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特開2024-99573付加製造のための複数材料および印刷パラメータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099573
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】付加製造のための複数材料および印刷パラメータ
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/55 20210101AFI20240718BHJP
   B22F 12/49 20210101ALI20240718BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240718BHJP
   B22F 12/52 20210101ALI20240718BHJP
   B22F 12/58 20210101ALI20240718BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240718BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240718BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20240718BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20240718BHJP
【FI】
B22F12/55
B22F12/49
B22F10/28
B22F12/52
B22F12/58
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/366
B22F10/37
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024062285
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2022140278の分割
【原出願日】2018-04-10
(31)【優先権主張番号】15/582,485
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516093851
【氏名又は名称】ダイバージェント テクノロジーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Divergent Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】19601 Hamilton Avenue,Los Angeles,California 90502 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】テンホウテン ブロック ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】バックネル ジョン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】エル ナガ エハブ ナギ
(72)【発明者】
【氏名】ツィンガー ケヴィン ロバート
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】付加製造システムにおいて、複数材料のためのおよび印刷パラメータを変化させるためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】一例において、第1の粉末材料および第1の粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤが堆積され、それによって、第1の粉末材料の少なくとも第1の部分は第2の材料のない第1のエリアにある。エネルギービームが発生させられ、複数の場所でレイヤを融合させるためにあてられる。別の例において、粉末材料のレイヤがパラメータの第1のサブセットに基づいて堆積される。エネルギービームがパラメータの第2のサブセットに基づいて発生させられ、パラメータの第3のサブセットに基づいて複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギーをあてられる。パラメータの少なくとも1つがスライス印刷動作の間異なる値を取るように設定される。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料および前記粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤを堆積させるデポジタであって、前記粉末材料の少なくとも一部は前記第2の材料のないエリアにある、デポジタと、
エネルギービームを発生させるエネルギービーム源と、
複数の場所で前記レイヤを融合させるために前記エネルギービームをあてる偏向器と
を備える、粉末床融合のための装置。
【請求項2】
前記第2の材料が第2の粉末材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記デポジタが前記場所のうちの1つの場所で前記粉末材料の第2の部分および前記第2の粉末材料の部分を堆積させるようにさらに構成され、前記偏向器が前記場所のうちの前記1つの場所で前記粉末材料および前記第2の粉末材料をともに融合させるために前記エネルギービームをあてるように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記粉末材料が第1の金属を含み、前記第2の粉末材料が第2の金属を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記粉末材料が第1のサイズ分布を有する粉末を含み、前記第2の粉末材料が前記第1のサイズ分布とは異なる第2のサイズ分布を有する粉末を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記デポジタが、前記第2の材料の少なくとも一部が、前記粉末材料のない第2のエリアにあるように前記第2の材料を堆積させるようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記デポジタが、前記粉末材料を前記第2のエリアに堆積させるようにさらに構成され、前記第2のエリアで前記第2の材料の前記一部を堆積させることに先立って、前記デポジタが前記粉末材料を前記第2のエリアから除去する粉末リムーバを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記粉末リムーバが前記第2のエリアから前記粉末材料を吸引する真空を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記デポジタが前記第2の材料を堆積させる振動子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記デポジタが前記第2の材料を堆積させるブロアーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記デポジタが前記第2の材料を堆積させる可動アームを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
複数のパラメータの第1のサブセットに基づいて粉末材料を含むレイヤを堆積させるデポジタと、
前記パラメータの第2のサブセットに基づいてエネルギービームを発生させるエネルギービーム源と、
前記パラメータの第3のサブセットに基づいて複数の場所で前記レイヤを融合させるために前記エネルギービームをあてる偏向器と、
ある期間の間第1の時間において第1の値を取るように、また前記期間の間において前記第1の値とは異なる第2の値を取るように、前記パラメータのうちの少なくとも1つを設定するコントローラであって、前記期間は粉末の前記レイヤを前記堆積させることを始めたときに開始し、前記場所で前記レイヤを前記融合させることが終わったときに終了する、コントローラと
を備える、粉末床融合のための装置。
【請求項13】
前記パラメータが走査速度パラメータを含み、前記偏向器が前記場所のうちの第1の場所で第1の走査速度で前記エネルギービームを走査し、前記場所のうちの第2の場所で前記第1の走査速度とは異なる第2の走査速度で前記エネルギービームを走査するように、前記コントローラが前記走査速度パラメータの前記第1および前記第2の値を設定する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記偏向器が、前記場所のうちの前記第1および前記第2の場所を含むエリアで前記粉末材料を融合させるために前記エネルギービームをあてるようにさらに構成され、前記エリアが外側縁部を有し、前記場所のうちの前記第1の場所が前記場所のうちの前記第2の場所よりも前記外側縁部に近く、また前記第1の走査速度は前記第2の走査速度よりも低速である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記デポジタが、前記粉末材料の少なくとも一部が、第2の材料のないエリアにあるように前記粉末材料とは異なる前記第2の材料を堆積させるようにさらに構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記パラメータが印加ビーム出力パラメータを含み、前記エネルギービーム源が前記期間の間の第1の時間に第1の出力で前記エネルギービームを発生させるように、また前記期間の間の第2の時間に第2の出力で前記エネルギービームを発生させるように、前記コントローラが前記印加ビーム出力パラメータの前記第1および前記第2の値を設定し、前記第1の出力が前記第2の出力とは異なる、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記デポジタが、前記粉末材料の少なくとも一部が、第2の材料のないエリアにあるように前記粉末材料とは異なる前記第2の材料を堆積させるようにさらに構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記偏向器が前記場所のうちの第1の場所で第1の走査速度で前記エネルギービームを走査し、前記場所のうちの第2の場所で前記第1の走査速度とは異なる第2の走査速度で前記エネルギービームを走査するようにさらに構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記デポジタが、前記粉末材料の少なくとも一部が、第2の材料のないエリアにあるように前記粉末材料とは異なる前記第2の材料を堆積させるようにさらに構成される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
粉末材料および前記粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤを堆積させるステップであって、前記粉末材料の少なくとも一部は前記第2の材料のないエリアにある、堆積させるステップと、
エネルギービームを発生させるステップと、
複数の場所で前記レイヤを融合させるために前記エネルギービームをあてるステップと
を含む、粉末床融合のための方法。
【請求項21】
