(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099755
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】バイオセンサーデバイスにおける信号増幅
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240718BHJP
G01N 5/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01N33/543 593
G01N5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072222
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2020501358の分割
【原出願日】2018-07-06
(31)【優先権主張番号】62/531,238
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520004524
【氏名又は名称】アヴィアーナ モレキュラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ダス,ソウメン
(72)【発明者】
【氏名】ハムリン,ジョン マーティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タンパク質、細胞、および核酸を含む標的分析物を含む試験試料を分析するためのデバイスおよび方法に関する。
【解決手段】弾性波バイオセンサー部品を提供する。分析物がバイオセンサー上の捕捉剤に付着した後、ポリマーまたは金属材料を分析物に塗布するステップを含む、バイオセンサー信号を増幅する方法も提供する。
【選択図】なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサーにおいて信号を増幅する方法であって、
捕捉試薬を有する前記バイオセンサーに試料を塗布するステップであって、前記捕捉試薬
は、分析物を結合するための1つまたは複数の第1の認識部分を含み、前記捕捉試薬は前
記バイオセンサー上に固定化されている、ステップと、
信号増幅材料を導入するステップであって、前記信号増幅材料は、前記分析物に結合する
ための1つまたは複数の第2の認識部分を有する、ステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記信号増幅材料が、ポリマー、金属、または金属酸化物である、請求項1に記載の方
法。
【請求項3】
前記信号増幅材料がポリスチレンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号増幅材料が、種々の材料のビーズの形態である、請求項1から3のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項5】
前記ビーズが、約1nm~約100μmの範囲の平均直径を有する、請求項4に記載の
方法。
【請求項6】
前記信号増幅材料は、前記分析物が前記バイオセンサーに結合した後に導入される、請
求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記信号増幅材料は、前記分析物が前記バイオセンサーに結合する前に導入される、請
求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料を前記バイオセンサーに塗布する前に、ベースレベル信号を測定するステップ
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記信号増幅材料が前記分析物に結合した後に、試験レベル信号を測定するステップを
含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ベースレベル信号を前記試験レベル信号と比較して、前記試料中の前記分析物の存
在を判定するステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の認識部分が、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス、真菌、寄生虫
、芽胞、核酸、小分子またはタンパク質に結合する部分である、請求項1から10のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の認識部分が、抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体、アフィマー(affirmer)
およびアプタマーからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項13】
前記第2の認識部分が、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス、真菌、寄生虫
、芽胞、核酸、またはタンパク質に結合する部分である、請求項1から12のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の認識部分が、ポリマー、金属または金属酸化物材料とコンジュゲートした、
抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体、アフィマー(affirmer)およびアプタマーからなる
群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、環境試料または生体試料である、請求項1から14のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項16】
前記生体試料が、血液、血清、血漿、尿、痰、糞便、鼻もしくは膣スワブ、涙、脳脊髄
液、心膜液、眼内液、嚢胞液、または唾液である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
試料中の分析物の存在または量を判定する方法であって、
分析物を結合するための1つまたは複数の第1の認識部位を有する捕捉試薬を有するバイ
オセンサーに試料を塗布するステップであって、前記捕捉試薬は前記バイオセンサー上に
固定化されている、ステップと、
信号増幅材料を導入するステップであって、ポリマーまたは金属材料は、前記分析物を結
合するための1つまたは複数の第2の認識部位を有する、ステップと、
分析物が前記信号増幅材料に結合した結果としての、バイオセンサー信号の振幅、位相、
または周波数の変化を測定する、ステップと、を含む方法。
【請求項18】
圧電基材と、
捕捉試薬であって、前記捕捉試薬は前記圧電基材上に固定化されており、捕捉剤は分析
物に対する第1の認識部位を有する、捕捉試薬と、
前記分析物に対する第2の認識部位を有する信号増幅材料と、
を有する、バイオセンサー部品。
【請求項19】
前記捕捉試薬を前記圧電基材に付着させるアンカー物質をさらに含む、請求項18に記
載のバイオセンサー部品。
【請求項20】
前記圧電基材が、アルミニウム(Al)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタ
ル酸リチウム(LiTaO3)、二酸化ケイ素(SiO2)、およびホウケイ酸塩からなる
群から選択される、請求項18または19に記載のバイオセンサー。
【請求項21】
前記アンカー物質が、シラン基またはチオール基を介して前記圧電基材の前記表面に結
合している、請求項19または20に記載のバイオセンサー部品。
【請求項22】
前記アンカー物質が、アビジン、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドから選
択されるリンカータンパク質を含む、請求項19から21のいずれか一項に記載のバイオ
センサー部品。
【請求項23】
前記リンカータンパク質が、ニュートラアビジン、天然アビジン、ストレプトアビジン
