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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099531
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 129/44 20060101AFI20240718BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240718BHJP
   C10N 40/26 20060101ALN20240718BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C10M129/44
C10N40:25
C10N40:26
C10N30:04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024057205
(22)【出願日】2024-03-29
(62)【分割の表示】P 2020572805の分割
【原出願日】2019-06-20
(31)【優先権主張番号】62/690,374
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン ホーテン、ビルヘルムス ペトリュス アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ユークス、ロナルド テオドルス フェイク
(72)【発明者】
【氏名】ブルックハート、トッド
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BH03A
4H104CB02A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EB04
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104EB15
4H104LA02
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善された性能上の利点を提供する潤滑添加剤を含める内燃エンジン用潤滑油組成物及び内燃エンジンを潤滑する方法を提供する。
【解決手段】(a)50重量%を超える、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油及びそれらの混合物から選択される潤滑粘度の基油と、(b)0.1~20重量%のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が12~40個の炭素原子を有する、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、金属清浄剤とを含み、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物であり、ASTM D2896によって測定したTBNが5~200mg KOH/gである、上記潤滑油組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、(a)50重量%を超える潤滑粘度の基油と、(b)0.1~20重量%のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が12~40個の炭素原子を有する、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸とを含み、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物であり、ASTM D2896によって測定したTBNが5~200mg KOH/gである、上記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり14~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり20~24個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり20~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記アルファオレフィンが、ノルマルアルファオレフィン、異性化されたノルマルアルファオレフィン、又はそれらの混合物である、請求項2、3、及び4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の量が、前記潤滑油組成物の1.0~5.0重量%の範囲にある、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物が、5~10mg KOH/g、15~150mg KOH/g、20~80mg KOH/g、30~100mg KOH/g、30~80mg KOH/g、60~100mg KOH/g、60~150mg KOH/gの範囲の1つにあるTBNを有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
金属清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、解乳化剤、発泡防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、非イオン性界面活性剤、及び増粘剤のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
内燃エンジンを潤滑する方法であって、請求項1に記載の潤滑油組成物を前記内燃エンジンに供給することを含む、方法。
【請求項10】
前記内燃エンジンが圧縮点火エンジンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮点火エンジンが、250~1100rpmで作動する4ストロークエンジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧縮点火エンジンが、200rpm以下で作動する2ストロークエンジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮点火エンジンが、残渣燃料、船舶用残渣燃料、低硫黄船舶用残渣燃料、船舶用留出燃料、低硫黄船舶用留出燃料、高硫黄燃料、又はガス状燃料である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は通常、金属清浄剤添加剤と配合される。しかしながら、例えば船舶用ディーゼル潤滑剤に存在する過剰な過塩基性清浄剤は、著しく過剰な塩基性部位を生成し、不溶性金属塩を含む未使用の過塩基性清浄剤のミセルを不安定化させるおそれが生じる。この不安定化により、灰形成において不溶性金属塩の堆積物が形成され、シリンダーの壁及び他のエンジン構成要素に沈着する。
【0003】
したがって、過塩基性金属清浄剤の追加濃度に寄与しない、改善された性能上の利点を提供する潤滑添加剤を含めることが望ましい。
【0004】
本開示は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用することによって潤滑剤の性能の改善を達成することを対象としている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、潤滑油組成物であって、(a)50重量%を超える潤滑粘度の基油と、(b)0.1~20重量%のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が12~40個の炭素原子を有する、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸とを含み、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物であり、ASTM D2896によって測定して、TBNが5~200mg KOH/gである、潤滑油組成物が提供される。
【0006】
別の態様では、本明細書に開示される潤滑油組成物を内燃エンジンに供給することを含む、内燃エンジンを潤滑する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
序文
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用される場合、以下に帰属する意味を有する。
【0008】
「主要量」とは、組成物の50重量%より多いことを意味する。
【0009】
「少量」とは、組成物の50重量%より少ないことを意味する。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「アルファオレフィン」とは、炭素原子の最も長い連続鎖の第1及び第2の炭素原子間に炭素-炭素二重結合を有するオレフィンを指す。「アルファオレフィン」という用語は、特に明記しない限り、直鎖及び分岐鎖アルファオレフィンを含む。分岐鎖アルファオレフィンの場合、分岐は、オレフィン二重結合に対して2位(ビニリデン)及び/又は3位若しくはそれ以上の位置にあり得る。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合は常に、「ビニリデン」という用語は、オレフィン二重結合に対して2位に分岐を有するアルファオレフィンを指す。アルファオレフィンは、ほとんどの場合異性体の混合物であり、多くの場合、様々な炭素数の化合物の混合物でもある。C、C、C10、C12、C14アルファオレフィンなどの低分子量アルファオレフィンは、ほとんどが1-オレフィンである。C16-C18又はC20-C24などの高分子量のオレフィンカットでは、内部又はビニリデンの位置に異性化された二重結合の割合が増加している。
【0011】
「ノルマルアルファオレフィン」とは、第1及び第2の炭素原子間に炭素-炭素二重結合を有する直鎖脂肪族モノオレフィンを指す。「直鎖アルファオレフィン」という用語は、第1及び第2の炭素原子間に二重結合を有する直鎖オレフィン化合物を含み得るので、「ノルマルアルファオレフィン」は「直鎖アルファオレフィン」と同義ではないことに留意されたい。
【0012】
「異性化されたオレフィン」又は「異性化されたノルマルアルファオレフィン」とは、オレフィンを異性化することによって得られるオレフィンを指す。一般に、異性化されたオレフィンは、それらが由来する出発オレフィンとは異なる位置に二重結合を有し、また、異なる特性を有し得る。
【0013】
「TBN」とは、ASTM D2896で測定された総塩基価を意味する。
