(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099594
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】プラスチック材料を熱分解するための方法およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064136
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2022538244の分割
【原出願日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】1919022.2
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521126911
【氏名又は名称】プラスティック・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PLASTIC ENERGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダンフィ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ストリブンス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヤブルディ,アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ,デイビッド
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA27
4F401BA02
4F401BA03
4F401BA06
4F401CA58
4F401CA88
4F401CB01
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4F401CB40
4F401DA01
4F401FA01Y
4F401FA01Z
4F401FA02Y
4F401FA02Z
4F401FA20Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラスチック材料を熱分解するための方法及びそのシステムを提供すること。
【解決手段】プラスチック材料を熱分解するための方法。この方法は、プラスチック材料を加熱および圧縮する工程と、プラスチック材料を1つ以上の反応器に輸送する工程と、1つ以上の反応器においてプラスチック材料を熱分解する工程とを含む。プラスチック材料は、輸送工程中に加熱状態に維持される。プラスチック材料を熱分解するためのシステムも提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料を熱分解するための方法であって、
前記方法は、
プラスチック材料を加熱および圧縮する工程と、
前記プラスチック材料を1つ以上の反応器に輸送する工程と、
前記1つ以上の反応器において前記プラスチック材料を熱分解する工程とを含み、
前記輸送工程中に前記プラスチック材料を加熱状態に維持することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記加熱されたプラスチック材料は、一度に1つの反応器に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスチック材料を加熱および圧縮する前記工程は、前記プラスチック材料を押し出すことによって行われる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラスチック材料は、前記輸送工程中に溶融状態に維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスチック材料の温度は、目標温度範囲内の温度に維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標温度範囲は、前記プラスチック材料の分解温度よりも低い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチック材料の温度は、少なくとも265℃の温度に維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチック材料の温度は、少なくとも280℃の温度に維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プラスチック材料の温度は、310℃以下の温度に維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラスチック材料の温度は、300℃以下の温度に維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プラスチック材料は、前記加熱および圧縮工程中に前記目標温度範囲内の温度に加熱される、請求項5に記載の方法または請求項4に従属する請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラスチック材料の温度は、前記加熱および圧縮工程の終わりに前記目標温度範囲内にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチック材料は、水平に対して正の角度で輸送される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記角度は、10°~45°の範囲から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プラスチック材料を熱分解するためのシステムであって、