前記第2の材料が第2の粉末材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レイヤを堆積させるステップが、前記場所のうちの1つの場所で前記粉末材料の第2の部分および前記第2の粉末材料の部分を堆積させるステップをさらに含み、前記エネルギービームをあてるステップが前記場所のうちの前記1つの場所で前記粉末材料および第2の粉末材料をともに融合させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記粉末材料が第1の金属を含み、前記第2の粉末材料が第2の金属を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記粉末材料が第1のサイズ分布を有する粉末を含み、前記第2の粉末材料が前記第1のサイズ分布とは異なる第2のサイズ分布を有する粉末を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記レイヤを堆積させるステップが、前記第2の材料の少なくとも一部が、前記粉末材料のない第2のエリアにあるように前記第2の材料を堆積させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記レイヤを堆積させる前記ステップが、前記粉末材料を前記第2のエリアに堆積させるステップをさらに含み、前記方法が前記第2のエリアで前記第2の材料の前記一部を堆積させるステップに先立って、前記粉末材料を前記第2のエリアから除去するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記粉末材料を除去するステップが、前記第2のエリアから前記粉末材料を吸引するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の材料を堆積させるステップが、前記第2の粉末材料を振動させるステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の材料を堆積させるステップが、前記第2の材料を吹き付けるステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の材料を堆積させるステップが、前記第2の材料を堆積させるための可動アームを制御するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
複数のパラメータの第1のサブセットに基づいて粉末材料を含むレイヤを堆積させるステップと、
前記パラメータの第2のサブセットに基づいてエネルギービームを発生させるステップと、
前記パラメータの第3のサブセットに基づいて複数の場所で前記レイヤを融合させるために前記エネルギービームをあてるステップと、
ある期間の間第1の時間において第1の値を取るように、また前記期間の間において前記第1の値とは異なる第2の値を取るように、前記パラメータのうちの少なくとも1つを設定するステップであって、前記期間は粉末の前記レイヤを前記堆積させることを始めたときに開始し、前記場所で前記レイヤを前記融合させることが終わったときに終了する、設定するステップと
を含む、粉末床融合のための方法。
【請求項32】
前記パラメータが走査速度パラメータを含み、前記パラメータのうちの少なくとも1つを設定するステップが、前記エネルギービームをあてるステップが前記場所のうちの第1の場所で第1の走査速度で前記エネルギービームを走査するステップと、前記場所のうちの第2の場所で前記第1の走査速度とは異なる第2の走査速度で前記エネルギービームを走査するステップとを含むように、前記走査速度パラメータの前記第1および前記第2の値を設定するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エネルギービームを走査するステップが、前記場所のうちの前記第1および前記第2の場所を含むエリアで前記粉末材料を融合させるために前記エネルギービームをあてるステップを含み、前記エリアが外側縁部を有し、前記場所のうちの前記第1の場所が前記場所のうちの前記第2の場所よりも前記外側縁部に近く、また前記第1の走査速度は前記第2の走査速度よりも低速である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記レイヤを堆積させるステップが、前記粉末材料の少なくとも一部が、第2の材料のないエリアにあるように前記粉末材料とは異なる前記第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記パラメータが印加ビーム出力パラメータを含み、前記パラメータのうちのうち少なくとも1つを設定するステップが、前記エネルギービームを発生させるステップが前記期間の間の第1の時間に第1の出力で前記エネルギービームを発生させるステップと、前記期間の間の第2の時間に第2の出力で前記エネルギービームを発生させるステップとを含むように、前記印加ビーム出力パラメータの前記第1および前記第2の値を設定するステップを含み、前記第1の出力が前記第2の出力とは異なる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記レイヤを堆積させるステップが、前記粉末材料の少なくとも一部が、第2の材料のないエリアにあるように前記粉末材料とは異なる前記第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エネルギービームを導くステップが、前記場所のうちの第1の場所で第1の走査速度で前記エネルギービームを走査するステップと、前記場所のうちの第2の場所で前記第1の走査速度とは異なる第2の走査速度で前記エネルギービームを走査するステップとを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記レイヤを堆積させるステップが、前記粉末材料の少なくとも一部が、第2の材料のないエリアにあるように前記粉末材料とは異なる前記第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている2017年4月28日に出願した「MULTI-MATERIALS AND PRINT PARAMETERS FOR ADDITIVE MANUFACTURING」と題する米国特許出願第15/582,485号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は一般的に付加製造システム(Additive Manufacturing systems)に関し、より詳細には、付加製造システムにおける複数材料および印刷パラメータに関する。
【背景技術】
【0003】
3Dプリンタシステムとしても説明される付加製造(AM:Additive Manufacturing)システムは、従来の製造プロセスでは作成することが困難または不可能ないくつかの形状を含む、幾何学的に複雑な形状を有する構造体(造形片と称される)を作成することができる。粉末床融合(PBF:Powder-bed fusion)システムなどのAMシステムは、レイヤごとに造形片を作成する。それぞれのレイヤまたは「スライス」は粉末のレイヤを堆積すること、および粉末の部分をエネルギービームに曝すことによって形成される。エネルギービームはレイヤにおける造形片の断面に一致する粉末レイヤのエリアを溶融するためにあてられる。溶融粉末は冷却し、造形片のスライスを形成するように融合する。造形片の次のスライスを形成するためにプロセスを次々と繰り返すことができる。それぞれのレイヤは前のレイヤの上部に堆積される。得られる構造は下から上までスライスごとに組み立てられた造形片である。
【0004】
PBFシステムは、ビーム出力、走査速度、堆積した粉末レイヤ厚などの、様々なシステムパラメータに基づいて造形片のスライスを印刷する。印刷運転の間に、すなわち造形片が完全に印刷された後、様々なパラメータへの調整がなされ得る。例えば、より高いビーム出力が次の造形片を印刷するために使用されてもよい。
【発明の概要】
【0005】
AMシステムにおける、複数材料および印刷パラメータのための装置および方法のいくつかの態様を、以降でより詳しく説明する。
【0006】
様々な態様において、粉末床融合のための装置は、粉末材料および粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤを堆積させるデポジタであって、粉末材料の少なくとも一部は第2の材料のないエリアにある、デポジタと、エネルギービームを発生させるエネルギービーム源と、複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギービームをあてる偏向器とを含むことができる。
【0007】
様々な態様において、粉末床融合のための装置は、パラメータの第1のサブセットに基づいて粉末材料を含むレイヤを堆積させるデポジタと、パラメータの第2のサブセットに基づいてエネルギービームを発生させるエネルギービーム源と、パラメータの第3のサブセットに基づいて複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギービームをあてる偏向器と、ある期間の間第1の時間において第1の値を取るように、またその期間の間において第1の値とは異なる第2の値を取るように、パラメータのうちの少なくとも1つを設定するコントローラであって、期間は粉末のレイヤを堆積させることを始めたときに開始し、その場所でレイヤを融合させることが終わったときに終了する、コントローラとを含むことができる。サブセットは単一のパラメータを含むことができることに留意すべきである。
【0008】
様々な態様において、粉末床融合のための方法は、粉末材料の少なくとも一部は第2の材料のないエリアにあるように、粉末材料および粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤを堆積させることと、エネルギービームを発生させることと、複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギービームをあてることとを含むことができる。
【0009】
様々な態様において、粉末床融合のための方法は、複数のパラメータの第1のサブセットに基づいて粉末材料を含むレイヤを堆積させることと、パラメータの第2のサブセットに基づいてエネルギービームを発生させることと、パラメータの第3のサブセットに基づいて複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギービームをあてることと、ある期間の間第1の時間において第1の値を取るように、またその期間において第1の値とは異なる第2の値を取るように、パラメータのうちの少なくとも1つを設定することであって、期間は粉末のレイヤを堆積させることを始めたときに開始し、その場所でレイヤを融合させることが終わったときに終了する、設定することとを含むことができる。
【0010】
例示としてほんのいくつかの実施形態を示し説明している以下の詳細な説明から、他の態様が当業者にとって容易に明らかとなろう。当業者によって理解されるように、本明細書の概念は、他のおよび異なる実施形態にも可能であり、様々な他の観点においてすべて本開示から逸脱することなく、いくつかの詳細が修正可能である。したがって、図面および詳細な説明は、性質において限定としてではなく例示として見なされるものである。
【0011】
次に、様々な態様が、添付の図面において、限定ではなく例として詳細な説明において提示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】動作の異なる工程の間の、例示のPBFシステムを図示している。
図1B】動作の異なる工程の間の、例示のPBFシステムを図示している。
図1C】動作の異なる工程の間の、例示のPBFシステムを図示している。
図1D】動作の異なる工程の間の、例示のPBFシステムを図示している。
図2】複数材料および印刷パラメータの変形例を含む例示のPBF装置を示している。
図3】複数材料および閉ループ制御を伴う印刷パラメータの変形例を含む別の例示のPBF装置を示している。
図4A】粉末材料を堆積させるのに先立って第2の材料を堆積させることができる、例示の実施形態を示している。
図4B】粉末材料を堆積させるのに先立って第2の材料を堆積させることができる、例示の実施形態を示している。
図4C】粉末材料を堆積させるのに先立って第2の材料を堆積させることができる、例示の実施形態を示している。
