(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009958
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】腎不全を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20240116BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240116BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240116BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240116BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240116BHJP
C07K 7/14 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P13/12
A61K45/00
A61K31/165
A61K31/137
A61P43/00 121
A61K38/10
C07K7/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177200
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2021168488の分割
【原出願日】2014-04-25
(31)【優先権主張番号】61/816,578
(32)【優先日】2013-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593216099
【氏名又は名称】ラ ホヤ ファーマシューティカル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】La Jolla Pharmaceutical Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティドマーシュ,ジョージ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】移植前に患者を支援するために少なくとも十分な腎機能を改善するための新たな薬剤を提供する。
【解決手段】アンジオテンシンIIを含む組成物を投与する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者における肝硬変に伴う腎不全を処置する方法であって、アンジオテンシンIIを含む組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
投与前に、患者が1.5mg/dlを超える血清クレアチニンレベルを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与前に、患者が40ml/分未満の24時間の血清クレアチニンクリアランスを有している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
それを必要とする患者における肝硬変に伴う腎不全を処置する方法であって、
患者の血清クレアチニンレベル及び/又は24時間の血清クレアチニンクリアランスを測定することと、
a)測定した血清クレアチニンレベルが1.5mg/dlを超える、及び/又は、b)測定した24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分未満である場合には、患者にアンジオテンシンIIを含む組成物を投与することと
を含む方法。
【請求項5】
腎不全が肝腎症候群である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
患者がヒトである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アンジオテンシンIIを、0.032ng/kg/分、0.32ng/kg/分、1.6ng/kg/分、若しくは1ng/kg/分以上の速度で、又は、0.5ng/分から100μg/分、0.4から45μg/分、若しくは0.12から19μg/分の範囲の速度で投与することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
組成物が、少なくとも16μg/mlのアンジオテンシンIIの濃度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも約10~15mmHgの血圧の上昇を達成するのに十分な速度で組成物を投与して、その後、任意選択で、少なくとも約30分間投与し続けることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
患者における平均動脈圧に基づいて可変速度で、組成物を投与することを含み、平均動脈圧が80mmHg、90mmHg、100mmHg、110mmHg、又は120mmHgを超えない、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも8時間、少なくとも24時間、及び8時間から24時間までから選択される期間にわたって、組成物を投与することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2~6日、例えば2~11日間連続して、組成物を投与することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
2~6日間連続して、組成物を投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2~6日、例えば2~11日の期間にわたって1日当たり8時間、組成物が投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アンジオテンシン療法に対する、肝硬変に伴う腎不全の患者の応答を評価する方法であって、アンジオテンシンIIを含む組成物の初期用量を患者に投与して、治療パラメーターの変化について患者を検査することを含む方法。
【請求項16】
治療パラメーターが、血清クレアチニンレベル、推定糸球体濾過率、血清ナトリウムレベル、血清カリウムレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血圧である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者の血清クレアチニンレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血清カリウムレベルの減少、或いは患者の血圧、血清ナトリウムレベル、又は推定糸球体濾過率の上昇が、アンジオテンシン療法に対する陽性応答の指標である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者が陽性応答を示す場合には、患者にアンジオテンシンIIの追加の用量を投与することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組成物を患者に投与する前に、患者の血清クレアチニンレベル及び/又は24時間の血清クレアチニンクリアランスを測定すること、並びにa)測定した血清クレアチニンレベルが1.5mg/dlを超える、及び/又は、b)測定した24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分未満である場合には、患者に組成物を投与することをさらに含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
投与の少なくとも30分後、好ましくは少なくとも1時間後に、検査を実施する、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
投与の8時間未満後、好ましくは6時間未満後に、検査を実施する、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
初期用量が、1ng/kg/分未満又は約1ng/kg/分である、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
