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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099691
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240718BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C55/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069792
(22)【出願日】2024-04-23
(62)【分割の表示】P 2022103624の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2018209700
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018209701
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻洋
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AB26
4F071AD02
4F071AD06
4F071AF15Y
4F071AF30Y
4F071AF53
4F071AG28
4F071AH04
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC15
4F071BC16
4F210AA01
4F210AA24
4F210AA50
4F210AB17
4F210AG01
4F210AR01
4F210AR12
4F210AR13
4F210AR14
4F210AR20
4F210QC06
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
4F210QW07
4F210QW12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた機械物性、透明性、耐熱性を有するとともに、二次加工適正及び印刷外観に優れる二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも一方のフィルム表面が下記(1)及び(2)を満たし、かつフィルムが下記(3)、(4)を満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)最大突起高さ(SRp)が1.2~1.6μmである。
(2)算術平均粗さ(SRa)が0.024~0.045μmである。
(3)長手方向及び幅方向の引張強さが180~300MPaである。
(4)ヘイズが7%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層又は積層構造を有している二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記単層又は前記積層構成の少なくとも最外層は、ジカルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸を98モル%以上含有し、グリコール成分100モル%中、エチレングリコールを98モル%以上含有してなるポリエチレンテレフタレート系樹脂と、平均粒径が0.5~3.0μmの無機粒子を構成成分とする組成物で構成され、両最外層が同一の組成物により構成されてなり、該組成物における無機粒子の含有量は500ppm以上1500ppm以下であり、
少なくとも一方のフィルム表面が下記(1)及び(2)を満たし、かつフィルムが下記(3)~(5)を満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)最大突起高さ(SRp)が1.2~1.6μmである。
(2)算術平均粗さ(SRa)が0.024~0.045μmである。
(3)長手方向及び幅方向の引張強さが180~300MPaである。
(4)ヘイズが7%以下である。
(5)フィルムの厚みが9~75μmである。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂として、ペットボトル製品からのリサイクルポリエステル樹脂、及び/又はバイオマス由来原料を使用したポリエステル樹脂を含有してなる、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記(1)及び(2)を満たすフィルム表面のジヨードメタン接触角が29°以下である、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記無機粒子がシリカ粒子である請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記シリカ粒子の細孔容積が0.6~2.0ml/gである、請求項4に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなるフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、優れた機械物性、透明性、耐熱性を有するとともに、二次加工適正及び印刷外観に優れる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐熱性や機械物性に優れた熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂は、プラスチックフィルム、エレクトロニクス、エネルギー、包装材料、自動車等の非常に多岐な分野で利用されている。プラスチックフィルムのなかでも、二軸延伸PETフィルムは機械特性強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、光学特性などとコストのバランスに優れることから,工業用,包装用分野において幅広く用いられている。
【0003】
工業用フィルムの分野では、優れた透明性を有することから液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)向けの機能フィルムとして用いることができる。また耐加水分解性を付与したPETフィルムは太陽電池バックシート用フィルムとしても利用されており、機能性フィルム、ベースフィルムとして様々な目的で使われている。
【0004】
包装用フィルムの分野では、食品包装用、ガスバリアフィルム用途として利用されている。特に、ガスバリア性に優れるフィルムは、食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として使用され、近年需要が高まっている。
【0005】
しかしながら、フィルム用のポリエステルには、フィルム表面が平滑な場合には、製造されたフィルムを巻き取ってロール状にした際にしわが生じたり、フィルムを重ね合わせたときにフィルムが密着し、いわゆるブロッキングを起こしたり、ロール状のフィルムを加工する際にガイドロール等との滑り性の不良により傷などの欠陥が生じたりする問題があり、フィルムの取り扱い性が悪くなる。
このようなフィルムの取り扱い上の問題を解決するために、ポリエステルフィルムの表面に微細な突起を形成させる方法が用いられている。
【0006】
ポリエステルフィルムの表面をある一定の表面粗さに収める方法として、ポリエステルフィルム内部に無機粒子等の不活性粒子を含有させる技術が用いられている。ポリエステルフィルム内部に無機粒子等を含有させる方法としては、最終的なフィルム中の無機粒子の濃度よりも高い濃度で添加したポリエステル樹脂(マスターバッチ)を無機粒子を実質的に含まないポリエステル樹脂に溶融混練する方法が一般的である。
一方、フィルム表面が粗い場合には、フィルムの印刷後にいわゆる印刷抜けが生じ、印刷外観が悪くなる。
このため、ポリエステルフィルムの表面をある一定の表面粗さに収めることが提案されている。
【0007】
一方、環境配慮型または環境持続型材料として、ペットボトルからなるリサイクル樹脂やバイオマス由来の原料を用いたポリエステル樹脂が開発され、当該樹脂が多く含有したフィルムが求められている。前述する樹脂を多く含有させるために、無機粒子の含有濃度が高いマスターバッチを用いる方法があるが、一般に無機粒子濃度が高くなると、粒子の凝集が起こり、印刷抜けなどをより引き起こすという問題があった。
【0008】
これまで、無機粒子の凝集を抑えるために、粒子サイズやマスターバッチ中の無機粒子濃度、マスターバッチの添加量を特定の範囲とする方法(例えば、特許文献1等参照。)が報告されているが、粗大粒子も10μm以上と大きく、印刷抜けが起こる可能性が高く不十分である。
【0009】
また、無機粒子を用い、フィルムコンデンサーの絶縁抵抗を改善する方法(例えば、特許文献2等参照。)が開示されている。
しかしながら、依然として機械物性、透明性及び耐熱性並びに印刷加工及び外観に問題を有するものであった。
【0010】
別の報告では、無機粒子を含むマスターバッチを用い、フィルムの表面粗さと濡れ性を制御し、セラミックスラリーとの密着性と剥離性を両立させる方法(例えば、特許文献3等参照。)が開示されている。
しかしながら、依然として印刷抜けなどを引き起こす問題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO13/146524号公報
【特許文献2】特開平11-40453号公報
【特許文献3】特開2018-83874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、優れた機械物性、透明性、耐熱性を有するとともに、二次加工適正及び印刷外観に優れる二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1]
少なくとも一方のフィルム表面が下記(1)及び(2)を満たし、かつフィルムが下記(3)(4)を満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)最大突起高さ(SRp)が1.2~1.6μmである。
(2)算術平均粗さ(SRa)が0.024~0.045μmである。