、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアビジンである、請求項22に
記載のバイオセンサー部品。
【請求項24】
前記捕捉試薬が、前記アンカー物質の前記リンカータンパク質に結合するためのビオチ
ン部分を含む、請求項18から23のいずれか一項に記載のバイオセンサー部品。
【請求項25】
前記第1の認識部位が、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス、真菌、寄生虫
、芽胞、核酸、またはタンパク質に結合するように構成されている、請求項18から24
のいずれか一項に記載のバイオセンサー部品。
【請求項26】
弾性波トランスデューサをさらに備える、請求項18から25のいずれか一項に記載の
バイオセンサー部品。
【請求項27】
弾性波トランスデューサが、バルク弾性波を生成する、請求項26に記載のバイオセン
サー部品。
【請求項28】
前記バルク弾性波が、厚みすべりモード、音響プレートモード、および水平プレートモ
ードからなる群から選択される、請求項27に記載のバイオセンサー部品。
【請求項29】
フィルムバルク弾性波共振器ベース(FBARベース)のデバイスである、請求項1か
ら28のいずれか一項に記載のバイオセンサー部品。
【請求項30】
前記弾性波トランスデューサが、弾性表面波を生成する、請求項26に記載のバイオセ
ンサー部品。
【請求項31】
前記弾性表面波が、横波型弾性表面波、表面横波、レイリー波、およびラブ波からなる
群から選択される、請求項30に記載のバイオセンサー部品。
【請求項32】
請求項18から31のいずれか一項に記載のバイオセンサー部品を含むバルク波共振器
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月11日出願の米国仮特許出願第62/531,238号の優
先権の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、タンパク質、細胞、および核酸を含む標的分析物を含む試験試料を
分析するためのデバイスおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、分析物結合から
の信号の変調または増幅に関し、本明細書で開示されたプラットフォーム技術は、高感度
および高い選択性を備えた様々なバイオセンサーの開発に好適である。
【背景技術】
【0003】
弾性波センサーは、摂動(例えば、振幅、周波数、位相、時間遅延などの変化)に敏感
な材料を通過する機械波または弾性波のそのような摂動の検出に基づく検出機構を使用す
る。弾性波が弾性波センサー材料の表面にわたってまたは表面上で伝播するとき、センサ
ー材料の物理的または化学的特性の変化(例えば、波路における分析物の質量および/ま
たは粘度変化などを含む)により、弾性表面波またはバルク弾性波の速度および/または
振幅に影響を与える場合がある。これらの変化を検出し、それらの表面にある対応する量
と相関させ、次いで測定して、センサー材料内/上にある分析物の物理的/化学的特性を
感知/検出することができる。残念ながら、標的分子とセンサー表面との間の結合は弱い
場合があり、従来の弾性波センサーは多くの場合感度が不足し、標的が提示されると効率
的に動作しない。したがって、当技術分野において、弾性波センサー信号の検出感度およ
び選択性を高めるデバイスおよび方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は、バイオセンサーにおいて信号を増幅する方法であって、捕捉試
薬を有するバイオセンサーに試料を塗布するステップであって、捕捉試薬は、分析物を結
合するための1つまたは複数の第1の認識部分を含み、捕捉試薬はバイオセンサー上に固
定化されている、ステップと;信号増幅材料を導入するステップであって、信号増幅材料
は、分析物に結合するための1つまたは複数の第2の認識部分を有する、ステップと、を
含む方法を提供する。
【0005】
一実施形態では、信号増幅材料は、ポリマー、金属、または金属酸化物である。
【0006】
一実施形態では、信号増幅材料は、ポリスチレンである。
【0007】
一実施形態では、信号増幅材料は、種々の材料のビーズの形態である。
【0008】
一実施形態では、ビーズは、約1nm~約100μmの範囲の平均直径を有する。
【0009】
一実施形態では、信号増幅材料は、分析物がバイオセンサーに結合した後に導入される
。
【0010】
一実施形態では、信号増幅材料は、分析物がバイオセンサーに結合する前に導入される
。
【0011】
一実施形態では、この方法は、試料をバイオセンサーに塗布する前に、ベースレベル信
号を測定するステップを含む。
【0012】
一実施形態では、この方法は、信号増幅材料が分析物に結合した後に、試験レベル信号
を測定するステップを含む。
【0013】
一実施形態では、この方法は、ベースレベル信号を試験レベル信号と比較して、試料中
の分析物の存在を判定するステップを含む。
【0014】
一実施形態では、第1の認識部分は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス、
真菌、寄生虫、芽胞、核酸、小分子またはタンパク質に結合する部分である。
【0015】
一実施形態では、第1の認識部分は、抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体、アフィマー
(affirmer)およびアプタマーからなる群から選択される。
【0016】
一実施形態では、第2の認識部分は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス、
真菌、寄生虫、芽胞、核酸、またはタンパク質に結合する部分である。
【0017】
一実施形態では、第2の認識部分は、ポリマー、金属または金属酸化物材料とコンジュ
ゲートした、抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体、アフィマー(affirmer)およびアプタ
マーからなる群から選択される。
【0018】
一実施形態では、試料は、環境試料または生体試料である。
【0019】
一実施形態では、生体試料は、血液、血清、血漿、尿、痰、糞便、鼻もしくは膣スワブ
、涙、脳脊髄液、心膜液、眼内液、嚢胞液、または唾液である。
【0020】
一態様では、本開示は、試料中の分析物の存在または量を判定する方法であって、分析
物を結合するための1つまたは複数の第1の認識部位を有する捕捉試薬を有するバイオセ
ンサーに試料を塗布するステップであって、捕捉試薬はバイオセンサー上に固定化されて
いる、ステップと;信号増幅材料を導入するステップであって、ポリマーまたは金属材料
は、分析物を結合するための1つまたは複数の第2の認識部位を有する、ステップと、分
析物が信号増幅材料に結合した結果としての、バイオセンサー信号の振幅、位相、または
周波数の変化を測定する、ステップと、を含む方法を提供する。
【0021】
一態様では、本開示は、圧電基材と;捕捉試薬であって、捕捉試薬は圧電基材上に固定
化されており、捕捉剤は分析物に対する第1の認識部位を有する、捕捉試薬と、分析物に
対する第2の認識部位を有する信号増幅材料と、を有する、バイオセンサー部品を提供す
る。
【0022】
一実施形態では、バイオセンサーは、捕捉試薬を圧電基材に付着させるアンカー物質を
さらに含む。
【0023】
一実施形態では、圧電基材は、アルミニウム(Al)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、二酸化ケイ素(SiO2)、およびホウケイ
酸塩からなる群から選択される。
【0024】
一実施形態では、アンカー物質は、シラン基またはチオール基を介して圧電基材の表面
に結合する。
【0025】
一実施形態では、アンカー物質は、アビジン、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレ
オチドから選択されるリンカータンパク質を含む。
【0026】
一実施形態では、リンカータンパク質は、ニュートラアビジン、天然アビジン、ストレ
