(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099604
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】新規のCRISPR関連タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20240718BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
A61K 31/7105 20060101ALN20240718BHJP
A61K 38/16 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C12N9/16 Z ZNA
C12N9/88
C12N15/09 110
A61P35/00
A61K31/7105
A61K38/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064761
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2021506585の分割
【原出願日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0093336
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521049078
【氏名又は名称】ジープラスフラス ライフ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】G+FLAS LIFE SCIENCES
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, スンファ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ハン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドン ウック
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ジヨン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084ZB262
4C086AA02
4C086EA16
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規のCRISPR関連タンパク質及びその使用を提供する。
【解決手段】本発明の特定のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、ガイドRNAに連結された細胞内核酸配列を認識し、切断するエンドヌクレアーゼの活性を呈する。したがって、本発明のCRISPR関連タンパク質は、CRISPR-Cas系においてゲノム編集のための異なるヌクレアーゼとして使用され得る。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質。
【請求項2】
配列番号1の前記アミノ酸配列を有する前記Cas12aタンパク質が、配列番号2のヌクレオチド配列によってコードされている、請求項1に記載のCas12aタンパク質。
【請求項3】
前記タンパク質が、エンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項1に記載のCas12aタンパク質。
【請求項4】
配列番号1の前記アミノ酸配列を有する前記Cas12aタンパク質が、pH7.0~pH7.9で最適な活性を有する、請求項1に記載のCas12aタンパク質。
【請求項5】
925位のリジン(Lys)が別のアミノ酸で置換されている、配列番号1のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質。
【請求項6】
前記別のアミノ酸が、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項5に記載のCas12aタンパク質。
【請求項7】
配列番号3のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質。
【請求項8】
配列番号3の前記アミノ酸配列を有する前記Cas12aタンパク質が、配列番号4のヌクレオチド配列によってコードされている、請求項7に記載のCas12aタンパク質。
【請求項9】
前記タンパク質が、エンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項7に記載のCas12aタンパク質。
【請求項10】
配列番号3の前記アミノ酸配列を有する前記Cas12aタンパク質が、pH7.0~pH7.9で最適な活性を有する、請求項7に記載のCas12aタンパク質。
【請求項11】
930位のリジン(Lys)が別のアミノ酸で置換されている、配列番号3のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質。
【請求項12】
前記別のアミノ酸が、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項11に記載のCas12aタンパク質。
【請求項13】
877位のアスパラギン酸(Asp)が別のアミノ酸で置換されている配列番号1のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質。
【請求項14】
前記別のアミノ酸が、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、リジン(Lys)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項13に記載のCas12aタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質のエンドヌクレアーゼ活性が低下している、請求項13に記載のCas12aタンパク質。
【請求項16】
873位のアスパラギン酸(Asp)が別のアミノ酸で置換されている配列番号3のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質。
【請求項17】
