容性良好であり、50mg、150mg、及び250mgの用量の14日間のレラコリラント投与も同様である。一部の対象で、最高250mgの反復投与により軽度から中等度の筋骨格AEが報告された。一部の対象で、一過性の血小板数減少が非用量依存的に確認されたが、これは試験終了により回復した。さらに、一部の対象には500mgのレラコリラントを投与した。一部の対象で、(重大でない)筋骨格有害事象が報告された。
【0134】
実施例3.レラコリラントに対する臨床応答
クッシング症候群患者におけるレラコリラントに対する応答
レラコリラントの投与(又は自己投与)を、男性及び女性の絶食クッシング症候群患者(n=35)に対し(複数のカプセル剤にそれぞれ50mgのレラコリラントを含有させて)、経口的に、1日1回(朝、投与前4時間と投与後1時間は食事なし)実施した。これらの患者は、内因性クッシング症候群及び以下のうち少なくとも1つの確定診断を有する患者であった:a)2型糖尿病又は耐糖能障害、及びb)コントロール不良又は未治療の高血圧症。いずれの試験関連手順への参加前にも、全ての患者からインフォームドコンセントを得た。
【0135】
患者に、レラコリラントの毎日投与を、初回量で4週間実施し、その後、耐容性を示す限り一日量を4週間毎に50mgずつ増加させた。最初の17人の組入れ患者(第1群、「低用量コホート」、LD)には、100mgレラコリラント/日を4週間、その後150mgレラコリラント/日を4週間、その後200mgレラコリラント/日を4週間(計12週間)、投与した。次の18人の患者(第2群、「高用量コホート」、HD)は、250mgレラコリラント/日から開始し、これを4週間後に300mgレラコリラント/日に増加し、300mg/日を4週間実施した後に350mgレラコリラント/日に増加し、最終的に、耐容性を示す場合、350mg/日を4週間実施した後、最後の4週間は一日量を400mgレラコリラント/日に増加した。(計16週間)。
【0136】
試験プロトコルでは、第1群については、スクリーニングにおいて、1日目(ベースライン)、第2週目、第4週目、第6週目、第8週目、第10週目、及び第12週目、並びに4週間の追跡調査期間後に、患者の試験会場への来院を求めた。第2群については、プロトコルでは、スクリーニングにおいて、1日目(ベースライン)、第2週目、第4週目、第6週目、第8週目、第10週目、第12週目、第14週目、及び第16週目、並びに4週間の追跡調査期間後に、患者の試験会場への来院を求めた。患者の投与は、試験来院日以外は自宅で実施されるものとする。
【0137】
試験中の患者のモニタリングは、レラコリラント及びその代謝産物の血中レベルのモニタリングを含み、測定は、第2週目、第6週目、及び第10週目の投与前、並びに投与の1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、及び8時間後、並びに、第4週目、第8週目、及び第12週目は投与前のみ/早期中止(ET)、実施した(第1群の患者の場合)。第2群の患者の場合は、レラコリラント及びその代謝産物の血中レベルの測定は、第2週目、第6週目、第10週目、及び第14週目の投与前、並びに投与の1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、及び8時間後、並びに、第4週目、第8週目、第12週目、及び第16週目は投与前のみ/早期中止(ET)、実施した。安全性プロトコルには、理学的検査所見、生命徴候、ECG結果、妊娠検査、臨床検査結果(血液学的及び化学的パネル)、有害事象(AE)、及び併用薬による評価も含まれた。安全性及び薬物動態(PK)のデータを精査することにより、投与された用量レベルの妥当性を確認し、高用量に増加後(すなわち、200mg/日への用量増加の2週間後)、並びに最も高いレラコリラント用量に達した6人の患者において定常状態PKデータが入手可能な場合(例えば、350mgレラコリラント一日量の第10週目、及び400mgレラコリラント一日量の第14週目)、並びに試験終了時、が含まれる。