プトアビジン、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアビジンである。
【0027】
一実施形態では、捕捉試薬は、アンカー物質のリンカータンパク質に結合するためのビ
オチン部分を含む。
【0028】
一実施形態では、第1の認識部位は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス、
真菌、寄生虫、芽胞、核酸、またはタンパク質に結合するように構成されている。
【0029】
一実施形態では、バイオセンサー部品は、弾性波トランスデューサをさらに備える。
【0030】
一実施形態では、弾性波トランスデューサは、バルク弾性波を生成する。
【0031】
一実施形態では、バルク弾性波は、厚みすべりモード、音響プレートモード、および水
平プレートモードからなる群から選択される。
【0032】
一実施形態では、バイオセンサー部品は、フィルムバルク弾性波共振器ベース(FBA
Rベース)のデバイスである。
【0033】
一実施形態では、弾性波トランスデューサは、弾性表面波を生成する。
【0034】
一実施形態では、弾性表面波は、横波型弾性表面波、表面横波、レイリー波、およびラ
ブ波からなる群から選択される。
【0035】
一態様では、本開示は、前述のいずれか1つのバイオセンサー部品を含むバルク波共振
器を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態は、捕捉試薬を有するバイオセンサーに試料を塗布するステップで
あって、捕捉試薬は、分析物を結合するための1つまたは複数の第1の認識部分を含み、
捕捉試薬はバイオセンサー上に固定化されている、ステップと;信号増幅材料を導入する
ステップであって、信号増幅材料は、分析物に結合するための1つまたは複数の第2の認
識部分を有する、ステップと、を含む、バイオセンサーへの信号を増幅する方法に関する
。
【0037】
いくつかの実施形態は、分析物の存在または量を判定する方法であって、分析物を結合
するための1つまたは複数の第1の認識部位を有する捕捉試薬を有するバイオセンサーに
試料を塗布するステップであって、捕捉試薬はバイオセンサー上に固定化されている、ス
テップと;信号増幅材料を導入するステップであって、ポリマーまたは金属材料は、分析
物の異なる部分で分析物を結合するための1つまたは複数の第2の認識部位を有する、ス
テップと、分析物が信号増幅材料に結合した結果としての、バイオセンサー信号の振幅、
位相、または周波数の変化を測定する、ステップと、を含む方法に関する。
【0038】
いくつかの実施形態は、圧電基材と;捕捉試薬であって、捕捉試薬は圧電基材上に固定
化されており、捕捉剤は分析物に対する第1の認識部位を有する、捕捉試薬と、分析物に
対する第2の認識部位を有する信号増幅材料と、を有する、バイオセンサー部品に関する
。
【0039】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載のバイオセンサー部品を含むバルク波共振器に
関する。
【0040】
特定の用語
以下の用語は、下記でそれらに与えられた意味を有するものとする。
【0041】
「アンカー物質」とは、(i)圧電基材(「直接」結合用)またはセンサー表面の金属
部分またはその上の中間コーティングと、(ii)「捕捉試薬」(以下で定義する)との
両方に結合するコーティング材料を指す。この用語には、アビジンであって、特異的結合
パートナーとして機能するビオチンに結合する能力によって機能的に定義されたタンパク
質ファミリーのメンバーであるもの(すなわち、アビジン、ストレプトアビジン、ニュー
トラアビジン)、ならびに、特異的親和性結合パートナーを有するオリゴヌクレオチドお
よびポリヌクレオチドおよびタンパク質であって、これらを使用して、捕捉試薬を改変し
、したがって捕捉試薬をアンカーコーティング圧電/センサー材料に結合させることがで
きるもの、が含まれる。また、例えば、抗体および抗体断片(Fe断片)ならびに単一ド
メイン抗体およびアプタマーなどのヌクレオチド断片における、炭水化物群に結合する天
然の炭水化物結合レクチンも含まれる。試験の精度に影響を与える立体配座の変化または
捕捉試薬の部分的な変性のリスクがあるため、一般に、捕捉試薬をアンカーとして使用す
ることは好ましくない。オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、イオン交換法に
より直接に、または適用された中間の銀コーティングを介し、イオンまたは双極子部位を
介して、圧電材料に結合することができる。それらの特異的結合パートナーは相補的ヌク
レオチド分子であり、それらは捕捉試薬を改変するために使用することができる。
【0042】
「捕捉試薬」とは、生体試料中の分析物に特異的に結合し、生体試料からの分析物を捕
捉することにより、分析物を識別および/または定量するために使用することができる物
質を意味する。この用語には、抗体、アプタマー、およびそれらの抗体断片が含まれるが
、これらに限定されない。捕捉試薬は、アンカー物質の特異的結合パートナーであるリン
キング基による改変(例えば、ビオチン化または相補的核酸)の有無にかかわらず、アン
カー物質に結合する。換言すれば、捕捉試薬は、アンカー物質の特異的結合パートナーで
あるかまたはそれを含み、同時に特異的に分析物を認識する。
【0043】
基質表面へアンカー物質を結合するのに適用される「直接的」または「直接に」とは、
基材表面上に中間コーティングが付与されずに、基質表面に結合することを意味する。基
材表面は、たとえばプラズマ、紫外線照射の適用によって、または表面上の金属イオンを
置換するが圧電表面上の表面金属イオンに中間材料の追加層を堆積させない、銀イオンの
イオン交換堆積によって、改質してもよい。
【0044】
「有機小分子」とは、約10ダルトン超約2500ダルトン未満、好ましくは約200
0ダルトン未満、好ましくは約10~約1000ダルトンの間、より好ましくは約10~
約500ダルトンの間の分子量を有する、天然または合成のいずれかの有機分子を指す。
【0045】
本明細書で提供される範囲は、範囲内のすべての値の略記であると理解される。例えば
、1~50の範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、
27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、4
0、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50を含む群の任
意の数、数の組合せ、または部分範囲、ならびに前述の整数の間にあるすべての小数、例
えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.
9が含まれると理解される。部分範囲に関しては、範囲のいずれかの端点から延びる「入
れ子になった部分範囲」が特に考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子に
なった部分範囲は、ある方向に1~10、1~20、1~30、および1~40、または
他の方向に50~40、50~30、50~20、および50~10を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】ビオチン化ビーズの結合に対する、チオール化ニュートラアビジン修飾表面弾性波センサー(SAW)の応答を示す。
図1Aは、チオール化ニュートラアビジン修飾表面のビオチン化ポリスチレンビーズへの結合スキームを示し;
図1Bは、ポリスチレンビーズのSAWセンサーへの結合によって誘発された質量誘発周波数シフトを示し;
図1Cは、デバイスを洗浄して過剰のビオチン化ポリスチレンビーズを除去した後の蛍光顕微鏡法を示し;
図1Dは、異なるビーズ希釈による周波数シフトを示す。
【