(3)長手方向及び幅方向の引張強さが180~300MPaである。
(4)ヘイズが7%以下である。
【0014】
[2]
前記(1)及び(2)を満たすフィルム表面のジヨードメタン接触角が29°以下である、[1]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0015】
[3]
前記二軸配向ポリエステルフィルム中に無機粒子を500~1500質量ppm含む、[1]又は[2]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0016】
[4]
前記無機粒子がシリカ粒子である[1]~[3]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0017】
[5]
前記シリカ粒子の細孔容積が0.6~2.0ml/gである、[4]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0018】
[6]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなるフィルムロール。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明は、さらに以下の構成を有する。
[7]
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにしたポリエステル樹脂組成物を溶融押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定した後に、200度以下に温度を低下させながら、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程を含む、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【0020】
[8]
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物、第2のポリエステル樹脂組成物を、それぞれ溶融させ、第1のポリエステル樹脂組成物からなる層/第2のポリエステル樹脂組成物からなる層の構成となるように、ダイスを介して押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定した後に、200度以下に温度を低下させながら、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程を含む、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法
【0021】
[9]
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物、第2のポリエステル樹脂組成物を、それぞれ溶融させ、第1のポリエステル樹脂組成物からなる層/第2のポリエステル樹脂組成物からなる層/第1のポリエステル樹脂組成物からなる層の構成となるように、ダイスを介して共押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定した後に、200度以下に温度を低下させながら、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程を含む、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【0022】
[10]
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物、第2のポリエステル樹脂組成物、第3のポリエステル樹脂組成物を、それぞれ溶融させ、第1のポリエステル樹脂組成物からなる層/第2のポリエステル樹脂組成物からなる層/第3のポリエステル樹脂組成物からなる層の構成となるように、ダイスを介して共押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定した後に、200度以下に温度を低下させながら、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程を含む、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【0023】
[11]
前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程が、前記未延伸シートを縦方向に2段階で延伸した後に、横延伸をして二軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程である、[7]~[10]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【0024】
[12]
前記第1の無機粒子及び第2の無機粒子がシリカ粒子である[7]~[11]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【0025】
[13]
前記シリカ粒子の細孔容積が0.6~2.0ml/gである[12]に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、優れた機械物性、透明性、耐熱性を有するとともに、二次加工適正及び印刷外観に優れる二軸配向ポリエステルフィルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲においての種々の変更は当然あり得る。
【0028】
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を構成成分とする。ここで、ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレングリコール由来成分およびテレフタル酸由来成分を主な構成成分として含有する。「主に」とは、ジカルボン酸全成分100モル%中、テレフタル酸が80モル%以上であり、グリコール全成分100モル%中、エチレングリコールが80モル%以上である。
本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。他のジカルボン酸成分およびグリコール成分の共重合量は、全ジカルボン酸成分あるいは全グリコール成分に対して、それぞれ20モル%未満であり、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。
上記の他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸、ナフレンジカルボン酸、4、4’-ジカルボキシビフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。40021
【0029】
上記の他のグリコール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,10-デカンジオール、ジメチロールトリシクロデカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4’-ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0030】
このようなポリエチレンテレフタレート系樹脂の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のグリコール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0031】
また、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度は、0.30~1.20dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.50~1.00dl/gであり、さらに好ましくは0.55~0.90dl/gである。固有粘度が0.30dl/gよりも低いと、ポリエステルフィルムが裂けやすくなり、1.20dl/gより高いと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となり、フィルタを介して樹脂を押出すことが困難となりやすい。 また、前記ポリエステルフィルムの樹脂の固有粘度は、0.30~1.20dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.45~0.95dl/gであり、さらに好ましくは0.50~0.85dl/gである。固有粘度が0.30dl/gよりも低いと、ポリエステルフィルムが裂けやすくなり、固有粘度が1.20dl/gより高いと、機械的特性を高くする効果が飽和状態になりやすい。
【0032】
なお、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、溶液重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中で必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。
【0033】
ポリエステル樹脂として上記のポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるペットボトル製品をリサイクルしたポリエステル樹脂やバイオマス由来の原料を使用したポリエチレンテレフタレート系樹脂も使用することが可能である。
【0034】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの構成成分として、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、及び上記以外のポリエステルなどの他の樹脂を含んでも良いが、二軸配向ポリエステルフィルムの機械特性、耐熱性の点で、他の樹脂の含有量はポリエステルフィルムの全樹脂成分に対して30質量%以下、さらには20質量%以下、またさらには10質量%以下、特には5質量%以下であることが好ましく、0質量%(ポリエステルフィルムを構成する全樹脂成分が実質的にポリエチレンテレフタレート系樹脂)であることが最も好ましい。