図5A】複数の材料を単一レイヤで重なり合うように堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図5B】複数の材料を単一レイヤで重なり合うように堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図5C】複数の材料を単一レイヤで重なり合うように堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図6A】レイヤ内に混合材料エリアを堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図6B】レイヤ内に混合材料エリアを堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図6C】レイヤ内に混合材料エリアを堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図7A】第2の材料を粉末材料の堆積したレイヤ上に堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図7B】第2の材料を粉末材料の堆積したレイヤ上に堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図8A】一体化された堆積システムが粉末材料と第2の材料を交互に堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図8B】一体化された堆積システムが粉末材料と第2の材料を交互に堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図8C】一体化された堆積システムが粉末材料と第2の材料を交互に堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図9A】第2の材料を除去された粉末のエリアに堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図9B】第2の材料を除去された粉末のエリアに堆積させることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図10】はPBFシステムにおいて複数材料の堆積の例示の方法のフローチャートである。
図11A】堆積した粉末材料の上面の高さが変化し得る、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図11B】堆積した粉末材料の上面の高さが変化し得る、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図11C】堆積した粉末材料の上面の高さが変化し得る、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図12】例示のエネルギーアプリケータの詳細を示している。
図13A】たわみ変形を生じ得るビーム走査動作を示している。
図13B】たわみ変形を生じ得るビーム走査動作を示している。
図13C】たわみ変形を生じ得るビーム走査動作を示している。
図14】複数の連続する粉末レイヤで、張り出しエリアにおいて粉末材料を融合することによって作成されたたわみ変形を示している。
図15A】エネルギービームが異なる走査速度で走査されることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図15B】エネルギービームが異なる走査速度で走査されることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図15C】エネルギービームが異なる走査速度で走査されることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図16】例示の走査速度パラメータを示している。
図17A】エネルギーを異なるビーム出力であてることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図17B】エネルギーを異なるビーム出力であてることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図17C】エネルギーを異なるビーム出力であてることができる、PBF装置および方法の例示の実施形態を示している。
図18】例示の印加ビーム出力パラメータを示している。
図19】PBF装置において可変の印刷パラメータでのスライス印刷動作の例示の方法のフローチャートである。
図20】PBF装置において走査速度パラメータの可変の値でのスライス印刷動作の例示の方法のフローチャートである。
図21】PBF装置において印加ビーム出力パラメータの可変の値でのスライス印刷動作の例示の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面と併せて以下で説明される詳細な説明は、本明細書で開示される概念の様々な例示の実施形態の説明を提供するよう意図されており、本開示が実践され得る実施形態だけを表現することは意図されていない。本開示で使用される用語「例示の」は、「例、事例、または図示として機能する」ことを意味しており、必ずしも本開示で提示される他の実施形態より好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。詳細な説明は当業者に概念の範囲をすべて伝達する徹底的かつ完全な開示を提供する目的のための具体的な詳細を含む。しかしながら、本開示はこれらの具体的な詳細なしに実践され得る。いくつかの事例において、本開示にわたって提示される様々な概念を曖昧にすることを避けるために、良く知られている構造および構成要素がブロック図の形態で示され得、または全体的に省略され得る。
【0014】
本開示は粉末床融合(PBF)システムなどのAMシステムにおける複数材料および印刷パラメータを対象としている。現在のPBFシステムにおいて、様々なパラメータへの調整は印刷運転の間に行うことができる。換言すると、造形片を完全に印刷した後、パラメータへの調整を行うことができる。さらには、現在のPBFシステムは均一な材料組成を有する粉末レイヤを堆積させる。例えば、粉末レイヤは単一の粒子サイズの金属粉末を含むことができ、または粉末レイヤは異なる粒子サイズの金属粉末の均一な混合を含むことができるなどである。換言すると、レイヤに堆積した粉末材料は互いに別の領域とは異なっていない。
【0015】
本開示で説明される様々な実施形態において、PBFシステムの1つのパラメータ(または複数のパラメータ)はスライス印刷動作の間異なる時間において異なる値を取ることができる。例えば、エネルギービームの走査速度は粉末レイヤのあるエリアにわたって速いことができ、また粉末レイヤの別のエリアにわたって遅いことができる。別の例において、粉末レイヤの走査の間ビーム出力を変化させることができる。さらに別の例において、レイヤが粉末材料および粉末材料とは異なる第2の材料を含み、粉末材料の少なくとも一部は第2の材料のないエリアにあるように粉末のレイヤを堆積させることができる。スライス印刷動作の間異なる値を取ることができるPBFシステムのパラメータのいくつかの例は、粉末レイヤの表面高さ(例えば、レイヤ内で堆積した材料の上面の高さ)およびハッチ(hatch)空間(例えば、エネルギービームによって作成された走査線同士の間の空間)を含む。パラメータを変化させる他のやり方、および複数材料レイヤを堆積させる他のやり方が、本開示に照らして明らかとなろう。
【0016】
複数材料レイヤを使用することおよび/または印刷パラメータを変化させることは、印刷された造形片のある物理的な特徴、例えば材料性質を調整する能力などのいくつかの利点を提供することができ、また印刷された造形片の特定の領域の他の特徴を特定の目的のために最適化することができる。例えば、航空機において強い応力に曝されることになる印刷された航空機の部品の領域は、金属粉末(例えば、金属合金)の異なる混合物を使用してその領域を印刷することによって、部品の他の領域よりも強くすることができる。別の例において、仕上げられた造形片の表面が改善された表面仕上げ品質を有することができるように、それぞれのスライスの縁部の領域を融合するために低速走査速度を使用することができる。同じく、スライスの内部の領域を融合するために走査速度を大きくさせることにより、合計の走査時間を短くすることができ、生産歩留まりを増加させることができる。
【0017】
様々な実施形態において、例えば、複数材料で造形片を作成するためにレーザ融合吹き付け粉末を粉末床レーザ融合と組み合わせて使用することができる。換言すると、粉末材料を粉末レイヤに堆積させることができ、レイヤのエリアをレーザビームで融合させることができ、次に異なる粉末材料を融合粉末のエリアに吹き付けることができ、その間吹き付けられた粉末は同一または異なるエネルギービームにより融合される。プロセス温度が適合性のある場合、金属、セラミック、またはプラスチックの材料を、次の粉末レイヤの堆積に先立って粉末堆積を吹き付けることにより粉末床融合構造に追加することができる。この様式で、例えば、プロセスを交互にすることで、類似しない材料性質を伴う材料を堆積することができる。
【0018】
様々な実施形態において、例えば、大きな球形の粉末である粉末材料は焼結された構成要素の材料密度を下げることができる。例えば、流体のろ過、熱伝達などの目的のため、造形片は密度が小さい部分を有して作成され得る。大きな球形を有する粉末材料の追加は低密度の局所領域を作成することができる。加えて、様々な実施形態は、低出力エネルギービームおよび/または高速走査速度をあてることを含むことができ、これは大きな球形の粉末材料を融合ではなく焼結するために、大きな球形の粉末材料にあてることができる。
【0019】
様々な実施形態において、第2の材料の堆積はロボットアームで実施することができる。例えば、ロボットアームはレイヤに第2の材料を堆積することができる。第2の材料の異なる量をレイヤの異なる深度に使用することができる。様々な実施形態において、ロボットアームはx、y、およびz軸に沿って横移動することができ、同じく軸の周りで回転することができる。
【0020】
様々な実施形態において、ロボットアームは粉末材料を分注するためのノズルおよび真空吸引チューブを搭載することができる。吸引チューブは主となる材料粉末を真空吸引によって除去し、第2の材料を堆積させるための空間を与える。例えば、第2の材料の堆積は、音響振動によって達成することができ、それによって、振動の振幅および振動数を制御することにより、ロボットアームによって分注される粉末の量を注意深く微調整することができる。堆積ノズルの端部近くに圧電変換器を取り付けることによって、音響振動をかけることができる。次に第2の材料のために最適化されたパラメータ値のセットでエネルギービームがアクティブ化される。
【0021】
様々な実施形態において、ジェットタイプのプリンタメカニズムで1回の通過または複数の通過で、液体の第2の材料を堆積させることができる。例えば、堆積した第2の材料は融合に先立って乾燥させることができる。
【0022】
様々な実施形態において、低速走査速度を使用すること、および張り出しにおけるまたは張り出し近くの印刷領域への溶融プールを変えることは、特に最小限の支持構造を使用して部品の変形(例えば、たわみ)を減らすまたは防ぐために有益であり得る。別の例において、粉末デポジタは粉末レイヤの上面が不均一であるように、例えば、くぼみおよび/または膨らみを有するように、粉末を堆積させることができる。例えば、粉末が融合する際たわみが起こるであろうエリアにおいて、材料がより高い高さに融合できるように厚みのある粉末のレイヤを堆積させることができ、それによって、たわみが起こると所望の最終的な幾何学形状が達成される。換言すると、たわみが起こるよりも前に、たわみを埋め合わせるように余分な粉末を堆積させることができる。一方で支持構造を使用する造形のためには、支持構造を容易に除去できるように、実際の造形片と比べて脆くなるように支持構造を印刷することができる。
【0023】