前記システムは、
プラスチック材料を加熱および圧縮するためのポンプと、
前記プラスチック材料を熱分解するための1つ以上の反応器と、
前記プラスチック材料を前記ポンプと前記1つ以上の反応器との間に輸送するためのパイプとを備え、
前記パイプは、前記プラスチック材料を加熱状態に維持するように構成されている、システム。
【請求項16】
前記システムは、前記プラスチック材料を熱分解するための2つ以上の反応器を備え、
前記システムは、前記加熱されたプラスチック材料を一度に1つの反応器に供給するように配置された複数のバルブをさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ポンプは、押出機を含む、請求項15または請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記パイプは、前記プラスチック材料を溶融状態に維持するように構成されている、請求項15から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記パイプは、加熱手段を含む、請求項15から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記加熱手段は、電気熱トレーシングを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記パイプは、水平に対して正の角度で配向される、請求項15から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記角度は、10°~45°の範囲から選択される、請求項15から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記システムは、加熱されたプラスチック材料を2つ以上の反応器に供給するための複数の連動バルブを備える、請求項15から23のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、プラスチック材料を熱分解するための方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
寿命末期のプラスチックの化学リサイクルは、廃棄プラスチックの混合物を様々な液体炭化水素生成物にリサイクルするように開発された新興技術である。このようなプロセスに使用される廃棄プラスチックは、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、および/またはポリプロピレン(PP)を含んでもよい。これらの廃プラスチックを加熱し、次いで、ポンプで溶融状態のプラスチック原料を反応容器に輸送することによって、これらの廃プラスチックを液体炭化水素生成物に変換する。この反応容器は、燃焼システムによって350℃を超える温度に加熱される。この加熱は、溶融プラスチックから豊富な飽和炭化水素蒸気を生成する。この飽和炭化水素蒸気を反応容器から排出し、接触容器を通すことによって、より重い蒸気留分を凝縮し、最終生成物の仕様によって決定される目標出口温度の設定値を維持する。次いで、下流側の凝縮カラムを用いて、ほぼ大気圧で飽和炭化水素蒸気を蒸留する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本発明によれば、プラスチック材料を熱分解する方法が提供される。この方法は、プラスチック材料を加熱および圧縮する工程と、プラスチック材料を1つ以上の反応器に輸送する工程と、1つ以上の反応器においてプラスチック材料を熱分解する工程とを含み、輸送工程中にプラスチック材料を加熱状態に維持することを特徴とする。
【0004】
必要に応じて、プラスチック材料は、2つ以上の反応器に輸送され、加熱されたプラスチック材料は、一度に1つの反応器に供給される。
【0005】
必要に応じて、プラスチック材料を加熱および圧縮する工程は、プラスチック材料を押し出すことによって行われる。
【0006】
必要に応じて、プラスチック材料は、輸送工程中に溶融状態に維持される。
必要に応じて、プラスチック材料の温度は、目標温度範囲内の温度に維持される。
【0007】
必要に応じて、目標温度範囲は、プラスチック材料の分解温度よりも低い。
必要に応じて、プラスチック材料の温度は、少なくとも265℃の温度に維持される。
【0008】
必要に応じて、プラスチック材料の温度は、少なくとも280℃の温度に維持される。
必要に応じて、プラスチック材料の温度は、310℃以下の温度に維持される。
【0009】
必要に応じて、プラスチック材料の温度は、300℃以下の温度に維持される。
必要に応じて、プラスチック材料は、加熱および圧縮工程中に目標温度範囲内の温度に加熱される。
【0010】
必要に応じて、プラスチック材料の温度は、加熱および圧縮工程の終わりに目標温度範囲にある。
【0011】
必要に応じて、プラスチック材料は、水平に対して正の角度で輸送される。
必要に応じて、角度は、10°~45°の範囲から選択される。
【0012】
本発明によれば、プラスチック材料を熱分解するためのシステムがさらに提供される。このシステムは、プラスチック材料を加熱および圧縮するためのポンプと、プラスチック材料を熱分解するための1つ以上の反応器と、プラスチック材料をポンプと1つ以上の反応器との間に輸送するためのパイプとを備え、パイプは、プラスチック材料を加熱状態に維持するように構成されている。
【0013】
必要に応じて、システムは、2つ以上の反応器を含み、システムは、加熱されたプラスチック材料を一度に1つの反応器に供給するように配置された複数のバルブをさらに含む。
【0014】
