(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009977
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】免疫調節性低分子ヘアピンRNA分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240116BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023178200
(22)【出願日】2023-10-16
(62)【分割の表示】P 2020539219の分割
【原出願日】2019-01-17
(31)【優先権主張番号】10201800434S
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ダハイ
(72)【発明者】
【氏名】フィンク、カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、フイ イー
(72)【発明者】
【氏名】ホー、チン ヨン ビクター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】RIG-I媒介性免疫応答を調節することができる特異的で強力なRNA種を提供する。
【解決手段】本発明は、概して、低分子ヘアピン構造(shRNA)を有し、レチノイン酸誘導性遺伝子I受容体(RIG-I)に結合することができる特異的な免疫調節性RNA種を開示する。特に、前記RNA種は、ステム領域にキンクを創出するためのヌクレオチド挿入を含む。また、抗ウイルス薬剤もしくは抗がん薬剤としてまたはワクチン中のアジュバントとして使用するための、そのようなshRNAを含む組成物が包含される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子であって、
5’から3’の方向に、
X1-L-X2
(式中、
X1およびX2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であり、
Lは、ループ領域を形成するヌクレオチド配列であり、
X1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、二リン酸化または三リン酸化されており、X2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは25~65の整数である)
の構造を有し、
前記二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンクを創出するヌクレオチド挿入を、X1のn7位もしくはそれよりも上にまたはX2のnx-6位もしくはそれよりも下に含むshRNA分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、レチノイン酸誘導性遺伝子I受容体(RIG-I)を活性化する強力な免疫調節性RNA種を開発するための構造情報に基づくRNA設計(structure guided RNA design)、そのようにして得られるRNA分子、それらを含む組成物、ならびにそれらの使用およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗ウイルス製品またはワクチンアジュバントとして採用することができる、新規作用機序を有する免疫調節性分子に対する公衆衛生需要は増加している。そのような分子は、ウイルスの代わりに宿主を標的にすることにより、広範なウイルス感染症を効果的に阻止することができる。初期および進行中の医薬品開発プログラムは、ほとんどが病原菌およびそれらの必須酵素を標的とする。感染に対する宿主免疫応答を調節する分子標的は、ほとんど無視されている。宿主分子を標的とすることの重要な利点は、ウイルスの適応突然変異により影響されにくい点である。
【0003】
レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)は、感染中にウイルスRNAを検知する重要なクラスのパターン認識受容体である。RLRは、3つのメンバー:レチノイン酸誘導性遺伝子1(RIG-I)、黒色腫分化関連遺伝子5(MDA5)、ならびに遺伝学および生理学2(LGP2、Laboratory of Genetics and Physiology 2)で構成される。それらは、ウイルス感染の検知およびインターフェロン媒介性抗ウイルス免疫応答の開始に必須の役割を果たす。RLRは、感染細胞の細胞質中のウイルスRNAを検出し、炎症性(pro-inflammmatory)サイトカインおよびI型インターフェロンの産生により自然免疫応答を引き起こす基本的なクラスのパターン認識受容体(PRR)である。RLRは、ウイルス複製の特質を表わすあるモチーフにより、自己RNAおよび非自己RNAを区別する能力を有する。
【0004】
複製するウイルスのRNA鎖には三リン酸化部分が存在するが、内因性RNAはさらにプロセシングされて5’キャップを含むため、RIG-Iは、ウイルスにより生成されたRNAを検出することができる(非特許文献1)。フォールディングしてパンハンドル構造を形成するssRNAウイルス複製起点に存在する部分的相補性末端配列も、RIG-Iにより認識される(非特許文献2)。その他に、スナップバックに基づく対合構造が形成される欠損干渉RNAゲノムも、RIG-Iにより認識される(非特許文献3)。5’三リン酸末端化RNAに加えて、RIG-Iは、5’二リン酸化RNAも、Cap 0 RNAも認識し、それらに結合する(非特許文献4;非特許文献5)。
【0005】