アンジオテンシンIIが、5-バリンアンジオテンシンIIアセテート、5-バリンアンジオテンシンIIアミド、5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアセテート、及び5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアミド、又はそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
組成物が非経口投与に適している、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
非経口投与が注射又は静脈注入である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組成物が追加の医薬薬剤をさらに含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
追加の医薬薬剤が、肝硬変に伴う腎不全を処置するために有用である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
追加の医薬薬剤が、テルリプレシン、ノルエピネフリン、又はミドドリンである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2013年4月26日に出願された米国仮特許出願第61/816,578号に基づく優先権の利益を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
肝腎症候群(HRS)は肝硬変や劇症肝不全に伴う進行性腎不全である。HRSは、腎機能が急速に低下し6ヶ月以内に50%を超える死亡率の結果となる生命に係わる状態である。HRSは、診断の1年以内に肝硬変患者の18%で、5年以内に患者の39%で発生する。腎不全の進行速度に基づいて、血清クレアチニンレベルによって測定されるように、HRSは2つのタイプに分類される。1型HRSは、より急速に進行するタイプであり、2週間以内に2.5mg/dLを超える血清クレアチニンの100%増加によって特徴付けられる。10%未満は入院後も生存し、生存期間中央値はわずか2週間である。2型HRSは、血清クレアチニンが徐々に上昇して、より遅く進行する。しかし、2型HRS患者は突然腎不全を発症し、1型HRSと診断されることになり得る。HRSは自発的に発生し得るが、他の一般的な急発症要因は細菌感染、消化管出血、治療穿刺などである。
【0003】
悪化する肝機能は、内臓への循環の変化の根本的な原因であり、腎臓の血流及び血管緊張を変化させると信じられている。HRSにおける腎不全は、血流のこれらの変化の結果である。肝障害のある患者の門脈における上昇した圧(ポータル高血圧)の存在は、全身動脈の充填不足を引き起こす内臓循環における血管拡張物質の分泌をもたらすと考えられている。この低血圧状態は、全身血圧を回復する手段として、腎臓で血管収縮を誘発する。しかし、この回復の効果は、循環中の血管拡張のメディエーターに対抗するには不十分であり、腎循環の永続的な「充填不足」と腎血管収縮の悪化をもたらし、腎不全にいたる。
【0004】
HRSは、腹部(腹水)内の流体の発達で始まる門脈循環における上昇した圧力に関連した疾患のスペクトルの一部であると考えられている。腹水は、HRSに伴う主な合併症であり、障害を受けたナトリウム排泄によって悪化する。このスペクトルは、利尿薬を使用しても流体をクリアにするのに十分なナトリウムを腎臓が排泄することができない利尿剤耐性腹水を続行する。2型HRSのあるほとんどの個体は、腎機能の悪化を発症する前に、利尿剤耐性腹水を持っている。
【0005】
肝移植は、HRSのための唯一利用可能な治療法であるが、しかし、ほとんどの患者は、この手続きを受けるのに十分に長くは生存しない。現在、HRSのための利用可能な処置が、患者を移植に橋渡しするための努力を大いに支援し行われている。HRSの患者は、低血清ナトリウムレベルと低血圧にもかかわらず、慢性全身ナトリウムの過負荷を持っているので、塩の乏しいアルブミンでの容量サポートが処置の中心である。テルリプレシンやバソプレシンなどの血管収縮薬の使用は、血管拡張した内臓循環内の圧力を回復することで有効であると考えられている。しかし、減少した臓器灌流の副作用及びナトリウム排泄に対する限界的な効果は、それらの有用性を限定している(Gines,P.ら、肝腎症候群、Lancet, 2003. 362(9398): p. 1819-27; Lata, J.、肝腎症候群、World J Gastroenterol, 2012. 18(36): p. 4978-84; Salerno, F.ら、肝硬変における肝腎症候群の診断、予防及び処置、Gut, 2007. 56(9): p. 1310-8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、移植前に患者の支援を助けるために少なくとも十分な腎機能を改善するための新たな薬剤の緊急の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
部分的には、本開示は、肝硬変に伴う腎不全を処置するためのアンジオテンシンIIを含む組成物を投与する方法を提案する。いくつかの実施形態では、アンジオテンシンIIを含む組成物の投与前に、患者は1.5mg/dlを超える血清クレアチニンレベルを有していてもよい。1.5mg/dlを超える血清クレアチニンレベルに加えて(又は場合によってはその代わりに)、患者はまた40ml/分未満の24時間の血清クレアチニンクリアランスを有することができる。いくつかの実施形態では、患者における肝硬変に伴う腎不全を処置する方法は、患者の血清クレアチニンレベル及び/又は24時間の血清クレアチニンクリアランスを測定すること、並びにa)測定した血清クレアチニンレベルが1.5mg/dlを超える、及び/又は、b)測定した24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分未満である場合には、患者にアンジオテンシンIIを含む組成物を投与することを含むことができる。そのような特定の実施形態では、測定された血清クレアチニンレベルが1.5mg/dl以下、及び/又は、測定された24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分以上である場合には、患者に、アンジオテンシンIIを含む組成物は投与されない。腎不全は肝腎症候群であってもよい。患者はヒトであってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、アンジオテンシンIIを含む組成物は、0.032ng/kg/分、0.32ng/kg/分、1.6ng/kg/分、若しくは1ng/kg/分以上の速度で投与してもよく、又は、0.5ng/分から100μg/分、0.4から45μg/分、若しくは0.12から19μg/分の範囲の速度で投与してもよい。組成物中のアンジオテンシンIIの濃度は、少なくとも16μg/mlであってもよい。アンジオテンシンIIを含む組成物は、少なくとも約10~15mmHgの血圧の上昇を達成するのに十分な速度で投与することができ、その後、任意選択で、少なくとも約30分間投与し続けてもよい。いくつかの実施形態では、アンジオテンシンIIを含む組成物は、患者の平均動脈圧に基づいて、可変速度で投与することができ、平均動脈圧は80mmHg、90mmHg、100mmHg、110mmHg又は120mmHgを超えない。例えば、このレベルで、又は所定の範囲(例えば、80~110mmHg)内に平均動脈圧を維持するために、例えば、アンジオテンシンIIの投与速度を、処置中に定期的に又は散発的に取得した患者の平均動脈圧の測定値に応じて、手動及び/又は自動でモジュレートすることができる。アンジオテンシンIIを含む組成物は、少なくとも8時間、少なくとも24時間、又は8時間から24時間までの期間にわたって投与することができる。アンジオテンシンIIを含む組成物は、2~11日などの少なくとも2~6日間連続して、2~6日間連続して、又は、2~11日などの少なくとも2~6日の期間にわたって1日当たり8時間投与することができる。
【0009】