必要に応じて、ポンプは、押出機を含む。
必要に応じて、パイプは、プラスチック材料を溶融状態に維持するように構成されている。
【0015】
必要に応じて、パイプは、加熱手段を含む。
必要に応じて、加熱手段は、電気熱トレーシングを含む。
【0016】
必要に応じて、パイプは、水平に対して正の角度で配向される。
必要に応じて、角度は、10°~45°の範囲から選択される。
【0017】
必要に応じて、システムは、加熱されたプラスチック材料を2つ以上の反応器に供給するための複数の連動バルブを備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】WO2011077419A1に開示された既知の化学リサイクルプラントを示す概略図である。
【
図2】本開示に係るシステムの一部を形成する化学リサイクルプラントの初期段階を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すパイプ構成の代替的なパイプ構成を示す図である。
【
図4】
図2のシステムまたは
図3の代替的なパイプ構成のパイプを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を単なる例示として説明する。
【0020】
プラスチック化学リサイクル用の寿命末期のプラスチック廃棄物原料または汚染されたプラスチック廃棄物原料は、例えば、都市回収施設、リサイクル工場、または他のプラスチック回収源から受け取ることができる。予備処理プロセス中に、原料は、化学リサイクルプロセスに適したプラスチックのみ、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、および/またはポリプロピレン(PP)を含有するように、精製されてもよい。また、金属、紙、カードおよびガラスなどの不適切な材料および湿気は、プラスチック廃棄物から除去されてもよい。
【0021】
図1は、WO2011077419A1に開示され、本開示に係るパイプ2を使用することができる既知の化学リサイクルプラント1を示している。予備処理されたプラスチッ
ク原料は、1つ以上の供給ホッパ3からシステムに進入できるように、顆粒またはフレーク形態に加工されてもよい。コンベヤ4は、計量ベルト6を介して、プラスチック材料をポンプ5に供給することができる。プラスチック材料は、1つ以上の加熱および冷却段階を含み得る加熱プロセスによって、ポンプ5中で最終的に300℃範囲内の最大温度まで溶融されてもよい。溶融プラスチックは、パイプ2を介して1つ以上の反応器10に輸送されてもよい。
【0022】
1つ以上の反応器10において、酸素が存在しない条件で原料を加熱することによって、原料を熱分解させる。これによって、ポリマー分子を分解して、豊富な飽和炭化水素蒸気を形成することができる。炭化水素蒸気は、一列の凝縮器要素12を有する接触器11を通って流れることができる。これによって、一部の長鎖炭化水素成分は、凝縮され、凝縮された長鎖材料を反応器10に戻してさらに熱分解することによって、より短い炭素-炭素鎖に熱劣化することができる。成分は、蒸気として接触器11から排出される。
【0023】
接触器からの炭化水素蒸気は、凝縮カラム13に供給される。凝縮カラム13は、分子量に基づいて、炭化水素蒸気を、凝縮性成分および非凝縮性合成ガス成分に分離することができる。
【0024】
比較的大きい分子量を有する凝縮性成分は、凝縮カラム13の中央および底部側の1つ以上の領域に蓄積され、そこから排出されてもよい。例えば、凝縮カラム13から軽油および未加工ディーゼルを排出することができる。
【0025】
比較的小さい分子量を有する非凝縮性合成ガス成分は、凝縮カラム13の頂部側の領域に蓄積され、凝縮塔13の頂部から排出されてもよい。非凝縮性合成ガス成分は、例えば、リサイクルプラント1の燃焼炉(図示せず)において燃焼されてもよい。
【0026】
このプロセスによって、凝縮性ガスは、炭化水素生成物に変換され、非凝縮性合成ガスは、別々に収集され、燃焼されることによって、エネルギーを生成することができる。炭化水素生成物は、石油化学産業に販売されてもよい。石油化学産業は、例えば、炭化水素生成物を一次プラスチック、油、または輸送燃料に変換することができる。合成ガスは、化学リサイクルプラントに使用されてもよい。
【0027】
図2は、化学リサイクルプラント1の原料を熱分解する前の化学リサイクルプラント1、例えば
図1に示された化学リサイクルプラント1の初期段階をより詳細に示す。供給システム30は、供給ホッパ3(またはサイロ)と、コンベヤ(図示せず)と、計量ベルト(または「ロードセル」として知られる計量器)(図示せず)と、ポンプ5とを含んでもよい。
【0028】
有利には、原料は、目標温度範囲内の制御された温度で各反応器10に供給されてもよい。最適には、原料の温度は、反応器10の熱性能に悪影響を及ぼさないように、可能な限りに反応器10の動作温度に近い方が良い。反応器10の温度の低下は、解重合プロセスを遅くするまたは停止することができる。原料を供給しているときの反応器10の動作温度は、380℃~410℃の範囲にあってもよい。また、原料の温度が低すぎる場合、パイプ2に沿って輸送される原料の粘着性が高すぎる可能性がある。したがって、原料の温度は、少なくとも265℃であってもよく、必要に応じて少なくとも280℃であってもよい。この温度は、原料が適切に溶融された状態にあることを保証することができる。しかしながら、原料の温度が高すぎる場合、原料は、反応器10に到達する前に分解する可能性がある。原料が分解すると、コークス(一種の炭素残渣)が形成される可能性がある。このことは、以下で説明するように不利である。したがって、目標温度範囲は、原料の分解温度より低くてもよい。したがって、原料の温度は、310℃以下、必要に応じて
