(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099564
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】凝集体を標的とし、一掃するためのコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20240718BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061445
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020560438の分割
【原出願日】2019-04-29
(31)【優先権主張番号】62/664,345
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロウザー,ダミアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴァ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ビュルリ,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ジャームタス,ルッツ
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA54
4H045BA70
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペプチド及び標的化部分を含むコンジュゲートを提供する。
【解決手段】Fc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争するペプチド及び分子凝集体を標的とする標的化部分を含むコンジュゲートであって、一態様として、該ペプチドはFcエフェクター機能を活性化するペプチドであり、該分子凝集体はタンパク質凝集体、脂質凝集体又は多糖類凝集体であり、該標的化部分は小分子であって、ペプチド、核酸又は色素である、コンジュゲートが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Fc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争するペプチド;及びb)分子凝集体を標的とする標的化部分を含むコンジュゲート。
【請求項2】
前記ペプチドがFcエフェクター機能を活性化する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記Fc受容体が、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記Fc受容体がヒト受容体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記Fc受容体がヒトFcγRI(hFcγRI)である、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記Fcエフェクター機能が食作用である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記ペプチドがIgG3又はIgG1抗体のFc部分と競争する、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記ペプチドがIgG1の前記Fc部分と競争する、請求項1~7のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記ペプチドがLLGのトリペプチドモチーフを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記ペプチドがモチーフσPのダイマーを含み、σが疎水性残基を表す、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記ペプチドが前記ペプチドのN末端にトレオニンを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記ペプチドが前記ペプチドのC末端にグルタミン酸を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記ペプチドがTX2CXXσPXLLGCφXE(配列番号1)のアミノ酸配列を含み;Xがアミノ酸であり、σが疎水性残基であり、φが酸性アミノ酸である、請求項1~12のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記ペプチドがhFcγRIに特異的に結合し、hFcγRIIやhFcγRIIIとの交差反応性を示さない、請求項1~13のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記ペプチドがAQVNSCLLLPNLLGC(配列番号2)のアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記ペプチドがAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記ペプチド中の1以上のアミノ酸残基がメチル化されている、請求項1~16のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
配列番号2又は3の位置11に相当する前記アミノ酸位置での前記アスパラギン残基がメチル化されている、請求項15~17のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
配列番号2又は3の位置13に相当する前記アミノ酸位置の前記ロイシン残基がメチル化されている、請求項15~18のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
互いに連結されて、ダイマー若しくはオリゴマーペプチドを形成する、請求項1~19のいずれか1項の記載のコンジュゲートの2以上を含むコンジュゲート。
【請求項21】
前記ペプチドが2個のhFcγRIに結合し、Fcエフェクター機能を活性化する、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
KKKKKリンカー(配列番号22)によって連結された2個のFc模倣ペプチドを含む、請求項20又は21に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
前記コンジュゲートが免疫細胞を前記分子凝集体に動員することができる、請求項1~22のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
前記免疫細胞が単球由来細胞である、請求項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
前記免疫細胞がマクロファージである、請求項24に記載のコンジュゲート。
【請求項26】
前記免疫細胞が単球である、請求項24に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
前記免疫細胞が小グリア細胞である、請求項24に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
前記コンジュゲートが前記免疫細胞に結合し、前記免疫細胞の活性化を促進する、請求項24~27のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項29】
前記コンジュゲートが前記分子凝集体の少なくとも一部の食作用を促進する、請求項1~28のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
前記標的化部分がタンパク質凝集体を標的とする、請求項1~29のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項31】
前記タンパク質凝集体が、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビン、又は凝集体形成性断片若しくはそれの誘導体のいずれか一つの凝集体を含む、請求項30に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
前記標的化部分が脂質凝集体を標的とする、請求項1~29のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項33】
前記脂質凝集体がコレステロール凝集体である、請求項32に記載のコンジュゲート。
【請求項34】
前記標的化部分が多糖類凝集体を標的とする、請求項1~29のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項35】
前記標的化部分がグリコーゲン凝集体を標的とする、請求項34に記載のコンジュゲート。
【請求項36】
前記標的化部分が小分子である、請求項1~35のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項37】
前記標的化部分がペプチドである、請求項1~35のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項38】
前記標的化部分が核酸である、請求項1~35のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項39】
前記標的化部分が色素である、請求項1~35のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項40】
前記色素がアミロイドに結合する、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項41】
前記色素が、チオフラビン、五量体ホルミルチオフェン酢酸(pFTAA)、七量体ホルミルチオフェン酢酸(hFTAA)、コンゴレッド、クリスタル・バイオレット、1-アミノ-8-ナフタレンスルホネート(ANS)、4-(ジシアノビニル)-ジュロリジン(DCVJ)、アミノベンズアントロン、メトキシXO4、チアジンレッド、ピッツバーグB、及びこれらのアミロイド結合誘導体からなる群から選択される、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項42】
前記チオフラビンがチオフラビンT又はそれのアミロイド結合誘導体である、請求項40に記載のコンジュゲート。
【請求項43】
前記アミロイドが、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビンのうちの1以上を含む、請求項39~42のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項44】
前記アミロイドがリゾチームを含む、請求項43に記載のコンジュゲート。
【請求項45】
前記色素がコレステロールに結合する、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項46】
前記色素がフィリピン又はそれのコレステロール結合誘導体である、請求項45に記載のコンジュゲート。
【請求項47】
前記色素がコラーゲンに結合する、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項48】
前記色素がシリウスレッド、Col-F、オレゴン・グリーン488、ピクロシリウスレッド、ライトグリーンSFイエロー、ファストグリーンFCF、メチルブルー、ウォーターブルー、アニリンブルー、及びこれらのコラーゲン結合誘導体である、請求項47に記載のコンジュゲート。
【請求項49】
前記色素が多糖類凝集体に結合する、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項50】
前記色素がグリコーゲン凝集体に結合する、請求項49に記載のコンジュゲート。
【請求項51】
前記色素が、カルミン、過ヨウ素酸、アルシアンブルー、及びジメチルメチレンブルーからなる群から選択される、請求項49又は50に記載のコンジュゲート。
【請求項52】
前記色素がヌクレオチド凝集体に結合する、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項53】
前記色素がRNA凝集体に結合する、請求項52に記載のコンジュゲート。
【請求項54】
前記色素がDNA凝集体に結合する、請求項52に記載のコンジュゲート。
【請求項55】
前記標的化部分が前記ペプチドへの結合を促進するよう修飾されている、請求項1~54のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項56】
前記標的化部分がカルボキシル基を含むよう修飾されている、請求項55に記載のコンジュゲート。
【請求項57】
前記標的化部分の前記カルボキシル基が、前記ペプチドの前記アミノ末端に結合している、請求項56に記載のコンジュゲート。
【請求項58】
前記標的化部分がアミノ基を含むよう修飾されている、請求項55に記載のコンジュゲート。
【請求項59】
前記標的化部分の前記アミノ基が、前記ペプチドの前記カルボキシ末端に結合している、請求項58に記載のコンジュゲート。
【請求項60】
前記標的化部分がリンカーによって前記ペプチドに結合している、請求項1~59のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項61】
前記リンカーが、非開裂性リンカー、ヒドラゾンリンカー、チオエーテルリンカー、ジスルフィドリンカー、ペプチドリンカー及びβ-グルクロニドリンカーからなる群から選択される、請求項60に記載のコンジュゲート。
【請求項62】
前記リンカーが下記化合物IIの構造を含む、請求項60に記載のコンジュゲート。
【化1】
[式中、nは1~30であり、mは0、1、2、3、4若しくは5である。]
【請求項63】
nが1~25、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~4、1~2又は1である、請求項62に記載のコンジュゲート。
【請求項64】
nが2である、請求項62に記載のコンジュゲート。
【請求項65】
mが0である、請求項62~64のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項66】
前記リンカーがβ-アラニンリンカー、短ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、又は長PEGリンカーである、請求項60に記載のコンジュゲート。
【請求項67】
前記リンカーがβ-アラニンリンカーである、請求項60に記載のコンジュゲート。
【請求項68】
前記コンジュゲートが別の異種部分にさらに結合している、請求項1~67のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項69】
前記異種部分がビオチンである、請求項68に記載のコンジュゲート。
【請求項70】
前記コンジュゲートがチオフラビンT又はそれの誘導体に融合したAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項71】
前記コンジュゲートが下記化合物Iに融合したAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項70に記載のコンジュゲート。
【化2】
【請求項72】
前記コンジュゲートが下記化合物IIIの構造を含む、請求項1~71のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【化3】
[式中、
R
1はビオチン又は水素であり;
R
2は、
a)化合物IV(
【化4】
);
b)化合物V(
【化5】
);
c)化合物VI(
【化6】
);又は
d)化合物VII(
【化7】
)
を含む。]
【請求項73】
R1がビオチンである、請求項72に記載のコンジュゲート。
【請求項74】
R1が水素である、請求項72に記載のコンジュゲート。
【請求項75】
R
2が化合物V(
【化8】
)を含む、請求項72~74のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項76】
請求項1~75のコンジュゲートのいずれか1以上を投与することで、アミロイドーシスを治療する方法。
【請求項77】
前記アミロイドーシスが、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、アルツハイマー病、LECT2アミロイドーシス、軟膜アミロイドーシス、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発性神経障害、血液透析関連アミロイドーシス、2型糖尿病、クロイツフェルト-ヤコブ病、ルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、フィンランド型アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシスプロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳アミロイド血管症、前頭側頭型認知症、甲状腺髄様癌、及びB2Mアミロイドーシスからなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記アミロイドーシスが家族性アミロイドーシスである、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
前記アミロイドーシスが全身性アミロイドーシスである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
請求項1~75のコンジュゲートのいずれか一つによって細胞若しくは組織を治療することにより、細胞若しくは組織中の凝集体のレベルを低下させる方法。
【請求項81】
請求項1~75のいずれか1項に記載のコンジュゲート及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年4月30日出願の米国暫定特許出願番号62/664,345からの優先権の恩恵を主張するものである。前記出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されている配列表を含み、それによりその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。2019年4月26日作成の前記ASCIIコピーは、1848081-0002-107_WO1_SL.txtと称され、サイズは7,520バイトである。
【背景技術】
【0003】
多くの疾患及び障害が、タンパク質、多糖類、脂質及び/又はヌクレオチドの凝集体によって引き起こされるか、それに関連している。多くの場合、これらの凝集体は有毒であると考えられている。これらの疾患は、身体全体で各種の細胞、組織及び臓器に影響する。
【0004】
アミロイドーシスは、組織におけるアミロイド線維として知られる異常なタンパク質配座異性体の蓄積に関連する疾患のカテゴリーである。臨床的特徴は、アミロイドーシスの種類によって決まり、下痢、体重減少、疲労、舌巨大症(glossomegaly)、出血、体性感覚障害、起立性低血圧、末梢浮腫及び脾腫を含み得る。アミロイドーシスの治療は代表的には、症状のみを扱うものであり、有効ではない可能性がある。アミロイドーシスの例には、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、トランスチレチンアミロイドーシス、軟膜アミロイドーシス、II型糖尿病、及びある種の神経変性疾患、例えばアルツハイマー病及びクロイツフェルト-ヤコブ病などがある。
【0005】
糖原病は、代表的には異常なグリコーゲン合成又は解糖を生じる酵素欠乏症に関連する一連の疾患である。これらの疾患は遺伝性であるか後天的であり得るものであり、症状は疾患の種類に応じて変わる。糖原病の例にはGSDI-XVなどがある。治療は代表的には、炭水化物制限の食事であるが、アロプリノール及び/又はヒト顆粒球コロニー刺激因子による治療などがあり得る。
【0006】
脂質凝集体疾患には、アテローム性動脈硬化症、心臓疾患、及び神経変性疾患、例えばニーマン・ピックC型疾患などがある。異常凝集性のRNA分子が示唆されている疾患には、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン舞踏病(HD)、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、及び脊髄小脳性運動失調1、2、3、6、7及び17型(SCAl、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17)、脆弱XA、脆弱XE、フリードライヒ運動失調症、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)、筋強直性ジストロフィー2型(DM2)、脊髄小脳性運動失調8、10及び12型(SCA8、SCA10、SCA12)、筋萎縮性側索硬化症及び前頭側頭型認知症(FTD)などがある。これらの疾患には、凝集体を一掃することができる有効な治療がない。
【0007】