図1A~Dは、動作の異なる工程の間の、例示のPBFシステム100のそれぞれの側面図を図示している。上述のように、図1A~Dに図示した特定の実施形態は、本開示の原理を採用するPBFシステムの多くの適切な例の1つである。本開示の図1A~Dおよび他の図面の要素は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、本明細書で説明される概念のより良い図示を目的として大きくまたは小さく描かれ得ることにも留意すべきである。PBFシステム100は金属粉末のそれぞれのレイヤを堆積することができるデポジタ101、エネルギービームを発生させることができるエネルギービーム源103、粉末材料を融合させるためにエネルギービームをあてることができる偏向器105、および造形片109などの1つまたは複数の造形片を支持することができる造形プレート107を含むことができる。PBFシステム100はまた粉末床収容部内に位置付けられた造形フロア111を含むこともできる。粉末床収容部112の壁は全体的に粉末床収容部の境界を画定しており、壁112の間で側方から挟まれて、下方で造形フロア111の部分に当接している。造形フロア111は、デポジタ101が次のレイヤを堆積することができるように次第に造形プレート107を下げる。全体のメカニズムを他の構成要素を囲い込むことができるチャンバ113に存在させることができ、それにより機器を保護しており、雰囲気および温度の調節を可能にし、汚染リスクを軽減している。デポジタ101は金属粉末などの粉末117を含むホッパ115、堆積した粉末のそれぞれのレイヤの上部をならすことができるレベラ119を含むことができる。
【0024】
具体的に図1Aを参照すると、この図面は、造形片109のスライスが融合された後ではあるが、粉末の次のレイヤが堆積されてしまう前のPBFシステム100を示している。実際には、図1AはPBFシステム100が、造形片109の現在の状態、例えば150のスライスから形成したものを形成するために、既に複数のレイヤ、例えば150のレイヤのスライスを堆積して融合してしまった時点を図示している。既に堆積された複数のレイヤが、堆積されたが融合はしていない粉末を含む粉末床121を形成している。
【0025】
図1Bは造形フロア111が粉末レイヤ厚123の分下がることができる工程にあるPBFシステム100を示している。造形フロア111を下げることにより、造形片109および粉末床121を粉末レイヤ厚123の分降下させ、それによって造形片および粉末床の上部が、粉末床収容部壁112の上部よりも粉末レイヤ厚に等しい厚みの分低くなる。このやり方で、例えば、粉末レイヤ厚123と等しい一貫した厚みのある空間が造形片109および粉末床121の上部の上に作成され得る。
【0026】
図1Cは、デポジタ101が粉末117を造形片109および粉末床121の上に作成され、また粉末床収容部壁112によって境界画定された空間に堆積させるように位置付けられる工程にあるPBFシステム100を示している。この例において、デポジタ101はホッパ115から粉末117を放出しながら画定された空間の上を次第に移動する。レベラ119は、放出された粉末をならして、粉末レイヤ厚123に実質的に等しい厚みを有し(図1B参照)、また実質的に平坦な粉末レイヤ上面126を有する粉末レイヤ125を形成することができる。したがって、PBFシステム内の粉末は粉末材料支持構造によって支持することができ、例えば造形プレート107、造形フロア111、造形片109、壁112などを含むことができる。明確にするために、図示された粉末レイヤ125の厚み(すなわち、粉末レイヤ厚123(図1B))は、図1Aを参照して上記で議論した150の先に堆積したレイヤを伴う例に使用される実際の厚みよりも厚く示されることに留意すべきである。
【0027】
図1Dは、粉末レイヤ125の堆積に続いて(図1C)、エネルギービーム源103がエネルギービーム127を発生させ、偏向器105が造形片109の次のスライスを融合するためにエネルギービームをあてる工程にあるPBFシステム100を示している。様々な例示の実施形態において、エネルギービーム源103は電子ビーム源であり得、その場合エネルギービーム127は電子ビームを構成する。偏向器105は電子ビームを選択的に偏向させる電場または磁場を発生させることができる偏向板を含むことができ、電子ビームを融合されるよう指定されたエリアを横切って走査させる。様々な実施形態において、エネルギービーム源103はレーザであり得、その場合エネルギービーム127はレーザビームである。偏向器105は、反射および/または屈折を使用してレーザビームを操作して融合されるよう選択されたエリアを走査する、光学システムを含むことができる。
【0028】
様々な実施形態において、偏向器105はエネルギービームを位置付けるためにエネルギービーム源を回転および/または並進させることができる1つまたは複数のジンバルおよびアクチュエータを含むことができる。様々な実施形態において、エネルギービーム源103および/または偏向器105はエネルギービームを調節する(modulate)ことができ、例えばエネルギービームが粉末レイヤの適当なエリアだけにあてられるように、偏向器が走査するのに伴ってエネルギービームをオンおよびオフにすることができる。例えば、様々な実施形態において、エネルギービームはデジタル信号プロセッサ(DSP)によって調節することができる。
【0029】
粉末レイヤを堆積させること、エネルギービームを発生させること、エネルギービームを走査させること、などのPBFシステムの動作はPBFシステムのシステムパラメータに基づいて制御される(本明細書において単純に「パラメータ」とも称される)。例えば、1つのパラメータはエネルギービーム源によって発生されるエネルギービームの出力である。様々なPBFシステムにおいて、ビーム出力パラメータは例えば、電子ビーム源のグリッド電圧、レーザビーム源のワット数出力などによって表すことができる。パラメータの別の例は、偏向器の走査速度、すなわち偏向器が粉末レイヤをわたってエネルギービームをどれだけ速く走査するか、である。走査速度パラメータは例えば、電子ビームPBFシステムにおいて偏向板にかけられる偏向電圧、レーザビームPBFシステムにおいて走査ミラーに接続されるモータにかけられるアクチュエータモータ電圧、などの変化の速度によって表すことができる。パラメータの別の例は、前の粉末レイヤの上面の上の粉末レベラの高さであり、例えば、レベラの延在部の距離として表すことができる。
【0030】
様々な実施形態において、パラメータのうちの少なくとも1つはスライス印刷動作の間第1の時間、すなわち粉末のレイヤの堆積の始まりにおいて開始し、様々な場所でレイヤの融合が終わったときに終了する期間、において第1の値を取り、またスライス印刷動作の間第1の値とは異なる第2の値を取る。例えば、PBF装置はパラメータの第1のサブセット(例えば、粉末レベラの高さ、堆積した材料の組成など)に基づいて粉末材料のレイヤを堆積させるデポジタと、パラメータの第2のサブセット(例えば、ビーム出力)に基づいてエネルギービームを発生させるエネルギービーム源と、パラメータの第3のサブセット(例えば、走査速度)に基づいて複数の場所においてレイヤを融合するためにエネルギービームをあてる偏向器とを含むことができ、パラメータのうちの少なくとも1つがスライス印刷動作の間異なる値を取ることができる。
【0031】
図2は複数材料および印刷パラメータの変形例の機能を含む例示のPBF装置200を示している。図2は造形プレート201、粉末床収容部壁204内の粉末床203、および粉末床内の造形片205を示している。デポジタ207は粉末床203の粉末材料を含む材料のレイヤを堆積させることができ、エネルギーアプリケータ210は堆積したレイヤで粉末材料を融合するためにエネルギーをあてることができる。図4A~C、図5A~C、図6A~C、図7A~B、図8A~C、および図9A~Bに関して以下でより詳細に説明するように、デポジタ207はそれぞれが異なる材料を堆積させる1つまたは複数の別個のデポジタを含むことができる。エネルギーアプリケータ210はエネルギービームを発生させるエネルギービーム源211、および堆積したレイヤを横切ってエネルギービームを走査する偏向器213を含むことができる。PBF装置200はまた例えば、コンピュータプロセッサであり得るコントローラ214を含むことができる。PBF装置200はまた、ランダムアクセスメモリ(RAM)、コンピュータ記憶ディスク(例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ)などのコンピュータメモリ215を含むことができる。コントローラ214はメモリ215にパラメータ216を記憶することができる。コントローラ214はパラメータ216に基づいてPBF装置200の構成要素を制御することができる。例えば、コントローラ214は造形片205のそれぞれのスライスを形成するためにパラメータ216を使用して走査速度、ビーム出力などを決定することができる。換言すると、コントローラ214はデポジタ207を制御して材料のレイヤを堆積させることができ、エネルギービーム源211を制御してエネルギービームを発生させることができ、また偏向器213を制御して堆積したレイヤを横切ってエネルギービームを走査することができる。
【0032】
PBF装置200のスライス印刷動作の間、パラメータ216は2つまたはそれ以上の異なる値を取る、1つのパラメータ(または複数のパラメータ)を含むことができる。例えば、印加ビーム出力パラメータは印刷動作の間ある時間において低出力値を取ることができ、動作の間の別の時間においては高出力を取ることができる。例えば、コントローラ214は粉末レイヤのあるエリア(例えば、造形片の非変形エリアの上)について低出力の印加ビーム出力パラメータ値を設定することができ、また粉末レイヤの別のエリア(例えば、造形片のたわみエリアの上)について高出力の印加ビーム出力パラメータ値を設定することができる。この例示の実施形態において、パラメータの変化(すなわち異なるパラメータ値)は、造形片205の印刷に先立って決定されメモリ215に格納することができる。
【0033】
様々な実施形態において、コントローラは例えば、図2の例示の実施形態に示すような共有プロセッサであってもよい。様々な実施形態において、コントローラは、例えばそれぞれの構成要素が個別のコントローラを有する分散システムであってもよい。例えば、デポジタは別個のコントローラを有することができ、エネルギービーム源は別個のコントローラを有することができ、偏向器は別個のコントローラを有することができる、などである。同じく、パラメータは共有メモリに記憶することができ、個別の構成要素に関連付けられる個別のメモリに記憶することができ、またはこれらの手法の組み合わせであることができる。
【0034】
図3は複数材料および閉ループ制御を伴う印刷パラメータの変形例を含む別の例示のPBF装置300を示している。図3は造形プレート301、粉末床収容部壁304内の粉末床303、および粉末床内の造形片305を示している。デポジタ307は粉末床303の粉末材料を含む材料のレイヤを堆積させることができ、エネルギーアプリケータ310は堆積したレイヤで粉末材料を融合するためにエネルギーをあてることができる。エネルギーアプリケータ310はエネルギービームを発生させるエネルギービーム源311、および堆積したレイヤを横切ってエネルギービームを走査する偏向器313を含むことができる。PBF装置300はまた例えば、コンピュータプロセッサであり得るコントローラ314を含むことができる。PBF装置300はまた、ランダムアクセスメモリ(RAM)、コンピュータ記憶ディスク(例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ)などのコンピュータメモリ315を含むことができる。メモリ315はPBF装置300の構成要素を制御するためのパラメータ316を記憶することができる。パラメータ316はスライス印刷動作の間、2つまたはそれ以上の異なる値を取り、PBF装置300の動作の間変更することができる、1つのパラメータ(または複数のパラメータ)を含むことができる。コントローラ314は造形片305のそれぞれのスライスを形成するためにパラメータ316を使用して走査速度、ビーム出力などを決定することができる。特に、コントローラ314はデポジタ307を制御して材料のレイヤを堆積させることができ、エネルギービーム源311を制御してエネルギービームを発生させることができ、また偏向器313を制御して堆積したレイヤを横切ってエネルギービームを走査することができる。さらには、様々な実施形態において、問題の特定の印刷動作(張り出しを管理すること、表面仕上げ品質を向上させること、印刷速度を最適化すること、これらおよび他の動作の全体的な組み合わせを最適化すること、など)について所望の結果を達成するために、コントローラ314はこれらの構成要素を異なって決定されたパラメータの値もしくはタイプを使用することによって、および/または異なって決定されたパラメータのサブセットもしくは組み合わせを使用することによって記載されるやり方で制御することができる。