RLRのコアは、二本鎖RNA骨格を認識するための、Hel1、Hel2、および挿入ドメインHel2iで構成されている特殊なDExD/H-ボックスRNAヘリカーゼである。C末端ドメイン(CTD)は、Zn2+含有RNA結合ドメインである。一緒になって、HEL-CTDはRNA検知モジュールを形成し、これは、RLR活性化が許容されるか否かを決定するために、捕捉したRNA種の化学的および構造的特徴を検出することに関わる(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。RIG-IおよびMDA5のN末端タンデムカスパーゼ活性化および動員ドメイン(CARD、caspase activation and recruitment domain)は、ミトコンドリア外膜上のアダプタータンパク質MAVS(ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質)と相互作用およびオリゴマー化することによる下流シグナル伝達の活性化に関わるシグナル伝達ドメインである(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。RIG-IおよびMDA5は、異なるが重複するRNAウイルスのサブセットを認識する。これは、それらのRNA認識選好性に関係がある。RIG-Iは、5’末端三リン酸を有する短い二重鎖RNAを選好するが、MDA5は、長い二重鎖RNAと協同的に結合し、5’末端の末端特徴に対するRNA選好性の要件はない(非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20、非特許文献21)。
【0006】
細胞質において、RIG-Iは、細胞が通常状態にある間は、CARDがHEL2iドメインと相互作用している自己抑制コンフォメーションで存在する(非特許文献19、上記;非特許文献18、上記)。ウイルス感染に際して病原性RNAに遭遇すると、ATP加水分解を伴うタンパク質コンフォメーション再編成が生じる。結果として、N末端基CARDが露出して、MAVSとの相互作用が可能になることになる(非特許文献17;ウーら(Wu et al.)、上記)。続いて、MAVSは、IRF3、IRF7、およびNFκB転写因子を介して下流シグナル伝達を活性化し、I型インターフェロン(IFN-I)および炎症性サイトカインの産生を引き起こすことになる(非特許文献12、上記;非特許文献11、上記;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24)。RIG-IのCTDは、ウイルス複製過程中に一般的に生成される5’三リン酸化RNAを認識し、それにより活性化される(非特許文献25)。また、5’三リン酸化RNAの他に、RIG-Iは、末端5’二リン酸およびcap0部分を非自己RNAとして認識する(非特許文献26;非特許文献5)。最近の研究により、RIG-Iが、ポリU/UCトラクトおよびAUリッチRNAに対してより高い選好性を有することが明らかになった(非特許文献27;非特許文献28)。さらに、10~12塩基対に最小長を有する短鎖RNAヘアピンは、RIG-Iに結合し、それを活性化することができる(非特許文献6、上記;非特許文献18、上記)。短鎖RNA二重鎖は、細胞タイプ依存的および長さ依存的な様式で、RIG-I媒介性アポトーシスを誘発することも報告された(非特許文献29)。
【0007】
RIG-Iによる自然免疫活性化に関する先端的知識を考慮すると、RIG-Iを標的とする抗ウイルスおよび抗がん治療剤のための広域免疫調節因子を開発することは魅力的である(非特許文献30;非特許文献31;非特許文献32)。多くの免疫調節因子は、RIG-I媒介性IFN-I産生シグナル経路を標的とする合成PAMP(病原体関連分子パターン)であることが報告されている(非特許文献33)。報告されている活性作用剤の中でも、5’三リン酸化された短い二本鎖RNAが、最も強力なRIG-I特異的リガンドである(非特許文献5、上記;ホルヌングら(Hornung et al.)、上記;非特許文献34;非特許文献35)。細胞ベースアッセイおよび動物研究では、5’pppRNA処置は、RIG-I媒介性抗ウイルス防御シグナル経路を活性化し、インフルエンザ、水疱性口内炎、デング熱、およびチクングニヤウイルスなどの複数のウイルスの感染から細胞を保護する(非特許文献36;非特許文献37)。こうした短鎖RNA種のin vivo活性を実証する最近の先駆的研究が存在し(非特許文献38)、最良の短鎖ステム-ループRNA(SLR)は、10および14bp長であり、一方の末端に安定したテトラループおよび他方に5’ppp平滑塩基対を有する。TLR3、MDA5、およびRIG-Iを広く活性化することが知られている、長さが不均一な合成の長い二重鎖RNAであるポリICと比較して、SLRなどのRIG-I特異的リガンドは、よりIFN-I特異的であり、新規シグナル経路を活性化することができる。
【0008】
したがって、ワクチンアジュバントおよび抗ウイルス剤としてのそれらの可能性の他に、免疫調節性(免疫刺激性)RNAは、がん免疫療法と共に使用される強力な自然免疫活性化因子であり得るか(非特許文献39)、または細胞核酸センサーを標的とする他の療法と同様に、それら自体が抗腫瘍活性を示す可能性がある(非特許文献40)。
【0009】
