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特開2024-99562造血幹細胞移植のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099562
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】造血幹細胞移植のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240718BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240718BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61K35/28
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P3/00
A61P7/00
A61P37/02
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061380
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020564106の分割
【原出願日】2019-05-16
(31)【優先権主張番号】1807944.2
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】514194370
【氏名又は名称】オスペダーレ サン ラファエレ エス.アール.エル
(71)【出願人】
【識別番号】511262290
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ テレトン イーティーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラートロケ,クライレ
(72)【発明者】
【氏名】ナルディーニ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】マンツィ,マウラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移植された造血幹細胞の生着を改善する、造血幹細胞移植のための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用。
【請求項2】
HSPCが、CD47及び/又はCXCR4を発現するように遺伝子操作される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
HSPCが、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入される又はトランスフェクトされる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
HSPCが、CD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するようにHSPCを遺伝子操作するステップを含む、方法。
【請求項6】
CD47及び/又はCXCR4が、HSPCにより一過性に又は安定的に、好ましくは、一過性に発現される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5又は6により取得可能である遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
【請求項8】
生着の増加を示す遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
【請求項9】
遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団であって、HSPCが、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されている、集団。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団並びに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
治療において使用するための請求項7から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
【請求項12】
がん、免疫障害、リソソーム蓄積症、細菌若しくはウイルス感染症、遺伝性疾患、血液疾患、サラセミア又は鎌状赤血球症の治療又は予防において使用するための請求項7から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
【請求項13】
対象が、HSPCの投与前に穏やかな骨髄破壊的、強度を弱めた又は非骨髄破壊的前処置レジメンを受ける、請求項11又は12に記載の使用のための遺伝子操作されたHSPCの集団。
【請求項14】
対象が、
(a)内在性HSPCの動員のためのレジメンを受ける、又は
(b)1つ以上のHSPC特異的免疫毒素を用いた前処置を受ける、
請求項11から13のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子操作されたHSPCの集団。
【請求項15】
対象が、HSPCの投与前に化学療法前処置又は放射線療法前処置を受けない、請求項11から14のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子操作されたHSPCの集団。
【請求項16】
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)移植の方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されているHSPCの集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
がん、免疫障害、リソソーム蓄積症、細菌若しくはウイルス感染症、遺伝性疾患、血液疾患、サラセミア又は鎌状赤血球症を治療又は予防する方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されている造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項18】
対象が、HSPCの投与前に穏やかな骨髄破壊的、強度を弱めた又は非骨髄破壊的前処置レジメンを受ける、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
対象が、
(a)内在性HSPCの動員のためのレジメンを受ける、又は
(b)1つ以上のHSPC特異的免疫毒素を用いた前処置を受ける、
請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象が、HSPCの投与前に化学療法前処置又は放射線療法前処置を受けない、
請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は造血幹細胞移植のための組成物及び方法に関する。特に、本発明は、移植中の造血幹細胞及び前駆細胞の生着(engraftment)を改善するための造血幹細胞及び前駆細胞の遺伝子改変に関する。
【背景技術】
【0002】
造血系は、異なる成熟細胞系列の細胞の複雑な階層である。これらは、病原体からの防御を提供する免疫系の細胞、身体中に酸素を運ぶ細胞及び創傷治癒に関与する細胞を含む。これらの成熟細胞はすべて、自己複製しあらゆる血液細胞系列に分化することができる造血幹細胞(HSC)のプールに由来する。HSCには全造血系を補充する能力がある。
【0003】
造血細胞移植(HCT)は、いくつかの遺伝性の障害及び後天的な障害に対する根治療法である。しかし、同種HCTは、適合するドナーを入手しにくいこと、大半が移植片対宿主病(GvHD)に関係している同種処置関連の死亡率、及び重度かつ長期にわたる免疫機能不全の状態により引き起こされる感染性合併症により制限される。
【0004】
遺伝子改変自家HSCの移植に基づく遺伝子療法アプローチは、同種HCTよりも潜在的に改善された安全性及び有効性を提供する。このアプローチは適合するドナーがいない患者には特に適切である。
【0005】
幹細胞遺伝子療法の概念は、相対的に少数の幹細胞の遺伝子改変に基づいている。これらの幹細胞は、自己複製を経ることにより体内に長期間残存し、多数の遺伝的に「矯正された」子孫を生み出す。これは、患者の生涯の残りの期間、矯正された細胞を継続的に供給することを保証することができる。HSCは遺伝子療法には特に魅力的な標的である。なぜならば、HSCの遺伝子改変は分化する時にすべての血液細胞系列に引き継がれることになるからである。さらに、HSCは、例えば、骨髄、動員された(mobilised)末梢血及び臍帯血から容易にかつ安全に取得できる。
【0006】
HSC及びその子孫の効率的で持続的な遺伝子改変は、HSCの機能に影響を与えずに矯正DNAをゲノムに安定的に組み込むことを可能にする技術から恩恵を受ける。したがって、組込み組換えウイルス系、例えば、γ-レトロウイルス、レンチウイルス及びスプーマウイルスの使用が、この分野で優位を占めてきた(Chang, A.H.ら(2007) Mol. Ther. 15: 445~56ページ)。治療効果は、アデノシンデアミナーゼ重症複合免疫不全(ADA-SCID; Aiuti, A.ら (2009) N. Engl. J. Med. 360: 447~58ページ)、X連鎖重症複合免疫不全(SCID-X1; Hacein-Bey-Abina, S.ら (2010) N. Engl. J. Med. 363: 355~64ページ)及びウィスコットアルドリッチ症候群(WAS; Boztug, K.ら(2010) N. Engl. J. Med. 363: 1918~27ページ)についてのγ-レトロウイルスベースの臨床試験において既に達成されている。さらに、レンチウイルスは、X連鎖副腎白質ジストロフィー(ALD; Cartier, N.ら(2009) Science 326: 818~23ページ)及びベータサラセミア(Cartier, N.ら(2010) Bull. Acad. Natl. Med. 194: 255~264ページ; discussion 264~258ページ)の治療において、並びに最近では異染性白質ジストロフィー(MLD; Biffi, A.ら(2013) Science 341: 1233158)及びWAS (Aiuti, A. ら(2013) Science 341: 1233151)について送達媒体として用いられてきた。
【0007】
さらに、標的化遺伝子編集は、遺伝性突然変異のin situ矯正又は導入遺伝子カセットのセーフゲノムハーバー(safe genomic harbour)中への標的化組込みを可能にすることにより、挿入変異及び異所性/無制御導入遺伝子発現に関連する考えられる問題を克服する可能性を有する。
【0008】
しかし、相同組換え修復(homologous directed repair、HDR)に基づく現在の遺伝子編集プロトコールは依然として、おそらく、HDR機構の低発現、細胞休止及び鋳型DNAの限られた取込みに起因して、HSCでの効率が制限される。大半の遺伝子療法適用はかなりの量の遺伝子編集HSCを必要とするため、これらの制限は、当該技術のより広い適応性及びその臨床実施の安全性に影響する重大な障害となる。移植されたHSCの生着を改善する重要な必要性が当技術分野には存在する。特に、とりわけ移植片中の細胞の数が少ない場合、HSCがホーミングしレシピエントの骨髄(BM)を永久に再構築する(repopulate)能力を改善するより効率的な戦略を開発する必要性が存在する。
【0009】
さらに、自家及び同種HSPC移植の両方が、典型的には、HSPCの注入に先立って対象の内在性幹細胞集団を根絶し免疫応答を抑制するために、照射(irradiation)及び/又は化学療法による骨髄破壊を必要とする。不運にも、これらの前処置レジメンは対象にとって短期間有毒であり(例えば、皮膚及び腸毒性、脱毛、下痢、粘膜炎及び多重感染をもたらす)、長期間有毒でもある(例えば、不妊性、骨格及び脳の発育不全並びにがんをもたらす)。したがって、HSPC移植前に遺伝毒性のある前処置レジメンを減らすプロトコールのさらなる必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、骨髄ホーミング分子の発現及び機能を改変して造血幹細胞及び/又は前駆細胞生着を改善する戦略を開発した。
【0011】
本発明者らは驚くべきことに、HSPCによるCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の過剰発現が、HSPCの生着の効率を増加させること、特に、生着後のホーミングの増加及びレシピエントの骨髄の再構築(repopulation)を促進することを見出した。
【0012】
さらに、本発明者らは、CD47及び/又はCXCR4過剰発現HSPCは、穏やかな骨髄破壊的前処置を利用するか、又はそれを全く利用しない移植プロトコールにおいて有利に適用できることを見出した。
【0013】
例えば、本発明者らは、HSPCが、内在性HSPCの動員(mobilisation)を受けた対象において優先的に交換され、及び/又は選択的に生着することを見出した。移植されたHSPCは、骨髄の再構築において内在性HSPCを効率的に打ち負かす。
【0014】
適切なヘマトキメラ(haematochimeric)モデルにおいてこれらの戦略を試験することにより、本発明者らは、これらの戦略が、毒性及び変異原性を有する薬物の必要性を回避する前処置レジメン(例えば、上に開示される内在性HSPC動員プロトコール及びHSPC特異的免疫毒素を使用する前処置レジメン)の有効性を増加させ得、したがって、患者に対するリスク及び長期毒性を低減し得ると考えている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用を提供する。
【0016】
一態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着能力を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用を提供する。
【0017】
生着の増加は、CD47及び/又はCXCR4を発現するように遺伝子操作されていない天然のHSPCと比べたものであってもよい。生着は、CD47及び/又はCXCR4を発現するように遺伝子操作されていない天然のHSPCと比べて、例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、200%又は500%増加し得る。
【0018】
一実施形態では、使用はエクスビボ使用である。一実施形態では、使用はインビトロ使用である。
【0019】
一実施形態では、HSPCはCD47及び/又はCXCR4を発現するように遺伝子操作されている。
【0020】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するようにHSPCを遺伝子操作するステップを含む、方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)をHSPC中に一過性に導入するステップを含む、方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着能力を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するようにHSPCを遺伝子操作するステップを含む、方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着能力を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)をHSPC中に一過性に導入するステップを含む、方法を提供する。
【0024】
一実施形態では、方法はエクスビボ方法である。一実施形態では、方法はインビトロ方法である。
【0025】
一実施形態では、HSPCは、CD47を発現するように遺伝子操作される。一実施形態では、HSPCは、CXCR4を発現するように遺伝子操作される。好ましい実施形態では、HSPCは、CD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される。
【0026】
一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入される又はトランスフェクトされる。
【0027】
一実施形態では、HSPCは、CD47をコードするベクターで形質導入される又はトランスフェクトされる。一実施形態では、HSPCは、CXCR4をコードするベクターで形質導入される又はトランスフェクトされる。好ましい実施形態では、HSPCは、CD47及びCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入される又はトランスフェクトされる。CD47及びCXCR4は、例えば、別々のベクターに又は同じベクターにコードされてもよい。
【0028】
一実施形態では、ベクターはプラスミドである。
【0029】
一実施形態では、ベクターはウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターはレトロウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0030】
好ましい実施形態では、CD47及び/又はCXCR4の発現は過剰発現である。
【0031】
一実施形態では、CD47及び/又はCXCR4の発現は安定した発現である。好ましい実施形態では、CD47及び/又はCXCR4の発現は一過性の発現である。
【0032】
好ましい実施形態では、CD47は一過性に発現される。好ましい実施形態では、CXCR4は一過性に発現される。特に好ましい実施形態では、CD47及びCXCR4は両方とも一過性に発現される。
【0033】
一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされ、ベクターは、RNAベクター、組込み欠損(integration-defective)レンチウイルスベクター(IDLV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びセンダイウイルスベクターからなる群から選択される。例えば、CD47及び/又はCXCR4をコードするRNAは、RNAエレクトロポレーションを使用してHSPC中に導入してもよい。これらのそれぞれが一過性発現を可能にし得る。
【0034】
一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクされ、ベクターはRNAベクターである。一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされ、ベクターはセンダイウイルスベクターである。
【0035】
一実施形態では、CD47及び/又はCXCR4タンパク質は、例えば、タンパク質エレクトロポレーションを使用してHSPC中に直接導入される。直接タンパク質導入は、CD47及び/又はCXCR4がHSPCに一過性に導入されることを可能にし得る。
【0036】
一実施形態では、CD47はヒトCD47である。
【0037】
一実施形態では、CD47は、
(a)配列番号8若しくは1(好ましくは、配列番号8)に対し少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号2~5のいずれか1つにより表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する、及び/又は
(b)配列番号2~5に対し少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、該アミノ酸配列が、それぞれ配列番号2~5により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0038】
一実施形態では、CXCR4はヒトCXCR4である。
【0039】
一実施形態では、CXCR4は、
(a)配列番号9若しくは6(好ましくは、配列番号9)に対し少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号7により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する、及び/又は
(b)配列番号7に対し少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、該アミノ酸配列が、配列番号7により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0040】
一実施形態では、CXCR4は切断型(truncated)CXCR4である。一実施形態では、CXCR4はCXCR4 Whimアイソフォーム、任意選択で、CXCR4 WhimアイソフォームI又はCXCR4 WhimアイソフォームIIである。
【0041】
好ましい実施形態では、CXCR4は配列番号14に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号15により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0042】
一実施形態では、CD47は不安定化ドメインタンパク質との融合物である。一実施形態では、CXCR4は不安定化ドメインタンパク質との融合物である。一実施形態では、CD47及びCXCR4は個々に両方とも不安定化ドメインタンパク質との融合物である。例となる不安定化ドメイン戦略の使用はBanaszynskiら(2012) Cellに開示されている。典型的には、目的の導入遺伝子(例えば、CD47及び/又はCXCR4)は、安定化剤(例えば、小分子)の使用を通じて調整可能である不安定化ドメインタンパク質(DD)に作動可能に連結されている。例えば、不安定化ドメインは、その安定化剤に結合されている場合は安定であり得るが、それがない場合は融合タンパク質を不安定にさせ得る。例えば、CD47及び/又はCXCR4は、不安定化ドメインタンパク質に作動可能に連結され、ベクター、例えば、レンチウイルスベクターを使用して送達され得る。この形態のCD47及び/又はCXCR4は、通常は不安定であり得るが、一方、CD47及び/又はCXCR4の発現は、安定化剤の送達により目的の期間誘導され得る(例えば、インビボで)。「作動可能に連結される」とは、個々の成分が、それらの機能を実質的に妨げられずに実行することができるよう共に連結されることであると理解されるべきである。
【0043】
一実施形態では、HSPCは、導入遺伝子を発現するようにさらに遺伝子操作される。
【0044】
一実施形態では、HSPCは遺伝子編集される。遺伝子編集は、例えば、1つ以上のCRISPR/Cas系、TALEN及び/又は亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用して達成し得る。遺伝子編集は、例えば、特定の標的部位に核酸配列(例えば、導入遺伝子)を付加するか、又は細胞から特定の標的核酸配列を欠失させることであってもよい。
【0045】
一実施形態では、HSPCは、1つ以上の導入遺伝子をコードする1つ以上のベクターでさらに形質導入又はトランスフェクトされる。
【0046】
