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特開2024-99700腫瘍が高いパッセンジャー遺伝子変異量を担持する患者の免疫療法剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099700
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】腫瘍が高いパッセンジャー遺伝子変異量を担持する患者の免疫療法剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240718BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240718BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240718BHJP
   C12Q 1/6809 20180101ALI20240718BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28
C12Q1/6809 Z
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070240
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2022151498の分割
【原出願日】2018-09-19
(31)【優先権主張番号】62/560,955
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MySQL
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】リム、ウェイ キアット
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】腫瘍が高いパッセンジャー遺伝子変異量を担持する患者の免疫療法剤を提供すること。
【解決手段】癌患者を免疫療法に選択する方法は、癌患者の腫瘍から、総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程、当該腫瘍の遺伝子変異量に関し、バックグラウンド変異量を作成する工程、当該バックグラウンド変異量に対して総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程、および総パッセンジャー遺伝子変異量が、バックグラウンド変異量の平均よりも高いときに、免疫療法のレスポンダーとして当該癌患者をカテゴライズする工程、を含む。癌患者が免疫療法のレスポンダーである場合、当該患者は、T細胞活性化を促進する、および/または免疫細胞溶解活性を長期化させる、T細胞受容体の活性化/阻害を含む免疫療法レジメンを投与され得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者を治療するための医薬の製造における免疫チェックポイント遮断免疫療法剤の使用において、前記癌患者は、腫瘍のバックグラウンド変異量よりも大きい総パッセンジャー遺伝子変異量を有する前記腫瘍を有すると決定されており、前記バックグラウンド変異量は、前記腫瘍の無作為に選択された遺伝子に基づいて決定されており、前記免疫チェックポイント遮断免疫療法剤はLAG3に結合する抗体である、使用。
【請求項2】
前記LAG3に結合する抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記LAG3に結合する抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記使用は、PD1に結合する抗体の使用をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記PD1に結合する抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記PD1に結合する抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)をさらに含む、請求項4または請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記PD1に結合する抗体は、セミプリマブを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記癌は、皮膚癌、肺癌、または血液由来の癌を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記皮膚癌は、黒色腫または皮膚扁平上皮細胞癌を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記肺癌は、肺腺腫、肺扁平上皮細胞癌または非小細胞肺癌を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記血液由来の癌は、白血病または急性骨髄性白血病を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記総パッセンジャー遺伝子変異量は、
前記腫瘍の総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程と、
前記バックグラウンド変異量を作成する工程と、
前記バックグラウンド変異量に対し、前記総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程と、
によって、前記バックグラウンド変異量よりも大きいことが決定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記バックグラウンド変異量は、前記腫瘍の無作為に選択された遺伝子に基づいて決定され、前記無作為に選択された遺伝子の数は、前記総パッセンジャー遺伝子変異量を決定するために使用されるパッセンジャー遺伝子の数と等しい、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記バックグラウンド変異量に対して前記総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程が、前記バックグラウンド変異量の平均からの標準偏差数を示すzスコアを作成する工程を含む、請求項12または請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記腫瘍の変異遺伝子をパッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記腫瘍の変異遺伝子をパッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程は、前記腫瘍から変異遺伝子を選択する工程、および前記変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子インデックスに従い確立されたパッセンジャー遺伝子を含むデータ構造にマッチングさせる工程を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記パッセンジャー遺伝子インデックスは、癌患者コホートから取得された前記変異遺伝子を含むサンプル割合と、前記癌患者コホート内の各腫瘍型における変異遺伝子のメジアン数との間の相関係数を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
遺伝子配列データを受け取る工程をさらに含み、前記遺伝子配列データは複数の遺伝子を含み、前記患者の前記腫瘍に由来する、請求項12~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記正規化されたパッセンジャー遺伝子変異量が、前記バックグラウンド変異量の平均よりも少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、または3超標準偏差、高いときに、前記総パッセンジャー遺伝子変異量は前記バックグラウンド変異量より大きい、請求項12~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記総パッセンジャー遺伝子変異量は、全腫瘍変異頻度との相関が高い遺伝子変異率を有する1つ以上のパッセンジャー遺伝子に基づいて決定される、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月20日に出願され、その全体が参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第62/560,955号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、概して免疫療法の分野に関する。より具体的には、本開示は、腫瘍が高いパッセンジャー遺伝子変異量を有する患者に免疫療法レジメンを投与する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許、特許出願、公開特許出願、アクセッション番号、技術論文および学術論文を含む様々な公表文献が、本明細書に引用される。これら引用された各公表文献は、本明細書においてその全体で、すべての目的に対し、参照により援用される。
【0004】
最近の研究により、腫瘍中に全体的に高い腫瘍遺伝子変異量(TMB:tumor mutational burden)を伴う患者は、免疫反応を惹起させ得るネオ抗原の存在が増加することにより、免疫療法から利益を得る可能性が高いことが示唆されている。しかしながら全体的な遺伝子変異量にはドライバー遺伝子変異も含まれており、ドライバー遺伝子変異は実際には免疫原性を抑制し、治療に対する感受性を低下させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッセンジャー遺伝子とその変異を特定して、免疫原性を評価することを目的とした方法は開発されていない。本開示は、これら、および他の欠陥に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下記の概説および下記の発明を実施するための形態は両方とも、あくまで例示的且つ説明的なものであって、限定的なものではないことを理解すべきである。
第一の態様において、本開示は、遺伝子配列データを受け取る工程であって、当該遺伝子配列データは複数の遺伝子を含み、複数の疾患型を有する対象から収集された複数の生物サンプルに由来する工程、当該複数の生物サンプルのそれぞれに対し、複数の変異遺伝子を特定する工程であって、当該変異遺伝子の各々は、少なくとも一つの非同義体細胞変異を有する遺伝子配列を含む工程、各生物サンプルの腫瘍遺伝子変異量を、各疾患型に対し、各生物サンプル中の変異遺伝子数に基づき決定する工程、当該複数の生物サンプル中の当該複数の変異遺伝子の平均腫瘍遺伝子変異量を、各変異遺伝子および各疾患型に対し、各生物サンプルにおいて決定された変異遺伝子数に基づき決定する工程、変異遺伝子を含む生物サンプルの割合を、各変異遺伝子に対して決定する工程、平均腫瘍遺伝子変異量と、変異遺伝子を含む生物サンプル割合の間の相関係数を決定する工程、を含む方法を提供する。相関係数が高くなると、特定の遺伝子が、全般的に高い変異頻度を伴う癌型において体細胞変異を獲得した可能性が高いことが示唆される(パッセンジャー遺伝子)。一方で、相関係数が低くなると、特定の遺伝子が、全般的に高い変異頻度を伴う癌型において体細胞変異を獲得した可能性が低いことが示唆される(パッセンジャー遺伝子ではない)。
【0007】
別の態様では、本開示は、癌患者を免疫療法に選択する方法を提供する。概して方法は、癌患者の腫瘍から、総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程、当該腫瘍の遺伝子変異量に対し、バックグラウンド分布を作成する工程、当該バックグラウンド分布に対して総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程、および総パッセンジャー遺伝子変異量が、バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも約1.5標準偏差高いときに、免疫療法のレスポンダーとして当該癌患者をカテゴライズする工程、を含む。
【0008】
バックグラウンド分布の作成は、腫瘍から取得され、無作為に選択された遺伝子の、複数サンプルからの遺伝子変異量を確立する工程を含む。ただし各サンプルにおいて無作為に選択された遺伝子の数は、総パッセンジャー遺伝子変異量を算出するために使用されるパッセンジャー遺伝子数と等しいことが好ましい。バックグラウンド分布に対する、総パッセンジャー遺伝子変異量の正規化は、バックグラウンド分布の平均からの標準偏差の数を示すzスコアを作成する工程を含み得る。
【0009】
方法は、腫瘍中の変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程をさらに含み得る。腫瘍中の変異遺伝子をパッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程は、腫瘍から変異遺伝子を選択する工程、および当該変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子インデックスに従い確立されたパッセンジャー遺伝子を含むデータ構造にマッチングさせる工程、を含み得る。パッセンジャー遺伝子インデックスは、癌患者コホートから取得された変異遺伝子を含むサンプル割合と、当該癌患者コホート内の各腫瘍型における変異遺伝子のメジアン数の間の相関係数を含み得る。
【0010】
方法はさらに、癌患者に免疫療法レジメンを投与する工程を含み得る。免疫療法レジメンは、患者に、T細胞阻害性受容体の阻害剤を投与する工程を含み得る。免疫療法レジメンは、患者に、T細胞活性化受容体の活性化物質を投与する工程を含み得る。
【0011】
免疫療法レジメンは、患者に、PD1に結合する抗体を投与する工程を含み得る。PD1に結合する抗体は少なくとも配列番号21の重鎖可変領域(HCVR)配列と軽鎖可変領域を含んでもよく、または少なくとも配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列と重鎖可変領域を含んでもよい。PD1に結合する抗体は、HCVRまたは配列番号21、およびLCVRまたは配列番号22を含んでもよい。PD1に結合する抗体は、LAG3に結合する抗体と併用されて投与され得る。
【0012】
免疫療法レジメンは、患者に、PDL1に結合する抗体を投与する工程を含み得る。PDL1に結合する抗体は少なくとも配列番号122のHCVR配列とLCVRを含んでもよく、または少なくとも配列番号123のLCVR配列とHCVRを含んでもよい。PDL1に結合する抗体は、HCVRまたは配列番号122、およびLCVRまたは配列番号123を含んでもよい。PDL1に結合する抗体は、LAG3に結合する抗体と併用されて投与され得る。
【0013】
免疫療法レジメンは、患者に、LAG3に結合する抗体を投与する工程を含み得る。LAG3に結合する抗体は少なくとも配列番号93のHCVR配列とLCVRを含んでもよく、または少なくとも配列番号94のLCVR配列とHCVRを含んでもよい。LAG3に結合する抗体は、HCVRまたは配列番号93、およびLCVRまたは配列番号94を含んでもよい。LAG3に結合する抗体は、PD1に結合する抗体、またはPDL1に結合する抗体と併用されて投与され得る。
【0014】
更なる利点は、その一部が下記説明に記載されているか、または実践によって知ることができるであろう。これらの利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている要素および組み合わせによって実現され、達成されるであろう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、腫瘍が高いパッセンジャー遺伝子変異量を担持する患者の免疫療法剤を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、方法例を図解するフローチャートを示す。