【0014】
「KV100」とは、ASTM D445で測定された100℃での動粘度を意味する。
【0015】
「重量パーセント」(重量%)は、特に明記しない限り、記載されている成分、化合物、又は置換基が組成物全体の総重量において表すパーセンテージを意味する。
【0016】
報告されているすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、有効成分ベースの(すなわち、担体又は希釈油に関係なく)重量%である。潤滑油添加剤の希釈油は、任意の適切な基油(例えば、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループIV基油、グループV基油、又はそれらの混合物)であり得る。
【0017】
潤滑油組成物
本開示の潤滑油組成物は、(a)50重量%を超える潤滑粘度の基油と、(b)0.1~20重量%のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が12~40個の炭素原子を有する、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸とを含み、潤滑油組成物は、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物であり、ASTM D2896によって測定して、TBNが5~200mg KOH/gである。
【0018】
潤滑油組成物は、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物である。SAE20油の動粘度は、100℃で6.9~<9.3mm/sである。SAE30油の動粘度は、100℃で9.3~<12.5mm/sである。SAE40油の動粘度は、100℃で12.5~<16.3mm/sである。SAE50油の動粘度は、100℃で16.3~<21.9mm/sである。SAE60油の動粘度は、100℃で21.9~<26.1mm/sである。
【0019】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、船舶用シリンダー潤滑剤(MCL)としての使用に適している。船舶用シリンダー潤滑剤は、通常、シリンダーライナー壁に高温で十分な厚さの潤滑膜を提供するために、SAE30、SAE40、SAE50、又はSAE60モノグレード仕様に準拠して製造される。通常、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤のTBNは、15~200mg KOH/g(例えば、15~150mg KOH/g、15~60mg KOH/g、20~200mg KOH/g、20~150mg KOH/g、20~120mg KOH/g、20~80mg KOH/g、30~200mg KOH/g、30~150mg KOH/g、30~120mg KOH/g、30~100mg KOH/g、30~80mg KOH/g、60~200mg KOH/g、60~150mg KOH/g、60~120mg KOH/g、60~100mg KOH/g、60~80mg KOH/g、80~200mg KOH/g、80~150mg KOH/g、80~150mg 120 KOH/g、120~200mg KOH/g、又は120~150mg KOH/g)の範囲である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本潤滑油組成物は、船舶用システム油としての使用に適している。船舶用システム油潤滑剤は、通常、SAE20、SAE30、又はSAE40モノグレード仕様で製造される。船舶用システム油の粘度は、使用中にシステム油の粘度が上昇する可能性があり、エンジン設計者が操作上の問題を防ぐために粘度上昇限界を設定しているため、このような比較的低いレベルに設定されている。通常、船舶用システム油潤滑剤のTBNは、5~12mg KOH/g(例えば、5~10mg KOH/g、又は5~9mg KOH/g)の範囲である。
【0021】
いくつかの実施形態では、本潤滑油組成物は、船舶用トランクピストンエンジン油(TPEO)としての使用に適している。船舶用TPEO潤滑剤は、通常、SAE30又はSAE40モノグレード仕様で製造される。通常、船舶用TPEO潤滑剤のTBNは、10~60mg KOH/g(例えば、10~30mg KOH/g、20~60mg KOH/g、20~40mg KOH/g、30~60mg KOH/g、又は30~55mg KOH/g)の範囲である。
【0022】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油は、米国石油協会(API)の基油互換性ガイドライン(API 1509)で指定されているように、グループI~Vの基油のいずれかから選択され得る。5つの基油グループを表1にまとめる。
【表1】
【0023】
グループI、II、及びIIIは、鉱油プロセスストックである。グループIV基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有する。多くのグループV基油も真の合成製品であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族化合物、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然に存在する油でもあり得る。グループIII基油は鉱油に由来するが、これらの流体が受ける厳密な処理により、PAOなどの一部の真の合成油と非常に類似した物理的特性が生じることに留意されたい。したがって、グループIII基油に由来する油は、業界では合成流体と呼ばれることがある。
【0024】
開示される潤滑油組成物に使用される基油は、鉱油、動物油、植物油、合成油、又はそれらの混合物であり得る。適切な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製、及び再精製油、及びそれらの混合物に由来し得る。
【0025】
未精製油とは、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するもので、精製処理を行わない、又はほとんど行わないものである。精製油は、1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて、未精製油と同様であり、これにより、1つ以上の特性が向上する場合がある。適切な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸出などである。食用品の品質に精製された油は、有用な場合と有用ではない場合がある。食用油は白色油と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又は白色油を含まない。
【0026】
再精製油は、再生油又は再処理油としても知られる。これらの油は、同じ又は同様のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去に関する技術によってさらに処理される。
【0027】
鉱油には、掘削によって、又は植物及び動物、又はそれらの任意の混合物から得られた油が含まれ得る。このような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナッツ油、コーン油、大豆油、亜麻仁油、並びに液体石油系油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくはパラフィン系-ナフテン系混合型の溶媒処理若しくは酸処理系鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油が挙げられる。このような油は、必要に応じて、部分的又は完全に水素化することができる。石炭又は頁岩に由来する油も有用であり得る。
【0028】
有用な合成潤滑油としては、重合、オリゴマー化、又は相互重合されたオレフィンなどの炭化水素油(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン/イソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体又はオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)、そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる、及びそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体及び同族体又はそれらの混合物が挙げられる。ポリアルファオレフィンは通常、水素化された材料である。
【0029】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又は高分子テトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成することができ、通常、水素化異性化されたフィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュのガスから液体への合成手順、並びに他のガスから液体への油によって調製され得る。
【0030】
本開示で有用な配合潤滑油に使用する基油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油及びそれらの混合物に対応する様々な油のいずれかである。一実施形態では、基油は、グループII基油又は2つ以上の異なる基油のブレンド(例えば、グループI及びグループII基油の混合物)である。別の実施形態では、基油は、グループI基油、又は2つ以上の異なるグループI基油のブレンドである。適切なグループI基油には、例えば、軽質中性(Light Neutral)、中間中性(Medium Neutral)、及び重質中性(Heavy Neutral)ベースストックなどの、真空蒸留塔からの任意の軽質オーバーヘッドカット(light overhead cut)が含まれる。基油はまた、残留基油ストック又はブライトストックなどの底部留分を含み得る。ブライトストックは、従来、残留ストック又は低部留分から製造され、高度に精製及び脱ワックスされた高粘度の基油である。ブライトストックは、40℃で180mm/sを超える動粘度(例えば、250mm/sを超える、又は500~1100mm/sの範囲)を有し得る。
【0031】
基油は、本開示の潤滑油組成物の主成分を構成し、組成物の総重量に基づいて、50重量%を超える量(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%)で存在する。基油は、100℃で測定して、2~40mm/sの動粘度を有すると便利である。