神経系の変性疾患は、重大な世界的な医療上及び公衆衛生上の負担を強いるものである。これらの疾患の有病率及び発生率は年齢とともに飛躍的に上昇し、症例数は、多くの国で平均余命が伸びるとともに増加すると予想される(Checkoway H et al. IARC Sci Publ. 2011; (163):407-19)。国際アルツハイマー病協会(ADI)が2015年に、世界的にはアルツハイマー病の人が4680万人おり、この数字は2050年までに1億3150万人まで増えるだろうと推算している(Prince M. et al. ADI Report. 2016 September 20; 1-131)。2018年に、推定で全年齢の米国人570万人がアルツハイマー病であり、そのうちの550万人が65歳以上である(Alzheimer′s Association. 2018 Alzheimer′s Disease Facts and Figures. Alzheimers Dement 2018; 14(3):367-429)。2050年までに、米国におけるアルツハイマー病である65歳以上の人の数は、その疾患を予防若しくは治癒するための医学的介入がなければ、510万人から推定1400万人へとほぼ3倍となる可能性がある(同上の文献)。
【0008】
神経変性疾患は共通して、細胞内若しくは細胞外タンパク質凝集体、例えばパーキンソン病でのα-シヌクレイン、アルツハイマー病でのβ-アミロイド及びタウ、ハンチントン病でのハンチンチン及び感染性プリオン脳症でのプリオンタンパク質(PrP)の蓄積と関連している(Brundin P et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2010 Apr; 11(4): 301-307)。他の全身性変性疾患も、一部は神経系外で生じるが、α-シヌクレイン、β-アミロイド、ハンチンチン、プリオンタンパク質、及びアミリンが原因である。これらには、アミリン沈着を特徴とするII型糖尿病、及び心臓、腎臓、肝臓、脾臓、神経系若しくは消化管などの各種臓器及び組織でアミロイドタンパク質が増加する希な疾患であるアミロイドーシス等の疾患などがある。
【0009】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、感染性海綿状脳症(TSE)、運動ニューロン疾患、タウオパシー、II型糖尿病、タンパク質の誤った折り畳みが関与するアミロイドーシス等のタンパク質凝集体障害に関して、新たな理解が出現している。タンパク質の誤った折り畳み及びそれに続くこれら変異タンパク質の増殖がタウ、α-シヌクレイン及びβ-アミロイドタンパク質によって生じる疾患で共有される一般的現象であることを示唆する証拠がある(Panegyres PK and Armari E. Am J Neurodegener Dis. 2013; 2(3): 176-186)。凝集タンパク質の沈着が、これらの他の点では無関係な病態の中心的な特徴である。
【0010】
α-シヌクレイン、β-アミロイド、ハンチンチン、プリオンタンパク質のタンパク質凝集は代表的には、いくつかの同一のモノマータンパク質が自己会合して自然構造から凝集体構造に配座変化を起こす時に開始する。凝集疾患の大半において、線維化プロセスであっても、自然構造からβシート豊富オリゴマー構造への配座遷移が必須あると考えられている(Morales B et al. CNS Neurol Disord Drug Targets. 2009 Nov; 8(5): 363-371)。従って、多くの治療法が、脳及び身体全体でのタンパク質の誤った折り畳みの繁殖を遮断することを試みるものである(Frost B and Diamond MI. Nat Rev Neurosci. 2010 Mar; 11(3): 155-159)。これらの戦略の一部には、(1)アミロイドポリペプチドの産生の阻害、(2)アミロイド線維の形成の阻害、及び(3)化合物、抗体、ワクチン、小分子、酸化防止剤、脱安定化ペプチド又は天然抽出物を用いるアミロイド構造の脱安定化などがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Checkoway H et al. IARC Sci Publ. 2011; (163):407-19
【非特許文献2】Prince M. et al. ADI Report. 2016 September 20; 1-131
【非特許文献3】Alzheimer′s Association. 2018 Alzheimer′s Disease Facts and Figures. Alzheimers Dement 2018; 14(3):367-429
【非特許文献4】Brundin P et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2010 Apr; 11(4): 301-307
【非特許文献5】Panegyres PK and Armari E. Am J Neurodegener Dis. 2013; 2(3): 176-186
【非特許文献6】Morales B et al. CNS Neurol Disord Drug Targets. 2009 Nov; 8(5): 363-371
【非特許文献7】Frost B and Diamond MI. Nat Rev Neurosci. 2010 Mar; 11(3): 155-159
【発明の概要】
【0012】
アルツハイマー病などの凝集体疾患の治療法は現在はなく、アルツハイマー病における予後は悪い。2018年現在、治療の大半が、主としてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤からなる対症的管理に限定されている。アルツハイマー病治療のための米国で承認されている医薬はわずか5種類しかない(Aricept(登録商標)、Exelon(登録商標)、Razadyne(登録商標)、Namenda(登録商標)、及びDonepezil(登録商標))。これらの医薬は、症状の悪化を一時的に遅らせ、アルツハイマー病患者及びその介護者の生活の質を高めるものである。しかしながら、アルツハイマー病を治癒するものでも、それの進行を停止させるものでもない。
【0013】
凝集体関連の疾患若しくは障害の有効な治療選択肢がないことを考慮すると、これらの疾患又は障害の治療のための革新的治療薬が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】チオフラビンT(化合物1)の特定のカルボン酸誘導体及び特異的標的部分(cp33ペプチド誘導体)を含むコンジュゲートであるBDBの合成の模式図である。図示のように、化合物1は、リンカーを介して、cp33ペプチドの誘導体であるビオチン化合成環状ペプチドの末端残基として付加されている(Bonetto S et al. FASEB J. 2009;23(2):575-85)。一部の実施形態において、リンカーは、β-アラニン、9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸及び/又は6-アミノ-4-オキサオ(oxao)ヘキサン酸を含むことができる。
【
図2】各種アミロイドへのBDB結合を示すデータを示す図である。図示のように、BDB及びThtが、アミロイドを含まない対照反応と比較して、アミロイドタンパク質の存在下で蛍光を増加させた。化合物1と結合していないcp33ペプチドは、アミロイドを含まない対照反応と比較して、アミロイドタンパク質の存在下で蛍光シグナルを示さなかった。
【
図3】ヒト及びマウスからの活性化へのBDB結合に関するデータを示す図である。図示のように、IFNγ(IFNg)で処理したU937細胞又はLPSで処理したマウス初代マクロファージが、フローサイトメトリー実験でBDBの結合促進を示した。これらの結果は、Fc受容体の増加した表面発現へのBDB結合と一致している。IgG1は、高アフィニティで複数の受容体に結合し、活性化状況とは無関係に細胞を標識する。
【
図4】IFNγ-活性化U937細胞へのBDBについての結合曲線を示す。図示のように、フローサイトメトリー実験で、BDB濃度上昇によって、80%ものIFNγ活性化U937細胞が結合した。最大半量結合は、約200nM BDBで認められた。IgG1は、同じ条件下で全ての細胞に結合した。
【
図5】フローサイトメトリー実験で、IFNγ活性化U937細胞への結合についてのヒトIgG1、BDB、及びcp33ペプチド間の競争アッセイからのデータを示す図である。図示のように、ヒトIgG1の濃度が上昇して約10nMを超えると、BDB及びcp33ペプチドの両方がIFNγ活性化U937細胞への結合から外れる。この競争は、BDB及びcp33ペプチドのFc受容体への結合と一致する。
【
図6】フローサイトメトリー実験で、BDB、cp33ペプチド、又は媒体対照で処理したIFNγ活性化U937細胞の表面へのアミロイドの局在化を比較するデータを示す図である。図示のように、BDBは、アミロイドのIFNγ活性化U937細胞への結合を促進する。BDB及びcp33ペプチドの両方が、アミロイドが存在するか否かに拘わらず細胞結合を示す(上四つのパネルでの及び軸上の細胞群の上方移動)。cp33ペプチド存在下での1.0%又は媒体による処理時の0.4%と比較して、IFNγ活性化U937細胞の最大14.4%が、BDB存在下でアミロイドに結合することが認められる。
【
図7】pHrodo-red標識アミロイド、BDB、cp33ペプチド若しくは対照と共インキュベートしたマクロファージ分化U937細胞についての標識アミロイド食作用データを示す図である。図示のように、BDBは、マクロファージ分化U937細胞によるアミロイドの食作用を促進する。 赤色(y軸)は、貪食されたアミロイドを報告したものであり;cp33-アミロイド(3)又はアミロイド単独(2)と比較して、BDB-アミロイド(1)で処理した細胞で、このシグナルはより急速に増加し、より大きい強さとなった。pHrodo-red大腸菌(E. coli)を陽性対照(4)として加えた。アミロイドが存在しないと、BDB(5)及びcp33ペプチド(6)はシグナルを発生させなかった。
【
図8】pHrodo-red標識リゾチームアミロイド、cp33又は各種BDB構築物と共インキュベートしたマクロファージ分化U937細胞についての標識アミロイド食作用データを示す図である。Cp33=ペプチド単独(色素なし);scBDB1=スクランブルペプチド部分を有するBDB1;BDB1=リンカーなしのBDB構築物;BDB2=β-アラニンリンカーを含むBDB構築物;BDB3=6-アミノ-4-オキサヘキサノエートリンカーを含むBDB構築物;及びBDB4=9-アミノ-4,7-ジオキサノナノエートリンカーを含むBDB構築物。Incucyte顕微鏡を用いるpHrodo-redピクセルの自動分析を用い、2時間の時間点で任意の蛍光単位で、食作用をプロットした。
【
図9】アミロイド結合ドメイン(ピンク)を、異なる長さのリンカー(緑)によりFcR結合ドメイン(グレー)から分離できる方法の空間充填モデルを示す図である。アミロイド結合部分とFcR結合部分の間にリンカーを加えることの構造的効果を示している。一部の実施形態において、リンカーは、β-アラニン;9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸(短いPEGリンカー)及び6-アミノ-4-オキサオ(oxao)ヘキサン酸(長いPEGリンカー)を含むことができる。
【0015】
一部の実施形態において、本開示は、a)Fc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争するペプチド;及びb)分子凝集体を標的とする標的化部分を含むコンジュゲートを提供する。一部の実施形態において、当該ペプチドはFcエフェクター機能を活性化する。一部の実施形態において、前記Fc受容体は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIからなる群から選択される。一部の実施形態において、前記Fc受容体はヒト受容体である。一部の実施形態において、前記Fc受容体は、FcγRI、FcRn、TREM2、CD33、TMEM119、CD11b、CD45、Iba1、CX3CR1、CD68、P2Xファミリー又はP2Yファミリー受容体のうちのいずれか一つである。一部の実施形態において、前記Fc受容体はTREM2である。一部の実施形態において、前記Fc受容体はFcRnである。一部の実施形態において、前記Fc受容体はヒトFcγRI(hFcγRI)である。一部の実施形態において、前記Fcエフェクター機能は食作用である。一部の実施形態において、前記ペプチドは、IgG3又はIgG1抗体のFc部分と競争する。一部の実施形態において、前記ペプチドは、IgG1のFc部分と競争する。一部の実施形態において、前記ペプチドは、LLGのトリペプチドモチーフを含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、モチーフσPのダイマーを含み、この場合、σ(シグマ)は疎水性残基を表す。一部の実施形態において、前記ペプチドは、そのペプチドのN末端にトレオニンを含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、そのペプチドのC末端でグルタミン酸を含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、TX2CXXσPXLLGCφXE(配列番号1)のアミノ酸配列を含み;ここでXはアミノ酸であり、σは疎水性残基であり、φは酸性アミノ酸である。一部の実施形態において、前記ペプチドはhFcγRIに特異的に結合し、hFcγRIIやhFcγRIIIとの交差反応性を示さない。一部の実施形態において、前記ペプチドは、AQVNSCLLLPNLLGC(配列番号2)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、AQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ペプチド中の1以上のアミノ酸残基がメチル化されている。一部の実施形態において、配列番号2又は3の位置11に相当する(対応する)アミノ酸位置のアスパラギン残基はメチル化されている。一部の実施形態において、配列番号2又は3の位置13に相当するアミノ酸位置のロイシン残基がメチル化されている。
【0016】
一部の実施形態において、本開示は、互いに連結されてダイマー若しくはオリゴマーペプチドを生じる、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか2以上を含むコンジュゲート多量体を提供する。一部の実施形態において、前記ペプチドは二つのhFcγRIに結合し、Fcエフェクター機能を活性化する。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、KKKKKリンカー(配列番号22)によって連結された二つのFc模倣ペプチドを含む。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、分子凝集体への免疫細胞の動員を行うことができる。一部の実施形態において、前記免疫細胞は単球由来細胞である。一部の実施形態において、前記免疫細胞はマクロファージである。一部の実施形態において、前記免疫細胞は単球である。一部の実施形態において、前記免疫細胞は小グリア細胞である。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは免疫細胞に結合し、免疫細胞の活性化を促進する。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、分子凝集体の少なくとも一部の食作用を促進する。一部の実施形態において、前記標的化部分はタンパク質凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記タンパク質凝集体は、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビンのいずれか一つの凝集体を含む。一部の実施形態において、前記標的化部分は脂質凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記脂質凝集体はコレステロール凝集体である。一部の実施形態において、前記標的化部分は多糖類凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記標的化部分はグリコーゲン凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記標的化部分は小分子である。一部の実施形態において、前記標的化部分はペプチドである。一部の実施形態において、前記標的化部分は核酸である。一部の実施形態において、前記標的化部分は色素である。一部の実施形態において、前記色素はアミロイドに結合する。一部の実施形態において、前記色素は、チオフラビン、五量体ホルミルチオフェン酢酸(pTAA)、七量体ホルミルチオフェン酢酸(hFTAA)、コンゴレッド、クリスタル・バイオレット、1-アミノ-8-ナフタレンスルホネート(ANS)、4-(ジシアノビニル)-ジュロリジン(DCVJ)、アミノベンズアントロン、メトキシXO4、チアジンレッド、ピッツバーグB、及びこれらのアミロイド結合誘導体からなる群から選択される。一部の実施形態において、前記チオフラビンはチオフラビンT、又はそれのアミロイド結合誘導体である。一部の実施形態において、前記アミロイドは、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、C79ORF、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビンのうちのいずれか1以上を含む。一部の実施形態において、前記アミロイドはリゾチームを含む。一部の実施形態において、前記色素はコレステロールに結合する。一部の実施形態において、前記色素はフィリピン(filipin)、又はそれのコレステロール結合誘導体である。一部の実施形態において、前記色素はコラーゲンに結合する。一部の実施形態において、前記色素はシリウスレッド、Col-F、オレゴン・グリーン488、又はピクロシリウスレッド、ライトグリーンSFイエロー、ファストグリーンFCF、メチルブルー、ウォーターブルー、アニリンブルー、及びこれらのコラーゲン結合誘導体である。一部の実施形態において、前記色素は多糖類凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素はグリコーゲン凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素は、過ヨウ素酸、アルシアンブルー、及びジメチルメチレンブルーからなる群から選択される。一部の実施形態において、前記色素はヌクレオチド凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素はRNA凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素はDNA凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記標的化部分は修飾されて、ペプチドへの結合を促進するようになっている。一部の実施形態において、前記標的化部分は修飾されて、それがカルボキシル基を含むようになっている。一部の実施形態において、前記標的化部分のカルボキシル基は、ペプチドのアミノ末端に結合している。一部の実施形態において、前記標的化部分は修飾されて、それがアミノ基を含むようになっている。一部の実施形態において、前記標的化部分のアミノ基は、ペプチドのカルボキシ末端に結合している。
【0017】
一部の実施形態において、前記標的化部分は、リンカーによってペプチドに結合している。一部の実施形態において、前記リンカーは非開裂性リンカー、ヒドラゾンリンカー、チオエーテルリンカー、ジスルフィドリンカー、ペプチドリンカー又はβ-グルクロニドリンカーである。一部の実施形態において、前記リンカーは剛性リンカーである。一部の実施形態において、前記リンカーは、下記化合物IIの構造を含む。
【0018】
【0019】
式中、nは1~30であり、mは0、1、2、3、4又は5である。一部の実施形態において、nは1~25、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~4、1~2又は1である。一部の実施形態において、nは2である。一部の実施形態において、mは0である。一部の実施形態において、前記リンカーはβ-アラニンリンカー、短ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、又は長PEGリンカーである。一部の実施形態において、前記リンカーはβ-アラニンリンカーである。
【0020】
一部の実施形態において、前記コンジュゲートはさらに、別の異種部分に結合している。一部の実施形態において、前記異種部分はビオチンである。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、チオフラビンT又はそれの誘導体に融合したAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、化合物I:
【0021】
【0022】
に融合したAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、化合物IIIの構造を含む。
【0023】
【化3】
式中、
R
1はビオチン又は水素であり;
R
2は、
a)化合物IV(
【化4】
);
b)化合物V(
【化5】
);
c)化合物VI(
【化6】
);又は
d)化合物VII(
【化7】
)を含む。一部の実施形態において、R