図2図2は、方法例を図解するフローチャートを示す。
図3図3は、別の方法例を図解するフローチャートを示す。
図4図4は、別の方法例を図解するフローチャートを示す。
図5図5は、パッセンジャー遺伝子の特徴の概略を図解する。
図6図6は、各癌型における、総変異遺伝子の平均数(x軸)と、遺伝子バリアントを有する患者割合(y軸)に対するスキャッタープロットを示す。
図7図7は、癌ドライバー遺伝子および様々な他の遺伝子群に対する、パッセンジャー遺伝子インデックス(PGI:Passenger Gene Index)スケールに沿ったエンリッチメントを示す。
図8図8は、最も高い(左)および最も低い(右)PGI CGC遺伝子を示し、および対応する癌型と、変異サンプルの最も高い割合(>2%)を示す。
図9A図9A~Cは、a)局所免疫細胞溶解活性、b)TCRのリードカウント、およびc)患者コホートの臨床転帰の図示である。
図9B図9A~Cは、a)局所免疫細胞溶解活性、b)TCRのリードカウント、およびc)患者コホートの臨床転帰の図示である。
図9C図9A~Cは、a)局所免疫細胞溶解活性、b)TCRのリードカウント、およびc)患者コホートの臨床転帰の図示である。
図10図10は、本開示方法を実施するための例示的なオペレーティング環境を図説するブロック図である。
図11図11は、第I相臨床試験の患者コホートのTMBである。
図12-1】図12は、上位500個のパッセンジャー遺伝子-最も高いパッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)を示す。
図12-2】図12は、上位500個のパッセンジャー遺伝子-最も高いパッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)を示す。
図12-3】図12は、上位500個のパッセンジャー遺伝子-最も高いパッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において援用され、且つ本明細書の一部を成す添付の図面は、実施形態を例証し、説明と共に、本方法およびシステムの原理を説明する役割を果たすものである。
本開示態様に関し様々な用語が、明細書全体および請求の範囲において使用される。そうした用語は、別段の示唆がない限り、当分野の通常の意味が与えられるものとする。その他の具体的に規定される用語は、本明細書に提示される定義と合致した形式で解釈されるものとする。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上に他の意味に解釈されることが明白な場合を除き、複数の指示対象を含む。
【0019】
阻害には、対象分子もしくは対象経路の活性または発現の低下、減少、妨害、抑制、遅延、不活化、脱感作、停止、および/または下方制御を含む。
本方法およびシステムの実施形態については、方法、システム、装置およびコンピュータプログラム製品のブロック図およびフローチャート図を参照しながら、以下に説明する。ブロック図およびフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャート図中のブロックの組み合わせはそれぞれ、コンピュータプログラム命令によって実施できることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途向けコンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置にロードして、マシンを生成することが可能であり、それによって、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置上で実行される命令によって、フローチャートのブロック内に特定されている機能を実行する手段が作り出される。
【0020】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置に対し特定の方法で機能するように指示可能なコンピュータ可読メモリに格納されて、それによって、コンピュータ可読メモリ内に格納された命令によって、フローチャートブロック内に特定された機能を実行するためのコンピュータ可読命令を含む、製造品が生産されるようにすることもできる。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置にロードし、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で一連の動作工程を実行させて、コンピュータに実行される処理を生成して、それによって、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行される命令によって、フローチャートブロック内に特定された機能を実行するための工程が提供されるようにすることもできる。
【0021】
したがって、ブロック図およびフローチャート図のブロックは、特定された機能を実行するための手段の組み合わせ、特定された機能を実行するための工程の組み合わせ、および特定された機能を実行するためのプログラム命令手段を支持している。また、ブロック図およびフローチャート図中の各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャート図中のブロック同士の組み合わせは、特定された機能または工程を実行する特殊用途向けハードウェアベースのコンピュータシステムまたは特殊用途向けハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実行することが可能であるということもまた理解されたい。
【0022】
「対象」と「患者」という用語は相互交換可能に使用され、任意の動物を含む。哺乳動物は好ましくは、コンパニオン(例えばネコ、イヌ)および飼育哺乳動物(例えばブタ、ウマ、ウシ)を含み、ならびにマウス、ウサギおよびラット、モルモット、および他の齧歯類を含む齧歯類を含む。非ヒト霊長類がより好ましく、ヒトがさらに好ましい。
【0023】
本開示によると、癌において、パッセンジャー遺伝子の総変異量は、全遺伝子の総変異量とは対照的に、癌患者が免疫療法に対してポジティブな反応を示す可能性の正確な指標としての機能を果たすことが観察されている。腫瘍遺伝子変異量(TMB:tumor mutational burden)とは、腫瘍ゲノムのコード領域内にある変異数を指し得る。変異遺伝子は、パッセンジャー遺伝子インデックスを経てパッセンジャー遺伝子としての状態に従い評価され、分類される。このインデックスは、大規模癌ゲノム解析からパッセンジャー遺伝子を特定するための測定基準として使用されている。特定されるパッセンジャー遺伝子は、パッセンジャー変異が過度にあることで知られている遺伝子ファミリーに豊富であることが観察されており、大型タンパク質をコードする遺伝子、発現レベルが低い遺伝子、および後期DNA複製期の遺伝子が含まれる。パッセンジャー遺伝子の総変異量は、腫瘍の免疫原性と正に相関し、患者の臨床転帰を良好に予測した。したがって本開示は、免疫療法レジメンの一部として、パッセンジャー遺伝子変異量に従い患者を分類する方法を特徴とする。
【0024】
癌生物学において、ドライバー変異は、癌の形成および癌の変質に少なくとも偶然に関与すると理解されている。そしてパッセンジャーの変異は、増殖に有益性をもたらすものではなく、癌の発達にも寄与しないと理解されている。Stratton MR et al.(2009)Nature.458:719-24を参照のこと。ゆえにパッセンジャー遺伝子には、パッセンジャー変異を含む遺伝子が含まれる。変異の非限定的な例としては、一つまたは複数のヌクレオチド、コドン、遺伝子または染色体の置換、逆位、挿入および欠失、ならびにコピー数変化が挙げられる。
【0025】
一つの態様において、本開示は、パッセンジャー遺伝子を特定または分類するための方法およびシステムを特徴とする。特定されるパッセンジャー遺伝子は、例えば非常に大型のタンパク質、および発現レベルが低い遺伝子または後期DNA複製期の遺伝子などの、パッセンジャー変異が過度にあることで知られているファミリーに豊富である。一部の実施形態では、パッセンジャー遺伝子は、パッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)に従い特定または分類され得る。したがって例えばパッセンジャー遺伝子はPGIに従い特定または分類され得、PGIは、癌患者コホートから取得された変異遺伝子を含むサンプル割合と、当該癌患者コホート内の各腫瘍型における変異遺伝子のメジアン数の間の相関係数を含む。パッセンジャー遺伝子の特定に基づき、パッセンジャー遺伝子を含むデータ構造が確立され得る。
【0026】
個々の癌患者がスクリーニングされ、患者の腫瘍がパッセンジャー遺伝子を含むか否かが決定され得、ならびに腫瘍の総パッセンジャー遺伝子変異量が決定され得る。患者のパッセンジャー遺伝子変異量に基づいて、免疫療法に対してポジティブに反応する能力に従い患者が分類され得る。免疫療法は概して、癌に対する身体の自然免疫応答を強化し、そして限定されないが、腫瘍に対するT細胞反応の強化を含む。
【0027】
癌患者を免疫療法反応性に関して評価し得る方法の例を図1に示す。概して方法は、癌患者の腫瘍から、総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程(110)、当該腫瘍の遺伝子変異量に対して、バックグラウンド分布を作成する工程(120)、当該バックグラウンド分布に対して総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程(130)、および免疫療法のレスポンダーとして当該癌患者をカテゴライズする工程(140)、を含む。
【0028】
また、免疫療法反応性に関して評価された後に、癌患者を免疫療法を用いて治療する方法も開示される。例えば、免疫療法で癌患者を治療する方法が開示され、当該方法は、患者の腫瘍の総パッセンジャー遺伝子変異量を確立させる工程;当該腫瘍の遺伝子変異量に関し、バックグラウンド分布を作成する工程;当該バックグラウンド分布に対して総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程;および総パッセンジャー遺伝子変異量が、バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも約1.5標準偏差高いときに、免疫療法のレスポンダーの遺伝子型として当該癌患者をカテゴライズする工程、を含む、癌患者が免疫療法のレスポンダーであるかを決定する工程、ならびに免疫療法のレスポンダーとしてカテゴライズされた当該癌患者に免疫療法を投与する工程、を含む。
【0029】
さらに、T細胞阻害性受容体の阻害剤、または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤、または非免疫療法治療剤を用いて患者を治療する方法も開示され、この場合において当該患者は癌に罹患しており、当該方法は、患者の腫瘍から生物サンプルを取得する、または取得した工程;当該生物サンプルを配列解析して配列データを作成することにより、免疫療法のレスポンダーの遺伝子型を患者が有するかを決定するための遺伝子型解析を生物サンプルに実施する、または実施した工程;配列データに基づき、患者の腫瘍の総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程;配列データに基づき、腫瘍の遺伝子変異量に対するバックグラウンド分布を作成する工程;バックグラウンド分布に対して総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程;および総パッセンジャー遺伝子変異量が、バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも約1.5標準偏差高いとき、患者を免疫療法のレスポンダーの遺伝子型としてカテゴライズする工程、により、当該患者が免疫療法のレスポンダーであるかを決定する工程を含み、この場合において、当該患者が免疫療法のレスポンダーの遺伝子型を有する場合、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤の治療有効量を投与する工程を含み、この場合において当該患者が免疫療法のレスポンダーの遺伝子型を有さない場合、非免疫療法治療を与える工程を含む。一部の実施形態では、免疫療法のレスポンダーの遺伝子型を有する患者の不良な臨床転帰のリスクは、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤の治療有効量の投与後のほうが、患者に非免疫療法治療を与える場合のリスクよりも低くなる。一部の実施形態では、免疫療法のレスポンダーの遺伝子型を有する患者のT細胞活性化および/または免疫細胞溶解活性は、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤の治療有効量の投与後のほうが、患者に非免疫療法治療を与える場合よりも高くなる。
【0030】
癌患者を治療する方法における使用のための免疫療法が開示され、当該方法は、患者の腫瘍の総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程;当該腫瘍の遺伝子変異量に対して、バックグラウンド分布を作成する工程;当該バックグラウンド分布に対して総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程;総パッセンジャー遺伝子変異量が、バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも約1.5標準偏差高いときに、免疫療法のレスポンダーの遺伝子型として当該癌患者をカテゴライズする工程、により癌患者が免疫療法のレスポンダーであるかを決定する工程;および免疫療法のレスポンダーとしてカテゴライズされた当該癌患者に免疫療法を投与する工程、を含む。
【0031】
一部の好ましい実施形態では、癌患者の腫瘍から総パッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程(110)は、腫瘍ゲノムのコード領域(「エクソーム(exome)」)を決定するために使用される任意の配列解析法により、総パッセンジャー遺伝子変異量を決定する工程を含んでもよい。全ゲノム配列解析法を使用してもよい。
【0032】
エクソーム変異は、当分野に公知の配列解析法を使用して決定してもよい。例えば参照により本明細書に組み込まれるUS2013/0040863は、合成による配列解析、ライゲーションによる配列解析、またはハイブリダイゼーションによる配列解析を含む、変異検出、全ゲノム配列解析およびエクソーム配列解析を目的とした、標的核酸分子の核酸配列の決定方法を解説している。望ましい場合には、様々な増幅法を使用して、特にわずかな核酸サンプルをより多量に生成し、その後に配列解析を行ってもよい。
【0033】
合成による配列改正(SBS:Sequencing by synthesis)、およびライゲーションによる配列解析は、454 Lifesciences社(コネチカット州ブラッドフォード)およびRoche Diagnostics社(スイス、バーゼル)で使用されるように、ePCRを使用して実施されてもよい。例えばゲノムDNAなどの核酸または他の対象物を断片化し、水/油エマルション中に分散させ、そして希釈して、単一核酸断片を、エマルション液滴中で他の物質から分離させてもよい。例えば複数コピーのプライマーなどを含有するビーズを使用してもよく、そして増幅法を実施して、各エマルション液滴を、単一核酸断片の複数コピー増幅用の反応容器として利用してもよい。例えばブリッジングPCR(Illumina,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)またはポロニー増幅(polony amplification)(Agencourt社/Applied Biosystems社)などの他の方法を使用してもよい。US2009/0088327、US2010/0028885、およびUS2009/0325172号に記載され、それら各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