デングウイルス(DENV)は、感染したアエデス属(Aedes)蚊の咬傷によりヒトに伝染するアルボウイルスである。DENVは、フラビリダエ(Flaviridae)科の一部であり、フラビウイルス属(Flavivirus genus)のメンバーである。この科のウイルスは、黄熱病ウイルス(YFV)、西ナイルウイルス(WNV)、および日本脳炎ウイルス(JEV)を含む、世界中のヒト集団に対して健康脅威を招くことが知られている他のウイルスを含む。DENVは、一本鎖プラス鎖RNAゲノムを含むエンベロープウイルスである。このウイルスゲノムは、ウイルスプロテアーゼおよび宿主プロテアーゼにより、3つの構造タンパク質(カプシド、prM、およびエンベロープタンパク質)および7つの非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、およびNS5)へとプロセシングされる大型ポリタンパク質をコードする。DENVの伝染は、ウイルスが、咬刺蚊の唾液からヒト皮膚の皮層に移行することを含む。最外側の表皮層は、ケラチノサイト、および皮膚障壁を透過する病原体の検出に関与する皮膚常在抗原提示細胞(APC)であるランゲルハンス細胞(LC)を含む。皮層は、表皮層の下に位置しており、線維芽細胞、ならびにマクロファージ、T細胞、および樹状細胞を含む免疫細胞で構成され、流入領域リンパ節への免疫細胞遊走を可能にする血管およびリンパ管で神経支配されている。抗原提示細胞(APC)は、DENV感染の主要宿主細胞である。皮膚のプロフェッショナルAPCは、宿主へのウイルス進入地点に位置するため、感染の確立にとって特に重要である。DENVに感染すると、APCは、そうした細胞の細胞質中のRIG-IおよびMDA5にウイルスRNAが結合することにより活性化される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ホルヌングら(Hornung et al.)(2006),Science 314(5801):994-7
【非特許文献2】シュレーら(Schlee et al.)(2009),Immunity 31 (1):25-34
【非特許文献3】シュトラーレら(Strahle et al.)(2006),Virology 351 (1):101-11
【非特許文献4】デバルカルら(Devarkar et al.)(2016) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 113(3):596-601
【非特許文献5】ゴーバウら(Goubau et al.)(2014),Nature 514(7522):372-5
【非特許文献6】コールウエイら(Kohlway et al.)(2013),EMBO Rep 14(9):772-9
【非特許文献7】ルオら(Luo et al.)(2011),Cell 147(2):409-22
【非特許文献8】シュレー(Schlee)(2013),Immunobiology 218:1322-1335
【非特許文献9】カワイら(Kawai et al.)(2005),Nat Immunol 6:981-988
【非特許文献10】メランら(Meylan et al.)(2005)Nature 437:1167-1172
【非特許文献11】ペイスレイら(Peisley et al.)(2014)Nature 509:110-114
【非特許文献12】セスら(Seth et al.)(2005)Cell 122:669-682
【非特許文献13】ウーら(Wu et al.)(2014),Mol Cell 55:511-523
【非特許文献14】シュら(Xu et al.)(2005)Mol Cell 19:727-740
【非特許文献15】カトウら(Kato et al.)(2006),Nature 441:101-105
【非特許文献16】ルー&ゲール(Loo&Gale)(2011),Immunity 34:680-692
【非特許文献17】ウー&チェン(Wu&Chen)(2014),Annu Rev Immunol 32:461-488
【非特許文献18】ゼンら(Zheng et al.)(2015),Nucleic Acids Res 43:1216-1230
【非特許文献19】コワリンスキーら(Kowalinski et al.)(2011),Cell 147:423-435
【非特許文献20】ルオら(Luo et al.)(2011),Cell 147:409-422
【非特許文献21】ウーら(Wu et al.)(2013),Cell 152:276-289
【非特許文献22】ヒスコットら(Hiscott et al.)(2006),Trends Mol Med 12:53-56
【非特許文献23】イワナスズコ&キンメル(Iwanaszko&Kimmel)(2015),BMC genomics 16:307
【非特許文献24】ラモス&ゲール(Ramos&Gale)(2011),Curr Opin Virol 1:167-176
【非特許文献25】ホルヌングら(Hornung et al.)(2006),Science 314:994-997
【非特許文献26】デバルカルら(Devarkar et al.)(2016)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 113(3):596-601
【非特許文献27】ルンゲら(Runge et al.)(2014),PLoS pathogens 10:e1004081
【非特許文献28】シュネルら(Schnell et al.)(2012),PLoS Pathog 8:e1002839
【非特許文献29】イシバシら(Ishibahi et al.)(2011),Sci. Signal.4(198),ra74
【非特許文献30】エリオン&クック(Elion&Cook)(2018),Oncotarget,2018,Vol.9,(No.48),pp:29007-29017
【非特許文献31】エリオンら(Elion et al.)(2019),Cancer Research,2018年9月17日に始めてオンライン発表された著者原稿;DOI:10.1158/0008-5472
【非特許文献32】デュウエルら((Duewell et al.)(2014),Cell Death and Differentiation 21,1825-1837
【非特許文献33】ヤング&ルオ(Yong&Luo)(2018),Front Immunol 9:1379
【非特許文献34】カトウら(Kato et al.)(2011),Nature 441:101-105