1はビオチンである。一部の実施形態において、R
1は水素である。一部の実施形態において、R
2は、化合物V(
【化8】
)を含む。
【0024】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか1以上を投与することによるアミロイドーシスの治療方法を提供する。一部の実施形態において、当該アミロイドーシスは、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、アルツハイマー病、LECT2アミロイドーシス、軟膜アミロイドーシス、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発性神経障害、血液透析関連アミロイドーシス、2型糖尿病、クロイツフェルト-ヤコブ病、ルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、フィンランド型アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシスプロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳アミロイド血管症、前頭側頭型認知症、甲状腺髄様癌、及びB2Mアミロイドーシスからなる群から選択される。一部の実施形態において、前記アミロイドーシスは家族性アミロイドーシスである。一部の実施形態において、前記アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスである。
【0025】
一部の実施形態において、本開示は、細胞若しくは組織を本明細書に開示のコンジュゲートのいずれかで処理することにより、その細胞若しくは組織における凝集体レベルを低下させる方法を提供する。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「リンカー」及び「連結」という用語は、互換的に使用され、二つの異なる物(例えば、本明細書で開示の標的か部分及び本明細書で開示のペプチドのいずれか)に共有結合的に結合するか、それに結合している共有結合又原子鎖を含む化学的部分を意味する。
【0027】
「連結部分」は、別の分子と反応して共有結合による連結を形成することができる、化学反応性基、置換基又は部分、例えば求核剤又は求電子剤を意味する。
【0028】
「配列類似性」という用語は、それの全ての文法形態において、共通の進化的起源を共有していても共有していなくても良い核酸又はアミノ酸配列間での同一性又は一致性の度合いを指す。しかしながら、一般的使用で、及び本願において、「相同性」という用語は、「非常に」などの副詞で修飾されている場合、配列類似性を指すことができ、共通の進化的起源に関するものであり得るかそうではないものであり得る。
【0029】
基準ペプチド(又はヌクレオチド)配列に関して「パーセント(%)配列同一性」又は「パーセント(%)同一」は、配列を整列させ、必要に応じて、最大パーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後、そして同類置換を配列同一性の一部と見なさずに、基準ペプチド(ヌクレオチド)配列におけるアミノ酸残基(又は核酸)と同一である候補配列におけるアミノ酸残基(又は核酸)のパーセントと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を求めるための整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公になっているコンピュータソフトウェアを用いる等の当業界の技術の範囲内である各種方法で行うことができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大の整列を行うのに必要なアルゴリズムなどの配列を整列させる上での適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書に関して、%アミノ酸(核酸)配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech, Inc.によって作られたものであり、そのソースコードは、米国著作権局、Washington D. C.、20559にユーザー文書とともにファイルされており、米国著作権登録番号TXU510087下に登録されている。ALIGN-2プログラムはGenentech, Inc., South San Francisco, Calif.から公に入手可能であるか、ソースコードから編集することができる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0DなどのUNIX(登録商標)オペレーティングシステムでの使用のために編集されるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0030】
本明細書で開示されている数値範囲は、その範囲を定義する数値、並びに開示の数値範囲内に存在する個々の数値若しくは範囲を包含するものである。例えば、開示の範囲「1~10」は、「1~5」、「2~6」、「7~9」、及び「5~10」などの範囲を含む。
【0031】
「a」及び「an」という用語は、その用語が使用される文脈が明瞭に他の意味を述べるものでない限り、指示対象の複数形を含む。「a」(又は「an」)という用語、並びに「1以上」及び「少なくとも一つ」という用語は、本明細書で同義的に使用され得る。さらに本明細書で使用される「及び/又は」は、他方の有無にかかわらず、2以上の指定された特徴又は成分のそれぞれの特定の開示と見なされるべきである。従って本明細書において、「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の態様:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
【0032】
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という用語又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形型は、指定された整数若しくは整数群の包含を示唆するものであるが、いずれか他の整数若しくは整数群の除外を示唆するものではないことは理解されよう。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、それより狭い用語「成る」及び「から本質的になる」の使用をも包含するものである。
【0033】
「から本質的になる」という用語は、言及される材料若しくは段階及び本明細書に開示の発明の基本的及び新規な特徴に実質的な影響を与えないものに限定される。
【0034】
「アミノ酸」は、天然アミノ酸及び置換アミノ酸の両方を含む。「天然アミノ酸」は、ペプチド技術分野で一般に受け入れられている一般に生じるアミノ酸のいずれかを指し、遺伝コードによって直接コードされた標準の20種類のアミノ酸、並びにセレノシステイン、セレノメチオニン及びオルニチンなど、別段の指定がない限りは(グリシンなどのアキラルなアミノ酸を除く)、L-アミノ酸を表す。「置換アミノ酸」は、通常はアミノ酸の一部ではない1以上の別の化学部分を含むアミノ酸を指す。そのような置換は、特定の側鎖若しくは末端残基と反応させることができる標的誘導体化剤によって、及び他の技術分野で許容される方法を介して導入することができる。例えば、システイニル残基は最も一般的には、α-ハロアセテート類(及び相当するアミン類)、例えばクロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応して、カルボキシメチル若しくはカルボキシアミドメチル誘導体を与える。システイニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロパン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド類、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロ水銀ベンゾエート、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、又はクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化することもできる。一部の実施形態において、カルボキシル側鎖基(アスパルチル又はグルタミル)は、1-シクロへキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミド又は1-エチル-3(4アゾニア4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミドとの反応によって選択的に修飾することができる。一部の実施形態において、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換することができる。グルタミニル及びアスパラギニル残基は、脱アミド化して、相当するグルタミル及びアスパルチル残基とすることができる。或いは、残基は、軽度に酸性条件下で脱アミド化することができる。他の修飾には、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル若しくは又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(例えば、T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecule Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86(1983)を参照)、N末端アミンのアセチル化、及びC末端カルボキシル基のアミド化などがある。保護基及び/又は活性化基も組み込むことができる。
【0035】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に、あらゆる長さのアミノ酸の鎖を指すのに用いられる。その鎖は、直鎖、分岐又は環状であることができ、それは修飾アミノ酸を含むことができ、及び/又は非アミノ酸によって中断されていることができる。それらの用語は、自然に又は介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は何らかの他の操作若しくは修飾、例えば標識成分との結合によって修飾されているアミノ酸鎖も包含する。さらに、例えば、アミノ酸の1以上の類縁体(例えば、非天然アミノ酸など)、並びに当業界で公知の他の修飾を含むポリペプチドが当該定義に含まれる。ペプチドは一本鎖又は関連鎖として生じ得ることは理解される。
【0036】
1.ペプチド
一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、免疫細胞を活性化することができるペプチドを含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、免疫細胞を動員することができる。一部の実施形態において、前記ペプチドは、Fc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争することができる。一部の実施形態において、前記ペプチドは、参照によって全体が本明細書に組み込まれるWO2009/090268に記載のペプチドのいずれかである。
【0037】
一部の実施形態において、前記ペプチドは、長さ50、45、40、35、30、25、20、15、又は10アミノ酸未満である。一部の実施形態において、前記ペプチドは、長さ25アミノ酸未満である。一部の実施形態において、前記ペプチドは、長さ20アミノ酸未満である。一部の実施形態において、前記ペプチドは、長さ5~50、10~50、5~40、10~40、5~30、10~30、5~25、10~25、5~20、10~20、又は15~25アミノ酸である。
【0038】
ペプチドという用語は、ペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化及び硫酸化を含むペプチドを含む。さらに、タンパク質断片、アナログ(類縁体)(例えば、遺伝コードによってコードされていないアミノ酸、例えばホモシステイン、オルニチン、D-アミノ酸類、及びクレアチン)、天然若しくは人工突然変異体若しくは変異体又はこれらの組み合わせ、融合タンパク質、誘導体化残基(例えば、アミノ基のアルキル化、カルボキシル基のアセチル化若しくはエステル化)などが、ペプチドの意味に含まれる。ペプチドに関して「修飾(改変)」とは、1以上の官能基、例えばアミノ酸のいずれかの部分、糖その他の炭水化物の構造及び/又は位置、又は生体分子の他の置換基における修飾を意味し、化学修飾(例えば、サクシニル化、アシル化、ジスルフィド結合の構造及び/又は位置)、並びに非共有結合(例えば、医薬などの小分子のもの)を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の1実施形態によるペプチドは、約50未満のアミノ酸残基、例えば約40、30、20若しくは10未満のアミノ酸残基の制約(即ち、例えば、アミド結合若しくはジスルフィド結合のような、二つの骨格末端、二つの側鎖、又はその末端及び側鎖の一方の間の環化を可能とするいくつかの要素を有する)又は非制約(例えば、直線)アミノ酸配列を指すのに用いられ得る。このリストは、一緒に連結された3、4若しくは5個のペプチドなどのオリゴマー、又は例えばペプチドリンカーによって一緒に連結された2個のペプチドを含むダイマーも含み得る。特定の実施形態において、前記ペプチドは、約10~約30アミノ酸残基であり、より特定の実施形態では、16~18アミノ酸残基である。しかしながら、本開示を読むと、必要とされるのは特定のペプチドの長さではなく、Fc受容体(例えば、FcγRI)に結合し、IgGの結合と競争するそれの能力であることは、当業者には明らかであろう。例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25アミノ酸残基のアミノ酸配列は、本発明の文脈の範囲内のペプチド化合物であると想到される。ダイマーペプチドは、リンカーによって連結された二つのペプチドアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有することができる。リンカーは、約10未満のアミノ酸残基、例えば9、8、7、6、5、4又は3アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。前記リンカーアミノ酸残基は、単一のアミノ酸のもの又は異なるアミノ酸の組み合わせのものであり得る。例えば、グリシン(G)及びセリン(S)の組み合わせを用いることができる。或いは、リンカーは、グリシン、セリン又はリジン(K)のみの残基を含むことができる。
【0040】
Fc断片の生理活性、例えばエフェクター機能を模倣することができる本発明のペプチドは、「Fc模倣ペプチド」と称することができる。本発明(それに限定されるものではない)によって包含されるFc断片のエフェクター機能は、食作用、CDC及び/又はADCCを含む。一部の実施形態において、生理活性ペプチドは、Fc受容体、例えばFcγ受容体に結合する。一部の実施形態において、そのようなペプチドは、Fc受容体(例えば、Fcγ受容体)への結合に関して、IgGのFc断片と競争することから、Fc断片とFc受容体(例えば、Fcγ受容体)上の同一若しくは重なる結合部位に結合する。ダイマー及びオリゴマーなどがあり得る複合形態(多量体)で存在すると、Fc模倣ペプチドは、エフェクター機能を誘発し得る。可溶型(モノマー)で存在すると、Fc模倣ペプチドは、エフェクター機能を阻害することができる。一部の実施形態において、エフェクター機能を阻害するのに必要なその可溶型のIC50濃度が10~20μMより低い場合、可溶型のこれらペプチドは、エフェクター機能を活性化することができる。
【0041】
IgGのFc断片のFcγ受容体に対するエフェクター機能を模倣することができない、即ち多量体型でエフェクター機能を誘発し、可溶型でエフェクター機能を阻害することができないペプチドは、「Fc非模倣ペプチド」と称することができる。この用語を用いて、ペプチドの四つの群を次のように定義することができる。i)第1の群は、Fc受容体(例えば、Fcγ受容体)への結合に関してFc断片と競争することから、Fc断片とFc受容体(例えば、Fcγ受容体)上の同じ結合部位に結合するペプチドを含む。しかしながら、そのようなペプチドは、複合型でエフェクター機能を活性化することができるのではなく、可溶型の場合にエフェクター機能を活性化することができる。一部の実施形態において、エフェクター機能を阻害するのに必要な可溶型のIC50濃度が10~20μMより高いことから、複合ペプチドの親和性(アビディティ)が十分に低い場合、これらのペプチドは、エフェクター機能を誘発する能力を失っている可能性がある。ii)第2の群は、Fc受容体(例えば、Fcγ受容体)への結合に関してIgGのFc断片と競争することから、Fc断片とFc受容体(例えば、Fcγ受容体)上の同一結合部位に結合するペプチドを含む。一部の実施形態において、このペプチドは、ダイマーである場合、並びに複合型である場合、即ち可溶性環状ペプチドダイマーとしての場合に、エフェクター機能を活性化することができる。そのようなペプチドは、コミッテッド(committed)アゴニスト(作用薬)としても知られ得る。iii)第3の群は、Fc受容体(例えば、Fcγ受容体)への結合に関してIgGのFc断片と競争しないペプチドを含む。しかしながら、これらのペプチドは、複合型の形態の場合にFc受容体(例えば、Fcγ受容体)を活性化することができる(Berntzen et al, 2006)。iv)第4の群は、Fc受容体(例えば、Fcγ受容体)への結合に関してIgGのFc断片と競争しないが、Fc結合部位から遠位の部位でFc受容体(例えば、Fcγ受容体)に結合することができるペプチドを含む。これらのペプチドは、複合型でも可溶型でもエフェクター機能を活性化も阻害もできない。これらのペプチドは、高すぎてエフェクター機能を活性化することができないアフィニティ及び親和性(アビディティ)を有することができる。
【0042】
一部の実施形態において、本明細書に開示のペプチドのいずれも、天然及び非天然の両方のアミノ酸配列を含むことができる。非天然とは、アミノ酸配列が自然では認められないことを意味する。一部の実施形態において、非天然アミノ酸配列は、約10~30アミノ酸残基、或いは約20アミノ酸残基を有する。これらは、天然並びに非天然アミノ酸を含むペプチド、ペプチド類縁体、ペプトイド及びペプチド模倣体などがある。具体的な態様において、本発明のペプチドは、天然アミノ酸のみからなるアミノ酸残基を含む。
【0043】
二つの定常ドメインCH1及びCH2間の蝶番領域も含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域は、「Fc断片」と称することができる。C末端領域のこの断片は、天然配列Fc断片又は変異Fc断片であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc断片の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc断片は通常、位置231のアミノ酸残基からそれのカルボキシル末端まで伸びると定義される。上部及び中心蝶番では、「Fc断片」は、位置216(RabatによるEU命名法(1987、1991))から開始する。免疫グロブリンのFc断片は通常、二つの定常ドメインCH2及びCH3を含む。ヒトIgGFc断片のCH2ドメインは通常、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで伸びている。ヒトIgG Fc断片のCH3ドメインは通常、ヒトIgGの約アミノ酸341~約アミノ酸残基447に伸びている(即ち、残基C末端からCH2ドメインを含む)。本発明の一部の実施形態では、変異IgG Fc断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4から選択することができる。特定の実施形態において、IgG1のIgGFc断片。一部の実施形態において、IgG1 Fcは、別の方法ではFcγ1と書くことができる。「蝶番断片(ヒンジ断片)」は、ヒトIgG1のGlu216からPro230、又はIgG2、IgG3若しくはIgG4における等価な位置まで伸びるものと定義される(Burton、1985)。機能性Fc断片は、例えばC1q結合、CDC、Fc受容体結合、食作用、オプソニン化粒子のエンドサイトーシス、抗原提示、炎症性メディエータ(例えばIL-6、TNFα、IL-1)の放出、細胞間共同作用、スーパーオキシド発生、ADCC、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の低下などの天然配列Fc断片のエフェクター機能を有する。本発明によって(本発明によって限定されない)包含されるFc断片のエフェクター機能は、食作用、CDC及び/又はADCCを含む。
【0044】
当業界で公知のように、Fcγ受容体(FcγR)は、IgG抗体に結合する受容体であり、例えば対立遺伝子多型などのFcγRI、FcγRII及びFcγRIII部分集合の受容体、或いはこれら受容体のスプライス型などがある。FcγRII受容体には、主としてそれの細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有するFcγRIIa(活性化受容体)及びFcγRIIb(阻害受容体)などがある。Fc受容体は、Ravetch and Kinet (1991, Annu. Rev. Immunol 9: 457-92);Capel et al., (1994, Immunomethods 4: 25-34);及びde Haas et al., (1995, J. Lab. Clin. Med. 126: 330-41)に総覧がある。