手動または自動の配列解析法も当分野に公知であり、限定されないが、サンガーシーケンシング、パイロシーケンシング、ハイブリダイゼーションによる配列解析、ライゲーションによる配列解析などが挙げられる。配列解析法は、手動で、または自動化された方法を使用して実施されてもよい。さらに本明細書に記載される増幅法を使用して、例えば自動化サンガーシーケンシング(Applied Biosystems社、カリフォルニア州フォスターシティから入手可能)またはパイロシーケンシング(454 Lifesciences社、コネチカット州ブランフォード、およびRoche Diagnostics社、スイスバーゼルから入手可能)などの市販の方法を使用した配列解析用に核酸を調製してもよく、Illumina社(カリフォルニア州サンディエゴ)またはHelicos社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)で市販されている合成法による配列解析用、またはApplied Biosystems社により開発されたAgencourt platformでのライゲーション法による配列解析用に、核酸を調製してもよい(Ronaghi et al.,Science 281:363(1998);Dressman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:8817-8822(2003);Mitra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:55926-5931(2003)も参照のこと。参照により本明細書に組み込まれる)。
【0035】
核酸集団において、プライマーが各核酸にハイブリダイズし、それにより核酸が鋳型を形成して、プライマー改変が鋳型指向様式で発生する。改変を検出して、鋳型の配列を決定してもよい。例えばプライマーはポリメラーゼを使用した伸長により改変されてもよく、プライマー伸長は、決定される特定ヌクレオチドの同定と所在が判明する条件下でモニタリングされてもよい。例えば伸長がモニタリングされてもよく、鋳型核酸の配列は、パイロシーケンシングを使用して決定されてもよい。これらはUS2005/0130173、US2006/0134633、米国特許第4,971,903号、米国特許第6,258,568号、および米国特許第6,210,891号に記載されている。これら各々が参照により本明細書に組み込まれ、そして市販もされている。伸長は、例えば米国特許第4,863,849号、米国特許第5,302,509号、米国特許第5,763,594号、米国特許第5,798,210号、米国特許第6,001,566号;米国特許第6,664,079号、U.S.2005/0037398、および米国特許第7,057,026号に記載される方法を使用して、ポリメラーゼによる標識ヌクレオチドアナログの付加に従いモニタリングされてもよい。これら各々が参照により本明細書に組み込まれる。配列解析法に有用なポリメラーゼは通常、天然源から誘導されたポリメラーゼ酵素である。例えばWO01/23411、米国特許第5,939,292号、およびWO05/024010に記載されるように、ポリメラーゼを改変して、改変ヌクレオチドに対するその特異性を変え得ることを理解されたい。これら各々が参照により本明細書に組み込まれる。さらにポリメラーゼは、生物系に由来する必要はない。本発明に有用なポリメラーゼとしては、プライマーがハイブリダイズする鋳型配列が指向する様式で、核酸プライマーの伸長を触媒することができる任意の物質が挙げられる。典型的には、ポリメラーゼは、生物系から単離されたタンパク質酵素である。
【0036】
あるいはエクソン配列は、例えばShendure et al.Science 309:1728-1732(2005);米国特許第5,599,675号、および米国特許第5,750,341号に記載されるように、ライゲーションによる配列解析を使用して決定されてもよい。これら各々が参照により本明細書に組み込まれる。鋳型核酸の配列は、例えば米国特許第6,090,549号、米国特許第6,401,267号、および米国特許第6,620,584号に記載される方法のように、ハイブリダイゼーション法による配列解析を使用して決定されてもよい。これら各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
望ましい場合には、エクソン配列産物は、例えばオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA:oligonucleotide ligation assay)などのライゲーションアッセイを使用して検出される。OLAを用いた検出には、二つの小さなプローブを単一の長いプローブへと、鋳型としてアンプリコン中の標的配列を使用して鋳型依存性にライゲーションすることを含む。特定の実施形態では、一本鎖の標的配列には、第一の標的ドメインと第二の標的ドメインを含み、それらは隣接し、連続している。第一のOLAプローブおよび第二のOLAプローブを各標的ドメインの相補配列にハイブリダイズさせてもよい。そして二つのOLAプローブを互いに共有結合させて、改変プローブを形成させる。プローブが互いに直接隣接してハイブリダイズする実施形態において、共有結合は、リガーゼを介して発生してもよい。一つまたは両方のプローブが、例えばペプチド結合標識などの標識を有するヌクレオシドを含んでもよい。したがって、ライゲーションされた産物の存在は、標識を検出することで決定されてもよい。特定の実施形態では、ライゲーションプローブはプライミング部位を含んでもよく、当該部位は、例えばPCR反応において、プライミング部位にハイブリダイズするプライマーを使用して、ライゲーションされたプローブ産物の増幅が可能となるよう構成される。
【0038】
あるいはライゲーションプローブを、伸長-ライゲーションアッセイにおいて使用してもよく、このアッセイにおいてハイブリダイズされたプローブは非連続的であり、一つまたは複数のヌクレオチドは一つまたは複数の物質とともに付加され、当該物質は、付加されたヌクレオチドを介してプローブを結合させる。さらに、二つの別個のライゲーションプローブのかわりに単一の南京錠(padlock)プローブを用いて、ライゲーションアッセイまたは伸長-ライゲーションアッセイを実施してもよい。
【0039】
一部の好ましい実施形態では、バックグラウンド分布の作成(120)は、腫瘍から取得され、無作為に選択された遺伝子の、複数サンプルからの変異量を確立することを含む。ただし各サンプルにおいて無作為に選択された遺伝子の数は、総パッセンジャー遺伝子変異量を算出するために使用されるパッセンジャー遺伝子数と等しいものとする。
【0040】
一部の好ましい実施形態では、バックグラウンド分布に対して、総パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程(130)は、バックグラウンド分布の平均からの標準偏差数を示すzスコアを作成する工程を含む。代替的な実施形態では、p値を使用してもよい。zスコアは、p値と相関してもよい。例えば、1.65のzスコアは、p<0.05のp値と等しく、2.3のzスコアは、p<0.01のp値と等しい。
【0041】
癌患者を免疫療法のレスポンダーとしてカテゴライズする工程は、バックグラウンド分布の平均と、総パッセンジャー遺伝子変異量の関連性に準じ得る。例えば、総パッセンジャー遺伝子変異量が、バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも標準偏差数、高いときに、患者は、免疫療法のレスポンダーとカテゴライズされ得る。標準偏差数は、例えば、バックグラウンド分布の平均よりも、少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、または3超標準偏差、高くてもよい。
【0042】
一部の実施形態では、癌患者は、皮膚扁平上皮細胞癌(CSCC)、膀胱尿路上皮細胞癌(BLCA)、浸潤性乳癌(BRCA)、子宮頸部扁平上皮細胞癌および子宮頚管腺癌(CESC)、結腸/直腸腺癌(CORE)、多形性グリア芽細胞腫(GBM)、頭頚部扁平上皮細胞癌(HNSC)、腎臓の腎明細胞癌(KIRC)、腎臓の腎乳頭細胞癌(KIRP)、急性骨髄性白血病(LAML)、肝臓の肝細胞癌(LIHC)、脳の低グレードグリオーマ(LGG)、肺腺腫(LUAD)、肺扁平上皮細胞癌(LUSC)、卵巣の漿液性嚢胞腺癌(OV)、褐色細胞腫および傍神経節腫(PCPG)、前立腺腺癌(PRAD)、皮膚黒色腫(SKCM)、胃腺癌に罹患し得る。
【0043】
一部の実施形態では、方法は、腫瘍中の変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程をさらに含む。腫瘍中の変異遺伝子をパッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程は、腫瘍から変異遺伝子を選択する工程、および当該変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子インデックスに従い確立されたパッセンジャー遺伝子を含むデータ構造にマッチングさせる工程、を含み得る。パッセンジャー遺伝子インデックスは、癌患者コホートから取得された変異遺伝子を含むサンプル割合と、当該癌患者コホート内の各腫瘍型における変異遺伝子のメジアン数の間の相関係数を含んでもよい。
【0044】
癌患者が免疫療法のレスポンダーとカテゴライズされる場合、方法は、免疫療法レジメンを当該癌患者に投与する工程をさらに含んでもよい。一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤は、抗体またはその抗原結合断片を含み得る。一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、T細胞活性化を促進し、免疫細胞溶解活性を長期化させるT細胞受容体の活性化物質を投与する工程を含む。
【0045】
一部の実施形態では、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体は、免疫療法用の阻害剤の標的となることができ、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3およびTIM3のうちの一つまたは複数を含む。ゆえに一部の実施形態では、T細胞阻害性受容体または腫瘍細胞上の受容体の阻害剤は、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3およびTIM3のうちの一つまたは複数に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。免疫療法レジメンの一部として、癌患者に、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、およびTIM3のうちの一つまたは複数に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与してもよく、または二つ以上のかかる抗体またはその抗原結合性断片の任意の組み合わせを投与してもよい。
【0046】
一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、PD1に結合する抗体を投与する工程を含む。一部の好ましい実施形態では、PD1に結合する抗体は、少なくとも、配列番号21の重鎖可変領域(HCVR)配列および配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列を含む。ある実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、米国特許出願第14/603,776号(米国特許出願公開第2015-0203579号)に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであってもよい。当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表1に列挙される配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVR、およびLCVRを含む。一部の実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表1に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVR、およびHCVRを含む。一部の実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表1に示されるHCVRとLCVRのペアを含む。PD1に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、ピジリズマブ(Pidilizumab)、カムレリズマブ、PDR001、MED10680、JNJ-63723283、およびMCLA-134を含むがこれに限定されない。
【0047】
【表1】
【0048】
一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、LAG3タンパク質(別名、CD223)に結合する抗体を投与する工程を含む。一部の実施形態では、LAG3に結合する抗体は、少なくとも配列番号93のHCVR配列、および配列番号94のLCVR配列を含む。一部の実施形態では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、米国特許出願第15/289,032号(米国特許出願公開第2017-0101472号)に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであってもよい。当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の実施形態では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表2に列挙される配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVR、およびLCVRを含む。一部の実施形態では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表2に列挙される配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVR、およびHCVRを含む。一部の実施形態では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表2に示されるHCVRとLCVRのペアを含む。LAG3に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、BMS-986016およびGSK2381781を含むがこれらに限定されない。
【0049】
【表2】
【0050】
一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、PDL1に結合する抗体を投与する工程を含む。一部の実施形態では、PDL1に結合する抗体は、少なくとも配列番号122のHCVR配列、および配列番号123のLCVR配列を含む。一部の実施形態では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、米国特許出願第14/603,808号(米国特許出願公開第2015-0203580号)に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであってもよい。当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の実施形態では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表3に列挙される配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVR、およびLCVRを含む。一部の実施形態では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表3に列挙される配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVR、およびHCVRを含む。一部の実施形態では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表3に示されるHCVRとLCVRのペアを含む。PDL1に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、アベルマブ、アテゾリズマブ、およびデュルバルマブを含むがこれらに限定されない。