【非特許文献35】シュミットら(Schmidt et al.)(2009),Proc Natl Acad Sci USA 106:12067-12072
【非特許文献36】チャンら(Chiang et al.)(2015),J Virol 89(15):8011-25
【非特許文献37】リーら(Lee et al.)(2018),Nucleic Acids Res.46(4):1635-1647
【非特許文献38】リネハンら(Linehan et al.)(2018),Science advances 4:e1701854
【非特許文献39】ムーアら(Moore et al.)(2016),Cancer Immunol Res 4,1061-1071,doi:10.1158/2326-6066
【非特許文献40】ジャント&バルヒェット(Junt&Barchet)(2015),Nat Rev Immunol 15,529-544
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、RIG-I媒介性免疫応答を調節することができる特異的で強力なRNA種は、新しい治療剤および有用な研究ツールの開発にとって価値があるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、RIG-I媒介性免疫応答を調節し、したがって治療剤、具体的にはアジュバントおよび抗ウイルス剤ならびに研究ツールとしての潜在的使用を有する低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子を提供することにより、この必要性を満たす。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、5’から3’方向に、
X1-L-X2
(式中、
X1およびX2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であり、
Lは、ループ領域を形成するヌクレオチド配列であり、
X1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、二リン酸化または三リン酸化されており、X2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは25~65の整数である)
の構造を有する低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子であって、
二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンク(kink)を創出するヌクレオチド挿入を、X1のn7位もしくはそれよりも上にまたはX2のnx-6位もしくはそれよりも下に含む、shRNA分子に関する。
【0014】
こうしたshRNA分子では、Lは、1~10ヌクレオチド長の、好ましくは2~4ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であってもよい。
shRNA分子(molceules)の種々の実施形態では、5’末端のヌクレオチド、つまりX1アームの最初のヌクレオチドは、三リン酸化されている。
【0015】
種々の実施形態では、shRNA分子は、平滑末端化されており、つまり5’突出または3’突出を含まない。5’-末端ヌクレオチドおよび3’-末端ヌクレオチドは、分子の末端に非対合ヌクレオチドが存在しないように互いに塩基対合することがさらに好ましい。
【0016】
種々の実施形態では、X1およびX2は各々、10~25ヌクレオチド長、好ましくは10、11、20、21、30、もしくは31、または10~20ヌクレオチド長、より好ましくは10もしくは11ヌクレオチド長のヌクレオチド配列である。X1およびX2は、キンクを創出するヌクレオチド挿入を数えずに、同じ長さであり、10、20、または30ヌクレオチド長、好ましくは10であることが好ましい場合がある。
【0017】
種々の実施形態では、X1およびX2は、キンクを創出するヌクレオチド挿入を除き、互いに完全に相補的である。
ヌクレオチド挿入は、1~2ヌクレオチドの、好ましくは単一ヌクレオチドのヌクレオチド挿入であってもよい。一部の実施形態では、ヌクレオチド挿入は、X1におけるヌクレオチド挿入である。ヌクレオチド挿入は、X1のn7から3’末端位置のすぐ上流の位置(X1の最後から2番目の位置)までの範囲の位置から、またはX2の2番目の位置(5’末端位置のすぐ下流)からnx-6までの範囲の位置から選択される位置にあってもよい。それらの種々の実施形態では、ヌクレオチド挿入は、n9からループ領域の最初のヌクレオチドの2もしくは3ヌクレオチド上流の位置までの、またはループ領域の最後のヌクレオチドの2もしくは3ヌクレオチド下流の位置からnx-8までの範囲の位置から選択される位置である。ヌクレオチド挿入は、好ましくは、X1配列の好ましくはn9位であってもよい。
【0018】
種々の実施形態では、ヌクレオチド挿入は、プリンヌクレオチドまたはピリミジンヌクレオチド、好ましくはGおよびAから選択されるプリンヌクレオチドである。
ループ領域Lは、配列UUCGを含んでいてもよく、またはからなっていてもよい。
【0019】
種々の実施形態では、X1は、
【0020】
【化1】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである。
【0021】
種々の実施形態では、X2は、
【0022】
【化2】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである。
【0023】
種々の実施形態では、shRNA分子は、
【0024】
【化3】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである。
【0025】