別の態様では、本発明は、アンジオテンシン療法に対する、肝硬変(肝腎症候群など)に伴う腎不全の患者(ヒトなど)の応答を評価する方法であって、アンジオテンシンIIを含む組成物の初期用量(治療用量又はサブ治療用量であってもよく、例えば、1ng/kg/分未満、又は約1ng/kg/分の用量)を患者に投与し、そして、治療パラメーター(例えば、血清クレアチニンレベル、推定糸球体濾過率、血清ナトリウムレベル、血清カリウムレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血圧)の変化について患者を検査することを含む方法を提供する。例えば、患者の治療パラメーターは、初期用量を投与する前、及び、初期用量を投与した後(例えば、初期用量を投与した後、少なくとも30分後、好ましくは少なくとも1時間後及び/又は8時間後までに、好ましくは、1から6時間の間などの6時間後までに)、再び評価することができる。初期用量投与後の治療パラメーターの評価と初期用量投与前に行った評価との比較により、アンジオテンシン療法の結果として治療パラメーターが上昇しているか又は減少しているかどうかが示されるであろう。典型的には、患者の血清クレアチニンレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血清カリウムレベルの減少、或いは患者の血圧、血清ナトリウムレベル、又は推定糸球体濾過率の上昇が、アンジオテンシン療法に対する陽性応答の指標である。特定の実施形態では、患者が治療に対する陽性応答を示す場合には、該方法はさらに、患者へのアンジオテンシンIIの追加の用量を投与することを含む。患者が陰性応答を示す場合には(例えば、患者の血清クレアチニンレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血清カリウムレベルの上昇、或いは患者の血圧、血清ナトリウムレベル、又は推定糸球体濾過率の減少)、患者に、典型的には、アンジオテンシン療法の追加の用量は投与されない。患者が応答を全く示さない、又は有意でない応答を示す場合には、該方法はさらに、初期用量よりも高用量の組成物を投与することを含むことができ、高用量に対する応答について患者をさらに検査することを含むことができる。代替として、患者が応答を全く示さない、又は有意でない応答を示す場合には、患者は、アンジオテンシン療法のさらなる用量を投与されないこともあり得る。
【0010】
応答を評価する方法の特定の実施形態では、その方法は、患者に組成物を投与する前に、患者の血清クレアチニンレベル及び/又は24時間の血清クレアチニンクリアランスを測定すること、並びにa)測定した血清クレアチニンレベルが1.5mg/dlを超える、及び/又は、b)測定した24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分未満である場合には、患者に組成物を投与することをさらに含むことができる。特定のそのような実施形態では、測定された血清クレアチニンレベルが1.5mg/dl以下であり、及び/又は、測定された24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分以上である場合には、患者は、アンジオテンシンIIを含む組成物は投与されない。
【0011】
いくつかの実施形態では、アンジオテンシンIIを含む組成物は、5-バリンアンジオテンシンIIアセテート、5-バリンアンジオテンシンIIアミド、5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアセテート、及び5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアミド、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択することができ、好ましくは、現在の良好な製造条件(cGMP)の下で製造される。アンジオテンシンIIを含む組成物は、非経口投与のために、例えば、注射又は静脈内注入のために適切であり得る。いくつかの実施形態では、アンジオテンシンIIを含む組成物は、追加の医薬薬剤、例えば、テルリプレシン、ノルエピネフリン、又はミドドリンなどの、肝硬変と関連する腎不全の処置に有用な医薬薬剤をさらに含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
アンジオテンシンIIは、血管収縮及びナトリウム再吸収を介して血圧を調節する体内で天然に産生されるペプチドホルモンである。アンジオテンシンII投与の血行動態効果は多数の臨床研究の対象となってきており、全身及び腎臓の血流に対する有意な効果を証明している(Harrison-Bernard, L.M.、「腎レニン-アンジオテンシンシステム」、Adv Physiol Educ, 2009. 33(4): p.270-4)。アンジオテンシンIIは、血管平滑筋の緊張と細胞外液の恒常性の調節を介して血圧をモジュレートするレニンアンジオテンシンアルドステロンシステム(RAAS)によって産生されるホルモンである。アンジオテンシンIIは、血管収縮及びナトリウム保持を誘発することにより血管系への効果を媒介するが、高血圧のための多くの治療法の対象でもる。その全身効果に加えて、アンジオテンシンIIは、腎臓の遠心性細動脈に対して顕著な効果を有しており、血流が減少するとき、糸球体濾過を維持する。アンジオテンシンIIはまた、近位尿細管でのNa+/H+交換体を刺激して、アルドステロンとバソプレシンの放出を誘発することにより、腎臓におけるナトリウム再吸収を調節する(Harrison-Bernard, L.M.、「腎レニン-アンジオテンシンシステム」、Adv Physiol Educ, 2009. 33(4): p.270-4)。
【0013】
しかしながら、アンジオテンシンIIの逆説的な効果は、肝硬変と腹水のある患者に起こる。正常な対象でナトリウム再吸収を上昇させるにもかかわらず、アンジオテンシンIIは、肝硬変と腹水のある患者におけるアンジオテンシンの阻害が逆の効果(すなわち、減少した尿ナトリウムと排出)を生み出しながら、これらの患者における顕著なナトリウム利尿と尿排出を誘発する(Ames, R.P.ら、「腹水を伴う肝硬変及び正常人での、アンジオテンシンIiとノルエピネフリンの長期の注入並びに血圧、電解質バランス、及びアルドステロンとコルチゾールの分泌」、J Clin Invest, 1965. 44: p.1171-86; Lianos, E.A.ら、「肝硬変でのアンジオテンシン誘発性ナトリウム排泄パターン:腎プロスタグランジンの役割」、Kidney Int, 1982. 21(1): p.70-7; Laragh, J.H.ら、「アンジオテンシンII、ノルエピネフリン、及び腹水を伴う肝硬変及び正常人での電解質と水の腎輸送」、J Clin Invest, 1963. 42(7): p.1179-92; McCloy, R.M.ら、「内因性アルドステロン分泌の不存在下での肝硬変でのアンジオテンシン誘発性ナトリウム利尿」、Ann Intern Med, 1966. 64(6): p.1271-6; Daskalopoulos, G.ら、「肝硬変と腹水の患者の腎機能に対するカプトプリルの効果」、J Hepatol, 1987. 4(3): p.330-6)。アンジオテンシンIIによる尿排出及びナトリウム排泄の上昇は、ノルエピネフリンによって得られたものよりもはるかに顕著である(Laragh, J.H.ら)。第2の研究(Ames, R.P.ら)により、ノルエピネフリンと比べてナトリウム排泄のより大きな上昇を引き起こすアンジオテンシンIIに関して、同様の結果が得られた。さらに、これらのデータにより、アンジオテンシンIIの産生を阻害するアンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル)の使用は、ナトリウム排泄及び尿排出の両方を大幅に減少させた(Daskalopoulos, G.ら)。
【0014】