【0051】
【表3】
【0052】
一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、CTLA4に結合する抗体を投与する工程を含む。一部の実施形態では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、2017年7月27日出願の米国仮特許出願第62/537,753号に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであってもよい。当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の実施形態では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表4に列挙される配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVR、およびLCVRを含む。一部の実施形態では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表4に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVR、およびHCVRを含む。一部の実施形態では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表4に示されるHCVRとLCVRのペアを含む。CTLA4に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、イピリムマブおよびトレメリムマブのみならず、その全てが参照により本明細書に援用される米国特許第6,984,720号、第7,605,238号、または第7,034,121号に開示の抗体またはその抗原結合性断片のいずれかのうちの一つ以上を含むがこれらに限定するものではない。
【0053】
【表4】
【0054】
一部の実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、T細胞阻害性受容体の一つまたは複数の阻害剤の組み合わせを投与する工程を含んでもよい。その組み合わせは、抗体の組み合わせ、またはかかる抗体の抗原結合部分の組み合わせ、または抗体と抗原結合部分の組み合わせを含んでもよい。ゆえに例えば免疫療法レジメンは、患者に、PD1に結合する抗体を、例えばLAG3に結合する抗体またはPDL1に結合する抗体またはCTLAに結合する抗体などの第二の免疫療法レジメンと組み合わせて投与する工程を含んでもよい。免疫療法レジメンは、患者に、PDL1に結合する抗体を、例えばLAG3に結合する抗体またはPD1に結合する抗体またはCTLAに結合する抗体などの第二の免疫療法レジメンと組み合わせて投与する工程を含んでもよい。免疫療法レジメンは、患者に、LAG3に結合する抗体を、例えばPD1に結合する抗体またはPDL1に結合する抗体またはCTLAに結合する抗体などの第二の免疫療法レジメンと組み合わせて投与する工程を含んでもよい。免疫療法レジメンは、患者に、CTLA4に結合する抗体を、例えばLAG3に結合する抗体またはPDL1に結合する抗体またはPD1に結合する抗体などの第二の免疫療法レジメンと組み合わせて投与する工程を含んでもよい。PD1に結合する抗体は、本明細書に例示される任意の抗体または抗原結合ドメインを含んでもよい。PD1に結合する抗体は、本明細書に例示される任意の抗体または抗原結合ドメインを含んでもよい。PDL1に結合する抗体は、本明細書に例示される任意の抗体または抗原結合ドメインを含んでもよい。LAG3に結合する抗体は、本明細書に例示される任意の抗体または抗原結合ドメインを含んでもよい。CTLA4に結合する抗体は、本明細書に例示される任意の抗体または抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0055】
一部の好ましい実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、PD1に結合する抗体またはその抗原結合部分、およびLAG3に結合する抗体またはその抗原結合部分の組み合わせを投与する工程を含む。一部の好ましい実施形態では、PD1に結合する抗体は、少なくとも、配列番号21の重鎖可変領域(HCVR)配列および配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列を含み、LAG3に結合する抗体は、少なくとも、配列番号93のHCVR配列および配列番号94のLCVR配列を含む。
【0056】
一部の好ましい実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合部分、およびLAG3に結合する抗体またはその抗原結合部分の組み合わせを投与する工程を含む。一部の好ましい実施形態では、PDL1に結合する抗体は、少なくとも、配列番号122の重鎖可変領域(HCVR)配列および配列番号123の軽鎖可変領域(LCVR)配列を含み、LAG3に結合する抗体は、少なくとも、配列番号93のHCVR配列および配列番号94のLCVR配列を含む。
【0057】
一部の実施形態では、免疫療法は、癌に対する公知の免疫療法のいずれかであってもよい。例えば免疫療法は、セミプリマブ(cemiplimab)、ニボルマブ(nivolumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、アベルマブ(avelumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、IFN-アルファ、IL-2、またはそれらの組み合わせであってもよい。一部の実施形態では、免疫療法は、本明細書に記載される、または当分野において普遍的に知られている免疫チェックポイント阻害剤であってもよい。例えばセミプリマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブが、公知の免疫チェックポイント阻害剤である。
【0058】
一部の代替的な実施形態では、免疫療法レジメンは、患者に、T細胞活性化受容体の活性化物質を投与する工程を含む。一部の好ましい実施形態では、T細胞活性化受容体は、免疫療法用の活性化物質の標的となることができ、CD28、CD40L、ICOSおよび4-1BBのうちの一つまたは複数を含む。
【0059】
癌患者の腫瘍から総パッセンジャー遺伝子変異量を確立するための方法例を、図2および図3に示す。遺伝子サンプルが、取得/受領され得る(202)。遺伝子サンプルは、癌患者に由来するものであってもよい。遺伝子サンプルは、癌患者の腫瘍に由来するものであってもよい。遺伝子サンプルを配列解析し、それにより遺伝子配列データを得てもよい。
【0060】
一部の実施形態では、配列データは、本明細書に記載される任意の方法を通して取得または受領することができる。例えば、配列データは、サンプル上で配列決定処理を実行することによって直接取得することができる。別の方法として、または追加的に、配列データは、例えば、第三者、データベースおよび/または刊行物から間接的に取得することができる。一部の実施形態では、配列データは、例えばデータ記憶デバイスから、または別のコンピュータシステムから、コンピュータシステムで受信する。
【0061】
一部の実施形態では、配列データはバルクシーケンスデータを含むことができる。「バルクシーケンシング」または「次世代シーケンシング」または「超並列シーケンシング」という語は、DNAおよび/またはRNAシーケンシング処理を平行化する任意のハイスループットなシーケンシング技術を指す。例えば、バルクシーケンシング法は一般に、単一アッセイにおいて、百万個を超えるポリ核酸単位複製配列を産生することができる。「バルクシーケンシング」、「超並列シーケンシング」、および「次世代シーケンシング」という語は通常の方法のみを意味し、1回の実行で百万個を超える配列タグの獲得を必ずしも意味するものではない。任意のバルクシーケンシング法は、可逆的ターミネータ法の化学(例えば、イルミナ社)、ポロニーエマルジョン液滴を使用するパイロシーケンシング(例えば、Roche社)、イオン半導体シーケンシング(IonTorrent社)、単分子シーケンシング(例えば、Pacific Bioscience社)、超並列シグネチャシーケンシングなど、開示された方法およびシステムで実施できる。
【0062】
一部の実施形態では、配列データは、当該技術分野で公知の任意のシーケンシング法によって生成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、配列データは、Chain terminationシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、合成によるシーケンシング、パイロシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、単分子リアルタイムシーケンシング、Tag-basedシーケンシング、Dilute-`N`-Goシーケンシング、および/または454シーケンシングを用いて生成される。
【0063】
一部の実施形態では、配列データは、一つ以上のゲノム遺伝子座または転写物の少なくとも一部を増幅するために核酸増幅プロセスが実施され、その後、結果として生じる増幅産物のシーケンシングによるプロセスの結果である。本明細書に開示される方法の実行に有用な核酸増幅プロセスの例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、LATE-PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ストランド置換増幅(SDA)、転写物を介した遺伝子増幅(TMA)、自家持続配列複製法(3SR)、Qβ反復性増幅、NASBA法(NASBA(nucleic acid sequence-based amplification))、RCR法(RCR(repair chain reaction)、BDA法(BDA(boomerang DNA amplification ))、および/またはローリングサークル増幅(RCA(rolling circle amplification))が含まれるが、これに限定されない。
【0064】
一部の実施形態では、方法は、サンプル上でシーケンシングプロセスを実施する工程を含む。サンプルが、患者の腫瘍からのDNAおよび/またはRNAを含む限りにおいて、任意のサンプルを使用することができる。サンプルの供給源は、例えば、新鮮、凍結および/もしくは保存された器官、組織サンプル、生検、または吸引液からの固形組織;血液または任意の血液成分、血清、血液;例えば脳脊髄液、羊水、腹水または間質液などの体液でもよい。
【0065】
遺伝子配列データは、ドライバー遺伝子を特定し、ドライバー遺伝子中の変異数を決定するコンピューターデバイスを介して解析され得る(204)。ドライバー遺伝子中の変異数が多い場合(206)、患者が免疫療法に反応するであろうという表示が作成され得る(210)。ドライバー遺伝子中の変異数が少ない場合(206)、免疫療法でほとんど反応はみられない、または反応がみられないという表示が作成され得る(208)。ドライバー遺伝子上の変異は、例えば免疫回避などの「癌の特徴」を促進する場合がある。
【0066】
代替的実施形態では、遺伝子配列データは、パッセンジャー遺伝子を特定し、パッセンジャー遺伝子中の変異数を決定するコンピューターデバイスを介して解析され得る(212)。パッセンジャー遺伝子中の変異数が多い場合(216)、患者が免疫療法に反応するであろうという表示が作成され得る(210)。パッセンジャー遺伝子中の変異数が少ない場合(216)、免疫療法でほとんど反応はみられない、または反応がみられないという表示が作成され得る(208)。パッセンジャー遺伝子は癌においていずれの因果関係も有していないが、パッセンジャー遺伝子上の変異を使用して免疫原性を評価することができる。一部の実施形態では、遺伝子配列データを解析して(212)、パッセンジャー遺伝子を特定し、パッセンジャー遺伝子中の変異数を決定し、そして腫瘍の遺伝子変異量に対するバックグラウンド分布を決定することができる。パッセンジャー遺伝子中の変異数をバックグラウンド分布に関して解析し、パッセンジャー遺伝子中の変異数が、平均からのどの程度の標準偏差数であるか(もしあれば)を決定することができる。標準偏差数が高い(例えば少なくとも1、1.5、2、2.5)場合(216)、その癌患者は、より良好な免疫療法のレスポンダーとしてカテゴライズされ得る(210)。標準偏差数が低い場合(216)、その癌患者は、貧弱な免疫療法のレスポンダーとしてカテゴライズされ得る(208)。
【0067】
一部の実施形態では、パッセンジャー遺伝子は、本明細書においてパッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)と呼称される測定基準に従い、大規模癌ゲノム解析において特定され得る(212)。一部の実施形態では、PGIは、全癌遺伝子変異頻度との相関が高いパッセンジャー遺伝子の遺伝子変異率(GMR:genetic mutation rates)に基づいており、腫瘍遺伝子変異量とも呼称される(214)。特定されるパッセンジャー遺伝子は、例えば非常に大型のタンパク質、および発現レベルが低い遺伝子または後期DNA複製期の遺伝子などの、パッセンジャー変異が過度にあることで知られているファミリーに豊富である。高い変異率の癌サンプル/癌型には、より多くのパッセンジャー遺伝子変異が蓄積される。そして各癌型における1サンプル当たりの変異遺伝子の平均数は、当該癌型中のパッセンジャー変異の可能性に対するサロゲートとなり得る。ゆえに各遺伝子Xに対して、遺伝子Xの変異を有するサンプル割合と、各癌型における1サンプル当たりの変異遺伝子の平均数の間の相関として、PGIは規定され得る。PGIスコアが高くなると、特定の遺伝子が、高い全遺伝子変異頻度を有する癌型において体細胞変異を獲得する可能性が高くなることを示唆する。PGIが低い遺伝子は、二つの変数の間に弱い関連性を示す(例えば、TP53、PIK3CAおよびKRASなどの標準的な癌ドライバー遺伝子において観察され得る)。PGIの上位にランキングされる遺伝子は、例えば極度に大きいタンパク質(>4,000アミノ酸)、広範なゲノム座位におよぶ遺伝子(>1MB)、低発現レベルの遺伝子、後期DNA複製期の遺伝子などの、過剰にパッセンジャー変異があることが知られている遺伝子ファミリーに豊富である。これら遺伝子ファミリーの累積分布関数(CDF)は、PGI>0.7で鋭い上昇を示し、一方で、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)Cancer Gene Census(CGC)の遺伝子は、より均一的に分布している。2-サンプルのコルモゴロフ-スミルノフ検定は、CGC遺伝子と比較して、パッセンジャー遺伝子ファミリーのランク分布において有意差を示している(大きなタンパク質に対して、p=8.3×10-19;>1MBのゲノム座位に対して、p=2.9×10-12;低発現に対して、p=6.4×10-35;後期複製に対して、p=2.7×10-29)。PGI算出のために(癌型の代わりに)変異率でサンプルをグループ分けしたときにも類似の結果が得られる。
【0068】