【0035】
PBF装置300はレイヤの堆積、粉末材料の融合などに関する情報を取得するセンサ321を含むことができる。この例において、センサ321は造形片305の形状についての情報を感知することができる。例えば、センサ321はカメラなどの光学センサを含むことができる。センサ321は形状情報323、例えば、造形片305の寸法上の測定値、を感知することができ、形状情報をコントローラ314に送信することができる。例えば、造形片305のそれぞれのスライスがエネルギー印加システム309によって融合された後、粉末材料の次のレイヤが堆積され感知された形状をコントローラ314に送信する前に、センサ321が造形片の形状を感知することができる。
【0036】
この例において、コントローラ314はセンサ321から受信した情報に基づいて、メモリ315内の1つまたは複数のパラメータ316の値を変更することができる。例えば、センサ321は造形片305の上部スライスの縁部エリアにおける不規則性を感知することができ、コントローラ314は、印刷される領域の結果的に非本質的な形状(outlying shape)を訂正するために、次のスライスの融合の間その縁部エリアにおいてエネルギービーム源311によって発生されたエネルギービームの軌道を変更することができる。このやり方で、例えば、ビーム出力は縁部エリアにあてられると高く、次のレイヤの他のエリアにあてられると低いため、ビーム出力パラメータは次のスライスの融合の間変更することができる。上記の例示の実施形態において、PBF装置300の動作の間、センサ321を通じて受信されたフィードバック情報に基づいてパラメータを修正することができ、パラメータの閉ループ制御が得られる。
【0037】
様々な実施形態において、センサは融合粉末材料の縁部の情報を感知する縁部センサを含むことができる。例えば、スライスの縁部において、または縁部の近くでは、融合に伴う問題がしばしば起きることがある。これらの場合において、縁部センサはスライスの縁部の形状についての有益な情報を与えることができる。
【0038】
様々な実施形態において、PBF装置は、例えば別個のデポジタ、一体化されたデポジタなどを使用して、粉末材料および粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤを堆積させるデポジタを含むことができる。堆積させることは、レイヤが堆積された後、粉末材料の少なくとも一部は第2の材料のないエリアにあるようになされる。このやり方で、例えば、PBF装置は複数の材料を単一レイヤに堆積させることができる、すなわちそのレイヤの材料組成はレイヤの異なるエリアにわたって不均一であることができる。
【0039】
次に、図4A~C、図5A~C、図6A~C、図7A~B、図8A~C、および図9A~Bを説明する。これらの図面は複数の材料をPBF装置において単一レイヤに堆積させることができる、装置および方法の様々な例示の実施形態を示している。
【0040】
図4A~Cは粉末材料を堆積させるのに先立って第2の材料を堆積させることができる、例示の実施形態を示している。例えば、デポジタの第1の構成要素はワークエリアの上を通過し、所望のエリアに第2の材料を堆積させることができ、次いでデポジタの別の構成要素がワークエリアの上を通過し、残りのエリアに粉末のレイヤを堆積させることができる。
【0041】
図4A~Cは複数の材料を単一レイヤに堆積させることができる、PBF装置400および方法の例示の実施形態を示している。図4A~Cは、造形プレート401および粉末床403を示している。粉末床403の中にあるものは造形片405である。PBF装置400はエネルギービーム源409、偏向器411、ならびに粉末デポジタ413および第2の材料デポジタ415を含むデポジタを含むことができる。粉末デポジタ413は粉末材料416を含むことができ、第2の材料デポジタ415は第2の材料417を含むことができる。図2および図3に関して上記で議論したように、粉末デポジタ413および第2の材料デポジタ415はコントローラ419によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。
【0042】
図4Aは単一レイヤに複数の材料を堆積させるためのPBF装置400の例示の動作を示している。第2の材料デポジタ415は、レイヤのエリアに第2の材料417を堆積させるために、ワークエリアを横切って移動することができる。粉末デポジタ413は第2の材料デポジタ415に続いてワークエリア横切って移動し、レイヤの残りのエリアに粉末を堆積することができる。
【0043】
図4Bに示すように、第2の材料417が堆積されてしまった後、粉末デポジタ413は動き続けることができ、ひいては第2の材料の上を横切る。この例において、粉末デポジタ413は粉末を放出し続けることができ、粉末デポジタのレベラは表面から粉末を無くすために第2の材料417の上面をまんべんなく掃くことができる。他の実施形態において、粉末デポジタは、例えば、第2の材料の上を粉末デポジタが横切る際に粉末の供給を中断することができる。
【0044】
図4Cは第2の材料デポジタ415がワークエリアを横切って移動し、現在のレイヤで第2の材料417を堆積することを終えてしまった状態を示している。粉末デポジタ413はワークエリアを横切って移動し、第2の材料417を含まない残りのエリアに粉末を堆積し続けることができる。
【0045】
様々な例示の実施形態において、第2の材料デポジタはレイヤの所望のエリアに第2の材料を堆積させるように構成された自動化されたロボットアームであることができる。様々な例示の実施形態において、ロボットアームはPBF装置に内蔵されてもよく、またそのようなものとして、同一の処理およびタイミングメカニズムの制御の下で、ならびにデポジタ413などの、第2の材料を堆積させるための他の構成要素と同期して、動作することができる。
【0046】
図4A~Cの例示の実施形態において、第2の材料が粉末材料より前に堆積されるため、完成されたレイヤは粉末材料だけのエリア(すなわち第2の材料のない)、および第2の材料だけのエリア(すなわち粉末材料のない)を含むことに留意されたい。
【0047】
図5A~Cは複数の材料を単一レイヤで重なり合うように堆積させることができる、PBF装置500および方法の例示の実施形態を示している。図5A~Cは、造形プレート501および粉末床503を示している。粉末床503の中にあるものは造形片505である。PBF装置500はエネルギービーム源509、偏向器511、ならびに粉末デポジタ513および第2の材料デポジタ515を含むデポジタを含むことができる。粉末デポジタ513は粉末材料516を含むことができ、第2の材料デポジタ515は第2の材料517を含むことができる。図2および図3に関して上で議論したように、粉末デポジタ513および第2の材料デポジタ515はコントローラ519によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。
【0048】
図5Aは単一レイヤに材料を重ねて堆積させるためのPBF装置500の例示の動作を示している。第2の材料デポジタ515は、レイヤのエリアに第2の材料517の薄いレイヤを堆積させるために、ワークエリアを横切って移動することができる。粉末デポジタ513は第2の材料デポジタ515に続いてワークエリア横切って移動し、レイヤの残りのエリアに粉末を堆積することができる。
【0049】
図5Bに示すように、第2の材料517の薄いレイヤが堆積されてしまった後、粉末デポジタ513は動き続けることができ、ひいては第2の材料の薄いレイヤの上を横切る。粉末デポジタ513は第2の材料517の薄いレイヤの上で粉末を放出し続けて、そのレイヤで重なり合う材料521を作成することができ、重なり合う材料521は第2の材料517の領域に重なり合う粉末材料516の領域を含む。
【0050】
図5Cは第2の材料デポジタ515がワークエリアを横切って移動し、現在のレイヤで第2の材料517を堆積することを終えてしまった状態を示している。粉末デポジタ513はワークエリアを横切って移動し、第2の材料517を含まない残りのエリアに粉末を堆積し続けることができる。
【0051】
図5A~Cの例示の実施形態において、完成されたレイヤは粉末材料だけのエリア(すなわち第2の材料のない)、および粉末材料と第2の材料の両方を含むエリア(すなわち重なり合う材料)を含むことに留意されたい。
【0052】
図6A~Cはレイヤ内に混合材料エリアを堆積させることができる、PBF装置600および方法の例示の実施形態を示している。図6A~Cは、造形プレート601および粉末床603を示している。粉末床603の中にあるものは造形片605である。PBF装置600はエネルギービーム源609、偏向器611、ならびに粉末材料615および第2の材料617を堆積させることができる一体化された堆積システム613を含むことができる。以下の図6Bで図示するように、一体化された堆積システム613はまた、粉末材料615および第2の材料617を混合することができる混合チャンバ618を含む。図2および図3に関して上で議論したように、一体化された堆積システム613はコントローラ619によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。
【0053】
図6Aは粉末材料615をレイヤに堆積させるための例示の動作を示している。一体化された堆積システム613は、レイヤのエリアに粉末材料615だけを堆積させながらワークエリアを横切って移動することができる。
【0054】
図6Bは混合材料621をレイヤに堆積させるための例示の動作を示している。具体的に、一体化された堆積システム613は粉末材料615および第2の材料617を混合チャンバ618に注入して混合材料621を作成することができ、混合材料621をレイヤに堆積させることができる。様々な実施形態において、例えば異なる性質を有する混合材料を作成するために、粉末材料615と第2の材料617との比率は変えることができる。図6Cは第2の材料617をレイヤに堆積させるための例示の動作を示している。特に、一体化された堆積システム613はレイヤのエリアに第2の材料617だけを堆積させることができる。
【0055】
図6A~Cの例示の実施形態において、完成されたレイヤは粉末材料だけのエリア(すなわち第2の材料のない)、第2の材料だけのエリア(すなわち粉末材料のない)、および粉末材料と第2の材料の両方を含むエリア(すなわち混合材料)を含むことに留意されたい。
【0056】
図7A~Bは第2の材料を粉末材料の堆積したレイヤ上に堆積させることができる、PBF装置700および方法の例示の実施形態を示している。図7A~Bは、造形プレート701および粉末床703を示している。粉末床703の中にあるものは造形片705である。PBF装置700はエネルギービーム源709、偏向器711、ならびに粉末デポジタ713および第2の材料デポジタ714を含むデポジタを含むことができる。粉末デポジタは粉末材料715を堆積させることができる。この例において、第2の材料デポジタは粘稠な第2の材料717を堆積させることができるノズル716を含むことができる。図2および図3に関して上記で議論したように、粉末デポジタ713および第2の材料デポジタ714はコントローラ719によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。
【0057】
図7Aで図示されるように、粉末デポジタ713は粉末のレイヤを堆積させるためにワークエリアを横切って移動することができる。第2の材料デポジタ714は粉末デポジタ713に続いてワークエリアを横切って移動することができる。図7Bで図示されるように、第2の材料デポジタ714は第2の材料717を、粉末デポジタ713によってあるエリアに堆積された粉末材料の上に堆積させることができる。第2の材料717はこの例において粘稠であり、第2の材料は粉末材料715に染み込むことができる。具体的に、第2の材料717は粉末材料715の粉末粒子間の空間に染み込み、混合材料721を形成することができる。このやり方で、例えば、粉末レイヤの高さを高くすることなく、第2の材料717を粉末材料715に堆積させることができる。様々な実施形態において、粘稠な第2の材料は液体、ゲルなどを含むことができる。様々な実施形態において、粉末床を横切ってデポジタ713の後を追うプリントヘッドによって粘稠な第2の材料を塗布することができる。