図2】SAWデバイスのアルミニウム表面上での質量増幅による、分析物の捕捉および検出強化のための、例示的な親和性ベースの/ナノ粒子戦略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、少なくとも部分的に、信号増幅材料(例えば、ポリペプチド、タンパク質、
タンパク質複合体、ビーズ、ポリスチレンビーズなど)が、標的分析物またはバイオセン
サー表面に適用された二次抗体(例えば、結合活性を有する抗体、抗体断片、ポリヌクレ
オチド、ポリペプチドなど)に直接結合またはコンジュゲートされ得るという発見に基づ
いている。信号増幅材料は、標的分析物に直接結合またはコンジュゲートされてもよく、
または(例えば、増幅材料の積層を作成するために)、信号増幅材料の第2の層に結合ま
たはコンジュゲートされてもよい。本明細書の信号増幅材料および技術は、SAWセンサ
ーの質量負荷または粘度変化を増加させることにより、信号感度と選択性の両方を高める
ことによって、従来技術の方法を上回る大きな利点を提供する。
【0048】
バイオセンサー部品
いくつかの実施形態は、圧電基材と;捕捉試薬であって、捕捉試薬は圧電基材上に固定
化されており、捕捉剤は、分析物に対する第1の認識部位を有する、捕捉試薬と、分析物
に対する第2の認識部位を有する信号増幅材料と、を含む、バイオセンサー部品に関する
。
【0049】
センサーの表面は、金属層(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、金、銀、
チタン、クロム、白金、タングステンなど)であっても圧電結晶材料上に堆積された金属
表面を有していなくてもよい。いくつかの実施形態では、センサーの表面は、圧電結晶材
料上に堆積した金属層(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金)であり得る。い
くつかの実施形態では、センサーのセクションは、結晶と交互に金属コーティングを含ん
でいても、または誘電体材料層で覆われていてもよい。いくつかの実施形態では、誘電体
層はポリマーまたはセラミック層であり得る。いくつかの実施形態では、誘電体層は、S
iO2、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、酸化亜鉛、または窒化アルミニウム
を含むことができる。いくつかの実施形態では、誘電体層は、金、チタン、白金などの金
属からなってもよい。いくつかの実施形態では、好適な結晶を種々の結晶カットとともに
使用することができる。いくつかの実施形態では、センサーのセクションは、圧電基材上
に堆積した誘電体層を含み得る。いくつかの実施形態では、センサーのセクションは、金
属層上に堆積した誘電体層を含んでもよく、さらに金属層は圧電基材上に堆積している。
いくつかの実施形態では、センサーのセクションは、誘電体層上に堆積した金属層を含ん
でもよく、さらに誘電体層は金属層上に堆積している。いくつかの実施形態では、センサ
ーのセクションは、誘電体層上に堆積した第1の金属層を含んでもよく、さらに誘電体層
は第2の金属層上に堆積しており、さらに第2の金属層は圧電基材上に堆積している。標
的分析物の検出のためのSAWおよびバルク弾性波(「BAW」)センサーの使用に関す
るすべての好適なアプローチは、本明細書に記載の好適なコーティングでセンサー表面を
修飾する能力に基づくことができる。生体分子の検出のために、センサー表面は、所望の
標的分析物を選択的に捕捉することができる好適な材料で固定化または改変することがで
きる。
【0050】
圧電表面は、任意の好適な圧電材料で製造することができる。いくつかの実施形態では
、圧電基材は、水晶、ニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウム、36°Y水晶、36
°YXタンタル酸リチウム、ランガサイト、ランガテート、ランガナイト、チタン酸ジル
コン酸鉛、硫化カドミウム、ベルリナイト、ヨウ素酸リチウム、四ホウ酸リチウム、酸化
ビスマスゲルマニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ガリウムからなる群から選択
される。いくつかの実施形態では、圧電基材は、アルミニウム(Al)、金(Au)、A
l合金、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される金属材料でコーティング
されている。いくつかの実施形態では、圧電基材はアルミニウムでコーティングされてい
る。いくつかの実施形態では、圧電基材はAl合金でコーティングされている。いくつか
の実施形態では、金属は、アルミニウム(Al)、金(Au)、アルミニウム合金、銀、
チタン、クロム、白金、タングステン、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択
される。いくつかの実施形態では、誘電体層はポリマーまたはセラミック層であり得る。
いくつかの実施形態では、誘電体層は、SiO2、ポリ(メチルメタクリレート)(PM
MA)、酸化亜鉛、または窒化アルミニウムを含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のバイオセンサー部品は、捕捉試薬を圧電基
材に付着させるアンカー物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、アンカー物質は、
シラン基またはチオール基を介して圧電基材の表面に結合する。
【0052】
いくつかの実施形態では、リンカータンパク質は、アビジン、オリゴヌクレオチド、ま
たはポリヌクレオチドである。
【0053】
いくつかの実施形態では、リンカータンパク質は、ニュートラアビジン、天然アビジン
、ストレプトアビジン、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアビジン
である。
【0054】
捕捉試薬は、以下の、ビオチン化オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸、(Pon, R
ichard T. (1991). "A long chain biotin phosphoramidate reagent for the automated
synthesis of 5'-biotinylated oligonucleotides". Tetrahedron Letters 32 (14): 17
15-1718)、タンパク質、ペプチド、およびIgA、IgG、IgM、IgEを含む抗体
、酵素、酵素補因子、酵素阻害剤、膜受容体、キナーゼ、プロテインA、ポリU、ポリA
、ポリリジン受容体、多糖、キレート剤、炭水化物および糖のいずれかから形成された、
抗体またはアプタマーまたは他の特定のリガンドまたは受容体であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、アンカー物質の結合タンパク質に結合するため
のビオチン部分を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウイルス
、真菌、寄生虫、芽胞、核酸、抗体、タンパク質または小分子に結合するための部分を含
む。いくつかの実施形態では、部分は、抗体、タンパク質断片、ペプチド、ポリペプチド
、アフィマー、抗体断片、単一ドメイン抗体、アプタマーまたはヌクレオチドからなる群
から選択される。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、抗体であり得る。いくつかの実
施形態では、捕捉試薬は、アフィマーまたはアプタマーまたはキレート剤であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、表面改質は、捕捉剤を固定化するために使用される1つまた
は複数の官能基を有する結合成分を含む。いくつかの実施形態では、表面改質は、N-ヒ
ドロキシスクシンイミド(NHS)、スルホ-NHS、エポキシ、カルボン酸、カルボニ
ル、マレイミドおよびアミンからなる群から選択される1つまたは複数の官能基を有する
。
【0058】