上位パッセンジャー遺伝子は、最も高いPGIに基づいており、腫瘍型に依存しないか、または各腫瘍型に特異的であり得る。ゆえに一部の例では、上位パッセンジャー遺伝子を腫瘍型に関わらず包括的に使用し得る。これら上位パッセンジャー遺伝子は腫瘍型に関わらず変化しないが、上位パッセンジャー遺伝子は、追加サンプルの利用可能性に起因して経時的に変化し得る。一部の例では、上位パッセンジャー遺伝子は、腫瘍型間で変わり得る。一部の例では、上位パッセンジャー遺伝子は、腫瘍型間で同一であり得る。さらに上位パッセンジャー遺伝子が腫瘍型間で同一である場合、その上位パッセンジャー遺伝子リスト内のランキングは変わり得る。例えば、乳ガンの上位50個のパッセンジャー遺伝子は、肺ガンの上位50個のパッセンジャー遺伝子と同一でありうるが、乳ガンの1位のパッセンジャー遺伝子(最も高いPGIを意味する)は、肺癌の5位のパッセンジャー遺伝子であり得る。一部の例では、ある腫瘍型の上位50個のパッセンジャー遺伝子は、第二の腫瘍型の上位50個のパッセンジャー遺伝子の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、最大100パーセントを構成し得る。含まれるPGIの範囲に応じて、上位25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、またはさらには2000個以上のパッセンジャー遺伝子のリストが、上位パッセンジャー遺伝子リストに含まれ得る。一部の例では、上位のパッセンジャー遺伝子は、患者間で変化しない。すべての患者が同じパッセンジャー遺伝子リスト使用することができ、そして各患者は異なるTMBスコアを有するであろう。
【0069】
ある実施形態では、遺伝子配列データを受領する工程(310)を含む、図3に解説される方法(300)が開示される。遺伝子配列データは、複数の遺伝子を含むことができ、そして複数の疾患型を有する、対象から収集された複数の生物サンプルに由来することができる。複数の疾患型は、癌を含むことができる。
【0070】
一部の実施形態では、方法(300)は、複数の生物サンプルの各々に関し、複数の変異遺伝子を特定することができ(320)、この場合において当該変異遺伝子の各々は、少なくとも一つの非同義体細胞変異を有する遺伝子配列を含む。
【0071】
一部の実施形態では、方法(300)は、各生物サンプル中の変異遺伝子数に基づき、各生物サンプルに関し、腫瘍遺伝子変異量を決定することができる(330)。好ましい実施形態では、各生物サンプル中の変異遺伝子数に基づき、各生物サンプルに関し、腫瘍遺伝子変異量を決定する工程は、各患者サンプル中の変異遺伝子数を加える工程を含むことができる。
【0072】
方法(300)は、例えば、変異配列を、野生型配列または参照配列と並列させることによって、遺伝子(パッセンジャー遺伝子またはドライバー遺伝子)中の変異を特定することができる。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482;Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443;Pearson and Lipman(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444;Higgins and Sharp(1988)Gene 73:237-244;Higgins and Sharp(1989)CABIOS 5:151-153;Corpet et al.(1988) Nucl.Acids Res.16:10881-90;Huang et al.(1992)Computer Appl.in the Biosci.8:155-65;およびPearson et al.(1994).Meth.Mol.Biol.24:307-31に記載されている。これら文献は、参照により本明細書に組み込まれる。Altschul et al.(1994)Nature Genet.6:119-29(参照により本明細書に組み込まれる)は、配列アライメント法および相同性の算出について詳細な検討を提示している。
【0073】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.1990)は、National Center for Biological Information(NCBI,Bethesda,Md.)およびインターネットを含む、いくつかのソースで利用可能であり、これらは配列解析プログラムである、blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと併せて使用される。<//www.ncbi.nlmn.ih.gov/BLAST/>でアクセス可能である。このプログラムを使用してどのように配列同一性を決定するかの説明は、<//www.nebi.rlm.nih.gov/BLAST/blast-help.html>で入手可能である。
【0074】
一部の実施形態では、各疾患型に対し、方法(300)は、各生物サンプル中で決定された変異遺伝子数に基づき、複数の生物サンプル中の複数の変異遺伝子の平均腫瘍遺伝子変異量を決定することができる(340)。好ましい実施形態では、各生物サンプル中で決定された変異遺伝子数に基づき、複数の生物サンプル中の複数の変異遺伝子の平均腫瘍遺伝子変異量を決定する工程は、各患者サンプルからの腫瘍遺伝子変異量を加える工程、および各疾患型に対し、患者サンプル数で割る工程を含むことができる。
【0075】
一部の実施形態では、各変異遺伝子および各疾患型に対し、方法(300)は、変異遺伝子を含む生物サンプルの割合を決定することができる(350)。
一部の実施形態では、各変異遺伝子に対し、方法(300)は、平均腫瘍遺伝子変異量と、変異遺伝子を含む生物サンプルの割合の間の相関係数を決定することができる(360)。
【0076】
一部の実施形態では、方法(300)は、相関係数に基づき、変異遺伝子がパッセンジャー遺伝子であるかを決定することができる(370)。相関係数が高くなると、特定の遺伝子が、全般的に高い変異頻度を伴う癌型において体細胞変異を獲得した可能性が高いことが示唆される(パッセンジャー遺伝子)。一方で、相関係数が低くなると、特定の遺伝子が、全般的に高い変異頻度を伴う癌型において体細胞変異を獲得した可能性が低いことが示唆される(パッセンジャー遺伝子ではない)。
【0077】
代替的な実施形態では、方法(300)は、パッセンジャー遺伝子として特定された変異遺伝子のリストを生成する工程をさらに含むことができる。好ましい実施形態では、リストは、選択された疾患の免疫原性プロファイルを提示することができる。
【0078】
一部の実施形態では、図4に解説される、患者を癌治療に選択する方法(400)が開示され、当該方法は、疾患を有する患者に関し、腫瘍サンプル中に存在する複数のパッセンジャー遺伝子を決定する工程を含む(410)。
【0079】
一部の実施形態では、方法(400)は、複数のパッセンジャー遺伝子と、疾患の免疫原性プロファイルを比較することができる(420)。好ましい実施形態では、免疫原性プロファイルは、遺伝子配列データを受領する工程であって、当該遺伝子配列データは、複数の遺伝子を含み、複数の疾患型を有する対象から収集された複数の生物サンプルに由来する工程、当該複数の生物サンプルのそれぞれに対し、複数の変異遺伝子を特定する工程であって、当該変異遺伝子の各々は、少なくとも一つの非同義体細胞変異を有する遺伝子配列を含む工程、各生物サンプルの腫瘍遺伝子変異量を、各疾患型に対し、各生物サンプル中の変異遺伝子数に基づき決定する工程、当該複数の生物サンプル中の当該複数の変異遺伝子の平均腫瘍遺伝子変異量を、各変異遺伝子および各疾患型に対し、各生物サンプルにおいて決定された変異遺伝子数に基づき決定する工程、変異遺伝子を含む生物サンプルの割合を、各変異遺伝子に対して決定する工程、平均腫瘍遺伝子変異量と、変異遺伝子を含む生物サンプル割合の間の相関係数を決定する工程、を含む工程を実施することにより生成されることができる。一部の実施形態では、変異遺伝子は、相関係数に基づき、パッセンジャー遺伝子であると決定されることができる。相関係数が高くなると、特定の遺伝子が、全般的に高い変異頻度を伴う癌型において体細胞変異を獲得した可能性が高いことが示唆される(パッセンジャー遺伝子)。一方で、相関係数が低くなると、特定の遺伝子が、全般的に高い変異頻度を伴う癌型において体細胞変異を獲得した可能性が低いことが示唆される(パッセンジャー遺伝子ではない)。
【0080】
パッセンジャー遺伝子として特定された変異遺伝子のリストを作成することができ、この場合において当該リストは、選択された疾患の免疫原性プロファイルを提示する。好ましい実施形態では、各生物サンプル中の変異遺伝子数に基づき、各生物サンプルに関し、腫瘍遺伝子変異量を決定する工程は、各患者サンプル中の変異遺伝子数を加える工程を含むことができる。好ましい実施形態では、各生物サンプル中で決定された変異遺伝子数に基づき、複数の生物サンプル中の複数の変異遺伝子の平均腫瘍遺伝子変異量を決定する工程は、各患者サンプルからの腫瘍遺伝子変異量を加える工程、および各疾患型に対し、患者サンプル数で割る工程を含むことができる。
【0081】
一部の実施形態では、PGIを使用して、特定の癌に対するパッセンジャー遺伝子を特定することができ、次いでパッセンジャー遺伝子のTMBを使用して、患者が、例えば限定されないが、抗PD-1、または抗PD-1と別の癌治療剤の併用などの特定の治療に対するレスポンダーであると特定することができる。またパッセンジャー遺伝子のTMBを使用して、例えば限定されないが、抗CD20(慢性リンパ球性白血病)、抗HER2(乳癌)、抗EGFR(大腸癌および頭頸部癌)、抗CD19(B細胞癌)、および抗CD20(リンパ腫)または抗体治療と別の癌治療剤の併用などの他の癌抗体治療に対するレスポンダーを特定することができる。一部の実施形態では、他の癌治療は、化学療法、免疫調節剤(例えば第二抗体、サイトカイン)、放射線または外科手術であってもよい。
【0082】
一部の実施形態では、複数のパッセンジャー遺伝子と、疾患の免疫原性プロファイルを比較する工程は、複数の変異遺伝子と、プロファイル中の変異遺伝子のリストの間の合致数を決定する工程を含むことができる。
【0083】
一部の実施形態では、複数のパッセンジャー遺伝子が、疾患の免疫原性プロファイルと合致する場合(430)、方法(400)は、患者を、免疫療法の候補であるとして特定することができる。
【0084】
一部の実施形態では、複数のパッセンジャー遺伝子が、疾患の免疫原性プロファイルと合致しない場合(440)、方法(400)は、患者を、免疫療法の候補ではないとして特定することができる。
【0085】
代替的な実施形態では、方法(400)は、患者が免疫療法の候補であると特定された場合、当該患者を免疫療法プログラムに登録する工程をさらに含むことができる。
開示される免疫療法は、他の抗体もしくはその抗原結合断片ならびに他の抗癌治療と併用して使用することができる。併用療法は、同時に、または連続的に投与されることができる。一部の実施形態では、複数の治療剤を、薬学的に許容可能な担体とともに製剤化して、医薬組成物を作製することができる。一部の実施形態では、複数の治療剤を、薬学的に許容可能な担体とともに個々に製剤化して、複数の医薬組成物を作製する。「薬学的に許容可能」とは、当業者には公知であるように、活性成分の何らかの分解を最小化し、対象における何らかの有害な副作用を最小化するよう選択される物質または担体を意味する。担体の例としては、ジミリストイルホスファチジル(DMPC)、リン酸緩衝生理食塩水または多小胞体性リポソームが挙げられる。例えば、PG:PC:コレステロール:ペプチド、またはPC:ペプチドを、本発明において担体として使用することができる。他の適切な薬学的に許容可能な担体およびその製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。典型的には、製剤に等張性を与える適切な量の薬学的に許容可能な塩が製剤中に使用される。薬学的に許容可能な担体の他の例としては限定されないが、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、約5~約8、または約7~約7.5であってもよい。担体としてはさらに、組成物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスなどの徐放性調製物が挙げられ、このマトリクスは、造形品、例えばフィルム、ステント(血管造成術の間、血管中に移殖される)、リポソームまたは微粒子の形態である。例えば投与経路、および投与される組成物の濃度に応じて、特定の担体がより好ましい場合があることが当業者には明白であろう。最も典型的なものは、ヒトへの薬剤投与に対しては、例えば滅菌水、生理食塩水、および生理学的pHの緩衝溶液などの溶液をはじめとする標準的な溶液である。
【0086】
医薬組成物は、本発明の免疫療法の意図される活性が損なわれない限り、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤などを含むこともできる。医薬組成物は、(本発明の組成物に加えて)例えば抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの一つまたは複数の活性成分を含んでもよい。医薬組成物は、局所治療または全身治療のいずれが望ましいか、および治療される面積に応じて、多くの方法で投与され得る。
【0087】
非経口投与の調製物は、滅菌された水溶液または非水溶液、懸濁液およびエマルションを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルなどの植物油、および例えばオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水性溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝培地が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養の補給物質、電解質補給物質(例えばリンゲルデキストロースに基づく物質)などが挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加剤も存在し得る。
【0088】
眼投与用の製剤としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴、座薬、スプレー、液体および粉末が挙げられる。従来的な薬学的担体、水剤、粉末、油性基剤、増粘剤なども必要、または望ましい場合がある。
【0089】
経口投与用の組成物としては、粉末または顆粒、水性もしくは非水性培地中の懸濁液または溶液、カプセル、サッシェまたは錠剤が挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が望ましい場合がある。組成物の一部は、例えば塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、および例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸などの有機酸との反応により形成される、または例えば水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、および例えばモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、およびアリールアミン、ならびに置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応により形成される、薬学的に許容可能な酸付加塩または塩基付加塩として投与される可能性がある。
【0090】
注射用途に適した本発明の医薬組成物は、滅菌水溶液または分散溶液を含む。さらに組成物は、そうした滅菌注射溶液または分散溶液の即時調製用の滅菌粉末の形態であってもよい。典型的には、最終的な注射形態は、滅菌状態でなければならず、注射針の通過に容易な液体でなければならない。医薬組成物は、製造および保存の条件下で安定的でなければならず、ゆえに例えば細菌や真菌などの微生物の汚染の影響に対して守られていなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であってもよい。