【0058】
様々な実施形態において、粉末材料のエリアに堆積した液体またはゲルを融合の補助として使用することができ、例えば、粉末の散乱を減らすこと(「スモーキング」とも称される)、融合する粉末と周囲環境および/または粉末床の他の部分との望ましくない化学反応を減らすこと、である。様々な実施形態において、液体の第2の材料は粉末材料が液体のコロイド懸濁液中または溶液中に保持されるように堆積させることができる。
【0059】
図7A~Cの例示の実施形態において、完成されたレイヤは粉末材料だけのエリア(すなわち第2の材料のない)、および粉末材料と第2の材料の両方だけを含むエリア(すなわち第2の材料が染み込んだ粉末材料のエリア)を含むことに留意されたい。
【0060】
様々な実施形態において、重なり合う材料および/または混合材料(図5A~C、図6A~C、および図7A~Bを参照して上述のものなど)を、レイヤ内のどこかの融合エリアとは異なる材料性質を有する融合材料を作成するために融合させることができる。融合は、例えば本明細書で説明されるエネルギービームをあてる方法のうちいずれかを使用して行うことができ、またはあらゆる他の方法によって行うことができる。例えば、粉末材料は第1の金属を含むことができ、第2の材料は第2の金属を含む粉末材料であることができる。第1の金属粉末および第2の金属粉末が重なり合うエリアは、融合させることができ、融合により合金を作成するために2つの金属をマージすることができる。別の例において、粉末材料は第1のサイズ分布を有することができ、第2の材料は第1のサイズ分布とは異なる第2のサイズ分布を有する粉末を含むことができる。別の例において、粉末材料は金属粉末であることができ、第2の材料は金属弱化材料であることができる。このやり方で、例えば、より容易に除去できる弱化金属からなる支持構造を形成することができる。別の例において、第2の材料と粉末材料を融合させることによって、融合した粉末材料だけの場合とは異なる電気的性質を有する融合材料を作成することができる。例えば、第2の材料の追加によって、融合粉末だけの場合に対して、電気抵抗、磁気的性質などを変えることができる。
【0061】
図8A~Cは、一体化された堆積システムが粉末材料および第2の材料を交互に堆積させることができる、PBF装置800および方法の例示の実施形態を示している。図8A~Cは、造形プレート801および粉末床803を示している。粉末床803の中にあるものは造形片805である。PBF装置800はエネルギービーム源809、偏向器811、ならびに粉末材料815および第2の材料817を堆積させることができる一体化された堆積システム813を含むことができる。図2および図3に関して上記で議論したように、一体化された堆積システム813はコントローラ819によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。
【0062】
図8Aは粉末材料815をレイヤに堆積させるための例示の動作を示している。一体化された堆積システム813は、レイヤのエリアに粉末材料815だけを堆積させながらワークエリアを横切って移動することができる。
【0063】
図8Bは第2の材料817だけをレイヤに堆積させるための例示の動作を示している。この例において、一体化された堆積システム813は第2の材料817を堆積させて、後続のレイヤにおいて造形片803の張り出しを支持することになる支持構造821に別のレイヤを追加する。第2の材料は、例えば、発泡体、セラミックなどであることができ、張り出しエリアにおいて粉末材料の融合について支持を与えることができ、また造形片が完成した後容易に除去されることもできる。図8Cは第2の材料817がレイヤに堆積された後、粉末材料815だけを堆積させるための例示の動作を示している。
【0064】
図8A~Cの例示の実施形態において、粉末材料および第2の材料が交互に堆積されるため、完成されたレイヤは粉末材料だけのエリア(すなわち第2の材料のない)、および第2の材料だけのエリア(すなわち粉末材料のない)を含むことに留意されたい。
【0065】
図9A~Bは、粉末材料のレイヤが堆積されることができ、粉末材料の部分が除去されることができ、第2の材料が除去された粉末のエリアに堆積されることができる、PBF装置900および方法の例示の実施形態を図示している。この例において、粉末デポジタは粉末材料のレイヤを堆積させ、次いで真空は粉末材料があるべきではないエリアから粉末材料を除去することができる。次いで空のエリアを第2の材料で満たすことができる。様々な実施形態において、他の機械ベースの粉末除去手段を使用することができる。
【0066】
図9A~Bは、造形プレート901および粉末床903を示している。粉末床903の中にあるものは造形片905である。PBF装置900はエネルギービーム源909、偏向器911、ならびに粉末デポジタ913および第2の材料デポジタ914を含むデポジタを含むことができる。粉末デポジタは粉末材料915を堆積させることができ、第2の材料デポジタ914は第2の材料917を堆積させることができる。第2の材料デポジタ914は真空919および材料ノズル921を含むことができる。図2および図3に関して上記で議論したように、粉末デポジタ913および第2の材料デポジタ914はコントローラ923によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。
【0067】
図9Aは、粉末デポジタ913がワークエリアを横切って移動し、粉末のレイヤを堆積し、また第2の材料デポジタ914が順にデポジタの後ろでワークエリアを横切って移動する、PBF装置900の例示の動作を示している。この例の第2の材料デポジタ914は真空メカニズムを使用して粉末材料の堆積物をワークエリアの指定された部分から除去し、同時にまたはそのすぐ後に、その指定された部分に第2の材料917を堆積するように構成される。図9Aにおいて、第2の材料デポジタ914は動作可能であるが、まだワークエリアの上でそれの定められた位置によりそれの機能を実施するよう起動するようには示されていない。図9Bは第2の材料デポジタ914が第2の材料917が堆積されるべきエリアの上を通過した後の状態の例を示している。第2の材料デポジタ914がそのエリアの上を通過する際、真空919は吸引によって堆積した粉末を除去することができ、材料ノズル921はそのエリアに第2の材料917を堆積することができる。
【0068】
図9A~Bの例示の実施形態において、粉末材料のない空間を作成するために堆積した粉末材料がエリアから除去されるため、完成されたレイヤは粉末材料だけのエリア(すなわち第2の材料のない)、および第2の材料だけのエリア(すなわち粉末材料のない)を含むことに留意されたい。
【0069】
様々な実施形態において、粉末材料の複数のレイヤは一度に除去することができる。例えば、粉末材料の複数のレイヤを造形プレートに堆積してしまった後、真空によって複数のレイヤの粉末材料を除去して、造形プレートまで下に延在する穴を作成することができる。第2の材料は、その穴に堆積させることができ、したがって、穴を現在のレイヤの上面まで満たすことができる。このやり方で、例えば、粉末材料の除去動作はレイヤごとに実施することを必要としないが、十分な数の粉末材料のレイヤが堆積されてしまうと、実施することができる。
【0070】
図4A~C、図5A~C、図6A~C、図7A~C、図8A~C、および図9A~Bの例示の実施形態などの、第2の材料が堆積される様々な実施形態において、例えば、第2の材料をより均一に分布させることができる振動ホッパなどで第2の材料を振動させることによって、第2の材料を堆積させることができる。様々な実施形態において、第2の材料は、例えばチューブの長さによって第2の材料のコンテナに取り付けることができるノズルスプレーから第2の材料を吹き付けることにより堆積させることができる。このやり方で、例えば、第2の材料のコンテナはノズルがワークエリアを横切って移動する間静止したままでいることができる。様々な実施形態において、ノズルは第2の材料を堆積させるために可動アームによってワークエリアを横切って移動され得る。
【0071】
様々な実施形態において、第2の材料を含むエリアは例えば本明細書で説明される方法のいずれか、または別の方法によって融合され得る。様々な実施形態において、第2の材料を含むエリアは融合されなくてもよい。さらには、様々な実施形態は第2の材料を堆積させることに限定されず、本明細書で説明される技法に類似する技法を使用して、レイヤの様々に異なるエリアに第3の材料、第4の材料などを堆積させることもできることを理解すべきである。
【0072】
図10はPBF装置において複数材料の堆積の例示の方法のフローチャートである。PBF装置は粉末材料および第2の材料を含むレイヤを堆積させることができる(1001)。換言すると、第1の粉末材料および第1の粉末材料とは異なる第2の材料を含むレイヤを堆積することができ、それによって、第1の粉末材料の少なくとも第1の部分は第2の材料のない第1のエリアにある。PBF装置はエネルギービームを発生させ(1002)、複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギービームをあてることができる(1003)。
【0073】
次に、図11A~C、図12図13A~C、図14図15A~C、図16A~C、および図17~21を議論する。これらの図面は、PBF装置の1つのパラメータ(または複数のパラメータ)がスライス印刷動作の間異なる値を取ることができる、装置および方法の例示の実施形態を図示している。
【0074】
図11A~Cは、粉末高さパラメータの変化に基づいて堆積した粉末材料の上面の高さが粉末レイヤの中で変化し得る、PBF装置1100および方法の例示の実施形態を示している。図11A~Cは、造形プレート1101および粉末床1103を示している。粉末床1103の中にあるものは造形片1105である。PBF装置1100はエネルギービーム源1109、偏向器1111、および粉末材料1115を堆積させる粉末デポジタ1113を含むことができる。粉末デポジタ1113は、異なる高さで堆積した粉末をならすために延在されることおよび引き込まれることができる高さ可変レベラ1117を含むことができる。図2および図3に関して上記で議論したように、粉末デポジタ1113はコントローラ1119によって1つまたは複数のパラメータに基づいて制御することができる。この例において、1つまたは複数のパラメータは、レベラ高さなどの粉末高さパラメータであることができる。
【0075】
図11Aはほとんどの融合する動作に使用される標準的な厚みで粉末レイヤを作り出す高さで粉末材料を堆積させるためのPBF装置1100の例示の動作を示している。特に、高さ可変レベラ1117は、粉末レイヤの標準的な厚みを作り出す高さで粉末材料をならす延在部長さに設定され得、いくつかの先の実施形態を参照して説明したように、粉末デポジタ1113は所望の厚みを作り出すために粉末材料を堆積させながらワークエリアを横切って移動することができる。
【0076】
図11Bはより高い高さで粉末材料を堆積させるためにコントローラ1119によって導かれるPBF装置1100の例示の動作を示しており、標準的な厚みよりも厚い粉末レイヤを作り出す。特に、粉末デポジタ1113が、厚みのある粉末レイヤが堆積されることになるエリアに達すると、コントローラ1119は、ならされる粉末材料の高さが対応して高くなるように、一時的に高さ可変レベラを引き込む(例えば短くする)ように構成する。このやり方で、例えば、粉末レイヤは他のエリアよりもいくつかのエリアにおいて高くなることができる。
【0077】
図11Cは粉末デポジタ1113が厚みのある粉末材料のエリアを通過してしまって、高さ可変レベラが標準的な粉末レイヤ厚を作り出す高さに粉末材料をならすように元の構成に戻されて延びた状態を示している。高さ可変レベラを引き込むことによって作り出された厚みのある粉末レイヤのエリアが、厚みのある粉末レイヤ部分1121として示されている。
