(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099522
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】被験者のグルコース変化を判定するための方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20240718BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024051853
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2022500661の分割
【原出願日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】62/871,931
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】エル・ファティ,アナス
(72)【発明者】
【氏名】ハイダル,アーマド
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被験者のグルコース変化を判定するコンピュータ実装方法及びシステムを提供する。
【解決手段】方法は、被験者の実際のグルコース測定値を受信することと、過去の被験者モデルパラメータを受信することと、実際のグルコース測定値及び過去の被験者モデルパラメータに基づいて、被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを推定することと、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータを、被験者モデルパラメータおよび被験者の以前の状態に基づいてカルマンフィルタを使用して判定することと、テスト統計を、判定したイノベーションパラメータ及びイノベーション共分散パラメータに基づいて計算することと、計算したテスト統計を所与の閾値と比較し、計算したテスト統計が所与の閾値を超えていることに応答して、グルコース変化の指標が出力することと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者におけるグルコース変化を判定するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法が、電子デバイスによって実行可能であり、前記方法が、
前記被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを受信することと、
カルマンフィルタを使用して、前記被験者モデルパラメータおよび前記被験者の以前の状態に基づいて、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータを判定することと、
前記判定されたイノベーションパラメータおよび前記イノベーション共分散パラメータに基づいて、テスト統計を計算することと、
前記計算されたテスト統計を所与の閾値と比較することと、
前記計算されたテスト統計が前記所与の閾値を超えていることに応答して、前記グルコース変化の指標を出力することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記被験者モデルパラメータを受信することに先立って、
前記電子デバイスによって、前記被験者の実際のグルコース測定値を受信することと、
過去の被験者モデルパラメータを受信することと、をさらに含み、
前記被験者の状態ベースのモデルの前記被験者モデルパラメータを受信することが、前記実際のグルコース測定値、および前記過去の被験者モデルパラメータに基づいて、前記被験者モデルパラメータを推定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記指標を、前記電子デバイスのディスプレイインターフェースおよび前記被験者の人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに送信することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記所与の閾値を超える前記テスト統計が、前記カルマンフィルタが矛盾していることを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記被験者モデルパラメータを推定することが、最大事後確率(MAP)推定を使用することを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被験者モデルパラメータを推定することが、以前のグルコース測定値、以前のインスリン測定値、および以前に消費された食事にさらに基づく、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記所与の閾値を超える前記テスト統計が、前記イノベーションパラメータが独立しておらず、前記イノベーションパラメータの前記共分散に対応する共分散を有するゼロ平均ガウス分布と同様に分布していないことを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記グルコース変化が、不明な食事を示し、前記不明な食事が、前記被験者によって記録されていない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所与の閾値が、所定の数の偽陽性に基づく、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記過去の被験者モデルパラメータを受信することに先立って、
前記過去の被験者モデルパラメータを、前記被験者の1日の総投与量、基礎インスリン、および炭水化物比に基づいて、初期化することさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記実際のグルコース測定値が、前記電子デバイスに接続されたグルコースセンサから受信される、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電子デバイスの前記ディスプレイインターフェースおよび前記被験者の前記人工膵臓システムのうちの前記少なくとも1つに前記指標を送信することに先立って、
残りの食事、患者の炭水化物比、および血糖値に基づいて、前記所与のユーザによって記録されていない前記不明な食事のインスリンボーラスを判定することをさらに含み、
前記指標を送信することが、前記インスリンボーラスを送信することを含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記インスリンボーラスを判定することに先立って、
前記イノベーションパラメータおよび前記イノベーション共分散パラメータに基づいて、不明な食事量と不明な食事時間を判定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記計算されたテスト統計が、前記イノベーション共分散パラメータによって重み付けされた前記不明な食事量および前記不明な食事時間に基づく、前記イノベーションパラメータとグルコース変化との間の相関の累積合計を表す、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記所与の閾値が、ゼロ平均ガウス分布および前記イノベーション共分散パラメータによって重み付けされた最も可能性の高い食事量および食事時間による最も可能性の高いグルコースの増加の二乗に比例する共分散を有する確率変数の所与の偽陽性率に基づいて判定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者によって消費された食事を検出するためのコンピュータ実装の方法であって、前記方法が、プロセッサによって実行され、前記方法が、
実際のグルコース測定値と予測グルコース測定値との間の不一致を判定することと、
前記判定された不一致に少なくとも部分的に基づいて、食事が消費された確率を判定することと、
前記判定された確率に応答して、投薬ボーラスを判定することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記食事が消費された確率を判定することが、少なくとも部分的に、実際の血糖値、目標血糖値、および残存インスリンに基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
食事のサイズおよび前記食事の消費時間を推定することをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記投薬ボーラスを判定することが、少なくとも部分的に、前記推定される食事のサイズおよび前記推定される食事の消費時間のうちの少なくとも1つに基づく、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記食事が消費されたと判定することが、前記判定された確率が閾値を超えたことに応答する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
被験者におけるグルコース変化を判定するためのシステムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに動作可能に接続された非一時的記憶媒体であって、コンピュータ可読命令を含む記憶媒体と、を備え、
前記プロセッサが、前記コンピュータで可読命令を実行すると、
前記被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを受信することと、
カルマンフィルタを使用して、前記被験者モデルパラメータおよび前記被験者の以前の状態に基づいて、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータを判定することと、
前記判定されたイノベーションパラメータおよび前記イノベーション共分散パラメータに基づいて、テスト統計を計算することと、
前記計算されたテスト統計を所与の閾値と比較することと、
前記計算されたテスト統計が前記所与の閾値を超えていることに応答して、グルコース変化の指標を出力することと、を行うように構成されている、システム。
【請求項22】
前記プロセッサが、前記被験者モデルパラメータを受信することに先立って、
前記被験者の実際のグルコース測定値を受信することと、
過去の被験者モデルパラメータを受信することと、を行うようにさらに構成され、
前記被験者の状態ベースのモデルの前記被験者モデルパラメータを受信することが、前記実際のグルコース測定値、および前記過去の被験者モデルパラメータに基づいて前記被験者モデルパラメータを推定することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサが、前記プロセッサに動作可能に接続されたディスプレイインターフェース、および前記被験者の人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに前記指標を送信するようにさらに構成されている、請求項21または22に記載のシステム。
【請求項24】