【0045】
本発明の1実施形態によるペプチドは、FcγRIなどのFcγ受容体に結合することができるペプチドのライブラリーから得ることができる。そのライブラリーは、粒子若しくは分子複合体、例えば複製可能な遺伝子パッケージ、例えば酵母、細菌又はバクテリオファージ(例えばT7)粒子、ウィルス、細胞又は共有結合、リボソーム、マイクロビーズその他のイン・ビトロ提示システムにより提示されることが可能であり、各粒子若しくは分子複合体は前記ペプチドをコードする核酸を含む。ファージ提示は、WO92/01047及び例えば米国特許US5969108、US5565332、US5733743、US5858657、US5871907、US5872215、US5885793、US5962255、US6140471、US6172197、US6225447、US6291650、US6492160及びUS6521404に記載されており、これらはそれぞれ、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
FcγRI受容体に結合することができ、バクテリオファージ又は他のライブラリー粒子又は分子複合体で提示される本発明のペプチドの選択に従って、核酸は、前記選択されたペプチドを提示するバクテリオファージその他の粒子若しくは分子複合体から取ることができる。そのような核酸は、前記ペプチドを提示するバクテリオファージその他の粒子若しくは分子複合体から取った核酸の配列を有する核酸からの発現によるその後のペプチド産生で用いることができる。
【0047】
一部の実施形態において可溶型での本発明のペプチドは、エフェクター応答を誘発することなくFcγRIに結合することができる。一部の実施形態において、受容体を活性化するために、受容体クラスタリングが起こる必要がある。
【0048】
一部の実施形態において、FcγRIに結合する能力を、さらにはFcγRIへの結合に関して例えばIgGのFc断片と競争する能力をさらに調べることができる。一部の実施形態において、本発明によるペプチドは、例えばBIACOREによって測定される、機能性Fc断片のアフィニティで、又はより良好若しくはより低いアフィニティでFcγRIに結合することができる。
【0049】
異なるペプチドの結合アフィニティを、適切な条件下で比較することができる。
【0050】
本発明のペプチドのアミノ酸配列内で置換を行うのに必要な技術は当業界で公知である。変異配列は、エフェクター機能に対する最小若しくは有益な効果を有することが予測可能であるか予測できない置換で行い、Fc受容体に結合する能力及び/又は他の所望の特性を調べることができる。
【0051】
一部の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1~21のいずれか一つ又はその機能性断片の配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列相同性を有する配列を含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1~21のいずれか一つ又はその機能性断片の配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。本明細書で開示のペプチドのいずれかの文脈において、「その機能性断片」は、Fc受容体(例えば、hFcγRI)に結合し、及び/又はそれを活性化することができると定義される。
【0052】
一部の実施形態において、前記ペプチドは、TX2CXXσPXLLGCφXE(配列番号1)のアミノ酸配列を含み;Xはアミノ酸であり、σは疎水性残基であり、φは酸性アミノ酸である。一部の実施形態において、前記ペプチドは特異的にhFcγRIに結合し、hFcγRIIやhFcγRIIIとの交差反応性を示さない。一部の実施形態において、前記ペプチドはAQVNSCLLLPNLLGC(配列番号2)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、AQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ペプチドは、下記のいずれか一つのアミノ酸配列を含む。
TDTCLMLPLLLGCDEE(配列番号4)
DPICWYFPRLLGCTTL(配列番号5)
WYPCYIYPRLLGCDGD(配列番号6)
GNICMLIPGLLGCSYE(配列番号7)
VNSCLLLPNLLGCGDD(配列番号8)
TPVCILLPSLLGCDTQ(配列番号9)
TVLCSLWPELLGCPPE(配列番号10)
TFSCLMWPWLLGCESL(配列番号11)
FGTCYTWPWLLGCEGF(配列番号12)
SLFCRLLLTPVGCVSQ(配列番号13)
HLLVLPRGLLGCTTLA(配列番号14)
TSLCSMFPDLLGCFNL(配列番号15)
SHPCGRLPMLLGCAES(配列番号16)
TSTCSMVPGPLGAVSTW(配列番号17)
KDPCTRWAMLLGCDGE(配列番号18)
IMTCSVYPFLLGCVDK(配列番号19)
IHSCAHVMRLLGCWSR(配列番号20)
AQVNSCLLLPNLLGCSYEKKKKKEYSCGLLNPLLLCNVQA(配列番号21)。
【0053】
一部の実施形態において、ペプチド中のアミノ酸の1以上が、タンパク質分解を低減するために修飾されている。一部の実施形態において、ペプチド中のアミノ酸残基の1以上が、メチル化されている。一部の実施形態において、ペプチド中のアスパラギンアミノ酸残基の1以上(そのペプチドが1以上のアスパラギンアミノ酸残基を含む場合)がメチル化されている。一部の実施形態において、ペプチド中のロイシンアミノ酸残基の1以上(そのペプチドが1以上のロイシンアミノ酸残基を含む場合)がメチル化されている。一部の実施形態において、配列番号2又は3の位置11に相当するアミノ酸位置のアスパラギン残基がメチル化されている。一部の実施形態において、配列番号2又は3の位置13に相当するアミノ酸位置のロイシン残基がメチル化されている。
【0054】
タンパク質の相同分子種は代表的には、デフォルトパラメータに設定されたALIGNを用いて特定タンパク質のアミノ酸配列との全長整列にわたってカウントされる75%超の配列同一性取得によって特徴付けられる。基準配列に対するさらにより大きい類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合に高パーセント同一性を示し、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、又は少なくとも98%配列同一性である。さらに、配列同一性を、開示のペプチドの特定ドメインの全長にわたって比較することができる。全体より有意に少ない配列を配列同一性について比較している場合、相同配列は代表的には、10~20アミノ酸の短いウィンドウで少なくとも80%配列同一性を有し、基準配列に対するそれらの類似性に応じて、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の配列同一性を有することができる。そのような短いウィンドウでの配列同一性は、LFASTAを用いて求めることができ;方法はNCSAウェブサイトに記載されている。
【0055】
特定の変異体は、配列番号1~21のいずれかと比較した1以上のアミノ酸配列変化(アミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/又は挿入)を含むことができる。一部の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1~21のいずれかと比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸変化を有する。一部の実施形態において、配列番号1~21のいずれかと比較して1以上のアミノ酸変化を有するペプチドは、Fc受容体(例えば、FcγRIなどのFc受容体)になおも結合することができる。
【0056】
一部の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1~21のいずれかと比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の保存的アミノ酸置換を有する。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の化学特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。概して、保存的アミノ酸置換は、ペプチドの機能特性をほとんど変えない(例えば、ペプチドのFcγRIなどのFc受容体に結合する能力)。2以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いと異なる場合、パーセント配列同一性又は類似度を調節して上昇させて、置換の保存的性質を補正することができる。この調節を行う手段は、当業者には公知である。例えば、Pearson (1994) Methods Mol. Biol. 24:307-331を参照する。同様の化学特性を有する側鎖を持つアミノ酸の群の例には、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、及び(7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンなどがある。特定の実施形態において、保存的アミノ酸置換基はバリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。或いは、保存的置換は、Gonnet et al. (1992) Science 256:1443-1445に開示のPAM250対数尤度マトリクスで正の値を有する変化である。「中等度に保存的」な置換は、PAM250対数尤度マトリクスで非負値を有する変化である。
【0057】
一部の実施形態において、本明細書に開示のペプチド配列のいずれかにおける1以上のアミノ酸残基が、非天然又は非標準アミノ酸と置き換わって、1以上のアミノ酸残基を修飾して非天然若しくは非標準型とするか、1以上の非天然若しくは非標準アミノ酸をその配列に挿入する。本発明の配列における変化の数及び位置の例は、本明細書の別の箇所に記載している。天然アミノ酸には、標準一文字コードによってG、A、V、L、I、M、P、F、W、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D、Eと識別される20の「標準」L-アミノ酸などがある。一部の実施形態において、本明細書に開示のペプチドのいずれも、1以上の非天然アミノ酸を含む。非標準アミノ酸には、ペプチド骨格に組み込むことができるか、既存のアミノ酸残基の修飾から得ることができる他の残基などがある。非標準アミノ酸は天然又は非天然であり得る。いくつかの天然非標準アミノ酸は当業界で公知であり、例えば4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリジン、3-メチルヒスチジン、N-アセチルセリンなどがある(Voet & Voet, Biochemistry, 2nd Edition, (Wiley) 1995)。N-α位で誘導体化されるアミノ酸残基は、アミノ酸配列のN末端にのみある。本発明では通常、アミノ酸はL-アミノ酸であるが、それはD-アミノ酸であり得る。従って、変化は、L-アミノ酸をD-アミノ酸に修飾するか、それをD-アミノ酸で置き換えることができる。メチル化、アセチル化及び/又はリン酸化型のアミノ酸も公知であり、本発明におけるアミノ酸についてそのような修飾を受けることができる。
【0058】
本発明の抗体ドメイン及びペプチドにおけるアミノ酸配列は、上記で記載の非天然又は非標準アミノ酸を含むことができる。非標準アミノ酸(例えばD-アミノ酸)を、合成時に、又はアミノ酸配列の合成後の「元の」標準アミノ酸の修飾若しくは置換によって、アミノ酸配列に組み込むことができる。
【0059】
一部の実施形態において、非標準及び/又は非天然アミノ酸の使用は、構造的及び機能的多様性を高め、従って、本発明のペプチドにおける所望の特性を達成する可能性を高めることができる。さらに、D-アミノ酸及び類縁体が、動物、例えばヒトに投与した後のL-アミノ酸を有するペプチドのイン・ビボ分解のため、標準L-アミノ酸と比較して、より良好な薬物動態プロファイルを有することが示されている。
【0060】
一部の実施形態において、前記ペプチド中のアミノ酸の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%又は100%がD-アミノ酸である。特定の実施形態において、ペプチド中のアミノ酸の全てがD-アミノ酸である。一部の実施形態において、当該開示は、本明細書で開示のアミノ酸配列のいずれかの逆の順序の、又はFc受容体(例えば、FcγRI)に結合することができる抗体のアミノ酸配列部分の逆の順序であるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。一部の実施形態において、当該開示は、ペプチド中のアミノ酸の全てがD-アミノ酸であり、本明細書で開示のアミノ酸配列のいずれかの逆の順序の、又はFc受容体(例えば、FcγRI)に結合することができる抗体のアミノ酸配列部分の逆の順序であるアミノ酸配列を含む「レトロインバース」ペプチドを提供する。「レトロインバース」ペプチドは、前記ペプチド又は当該ペプチドを含むコンジュゲートの投与を受けた対象者中に存在するプロテアーゼによって開裂される可能性が低いことから、望ましい場合があり得る。本発明のペプチドは、さらに修飾又は誘導体化することで、当業界で公知であって容易に入手可能な別の非タンパク質部分を含むようにすることができる。そのような誘導体は、化合物の溶解度、吸収及び/又は生体半減期を改善することができる。それらの部分は、或いは、化合物の望ましくない副作用を無くしたり、弱めることができる。
【0061】
誘導体の例には、その化合物が架橋されているか、分子間で架橋できるようにされた化合物が含まれる。例えば、ペプチド部分を修飾して、一つのCys残基を含むようにすることができ、それによって類似分子との分子間ジスルフィド結合を形成することができる。その化合物は、それのC末端を介して架橋することができる。
【0062】
一部の実施形態において、N末端をアシル化又は修飾して置換アミンとすることができる。例示的なN末端誘導体基には、-NRR1(-NH2以外)、-NRC(O)R1、-NRC(O)OR1、-NRS(O)2R1、-NHC(O)NHR1、コハク酸イミド、又はベンジルオキシカルボニル-NH-(CBZ-NH-)などがあり、ここでR及びR1はそれぞれ独立に水素若しくは低級アルキルであり、前記フェニル環はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、クロロ及びブロモからなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていても良い。
【0063】
一部の実施形態において、C末端はエステル化又はアミド化することができる。例えば、当業界で報告されている方法を用いて、(NH-CH2-CH2-NH2)2を本発明のペプチドに付加させることができる。同様に、当業界で報告されている方法を用いて、-NH2を本発明にペプチドを付加させることができる。C末端誘導体基の例には、例えば、-C(O)R2などがあり、ここでR2は低級アルコキシ若しくは-NR3R4であり、R3及びR4は独立に水素若しくはC1-C8アルキル(例えばC1-C4アルキル)である。
【0064】
一部の実施形態において、ジスルフィド結合を、別のより安定な架橋部分(例えば、アルキレン)で置き換えることができる。例えば、Bhatnagar et al. (1996)、J. Med. Chem. 39:38149;Alberts et al. (1993) Thirteenth Am. Pep. Symp., 357-9を参照する。
【0065】
一部の実施形態において、1以上の個々のアミノ酸残基を修飾することができる。各種誘導体化剤は、下記で詳細に記載のように、特定の側鎖若しくは末端残基と特異的に反応することが知られている。
【0066】
一部の実施形態において、リジニル残基及びアミノ末端残基を、無水コハク酸若しくは他のカルボン酸無水物と反応することができ、それはリジニル残基の電荷を逆転させる。α-アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬には、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;リン酸ピリドキサール;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソ尿素;2,4-ペンタンジオン;及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応などがある。
【0067】
一部の実施形態において、アルギニル残基は、いくつかの従来試薬、例えばフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンのいずれか一つ又は組み合わせとの反応によって修飾することができる。アルギニル残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高pKaのゆえに、その反応をアルカリ条件下で行うことが必要である。さらに、これらの試薬は、リジン並びにアルギニンε-アミノ基の基と反応することができる。
【0068】
チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物若しくはテトラニトロメタンとの反応によるチロシル残基へのスペクトル標識導入に特に注目して広範囲に研究されている。N-アセチルイミジゾール(imidizole);及びテトラニトロメタンを用いて、それぞれO-アセチルチロシル種及び3-ニトロ誘導体を形成することができる。
【0069】
一部の実施形態において、カルボキシル側鎖基(アスパルチル又はグルタミル)は、カルボジイミド(R′-N=C=N-R′)、例えば1-シクロへキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミド又は1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応によって選択的に修飾することができる。さらに、アスパルチル及びグルタミル残基を、アンモニウムイオンとの反応によって、アスパラギニル及びグルタミニル残基に変換することができる。
【0070】
一部の実施形態において、グルタミニル及びアスパラギニル残基は、脱アミデート化して、相当するグルタミル及びアスパルチル残基とすることができる。或いは、これらの残基は、軽度の酸性条件下で脱アミデート化される。これら残基のいずれかの形態が、この開示の範囲に含まれる。システイニル残基をアミノ酸残基その他の部分によって置き換えて、ジスルフィド結合を脱離させるか、逆に架橋を安定化させることができる。例えば、Bhatnagar et al. (1996), J. Med. Chem. 39:3814-9を参照する。
【0071】
二官能性薬剤の誘導体化は、本発明のペプチド又はそれの官能性誘導体を水不溶性支持マトリクスに、又は他の高分子媒体に架橋させるのに有用である。一般に使用される架橋剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル、ホモ二官能性イミドエステル、例えばジスルシニミジルエステル、例えば3,3′-ジチオビス(スクシニミジルプロピオネート)、及び二官能性マレイミド、例えばビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどがある。メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの誘導体化剤は、光存在下に架橋を形成する能力を有する光活性化可能中間体を生じる。或いは、臭化シアン活性化炭水化物などの反応性水不溶性マトリクス及び米国特許US3、969,287;US3,691,016;US4,195,128;US4,247,642;US4,229,537;及びUS4,330,440に記載の反応性基質をタンパク質固定化に用いる。
【0072】
一部の実施形態において、炭水化物(オリゴ糖)基を簡便に、タンパク質中のグリコシル化部位であることが知られている部位に結合させることができる。一部の実施形態において、配列Asn-X-Ser/Thr(Xはプロリン以外のアミノ酸であり得る。)の一部である場合、O-連結オリゴ糖をセリン(Ser)又はトレオニン(Thr)残基に結合させ、N-連結オリゴ糖をアスパラギン(Asn)残基に結合させる。一部の実施形態において、Xは、プロリン以外の19種類の天然アミノ酸のうちの一つである。N-連結及びO-連結オリゴ糖及び各種類で認められる糖残基の構造は異なる。両方で共通に認められる糖の一種類は、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸と称される)である。シアル酸は通常、N-連結及びO-連結オリゴ糖の両方の末端残基であり、それの負電荷により、グリコシル化化合物に酸性特性を与え得る。