様々なメカニズムが提案されているが、アンジオテンシンIIの差動的活性が肝硬変と腹水のある患者に効果を及ぼすメカニズムは不明である。Lianosらは、ナトリウム利尿によりアンジオテンシンIIに応答する肝硬変の患者は腎内プロスタグランジン産生を上昇させていることを提案した。このモデルでは、アンジオテンシンIIでの処置は、腎内プロスタグランジンの放出の上昇及び糸球体濾過における改善を引き起こす。Sansoeらは、正常な個体よりもはるかに高い循環レベルにもかかわらず、これらの患者では、アンジオテンシンIIの産生が不十分であることを提案している(Sansoe, G.ら、「不適切に低いアンジオテンシンIIの生成:非代償性肝硬変の患者での腎機能低下と生存率を決定する要因」、J Hepatol, 2004. 40(3): p.417-23)。肝硬変患者ではアンジオテンシンIIに対する応答性が低下していることを証明するNewbyらの知見と相まって(Newby, D.E.ら、「肝硬変患者における末梢血管緊張:レニン-アンジオテンシンと交感神経系の役割」、Cardiovasc Res, 1998. 38(1): p.221-8)、これらの患者はアンジオテンシンIIの相対的な欠乏を有し、減少した糸球体濾過がこの欠乏に起因する一般血管拡張の結果である可能性がある。上昇した血管拡張は、上昇した一酸化窒素(NO)合成に起因している(Helmy, A.ら、「一酸化窒素は前腹水性肝硬変を有する患者におけるアンジオテンシンIIに対する減少した血管収縮応答を媒介する」、J Hepatol, 2003. 38(1): p.44-50)。アンジオテンシンII誘発性ナトリウム排泄の正確なメカニズムは同定されていないが、もっともらしい仮説が存在する。
【0015】
アンジオテンシンIIは肝硬変と腹水のある患者における顕著なナトリウム利尿及び尿排出を誘発することが示されたとしても、これらの研究に含まれるいずれの患者も腎不全を示さなかった。HRSの現在の血管収縮療法はナトリウム調節不全を修正する能力に制限があることから、肝硬変と腹水のある患者におけるアンジオテンシンIIの使用は十分に許容されているため、アンジオテンシンIIは重要な治療上の利点を提供し得る。
【0016】
部分的には、本開示は、アンジオテンシンIIを含む組成物は肝腎症候群(HRS)を処置するために使用できることを証明する。その処置はHRSに限定されず、肝硬変又は劇症肝不全に伴う任意の腎不全を含むことができる。上記したアンジオテンシンIIの逆説的な効果、すなわち、顕著なナトリウム利尿及び/又は尿排出から患者が利益を得ることができる他の疾患の処置を、この方法が含むことは当業者により理解されるであろう。いくつかの実施形態では、HRSはI型又はII型であってもよい。腎不全自体は、任意の肝硬変のタイプ(その原因に関わらず)、重度のアルコール及び/又は非アルコール性肝炎、劇症肝不全、肝機能の悪化を引き起こす任意の感染及び/又は傷害、消化管における出血、門脈高血圧や門脈での高圧、ネフローゼ症候群、腹水、腹水液の感染、大量の腹水液の除去を含む肝疾患の合併症、利尿薬の乱用などの疾患に伴い得る。腎不全になり得る腹水の他の原因としては、心不全、バッド・キアリ症候群又は静脈閉塞症などの肝静脈閉塞、収縮性心膜炎、クワシオルコル(小児タンパク質エネルギー栄養失調)、癌(原発性腹膜癌腫及び転移)、結核又は特発性細菌性腹膜炎(SBP)などの感染、膵炎、漿膜炎、遺伝性血管浮腫、メグス症候群、血管炎、甲状腺機能低下症、腎臓透析、腹膜中皮腫が挙げられる。腎不全になり得る肝硬変の原因としては、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、C型肝炎、B型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ1-アンチトリプシン欠損症、心臓性肝硬変、ガラクトース血症、糖原病IV型、嚢胞性線維症、肝毒性薬物又は毒素、リソソーム酸性リパーゼ欠損症などを挙げることができる。
【0017】
診断基準
いくつかの診断基準は、個別に又は組み合わせて、患者がHRSに罹患しているかどうか、又は、アンジオテンシンIIを含む組成物が特定の患者に治療的であり得るかどうかを決定するのに使用することができる。HRSの診断基準は、1.5mg/dlを超える血清クレアチニンレベルである。以下の基準の1つ以上を満たす腎不全及び肝硬変を有する患者はまた、アンジオテンシン療法の候補者であり得る。例えば、進行した肝不全及び/又は門脈圧亢進症を伴う慢性若しくは急性肝疾患;腹水を伴う肝硬変;1.5mg/dlより大きい血清クレアチニンレベル、及び/又は、40ml/分未満の24時間のクレアチニンクリアランス;アルブミンの推奨用量は1日当たり体重の1g/kgで最大で100g/日までであり得るアルブミンによる利尿撤退と体積膨張の少なくとも2日後に血清クレアチニンの改善がない(1.5mg/dl以下のレベルまで減少);利尿撤退と等張食塩水の1.5Lによる血漿量の膨張に続いて、1.5mg/dL未満までの血清クレアチニンの減少、又は40mL/分以上へのクレアチニンクリアランスの上昇として定義される腎機能の改善が持続的にない;ショック、継続的な細菌感染症、及び腎毒性薬物による現在若しくは最近の処置がない;胃腸液損失(繰り返される嘔吐や激しい下痢)又は腎流体損失がない;500mg/dL未満の蛋白尿、及び閉塞性尿路疾患若しくは腎実質性疾患の超音波証拠がない;500mg/日より大きい蛋白尿により示される実質性腎疾患、顕微鏡的血尿(高倍率視野当たり50を超える赤血球)、及び/又は異常な腎臓の超音波検査がない;500mg/日未満の尿量;10mEq/L未満の尿酸ナトリウム;尿の浸透圧が血漿浸透圧よりも大きいこともあり得る;尿中の赤血球が高倍率視野当たり50未満であり得るなどを有する患者が、アンジオテンシン療法から利益を得ることができる。
【0018】
アンジオテンシンII治療剤
本開示の組成物及び方法において使用することができるアンジオテンシンII治療剤は、5-イソロイシンアンジオテンシンIIとも呼ばれるAsp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe[配列番号1]であり得る。配列番号1は、ヒト及びウマ、ブタなどの他の種に天然に存在するオクタペプチドである。5番目のイソロイシンをバリンに置換することができ、その結果、5-バリンアンジオテンシンII、Asp-Arg-Val-Tyr-Val-His-Pro-Phe[配列番号2]となる。[Asn1-Phe4]-アンジオテンシンII[配列番号3]、ヘキサペプチドVal-Tyr-Ile-His-Pro-Phe[配列番号4]、ノナペプチドAsn-Arg-Val-Tyr-Tyr-Val-His-Pro-Phe[配列番号5]、[Asn1-Ileu5-Ileu8]-アンジオテンシンII[配列番号6]、[Asn1-Ileu5-Ala8]-アンジオテンシンII[配列番号7]、及び[Asn1-diiodoTyr4-Ileu5]-アンジオテンシンII[配列番号8]などの他のアンジオテンシンII類似体も使用することができる。用語「アンジオテンシンII」は、さらなる特定がなければ、それらの組合せのみならずこれらの様々な任意の形態を指すことを意図する。
【0019】
本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるアンジオテンシンIIの配列は、上記のアンジオテンシンIIの配列に相同であってもよい。特定の実施形態では、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、及び/又は8と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である単離された若しくは組換え型のアミノ酸配列を含む。任意のそのような変異配列を、先行するパラグラフで記載したアンジオテンシンIIの代わりに使用することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、処置のために使用される組成物に含まれアンジオテンシンIIは、5-バリンアンジオテンシンIIアセテート、5-バリンアンジオテンシンIIアミド、5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアセテート、及び5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアミド、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択することができ、好ましくは、現在の良好な製造条件(cGMP)の下で製造される。いくつかの実施形態では、組成物は、異なる割合でアンジオテンシンIIの異なる形態、例えば、ヘキサペプチド及びノナペプチドアンジオテンシンの混合物を含んでもよい。