shRNA分子は、好ましくは、ヒトレチノイン酸誘導性遺伝子1受容体(RIG-I)と特異的に結合する。
別の態様では、本発明は、本発明による少なくとも1つのshRNA分子を含む組成物に関する。そのような組成物は、そのようなshRNAの1つの種を含んでいてもよく、または本発明による複数の異なるshRNA分子を含んでいてもよい。
【0026】
組成物は、医薬組成物、例えば、免疫刺激組成物または抗ウイルス組成物または抗がん組成物であってもよい。免疫刺激組成物は、ワクチンをさらに含むワクチン組成物であってよく、その場合、shRNA分子はアジュバントである。組成物が抗ウイルス組成物である場合、組成物は、追加の活性抗ウイルス剤をさらに含んでいてもよい。組成物が抗がん組成物である場合、組成物は、追加の活性抗がん剤をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、それらの使用とは関わりなく、好ましくは薬学的に許容される1つまたは複数の賦形剤を含んでいてもよい。
【0027】
本発明は、アジュバントとしての、または抗ウイルス剤としての、または抗がん剤としての、本発明のshRNA分子の使用をさらに包含する。それを必要とする対象の免疫系を刺激するための、またはウイルス感染症を治療/予防するための、またはがんを治療もしくは予防するための方法で使用するための、本発明のshRNA分子または本発明の組成物も企図される。shRNA分子は、活性作用剤のアジュバントとして作用してもよく、またはそれら自体の抗ウイルス活性もしくは抗がん活性のため使用してもよい。
【0028】
本発明の別の態様は、それを必要とする対象の免疫系を刺激するための方法であって、本発明によるshRNA分子または本発明の組成物の有効量を前記対象に投与する工程を備える方法を特徴とする。本発明の別の方法は、それを必要とする対象のウイルス感染症を治療または予防するためのものであって、本発明によるshRNA分子または本発明の組成物の有効量を前記対象に投与する工程を備える。本発明のまたさらなる方法は、それを必要とする対象のがんを治療または予防するためのものであって、本発明によるshRNA分子または本発明の組成物の有効量を前記対象に投与する工程を備える。
【0029】
またさらなる態様では、本発明は、5’から3’方向に、
X1-L-X2
(式中、
X1およびX2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であり、
Lは、ループ領域を形成するヌクレオチド配列であり、
X1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、X2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは25~65の整数である)
の構造を有する低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子を修飾するための方法であって、
二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンクを創出するヌクレオチド挿入を、X1のn7位もしくはそれよりも上にまたはX2のnx-6位もしくはそれよりも下に導入する工程を備える方法に関する。
【0030】
以下において、本発明は、添付の図面および例を参照することより、より詳細に説明されることになる。
本発明は、詳細な説明を参照して、非限定的な例および添付の図面を併せて考慮すると、より良好に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】3p10L RNAヘアピン骨格(配列番号37)に沿ったグアノシンの挿入は、RIG-I酵素活性および細胞活性を様々に変化させた。(A)RNAのステム領域に沿ってバルジ(bulge)/キンクが導入されているヘアピンRNAの設計。
【
図1B】3p10L RNAヘアピン骨格(配列番号37)に沿ったグアノシンの挿入は、RIG-I酵素活性および細胞活性を様々に変化させた。(B)HEK-Lucia(商標)RIG-IおよびHEK-Lucia(商標)Nullでの、様々なRNAの細胞ベースアッセイ。RNAを100nMの一定濃度でトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にルミネセンスを測定した。結果は三重重複で測定し、RLUとして表されている。
【
図1C】3p10L RNAヘアピン骨格(配列番号37)に沿ったグアノシンの挿入は、RIG-I酵素活性および細胞活性を様々に変化させた。(C)親鎖のRNA(3p10L;配列番号37)と比較して、最も高い細胞ベースアッセイ活性(3p10LG9;配列番号26)および最も低い活性(3p10LG5;配列番号30)を有するRNAのATPase活性。データをミカエリス-メンテン式にフィッティングし、K
m,ATPおよびK
cat,ATPを、hsRIG-Iに対する飽和量のRNAで決定した。
【
図2A】ヘアピンRNAに沿った9位でのプリン塩基の挿入は、immRNA3p10Lの効力を向上させる。(A)RNAのステム領域に沿って9位に様々な塩基が導入されているヘアピンRNAの設計。
【
図2B】ヘアピンRNAに沿った9位でのプリン塩基の挿入は、immRNA3p10Lの効力を向上させる。(B)HEK-Lucia(商標)RIG-IおよびHEK-Lucia(商標)Nullでの、様々なRNAの細胞ベースアッセイ。RNAを100nMの一定濃度でトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にルミネセンスを測定した。結果は三重重複で測定し、RLUとして表されている。
【
図2C】ヘアピンRNAに沿った9位でのプリン塩基の挿入は、immRNA3p10Lの効力を向上させる。(C)9位に様々な塩基挿入を有するRNAのATPase活性。データをミカエリス-メンテン式にフィッティングし、K