【0032】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸
本開示のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、潤滑粘度の油と比較して少量で潤滑油組成物中に存在するであろう。本開示の潤滑油中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の濃度は、潤滑油の総重量に基づいて、0.1~20重量%以上(例えば、0.25~15重量%、0.5~10重量%、0.75~5重量%、又は1~5重量%、又は2~5重量%))の範囲であり得る。
【0033】
本開示の一実施形態は、以下の構造(1):
【化1】

によって表されるアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸に関し、
式中、カルボン酸基は、ヒドロキシル基に対して、オルト、メタ、若しくはパラ位、又はそれらの混合位にあってよく、Rは、12~40個の炭素原子(例えば、14~28個の炭素原子、14~18個の炭素原子、18~30個の炭素原子、20~28個の炭素原子、又は20~24個の炭素原子)を有するアルキル置換基である。
【0034】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基は、12~40個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基であり得る。一実施形態では、アルキル置換基は、14~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である。一実施形態では、アルキル置換基は、14~18個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である。一実施形態では、アルキル置換基は、20~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である。一実施形態では、アルキル置換基は、20~24個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基は、プロピレン、ブチレン、又はそれらの混合物から選択されるモノマーのC12~C40オリゴマーを含むオレフィンに由来する残基である。そのようなオレフィンの例としては、プロピレン四量体、ブチレン三量体、イソブチレンオリゴマー(例えば、ポリイソブチレン)、テトラマーダイマーなどが挙げられる。使用されるオレフィンは、直鎖、異性化直鎖、分岐鎖又は部分的に分岐鎖の直鎖であり得る。オレフィンは、直鎖オレフィンの混合物、異性化直鎖オレフィンの混合物、分岐鎖オレフィンの混合物、部分的に分岐鎖の直鎖の混合物、又は前述のいずれかの混合物であり得る。アルファオレフィンは、ノルマルアルファオレフィン、異性化されたノルマルアルファオレフィン、又はそれらの混合物であり得る。
【0035】
アルキル置換基が異性化アルファオレフィンに由来する残基である一実施形態では、アルファオレフィンは、0.1~0.4(例えば、0.1~0.3、又は0.1~0.2)の異性化レベル(I)を有し得る。異性化レベル(I)は、H NMR分光法によって決定することができ、メチレン骨格基(-CH-)(化学シフト1.01~1.38ppm)に結合したメチル基((-CH)(化学シフト0.30~1.01ppm)の相対量を表し、以下の式:
I=m/(m+n)
で定義され、
式中、mは、0.30±0.03~1.01±0.03ppmの化学シフトを有するメチル基のH NMR積分であり、nは、1.01±0.03~1.38±0.10ppmの化学シフトを有するメチレン基のH NMR積分である。
【0036】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、以下の構造(2):
【化2】

によって表すことができ、
式中、Rは、本明細書で上記した通りである。
【0037】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、米国特許第8,704,006号に記載されているような、ヒドロキシ芳香族化合物(例えば、フェノール)及びβ分岐鎖第一級アルコール(例えば、C12-C40ゲルベタイプのアルコール)のアルキル化生成物であるアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物に由来する。
【0038】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、蒸留カシューナッツ殻液(CNSL)又は水素化蒸留CNSLなどのアルキルフェノール化合物の再生可能な供給源に由来する。蒸留CNSLは、メタヒドロカルビル置換フェノールの混合物であり、ヒドロカルビル基は直鎖及び不飽和であり、カルダノールを含む。蒸留CNSLの接触水素化により、主として3-ペンタデシルフェノールに富むメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0039】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、例えば、米国特許第8,030,258号及び第8,993,499号に記載されているような当技術分野で知られている方法によって調製することができる。
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を調製するためのプロセス
【0040】
本開示のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を製造するための当業者に知られている任意のプロセスによって調製することができる。例えば、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を調製するためのプロセスは、(a)ヒドロキシ芳香族化合物をオレフィンでアルキル化して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を生成すること、(b)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩基と反応させて、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩を生成すること、(c)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩をカルボキシル化剤(例えば、CO)でカルボキシル化して、アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレートを生成すること、及び(d)アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレートを、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を生成するのに十分強い酸の水溶液で酸性化することを含み得る。
【0041】
(A)アルキル化
アルキル化は、ヒドロキシ芳香族化合物又はヒドロキシ芳香族化合物の混合物、オレフィン又はオレフィンの混合物、及び酸触媒を含む炭化水素供給物を、撹拌を維持した反応ゾーンに投入することによって実施することができる。得られた混合物は、オレフィンのヒドロキシ芳香族アルキレートへの実質的な変換(例えば、少なくとも70%モル%のオレフィンが反応した)を可能にするのに十分な時間、アルキル化条件下でアルキル化ゾーンに保持される。所望の反応時間の後、反応混合物をアルキル化ゾーンから除去し、液液分離器に供給して、炭化水素生成物を酸触媒から分離させ、これを閉ループで反応器に再循環させることができる。炭化水素生成物をさらに処理して、過剰な未反応のヒドロキシ芳香族化合物及びオレフィン化合物を所望のアルキレート生成物から除去することができる。過剰なヒドロキシ芳香族化合物は、反応器に再循環することもできる。
【0042】
適切なヒドロキシ芳香族化合物には、単環式ヒドロキシ芳香族化合物、及び1つ以上のベンゼン環などの1つ以上の芳香族部分を含み、任意選択的に一緒に融合されるか、さもなければアルキレンブリッジを介して接続される多環式ヒドロキシ芳香族化合物が含まれる。例示的なヒドロキシ芳香族化合物としては、フェノール、クレゾール、及びナフトールが挙げられる。一実施形態では、ヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。一実施形態では、ヒドロキシ芳香族化合物はナフトールである。
【0043】
使用されるオレフィンは、直鎖、異性化直鎖、分岐鎖又は部分的に分岐鎖の直鎖であり得る。オレフィンは、直鎖オレフィンの混合物、異性化直鎖オレフィンの混合物、分岐鎖オレフィンの混合物、部分的に分岐鎖の直鎖の混合物、又は前述のいずれかの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、オレフィンは、ノルマルアルファオレフィン、異性化されたノルマルアルファオレフィン、又はそれらの混合物である。
【0044】
いくつかの実施形態では、オレフィンは、分子あたり12~40個の炭素原子(例えば、分子あたり14~28個の炭素原子、分子あたり14~18個の炭素原子、分子あたり18~30個の炭素原子、分子あたり20~28個の炭素原子、分子あたり20~24個の炭素原子)を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。いくつかの実施形態では、ノルマルアルファオレフィンは、固体又は液体触媒の少なくとも1つを使用して異性化される。
【0045】