【0021】
同様に、アンジオテンシンII治療剤は、米国特許出願公開第2011/0081371号に開示されたペプチド若しくは結合体のペグ化形態を含む、任意の適切な塩、脱保護された形態、アセチル化形態、脱アセチル化された形態、及び/又は上記ペプチドのプロドラッグ形態として使用することができる。用語「プロドラッグ」は、生理条件下において上記したペプチドを生成する又は放出することができる任意の前駆体化合物を指す。このようなプロドラッグは、本発明のペプチドを形成するために選択的に切断される、より大きなペプチドであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、プロドラッグは、特定の内因性若しくは外因性酵素の作用によってアンジオテンシンIIになることができるアンジオテンシンI又はその相同体であってもよい。さらに、プロドラッグは、保護されたアミノ酸を有する、例えば、1つ以上のカルボン酸及び/又はアミノ基において保護基を有するペプチドを含む。アミノ基に適した保護基は、ベンジルオキシカルボニル、t--ブチルオキシカルボニル(BOC)、ホルミル、及びアセチル若しくはアシル基である。カルボン酸基に適した保護基は、ベンジルエステル又はt-ブチルエステルなどのエステルである。本発明はまた、アンジオテンシンII及び/又は、アミノ酸の置換、欠失、付加を有する(該置換及び付加は、標準的なD及びLアミノ酸並びに例えば、アミド化若しくはアセチル化アミノ酸などの修飾アミノ酸を含む)前駆体ペプチドの使用も意図しており、ここでは、ベースペプチド配列の治療活性は薬理学的に有用なレベルに維持される。
【0022】
治療有効物質の用量
用語「薬学的に有効な量」又は「治療有効量」は、例えば、患者における腎不全の処置に有効な、例えば、腎機能を改善する、及び/又は、疾患(例えば、腎不全)に罹患した患者の全般的な健康に有益な及び/又は望ましい変化をもたらす、アンジオテンシンIIなどの組成物又は治療薬剤の量を指す。本明細書で使用される用語「処置する」又は「処置」は、症状、臨床徴候、及び状態の根底にある病理を逆転し、減少させ、又は阻止して、いくぶんか対象の状態を改善する若しくは安定化させることを含むことを、当業者は認識するであろう。本明細書中で使用され、そして当技術分野において理解されるように、「処置」は、臨床結果を含む有益な又は望ましい結果を得るためのアプローチである。有益な又は望ましい臨床結果としては、それらに限定されないが、1つ以上の症状又は状態の軽減若しくは改善、疾患又はその症状の程度の軽減、疾患又はその症状の安定化した(すなわち、悪化しない)状態、疾患又はその症状の拡大の予防、疾患又はその症状の進行の遅延若しくは低下、疾患状態又はその症状の改善若しくは緩和、及び寛解(部分的又は全体的に関わらず)を、検出可能又は検出不能かどうかに関わらず、挙げることができる。「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存と比較して生存の延長を意味することができる。「薬学的に有効な量」又は「治療有効量」はまた、患者の臨床症状を改善するのに必要な量を指す。本明細書に記載される治療方法又は腎不全を処置する方法は、腎不全又は腎不全を引き起こす疾患を「治す」ことと解釈される又は限定されるものでもない。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、この用語はその活性成分のみを指す。組合せに適用される場合、この用語は、連続的に又は同時に組み合わせて投与するかどうかに関わらず、治療効果をもたらす活性成分の組み合わせた量を指す。特に断りのない限り、本発明の各実施形態は、単独で又は本発明の任意の1つ以上の他の実施形態と組み合わせて使用することができると理解されるべきである。
【0023】
いくつかの実施形態では、患者に注入される組成物中における治療的に有効な物質(例えば、アンジオテンシンII)の総量は、その患者に適した総量である。当業者は、異なる個体はアンジオテンシン治療剤の異なる総量を必要とし得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、アンジオテンシン治療剤の量は、薬学的に有効な量である。当業者は、例えば、患者の年齢、体重、及び健康状態などの要因に基づいて、患者を処置するのに必要な組成物中におけるアンジオテンシン治療剤の量を決定することができるであろう。アンジオテンシン治療剤(例えば、アンジオテンシンII)の濃度は、静脈内投与溶液中の溶解性及び投与することができる流体の量に部分的に依存する。例えば、アンジオテンシン治療剤(例えば、アンジオテンシンII)の投与速度は、注射可能な組成物中に約0.032ng/kg/分から約100μg/kg/分までであることができる。いくつかの実施形態では、アンジオテンシン治療剤の投与速度は、約0.4から約45μg/分まで、約0.12から約19μg/分まで、約3.8から約33.8μg/分まで、約0.16から約2.6μg/分までなどであり得る。特定の実施形態では、アンジオテンシン治療剤の投与速度は、約0.032ng/kg/分、約0.1ng/kg/分、約0.32ng/kg/分、約1ng/kg/分、約1.6ng/kg/分、約2ng/kg/分、約3ng/kg/分、約4ng/kg/分、約5ng/kg/分、約6ng/kg/分、約7ng/kg/分、約8ng/kg/分、約9ng/kg/分、約10ng/kg/分、約15ng/kg/分、約20ng/kg/分、約25ng/kg/分、約30ng/kg/分、約40ng/kg/分、約50ng/kg/分、約60ng/kg/分、約70ng/kg/分、約80ng/kg/分、約90ng/kg/分、約100ng/kg/分、約200ng/kg/分、約300ng/kg/分、約400ng/kg/分、約500ng/kg/分、約600ng/kg/分、約700ng/kg/分、約800ng/kg/分、約900ng/kg/分、約1μg/kg/分、約1.1μg/kg/分、約1.2μg/kg/分、約1.3μg/kg/分、約1.4μg/kg/分、約1.5μg/kg/分、約1.5μg/kg/分、約1.6μg/kg/分、約1.7μg/kg/分、約1.8μg/kg/分、約1.9μg/kg/分、約2μg/kg/分、約2.1μg/kg/分、約2.2μg/kg/分、約2.3μg/kg/分、約2.4μg/kg/分、約2.5μg/kg/分、約2.6μg/kg/分、約2.7μg/kg/分、約2.8μg/kg/分、約2.9μg/kg/分、約3.0μg/kg/分、約3.1μg/kg/分、約3.2μg/kg/分、約3.3μg/kg/分、約3.4μg/kg/分、約3.5μg/kg/分、約3.6μg/kg/分、約3.7μg/kg/分、約3.8μg/kg/分、約3.9μg/kg/分、約4.0μg/kg/分、約4.1μg/kg/分、約4.2μg/kg/分、約4.3μg/kg/分、約4.4μg/kg/分、約4.5μg/kg/分、約4.6μg/kg/分、約4.7μg/kg/分、約4.8μg/kg/分、約4.9μg/kg/分、約5.0μg/kg/分、約6μg/kg/分、約7μg/kg/分、約8μg/kg/分、約9μg/kg/分、約10μg/kg/分、約11μg/kg/分、約12μg/kg/分、約13μg/kg/分、約14μg/kg/分、約15μg/kg/分、約16μg/kg/分、約17μg/kg/分、約18μg/kg/分、約19μg/kg/分、約20μg/kg/分、約25μg/kg/分、約30μg/kg/分、約31μg/kg/分、約32μg/kg/分、約33μg/kg/分、約33.8μg/kg/分、約34μg/kg/分、約35μg/kg/分、約40μg/kg/分、約45μg/kg/分、約50μg/kg/分、約55μg/kg/分、約60μg/kg/分、約65μg/kg/分、約70μg/kg/分、約75μg/kg/分、約80μg/kg/分、約85μg/kg/分、約90μg/kg/分、約95μg/kg/分、約100μg/kg/分などであり得る。
【0024】