【0073】
そのような部位は、本発明のペプチドに想到されるリンカーに組み込むことができ、一部の実施形態において、ペプチド化合物の組換え産生時に細胞によってグリコシル化される(例えば、CHO、BHK、COSなどの哺乳動物細胞で)。しかしながら、そのような部位はさらに、当業界で公知の合成手順若しくは半合成手順によってグリコシル化することができる。
【0074】
他の可能な修飾には、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル若しくはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、Cysの硫黄原子の酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化などがある。Creighton, Proteins: Structure and Molecule Properties(W. H. Freeman & Co., San I Francisco), pp.79-86(1983)。
【0075】
特定の実施形態において、ペプチドの誘導体化に好適な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの比限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリ(proly)プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのそれの安定性のために製造において有利であり得る。そのポリマーはあらゆる分子量のものであることができ、分岐若しくは非分岐であり得る。そのポリマーは、米国特許:US4640835、US4496689、US4301144、US4670417、US4791192又はUS4179337に記載の方法でペプチドに連結されていることができる。WO93/00109も、ペプチドにおけるアミノ酸残基のPEG分子への連結方法を記載している。ペプチドに結合しているポリマーの数は変動し得るものであり、複数のポリマーが結合している場合、それらは同一分子又は異なる分子であり得る。概して、誘導体化に用いられるポリマーの数及び/又は種類は、改善されるペプチドの特定の特性若しくは機能、又は例えば所定の条件下でそれを治療法で用いるか否かなど(それらに限定されるものではない)の考慮事項に基づいて決定することができる。
【0076】
別の実施形態において、本発明のペプチドをさらに修飾して、血清キャリアタンパク質を含ませて、イン・ビボでの半減期を延長することができる。血清キャリアタンパク質は、天然血清キャリアタンパク質又はそれの断片であり得る。特定の例には、それらの断片とともに、チロキシン結合タンパク質、トランスチレチン、α1-酸糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及び特には、アルブミンなどがある。一部の実施形態において、キャリアタンパク質はヒト起源のものである。所望の場合、それぞれは、得られる配列が半減期に関して機能的に等価である場合、天然配列に1以上の追加の若しくは異なるアミノ酸を有することができる。断片には、成熟配列のキャリア機能を保持する親タンパク質のいずれかより小さい部分などがある。ペプチド成分及びキャリアタンパク質成分は、直接若しくは間接的に共有結合連結していることができる。間接共有結合連結は、ペプチド中のアミノ酸が、介在化学配列、例えば架橋基を介してキャリアタンパク質中のアミノ酸に結合していることを意味するものである。特定の架橋基には、例えばペプチドなどの脂肪族などがある。直接共有結合連結は、ペプチド中のアミノ酸が、介在架橋基なしでキャリアタンパク質中のアミノ酸に直接結合していることを意味するものである。特定の例には、例えば一つの成分中のシステイン残基が、それぞれの中のチオールを介して別のものの中のシステイン残基に連結されている場合、及び一つの成分のC末端酸官能基が他のもののN末端アミンに連結されている場合、ジスルフィド[--S--S--]連結及びアミド[--CONH--]連結などがある。
【0077】
本明細書に記載の標的部位に加えて、本明細書に開示のペプチドのいずれかを、検出可能若しくは機能性の標識で標識することもできる。従って、ペプチドが、ペプチドコンジュゲートの形態で存在して、検出可能及び/又は定量可能なシグナルを得ることができる。ペプチドコンジュゲートは、検出可能若しくは機能性標識と結合した本発明のペプチドを含むことができる。標識は、蛍光剤、放射標識、酵素、化学発光剤又は光増感剤など(これらに限定されるものではない)のシグナルを生じる又はシグナルを生じるよう誘導され得る分子であり得る。従って、蛍光若しくは発光、放射能、酵素活性又は吸光度を検出することによって、結合を検出及び/又は測定することができる。
【0078】
好適な標識には、例を挙げると下記のものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
-酵素、例えばアルカリホスファターゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(「G6PDH」)、α-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸脱水素酵素及びペルオキシダーゼ、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ;
-蛍光標識/顔料/染色剤;
○蛍光標識又は蛍光剤、例えばフルオレセイン及びそれの誘導体、蛍光色素、ローダミン化合物及び誘導体、GFP(「緑色蛍光タンパク質」についてのGFP)、ダンシル、ウンベリフェロン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、及びフルオレサミン;ランタニドクリプテート類及びキレート類、例えばユーロピウムなど(Perkin Elmer and Cis Biointernational)などのフルオロフォア類、-化学発光標識又は化学発光剤、例えばイソルミノール、ルミノール及びジオキセタン類;
-生物発光標識、例えばルシフェラーゼ及びルシフェリン;
-増感剤;
-補酵素;
-酵素基質;
-放射標識、例えば臭素W、炭素14、コバルト57、フッ素δ、ガリウム67、ガリウム68、水素3(トリチウム)、インジウム111、インジウム113m、ヨウ素123m、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素131、ヨウ素133、水銀107、水銀203、リン32、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、スカンジウム47、セレン75、硫黄35、テクネチウム99、テクネチウム99m、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、イットリウム199及び本明細書で言及の他の放射標識(これらに限定されるものではない);
-粒子、例えばラテックス又は炭素粒子;金属ゾル;晶子;リポソーム類;色素、触媒その他の検出可能基でさらに標識されていることができる細胞など;-ビオチン、ジゴキシゲニン又は5-ブロモデオキシウリジンなどの分子;
-毒素部分、例えば、緑膿菌外毒素(PE又はそれの細胞毒性断片若しくは変異体)、ジフテリア毒又はそれの細胞毒性断片若しくは変異体、ボツリヌス毒素A、B、C、D、E若しくはF、リシン又はそれの細胞毒性断片、例えばリシンA、アブリン又はそれの細胞毒性断片、サポリン又はそれの細胞毒性断片、ヤマゴボウ抗ウィルス毒素又はそれの細胞毒性断片及びブリオジン1又はそれの細胞毒性断片から選択される毒素部分。
【0079】
好適な酵素及び補酵素は、Litman, et al., US4275149、及びBoguslaski, et al., US4318980(これらはそれぞれ、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。)に開示されている。好適な蛍光剤及び化学発光剤は、Litman, et al., US4275149(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。)に開示されている。標識にはさらに、化学部分、例えば特異的同種検出可能部分への結合を介して検出可能なビオチン、例えば標識されたアビジン若しくはストレプトアビジンなどがある。検出可能標識は、当業界で公知の従来の化学を用いて、又は遺伝子融合によって、本発明のペプチドに結合させることができる。
【0080】
一部の実施形態において、本開示は、Fc受容体(例えば、FcγRI)に結合することができる抗体断片であるペプチドを提供する。全抗体の断片が結合抗原の機能を行い得ることが明らかになっている。結合断片の例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)VH又はVLドメインからなるdAb断片(Ward et al 1989, McCafferty et al 1990, Holt et al 2003);(v)単離CDR領域;(vi)二つの連結されたFab断片を含む二価断片であるF(ab′)2断片、(vii)VHドメイン及びVLドメインが、その二つのドメインを会合させて抗原結合部位を形成させるペプチドリンカーによって連結されている一本鎖Fv分子(scFv)(Bird et al 1988、Huston et al 1988);(viii)二重特異性一本鎖Fvダイマー(PCT/US92/09965)及び(ix)遺伝子融合によって構築された多価若しくは多重特異的断片である「ダイアボディ」(WO94/13804;Hollinger et al 1993)がある。Fv、scFv又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋を組み込むことで安定化させることができる(Reiter et al 1996)。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディ(minibodies)も作ることができる(Hu et al 1996)。結合断片の他の例は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端でいくつかの残基、例えば、抗体蝶番領域からの1以上のシステインを付加することでFab断片と異なるFab′、及び定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab′断片であるFab′-SHである。抗体抗原結合部位を含む抗体断片には、Fab、Fab′、Fab′-SH、scFv、Fv、dAb及びFdなどの分子などがあるが、これらに限定されるものではない。1以上の抗体抗原結合部位を含む各種他の抗体分子が作られており、例えばFab2、Fab3、二特異性抗体、三特異性抗体、四特異性抗体及びミニボディ(minibodies)がある。抗体分子及びそれらの構築及び使用方法は、Hollinger & Hudson (2005)に記載されている。
【0081】
2.標的化部分
一部の実施形態において、本明細書で開示のペプチドのいずれも、1以上の標的部分に結合している。
【0082】
一部の実施形態において、前記標的化部分は、タンパク質凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記タンパク質凝集体は、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビンのいずれか一つの凝集体を含む。
【0083】
一部の実施形態において、前記標的化部分は脂質凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記脂質凝集体はコレステロール凝集体である。
【0084】
一部の実施形態において、前記標的化部分は多糖類凝集体を標的とする。一部の実施形態において、前記標的化部分はグリコーゲン凝集体を標的とする。
【0085】
一部の実施形態において、前記標的化部分はペプチドである。一部の実施形態において、前記標的化部分は核酸である。一部の実施形態において、前記標的化部分は脂質である。一部の実施形態において、前記標的化部分は多糖類である。特定の実施形態において、前記標的化部分は色素又はそれの誘導体である。
【0086】
一部の実施形態において、前記標的化部分は小分子である。一部の実施形態において、前記標的化部分は、大きさが1000g/mol未満、900g/mol未満、800g/mol未満、700g/mol未満、800g/mol未満、700g/mol未満、600g/mol未満、500g/mol未満、400g/mol未満、300g/mol未満、200g/mol未満、又は100g/mol未満である。特定の実施形態において、前記標的化部分は、大きさが500g/mol未満である。特定の実施形態において、前記標的化部分は、大きさが400g/mol未満である。
【0087】
特定の実施形態において、前記標的化部分は、色素又はそれの誘導体である。本明細書で使用される場合、「色素」は、タンパク質、多糖類、脂質、金属及び/又はヌクレオチドに色を付けるか、色を変えるのに用いられる天然若しくは合成物質であるか、それから誘導される化合物と定義される。一部の実施形態において、前記色素を用いて,細胞又はそれの成分を染色することができる。当業者であれば、何が色素/染色剤として分類されるかを理解するであろう。一部の実施形態において、前記色素は、タンパク質、多糖類、脂質、金属及び/又はヌクレオチドに結合して、タンパク質、多糖類、脂質、金属及び/又はヌクレオチドの可視化を容易にすることができる化合物である。好ましい実施形態において、前記色素は、凝集体又は凝集体中に存在する成分に結合する。一部の実施形態において、前記色素は、凝集体中のタンパク質、多糖類、脂質、金属、及び/又はヌクレオチドに結合する。一部の実施形態において、前記標的化部分は、特異的標的(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、ヌクレオチド、脂質又はそれらの凝集体)に結合する能力を保持するが、染色能力を持たないか、誘導体が誘導される色素と比較して変更された染色能力を有する色素の誘導体である。
【0088】
一部の実施形態において、前記色素はアミロイドに結合する。一部の実施形態において、前記色素は、チオフラビン、五量体ホルミルチオフェン酢酸(pFTAA)、七量体ホルミルチオフェン酢酸(hFTAA)、コンゴレッド、クリスタル・バイオレット、1-アミノ-8-ナフタレンスルホネート(ANS)、4-(ジシアノビニル)-ジュロリジン(DCVJ)、アミノベンズアントロン、メトキシXO4、チアジンレッド、ピッツバーグB、ProteoStat(登録商標)及びそれらのアミロイド結合誘導体からなる群から選択される。一部の実施形態において、前記チオフラビンは、チオフラビンT又はそれのアミロイド結合誘導体である。一部の実施形態において、チオフラビンTのアミロイド結合誘導体は、化合物Iの式:
【0089】
【0090】
を含む。一部の実施形態において、前記アミロイドは、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、C79ORF、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビン、又はそれらの断片若しくは誘導体のうちのいずれか1以上を含む。一部の実施形態において、前記アミロイドはリゾチームを含む。
【0091】
一部の実施形態において、前記色素はコレステロールに結合する。一部の実施形態において、前記色素は、フィリピン、又はそれのコレステロール結合誘導体である。
【0092】
一部の実施形態において、前記色素はコラーゲンに結合する。一部の実施形態において、前記色素は、シリウスレッド、Col-F、オレゴン・グリーン488、ピクロシリウスレッド、ライトグリーンSFイエロー、ファストグリーンFCF、メチルブルー、ウォーターブルー、アニリンブルー、及びこれらのコラーゲン結合誘導体である。
【0093】
一部の実施形態において、前記色素は多糖類凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素はグリコーゲン凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素は、カルミン、過ヨウ素酸、アルシアンブルー、及びジメチルメチレンブルーからなる群から選択される。
【0094】
一部の実施形態において、前記色素はヌクレオチド凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素はRNA凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素はDNA凝集体に結合する。一部の実施形態において、前記色素は、拡張CUG、CAG、CCUG、CCG又はCGG繰り返しを有するポリヌクレオチドに結合する。
【0095】
一部の実施形態において、前記標的化部分が修飾されて、ペプチドへの結合を促進している。一部の実施形態において、前記標的化部分が修飾されて、それがカルボキシル基を含むようになっている。一部の実施形態において、前記標的化部分のカルボキシル基が、ペプチドのアミノ末端に結合している。一部の実施形態において、前記標的化部分が修飾されて、それがアミノ基を含むようになっている。一部の実施形態において、標的化部分のアミノ基は、ペプチドのカルボキシ末端に結合している。一部の実施形態において、前記標的化部分は、リンカーによってペプチドに結合されている。一部の実施形態において、前記リンカーは、非開裂性のリンカー、ヒドラゾンリンカー、チオエーテルリンカー、ジスルフィドリンカー、ペプチドリンカー及びβ-グルクロニドリンカーからなる群から選択される。ある種のそのような実施形態において、前記リンカーは剛性である。
【0096】
3.コンジュゲート
一部の実施形態において、本明細書で開示のペプチドのいずれかが本明細書に開示の標的部分のいずれかに融合して、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれかを発生させる。
【0097】
一部の実施形態において、本明細書に開示の標的部分のいずれか(例えば、本明細書に開示の色素のいずれか)が、本明細書に開示のペプチドのいずれかに直接(例えば、リンカー非存在下で)結合している。一部の実施形態において、本明細書に開示の標的部分のいずれか(例えば、本明細書に開示の色素のいずれか)が、リンカー又は連結部分によって本明細書に開示のペプチドのいずれかに結合している。一部の実施形態において、本明細書に開示の標的部分のいずれか(例えば、本明細書に開示の色素のいずれか)が、ペプチドへの連結によって共有結合的に結合している。一部の実施形態において、前記リンカーは剛性である。別の実施形態において、前記リンカーは可撓性である。好ましい実施形態において、前記リンカーは、(i)標的化部分(例えば、色素)の凝集体標的化特性を阻害したり、及び/又は悪影響を与えてはならず、そして(ii)前記ペプチドがFc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争する能力を阻害したり、及び/又は悪影響を与えてはならない。
【0098】
一部の実施形態において、前記標的化部分には、標的化部分(例えば、色素)のペプチドへの共有結合的結合に関して置換基位置の一つに反応性連結基「連結部分」を含む。共有結合を形成することができる連結部分は、代表的には、求核性分子、例えばアルコール類、アルコキシド類、アミン類、ヒドロキシルアミン類及びチオール類と反応することができる求電子性官能基である。求電子性連結部分の例には、スクシニミジルエステル、イソチオシアネート、スルホニルクロライド、スルホン酸エステル、シリルハライド、2,6-ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、ホスホルアミダイト、マレイミド、ヨードアセトアミド、ハロアセチル、エポキシド、アルキルハライド、アリルハライド、アルデヒド、ケトン、アシルアジド、及び無水物などがある。一部の実施形態において、連結部分は、標的化部分(例えば、色素)上のカルボキシル基置換基のN-ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)である。
【0099】
一部の実施形態において、前記連結部分は、ホスホルアミダイト試薬、本明細書に開示の色素のいずれかである。他の活性化及びカップリング試薬には、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾ-1-イル)-1-1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、TFFH(N,N′,N″,N′″-テトラメチルウロニウム2-フルオロ-ヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、EEDQ(2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロ-キノリン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(1-(メシチレン-2-スルホニル)-3-ニトロ-1H-1,2,4-トリアゾール、及びアリールスルホニルハライド、例えばトリイソプロピルベンゼンスルホニルクロライドなどがある。
【0100】