m,ATPおよびK
cat,ATPを、hsRIG-Iに対する飽和量のRNAで決定した。
【
図3A】3p10LA9(配列番号25)は、2つの異なるレポーター細胞において3p10LG9(配列番号26)および3p10L(配列番号37)よりも強力な活性を実証した。(A)RNAを、異なる濃度範囲のRNAでHEK-Lucia(商標)RIG-Iへとトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にルミネセンスを測定した。結果は三重重複で測定し、最大活性の正規化パーセンテージ対log濃度として表した。3p10L G9のEC
50は133nMだった。3p10LA9は199nMだった。3p10Lは108nMだった。
【
図3B】3p10LA9(配列番号25)は、2つの異なるレポーター細胞において3p10LG9(配列番号26)および3p10L(配列番号37)よりも強力な活性を実証した。B)RNAを、100nMの一定濃度でHEK-Lucia(商標)RIG-Iにトランスフェクトし、トランスフェクションの4、6、8、10、12、24、48、および72時間後にルミネセンスを測定した。
【
図3C】3p10LA9(配列番号25)は、2つの異なるレポーター細胞において3p10LG9(配列番号26)および3p10L(配列番号37)よりも強力な活性を実証した。(C)RNAを、異なる濃度範囲のRNAでTHP1-Dual(商標)にトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後にルミネセンスを測定した。結果を三重重複で測定し、最大活性のパーセンテージ対log濃度として表した。3p10L G9のEC
50は91nMだった。3p10LA9は51nMだった。3p10Lは226nMだった。
【
図3D】3p10LA9(配列番号25)は、2つの異なるレポーター細胞において3p10LG9(配列番号26)および3p10L(配列番号37)よりも強力な活性を実証した。D)RNAを、100nMの一定濃度でTHP1-Dual(商標)にトランスフェクトし、トランスフェクションの4、6、8、10、12、24、48、および72時間後にルミネセンスを測定した。
【
図4】様々なRNA分子に対するハツカネズミ(mus musculus)RIG-I(mmRIG-I)およびmmRIG-IΔCARD結合のATPase活性を示すミカエリス-メンテンプロット。(A)様々なステム修飾を有する短鎖RNAヘアピンにより刺激されたmmRIG-Iの、0から5mMまでの範囲のATP濃度にわたる触媒作用の速度。(B)様々な塩基組成のRNAヘアピンにより刺激されたmmRIG-Iの、0から5mMまでの範囲のATP濃度にわたる触媒作用の速度。(C)様々な長さのRNAヘアピンにより刺激されたmmRIG-Iの、0から5mMまでの範囲のATP濃度にわたる触媒作用の速度。
【
図5】I型IFNを誘導するそれらの能力についてのimmRNA構築物のスクリーニング。A)RIG-Iリガンド免疫調節性RNA(immRNA)を、MX1プロモーターにより駆動される安定的に組み込まれたルシフェラーゼレポーター(MX1P-luc)を含むHEK-293T細胞へとトランスフェクトした。RNAを、系列希釈(2×)により達成された種々の濃度でトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にルミネセンスを測定した。結果は、OHYr23(親構築物;配列番号37)の312nM処置で測定されたRLUのパーセンテージとして表わされている。B)MX1プロモーター駆動性ルシフェラーゼを発現するHEK293T細胞に、OHYr23を10nMでトランスフェクトした。こうした細胞を、一連の濃度(0nM~312nM)のOHYr10(配列番号30)またはOHYr09(配列番号34)のいずれかで共トランスフェクトした。細胞をBrightgloで溶解し、ルミネセンスを読み取った。エラーバーは、1条件当たり三重重複のトランスフェクションのものである。
【
図6】I型IFNを誘導するそれらの能力についてのimmRNA構築物のスクリーニング。ImmRNAを、ISG54により駆動されるluciaルシフェラーゼレポーターの安定組込みによりヒトTHP-1単球細胞株に由来するTHP1-Dual(商標)細胞へとトランスフェクトした。ルシフェラーゼレポーター応答を、100%に対して正規化し、RNAのlog濃度に対してプロットした。OHYr05(配列番号26)のEC50値は、OHYr23(配列番号37)のEC50が14nMだったことと比較して、3.47nMであると決定された。
【
図7】HEK-Lucia(商標)RIG-IおよびHEK-Lucia(商標)nullでの、様々なImmRNAによる細胞ベースアッセイ。A)様々な長さのImmRNA、B)様々なグアノシン挿入を有するImmRNA。C)9位に様々なヌクレオチドを有するImmRNA。様々な長さのRNAを100nMの一定濃度でトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にルミネセンスを測定した。結果は三重重複で測定し、RLUとして表されている。
【
図8】A)THP1-Dual(商標)細胞およびB)HEK-Lucia(商標)RIG-Iにおける、市販RNAおよびImmRNA OHYr16(3p10LA9;配列番号25)の活性間の比較。様々な濃度のRNAを両細胞へとトランスフェクトし、2×系列希釈した。トランスフェクションの24時間後にルミネセンス値を記録した。
【
図9】)THP1-Dual(商標)細胞およびB)HEK-Lucia(商標)RIG-Iにおける、ImmRNA OHYr16(3p10LA9;配列番号25)および市販RNAの安定性試験。RNAを、細胞へのトランスフェクション前に無血清培地で24、48、72、および96時間インキュベートした。トランスフェクションの24時間後にルミネセンス値を記録した。