前記別のアミノ酸が、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、リジン(Lys)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項16に記載のCas12aタンパク質。
【請求項18】
前記タンパク質のエンドヌクレアーゼ活性が低下している、請求項16に記載のCas12aタンパク質。
【請求項19】
活性成分として:mgCas12a;及びがん細胞に特異的に存在する核酸配列を標的とするcrRNAを含む、がんを処置するための医薬組成物。
【請求項20】
前記mgCas12aが、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つを有する、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のCRISPR関連タンパク質及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム編集は、生物の遺伝情報を自由に編集する技術である。生命科学分野の進歩及びゲノム配列決定技術の開発により、広範囲に遺伝情報を理解することが可能になった。例えば、動植物の繁殖、疾患及び成長、様々なヒトの遺伝的疾患を引き起こす遺伝的突然変異並びにバイオ燃料の生産に対する遺伝子の理解はすでに達成されている;しかしながら、生物を改善する及びヒト疾患を処置するためにこの理解を直接利用するにはさらなる技術的進歩が行われなければならない。
【0003】
ゲノム編集技術を使用してヒトを含めた動物、植物及び微生物の遺伝情報を変化させることができ、したがって、その適用範囲は劇的に拡大され得る。所望の遺伝情報を正確に切断するために設計され、作られた分子ツールである遺伝子はさみは、ゲノム編集技術において鍵となる役割を果たす。遺伝子配列の分野を次のレベルに高める次世代配列決定技術と類似して、遺伝子はさみの使用は、遺伝情報の利用の速さ及び範囲を増大させ、新たな産業分野を創出する鍵となる技術になりつつある。
【0004】
これまでに開発されてきた遺伝子はさみは、その登場した順番により3つの世代に分けられ得る。遺伝子はさみの第1世代は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であり;遺伝子はさみの第2世代は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)であり;最近の研究である、クラスター化された規則的間隔のパリンドローム様短反復(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質9(Cas9)が、遺伝子はさみの第3世代である。
【0005】
CRISPRは、配列決定された細菌のおよそ40%及び配列決定された古細菌の90%のゲノムに見られる、複数の短い直列反復を含有する遺伝子座である。Cas9タンパク質は、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)と称される2つのRNAと複合体形成すると活性なエンドヌクレアーゼを形成し、それによって侵入ファージ又はプラスミド中の外来性遺伝的エレメントを細断して、宿主細胞を保護する。crRNAは、外来の侵入物によって以前から占められていた宿主ゲノムのCRISPRエレメントから転写される。
【0006】
このCRISPR-Cas系に由来するRNA誘導ヌクレアーゼは、ゲノム編集ができるツールを提供する。特に、単鎖ガイドRNA(sgRNA)及びCasタンパク質を使用して細胞並びに器官のゲノムを編集できる技術に関する研究が、活発に行われてきた。近年では、Cpf1タンパク質[プレボテラ属(Prevotella)及びフランシセラ属(Francisella)1から得られる]が、CRISPR-Cas系における別のヌクレアーゼタンパク質として報告されており(B.Zetsche、ら、2015年)、ゲノム編集に一層広い選択肢をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲノム編集において知られているヌクレアーゼより効果的なタンパク質を開発することに継続して取り組んだ結果、本発明者らは、標的核酸配列を認識し、切断する新規のCRISPR関連タンパク質を見出し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、標的核酸配列を認識し、切断する新規のCRISPR関連タンパク質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質を提供する。
【0010】
加えて、本発明は、925位のリジン(Lys)が別のアミノ酸で置換されている、配列番号1のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質を提供する。
【0011】
加えて、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質を提供する。
【0012】
加えて、本発明は、930位のリジン(Lys)が別のアミノ酸で置換されている、配列番号3のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質を提供する。
【0013】
加えて、本発明は、877位のアスパラギン酸(Asp)が別のアミノ酸で置換されている、配列番号1のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質を提供する。
【0014】
加えて、本発明は、873位のアスパラギン酸(Asp)が別のアミノ酸で置換されている、配列番号3のアミノ酸配列を有するCas12aタンパク質を提供する。
【0015】
加えて、本発明は、活性成分として:mgCas12a;及びがん細胞に特異的に存在する核酸配列を標的とするcrRNAを含むがんを処置するための医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列で表されるタンパク質は、ガイドRNAに結合する細胞内核酸配列を認識し、切断するエンドヌクレアーゼ活性を有する。したがって、本発明の新規のCRISPR関連タンパク質は、CRISPR-Cas系においてゲノム編集を行う別のヌクレアーゼとして使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】メタゲノムからCas12aを発見する過程の概念図である。