いくつかの実施形態では、分析物は、ジカ(Zika)ウイルスの断片であり得る。いくつ
かの実施形態では、分析物は、ジカウイルスのEタンパク質であり得る。
【0059】
例示された検出方法のいくつかは、捕捉分子として付着した抗体を有する表面として示
されている。しかし、方法は、抗体に限定されなくてもよく、センサー表面上にタンパク
質断片、アフィマー、抗体断片、アプタマーまたはヌクレオチドを含むがこれらに限定さ
れない他の捕捉剤を固定化するように適合させることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第2の認識部位は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウ
イルス、真菌、寄生虫、芽胞、核酸、小分子、またはタンパク質に結合するように構成さ
れている。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のバイオセンサー部品は、弾性波トランスデ
ューサをさらに備える。いくつかの実施形態では、弾性波トランスデューサは、BAWを
生成する。
【0062】
いくつかの実施形態では、バルク弾性波は、厚みすべりモード、音響プレートモード、
および水平プレートモードからなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、バイオセンサー部品は、フィルムバルク弾性波共振器ベース
(FBARベース)のデバイスである。
【0064】
いくつかの実施形態では、弾性波トランスデューサは、弾性表面波を生成する。
【0065】
いくつかの実施形態では、SAWは、横波型弾性表面波、表面横波、レイリー波、およ
びラブ波からなる群から選択される。
【0066】
バルク弾性波共振器
バルク弾性波(BAW)共振器は、2つの電極の間に挟まれた少なくとも1つの圧電材
料で構成されるデバイスである。電極は、圧電材料に交番電界を印加して、これにより、
応力が発生し、BAWが生成される。設計によっては、1つまたは複数の音響インピーダ
ンスの高い層と低い層を付加して、ブラッグ反射器を作製するか、またはこれらの層を懸
架してもよい。BAW共振器には、複数の層、例えば、圧電基材(AlN、PZT、水晶
、LiNbO3、ランガサイトなど)、電極(金、アルミニウム、銅など)、ブラッグ反
射器(高音響インピーダンスまたは低音響インピーダンス材料)、分析物を捕捉するため
の層(生物活性層、抗体、抗原、ガス感受性層、パラジウムなど)、および弾性波を伝播
することができる任意の材料を含めることができる。BAWセンサーは、本明細書に記載
の種々の層の混合物であり得る。感知層(分析物を捕捉する層)は、電極(A)と直接接
触してもよく、またはブラッグ反射器上にあってもよく、または弾性波を伝播することが
できる任意の材料上にあってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載のバイオセンサー部品を含むBAW共振器に関
する。液体またはガスセンシング用のBAWセンサーの構築は、BAWセンサーの表面と
直接相互作用するものはすべて、その共振周波数を変更するという原則に基づいている。
共振周波数(測定または位相周波数)をトラッキングおよびデコードすることにより、セ
ンサーの表面に付着した粒子の質量負荷および粘度を測定することができる。
【0068】
バイオコーティング法
いくつかの実施形態は、材料の表面を生物活性フィルムでコーティングするプロセスで
あって、アンカー物質を含む第1の組成物を金属材料の表面に塗布して、表面上に単層を
形成するステップであって、アンカー物質は、結合タンパク質および少なくとも1つの硫
黄を有する官能基を含む、ステップ、および/またはビオチン化捕捉試薬を含む第2の組
成物をアンカー物質の単層に塗布するステップであって、ビオチン化捕捉試薬は、結合タ
ンパク質を介してアンカー物質に結合して、ビオチン化捕捉試薬の層を形成する、ステッ
プとによる、プロセスに関する。
【0069】
いくつかの実施形態は、金属表面を生物活性フィルムでコーティングするプロセスであ
って、アンカー物質を含む第1の組成物をアルミニウム、金、二酸化ケイ素またはPMM
A表面に塗布して、センサー表面上に単層を形成するステップであって、アンカー物質は
、結合タンパク質およびチオール官能基を含む、ステップ、および/またはビオチン化捕
捉試薬を含む第2の組成物をアンカー物質の単層に塗布するステップであって、ビオチン
化捕捉試薬は、結合タンパク質を介してアンカー物質に結合し、ビオチン化捕捉試薬の層
を形成する、ステップによる、プロセスに関する。
【0070】
いくつかの実施形態は、圧電材料の表面をバイオフィルムでコーティングするプロセス
であって、バイオフィルムは、アンカー物質の特異的結合パートナーを含むかまたは構成
する捕捉試薬に結合する特性を有するアンカー物質を含み、このプロセスは、圧電材料の
基材表面を処理して基材表面を活性化するステップと、アンカー物質の層を圧電基材の活
性化表面に直接付与するステップと、を含む、プロセスに関する。
【0071】
いくつかの実施形態では、この方法は、分析物に結合するための1つまたは複数の認識
部位を有する信号増幅材料を導入するステップを含む。
【0072】
いくつかの実施形態は、アルミニウム表面をバイオフィルムでコーティングするプロセ
スであって、バイオフィルムは、アンカー物質の特異的結合パートナーを含むかまたは構
成する捕捉試薬に結合する特性を有するアンカー物質を含み、このプロセスは、アンカー
物質の層を処理アルミニウム表面に付与して、圧電表面上にアンカー層を形成するステッ
プを含み、アンカー物質は、チオール官能基を含む、プロセスを提供する。
【0073】
いくつかの実施形態は、生体液試料中の分析物の存在または量を判定する方法であって
、前述のバイオセンサー部品を、捕捉試薬を含む組成物と接触させるステップであって、
捕捉試薬は、アンカー物質に対する特異的結合パートナーを含むか、または構成し、また
分析物を特異的に認識する、ステップと、捕捉試薬をアンカー物質に結合させ、捕捉試薬
層を形成させ、結合させた捕捉試薬層を生体液試料と接触させ、これにより信号増幅材料
を分析物に結合させ、圧電表面にわたって/全体に弾性波を生成させるステップと、分析
物が捕捉試薬層に結合した結果としての、波の振幅、位相、時間遅延、または周波数の変
化を測定するステップと、を含む方法を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、アンカー物質の表面を活性化する
ステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、アンカー物質の表面を活性化するステ
ップは、プラズマ洗浄を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、直接コーティングである。いくつ
かの実施形態では、コーティングは、数時間ではなく数秒または数分で実行される単純で
迅速なコーティング化学を含む。直接コーティングは、物質の単層を配置するために精度
と能力を必要とする、インクジェット印刷などの、スケーラブルで連続的な、最小限のオ
ペレーターの介入で簡単に自動化されるインライン方式を使用して製造され得る。これは
、リジェクトの数が少なく、有害廃棄物の発生量がより少ない。このコーティング方法は
、材料の中間層なしで、圧電表面上にアンカー物質を直接堆積させる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の調製方法は、圧電基材表面を洗浄するステ
ップを含む。洗浄ステップは、酸処理、紫外線曝露、および反応性の高い種の生成を介し
て圧電基材の表面上のすべての有機汚染物質を実質的に除去することができるプラズマ処
理の種々の方法を含むが、これらに限定されない複数の方法によって達成することができ
る。いくつかの実施形態では、調製方法は、プラズマ洗浄するステップを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、アンカー物質の表面を活性化する
ステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、アンカー物質の表面を活性化するステ
ップは、酸素または酸素/アルゴン混合物を使用して表面を処理することを含むプラズマ
洗浄を含む。プラズマ洗浄は、1~10分間、1~20分間、1~30分間、または1~
60分間続く可能性がある。プラズマ洗浄は、1分、5分、10分、20分、30分、4
0分、50分、60分、1.5時間、2時間、3時間、または4時間より長く続く可能性
がある。いくつかの実施形態では、プラズマ洗浄は、5分、10分、20分、30分、4
0分、50分、60分、1.5時間、2時間、3時間、または4時間未満続く。いくつか
の実施形態では、プラズマ洗浄は、50~150KHz、50~200ワットでの処理を
含む。
【0078】
アビジンは、鳥類、爬虫類および両生類などの卵白に由来するタンパク質であり、多く
の生化学反応において使用されている。アビジンファミリーには、ニュートラアビジン、
ストレプトアビジンおよびアビジンが含まれ、これらすべてのタンパク質は、ビオチンを
高い親和性および特異性で結合する能力によって機能的に定義される。アビジンには、ス
トレプトアビジンなどの細菌アビジン、およびニュートラアビジンなどの改変アビジンも
含まれる(例えば、Thermo Scientific製の脱グリコシル化アビジン)
。それらは小さなオリゴマータンパク質であり、それぞれ4つ(または2つ)の同一のサ
ブユニットを含み、各サブユニットはビオチンのための単一の結合部位を有する。本開示
においてバイオセンサーの表面に結合する場合、いくつかの部位は金属コーティング圧電
材料表面に面していることがあり、したがってビオチン結合には利用することができない
。他のいくつかの部位は、圧電材料から離れて面しており、したがってビオチン結合に利
用することができる。アビジンのビオチンへの結合親和性は、非共有結合ではあるが、非
常に高いため、不可逆的と見なすことができる。アビジンの解離定数(KD)は約10-
15Mであり、したがってこの結合は最も強力な既知の非共有結合の1つとなっている。
その四量体形態では、アビジンは66~69kDaのサイズであると推定される。分子量
の10パーセントは、4~5つのマンノースと3つのN-アセチルグルコサミン残基で構
成される炭水化物含有量に起因する。アビジンの炭水化物部分には、構造および組成が類
似した少なくとも3つの固有のオリゴ糖構造タイプが含まれている。
【0079】
ビオチンは、d-ビオチンまたはビタミンH、ビタミンB7、およびコエンザイムRと
も呼ばれ、アビジンの特異的結合パートナーである。Sigma-Aldrichを含む
複数の供給元から市販されている。
【0080】
本明細書に記載のバイオセンサー技術により、高精度および高感度の生物学的センシン
グのための音響法の使用が可能になる。本明細書に記載の技術を使用して、生物学的感受
性薬剤を、音響透過性材料の表面に適合させて、結合することができ、これは検出用途の
ための音響法の使用をさらに拡大するのに役立つ。いくつかの実施形態は、標的分析物の
バイオセンサーへの結合から生成される信号を増強し、バイオセンサーの感度を何倍も高
めるための信号増幅材料の使用に関する。
【0081】
SAWセンサーの本質的な感度は高い可能性があり、様々な生物学的分析物の検出は、
ナノグラムからピコグラムまでの範囲、場合によってはフェムトグラムの範囲にもなり得
る。しかし、一部のSAWバイオセンサーの感度は、高ピコモル範囲の通常の生物学的分
析物の検出に、およびまた生体液中の感染粒子の数が少ない可能性のある細菌またはウイ
ルス感染の検出に不十分な場合がある。さらに、生体液の体積も限られているため、感度
の低い検出方法は、多くの場合適用できない。
【0082】
本明細書に記載の検出および定量化方法は、高ピコモルから低ピコモルまでの範囲の生
物学的分析物を検出するのに十分な感度を有し得る。本明細書に記載の技術によって、生
体液中の感染粒子の数が少ない(すなわち、<10粒子/mL)細菌感染またはウイルス
感染の検出も可能になり得る。加えて、本明細書に記載の検出方法の増強された感度によ
って、生体液の体積も制限されている場合(例えば、10~250マイクロリットル)に
も使用することができる。
【0083】
信号を増幅する方法
いくつかの実施形態は、バイオセンサーへの信号を増幅する方法に関する。この方法は
、(i)分析物を結合するための1つまたは複数の第1の認識部分を有する捕捉試薬を有
するバイオセンサーに試料を塗布するステップと、(ii)バイオセンサーに信号増幅材
料を導入するステップと、を含んでもよい。捕捉試薬は、アンカー物質(例えば、アビジ
ン、抗体、抗体断片、ポリペプチドなど)を介してバイオセンサー上に固定化されている
。試料がバイオセンサーに曝露されると、試料中の分析物がバイオセンサーの表面上の捕
捉試薬に結合する。信号増幅材料には、表面結合部分の質量を増加させることができる材
料が含まれる。信号増幅材料の例としては、生体分子、高分子材料、または金属もしくは
金属酸化物材料を挙げてもよい。信号増幅材料は、理想的には、バイオセンサー上の捕捉
試薬に結合していない分析物に結合するように構成された1つの認識部分も有する。
【0084】
信号増幅材料の結合により、表面に結合した分析物に質量が加えられ、これにより、バ
イオセンサー信号の振幅および感度が増加する。いくつかの実施形態では、信号増幅材料
は、生体分子、ポリマーまたは金属もしくは金属酸化物材料である。いくつかの実施形態
では、信号増幅材料は粒子の形態であり得る。いくつかの実施形態では、信号増幅材料は
金属材料であり得る。いくつかの実施形態では、信号増幅材料は金属または金属酸化物粒
子であり得る。いくつかの実施形態では、金属材料は、Au、Pd、またはPtであり得
る。いくつかの実施形態では、信号増幅材料は、SiO2および酸化鉄などの酸化物材料
、ならびに量子ドットであり得る。いくつかの実施形態では、信号増幅材料はポリマー粒
子である。いくつかの実施形態では、粒子は、ポリマーまたは規定されたサイズおよび質
量を備えたそのような材料で構成されたビーズの形態であり得る。いくつかの実施形態で
は、信号増幅材料はポリスチレンである。いくつかの実施形態では、信号増幅材料は、1
つまたは複数の蛍光染料を含むポリスチレンである。いくつかの実施形態では、信号増幅
材料は、メラミン樹脂(MF)、ポリスチレン(PS)、ポリジビニルベンゼン(PDV
B)、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)であり得る。いくつかの実施形態で
は、信号拡大材料は、1つまたは複数の蛍光染料を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、信号増幅材料はビーズの形態の粒子である。いくつかの実施
形態では、粒子は約1nm~約100μmまたは約10nm~100nmの範囲の平均直
径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、約10nm~約500nm、約100n
m~約400nm、約100nm~約300nm、約100nm~約250nm、約15
0nm~約250nm、約170nm~約230nmの範囲の平均直径を有する。いくつ
かの実施形態では、粒子は、約1nm超、約5nm超、約10nm超、約50nm超、約
75nm超、約100nm超、約150nm超、約200nm超、または約300nm超
の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、約250nm未満、約300n
m未満、約400nm未満、または約500nm未満の平均直径を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、約1フェムトグラム(fg)超、約2fg
超、約5fg超、約10fg超、約15fg超、約20fg超、約50fg超、約75f
g超、約100fg超、または約200fg超の質量を有し得る。いくつかの実施形態で