【0035】
(無機粒子)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの構成成分として、無機粒子を含む。無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ-アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子が挙げられる。これらの1種もしくは2種以上を選択して用いる。
【0036】
これらの粒子の中でも、樹脂成分と屈折率が比較的近く、また粒子の周りに空隙をつくりにくいため、高透明のフィルムを得やすいという点で非晶性シリカ粒子が好適である。特に、無機粒子が非晶性シリカ粒子のみであることが好ましい。
【0037】
また、無機粒子が1種の場合、または2種以上の場合の主体とする無機粒子の平均粒径は0.5~3.0μmであり、より好ましくは0.8~2.8μmであり、さらに好ましくは1.5~2.5μmである。0.5μm以上では、表面の凹凸形成がしやくすく、フィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)を0.024μ以上としやすく、フィルムの滑り性が低下しにくい。一方、3.0μm以下の場合は、よりフィルム表面の最大突起高さ(SRp)を1.6μm以下としやすい。無機粒子の平均粒径は、島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置 SALD-2200にて測定した値である。また、無機粒子の形状は特に限定されないが、易滑性を付与する点からは、球状に近い無機粒子が好ましい。
【0038】
また、無機粒子が非晶性シリカ粒子である場合、平均一次粒径20~60nmの粒子の凝集体が透明性の点で好ましい。これは製膜工程において、表面層が延伸工程、熱固定工程を経ることによって平たく、安定した形状にできるためと推察される。
この粒子の凝集体の細孔容積は0.6~2.0ml/gが好ましく、より好ましくは1.0~1.9ml/gであり、さらに好ましくは1.2~1.8ml/gである。細孔容積が0.6ml/g以上では、フィルム表面の最大突起高さ(SRp)を1.6μm以下としやすい。一方で、細孔容積が2.0ml/g以下の場合、無機粒子が崩れすぎず、フィルム表面の最大突起高さ(SRp)を1.2μm以上としやすい。また粒子の周りに空隙をつくりにくいため、高透明のフィルムを得やすい。
本発明における第1の無機粒子と第2の無機粒子は同じものでも良く、異なるものでも良い。例えば、組成同じであるが、その粒径、粒度分布、及び細孔容積のうちいずれか1つ以上の特性が異なるものでも良い。
【0039】
(添加剤)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの構成成分として、無機粒子以外に、耐熱性高分子粒子、架橋高分子粒子などの不活性粒子、蛍光増白剤、紫外線防止剤、赤外線吸収色素、熱安定剤、静電密着剤(ピニング剤)、界面活性剤、酸化防止剤などの各種添加剤を1種もしくは2種以上含有させることができる。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、
フェノール系などの酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、イオウ系、アミン系などの安定剤が使用可能である。
これら無機粒子以外の添加剤は、フィルムを製膜するポリエステル樹脂中に、好ましくは3重量%以下の割合で添加することができ、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の割合である。
【0040】
(フィルム製造方法)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの具体的な構成の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させたものからなることが重要で、第1の無機粒子の含有量は7000~19000ppmが好ましく、8000~17000ppmがより好ましく、9000~15000ppmが特に好ましい。第1の無機粒子の濃度が7000ppmより小さい場合は、第1の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂の添加比率が大きくなることは、もちろんであるが、フィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)を上げ過ぎずに、フィルム表面の最大突起高さ(SRp)を1.2μm以上としやすい。第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂の添加割合が少なる。第1の無機粒子の濃度が22000ppmより大きいと、フィルム表面の最大突起高さ(SRp)が1.6μmを超えやすい。
【0041】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおける、無機粒子の含有量は500ppm以上1500ppm以下であることが好ましく、700ppm以上1200ppm以下が好ましく、850ppm以上1000ppm以下が特に好ましい。無機粒子の含有量が1500ppmを超えると、粒子の凝集体が増加し、フィルム表面の最大突起高さ(SRp)が1.6μmを超えやすく、印刷不良が発生しやすい。一方、粒子の含有量が500ppm未満では、フィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)が0.024より小さくなりやすく、滑り性低下やロールでの空気抜け不良によるシワ増加などハンドリング性やロール外観が悪化しやすい。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルム中における、第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂との混合の比率は、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂の、第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂との混合物の合計量に対して、65重量%以上であることが好ましく、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂が、ペットボトル製品をリサイクルしたポリエチレンテレフタレート系樹脂、バイオマス由来の原料を使用して得られたポリエチレンテレフタレート系樹脂、必要に応じて添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系をフィルム中に多く含有することができ、これらの樹脂を最大限に使用することが可能となる。
【0043】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述のような単層の場合に加えて、2層、3層、あるいは4層以上の積層構造であってもよい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが2層構造の場合においては、一方の層は第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテ
レフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させたものからなる第1のポリエステル樹脂組成物であることが重要で、第1の無機粒子の含有量は7000~19000ppmが好ましく、8000~17000ppmがより好ましく、9000~15000ppmが特に好ましい。
【0044】
また、前記の一方の最外層における、無機粒子の含有量は500ppm以上1500ppm以下であることが重要で、700ppm以上1200ppm以下が好ましく、850ppm以上1000ppm以下が特に好ましい。無機粒子の含有量が1500ppmを超えると、粒子の凝集体が増加し、前記の一方の層の表面の最大突起高さ(SRp)が1.6μmを超えやすく、印刷不良が発生しやすい。一方、粒子の含有量が500ppm未満では、フィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)が0.024より小さくなりやすく、滑り性低下やロールでの空気抜け不良によるシワ増加などハンドリング性やロール外観が悪化しやすい。
他方の層は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、無機粒子さらには必要に応じて添加剤、ポリエチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、前記の一方の層と全く同じでなければ良い。
【0045】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが3層構造の場合においては、一方の最外層は第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させたものからなる第1のポリエステル樹脂組成物であることが重要で、第1の無機粒子の含有量は7000~19000ppmが好ましく、8000~17000ppmがより好ましく、9000~15000ppmが特に好ましい。
【0046】
また、前記の一方の最外層における、無機粒子の含有量は500ppm以上1500ppm以下であることが重要で、700ppm以上1200ppm以下が好ましく、850ppm以上1000ppm以下が特に好ましい。無機粒子の含有量が1500ppmを超えると、粒子の凝集体が増加し、前記の一方の層の表面の最大突起高さ(SRp)が1.6μmを超えやすく、印刷不良が発生しやすい。一方、粒子の含有量が500ppm未満では、フィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)が0.028より小さくなりやすく、滑り性低下やロールでの空気抜け不良によるシワ増加などハンドリング性やロール外観が悪化しやすい。