一実施形態では、HSPCは動員された末梢血HSPCである。
【0047】
好ましい実施形態では、CD47及びCXCR4は両方とも動員された末梢血HSPCにおいて一過性発現される。
【0048】
別の態様では、本発明は、本発明の方法により取得可能である遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、生着の増加を示す遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を提供する。
【0050】
別の態様では、本発明は、生着能力が増加した遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団であって、HSPCはCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されている、集団を提供する。
【0052】
一実施形態では、HSPCはCD47を発現するように遺伝子操作されている。一実施形態では、HSPCはCXCR4を発現するように遺伝子操作されている。好ましい実施形態では、HSPCはCD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作されている。
【0053】
一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされる。
【0054】
一実施形態では、HSPCは、CD47をコードするベクターで形質導入又はトランスフェクトされる。一実施形態では、HSPCは、CXCR4をコードするベクターで形質導入又はトランスフェクトされる。好ましい実施形態では、HSPCは、CD47及びCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされる。CD47及びCXCR4は、例えば、別々のベクターに又は同じベクターにコードされてもよい。
【0055】
一実施形態では、ベクターはプラスミドである。
【0056】
一実施形態では、ベクターはウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターはレトロウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0057】
好ましい実施形態では、CD47及び/又はCXCR4の発現は過剰発現である。
【0058】
一実施形態では、CD47及び/又はCXCR4の発現は安定した発現である。好ましい実施形態では、CD47及び/又はCXCR4の発現は一過性発現である。
【0059】
好ましい実施形態では、CD47は一過性に発現される。好ましい実施形態では、CXCR4は一過性に発現される。特に好ましい実施形態では、CD47及びCXCR4は両方とも一過性に発現される。
【0060】
一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされ、ベクターは、RNAベクター、組込み欠損レンチウイルスベクター(IDLV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びセンダイウイルスベクターからなる群から選択される。例えば、CD47及び/又はCXCR4をコードするRNAは、RNAエレクトロポレーションを使用してHSPC中に導入してもよい。これらのそれぞれが一過性発現を可能にし得る。
【0061】
一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされ、ベクターはRNAベクターである。一実施形態では、HSPCは、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされ、ベクターはセンダイウイルスベクターである。
【0062】
一実施形態では、CD47及び/又はCXCR4タンパク質は、例えば、タンパク質エレクトロポレーションを使用してHSPC中に直接導入される。直接タンパク質導入は、CD47及び/又はCXCR4がHSPCに一過性に導入されることを可能にし得る。
【0063】
一実施形態では、HSPCは導入遺伝子を発現するようにさらに遺伝子操作される。
【0064】
一実施形態では、HSPCは遺伝子編集される。遺伝子編集は、例えば、1つ以上のCRISPR/Cas系、TALEN及び/又は亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用して達成し得る。遺伝子編集は、例えば、特定の標的部位に核酸配列(例えば、導入遺伝子)を付加するか、又は細胞から特定の標的核酸配列を欠失させることであってもよい。
【0065】
一実施形態では、HSPCは、1つ以上の導入遺伝子をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクトされる。
【0066】
別の態様では、本発明は、本発明の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団並びに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0067】
別の態様では、本発明は、療法において使用するための本発明に従った遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、がん、免疫障害、リソソーム蓄積症、細菌若しくはウイルス感染症、遺伝性疾患、血液疾患、サラセミア又は鎌状赤血球症の治療又は予防において使用するための本発明に従った遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を提供する。
【0069】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)移植の方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されているHSPCの集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0070】
別の態様では、本発明は、がん、免疫障害、リソソーム蓄積症、細菌若しくはウイルス感染症、遺伝性疾患、血液疾患、サラセミア又は鎌状赤血球症を治療又は予防する方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されている造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0071】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させる方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されているHSPCの集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0072】
一実施形態では、HSPCはCD47を発現するように遺伝子操作される。一実施形態では、HSPCはCXCR4を発現するように遺伝子操作される。好ましい実施形態では、HSPCはCD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される。
【0073】
一実施形態では、HSPCは導入遺伝子を発現するようにさらに遺伝子操作される。別の実施形態では、HSPCは遺伝子編集される。
【0074】
好ましい実施形態では、HSPCは導入遺伝子を発現するようにさらに遺伝子操作され、導入遺伝子は、遺伝子編集を使用してHSPC中に挿入される。遺伝子編集は、例えば、1つ以上のCRISPR/Cas系、TALEN及び/又は亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用して、HSPC中の特定の標的部位への導入遺伝子の挿入を可能にし得る。
【0075】
一実施形態では、HSPCは、自家幹細胞移植手順の一部として投与される。
【0076】
一実施形態では、HSPCは、同種幹細胞移植手順の一部として投与される。
【0077】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に穏やかな骨髄破壊的前処置レジメンを受ける。
【0078】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に強度を弱めた前処置レジメンを受ける。
【0079】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に非骨髄破壊的前処置レジメンを受ける。
【0080】
一実施形態では、対象は、内在性HSPCの動員のためのレジメンを受ける。好ましくは、内在性HSPCの動員のためのレジメンはHSPCの投与前に施される。
【0081】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に1つ以上のHSPC動員剤を投与される。
【0082】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、プレリキサホル及び/又はBIO5192を投与される。一実施形態では、対象は、HSPCの投与前にGROβ(GROβΔ4/CXCL2Δ4)及びプレリキサホルを投与される。好ましくは、HSPCは、CXCR4、又はCD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される。
【0083】
一実施形態では、対象は、1つ以上のHSPC特異的免疫毒素を用いた前処置を受ける。好ましくは、1つ以上のHSPC特異的免疫毒素は、HSPCの投与前に投与される。
【0084】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に毒素にコンジュゲートされた抗体を投与される。
【0085】
好ましくは、HSPCは、毒素が対象の骨髄から消散した後で対象に投与される。
【0086】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に化学療法前処置又は放射線療法前処置を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1-1】CD47又はCXCR4を構成的に過剰発現(OE)するCD34+細胞のインビボ生着。臍帯血CD34+細胞に、CD47-GFP又はCXCR4-GFPの安定した過剰発現を可能にする双方向性レンチウイルスを形質導入した。細胞を、免疫不全NSGマウスに生着させた。生着のレベルは、末梢血内のヒトCD45+細胞%を追跡することにより評価した(左パネル)。生着は両方の場合により高く、GFP+細胞集団は増加し(中パネル)、長期造血に影響を及ぼさなかった(右パネル)。
図1-2】図1-1の続きである。
図1-3】図1-2の続きである。
図2】遺伝子編集された細胞におけるCD47及びCXCR4の一過性過剰発現。臍帯血CD34+細胞を、インビトロで遺伝子編集し、CD47、CXCR4又は両方(混合)のmRNAを電気穿孔した。左パネルは、両方の標的の一過性過剰発現を示している。右パネルは、異なる条件での効率的な遺伝子編集(AAVS1遺伝子座におけるGFP遺伝子挿入)を示している。AAV単独及びH2Oは負の対照として役立ち、GE(遺伝子編集のみ)は正の対照として役立つ。
図3】CD47及び/又はCXCR4を一過性に過剰発現する遺伝子編集(GE)CD34+CD38-細胞のインビボ生着。遺伝子編集された臍帯血CD34+CD38-初期(primitive)細胞にCD47及び/又はCXCR4 RNAを電気穿孔した。生着のレベルは、末梢血内のヒトCD45+細胞%を追跡することにより評価した。CD47単独又はCXCR4との組合せ(混合群)の一過性過剰発現は、対照群(GFP、緑色)と比べて長期の生着の増加という利点(左パネル、紫色及び橙色)を示す。遺伝子編集細胞(GFP+)も選択的に有利であった(右パネル、紫色及び橙色)。
図4】動員プロトコールのインビボ確認。NSGマウスに臍帯血CD34+細胞を安定的に生着させた。5週間後、マウスは、動員薬物で処置した(GCSF 250μg/kg/日浸透圧ポンプを用いて7日間;プレリキサホル5mg/kg/日及びBIO5192 1mg/kg/日 IP注射による最後の2日間)。循環前駆体CD34+CD38-の5倍の増加が得られたので(左パネル)、動員プロトコールはインビボで確認された。内部対照として、本発明者らはマウス幹細胞(Kit+、Lin-、Sca1+、KLS)を追跡したところ、それは処置後末梢循環で142倍高いレベルで観察された(中パネル)。プレリキサホルはCXCR4の特異的なアンタゴニストであるため、ヒトCD45+細胞の表面のCXCR4発現を追跡したところ、CXCR4発現は動員処置後著しく過剰発現された(右パネル)。
図5】骨髄からのHSC動員及びCXCR4過剰発現細胞再定着(re-colonisation)。骨髄由来CD34+を安定的に生着させたNSGマウスを動員のために処置し(GCSF 250μg/kg/日浸透圧ポンプを用いて7日間;プレリキサホル5mg/kg/日及びBIO5192 1mg/kg/日IP注射による最後の2日間)、次に、同じドナー由来のCXCR4-GFP又は遺伝子標識対照(CTL-GFP)を過剰発現している骨髄CD34+細胞を注入した。ヒトCD45+細胞生着のパーセントを末梢血において追跡した(左パネル)。第2の生着由来であるGFP+標識細胞を追跡したところ、CXCR4過剰発現細胞は対照(CTL)と比較し効率的に生着し(中パネル、7~9%対1~2%)、長期造血に影響を与えなかった(右パネル)。
図6】動員された末梢血(mPB)での一過性CXCR4及びCD47過剰発現(OE)のインビトロ評価。mPB CD34+細胞にCXCR4及びCD47をコードするmRNAをヌクレオフェクトし(nucleofect)、その発現レベルを経時的に評価した。これらの細胞は、その基底レベルと比べて最大6倍の発現の増加を示す。
図7】CD47及びCXCR4を一過性で過剰発現するmPB CD34+細胞のインビボ生着。mPB CD34+細胞に、目的の遺伝子の一過性過剰発現を可能にするCXCR4及びCD47をコードするmRNAをヌクレオフェクトした。細胞をNSGマウスに生着させた。生着のレベルは、末梢血内でのヒトCD45+細胞パーセントを追跡することにより評価した(上左パネル)。生着はより高く、長期では系列再構成(lineage reconstitution)に大きな影響を及ぼさなかった(上右パネル)。生着能力は、移植13週後に骨髄において評価した。生着はより高く(下左パネル)、大半の幹細胞区画では差は特定されなかった(下右パネル)。
図8】NSGW41マウスにおけるmPB CD34+細胞での動員プロトコールのインビボ確認。NSGW41マウスにmPB CD34+細胞を安定的に生着させた。8週間後、マウスを動員薬物で処置した(GCSF 250μg/kg/日浸透圧ポンプを用いて7日間;プレリキサホル5mg/kg/日及びBIO5192 1mg/kg/日IP注射による最後の2日間)。循環中の全白血球の3倍の増加(左パネル);循環前駆細胞CD34+CD38-の2倍の増加(右パネル)が得られたので、動員プロトコールはインビボで確認された。内部対照として、本発明者らはマウス幹細胞(Kit+、Lin-、Sca1+、KLS)を追跡したところ、それは処置後末梢循環において25倍高いレベルで観察された(中パネル)。
図9】骨髄からのHSC動員及びCXCR4+CD47一過性過剰発現細胞再定着。mPB CD34+細胞を安定的に生着させたNSGW41マウスを動員のために処置し、次に、CXCR4及びCD47又は対照としてGFPをコードするmRNAを一過性に過剰発現している同じドナー由来の安定的に発現しているGFP+ mPB細胞を注入した(上概略図)。末梢血においてヒトCD45+細胞生着のパーセントを追跡した(左パネル)。第2の生着由来であるGFP+標識細胞を追跡したところ、特に後の時点ではCXCR4+CD47過剰発現細胞は対照対応物よりもよく生着した(中パネル)。これらの結果は、GFP+細胞の絶対数を調べることによっても確認された(右パネル)。
図10】CXCR4 WhimアイソフォームI機能性対野生型(Wt)アイソフォームI対応物及び対照(GFP)のインビトロ評価。臍帯血CD34+細胞に、目的の遺伝子の一過性過剰発現を可能にするCXCR4 WtアイソフォームI又はCXCR4 WhimアイソフォームIをコードするmRNAをヌクレオフェクトした。培養1日後CXCR4発現のレベルを評価し(左パネル)、遊走アッセイを実施した。インキュベーション30分後、(下チャンバーにおける)遊走細胞の数を評価した(右パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本明細書で使用される用語「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、「含むこと(including)」若しくは「含む(includes)」、又は「含有すること(containing)」若しくは「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は非限定的(open-ended)であり、追加の列挙されていないメンバー、要素又はステップを排除しない。用語「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、用語「からなる(consisting of)」も含む。
【0089】
一態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用を提供する。
【0090】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するようにHSPCを遺伝子操作するステップを含む、方法を提供する。
【0091】
一実施形態では、HSPCは、CD47を発現するように遺伝子操作される。一実施形態では、HSPCは、CXCR4を発現するように遺伝子操作される。好ましい実施形態では、HSPCは、CD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される。
【0092】
本明細書で使用される用語「遺伝子操作される」とは、外因性遺伝子材料の導入による前駆細胞(precursor cell)、例えば、天然の細胞の操作を指す。したがって、本発明の文脈では、HSPCは、外因性CD47及び/又はCXCR4をコードし細胞によるこれらの発現を可能にする遺伝子材料の導入により遺伝子操作され得る。
【0093】
分化群47(Cluster of differentiation 47、CD47)
分化群47(CD47、インテグリン関連タンパク質、IAPとしても知られる)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質である。CD47は、トロンボスポンジン-1(TSP-1)及びシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)に結合し、マクロファージへのシグナルとして機能する。
【0094】
好ましい実施形態では、CD47はヒトCD47である。
【0095】
好ましい実施形態では、CD47をコードするヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0096】
一実施形態では、CD47をコードするヌクレオチド配列は:
である。
【0097】
別の実施形態では、CD47のヌクレオチド酸配列は:
である。
【0098】
一実施形態では、CD47のアミノ酸配列は:
である。
【0099】
別の実施形態では、CD47のアミノ酸配列は:
である。
【0100】
別の実施形態では、CD47のアミノ酸配列は:
である。
【0101】
別の実施形態では、CD47のアミノ酸配列は:
である。
【0102】
一実施形態では、CD47は、配列番号8又は1(好ましくは、配列番号8)に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号2~5のいずれか1つにより表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0103】
一実施形態では、CD47は、配列番号2~5に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされ、好ましくは、該アミノ酸配列が、それぞれ配列番号2~5により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0104】
一実施形態では、CD47は、配列番号2~5に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はそれからなり、好ましくは、該アミノ酸配列が、それぞれ配列番号2~5により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0105】
C-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)
C-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)は、HSPCの表面に発現される受容体である。CXCR4とCXCL12の相互作用は、骨髄への遊走を誘導する主要な機構の1つである。
【0106】
CXCR4はフーシン又はCD184としても知られることがある。
【0107】
好ましい実施形態では、CXCR4はヒトCXCR4である。
【0108】
好ましい実施形態では、CXCR4をコードするヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0109】
一実施形態では、CXCR4をコードするヌクレオチド酸配列は:
である。
【0110】
別の実施形態では、CXCR4をコードするヌクレオチド酸配列は:
である。
【0111】
別の実施形態では、CXCR4をコードするヌクレオチド酸配列は:
である。
【0112】
別の実施形態では、CXCR4をコードするヌクレオチド酸配列は:
である。
【0113】
一実施形態では、CXCR4のアミノ酸配列は:
である。
【0114】
一実施形態では、CXCR4のアミノ酸配列は:
である。