【
図2A】発見されているCas12aの系統樹を示す図である。
【
図2B】新規のCas12a及びAsCas12aの構造を示す図である。
【
図3】既存のCas12a及び本発明のmgCas12aのアミノ酸配列を示し、その配列を、ESPriptプログラムを使用して整列させた図である。
【
図4】既存のCas12a及び本発明のmgCas12aのアミノ酸配列を示し、その配列を、ESPriptプログラムを使用して整列させた図である。
【
図5】既存のCas12a及び本発明のmgCas12aのアミノ酸配列を示し、その配列を、ESPriptプログラムを使用して整列させた図である。
【
図6】既存のCas12a及び本発明のmgCas12aのアミノ酸配列を示し、その配列を、ESPriptプログラムを使用して整列させた図である。
【
図7】既存のCas12a及び本発明のmgCas12aのアミノ酸配列を示し、その配列を、ESPriptプログラムを使用して整列させた図である。
【
図8】既存のCas12a及び本発明のmgCas12aのアミノ酸配列を示し、その配列を、ESPriptプログラムを使用して整列させた図である。
【
図9A】Cas12a及び本発明のmgCas12aの配列情報を比較し、要約することによって得た表である。
【
図9B】Cas12a及び本発明のmgCas12aの配列情報を比較し、要約することによって得た表である。
【
図10】本発明に記載のmgCas12aのpHに応じた活性を同定することによって得られた結果を示す図である。他方、
図10のcrRNA#1は、配列番号25のヌクレオチド配列を有し、
図11のcrRNA#2は、配列番号26のヌクレオチド配列を有する。
【
図11】本発明に記載のmgCas12aのpHに応じた活性を同定することによって得られた結果を示す図である。他方、
図10のcrRNA#1は、配列番号25のヌクレオチド配列を有し、
図11のcrRNA#2は、配列番号26のヌクレオチド配列を有する。
【
図12】本発明に記載のmgCas12aのpHに応じた活性を同定することによって得られた結果を示す図である。他方、
図10のcrRNA#1は、配列番号25のヌクレオチド配列を有し、
図11のcrRNA#2は、配列番号26のヌクレオチド配列を有する。
【
図13】標的核酸配列及びcrRNAが結合する位置を示す図である。
【
図14】遺伝子CCR5及びDNMT1のそれぞれに対するcrRNAが使用される場合にそれぞれのタンパク質(Mock、mgCas12a-1及びmgCas12a-2)によって達成された遺伝子編集効率を同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図15】それぞれの遺伝子FucT14-1及びFucT14-2に対して2つのcrRNAが使用される場合にそれぞれのタンパク質(FnCpf1、mgCas12a-1及びmgCas12a-2)によって達成された遺伝子編集効率を同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図16A】FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質のDNA切断活性を同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図16B】FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質のDNA切断活性を同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図17】既存のCas12a(AsCas12a、FnCas12a又はLbCas12a)及び新規のCas12a(WT mgCas12a-1、d_mgCas12a-1、WT mgCas12a-2又はd_mgCas12a-2)の非特異的DNase機能を同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図18A】FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質が、crRNAなしに非特異的DNase機能を有するかどうか同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図18B】FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質が、crRNAなしに非特異的DNase機能を有するかどうか同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図19】mgCas12aが、既存のCas12aの5’ハンドルを使用してDNA切断を実行できるかどうか同定することによって得られた結果を示す図である。
【
図20A】二価イオン中のFnCas12a、mgCas12a-1又はmgCas12a-2タンパク質のDNA切断活性を示す図である。
【
図20B】二価イオン中のFnCas12a、mgCas12a-1又はmgCas12a-2タンパク質のDNA切断活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔本発明を実施するための最良の形態〕
本発明の態様において、メタゲノムから得られた新規のCas12aタンパク質が、提供される。
【0019】
本明細書では、用語「Cas12a」は、CRISPR関連タンパク質であり、Cpf1と称される場合もある。加えて、Cpf1は、V型CRISPR系に見られるエフェクタータンパク質である。単一のエフェクタータンパク質であるCas12aは、II型CRISPR系に見られるエフェクタータンパク質であるCas9と類似しており、crRNAと組み合わさって標的遺伝子を切断する。しかしながら、2つは、作用の仕方が異なる。Cas12aタンパク質は、一本鎖crRNAと作用する。したがって、Cas12aタンパク質の場合、Cas9のように、crRNAとトランス活性化crRNA(tracrRNA)を同時に使用する又はtracrRNA及びcrRNAを合成的に組合せることによって単鎖ガイドRNA(sgRNA)を創出する必要性はない。
【0020】