【0138】
高血糖症に対する応答基準は、耐糖性におけるベースラインからの変化とし、HbA1cにおける0.5%以上の減少、2時間OGTTグルコースにおける正常化若しくは50mg/dL以上の減少、又はインスリン(25%以上)若しくはスルホニルウレア(50%以上)の総一日量の減少によって判定した。高血圧症(HTN)に対する応答基準は、平均収縮期血圧及び/又は平均拡張期血圧(SBP/DBP)における5mmHg以上の減少とした。
【0139】
この試験では、高用量コホート(第2群)に関しては、50%の高血糖症患者が、(i)HbA1cの0.5%以上の減少、又は(ii)2時間oGTTグルコースの正常化若しくは少なくとも50mg/dLの減少、又は(iii)抗糖尿病薬の25%の減少によって示される、グルコース調節の改善を達成した。64%のコントロール不良高血圧症患者が、24時間携帯式モニタリングで測定された場合に、収縮期血圧又は拡張期血圧の5ミリメータ以上の低下を達成した。高用量群の患者は、過凝固障害(hypercoagulopathy)、肝機能、血清オステオカルシン(骨形成のマーカー)、認知機能、うつ病、及び生活の質における統計的に有意な改善を含む、幅広い副次評価項目も満たした。
【0140】
少なくとも一部の患者で注目された治療的改善としては、以下が挙げられる:過凝固障害の改善及び塞栓症のリスク減少を示す血液凝固度における改善;他の血液指標(例えば、血小板数など)における改善;心機能及び心拍リズムの指標における改善(例えば、心機能の異常の改善、左室肥大の指標における改善;肝機能の尺度における改善;免疫系の機能及び状態の尺度における改善;骨の健康の程度における改善;患者の生活の質における改善;患者の心理的(pyschological)幸福度における改善(例えば、うつ病の緩和);並びに、メタボリックシンドローム、前糖尿病、又は糖尿病の改善又はリスク低下を示す、患者のグルコースレベルにおける改善。
【0141】
これら及びさらなる結果を表1に示す。
【0142】
レラコリラントはこれらの患者によって良好な耐容性を示された。レラコリラントがプロゲステロン受容体親和性を有するというエビデンスはなく;患者のいずれも低カリウム血症を呈さなかった。薬剤関連の重篤有害事象もなかった。
【0143】
図1は、レラコリラント投与によってもたらされた、グルコース調節における改善を示している。高用量コホートの50%の高血糖症患者がグルコース調節の改善を達成した(
図1参照)。高血圧症患者における奏功率は64%であった(
図2参照)。これらの奏功率は、第16週目の患者及びKorlymのピボタル試験(例えば、Fleseriuら、J.Clin.Endocrinol.Metab.、97巻(6号):頁2039-2049(2012年);Fleseriuら、J Clin Endocrinol Metab、99巻(10号):頁3718-3727(2014年))における1200mgの用量によって示された奏功率と同等である。
【0144】
試験の臨床結果を表1に示す。結果は、修正治療意図集団(mITT)及び修正プロトコル集団(修正パープロトコル:mPP)について報告されたものであり;治療意図(ITT)解析には、無作為な治療割り当てに従って無作為化された全対象が含まれる。不遵守、プロトコル逸脱、中止、及び無作為化後に生じるいかなるものも無視している。対照的に、パープロトコル(PP)解析は、プロトコルを厳密に遵守した患者のみを解析に含んでいることを指す。PP解析によって、介入治療の真の効力の評価、すなわち、計画された通りの治療を完了した患者での効力の評価が得られる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0145】