【0091】
例えば、担体が生理食塩水、グルコース溶液、または生理食塩水とグルコース溶液の混合液を含有する注射溶液が調製されてもよい。注射用懸濁液が調製されてもよく、その場合、適切な液体担体、懸濁化剤などが採用されてもよい。また使用の直前に液状型調製物へと転換させることが意図された固形状調製物も含まれる。
【0092】
非経口投与の調製物は、滅菌された水溶液または非水溶液、懸濁液およびエマルションを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルなどの植物油、および例えばオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水性溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝培地が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養の補給物質、電解質補給物質(例えばリンゲルデキストロースに基づく物質)などが挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加剤も存在し得る。
【0093】
本発明の医薬組成物は、例えばエアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤、口腔洗浄液、うがい液などの局所使用に適した形状であってもよい。さらに組成物は、経皮デバイスでの使用に適した形状であってもよい。これらの製剤は、本発明化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を利用して、従来的な処理方法により調製されてもよい。一例として、クリームまたは軟膏は、約5重量%~約10重量%の化合物と共に親水性材料と水を混合して、望ましい粘度を有するクリームまたは軟膏を作製することにより調製される。
【0094】
経皮投与に適した組成物において、担体は任意で、浸透促進剤および/または適切な湿潤剤を含んでもよく、任意で何らかの性質の適切な添加剤を少量混合してもよい。当該添加剤は、皮膚に対し、重大な有害作用をもたらさない。当該添加剤は、皮膚への投与を促進し、および/または所望の組成物の調製を補助し得る。これらの組成物は、例えば経皮パッチとして、スポットオン(spot on)として、軟膏としてなど、様々な方法で投与され得る。
【0095】
本発明の医薬組成物は、直腸投与に適した形状であってもよく、この場合、担体は固形である。混合物は、単位投与量の座薬を形成することが好ましい。適切な担体としては、ココアバター、および当分野で普遍的に使用される他の材料が挙げられる。座薬は、最初に組成物と、軟化した、または溶けた担体とを混合し、次いで冷却して鋳型中で成形することにより簡便に形成されてもよい。
【0096】
上述の担体成分に加えて、上述の医薬製剤は必要に応じて、一つまたは複数の追加の担体成分、例えば希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などを含んでもよい。さらに、目的のレシピエントの血液との等張性を製剤に与える他のアジュバントが含まれてもよい。開示される免疫治療剤、および/またはその薬学的に許容可能な塩を含有する組成物は、粉末または液状の濃縮形態で調製されてもよい。
【0097】
正確な用量および投与頻度は、当業者に公知であるように、具体的な開示ペプチド、開示される作製方法の産物、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または多形体、その水和物、その溶媒和物、その多形体、またはその立体科学的異性体;治療される特定の状態および治療される状態の重大度;用量が投与される対象の既往歴に特異的な様々な因子、例えば年齢;具体的な対象の体重、性別、障害の程度、および一般健康状態、ならびにその個体が摂取し得る他の医薬品に依存する。さらに、当該有効な1日量は、治療される対象の反応に応じて、および/または当該組成物を処方する医師の評価に応じて、減少または増加させてもよい。
【0098】
投与様式に応じて、医薬組成物は、0.05~99重量%、好ましくは0.1~70重量%、より好ましくは0.1~50重量%の活性成分、および1~99.95重量%、好ましくは30~99.9重量%、より好ましくは50~99.9重量%の薬学的に許容可能な担体を含む。すべての百分率は、組成物の総重量に基づいている。
【0099】
例示的な実施形態では、方法およびシステムの一部またはすべてが、図10に示され、および以下に記載されるように、例えばコンピュータ(1001)などの一つまたは複数のコンピュータ上で実施することができる。一部の実施形態では、開示される方法およびシステムは、一つまたは複数のコンピュータを利用して、一つまたは複数の場所で、一つまたは複数の機能を実行することができる。図10は、本開示方法を実行するための例示的な運用環境を図示したブロック図である。この例示的な運用環境は、あくまで運用環境の一例にすぎず、運用環境アーキテクチャの使用または機能の範囲に関する何らかの制限を示唆することを意図したものではない。また、如何なる運用環境も、例示的な運用環境において図示される構成要素のいずれか一つもしくは組み合わせに関連する何らかの依存性または要件を有するものとして解釈すべきではない。
【0100】
一部の実施形態では、本方法およびシステムは、多数の他の汎用もしくは特殊用途向けコンピューティングシステム環境または構成で動作可能でありうる。このシステムおよび方法を用いた使用に適するものとし得る周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、以下に限定されないが、パーソナルコンピュータ、サーバ・コンピュータ、ラップトップ・デバイス、およびマルチプロセッサ・システムが挙げられる。追加的な例には、セットトップボックス、プログラマブル大衆消費電子製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境等が含まれる。
【0101】
一部の実施形態では、本開示の方法およびシステムの処理は、ソフトウェアコンポーネントを介して実行できる。本開示のシステムおよび方法は、一つ以上のコンピュータまたは他のデバイスを介して実行されるプログラムモジュールなどの、コンピュータ実行可能命令の一般的なコンテキストで記述できる。概して、プログラムモジュールは、コンピュータコード、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含み、それらによって特定のタスクが実行されるかまたは特定の抽象データ型が実施される。また、本開示の方法は、通信ネットワーク経由でリンクされたリモートプロセシングデバイスを介してタスクが実行されるグリッドベースおよび分散コンピューティング環境においても実施することができる。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、記憶デバイスを含むローカルおよびリモートコンピュータストレージ媒体の両方に配置できる。
【0102】
さらに、当業者は、本明細書に開示されるシステムおよび方法を、コンピュータ1001の形態の汎用コンピューティングデバイスを介して実施できることを認識することになる。コンピュータ1001の構成要素には、限定されるものではないが、一つまたは複数のプロセッサ1003と、システムメモリ1012と、一つまたは複数のプロセッサ1003を含む様々なシステムコンポーネントをシステムメモリ1012に連結するシステムバス1013と、を含めることができる。システムは並列計算を利用できる。
【0103】
システムバス1013は、多様なバスアーキテクチャのいずれかを用いた、メモリバスもしくはメモリコントローラ、周辺機器用バス、アクセラレーテッドグラフィックスポート、またはローカルバスをはじめとする、幾つかの可能なタイプのバス構造のうちの一つまたは複数を表す。バス1013、および本明細書中に指定されている全てのバスはまた、有線または無線ネットワーク接続経由で実装することもでき、一つまたは複数のプロセッサ1003を含む各サブシステム、大容量ストレージデバイス1004、オペレーティングシステム1005、PGIソフトウェア1006、PGIデータ1007、ネットワークアダプタ1008、システムメモリ1012、入出力インターフェース1010、ディスプレイアダプタ1009、ディスプレイデバイス1011、およびヒトマシンインターフェース1002は、この形態のバスを介して接続された物理的に別個の位置にある一つまたは複数のリモートコンピューティングデバイス1014a、b、c内に収容され、事実上完全に分散されたシステムを実装しうる。
【0104】
コンピュータ1001は、様々なコンピュータ可読媒体を含むのが通例である。例示的な可読媒体は、コンピュータ1001によりアクセスできる任意の利用可能な媒体であってよく、例えば、揮発性および不揮発性媒体であり、リムーバブルおよび非リムーバブル媒体の両方が挙げられるが、これらに限定されるものではない。システムメモリ1012は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリ、および/またはリードオンリメモリ(ROM)などの不揮発性メモリの形態のコンピュータ可読媒体を含む。システムメモリ1012は、典型的には、PGIデータ1007のようなデータ、ならびに/または一つまたは複数のプロセッサ1003によって直ちにアクセス可能であり、および/または現在操作されているオペレーティングシステム1005およびPGIソフトウェア1006などのプログラムモジュールを含む。PGIデータ1007は、リード・カバレッジ・データおよび/または期待リード・カバレッジ・データを含むことができる。
【0105】
一部の実施形態では、コンピュータ1001はまた、他のリムーバブル/非リムーバブルな、揮発性/不揮発性コンピュータストレージ媒体を含むこともできる。一例として、図10は、コンピュータ1001用のコンピュータコード、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、および他のデータの不揮発性ストレージを提供できる、大容量記憶デバイス1004が図示されている。例えば、限定されるものではないが、大容量記憶デバイス1004は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光学式ディスク、磁気カセットまたは他の磁気ストレージデバイス、フラッシュメモリカード、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学式ストレージ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)等でありうる。
【0106】
任意選択的に、例えばオペレーティングシステム1005およびPGIソフトウェア1006を含む、任意の数のプログラムモジュールを大容量ストレージデバイス1004に格納できる。オペレーティングシステム1005およびPGIソフトウェア1006(またはそれらの幾つかの組み合わせ)の各々には、プログラミングおよびPGIソフトウェア1006の要素を含めることができる。PGIデータ1007はまた、大容量ストレージデバイス1004に格納できる。PGIデータ1007を、当分野に公知の一つまたは複数のデータベースのいずれかに記憶させることができる。そのようなデータベースの例としては、DB2(登録商標)、Microsoft(登録商標)Access、Microsoft(登録商標)SQL Server、Oracle(登録商標)、mySQL、PostgreSQLなどが挙げられる。データベースは、集中型とすることができ、または複数のシステムにわたって分散することができる。
【0107】
代替的な実施形態では、ユーザは、入力デバイス(図示せず)を介して、コンピュータ1001内にコマンドおよび情報を入力することができる。そのような入力デバイスの例としては、以下に限定されないが、キーボード、指示デバイス(例えば「マウス」)、マイクロホン、ジョイスティック、スキャナー、グローブなどの触覚入力デバイス、および他の身体被覆物などが挙げられる。これらのおよび他の入力デバイスは、システムバス1013に連結されているヒト機械インターフェース1002を介して、一つまたは複数のプロセッサ1003に接続することができるが、パラレル・ポート、ゲーム・ポート、IEEE 1394 Port(Firewire(登録商標)ポートとしても知られる)、シリアル・ポートやユニバーサル・シリアル・バス(USB)などの他のインターフェースおよびバス構造によって接続することができる。
【0108】
代替的な実施形態において、ディスプレイデバイス1011はまた、ディスプレイアダプタ1009等のインターフェースを介してシステムバス1013に接続できる。コンピュータ1001に複数のディスプレイアダプタ1009を設けることができ、コンピュータ1001に複数のディスプレイデバイス1011を設けることもできることが予期される。例えば、ディスプレイデバイスは、モニター、液晶ディスプレイ(LCD)、またはプロジェクターとすることができる。ディスプレイデバイス1011に加えて、他の出力周辺デバイスには、入出力インターフェース1010を介してコンピュータ1001に接続できるスピーカ(図示せず)およびプリンタ(図示せず)等の構成要素を含めることができる。本方法の任意の工程および/または結果は、任意のフォーマットで出力デバイスに出力できる。そのような出力は、テキスト、グラフィカル、アニメーション、オーディオ、触覚(tactile)等を含むが、これらに限定されない任意のフォーマットの視覚的表象でありうる。ディスプレイ1011およびコンピュータ1001は、一つのデバイスの一部である場合もあれば、別々のデバイスである場合もある。
【0109】
コンピュータ1001は、一つまたは複数のリモートコンピューティングデバイス1014a、b、cへの論理的接続を使用してネットワーク環境で動作できる。一例として、リモートコンピューティングデバイスは、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、スマートフォン、サーバー、ルーター、ネットワークコンピュータ、ピアデバイスまたは他の共通ネットワークノード等でありうる。コンピュータ1001とリモートコンピューティングデバイス1014a、b、cとの間の論理的接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)および/または一般的なワイドエリアネットワーク(WAN)等のネットワーク1015を介して行うことができる。そのようなネットワーク接続は、ネットワークアダプタ1008経由でありうる。ネットワークアダプタ1008は、有線および無線の両方の環境で実装できる。そのようなネットワーキング環境は、住宅、職場、企業全体のコンピュータネットワーク、イントラネット、およびインターネットでは、従来からあるありふれたものである。
【0110】
そのようなプログラムおよびコンポーネントは、コンピューティングデバイス1001の異なるストレージコンポーネント内に様々な時間に存在し、コンピュータの一つまたは複数のプロセッサ1003を介して実行されることが認識されるが、例証の便宜上、本明細書においてアプリケーションプログラムおよびオペレーティングシステム1005等の他の実行可能プログラムコンポーネントは、離散的ブロックとして図示されている。或る態様では、PGIソフトウェア1006および/またはPGIデータ1007の少なくとも一部を、コンピューティングデバイス1001、リモートコンピューティングデバイス1014a、b、cおよび/もしくはそれらの組み合わせのうちの一つまたは複数に格納し、ならびに/または実行できる。したがって、PGIソフトウェア1006および/またはPGIデータ1007は、PGIソフトウェア1006および/またはPGIデータ1007へのアクセスをネットワーク1015(例えば、インターネット)を介して実行できるクラウドコンピューティング環境内で動作できる。さらに或る態様においては、コンピューティングデバイス1001、リモートコンピューティングデバイス1014a、b、cおよび/またはそれらの組み合わせのうちの一つまたは複数にわたって、PGIデータ1007を同期化することができる。