加えて、Cas9とは異なり、Cas12a系は、標的配列の5’位置に存在するPAMを認識する。加えて、Cas12a系において、標的を決定するガイドRNAも、Cas9より短い長さを有する。加えて、Cas12aは、標的DNAにおける切断部位で平滑末端ではなく5’突出(付着末端)を生成し、したがってより正確で多様な遺伝子編集が可能になるという点で有利である。
【0021】
従来、Cas12aタンパク質は、カンジダ属(Candidatus)、ラクノスピラ属(Lachnospira)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、ペレグリニバクテリア属(Peregrinibacteria)、アシダミノコッカス属(Acidominococcus)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属、フランシセラ属、カンジダタスメタノプラズマ属(Candidatus Methanoplasma)又はユーバクテリウム属(Eubacterium)から得られ得る。特に、PbCas12aは、パルクバクテリアバクテリウム(Parcubacteria bacterium)GWC2011_GWC2_44_17から得られるタンパク質であり;PeCas12aは、ペレグリニバクテリアバクテリウム(Peregrinibacteria Bacterium)GW2011_GWA_33_10から得られるタンパク質であり;AsCas12aは、アシドアミノコッカス属種BVBLGから得られるタンパク質であり;PmCas12aは、ポルフィロモナスマカカエ(Porphyromonas macacae)から得られるタンパク質であり;LbCas12aは、ラクノスピラバクテリウム(Lachnospiraceae bacterium)ND2006から得られるタンパク質であり;PcCas12aは、ポルフィロモナスクレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)から得られるタンパク質であり;PdCas12aは、プレボテーラディシエンス(Prevotella disiens)から得られるタンパク質であり;FnCas12aは、フランシセラノビシダ(Francisella novicida)U112から得られるタンパク質である。しかしながら、各Cas12aタンパク質は、そのタンパク質が由来する微生物によって異なる活性を有し得る。
【0022】
本発明において、新規のCas12aは、メタゲノム中の遺伝子を分析することによって同定された。以降、メタゲノム由来Cas12aは、mgCas12aと称され得る。AsCas12aと同様に、本発明のmgCas12aは、WED、REC、PI、RuvC、BH及びNUCドメインを含む(
図2)。加えて、これまでに知られているCas12aタンパク質と類似して、本発明のmgCas12aタンパク質は、crRNA及び5’ハンドルを含むgRNAにより遺伝子切断を実行できることが同定された。mgCas12aは、FnCas12aと同じ配列を有する5’ハンドルRNAを使用することが同定された。特に、5’ハンドルRNAは、AAUUUCUACUGUUGUAGAU(配列番号12)の配列を有し得る。しかしながら、mgCas12aが、AsCas12a及びLbCas12aにおける5’ハンドルRNAとも作用することが同定された(
図19)。
【0023】
mgCas12aは、分離及び精製のためのタグをさらに含んでもよい。タグは、mgCas12aのN末端又はC末端に結合されてもよい。加えて、タグは、mgCas12aのN末端及びC末端に同時に結合されてもよい。タグの特定の例の1つは、6×Hisタグでもよい。
【0024】
mgCas12aのある特定の例として、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質が提供される。加えて、mgCas12aの活性が変化しない限り、アミノ酸の部分の欠失又は置換がその中に作られてもよい。特に、mgCas12aは、925位のリジン(Lys)が別のアミノ酸で置換されている配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。ここで、別のアミノ酸は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つでもよい。特に、タンパク質は、925位のリジンがグルタミンで置換されている配列番号1のアミノ酸配列を有してもよい。即ち、タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を有してもよい。
【0025】
加えて、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号2のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドでもよい。加えて、配列番号1のアミノ酸配列を有するmgCas12aは、本発明によると、pH7.0~pH7.9で最適な活性を有し得る。
【0026】
mgCpf1の別の特定の例として、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質が提供される。加えて、mgCpf1の活性が変化しない限り、アミノ酸の部分の欠失又は置換がその中に作られてもよい。特に、mgCpf1は、930位のリジン(Lys)が別のアミノ酸で置換されている配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質でもよい。ここで、別のアミノ酸は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つでもよい。特に、タンパク質は、930位のリジンがグルタミンで置換されている配列番号3のアミノ酸配列を有してもよい。即ち、タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を有してもよい。
【0027】
配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドでもよい。
【0028】
加えて、配列番号3のアミノ酸配列を有するmgCas12aは、本発明によると、pH7.0~pH7.9で最適な活性を有し得る。
【0029】