【0115】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号9又は6(好ましくは、配列番号9)に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号7により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0116】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号7に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該アミノ酸配列が、配列番号7により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0117】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号7に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はそれからなり、好ましくは、該アミノ酸配列が、配列番号7により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0118】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号6、9、10又は11に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号7又は12により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0119】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号7又は12に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされ、好ましくは、該アミノ酸配列が配列番号7又は12により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0120】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号7又は12に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はそれからなり、好ましくは、該アミノ酸配列が配列番号7又は12により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0121】
一実施形態では、CXCR4は切断型CXCR4である。一実施形態では、CXCR4はCXCR4 Whimアイソフォームである(Kawai T.ら(2005) Experimental Hematology; CXCR4 WhimアイソフォームIはWhim症候群を抱えた対象において天然に発現されることがある)。
【0122】
一実施形態では、CXCR4はCXCR4 WhimアイソフォームIである。一実施形態では、CXCR4はCXCR4 WhimアイソフォームIIである。
【0123】
CXCR4 WhimアイソフォームIをコードする例としてのヌクレオチド配列は:
である。
【0124】
CXCR4 WhimアイソフォームIをコードする別の例としてのヌクレオチド配列は:
である。
【0125】
CXCR4 WhimアイソフォームIの例としてのアミノ酸配列は:
である。
【0126】
CXCR4 WhimアイソフォームIIをコードする例としてのヌクレオチド配列は:
である。
【0127】
CXCR4 WhimアイソフォームIIをコードする別の例としてのヌクレオチド配列は:
である。
【0128】
CXCR4 WhimアイソフォームIIの例としてのアミノ酸配列は:
である。
【0129】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号13、14、16又は17に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号15又は18により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0130】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号15又は18に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該アミノ酸配列が、配列番号15又は18により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0131】
一実施形態では、CXCR4は、配列番号15又は18に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又それはからなり、好ましくは、該アミノ酸配列が、配列番号15又は18により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0132】
好ましい実施形態では、CXCR4は、配列番号14に対し少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされており、好ましくは、該ヌクレオチド配列にコードされたタンパク質が、配列番号15により表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0133】
細胞生存及び生着
本明細書で使用される用語「生存」とは、造血幹細胞及び/又は前駆細胞が、インビトロ又はエクスビボ培養中に生き残る(例えば、死ぬこともアポトーシスになることもない)能力を指す。造血幹細胞及び/又は前駆細胞は、例えば、細胞培養中にベクターの形質導入に続いてアポトーシスの増加を受けることがあり、したがって、生存細胞はアポトーシス及び/又は細胞死を回避していた可能性がある。
【0134】
細胞生存は、当業者であれば容易に分析し得る。例えば、細胞培養物中の生、死及び/又はアポトーシス細胞の数は、培養の開始時及び/又は一定期間(例えば、約6若しくは12時間、又は1、2、3、4、5、6、7若しくはそれよりも多い日数、好ましくは、期間はベクターの細胞への形質導入から開始する)の培養後に定量してもよい。細胞生存に対する薬剤の効果は、薬剤の存在及び非存在下で、しかし他の点では実質的に同一の条件下で実行される実験間で、培養期間開始時及び/又は終了時の生、死及び/又はアポトーシス細胞の数及び/又はパーセンテージを比較することにより評価し得る。
【0135】
ある特定の状態(例えば、生、死又はアポトーシス細胞)の細胞数及び/又はパーセンテージは、血球計数器、自動細胞カウンター、フローサイトメトリー及び蛍光活性化細胞選別機の使用を含む、当技術分野で公知の多数の方法のいずれかを使用して定量し得る。これらの技術は、生、死及び/又はアポトーシス細胞間の識別を可能にし得る。さらに又は別の方法では、アポトーシス細胞は、容易に入手可能なアポトーシスアッセイ(例えば、細胞膜表面上のホスファチジルセリン(PS)の検出に基づくアッセイ(例えば、露出したPSに結合するアネキシンVの使用による)、アポトーシス細胞は蛍光標識アネキシンVの使用により定量しうる)を使用して検出してもよく、このアッセイは他の技術を補完するのに使用してもよい。
【0136】
本明細書で使用される用語「生着」とは、造血幹細胞及び/又は前駆細胞が、その移植に続いて、すなわち、移植後短期間及び/又は長期間対象において定着し(populate)生存する能力を指す。例えば、生着は、移植の約1日~24週間、1日~10週間、又は1~30日若しくは10~30日後に検出される移植された造血幹細胞及び/又は前駆細胞の子孫である造血細胞(例えば、移植片由来細胞)の数及び/又はパーセンテージを指し得る。ヒト造血幹細胞及び/又は前駆細胞生着及び再増殖(repopulation)の異種移植片モデルでは、生着は、例えば、ヒト異種移植片(例えば、CD45表面マーカーについて陽性である)に由来する細胞のパーセンテージとして末梢血中で評価し得る。一実施形態では、生着は、移植後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は30日目に評価される。別の実施形態では、生着は、移植後約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24週目に評価される。別の実施形態では、生着は、移植後約16~24週目、好ましくは、20週目に評価される。
【0137】
生着は、当業者であれば容易に分析し得る。例えば、移植された造血幹細胞及び/又は前駆細胞は、マーカー(例えば、レポータータンパク質、例えば、蛍光タンパク質)を含むように操作してもよく、このマーカーを使用すれば、移植片由来細胞を定量化することができる。分析用の試料は関連する組織から抽出しエクスビボで分析してもよい(例えば、フローサイトメトリーを使用して)。
【0138】
造血幹細胞及び前駆細胞
幹細胞は多くの細胞種に分化することができる。全ての細胞種に分化することができる細胞は全能性として知られる。哺乳動物では、接合子と初期胚細胞だけが全能性である。幹細胞は、全てではないとしてもほとんどの多細胞生物に見られる。幹細胞は、有糸細胞分裂によりそれ自身を再生しかつ多様な範囲の特殊化した細胞種に分化する能力を特徴とする。哺乳動物幹細胞の2つの大まかなタイプとして、胚盤胞の内部細胞塊から単離される胚性幹細胞と成体組織に見られる成体幹細胞がある。発生中の胚では、幹細胞は特殊化した胚組織の全てに分化することができる。成体生物では、幹細胞及び前駆細胞は身体の修復系として働き、特殊化した細胞を補充するだけでなく、血液、皮膚又は腸管組織などの再生器官の通常のターンオーバーを維持する。
【0139】
造血幹細胞(HSC)は、例えば、末梢血、骨髄及び臍帯血に見出すことができる多能性幹細胞である。HSCは、自己複製しあらゆる血液細胞系列に分化することができる。HSCは、全免疫系、並びに全ての造血組織(例えば、骨髄、脾臓及び胸腺)の赤血球及び骨髄系列に再定着することができる。HSCは、全ての造血細胞系列の生涯に渡る生産を提供する。
【0140】
造血前駆細胞は、特定タイプの細胞に分化する能力を有する。しかしながら、幹細胞とは対照的に、造血前駆細胞はすでにかなり特異的であり、それらの「ターゲット」細胞への分化を課せられている。幹細胞と前駆細胞の違いは、幹細胞は無制限に増殖できるが、前駆細胞は限られた回数しか分裂できないことである。造血前駆細胞は、機能的インビボアッセイ(すなわち、移植及び長期間全ての血液系列を生じ得るかどうかの実証)によってのみHSCと厳密に区別することができる。
【0141】
本発明の造血幹細胞及び前駆細胞は、CD34細胞表面マーカーを含む(CD34+と表記される)。
【0142】
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)供給源
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団は組織サンプルより取得しうる。
【0143】
例えば、造血幹細胞及び/又は前駆細胞の集団は末梢血(例えば成体及び胎児末梢血)、臍帯血、骨髄、肝臓又は脾臓より取得し得る。好ましくはこれらの細胞は末梢血又は骨髄より取得される。これらの細胞は、増殖因子処理により細胞をインビボで動員した後に取得され得る。
【0144】
好ましい実施形態では、造血幹細胞及び/又は前駆細胞は、動員された末梢血(mPB)造血幹細胞及び/又は前駆細胞である。
【0145】
動員は、例えば、GCSF、プレリキサホル、BIO5192、GROβ(GROβΔ4/CXCL2Δ4) (Fukuda, et al. (2007) Blood 110: 860-869)又はそれらの組合せを用いて行ってもよい。NSAID、及びジペプチジルペプチダーゼ阻害剤などの他の薬剤も動員剤として有用であり得る。
【0146】
幹細胞増殖因子GMCSF及びGCSFが利用可能であるので、ほとんどの造血幹細胞移植手順は、今や、骨髄からではなく末梢血から回収された幹細胞を用いて行われる。末梢血幹細胞を回収することでより多量の移植対象物が得られ、ドナーが移植対象物を回収するために全身麻酔を受ける必要がなくなり、生着時間が短縮され、長期再発率は低くなり得る。
【0147】
骨髄は、標準的吸引法(定常状態若しくは動員後)により、又は次世代採取ツール(例えば、Marrow Miner)により採取してもよい。
【0148】
加えて、HSPCはまた、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)に由来してもよい。
【0149】
HSCの特徴
HSCは典型的には、フローサイトメトリー法により低前方散乱及び側方散乱プロファイルである。一部は、ミトコンドリア活性の決定を可能とするローダミン標識により示されるように、代謝が静止状態である。HSCは、CD34、CD45、CD133、CD90及びCD49fなどの特定の細胞表面マーカーを含みうる。HSCは、CD38及びCD45RA細胞表面マーカーの発現を欠く細胞としても定義できる。しかしながら、これらのマーカーのいくつかの発現は、発生段階及びHSCの組織特異的コンテキストに依存する。「サイドポピュレーション細胞」と呼ばれる一部のHSCは、フローサイトメトリーにより検出した場合、Hoechst 33342色素を排除する。従って、HSCは、それらの同定及び単離を可能とする記述的特性を有する。
【0150】
陰性マーカー
CD38は、ヒトHSCの最も確立された有用な単一の陰性マーカーである。
【0151】
ヒトHSCはまた、CD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD20、CD24、CD36、CD56、CD66b、CD271及びCD45RAなどの系列マーカーについても陰性であり得る。しかしながら、これらのマーカーは、HSC富化のためには、組み合わせて使用する必要がある場合がある。
【0152】
「陰性マーカー」とは、ヒトHSCがこれらのマーカーの発現を欠くことをいうと理解されるべきである。
【0153】
陽性マーカー
CD34及びCD133は、HSCの最も有用な陽性マーカーである。
【0154】
一部のHSCはまた、CD90、CD49f及びCD93などの系列マーカーについても陽性である。しかしながら、これらのマーカーは、HSC富化のためには、組み合わせて使用する必要がある場合がある。
【0155】
「陽性マーカー」とは、ヒトHSCがこれらのマーカーを発現することをいうと理解されるべきである。
【0156】
一実施形態では、HSPCはCD34+である。好ましい実施形態では、HSPCはCD34+CD38-である。
【0157】
分化細胞
分化細胞は、幹細胞又は前駆細胞と比較して、より特殊化された細胞である。分化は、多細胞生物の発生の間に、生物が一個の接合体から複雑な組織及び細胞型の系に変化するにつれて、生じる。分化は、成体においても一般的なプロセスである:成体幹細胞は、組織修復時、及び正常な細胞ターンオーバーの際に、分裂して完全に分化した娘細胞を生成する。分化は、細胞の大きさ、形状、膜電位、代謝活性及びシグナルに対する応答性を劇的に変化させる。これらの変化は主に、遺伝子発現の高度に制御された変更によるものである。すなわち、分化細胞は、特定の遺伝子の活性化及び不活性化を含む発生プロセスに起因する、特定の構造を有し特定の機能を果たす細胞である。ここで、分化細胞は、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞、T細胞、B細胞、及びNK細胞などの、造血系列の分化細胞を含む。例えば、造血系列の分化細胞は、未分化細胞上では発現されていないか、又は発現が少ない細胞表面分子の検出によって、幹細胞及び前駆細胞と区別することができる。適切なヒト系列マーカーの例には、CD33、CD13、CD14、CD15 (骨髄)、CD19、CD20、CD22、CD79a (B)、CD36、CD71、CD235a (赤血球)、CD2、CD3、CD4、CD8 (T)、及びCD56 (NK)が挙げられる。
【0158】
細胞集団の単離及び濃縮
遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団が本明細書に開示される。好ましくは、HSPCの集団は、HSPCの単離された集団である。
【0159】
細胞の「単離された集団」とは、その細胞集団が体内に含まれていないと理解されるべきである。細胞の単離された集団は、対象からあらかじめ取り出されていてもよい。細胞の単離された集団は、エクスビボ又はインビトロで、当技術分野で公知の標準技術を用いて培養し、扱うことができる。細胞の単離された集団は、のちに対象に再導入してもよい。前記対象は、細胞が最初に単離された同一の対象であってもよいし、異なる対象であってもよい。
【0160】
細胞集団は、特定の表現型若しくは特性を示す細胞について選択的に、その表現型若しくは特性を示さないか、又は示す程度が低い、他の細胞から精製され得る。例えば、特定のマーカー(CD34など)を発現する細胞集団は、出発細胞集団から精製され得る。或いは、又はそれに加えて、別のマーカー(CD38など)を発現しない細胞集団が精製され得る。
【0161】
ある特定の細胞型について細胞集団を「濃縮(富化)」するとは、その集団内でその細胞型の濃度を増加させることと理解されるべきである。他の細胞型の濃度はそれに付随して低下しうる。
【0162】
精製又は濃縮(富化)は、他の細胞型のない実質的に純粋な細胞集団をもたらし得る。
【0163】
特異的マーカー(例えば、CD34若しくはCD38)を発現する細胞集団についての精製若しくは濃縮(富化)は、そのマーカーに結合する薬剤、好ましくはそのマーカーに実質的に特異的に結合する薬剤を使用することによって達成することができる。
【0164】
細胞マーカーに結合する薬剤は、抗体、例えば抗CD34又は抗CD38抗体であってもよい。
【0165】
「抗体」という用語は、選択された標的に結合することができる完全抗体又は抗体断片を意味し、Fv、ScFv、F(ab’)及びF(ab’)2、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体及びヒト化抗体を含む改変抗体、並びにファージディスプレー又は別の技術を用いて産生された人為的に選択した抗体が含まれる。
【0166】
加えて、古典的抗体の代替物、例えば、「アビボディ(avibody)」、「アビマー(avimer)」、「アンチカリン」、「ナノボディ」及び「DARPins」も本発明において使用され得る。
【0167】
特異的マーカーに結合する薬剤は、当技術分野で公知の多数の技術のいずれかを用いて同定できるように標識され得る。薬剤は、固有に標識されてもよく、又はそれに標識をコンジュゲートすることによって修飾されてもよい。「コンジュゲート」により、薬剤及び標識が作動可能に連結されることが理解されるべきである。これは、薬剤及び標識が両方ともそれらの機能(例えば、マーカーに結合する、蛍光同定を可能にする、又は磁場に置いた場合に分離を可能にする)を実質的に妨げられることなく遂行できるように共に連結されることを意味する。コンジュゲーションの適切な方法は当技術分野で周知であり、当業者によって容易に特定可能であろう。
【0168】
標識は、例えば、それが結合されている標識薬剤及び任意の細胞のその環境からの精製(例えば、薬剤は磁性ビーズ、又はアビジンなどの親和性タグで標識され得る)、検出又はその両方を可能とし得る。標識として使用するのに適切な検出可能マーカーとしては、フルオロフォア(例えば、緑色、チェリー、シアン及び橙色の蛍光タンパク質)及びペプチドタグ(例えば、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ及びHAタグ)が含まれる。
【0169】
特異的マーカーを発現する細胞集団を分離するための多数の技術が当技術分野で公知である。これらには、磁性ビーズに基づく分離技術(例えば、閉回路(closed-circuit)磁性ビーズに基づく分離)、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、親和性タグ精製(例えば、アフィニティーカラム又はビーズ、例えば、アビジン標識薬剤を分離するためのビオチンカラムを使用)及び顕微鏡に基づく技術が含まれる。
【0170】
異なる技術の組合せ、例えば、磁性ビーズに基づく分離工程とその後の得られた細胞集団の、フローサイトメトリーによる1以上の追加の(陽性又は陰性)マーカーに関する選別を用いて分離を行うことも可能であり得る。
【0171】
臨床グレードの分離は例えば、CliniMACS(登録商標)システム(Miltenyi)を用いて行うことができる。これは閉回路磁性ビーズに基づく分離技術の一例である。
【0172】
色素排除特性(例えば、サイドポピュレーション又はローダミン標識)又は酵素活性(例えば、ALDH活性)がHSCの富化のために使用され得ることも想定される。
【0173】
遺伝子編集
用語「遺伝子編集」とは、細胞中で核酸が挿入され、欠失され又は置き換えられる一種の遺伝子操作を指す。遺伝子編集は、操作されたヌクレアーゼを使用して達成してもよく、このヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノム)の所望の部位を標的とし得る。そのようなヌクレアーゼは所望の位置で部位特異的二本鎖切断を引き起こし得、次にこの切断は、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え(HR)を通じて修復され得、標的突然変異がもたらされ得る。
【0174】
そのようなヌクレアーゼは、ベクター、例えば、ウイルスベクターを使用して標的細胞に送達され得る。
【0175】
当技術分野で公知である適切なヌクレアーゼの例は、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化された規則的な間隔の短い回分構造反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats、CRISPR)/Casシステム(Gaj, T.ら(2013) Trends Biotechnol. 31: 397~405ページ; Sander, J.D.ら(2014) Nat. Biotechnol. 32: 347~55ページ)を含む。
【0176】
メガヌクレアーゼ(Silve, G.ら(2011) Cur. Gene Ther. 11: 11~27ページ)も、遺伝子編集に適したヌクレアーゼとして用いてよい。
【0177】
CRISPR/CasシステムはRNAガイドDNA結合システム(van der Oostら(2014) Nat. Rev. Microbiol. 12: 479~92ページ)であり、該システムでは、ガイドRNA(gRNA)は、Cas9ドメインが特定の配列を標的とすることができるように選択され得る。gRNAの設計の方法は当技術分野では公知である。さらに、細胞の所望のゲノム部位に異なるエフェクタードメインを同時に一方向に向けるために、完全に直交性の(orthogonal)Cas9タンパク質、並びにCas9/gRNAリボ核タンパク質複合体及び異なるタンパク質に結合するgRNA構造/組成の改変が最近開発されており(Esveltら(2013) Nat. Methods 10: 1116~21ページ; Zetsche, B.ら(2015) Cell pii: S0092-8674(15)01200-3; Dahlman, J.E.ら (2015) Nat. Biotechnol. 2015 Oct 5. doi: 10.1038/nbt.3390. [Epub ahead of print]; Zalatan, J.G.ら(2015) Cell 160: 339~50ページ; Paix, A. ら(2015) Genetics 201: 47~54ページ)、本発明での使用に適している。
【0178】
ベクター
ベクターは、1つの環境から別の環境への実体の移動を可能にする又は促進するツールである。本発明に従って及び例として、組換え核酸技術で使用される一部のベクターは、実体、例えば、核酸のセグメント(例えば、異種DNAセグメント、例えば、異種cDNAセグメント)が標的細胞中に移入されることを可能にする。ベクターは、細胞内に異種核酸(DNA又はRNA)を維持する、核酸のセグメントを含むベクターの複製を促進する、又は核酸のセグメントによりコードされるタンパク質の発現を促進するという目的を果たし得る。
【0179】
ベクターは非ウイルス性又はウイルス性でもよい。組換え核酸技術で使用されるベクターの例は、プラスミド、染色体、人工染色体及びウイルスを含むがこれらに限定されない。ベクターは一本鎖又は二本鎖であってもよい。ベクターは線形でもよく、任意選択で、ベクターは1つ以上の相同アームを含む。ベクターはまた、例えば、ネイキッド核酸(例えば、DNA)であってもよい。そのもっとも単純な形態では、ベクターそれ自体が目的のヌクレオチドであり得る。