【0111】
PGIソフトウェア1006の実装形態は、何らかの形態のコンピュータ可読媒体上に格納される場合もあれば、またはそのコンピュータ可読媒体を介して伝送される場合もある。本開示の方法のいずれも、コンピュータ可読媒体上に具現化されたコンピュータ可読命令によって実行できる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の利用可能媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体の例としては、限定されるものではないが、「コンピュータストレージ媒体」および「通信媒体」を挙げることができる。「コンピュータストレージ媒体」は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールもしくは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実装される揮発性および不揮発性のリムーバブル媒体および非リムーバブル媒体を具備する。例示的なコンピュータストレージ媒体は、限定されるものではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、または他の光学式ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶デバイスもしくは他の磁気記憶デバイス、または、所望の情報を格納する目的に使用でき、且つコンピュータがアクセスできる任意の他の媒体を具備する。
【0112】
方法およびシステムは、機械学習や反復学習などの人工知能手法を採用することができる。そのような手法の例としては、以下に限定されないが、エキスパート・システム、事例に基づく推論、ベイジアン・ネットワーク、ビヘイビアベースAI、ニューラル・ネットワーク、ファジーシステム、進化的計算法(例えば遺伝的アルゴリズム)、群知能(例えばアント・アルゴリズム)、およびハイブリッド知能システム(例えば、ニューラル・ネットワークを通じて生成されるエキスパート推論ルール、または統計的学習から得られるプロダクション・ルール)が挙げられる。
【0113】
別途明記しない限り、本明細書中に記載されている方法は、その工程を特定の順序で実行することを必須としていると解釈すべきものではない。したがって、方法についてのある請求項が、実際にその工程に従うべき順序を列挙していない場合、または、特許請求の範囲もしくは明細書において特定の順序に限定されることが別途明記されていない場合には、如何なる点においても、順序を推定することは決して意図されない。これは、工程の配置または操作の流れの配列に関するロジックの問題;文法的な編成または句読法から導き出される明白な意味;本明細書中に記載されている実施形態の数またはタイプ等を解釈するための、あらゆる可能な非明示的基礎に対して成り立つ。
【実施例0114】
以下の実施例は、本開示内容をさらに詳細に説明するために提供される。これらは、本開示内容を例示することを意図しており、これに限定することを意図していない。
実施例1
パッセンジャー遺伝子インデックス
パッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)の方法には、癌型によりビニングされたすべてのTCGAサンプルが含まれ、各ビニングに対して変異遺伝子のメジアン数が決定される。固形腫瘍と、血液由来腫瘍または正常な固形臓器のカウンターパートを比較することにより、変異は非サイレントな体細胞変異のみに限定された。例外は急性骨髄性白血病であり、この場合、血液由来腫瘍は、正常な固形臓器と比較された。変異プロファイルはバイナリーマトリクスとして構築され、それにより、遺伝子に対応する任意の座位が、当該患者において変異を担持する場合、1ビットが設定される。遺伝子Xの変異を有するサンプルの割合と、各癌型における変異遺伝子のメジアン数の間のピアソン相関として、各遺伝子Xに対してPGIが算出される。相関を算出する前に、不均一に分布した微量ノイズを、変異を有するサンプル割合に加えて、すべてゼロのエントリーの問題を回避した。
【0115】
実施例2
ドライバー遺伝子およびパッセンジャー遺伝子の腫瘍遺伝子変異量に対するZスコア
ドライバー/パッセンジャーTMBに対するZスコア法には、以下が含まれる:TMBに対するzスコアを算出するために、同じ大きさの無作為に選択された1000個の遺伝子セットを使用して、最初にTMBのバックグラウンド分布を確立させた。次いで変異したドライバー/パッセンジャー遺伝子の数を算出して、バックグラウンド分布を比較し、Zスコアを算出した。これにより、その数が、バックグラウンド平均からどの程度の標準偏差数であるかが示唆される。ドライバー遺伝子は、2015年1月22日にCOSMIC Cancer Gene Censusからダウンロードされ、パッセンジャー遺伝子は、TCGAデータ由来のPGIによりランク付けされた上位n個の遺伝子として定義された。
【0116】
実施例3
パッセンジャー遺伝子腫瘍遺伝子変異量と、免疫療法の反応性
パッセンジャー遺伝子インデックス(PGI)を算出するために、20種のTCGA腫瘍型からの6,685個のサンプルに由来する非サイレントな体細胞変異のリストを集めた。体細胞変異は、腫瘍ゲノムと、生殖細胞ゲノム、例えば同じ患者の血液由来の正常サンプルのゲノムを比較することにより決定された。1サンプル当たりの変化遺伝子のメジアン数は、急性骨髄性白血病の9から、皮膚黒色腫の289までの範囲であり、最も少ない変異率の癌と、最も高い変異率の癌の間には32倍を超える差があった(図5)。このことは、皮膚癌サンプルと肺癌サンプルは、環境変異原に曝されるために変異率が最も高いという過去の研究結果と一致している。図5は、6,685個のTCGA癌エクソーム中の1サンプル当たりの非サイレントな体細胞変異数を示す。
【0117】
本試験に含まれる20種の癌型は、膀胱尿路上皮細胞癌(BLCA)、浸潤性乳癌(BRCA)、子宮頸部扁平上皮細胞癌および子宮頚管腺癌(CESC)、結腸/直腸腺癌(CORE)、多形性グリア芽細胞腫(GBM)、頭頚部扁平上皮細胞癌(HNSC)、腎臓の腎明細胞癌(KIRC)、腎臓の腎乳頭細胞癌(KIRP)、急性骨髄性白血病(LAML)、肝臓の肝細胞癌(LIHC)、脳の低グレードグリオーマ(LGG)、肺腺腫(LUAD)、肺扁平上皮細胞癌(LUSC)、卵巣の漿液性嚢胞腺癌(OV)、褐色細胞腫および傍神経節腫(PCPG)、前立腺腺癌(PRAD)、皮膚黒色腫(SKCM)、胃腺癌(STAD)、甲状腺癌(THCA)、および子宮体部内膜癌(UCEC)である。
【0118】
全変異率が高い癌型には、より多くのパッセンジャー遺伝子変異が蓄積され、そして各癌型における1サンプル当たりの変化遺伝子の平均数は、当該癌型中のパッセンジャー遺伝子変異の可能性に対するサロゲートとなり得ると仮定された。各遺伝子Xに対して、遺伝子Xバリアントを有するサンプル割合と、各癌型における1サンプル当たりの変化遺伝子の平均数の間の相関として、PGIが規定された。PGIスコアが高くなると、特定の遺伝子が、高い全変異頻度を有する癌型において体細胞変異を獲得する可能性が高くなることを示唆した。パッセンジャー遺伝子は、二つの変数に関して強い直線的関係を示した。一方で、例えばTP53、PIK3CAおよびKRASなどの標準的な癌遺伝子においては弱い関連性が観察された(図6)。図6は、各癌型における、総変異遺伝子の平均数(x軸)と、遺伝子バリアントを有する患者割合(y軸)に対するスキャッタープロットを示す。上の行は、上位のパッセンジャー遺伝子における強い直線的関係(MUC16 r=0.979;ADAM2 r=0.972;COL5A2 r=0.968)を示し、下の行は、標準的な癌遺伝子における2変数の弱い関連性を示す(TP53 r=0.301;PIK3CA r=0.120;KRAS r=0.222)。
【0119】
PGIの上位にランキングされる遺伝子は、例えば極度に大きいタンパク質(>4,000アミノ酸)、広範なゲノム座位におよぶ遺伝子(>1MB)、低発現レベルの遺伝子、および後期DNA複製期の遺伝子などの、過剰にパッセンジャー変異があることが知られている遺伝子ファミリーに豊富である。これら遺伝子ファミリーの累積分布関数(CDF)は、PGI>0.7で鋭い上昇を示し、一方で、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)Cancer Gene Census(CGC)のドライバー遺伝子は、より均一的に分布している(図7)。図7 癌ドライバー遺伝子および様々な他の遺伝子群に対する、PGIスケールに沿ったエンリッチメントを示す。点線(上側)は、様々なPGIでの遺伝子の割合を示し、垂直線(下側)は個々の遺伝子のランクを示す。2-サンプルのコルモゴロフ-スミルノフ検定を使用して、癌遺伝子分布と比較した場合の、各群に対する遺伝子分布における差異を検証した。2-サンプルのコルモゴロフ-スミルノフ検定は、CGC遺伝子と比較して、パッセンジャー遺伝子ファミリーのランク分布において有意差を示した(大きなタンパク質に対して、p=8.3×10-19;>1MBのゲノム座位に対して、p=2.9×10-12;低発現に対して、p=6.4×10-35;後期複製に対して、p=2.7×10-29)。PGIを算出するために、(癌型の代わりに)変異率でサンプルをグループ分けしたときにも類似の結果が観察された。一部のCGC遺伝子も高いPGIスコアを有しているが、それらは上位の変化したTCGA癌型に対しては確認されていない。例えばKDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)は、黒色腫において最も高い変異率(SKCMにおいて14%)を有しているが、KDRは、非小細胞肺癌と血管肉腫における因果関係のみが知られている。同様に、上位30個のCGC遺伝子に関し、最も変化した癌型において確認されたケースは認められなかった。対照的に、最も低いPGIを有する30個のCGCドライバー遺伝子のうちの16個は、対応する変化した癌型において確認されている(図8)。図8 低PGIのCGC遺伝子が、変化した癌型において確認される可能性が高いことを示す。図8は、最も高い(左)および最も低い(右)PGIのCGC遺伝子を示し、および対応する癌型と、変異サンプルの最も高い割合(>2%)を示す。アスタリスクで印が付いた頭字語は、遺伝子に関し、CGCにより確認された癌型である。最も高いPGIのCGC遺伝子において確認された癌はなく、最も低いPGIのCGC遺伝子においては16/30の癌型が確認されている。
【0120】
PGIを測定基準として適用し、パッセンジャー遺伝子を選択した。選択されたパッセンジャー遺伝子の腫瘍遺伝子変異量(TMB)を使用して、免疫療法に反応する可能性の高い患者コホートを階層化した。この方法を実証するために、局所免疫細胞溶解活性とT細胞受容体(TCR)リードカウントを、免疫原性のサロゲートとして使用して、TCGAデータにおいて、高いTMBの患者と低いTMBの患者の間に何らかの免疫原性の差異が存在するかを検証した。各患者に対し、TMBは3種の異なる方法で算出された。すなわち、(i)従来的な総TMB、(ii)ドライバー遺伝子によるTMB、そして(iii)パッセンジャー遺伝子によるTMB、である。細胞溶解活性を定量するために、本発明者らは、二つの重要な細胞溶解エフェクターである、グランザイムA(GZMA)とパーフォリン(PRF1)の遺伝子発現レベルに基づいた、シンプルなRNA系の測定基準を採用した。細胞溶解活性は、7種の異なる癌型において、高いパッセンジャーTMB患者と低いパッセンジャーTMB患者の間で有意差(マン-ホイットニーU検定でp<0.05)が存在した(結腸腺癌p<4.6x10-11、浸潤性乳癌p<5.0x10-4、肺腺腫p<7.7x10-4、子宮体部内膜癌p<9.9x10-4、子宮頸部扁平上皮細胞癌p<2.2x10-3、肺扁平上皮細胞癌p<5.7x10-3、前立腺腺癌p<2.1x10-2)。その差異は、対応する癌型において総TMBとドライバー遺伝子TMBを使用した場合と比較して、より顕著である(図9A)。
【0121】
TCRは、ペプチド-MHC複合体の認識に寄与し、その多様性は、外来性タンパク質または変異タンパク質、例えば癌細胞由来のネオ抗原などの数と直接関連している。TCRβレパートリー解析は、TCGA RNA-seqデータを使用して実施され、高パッセンジャーTMB患者と低パッセンジャーTMB患者の間のTCRβリードカウントが比較された。図9Bに示されるように、検出されたTCRβリードカウント数は、8種の異なる癌型において、高パッセンジャーTMB患者と低パッセンジャーTMB患者の間で有意に異なっていた(子宮体部内膜癌p<3.2×10-6、結腸腺癌p<4.5×10-6、子宮頸部扁平上皮細胞癌p<2.4×10-3、浸潤性乳癌p<7.3×10-3、皮膚黒色腫p<9.2×10-3、肺腺腫p<1.5×10-2、卵巣の漿液性嚢胞腺癌p<2.7×10-2、前立腺腺癌p<3.8×10-2)。細胞溶解活性の実験結果と一致して、TCRβの差は、総TMBとドライバーTMBを使用した場合と比較して、パッセンジャーTMBで分けられた群の間でより顕著である。
【0122】
最後に、TCGAデータにおいて、TMBと関連した何らかの延命効果が存在するかを確認するための検証を行った。子宮頸部および肺の扁平上皮細胞癌(CESCおよびLUSC)において統計的に有意ではないが、総TMBは、良好な生存転帰と正の関連傾向を示した。一方でドライバーTMBは、予後不良と関連している(図9C)。図9C 皮膚黒色腫(SKCM)、子宮頸部扁平上皮細胞癌(CESC)および子宮頚管腺癌、ならびに肺扁平上皮細胞癌(LUSC)における、(i)全遺伝子、(ii)ドライバー遺伝子、および(iii)パッセンジャー遺伝子の変異量により分けられた患者コホートの臨床転帰は、パッセンジャーTMBにより分けられた患者コホートにおいてのみ、有意な生存率の差異をもたらし、総TMB/ドライバーTMBは有意な差異はもたらさなかったことを示す。SKCMは、高い総/パッセンジャーTMB群と低い総/パッセンジャーTMB群の間の患者生存率において、有意差を示す。
【0123】
CESCおよびLUSCの両方において、パッセンジャーTMBを使用したときのみ、高TMB患者群と低TMB患者群の間の生存転帰の差異が、統計的に有意であった。皮膚黒色腫(SKCM)において、パッセンジャーTMBと総TMBを使用した患者の階層化の両方が、生存曲線において類似した有意性のある分離を示している。このことから、黒色腫において、免疫原性の抑制に強い影響を与えるドライバー遺伝子は非常に少ないか、または存在しないことが示唆される。転移性黒色腫において、CTLA-4阻害の独立したデータセットを使用して、110名の患者を、変異量によって、同サイズの二つの群に分けた。200個のパッセンジャー遺伝子のTMBを使用した階層化には、24.55%~36.36%の基準から選択された患者群の臨床的利益率が含まれた(フィッシャーの直接確率検定p=0.0035)。総TMBを使用した患者の階層化により、臨床的利益において同じ改善がもたらされたことから、TCGAデータを使用した黒色腫に関する細胞溶解活性、TCR検出、および延命効果における実験結果がさらに補強された。
【0124】
図11 抗PD1の第I相臨床試験における患者コホートのTMBを示す。黒丸、黒四角、および黒三角はそれぞれ、部分反応(PR)、安定的疾患(SD)、および進行性疾患(PD)を伴う患者を示す。中空は、個々の患者のデータを示し、中空ではないものは、各PR/SD/PD群における平均を示す。総TMBは、変異遺伝子の総数として示され(左のy軸)、ドライバー/パッセンジャーTMBは、zスコアで示されている(右のy軸)。PR-vs-PDおよびPR-vs-PD+SDの両方が、パッセンジャーTMBにおいて統計的有意差を示し、使用された上位(50/100/1000)のパッセンジャー遺伝子の数で変わらなかった。PR群は、総TMBまたはドライバーTMBで有意差が得られなかった。