本発明の別の態様において、エンドヌクレアーゼ活性が低下したmgCas12aタンパク質が、提供される。その特定の例の1つは、877位のアスパラギン酸(Asp)が別のアミノ酸で置換されている配列番号1のアミノ酸配列を有するmgCas12aでもよい。ここで、別のアミノ酸は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、リジン(Lys)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つでもよい。特に、タンパク質は、アスパラギン酸(Asp)をアラニン(Ala)で置換することによって得られるタンパク質でもよい。
【0030】
mgCas12aタンパク質の別の特別な例は、873位のアスパラギン酸(Asp)が別のアミノ酸で置換されている配列番号3のアミノ酸配列を有するmgCas12aでもよい。ここで、別のアミノ酸は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、リジン(Lys)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びシステイン(Cys)からなる群から選択されるいずれか1つでもよい。特に、タンパク質は、アスパラギン酸(Asp)をアラニン(Ala)で置換することによって得られるタンパク質でもよい。ここで、エンドヌクレアーゼ活性が低下したmgCas12aは、不活化mgCas12a又はd_mgCas12aと称されてもよい。d_mgCas12aは、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列を有してもよい。
【0031】
加えて、本発明のさらに別の態様において、活性成分として:mgCas12a;及びがん細胞に特異的に存在する核酸配列を標的とするcrRNAを含むがんを処置するための医薬組成物が提供される。ここで、mgCas12aは、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つを有し得る。本明細書では、用語「がん細胞内に特異的に存在する核酸配列」とは、正常細胞内には存在せず、がん細胞内にのみ存在する核酸配列のことを指す。即ち、本用語は、正常細胞内の配列とは異なる配列のことを指し、2つの配列は、少なくとも1つの核酸だけで異なっていてもよい。加えて、そのような差異は、遺伝子の部分の置換又は欠失に起因してもよい。ある特定の例として、がん細胞内に特異的に存在する核酸配列は、がん細胞内に存在するSNPでもよい。がん細胞内に存在する上述の配列を有する標的DNAと標的DNAに相補的な配列を有するガイドRNAは、互いに特異的に結合する。
【0032】
特に、がん細胞内に特異的に存在する核酸配列に関して、crRNAは、様々ながん組織のゲノム配列決定によりがん細胞内にだけ存在する特異的SNPを発見し、そのSNPを使用することによって創出され得る。これは、がん細胞特異的毒性を呈する方法で行われ、したがって患者特異的な抗がん治療薬の開発が可能になる。加えて、がん細胞内に特異的に存在する核酸配列は、正常細胞とは異なり、がん細胞内で高コピー数多型(CNV)を有する遺伝子でもよい。
【0033】
がんの特定の一例は、膀胱がん、骨がん、血液がん、乳がん、黒色腫、甲状腺がん、副甲状腺がん、骨髄がん、直腸がん、咽喉がん、喉頭がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、胃がん、舌がん、皮膚がん、脳腫瘍、子宮がん、頭頸部がん、胆嚢がん、口腔がん、大腸がん、肛門周囲がん、中枢神経系腫瘍、肝臓がん及び結腸直腸がんからなる群から選択されるいずれか1つでもよい。特に、がんは、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、肺がん及び乳がんであってもよく、これらがんは、韓国における5つの主要ながんとして知られている。
【0034】
ここで、がん細胞内に特異的に存在する核酸配列を標的とするcrRNAは、1つ又は複数のgRNA配列を含んでもよい。例えば、crRNAは、卵巣がん又は乳がんに存在するBRCA1のエクソン10及び11を同時に標的標的とすることができるgRNAを使用してもよい。加えて、crRNAは、BRCA1のエクソン11を標的とする2つ以上のgRNAを使用してもよい。したがって、gRNAの組合せは、がん処置の目的及びがんの型に応じて適切に選択され得る。即ち、異なるgRNAが選択され、使用されてもよい。
【実施例0035】
〔発明の様式〕
以降、本発明は、以下の例によってさらに詳細に記載される。しかしながら、以下の例は、単なる例示目的であり、本発明の範囲はそれに限定されない。
【0036】
実施例1.メタゲノム由来Cas12aタンパク質の発見
メタゲノムヌクレオチド配列をNCBI Genbank BLASTデータベースからダウンロードし、ローカルBLASTpデータベースを構築した。加えて、16個のCas12a及び様々なCRISPR関連タンパク質(Cas1)のアミノ酸配列を、Uniprotデータベースからダウンロードした。MetaCRTプログラムを使用して、メタゲノム中のCRISPR反復及びスペーサー配列を見いだした。次いで、CRISPR配列を有するメタゲノム配列だけを抽出し、その遺伝子を、Prodigalプログラムを使用して予測した。
【0037】
予測された遺伝子の中で、CRISPR配列の10kb上流又は下流の範囲にある遺伝子を抽出し、Cas12aのアミノ酸配列を使用して問題の遺伝子の中からCas12aホモログを予測した。Cas1遺伝子を使用して、Cas1ホモログがCas12aホモログの上流又は下流にあるかどうか予測し;Cas1を周辺に有する800aa~1500aaのCas12a遺伝子を選択した。これら遺伝子のそれぞれについて、NCBI Genbank非冗長データベースにおいてBLASTpを使用して、遺伝子がすでに報告されている遺伝子かどうか又は遺伝子がCRISPRと全く連関がない遺伝子かどうかを決定する。
【0038】
メチオニン(Met)から始まらない断片化したCas12aを除去した後、これら遺伝子を、高速フーリエ変換(MAFFT)プログラムを使用する多重整列化を使用して整列させた。次いで、MEGA7を使用して近隣結合(100×ブートストラップ)により系統樹を描いた。これまでに知られているCas12a遺伝子と共に単一系統分類群を形成する遺伝子を選択し、MEGA7、最尤法、及び1000xブートストラップを使用して既存のCas12aのアミノ酸配列と一緒にその系統樹を描いて、それらの進化的関係を調査した。ここで、メタゲノムからCas12aを発見する過程を