他方の最外層は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、無機粒子さらには必要に応じて添加剤、ポリエチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、前記の一方の層と全く同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0047】
中間層はポリエチレンテレフタレート系樹脂、無機粒子さらには必要に応じて添加剤、ポリエチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、前記の一方の最外層と全く同じでなければ良い。しかし無機粒子がなくても、一方の最外層のみの無機粒子添加粒子量を制御することでフィルムの表面粗さを制御することができ、フィルム全体における無機粒子の含有量をより少なくすることができ、好ましい。これは、無機粒子とポリエステル樹脂との境界に出来るボイド(空隙)を介して、におい成分が抜け、保香性が低下する点を改善することにもつながるためである。
さらに中間層にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することが容易となり、コスト的にも優位である。
他方の最外層は前記の一方の最外層と同じ組成とする方が、製造が容易であり好ましい。
【0048】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが4層構造の場合においては、一方の最外層は
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させたものからなる第1のポリエステル樹脂組成物であることが重要で、第1の無機粒子の含有量は7000~19000ppmが好ましく、8000~17000ppmがより好ましく、9000~15000ppmが特に好ましい。
【0049】
また、前記の一方の最外層における、無機粒子の含有量は500ppm以上1500ppm以下であることが重要で、700ppm以上1200ppm以下が好ましく、850ppm以上1000ppm以下が特に好ましい。無機粒子の含有量が1500ppmを超えると、粒子の凝集体が増加し、前記の一方の層の表面の最大突起高さ(SRp)が1.6μmを超えやすく、印刷不良が発生しやすい。一方、粒子の含有量が500ppm未満では、フィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)が0.024より小さくなりやすく、滑り性低下やロールでの空気抜け不良によるシワ増加などハンドリング性やロール外観が悪化しやすい。
他方の最外層は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、無機粒子さらには必要に応じて添加剤、ポリエチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、前記の一方の層と全く同じであっても良いが、異なっていても良い。
【0050】
2つの中間層はポリエチレンテレフタレート系樹脂、無機粒子さらには必要に応じて添加剤、ポリエチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、前記の一方の最外層と全く同じでなければ良い。しかし無機粒子がなくても、一方の最外層のみの無機粒子添加粒子量を制御することでフィルムの表面粗さを制御することができ、フィルム全体における無機粒子の含有量をより少なくすることができ、好ましい。これは、無機粒子とポリエステル樹脂との境界に出来るボイド(空隙)を介して、におい成分が抜け、保香性が低下する点を改善することにもつながるためである。
さらに中間層にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することが容易となり、コスト的にも優位である。
他方の最外層は前記の一方の最外層と同じ組成とする方が、製造が容易であり好ましい。
【0051】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおける、第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂の混合物に対する第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂の占割合は65重量%以上であることが好ましく、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。これにより、本発明では、安価な樹脂、ペットボトルからなるリサイクル樹脂やバイオマス由来の樹脂等をフィルム中に多く含有することができ、樹脂の特性を最大限に生かすことが可能となる。
しかしながら、高濃度の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いて溶融押出しする際に無機粒子が凝集しやすくなり、粒径の大きな無機粒子凝集体が生成性しやすくなる。
【0052】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂に無機粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに無機粒子を所定の割合にてスラリーの形で分散せしめ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加することが挙げられる。
ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの具体的なフィルムへの加工方法の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0053】
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂のそれぞれのペレットを所定の割合で混合し、ベント式二軸押出機に供給し溶融押出しする。この際、押出機内を流通窒素雰囲気下で、樹脂温度は265℃~295℃に制御することが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが2層、3層、あるいは4層以上の積層構造である場合は、多層フィードブロック、スタティックミキサー、多層マルチマニホールドなどの多層化装置を用いることができる。
例えば、二台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂をフィードブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。また、一台の押出機のみを用いて、押出機からT型ダイまでのメルトラインに上述の多層化装置を導入することも可能である。
背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法が好ましい。
【0054】
ついで、混合した樹脂組成物を溶融し押出しながらフィルターによりろ過する。ポリエチレンテレフタレート系樹脂が酸化して生成したゲルや無機粒子の凝集体といった粗大な異物は得られたフィルムの欠陥の原因となるため、フィルターには例えば25μm以上の異物を95%以上捕集する精度のものを用いることが有効である。フィルムを使用する用途によっては、小さな異物も問題となりうるため、好ましくは10μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のフィルターを用いることが望ましい。これ以上の高精度のフィルターを用いると、溶融した混合樹脂組成物の押出しの際、フィルターの昇圧が著しく、フィルター交換頻度が増え、生産性やコスト面で不利となりやすい。
フィルターは、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の場合、いわゆるゲルなどの異物に加え、触媒などの添加物に由来するSi、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物の除去性能に優れ好適である。また、その濾過精度は100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは80μm以下であり、特に好ましくは70μm以下である。
【0055】
続いて、溶融した混合樹脂組成物をスリット状のスリットダイから冷却ロール上にシート状に押し出し、冷却ロール上で冷却固化せしめて未延伸シートを作る。
また、冷却ロールで冷却する際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ロールと混合樹脂組成物の未延伸シートを密着させる静電印加法などの方法により、混合樹脂組成物の未延伸シートを冷却ロール表面に密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得る。
【0056】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの機械的強度、厚みムラ、加工適正の観点から二軸配向フィルムとしている。未延伸シートの延伸方法としては同時二軸延伸方式や逐次二軸延伸方式などが挙げられるが、設備などのコストや生産性などから逐次二軸延伸方式が好ましい。
フィルム表面の算術平均粗さはフィルム中の無機粒子含有量を調整し高くなりすぎないようにすることができるが、フィルム表面の最大突起粗さを高くなりすぎないようにするには、未延伸シートを延伸する際に無機粒子凝集体にフィルム内部の応力によりほぐすことが有効である。
未延伸シートを延伸する時には温度を低くしたり、多段延伸することはフィルム内部の応力を高くすることは粒子凝集体をほぐすのには効果的である。
フィルム内部の応力を高くしすぎると、無機粒子がフィルム内部に沈み込み、算術平均粗さが小さくなり、フィルムのすべり性が低下する。
さらに、最大突起粗さが小さくなりすぎると、フィルムロール中のフィルム間の空気が
抜けにくく、フィルムロールにシワが発生することがある。更には、応力による無機粒子を起点としたボイド形成が増え、ヘイズや匂い抜けも高くなるため、適切な調整が必要である。
【0057】
得られた未延伸シートを縦延伸へ導き、予熱工程において40~140℃に加熱した。この際、急激に加熱すると冷却ロールへ貼りつくため、徐々に温度を上げていくことが望ましい。