【0180】
本発明で使用されるベクターは、例えば、プラスミド又はウイルスベクターであってもよく、ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター及び、任意選択で、プロモーターの調節因子を含んでもよい。
【0181】
本発明で使用されるポリヌクレオチドを含むベクターは、当技術分野で公知の種々の技術、例えば、形質転換、トランスフェクション及び形質導入を使用して細胞中に導入し得る。いくつかの技術、例えば、組換えウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス及び単純ヘルペスウイルスベクター、スリーピングビューティーベクター(Sleeping Beauty vectors)を用いた形質導入、核酸の直接注入並びに遺伝子銃形質転換(biolistic transformation)が当技術分野では公知である。
【0182】
非ウイルス送達システムは、DNAトランスフェクション法を含むがこれに限定されない。ここで、トランスフェクションは、非ウイルスベクターを使用して遺伝子を標的細胞に送達する方法を含む。典型的なトランスフェクション法は、エレクトロポレーション、DNA遺伝子銃、脂質媒介トランスフェクション、圧縮DNA媒介トランスフェクション(compacted DNA-mediated transfection)、リポソーム、イムノリポソーム(immunoliposomes)、リポフェクチン、カチオン剤媒介トランスフェクション(cationic agent-mediated transfection)、カチオン性面両親媒性物質(cationic facial amphiphiles) (CFAs) (Nature Biotechnology (1996) 14: 556)及びこれらの組合せを含む。
【0183】
用語「ベクター」は、発現ベクター、すなわち、インビボ又はインビトロ/エクスビボ発現が可能である構築物を含む。発現はベクター配列により制御されてもよく、又は、例えば、標的部位への挿入の場合には、発現は標的配列により制御されてもよい。ベクターは細胞のDNAに組み込まれるか又はこれに繋ぎ留められてもよい。
【0184】
ウイルス送達システムは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター及びバキュロウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。
【0185】
一実施形態では、ベクターはセンダイウイルスベクターである。センダイウイルスベクターは、導入遺伝子、例えば、CD47及び/又はCXCR4の一過性発現に特に効果的であり得る。さらに、センダイウイルスベクターは典型的には、導入遺伝子をHSPCに極めて効率的に移入させることができる(例えば、導入遺伝子(例えば、GFP)を臍帯血CD34+細胞に3のMOIで移入させることができる)。
【0186】
センダイウイルスベクターは典型的には、隣接細胞に感染することはできない。さらに、センダイウイルスベクターは、温度感受性であってもよく、例えば、約34℃の温度では、複製することができてもよく、約37℃の温度では、その複製は低くてもよく、約38℃の温度では、その複製は妨げられてもよい。センダイウイルスベクターは典型的には、細胞の生存能力に影響しない。
【0187】
目的のヌクレオチド
CD47及び/又はCXCR4に加え、HSPCは、導入遺伝子を発現するようさらに遺伝子操作されていてもよい。該導入遺伝子は、目的のヌクレオチド(nucleotide of interest、NOI)であり得る。
【0188】
好ましくは、目的のヌクレオチドは治療効果をもたらす。
【0189】
適切なNOIとしては、限定されないが、酵素、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、アンチセンスRNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、miRNA標的配列、標的タンパク質のトランスドメイン陰性変異体(transdomain negative mutant)、毒素、条件付き毒素、抗原、腫瘍抑制タンパク質、増殖因子、転写因子、膜タンパク質、表面受容体、抗癌分子、血管作用性タンパク質及びペプチド、抗ウイルスタンパク質及びリボザイム、並びにそれらの誘導体(例えば、付随レポーター基を有する誘導体)をコードする配列が挙げられる。NOIはまた、プロドラッグ活性化酵素をコードしてもよい。
【0190】
NOIの一例は、サラセミア/鎌状赤血球疾患の遺伝子療法に使用され得るβ-グロビン鎖である。
【0191】
NOIはまた、慢性肉芽腫性疾患(CGD、例えば、gp91phoxトランス遺伝子)、白血球接着不全(leukocyte adhesion defect)、進行中の重度感染及び遺伝性骨髄不全症候群(例えば、ファンコニ貧血)を有しない患者における他の食細胞障害、並びに原発性免疫不全症(SCID)などの、骨髄系列において非緊急/選択的遺伝子矯正を必要とする他の疾患の治療に有用なものを含む。
【0192】
NOIには、リソソーム蓄積症及び免疫不全の治療に有用なものも含まれる。
【0193】
医薬組成物
本発明の細胞は、対象に投与するために、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに製剤化され得る。適切な担体及び希釈剤としては、等張食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が含まれ、ヒト血清アルブミンが含有される可能性がある。
【0194】
細胞療法製品の取り扱いは、好ましくは、細胞療法に関するFACT-JACIE国際基準に従って実施される。
【0195】
造血幹細胞及び/又は前駆細胞移植
本発明は、療法において使用するための、例えば、遺伝子療法において使用するための、本発明の方法に従って調製された造血幹細胞及び/又は前駆細胞の集団を提供する。
【0196】
該使用は造血幹細胞及び/又は前駆細胞移植手順の一部であってもよい。
【0197】
造血幹細胞移植(HSCT)は、骨髄(この場合、骨髄移植として知られる)又は血液に由来する血液幹細胞の移植である。幹細胞移植は、血液学及び腫瘍学の分野で、血液若しくは骨髄の疾患、又はある種の癌を有する人々に対して最もよく実施される医療処置である。
【0198】
HSCTの多くのレシピエントは、化学療法による長期処置から利益を受けないであろう、又は化学療法に対してすでに耐性のある多発性骨髄腫又は白血病患者である。HSCTの候補は、患者が欠陥幹細胞を伴う重症複合免疫不全症又は先天性好中球減少症などの先天的欠陥を有する小児科症例、及びまた生後に幹細胞を失った再生不良性貧血を有する小児又は成体を含む。幹細胞移植で治療される他の状態としては、鎌状赤血球症、骨髄異形成症候群、神経芽腫、リンパ腫、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍(Desmoplastic small round cell tumour)及びホジキン病が挙げられる。より最近では、必要な事前の化学療法及び放射線の用量がより少ない非骨髄破壊的、又はいわゆる「ミニ移植」法が開発された。これにより、高齢者及びそれ以外で従来の治療レジメンに耐えるには弱すぎると考えられるだろう他の患者においてHSCTの実施が可能となった。
【0199】
一実施形態において、造血幹細胞及び/又は前駆細胞の集団は、自家幹細胞移植手順の一部として投与される。
【0200】
別の実施形態において、造血幹細胞及び/又は前駆細胞の集団は、同種幹細胞移植手順の一部として投与される。
【0201】
「自家幹細胞移植手順」とは、出発細胞集団(その後遺伝子操作され得る)が、操作された細胞集団が投与される対象と同じ対象から得られることをいうと理解されるべきである。自家移植手順は、免疫学的不適合性に伴う問題を避け、遺伝的に適合するドナーが得られるかどうかに関わらず対象が利用できることから有利である。
【0202】
「同種幹細胞移植手順」とは、出発細胞集団(その後遺伝子操作され得る)が、操作された細胞集団が投与される対象と異なる対象から得られることをいうと理解されるべきである。好ましくは、免疫学的不適合性のリスクを最小化するために、ドナーは細胞が投与される対象に遺伝的に適合する。
【0203】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に穏やかな骨髄破壊的、強度を弱めた又は非骨髄破壊的前処置レジメンを受ける。
【0204】
本発明者らは、本発明のHSPCが、内在性HSPCの動員を受けた対象において優先的に交換され、及び/又は選択的に生着することを見出した。移植されたHSPCは、骨髄の再構築において内在性HSPCを効率的に打ち負かす。
【0205】
一実施形態では、対象は、内在性HSPCの動員のためのレジメンを受ける。好ましくは、内在性HSPCの動員のためのレジメンは、本発明のHSPCの投与前に施される。
【0206】
一実施形態では、対象は、本発明のHSPCの投与前に1つ以上のHSPC動員剤を投与される。一実施形態では、対象は、本発明のHSPCの投与前に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、プレリキサホル及び/又はBIO5192を投与される。一実施形態では、対象は、HSPCの投与前にGROβ(GROβΔ4/CXCL2Δ4)及びプレリキサホルを投与される。好ましくは、HSPCは、CXCR4、又はCD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される。
【0207】
本発明はまた、HSPCを標的とする毒素の投与に基づく前処置レジメンを利用し得る。そのような方法は、内在性HSPC集団の選択的枯渇又は除去を可能とする可能性があり、例えばUS 2016/324982に開示されるものを含む。そのような方法は、非骨髄破壊的であり得る。これらの方法は、毒素がHSPCに取り込まれるように、毒素を標的とするHSPC細胞表面上の1以上のマーカーを利用し得る。該方法は、従来の前処置法に付随する毒性を回避し得る。
【0208】
一実施形態では、対象は、1つ以上のHSPC特異的免疫毒素を用いた前処置を受ける。好ましくは、1つ以上のHSPC特異的免疫毒素は、HSPCの投与前に投与される。
【0209】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に毒素にコンジュゲートされた抗体を投与される。
【0210】
適切な毒素としては、限定されないが、サポリン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、リシンA鎖誘導体、小分子毒素、RNAポリメラーゼII及び/又はIII阻害剤(例えば、アマトキシン、例えば、α-アマニチン、β-アマニチン、γ-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン(amanin)、アマニンアミド、アマヌリン又はアマヌリン酸(amanullinic acid))、DNA損傷分子(例えば抗チューブリン剤、DNA架橋剤、DNAアルキル化剤又は有糸分裂攪乱剤(mitotic disrupting agent)、例えばマイタンシン(maytansine))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0211】
適切な抗体としては、CD45、CD49d(VLA-4)、CD49f(VLA-6)、CD51、CD84、CD90、CD117、CD133、CD134及びCD184(CXCR4)からなる群から選択される細胞表面タンパク質に結合する抗体が挙げられる。
【0212】
一実施形態では、免疫毒素は、抗cKit免疫毒素である。抗cKit免疫毒素は、毒素にコンジュゲートした抗cKit抗体を含み得る(例えば、Czechowicz, A. et al. (2018) Biol Bone Marrow Transplant 24: S60 Abstract 54を参照されたい)。
【0213】
一実施形態では、免疫毒素は、抗cKit抗体を含む。一実施形態では、免疫毒素は、タンパク質合成毒素、好ましくはサポリンを含む。好ましい実施形態では、免疫毒素は、抗cKit-サポリン免疫毒素である。
【0214】
一実施形態では、免疫毒素は、抗CD45抗体を含む。一実施形態では、免疫毒素は、タンパク質合成毒素、好ましくはサポリンを含む。好ましい実施形態では、免疫毒素は、抗CD45-サポリン免疫毒素である。
【0215】
好ましくは、HSPCは、毒素が対象の骨髄から消散した後で対象に投与される。
【0216】
一実施形態では、対象は、HSPCの投与前に化学療法前処置又は放射線療法前処置を受けない。
【0217】
形質導入細胞集団の適切な用量は、例えば治療上及び/又は予防上有効なものである。投与すべき用量は、治療される対象及び状態によって異なる場合があり、当業者により容易に決定され得る。
【0218】
造血前駆細胞は短期間の生着をもたらす。したがって、造血前駆細胞を投与することによる遺伝子治療は、対象において非永続的効果をもたらすであろう。例えば、この効果は、造血前駆細胞の投与後1~6ヶ月に限定される可能性がある。このアプローチの利点は、治療的介入の自己限定的な(self-limited)特性に起因する、より優れた安全性及び忍容性であり得る。
【0219】
このような造血前駆細胞遺伝子治療は、後天性疾患、例えば癌の治療に適している可能性があり、(毒性を有する可能性のある)目的の抗癌ヌクレオチドの時間制限された発現は、疾患を根絶するのに十分であり得る。
【0220】
本発明(例えば、造血幹細胞及び/又は前駆細胞遺伝子治療)は、例えば、ムコ多糖症I型(MPS-1)、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、ファンコニ貧血(FA)、鎌状赤血球症、ピルビン酸キナーゼ欠損症(PKD)、白血球接着不全(LAD)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(GLD)、GM2ガングリオシドーシス、サラセミア、癌、遺伝性疾患、及び血液疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用であり得る。
【0221】
本発明はまた、例えば、ムコ多糖症及び他のリソソーム蓄積症の治療に有用であり得る。
【0222】
加えて、又は代わりに、本発明は、WO1998/005635に挙げられている障害の治療に有用であり得る。参照しやすいように、そのリストの一部をここに示す:癌、炎症又は炎症性疾患、皮膚科障害、発熱、心血管作用(cardiovascular effect)、出血、凝固及び急性期反応、悪液質、食欲不振症、急性感染、HIV感染、ショック状態、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、再潅流傷害、髄膜炎、片頭痛及びアスピリン依存性抗血栓症;腫瘍増殖、浸潤及び拡散、血管新生、転移、悪性、腹水及び悪性胸水;脳虚血、虚血性心疾患、骨関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息、多発性硬化症、神経変性、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、脳卒中、血管炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎;歯周炎、歯肉炎;乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、表皮水疱症;角膜潰瘍、網膜症及び外科的創傷治癒;鼻炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、アナフィラキシー;再狭窄、鬱血性心不全、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症又は内部硬化症(endosclerosis)。
【0223】
加えて、又は代わりに、本発明は、WO1998/007859に挙げられている障害の治療に有用であり得る。参照しやすいように、そのリストの一部をここに示す:サイトカイン及び細胞増殖/分化活性;免疫抑制又は免疫賦活活性(例えば、ヒト免疫不全ウイルス感染を含む免疫不全を治療するため;リンパ球増殖の調節のため;癌及び多くの自己免疫疾患の治療のため、及び移植拒絶の防止又は腫瘍免疫の誘導のため);造血調節、例えば、骨髄系又はリンパ系疾患の治療;例えば、創傷治癒、火傷、潰瘍及び歯周病及び神経変性の治療のための、骨、軟骨、腱、靱帯及び神経組織の成長の促進;卵胞刺激ホルモンの阻害又は活性化(受精能の調整);化学走性/化学運動性(chemokinetic)活性(例えば、特定の細胞種を損傷又は感染部位に動員するため);止血及び血栓溶解活性(例えば、血友病及び脳卒中を治療するため);抗炎症活性(例えば、敗血性ショック又はクローン病を治療するため);抗微生物剤として;例えば、代謝又は行動のモジュレーター;鎮痛薬として;特定の欠乏性障害の治療;ヒト又は獣医学における例えば乾癬の治療において。
【0224】
加えて、又は代わりに、本発明は、WO1998/009985に挙げられている障害の治療に有用であり得る。参照しやすいように、そのリストの一部をここに示す:マクロファージ阻害活性及び/又はT細胞阻害活性、及び従って、抗炎症活性;抗免疫活性、すなわち、炎症に無関連の応答を含む、細胞性免疫応答及び/又は体液性免疫応答に対する阻害効果;マクロファージ及びT細胞の細胞外マトリックス成分及びフィブロネクチン接着能、並びにT細胞においてアップレギュレートされたfas受容体発現の阻害;関節リウマチを含む関節炎、過敏症、アレルギー反応、喘息、全身性紅斑性狼瘡、膠原病及び他の自己免疫疾患に関連する炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、アテローム動脈硬化性心疾患、再潅流傷害、心停止、心筋梗塞、血管炎症性障害、呼吸窮迫症候群又は他の心肺疾患に関連する炎症、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎及び他の消化管疾患に関連する炎症、肝線維症、肝硬変又は他の肝臓疾患、甲状腺炎又は他の腺疾患、糸球体腎炎又は他の腎及び泌尿器疾患、耳炎又は他の耳鼻咽喉科疾患、皮膚炎又は他の皮膚疾患、歯周病又は他の歯科疾患、精巣炎又は精巣精巣上体炎、不妊症、睾丸外傷(orchidal trauma)又は他の免疫関連精巣疾患、胎盤機能不全、胎盤不全、習慣性流産、子癇、前子癇及び他の免疫及び/又は炎症関連婦人科疾患、後部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、ぶどう膜網膜炎、視神経炎、眼内炎症、例えば、網膜炎又は嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、変性性眼底疾患(degenerative fondus disease)の免疫及び炎症要素、眼球損傷の炎症要素、感染により引き起こされる眼の炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経症、例えば緑内障濾過手術後の過度の瘢痕化、眼内インプラントに対する免疫及び/又は炎症反応、並びに他の免疫及び炎症関連眼疾患、中枢神経系(CNS)又は他の任意の器官の両方において免疫及び/又は炎症抑制が有益であるだろう自己免疫疾患若しくは状態若しくは障害に関連する炎症、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症及び/又は副作用、AIDS関連認知症複合HIV関連脳症、デビック病、ジデナム舞踏病、アルツハイマー病及びCNSの他の変性疾患、状態又は障害、ストークス(stokes)の炎症要素、ポリオ後症候群、精神障害の免疫及び炎症要素、脊髄炎、
脳炎、亜急性硬化性汎脳炎、脳脊髄炎、急性神経障害、亜急性神経障害、慢性神経障害、ギラン-バレー症候群、ジデナム舞踏病、重症筋無力症、偽脳腫瘍、ダウン症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、CNS圧迫若しくはCNS外傷若しくはCNS感染の炎症要素、筋萎縮及び筋ジストロフィーの炎症要素、並びに中枢神経系及び末梢神経系の免疫及び炎症関連疾患、状態又は障害、外傷後炎症、敗血性ショック、感染性疾患、手術の炎症性合併症又は副作用、骨髄移植又は他の移植合併症及び/若しくは副作用、遺伝子療法の炎症及び/又は免疫合併症並びに副作用(例えばウイルス担体の感染による)、又はAIDSに関連する炎症を含む、望ましくない免疫応答及び炎症の阻害、体液性及び/若しくは細胞性の免疫応答を抑制又は阻害するため、単球若しくは白血球増殖性疾患、例えば白血病を、単球若しくはリンパ球の量を低減することによって治療又は改善するため、角膜、骨髄、器官、水晶体、ペースメーカー、天然若しくは人工皮膚組織などの天然又は人工の細胞、組織及び器官を移植する場合の移植片拒絶を予防及び/又は治療するため。
【0225】
キット
別の態様において、本発明は、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクター及び/又は本発明の細胞集団を含むキットを提供する。
【0226】
ベクター及び/又は細胞集団は適切な容器にて提供してもよい。
【0227】
本キットはまた、使用説明書を含んでもよい。
【0228】
治療方法
本明細書において処置(治療)という場合には全て、治癒的処置(治療)緩和処置(治療)及び予防的処置(治療)を含むと理解されるべきである。哺乳動物、特にヒトの治療が好ましい。ヒトの治療及び獣医学的治療の両方が本発明の範囲内にある。
【0229】
投与
本発明における使用のための薬剤(特に、細胞集団)は、単独で投与することができるが、通常は、特にヒト治療用の、医薬担体、賦形剤若しくは希釈剤と混合して投与される。
【0230】
用量
当業者は、過度の実験を行うことなしに、対象に投与するための、本発明の薬剤のうち一つの適当な用量を、容易に決定することができる。典型的には、医師は、個々の患者に最も適切であろう実際の投与量を決定するだろうが、それは、使用される特定の薬剤の活性、その薬剤の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与の方法及び時間、排泄速度、薬物の組合せ、特定の状態の重篤度、並びに個々の受けている治療を含む、様々な要因によって決まるだろう。より高い、又は低い、用量範囲がふさわしい個々の例も当然ありうるが、そうしたことも本発明の範囲内である。
【0231】
対象
「対象」はヒト、又は非ヒト動物のいずれかを意味する。
【0232】
非ヒト動物の例としては、脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、げっ歯類(例えばマウス、ラット、若しくはモルモット)、ブタ、及びネコなどの哺乳類が挙げられる。非ヒト動物はコンパニオンアニマルであってもよい。
【0233】
好ましくは、対象はヒトである。
【0234】
バリアント、誘導体、類似体、相同体及び断片
本明細書で言及される特定のタンパク質及びヌクレオチドに加えて、本発明は、それらのバリアント、誘導体、類似体、相同体及び断片の使用も包含する。
【0235】