図1に図式的に例示する。加えて、Cas12aの系統樹を
図2Aに例示する。ここで、配列番号1のアミノ酸配列を有する新規のタンパク質をWT mgCas12a-1と命名した。加えて、配列番号3のアミノ酸配列を有する新規のタンパク質をWT mgCas12a-2と命名した。加えて、AsCas12a、mgCas12a-1及びmgCas12a-2の構造を
図2Bに例示する。
【0039】
実施例2.mgCas12aのバリアントの作製
Cas12a候補を、ESPriptプログラムを使用してAsCas12a及びLbCas12aの構造に基づいて整列させた。WT mgCas12a-1及びWT mgCas12a-2の場合、アミノ酸の部分の置換を作製し、そのエンドヌクレアーゼ活性を増大させた。925番目のアミノ酸Lys(K)をGlu(Q)で置換したWT mgCas12a-1を、mgCas12a-1と命名した。加えて、930番目のアミノ酸Lys(K)をGlu(Q)で置換したWT mgCas12a-2を、mgCas12a-2と命名した。得られたバリアントを、ヒト、シロイヌナズナ及び大腸菌のコドン使用頻度を考慮してコドン最適化に供し、次いで、その遺伝子合成をBionicsに依頼した。ここで、ヒトコドンに最適化したmgCas12a-1及びmgCas12a-2のヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号7及び配列番号8に示す。加えて、ESPriptプログラムを使用して整列させた既存のCas12a[AsCas12a(配列番号9)、LbCas12a(配列番号10)及びFnCas12a(配列番号11)]及びCas12a候補(mgCas12a-1及びmgCas12a-2)のアミノ酸配列を
図3~
図8に例示し;その配列情報を比較及び要約することによって得た結果を、
図9A及び
図9Bに例示する。
【0040】
次いで、pUC57ベクターにクローニングされているWT mgCas12a-1、WT mgCas12a-2、mgCas12a-1及びmgCas12a-2遺伝子のそれぞれを、pET28a-KanR-6×His-BPNLSベクターに再挿入し、次いでクローニングを実行した。クローニングしたベクターを、大腸菌株DH5a及びロゼッタにそれぞれ形質転換した。crRNAの5’ハンドル配列をメタゲノムCRISPR反復配列から抽出した。抽出したRNAをDNAオリゴに合成した。DNAオリゴマーの転写を、MEGAshortscript T7 RNA転写酵素キットを使用して実行し、転写された5’ハンドルの濃度をFLUOstar Omegaによって確認した。
【0041】
実施例3.タンパク質発現及び精製
終夜培養した大腸菌ロゼッタ(DE3)5mLを、100mg/mLカナマイシン抗生物質で補充した液体TB培地500mLに植菌した。培地を、OD600が0.6に達するまでインキュベーター内で、37℃で培養した。タンパク質発現のために、0.4μMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による処理を実行し、次いでさらなる培養を22℃で16~18時間実行した。遠心分離後、得られた細胞を溶解緩衝液(20mM HEPES pH7.5、100mM KCl、20mMイミダゾール、10%グリセロール及びEDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル)10mLと混合し、次いで超音波処理に供して細胞破砕した。破砕物を、それぞれ6000rpmで20分間、3回遠心分離し、0.22ミクロンフィルターによって次いで濾過した。
【0042】
その後、洗浄及び溶出をニッケルカラム(HisTrap FF、5mL)及び300mMイミダゾール緩衝液を使用して実行し、タンパク質を親和性クロマトグラフィーによって精製した。タンパク質サイズを、SDS-PAGE電気泳動によって確認し、透析を透析緩衝液(20mM HEPES pH7.5、100mM KCl、1mM DTT、10%グリセロール)に対して終夜実行した。次いで、タンパク質を、そのサイズに応じて濾過及び濃縮に選択的に供した(Amicon Ultra Centrifugal Filter 100,000 MWCO)。タンパク質の場合、ブラッドフォード定量方法を使用して、その濃度を測定した。次いで、タンパク質を-80℃で貯蔵し、使用した。
【0043】
実施例4.切断分析によるmgCas12aに適切なpH範囲の同定
レタス(Lactuca sativa)のキシロシルトランスフェラーゼをPCRによって増幅してプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を予測し、その結果ガイドRNA(gRNA)を設計した。mgCas12a-1及びmgCas12a-2のリボ核タンパク質(RNP)複合体の場合、各mgCas12aタンパク質を、分子比1:1.25でgRNAと室温で20分間混合して各RNP複合体を作製した。精製したキシロシルトランスフェラーゼPCR産物を、様々な濃度でRNPによる処理に供した。次いで、濃度調整を、NEBuffer 1.1(1×緩衝液成分、10mM Bis-トリス-プロパン-HCl、10mM MgCl
2及び100μg/mL BSA)、NEBuffer 2.1(1×緩衝液成分、50mM NaCl、10mMトリス-HCl、10mM MgCl
2及び100μg/mL BSA)及びNEBuffer 3.1(1×緩衝液成分、100mM NaCl、50mMトリス-HCl、10mM MgCl
2及び100μg/mL BSA)で行い、in vitro切断分析を37℃で実行した。ここで、NEBuffer 1.1、NEBuffer 2.1及びNEBuffer 3.1は、25℃でそれぞれpH7.0、pH7.9及びpH7.9値を有した。各反応が完了した後、反応を65℃で10分間のインキュベーションによって停止させ、完了した反応を1.5%アガロースゲル電気泳動法によって確認した。結果を
図10~
図12に例示する。
図10~
図12において、mgCas12a-1及びmgCas12a-2は、それぞれhemgCas12a-1及びhemgCas12a-2によって示される。加えて、キシロシルトランスフェラーゼ中の標的核酸配列及びcrRNAを結合する位置を図中に示し、この図を