前記所与の閾値を超える前記テスト統計が、前記カルマンフィルタが矛盾していることを示す、請求項21~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記被験者モデルパラメータを推定することが、最大事後確率(MAP)推定を使用することを含む、請求項22~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記推定することが、以前のグルコース測定値、以前のインスリン測定値、および以前に消費された食事にさらに基づく、請求項22~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記所与の閾値を超える前記テスト統計が、前記イノベーションパラメータが独立しておらず、前記イノベーションパラメータの前記共分散に対応する共分散を有するゼロ平均ガウス分布と同様に分布していないことを示す、請求項21~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記グルコース変化が、不明な食事を示し、前記不明な食事が、前記被験者によって記録されていない、請求項21~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記所与の閾値が、所定の数の偽陽性に基づく、請求項21~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記プロセッサが、前記過去の被験者モデルパラメータを受信することに先立って、
前記過去の被験者モデルパラメータを、前記被験者の1日の総投与量、基礎インスリン、および炭水化物比に基づいて初期化することを行うようにさらに構成されている、請求項21~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記実際のグルコース測定値が、前記プロセッサに接続されたグルコースセンサから受信される、請求項22~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記プロセッサが、前記プロセッサに動作可能に接続された前記ディスプレイインターフェースおよび前記被験者の前記人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに前記指標を送信することに先立って、
残りの食事、患者の炭水化物比、および血糖値に基づいて、前記所与のユーザによって記録されていない前記不明な食事のインスリンボーラスを判定することを行うようにさらに構成され、
前記指標を送信することが、前記インスリンボーラスを送信することを含む、請求項28~31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記プロセッサが、前記インスリンボーラスを判定することに先立って、
前記イノベーションパラメータおよび前記イノベーション共分散パラメータに基づいて、不明な食事量および不明な食事時間を判定するようにさらに構成されている、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記テスト統計が、前記イノベーション共分散パラメータによって重み付けされた前記不明な食事量および前記不明な食事時間に基づく、前記イノベーションパラメータとグルコース変化との間の相関の累積合計を表す、請求項28~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記所与の閾値が、ゼロ平均ガウス分布および前記イノベーション共分散パラメータによって重み付けされた最も可能性の高い食事量および食事時間による最も可能性の高いグルコースの増加の二乗に比例する共分散を有する確率変数の所与の偽陽性率に基づいて判定される、請求項34に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月9日に出願された米国仮特許出願第62/871,931号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、薬物モニタリングシステムに関連し、より具体的には、糖尿病の被験者のグルコース変化が異常であるか、または問題を示すかどうか、例えば、人工膵臓システムの被験者によって消費された食事が記録されていないかどうかを判定するための方法およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0003】
健康な個人では、血漿グルコース濃度は、内分泌膵臓から分泌されるホルモン、主にインスリンとグルカゴンの作用によって厳密に調節されている。インスリンは膵臓ベータ細胞から分泌されて臓器にグルコースを吸収するように信号伝達し、グルカゴンは膵臓アルファ細胞から分泌されて肝臓にグルコースを生成するように信号伝達する。1型糖尿病では、ベータ細胞の自己免疫破壊によりインスリン分泌が失われる。
【0004】
1型糖尿病は、現在、頻回注射療法(MDI)を使用して実施される生涯にわたるインスリン補充療法、またはポータブルポンプを介した継続的な皮下(皮膚組織下)インスリン注入(CSII)によって治療されている。両治療法とも、健康な個人に見られる生理学的血漿インスリン分泌を模倣することを目的とした基礎-ボーラスインスリン注射パターンに従う。基礎インスリンは、空腹状態で一定の血糖値を維持するのに必要なインスリンを表し、インスリンボーラスは、消費された食事から予想されるグルコースの増加をカバーするために通常与えられるインスリンの用量である。
【0005】
厳格なグルコースコントロールは1型糖尿病患者にとって重要である。血糖値の持続的な上昇(高血糖)は、心臓病、失明、腎不全、下肢切断などの長期的な合併症を引き起こす。非重度の低血糖症は、不安、吐き気、錯乱、視界のぼやけ、発話困難などにつながることがあり、一方、重度の低血糖症は、昏睡または発作を引き起こし、支援を必要とするため、低血糖値(低血糖症)は、血糖コントロールの制限要因である。1型糖尿病のほとんどの患者には、7.0%未満のHbA1c(3か月間の平均血糖値と相関するバイオマーカ)の目標が推奨される。
【0006】
インスリンアナログ、インスリンポンプ、および連続グルコースセンサの進歩にもかかわらず、ほとんどの患者は許容可能なグルコース目標を達成していない。グルコースセンサの進歩により、1型糖尿病患者の血糖値を自動的に調節する閉ループインスリン送達システムである人工膵臓(AP)の開発が促進された。人工膵臓では、コントロール手順は、継続的なグルコースセンサの読み取り値に基づいてポンプインスリン注入速度を調整する。人工膵臓システムは、1型糖尿病の最も有望な治療法と考えられている。完全に自動化された閉ループインスリン送達システムの試みが調査されたが、最も普及している人工膵臓システムは、食事を伴うインスリンボーラスを提供するためのユーザプロンプトに依然として依存している。
【0007】
従来のインスリン療法では、青年期のグルコースコントロール不良の主な要因は、食事時のインスリンボーラス送達の省略である。青年の65%において、週に1回以上、食事時のボーラスの不履行が観察され、これは、週に1回未満のボーラスの不履行があった青年と比較して、かなり高いHbA1cに関連付けられた(それぞれ8.8%と8.0%)。別の研究では、青年の3分の1以上が、必要なボーラスの15%以上が不履行であったことが観察された。従来のインスリン療法と同様に、閉ループ(CL)インスリン送達のパフォーマンスも、ボーラスの不履行後に影響を受けることがある。不明な食事を検出する食事検出モジュールを人工膵臓システムに追加し、より多くのインスリンの注入を信号伝達すると、人工膵臓のパフォーマンスが向上し得る。
【0008】
人工膵臓システムでは、不明な食事が消費されると、閉ループフィードバックメカニズムが、ポンプのインスリン基礎速度を変更することによって血糖値の変化に反応する。一般に、食事からのグルコースの増加をカバーするためにかなりの量のインスリンが必要であり、場合によっては患者の1日の総インスリン投与量の最大20%が必要である。その結果、インスリンボーラスを送達しないと、人工膵臓は必要な量のインスリンを短期間で提供することができない。したがって、望ましくない高血糖値を伴う高血糖の事象は避けられなくなる。さらに、グルコースがさらに増加するのを防ぐために大量のインスリンを注入することによってフィードバックが積極的に反応する場合、インスリン送達の吸収が遅いために食後、遅れて低血糖が発生することがある(送達されたインスリンは食事の吸収を超えて作用し続けるため)。ボーラスの不履行後の高血糖症と低血糖症を軽減するには、明確な戦略が必要である。
【発明の概要】
【0009】
先行技術に存在する不便の少なくともいくつかを改善することが本技術の目的である。本技術の1つ以上の実施形態は、本技術の目的および目的を達成するためのアプローチおよび/または方法の範囲を提供および/または拡大することができる。
【0010】
本技術の1つ以上の実施形態は、食事のボーラス不履行後、グルコースコントロールが著しく低下するという本発明者らの評価に基づいて開発された。コントロールアルゴリズムが食事検出技術で強化された場合、ボーラスの不履行後の閉ループ送達システムのパフォーマンスを改善することができる。
【0011】
発明者らは、(ボーラスが送達されなかった)食事を自動的に検出し、糖尿病の被験者に通知することで、糖尿病ユーザの生活の質および健康を改善できることを評価している。1つの非限定的な例では、システムは、ユーザに通知することができ、ユーザは、忘れられたインスリンを自分自身に送達するなどの行動を取ることができる。別の非限定的な例では、従来のポンプ療法または頻回注射療法のユーザは、食事を摂ってボーラスを提供することを忘れた場合に思い出すことができる。
【0012】
このようなシステムは、注入セットの故障や食事を抜くなどのような、グルコース値を上昇させる障害を検出するために使用できる。
【0013】
発明者らはまた、そのような技術をオンラインまたはオフラインで使用して、データを分析およびモデル化し、アルゴリズムの性能を検証し、非限定的な例として、予告なしの食事および低血糖治療を特定できることも評価している。
【0014】
したがって、本技術の1つ以上の実施形態は、被験者におけるグルコース変化を検出するための方法およびシステムを目的としている。
【0015】
本技術の広範な態様によれば、被験者におけるグルコース変化を判定するためのコンピュータ実装の方法が提供され、この方法は、電子デバイスによって実行可能である。この方法は、被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを受信することと、被験者モデルパラメータおよび被験者の以前の状態に基づいて、カルマンフィルタを使用して、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータを判定することと、判定されたイノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータに基づくテスト統計を計算することと、計算されたテスト統計を所与の閾値と比較することと、計算されたテスト統計が所与の閾値を超えることに応答して、グルコース変化の指標を出力することと、を含む。
【0016】
この方法の1つ以上の実施形態では、この方法は、前述の、被験者モデルパラメータを受信することに先立って、電子デバイスによって、被験者の実際のグルコース測定値を受信することと、過去の被験者モデルパラメータを受信することと、をさらに含み、前述の、被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを受信することは、実際のグルコース測定値、および過去の被験者モデルパラメータに基づいて被験者モデルパラメータを推定することを含む。
【0017】