は、ポリマー粒子は、約5fg未満、約10fg未満、約50fg未満、約75fg未満
、約100fg未満、約200fg未満、または約500fg未満の質量を有し得る。い
くつかの実施形態では、ポリマー粒子は、1fg~約20fg、約1fg~約100fg
、約1fg~約500fg、約10fg~約100fg、約10fg~約500fg、約
50fg~約250fg、約50fg~約800fg、または約100fg~約1fgの
範囲の質量を有し得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、信号増幅材料は、分析物がバイオセンサーに結合した後に導
入される。いくつかの実施形態では、信号増幅材料は測定中に分析物とともに導入される
。いくつかの実施形態では、増幅材料は、分析物と予混合し、その後、測定中にセンサー
の表面に塗布する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、試料をバイオセンサーに塗布する
前に、ベースレベル信号を測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、本明細書
に記載の方法は、信号増幅材料が分析物に結合した後に、試験レベル信号を測定するステ
ップを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ベースレベル信号を試
験レベル信号と比較して、試料中の分析物の濃度を判定するステップを含む。いくつかの
実施形態では、本明細書に記載の方法は、ベースレベル信号を試験レベル信号と比較して
、試料中の分析物の存在を判定するステップを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、試験レベル信号と標準曲線とを比
較して、試料中の分析物の濃度を判定するステップを含む。特定の信号増幅材料の標準曲
線は、信号増幅材料の異なる数または濃度で周波数、位相シフトまたは周波数もしくは位
相シフトの変化率を測定およびプロットすることにより作成することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1の認識部分は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウ
イルス、真菌、寄生虫、芽胞、核酸、ペプチド、またはタンパク質および小分子に結合す
る部分である。いくつかの実施形態では、第1の認識部分は、リガンド、抗体(全体、断
片または単一ドメイン)、アフィマー、およびアプタマーからなる群から選択することが
できる。
【0091】
いくつかの実施形態では、第2の認識部分は、全細胞、細菌、真核細胞、腫瘍細胞、ウ
イルス、真菌、寄生虫、芽胞、核酸、ペプチド、またはタンパク質または小分子に結合す
る部分である。いくつかの実施形態では、第2の認識部分は、抗体、抗体断片、単一ドメ
イン抗体、アフィマー(affirmer)およびアプタマーからなる群から選択することができ
る。いくつかの実施形態では、第2の認識部分は、信号増幅材料(例えば、ポリマー、金
属または金属酸化物材料)とコンジュゲートしている。
【0092】
いくつかの実施形態では、試料は、環境試料または生体試料である。いくつかの実施形
態では、生体試料は、血液、血清、血漿、尿、鼻もしくは膣スワブ、痰、糞便、涙、脳脊
髄液、心膜液、眼内液、嚢胞液、または唾液である。
【0093】
いくつかの実施形態は、試料中の分析物の存在または量を判定する方法に関する。この
方法は、分析物を結合するための1つまたは複数の第1の認識部位を有する捕捉試薬を有
するバイオセンサーに試料を塗布するステップであって、捕捉試薬はバイオセンサー上に
固定化されている、ステップと、信号増幅材料を導入するステップであって、アフィマー
または抗体またはリガンドと連結したポリマーまたは金属もしくは金属酸化物は、分析物
を結合するための1つまたは複数の第2の認識部位を有する、ステップと、分析物が信号
増幅材料に結合した結果としての、バイオセンサー信号の振幅、位相、または周波数の変
化を測定する、ステップと、を含む。
【0094】
本明細書に記載の方法は、開示された信号増幅材料を欠く先行技術の方法と比較した場
合、検出感度を大幅に高めることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の
方法は、少なくとも約2倍、約5倍、約10倍、約25倍、約50倍、約100倍、約2
00倍、約500倍、約800倍、約1000倍だけ感度を増加させることができる。い
くつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも約5%、約25%、約50
%、約75%、または約90%だけ感度を増加させることができる。いくつかの実施形態
では、本明細書に記載の方法は、約5%~約200%、約5%~約500%、約50%~
約500%、約50%~約1000%の範囲で感度を増加させることができる。
【0095】
本明細書に記載の方法は、信号増幅材料を使用しない方法と比較した場合、検出精度を
大幅に高めることができる。本明細書に記載の方法は、約0.01pg、約1pg、約5
pg、約10pg、約50pg、約100pgという低い感度レベルを有し得る。本明細
書に記載の方法は、約0.01pg~約500pg、約1pg~約500pg、または約
10pg~約100pgの範囲の感度レベルを有し得る。
【0096】
コーティングバイオセンサーへの分析物の結合
いくつかの実施形態では、圧電基材表面上の結合アビジンは、目的の分析物を結合させ
るために、活性化を必要とする。活性化には、目的の分析物抗原に特異的な、抗体などの
ビオチン化バインダーが含まれる。抗体または他の薬剤は、アビジンコーティングチップ
に付着される前にビオチン化される。抗体は、アビジン基質に付着する前または後に分析
物抗原に結合することができる。分析物ビオチン化抗体複合体は、センサーの外側で形成
することができ、複合体をセンサーと接触させることができ、これにより、抗体上のビオ
チンがアビジンコーティングチップに結合する。2つの方法のどちらが好ましいかは、分
析物および試料処理に依存する。両方法は、本発明の範囲内にある。チップ表面上のアビ
ジンに結合した特定の抗体による表面コーティングの分析により、再び原子間力顕微鏡法
(AFM)を使用して6~9nmの深さを測定して、抗体が実際にアビジン層に結合して
いることが示された。
【0097】
抗原特異的ビオチン化捕捉試薬を適用して、スクロース、トレハロース、グリセロール
などの、しかしこれらに限定されない当技術分野で既知のタンパク質安定剤も含む非乾燥
媒体中で結合した過剰の遊離ビオチン化試薬からなる第2の層を形成する。多くの薬剤は
ビオチン化することができ、それらの中で最も一般的に使用されるのは、目的の分析物を
特異的に認識するビオチン化抗体である。タンパク質捕捉試薬は、化学的にまたは酵素的
にビオチン化することができる。化学的ビオチン化は、種々の既知のコンジュゲート化学
を利用して、アミン、カルボキシレート、スルフヒドリル、および炭水化物の非特異的ビ
オチン化をもたらす。また、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)カップリングによ
り、タンパク質中の任意の第一級アミンがビオチン化されることが理解されている。酵素
的ビオチン化は、細菌ビオチンリガーゼによる特定の配列内の特定のリジンのビオチン化
をもたらす。ほとんどの化学的ビオチン化試薬は、リンカーを介してビオチンの吉草酸側
鎖に結合した反応基で構成されている。酵素的ビオチン化は、ほとんどの場合、(当業者
に既知のビオチン化技術を使用して、)目的のタンパク質をそのN末端、C末端、または
内部ループで、Aviタグ(AviTag)またはアクセプターペプチド(Acceptor Peptide)
(AP)と呼ばれる15アミノ酸ペプチドに結合することによって実行される。
【0098】
一旦結合すると、捕捉試薬は短時間、加熱空気に曝露され、塗布された流体から水分が
部分的に除去されて、保護および安定化ゲルを形成し、これにより、非乾燥ゲル層におい