【0078】
様々な実施形態において、高さ可変レベラを使用するなどの堆積した粉末レイヤの上面の高さを変える能力によって、粉末材料のないレイヤのエリアの作成を可能とできることに留意されたい。例えば、高さ可変レベラは粉末材料のレイヤの表面にくぼみを作成するために延在されてもよい。くぼみは例えば浅くてもよく、または深くてもよい。
【0079】
図12は例示のエネルギーアプリケータの詳細を示している。この例において、エネルギービームは電子ビームである。エネルギービーム源は電子グリッド1201、電子グリッドモジュレータ1203、およびフォーカス1205を含むことができる。コントローラ1206は、電子グリッド1201および電子グリッドモジュレータ1203を制御して、ビーム出力を制御するグリッド電圧などの様々なパラメータに基づいて電子ビーム1207を発生させることができ、フォーカス1205を制御して、ビームフォーカスを制御するフォーカス電圧などの様々なパラメータに基づいて電子ビーム1207をフォーカスされた電子ビーム1209にフォーカスすることができる。図面においてより明瞭な見え方となるように、コントローラ1206と他の構成要素との間の接続は示されていない。フォーカスされた電子ビーム1209は偏向器1213によって粉末レイヤ1211を横切って走査されることができる。偏向器1213は2つのx偏向板1215、および2つのy偏向板1217を含むことができ、図12ではそれらのうちの1つは良く見えていない。コントローラ1206は偏向器1213を制御してx偏向板1215同士の間に電場を発生させ、フォーカスされた電子ビーム1209をx方向に偏向させることができ、y偏向板1217同士の間に電場を発生させ、フォーカスされた電子ビームをy方向に偏向させることができる。コントローラ1206は、電子ビームの走査速度を制御する偏向電圧率(defection voltage rate)などの様々なパラメータに基づいて、偏向器1213を制御することができる。様々なパラメータはメモリ(図示せず)に記憶することができる。様々な実施形態において、偏向器は電子ビームを偏向させるために1つまたは複数の磁気コイルを含むことができる。
【0080】
ビームセンサ1219はフォーカスされた電子ビーム1209の偏向の量を感知することができ、この情報をコントローラ1206に送信することができる。偏向の所望の量を達成するために、コントローラ1206はこの情報を使用して電場の強さを調整することができる。緩い粉末1211を溶融するために、フォーカスされた電子ビーム1209はフォーカスされた電子ビームを走査することによって粉末レイヤ1211にあてることができ、ひいては、融合粉末1223を形成する。様々な実施形態にしたがって、レイヤの走査の間、上記で議論したパラメータのうちの1つ(または複数のパラメータ)は異なる値を取ることができる。
【0081】
図13A~Cは、たわみ変形を生じ得るビーム走査動作を示している。PBF装置1300は、粉末床1305内で造形片1303が形成される造形プレート1301を含む。粉末床1305は粉末レイヤ1307を含む。造形片1303の部分は張り出しエリア1309を含む。PBF装置1300はまたエネルギービーム源1313および偏向器1315を含む。コントローラ1317はメモリ(図示せず)に記憶されるパラメータに基づいてエネルギービーム源1313および偏向器1315の動作を制御することができる。
【0082】
この例において、PBF装置1300のパラメータは変化しない。したがって、図13B~Cは一定の走査速度でエネルギービームを走査することによる粉末の融合を図示している。
【0083】
図13Bは張り出しエリア1309内の粉末レイヤ1307の部分において、一定の走査速度でエネルギービーム1319を走査することにより粉末を融合することを図示している。走査エネルギービーム1319は、エネルギービームが動いていることを図示する目的で図面中2つのエネルギービームとして示されている。しかしながら、単一のエネルギービームだけが走査されることを理解すべきである。同じく本開示の他の図面が走査の動きを図示するために2つのエネルギービームを使用することに留意されたい。
【0084】
図13Bに示されるように、張り出しエリア1309において融合した粉末材料の部分が粉末レイヤ1307の下部より下にたわむことがある。このたわみは、例えば溶融した粉末材料が下にある緩い粉末よりも密度が大きいという事実に起因し得る。場合によっては、高速走査速度がたわみを悪化させることがある。この場合、低速走査速度を使用して、張り出しエリアに、融合して固化するための追加的な時間を与えることにより、たわみを低減させること、または防ぐことができる。換言すると、低速走査速度を使用して、得られる造形片の品質を改善させることができる。
【0085】
図13Cは張り出しエリア1309の外側の粉末レイヤ1307の部分において、走査エネルギービーム1319を一定の走査速度に戻すことにより、粉末を融合することを図示している。図13Cに示されるように、張り出しエリアの外側の粉末レイヤの部分のために使用される走査速度はたわみを引き起こさない。この場合、低速走査速度を使用することは得られる造形片の品質を改善しないことがあり、印刷時間を増やすことになる。
【0086】
図13A~Cの例において、一定の走査速度での走査は設計上の選択が行われることを必要とする。一方、張り出しエリアでたわみが少なく作り出されるよう低速走査速度が使用されることがあり、ひいては張り出しエリアにおいて造形品質を改善する。しかしながら、低速走査速度は印刷時間を増やすことがあり、また造形片の他の部分の品質を改善しないことがある。一方、図面で示されるような走査速度などの高速走査速度は、張り出しエリアにおける造形品質を犠牲にして印刷時間を減らすために使用されてもよい。
【0087】
さらには、図13A~Cは造形片1303の1つのスライスだけに起こるたわみを図示している。しかしながら、いくつかの造形片において、張り出しエリアが複数個所に存在し、重なり合うレイヤが複数のレイヤの上でたわみを悪化させることがあり、造形品質をさらに下げることがある。
【0088】
例えば、図14は複数の連続する粉末レイヤで、張り出しエリアにおいて粉末材料を融合することによって作成されたたわみ変形を示している。図14は造形プレート1401および粉末床1403を示している。粉末床1403の中にあるものは造形片1405である。比較のために所望の造形片アウトライン1407が破線で図示されている。造形片1405は多くの場所で、すなわち変形のない場所で、所望の造形片アウトライン1407に重なっている。したがって、張り出し境界1410の右のエリアにおいて、造形片1405を特徴づける実線は、所望の造形片アウトライン1407で画定される破線と重なっている。しかしながら、たわみ変形が張り出しエリア1409で起こっている。この例において、張り出しエリア1409は互いの上部に融合した複数のスライスから形成される。この場合、張り出しエリア1409が造形片1405の塊からさらに延在するにつれ変形は次第にひどくなり得る。
【0089】
変形、高い残留応力などのいくつかの問題は、融合が直接緩い粉末の上で起こらなくても、1つのレイヤの粉末が下にあるレイヤのスライスの縁部近くで融合するエリアに起こり得ることに留意すべきである。例えば、下にあるスライスの縁部近くで粉末を融合する際、予想外に高い温度になることがあるが、それは熱を伝達して逃がすための融合した材料が下に少ないためである。下にあるスライスが鋭利な縁部を形成する場合これらの問題は特に重大なものとなり得る。
【0090】
図15A~Cは、エネルギービームがレイヤ内の第1の場所で第1の走査速度で走査されることができ、レイヤ内の別の場所で第1の走査速度とは異なる第2の走査速度で走査されることができる、PBF装置1500および方法の例示の実施形態を図示している。例えば、エネルギービームはたわみを減らすために張り出しエリアの場所で高速走査速度で走査されることができ、張り出しエリアの外側の場所で低速走査速度で走査されることができる。特に、走査速度はあるエリアにあてられるエネルギーの合計量に影響を及ぼす。例えば、高速走査速度はそのエリアにより少ない合計エネルギーをあてる一方で、低速走査速度はそのエリアにより多くの合計エネルギーをあてる。
【0091】
図15Aは粉末床1505内で造形片1503が形成される造形プレート1501を含むPBF装置1500を示している。粉末床1505は粉末レイヤ1507を含む。造形片1503の部分は張り出しエリア1509を含む。PBF装置1500はまたエネルギービーム源1513および偏向器1515を含む。コントローラ1517は様々なパラメータの値を設定すること、およびメモリ(図示せず)にパラメータを記憶することができ、メモリに記憶されたパラメータに基づいてエネルギービーム源1513および偏向器1515の動作を制御することができる。
【0092】
図15Bは張り出しエリア1509内の粉末レイヤ1507の部分において、高速走査速度で高速走査エネルギービーム1519により粉末を融合することを図示している。この場合、偏向電圧変化率などの走査速度パラメータを、高速走査速度に相当する値に設定することができる。このやり方で、例えば、たわみを少なく、またはたわみを無視できる程度に、張り出しエリア1509における粉末材料の融合が達成され得る。
【0093】
図15Cは張り出しエリア1509外側の粉末レイヤ1507の部分において、低速走査速度で低速走査エネルギービーム1521により粉末を融合することを図示している。この場合、走査速度パラメータ、例えば偏向電圧変化率を、高速走査エネルギービーム1519より低速の走査速度に相当する値に設定することができる。したがって、走査速度パラメータは粉末レイヤ1507の走査の間変化することができる。このやり方で、例えば、外側縁部を有するエリアで粉末材料を融合させるためにエネルギービームをあてることができ、エネルギービームは外側縁部に近い場所で、外側縁部から遠い場所でのエネルギービームの走査速度より速い走査速度で走査されることができる。
【0094】
図16はPBF装置1500の例示の走査速度パラメータを示している。特に、図16は、図15B~Cに示したエネルギービームの走査動作の間、走査速度パラメータがどのように異なる値を取り得るかを示している。この例において、走査速度パラメータはx偏向電圧率パラメータ1600である。コントローラ1517はx偏向電圧率パラメータ1600に基づいてエネルギービームの走査速度を制御することができる。より具体的に、コントローラ1517はx偏向電圧率パラメータ1600を使用して、エネルギービームを偏向させるために偏向板(図12のx偏向板1215など)にかけられるx偏向電圧1601をどれくらい速く変化させるかを決定することができる。
【0095】
図16は、図15B~Cの例における走査の始まりから走査の終わりまでの、時間に対するx偏向電圧率パラメータ1600のグラフを示している。この例において、走査は粉末床1505の左側(図面に見られるように)から始まり、右に向かい、張り出しエリア1509を横切って、造形片1503の残りの上に続く。走査の始めにおいて、x偏向電圧率パラメータ1600は低電圧率パラメータ値に設定され、PBF装置1500の低速走査速度に相当する。エネルギービームが張り出しエリア1509に達すると、x偏向電圧率パラメータ1600は高電圧率パラメータ値に変わり、それによって、図15Bの高速走査エネルギービーム1519として示されるように、エネルギービームは高速走査速度で張り出しエリアを横切って走査される。エネルギービームが張り出しエリア1509の端部に達すると、x偏向電圧率パラメータ1600は低電圧率パラメータ値に戻り、それによって、図15Cの低速走査エネルギービーム1521として示されるように、エネルギービームは低速走査速度で造形片1503の残りを横切って走査される。
【0096】