【
図10A】immRNAのキンク位置は、生物学的活性に影響を及ぼす。A)ヌクレオチド5位(OHYr10)、19位(OHYr11)、および21位(OHYr01)のキンクは、IFN産生を無効にする。ルシフェラーセ(luciferace)活性%を、312nMで使用したOHYr23で検出された値に対して正規化した。
【
図10B】immRNAのキンク位置は、生物学的活性に影響を及ぼす。B)ステムから9位のimmRNAの5’側のキンク(OHYr05)は、キンク無し(OHYr23)と比較して生物学的活性を向上させたが、ステムから9位のimmRNAの3’側のキンク(OHYr02)は、生物学的活性を無効にした。ルシフェラーセ活性%を、100nMで使用したOHYr23で検出された値に対して正規化した。
【
図10C】immRNAのキンク位置は、生物学的活性に影響を及ぼす。C)9位キンクのプリン(OHYr05ではグアニンおよびOHYr16ではアデニン)は、9位キンクのピリミジン(OHYr17ではウラシルおよびOHYr18ではシトシン)よりも高い生物学的活性を有する。直接トランスフェクトしたHEK293T MX1P-lucレポーター細胞を、A~Cでの読出しとして使用した。
【
図11】ステムの長さは、immRNAの生物学的活性に影響を及ぼす。OHYr23(10ヌクレオチド長)およびOHYr08(30ヌクレオチド長)は、HEK293T MX1P-lucレポーターアッセイにて高い活性を示す。対照的に、OHYr12(6ヌクレオチド長)、OHYr20(9ヌクレオチド長)、OHYr03(11ヌクレオチド長)、OHYr07(12ヌクレオチド)、およびOHYr13(14ヌクレオチド長)は、生物学的活性が低いかまたは生物学的活性を示さなかった。ルシフェラーセ活性%を、100nMで使用したOHYr23で検出された値に対して正規化した。直接トランスフェクトしたHEK293T MX1P-lucレポーター細胞を、A~Cでの読出しとして使用した。
【
図12】3p10LG9(配列番号26)は、インターフェロン応答を誘導し、U937-DC-SIGN細胞およびA549細胞の両方においてDENV-2感染に対する予防に効果的である。(A)3p10L(配列番号37)および3p10LG9(配列番号26)の構造および配列は、表に示されている通りである。(B)3p10L、3p10LG9(配列番号26)、またはG9neg(5’リン酸化を有していない配列番号26)を、U937-DC-SIGNまたはA549細胞へとトランスフェクトした。上清を回収し、ISRE-luc HEK-293Tレポーター細胞でインキュベートした。上清と共に6時間インキュベーションした後、ルミネセンスを測定した。表には、3p10L(配列番号37)および3p10LG9(配列番号26)のEC50値(nM)が示されている。(C)トランスフェクトした細胞を、DENV-2(TSV01)にMOI-1で感染させ、感染の24時間後に、NS1に結合する抗体およびE-タンパク質に結合する抗体(4G2)で染色した。表には、3p10L(配列番号37)および3p10LG9(配列番号26)のEC50値(nM)が示されている。(D)感染させたU937-DC-SIGN細胞(左)またはA549細胞(右)の代表的なフローサイトメトリーグラフが示されている。U937-DC実験の場合、記号は、2つの独立実験の平均±SEM、n=6である。A549実験の場合、記号は、2つの独立実験の平均±SEM、n=4である。(B)および(C)におけるルシフェラーゼアッセイおよび感染アッセイの統計的有意差は、通常の二元配置ANOVAを使用して、それぞれU937-DC(p=0.013、p<0.0001)およびA549(p=0.0058、p<0.0001)と算出された。
【
図13】3p10LG9/OHYr05(配列番号26)は、一次ヒト皮膚DCにおいて、3p10L/OHYr23(配列番号37)と比較して、DENV-2感染に対する予防剤としてより高い効力を有する。(A)ヒト皮膚DCを、250nM、125nM、および62nMの3p10LG9(配列番号26)または3p10L(配列番号37)でトランスフェクトし、24時間インキュベートした。上清を、インターフェロン刺激応答エレメントにより駆動されるルシフェラーゼレポーター(ISRE-luc)を含むHEK-293T細胞でインキュベートし、6時間後にルミネセンスを測定した(右パネル)。結果は、G9neg(5’リン酸化を有していない配列番号26)と比較した倍数変化として示されている。各記号は、1人のドナーに由来する試料を表わす。統計的有意差(p<0.05)を、ダネットの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを使用して決定した(ns:有意でない)。(B)250nM、125nM、および62nMの3p10LG9(配列番号26)または3p10L(配列番号37)を24時間トランスフェクトしたヒト皮膚DCを、DENV-2にMOI 5で48時間感染させた。4G2抗体で細胞内染色することにより、フローサイトメトリーを使用して、皮膚DCの各部分集団中のDENV-2感染細胞のパーセンテージを定量化した。各条件の感染細胞のパーセンテージを、G9neg(5’リン酸化を有していない配列番号26)に対して正規化した。(C~E)62nMの3p10LG9(配列番号26)または3p10L(配列番号37)でトランスフェクションした後の(B)にプロットされているデータから取った皮膚DCの各部分集団の感染細胞のパーセンテージ(左)および代表的なフローサイトメトリー(右)。(C)CD11c DDC、(D)ランゲルハンス細胞、(E)CD14 DDC。各記号は、1人のドナーを表わす。バーは、平均±SDを示す。統計的有意差(p<0.05)を、ダネットの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを使用して決定した(