別の実施形態では、オレフィンは、プロピレン、ブチレン又はそれらの混合物から選択されるモノマーのC12~C40オリゴマーを含む1つ以上のオレフィンを含む。一般に、1つ以上のオレフィンは、プロピレン、ブチレン、又はそれらの混合物から選択されるモノマーのC12~C40オリゴマーの主要量を含むであろう。そのようなオレフィンの例としては、プロピレン四量体、ブチレン三量体などが挙げられる。当業者であれば容易に理解されるように、他のオレフィンが存在し得る。例えば、C12~C40のオリゴマーに加えて使用できる他のオレフィンとしては、直鎖オレフィン、環状オレフィン、ブチレン又はイソブチレンオリゴマーなどのプロピレンオリゴマー以外の分岐鎖オレフィン、アリールアルキレンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。適切な直鎖オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。特に適切な直鎖オレフィンは、エチレンオリゴマー化又はワックスクラッキングなどのプロセスから得ることができる、C16~C30のノルマルアルファオレフィンなどの高分子量のノルマルアルファオレフィンである。適切な環状オレフィンとしては、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。適切な分岐鎖オレフィンとしては、ブチレン二量体又は三量体又は高分子量イソブチレンオリゴマーなど、及びそれらの混合物が挙げられる。適切なアリールアルキレンとしては、スチレン、メチルスチレン、3-フェニルプロペン、2-フェニル-2-ブテンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
反応器ゾーンには、任意の適切な反応器構成を使用することができる。これらには、バッチ式及び連続撹拌槽型反応器、反応器ライザー構成、及び沸騰又は固定床反応器が含まれる。
【0047】
アルキル化は、15℃~200℃の温度で、供給成分のかなりの部分が液相のままであるのに十分な圧力で実施することができる。通常、供給物及び生成物を液相に維持するには、0~150psigの圧力で十分である。
【0048】
反応器内での滞留時間は、オレフィンのかなりの部分をアルキレート生成物に変換するのに十分な時間である。必要な時間は30秒~約300分であり得る。より正確な滞留時間は、アルキル化プロセスの動力学を測定するためのバッチ式撹拌反応器を使用して当業者によって決定され得る。
【0049】
少なくとも1つのヒドロキシ芳香族化合物又はヒドロキシ芳香族化合物の混合物及びオレフィンの混合物は、反応ゾーンに別々に注入することができ、又は注入前に混合することができる。単一及び複数の反応ゾーンの両方を、ヒドロキシ芳香族化合物及びオレフィンを1つ、いくつか、又はすべての反応ゾーンに注入することで使用することができる。反応ゾーンを同じプロセス条件で維持する必要はない。
【0050】
アルキル化プロセスのための炭化水素供給物は、ヒドロキシ芳香族化合物とオレフィンとのモル比が0.5:1~50:1以上であるように、ヒドロキシ芳香族化合物の混合物とオレフィンの混合物とを含み得る。ヒドロキシ芳香族化合物とオレフィンとのモル比が1:1より大きい場合、ヒドロキシ芳香族化合物が過剰に存在する。好ましくは、過剰のヒドロキシ芳香族化合物を使用して、反応速度を増加させ、生成物の選択性を改善する。過剰のヒドロキシ芳香族化合物が使用される場合、反応器流出物中の過剰の未反応ヒドロキシ芳香族化合物は、分離され(例えば、蒸留によって)、反応器に再循環され得る。
【0051】
典型的には、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、モノアルキル置換異性体の混合物を含む。アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基は、典型的には、ヒドロキシル基に対して、主にオルト及びパラ位でヒドロキシ芳香族化合物に結合している。一実施形態では、アルキル化生成物は、1~99%のオルト異性体及び99~1%のパラ異性体を含み得る。別の実施形態では、アルキル化生成物は、5~70%のオルト異性体及び95~30%のパラ異性体を含み得る。
【0052】
酸性アルキル化触媒は、ブレンステッド酸又はルイス酸などの強酸触媒である。有用な強酸触媒としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、AMBERLYST(登録商標)36スルホン酸(The Dow Chemical Company社から入手可能)、硝酸、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、五塩化アンチモンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。酸性イオン液体は、アルキル化プロセスで一般的に使用される強酸触媒の代替として使用することができる。
【0053】
(B)中和
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩基(例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの酸化物又は水酸化物)で中和される。中和は、軽溶媒(例えば、トルエン、キシレン異性体、軽アルキルベンゼンなど)の存在下で起こり、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩を形成し得る。一実施形態では、溶媒は水と共沸混合物を形成する。別の実施形態では、溶媒は、2-エチルヘキサノールなどのモノアルコールであり得る。この場合、2-エチルヘキサノールは、カルボキシル化の前に蒸留によって除去される。溶媒導入の目的は、水の除去を促進することである。
【0054】
中和は、水分を除去するのに十分な高温で行われる。より低い反応温度を必要とするために、中和はわずかな真空下で行われ得る。
【0055】
一実施形態では、キシレンが溶媒として使用され、反応は、約80kPaの絶対圧下で、130℃~155℃の温度で行われる。
【0056】
別の実施形態では、2-エチルヘキサノールが溶媒として使用される。2-エチルヘキサノールの沸点(184℃)はキシレン(140℃)よりも大幅に高いため、中和は少なくとも150℃の温度で行われる。
【0057】
水の蒸留を完了するために、圧力を大気圧よりも徐々に低下させることができる。一実施形態では、圧力は、7kPa以下に低減される。
【0058】
操作を十分に高い温度で実行し、反応器内の圧力を大気圧よりも徐々に低下させることによって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩の形成は、溶媒を添加する必要なしに実行され、この反応中に形成された水と共沸混合物を形成する。例えば、温度は200℃まで上昇し、その後、圧力は大気圧よりも徐々に低減される。好ましくは、圧力は7kPa以下に低減される。
【0059】
水の除去は、少なくとも1時間(例えば、少なくとも3時間)の期間にわたって起こり得る。
【0060】
試薬の量は、アルカリ金属塩基とアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物とのモル比が0.5:~1.2:1(例えば、0.9:1~1.05:1)、及び溶媒とアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物との重量/重量比が0.1:1~5:1(例えば、0.3:1~3:1)に対応し得る。
【0061】
(C)カルボキシル化
カルボキシル化ステップは、前の中和ステップから生じる反応媒体に二酸化炭素(CO)を単にバブリングすることによって行われ、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の出発アルカリ金属塩の少なくとも50モル%がアルカリ金属アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレート(電位差測定によってヒドロキシ安息香酸として測定)に変換されるまで行われる。
【0062】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の出発アルカリ金属塩の少なくとも50モル%(例えば、少なくとも75モル%、又は少なくとも85モル%)が、0.1~1.5MPaの圧力下で1~8時間の間、110℃~200℃の温度で、COを使用してアルカリ金属アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレートに変換される。
【0063】
カリウム塩を用いた1つの変形形態では、温度は125℃~165℃(例えば、130℃~155℃)であってもよく、圧力は0.1~1.5MPa(例えば、0.1~0.4MPa)であり得る。
【0064】
ナトリウム塩を用いた別の変形形態では、温度は方向的により低く、110℃~155℃(例えば、120℃~140℃)であってもよく、圧力は0.1~2.0MPa(例えば、0.3~1.5MPa)であり得る。
【0065】
カルボキシル化は、通常、炭化水素又はアルキレート(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などの希釈剤中で行われる。この場合、溶媒とアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩との重量比は、0.1:1~5:1(例えば、0.3:1~3:1)の範囲であり得る。
【0066】
別の変形形態では、溶媒は使用されない。この場合、粘度が高すぎる材料を避けるために、希釈油の存在下でカルボキシル化が行われる。希釈油とアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩との重量比は、0.1:1~2:1(例えば、0.2:1~1:1、又は0.2:1~0.5:1)の範囲であり得る。
【0067】
(D)酸性化
次に、上記で生成されたアルカリ金属アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレートを、アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレートをアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸に変換することができる少なくとも1つの酸と接触させる。そのような酸は、前述のアルカリ金属塩を酸性化することが当技術分野でよく知られている。通常、塩酸又は硫酸水溶液が利用される。
【0068】
その他の性能添加剤
本開示の配合潤滑油は、他の一般的に使用される潤滑油性能添加剤のうちの1つ以上をさらに含有し得る。このような任意選択の成分としては、清浄剤(例えば、金属清浄剤)、分散剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、解乳化剤、発泡防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、非イオン性界面活性剤、増粘剤などが挙げられる。いくつかは、以下でさらに詳細に説明する。
【0069】
清浄剤