この方法の1つ以上の実施形態では、この方法は、指標を、電子デバイスのディスプレイインターフェースおよび被験者の人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに送信することをさらに含む。
【0018】
この方法の1つ以上の実施形態では、テスト統計が所与の閾値を上回っていることは、カルマンフィルタが一貫していないことを示す。
【0019】
この方法の1つ以上の実施形態では、前述の被験者モデルパラメータを推定することは、最大事後確率(MAP)推定を使用することを含む。
【0020】
この方法の1つ以上の実施形態では、前述の被験者モデルパラメータを推定することは、以前のグルコース測定値、以前のインスリン測定値、および以前に消費された食事にさらに基づく。
【0021】
この方法の1つ以上の実施形態では、テスト統計が所与の閾値を上回っていることは、イノベーションパラメータが独立していず、イノベーションパラメータの共分散に対応する共分散を有するゼロ平均ガウス分布と同一に分布していないことを示す。
【0022】
この方法の1つ以上の実施形態では、グルコース変化は、不明な食事を示し、不明な食事は、被験者によって記録されていない。
【0023】
この方法の1つ以上の実施形態では、所与の閾値は、所定の数の偽陽性に基づいている。
【0024】
この方法の1つ以上の実施形態では、この方法は、前述の過去の被験者モデルパラメータを受信することに先立って、被験者の1日総用量、基礎インスリン、および炭水化物比に基づいて過去の被験者モデルパラメータを初期化することをさらに含む。
【0025】
この方法の1つ以上の実施形態では、実際のグルコース測定値は、電子デバイスに接続されたグルコースセンサから受信する。
【0026】
この方法の1つ以上の実施形態では、この方法は、前述の、電子デバイスのディスプレイインターフェースおよび被験者の人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに指標を送信することに先立って、残りの食事、患者の炭水化物比、および血糖値に基づいて、所与のユーザによって記録されていない不明な食事のインスリンボーラスを判定することをさらに含み、前述の指標を送信することはインスリンボーラスを送信することを含む。
【0027】
この方法の1つ以上の実施形態では、この方法は、前述のインスリンボーラスを判定することに先立って、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータに基づいて、不明な食事量および不明な食事時間を判定することをさらに含む。
【0028】
この方法の1つ以上の実施形態では、計算されたテスト統計は、イノベーション共分散パラメータによって重み付けされた不明な食事量および不明な食事時間に基づくイノベーションパラメータとグルコース変化との間の相関の累積合計を表す。
【0029】
この方法の1つ以上の実施形態では、所与の閾値は、ゼロ平均ガウス分布およびイノベーション共分散パラメータによって重み付けされた最も可能性が高い食事量と食事時間による最も可能性の高いグルコースの増加の二乗に比例する共分散を有する確率変数の所与の偽陽性率に基づいて判定される。
【0030】
本技術の広範な態様によれば、患者が消費した食事を検出するためのコンピュータ実装の方法が提供され、この方法は、プロセッサによって実行され、この方法は、実際のグルコース測定値と予測グルコース測定値との間の不一致を判定することと、判定された不一致に少なくとも部分的に基づいて食事が消費された確率を判定することと、判定された確率に応答して、投薬ボーラスを判定することと、を含む。
【0031】
この方法の1つ以上の実施形態では、前述の食事が消費された確率を判定することは、少なくとも部分的に、実際の血糖値、目標血糖値、および残存インスリンに基づく。
【0032】
この方法の1つ以上の実施形態では、この方法は、食事のサイズおよび食事の消費時間を推定することをさらに含む。
【0033】
この方法の1つ以上の実施形態では、前述の投薬ボーラスを判定することは、少なくとも部分的に、推定される食事のサイズおよび推定される食事の消費時間のうちの少なくとも1つに基づく。
【0034】
この方法の1つ以上の実施形態では、前述の食事が消費されたと判定することは、判定された確率が閾値を超えたことに応答する。
【0035】
本技術の広範な態様によれば、被験者におけるグルコース変化を判定するためのシステムが提供される。このシステムは、プロセッサと、プロセッサに動作可能に接続された非一時的記憶媒体と、を含み、記憶媒体はコンピュータ可読命令を含み、プロセッサは、コンピュータ可読命令を実行すると、被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを受信することと、カルマンフィルタを使用して、被験者モデルパラメータおよび被験者の以前の状態に基づいて、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータを判定することと、判定されたイノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータに基づいて、テスト統計を計算することと、計算されたテスト統計を所与の閾値と比較することと、計算されたテスト統計が所与の閾値を上回ることに応答して、グルコース変化の指標を出力することとを行うように構成されている。
【0036】
このシステムの1つ以上の実施形態では、プロセッサは、前述の被験者モデルパラメータを受信する前に、被験者の実際のグルコース測定値を受信し、過去の被験者モデルパラメータを受信するようにさらに構成され、前述の被験者の状態ベースモデルの被験者モデルパラメータを受信することは、実際のグルコース測定値と過去の被験者モデルパラメータに基づいて被験者モデルパラメータを推定することを含む。
【0037】
このシステムの1つ以上の実施形態では、プロセッサは、プロセッサに動作可能に接続されたディスプレイインターフェース、および被験者の人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに指示を送信するようにさらに構成される。
【0038】
このシステムの1つ以上の実施形態では、テスト統計が所与の閾値を上回っていることは、カルマンフィルタに一貫性がないことを示す。
【0039】
このシステムの1つ以上の実施形態では、前述の被験者モデルパラメータを推定することは、最大事後確率(MAP)推定を使用することを含む。
【0040】
このシステムの1つ以上の実施形態では、前述の推定はさらに、以前のグルコース測定値、以前のインスリン測定値、および以前に消費された食事に基づく。
【0041】
このシステムの1つ以上の実施形態では、テスト統計が所与の閾値を上回っていることは、イノベーションパラメータが独立していず、イノベーションパラメータの共分散に対応する共分散を有するゼロ平均ガウス分布と同一に分布していないことを示す。
【0042】
このシステムの1つ以上の実施形態では、グルコース変化は、不明な食事を示し、不明な食事は、被験者によって記録されていない。
【0043】
このシステムの1つ以上の実施形態では、所与の閾値は、所定の数の偽陽性に基づいている。
【0044】
このシステムの1つ以上の実施形態では、プロセッサは、前述の過去の被験者モデルパラメータを受信することに先立って、被験者の1日総用量、基礎インスリン、および炭水化物比に基づいて過去の被験者モデルパラメータを初期化することをさらに行うように構成される。
【0045】
このシステムの1つ以上の実施形態では、実際のグルコース測定値は、プロセッサに接続されたグルコースセンサから受信する。
【0046】
このシステムの1つ以上の実施形態では、プロセッサは、前述の、プロセッサに動作可能に接続されたディスプレイインターフェースおよび被験者の人工膵臓システムのうちの少なくとも1つに指標を送信することに先立って、残りの食事、患者の炭水化物比、および血糖値に基づいて、所与のユーザによって記録されていない不明な食事のインスリンボーラスを判定することをさらに行うように構成され、前述の指標を送信することはインスリンボーラスを送信することを含む。
【0047】
このシステムの1つ以上の実施形態では、プロセッサは、前述のインスリンボーラスを判定することに先立って、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータに基づいて、不明な食事量および不明な食事時間を判定することをさらに行うように構成される。
【0048】
このシステムの1つ以上の実施形態では、テスト統計は、イノベーション共分散パラメータによって重み付けされた不明な食事量および不明な食事時間に基づく、イノベーションパラメータとグルコース変化との間の相関の累積合計を表す。
【0049】
このシステムの1つ以上の実施形態では、所与の閾値は、ゼロ平均ガウス分布およびイノベーション共分散パラメータで重み付けされた最も可能性の高い食事量および食事時間による最も可能性の高いグルコースの増加の二乗に比例する共分散を有する確率変数の所与の偽陽性率に基づいて判定される。
【0050】
別の広範な態様によれば、患者が消費した食事を検出するためのコンピュータ実装の方法が提供される。この方法は、実際のグルコース測定値と予測グルコース測定値との間の不一致を判定することを含む。判定された不一致に少なくとも部分的に基づいて、この方法は、食事が消費された確率を判定することを含む。判定された確率に応答して、この方法は、投薬ボーラスを判定することを含む。
【0051】
この方法の1つの実施形態では、食事が消費された確率は、少なくとも部分的に、実際の血糖値、目標血糖値、および残存インスリンに基づく。
【0052】
この方法の1つの実施形態では、この方法は、食事のサイズおよび食事の消費時間を推定することをさらに含む。
【0053】
この方法の1つの実施形態では、投薬ボーラスの量は、少なくとも部分的に、推定される食事のサイズおよび/または食事の推定される消費時間に基づく。
【0054】
この方法の1つの実施形態では、この方法は、判定された確率が閾値を超えたことに応答して食事が消費されたことを判定することをさらに含む。
【0055】
別の広範な態様によれば、患者が消費した食事を検出するためのシステムが提供される。システムは、プロセッサおよびプロセッサに動作可能に接続された非一時的記憶媒体を含み、記憶媒体はコンピュータ可読命令を含み、プロセッサは、コンピュータ可読命令を実行すると、実際のグルコース測定値と、予測グルコース測定値の間の不一致を判定することと、判定された不一致に少なくとも部分的に基づいて食事が消費された確率を判定することと、判定された確率に応答して、投薬ボーラスを判定することと、を行うように構成される。
【0056】
このシステムの1つ以上の実施形態では、前述の食事が消費された確率を判定することは、少なくとも部分的に、実際の血糖値、目標血糖値、および残存インスリンに基づく。
【0057】
このシステムの1つ以上の実施形態では、この方法は、食事のサイズおよび食事の消費時間を推定することをさらに含む。
【0058】
このシステムの1つ以上の実施形態では、前述の投薬ボーラスを判定することは、少なくとも部分的に、推定される食事のサイズおよび推定される食事の消費時間のうちの少なくとも1つに基づく。
このシステムの1つ以上の実施形態では、前述の食事が消費されたと判定することは、判定された確率が閾値を超えたことに応答する。
【0059】