これらの結果は、高血糖症患者におけるAUCグルコースの統計的に有意な減少を示している。奏功率は、それぞれ第12週目及び第16週目までで、LD群では15.4%、HD群では50%であった。高血圧症の場合の奏功率は、それぞれ第12週目及び第16週目までで、LD群では41.7%、HD群では63.6%であった。これらの主要評価項目に加え、過凝固障害、肝機能、インスリン感受性、認知機能、うつ病、及びクッシング病生活の質(QoL)スコアにおける改善を含む、コルチゾール過剰に関連した種々の副次評価項目においても有意な変化が見られた。多くの患者で、いくらかの体重減少が確認された。最もよく見られた治療により発現した有害事象(TEAE)は、背痛、浮腫、頭痛、及び悪心であった。5つの重大なTEAEが4人の患者で報告された。これらの重大なTEAEは全て、HD群から生じ、慢性的なコルチゾール過剰により抑制されていた慢性状態の発露が主に関連している。本試験では薬剤性低カリウム血症も腟出血も確認されなかった。
【0146】
これらの結果は、クッシング症候群患者における過剰なコルチゾールの作用の多くを低減する際にレラコリラントが有用であることを示している。すなわち、レラコリラント治療はクッシング症候群の治療に有用であると考えられる。加えて、レラコリラントは脂肪性肝疾患の治療にも有用であると考えられる(例えば、表1のALT、AST、HOMA、及び他の尺度を参照)。さらに、レラコリラントは骨障害の治療にも有用であると考えられる(例えば、表1の血清オステオカルシン尺度を参照)。レラコリラントはさらに、左室肥大、不整脈、及び他の形態の心疾患を含む心臓病の治療にも有用であると考えられる(例えば、表1のQTなどの心臓尺度を参照)。加えて、レラコリラントは血液凝固障害、うつ病の治療、及び患者の生活の質の改善にも有用であると考えられる。レラコリラントは、例えばチェックポイント阻害剤などの免疫療法剤との組み合わせにおいて有用である場合があり、診断検査においても同様に有用である場合がある。
【0147】
これらの結果から、最高400mg/日の用量のレラコリラントが、高血糖症及び高血圧症における臨床的改善を示し、また、コルチゾール過剰に関連した他の評価項目においても改善を示したことが、示された。レラコリラントは総じて良好な耐容性を示した。すなわち、レラコリラントは、抗プロゲステロン性又は抗ミネラルコルチコイド性(コルチゾール増加による)を介した望ましくない効果無しに、強力なグルココルチコイド調節という臨床的利点をもたらす。
【0148】
GR拮抗作用はクッシング症候群に対する臨床的に確証された治療である
クッシング症候群患者におけるレラコリラントを用いた最初の試験(CORT125134-451;NCT02804750)では、米国、イタリア、英国、ハンガリー、及びオランダの19か所のセンターで計35人の患者が組入れられた。
【0149】
28人の患者(80%)が副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)依存的な原因によるクッシング症候群(下垂体性又は異所性)を有し、7人の患者(20%)が副腎を原因とするクッシング症候群源を有した。クッシング症候群における上記薬剤の効力を、例えば高血糖症、高血圧症、認知機能障害、うつ病、生活の質不良、過凝固障害、及び肥満症などの、過剰なコルチゾール活性に伴う病的状態の改善に基づいて、評価した。(過剰なコルチゾールに伴う病的状態、例えば、高コルチゾール血症、クッシング症候群、クッシング病などに伴う病的状態は、「合併症」とも称される)
【0150】
予想された用量効果と一致して、最高200mgの用量で治療された高血糖症患者の2/13人(15.4%)、及び最高400mgの用量で治療された高血糖症患者の半数(6/12)が、血糖(glyacemic)改善の強固なエビデンスを示した。応答は、糖尿病薬物治療の減少若しくは中断に伴う0.5%以上のHbA1c減少、又は経口糖負荷試験(OGTT)から得られた2時間グルコース測定値の臨床的に有意な減少(50mg/dL以上の減少)若しくは正常化に基づくものであった。コントロール不良高血圧症患者のうち、一日に最高200mgの用量を投与された患者の5/12人(41.7%)、及び一日に最高400mgの用量を投与された患者の7/11人(63.6%)が、24時間携帯式血圧モニタリングで測定された24時間平均収縮期血圧及び拡張期血圧において、臨床的に有意な改善(5mmHg以上の減少)を示した。これらの患者は夜間血圧及び昼間血圧にいても臨床的に有意な改善を示した。この臨床的改善は、ミフェプリストン又はメチラポンで治療された患者においてよく見られる有害事象である薬剤性低カリウム血症を発症することなく、確認された。また、予想の通り、レラコリラント治療を受けた患者は、ミフェプリストンに優るさらなる利点として、プロゲステロン受容体拮抗作用の有害作用も示さなかった。