清浄剤は、ピストンの堆積物、例えばエンジン内の高温のワニス及びラッカーの堆積物の形成を低減する添加剤であり、通常、酸を中和する特性を有し、細かく分割された固体を懸濁状態に保つことができる。ほとんどの清浄剤は、酸性有機化合物の金属塩である金属「石鹸」に基づく。
【0070】
清浄剤は一般に、長い疎水性尾部を備えた極性頭部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は、実質的に化学量論量の金属を含んでもよく、その場合、通常、正塩又は中性塩として記載され、典型的には、100%活性質量で0~<100mg KOH/gのTBNを有し得る。酸化物又は水酸化物などの過剰の金属化合物と二酸化炭素などの酸性ガスとの反応により、大量の金属塩基を含めることができる。
【0071】
得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外層として中和された清浄剤を含む。そのような過塩基性清浄剤は、100%活性質量で100mg KOH/g以上(例えば、200~500mg KOH/g以上)のTBNを有し得る。
【0072】
使用できる清浄剤としては、油溶性の中性及び過塩基性スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート、及びナフテネート、並びに金属、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウム)のその他の油溶性カルボキシレートが挙げられる。最も一般的に使用される金属は、Ca及びMg、並びにCa及び/又はMgとNaとの混合物であり、Ca及びMgは両方とも潤滑組成物に使用される清浄剤中に存在し得る。清浄剤は様々な組み合わせで使用され得る。
【0073】
清浄剤は、潤滑油組成物の0.5~20重量%で存在し得る。
【0074】
分散剤
エンジンの運転中に、油不溶性の酸化副産物が生成される。分散剤は、これらの副産物を溶液中に保つのに役立ち、金属表面へのこれらの堆積を減少させる。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加したときに通常はいかなる灰分にも寄与しないため、無灰型分散剤としてよく知られている。無灰型分散剤は、比較的高分子又は高重量の炭化水素鎖に結合した極性基によって特徴付けられる。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、500~5000ダルトン(例えば、900~2500ダルトン)の範囲のポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製物は、例えば、米国特許第4,234,435号及び第7,897,696号に開示されている。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されるイミドである。
【0075】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、500~5000ダルトン(例えば、900~2500ダルトン)の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンに由来する少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用することができる。
【0076】
分散剤はまた、様々な薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理され得る。これらの薬剤の中には、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸)及び環状カルボネート(エチレンカルボネート)がある。
【0077】
別のクラスの分散剤には、マンニッヒ塩基が含まれる。マンニッヒ塩基は、高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号に詳細に記載されている。
【0078】
別のクラスの分散剤には、ヒドロカルビルアシル化剤と、グリセロール、ペンタエリスリトール、又はソルビトールなどの多価脂肪族アルコールとの反応によって調製される高分子量エステルが含まれる。そのような材料は、米国特許第3,381,022号に詳細に記載されている。
【0079】
別のクラスの分散剤には、高分子量エステルアミドが含まれる。
【0080】
分散剤は、潤滑油組成物の0.1~10重量%で存在することができる。
【0081】
耐摩耗剤
耐摩耗剤は、摩擦及び過度の摩耗を低減し、通常は硫黄若しくは亜リン酸、又はその両方を含有する化合物に基づく。注目に値するのは、金属がアルカリ若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、又は亜鉛であり得るジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩である。亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、以下の式:
Zn[SP(S)(OR)(OR’)]
で表すことができ、
式中、R及びR’は、1~18(例えば、2~12)個の炭素原子を含む同じ又は異なるヒドロカルビルラジカルであり得る。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の炭素原子の総数(すなわち、R及びR’)は、一般に5以上である。
【0082】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の0.1~6重量%で存在することができる。
【0083】
抗酸化剤
抗酸化剤は、使用中の基油の酸化分解を遅らせる。このような劣化は、金属表面への堆積物、スラッジの存在、又は潤滑剤の粘度上昇を引き起こす可能性がある。
【0084】
有用な抗酸化剤には、ヒンダードフェノールが含まれる。ヒンダードフェノール抗酸化剤は、立体障害基として、しばしば第二級ブチル基及び/又は第三級ブチル基を含む。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には直鎖又は分岐鎖アルキル)及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換され得る。ヒンダードフェノール抗酸化剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-アルキル-フェノールプロピオン酸エステル誘導体、並びに4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)などのビスフェノールが挙げられる。
【0085】
硫化アルキルフェノール及びそれらのアルカリ及びアルカリ土類金属塩もまた、抗酸化剤として有用である。
【0086】
使用できる非フェノール系抗酸化剤には、ジアリールアミン及びアルキル化ジアリールアミンなどの芳香族アミン抗酸化剤が含まれる。芳香族アミン抗酸化剤の特定の例としては、フェニル-α-ナフチルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、ブチル化/オクチル化ジフェニルアミン、ノニル化ジフェニルアミン、及びオクチル化フェニル-α-ナフチルアミンが挙げられる。
【0087】
抗酸化剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%で存在することができる。
【0088】
摩擦調整剤
摩擦調整剤は、そのような材料を含む潤滑剤又は流体によって潤滑された表面の摩擦係数を変えることができる任意の材料である。適切な摩擦調整剤としては、脂肪アミン、ホウ酸グリセロールエステルなどのエステル、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ酸脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、又は脂肪イミダゾリン、及びカルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物が挙げられる。本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関連する「脂肪」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には直鎖炭素鎖を意味する。モリブデン化合物もまた、摩擦調整剤として知られている。摩擦調整剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%で存在することができる。
【0089】
防錆剤
防錆剤は一般に、潤滑された金属表面を水又はその他の汚染物質による化学的攻撃から保護する。適切な防錆剤には、非イオン性の適切な防錆剤が含まれ、非イオン性ポリオキシアルキレン剤(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリエチレングリコールモノオレエート);ステアリン酸及び他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属石鹸;脂肪酸アミン塩;重スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸、その部分エステル及びその窒素含有誘導体;並びに合成アルカリルスルホネート(例えば、金属ジノニルナフタレンスルホネート)が含まれ得る。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%で存在することができる。
【0090】
解乳化剤
解乳化剤は、水又は蒸気にさらされた潤滑油組成物の油水分離を促進する。適切な解乳化剤には、リン酸トリアルキル、並びにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はそれらの混合物の様々なポリマー及びコポリマーが含まれる。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%で存在することができる。
【0091】
発泡防止剤
発泡防止剤は、安定した泡の形成を遅らせる。シリコーン及び有機ポリマーは典型的な発泡防止剤である。例えば、シリコン油などのポリシロキサン、又はポリジメチルシロキサンは、泡抑制特性を提供する。さらなる発泡防止剤には、アクリル酸エチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルのコポリマー、及び任意選択的に酢酸ビニルが含まれる。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.001~1重量%で存在することができる。