本明細書の文脈において、「電子デバイス」は、目前の関連するタスクに適切なソフトウェアを実行することができる任意のコンピューティング装置またはコンピュータハードウェアである。したがって、電子デバイスのいくつかの(非限定的な)例には、汎用パーソナルコンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、ネットブックなど)、モバイルコンピューティングデバイス、スマートフォン、タブレット、およびルーター、スイッチ、ゲートウェイなどのネットワーク機器が含まれる。本文脈における電子デバイスは、他の電子デバイスに対するサーバとして機能することを排除するものではないことに留意されたい。「電子デバイス」という表現の使用は、複数の電子デバイスが、タスクや要求、またはタスクや要求の結果、または本明細書に記載されている方法のステップを受信/送信したり、実行したり、実行させたりするために使用されることを排除するものではない。本明細書の文脈において、「クライアントデバイス」は、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの、ユーザに関連付けられた、エンドユーザのクライアント電子デバイスの範囲のいずれかを指す。
【0060】
本明細書の文脈において、「コンピュータ可読記憶媒体」(「記憶媒体」および「記憶装置」とも称される)という表現は、RAM、ROM、ディスク(CD-ROM、DVD、フロッピーディスク、ハードドライバなど)、USBキー、ソリッドステートドライブ、テープドライブなどを含むがこれらに限定されない、あらゆる性質および種類の非一時的媒体を含むことを意図する。複数のコンポーネントを組み合わせて、同じタイプの2つ以上のメディアコンポーネントおよび/または異なるタイプの2つ以上のメディアコンポーネントを含むコンピュータ情報記憶媒体を形成し得る。
【0061】
本明細書の文脈において、「データベース」は、その特定の構造、データベース管理ソフトウェア、またはデータが格納、実装、または他の方法で使用可能にされるコンピュータハードウェアに関係なく、データの構造化されたコレクションである。データベースは、データベースに格納された情報を格納または利用するプロセスと同じハードウェア上に存在する場合もあれば、専用サーバや複数のサーバなどの別個のハードウェア上に存在する場合もある。
【0062】
本明細書の文脈において、「情報」という表現は、データベースに格納することができるあらゆる性質または種類の情報を含む。情報には、視聴覚作品(画像、動画、サウンドレコード、プレゼンテーションなど)、データ(位置データ、数値データなど)、テキスト(意見、コメント、質問、メッセージなど)ドキュメント、スプレッドシート、単語のリストなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書の文脈において、特に明記しない限り、情報要素の「指標」は、情報要素自体、または指標の受信者が情報要素が取得され得る、ネットワーク、メモリ、データベース、または他のコンピュータ可読媒体の場所を見つけることを可能にするポインタ、参照、リンク、または他の間接的なメカニズムであり得る。例えば、ドキュメントの指標には、ドキュメント自体(すなわち、そのコンテンツ)が含まれることもあれば、特定のファイルシステムに関してファイルを識別する一意のドキュメント記述子、または、指標の受信者に、ファイルにアクセスできるネットワークロケーション、メモリアドレス、データベーステーブル、または他の場所を指示する何らかの他の手段であることもある。当業者が認識するように、そのような指標に必要な精度の程度は、指標の送信者と受信者との間で交換される情報に与えられる解釈についての事前の理解の程度に依存する。例えば、送信者と受信者の間の通信の前に、情報要素の指標が、情報要素を含む所定のデータベースの特定のテーブルのエントリのデータベースキーの形式を採ることが理解されている場合、情報要素自体が指標の送信者と受信者の間で送信されなかったとしても、データベースキーを送信することは、情報要素を受信者に効果的に伝達するために必要なすべてである。
【0064】
本明細書の文脈において、「通信ネットワーク」という表現は、コンピュータネットワーク、インターネット、電話ネットワーク、テレックスネットワーク、TCP/IPデータネットワーク(例えば、WANネットワーク、LANネットワークなど)などの電気通信ネットワークを含むことを意図している。「通信ネットワーク」という用語は、有線ネットワークまたは直接有線接続、ならびに音響、無線周波数(RF)、赤外線および他の無線媒体などの無線媒体、ならびに上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0065】
本明細書の文脈において、「第1」、「第2」、「第3」などの単語は、それらが互いに修飾する名詞を区別できるようにする目的でのみ形容詞として使用されており、それらの名詞間の特定の関係を説明する目的のためではない。したがって、例えば、「第1のサーバ」および「第3のサーバ」という用語の使用は、サーバの/サーバ間の(例えば)特定の順序、タイプ、時系列、階層、またはランク付けを意味することを意図するものではなく、また、それらの使用(それ自体)は、「第2のサーバ」が所与の状況で必ず存在する必要があることを意味することを意図するものでもないことを理解されたい。さらに、他の文脈において、本明細書で考察されるように、「第1の」要素および「第2の」要素への言及は、2つの要素が同じ実際の実世界の要素であることを排除しない。したがって、例えば、場合によっては、「第1の」サーバおよび「第2の」サーバは、同じソフトウェアおよび/またはハードウェアであり得、他の場合には、それらは、異なるソフトウェアおよび/またはハードウェアであり得る。
【0066】
本技術の実装はそれぞれ、上記の目的および/または態様のうちの少なくとも1つを有するが、必ずしもそれらのすべてを有するとは限らない。上記の目的を達成しようとすることから生じた本技術のいくつかの態様は、この目的を満たさない場合もあり、および/または本明細書に具体的に記載されていない他の目的を満たす場合もあることを理解されたい。
【0067】
本技術の実装の追加のおよび/または代替の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本技術、ならびに他の態様およびそのさらなる特徴をより良好に理解するために、添付の図面と併せて使用される以下の説明を参照する。
【0069】
【
図1】本技術の非限定的な実施形態による電子デバイスの概略図を示す。
【
図2】本技術の非限定的な実施形態によるシステムの概略図を示す。
【
図3】本技術の非限定的な実施形態による不明な食事検出手順の概略図を示す。
【
図4】被験者におけるグルコース変化を判定する方法のフローチャートのブロック図を示し、この方法は、本技術の非限定的な実施形態に従って実行される。
【
図5A】サンプルシミュレーションの結果の例示的なプロットを示し、食事検出手順は、予告された食事を検出し、2Uのボーラスを提供する。モデルの変動性により、明らかな理由なしに血糖値が増減することが多く、食事検出手順が困難になる。
【
図5B】偽陽性(FP)が発生し、昼食を食べてから3.5時間後の15:30に食事にフラグが付けられ、アルゴリズムが1.8Uのボーラスを提供し、次の4.5時間低血糖が観察されないというシミュレーションの例示的なプロットを示す。
【
図6】3つの実施された実験(n=1536)について、低血糖症と高血糖症に費やされた時間の割合(昼食後8時間と比較して)の例示的なプロットを示しており、図中、CL+Bは、食事検出なしに対応し、昼食が予告され、ブラウスされていて、CL+MDは、昼食が予告されていない食事検出手順の使用に対応し、CLは、昼食が予告されていない食事検出なしに対応する。
【
図7】食事検出手順のパフォーマンスを示す臨床データの例示的なプロットを示しており、図中、60gの不明な食事が13:00に消費され、食事は13:40に検出され、0.9Uのボーラスが送達された。
【
図8】従来のポンプ療法、閉ループまたは食事検出を伴う閉ループを使用して、4人の患者の、ボーラスなしで食事を消費した後の増分グルコースの例示的なプロットを示しており、図中、ひし形は、安全のため、または食事検出手順によって自動的に補正ボーラスが送達されたときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本明細書に記載されている例および条件付き言語は、主に、読者が本技術の原理を理解するのを助けることを意図しており、その範囲をそのような具体的に記載されている例および条件に限定することを意図するものではない。当業者であれば、本明細書で明示的に説明または示されていないが、それにもかかわらず、本技術の原理を具体化し、その趣旨および範囲に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されよう。
【0071】
さらに、理解を助けるために、以下の説明は、本技術の比較的単純化された実装を説明し得る。当業者が理解するように、本技術の様々な実装は、より複雑になる場合がある。
【0072】
場合によっては、本技術への変更の有用な例であると考えられるものも述べられる場合がある。これは単に理解を助けるために行うに過ぎず、やはり、本技術の範囲を定義したり、限度を述べたりするためではない。これらの変更は包括的なリストではなく、当業者は、それにもかかわらず本技術の範囲内に留まりながら、他の変更を行うことができる。さらに、変更の例が述べられていない場合、変更が不可能である、および/または説明されていることが本技術のその要素を実装する唯一の方法であると解釈されるべきではない。
【0073】
さらに、本技術の原理、態様、および実装、ならびにそれらの特定の例を記載する本明細書のすべての発言は、それらが現在既知であるか、または将来開発されるかにかかわらず、その構造的および機能的同等物の両方を包含することを意図している。したがって、例えば、本明細書の任意のブロック図が、本技術の原理を具体化する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されよう。同様に、任意のフローチャート、フロー図、状態遷移図、擬似コードなどは、コンピュータまたはプロセッサが明示的に示されているか否かにかかわらず、コンピュータ可読媒体で実質的に表現され、そのようなコンピュータまたはプロセッサによってそのように実行され得る様々なプロセスを表していることが理解されよう。
【0074】
「プロセッサ」または「グラフィックス処理装置」とラベル付けされた機能ブロックを含む、図に示されている様々な要素の機能は、専用ハードウェアおよび適切なソフトウェアに関連付けてソフトウェアを実行できるハードウェアを使用して提供できる。プロセッサによって提供される場合、機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、または複数の個々のプロセッサによって提供され得、それらの一部は共有され得る。本技術のいくつかの非限定的な実施形態では、プロセッサは、中央処理装置(CPU)などの汎用プロセッサ、またはグラフィックス処理装置(GPU)などの特定の目的専用のプロセッサであり得る。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行できるハードウェアのみを指すと解釈されるべきではなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納するための読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性ストレージを暗黙的に含む場合があるが、これらに限定されない。従来型および/またはカスタムの他のハードウェアも含まれる場合がある。