300℃以下であってもよい。よって、好適な目標温度範囲は、265℃~310℃、必要に応じて280℃~300℃であってもよい。
【0029】
ポンプ5は、以下の3つの機能を果たすことができる。すなわち、ポンプ5は、原料を目標温度範囲内の温度まで加熱することができ、原料を圧縮することによって、原料から空気孔を除去することができ、パイプ2を介して原料を反応器10に輸送するための駆動力を提供することができる。例示的な一実施形態において、ポンプ5は、押出機を含むことができ、押出機は、一般的に、密接嵌合のバレル41内に収容されたオーガ40(またはスクリュー)を含むことができる。3つの機能は、オーガ40の動作によって達成されてもよい。ポンプ5は、オーガ40とバレル41の壁との間の相対運動によって生成された剪断力を原料に加えることによって、原料を周囲温度から目標温度範囲内の温度まで加熱することができる。このようにして、ポンプ5内の原料の温度は、ポンプ5の出口42に向かって漸進的に上昇することができる。これは、目標温度範囲内の温度の達成に有利である。対照的に、既存のポンプの通常動作の場合、原料の温度がポンプ内のある点でピーク値に達し、出口に向かって低下する。ポンプ5は、必要に応じて、ポンプ5の出口42の温度を目標温度範囲に維持しながら、より低い流量を反応器10に供給することを可能にする可変速度駆動部(図示せず)を含んでもよい。
【0030】
ポンプ5は、1つ以上のデュアル加熱および冷却ゾーン43を含んでもよい。1つ以上のデュアル加熱および冷却ゾーン43は、原料がオーガ40に沿って通過する際に原料の温度を漸増的に制御することを支援することができる。主に、加熱機能を用いて、システムの起動時にオーガ40に存在する原料を溶融することができる。通常動作中に、冷却機能を用いて、ゾーン温度が各々の設定点を超えることを防止することができる。加熱機能は、通常動作中に殆ど使用されない。その理由は、オーガスクリューの動作からの剪断力が、原料を溶融し、出口42で目標温度範囲内の温度を達成するのに充分な熱を提供しているからである。
【0031】
バレル41の冷却は、閉ループオイル冷却回路またはファン(図示せず)によって達成されてもよい。温度センサは、各バレルゾーンの温度を監視することができる。温度センサが温度の過度上昇を検測した場合、各バレルゾーンの油供給バルブを開放するまたは個々の冷却ファンを作動することによって、各バレルゾーンを設定温度に冷却することができる。
【0032】
パイプ2は、ポンプ5を1つ以上の反応器10に接続することができる。好ましくは、パイプ2は、ポンプ5を複数の反応器10に接続することができる。
図2に示す1つの例示的な構成において、パイプ2は、単一のヘッダパイプ50を介して、ポンプ5を1つ以上の反応器10に接続することができる。ヘッダパイプ50は、各々の供給パイプ61を介して、1つ以上の反応器の各々に接続されてもよい。
図3に示す代替の例示的な実施形態において、パイプ2は、各反応器10に設けられる補助パイプ60を介して、ポンプ5を1つ以上の反応器10に接続することができる。各補助パイプ60は、供給パイプ61を介して各反応器10に接続されてもよい。両方の構成において、供給パイプ61は、略垂直であってもよい。
【0033】
ポンプ5の出口42から排出された圧縮および溶融された原料は、パイプ2に沿った圧力降下を考慮して、反応器10に到達する時の原料の圧力が高すぎるになることなく、充分な圧力を用いて、所要の流量および温度で原料をパイプ2の内部に圧入し、パイプ2沿って駆動することができる。ポンプ5から排出される時の(すなわち、ポンプ出口42における)原料の適切な圧力は、3MPaG~15MPaG(30BarG~150BarG)の範囲にあってもよく、必要に応じて5MPaG~8MPaG(50BarG~80BarG)の範囲にあってもよい。
【0034】
図4は、パイプ2をより詳細に示している。パイプ2は、任意の好適な材料、例えばステンレス鋼または炭素鋼から作製されてもよい。パイプ2は、加熱手段51を含んでもよい。加熱手段51は、(「加熱テープ」または「表面加熱」としても知られている)電気熱トレーシング(electric heat tracing)を含んでもよい。加熱手段51を用いて、目
標温度範囲内の温度がパイプ2に沿って維持されることを確実にすることができる。さらに、加熱手段51を用いて、システムの起動時にパイプ2内に存在する原料を加熱(および溶融)することができる。
【0035】
1つ以上の温度センサ52および/または圧力センサ(図示せず)を設け、パイプ2に沿った温度および圧力を監視することによって、安定した流れを確保することができる。温度センサ52は、熱電対を含んでもよい。パイプ2は、断熱材53をさらに含んでもよい。
【0036】
パイプ2の直径は、加熱手段51を介して熱をパイプ2内に維持する(または、システムの起動時に原料を加熱する)程度に充分に小さくなるように選択されてもよい。それにもかかわらず、直径は、必要な流量および圧力を達成するために充分に大きくしなければならない。パイプ2の直径は、150mm~200mmの範囲から選択されてもよく、必要に応じて200mmであってもよい。
【0037】