【0125】
実施例4
パッセンジャー遺伝子の腫瘍遺伝子変異量と、臨床免疫療法反応
免疫療法に対する様々な悪性腫瘍の臨床反応を評価するために、PD-1(Programmed Death-1)に対するヒトモノクローナル抗体の、単剤として、および他の抗ガン治療剤との併用での第I相試験からの体細胞変異データを使用した。総計で、進行性悪性腫瘍を有する74名の患者から、臨床反応データを入手した(部分反応PRがn=8、安定的疾患SDがn=29、進行性疾患PDがn=37)。総TMBは、変異遺伝子の総数として表示されている。ドライバー/パッセンジャーTMBは、zスコアで表され、患者の総TMBに対して正規化されている。変異ドライバー/パッセンジャー遺伝子の数と、同サイズの無作為に選択された遺伝子を使用したバックグラウンド分布を比較することにより、zスコアが算出される。zスコアが高くなると、総TMBバックグラウンドにかかわらず、選択されたドライバー/パッセンジャー遺伝子セットの変異量も高くなることが示唆される。総TMBと、ドライバーTMBのzスコアは、他の患者群からPRを識別しない。一方で、PR患者においてパッセンジャーTMBのzスコアは、PD患者群またはPD+SD患者群と比較して有意に高い。上位50、100、500(図12)および1000個のパッセンジャー遺伝子を使用して算出されたTMBにおいて結果は一致している。
【0126】
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
癌患者の治療において使用するための免疫療法剤であって、前記免疫療法剤は、PD-1に結合する抗体を含み、前記癌患者が、遺伝子変異量についてのバックグラウンド分布よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、免疫療法剤。
【0127】
[付記2]
前記パッセンジャー遺伝子変異量は、
前記癌のパッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程と、
前記癌の変異量に対するバックグラウンド分布を作成する工程と、
前記バックグラウンド分布に対し、前記パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程と、
によって、前記バックグラウンド分布より大きいことが決定され、
正規化されたパッセンジャー遺伝子変異量が、前記バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、または3超標準偏差、高いときに、前記パッセンジャー遺伝子変異量は前記バックグラウンド分布より大きい、付記1に記載の免疫療法剤。
【0128】
[付記3]
バックグラウンド分布を作成する工程が、前記癌から取得され、無作為に選択された遺伝子の複数サンプルから前記変異量を確立する工程を含むが、ただし各サンプルにおいて前記無作為に選択された遺伝子の数は、前記パッセンジャー遺伝子変異量を算出するために使用されるパッセンジャー遺伝子数と等しいものとする、付記2に記載の免疫療法剤。
【0129】
[付記4]
前記バックグラウンド分布に対して前記パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程が、前記バックグラウンド分布の平均からの標準偏差数を示すzスコアを作成する工程、あるいはp値を作成する工程、を含む、付記1~3のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0130】
[付記5]
前記癌中の変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程をさらに含む、付記1~4のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0131】
[付記6]
前記癌中の変異遺伝子をパッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程は、前記癌から変異遺伝子を選択する工程、および前記変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子インデックスに従い確立されたパッセンジャー遺伝子を含むデータ構造にマッチングさせる工程を含む、付記5に記載の免疫療法剤。
【0132】
[付記7]
前記パッセンジャー遺伝子インデックスは、癌患者コホートから取得された前記変異遺伝子を含むサンプル割合と、前記癌患者コホート内の各腫瘍型における変異遺伝子のメジアン数との間の相関係数を含む、付記6に記載の免疫療法剤。
【0133】
[付記8]
癌患者が、皮膚扁平上皮細胞癌(CSCC)、膀胱尿路上皮細胞癌(BLCA)、浸潤性乳癌(BRCA)、子宮頸部扁平上皮細胞癌および子宮頚管腺癌(CESC)、結腸/直腸腺癌(CORE)、多形性グリア芽細胞腫(GBM)、頭頚部扁平上皮細胞癌(HNSC)、腎臓の腎明細胞癌(KIRC)、腎臓の腎乳頭細胞癌(KIRP)、急性骨髄性白血病(LAML)、肝臓の肝細胞癌(LIHC)、脳の低グレードグリオーマ(LGG)、肺腺腫(LUAD)、肺扁平上皮細胞癌(LUSC)、卵巣の漿液性嚢胞腺癌(OV)、褐色細胞腫および傍神経節腫(PCPG)、前立腺腺癌(PRAD)、皮膚黒色腫(SKCM)または胃腺癌を有する、付記1~7のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0134】
[付記9]
前記癌が、子宮体部内膜癌、結腸腸腺癌、子宮頸部扁平上皮細胞癌、浸潤性乳癌、皮膚黒色腫、肺腺腫、卵巣の漿液性嚢胞腺癌、または前立腺腺癌である、付記1~7のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0135】
[付記10]
前記PD-1に結合する抗体は、セミプリマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、ピジリズマブ、カムレリズマブ、スパルタリズマブ(PDR001)またはセトレリマブ(JNJ-63723283)である、付記1~9のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0136】
[付記11]
前記PD-1に結合する抗体は、配列番号21の重鎖可変領域(HCVR)配列を含む、付記1~10のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0137】
[付記12]
前記PD-1に結合する抗体は、配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列を含む、付記1~11のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0138】
[付記13]
前記PD-1に結合する抗体は、配列番号21のHCVR配列および配列番号22のLCVR配列を含む、付記1~12のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0139】
[付記14]
前記PD-1に結合する抗体は、セミプリマブである、付記1~13のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0140】
[付記15]
前記癌は皮膚癌である、付記1~14のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
[付記16]
前記皮膚癌は、皮膚扁平上皮細胞癌である、付記15に記載の免疫療法剤。
【0141】
[付記17]
前記癌は肺癌である、付記1~14のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
[付記18]
前記癌は子宮頸癌である、付記1~14のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0142】
[付記19]
前記遺伝子変異量についてのバックグラウンド分布は、前記癌患者から得られた遺伝子サンプルについて配列解析を実施するかあるいは実施したことによって決定される、付記1~18のいずれか一項に記載の免疫療法剤。
【0143】
[付記20]
癌患者の治療のための医薬の製造におけるPD-1に結合する抗体の使用であって、前記癌患者は、遺伝子変異量についてのバックグラウンド分布よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、使用。
【0144】
[付記21]
前記パッセンジャー遺伝子変異量は、
前記癌のパッセンジャー遺伝子変異量を確立する工程と、
前記癌の変異量に対するバックグラウンド分布を作成する工程と、
前記バックグラウンド分布に対し、前記パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程と、
によって、前記バックグラウンド分布より大きいことが決定され、
正規化されたパッセンジャー遺伝子変異量が、前記バックグラウンド分布の平均よりも少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、または3超標準偏差、高いときに、前記パッセンジャー遺伝子変異量は前記バックグラウンド分布より大きい、付記20に記載の使用。
【0145】
[付記22]
バックグラウンド分布を作成する工程が、前記癌から取得され、無作為に選択された遺伝子の複数サンプルから前記変異量を確立する工程を含むが、ただし各サンプルにおいて前記無作為に選択された遺伝子の数は、前記パッセンジャー遺伝子変異量を算出するために使用されるパッセンジャー遺伝子数と等しいものとする、付記21に記載の使用。
【0146】
[付記23]
前記バックグラウンド分布に対して前記パッセンジャー遺伝子変異量を正規化する工程が、前記バックグラウンド分布の平均からの標準偏差数を示すzスコアを作成する工程、あるいはp値を作成する工程、を含む、付記20~22のいずれか一項に記載の使用。
【0147】
[付記24]
前記癌中の変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程をさらに含む、付記20~23のいずれか一項に記載の使用。
【0148】
[付記25]
前記癌中の変異遺伝子をパッセンジャー遺伝子としてカテゴライズする工程は、前記癌から変異遺伝子を選択する工程、および前記変異遺伝子を、パッセンジャー遺伝子インデックスに従い確立されたパッセンジャー遺伝子を含むデータ構造にマッチングさせる工程を含む、付記24に記載の使用。
【0149】
[付記26]
前記パッセンジャー遺伝子インデックスは、癌患者コホートから取得された前記変異遺伝子を含むサンプル割合と、前記癌患者コホート内の各腫瘍型における変異遺伝子のメジアン数との間の相関係数を含む、付記25に記載の使用。
【0150】
[付記27]
癌患者が、皮膚扁平上皮細胞癌(CSCC)、膀胱尿路上皮細胞癌(BLCA)、浸潤性乳癌(BRCA)、子宮頸部扁平上皮細胞癌および子宮頚管腺癌(CESC)、結腸/直腸腺癌(CORE)、多形性グリア芽細胞腫(GBM)、頭頚部扁平上皮細胞癌(HNSC)、腎臓の腎明細胞癌(KIRC)、腎臓の腎乳頭細胞癌(KIRP)、急性骨髄性白血病(LAML)、肝臓の肝細胞癌(LIHC)、脳の低グレードグリオーマ(LGG)、肺腺腫(LUAD)、肺扁平上皮細胞癌(LUSC)、卵巣の漿液性嚢胞腺癌(OV)、褐色細胞腫および傍神経節腫(PCPG)、前立腺腺癌(PRAD)、皮膚黒色腫(SKCM)または胃腺癌を有する、付記20~26のいずれか一項に記載の使用。
【0151】
[付記28]
前記癌が、子宮体部内膜癌、結腸腸腺癌、子宮頸部扁平上皮細胞癌、浸潤性乳癌、皮膚黒色腫、肺腺腫、卵巣の漿液性嚢胞腺癌、または前立腺腺癌である、付記20~26のいずれか一項に記載の使用。
【0152】
[付記29]
前記PD-1に結合する抗体は、セミプリマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、ピジリズマブ、カムレリズマブ、スパルタリズマブ(PDR001)またはセトレリマブ(JNJ-63723283)である、付記20~28のいずれか一項に記載の使用。
【0153】
[付記30]
前記PD-1に結合する抗体は、配列番号21の重鎖可変領域(HCVR)配列を含む、付記20~29のいずれか一項に記載の使用。
【0154】
[付記31]
前記PD-1に結合する抗体は、配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列を含む、付記20~30のいずれか一項に記載の使用。
【0155】
[付記32]
前記PD-1に結合する抗体は、配列番号21のHCVR配列および配列番号22のLCVR配列を含む、付記20~31のいずれか一項に記載の使用。
【0156】
[付記33]
前記PD-1に結合する抗体は、セミプリマブである、付記20~32のいずれか一項に記載の使用。
【0157】
[付記34]
前記癌は皮膚癌である、付記20~33のいずれか一項に記載の使用。
[付記35]
前記皮膚癌は、皮膚扁平上皮細胞癌である、付記34に記載の使用。
【0158】
[付記36]
前記癌は肺癌である、付記20~33のいずれか一項に記載の使用。
[付記37]
前記癌は子宮頸癌である、付記20~33のいずれか一項に記載の使用。
【0159】
[付記38]
前記遺伝子変異量についてのバックグラウンド分布は、前記癌患者から得られた遺伝子サンプルについて配列解析を実施するかあるいは実施したことによって決定される、付記20~37のいずれか一項に記載の使用。
【0160】
[付記39]
癌患者の治療において使用するための免疫療法剤であって、前記免疫療法剤は、LAG-3に結合する抗体を含み、前記癌患者が、バックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、免疫療法剤。
【0161】
[付記40]
癌患者の治療において使用するための免疫療法剤であって、前記免疫療法剤は、PDL1に結合する抗体を含み、前記癌患者が、バックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、免疫療法剤。
【0162】
[付記41]
癌患者の治療において使用するための免疫療法剤であって、前記免疫療法剤は、CTLA4に結合する抗体を含み、前記癌患者が、バックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、免疫療法剤。
【0163】
[付記42]
癌患者の治療において使用するための免疫療法剤であって、前記免疫療法剤は、TIM3に結合する抗体を含み、前記癌患者が、バックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、免疫療法剤。
【0164】
[付記43]
癌患者の治療のための医薬の製造におけるLAG-3に結合する抗体の使用であって、前記癌患者はバックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、使用。
【0165】
[付記44]
癌患者の治療のための医薬の製造におけるPDL1に結合する抗体の使用であって、前記癌患者はバックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、使用。
【0166】
[付記45]
癌患者の治療のための医薬の製造におけるCTLA4に結合する抗体の使用であって、前記癌患者はバックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、使用。
【0167】
[付記46]
癌患者の治療のための医薬の製造におけるTIM3に結合する抗体の使用であって、前記癌患者はバックグラウンドの遺伝子変異量よりも大きいパッセンジャー遺伝子変異量を備えた癌を有する、使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
【配列表】
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