【0075】
ソフトウェアモジュール、または単にソフトウェアであることが暗示されるモジュールは、本明細書では、プロセスステップおよび/またはテキスト表現の実行を示すフローチャート要素または他の要素の任意の組み合わせとして表すことができる。このようなモジュールは、明示的または暗黙的に示されているハードウェアによって実行される場合がある。
【0076】
これらの基礎が整った状態で、本技術の態様の様々な実装を説明するためのいくつかの非限定的な例が検討される。
【0077】
電子デバイス
図1を参照すると、本技術のいくつかの実装形態とともに使用するために好適な電子デバイス100が示され、電子デバイス100は、プロセッサ110によって集合的に表される1つ以上のシングルコアまたはマルチコアプロセッサを含む様々なハードウェアコンポーネント、グラフィックス処理装置(GPU)111、ソリッドステートドライブ120、ランダムアクセスメモリ130、ディスプレイインターフェース140、および入力/出力インターフェース150を含む。
【0078】
電子デバイス100の様々なコンポーネント間の通信は、様々なハードウェアコンポーネントが電子的に結合されている、1つ以上の内部および/または外部バス160(例えば、PCIバス、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394「ファイアワイヤ」バス、SCSIバス、シリアルATAバスなど)によって可能になり得る。
【0079】
入力/出力インターフェース150は、タッチスクリーン190および/または1つ以上の内部および/または外部バス160に結合され得る。タッチスクリーン190は、ディスプレイの一部であり得る。いくつかの実施形態では、タッチスクリーン190は、ディスプレイである。タッチスクリーン190は、同様にスクリーン190と称され得る。
図1に示される実施形態では、タッチスクリーン190は、タッチハードウェア194(例えば、ユーザとディスプレイとの間の物理的対話の検出を可能にするディスプレイの層に埋め込まれた感圧セル)およびタッチ入力/出力コントローラ192を備え、ディスプレイインターフェース140ならびに/または1つ以上の内部および/もしくは外部バス160との通信を可能にする。いくつかの実施形態では、入力/出力インターフェース150は、キーボード(図示せず)、マウス(図示せず)、またはトラックパッド(図示せず)に接続され得、タッチスクリーン190に加えてまたはその代わりにユーザが電子デバイス100と対話することを可能にする。
【0080】
本技術の実施によれば、ソリッドステートドライブ120は、ランダムアクセスメモリ130にロードされ、かつ糖尿病の被験者が食事を消費したかどうかを判定するためにプロセッサ110および/またはGPU111によって実行されるのに好適なプログラム命令を格納する。例えば、プログラム命令はライブラリまたはアプリケーションの一部である場合がある。
【0081】
電子デバイス100は、当業者によって理解され得るように、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、携帯情報端末、または本技術を実装するように構成され得る任意のデバイスであり得る。
【0082】
システム
図2を参照すると、システム200の概略図が示され、システム200は、本技術の非限定的な実施形態を実装するのに好適である。図示のシステム200は、本技術の単なる例示的な実装であることが明確に理解されるべきである。したがって、以下のその説明は、本技術の用例の説明のみを意図している。この説明は、本技術の範囲を定義したり、限度を述べたりすることを意図したものではない。場合によっては、システム200への変更の有用な例であると考えられるものも以下に述べられる場合がある。これは単に理解を助けるために行うに過ぎず、やはり、本技術の範囲を定義したり、限度を述べたりするためではない。これらの変更は包括的なリストではなく、当業者が理解するように、他の変更が可能であり得る。さらに、これが行われていない場合(つまり、変更の例が述べられていない場合)、変更が不可能である、および/または説明されていることが本技術のその要素を実装する唯一の方法であると解釈されるべきではない。当業者が理解するように、このようなことはない。さらに、システム200は、ある場合には、本技術の単純な実装を提供することができ、そのような場合、それらは、理解を助けるためにこのように提示されていることを理解されたい。当業者が理解するように、本技術の様々な実装は、より複雑になる場合がある。
【0083】
システム200は、とりわけ、電子デバイス100、データベース250、および人工膵臓システム220を含む。
【0084】
システム200は、糖尿病の被験者205または糖尿病ユーザ205に関連付けられている。
【0085】
電子デバイス100は、糖尿病ユーザ205に関連付けられている。非限定的な例として、電子デバイス100は、糖尿病ユーザ205のスマートフォンであり得る。糖尿病ユーザ205は、自分自身の健康および糖尿病に関連する情報を電子デバイス100に入力することができ、電子デバイス100は、その情報をデータベース250に格納する。一実施形態では、電子デバイス100は、人工膵臓システムの一部であり得る(例えば、人工膵臓システム220のコンポーネント)。代替の実施形態では、電子デバイス100は、糖尿病ユーザ205のデスクトップコンピュータであり得る。
【0086】
電子デバイス100は、とりわけ、以下のように構成される。(i)糖尿病ユーザ205の糖調節システムをモデル化する。(ii)グルコース測定値を予測する。(iii)事前に選別された測定値に基づいて、ユーザ205によって消費された食事が電子デバイス100に記録されていないためにインスリンボーラスが不履行であったかどうかを判定する。(iv)ユーザ205へのインスリン送達のために、情報を人工膵臓システム220に送信する。その目的を達成するために電子デバイス100がどのように構成されるかは、以下でより詳細に説明する。
【0087】
閉ループシステム、自動インスリン送達システム、または血糖コントロールのための自律システムとしても既知である人工膵臓システム220は、健康な膵臓のグルコース調節機能を模倣するように構成される。人工膵臓システム220は、糖尿病ユーザ205に動作可能に接続され、関連付けられている。
【0088】
人工膵臓システム220は、連続グルコースモニタリングシステム(CGM)230、インスリン注入ポンプ240、およびコントロール手順245を備える。
【0089】
CGMシステム230は、ユーザ205の血糖値を反映する情報の安定した流れを提供する。CGM230は、血糖値に関連付けられた細胞の周りの流体(間質液)中のグルコースを測定する、患者の皮膚(図示せず)の下に皮下配置されたセンサを含む。CGMシステム230は、スクリーンもしくはタッチスクリーン(図示せず)などのユーザインターフェースを有してい得、および/または通信ネットワーク(図示せず)を介して通信リンク(付番せず)を介してユーザ205の電子デバイス100または別の電子デバイス(図示せず)にグルコース関連情報を送信し得る。
【0090】
一実施形態では、グルコース監視システム230は、データベース250に記憶するために、ユーザ205の血糖値を反映する情報を送信する。
【0091】
一実施形態では、電子デバイス100は、CGM230から情報を受信し、かつ一連の数学的計算を行うコントロール手順245を実行する。これらの計算に基づいて、電子デバイス100は、投薬指示を注入ポンプに送信する。代替の実施形態では、コントロール手順245は、デスクトップコンピュータ、リモートサーバ、およびスマートフォンなどであるがこれらに限定されない、インスリン注入ポンプ240を含む任意の数のデバイスで実行することができる。
【0092】
コントロール手順245は、食事検出手順300を含み、これは、以下でより詳細に説明する。
【0093】
インスリン注入ポンプ240は、コントロール手順245から受信した指示に基づいてインスリン送達を調整する。
【0094】
一実施形態では、データベース250は、ユーザ205について、ユーザ固有のパラメータのセット260を格納するように構成される。ユーザ固有のパラメータのセット260は、ユーザ205の糖調節システムをモデル化するために使用され得る。ユーザ固有のパラメータのセット260には、患者の年齢、患者の体重、内因性グルコース産生、インスリン非依存性グルコースフラックス、インスリン遠隔作用の活性化率、患者のインスリン感受性(例えば、グルコース輸送のインスリン感受性、グルコース処理のインスリン感受性、EGPの抑制のインスリン感受性)、インスリン吸収率、インスリン除去率、最大CHO吸収までの時間、インスリン分布量、患者の1日の総投与量、患者の基礎インスリン、患者の炭水化物比、患者の食事およびグルコース分布量のうちの1つ以上を含む。
【0095】
データベース250は、ユーザ205について、グルコース測定値262を格納するように構成される。一実施形態では、グルコース測定値262は、CGM230から受信される。グルコース測定値262は、非限定的な例として、間質性グルコース濃度を含む。非限定的な例として、食事からのグルコース出現率は、グルコース測定値262に基づいて計算することができる。
【0096】
データベース250は、ユーザ205について、インスリン測定値264を格納するように構成される。一実施形態では、送達されたインスリン測定値264は、インスリン注入ポンプ240から受信される。送達されたインスリン測定値264は、送達された皮下インスリンの量、および送達されるのを保留している(すなわち、要求により保留されているがまだ送達されていない)インスリンの量、送達されなかった皮下インスリンの量、残存インスリン、インスリンポンプの故障またはエラーのうちの1つ以上を含む。
【0097】
データベース250は、ユーザ205について、消費された食事情報266を格納するように構成される。ユーザ205は、消費された食事の指標をユーザの電子デバイス100に記録することができ、このデバイスは、消費された食事の指標をデータベース250に送信し得る。消費された食事情報266は、食事の組成、食事の重量、食事の組成、食事のタイプ、食事中のタンパク質の量、食事中の繊維量、食事中の炭水化物量、またはその推定値のうちの1つ以上を含み得る。
【0098】
データベース250は、ユーザ205について、所与の期間、モデルパラメータのセット270を格納するように構成される。一般的に言えば、モデルパラメータのセット270は、ユーザ205の糖調節システムを表すパラメータである。モデルパラメータのセット270は、一般に、ユーザ205に適応するために時間とともに変化する。モデルパラメータのセット270がどのように判定されるかは、以下でより詳細に説明する。
【0099】
データベース250は、ユーザ205について、状態推定値280を格納するように構成される。一般的に言えば、状態推定値280は、所与の瞬間における糖尿病ユーザ205の状態を表す。状態推定値280の判定は、以下でより詳細に説明する。
【0100】
食事検出手順
ここで
図3に目を向けると、本技術の非限定的な実施形態による不明な食事検出手順300の概略図が示されている。
【0101】
不明な食事検出手順300は、電子デバイス100などのプロセッサを含む電子デバイスによって実行される。一実施形態では、不明な食事検出手順300は、人工膵臓システム220によって、または別の電子デバイス(図示せず)によって実行し得る。不明な食事検出手順300は、分散様態において、異なるデバイスによって実行され得ることが企図されている。