投与される組成物中のアンジオテンシン治療剤(例えば、アンジオテンシンII)の濃度は、少なくとも16μg/mlであることができる。いくつかの実施形態では、アンジオテンシン治療剤の濃度は、約1.0μg/ml、約2.0μg/ml、約3.0μg/ml、約4.0μg/ml、約5.0μg/ml、約6.0μg/ml、約7.0μg/ml、約8.0μg/ml、約9.0μg/ml、約10.0μg/ml、約11.0μg/ml、約12.0μg/ml、約13.0μg/ml、約14.0μg/ml、約15.0μg/mlなどであり得る。一般的に、アンジオテンシンIIは血圧を上昇させ、そして肝硬変を有する患者(低血圧である)は、正常な対象において観察されるものと同様の昇圧応答を示すためにより多い用量を必要とし得る。アンジオテンシン治療剤(例えば、アンジオテンシンII)を含む組成物は、少なくとも約10~15mmHgの血圧上昇を達成するのに十分な速度で投与することができ、任意選択で、少なくとも投与されるアンジオテンシン治療剤は、腎血管抵抗、腎血流、濾過画分、平均動脈圧などの他の生理学的パラメーターにおける変化に応じて変動させることもできる。例えば、アンジオテンシン治療剤の投与速度は、約0.5ng/kg/分から約10ng/kg/分までで開始してもよく、平均動脈圧(MAP)に基づいて上昇される。いくつかの実施形態では、投与速度は、MAPが約70mmHg、約80mmHg、約90mmHg、約100mmHg、約110mmHgなどを超えないように、上昇させることができる。例えば、患者は、処置コースの一部又はすべての期間中のMAPの連続的、周期的、又は不定期的測定値を提供するモニターに接続することもできる。患者のMAPを所望の範囲(例えば、80~110mmHg) 以内又は所望の閾値より下、例えば、上記したように維持するために、投与速度は手動で(例えば、医師又は看護師によって)又は自動的に(例えば、モニターから受信したMAP値に応じて、組成物の送達をモジュレートすることができる医療機器によって)モジュレートされてもよい。
【0025】
アンジオテンシン治療剤を含む組成物は、少なくとも8時間、少なくとも24時間、及び8時間から24時間までから選択された期間にわたって投与することができる。アンジオテンシン治療剤を含む組成物は、2~11日などの少なくとも2~6日間継続して、2~6日間継続して、2~11日などの少なくとも2~6日の期間にわたって1日当たり8時間、投与することができる。延長された注入後は、離脱期間(数時間から数日)が有益であり得る。
【0026】
アンジオテンシン治療剤を含む組成物はさらに、1つ以上の追加の医薬薬剤を含んでもよい。例えば、静脈内投与されたアルブミンによる血漿の体積膨張が肝腎症候群を有する患者における腎機能を改善することが示されているので、アンジオテンシンIIはアルブミンと共に投与することができる。投与される追加の医薬薬剤の量は、アンジオテンシン治療剤及び追加の医薬薬剤を含む処置の累積的治療効果に応じて変動することができる。例えば、投与されるアルブミンの量は、最初の日に静脈内投与される体重1キログラム当たりアルブミン1グラムで、続いて毎日20から40グラムであってもよい。さらに他の追加の医薬薬剤は、ミドドリン、オクトレオチド、ソマトスタチン、バソプレシン類似体オルニプレシン、テルリプレシン、ペントキシフィリン、アセチルシステイン、ノルエピネフリン、ミソプロストールなどの任意の1つ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、上記で議論した疾患に関連するナトリウム排泄の障害を改善するために、他のナトリウム利尿ペプチドもまた、アンジオテンシン治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、ナトリウム利尿ペプチドとしては、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、及び/又はマンバ属ナトリウム利尿ペプチドなどの任意のタイプを挙げることができる。尿排出を誘発するために、いくつかの利尿化合物をアンジオテンシン治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、カフェイン、テオフィリン、テオブロミンなどのキサンチン;ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジドなどのチアジド;アミロライド、スピロノラクトン、トリアムテレン、カンレノ酸カリウムなどのカリウム保持性利尿薬;グルコース(特にコントロール不良の糖尿病における)、マンニトールなどの浸透利尿薬;ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミドなどのループ利尿薬;アセタゾラミド、ドルゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤;ドーパミンなどのNa-H交換アンタゴニスト;アキノキリンソウ、ジュニパーなどの水利尿薬;アンホテリシンB、クエン酸リチウムなどのアルギニンバソプレシン受容体2アンタゴニスト;CaCl2、NH4Clなどの酸性化塩;エタノール、水などの任意の1つ以上を、患者を処置するためのアンジオテンシン治療剤と組み合わせて使用することができる。上記した追加の医薬薬剤のリストは単なる例示であり、上記で議論した任意の疾患及び状態に関連する腎不全の処置に有用であり得る他の任意の医薬薬剤を含んでもよい。
【0027】
賦形剤
本発明の医薬組成物はまた、当技術分野で周知の希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、及び他の材料を含有していてもよい。用語「薬学的に許容される担体」は、本発明の治療的に有効な物質(アンジオテンシンIIなど)と一緒に患者に投与することができ、治療的に有効な物質の薬理学的活性を破壊しない非毒性の担体を指す。用語「薬学的に許容される」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げない非毒性の材料を意味する。担体の特性は投与経路に依存するであろう。用語「賦形剤」は、薬学的に活性な成分ではない製剤又は組成物中の添加剤を指す。
【0028】
当業者は、いずれか1つの賦形剤の選択は、任意の他の賦形剤の選択に影響を及ぼし得ることを理解するであろう。賦形剤の組合せは望ましくない影響を生み出すため、例えば、特定の賦形剤の選択は、1つ以上の追加の賦形剤の使用を排除することができる。当業者は、本発明の組成物に含めるために、いずれかの賦形剤を、もしあれば、経験的に決定することができるであろう。本発明の賦形剤としては、それらに限定されないが、共溶媒、可溶化剤、緩衝剤、pH調整剤、充填剤、界面活性剤、カプセル化剤、等張化剤、安定化剤、保護剤、及び粘度調整剤を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中に薬学的に許容される担体を含むことが有益であり得る。
【0029】
可溶化剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中に可溶化剤を含むことが有益であり得る。可溶化剤は、治療的に有効な物質(例えば、アンジオテンシンII)又は賦形剤を含む製剤又は組成物の任意の成分の溶解性を上昇させるために有用であり得る。本明細書に記載の可溶化剤は、網羅的なリストを構成することを意図しておらず、本発明の組成物に使用することができる単に例示的な可溶化剤として提供される。特定の実施形態では、可溶化剤としては、それらに限定されないが、エチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、並びにそれらの任意の薬学的に許容される塩及び/又は組合せが挙げられる。
【0030】
pH調整剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中にpH調整剤を含むことにより組成物のpHを調整することが有益であり得る。製剤若しくは組成物のpHを修正することが、例えば、治療的に有効な物質の安定性若しくは溶解性に対して有益な効果を有することができ、又は、非経口投与用の製剤若しくは組成物を作製するのに有用であり得る。pH調整剤は当該分野において周知である。したがって、本明細書に記載のpH調整剤は、網羅的なリストを構成することを意図しておらず、本発明の組成物において使用することができる単に例示的なpH調整剤として提供される。pH調整剤としては、例えば、酸及び塩基を挙げることができる。いくつかの実施形態では、pH調整剤としては、それらに限定されないが、酢酸、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0031】