【0151】
レラコリラントの治療量達成の2週間以内に通常確認される、高血糖症及び高血圧症における改善に加えて、下記の表2に示されるような、いくつかの他のコルチゾール関連合併症においても有意な改善が確認された。
【表2】
【0152】
GRアンタゴニストによる治療時間が長くなるほどより大きな体重減少が通常確認されるものであるが、有意な体重変化はレラコリラント試験の患者の半数において3か月以内に確認され、平均体重減少は、一日最高200mgの用量で治療された患者においては2.2kgであり、一日最高400mgの用量で治療された患者においては5.1kgであった。
【0153】
過剰なコルチゾール活性を原因とする凝固因子の異常増加の改善/正常化が、レラコリラント治療の早くも1か月後には確認された。これは、凝固因子が手術の3か月後から減少し始め、術後少なくとも6か月間は上昇したままである場合が多い、下垂体性クッシング症候群症例の治癒手術後の所見とは対照的である(Trementinoら、(Neuroendocrinology)、92巻、補遺集1:頁55-59(2010年)。治癒手術後の高活性クッシング症候群患者において血栓事象のリスクが高いことを考慮すると、レラコリラントは、術中及び術後の血栓事象リスクが高い患者の術前凝固制御の選択肢にさえなり得る。
【0154】
副腎性クッシング症候群患者では、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の抑制の回復が、症例の半数で、慢性的なメチラポン治療を以前に受けていた重度のクッシング症候群患者においてでさえ、確認された。ACTH分泌の回復及び場合によってはコルチゾール概日リズムの回復に基づいた、HPA軸の回復が、レラコリラント治療の2~6週間以内に確認された。これは重要な発見であり、この強調には少なくとも2つの理由がある。A)コルチゾール過剰を呈する患者においてレラコリラントの有益な作用を迅速に示す。治癒手術後のHPA軸の回復には、典型的には数か月間かかり、数年かかる場合もある。B)甲状腺機能亢進症患者における甲状腺刺激ホルモン(TSH)や原発性アルドステロン症患者における血漿レニン活性と同様に、投与量設定のためのマーカーとなる。
【0155】
また、内因性クッシング症候群患者におけるレラコリラントの安全性プロファイルも、ミフェプリストンで確認されたものよりも有意に良好なものであった。プロゲステロン受容体拮抗作用に関連したミフェプリストンの有害事象と異なり、レラコリラント試験では薬剤性腟出血の症例は確認されず、以前にミフェプリストン服薬中に腟出血を認めた患者の間でさえ確認されなかった。同様に重要なこととして、どの患者も、ミフェプリストン服薬中に低カリウム血症を発症したことがある患者でさえ、薬剤性低カリウム血症を発症しなかった。最もよく見られた治療により発現した有害事象(TEAE)は、背痛、浮腫、頭痛、及び悪心であった。
【0156】
レラコリラントを用いた第2相CORT125134-451試験では、他の承認済み医学療法による治療を受けていた5人の患者が、自身の薬物治療を漸減・中止し、本試験に組入れられた。これらの患者は、上記の他の療法に対して、部分的にしか応答しないか、あるいは有害事象を呈した。2人の患者はメチラポン治療を受けたことがあり、2人の患者はケトコナゾール治療を受けたことがあり、1人の患者はミフェプリストン治療を受けたことがあった。以前にメチラポン治療を受けた患者の両方で、グルコース調節及び高血圧症の改善という主要評価項目、並びに体重減少及びHPA軸の回復を含む副次評価項目における改善に基づいて、レラコリラントはより高い効力を示した。以前にミフェプリストン治療を受けた患者は子宮内膜肥厚を呈していたが、レラコリラント治療中に完全に解消した。