図13に例示する。
【0044】
図10~
図12に例示した通り、mgCas12a-1とcrRNAの複合体をNEBuffer 1.1で処理した場合、標的dsDNAは切断された。加えて、mgCas12a-2とcrRNAの複合体をNEBuffer 1.1で処理した場合、標的dsDNAは切断された。これらの結果から、mgCas12a-1及びmgCas12a-2がpH7.0で活性であることが判明した。
実施例5.動物細胞におけるmgCas12aの遺伝子編集効率の分析
実施例5.1.CCR5及びDNMT1の遺伝子編集のためのmgCas12a-1又はmgCas12a-2を含むRNPの作製
【0045】
HEK 293T細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)及びペニシリンストレプトマイシン(P/S)で補充したDMEM培地中で、5% CO2インキュベーター内で、37℃で培養した。mgCas12a-1タンパク質及びmgCas12a-2タンパク質各100pmole並びにCCR5標的化crRNA及びDNMT1標的化crRNAそれぞれ200pmoleを20分間室温でインキュベートして、各RNPを調製した。ここで、CCR5及びDNMT1のcrRNA配列を、Integrated DNA Technologies(IDT)で合成し、下の表1に示す。
【0046】
【0047】
培養したHEK293T細胞2×105個を、ヌクレオフェクション試薬20μLと混合し、RNP複合体10μLと次いで混合した。その後、4D-Nucleofectorデバイス(Lonza)を使用して、トランスフェクションした。トランスフェクションの48及び72時間後に、ゲノムDNAをピュアリンク(PureLink)(商標)Genomic DNA Mini Kit(Invitrogen)を使用して細胞から抽出した。
【0048】
実施例5.2.標的部位の配列決定分析
実施例5.1において抽出したゲノムDNAを、下の表2に示したCCR5又はDNMT1用のアダプタプライマーを使用して増幅させた。
【0049】
【0050】
その後、精製及び配列決定ライブラリ調製を、Illuminaのプロトコールにしたがって実行し、次いでディープシーケンシング分析を、MiniSeq装置を使用して標的部位で実行した。mgCas12a-1及びmgCas12a-2タンパク質によって達成された遺伝子編集効率を
図14に例示し、標的部位の配列決定分析結果を下の表3に示す。
図14に例示した通り、mgCas12a-1及びmgCas12a-2タンパク質は、Mockタンパク質より高い遺伝子編集効率を呈した。
【0051】
【0052】
実施例6.植物細胞におけるmgCas12aの遺伝子編集効率の分析
実施例6.1.植物プロトプラストの単離
タバコ種子を、50% Cloroxによる1分間の処理によって殺菌した。殺菌した種子を種子発芽のために培地上に置き、1週間栽培した。次いで、種子を栽培に使用するマゼンタ色の箱に移し、3週間成長させた。使用した電照栽培条件は照明16時間及び暗闇8時間であり、種子を温度25℃~28℃で成長させた。植物の場合、4~6週間成長した葉を使用した。葉をガラスプレート上に置き、葉の内側部分だけを使用するように葉端及び柄をそこから切断した。ここで、葉を0.5mm又はより小さい断片に切断した。切断した葉断片を、酵素溶液10mL中に置き、室温で、暗所で、回転振とう機(50rpm)上で3~4時間インキュベートした。
【0053】
インキュベーション後、W5溶液10mLを添加し、慎重に混合した。細胞濾過器(70μm)を使用して、酵素溶液中に存在するプロトプラストを濾過した。濾過したプロトプラストを、100×gで6分間遠心分離した。上清を廃棄し、プロトプラストペレットをMMG溶液の添加によって慎重に懸濁した。次いで、懸濁液を氷上に10~30分間置いた。懸濁液の一部について、プロトプラスト数を、計数プレートであるHem血球計算器及び顕微鏡を使用して計数した。その後、プロトプラスト濃度が2×106個細胞/mLになるようにMMG溶液をさらに添加して希釈した。酵素溶液、MMG溶液及びPEG溶液のそれぞれの組成を下の表4に示す。
【0054】
【0055】
実施例6.2.標的部位の配列決定分析及びそれに対する編集効率の同定
crRNA、mgCas12aタンパク質及びNEBuffer1.1を、最終容量20μLになるように2mL e管に添加し、次いで、反応を室温で10分間進行させた。実施例6.1において得たプロトプラスト200μL(5×105個細胞)並びに反応させたcrRNA及びmgCas12タンパク質(容積20μL)をe管(2mL)に添加し、よく混合し、クリーンベンチ内で10分間次いで培養した。その後、インキュベートした容積と同じ容積のPEG溶液220μLをそれに添加し、慎重に混合した。混合物を室温で15分間培養した。次いで、W5溶液840μLをそれに添加し、よく混合した。100xgで2分間遠心分離した後、上清を廃棄した。次いで、培養をW5溶液中で2日間実行した。次いで、細胞を採取し、DNAをそこから抽出した。
【0056】
抽出したDNAを使用して標的部分をPCRに供し、次いで、標的遺伝子編集効率を、次世代配列決定(NGS)によって同定した。結果を下の表5に示す。表5に示すように、mgCas12a-1タンパク質によって達成された遺伝子編集効率は、FnCpf1より1.8倍高かった。
【0057】
【0058】
加えて、タバコFucT14遺伝子に対してcrRNAを2つ使用することにより達成された遺伝子編集効率を、各タンパク質について同定した。結果を
図15に例示する。
図15に例示されるように、mgCas12a-1タンパク質によって達成された遺伝子編集効率は、FnCpf1より2倍高かった。ここで、標的遺伝子NbFucT14_1並びにNbFucT14_2に対するcrRNA及びプライマー配列を下の表6及び表7に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
実施例7.FnCas12aとmgCas12a間の遺伝子編集効率の比較
FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質及びcrRNAからなる各リボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するために、FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質6pmol及びcrRNA 7.5pmolを、NEB1.1緩衝液及び1×蒸留水と室温で30分間混合した。crRNA依存的Cas12a(FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2)を使用してdsDNA切断活性を同定するために、標的dsDNA(直鎖状又は環状)0.3pmolをそれに添加し、次いで反応を37℃で2時間進行させた。ここで、HsCCR5、HsDNMT1及びHsEMX1を、DNAとして使用した。加えて、実験に使用した直鎖状DNA(配列番号27~配列番号29)は、PCR精製した産物であり、環状DNA(配列番号30~配列番号32)は、精製したプラスミドであった。SDS及びEDTA(ゲルローディング色素、NEB)をそれに添加し、次いで、混合物を-20℃で10分間貯蔵して反応を停止させた。各DNAを1%アガロースゲルにロードし、次いで電気泳動に供してFnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2に起因するDNA切断活性を確認した。結果を、
図16A(直鎖状DNA)及び
図16B(環状DNA)に例示する。
図16A及び
図16Bにおいて、Sは基質を示し、ゲルの下に示した各数字は、基質DNAバンドがどの程度濃いかを示す。
【0062】
実施例8.mgCas12aの非特異的DNase活性の同定
Cas12a(AsCas12a、FnCas12a又はLbCas12a)及びmgCas12a(WT mgCas12a-1、d_mgCas12a-1、WTmgCas12a-2又はd_mgCas12a-2)のランダムなDNase機能を同定するために、実験を、実施例7と同じ様式で実行した。ここで、d-mgCas12a-1及びd_mgCas12a-2は、Asp(WT mgCas12a-1の877位又はWT mgCas12a-2の873位)のAlaによる置換によってWT mgCas12a-1及びWT mgCas12a-2からそれぞれ得られたタンパク質のことを指す。
【0063】
特に、7つの型のCas12aのそれぞれ及びcrRNAからなる各リボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するために、各Cas12aタンパク質6pmol及びcrRNA 7.5pmolを、NEB1.1緩衝液及び1×蒸留水の存在下で、室温で30分間反応させた。その後、標的dsDNA 0.3pmolをそれに添加し、次いで、反応を37℃で12時間又は24時間進行させた。ここで、HsCCR5、HsDNMT1及びHsEMX1を、DNAとして使用した。SDS及びEDTA(ゲルローディング色素、NEB)をそれに添加し、次いで、混合物を-20℃で10分間貯蔵して反応を停止させた。各DNAを1%アガロースゲルにロードし、次いで電気泳動に供してCas12aの7つの型に起因するDNA切断活性を確認した。結果を
図17に例示する。
図17において、Sは基質を示し、ゲルの下に示した各数字は、基質DNAバンドがどの程度濃いかを示す。
【0064】
図17に例示する通り、新規のCas12aであるWT mgCas12a-1、d_mgCas12a-1、WT mgCas12a-2又はd_mgCas12a-2及びcrRNAからなる各リボ核タンパク質複合体は、既存のCas12aであるAsCas12a、FnCas12a又はLbCas12a及びcrRNAからなるリボ核タンパク質複合体より弱い非特異的DNase機能を呈した。加えて、全体として、Cas12a RNPとDNAの反応が、非特異的DNase機能をもたらすと推定される可能性がある。
【0065】
実施例9.crRNAを含まない条件下でのCas12aの非特異的DNase機能の同定
Cas12aが、crRNAがなくてもFnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質に対してランダムなDNase機能を有するかどうか同定するために、実験を、crRNAを含まない条件を使用したことを除いて、実施例7と同じ様式で時間を変動させて実行した。結果を
図18A及び
図18Bに例示する。
図18A及び
図18Bに例示した通り、FnCas12a、WT mgCas12a-1又はWT mgCas12a-2タンパク質は、crRNAがなくても、ランダムなDNase機能を有し、中でもFnCas12aタンパク質のランダムなDNase機能が最初に現れた。
【0066】
実施例10.既存のCas12aのハンドルを使用するmgCas12aのDNA切断機能の同定
新たなCas12a(d_mgCas12a又はWT mgCas12a)が、既存のCas12a(AsCas12a、FnCas12a又はLbCas12a)配列の5’末端に位置するハンドルを使用してDNA切断を実行し得るかどうか同定するために、実験を、AsCas12a、FnCas12a又はLbCas12aのそれぞれのハンドルを使用したことを除いて、実施例7と同じ様式で反応時間を変動させて実行した。結果を
図19に例示する。
【0067】
図19に例示した通り、DNA切断を、AsCas12a、FnCas12a又はLbCas12aのハンドルを使用してd_mgCas12a又はWT mgCas12aタンパク質で実行させた場合、DNA切断効率はそれぞれのハンドルによってわずかに異なるものの、3つの型のハンドルを使用した全てのd_mgCas12a又はWT mgCas12aタンパク質が、DNA切断機能を有した。これらの結果から、DNA切断の場合、mgCas12aは、AsCas12a、FnCas12a又はLbCas12aのハンドルを使用し得ることが判明した。
【0068】
実施例11.二価イオン中のFnCas12a又はmgCas12aの活性の同定
加えて、二価イオン(CaCl
2、CoCl
2、CuSO
4、FeCl
2、MnSO
4、NiSO
4又はZnSO
4)中でのFnCas12a、mgCas12a-1又はmgCas12a-2タンパク質のDNA切断活性を同定するために、実験を、予め定めた量の二価イオンをNEBuffer 1.1の代わりに使用したことを除いて、実施例4と同じ様式で実行した。結果を
図20A及び
図20Bに例示する。
図20A及び
図20Bに例示した通り、FnCas12a、mgCas12a-1又はmgCas12a-2タンパク質は、同じ二価イオン中で類似のDNA切断活性を呈した。