本発明の文脈では、所与の配列のバリアントは、残基の特定の配列(アミノ酸残基であれ核酸残基であれ)が、問題のポリペプチド又はポリヌクレオチドがその機能を実質的に保持するように改変されている配列である。バリアント配列は、天然に存在するタンパク質に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、改変、交換及び/又は変異により得ることができる。
【0236】
本発明のタンパク質又はポリペプチドに関係して、本明細書で使用される用語「誘導体」は、得られたタンパク質又はポリペプチドがその内因性の機能の少なくとも1つを実質的に保持するという条件で、配列からの又は配列への1つの(又はそれよりも多い)アミノ酸残基の任意の置換、変異、改変、交換、欠失及び/又は付加を含む。
【0237】
ポリペプチド又はポリヌクレオチドに関係して、本明細書で使用される用語「類似体」は、任意の模倣物、すなわち、それが模倣するポリペプチド又はポリヌクレオチドの内因性の機能の少なくとも1つを保有する化学化合物を含む。
【0238】
典型的には、アミノ酸置換は、改変された配列が要求される活性又は能力を実質的に保持するという条件で、例えば、1、2又は3~10又は20置換行ってもよい。アミノ酸置換は、天然に存在しない類似体の使用を含んでもよい。
【0239】
本明細書で使用されるタンパク質は、サイレント変化を生じ機能的に等価なタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入又は置換も有してもよい。計画的なアミノ酸置換は、内因性の機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の性質の類似性に基づいて行い得る。例えば、負に帯電したアミノ酸はアスパラギン酸及びグルタミン酸を含み、正に帯電したアミノ酸はリジン及びアルギニンを含み、類似する親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸はアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンを含む。
【0240】
保存的置換は、例えば、下の表に従って行い得る。第2列の同じブロック、好ましくは第3列の同じ行のアミノ酸は互いに置換し得る。

【表1】
【0241】
本明細書で使用される用語「相同体」は、野生型アミノ酸配列及び野生型ヌクレオチド配列とある特定の相同性を有する実体を意味する。用語「相同性」は「同一性」と同等視することができる。
【0242】
相同配列は、対象の配列に対し少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一、好ましくは、少なくとも95%又は97%又は99%同一であり得るアミノ酸配列を含んでもよい。典型的には、相同体は対象のアミノ酸配列と同じ活性部位等を含む。相同性は、類似性(すなわち、類似する化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)という点から検討することもできるが、本発明の文脈では、配列同一性という点から相同性を表すことが好ましい。
【0243】
相同配列は、対象の配列に対し少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%、同一、好ましくは、少なくとも95%又は97%又は99%同一であり得るヌクレオチド配列を含んでもよい。相同性は、類似性という点から検討することもできるが、本発明の文脈では、配列同一性という点から相同性を表すことが好ましい。
【0244】
好ましくは、本明細書で詳述される配列番号のいずれか1つに対しあるパーセント同一性を有する配列との記載は、参照される配列番号の全長にわたり表示されたパーセント同一性を有する配列を指す。
【0245】
相同性比較は、目測で、又は、より一般には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて行うことができる。これらの市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間のパーセンテージ相同性又は同一性を計算することができる。
【0246】
パーセンテージ相同性は、連続する配列にわたり計算してもよく、すなわち、1つの配列が他の配列と整列され、1つの配列における各アミノ酸が他の配列の対応するアミノ酸と、1度に1残基ずつ直接比較される。これは「ギャップなし(ungapped)」アライメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップなしアライメントは比較的短い数の残基にわたってのみ実施される。
【0247】
これは、非常に簡単で一貫性のある方法であるが、例えば、他の点では同一である配列の対において、ヌクレオチド配列中の1つの挿入又は欠失のせいで後続のコドンがアライメントから外される可能性があり、したがって、潜在的に、グローバルアライメントが実施された場合、パーセント相同性が大きく低減し得ることを考慮に入れることができない。従って、大半の配列比較法は、全相同性スコアーに過度にペナルティーを科すことなく起こり得る挿入及び欠失を考慮に入れる最適アライメントを生じるように設計される。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入して、局所相同性を最大化するよう試みることにより達成される。
【0248】
しかし、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸では、できる限りギャップの少ない配列アライメントが2つの比較される配列間のより高い関連性を反映して、多くのギャップのある配列アライメントよりも高いスコアーを獲得するように、「ギャップペナルティー(gap penalties)」をアライメントで生じるそれぞれのギャップに割り当てる。ギャップの存在には比較的高いコストを、ギャップ中のそれぞれの後続の残基にはより小さなペナルティーを科す「アフィンギャップコスト(Affine gap costs)」が典型的には使用される。これがもっとも一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは当然のことながら、ギャップがより少ない最適化アライメントを生み出す。大半のアライメントプログラムは、ギャップペナルティーを変更できるようになっている。しかし、配列比較にそのようなソフトウェアを使用する場合はデフォルト値を使用するのが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列についてのデフォルトギャップペナルティーは、ギャップで-12、それぞれの伸長で-4である。
【0249】
したがって、その最大パーセンテージ相同性の計算は、はじめに、ギャップペナルティーを考慮に入れた、最適アライメントの作成を必要とする。そのようなアライメントを実行するのに適切なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin、U.S.A.; Devereuxら(1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例は、BLASTパッケージ(Ausubelら(1999) ibid-Ch. 18参照)、FASTA (Atschulら(1990) J. Mol. Biol. 403~410ページ)及びGENEWORKS比較ツールセット(suite of comparison tools)を含むがこれらに限定されない。BLASTとFASTAの両方は、オフライン及びオンライン検索に利用可能である(Ausubelら(1999) ibid、7-58~7-60ページ参照)。しかし、一部の適用では、GCG Bestfitプログラムを使用するのが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる別のツールも、タンパク質及びヌクレオチド配列を比較するのに利用可能である(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247~50ページ; FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187~8ページ参照)。
【0250】
最終パーセント相同性は同一性の点から測定することができるが、アライメントプロセスそれ自体は典型的にはオールオアナッシングの対比較(all-or-nothing pair comparison)に基づいてはいない。むしろ、化学的類似性又は進化距離に基づいてそれぞれのペアワイズ比較にスコアーを割り当てるスケール変換類似性スコアー行列(scaled similarity score matrix)が一般に使用される。一般に使用されるそのような行列の例は、BLOSUM62行列-BLASTプログラムセットのデフォルト行列である。GCG Wisconsinプログラムは一般に、公開されているデフォルト値(public default values)又は供給された場合には、カスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)を使用する(さらに詳細な点は利用者マニュアル参照)。一部の適用では、GCGパッケージでは公開されているデフォルト値を、又は他のソフトウェアの場合には、デフォルト行列、例えば、BLOSUM62を使用するのが好ましい。
【0251】
ソフトウェアが最適アライメントを作成した後は、パーセント相同性、好ましくは、パーセント配列同一性を計算することが可能である。ソフトウェアは典型的にはこれを、配列比較の一部として行い、数値結果を与える。
【0252】
「断片」はバリアントでもあり、この用語は典型的には、機能的に、又は、例えばアッセイにおいて関心のある、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの選択された領域を指す。したがって、「断片」とは、完全長のポリペプチド又はポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸又は核酸配列を指す。
【0253】
そのようなバリアントは、標準的な組換えDNA技術、例えば、部位特異的変異誘発を使用して調製し得る。挿入を行う場合には、挿入部位の両側の天然配列に対応する5'及び3'隣接領域と共に該挿入をコードする合成DNAを作成し得る。隣接領域は、配列が適切な酵素(複数可)で切断され、合成DNAが切断部にライゲートされ得るように、天然配列中の部位に対応する都合のよい制限部位を含有する。次に、DNAは本発明に従って発現され、コードされたタンパク質を産生する。これらの方法は、DNA配列の操作について当技術分野で公知の多数の標準的な技術を説明しているだけであり、他の公知の技術を使用してもよい。
【0254】
当業者であれば、開示されている本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に開示される本発明のすべての特徴を組み合わせることができることを理解するだろう。
【0255】
本発明の好ましい特徴及び実施形態は、ここで非限定的例として説明される。
【0256】
本発明の実施は、別段指示されなければ、化学、生化学、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来の技術を用い、これらの技術は当業者の能力の範囲内である。そのような技術は文献に説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F.及び Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M.ら(1995及び periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology、Ch. 9、13及び 16、John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J.及びKahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques、John Wiley & Sons; Polak, J.M.及びMcGee, J.O'D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice、Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach、IRL Press;並びに Lilley, D.M.及びDahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA、Academic Pressを参照されたい。これらの一般的テキストのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0257】
[実施例1]
方法
細胞
臍帯血CD34+細胞(Lonza、Stem Cell Technologies)をすべての実験に使用した。細胞は、サイトカイン(SCF、Flt3、IL6及びTPO)を補充したStem Span培地で維持した。
【0258】
安定な過剰発現
CD34+細胞を、解凍後、サイトカイン(SCF、Flt3、IL6及びTPO)を補充したStem Span培地で一晩維持した。次に、細胞に、CXCR4及びGFP;CD47及びGFP;又は対照としてNGFR及びGFPを共発現する双方向性レンチウイルスベクターをMOI 100で形質導入した。14時間後、細胞を洗浄しNSGマウス中に移植した。
【0259】
遺伝子編集及び一過性過剰発現
CD34+細胞を、解凍後増殖のために、サイトカイン(SCF、Flt3、IL6、TPO、SR1及びUM171)を補充したStem Span培地で3日間維持した。細胞に、AAVS1遺伝子座に向けられたタンパク質Cas9及びRNP並びにHPLC精製(CXCR4、CD47又は対照としてGFP)RNAを電気穿孔した(Lonzaプロトコール)。
【0260】
エレクトロポレーションの15分後、AAV6-GFPドナーベクターを細胞にMOI 5.104で添加した。処置6時間後、細胞をNSGマウス中に生着させた。
【0261】
マウス
NSG (NODSCIDIL2Ry-/-; Charles River)をすべてのインビボ実験に使用した。移植されたマウスは生着4時間前に放射線照射された(200rad)。
【0262】
HSC生着
細胞を尾部静脈注射(105細胞/マウス)によりNSGマウス中に生着させた。
【0263】
HSC動員
マウスに、7日間、GCSF (250μg/kg/日)を送達する浸透圧ポンプ(アルゼットマイクロ浸透圧ポンプモデル1007D)を外科的に埋め込んだ。6日目及び7日目、マウスに、単回BIO5192注射を1mg/kgで及び単回プレリキサホル注射を5mg/kgで腹腔内(IP)投与した。動員処置の終了時、マウスに安定なCXCR4-GFP過剰発現又はNGFR-GFP(対照)CD34+細胞を生着させた。
【0264】
インビボでの生着評価
生着後4週間ごとに、マウスから血を採取しヒト細胞の生着パーセンテージを評価した。血液をEDTA中に回収しFACS抗体(hCD45、CD33、CD19、CD13、CD3及びCXCR4)で染色した。FACS分析(Canto、DIVAソフトウェア)前に赤血球を溶解させ、血液をMacsバッファーで洗浄した。
【0265】
結果
編集されたHSCに生着及び/又は増殖(growth)上の利点をインビボで一過性に与えるために潜在的標的を利用した。本発明者らは、HSCにおいて確立した機能を有する遺伝子、例えば、HSC膜で発現されそれぞれファゴサイトーシス防御及びホーミングに関与するCD47及びCXCR4を過剰発現させた。
【0266】
第1に、本発明者らは、NSG競合的移植において、処置された細胞の全生着をスコアリングすることにより、CD47及び/又はCXCR4の安定な過剰発現(OE)の生物学的利点を測定した。CXCR4-GFP又はCD47-GFPを安定的に過剰発現するHSPCを用いて得られた予備実験結果は、それぞれ初期又は長期生着の有意な増加を示し、対照と比べて有望な増加であった(図1)。
【0267】
CD47及びCXCR4の安定な過剰発現はインビボで生着上の利点をもたらす。しかし、将来の臨床適用ではこれら2つの標的の一過性過剰発現が必要とされるだろう。したがって、本発明者らは、ヌクレアーゼとの共エレクトロポレーションによる遺伝子編集(GE)と組み合わせた、本発明者らの標的の単独での又は組合せでの一過性過剰発現を確認した。インビトロでの効果を評価した(図2)。
【0268】
インビトロでは、本発明者らは、遺伝子編集効率に影響を与えずに本発明者らの標的を一過性に過剰発現させることができた。
【0269】
遺伝子編集した(GFP遺伝子をAAVS1遺伝子座中に挿入した)HSPCの生着及び増殖を追跡することにより、本発明者らの標的の単独での又は組み合わせでの一過性過剰発現を、インビボで評価した(図3)。
【0270】
CD47の単独での又はCXCR4との組み合わせでの一過性過剰発現は、遺伝子編集された細胞の生着の改善を示した。
【0271】
次に、内在性HSCの動員を誘導する処置の際に遺伝子編集されたHSCの交換及び/又は選択的生着及び増殖を促進するために、これらの標的を使用した。
【0272】
本発明者らは、現在クリニックにおいて使用されている薬物(GCSF、プレリキサホル) (Domingesら(2016) Int J Hematol; Welschinger, R.ら (2013) Exp Hematol 41: 293~302.e1)に基づく、NSGマウスの骨髄(BM)ニッチからのヒトHSC動員を研究するための実験モデルを先ず確立した。
【0273】
手短に言えば、先ず、ヒトヘマトキメラ移植片を事前に確立するため、NSGマウスにCD34+細胞を生着させた。次に、マウスを、動員のための前処置剤で処置した(方法、HSC動員参照)。本発明者らのHSPC動員プロトコールをインビボで確認したところ、循環前駆ヒト細胞(CD34+CD38-)及びマウス幹細胞(Kit+; Lin-、Sca1+、KLS)の数が有意に増加していた(図4)。
【0274】
本発明者らの動員プロトコールは、CXCR4受容体の特異的アンタゴニストである、プレリキサホル(AMD3100としても知られる)の注射を含むので、本発明者らはCXCR4過剰発現の利点をプレリキサホル動員に適合させることにした。したがって、本発明者らは、骨髄ニッチからのヒトHSPC動員、続いて最初の移植片と同じ/適合するドナー由来の増強されたHSC(CXCR4の安定な過剰発現)の注入を評価した。ヒトHSPCを安定的に生着させたNSGマウスを動員のために処置し(浸透圧ポンプを用いて7日間、GCSF 250μg/kg/日;IP注射により最後の2日間、プレリキサホル5mg/kg/日及びBIO5192 1mg/kg/日 [BIO5192、Ramirezら(2009) Blood 114: 1340~1343ページ])、次いで、最初の移植と同じドナー由来の遺伝子標識対照又はCXCR4-GFP過剰発現細胞を注入した(図5)。
【0275】
注目すべきことに、CXCR4過剰発現細胞は、動員されたHSPCを効率的に打ち負かし、ヒト細胞移植片において≧7~9%で安定したキメラ現象を確立したが、対照細胞は1~2%レベルでしか検出可能ではなかった。
【0276】
[実施例2]
前処置の安全性を改善する戦略は、造血幹細胞及び他の造血細胞を特異的に標的にする抗体を使用することである。そのような前処置レジメンは、効率的な生着を可能にしつつオフターゲット毒性及び免疫抑制を最小化することができる(Palchaudhuri, R.ら (2016) Nat Biotechnol 34: 738~745ページ)。
【0277】
本明細書で開示される操作されたHSPCは、免疫毒素、例えば、抗cKit免疫毒素を用いた枯渇に基づく前処置レジメンと組み合わせて研究される。
【0278】
CD47及び/又はCXCR4は、特異的抗体により内在性造血幹細胞の枯渇を誘導する処置の際、HSPC、特に、遺伝子編集されたHSPCの交換及び/又は選択的生着及び増殖を促進することが意図されている。
【0279】
[実施例3]
方法
細胞
臍帯血CD34+細胞(Lonza、Stem Cell Technologies)をインビトロ実験に使用した。細胞は、サイトカイン(SCF、Flt3、IL6及びTPO)を補充したStem Span培地で維持した。
【0280】
動員された末梢血(mPB)CD34+細胞をインビボ実験に使用した。細胞は、サイトカイン(SCF、Flt3、TPO、UM171、SR1)を補充したStem Span培地で維持した。
【0281】
一過性過剰発現
細胞に、HPLC精製(CXCR4、CD47又は対照としてGFP)RNAを電気穿孔した(Lonzaプロトコール)。CXCR4、CD47及びCXCR4発現レベルは、エレクトロポレーション6時間後に開始して4日間、FACS抗体(CXCR4、CD47)で染色することにより評価した。
【0282】
マウス
NSG (NODSCIDIL2Ry-/-; Charles River)を一部のインビボ実験に使用した。移植されたマウスは生着4時間前に放射線照射された(200rad)。
【0283】
NSGW41マウス(NSG KitW41/W41; Charles River)を、インビボでの動員実験に使用した。これらのマウスは、ヒト造血幹細胞の生着に先立って照射を必要としない。
【0284】
HSC生着
細胞は尾部静脈注射(105細胞/マウス)を介してNSG又はNSGW41マウス中に生着させた。
【0285】
HSPC動員
ヒトCD34+細胞を担持するマウスに、7日間、GCSF (250μg/kg/日)を送達する浸透圧ポンプ(アルゼットマイクロ浸透圧ポンプモデル1007D)を外科的に埋め込んだ。6日目及び7日目、マウスに、単回BIO5192注射を1mg/kgで及び単回プレリキサホル注射を5mg/kgで腹腔内(IP)投与した。動員処置の終了時、GFPを安定的に発現し、目的の標的を一過性に過剰発現させるためにCXCR4及びCD47又はGFP(対照)mRNAを電気穿孔したCD34+細胞を、マウスに生着させた。
【0286】
インビボでの生着評価
生着後4週間ごとに、マウスから血を採取しヒト細胞生着パーセンテージを評価した。血液をEDTA中に回収しFACS抗体(hCD45、CD33、CD19、CD13、CD3)で染色した。FACS分析(Canto、DIVAソフトウェア)前に赤血球を溶解させ、血液をMacsバッファーで洗浄した。
【0287】
遊走アッセイ
臍帯血CD34+細胞に、目的の遺伝子の一過性過剰発現を可能にするCXCR4野生型アイソフォームI又はCXCR4 WhimアイソフォームI又はGFP(対照)をコードするmRNAをヌクレオフェクトした。培養1日後、CXCR4発現のレベルをFACS分析により評価し、遊走アッセイを実施した。細胞を、トランスウェルプレートの上チャンバー上に播種した。下チャンバーはCXCR4のリガンド(CXCL12)を含有した。インキュベーション30分後、下チャンバーでの細胞(遊走細胞)の数を評価した。
【0288】
結果
編集された造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)に生着及び/又は増殖上の利点をインビボで一過性に与えるために潜在的標的を利用した。本発明者らは、HSPCにおいて確立した機能を有する遺伝子、例えば、HSPC膜で発現され、それぞれファゴサイトーシス防御及びホーミングに関与するCD47及びCXCR4を過剰発現させた。
【0289】