本発明の組成物のpHは、製剤又は組成物に望ましい特性を提供する任意のpHであってもよい。望ましい特性としては、例えば、治療的に有効な物質(例えば、アンジオテンシンII)の安定性、他のpHでの組成物と比較して治療的に有効な物質の上昇した保持、及び改善した濾過効率を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物のpHは、約3.0から約9.0まで、例えば、約5.0から約7.0であることができる。特定の実施形態では、本発明の組成物のpHは、5.5±0.1、5.6±0.1、5.7±0.1、5.8±0.1、5.9±0.1、6.0±0.1、6.1±0.1、6.2±0.1、6.3±0.1、6.4±0.1、又は6.5±0.1であることができる。
【0032】
緩衝剤
いくつかの実施形態では、組成物中に1つ以上の緩衝剤を含むことによってpHを緩衝することが有益であり得る。特定の実施形態では、緩衝剤は、例えば、約5.5、約6.0、又は約6.5のpKaを有することができる。当業者は、適切な緩衝剤は、そのpKa及び他の特性に基づいて、本発明の組成物に含めるために選択され得ることを理解するであろう。緩衝剤は当該分野において周知である。したがって、本明細書に記載の緩衝剤は、網羅的なリストを構成することを意図しておらず、本発明の組成物において使用することができる単に例示的な緩衝剤として提供される。特定の実施形態では、緩衝剤としては、次の1つ以上を挙げることができ、すなわち、トリス、トリスHCl、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムとリン酸カリウムの組合せ、トリス/トリスHCl、重炭酸ナトリウム、リン酸アルギニン、塩酸アルギニン、ヒスチジン塩酸塩、カコジル酸、コハク酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、マレイン酸塩、ビス-トリス、ホスフェート、カーボネート、並びにそれらの任意の薬学的に許容される塩及び/又はそれらの組合せである。
【0033】
界面活性剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中に界面活性剤を含むことが有益であり得る。界面活性剤は、一般に、液体組成物の表面張力を低下させる。これにより、濾過容易性の改善などの有益な特性が提供され得る。界面活性剤はまた、乳化剤及び/又は可溶化剤として作用することができる。界面活性剤は当該分野において周知である。したがって、本明細書に記載の界面活性剤は、網羅的なリストを構成することを意図しておらず、本発明の組成物において使用することができる単に例示的な界面活性剤として提供される。含めることができる界面活性剤としては、それらに限定されないが、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80)、リポ多糖、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400及びPEG3000)、ポロキサマー(すなわち、プルロニック(登録商標))、エチレン酸化物、及びポリエチレン酸化物(例えば、トリトンX-100)などのソルビタンエステル、サポニン、リン脂質(例えば、レシチン)、並びにそれらの組合せを挙げることができる。
【0034】
等張化剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中に等張化剤を含むことが有益であり得る。患者に、例えば、非経口投与により組成物を投与する場合、液体組成物の等張性は重要な考慮事項である。等張化剤は、したがって、投与に適した製剤又は組成物を作製するのを助けるために使用することができる。等張化剤は当該分野において周知である。したがって、本明細書に記載の等張化剤は、網羅的なリストを構成することを意図しておらず、本発明の組成物において使用することができる単に例示的な等張化剤として提供される。等張化剤はイオン性又は非イオン性であることができ、等張化剤としては、それらに限定されないが、無機塩、アミノ酸、炭水化物、糖、糖アルコール、及び炭水化物を挙げることができる。例示的な無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウムを挙げることができる。例示的なアミノ酸はグリシンである。例示的な糖としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、グルコース、スクロース、ラクトース、及びマンニトールなどの糖アルコールを挙げることができる。
【0035】
安定化剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中に安定化剤を含むことが有益であり得る。安定化剤は、本発明の組成物中に治療的に有効な物質の安定性を高めるのを助ける。これは、例えば、分解を減少させることにより、又は、治療的に有効な物質の凝集を防止することにより起こり得る。理論に拘泥するものではないが、安定性を高めるためのメカニズムとしては、治療的に有効な物質の溶媒からの隔離、又は、アントラサイクリン化合物のフリーラジカル酸化の阻害を挙げることができる。安定化剤は当該分野において周知である。したがって、本明細書に記載の安定化剤は、網羅的なリストを構成することを意図しておらず、本発明の組成物において使用することができる単に例示的な安定化剤として提供される。安定化剤としては、それらに限定されないが、乳化剤及び界面活性剤を挙げることがきる。
【0036】
送達経路
本発明の組成物は、従来の様々な方法で投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は非経口投与に適している。これらの組成物は、例えば、腹腔内、静脈内、腎臓内、又は髄腔内に投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は静脈内に注入される。当業者は、本発明の治療的に有効な物質の製剤又は組成物の投与方法は、処置されている患者の年齢、体重、及び健康状態、並びに処置されている疾患又は状態などの要因に依存するであろうことを理解するであろう。当業者は、したがって、ケースバイケースで、患者のための投与の最適な方法を選択することができるであろう。
【0037】
本明細書において他に定義しない限り、本出願で使用される科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。一般的に、化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学、並びにタンパク質と核酸化学に関する、本明細書に記載の命名法及び技術は、当該分野において周知の一般的に使用されているものである。
【0038】
本明細書を通して、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、述べられた完全体(又は成分)又は完全体(又は成分)のグループを含むことを意味し、任意の他の完全体(又は成分)又は完全体(又は成分)のグループを除外することを意味しないと理解されるであろう。単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が別なふうに明確に指示しない限り、複数形を含む。用語「含む(including)」は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味するために使用される。「含む(including)」及び「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」は、交換可能に使用される。用語「患者」及び「個体」は、交換可能に使用され、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを指す。これらの用語は、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ)、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ)及びげっ歯類(例えば、マウス、ウサギ、ラット)などの哺乳動物を含む。