【0102】
一実施形態では、不明な食事検出手順300は、コントロール手順245の一部である。
【0103】
不明な食事検出手順300は、ユーザ205の履歴データに基づいてユーザ205の糖調節システムモデルを生成し、ユーザ205の糖調節システムモデルを使用してグルコース測定値を予測し、予測されたグルコース測定値を現在のグルコース測定値と比較して、ユーザ205が食事を記録していないどうかを判定するように適応される。一実施形態では、不明な食事検出手順300は、ボーラスの不履行の指標を人工膵臓システム220に送信し、これにより、人工膵臓システム220にインスリンボーラスを送達させることができる。一実施形態では、ボーラスの不履行の指標は、送達されるべきボーラスの推奨を含む。不明な食事検出手順300は、ユーザ205の糖調節システムの状態空間表現を使用する。
【0104】
不明な食事検出手順300は、状態空間モデリング手順320、確率的検出手順360、およびインスリンボーラス判定手順380を含む。
【0105】
状態空間モデリング手順
状態空間モデリング手順320の目的は、ユーザ205の糖調節システムをモデル化することである。状態空間モデリング手順320は、皮下組織からのインスリンの吸収、消費された食事からの炭水化物の吸収、インスリン作用によるグルコースの変化、および吸収された炭水化物によるグルコースの変化のうちの1つ以上を記述する数学モデルを生成する。状態空間モデリング手順320は、カルマンフィルタリングを使用してグルコース測定値を予測する。
【0106】
一実施形態では、ユーザの糖調節システム205のモデルは、一組の微分方程式によって表すことができる。一実施形態では、ユーザ205の糖調節システムは、線形時不変モデルを使用して説明される。非限定的な例として、バーグマンモデルは、ユーザ205の糖調節システムを記述するために線形化され得る。
【0107】
一実施形態では、モデルの内部状態は、以下によって表すことができる。
・送達された皮下インスリンの量;
・血漿インスリンの濃度;
・消化された食事の量;
・食事からのグルコース出現率;
・グルコース血漿濃度;および
・間質性グルコース濃度
【0108】
一実施形態では、状態空間モデリング手順320は、変数pnによって表されるモデルパラメータのセット270を有するモデルを生成する。モデルパラメータのセット270は、観察されたグルコース測定値262を表すことを可能にする。状態空間モデリング手順320は、状態空間表現を使用して、状態推定値280を判定する。状態空間表現の状態推定値280は、任意の時点で有する値に依存し、また入力変数の外部から課せられた値にも依存する方法で、時間の経過とともに変化する値である。出力変数の値は、状態推定の値によって異なる。
【0109】
次に、カルマンフィルタリングを使用して、グルコース測定値がモデルパラメータのセット270、および送達されたインスリン測定値264および消費された食事情報266によって説明されるかどうかを判定する。
【0110】
線形二次推定(LQE)としても既知であるカルマンフィルタは、時間の経過に伴う一連の測定値を使用するアルゴリズムであり、ノイズおよび/または不正確さを含むことがあり、単一の測定に基づくものより正確であり得る不明な変数の推定値を生成する。換言すれば、それは、条件が尊重されるときに推定共分散を最小化するために予測子修正型推定量を実装する方程式のセットであり、方程式は、電子デバイス100などの電子デバイスによって再帰的に実行される。
【0111】
状態空間モデリング手順320は、実際のグルコース測定値を受信するように構成される。一実施形態では、状態空間モデリング手順320は、人工膵臓システム220から実際のグルコース測定値を受信する。
【0112】
状態空間モデリング手順320は、CGM230および/またはデータベース250からグルコース測定値262を受信するように構成される。グルコース測定値262は、N個の以前のグルコース測定値を含む、zn={zn-N+1,…,zn},
【0113】
状態空間モデリング手順320は、インスリン注入ポンプ240および/またはデータベース250から、送達されたインスリン量264を受信するように構成される。送達されたインスリン量264は、時間n-Nの間のインスリン量を含む。
【0114】
状態空間モデリング手順320は、データベース250から、消費された食事情報266を受信するように構成される。消費された食事情報266は、時間n-Nの間にユーザが記録した、消費された食事を含む。
【0115】
送達されたインスリン量264および消費された食事情報266は、共にUn={Un-N,…,Un-1}として表すことができる。運動や心拍数(ただしこれらに限定されないが)など、ユーザ205の血糖値に影響を与える可能性のある他の入力を追加できることに留意されたい。
【0116】
一実施形態では、時間nにおけるユーザ205の状態Xnについて、pnで表されるモデルパラメータのセット270は、状態が、状態空間モデルに従って変化する。
【0117】
Xn=A(pn)Xn-1+B(pn)Un、 (1a)
【0118】
yn=C(pn)Xn、 (1b)
【0119】
ここで、Unはシステムへのすべての入力である、時間nで送達されたインスリン量264と消費された食事情報266、ならびに(A(pn),B(pn),C(pn))はパラメータのセット270pnの状態行列、入力行列、および出力行列のセットである。
【0120】
一実施形態では、標準的な線形カルマンフィルタは、以下の方程式によって表される。
【0121】
【0122】
Pn|n-1=APn-1AT+Q、 (2b)
【0123】
Sn=CPn|n-1CT+R、 (2c)
【0124】
【0125】
【0126】
Pn=Pn|n-1-KnCPn|n-1、 (2f)
【0127】
式中、
【数4】
は、状態推定値である。Pは、状態推定値の共分散行列である。
【0128】
Qはプロセスノイズ共分散行列であり、Rは測定ノイズ共分散行列であり、KNはカルマンゲインである。
【0129】
v
n=z
n-y
nは、実際のグルコース測定値Z
nと状態空間モデリング手順320による予測測定値との不一致を示すイノベーションパラメータである
【数5】
。
【0130】
一実施形態では、イノベーションパラメータは、イノベーション共分散パラメータであるか、またはそれを含むと見なすことができる。一実施形態では、イノベーションパラメータは、テスト統計であるか、またはそれを含むと見なすことができる。
【0131】
イノベーションパラメータは、実際のグルコース測定値znと、予測測定値ynがどれだけ異なるかを定量化する。一実施形態では、イノベーションパラメータは、実際のグルコース測定値znと、予測測定値ynとの間の差に比例する。したがって、イノベーションパラメータ値が高いほど、実際のグルコース測定値znと、予測測定値ynとの間の不一致が大きくなる。逆に、イノベーションパラメータ値が低いほど、実際のグルコース測定値Znと、予測測定値YNとの間の不一致が小さくなる。
【0132】
実際のグルコース測定値Znと、予測測定値ynとの不一致(またはその欠如)を示すイノベーションパラメータは様々な方法で判定することができ、補正因子または閾値が、イノベーションパラメータを判定するために使用され得ることは理解されよう。一実施形態では、実際のグルコース測定値znと予測測定値ynとの間の不一致を示すイノベーションパラメータの値は、閾値に基づいて判定し得、すなわち、実際のグルコース測定値znと予測測定値ynとの間の差が、閾値より上(または下)である場合、イノベーションパラメータの値は、別の値に丸められ得る。したがって、実際のグルコース測定値znおよび予測測定値ynは、所与の範囲内にある場合は、「等しい」と見なすことができる。
【0133】
Snは、イノベーションパラメータvnの共分散である。
【0134】
カルマンフィルタは、真の状態X
nの確率分布関数が、平均
【数6】
と共分散P
nを有するガウス型であるとき、一貫性があると言われる。したがって,カルマンフィルタは,イノベーションパラメータのシーケンス{v
1,...,v
n}が独立していて、同一に分布しており(i.i.d.)、イノベーションパラメータの共分散S
nを有するゼロ平均ガウス分布に従う場合に一貫性がある。カルマンフィルタの一貫性は、プロセスノイズと測定ノイズが既知の共分散行列Q、およびRを有するi.i.d.ゼロ平均ガウスであるという仮説に従う。例えば、外乱などのプロセスノイズの変化により、カルマンフィルタに矛盾が生じることがある。
【0135】
状態空間モデリング手順320は、患者の特定の特性、例えば、ユーザ固有のパラメータのセット260、および1日の総インスリン投与量、例えば、1日あたりに送達されるインスリン量264のような一般的な知識に基づいて、モデルパラメータのセット270のp(pn)の事前分布を判定または受信し得る。
【0136】
本技術の文脈では、状態空間モデリング手順320は、最新のグルコーストレンド、すなわちCGM230および/またはデータベース250から受信したグルコース測定値262、インスリン注入ポンプ240および/またはデータベース250から受信したインスリン測定値264、およびユーザ205から受信した食事情報266に適合するように、モデルパラメータのセット270を調整または更新する。
【0137】
一実施形態では、X
n-Nが時間n-Nにおいて既知の状態である場合、状態空間モデリング手順320は、モデルパラメータのセット270p
n、状態行列
【数7】
、および既知のインスリン測定値264を有するモデルと消費された食事情報266
【数8】
を使用して、状態伝播
【数9】
のシーケンスを決定する。
【0138】
一実施形態では、最後のN個のグルコース測定値を記述するパラメータのセット270p
nの最尤推定量
【数10】
は、尤度関数を最大化することによって得られる。
【0139】
【0140】
例えば、再帰的最小二乗などの他の方法を使用することができると企図される。
【0141】
パラメータのセット270pnの最大事後確率推定量(MAP)は、によって得られる。
【0142】
【0143】
対応する状態および入力に条件付けられたときに測定値が相互に条件付きで独立していると仮定すると、状態、送達されたインスリン量264、およびパラメータのセット270が与えられた場合のグルコース測定値262の分布は、次のように表すことができる。
【0144】
【0145】
一定の共分散r2を有するゼロ平均のガウス測定ノイズを仮定すると、k∈[n-N,n]に対して、分布は次のように表される。
【0146】
【0147】
状態空間モデリング手順320は、最大事後推定を使用して、モデルパラメータのセット270を調整する。次に、グルコース測定値262
【数15】
、既知のインスリン測定値264および消費された食事情報266
【数16】
および時間n-N(X
n-N)での状態を使用してカルマンフィルタが実行される。モデルパラメータのセット270は、最新の観察されたグルコース傾向に適合するように調整される。
【0148】
一実施形態では、状態空間モデリング手順320は、以下を実行するように構成される。
・時間kにおいて、状態空間モデリング手順320は、p
nによって表される患者パラメータのセット270に基づいてグルコース測定値Z
nに対応するカルマン状態推定値
【数17】
を判定する。