図16はまた、x偏向電圧が、x偏向電圧率パラメータ1600に基づいてどのように制御されるかを図示するために、x偏向電圧1601のグラフを示している。走査の始めからエネルギービームが張り出しエリア1509を横切って走査し始める時間まで、x偏向電圧1601は低電圧率パラメータ値に対応する率を上昇させる、すなわちこの期間のx偏向電圧のグラフ線の傾きは低電圧率に対応する。エネルギービームが張り出しエリア1509を横切って走査し始めると、x偏向電圧のグラフ線の傾きが変わる、すなわち線の傾きは高電圧率パラメータ値に対応するように上昇する。エネルギービームが張り出しエリア1509を横切って走査し終えると、x偏向電圧のグラフ線の傾きは低電圧率パラメータ値に対応するように減少する。様々な実施形態において、PBF装置1500の印刷動作に先立って、x偏向電圧率パラメータ1600の値はメモリに記憶することができる。様々な実施形態において、x偏向電圧パラメータ1600の値は印刷動作の間、例えばスライス縁部情報、たわみ検出などのフィードバック情報に基づいて、修正されることができる。
【0097】
図17A~Cは、印加ビーム出力パラメータの異なる値に基づいて、エネルギーを粉末材料のレイヤに第1の時間に第1の出力のエネルギービームであてることができ、また第2の時間に第2の出力のエネルギービームであてることができる、PBF装置1700および方法の例示の実施形態を図示している。この例において、異なるビーム出力の使用は造形片の前のレイヤで起こってしまったたわみを軽減する助けができる。
【0098】
PBF装置1700は、粉末床1705内で造形片1703が形成される造形プレート1701を含む。粉末床1705は所望の粉末レイヤ厚1709を有する粉末レイヤ1707を含む。粉末レイヤ1707の部分は、造形片1703のたわみ部分の上に厚みのある粉末レイヤ厚1711を有しており、したがって、所望の粉末レイヤ厚1709よりも厚い。PBF装置1700はまたエネルギービーム源1713および偏向器1715を含む。コントローラ1717によって設定され、メモリ(図示せず)に記憶されることができる、印加ビーム出力パラメータなどのパラメータに基づいて、コントローラ1717はエネルギービーム源1713および偏向器1715を制御することができる。この例において、印加ビーム出力パラメータは、造形片1703のたわみ部分の上で粉末レイヤ1707の増加した厚みを埋め合わせるように高い値を取ることができ、他のエリアを融合する場合は低い値を取ることができる。より具体的には、印加ビーム出力パラメータは高出力ビームに相当する値、および低出力ビームに相当する値を取ることができる。
【0099】
図17Bは厚みのある粉末レイヤ厚1711を有する粉末レイヤ1707の部分において、高ビーム出力に設定された印加ビーム出力パラメータ使用して粉末を融合することを図示している。具体的に、厚みのある粉末レイヤ厚1711を有する粉末レイヤ1707の部分を融合するために、コントローラ1717は粉末レイヤの厚みのある部分の上を走査する際高出力エネルギービーム1719を達成できるよう、エネルギービーム源1713に高い印加ビーム出力パラメータ値に基づいてビーム出力を上昇させるよう指示する。このやり方で、例えば、粉末が完全に融合され得るように、より多くのエネルギーを厚みのある粉末レイヤ厚1711を有する粉末レイヤ1707の部分にあてることができる。
【0100】
図17Cは所望の粉末レイヤ厚1709を有する粉末レイヤ1707の部分で粉末を融合することを図示している。この場合、コントローラ1717は低出力エネルギービーム1721を達成するよう、エネルギービーム源1713に低い印加ビーム出力値に基づいてビーム出力を下げるよう指示し、それは所望の粉末レイヤ厚1709を有する粉末を完全に融合するために使用されるビーム出力であることができる。
【0101】
図18はPBF装置1700の例示の印加ビーム出力パラメータ1800を示している。特に、図18図17B~Cに示されるエネルギービームによる粉末材料の融合の間、印加ビーム出力パラメータ1800がどのように変化するかを示している。コントローラ1717は印加ビーム出力パラメータ1800に基づいてエネルギービームの印加ビーム出力を制御することができる。換言すると、コントローラ1717は印加ビーム出力パラメータ1800を使用して、エネルギービームがあてられている(すなわちオフではない)期間中、エネルギービーム源1713によって発生させられるエネルギービームの出力を決定することができる。例えば、粉末を融合すること、および/または融合せず粉末床の部分を加熱するなどの他の動作のために使用される際、低出力のエネルギービームをあてることにより融合粉末の冷却速度を制御しながらエネルギービームがあてられる、などである。
【0102】
印加ビーム出力パラメータの一例は電子ビーム源のグリッド電圧であり、例えば図12の電子グリッド1201および電子グリッドモジュレータ1203である。この場合、例えば、コントローラは印加ビーム出力パラメータ値に基づいてグリッド電圧を制御することができる。
【0103】
図18は、この例では走査速度が変化しないことを図示するために、x偏向電圧1801のグラフを示している(しかしながら、様々な実施形態において、走査速度および印加ビーム出力の両方が変化することができる)。コントローラ1717はx偏向電圧を偏向板(図12のx偏向板1215など)にかけることによりエネルギービームを走査することができる。この例において、走査は粉末床1705の左側(図面に見られるように)から始まり、右に向かい、厚みのある粉末レイヤ厚1711エリアを横切って、造形片1703の残りの上に続く。走査の始めから走査の終わりまで、コントローラ1717は一定の走査速度でエネルギービームを走査し、すなわちx偏向電圧の傾きは変化しない。
【0104】
図18はまた、図17B~Cの例における走査の始めから走査の終わりまでの、印加ビーム出力パラメータ1800の時間に対するグラフを示す。走査の始まりにおいて、エネルギービームが融合されることがない粉末床1705のエリアの上を走査しているため、コントローラ1717はビーム出力をオフ(すなわちゼロ出力)にし続けることができる。この点において、エネルギービームがオフである間の期間に関連付けられる印加ビーム出力パラメータ値はないことを理解すべきである。エネルギービームが厚みのある粉末レイヤ厚1711エリアに達すると、すなわちこの粉末レイヤにおける粉末融合の始まりにおいて、コントローラ1717はメモリから印加ビーム出力パラメータ1800の値を読み取ることができる。この例において、印加ビーム出力は高ビーム出力値であり、コントローラ1717は、ビームが厚みのある粉末レイヤ厚のエリアで粉末材料を融合する際エネルギービーム源1713を制御して高出力エネルギービームを発生させることができ、これは図17Bにおいて高出力エネルギービーム1719として示されている。エネルギービームが厚みのある粉末レイヤ厚1711エリアの端部に達すると、コントローラ1717はメモリから印加ビーム出力パラメータ1800の値を読み取ることができ、読み取られた印加ビーム出力パラメータ値は異なる値、すなわち低ビーム出力値である。したがって、コントローラ1717は、ビームが造形片1703の残りで粉末材料を融合する際エネルギービーム源1713を制御して低出力エネルギービームを発生させることができ、これは図17Cにおいて低出力エネルギービーム1721として示されている。このやり方で、例えば、粉末レイヤ1707で粉末材料を融合することは、印加ビーム出力パラメータ1800の複数の値に基づくことができ、例えば低ビーム出力および高ビーム出力がレイヤにおいて粉末材料を融合させるために使用される。換言すると、複数の非ゼロビーム出力を粉末レイヤにあてることができる。エネルギービームが造形片の端部(図示せず)に達すると、コントローラ1717はビーム出力をオフにすることができる。
【0105】
様々な実施形態において、PBF装置1700の印刷動作に先立って、印加ビーム出力パラメータ1800の値はコントローラによって設定され、メモリに記憶することができる。様々な実施形態において、印加ビーム出力パラメータ1800の値は印刷動作の間、例えばコントローラによって、またスライス縁部情報、たわみ検出などのフィードバック情報に基づいて、修正されることができる。
【0106】
図16および図18の例示の実施形態ならびに本明細書で説明される他の例示の実施形態は、スライス印刷動作の間異なる値のパラメータが順次(すなわち、次から次へと)あてられる例を図示しているが、異なる値のパラメータが順次ではなくあてられてもよいことを理解すべきである。例えば、粉末レイヤのあるエリアにおいて低印加ビーム出力を使用して造形片を融合することができ、粉末レイヤの別のエリアを走査している間エネルギービームはオフにすることができ、他のエリアではエネルギービームを高印加ビーム出力で造形片にあてることができる。
【0107】
図19はPBF装置において可変の印刷パラメータでのスライス印刷動作の例示の方法のフローチャートである。PBF装置はスライス印刷動作の間異なる値を取るように、1つのパラメータ(または複数のパラメータ)を設定することができる(1901)。換言すると、PBF装置は、ある期間の間第1の時間に第1の値を取るように、またその期間の間第1の値とは異なる第2の値を取るように、1つのパラメータ(または複数のパラメータ)を設定することができ、ここで期間とは粉末のレイヤの堆積の始まりにおいて開始し、レイヤの融合が終わるときに終了するものである。PBF装置はパラメータの第1のサブセットに基づいて粉末材料のレイヤを堆積させることができる(1902)。PBF装置はパラメータの第2のサブセットに基づいてエネルギービームを発生させ(1903)、パラメータの第3のサブセットに基づいて複数の場所でレイヤを融合させるためにエネルギービームをあてることができる(1904)。
【0108】
図20はPBF装置において走査速度パラメータの可変の値でのスライス印刷動作の例示の方法のフローチャートである。PBF装置は粉末材料のレイヤを堆積させることができ(2001)、エネルギービームを発生させることができる(2002)。PBF装置は粉末レイヤにおいて第1の場所で第1の走査速度でビームを走査することによってエネルギービームをあてることができる(2003)。PBF装置は粉末レイヤにおいて第2の場所で第2の走査速度でビームを走査することによってエネルギービームをあてることができる(2004)。
【0109】
図21はPBF装置において印加ビーム出力パラメータの可変の値でのスライス印刷動作の例示の方法のフローチャートである。PBF装置は粉末材料のレイヤを堆積させることができる(2101)。PBF装置は第1の出力でエネルギービームを発生させ(2102)、第1の時間に第1の出力でエネルギービームをあてることができる(2103)。PBF装置は第2の出力でエネルギービームを発生させ(2104)、第2の時間に第2の出力でエネルギービームをあてることができる(2105)。
【0110】
様々な実施形態は本明細書で説明される例示の実施形態の組み合わせを含むことができることが了解されるべきである。例えば、粉末レイヤは複数の材料で堆積させ、次いで異なる走査速度および/または印加ビーム出力を使用して融合させることができる、などである。
【0111】
前述の説明はあらゆる当業者が本明細書で説明される様々な態様を実践できるようにするために提供される。本開示を通して提示されるこれらの例示の実施形態に対する様々な修正は、当業者にとって容易に明らかになるであろう。したがって、特許請求の範囲は本開示を通して提示されるこれらの例示の実施形態に限定されるよう意図されていないが、文言通りの特許請求の範囲と一貫する完全な範囲に与えられるものである。既知の、または後に当業者に知られることになる、本開示を通して説明されるこれらの例示の実施形態の要素に対するすべての構造的な、および機能的な等価物は、特許請求の範囲によって包含されるよう意図されている。さらに、本明細書で開示されているものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に述べられているかどうかに関わらず、公共に捧げられることを意図されていない。要素が語句「means for」を使用して明示的に述べられない限り、または方法クレームの場合、要素が語句「step for」を使用して述べられない限り、クレーム要素は、米国特許法第112条(f)の既定、または該当する管轄権にある類似の法の下で解釈されない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
【外国語明細書】