【0039】
「約(about)」及び「およそ(approximately)」は、一般的に、測定値の性質又は精度を前提に測定された量の許容可能な誤差の程度を意味する。典型的には、例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。代替として、特に生物学系では、用語「約」及び「およそ」は、ある大きさの程度以内、所与の値の好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内にある値を意味し得る。本明細書に与えられた数量は、特に明記しない限り、概算であり、明示的に述べられていない場合、用語「約」又は「およそ」が推測できることを意味する。
【0040】
参照による組込み
各々の刊行物又は特許が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示されたかのように、本明細書に記載のすべての刊行物及び特許は、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、その特定の定義を含む本明細書が支配するであろう。主題の特定の実施形態が議論されてきたが、上記明細書は例示であって制限的なものではない。多くの変形形態が、本明細書及び以下の特許請求の範囲の検討により当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲をそれらの等価物の全範囲と共に、及び明細書をそのような変形形態と共に参照することによって決定されるべきである。
【0041】
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
それを必要とする患者における肝硬変に伴う腎不全を処置する方法であって、アンジオテンシンIIを含む組成物を患者に投与することを含む方法。
項2
投与前に、患者が1.5mg/dlを超える血清クレアチニンレベルを有している、項1に記載の方法。
項3
投与前に、患者が40ml/分未満の24時間の血清クレアチニンクリアランスを有している、項1又は2に記載の方法。
項4
それを必要とする患者における肝硬変に伴う腎不全を処置する方法であって、
患者の血清クレアチニンレベル及び/又は24時間の血清クレアチニンクリアランスを測定することと、
a)測定した血清クレアチニンレベルが1.5mg/dlを超える、及び/又は、b)測定した24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分未満である場合には、患者にアンジオテンシンIIを含む組成物を投与することと
を含む方法。
項5
腎不全が肝腎症候群である、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
項6
患者がヒトである、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
項7
アンジオテンシンIIを、0.032ng/kg/分、0.32ng/kg/分、1.6ng/kg/分、若しくは1ng/kg/分以上の速度で、又は、0.5ng/分から100μg/分、0.4から45μg/分、若しくは0.12から19μg/分の範囲の速度で投与することを含む、項6に記載の方法。
項8
組成物が、少なくとも16μg/mlのアンジオテンシンIIの濃度を有する、項6に記載の方法。
項9
少なくとも約10~15mmHgの血圧の上昇を達成するのに十分な速度で組成物を投与して、その後、任意選択で、少なくとも約30分間投与し続けることを含む、項6に記載の方法。 項10
患者における平均動脈圧に基づいて可変速度で、組成物を投与することを含み、平均動脈圧が80mmHg、90mmHg、100mmHg、110mmHg、又は120mmHgを超えない、項6に記載の方法。 項11
少なくとも8時間、少なくとも24時間、及び8時間から24時間までから選択される期間にわたって、組成物を投与することを含む、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
項12
少なくとも2~6日、例えば2~11日間連続して、組成物を投与することを含む、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
項13
2~6日間連続して、組成物を投与することを含む、項12に記載の方法。
項14
少なくとも2~6日、例えば2~11日の期間にわたって1日当たり8時間、組成物が投与される、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
項15
アンジオテンシン療法に対する、肝硬変に伴う腎不全の患者の応答を評価する方法であって、アンジオテンシンIIを含む組成物の初期用量を患者に投与して、治療パラメーターの変化について患者を検査することを含む方法。
項16
治療パラメーターが、血清クレアチニンレベル、推定糸球体濾過率、血清ナトリウムレベル、血清カリウムレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血圧である、項15に記載の方法。 項17
患者の血清クレアチニンレベル、尿中ナトリウム濃度、又は血清カリウムレベルの減少、或いは患者の血圧、血清ナトリウムレベル、又は推定糸球体濾過率の上昇が、アンジオテンシン療法に対する陽性応答の指標である、項16に記載の方法。
項18
患者が陽性応答を示す場合には、患者にアンジオテンシンIIの追加の用量を投与することをさらに含む、項17に記載の方法。
項19
組成物を患者に投与する前に、患者の血清クレアチニンレベル及び/又は24時間の血清クレアチニンクリアランスを測定すること、並びにa)測定した血清クレアチニンレベルが1.5mg/dlを超える、及び/又は、b)測定した24時間の血清クレアチニンクリアランスが40ml/分未満である場合には、患者に組成物を投与することをさらに含む、項15から18のいずれか一項に記載の方法。
項20
投与の少なくとも30分後、好ましくは少なくとも1時間後に、検査を実施する、項15から19のいずれか一項に記載の方法。
項21
投与の8時間未満後、好ましくは6時間未満後に、検査を実施する、項15から20のいずれか一項に記載の方法。
項22
初期用量が、1ng/kg/分未満又は約1ng/kg/分である、項15から21のいずれか一項に記載の方法。
項23
アンジオテンシンIIが、5-バリンアンジオテンシンIIアセテート、5-バリンアンジオテンシンIIアミド、5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアセテート、及び5-L-イソロイシンアンジオテンシンIIアミド、又はそれらの薬学的に許容される塩である、項1から22のいずれか一項に記載の方法。
項24
組成物が非経口投与に適している、項1から23のいずれか一項に記載の方法。
項25
非経口投与が注射又は静脈注入である、項24に記載の方法。
項26
組成物が追加の医薬薬剤をさらに含む、項1から25のいずれか一項に記載の方法。
項27
追加の医薬薬剤が、肝硬変に伴う腎不全を処置するために有用である、項26に記載の方法。
項28
追加の医薬薬剤が、テルリプレシン、ノルエピネフリン、又はミドドリンである、項26に記載の方法。
【0042】
SEQUENCE LISTING
<110> La Jolla Pharmaceutical Company
<120> COMPOSITIONS AND METHODS FOR TREATING RENAL FAILURE
<130> PA23-520
<150> US 61/816,578
<151> 2013-04-26
<160> 8
<170> PatentIn version 3.5
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<222> (4)
<223> diiodo Tyrosine
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1 5
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者における肝硬変に伴う腎不全を処置する方法であって、アンジオテンシンIIを含む組成物を患者に投与することを含む方法。