【0092】
粘度調整剤
粘度調整剤は、高温及び低温での操作性を備えた潤滑剤を提供する。これらの添加剤は、高温でのせん断安定性と低温での許容可能な粘度とを付与する。適切な粘度調整剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、及び水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマーが挙げられる。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.1~15重量%で存在することができる。
【0093】
流動点降下剤
流動点降下剤は、流体が流れる、又は注ぐことができる最低温度を下げる。適切な流動点降下剤の例としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、及びジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル及びアリルビニルエーテルが挙げられる。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.01~1重量%で存在することができる。
【0094】
非イオン性界面活性剤
アルキルフェノールなどの非イオン性界面活性剤は、エンジン運転中のアスファルテンの処理を改善する可能性がある。このような材料の例としては、9~30個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基からのアルキル置換基を有するアルキルフェノールが挙げられる。他の例としては、アルキルベンゼノール、アルキルナフトール、及びアルキルフェノールアルデヒド縮合物が挙げられ、この場合、アルデヒドはホルムアルデヒドであり、その結果、縮合物はメチレン架橋アルキルフェノールである。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.1~20重量%で存在することができる。
【0095】
増粘剤
ポリイソブチレン(PIB)及びポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)などの増粘剤を使用して、潤滑剤を増粘することができる。PIB及びPIBSAは、いくつかの製造元から市販されている材料である。PIBは、PIBSAの製造に使用することができ、通常は粘性のある油混和性液体であり、重量平均分子量は1000~8000ダルトン(例えば、1500~6000ダルトン)の範囲であり、動粘度は100℃で2000~6000mm/sの範囲である。このような添加剤は、潤滑油組成物の1~20重量%で存在することができる。
【0096】
潤滑油組成物の使用
潤滑剤組成物は、自動車及びトラックエンジン、2ストロークサイクルエンジン、航空ピストンエンジン、船舶用ディーゼルエンジン、固定ガスエンジンなどを含む火花点火及び圧縮点火式内燃エンジンのためのエンジン油又はクランクケース潤滑油として有効であり得る。
【0097】
内燃エンジンは、2ストローク又は4ストロークエンジンであり得る。
【0098】
一実施形態では、内燃エンジンは、船舶用ディーゼルエンジンである。船舶用ディーゼルエンジンは、速度が250~1100rpmの中速4ストローク圧縮点火エンジン、又は速度が200rpm以下(例えば、10~200rpm、又は60~200rpm)の低速クロスヘッド2ストローク圧縮点火エンジンであり得る。
【0099】
船舶用ディーゼルエンジンは、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤(通常は2ストロークエンジン)、システム油(通常は2ストロークエンジン)、又はクランクケース潤滑油(通常は4ストロークエンジン)で潤滑することができる。
【0100】
「船舶用(marine)」という用語は、エンジンを水上船舶(water-borne vessel)で使用されるエンジンに限定するものではなく、当技術分野で理解されているように、主推進用の補助発電及び発電用の固定式陸上エンジンなどの他の産業用途のためのエンジンも含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、内燃エンジンは、残渣燃料、船舶用残渣燃料、低硫黄船舶用残渣燃料、船舶用留出燃料、低硫黄船舶用留出燃料、又は高硫黄燃料で燃料を供給され得る。
【0102】
「残渣燃料」とは、ISO 10370:2014によって決定される、少なくとも2.5重量%(例えば、少なくとも5重量%、又は少なくとも8重量%)の炭素残留物を有し、50℃での粘度が14.0mm/sを超える大型船舶用エンジンで可燃性の材料、例えば、ISO 8217:2017(「石油製品-燃料(クラスF)-船舶用燃料の仕様」)で定義されている船舶用残渣燃料などを指す。残渣燃料は、主に原油蒸留の非沸騰留分である。製油所の蒸留プロセスの圧力及び温度、並びに原油の種類に応じて、沸騰する可能性のある軽油が非沸騰留分に多少わずかに残り、様々なグレードの残渣燃料が生成される。
【0103】
「船舶用残渣燃料」とは、ISO 8217:2017に規定されている船舶用残渣燃料の仕様を満たす燃料である。「低硫黄船舶用残渣燃料」とは、ISO 8217:2017に規定されている船舶用残渣燃料の仕様に適合し、さらに、燃料の総重量に対して1.5重量%以下、さらには0.5重量%以下の硫黄を有する燃料のことであり、この燃料は蒸留プロセスの残留生成物である。
【0104】
留出燃料は、製油所で沸騰又は「蒸留」プロセスによって分離された原油の石油留分で構成されている。「船舶用留出燃料」とは、ISO 8217:2017に規定されている船舶用留出燃料の仕様を満たす燃料である。「低硫黄船舶用留出燃料」とは、ISO 8217:2017に規定されている船舶用流出燃料の仕様に適合し、さらに、燃料の総重量に対して0.1重量%以下、0.05重量%以下、又はさらには0.005重量%以下の硫黄を有する燃料のことであり、この燃料は蒸留プロセスの蒸留カットである。
【0105】
「高硫黄燃料」とは、燃料の総重量に対して1.5重量%を超える硫黄を有する燃料である。
【0106】
内燃エンジンはまた、メタン優勢燃料(例えば、天然ガス)、バイオガス、ガス化液化ガス、又はガス化液化天然ガス(LNG)などの「ガス状燃料」で操作可能であり得る。
【0107】

以下の例示的な例は、非限定的であることを意図している。
【0108】
試験方法
黒色スラッジ堆積物(Black Sludge Deposit;BSD)試験を使用して、残渣燃料油中の不安定な未燃アスファルテンに対処する潤滑剤の能力を評価する。この試験では、重油と潤滑油との混合物に酸化熱歪(oxidative thermal strain)みを加えることによって、潤滑油が試験紙に堆積する傾向を測定する。潤滑油組成物のサンプルは、試験混合物を形成するために、特定の量の残渣燃料と混合する。試験混合物は、試験温度(200℃)で一定時間(12時間)制御される金属試験紙上に薄膜として試験中にポンプで送る。油と燃料との試験混合物は、サンプル容器に再循環する。試験後、試験紙を冷却し、洗浄及び乾燥する。次に、試験プレートの重量を測定する。このようにして、試験プレート上に残っている堆積物の重量を測定し、試験プレートの重量の変化として記録した。スラッジ処理の改善は、試験プレートに残っている堆積物の重量が少ないことによって証明される。
【0109】
堆積物の制御は、加熱したガラス管を使用するコマツホットチューブ(Komatsu Hot Tube;KHT)試験によって測定され、このガラス管を通して、サンプルの潤滑剤、約5mLの総サンプルを、典型的には0.31mL/時で長時間、例えば16時間にわたって、10mL/分の空気流でポンプで送る。ガラス管は、試験の最後に、1.0(非常に重いワニス)から10(ワニスなし)のスケールで堆積物について評価される。試験結果は、0.5の倍数で報告される。ガラス管が堆積物で完全に詰まっている場合、試験結果は「詰まっている」と記録される。詰まりは、1.0の評価(この場合、ラッカーは非常に厚くて濃いが、依然として流体の流れは可能である。)を下回る堆積である。試験は310℃で実行され、SAEテクニカルペーパー840262に記載されている。
【0110】
修正石油研究所試験方法48(Modified Institute of Petroleum Test Method 48;MIP-48)を使用して、潤滑剤の酸化安定性を評価する。この試験では、潤滑剤の2つのサンプルを一定期間加熱する。窒素を試験サンプルの1つに通し、空気を他のサンプルに通す。次に、2つのサンプルは冷却し、各サンプルの粘度を決定する。各潤滑油組成物の酸化に基づく粘度の増加は、空気吹きサンプルの100℃での動粘度から窒素吹きサンプルの100℃での動粘度を差し引き、その減算の差を窒素吹き込みサンプルの100℃での動粘度で割って計算する。酸化に基づく粘度の増加に対するより良い安定性は、より低い粘度の増加によって証明される。
【0111】
例1~5
グループI基油を配合した一連の40BNトランクピストンエンジン油潤滑剤を、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤(「Ca清浄剤」)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、及び発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。これらの潤滑剤を、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及び塩基価(BN)の減少について評価した。
【0112】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤は、C20~C28の直鎖のノルマルアルファオレフィンに由来するアルキル置換基を有し、米国特許出願公開第2007/0027043号の例1に記載の方法に従って調製された。入手したまま(as-received basis)の状態で、この添加剤は、12.5重量%のCa及び約33重量%の希釈油を含み、TBNは約350mg KOH/g、塩基度指数は約7.2であった。有効成分ベースで、この添加剤のTBNは、約520mg KOH/gである。
【0113】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、C20-C24異性化ノルマルアルファオレフィンに由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸の油濃縮物である。濃縮物は、約25.0重量%の希釈油を含んでいた。