第1に、本発明者らは、mRNAでのヌクレオフェクション後、目的の2つの標的の発現レベルをFACS分析により測定した。細胞は、2つの選択された標的を、対照(GFP)対応物と比べて最大6倍過剰発現させることができた(図6)。
【0290】
本発明者らは、NSG競合的移植において処置された細胞の全生着をスコアリングすることにより、CD47及びCXCR4の一過性過剰発現(OE)の生物学的利点を測定した。CXCR4及びCD47を一過性に過剰発現するHSPCを用いて得られた結果は、対照と比べ、系列再構成に有意に影響することなく初期生着が有意に増加すること、及び長期で有望に増加することを示している(図7)。
【0291】
CD47及びCXCR4の一過性過剰発現はインビボで生着上の利点をもたらす。
【0292】
次に、内在性HSPCの動員を誘導する処置の際に有利なHSPCの交換及び/又は選択的生着及び増殖を促進するために、これらの標的を使用した。
【0293】
本発明者らは、現在クリニックにおいて使用されている薬物(GCSF、プレリキサホル) (Domingesら(2016) Int J Hematol; Welschinger, R.ら (2013) Exp Hematol 41: 293~302.e1)に基づく、NSGW41マウスの骨髄(BM)ニッチからのヒトHSPC動員を研究するための実験モデルを確立した。
【0294】
手短に言えば、先ず、ヒトヘマトキメラ移植片を事前に確立するため、NSGW41マウスにCD34+細胞を生着させた。次に、マウスを、動員のための前処置剤で処置した(方法、HSPC動員参照)。本発明者らは、NSGW41マウスにおいて動員された末梢血CD34+細胞について、本発明者らのHSPC動員プロトコールをインビボで確認したところ、循環前駆ヒト細胞(CD34+CD38-)及びマウス幹細胞(Kit+; Lin-、Sca1+、KLS)の数が有意に増加していた(図8)。
【0295】
本発明者らの動員プロトコールは、CXCR4受容体の特異的アンタゴニストである、プレリキサホル(AMD3100としても知られる)の注射を含むので、本発明者らはCXCR4過剰発現の利点をプレリキサホル動員に適合させることにした。事前のインビボでの結果の後、2つの標的の組合せは生着における利点を示したので、本発明者らは、骨髄ニッチからのヒトHSPC動員、続いて最初の移植片と同じ/適合するドナー由来の増強されたHSPC(CXCR4及びCD47の一過性過剰発現)の注入を評価した。ヒトHSPCを安定的に生着させたNSGW41マウスを動員のために処置し(浸透圧ポンプを用いて7日間、GCSF 250μg/kg/日;IP注射により最後の2日間、プレリキサホル5mg/kg/日及びBIO5192 1mg/kg/日 [BIO5192、Ramirezら(2009) Blood 114: 1340-1343])、次いで、最初の移植と同じドナー由来の対照mRNA又はCXCR4及びCD47を一過性過剰発現しているGFP標識CD34+細胞を注入した(図9)。注目すべきことに、CXCR4過剰発現細胞は、動員されたHSPCを効率的に打ち負かし、ヒト細胞移植片において≧40%で安定したキメラ現象を確立したが、対照細胞は25%レベルでしか検出可能ではなかった(図9)。
【0296】
生着の有効性をさらにより増大させるため、本発明者らは、CXCR4の過剰発現の一過性ウィンドウを延ばすことを検討した。そうするために、本発明者らは、切断型のCXCR4:そのリガンド(CXCL12)に対し高活性であり膜上で再生(recycle)が比較的少ないCXCR4 WhimアイソフォームIを使用した。本発明者らは、遊走アッセイによりこの改変された標的の機能性の検証をインビトロで実施した(方法、遊走アッセイ参照)。CXCR4野生型細胞もCXCR4 Whim細胞も対照群と比べて2.5倍遊走することができた(図10)。
【0297】
上記明細書において言及されるすべての出版物は参照により本明細書に組み込まれる。開示された本発明の組成物、使用及び方法の種々の改変及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに当業者には明らかになる。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して開示されてきたが、特許請求の範囲に記載の本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、当業者には明白である、本発明を実行するために開示された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲内であることが意図されている。
【0298】
明細書は以下の配列情報を包含する。
[配列表]
SEQUENCE LISTING
<110> Ospedale San Raffaele S.r.l.
Fondazione Telethon

<120> Compositions and methods for haematopoietic stem cell
transplantation
<130> PA24-169
<141> 2019-05-16
<150> GB 1807944.2
<151> 2018-05-16
<160> 18
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 972
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding cluster of differentiation 47 (CD47)
<400> 1
atgtggcccc tggtagcggc gctgttgctg ggctcggcgt gctgcggatc agctcagcta 60
ctatttaata aaacaaaatc tgtagaattc acgttttgta atgacactgt cgtcattcca 120
tgctttgtta ctaatatgga ggcacaaaac actactgaag tatacgtaaa gtggaaattt 180
aaaggaagag atatttacac ctttgatgga gctctaaaca agtccactgt ccccactgac 240
tttagtagtg caaaaattga agtctcacaa ttactaaaag gagatgcctc tttgaagatg 300
gataagagtg atgctgtctc acacacagga aactacactt gtgaagtaac agaattaacc 360
agagaaggtg aaacgatcat cgagctaaaa tatcgtgttg tttcatggtt ttctccaaat 420
gaaaatattc ttattgttat tttcccaatt tttgctatac tcctgttctg gggacagttt 480
ggtattaaaa cacttaaata tagatccggt ggtatggatg agaaaacaat tgctttactt 540
gttgctggac tagtgatcac tgtcattgtc attgttggag ccattctttt cgtcccaggt 600
gaatattcat taaagaatgc tactggcctt ggtttaattg tgacttctac agggatatta 660
atattacttc actactatgt gtttagtaca gcgattggat taacctcctt cgtcattgcc 720
atattggtta ttcaggtgat agcctatatc ctcgctgtgg ttggactgag tctctgtatt 780
gcggcgtgta taccaatgca tggccctctt ctgatttcag gtttgagtat cttagctcta 840
gcacaattac ttggactagt ttatatgaaa tttgtggctt ccaatcagaa gactatacaa 900
cctcctagga aagctgtaga ggaacccctt aatgcattca aagaatcaaa aggaatgatg 960
aatgatgaat aa 972
<210> 2
<211> 323
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CD47 sequence
<400> 2
Met Trp Pro Leu Val Ala Ala Leu Leu Leu Gly Ser Ala Cys Cys Gly
1 5 10 15
Ser Ala Gln Leu Leu Phe Asn Lys Thr Lys Ser Val Glu Phe Thr Phe
20 25 30
Cys Asn Asp Thr Val Val Ile Pro Cys Phe Val Thr Asn Met Glu Ala
35 40 45
Gln Asn Thr Thr Glu Val Tyr Val Lys Trp Lys Phe Lys Gly Arg Asp
50 55 60
Ile Tyr Thr Phe Asp Gly Ala Leu Asn Lys Ser Thr Val Pro Thr Asp
65 70 75 80
Phe Ser Ser Ala Lys Ile Glu Val Ser Gln Leu Leu Lys Gly Asp Ala
85 90 95
Ser Leu Lys Met Asp Lys Ser Asp Ala Val Ser His Thr Gly Asn Tyr
100 105 110
Thr Cys Glu Val Thr Glu Leu Thr Arg Glu Gly Glu Thr Ile Ile Glu
115 120 125
Leu Lys Tyr Arg Val Val Ser Trp Phe Ser Pro Asn Glu Asn Ile Leu
130 135 140
Ile Val Ile Phe Pro Ile Phe Ala Ile Leu Leu Phe Trp Gly Gln Phe
145 150 155 160
Gly Ile Lys Thr Leu Lys Tyr Arg Ser Gly Gly Met Asp Glu Lys Thr
165 170 175
Ile Ala Leu Leu Val Ala Gly Leu Val Ile Thr Val Ile Val Ile Val
180 185 190
Gly Ala Ile Leu Phe Val Pro Gly Glu Tyr Ser Leu Lys Asn Ala Thr
195 200 205
Gly Leu Gly Leu Ile Val Thr Ser Thr Gly Ile Leu Ile Leu Leu His
210 215 220
Tyr Tyr Val Phe Ser Thr Ala Ile Gly Leu Thr Ser Phe Val Ile Ala
225 230 235 240
Ile Leu Val Ile Gln Val Ile Ala Tyr Ile Leu Ala Val Val Gly Leu
245 250 255
Ser Leu Cys Ile Ala Ala Cys Ile Pro Met His Gly Pro Leu Leu Ile
260 265 270
Ser Gly Leu Ser Ile Leu Ala Leu Ala Gln Leu Leu Gly Leu Val Tyr
275 280 285
Met Lys Phe Val Ala Ser Asn Gln Lys Thr Ile Gln Pro Pro Arg Lys
290 295 300
Ala Val Glu Glu Pro Leu Asn Ala Phe Lys Glu Ser Lys Gly Met Met
305 310 315 320
Asn Asp Glu

<210> 3
<211> 292
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CD47 sequence
<400> 3
Met Trp Pro Leu Val Ala Ala Leu Leu Leu Gly Ser Ala Cys Cys Gly
1 5 10 15
Ser Ala Gln Leu Leu Phe Asn Lys Thr Lys Ser Val Glu Phe Thr Phe
20 25 30
Cys Asn Asp Thr Val Val Ile Pro Cys Phe Val Thr Asn Met Glu Ala
35 40 45
Gln Asn Thr Thr Glu Val Tyr Val Lys Trp Lys Phe Lys Gly Arg Asp
50 55 60
Ile Tyr Thr Phe Asp Gly Ala Leu Asn Lys Ser Thr Val Pro Thr Asp
65 70 75 80
Phe Ser Ser Ala Lys Ile Glu Val Ser Gln Leu Leu Lys Gly Asp Ala
85 90 95
Ser Leu Lys Met Asp Lys Ser Asp Ala Val Ser His Thr Gly Asn Tyr
100 105 110
Thr Cys Glu Val Thr Glu Leu Thr Arg Glu Gly Glu Thr Ile Ile Glu
115 120 125
Leu Lys Tyr Arg Val Val Ser Trp Phe Ser Pro Asn Glu Asn Ile Leu
130 135 140
Ile Val Ile Phe Pro Ile Phe Ala Ile Leu Leu Phe Trp Gly Gln Phe
145 150 155 160
Gly Ile Lys Thr Leu Lys Tyr Arg Ser Gly Gly Met Asp Glu Lys Thr
165 170 175
Ile Ala Leu Leu Val Ala Gly Leu Val Ile Thr Val Ile Val Ile Val
180 185 190
Gly Ala Ile Leu Phe Val Pro Gly Glu Tyr Ser Leu Lys Asn Ala Thr
195 200 205
Gly Leu Gly Leu Ile Val Thr Ser Thr Gly Ile Leu Ile Leu Leu His
210 215 220
Tyr Tyr Val Phe Ser Thr Ala Ile Gly Leu Thr Ser Phe Val Ile Ala
225 230 235 240
Ile Leu Val Ile Gln Val Ile Ala Tyr Ile Leu Ala Val Val Gly Leu
245 250 255
Ser Leu Cys Ile Ala Ala Cys Ile Pro Met His Gly Pro Leu Leu Ile
260 265 270
Ser Gly Leu Ser Ile Leu Ala Leu Ala Gln Leu Leu Gly Leu Val Tyr
275 280 285
Met Lys Phe Val
290
<210> 4
<211> 305
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CD47 sequence
<400> 4
Met Trp Pro Leu Val Ala Ala Leu Leu Leu Gly Ser Ala Cys Cys Gly
1 5 10 15
Ser Ala Gln Leu Leu Phe Asn Lys Thr Lys Ser Val Glu Phe Thr Phe
20 25 30
Cys Asn Asp Thr Val Val Ile Pro Cys Phe Val Thr Asn Met Glu Ala
35 40 45
Gln Asn Thr Thr Glu Val Tyr Val Lys Trp Lys Phe Lys Gly Arg Asp
50 55 60
Ile Tyr Thr Phe Asp Gly Ala Leu Asn Lys Ser Thr Val Pro Thr Asp
65 70 75 80
Phe Ser Ser Ala Lys Ile Glu Val Ser Gln Leu Leu Lys Gly Asp Ala
85 90 95
Ser Leu Lys Met Asp Lys Ser Asp Ala Val Ser His Thr Gly Asn Tyr
100 105 110
Thr Cys Glu Val Thr Glu Leu Thr Arg Glu Gly Glu Thr Ile Ile Glu
115 120 125
Leu Lys Tyr Arg Val Val Ser Trp Phe Ser Pro Asn Glu Asn Ile Leu
130 135 140
Ile Val Ile Phe Pro Ile Phe Ala Ile Leu Leu Phe Trp Gly Gln Phe
145 150 155 160
Gly Ile Lys Thr Leu Lys Tyr Arg Ser Gly Gly Met Asp Glu Lys Thr
165 170 175
Ile Ala Leu Leu Val Ala Gly Leu Val Ile Thr Val Ile Val Ile Val
180 185 190
Gly Ala Ile Leu Phe Val Pro Gly Glu Tyr Ser Leu Lys Asn Ala Thr
195 200 205
Gly Leu Gly Leu Ile Val Thr Ser Thr Gly Ile Leu Ile Leu Leu His
210 215 220
Tyr Tyr Val Phe Ser Thr Ala Ile Gly Leu Thr Ser Phe Val Ile Ala
225 230 235 240
Ile Leu Val Ile Gln Val Ile Ala Tyr Ile Leu Ala Val Val Gly Leu
245 250 255
Ser Leu Cys Ile Ala Ala Cys Ile Pro Met His Gly Pro Leu Leu Ile
260 265 270
Ser Gly Leu Ser Ile Leu Ala Leu Ala Gln Leu Leu Gly Leu Val Tyr
275 280 285
Met Lys Phe Val Ala Ser Asn Gln Lys Thr Ile Gln Pro Pro Arg Asn
290 295 300
Asn
305
<210> 5
<211> 311
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CD47 sequence
<400> 5
Met Trp Pro Leu Val Ala Ala Leu Leu Leu Gly Ser Ala Cys Cys Gly
1 5 10 15
Ser Ala Gln Leu Leu Phe Asn Lys Thr Lys Ser Val Glu Phe Thr Phe
20 25 30
Cys Asn Asp Thr Val Val Ile Pro Cys Phe Val Thr Asn Met Glu Ala
35 40 45
Gln Asn Thr Thr Glu Val Tyr Val Lys Trp Lys Phe Lys Gly Arg Asp
50 55 60
Ile Tyr Thr Phe Asp Gly Ala Leu Asn Lys Ser Thr Val Pro Thr Asp
65 70 75 80
Phe Ser Ser Ala Lys Ile Glu Val Ser Gln Leu Leu Lys Gly Asp Ala
85 90 95
Ser Leu Lys Met Asp Lys Ser Asp Ala Val Ser His Thr Gly Asn Tyr
100 105 110
Thr Cys Glu Val Thr Glu Leu Thr Arg Glu Gly Glu Thr Ile Ile Glu
115 120 125
Leu Lys Tyr Arg Val Val Ser Trp Phe Ser Pro Asn Glu Asn Ile Leu
130 135 140
Ile Val Ile Phe Pro Ile Phe Ala Ile Leu Leu Phe Trp Gly Gln Phe
145 150 155 160
Gly Ile Lys Thr Leu Lys Tyr Arg Ser Gly Gly Met Asp Glu Lys Thr
165 170 175
Ile Ala Leu Leu Val Ala Gly Leu Val Ile Thr Val Ile Val Ile Val
180 185 190
Gly Ala Ile Leu Phe Val Pro Gly Glu Tyr Ser Leu Lys Asn Ala Thr
195 200 205
Gly Leu Gly Leu Ile Val Thr Ser Thr Gly Ile Leu Ile Leu Leu His
210 215 220
Tyr Tyr Val Phe Ser Thr Ala Ile Gly Leu Thr Ser Phe Val Ile Ala
225 230 235 240
Ile Leu Val Ile Gln Val Ile Ala Tyr Ile Leu Ala Val Val Gly Leu
245 250 255
Ser Leu Cys Ile Ala Ala Cys Ile Pro Met His Gly Pro Leu Leu Ile
260 265 270
Ser Gly Leu Ser Ile Leu Ala Leu Ala Gln Leu Leu Gly Leu Val Tyr
275 280 285
Met Lys Phe Val Ala Ser Asn Gln Lys Thr Ile Gln Pro Pro Arg Lys
290 295 300
Ala Val Glu Glu Pro Leu Asn
305 310
<210> 6
<211> 1059
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding C-X-C chemokine receptor type 4
(CXCR4)
<400> 6
atggagggga tcagtatata cacttcagat aactacaccg aggaaatggg ctcaggggac 60
tatgactcca tgaaggaacc ctgtttccgt gaagaaaatg ctaatttcaa taaaatcttc 120
ctgcccacca tctactccat catcttctta actggcattg tgggcaatgg attggtcatc 180
ctggtcatgg gttaccagaa gaaactgaga agcatgacgg acaagtacag gctgcacctg 240
tcagtggccg acctcctctt tgtcatcacg cttcccttct gggcagttga tgccgtggca 300
aactggtact ttgggaactt cctatgcaag gcagtccatg tcatctacac agtcaacctc 360
tacagcagtg tcctcatcct ggccttcatc agtctggacc gctacctggc catcgtccac 420
gccaccaaca gtcagaggcc aaggaagctg ttggctgaaa aggtggtcta tgttggcgtc 480