パイプ2の機械的可撓性を可能にする(パイプ2が熱膨張応力を吸収することを可能にする)のに充分な長さを維持しながら、パイプ2の長さを最小化することができる。パイプ2の長さを最小化することは、パイプ2に必要な加熱手段51の範囲を減らすという点で有利であり得る。パイプ2の長さを最小にすることは、パイプ2を「コーキング」する可能性を低減するという点で有利であり得る。これは、より長いパイプ2における原料のより長い滞留時間に起因して、より長いパイプ2に対してより大きなリスクになる。原料の連続流がパイプ2内で維持されず、原料がパイプ2内で高温で長期間静置される場合、コークス(炭素残留物)がパイプ2の内側に堆積し始める。このようなコークス堆積物は、パイプ2の直径を減少することによって、パイプ2内の流量を減少し、パイプ2内の圧力を増加する。また、コークス堆積物が絶縁体として作用するため、加熱手段51からより多くのエネルギーを入力しなければならない。パイプ2の長さは、5m~11mの範囲から選択されてもよく、必要に応じて8mであってもよい。
【0038】
パイプ2は、ポンプ5からヘッダパイプ50または補助パイプ60への方向に沿って概ね上向きの角度(すなわち、下向きまたは水平ではない角度)で傾斜するように、水平に対して正の角度で配向されてもよい。好適な角度は、10°~45°の範囲であってもよい。目標温度範囲内の温度における原料は、重力で流動するができる。パイプ2を上向きの角度に配向することによって、パイプ2がポンプ5のみによって排出され、重力によって排出されないことを保証することができる。これは、動作中にパイプが空になることを防止するができる。パイプ2が空になると、ポンプ5と反応器10との間のパイプに空きができるため、反応器10からの炭化水素蒸気がポンピングセクションの空きに放出される可能性および/または空気が反応器システムに入る可能性があり、点火を引き起こす可能性がある。
【0039】
パイプ2が2つ(またはそれ以上)の補助パイプに分割され、パイプ2内の溶融原料の一部が同時に補助パイプの各々に供給される場合、不明確且つ可変優先流のため、溶融原料は、2つ(またはそれ以上)の補助パイプ間に均等に分配されないことがある。代わりに、1つの補助パイプは、予想外に好ましい流れを有し得る。したがって、(例えば、
図3に示すように)各々の補助パイプ60が原料を複数の反応器10に同時に供給する場合、または(例えば、
図2に示すように)単一のヘッダパイプ50が原料を複数の反応器1
0に同時に供給する場合、各反応器10に供給される原料の量を制御することは、極めて困難(または不可能)であり得る。その結果、一貫した反復バッチサイクルを制御することができない。
【0040】
有利には、原料は、代わりに、一度に1つのみの反応器10に供給されてもよい。2つ以上の反応器10は、ヘッダパイプ50または補助パイプ60を介して、パイプ2から順次に供給されてもよい。各反応器10には、各々の反応器10への原料の供給を可能にするまたはそれを阻止するためのバルブ54を設けてもよい。構成に応じて、特定の反応器10のバルブ54は、例えば、ヘッダパイプ50に、補助パイプ60に、または供給パイプ61に設置されてもよい。2つ以上の反応器10の各々のバルブ54は、任意の所定の時間に原料を単一の反応器10のみに供給することを確実にするように連動されてもよい。このような構成によって、単一のポンプ5および単一のパイプ2は、原料を互いに独立して複数の反応器10に供給することができる。
【0041】
ヘッダパイプ50は、パイプ2と同様の構成を有してもよい。ヘッダパイプ50は、パイプ2の以下の特徴、すなわち、加熱手段51、1つ以上の温度センサおよび/または圧力センサ、および/または絶縁体53のうちの1つ以上を含んでもよい。ヘッダパイプ50は、水平に配向されてもよい。ヘッダパイプ50の直径は、100mm~200mmの範囲から選択されてもよく、必要に応じて150mmであってもよい。ヘッダパイプ50の長さは、7m~16mの範囲から選択されてもよく、必要に応じて11mであってもよい。ヘッダパイプ50内の圧力は、1MPaG~6MPaG(10BarG~60BarG)の範囲から選択されてもよく、必要に応じて2MPaG~4MPaG(20BarG~40BarG)の範囲から選択されてもよい。
【0042】
また、補助パイプ60は、パイプ2と同様の構成を有してもよい。補助パイプ60は、パイプ2の以下の特徴、すなわち、加熱手段51、1つ以上の温度センサおよび/または圧力センサ、および/または絶縁体53のうちの1つ以上を含んでもよい。補助パイプ60は、水平に配向されてもよい。各補助パイプ60の直径は、100mm~200mmの範囲から選択されてもよく、必要に応じて150mmであってもよい。各補助パイプ60内の圧力は、1MPaG~6MPaG(10BarG~60BarG)の範囲から選択されてもよく、必要に応じて2MPaG~4MPaG(20BarG~40BarG)の範囲から選択されてもよい。
【0043】
使用時、(例えば、定期修理の後)システムの起動時に、システムに既に存在しており、固体状態であり得る原料は、加熱されてもよい。ポンプ5に存在する原料は、1つ以上の二重加熱および冷却ゾーン43の加熱機能を用いて加熱されてもよい。パイプ2に存在する原料は、加熱手段51を用いて加熱されてもよい。
【0044】
システムに存在する既存の原料が目標温度範囲内の温度に達した時に、新たな原料をシステムに追加することができる。新たな原料は、粒状またはフレークの形態でポンプ5に供給されてもよく、原料に剪断力を加えることによって、ポンプ5によって目標温度範囲内の温度まで加熱されてもよい。また、オーガ40は、原料をパイプ2の内部に圧入し、パイプ2沿って駆動するように動作することができる。
【0045】
パイプ2に沿って原料を輸送する時に、原料の温度は、加熱手段51によって目標温度範囲内の温度に維持されてもよい。
【0046】
原料は、反応器10に連続的に供給されてもよい。3つの反応器10を含む例示的なシステムにおいて、第1の反応器を接続し、所定の体積の原料を供給した後、第1の反応器を分離してもよい。第1の反応器を分離した後、第2の反応器を接続し、所定の体積の原