一部の実施形態において、前記リンカーは、酸素若しくは硫黄などの原子、-NH-、-CH2-、-C(O)-、-C(O)NH-若しくはヒドロカルビル基などの単位を含む。「ヒドロカルビル基」という用語は、完全飽和であり得るか、1以上の不飽和単位を有していても良い、置換されていても良い直鎖若しくは環状、直鎖若しくは分岐の炭素鎖を指す。ある種の実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、1以上の不飽和単位を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-30ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-25ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-20ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-15ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-10ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-8ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-6ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-4ヒドロカルビル基を含む。一部の実施形態において、前記リンカーは、置換されていても良い飽和若しくは不飽和のC1-2ヒドロカルビル基を含む。前記のいずれかの一部の実施形態において、鎖の1以上の飽和炭素が、-C(O)-、-C(O)C(O)-、-CONH-、-CONHNH-、-CO2-、-OC(O)-、-NHCO2-、-O-、-NHCONH-、-OC(O)NH-、-NHNH-、-NHCO-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-SO2NH-、又は-NHSO2-によって置き換わっていても良い。前記のある種の実施形態において、前記リンカーは剛性である。
【0101】
一部の実施形態において、本明細書に開示の標的部分のいずれか(例えば、本明細書に開示の色素のいずれか)が、化合物IIの構造を含むリンカーによって本明細書に開示のペプチドのいずれかに共有結合的に連結されている。
【0102】
【0103】
式中、nは1~30であり、mは0、1、2、3、4若しくは5である。一部の実施形態において、nは1~25、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~4、1~2又は1である。一部の実施形態において、nは2である。一部の実施形態において、mは0である。
【0104】
一部の実施形態において、前記リンカーは、β-Alaリンカー、短ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、又は長PEGリンカーである。特定の実施形態において、前記リンカーはβ-アラニンリンカーである。一部の実施形態において、前記PEGリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25のPEG単位を含む。特定の実施形態において、前記リンカーはβ-アラニン;9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸又は6-アミノ-4-オキサオ(oxao)ヘキサン酸である。一部の実施形態において、前記リンカーは、FMOC誘導体化リンカーである。
【0105】
一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、化合物IIIの構造:
【化11】
を含み、
R
1はビオチン又は水素であり;
R
2は、
a)化合物IV(
【化12】
);
b)化合物V(
【化13】
);
c)化合物VI(
【化14】
);又は
d)化合物VII(
【化15】
)を含む。一部の実施形態において、R
1はビオチンである。一部の実施形態において、R
1は水素である。特定の実施形態において、R
2は、化合物V(
【化16】
)を含む。
【0106】
ペプチドは、アミノ酸側鎖、アミノ末端、及びカルボキシ末端などの部位で標的化部分(例えば、色素)に結合することができる。ペプチドを官能化して、これらの部位のいずれかに反応性アミノ、チオール、スルフィド、ジスルフィド、ヒドロキシル、及びカルボキシル基を持たせることができる。
【0107】
本明細書に開示のコンジュゲートのいずれも、当業者に公知の方法によって製造することができる。アミノ酸及びアミノ酸類縁体からなるペプチドは、本明細書に開示の色素のいずれかとの結合によって標的化部分に共有結合的に融合させることができる。一部の実施形態において、前記色素は、ペプチド上の求核性基、例えばアミノ末端、又はアミノ酸の側鎖求核剤と反応する求電子性連結部分を有する。或いは、前記色素は、求核性型、例えばペプチド上の求電子性基、例えばアミノ酸のカルボキシル末端若しくはカルボキシル側鎖のNHSと反応するアミノ-若しくはチオール-連結部分であり得る。一部の実施形態において、前記色素は、コンジュゲート反応時に固体支持体、即ち合成樹脂上にあることができる。或いは、前記ペプチドは、色素への結合前に開裂していることができる。ある種の実施形態において、ある種のアミノ酸側鎖によって、本明細書に開示の色素のいずれかの活性化型とのコンジュゲーションが可能となり得る。アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、システイン、ヒスチジン、及びチロシンは、コンジュゲーションのための反応性官能基を有する。保護基を適切に選択することで、ペプチドのある種の反応性官能基を、標的化部分(例えば、色素)との反応のために選択的に露出させることができる。
【0108】
一部の実施形態において、ペプチドを、酵素又は蛍光標識に、直接又はスペーサー基又はグルタルアルデヒドのようなポリアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレン-トリアミン五酢酸(DPTA)などの連結基を介して、又はカップリング剤存在下にカップリングさせることができる。フルオレセイン型の標識を含むコンジュゲートは、イソチオシアネートとの反応によって製造することができる。
【0109】
一部の実施形態において、直接又は上記のEDTA、DTPAなどのキレート剤を介してペプチドに放射性同位体をカップリングさせるために存在する当業者に公知の方法を、診断で用いることができる放射性元素について用いることができる。クロラミンT法[i]によりナトリウム125で、又はCrockford et alの技術によりテクネチウム99mで、又はHnatowichが記載の方法に従ってDTPAを介して結合させて標識を行うことも同様に可能である。
【0110】
一部の実施形態において、本開示のコンジュゲートのいずれも、例えば、Fc受容体(例えば、FcγRI)に結合する。そのような結合は、イン・ビボで、例えばコンジュゲート投与後に起こり得るか、イン・ビトロで、例えばELISA、ウェスタンブロッティング、免疫細胞化学、免疫沈殿、アフィニティクロマトグラフィー、及び生化学若しくは細胞系アッセイで起こり得る。当業者は、本明細書に開示の方法を考慮して、当業者の好み及び一般知識に従って、Fc受容体(例えば、FcγRI)へのペプチドの結合を決定する好適なモードを選択することができる。そのような方法には、特に、競争的ELISA及びアルファスクリーンなどがあり得る。
【0111】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれかのダイマー又はオリゴマーを提供する。一部の実施形態において、そのダイマー若しくはオリゴマー中のコンジュゲートを、リンカーによって互いに連結する。一部の実施形態において、コンジュゲート中のペプチドが二つのhFcγRIに結合する。一部の実施形態において、コンジュゲート中のペプチドがFcエフェクター機能を活性化する。一部の実施形態において、そのコンジュゲートは、KKKKKリンカー(配列番号22)によって連結された二つのFc模倣ペプチドを含む。
【0112】
一部の実施形態において、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれも、分子凝集体に免疫細胞を動員することができる。一部の実施形態において、その免疫細胞は単球由来細胞である。一部の実施形態において、その免疫細胞はマクロファージである。一部の実施形態において、その免疫細胞は単球である。一部の実施形態において、その免疫細胞はグリア細胞(例えば、小グリア細胞)である。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは免疫細胞に結合し、免疫細胞の活性化を促進する。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、分子凝集体の少なくとも一部の食作用を促進する。
【0113】
4.治療方法
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、本開示は、本願を通じて記載されているコンジュゲート及び/又は組成物のいずれかの使用を想到するものである。さらに、本明細書に記載の方法のいずれにおいても、本開示は、一つの方法のいずれかの段階若しくは複数段階と別の方法のいずれかの段階若しくは複数段階との組み合わせを想到するものである。
【0114】
「治療」、「治療する」などの用語は、本明細書において、所望の薬理的及び/又は生理的効果を得ることを意味するのに使用される。状態又は疾患を「治療する」とは、状態若しくは疾患の少なくとも一つの症状を治癒並びに改善することを指し、組成物の投与を受けない対象者と比較して、処置を必要とする対象者における医学的状態の症状の頻度を減らし、又はその症状の発症を遅延させる組成物の投与を含む。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にはヒトの疾患又は状態のあらゆる治療を包含するものであり、(a)疾患若しくは状態の素因を有し得るが、まだ症状の経験は始まっていない対象者において疾患若しくは状態の症状が生じるのを防止すること;(b)疾患若しくは状態を抑止すること(例えば、それの進行を停止すること);又は(c)疾患若しくは状態を緩和すること(例えば、疾患若しくは状態の退行を生じさせて、1以上の症状の改善を提供すること)を含む。例えば、アルツハイマー病などのアミロイドーシス疾患の治療は、著しい記憶喪失若しくは認知低下の防止、アミロイド斑の低減、記憶の改善、及び/又は認知低下の改善若しくは低減を包含する。他のアミロイドーシス状態の治療は、下痢、体重減少、疲労、舌肥大症(glossomegaly)、出血、体性感覚障害、起立性低血圧、末梢浮腫及び脾腫の予防/緩和/好転を包含し得る。アテローム性動脈硬化症又は心臓疾患の治療は、コレステロール/脂質凝集体のクリアランス及び/又はアテローム性動脈硬化症及び/又は心臓疾患の予防/緩和/好転を包含し得る。糖原病の治療は、グリコーゲン沈着及び/又はその疾患に関連する関連症状(運動欠陥、認知障害、肝臓障害など)のクリアランスを包含し得る。
【0115】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれかと凝集体を接触させることで、免疫細胞をその凝集体に動員する方法を提供する。一部の実施形態において、前記免疫細胞は、本明細書に開示の免疫細胞のいずれかである。一部の実施形態において、前記免疫細胞を活性化して、それが凝集体を消失させることができるようにする(例えば、食作用によって、又は別の免疫細胞を動員/活性化させることで)。一部の実施形態において、前記凝集体は、本明細書に開示の凝集体のいずれかである。一部の実施形態において、前記凝集体及び免疫細胞はイン・ビトロである。一部の実施形態において、前記凝集体及び免疫細胞はイン・ビボである。一部の実施形態において、前記凝集体及び免疫細胞は動物内のものである。一部の実施形態において、前記動物は哺乳動物である。一部の実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。一部の実施形態において、前記免疫細胞は単球由来細胞である。一部の実施形態において、前記免疫細胞はマクロファージである。一部の実施形態において、前記免疫細胞は単球である。一部の実施形態において、前記免疫細胞は小グリア細胞である。
【0116】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか1以上で、処置を必要とする対象者を治療する方法であって、前記対象者がタンパク質凝集体関連の疾患若しくは障害を有する方法を提供する。一部の実施形態において、前記タンパク質凝集体は、α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ2-ミクログロビン、又はこれらの凝集体形成性の断片若しくは誘導体のいずれか1以上を含む。一部の実施形態において、前記アミロイドは、C9ORF72、ハンチントン病、脆弱XA、脆弱XE、フリードライヒ運動失調症、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)、クロイツフェルト-ヤコブ病、筋強直性ジストロフィー2型(DM2)、及び脊髄小脳性運動失調8、10及び12型(SCA8、SCA10、SCA12)で見られるような、ヌクレオチド反復拡張のRAN翻訳から生じる反復ペプチド配列からなる。
【0117】
一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、アミロイドーシスである。一部の実施形態において、前記アミロイドーシスは、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、アルツハイマー病、LECT2アミロイドーシス、軟膜アミロイドーシス、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発性神経障害、血液透析関連アミロイドーシス、2型糖尿病、クロイツフェルト-ヤコブ病、ルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、フィンランド型アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシスプロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳アミロイド血管症、前頭側頭型認知症、甲状腺髄様癌、及びB2Mアミロイドーシスからなる群から選択される。一部の実施形態において、前記アミロイドーシスは家族性アミロイドーシスである。一部の実施形態において、前記アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスである。
【0118】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか1以上で、処置を必要とする対象者を治療する方法であって、その対象者が多糖類凝集体に関連する疾患若しくは障害を有する方法を提供する。一部の実施形態において、前記多糖類はグリコーゲンである。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、糖原病又は障害である。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、ポンペ病、フォンギールケ病、フォーブス-コリ病、アンダーセン病、マッカードル病、エール病、垂井病、ファンコニ-ビッケル症候群、GSD IX、GSD X、GSD XI、GSD XII、GSD XIII、GSD XV、及びラフォラ病からなる群から選択される。
【0119】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか1以上で、処置を必要とする対象者を治療する方法であって、その対象者が脂質凝集体関連の疾患若しくは障害を有する方法を提供する。一部の実施形態において、前記脂質はコレステロールである。一部の実施形態において、前記脂質はスフィンゴミエリンである。一部の実施形態において、前記脂質はグロボトリアオシルセラミド(Gb3)又はグルコセレブロシドである。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、心臓疾患又はアテローム性動脈硬化症である。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、高コレステロール血症である。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害はアルツハイマー病又はパーキンソン病である。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は又はニーマン・ピック病A型、B型若しくはC型である。
【0120】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示のコンジュゲートのいずれか1以上で、処置を必要とする対象者を治療する方法であって、その対象者がヌクレオチド凝集体関連の疾患又は障害を有する方法を提供する。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、RNA凝集体関連のものである。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、DNA凝集体関連のものである。一部の実施形態において、前記疾患若しくは障害は、異常マイクロサテライト伸長に関連するものである。異常マイクロサテライト伸長関連の状態(本明細書においてマイクロサテライト伸長病とも称される)には、多くの神経疾患及び神経筋疾患がある(O′Donnell, et al., 2002, Annu. Rev. Neurosci. 25:315)。これらの疾患又は状態は、コード領域及び非コード領域でのマイクロサテライト反復伸長によって引き起こされる。これらのマイクロサテライト反復伸長には、例えば、CAG又はCUG反復、又はそれの変形形態(例えばCCUG)などがあり得る。例えば、その特徴付けられたコード領域伸長疾患には、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン舞踏病(HD)、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、特定の形態のクロイツフェルト-ヤコブ病及び脊髄小脳性運動失調1、2、3、6、7及び17型(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17)などがある。前記特徴付けられた非コード領域伸長疾患には、脆弱XA、脆弱XE、フリードライヒ運動失調症、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)、筋強直性ジストロフィー2型(DM2)、及び脊髄小脳性運動失調8、10及び12型(SCA8、SCA10、SCA12)などがある。ハンチントン病及びハンチントン病様2型(HDL2)も、マイクロサテライト伸長によって引き起こされる。筋萎縮性側索硬化症又は前頭側頭型認知症(FTD)は、第9染色体オープン・リーディング・フレーム72(C9ORF72)遺伝子での反復伸長に関連する。
【0121】
一部の実施形態において、本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかを、代替療法と組み合わせることができる。本発明によるタンパク質凝集関連疾患の治療を、当業界で公知の他の治療方法と組み合わせることができる(即ち、併用療法)ことは明らかであろう。従って、アミロイドーシスの場合、本発明の化合物を、抗アミロイド薬などの別の薬剤と共投与(同時又は別個)することができる。そのような抗アミロイド薬の例には、アミロイド不安定化抗体、アミロイド不安定化ペプチド及び抗アミロイド小分子などがあるが、これらに限定されるものではない。他の併用療法には、治療上有効量の次のものからなる群から選択される少なくとも一つの薬剤:BACE阻害剤;ムスカリン拮抗薬;コリンエステラーゼ阻害剤;ガンマセクレターゼ阻害剤;ガンマセクレターゼ調整剤;HMG-CoAレダクターゼ阻害剤;非ステロイド系抗炎症剤;N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬;抗アミロイド抗体;ビタミンE;ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬;CB1受容体逆作動薬又はCB1受容体拮抗薬;抗生物質;成長ホルモン分泌促進剤;ヒスタミンH3拮抗薬;AMPA作動薬;PDE4阻害剤;GABAA逆作動薬;アミロイド凝集の阻害剤;グリコーゲンシンターゼキナーゼβ阻害剤;アルファセクレターゼ活性の促進剤;PDE-10阻害剤;イクセロン(リバスティグミン);コグネクス(Cognex)(タクリン);タウキナーゼ;抗Aβワクチン;APPリガンド;インシュリンコレステロール低下剤を上昇させる薬剤;コレステロール吸収阻害剤;フィブラート類;LXR作動薬;LRP模倣薬;ニコチン受容体作動薬;H3受容体拮抗薬;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;hsp90阻害剤;m1ムスカリン受容体作動薬;5-HT6受容体拮抗薬;mGluR1;mGluR5;ポジティブアロステリック調整剤又は作動薬;mGluR2/3拮抗薬;神経炎症を軽減できる抗炎症薬;プロスタグランジンEP2受容体拮抗薬;PAI-1阻害剤;及びAβ流出を誘発し得る薬剤を含むことができる。