・Mエポックごとに、状態空間モデリング手順320は、グルコース測定値262からのN個のグルコース測定値、送達されたインスリン量264、および時間n-Nにおける消費された食事情報266、および時間n-Nでの状態推定に基づいてユーザパラメータのセット270を推定する。一実施形態では、状態空間モデリング手順320は、最大事後法によってユーザパラメータのセット270を推定する。
・
【数18】
(7)
・
【数19】
、(8)
・ここで、p
MEAN、P
covは、ユーザパラメータのセット270pの分布の事前平均と共分散であり、R
MAPは、測定値の共分散であり、P
n-Nは、状態推定値X
n-Nの共分散であり、
【数20】
は、時間kにおける
【数21】
とモデルパラメータp
kから得られる状態である。
・Mエポックごとに、ユーザパラメータ270P
nの新しいセットに基づいて、状態空間モデリング手順320は時間n-Nから現在時刻nまでカルマンフィルタを実行する。
・状態空間モデリング手順320は、食事検出手順がモデルパラメータのセット270を推定しない場合(すなわち、カルマンフィルタの反復がMエポックに対応しない場合)、モデルパラメータのセット270、すなわちpn=pn-1を伝搬し、ワンステップカルマンフィルタを適用する。
【0149】
状態空間モデリング手順320は、データベース250に、モデルパラメータのセット270を格納し、反復ごとに状態推定値280を格納する。
【0150】
状態空間モデリング手順320は、データベース250に、実際のグルコース測定値znと予測グルコース測定値ynとの間の不一致を示すイノベーションパラメータvn、予測グルコース測定値yn、イノベーションパラメータvnの共分散Sn、およびカルマンゲインKnを格納する。一実施形態では、値は、人工膵臓システム200から取得することができる。
【0151】
一実施形態では、状態空間モデリング手順は、人工膵臓220で実行され得、出力は、電子デバイス100によって実行される不明な食事検出手順320に転送され得る。
【0152】
確率的検出手順
確率的検出手順360は、状態空間モデリング手順320に基づいて、ユーザ205が電子デバイス100を介して食事を記録していないかどうかを判定するために実行され、これがグルコース測定値の変化を引き起こす。
【0153】
グルコース測定値と予測グルコース測定値との間の不一致を示すイノベーションパラメータは、システムへの外乱によって引き起こされ得る大きな値(すなわち、状態パラメータの他の値と比較して)を有することがある。
【0154】
外乱は他の要因に起因することがあるため、確率的食事検出手順360は、仮説検定を使用して、ユーザ205によって記録されていない食事によって外乱が引き起こされるかどうかを判定し得る。2つの仮説が考えられる。
H0:最後のM回の反復で不明な食事は消費されなかった(カルマンフィルタは一貫している)。
H1:時間p∈[n-M、n]でシステムに通知せずに、サイズmの食事が消費された(カルマンフィルタに矛盾がある)。
【0155】
不明なパラメータθに依存する複雑な仮説の場合(この場合、θ=(p、m)ユーザ205による不明な食事の時間とサイズ)一般化尤度比検定(GLRT)を使用できる。Θがθのパラメータ空間である場合、2つの仮説は次の条件を満たす必要がある。
【0156】
【0157】
ここで、Θは離散集合Θ={(p,m)|p∈[n-M,n],m∈[m
min,m
min+Δm,…,m
max]}であり、ここで、m
min、m
maxは検出可能な最小および最大の不明な食事であり、Δmは不明な食事における検出可能な最小の差である。それらの定義で
【数23】
およびΘ
1=Θである。一実施形態では、mは最後の60分に等しく、Δm=60分、m
min=15g、およびm
max=90gである。
【0158】
一般化尤度比検定(GLRT)が使用される。GLRT統計は次のように記述される。
【0159】
【0160】
ここで、Vθはθに依存する確率分布関数を有する確率変数である。この場合、Vθはカルマンフィルタイノベーション{vn-M,…,vn}のプロセスを表す確率変数である。
【0161】
カルマンフィルタが一貫している帰無仮説P(Vθ|Hθ)は、次のように表すことができる。
【0162】
【0163】
対立仮説の下で、P(Vθ|H1)は、θ=(p、m)に対して次のように記述される。
【0164】
【0165】
そしてk∈[p+1,n]の場合、
【0166】
【0167】
ここで、Umはゼロと食事入力チャネルの値mを有する列ベクトルであり、Iは単位行列である。
【0168】
サイズmの食事が時間pで消費された場合、カルマンフィルタの仮説の正しい状態予測
【数28】
(計算されたカルマンフィルタの状態
【数29】
とは異なる)
【数30】
になるであろう。
【0169】
したがって、
【数31】
、
【数32】
、
【数33】
、
【数34】
、
【数35】
、
【数36】
、 (14)
【0170】
再帰によって、k∈[p+1,n]の場合、
【0171】
【0172】
したがって、真のイノベーションパラメータが
【数38】
、k∈[p+1、n]の場合、以下を満たす。
【0173】
【0174】
【数40】
は、共分散S
kを有するゼロ平均ガウス分布に従うため、v
kは、同じ共分散を有するガウス分布、およびk∈[n-M,p]である場合、ゼロ平均、または、k∈[p+1,n]である場合、
【数41】
の平均のいずれかに従う。
【0175】
【0176】
一実施形態では、θ*=(p*,m*)∈arg max P(Vθ=(p,m)|H1)は、確率的検出手順360で、仮想の不明な食事の最も可能性の高い時間とサイズとして定義されている。
【0177】
【数43】
のサンプリング分布は、自明ではないので、別のテスト統計が、次のような
【数44】
から導出される。
【0178】
【0179】
帰無仮説の下では、λは、共分散を有するゼロ平均ガウス分布に従う
【数46】
。
【0180】
したがって、確率的検出手順360は、λがP(λ>η|H0)<αを満たす基準閾値ηよりも小さい場合に、パラメータθ*を有する食事を検出する。一実施形態では、α=0.05である。αは、他の値も可能であると考えられる。
【0181】
確率的検出手順360は、情報をインスリンボーラス判定手順380に送信する。
【0182】
インスリンボーラス判定手順
インスリンボーラス判定手順380は、確率的検出手順360から、食事の不履行の可能性があるという指標を受信する。
【0183】
確率的食事検出手順360によって食事が検出されると、インスリンボーラス判定手順380は、食事サイズm*および時間p*を
θ*=(p*,m*)∈arg max P(Vθ=(p,m)|H1).
のように判定する。
【0184】
インスリンボーラス判定手順38は、食事m
*に関する新しい情報を用いて別のカルマンフィルタルーチンを実行するように構成される。患者の状態についてのより良好な推定を含む新しい状態が取得される。一実施形態では、
【数47】
が、新しい患者の状態における残りの消化されていない食事の推定値である場合、患者の安全
【数48】
は、20gなどの所与のn値に制限される場合がある。
【0185】
インスリンボーラス判定手順380は、インスリンボーラスを判定し、ここで、インスリンボーラスuは、残りの食事、患者の炭水化物比CR、血糖値G、グルコース目標Gtarget、患者固有の補正係数CF、および残りの残存インスリン(IOB)に比例する。インスリンボーラスは、のように表され得る。
【0186】
【0187】
インスリンボーラス判定手順380は、インスリンボーラスの指標をインスリン注入ポンプ240に送信し、これにより、インスリン注入ポンプ240がインスリンボーラスuを注入する。一実施形態では、インスリンボーラス判定手順380は、適切な行動を取ることができるユーザに(例として、電子デバイス100上の通知として)表示するためのインスリンボーラスの指標を送信する。
【0188】
方法の説明
図4は、本技術の非限定的な実施形態による、被験者におけるグルコース変化を判定するための方法400のフローチャートを示す。
【0189】
一実施形態では、方法400は、電子デバイス100などの非一時的記憶媒体に動作可能に接続されたプロセッサを含む電子デバイスによって実行される。
【0190】
一実施形態では、ソリッドステートドライブ120は、ランダムアクセスメモリ130にロードされ、かつ電子デバイス100のプロセッサ110および/またはGPU111によって実行されるのに好適なコンピュータ可読命令を格納する。プロセッサ110は、コンピュータ可読命令を実行すると、方法400を実行するように構成されるか、または動作可能である。
【0191】
方法400は、ステップ402で始まる。
【0192】
ステップ402において、電子デバイス100は、被験者、すなわち糖尿病ユーザ205の実際のグルコース測定値を受信する。一実施形態では、実際のグルコース測定値は、CGM230から受信される。他の実施形態では、実際のグルコース測定値は、別の非一時的記憶媒体に格納され得るか、または別の電子デバイス(図示せず)から受信され得る。
【0193】
ステップ404において、プロセッサ110は、過去の被験者モデルパラメータを受信する。一実施形態では、過去の被験者モデルパラメータは、ユーザ205の糖調節システムを表すパラメータであるモデルパラメータのセット270である。
【0194】
ステップ406において、プロセッサ110は、実際のグルコース測定値、および過去の被験者モデルパラメータに基づいて、被験者の状態ベースのモデルの被験者モデルパラメータを推定する。一実施形態では、電子デバイス100は、推定された被験者モデルパラメータに基づいて予測グルコース測定値を判定する。別の実施形態では、ステップ402から406は、被験者モデルパラメータを受信する単一のステップに置き換えることができ、被験者モデルパラメータは、別の電子デバイス(図示せず)によって判定されている場合がある。
【0195】
ステップ408において、プロセッサ110は、カルマンフィルタを使用して、被験者モデルパラメータおよび被験者の以前の状態に基づいて、イノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータを判定する。一実施形態では、イノベーションパラメータは、実際のグルコース測定値z
nと予測測定値
【数50】
との間の不一致を、状態ベースのモデルによって示す。
【0196】
ステップ410において、プロセッサ110は、判定されたイノベーションパラメータおよびイノベーション共分散パラメータに基づいてテスト統計を計算する。一実施形態では、テスト統計は、式(18)を使用して計算される。
【0197】
ステップ412において、プロセッサ110は、計算されたテスト統計を所与の閾値と比較する。一実施形態では、所与の閾値は、いくつかの偽陽性に基づいて事前に判定されている。
【0198】
ステップ414において、プロセッサ110は、計算されたテスト統計が所与の閾値を超えていることに応答して、食事が被験者によって消費されたことの指標を出力する。一実施形態では、電子デバイス100は、計算されたテスト統計に基づいてボーラスの値を計算し、ボーラスの値を人工膵臓システムに送信する。
【0199】
方法400は終了する。
【0200】
ここで
図5から
図8に目を向けると、シミュレーションと臨床データ実験の複数のプロットが示されている。
【0201】
シミュレーションの検証
シミュレーション実験は、次の目的で実施された。
・食事検出手順の感度、つまり、不明な食事の総数に対する検出された不明な食事の数を計算する。
・誤警報率、つまり食事が消費されていないときにアルゴリズムが食事を検出した回数を計算する。