その後、縦延伸工程となるが、縦延伸の方式はロール延伸方式、IR延伸方式などが挙げられるが、特に限定するものではない。速度の異なる2対のロール間で100~140℃に加熱し、3.6~5.0倍、さらに好ましくは3.8~4.7倍、特に好ましくは4.0~4.7倍に長手方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に赤外線加熱ヒーターをフィルムの両面に設置し、必要に応じてフィルムを加熱し、長手方向の延伸温度を調節してもよい。また、縦延伸は、1段でも2段、3段などの多段延伸でも良い。
2段延伸の場合は、1段目を1.1~3.2倍の範囲に2段目を1.1~3.2倍の範囲とするのが好ましい。3段延伸の場合は、1段目を1.1~1.5倍の範囲に2段目を1.2~1.8倍の範囲に3段目を2.0~3.0倍の範囲にするのが好ましい。
【0058】
縦延伸の予熱工程と延伸工程でフィルムへの加熱温度を低くし、高倍率で延伸することで、フィルム内部の高い応力による無機粒子凝集体をほぐすことが出来る。また、多段延伸で配向結晶化を促しながら延伸することで、よりフィルム内部を高めることが可能となる。ただ、延伸倍率を高くしすぎると、算術平均粗さが小さくなり、フィルムのすべり性が低下する。延伸倍率を高くすると、機械強度は向上するが、得られた二軸配向ポリステルフィルムの長手方向の引張強度を300MPa以下とするのが好ましい。
【0059】
得られた縦延伸フィルムに、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を付与するために片面にコーティング法により塗布液を塗布することもできる。
【0060】
次いで、得られた縦延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、100~160℃で幅方向に3.9~5.0倍、さらに好ましくは4.0~4.7倍、特に好ましくは4.1~4.7倍の範囲で横方向に延伸し、二軸延伸フィルムを得る。この際、縦延伸同様に、横延伸温度を低く、延伸倍率を高く、多段延伸することで粒子のほぐし効果を効果的に得られることが出来るが、延伸倍率を高くしすぎると算術平均粗さが小さくなり、フィルムのすべり性が低下する。延伸倍率を高くすると、機械強度は向上するが、得られた二軸配向ポリステルフィルムの幅方向の引張強度を300MPa以下とするのが好ましい。
【0061】
横延伸後、二軸延伸フィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上に二軸延伸フィルムを走行させることより行うことができる。この熱処理は120℃以上、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の結晶融解ピーク温度以下の温度範囲内で行われる。熱処理時間は1.6~20秒の範囲であるのが好ましい。
熱処理温度の中で最も高温となる温度は、好ましくは200~250℃の温度範囲内の特定の温度であり、さらに好ましくは210~245℃であり、特に好ましくは220℃~245℃である。最も高温となる温度での処理時間は好ましくは0.8~10秒、より好ましくは1~5秒で行うのがよい。
【0062】
最高温度での熱処理に続いて、高温からの結晶化ピーク温度までの冷却過程においてフィルムを横方向に弛緩することでも、フィルム内部の応力による無機粒子の凝集体をほぐす効果が得られる。
例えば、二軸延伸フィルムの熱処理工程の前半で最も高い温度で処理し、後半で温度を
下げながら弛緩処理を実施しても良いし、二軸延伸フィルムの熱処理工程の1段目で最も高い温度で処理し、2段目で温度を下げながら弛緩処理を行い、3段目で弛緩せずにより低温で熱処を実施しても良い。
最高温度から下げる場合、徐々に温度を下げることが望ましく、最高温度から120~210℃の温度範囲内の特定温度に徐々に温度を下げることが好ましく、130~200℃に徐々に温度を下げることがより好ましく、150~200℃に徐々に温度を下げることが特に好ましい。
【0063】
弛緩処理は幅方向に0.5~6.5%が好ましく、より好ましくは1.0~6.0%である。弛緩処理が巾方向で0.5%未満の場合、熱収縮率などの熱寸法安定性が悪く、加工時のズレや縮みとなりやすい。また上述している粒子のほぐし効果がなくなりやすい。一方で6.5%を超える場合、たるみなどが生じて厚みムラの発生となりやすい。弛緩処理の処理時間は0.8~10秒が好ましく、より好ましくは1~5秒である。弛緩処理の処理時間が0.8秒未満の場合、フィルムの破断が起こりやすい。一方で処理時間が10秒を超えるとたるみなどが生じて厚みムラが発生しやすい。
熱処理温度が最高温度となった以降、徐々に温度を下げることで、急激な冷却での変形も抑えられ、厚みムラや熱歪み低減にも有効である。
【0064】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの第1の無機粒子を7000質量ppm以上2200質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにした樹脂組成物からなる層の厚み好ましくは0.5~30μmであり、より好ましくは0.5~20μmであり、さらに好ましく0.5~10μmであり、より好ましくは0.5~8μmである。層厚みが30μm以下であるとフィルムの表面の算術平均粗さ(SRa)を0.024μm以上としやすい。
【0065】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの全体の厚みは好ましくは9~75μmであり、より好ましくは9~50μmであり、さらに好ましくは9~25μmである。フィルムの全体の厚みが9μm以上の場合、フィルムの剛性を高くしやすく、加工しやすい。また、ロールでのシワも入りにくい。フィルムの全体の厚みが75μm以下の場合、フィルムの剛性が高くなりすぎず、ロールでのシワも入りにくくなる。
【0066】
(フィルム特性)
本発明における二軸配向ポリエステルフィルム、及び本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにしたポリエステル樹脂組成物からなる層の表面は、下記(1)、(2)の特性を満たすことが重要である。
(1)最大突起高さ(SRp)が1.2~1.6μm以下である。
(2)算術平均粗さ(SRa)が0.024~0.045μmである。
【0067】
最大突起高さ(SRp)が1.2μm以下であると、フィルムをフィルムロールに巻き取る際のフィルム間の空気が抜けやすく、フィルムロールにシワやスジが発生しにくい。更にフィルムの滑り性が向上し、印刷加工などの二次加工が行いやすく、品質と加工コストの点で有利となりやすい。最大突起高さ(SRp)が1.6μm以下であると、印刷抜けなどが少なくなり印刷外観が良く、意匠性の点で有利であるとともに、ロール形状にしたときにズレが生じにくく、保管しやすく生産効率も向上しやすい。最大突起高さ(SRp)は1.2~1.5μm以下がより好ましく、1.2~1.4μmがさらに好ましい。
算術平均粗さ(SRa)が0.024μm以上であると、フィルムの滑り性が向上し、
印刷加工などの二次加工が行いやすく、品質と加工コストの点で有利となりやすい。 算術平均粗さ(SRa)が0.045μm以下であると、印刷抜けなどが少なくなり印刷外観が良く、意匠性の点で有利である。算術平均粗さ(SRa)は0.024~0.040μmがより好ましく、算術平均粗さ(SRa)は0.024~0.035μmがさらに好ましい。
【0068】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、上記(1)、(2)に加えて、下記(3)、(4)の特性を満たすことが重要である。
(3)長手方向及び幅方向の引張強さが180~300MPaであること。
(4)ヘイズが7%以下であること。
引張強度、ヘイズを適切に制御することにより、さらに印刷加工適正や及び印刷外観を優れたものとすることができる。
【0069】
長手方向及び幅方向の引張強さが180MPa以上の場合、印刷加工に限らず、フィルムに張力が加わる際変形しにくく、破断しにくい。フィルムの長手方向及び幅方向の引張強さの下限は、好ましくは190MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上、特に好ましくは210MPa以上である。
引張強さが 引張強さが300MPa以下の場合、未延伸シート又は縦延伸フィルムの延伸時の応力を高くなり過ぎることがないようにしやすく、無機粒子がフィルム内部に沈み込みにくく、フィルム表面の粗さを高めやすく、またフィルム中の無機粒子の周りに空隙(ボイド)が生成しにくく、ヘイズを低下させやすい。引張強さは好ましくは290MPa以下、さらに好ましくは280MPa以下、特に好ましくは270MPa以下である。
【0070】
フィルムのヘイズが7%以下場合、印刷外観が向上し、また高速での加工においても、X線などによる異物検知がしやすくなり、十分な品質を得ること容易になりやすい。フィルムのヘイズは好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは4%以下である。
【0071】
フィルムをフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定したときの、固有粘度(IV)は0.5~0・7(g/dl)の範囲が好ましい。
【0072】
フィルム表面を協和界面科学株式会社製「DropMaster500」を使用し、20℃、50%RHの環境下で、外径0.7mmの針から2μLのジヨードメタンをフィルムの測定面に押し出して測定した接触角(測定では異なる位置で10回行い、その平均値を求めた。)は好ましくは29°以下であり、より好ましくは28°以下であり、さらに好ましくは27°以下である。フィルム表面の接触角が29°以下の場合、網点5%の条件での印刷インキ抜けが少なくなりやすい。
【0073】
実施例に記載した方法で測定した空気抜け時間は好ましくは14秒以下であり、より好ましくは13秒以下であり、更に好ましくは12秒以下である。空気抜け時間が14秒を以下の場合、フィルムを巻き取ってフィルムロールにする際に空気が抜ける速度早く、シワが入りにくく、巻ズレも少なくなる。