て抗体のような結合タンパク質性バインダーの長期安定性が確保され、このことにより、
第2の抗原特異的バインダー層の本質的に完全な時間依存形成が可能になる。これらのガ
ラス様層は、カートリッジのパウチ内のシリカまたはモレキュラーシーブの乾燥剤ペレッ
トの存在下での保管のために任意に脱水される。カートリッジの上部チャンバは密閉され
て、流体区画を形成する。次いで、前記チャンバを備えたカートリッジは、プラスチック
製の保管パウチ内で、好ましくはN2雰囲気中で密閉される。
【0099】
アンカー物質(アビジン)とビオチン化捕捉試薬との結合により、チップ上に第2の捕
捉試薬層が形成され得る。使用前に、保護ゲル層において残っている未結合のビオチン化
捕捉試薬およびその他の成分は、分析手順中にアッセイバッファーで、または試験体液で
も簡単に洗い流すことで容易に除去することができる。これらのセンサーは、抗原を検出
することが実証されている。
【0100】
本明細書に記載のバイオセンサーに、目的の分析物に特異的に結合する捕捉剤を含む適
切なバイオフィルムコーティングを付与すると、様々な薬剤および生化学マーカーを検出
するのに使用することができる。この統合バイオセンサーが可能な使用例には、ヒト診断
および獣医の診断が含まれる。分析物は、感染性病原体中に存在する、または見出される
、またはそれによって生成され、かつ検出に使用することができる任意の物質として定義
され、これには、オリゴヌクレオチド、核酸、タンパク質、ペプチド、病原体断片、溶解
病原体、およびIgA、IgG、IgM、IgEを含む抗体、酵素、酵素補因子、酵素阻
害剤、毒素、膜受容体、キナーゼ、プロテインA、ポリU、ポリA、ポリリジン、多糖、
アプタマー、およびキレート剤が含まれるが、これらに限定されない。抗原抗体相互作用
の検出は以前に記載されている(米国特許第4,236,893号明細書、第4,242
,096号明細書、および第4,314,821号明細書、これらはすべて参照により本
明細書に明示的に組み込まれる)。さらに、病原菌および真核細胞(哺乳類腫瘍細胞を含
む)などの、全細胞(原核細胞を含む)、ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス
、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む)、真菌、寄生生物、および芽胞(血清型
(serovars)または血清型(serotypes)などの感染因子の表現型の変形形態を含む)の
検出は、本発明の範囲内である。
【0101】
信号増幅材料の調製方法
抗体、抗体断片および単一ドメイン抗体、アフィマーまたはアプタマーは、信号増幅材
料/粒子の表面上に物理吸着させるか、信号増幅材料/粒子の表面に共有的にコンジュゲ
ートさせることができる。COOHまたはNH2またはマレイミドまたはエポキシまたは
ニュートラアビジンを含む機能化ポリマー、金属または金属酸化物材料は、購入すること
ができる。これらの粒子は、例えば、EDC/NHSまたはカルボジイミドまたはマレイ
ミド化学を使用して、抗体、抗体断片および単一ドメイン抗体、アフィマーまたはアプタ
マーと共有的にコンジュゲートさせることができる。一方、ビオチン化抗体、抗体断片、
および単一ドメイン抗体、アフィマーまたはアプタマーを使用して、ニュートラアビジン
/アビジンコンジュゲート粒子を連結させることができる。アフィマーは、利用可能なS
H部分を含む金属ナノ粒子とコンジュゲートさせることもできる。
【実施例0102】
[実施例1]
図1は、使用されているSAWセンサーは、生理食塩水環境において中~高フェムトグ
ラム範囲の感度を示し、低ピコグラム範囲の表面質量変化を容易に検出できることを示す
。
【0103】
図1Aでは、SAWセンサーのアルミニウムまたは結晶表面は、約10億コピー/mm
2の密度のチオール化ニュートラアビジンで修飾されていた。
図1Bでは、過剰なタンパ
ク質を洗い流した後、試料(青または上)と参照チャネル(赤または下)の周波数シフト
を監視した。1.6分で、生理食塩水中のビオチン化蛍光ポリエチレンビーズ(平均直径
200nm)の1:103希釈液を、試料チャネルに加えた(参照は、生理食塩水のみを
受けた)。表面アビジンへのビオチン化ビーズの急速な結合(左パネル)は、周波数シフ
ト(中央パネル)によって検出され、その半減期(t 1/2)は約12秒であった。参
照チャネルでは、生理食塩水に対する応答は観察されなかった。
図1Cでは、デバイスを
広範囲に(extensive)激しく洗浄した後、蛍光顕微鏡法により、SAWセンサーのアビ
ジン修飾表面に約300個のビーズがしっかりと結合していることを確認した。
図1Dで
は、同様の実験(図示せず)を異なるビーズ希釈で繰り返した場合、絶対周波数シフトな
らびに周波数シフトの変化率(速度定数K1として表される)は、3桁を超えるビーズの
数に、線形的に相関した。x軸との関係の線形外挿を想定すると、約11個のビーズの結
合が、現在の最適化されていないプラットフォームで電気的応答を引き出すことができる
最小の閾値であるように見える。11個のビーズの結合は、センサーの75フェムトグラ
ム(つまり、75×10
-15グラム)の表面質量変化に対応していた。
【0104】
[実施例2]
以下の例と動作原理は、ジカウイルスに特に言及した感染性病原体の検出の強化を示し
ているが、それに限定されず、感度が高められた小分子の検出にも適用され、これらの小
分子を検出することもできる。
【0105】
ジカ関連およびデング熱関連ウイルス血症の急性最大期中、診断に有用なウイルスコー
ト成分の最大循環濃度は、ピコグラム~ナノグラム/マイクロリットルの範囲に及ぶと考
えられる(Alconら)。しかし、ウイルスコート成分(例えば、Eタンパク質)の循
環濃度は、感染のごく初期段階と慢性段階の両方で少なくとも2桁であり、場合によって
は数桁低くなる。したがって、SAWベースの検出デバイスは、理想的には、非常に低い
フェムトグラム範囲の動作感度を必要とする。
【0106】
図2は、抗体(またはそれらのFab断片、またはアプタマーなど)のペアをサンドイ
ッチ形式で使用して、感度レベルの向上を達成する方法を示す。SAWセンサーは質量に
敏感であるため、所望の分析物(青い点)が表面バイオコーティングによって既に捕捉さ
れた後、第2抗体を加えると、センサーに追加の質量が加えられ、それによって任意の所
与の分析物に対する感度が向上する。第2抗体自体がはるかに大きな質量(
図2緑色のボ
ール、例えばポリスチレンまたは金ビーズ)でタグ付けされている場合、センサーに結合
した質量の得られた増加は、元の分析物または第2抗体自体の質量より何桁も大きくなり
得る。
【0107】
単一の200nmポリスチレンビーズの質量(2.51フェムトグラム)は、Eタンパ
ク質モノマーの質量(0.066アトグラム)よりも5桁近く大きくなり得る。したがっ
て、分析物の感度に対する二重増幅戦略の影響は多大である。例えば、
図1の予備データ
に基づいた簡単な計算では、二重増幅(
図2のC)を使用したサンドイッチアプローチで
は、SAWセンサーが、単一の解離されたジカウイルスから生じたEタンパク質の10分
の1(すなわち、ウイルスの10分の1相当物)未満を検出することができることが示唆
されている。対照的に、1つの抗体(
図2のAとD)のみで修飾された同じSAWセンサ
ーは、同じ信号を得るために、約200個のジカウイルス粒子相当物を必要とする。さら
に、さらにより大きな直径のポリスチレンビーズ(直径1μmのビーズは、200nmの
ビーズの質量の100倍をわずかに超える)を使用して、感度をさらに高めることができ
る。さらに、ポリスチレンビーズを高密度の金属ビーズ(例えば、金)に置き換えて、感
度をさらに高めることができる。したがって、質量増幅によって強化されたサンドイッチ
技術の使用は、バイオコーティングSAWデバイスの分析物感度を劇的に増強するための
新規な手段である。さらに、抗体またはアプタマーの特異的ペアが利用可能である分析物
(大きな粒子から小分子まで)を用いて質量増幅を使用することができる。