【0157】
レラコリラントは、選択的GRアンタゴニストとなり、且つ他の核内ステロイドホルモン受容体には結合しないように合理的に設計された。レラコリラントのGR選択性、及び特にプロゲステロン受容体に対する結合性の欠如は、ミフェプリストンに優る有意な安全性という利点をもたらす。レラコリラントを用いた場合、現在まで、ミフェプリストンで報告された2つのよく見られるTEAS(腟出血又は低カリウム血症)は報告されていない。
【0158】
理解を明確にするため、説明及び例示として、上記に本発明を多少詳細に記述したが、本発明の教示に照らし合わせて、添付の特許請求の範囲の要旨から逸脱しない範囲で、特定の変形及び変更を行うことができることは、当業者には容易に理解されよう。
前記その症状又は合併症が高血糖症であり、前記治療が、前記高血糖症を、(i)患者のベースライン2時間経口糖負荷試験(OGTT)グルコースと比較した場合に、患者の2時間OGTTグルコースを少なくとも50mg/dL減少させること、(ii)治療前の患者の総一日量のインスリン量と比較した場合に、患者の総一日量のインスリン量を少なくとも25%減少させること、又は、(iii)治療前の患者の総一日量のスルホニルウレア量と比較した場合に、患者の総一日量のスルホニルウレア量を少なくとも50%減少させること、のうちの1又は複数によって治療するのに有効である、請求項1に記載の組成物。
前記その症状又は合併症が高血糖症であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインHbA1cと比較した場合に、患者のヘモグロビンA1c(HbA1c)を少なくとも0.5%低下させるのに有効である、請求項1に記載の組成物。
前記その症状又は合併症が高血圧症であり、前記治療が、治療前に測定された患者のベースライン血圧と比較した場合に、患者の24時間平均収縮期血圧又は24時間平均拡張期血圧を少なくとも5水銀柱ミリメートル(mmHg)低下させるのに有効である、請求項1に記載の組成物。
前記その症状又は合併症がクッシング症候群患者における生活の質(QOL)の不良であって、前記治療が、治療前に測定された患者のベースラインのクッシング病QOLスコアと比較して、患者のクッシング症候群QOLスコアを少なくとも6.9上昇させて、患者の生活の質を改善させるのに有効である、請求項1に記載の組成物。
前記その症状又は合併症がクッシング症候群患者における認知障害であり、前記治療が、トレイルメイキング認知テストによって測定される患者の認知を、治療前に前記認知テストによって測定された患者のベースラインの認知と比較した場合に、トレイルメイキング認知テストパートA完了までの総時間の少なくとも4.1秒の低減によって評価される、又はトレイルメイキング認知テストパートB完了までの総時間の少なくとも24.7秒の低減によって評価される、患者の認知の改善に有効である、請求項1に記載の組成物。
前記その症状又は合併症が、抑制された視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸であって、前記治療がHPA軸を回復させるのに有効であり、前記HPA軸の回復が、患者のACTH分泌の回復又は患者におけるコルチゾール概日リズムの回復若しくは両方に基づく、請求項1に記載の組成物。
前記その症状又は合併症がベックうつ病質問票IIの合計スコア(BDI-II合計スコア)で評価されるうつ病であり、治療前に測定された患者のベースラインのBDI-II合計スコアと比較して、患者のBDI-II合計スコアを少なくとも4.2低減させるのに有効である、請求項1に記載の組成物。
前記組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、又は少なくとも20週間、毎日投与される、請求項1に記載の組成物。