【0114】
結果を表2にまとめる。表2の添加剤について報告されている重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表2】
【0115】
表2に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むトランクピストンエンジン潤滑油組成物(例1~5)は、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なく、堆積物制御が改善され、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例A)よりも、酸化に基づく粘度の増加及びBNの減少に対する安定性が改善された。
【0116】
例6~10
グループII基油を配合した一連の40BNトランクピストンエンジン油潤滑剤は、例1~5で説明したように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、及び発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。潤滑剤は、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及びBNの減少について評価した。結果を表3にまとめる。表3の添加剤について報告されている重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表3】
【0117】
表3に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むトランクピストンエンジン潤滑油組成物(例6~10)は、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なく、堆積物制御が改善され、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例B)よりも、酸化に基づく粘度の増加及びBNの減少に対する安定性が改善された。
【0118】
例11
グループI基油を配合した一連の140BN船舶用シリンダー潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤、過塩基性硫化カルシウムフェネート清浄剤、ビススクシンイミド分散剤、発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。潤滑剤は、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及び塩基価(BN)の減少について評価した。
【0119】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、C20-C24異性化ノルマルアルファオレフィンに由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸の油濃縮物である。添加剤は、約25.0重量%の希釈油を含んでいた。
【0120】
結果を表4にまとめる。表4に報告されている添加剤の重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表4】
【0121】
表4に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含む船舶用シリンダー潤滑剤(例11)は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例C)よりも、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なかった。
【0122】
例12
グループI基油を配合した一連の12BNトランクピストンエンジン油潤滑剤は、例1~5で説明したように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤(「カルシウム清浄剤」)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、及び発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。潤滑剤は、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及び塩基価(BN)の減少について評価した。
【0123】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤は、C20~C28の直鎖のノルマルアルファオレフィンに由来するアルキル置換基を有し、米国特許出願公開第2007/0027043号の例1に記載の方法に従って調製した。入手したままの状態で、この添加剤は、12.5重量%のCa及び約33重量%の希釈油を含み、TBNは約350mg KOH/g、塩基度指数は約7.2であった。有効成分ベースで、この添加剤のTBNは、約520mg KOH/gである。
【0124】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、C20-C24異性化ノルマルアルファオレフィンに由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸の油濃縮物である。この添加剤は、約25.0重量%の希釈油を含んでいた。
【0125】
結果を表5にまとめる。表5の添加剤について報告されている重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表5】
【0126】
表5に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むトランクピストンエンジン潤滑油組成物(例12)は、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なく、堆積物制御が改善され、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例D)よりも、酸化に基づく粘度の増加及びBNの減少に対する安定性が改善された。
【0127】
例13
グループI基油を配合した一連の50BNトランクピストンエンジン油潤滑剤は、例1~5で説明したように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤(「カルシウム清浄剤」)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、及び発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。潤滑剤は、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及び塩基価(BN)の減少について評価した。
【0128】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤は、C20~C28の直鎖のノルマルアルファオレフィンに由来するアルキル置換基を有し、米国特許出願公開第2007/0027043号の例1に記載の方法に従って調製した。入手したままの状態で、この添加剤は、12.5重量%のCa及び約33重量%の希釈油を含み、TBNは約350mg KOH/g、塩基度指数は約7.2であった。有効成分ベースで、この添加剤のTBNは、約520mg KOH/gである。
【0129】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、C20-C24異性化ノルマルアルファオレフィンに由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸の油濃縮物である。この添加剤は、約25.0重量%の希釈油を含んでいた。
【0130】
結果を表6にまとめる。表6の添加剤について報告されている重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表6】
【0131】
表6に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むトランクピストンエンジン潤滑油組成物(例13)は、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なく、堆積物制御が改善され、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例E)よりも、酸化に基づく粘度の増加及びBNの減少に対する安定性が改善された。
【0132】
例14~17
グループI基油を配合した一連の40BNトランクピストンエンジン油潤滑剤は、例1~5で説明したように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤(「カルシウム清浄剤」)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、及び発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。潤滑剤は、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及び塩基価(BN)の減少について評価した。
【0133】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤は、C20~C28の直鎖のノルマルアルファオレフィンに由来するアルキル置換基を有し、米国特許出願公開第2007/0027043号の例1に記載の方法に従って調製した。入手したままの状態で、この添加剤は、12.5重量%のCa及び約33重量%の希釈油を含み、TBNは約350mg KOH/g、塩基度指数は約7.2であった。有効成分ベースで、この添加剤のTBNは、約520mg KOH/gである。
【0134】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、C20-C24異性化ノルマルアルファオレフィン(25.0重量%の希釈油を含む)に由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸、C20-C28ノルマルアルファオレフィン(25.0重量%の希釈油を含む)に由来するC20-C28ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸、C14-C16-C18ノルマルアルファオレフィン(約20.0重量%の希釈剤を含む)に由来するC14-C16-C18ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸、又はC20-C24異性化ノルマルアルファオレフィン(約20.0重量%の希釈油を含む)に由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ナフトエ酸の油濃縮物である。