【0074】
製膜した2軸配向ポリエステルフィルムを幅800mm、巻長12000mで巻き取ったときのロール表層を目視で評価したときに、弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけるとシワが消えるのが好ましく、シワがないのが好ましい。
【0075】
実施例に記載した方法で評価した印刷評価では、全体の印刷インキドット数に対し、綺
麗な印刷ドットが95%以上塗られていることが好ましく、98%以上塗られていることがより好ましい。
【0076】
無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂比率が80重量%以上であると、ペットボトル製品からのリサイクルポリエステル樹脂、バイオマス由来原料を使用したポリエステル樹脂を使用した時の環境適正の効果が高くなり、好ましい。使用比率は80重量%以上がより好ましく、85重量%以上がさらに好ましく90重量%以上が特に好ましい。
【実施例0077】
(1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂の組成
ポリエチレンテレフタレート系樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。
【0078】
(2)ポリエチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレート系樹脂をフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
【0079】
(3)ポリエチレンテレフタレート系樹脂のガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
SII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度20℃/分で測定した。DSC曲線から得られたガラス転移開始温度をガラス転移温度とし、融解吸熱ピーク温度を融点とした。
【0080】
(4)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM2100)で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。
【0081】
(5)フィルム各層中の無機粒子含有量
フィルムから測定したい層を削り取り、0.9gに0-クロルフェノール1.0リットルを加え120℃で3時間加熱した後、30,000rpmで40分間遠心分離を行ない、得られた粒子を100℃で真空乾燥した。微粒子をDSCにて測定した時、ポリマーに相当する溶解ピークが認められる場合には微粒子に0-クロロフェノールを加え、加熱冷却後再び遠心分離操作を行なった。溶解ピークが認められなくなった時、微粒子を粒子とした。通常遠心分離操作は2回で足りる。得られた粒子の全体重量に対する比率(ppm)を無機粒子の含有量とした。
【0082】
(6)フィルム全層中の無機粒子の含有量
ポリエステルフィルムを蛍光X線分析装置(リガク社製、Supermini200型)で、予め求めた検量線により求めた。
【0083】
(7)ヘイズ
JIS K 7105に準じて23℃で測定した。ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0084】
(8)フィルムの引張強さ
JIS K 7127に準じて測定した。フィルムの長手方向および幅方向に幅10mm
、長さ180mmの試料を、剃刀を用いて切り出して試料とした。23℃、65%RHの雰囲気下で12時間放置したあと、測定は23℃、65%RHの雰囲気下、チャック間距離100mm、引っ張り速度200mm/分の条件で行い、5回の測定結果の平均値を用いた。測定装置としては島津製作所社製オートグラフAG5000Aを用いた。
【0085】
(9)静摩擦係数(μs)
得られたフィルムから縦方向400mm×横方向100mmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを23℃、65%RHの雰囲気下で12時間エージングした。試料サンプルを滑走台用として縦方向300mm×横方向100mm、荷重用に縦方向100mm×横方向100mmに分けた。滑走台用サンプルは滑走台にセットし、荷重用サンプルは、金属荷重1.5Kgの面にテープで貼りつけ、それぞれの面が反対となって接するようにした。引張りスピード200mm/分、23℃、65%RH条件下で静摩擦係数(μs)を測定し、3回の測定の平均を求めた。測定にはAND社製、テンシロンRTG-1210を用い、JIS-7125に準拠して算出した。
フィルムの静摩擦係数は好ましくは0.15~0.8であり、より好ましくは0.2~0.7であり、さらに好ましくは0.25~0.7である。摩擦係数が0.15未満の場合、フィルムが滑りすぎてロール状態を維持できないことや、印刷加工での繰り出し時にズレが発生し、加工性が低下しやすい。静摩擦係数が0.8より高い場合、ロールでのシワ発生や、金属ロール上で傷が入るなど不良が起こりやすい。
【0086】
(10)フィルム表面のSRa、SRp
フィルムの表面粗さ測定は、以下の方法で行った。
共焦点観察・装置:走査型共焦点レーザー顕微鏡(オリンパスLEXT)
・レーザー種:405nm半導体レーザー・対物レンズ:50倍
・撮影モード:高精度
上記装置・条件にて測定面の共焦点画像を取り込んだ。
表面粗さ解析
・測定範囲:縦256μm×横256μm
・解析ソフト:OLS4100
・カットオフなし
上記条件で面粗さ解析を実施し、算術平均粗さ(SRa)と最大突起高さ(SRp)を測定した。測定は測定位置を変えて10回行い、平均値を求めた。但し、画像から明らかに傷や異物など部分的な異常が認められた場合、測定値には入れず、異常部を避けて再度測定し直した。
【0087】
(11)フィルム表面のぬれ張力
協和界面科学株式会社製「DropMaster500」を使用し、20℃、50%RHの環境下で、外径0.7mmの針から2μLのジヨードメタンをフィルムの測定面に押し出して接触角を測定した。測定では異なる位置で10回行い、その平均値を求めた。
【0088】
(12)空気抜け時間
図1に示すように、台盤1の上にフィルム4を載せる。次いで、フィルム押え2をフィルム4の上から載せ、固定することによって張力を与えながらフィルム4を固定する。次いで、フィルム押え2の上に、フィルム5として台盤1の上に載せたフィルム4の上面とは反対の面を下にして載せる。次いでフィルム5の上にフィルム押え8を載せ、更にネジ3を用いてフィルム押え8,2および台盤1を固定する。
次に、フィルム押え2に設けられた空洞2aと真空ポンプ6とを、フィルム押え2に設けられた細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして、真空ポンプ6を駆動すると、フィルム5には、空洞2aに吸い付けられることによって張力が加わる。また、同時にフィルム4とフィルム5の重なり合った面もフィルム押え2に円周状に設けられた細孔2
dを介して減圧され、フィルム4とフィルム5はその重なり合った面において、外周部から密着し始める。
密着する様子は、重なり合った面の上部から干渉縞を観察することによって容易に知ることができる。そして、フィルム4とフィルム5の重合面の外周部に干渉縞が生じてから重なり合った面の前面に干渉縞が拡がり、その動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)を空気抜け時間とする。なお、測定は2枚のフィルムを取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を用いる。つまり時間(秒)が短いほどフィルムの巻き特性は良好となる。
【0089】
(13)フィルムロールのシワ評価
製膜した2軸配向ポリエステルフィルムを幅800mm、巻長12000mで巻き取り、下記基準でロール表層にあるシワの評価を目視で行った。判定○、△を合格とした。
○:シワがない
△:弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけるとシワが消える
×:強いシワがあり、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけてもシワが消えない
【0090】
(14)印刷評価
フィルム上に、グラビア印刷機(東谷鉄工所社製)を使用して速度100m/minで網点5%でグラビア印刷を実施した。このときのインキは、グラビア印刷インキ(東洋インキ社製:商品名ファインスターR92墨)であり、希釈溶剤(東洋インキ社製:商品名SL302)で77:23の比率で混合したものを用いた。得られた印刷サンプルを光学顕微鏡にて観察し、縦2cm×横2cmの範囲において、以下のような基準で評価した。尚、評価は異なる位置5点の結果の平均で判断した。判定○、△を合格とした。
【0091】
○:全体のインキドット数に対し、綺麗なドットが95%以上塗られている
△:全体のインキドット数に対し、綺麗なドットが90~95%未満塗られている
×:全体のインキドット数に対し、綺麗なドットが90%未満塗られている
【0092】
(15)無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂の比率
無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂に、ペットボトル製品からのリサイクルポリエステル樹脂、バイオマス由来原料を使用したポリエステル樹脂の使用比率が高いことで環境適正の効果が高くなる。使用比率により、環境適性を評価した。
【0093】
1:使用比率90重量%以上、秀
2:使用比率85重量%以上、優
3:使用比率80重量%以上、良
4:使用比率70重量%以上、可
5:使用比率65重量%以上、不可
6:使用比率65重量%未満、不良
【0094】
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂の製造)
製膜に供したポリエチレンテレフタレート系樹脂は以下のように準備した。