料を供給した後、第2の反応器を分離してもよい。第3の反応器について同じプロセスを繰り返すことができる。各反応器10が分離されている期間中に、各反応器10は、原料を継続して熱分解することによって、炭化水素蒸気を生成することができる。全てのプロセスの後、第1の反応器内の既存の原料の熱分解は、実質的に完了する。第1の反応器は、再び原料の供給を受けることができる。
【0047】
有利には、閉合システムは、空気がパイプ2に入らないようにすることができる。加えて、閉合システムにおいて、原料を単一方向に(ポンプ5から反応器10に向かって)押し付けることは、溶融原料を圧縮することができ、任意の空気孔を反対方向に押し出すことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料を熱分解するための方法であって、
前記方法は、
プラスチック材料を加熱および圧縮する工程と、
前記プラスチック材料を1つ以上の反応器に輸送する工程と、
前記1つ以上の反応器において前記プラスチック材料を熱分解する工程と、
前記輸送工程中に前記プラスチック材料を加熱状態に維持する工程とを含み、
前記プラスチック材料は、水平に対して正の角度で輸送される、方法。
【請求項2】
前記角度は、10°以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記角度は、10°~45°の範囲から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱されたプラスチック材料は、一度に1つの反応器に供給される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスチック材料を加熱および圧縮する前記工程は、前記プラスチック材料を押し出すことによって行われる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック材料は、前記輸送工程中に溶融状態に維持される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチック材料の温度は、目標温度範囲内の温度に維持される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記目標温度範囲は、前記プラスチック材料の分解温度よりも低い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プラスチック材料の温度は、少なくとも265℃の温度に維持される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラスチック材料の温度は、少なくとも280℃の温度に維持される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プラスチック材料の温度は、310℃以下の温度に維持される、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラスチック材料の温度は、300℃以下の温度に維持される、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチック材料は、前記加熱および圧縮工程中に前記目標温度範囲内の温度に加熱される、請求項7に記載の方法または請求項6に従属する請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスチック材料の温度は、前記加熱および圧縮工程の終わりに前記目標温度範囲内にある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プラスチック材料を熱分解するためのシステムであって、
前記システムは、
プラスチック材料を加熱および圧縮するためのポンプと、
前記プラスチック材料を熱分解するための1つ以上の反応器と、
前記プラスチック材料を前記ポンプと前記1つ以上の反応器との間に輸送するためのパイプとを備え、
前記パイプは、前記プラスチック材料を加熱状態に維持するように構成されており、
前記パイプは、水平に対して正の角度で配向される、システム。
【請求項16】
前記角度は、10°以上である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記角度は、10°~45°の範囲から選択される、請求項15または請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、前記プラスチック材料を熱分解するための2つ以上の反応器を備え、
前記システムは、前記加熱されたプラスチック材料を一度に1つの反応器に供給するように配置された複数のバルブをさらに備える、請求項15から請求項17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記ポンプは、押出機を含む、請求項15から請求項18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記パイプは、前記プラスチック材料を溶融状態に維持するように構成されている、請求項15から請求項19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記パイプは、加熱手段を含む、請求項15から請求項20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記加熱手段は、電気熱トレーシングを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記システムは、加熱されたプラスチック材料を2つ以上の反応器に供給するための複数の連動バルブを備える、請求項15から請求項22のいずれか一項に記載のシステム。
【外国語明細書】