・従来の閉ループインスリン投与アルゴリズムと一緒に食事検出手順を導入することによる、全体的な血糖コントロールへの影響の評価。
【0202】
シミュレーションのセットアップ
T1D患者の糖調節システムは非線形であり、時変である。患者内の変動および患者間の変動をシミュレートするために、Wilinskaらによって提示された、時変パラメータを有するシミュレーションモデルが実装された。患者間のばらつきを考慮するために、モデルパラメータは事前分布からランダムにサンプリングされる。さらに、個人内変動は、いくつかのパラメータを周期的に(ランダムな周波数と位相で)変動させることによって考慮される(表I)。シミュレーションは、グルコース測定値の相関ノイズ(変動係数7%および相関80%)で強化されている。
【表1】
【0203】
(表I)の分布からランダムにサンプリングされた512人の仮想の患者を使用して、「CL+MD」と称されるシミュレーション実験が実施される。食事検出手順は、モデル予測コントローラー(MPC)を使用して閉ループとともに実装される。シミュレーション実験(
図5A)は、仮想の患者が午前7時に40gの炭水化物(CHO)の朝食と、40g、60g、または80gのCHOのいずれかで構成される正午の昼食を消費する13時間のシミュレーションで構成されている。
【0204】
朝の朝食は、投与アルゴリズムに入力され、朝食時に食事を伴うボーラスが与えられる。昼食は、仮想の患者に与えられるが、インスリン投与アルゴリズムには予告されない。不明な食事と食事検出手順による所与のボーラスの影響が調査されるため、昼食後の食事は消費されない。血漿グルコースが2.7mmol/L未満の場合、15gのレスキューCHOが仮想の患者に与えられる。
【0205】
昼食の食事が投与アルゴリズムに予告されない1536のシミュレーション(3つの食事サイズx512人の仮想の患者)が実施された。真陽性(TP)は、食事検出手順が昼食の食事から120分以内に食事に正常にフラグを付けたときにカウントされる。偽陰性(FN)は、昼食の食事から120分以内にアルゴリズムによって食事がフラグ付けされなかったときにカウントされる。感度は、不明な食事の総数に対するTPの比率である。すべての食事(40g、60g、および80g)を組み合わせた場合の食事検出手順の感度は、93.23%である。他の統計は、表IIに見出すことができる。検出手順はグルコースの増加によって駆動されるため、アルゴリズムの感度は食事のサイズとともに低下することが観察されることが予想される(最小の感度は40gの食事の場合である)。60g CHOの不明な中程度の食事の場合、96.29%の確率で検出される。平均して、アルゴリズムは、2.6±1.2mmol/Lの閾値を超えるグルコース値のジャンプ後に食事を検出し、不明な食事の検出時間は約40分である。これらの値は、グルコースの増加から食事の影響を確認するのに合理的であるように思われる。他の研究でも、検出時間の同様の値が観察された。
【0206】
【0207】
偽陽性(FP)とは、不明な食事がない状態で食事が検出された場合である。19968時間のシミュレーション(13時間x1536シミュレーション)で、64 FPが発生し、これは、シミュレーションあたり4.17%のFP率を表する。40gの食事後のFPの比較的高い率(64の偽陽性のうち34)は、ほとんどの場合、グルコースのわずかな増加のために、不明な食事の検出が遅れたためである(120分の閾値の後)。代わりに180分を考慮した場合、FPカウントは(34ではなく)18になる。
図5Bは、遅いグルコースの増加後にFP検出が発生した場合を示す。送達されたボーラスは安全であり、低血糖症を引き起こさなかった。
【0208】
血糖コントロールへの影響
分類アルゴリズムはFPにフラグを付けやすいため、そのような事象の影響を評価することが重要である。また、閉ループシステムに食事検出手順を追加することによる、グルコースコントロールへの利点を調査する必要がある。したがって、これら2つの質問に答えるために、他の2つのシミュレーション実験が行われた。どちらの実験もCL+MD実験と同じ構造であった。仮想の患者が閉ループアルゴリズムを使用し、朝食および昼食の2つの食事を消費する、1536のシミュレーション(3つの食事サイズ×512人の仮想の患者)が実施された。ただし、どちらの実験でも、閉ループアルゴリズムは、食事検出手順のないMPCのみで構成されていた。
【0209】
「CL+B」と称される最初の実験は、昼食が予告されてボーラスされたシナリオをシミュレートする。「CL」と称される2番目の実験は、昼食が予告されず、MPCが血糖値の変化にのみ反応したシナリオをシミュレートする。2つの実験は、低血糖に費やされる予想時間と高血糖に費やされる時間の基本値を設定するのに役立つ。
【0210】
図6は、提案された食事検出手順の有効性を検証する閉ループアルゴリズムに食事検出手順を追加すると、高血糖に費やされる時間が34.9%から30.4%に大幅に改善されたことを示す。表IIIは、様々な食事の3つの実験における曲線下面積(AUC)の増分をより詳細に比較している。平均して、AUCはCLからCL+MDに19%改善される(ベースラインはCL+Bである)。
【表3】
【0211】
正確なボーラスが送達されたとき(CL+B)と比較して、低血糖の増加が観察されなかったため(
図6)、食事検出手順(CL+MD)は安全である。FPにフラグが付けられ、不要なボーラスが送達された場合の食事検出手順の安全性をさらに調査するために、FPにフラグが付けられたシミュレーション(n=64)の間で高血糖に費やされた時間が比較され、FPがないシミュレーション(n=1472)。FPにフラグ付けされたときに低血糖に費やされた時間(1.1±0.35%)は、FPがなかったときに低血糖に費やされた時間(0.76±0.08%)とは大きく異ならない(p=0.38)ことがわかった。これは、FPの検出と、開発されたアルゴリズムによる低血糖の原因との間に明らかな相関関係がないことを示唆している。FP後のアルゴリズムの安全性は、食事にフラグが付けられた後に送達されたインスリンボーラスが計算された方法に起因する。計算されたボーラスは、血糖値を目標値に戻す項((G
-G
target)/CF-IOB)、および検出された消費された食事をカバーする項の組み合わせである
【数51】
。残りの食事サイズ
【数52】
が、少ないCHO値(この場合は20g)に制限されているため、インスリンの過剰摂取のリスクが最小限に抑えられる。この投与戦略は、追加の低血糖事象を誘発しないことと、高血糖に費やされる時間を減らすこととの間の最良の妥協点であることが見出された。
【0212】
臨床の検証
実験の説明
入院中のT1Dの青年を対象に、ボーラス不履行後の食事検出モジュールの有無による閉ループインスリン送達と従来のポンプ療法との安全性と有効性を評価した現在進行中の臨床研究の予備研究結果が提示される。この研究は、患者ごとに3つのランダム化された治療介入で構成されていた。各患者はインスリンボーラスとともに朝食を消費した。朝食の4時間後、ボーラスなしで60gの昼食が患者に与えられた。治療介入に応じて、インスリン投与量は、閉ループアルゴリズム、食事検出モジュールを備えた閉ループアルゴリズム、または患者の従来のポンプ療法のいずれかに基づいていた。治療介入は昼食の6時間後に終了した。
図7は、食事検出手順が使用された治療介入からのデータを示す。
【0213】
患者の安全のために、血糖値が18mmol/Lを超えて維持された場合、補正ボーラスが送達された。これが発生した場合、血糖値は治療介入が終了するまで一定に保たれていると見なされる。
図8は、すべての治療介入を完了した4人の患者の増分AUCを示す。食事検出手順により、ボーラスの不履行後、AUCの増加が減少する場合があることを示す傾向が見られた。実際、AUCは、食事検出なしの16%と比較して、食事検出手順ありでは39%減少した(ベースラインは従来のインスリン療法である)。
【0214】
食事検出手順をさらに調査するために、108時間(4人の患者x3回の訪問x9時間)の臨床データを使用して、食事検出手順をオフラインで実行した。12回の不明な食事すべてが正常に検出され、FPにフラグが付けられることはなかった。食事の検出時間は35分である。食事検出時のグルコースの増加は2.89±1.72mmol/Lであり、食事検出の10分前のグルコースの増加は0.45±0.73mmol/Lである。
【0215】
本技術は、人工膵臓システムに関連して説明されてきたが、本技術を使用して、投与し忘れたインスリンをユーザに通知し、特定の投与量を推奨することができると考えられる。その後、ユーザは、投与し忘れたインスリンを自分自身に送達するなどの行動を取ることができる。別の用途では、従来のポンプ療法または頻回注射療法のユーザは、食事をしてボーラスを提供するのを忘れた場合に思い出させることができる。
【0216】
本技術はまた、注入セットの故障または食事を抜くなど、グルコース値を上昇させる障害を検出するために使用され得る。本技術は、オンラインまたはオフラインで、データの分析とモデル化、アルゴリズムのパフォーマンスの検証、および不明な食事と低血糖治療を特定するための非限定的な例として使用できる。
【0217】
本明細書で言及されるすべての技術的効果が、本技術のあらゆる実施形態において享受される必要があるわけではないことを明確に理解されたい。例えば、本技術の実施形態は、ユーザがこれらの技術的効果のいくつかを享受することなく実装され得るが、他の非限定的な実施形態は、ユーザが他の技術的効果を享受するか、または全く享受せずに実装され得る。
【0218】
これらのステップのいくつかおよび信号送受信は、当技術分野において周知であり、したがって、簡単にするために、この説明の特定の部分では省略されている。信号は、光学的手段(光ファイバ接続など)、電子的手段(有線または無線接続など)、および機械的手段(圧力ベース、温度ベース、または他の好適な物理的パラメータベースなど)を使用して送受信できる。
【0219】
本技術の上記の実装に対する修正および改善は、当業者には明らかになり得る。前述の説明は、限定的ではなく例示的であることを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者によって消費された食事を検出するためのコンピュータ実装の方法であって、前記方法が、プロセッサによって実行され、前記方法が、
実際のグルコース測定値と予測グルコース測定値との間の不一致を判定することと、
前記判定された不一致に少なくとも部分的に基づいて、食事が消費された確率を判定することと、
前記判定された確率に応答して、投薬ボーラスを判定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記食事が消費された確率を判定することが、少なくとも部分的に、実際の血糖値、目標血糖値、および残存インスリンに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
食事のサイズおよび前記食事の消費時間を推定することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記投薬ボーラスを判定することが、少なくとも部分的に、前記推定される食事のサイズおよび前記推定される食事の消費時間のうちの少なくとも1つに基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記食事が消費されたと判定することが、前記判定された確率が閾値を超えたことに応答する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】