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂1)
テレフタル酸とエチレングリコールの混合物中に酢酸マグネシウム四水塩を加え常圧化にて温度255℃でエステル化反応させた。その後三酸化アンチモンおよびリン酸トリメチルを加えさらに温度260℃で反応させた。引き続いて、反応生成物を重縮合反応槽に
移し加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して133Pa(1mmHg)の減圧下、280℃で常法により重縮合を行い、IV=0.62dl/gのポリエステルチップを得た。これをポリエチレンテレフタレート系樹脂1とする。得られたポリエチレンテレフタレート系樹脂1の組成はテレフタル酸成分/イソフタル酸成分//エチレングリコール成分/ジエチレングリコール成分=100/0//98/2(モル%)、ガラス転移温度は80℃ 、融点は255℃であった。
【0095】
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂2)
飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、IV=0.70dl/gのポリエステル再生原料を得た。これをポリエチレンテレフタレート系樹脂2とする。得られたポリエチレンテレフタレート系樹脂2の組成はテレフタル酸成分/イソフタル酸成分//エチレングリコール成分/ジエチレングリコール成分=98/2//98/2(モル%)、ガラス転移温度は76℃ 、融点は252℃であった。
【0096】
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂3)
ポリエチレンテレフタレート系樹脂1において、エチレングリコールを植物由来から抽出したものを用いた以外は同様の方法でIV=0.62dl/gのポリエステルチップを得た。これをポリエチレンテレフタレート系樹脂3とする。得られたポリエチレンテレフタレート系樹脂3の組成はテレフタル酸成分/イソフタル酸成分//エチレングリコール成分/ジエチレングリコール成分=100/0//98/2(モル%)、ガラス転移温度は80℃ 、融点は255℃であった。このポリエステル3のバイオマス度をASTMD6866により測定したところ、バイオマス度は17%であった。
【0097】
(無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂)
(無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1)
上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂1を調整する際、重縮合反応槽で平均粒径2.4μm、細孔容積1.6ml/gの非晶性シリカ粒子(富士シリシア化学社製、商品名サイリシア310)のエチレングリコールスラリーをシリカとしてポリエチレンテレフタレート系樹脂1中に7200ppmとなるように添加した後、重縮合を行い、IV=0.62のポリエステルチップを得た。これを無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1とする。
【0098】
(無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂2)
無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1において、シリカがポリエステル中に1500ppmとなるように添加した以外は同条件で行い、IV=0.62のポリエステルチップを得た。これを無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂2とする。
【0099】
(無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂3)
無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1において、シリカがポリエチレンテレフタレート系樹脂1中に12000ppmとなるように添加した以外は同条件で行い、IV=0.62のポリエステルチップを得た。これを無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂3とする。
【0100】
(無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂4)
無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1において、シリカがポリエチレンテレフタレート系樹脂1中に20000ppmとなるように添加した以外は同条件で行い、IV=0.62のポリエステルチップを得た。これを無機粒子を含むポリエチレンテレ
フタレート系樹脂4とする。
【0101】
(無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂5)
無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1において、シリカがポリエチレンテレフタレート系樹脂1中に23000ppmとなるように添加した以外は同条件で行い、IV=0.62のポリエステルチップを得た。これを無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂5とする。
【0102】
(添加剤を含むポリエステル樹脂)
(添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸[86.4質量部]及びエチレングリコール[64.4質量部]からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン[0.025質量部]及びトリエチルアミン[0.16質量部]を添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、静電密着剤として酢酸マグネシウム4水塩[0.34質量部]、次いでリン酸トリメチル[0.042質量部]を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル[0.036質量部]、次いで酢酸ナトリウム[0.0036質量部]を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温した後、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体製フィルターで濾過処理を行い、得られた重縮合反応生成物をペレット化した。これを添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1とする。
【0103】
(実施例1)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=76.5/12.5/11.0(質量%)、基層(B)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=84.1/4.9/11.0(質量%)となるように混合して用いた。2台の溶融押出機を用い、それぞれの原料樹脂を第1の押出機より表面層(A)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により基層(B)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度にて溶融押出しした。それぞれの押出機では、25μm以上の異物を95%以上捕集するフィルターを用いた。冷却ロール接触側から表面層(A)/基層(B)/表面層(A)の順番に、Tダイ内にて厚み比が1/10/1(μm)になるように合流積層し、35℃に温度制御した冷却ロール上にシート状に吐出した。その際、直径0.15mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ロールに密着させて3層未延伸フィルムを得た。
【0104】
得られた未延伸フィルムを縦延伸予熱工程へ導いた。縦延伸予熱工程では70~134℃へと徐々にロール温度を上げたロール群にて予熱を行った。その後134℃に加熱した速度の異なる2対のニップロール間で1.2倍長手方向に延伸した。同様の方法で2段目で1.5倍、3段目で2.5倍長手方向に延伸し、合計4.5倍の延伸を行った。
次いでテンター式横延伸機にて、温度143~154℃へと徐々に温度を上げたゾーンで4.3倍延伸した。その後、熱固定での熱処理を前半と後半に分けて行った。前半では温度を245℃とし、1.5秒熱処理を行い、後半では温度が227~150℃へと徐々に下がるような複数のゾーンを用い、2.3秒熱処理を行った。この後半の熱処理において、幅方向に4.4%弛緩処理を行った。引き続いて、室温23℃程度まで冷却した。こうして、フィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
尚、フィルムの評価は、冷却ロールに接触した側のA層で行った。
【0105】
(実施例2)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=80.7/8.3/11.0(質量%)となるように混合して用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0106】
(実施例3)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=72.3/16.7/11.0(質量%)となるように混合して用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0107】
(実施例4)
基層(B)厚みを14μmにし、熱固定での前半の熱処理温度を242℃、処理時間を前半2秒、後半3秒に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み16μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0108】