【0135】
結果を表7にまとめる。表7の添加剤について報告されている重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表7】
【0136】
表7に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むトランクピストンエンジン潤滑油組成物(例14~17)は、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なく、堆積物制御が改善され、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例A)よりも、酸化に基づく粘度の増加及びBNの減少に対する安定性が改善された。
【0137】
例18
グループI基油を配合した一連の7BNシステム油は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、及び発泡防止剤などの従来の添加剤とを含めて調製した。これらのサンプルは、2種類のカルシウム清浄剤、過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤と過塩基性硫化カルシウムフェネート清浄剤、及びビススクシンイミド分散剤も含んでいた。比較潤滑剤は、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を使用せずに調製した。潤滑剤は、スラッジ処理、堆積物制御、並びに酸化に基づく粘度増加及び塩基価(BN)の減少について評価した。
【0138】
無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、C20-C24異性化ノルマルアルファオレフィンに由来するC20-C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族サリチル酸の油濃縮物である。この添加剤は、約25.0重量%の希釈油を含んでいた。
【0139】
結果を表8にまとめる。表8に報告されている添加剤の重量パーセントは、入手したままの状態に基づく。
【表8】
【0140】
表8に示す結果から明らかなように、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むシステム油(例18)は、船舶用残渣燃料での黒色スラッジ形成が驚くほど少なく、堆積物制御が改善され、無灰アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含まない潤滑油組成物(比較例F)よりも、酸化に基づく粘度の増加及びBNの減少に対する安定性が改善された。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、(a)50重量%を超える、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油及びそれらの混合物から選択される潤滑粘度の基油と、(b)0.1~20重量%のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が12~40個の炭素原子を有する、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、金属清浄剤とを含み、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物であり、ASTM D2896によって測定したTBNが5~200mg KOH/gである、上記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり14~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり20~24個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり20~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記アルファオレフィンが、ノルマルアルファオレフィン、異性化されたノルマルアルファオレフィン、又はそれらの混合物である、請求項2、3、及び4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の量が、前記潤滑油組成物の1.0~5.0重量%の範囲にある、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物が、5~10mg KOH/g、15~150mg KOH/g、20~80mg KOH/g、30~100mg KOH/g、30~80mg KOH/g、60~100mg KOH/g、60~150mg KOH/gの範囲の1つにあるTBNを有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
散剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、解乳化剤、発泡防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、非イオン性界面活性剤、及び増粘剤のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
内燃エンジンを潤滑する方法であって、請求項1に記載の潤滑油組成物を前記内燃エンジンに供給することを含む、方法。
【請求項10】
前記内燃エンジンが圧縮点火エンジンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮点火エンジンが、250~1100rpmで作動する4ストロークエンジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧縮点火エンジンが、200rpm以下で作動する2ストロークエンジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮点火エンジンが、残渣燃料、船舶用残渣燃料、低硫黄船舶用残渣燃料、船舶用留出燃料、低硫黄船舶用留出燃料、高硫黄燃料、又はガス状燃料である、請求項10に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
別の態様では、本明細書に開示される潤滑油組成物を内燃エンジンに供給することを含む、内燃エンジンを潤滑する方法が提供される。
なお、下記[1]から[13]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
潤滑油組成物であって、(a)50重量%を超える潤滑粘度の基油と、(b)0.1~20重量%のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が12~40個の炭素原子を有する、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸とを含み、SAE20、30、40、50、又は60モノグレードエンジン油の2015年1月改訂要件であるSAE J300の仕様を満たすモノグレード潤滑油組成物であり、ASTM D2896によって測定したTBNが5~200mg KOH/gである、上記潤滑油組成物。
[2]
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり14~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり20~24個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[4]
前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル置換基が、分子あたり20~28個の炭素原子を有するアルファオレフィンに由来する残基である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[5]
前記アルファオレフィンが、ノルマルアルファオレフィン、異性化されたノルマルアルファオレフィン、又はそれらの混合物である、[2]、[3]、及び[4]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[6]
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の量が、前記潤滑油組成物の1.0~5.0重量%の範囲にある、[1]に記載の潤滑油組成物。
[7]
前記潤滑油組成物が、5~10mg KOH/g、15~150mg KOH/g、20~80mg KOH/g、30~100mg KOH/g、30~80mg KOH/g、60~100mg KOH/g、60~150mg KOH/gの範囲の1つにあるTBNを有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[8]
金属清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、解乳化剤、発泡防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、非イオン性界面活性剤、及び増粘剤のうちの1つ以上をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[9]
内燃エンジンを潤滑する方法であって、[1]に記載の潤滑油組成物を前記内燃エンジンに供給することを含む、方法。
[10]
前記内燃エンジンが圧縮点火エンジンである、[9]に記載の方法。
[11]
前記圧縮点火エンジンが、250~1100rpmで作動する4ストロークエンジンである、[10]に記載の方法。
[12]
前記圧縮点火エンジンが、200rpm以下で作動する2ストロークエンジンである、[10]に記載の方法。
[13]
前記圧縮点火エンジンが、残渣燃料、船舶用残渣燃料、低硫黄船舶用残渣燃料、船舶用留出燃料、低硫黄船舶用留出燃料、高硫黄燃料、又はガス状燃料である、[10]に記載の方法。
【外国語明細書】