【0122】
他の併用療法は、理学療法、マッサージ、カンナビノイド類(例えば、Ramirez, et al, The Journal of Neuroscience, Feb. 23, 2005, 25(8):1904-1913参照);ディメボン(例えば、R S Doody, et al., The Lancet 372:207-215(2008)参照;選択的エストロゲン受容体分子(SERM)、例えば、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標));抗高血圧薬、例えばα-遮断薬、β-遮断薬、α-β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB類、例えばバルサルタン(例えば、DIOVAN(登録商標)))、カルシウムチャンネル遮断薬、及び利尿薬(例えば、I Hajjar, et al, The Journals of Gerontology Series A:Biological Sciences and Medical Sciences 60:67-73(2005)参照);及び酸化防止剤、例えばニンニク抽出物、クルクミン、メラトニン、レスベラトロル、イチョウの葉エキス、緑茶、ビタミンC及びビタミンE(例えば、B Frank, et al., Ann Clin Psychiatry 17(4):269-86(2005)参照)からなる群から選択される治療上有効量の少なくとも一つの療法を含むことができる。
【0123】
コレステロール関連疾患又は障害の場合、本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかを、コレステロール低下及び/又は心臓保護薬、例えばスタチン類、例えば、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))、セリバスタチン(BAYCOL(登録商標))、フルバスタチン(例えば、LESCOL(登録商標))、メバスタチン、ピタバスタチン(例えば、LIVALO(登録商標))、プラバスタチン(例えば、PRAVACHOL(登録商標))、ロスバスタチン(例えば、CRESTOR(登録商標))及びシンバスタチン(例えば、ZOCOR(登録商標))と組み合わせることができる。
【0124】
5.医薬組成物
一部の実施形態において、本明細書の記載のコンジュゲートのいずれも、医薬組成物に製剤することができる。本開示による使用のための医薬組成物は、1以上の生理的に許容される担体又は賦形剤を用いて従来法で製剤することができる。そのような製剤は、ほとんどの規制要件に従って、実質的に発熱物質を含まない。
【0125】
ある種の実施形態において、本開示の治療方法は、インプラント若しくは機器として前記組成物を全身又は局所投与することを含む。投与される場合、本開示での使用のための治療組成物は、発熱物質を含まない生理的に許容される形態である。上記で記載の組成物に含まれていても良いコンジュゲート以外の治療上有用な薬剤は、本明細書に開示の方法で当該化合物と同時又は順次に投与することができる。
【0126】
一部の実施形態において、本明細書に開示のコンジュゲートは、非経口的に、特には静脈若しくは皮下で投与される。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、髄腔内投与される。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは筋肉投与される。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、脳室内投与される。一部の実施形態において、前記コンジュゲートは、鼻腔内投与される。非経口投与に好適な医薬組成物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を所期の被投与者の血液と等張とする溶質、又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含むことができる1以上の薬学的に許容される無菌等張性水系若しくは非水系の溶液剤、分散液剤、懸濁液剤若しくは乳濁液剤、又は使用直前に再生して無菌の注射溶液若しくは分散液とすることができる無菌粉剤と組み合わせて1以上のコンジュゲートを含むことができる。本開示の医薬組成物で用いることができる好適な水系及び非水系担体の例には、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどがある。例えば、コーティング材料、例えばレシチンを用いることで、分散液の場合は必要な粒径を維持することで、そして界面活性剤を用いることで、適切な流動性を維持することができる。
【0127】
組成物及び製剤は、所望の場合、有効成分を含む1以上の単位の製剤を含むことができるパック又はディスペンサー機器中で提供することができる。そのパックは例えば、金属若しくはプラスチックホイルを含むことができ、例えばブリスタパックである。そのパック又はディスペンサー機器には、投与説明書を添付することができる。
【0128】
さらに、前記組成物は、カプセル化するか、標的組織部位への送達のための形態で注射することができる。ある種の実施形態において、本発明の組成物は、標的組織部位に1以上のコンジュゲートを送達することができるマトリクスを含むことで、発育中の組織のための、そして身体に至適に再吸収され得る構造を提供することができる。例えば、そのマトリクスは、コンジュゲートの徐放を提供することができる。そのようなマトリクスは、現在他の埋め込み医療用途に使用されている材料で形成されていることができる。
【0129】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生物分解性、機械的特性、美容上の見かけ及び界面特性に基づくものである。当該組成物の特定の用途が、適切な製剤を決めるものとなる。前記組成物の可能なマトリクスは、生物分解性の化学的に定義された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸及びポリ無水物であり得る。他の可能な材料は、生物分解性で生物学的に明確に定義された、例えば骨若しくは皮膚コラーゲンである。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質又は細胞外マトリクス成分からなる。他の可能なマトリクスは、非生物分解性で化学的に定義された、例えば焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、又は他のセラミックである。マトリクスは、上記の種類の材料のいずれかの組み合わせ、例えばポリ乳酸及びヒドロキシアパタイト若しくはコラーゲン及びリン酸三カルシウムからなるものであり得る。バイオセラミックは、組成において、例えばカルシウム-アルミン酸-リン酸において変え、孔径、粒径、粒子形状、及び生物分解性を変えるように処理することができる。
【0130】
ある種の実施形態において、本発明の方法は、例えば、カプセル、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ剤(香味基剤、通常はショ糖及びアカシア又はトラガカントを使用)、粉剤、粒剤の形態で、又は水系若しくは非水系液体中の液剤若しくは懸濁液剤として、又は水中油型若しくは油中水型乳濁液として、又はエリキシル剤若しくはシロップとして、又はトローチ(不活性基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はショ糖若しくはアカシアを使用)として、及び/又は洗口液などとして経口投与することができ、それぞれが所定量の有効成分としての薬剤を含む。薬剤は、ボラス、舐剤又はペーストとして投与することもできる。
【0131】
経口投与用の固体製剤(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉剤、粒剤など)においては、1以上の本発明の治療化合物を、1以上の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム、及び/又は次のもののいずれか:(1)充填剤若しくは増量剤、例えばデンプン類、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシア;(3)保湿剤、例えばグリセリン;(4)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;(7)湿展剤、例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート;(8)吸収剤、例えばカオリン及びベントナイトクレー;(9)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物;及び(10)着色剤と混合することができる。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、医薬組成物は、緩衝化剤を含むこともできる。同様の種類の固体組成物を、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール類などの賦形剤を用いる軟及び硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることもできる。
【0132】
経口投与用の液体製剤には、薬学的に許容される乳濁液、マイクロエマルション、液剤、懸濁液剤、シロップ及びエリキシル剤などがある。有効成分に加えて、液体製剤は、当業界で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水その他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、オイル類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール類及びソルビタンの脂肪酸エステル及びこれらの混合物を含むことができる。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿展剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、及び保存剤などの補助剤を含むこともできる。
【0133】
活性化合物に加えて、懸濁液は、エトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、及びこれらの混合物などの懸濁剤を含むことができる。
【0134】
本発明の組成物は、保存剤、湿展剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含むこともできる。微生物の作用の防止は、各種抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含ませることで確保することができる。等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを組成物に含ませることも望ましい可能性がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることで、注射医薬製剤の長期吸収をもたらすことができる。
【0135】
投与法(用量レジメン)は、本発明の主題のコンジュゲートの作用を変える各種要素を考慮する担当医により決定される、と理解される。各種要素としては、患者の年齢、性別及び食事、疾患重度、投与時刻、及び他の臨床要素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。任意に、再生で用いられるマトリクスの種類及び組成物中の化合物の種類に応じて用量を変えることができる。最終組成物への他の公知の成長因子の添加も、用量に影響し得る。骨の増殖及び/又は修復の定期的評価、例えばX線測定(DEXAなど)、組織形態計測及びテトラサイクリン標識によって進行をモニタリングすることができる。
【0136】
コンジュゲートの別の目指すべき送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、及び水中油型乳濁液などの脂質に基づく系、ミセル及びリポソームなどがある。一部の実施形態において、本発明のコロイド系はリポソームである。リポソームは、イン・ビトロで及びイン・ビボで送達媒体として有用である人工的膜媒体である。リポソームの組成は通常、通常はステロイド、特にはコレステロールと組み合わせたリン脂質の組み合わせである。他のリン脂質又は他の脂質を使用することもできる。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度及び二価カチオンの存在によって決まる。
【0137】
リポソーム製造で有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド類、及びガングリオシド類が挙げられる。例示的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリンなどがある。リポソームの標的化は、例えば、臓器特異性、細胞特異性、及びオルガネラ特異性に基づいても可能であり、当業界で公知である。
【0138】
本開示は、pHを調節するための酸及び塩基;並びにpHを狭い範囲内に維持するための緩衝剤を加えるように変えることができる製剤を提供する。
【0139】
(実施例)
実験
本発明について説明すると、下記の実施例を参照することで理解が容易になるが、これらの実施例は、本発明のある種の実施形態を説明することを目的としたものであるに過ぎず、本発明に限定を加えるものではない。
【0140】
実施例1:BDBの生成
化合物1は、チオフラビンTのカルボン酸誘導体である。これは、cp33ペプチドの誘導体である
図1に示したビオチニル化合成環状ペプチドに末端残基として付加される(Bonetto S et al. FASEBJ. 2009;23(2):575-85)。得られるコンジュゲートは、下記で提供の実施例中で「BDB]と称される。
【0141】
実施例2:BDBのアミロイドへの結合の測定
BDBの各種アミロイドタンパク質への結合を、蛍光分析アッセイを用いてイン・ビトロで評価した。結果を
図2にまとめてある。
【0142】
アミロイドタンパク質(雌鶏リゾチーム(hLys)、ヒト全長アルファシヌクレイン、及びヒトタウP301S)を、蛍光分析アッセイでの使用のために個々に製造した。hLys(Sigma)を、濃度1.45mg/mLで136.8mM NaCl、2.68mM KCl、0.01%重量/体積NaN3、pH2に溶かし、オービタルシェーカー中150rpmで55℃にて24時間にわたりインキュベートした。ヒト全長アルファシヌクレイン(Alexotech)を濃度2.2mg/mLで150mM NaCl、1%体積/体積triton-x100/PBSに溶かし、オービタルシェーカー中250rpmで37℃にて72時間にわたりインキュベートした。ヒトタウP301Sを4mg/mLヘパリン(Sigma)/PBS、30mM 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(pH7.2)とともに37℃で72時間にわたり8mg/mLでインキュベートした。その溶液を1%体積/体積サルコシル(Sigma)を含有する9倍体積のPBSと混合し、室温で1時間揺動状態とした。4℃で1時間超遠心することで不溶タウをペレット化し、ペレットをPBS中に再懸濁させ、20秒間にわたって3回100Wで超音波処理した(Hielscher UP200St超音波処理装置)。
【0143】
BDBのアミロイドへの結合を、蛍光分析アッセイを用いて検出した。アミロイド結合を、3種類の蛍光レポーター溶液(30μM BDB、cp33ペプチド(Bonetto S et al. FASEB J.2009;23(2):575-85)又はチオフラビンT(ThT)(Sigma)/PBS溶液)のうちの一つを用いて検出した。アミロイド懸濁液(30μMタウ又はリゾチーム又は150μMα-シヌクレイン)1μLを、黒色384ウェルポリスチレンプレート(Greiner Bio-one)中の3種類のレポーター溶液のうちの一つ19μLと混合した。Envisionプレートリーダーを、450nmで励起し、460~680nmの範囲内で発光を測定するように設定した。レポーター溶液の相当する蛍光シグナルを、実験データから減算した。
図2に示したように、BDB及びThtは、アミロイドタンパク質の存在下で蛍光を増加させた。化合物1と結合していないcp33ペプチドは、アミロイド存在下で蛍光シグナルを示さなかった。
【0144】
実施例3:BDBの活性化食細胞への結合の測定
BDBの活性化食細胞への結合アフィニティを求めるため、活性化及び非活性化U937細胞又はマウス初代マクロファージを、BDB、ビオチニル化ヒトIgG1又はPBSの存在下に再懸濁させた。次に、細胞をAF488-ストレプトアビジンコンジュゲート、APC-Cy7デッド/ライブ染色剤、又はデッド/ライブ染色剤のみを用いて染色し、蛍光活性化細胞分類(FACS)を用いて測定した。
【0145】
具体的には、U937細胞を、100μg/mLヒトIFNγ(Thermo Fisher Scientific)の非存在下又は存在下に48時間にわたって、RPMI 1640+2mM グルタミン+10%体積/体積ウシ胎仔血清(FCS)中で培養した。マウス初代マクロファージを、100μg/mL LPS(Sigma)の非存在下又は存在下で48時間培養した。5×10
5細胞の小分けサンプルを300gで3分間遠心し、10μM BDB、1μMビオチニル化ヒトIgG1又はPBS 50μL中で再懸濁させた。サンプルを4℃で1時間インキュベートし、次に100gで3分間遠心した。細胞を、APC-Cy7デッド/ライブ染色剤(Thermo Fisher Scientific、1:2000/PBS)又はデッド/ライブ染色剤のみを含むAF488-ストレプトアビジンコンジュゲート(Thermo Fisher Scientific、1:500/PBS) 50μL中に再懸濁させた。サンプルを4℃で30分間インキュベートし、次に100gで3分間遠心した。サンプルを冷PBS 200μLで洗浄し、FACS Canto IIを用いる分析のためにPBS 250μL中に再懸濁させ、条件当たり10
4の事象を記録した。FlowJoソフトウェアを用い、前方及び側方散乱プロット(FSC対SSC)を用いて細胞を視覚化し、それらのライブ/デッド染色に従って生存細胞を通した。AF488シグナルに関して陽性の生存細胞のパーセントを各条件について確認し、プロットした。その実験を3回繰り返し、結果を平均(±SD)として表している。一元配置ANOVAを用いて、条件間の差の有意性を推算した(**P<0.01、****P<0.0001)。
図3に示したように、IFNγ(IFNg)で処理したU937細胞又はLPSで処理したマウス初代マクロファージは、BDBの結合強化を示した。これらの結果は、増加したFc受容体の表面発現へのBDB結合と一致している。IgG1は、活性化状況とは無関係に、高アフィニティで複数の受容体に結合し、細胞を標識する。
【0146】
実施例4:IFNg刺激U937細胞へのBDB及びIgG1結合の力価測定
BDB及びIgG1のIFNγ刺激U937細胞への結合を、次の方法を用いて測定した。U937細胞を、100μg/mLヒトIFNγの存在下に、48時間にわたりRPMI 1640+2mM グルタミン+10%体積/体積FCS中で培養した。5×105 U937細胞の小分けサンプルを300gで3分間遠心し、それぞれ0.01~5μM又は0.01~1μMの範囲の濃度のBDB若しくはビオチニル化IgG1 50μL中で再懸濁させた。染色及びFACS解析を、上記の方法に従って行った。
【0147】
図4は、BDB濃度が上昇するに連れて、80%ものIFNg活性化U937細胞が結合したことを示している。最大半量結合は、約200nM BDBで認められた。IgG1は、同じ条件下で全ての細胞に結合した。
【0148】
実施例5:未標識ヒトIgG1を用いるFc-受容体へのBDB及びcp33ペプチドの結合の競争
ヒトIgG1及びBDB又はcp33ペプチド間の競争アッセイを行って、BDB及びcp33ペプチドのFc受容体への特異的結合を測定した。具体的には、U937細胞を100μg/mLヒトIFNγの存在下に48時間にわたりRPMI 1640+2mM グルタミン+10%体積/体積FCS中で培養した。5×105細胞の小分けサンプルを300gで3分間遠心し、0.001~5μMの範囲の濃度での対照モノクローナルヒトIgG1(Nip228、MedImmune Ltd)の存在下若しくは非存在下で、1μM BDB又はcp33 50μL中に再懸濁させた。染色及びFACS解析を、上記の方法に従って行った。
【0149】
図5は、ヒトIgG1濃度が約10nMを超えて上昇するに連れて、BDB及びcp33ペプチドの両方がIFGγ活性化U937細胞への結合から外れることを示している。この競争は、Fc受容体へのBDB及びcp33ペプチドの結合と一致している。
【0150】
実施例6:BDB及びアミロイドのU937細胞の表面への共局在化の実証
ヒトマクロファージ細胞系であるIFNγ活性化U937細胞を、Alexa Fluor(商標名)647標識hLysアミロイドの存在下若しくは非存在下でBDB、cp33ペプチド又は媒体とともにインキュベートして、IFNγ活性化U937細胞が、媒体と比較して、BDB又はcp33ペプチドの存在下でアミロイドの結合を増加させたか否かを確認した。