tggatccctg ccctcctgct gactattccc gacttcatct ttgccaacgt cagtgaggca 540
gatgacagat atatctgtga ccgcttctac cccaatgact tgtgggtggt tgtgttccag 600
tttcagcaca tcatggttgg ccttatcctg cctggtattg tcatcctgtc ctgctattgc 660
attatcatct ccaagctgtc acactccaag ggccaccaga agcgcaaggc cctcaagacc 720
acagtcatcc tcatcctggc tttcttcgcc tgttggctgc cttactacat tgggatcagc 780
atcgactcct tcatcctcct ggaaatcatc aagcaagggt gtgagtttga gaacactgtg 840
cacaagtgga tttccatcac cgaggcccta gctttcttcc actgttgtct gaaccccatc 900
ctctatgctt tccttggagc caaatttaaa acctctgccc agcacgcact cacctctgtg 960
agcagagggt ccagcctcaa gatcctctcc aaaggaaagc gaggtggaca ttcatctgtt 1020
tccactgagt ctgagtcttc aagttttcac tccagctaa 1059
<210> 7
<211> 352
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CXCR4 sequence
<400> 7
Met Glu Gly Ile Ser Ile Tyr Thr Ser Asp Asn Tyr Thr Glu Glu Met
1 5 10 15
Gly Ser Gly Asp Tyr Asp Ser Met Lys Glu Pro Cys Phe Arg Glu Glu
20 25 30
Asn Ala Asn Phe Asn Lys Ile Phe Leu Pro Thr Ile Tyr Ser Ile Ile
35 40 45
Phe Leu Thr Gly Ile Val Gly Asn Gly Leu Val Ile Leu Val Met Gly
50 55 60
Tyr Gln Lys Lys Leu Arg Ser Met Thr Asp Lys Tyr Arg Leu His Leu
65 70 75 80
Ser Val Ala Asp Leu Leu Phe Val Ile Thr Leu Pro Phe Trp Ala Val
85 90 95
Asp Ala Val Ala Asn Trp Tyr Phe Gly Asn Phe Leu Cys Lys Ala Val
100 105 110
His Val Ile Tyr Thr Val Asn Leu Tyr Ser Ser Val Leu Ile Leu Ala
115 120 125
Phe Ile Ser Leu Asp Arg Tyr Leu Ala Ile Val His Ala Thr Asn Ser
130 135 140
Gln Arg Pro Arg Lys Leu Leu Ala Glu Lys Val Val Tyr Val Gly Val
145 150 155 160
Trp Ile Pro Ala Leu Leu Leu Thr Ile Pro Asp Phe Ile Phe Ala Asn
165 170 175
Val Ser Glu Ala Asp Asp Arg Tyr Ile Cys Asp Arg Phe Tyr Pro Asn
180 185 190
Asp Leu Trp Val Val Val Phe Gln Phe Gln His Ile Met Val Gly Leu
195 200 205
Ile Leu Pro Gly Ile Val Ile Leu Ser Cys Tyr Cys Ile Ile Ile Ser
210 215 220
Lys Leu Ser His Ser Lys Gly His Gln Lys Arg Lys Ala Leu Lys Thr
225 230 235 240
Thr Val Ile Leu Ile Leu Ala Phe Phe Ala Cys Trp Leu Pro Tyr Tyr
245 250 255
Ile Gly Ile Ser Ile Asp Ser Phe Ile Leu Leu Glu Ile Ile Lys Gln
260 265 270
Gly Cys Glu Phe Glu Asn Thr Val His Lys Trp Ile Ser Ile Thr Glu
275 280 285
Ala Leu Ala Phe Phe His Cys Cys Leu Asn Pro Ile Leu Tyr Ala Phe
290 295 300
Leu Gly Ala Lys Phe Lys Thr Ser Ala Gln His Ala Leu Thr Ser Val
305 310 315 320
Ser Arg Gly Ser Ser Leu Lys Ile Leu Ser Lys Gly Lys Arg Gly Gly
325 330 335
His Ser Ser Val Ser Thr Glu Ser Glu Ser Ser Ser Phe His Ser Ser
340 345 350
<210> 8
<211> 969
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CD47
<400> 8
atgtggcctc tcgtggccgc tctgctgctc gggagcgctt gttgcggcag cgcccagctg 60
ctgttcaaca aaaccaagtc cgtcgagttc accttctgca acgacacagt ggtgatcccc 120
tgcttcgtca ccaacatgga ggctcagaat accaccgagg tctacgtcaa gtggaaattc 180
aagggcagag acatctacac cttcgacgga gccctcaaca agagcacagt gcctaccgac 240
ttttccagcg ccaagattga ggtgagccaa ctcctgaagg gagacgccag cctgaagatg 300
gacaagagcg atgccgtcag ccacacagga aactacacct gcgaggtgac agagctcacc 360
agagagggcg agaccatcat cgagctcaaa tacagagtgg tgtcctggtt ctcccccaac 420
gagaacatcc tcatcgtgat cttccccatc ttcgccatcc tgctgttctg gggccagttc 480
ggcatcaaaa ccctgaagta tagatccggc ggcatggacg agaaaacaat cgccctgctg 540
gtggccggcc tcgtgattac cgtgatcgtc atcgtgggcg ccatcctctt cgtgcccgga 600
gagtacagcc tcaagaacgc caccggcctg ggcctgattg tgacctccac aggcattctg 660
atcctgctgc actactacgt gttcagcaca gccattggcc tcacaagctt cgtgatcgcc 720
atcctggtca tccaggtgat cgcctacatc ctcgccgtgg tcggactcag cctctgtatt 780
gccgcttgca tccccatgca cggacccctc ctgatctccg gcctcagcat tctggctctc 840
gctcagctgc tcggcctggt gtacatgaag ttcgtcgcca gcaaccagaa gaccatccaa 900
ccccccagaa aggccgtcga agagcctctg aacgccttta aggagagcaa gggcatgatg 960
aacgacgag 969
<210> 9
<211> 1071
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4
<400> 9
atgtctattc ctctgcccct gctgcagatc tacaccagcg acaactacac cgaggaaatg 60
ggcagcggcg actacgacag catgaaggaa ccctgcttcc gggaagagaa cgccaacttc 120
aacaagatct tcctgcccac aatctacagc atcatctttc tgaccggcat cgtgggcaac 180
ggactcgtga tcctcgtgat gggctaccag aaaaagctgc ggagcatgac cgacaagtac 240
cggctgcacc tgagcgtggc cgacctgctg ttcgtgatca ccctgccttt ctgggccgtg 300
gacgccgtgg ccaattggta cttcggcaac ttcctgtgca aggccgtgca cgtgatctac 360
acagtgaacc tgtacagcag cgtgctgatc ctggccttca tcagcctgga cagatacctg 420
gccatcgtgc acgccaccaa cagccagcgg cctagaaagc tgctggccga gaaggtggtg 480
tacgtgggcg tgtggattcc cgccctgctg ctgaccatcc ccgacttcat cttcgccaac 540
gtgtccgagg ccgacgaccg gtacatctgc gaccggttct accccaacga cctgtgggtg 600
gtggtgttcc agttccagca catcatggtg ggactgatcc tgcctggcat cgtgattctg 660
agctgctact gcatcatcat cagcaagctg agccacagca agggccacca gaagcggaag 720
gccctgaaaa ccaccgtgat cctgattctg gctttcttcg cctgctggct gccctactac 780
atcggcatca gcatcgacag cttcatcctg ctggaaatca tcaagcaggg ctgcgagttc 840
gagaacaccg tgcacaagtg gatcagcatt accgaggccc tggccttttt ccactgctgc 900
ctgaacccta tcctgtacgc cttcctgggc gccaagttca agacctctgc ccagcacgcc 960
ctgaccagcg tgtccagagg aagcagcctg aagatcctga gcaagggcaa gagaggcggc 1020
cacagctccg tgtctacaga gagcgagagc agcagcttcc acagcagctg a 1071
<210> 10
<211> 1071
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4
<400> 10
atgtccattc ctttgcctct tttgcagata tacacttcag ataactacac cgaggaaatg 60
ggctcagggg actatgactc catgaaggaa ccctgtttcc gtgaagaaaa tgctaatttc 120
aataaaatct tcctgcccac catctactcc atcatcttct taactggcat tgtgggcaat 180
ggattggtca tcctggtcat gggttaccag aagaaactga gaagcatgac ggacaagtac 240
aggctgcacc tgtcagtggc cgacctcctc tttgtcatca cgcttccctt ctgggcagtt 300
gatgccgtgg caaactggta ctttgggaac ttcctatgca aggcagtcca tgtcatctac 360
acagtcaacc tctacagcag tgtcctcatc ctggccttca tcagtctgga ccgctacctg 420
gccatcgtcc acgccaccaa cagtcagagg ccaaggaagc tgttggctga aaaggtggtc 480
tatgttggcg tctggatccc tgccctcctg ctgactattc ccgacttcat ctttgccaac 540
gtcagtgagg cagatgacag atatatctgt gaccgcttct accccaatga cttgtgggtg 600
gttgtgttcc agtttcagca catcatggtt ggccttatcc tgcctggtat tgtcatcctg 660
tcctgctatt gcattatcat ctccaagctg tcacactcca agggccacca gaagcgcaag 720
gccctcaaga ccacagtcat cctcatcctg gctttcttcg cctgttggct gccttactac 780
attgggatca gcatcgactc cttcatcctc ctggaaatca tcaagcaagg gtgtgagttt 840
gagaacactg tgcacaagtg gatttccatc accgaggccc tagctttctt ccactgttgt 900
ctgaacccca tcctctatgc tttccttgga gccaaattta aaacctctgc ccagcacgca 960
ctcacctctg tgagcagagg gtccagcctc aagatcctct ccaaaggaaa gcgaggtgga 1020
cattcatctg tttccactga gtctgagtct tcaagttttc actccagcta a 1071
<210> 11
<211> 1059
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4
<400> 11
atggaaggca tcagcatcta caccagcgac aactacaccg aggaaatggg cagcggcgac 60
tacgacagca tgaaggaacc ctgcttccgg gaagagaacg ccaacttcaa caagatcttc 120
ctgcccacaa tctacagcat catctttctg accggcatcg tgggcaacgg actcgtgatc 180
ctcgtgatgg gctaccagaa aaagctgcgg agcatgaccg acaagtaccg gctgcacctg 240
agcgtggccg acctgctgtt cgtgatcacc ctgcctttct gggccgtgga cgccgtggcc 300
aattggtact tcggcaactt cctgtgcaag gccgtgcacg tgatctacac agtgaacctg 360
tacagcagcg tgctgatcct ggccttcatc agcctggaca gatacctggc catcgtgcac 420
gccaccaaca gccagcggcc tagaaagctg ctggccgaga aggtggtgta cgtgggcgtg 480
tggattcccg ccctgctgct gaccatcccc gacttcatct tcgccaacgt gtccgaggcc 540
gacgaccggt acatctgcga ccggttctac cccaacgacc tgtgggtggt ggtgttccag 600
ttccagcaca tcatggtggg actgatcctg cctggcatcg tgattctgag ctgctactgc 660
atcatcatca gcaagctgag ccacagcaag ggccaccaga agcggaaggc cctgaaaacc 720
accgtgatcc tgattctggc tttcttcgcc tgctggctgc cctactacat cggcatcagc 780
atcgacagct tcatcctgct ggaaatcatc aagcagggct gcgagttcga gaacaccgtg 840
cacaagtgga tcagcattac cgaggccctg gcctttttcc actgctgcct gaaccctatc 900
ctgtacgcct tcctgggcgc caagttcaag acctctgccc agcacgccct gaccagcgtg 960
tccagaggaa gcagcctgaa gatcctgagc aagggcaaga gaggcggcca cagctccgtg 1020
tctacagaga gcgagagcag cagcttccac agcagctga 1059
<210> 12
<211> 356
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CXCR4 sequence
<400> 12
Met Ser Ile Pro Leu Pro Leu Leu Gln Ile Tyr Thr Ser Asp Asn Tyr
1 5 10 15
Thr Glu Glu Met Gly Ser Gly Asp Tyr Asp Ser Met Lys Glu Pro Cys
20 25 30
Phe Arg Glu Glu Asn Ala Asn Phe Asn Lys Ile Phe Leu Pro Thr Ile
35 40 45
Tyr Ser Ile Ile Phe Leu Thr Gly Ile Val Gly Asn Gly Leu Val Ile
50 55 60
Leu Val Met Gly Tyr Gln Lys Lys Leu Arg Ser Met Thr Asp Lys Tyr
65 70 75 80
Arg Leu His Leu Ser Val Ala Asp Leu Leu Phe Val Ile Thr Leu Pro
85 90 95
Phe Trp Ala Val Asp Ala Val Ala Asn Trp Tyr Phe Gly Asn Phe Leu
100 105 110
Cys Lys Ala Val His Val Ile Tyr Thr Val Asn Leu Tyr Ser Ser Val
115 120 125
Leu Ile Leu Ala Phe Ile Ser Leu Asp Arg Tyr Leu Ala Ile Val His
130 135 140
Ala Thr Asn Ser Gln Arg Pro Arg Lys Leu Leu Ala Glu Lys Val Val
145 150 155 160
Tyr Val Gly Val Trp Ile Pro Ala Leu Leu Leu Thr Ile Pro Asp Phe
165 170 175
Ile Phe Ala Asn Val Ser Glu Ala Asp Asp Arg Tyr Ile Cys Asp Arg
180 185 190
Phe Tyr Pro Asn Asp Leu Trp Val Val Val Phe Gln Phe Gln His Ile
195 200 205
Met Val Gly Leu Ile Leu Pro Gly Ile Val Ile Leu Ser Cys Tyr Cys
210 215 220
Ile Ile Ile Ser Lys Leu Ser His Ser Lys Gly His Gln Lys Arg Lys
225 230 235 240
Ala Leu Lys Thr Thr Val Ile Leu Ile Leu Ala Phe Phe Ala Cys Trp
245 250 255
Leu Pro Tyr Tyr Ile Gly Ile Ser Ile Asp Ser Phe Ile Leu Leu Glu
260 265 270
Ile Ile Lys Gln Gly Cys Glu Phe Glu Asn Thr Val His Lys Trp Ile
275 280 285
Ser Ile Thr Glu Ala Leu Ala Phe Phe His Cys Cys Leu Asn Pro Ile
290 295 300
Leu Tyr Ala Phe Leu Gly Ala Lys Phe Lys Thr Ser Ala Gln His Ala
305 310 315 320
Leu Thr Ser Val Ser Arg Gly Ser Ser Leu Lys Ile Leu Ser Lys Gly
325 330 335
Lys Arg Gly Gly His Ser Ser Val Ser Thr Glu Ser Glu Ser Ser Ser
340 345 350
Phe His Ser Ser
355
<210> 13
<211> 1071
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4 Whim isoform I
<400> 13
atgtccattc ctttgcctct tttgcagata tacacttcag ataactacac cgaggaaatg 60
ggctcagggg actatgactc catgaaggaa ccctgtttcc gtgaagaaaa tgctaatttc 120
aataaaatct tcctgcccac catctactcc atcatcttct taactggcat tgtgggcaat 180
ggattggtca tcctggtcat gggttaccag aagaaactga gaagcatgac ggacaagtac 240
aggctgcacc tgtcagtggc cgacctcctc tttgtcatca cgcttccctt ctgggcagtt 300
gatgccgtgg caaactggta ctttgggaac ttcctatgca aggcagtcca tgtcatctac 360
acagtcaacc tctacagcag tgtcctcatc ctggccttca tcagtctgga ccgctacctg 420
gccatcgtcc acgccaccaa cagtcagagg ccaaggaagc tgttggctga aaaggtggtc 480
tatgttggcg tctggatccc tgccctcctg ctgactattc ccgacttcat ctttgccaac 540
gtcagtgagg cagatgacag atatatctgt gaccgcttct accccaatga cttgtgggtg 600
gttgtgttcc agtttcagca catcatggtt ggccttatcc tgcctggtat tgtcatcctg 660
tcctgctatt gcattatcat ctccaagctg tcacactcca agggccacca gaagcgcaag 720
gccctcaaga ccacagtcat cctcatcctg gctttcttcg cctgttggct gccttactac 780
attgggatca gcatcgactc cttcatcctc ctggaaatca tcaagcaagg gtgtgagttt 840