(実施例5)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂3/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂181.5/7.5/11.0(質量%)、基層(B)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂3/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=86.1/2.9/11.0(質量%)となるように混合して用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0109】
(実施例6)
原料として、基層(B)に表面層(A)と同じポリエチレンテレフタレート系樹脂2/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=86.3/10.0/3.7(質量%)を用い、1種3層構成とし、製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。尚、縦延伸前の予熱では75℃一定とし、縦延伸ではIRによる2段延伸とした。実施例1と同様に評価した。
【0110】
(実施例7)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂3/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=85.0/10.4/4.6(質量%)、基層(B)にポリエチレンテレフタレート系樹脂3/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=93.6/1.4/5.0(質量%)となるように混合して用い、Tダイ内にて厚み比が3/6/3(μm)になるように合流積層し、フィルムの製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。尚、縦延伸ではロールでの2段延伸で行った。実施例1と同様に評価した。
【0111】
(比較例1)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポ
リエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=82.7/6.3/11.0(質量%)となるように混合して用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0112】
(比較例2)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=66.8/22.2/11.0(質量%)となるように混合して用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0113】
(比較例3)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂3/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=84.6/10.4/5.0(質量%)、基層(B)にポリエチレンテレフタレート系樹脂3/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=84.5/12.5/5.0(質量%)となるように混合して用い、チルロール接触側から表面層(A)/基層(A’)の2種2層でTダイ内にて厚み比が11/1(μm)になるように合流積層し、フィルムの製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。縦延伸前の予熱では78℃一定とし、縦延伸ではIRによる1段延伸とした。実施例1と同様に評価した。
【0114】
(比較例4)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂5/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=85.1/3.9/11.0(質量%)、基層(B)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂5/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=87.5/1.5/11.0(質量%)となるように混合して用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
【0115】
(比較例5)
フィルムの製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0116】
(比較例6)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂2/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=29.0/60.0/11.0(質量%)、基層(B)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂2/添加剤を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂1=65.7/23.3/11.0(質量%)となるように混合し、さらに製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。尚、縦延伸前の予熱では78℃一定とし、縦延伸ではIRによる1段延伸とした。実施例1と同様に評価した。
【0117】
(比較例7)
原料として、基層(B)に表面層(A)と同じポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂3=95.0/5.0(質量%)を用
い、1種3層構成とし、製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。尚、縦延伸前の予熱では100℃一定とし、縦延伸ではロールによる1段延伸、熱固定での後半の熱処理は200℃一定で行った。実施例1と同様に評価した。
【0118】
(比較例8)
原料として、表面層(A)にポリエチレンテレフタレート系樹脂1/無機粒子を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂4=96.0/4.0(質量%)となるように混合して用い、Tダイ内にて厚み比が2/16/2(μm)になるように合流積層し、フィルムの製膜条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。尚、縦延伸前の予熱では100℃で一定とし、縦延伸ではロールによる1段延伸、熱固定での熱処理は前半200℃、後半220℃一定とし、弛緩処理は熱処理前半と後半で行った。実施例1と同様に評価した。
【0119】
実施例1~7は表1の結果のように、ロールでのシワ評価や印刷評価は良好であり、主原料であるポリエステル樹脂は80%以上と樹脂特性を効果的に示す割合を添加できていた。
【0120】
比較例1~8は表2の結果の通りである。比較例1はA層の無機粒子濃度が低いため、SRaとSRpが共に低く、空気抜け時間が長くなり、ロールで強いシワが発生した。
【0121】
比較例2は表面A層の無機粒子濃度が高いため、SRaとSRp共に高くなり、接触角が高く印刷評価で不良であった。
【0122】
比較例3は無機粒子濃度は範囲内にも関わらずSRaとSRp共に高くなり、接触角が高く印刷評価で不良であった。この要因は推察ではあるが、表面A層の層厚みが厚いことでフィルム内部の粒子が表面凹凸に影響し、粗くなりやすかった点と、縦延伸を1段で行ったことや弛緩処理の温度が高いことで粒子のほぐし効果が不十分だった点によるものと考える。
【0123】
比較例4はマスターバッチ中の無機粒子濃度が高すぎることで粗大突起によりSRpが増加し、印刷評価は不良であった。
【0124】
比較例5は、縦・横延伸温度が低く、倍率が高いため応力が高くなりすぎて、表面の無機粒子がフィルム内部に沈み込み、SRaとSRp共に低くなった。そのため、フィルム同士での空気抜けが不良となり、ロールでシワが発生した。また、フィルム内部で無機粒子を起点にしたボイドが多く形成され、ヘイズも大きくなった。
【0125】
比較例6は、マスターバッチの無機粒子濃度を低くし、縦延伸を1段、弛緩処理の温度を高くするなどして、粒子のほぐし効果を少なくしたが、粗大な突起が少なく、SRpが低めとなり、空気抜け時間が悪くロールでのシワ評価が不良となったと考える。また、主原料であるポリエチレンテレフタレート系樹脂の比率が低く、樹脂特性を効果的に得られるものではなかった。
【0126】
比較例7はマスターバッチの無機粒子濃度が高めであり、縦延伸をロール1段延伸で比較的低倍率で延伸したため、無機粒子のほぐし効果が不十分で、粗大突起により印刷評価が不良だったと考える。また、厚みが厚いためか、ヘイズも高くなってしまった。
【0127】
比較例8は、縦と横の延伸倍率が低く、縦延伸をロール1段で行い、弛緩処理の温度が高いためか、ほぐし効果が不十分で粗大突起により印刷評価が不良であった。また、縦方
向の引張強さが不十分となった。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明により、優れた機械物性、透明性、耐熱性を有するとともに、二次加工適正及び印刷外観に優れる二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法、並びにこの二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなるフィルムロールを提供することができる。
工業用フィルムの分野や、特に食品包装用、ガスバリアフィルム用途の包装用フィルムの分野において有用であり、安価な樹脂やリサイクル樹脂、バイオマス樹脂など樹脂の配合比率を上げることが出来るため、樹脂の特性を効果的に得ることが可能となる。特に昨今環境負荷低減が強く望まれるため、本発明はそのニーズに答える有効な手段の一つとなり、その価値は高いものと推察する。