【0151】
具体的には、タンパク質標識後にPBSで溶液を500μLとし、サンプルを20800で40分間遠心するという変更を行って製造者の説明書に従ってAlexa Fluor(商標名)647 Microscaleタンパク質標識キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、蛍光色素alexa647でhLysを標識した。上清を廃棄し、ペレットをPBSで洗浄し、PBS 500μLに再懸濁させ、遠心を繰り返した。最終ペレットを、PBS 100μLに再懸濁させた。
【0152】
U937細胞を100μg/mLヒトIFNγの存在下に、48時間にわたりRPMI 1640+2mM グルタミン+10%体積/体積FCS中で培養した。5×105細胞の小分けサンプルを300gで3分間遠心し、1μMのBDB若しくはcp33 50μL中で再懸濁させ、1又は0.1μM AF647-hLyzとともにインキュベートした。染色及びFACS解析を前記のように行ったが、この場合は、AF488-ストレプトアビジン及びAF647h-Lyzの両方に関して陽性の生存細胞のパーセントを報告した。
【0153】
図6は、BDB、cp33ペプチド、又は媒体対照で処理したIFNγ活性化U937細胞の表面へのアミロイドの局在化を比較する図である。BDB及びcp33ペプチドの両方とも、アミロイドが存在するか否かに関わらず細胞結合を示す(上の四つのパネルにおけるy軸上での移動)。cp33ペプチドの存在下での1.0%又は媒体で処理した場合での0.4%と比較して、IFNγ活性化U937細胞の最大14.4%が、アミロイドに結合していることが認められる。これらの結果は、BDBがアミロイドのIFGγ活性化U937細胞への結合を促進することを示している。
【0154】
実施例7:標識アミロイドの食作用の測定
マクロファージ分化U937細胞を、pHrodo-red標識アミロイド、BDB、cp33ペプチド又は対照と共インキュベートすることで、各種条件下で貪食されたアミロイドの量を求めた。hLysアミロイド線維を上記の方法に従って形成し、微量遠心管中20000×gでの遠心を3回行い、上清を廃棄し、アミロイドペレットをPBSに再懸濁させることで、取り込まれなかった標識を標識アミロイドから除去した以外は、製造者の説明書に従って、pHrodo Red Microscale Labeling Kit(ThermoFisher)で標識した。U937細胞を、100μg/mL M-CSF(Peprotech)、1μg/mL PMA(Sigma)及び100μg/mL IFNγ(Thermo Fisher Scientific)の存在下に4日間にわたってマクロファージに分化させた。8×105細胞/条件を300gで3分間遠心し、1μM BDB、1μM cp33、0.1μM標識アミロイド含有1μM BDB、0.1μM標識アミロイド含有1μM cp33、0.1μM標識アミロイド又はpHrodo Red標識大腸菌(E. Coli)懸濁液(Thermo Fisher Scientific)の1:100PBS希釈液50μLに再懸濁させた。細胞を4℃で1時間インキュベートし、100gで3分間遠心し、100μg/mL M-CSF、1μg/mL PMA及び100μg/mL IFNgを含むRPMI培地300μLに再懸濁させた。各条件について、細胞懸濁液100μLを、透明底の黒色96ウェルプレート(Greiner Bio-one)のウェルに蒔いた。
【0155】
プレートをIncuCyte装置に入れ、設定を、位相差及び赤色蛍光チャンネルの両方で1時間に1回48時間にわたって走査するようプログラムした。次に、各時点についての生データを、赤色チャンネル処理アルゴリズムを有するIncuCyte Zoomソフトウェアを用いて処理した。Total Red Object Area(μm2/ウェル)の測定基準を用いて、細胞内のpHrodo赤色蛍光の出現を定量した。
【0156】
図7は、BDBがマクロファージ分化U937細胞によるアミロイドの食作用を促進することを示している。赤色(y軸)は貪食されたアミロイドを報告している;このシグナルは、cp33-アミロイド(3)又はアミロイド単独(2)で処理した細胞と比較して、BDB-アミロイド(1)で処理した細胞において、このシグナルはより急速に増加し、より大きい増殖を達成した。pHrodo-red大腸菌(E. coli)を陽性対照(4)として加えた。アミロイドの非存在下では、BDB(5)及びcp33ペプチド(6)はシグナルを発生させなかった。
【0157】
別の実験において、いくつかの異なるBDB構築物をそれぞれ、上記の同じ食作用アッセイで調べた。この実験では、BDB構築物は、下記化合物IIIの構造を有していた。
【化17】
式中、R
1はビオチンであり(水素によって置き換わっていても良い);R
2は、
a)色素単独(
【化18】
;化合物IV);
b)β-アラニンリンカーを有する色素(
【化19】
;化合物V);
c)6-アミノ-4-オキサヘキサノエートリンカーを有する色素(
【化20】
;化合物VI);又は
d)9-アミノ-4,7-ジオキサノナノエートリンカーを有する色素(
【化21】
【0158】
;化合物VII)であった。この実験において、驚くべきことに、より剛性のβ-アラニンリンカーを有するBDBが、リンカーを持たないBDBと、又はより長い6-アミノ-4-オキサヘキサノエート若しくは9-アミノ-4,7-ジオキサノナノエートリンカーを有するBDBと比較して、2倍より大きい割合のアミロイド食作用を誘発したことが認められた(
図8)。
【0159】
実施例8:アミロイド結合部分とFcR結合部分の間にリンカーを加えることの構造的効果
空間充填モデルを開発して、アミロイド結合部分とFcR結合部分の間にリンカーを加えることの構造的効果を求めた。具体的には、
図9は、リンカーを使用しない、β-Alaリンカーを使用する、短PEGリンカーを使用する、及び長PEGリンカー(FMOC誘導体化β-アラニン;9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸;及び6-アミノ-4-オキサオ(oxao)ヘキサン酸)を使用するモデル間の比較を示すものである。
【0160】
本開示は以下の配列情報を包含する。
SEQUENCE LISTING
<110> MEDIMMUNE LIMITED
<120> CONJUGATES FOR TARGETING AND CLEARING AGGREGATES
<130> PA24-171
<140>
<141> 2019-04-29
<150> US 62/664,345
<151> 2018-04-30
<160> 22
<170> PatentIn version 3.5
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20 25 30
Leu Leu Leu Cys Asn Val Gln Ala
35 40
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Lys Lys Lys Lys Lys
1 5
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Fc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争するペプチド;及びb)分子凝集体を標的とする標的化部分を含むコンジュゲート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0159
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0159】
実施例8:アミロイド結合部分とFcR結合部分の間にリンカーを加えることの構造的効果
空間充填モデルを開発して、アミロイド結合部分とFcR結合部分の間にリンカーを加えることの構造的効果を求めた。具体的には、
図9は、リンカーを使用しない、β-Alaリンカーを使用する、短PEGリンカーを使用する、及び長PEGリンカー(FMOC誘導体化β-アラニン;9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸;及び6-アミノ-4-オキサオ(oxao)ヘキサン酸)を使用するモデル間の比較を示すものである。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] a)Fc受容体への結合に関してIgGのFc断片と競争するペプチド;及びb)分子凝集体を標的とする標的化部分を含むコンジュゲート。
[2] 前記ペプチドがFcエフェクター機能を活性化する、実施形態1に記載のコンジュゲート。
[3] 前記Fc受容体が、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIからなる群から選択される、実施形態1又は2に記載のコンジュゲート。
[4] 前記Fc受容体がヒト受容体である、実施形態1~3のいずれかに記載のコンジュゲート。
[5] 前記Fc受容体がヒトFcγRI(hFcγRI)である、実施形態1~4のいずれかに記載のコンジュゲート。
[6] 前記Fcエフェクター機能が食作用である、実施形態2に記載のコンジュゲート。[7] 前記ペプチドがIgG3又はIgG1抗体のFc部分と競争する、実施形態1~6のいずれかに記載のコンジュゲート。
[8] 前記ペプチドがIgG1の前記Fc部分と競争する、実施形態1~7のいずれかに記載のコンジュゲート。
[9] 前記ペプチドがLLGのトリペプチドモチーフを含む、実施形態1~8のいずれかに記載のコンジュゲート。
[10] 前記ペプチドがモチーフσPのダイマーを含み、σが疎水性残基を表す、実施形態1~9のいずれかに記載のコンジュゲート。
[11] 前記ペプチドが前記ペプチドのN末端にトレオニンを含む、実施形態1~10のいずれかに記載のコンジュゲート。
[12] 前記ペプチドが前記ペプチドのC末端にグルタミン酸を含む、実施形態1~11のいずれかに記載のコンジュゲート。
[13] 前記ペプチドがTX2CXXσPXLLGCφXE(配列番号1)のアミノ酸配列を含み;Xがアミノ酸であり、σが疎水性残基であり、φが酸性アミノ酸である、実施形態1~12のいずれかに記載のコンジュゲート。
[14] 前記ペプチドがhFcγRIに特異的に結合し、hFcγRIIやhFcγRIIIとの交差反応性を示さない、実施形態1~13のいずれかに記載のコンジュゲート。[15] 前記ペプチドがAQVNSCLLLPNLLGC(配列番号2)のアミノ酸配列を含む、実施形態1~14のいずれかに記載のコンジュゲート。
[16] 前記ペプチドがAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、実施形態1~14のいずれかに記載のコンジュゲート。
[17] 前記ペプチド中の1以上のアミノ酸残基がメチル化されている、実施形態1~16のいずれかに記載のコンジュゲート。
[18] 配列番号2又は3の位置11に相当する前記アミノ酸位置での前記アスパラギン残基がメチル化されている、実施形態15~17のいずれかに記載のコンジュゲート。
[19] 配列番号2又は3の位置13に相当する前記アミノ酸位置の前記ロイシン残基がメチル化されている、実施形態15~18のいずれかに記載のコンジュゲート。
[20] 互いに連結されて、ダイマー若しくはオリゴマーペプチドを形成する、実施形態1~19のいずれかの記載のコンジュゲートの2以上を含むコンジュゲート。
[21] 前記ペプチドが2個のhFcγRIに結合し、Fcエフェクター機能を活性化する、実施形態20に記載のコンジュゲート。
[22] KKKKKリンカー(配列番号22)によって連結された2個のFc模倣ペプチドを含む、実施形態20又は21に記載のコンジュゲート。
[23] 前記コンジュゲートが免疫細胞を前記分子凝集体に動員することができる、実施形態1~22のいずれかに記載のコンジュゲート。
[24] 前記免疫細胞が単球由来細胞である、実施形態1~23のいずれかに記載のコンジュゲート。
[25] 前記免疫細胞がマクロファージである、実施形態24に記載のコンジュゲート。[26] 前記免疫細胞が単球である、実施形態24に記載のコンジュゲート。
[27] 前記免疫細胞が小グリア細胞である、実施形態24に記載のコンジュゲート。
[28] 前記コンジュゲートが前記免疫細胞に結合し、前記免疫細胞の活性化を促進する、実施形態24~27のいずれかに記載のコンジュゲート。
[29] 前記コンジュゲートが前記分子凝集体の少なくとも一部の食作用を促進する、実施形態1~28のいずれかに記載のコンジュゲート。
[30] 前記標的化部分がタンパク質凝集体を標的とする、実施形態1~29のいずれかに記載のコンジュゲート。
[31] 前記タンパク質凝集体が、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ
2
-ミクログロビン、又は凝集体形成性断片若しくはそれの誘導体のいずれか一つの凝集体を含む、実施形態30に記載のコンジュゲート。
[32] 前記標的化部分が脂質凝集体を標的とする、実施形態1~29のいずれかに記載のコンジュゲート。
[33] 前記脂質凝集体がコレステロール凝集体である、実施形態32に記載のコンジュゲート。
[34] 前記標的化部分が多糖類凝集体を標的とする、実施形態1~29のいずれかに記載のコンジュゲート。
[35] 前記標的化部分がグリコーゲン凝集体を標的とする、実施形態34に記載のコンジュゲート。
[36] 前記標的化部分が小分子である、実施形態1~35のいずれかに記載のコンジュゲート。
[37] 前記標的化部分がペプチドである、実施形態1~35のいずれかに記載のコンジュゲート。
[38] 前記標的化部分が核酸である、実施形態1~35のいずれかに記載のコンジュゲート。
[39] 前記標的化部分が色素である、実施形態1~35のいずれかに記載のコンジュゲート。
[40] 前記色素がアミロイドに結合する、実施形態39に記載のコンジュゲート。 [41] 前記色素が、チオフラビン、五量体ホルミルチオフェン酢酸(pFTAA)、七量体ホルミルチオフェン酢酸(hFTAA)、コンゴレッド、クリスタル・バイオレット、1-アミノ-8-ナフタレンスルホネート(ANS)、4-(ジシアノビニル)-ジュロリジン(DCVJ)、アミノベンズアントロン、メトキシXO4、チアジンレッド、ピッツバーグB、及びこれらのアミロイド結合誘導体からなる群から選択される、実施形態39に記載のコンジュゲート。
[42] 前記チオフラビンがチオフラビンT又はそれのアミロイド結合誘導体である、実施形態40に記載のコンジュゲート。
[43] 前記アミロイドが、次のタンパク質:α-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、TDP-43、SOD1、FUS、TDP-43、プリオンタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、フィブリノゲン、コラーゲン、膵島アミロイドポリペプチド、リゾチーム、カルシトニン、血清アミロイドAタンパク質、LECT2、アミリン、ゲルゾリン、フィブリノゲンA、プロラクチン、ケラトエピテリン、及びβ
2
-ミクログロビンのうちの1以上を含む、実施形態39~42のいずれかに記載のコンジュゲート。 [44] 前記アミロイドがリゾチームを含む、実施形態43に記載のコンジュゲート。
[45] 前記色素がコレステロールに結合する、実施形態39に記載のコンジュゲート。[46] 前記色素がフィリピン又はそれのコレステロール結合誘導体である、実施形態45に記載のコンジュゲート。
[47] 前記色素がコラーゲンに結合する、実施形態39に記載のコンジュゲート。 [48] 前記色素がシリウスレッド、Col-F、オレゴン・グリーン488、ピクロシリウスレッド、ライトグリーンSFイエロー、ファストグリーンFCF、メチルブルー、ウォーターブルー、アニリンブルー、及びこれらのコラーゲン結合誘導体である、実施形態47に記載のコンジュゲート。
[49] 前記色素が多糖類凝集体に結合する、実施形態39に記載のコンジュゲート。
[50] 前記色素がグリコーゲン凝集体に結合する、実施形態49に記載のコンジュゲート。
[51] 前記色素が、カルミン、過ヨウ素酸、アルシアンブルー、及びジメチルメチレンブルーからなる群から選択される、実施形態49又は50に記載のコンジュゲート。 [52] 前記色素がヌクレオチド凝集体に結合する、実施形態39に記載のコンジュゲート。
[53] 前記色素がRNA凝集体に結合する、実施形態52に記載のコンジュゲート。
[54] 前記色素がDNA凝集体に結合する、実施形態52に記載のコンジュゲート。
[55] 前記標的化部分が前記ペプチドへの結合を促進するよう修飾されている、実施形態1~54のいずれかに記載のコンジュゲート。
[56] 前記標的化部分がカルボキシル基を含むよう修飾されている、実施形態55に記載のコンジュゲート。
[57] 前記標的化部分の前記カルボキシル基が、前記ペプチドの前記アミノ末端に結合している、実施形態56に記載のコンジュゲート。
[58] 前記標的化部分がアミノ基を含むよう修飾されている、実施形態55に記載のコンジュゲート。
[59] 前記標的化部分の前記アミノ基が、前記ペプチドの前記カルボキシ末端に結合している、実施形態58に記載のコンジュゲート。
[60] 前記標的化部分がリンカーによって前記ペプチドに結合している、実施形態1~59のいずれかに記載のコンジュゲート。
[61] 前記リンカーが、非開裂性リンカー、ヒドラゾンリンカー、チオエーテルリンカー、ジスルフィドリンカー、ペプチドリンカー及びβ-グルクロニドリンカーからなる群から選択される、実施形態60に記載のコンジュゲート。
[62] 前記リンカーが下記化合物IIの構造を含む、実施形態60に記載のコンジュゲート。
[化1]
[式中、nは1~30であり、mは0、1、2、3、4若しくは5である。 ]
[63] nが1~25、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~4、1~2又は1である、実施形態62に記載のコンジュゲート。
[64] nが2である、実施形態62に記載のコンジュゲート。
[65] mが0である、実施形態62~64のいずれかに記載のコンジュゲート。
[66] 前記リンカーがβ-アラニンリンカー、短ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、又は長PEGリンカーである、実施形態60に記載のコンジュゲート。
[67] 前記リンカーがβ-アラニンリンカーである、実施形態60に記載のコンジュゲート。
[68] 前記コンジュゲートが別の異種部分にさらに結合している、実施形態1~67のいずれかに記載のコンジュゲート。
[69] 前記異種部分がビオチンである、実施形態68に記載のコンジュゲート。
[70] 前記コンジュゲートがチオフラビンT又はそれの誘導体に融合したAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、実施形態1~31のいずれかに記載のコンジュゲート。
[71] 前記コンジュゲートが下記化合物Iに融合したAQVNSCLLLPNLLGCGDDK(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、実施形態70に記載のコンジュゲート。
[化2]
[72] 前記コンジュゲートが下記化合物IIIの構造を含む、実施形態1~71のいずれかに記載のコンジュゲート。
[化3]
[式中、
R
1
はビオチン又は水素であり;
R
2
は、
a)化合物IV(
[化4]
);
b)化合物V(
[化5]
);
c)化合物VI(
[化6]
);又は
d)化合物VII(
[化7]
)
を含む。 ]
[73] R
1
がビオチンである、実施形態72に記載のコンジュゲート。
[74] R
1
が水素である、実施形態72に記載のコンジュゲート。
[75] R
2
が化合物V(
[化8]
)を含む、実施形態72~74のいずれかに記載のコンジュゲート。
[76] 実施形態1~75のコンジュゲートのいずれか1以上を投与することで、アミロイドーシスを治療する方法。
[77] 前記アミロイドーシスが、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、アルツハイマー病、LECT2アミロイドーシス、軟膜アミロイドーシス、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発性神経障害、血液透析関連アミロイドーシス、2型糖尿病、クロイツフェルト-ヤコブ病、ルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、フィンランド型アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシスプロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳アミロイド血管症、前頭側頭型認知症、甲状腺髄様癌、及びB2Mアミロイドーシスからなる群から選択される、実施形態76に記載の方法。
[78] 前記アミロイドーシスが家族性アミロイドーシスである、実施形態76又は77に記載の方法。
[79] 前記アミロイドーシスが全身性アミロイドーシスである、実施形態78に記載の方法。
[80] 実施形態1~75のコンジュゲートのいずれか一つによって細胞若しくは組織を治療することにより、細胞若しくは組織中の凝集体のレベルを低下させる方法。
[81] 実施形態1~75のいずれかに記載のコンジュゲート及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【外国語明細書】