gagaacactg tgcacaagtg gatttccatc accgaggccc tagctttctt ccactgttgt 900
ctgaacccca tcctctatgc tttccttgga gccaaattta aaacctctgc ccagcacgca 960
ctcacctctg tgagcagagg gtccagcctc aagatcctct ccaaaggaaa gtgaggtgga 1020
cattcatctg tttccactga gtctgagtct tcaagttttc actccagcta a 1071
<210> 14
<211> 1071
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4 Whim isoform I
<400> 14
atgtctattc ctctgcccct gctgcagatc tacaccagcg acaactacac cgaggaaatg 60
ggcagcggcg actacgacag catgaaggaa ccctgcttcc gggaagagaa cgccaacttc 120
aacaagatct tcctgcccac aatctacagc atcatctttc tgaccggcat cgtgggcaac 180
ggactcgtga tcctcgtgat gggctaccag aaaaagctgc ggagcatgac cgacaagtac 240
cggctgcacc tgagcgtggc cgacctgctg ttcgtgatca ccctgccttt ctgggccgtg 300
gacgccgtgg ccaattggta cttcggcaac ttcctgtgca aggccgtgca cgtgatctac 360
acagtgaacc tgtacagcag cgtgctgatc ctggccttca tcagcctgga cagatacctg 420
gccatcgtgc acgccaccaa cagccagcgg cctagaaagc tgctggccga gaaggtggtg 480
tacgtgggcg tgtggattcc cgccctgctg ctgaccatcc ccgacttcat cttcgccaac 540
gtgtccgagg ccgacgaccg gtacatctgc gaccggttct accccaacga cctgtgggtg 600
gtggtgttcc agttccagca catcatggtg ggactgatcc tgcctggcat cgtgattctg 660
agctgctact gcatcatcat cagcaagctg agccacagca agggccacca gaagcggaag 720
gccctgaaaa ccaccgtgat cctgattctg gctttcttcg cctgctggct gccctactac 780
atcggcatca gcatcgacag cttcatcctg ctggaaatca tcaagcaggg ctgcgagttc 840
gagaacaccg tgcacaagtg gatcagcatt accgaggccc tggccttttt ccactgctgc 900
ctgaacccta tcctgtacgc cttcctgggc gccaagttca agacctctgc ccagcacgcc 960
ctgaccagcg tgtccagagg aagcagcctg aagatcctga gcaagggcaa gtgaggcggc 1020
cacagctccg tgtctacaga gagcgagagc agcagcttcc acagcagctg a 1071
<210> 15
<211> 337
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CXCR4 Whim isoform I sequence
<400> 15
Met Ser Ile Pro Leu Pro Leu Leu Gln Ile Tyr Thr Ser Asp Asn Tyr
1 5 10 15
Thr Glu Glu Met Gly Ser Gly Asp Tyr Asp Ser Met Lys Glu Pro Cys
20 25 30
Phe Arg Glu Glu Asn Ala Asn Phe Asn Lys Ile Phe Leu Pro Thr Ile
35 40 45
Tyr Ser Ile Ile Phe Leu Thr Gly Ile Val Gly Asn Gly Leu Val Ile
50 55 60
Leu Val Met Gly Tyr Gln Lys Lys Leu Arg Ser Met Thr Asp Lys Tyr
65 70 75 80
Arg Leu His Leu Ser Val Ala Asp Leu Leu Phe Val Ile Thr Leu Pro
85 90 95
Phe Trp Ala Val Asp Ala Val Ala Asn Trp Tyr Phe Gly Asn Phe Leu
100 105 110
Cys Lys Ala Val His Val Ile Tyr Thr Val Asn Leu Tyr Ser Ser Val
115 120 125
Leu Ile Leu Ala Phe Ile Ser Leu Asp Arg Tyr Leu Ala Ile Val His
130 135 140
Ala Thr Asn Ser Gln Arg Pro Arg Lys Leu Leu Ala Glu Lys Val Val
145 150 155 160
Tyr Val Gly Val Trp Ile Pro Ala Leu Leu Leu Thr Ile Pro Asp Phe
165 170 175
Ile Phe Ala Asn Val Ser Glu Ala Asp Asp Arg Tyr Ile Cys Asp Arg
180 185 190
Phe Tyr Pro Asn Asp Leu Trp Val Val Val Phe Gln Phe Gln His Ile
195 200 205
Met Val Gly Leu Ile Leu Pro Gly Ile Val Ile Leu Ser Cys Tyr Cys
210 215 220
Ile Ile Ile Ser Lys Leu Ser His Ser Lys Gly His Gln Lys Arg Lys
225 230 235 240
Ala Leu Lys Thr Thr Val Ile Leu Ile Leu Ala Phe Phe Ala Cys Trp
245 250 255
Leu Pro Tyr Tyr Ile Gly Ile Ser Ile Asp Ser Phe Ile Leu Leu Glu
260 265 270
Ile Ile Lys Gln Gly Cys Glu Phe Glu Asn Thr Val His Lys Trp Ile
275 280 285
Ser Ile Thr Glu Ala Leu Ala Phe Phe His Cys Cys Leu Asn Pro Ile
290 295 300
Leu Tyr Ala Phe Leu Gly Ala Lys Phe Lys Thr Ser Ala Gln His Ala
305 310 315 320
Leu Thr Ser Val Ser Arg Gly Ser Ser Leu Lys Ile Leu Ser Lys Gly
325 330 335
Lys

<210> 16
<211> 1059
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4 Whim isoform II
<400> 16
atggagggga tcagtatata cacttcagat aactacaccg aggaaatggg ctcaggggac 60
tatgactcca tgaaggaacc ctgtttccgt gaagaaaatg ctaatttcaa taaaatcttc 120
ctgcccacca tctactccat catcttctta actggcattg tgggcaatgg attggtcatc 180
ctggtcatgg gttaccagaa gaaactgaga agcatgacgg acaagtacag gctgcacctg 240
tcagtggccg acctcctctt tgtcatcacg cttcccttct gggcagttga tgccgtggca 300
aactggtact ttgggaactt cctatgcaag gcagtccatg tcatctacac agtcaacctc 360
tacagcagtg tcctcatcct ggccttcatc agtctggacc gctacctggc catcgtccac 420
gccaccaaca gtcagaggcc aaggaagctg ttggctgaaa aggtggtcta tgttggcgtc 480
tggatccctg ccctcctgct gactattccc gacttcatct ttgccaacgt cagtgaggca 540
gatgacagat atatctgtga ccgcttctac cccaatgact tgtgggtggt tgtgttccag 600
tttcagcaca tcatggttgg ccttatcctg cctggtattg tcatcctgtc ctgctattgc 660
attatcatct ccaagctgtc acactccaag ggccaccaga agcgcaaggc cctcaagacc 720
acagtcatcc tcatcctggc tttcttcgcc tgttggctgc cttactacat tgggatcagc 780
atcgactcct tcatcctcct ggaaatcatc aagcaagggt gtgagtttga gaacactgtg 840
cacaagtgga tttccatcac cgaggcccta gctttcttcc actgttgtct gaaccccatc 900
ctctatgctt tccttggagc caaatttaaa acctctgccc agcacgcact cacctctgtg 960
agcagagggt ccagcctcaa gatcctctcc aaaggaaagt gaggtggaca ttcatctgtt 1020
tccactgagt ctgagtcttc aagttttcac tccagctaa 1059
<210> 17
<211> 1059
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding CXCR4 Whim isoform II
<400> 17
atggaaggca tcagcatcta caccagcgac aactacaccg aggaaatggg cagcggcgac 60
tacgacagca tgaaggaacc ctgcttccgg gaagagaacg ccaacttcaa caagatcttc 120
ctgcccacaa tctacagcat catctttctg accggcatcg tgggcaacgg actcgtgatc 180
ctcgtgatgg gctaccagaa aaagctgcgg agcatgaccg acaagtaccg gctgcacctg 240
agcgtggccg acctgctgtt cgtgatcacc ctgcctttct gggccgtgga cgccgtggcc 300
aattggtact tcggcaactt cctgtgcaag gccgtgcacg tgatctacac agtgaacctg 360
tacagcagcg tgctgatcct ggccttcatc agcctggaca gatacctggc catcgtgcac 420
gccaccaaca gccagcggcc tagaaagctg ctggccgaga aggtggtgta cgtgggcgtg 480
tggattcccg ccctgctgct gaccatcccc gacttcatct tcgccaacgt gtccgaggcc 540
gacgaccggt acatctgcga ccggttctac cccaacgacc tgtgggtggt ggtgttccag 600
ttccagcaca tcatggtggg actgatcctg cctggcatcg tgattctgag ctgctactgc 660
atcatcatca gcaagctgag ccacagcaag ggccaccaga agcggaaggc cctgaaaacc 720
accgtgatcc tgattctggc tttcttcgcc tgctggctgc cctactacat cggcatcagc 780
atcgacagct tcatcctgct ggaaatcatc aagcagggct gcgagttcga gaacaccgtg 840
cacaagtgga tcagcattac cgaggccctg gcctttttcc actgctgcct gaaccctatc 900
ctgtacgcct tcctgggcgc caagttcaag acctctgccc agcacgccct gaccagcgtg 960
tccagaggaa gcagcctgaa gatcctgagc aagggcaagt gaggcggcca cagctccgtg 1020
tctacagaga gcgagagcag cagcttccac agcagctga 1059
<210> 18
<211> 333
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CXCR4 Whim isoform II sequence
<400> 18
Met Glu Gly Ile Ser Ile Tyr Thr Ser Asp Asn Tyr Thr Glu Glu Met
1 5 10 15
Gly Ser Gly Asp Tyr Asp Ser Met Lys Glu Pro Cys Phe Arg Glu Glu
20 25 30
Asn Ala Asn Phe Asn Lys Ile Phe Leu Pro Thr Ile Tyr Ser Ile Ile
35 40 45
Phe Leu Thr Gly Ile Val Gly Asn Gly Leu Val Ile Leu Val Met Gly
50 55 60
Tyr Gln Lys Lys Leu Arg Ser Met Thr Asp Lys Tyr Arg Leu His Leu
65 70 75 80
Ser Val Ala Asp Leu Leu Phe Val Ile Thr Leu Pro Phe Trp Ala Val
85 90 95
Asp Ala Val Ala Asn Trp Tyr Phe Gly Asn Phe Leu Cys Lys Ala Val
100 105 110
His Val Ile Tyr Thr Val Asn Leu Tyr Ser Ser Val Leu Ile Leu Ala
115 120 125
Phe Ile Ser Leu Asp Arg Tyr Leu Ala Ile Val His Ala Thr Asn Ser
130 135 140
Gln Arg Pro Arg Lys Leu Leu Ala Glu Lys Val Val Tyr Val Gly Val
145 150 155 160
Trp Ile Pro Ala Leu Leu Leu Thr Ile Pro Asp Phe Ile Phe Ala Asn
165 170 175
Val Ser Glu Ala Asp Asp Arg Tyr Ile Cys Asp Arg Phe Tyr Pro Asn
180 185 190
Asp Leu Trp Val Val Val Phe Gln Phe Gln His Ile Met Val Gly Leu
195 200 205
Ile Leu Pro Gly Ile Val Ile Leu Ser Cys Tyr Cys Ile Ile Ile Ser
210 215 220
Lys Leu Ser His Ser Lys Gly His Gln Lys Arg Lys Ala Leu Lys Thr
225 230 235 240
Thr Val Ile Leu Ile Leu Ala Phe Phe Ala Cys Trp Leu Pro Tyr Tyr
245 250 255
Ile Gly Ile Ser Ile Asp Ser Phe Ile Leu Leu Glu Ile Ile Lys Gln
260 265 270
Gly Cys Glu Phe Glu Asn Thr Val His Lys Trp Ile Ser Ile Thr Glu
275 280 285
Ala Leu Ala Phe Phe His Cys Cys Leu Asn Pro Ile Leu Tyr Ala Phe
290 295 300
Leu Gly Ala Lys Phe Lys Thr Ser Ala Gln His Ala Leu Thr Ser Val
305 310 315 320
Ser Arg Gly Ser Ser Leu Lys Ile Leu Ser Lys Gly Lys
325 330
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0297
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0297】
上記明細書において言及されるすべての出版物は参照により本明細書に組み込まれる。開示された本発明の組成物、使用及び方法の種々の改変及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに当業者には明らかになる。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して開示されてきたが、特許請求の範囲に記載の本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、当業者には明白である、本発明を実行するために開示された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲内であることが意図されている。
(付記)
(付記1)
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させるためのCD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の使用。
(付記2)
HSPCが、CD47及び/又はCXCR4を発現するように遺伝子操作される、付記1に記載の使用。
(付記3)
HSPCが、CD47及び/又はCXCR4をコードする1つ以上のベクターで形質導入される又はトランスフェクトされる、付記1又は2に記載の使用。
(付記4)
HSPCが、CD47及びCXCR4を発現するように遺伝子操作される、付記1から3のいずれか一項に記載の使用。
(付記5)
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)による生着を増加させる方法であって、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するようにHSPCを遺伝子操作するステップを含む、方法。
(付記6)
CD47及び/又はCXCR4が、HSPCにより一過性に又は安定的に、好ましくは、一過性に発現される、付記1から4のいずれか一項に記載の使用又は付記5に記載の方法。
(付記7)
付記5又は6により取得可能である遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
(付記8)
生着の増加を示す遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
(付記9)
遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団であって、HSPCが、CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されている、集団。
(付記10)
付記7から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団並びに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物。
(付記11)
治療において使用するための付記7から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
(付記12)
がん、免疫障害、リソソーム蓄積症、細菌若しくはウイルス感染症、遺伝性疾患、血液疾患、サラセミア又は鎌状赤血球症の治療又は予防において使用するための付記7から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団。
(付記13)
対象が、HSPCの投与前に穏やかな骨髄破壊的、強度を弱めた又は非骨髄破壊的前処置レジメンを受ける、付記11又は12に記載の使用のための遺伝子操作されたHSPCの集団。
(付記14)
対象が、
(a)内在性HSPCの動員のためのレジメンを受ける、又は
(b)1つ以上のHSPC特異的免疫毒素を用いた前処置を受ける、
付記11から13のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子操作されたHSPCの集団。
(付記15)
対象が、HSPCの投与前に化学療法前処置又は放射線療法前処置を受けない、付記11から14のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子操作されたHSPCの集団。
(付記16)
造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)移植の方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されているHSPCの集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップ
を含む、方法。
(付記17)
がん、免疫障害、リソソーム蓄積症、細菌若しくはウイルス感染症、遺伝性疾患、血液疾患、サラセミア又は鎌状赤血球症を治療又は予防する方法であって、
(a)CD47及び/又はC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)を発現するように遺伝子操作されている造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)の集団を用意するステップ、並びに
(b)HSPCを対象に投与するステップ
を含む、方法。
(付記18)
対象が、HSPCの投与前に穏やかな骨髄破壊的、強度を弱めた又は非骨髄破壊的前処置レジメンを受ける、付記16又は17に記載の方法。
(付記19)
対象が、
(a)内在性HSPCの動員のためのレジメンを受ける、又は
(b)1つ以上のHSPC特異的免疫毒素を用いた前処置を受ける、
付記16から18のいずれか一項に記載の方法。
(付記20)
対象が、HSPCの投与前に化学療法前処置又は放射線療法前処置を受けない、
付記16から19のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】