*P≦0.05、
**P≦0.01、
***P≦0.005)。
【
図14】ImmRNA 3p10LG9は、一次ヒト皮膚DCにおいてDENV-2感染に対する治療効果を有する。(A~C)ヒト皮膚DCを、DENV2にMOI 5で感染させ、感染後のそれぞれの時点で、62nMの3p10L(配列番号37)、3p10LG9(配列番号26)、またはG9neg(5’リン酸化を有していない配列番号26)を導入した。皮膚DCの各部分集団内の感染細胞のパーセンテージを示すグラフ(左)は、FACSプロット(右)により表わされているように、4G2抗体による細胞内染色により反映されている。各条件の感染細胞のパーセンテージを、その特定のドナーのG9neg対照に対して正規化した。(A)CD11c皮膚DC、(B)ランゲルハンス細胞、(C)CD14皮膚DC。各ドットは、1人のドナーに由来する試料を表わす。統計的有意差を、多重比較を用いた一元配置ANOVAを使用して決定した(
*P≦0.05、
**P≦0.01、
***P≦0.005)。
【
図15】ImmRNAは、DENV-2 VLPワクチンと共にアジュバントとして使用した場合、抗体産生を増強し、保護を増加させた。10ugのDENV-2 VLPを、in vivoJET-PEIまたはポリI:Cと混合された25ugのimmRNAと共に注射し、CD11c-cre-IFNAR
fl/flマウス(ツストら(Zust et al.)(2014),J Virol.88(13):7276-85)に筋肉内注射した。(A)ワクチン接種実験の免疫化および負荷スケジュール。(B)ウイルスRNA(vRNA)を、10
6pfuのDENV-2で感染させたDENV-2 VLPワクチン接種マウス(n=5~9)の血漿から抽出した。Taqmanアッセイを行って、血漿中のvRNA濃度を決定した。バーは、平均±SDを示す。統計的有意差は、スチューデントt-検定を使用して決定した(
*P≦0.05、
**P≦0.01、
****P≦0.0001、ns:有意ではない)。(C)ワクチン接種後の21および28日目に出血させたDENV-2 VLPワクチン接種マウスに由来する血漿でのエンドポイント力価DENV-2 ELISA。バーは、平均±SDを示す。統計的有意差は、スチューデントT-検定を使用して決定した(
*P≦0.05、ns:有意ではない)。(D)カプラン-マイヤー方法を使用して生存曲線を生成し、有意差をログランク検定を使用することにより算出した(ns:有意ではない)。(E)感染後6日間の期間にわたって体重を測定し、初期体重の%としてプロットした。20%を超える体重減少を有するマウスは瀕死であるとみなし、安楽死させた。バーは、平均±SDを示す。統計的有意差を、多重比較を用いた二元配置ANOVAを使用して決定した(P=0.0007)。
【
図16】3p10LG9(配列番号26)は、一次ヒト皮膚DCサブセットにおいてCD80発現を増加させた。一次ヒト皮膚細胞を、250nMの3p10LG9またはG9negでトランスフェクトしたか、または陽性対照としての1000Uの組換えヒトIFNβで処置した。72時間後、皮膚抗原提示細胞の各部分集団でのCD80発現の平均蛍光強度(MFI)を測定した。個々のドナー(n=4)に由来するデータポイントは直線で接続されている。統計的有意差を、対応スチューデントT-検定を使用して決定した(
*P≦0.05)。
【
図17】immRNAは、ヒト抗原提示細胞において自然免疫遺伝子上方制御を誘導した。rNEG(5’リン酸化を有していない配列番号26)で処置された同じバッチの細胞と比べて、r05(配列番号26)で処置されたヒト皮膚に由来する抗原提示細胞において発現が異なる遺伝子を分析した。データポイントは、ヒトCD11c
+ DDC、CD14
+細胞、CD141
+ DDC、およびランゲルハンス細胞からのものである。各記号は、1つの単離細胞を表わす。単離細胞RNAseq SMART-seq v2技術を使用して、細胞のトランスクリプトームを配列決定した。データは、r05をrNEG処置細胞と比較した場合の上位6つのDEGを示す。y軸は、遺伝子発現の倍数変化をlog2スケールで示す。
【
図18】3p10LG9により誘導されたインターフェロンシグナルは、RIG-I依存性である。(A)HEK-293T細胞を、50ngのpUNO-hRIG-IまたはpUNO-hMDA5でトランスフェクトした。その後、こうした細胞を、10nMの3p10LG9、3p10L、またはG9negのいずれかでトランスフェクトした。こうしたトランスフェクトHEK-293T細胞に由来する上清を、インターフェロン刺激応答エレメントにより駆動されるルシフェラーゼレポーター(ISRE-luc)を含むHEK-293T細胞でインキュベートした。上清と共に6時間インキュベーションした後、ルミネセンスを測定した。バーは、平均±SDを示す。統計的有意差を、多重比較を用いた一元配置ANOVAを使用して決定した(
*P≦0.05、
**P≦0.01、
***P≦0.005)。(B)3p10LG9、3p10L、G9neg、またはLMWポリI:Cを、RIG-IノックアウトU937-DC細胞(KO)または親U937-DC細胞(WT)のいずれかへとトランスフェクトした。IFNB、DDX58(RIG-I)、MDA5、およびRSAD2(Viperin)に関する、トランスフェクトU937-DC細胞から抽出されたmRNAの遺伝子発現分析:データは、G9neg処置RIG-I WT試料の平均と比較した倍数変化として表わされている。バーは、三重重複トランスフェクションの平均±SDを示し、データは、2つの独立実験を代表するものである。統計的有意差は、両側スチューデントt-検定を使用して決定した(
***P≦0.001、
****P≦0.0001)。
【
図19】3p10LG9の抗ウイルス効果は、RIG-IおよびIFNARシグナル依存性である。(A)immRNAまたはポリI:CのいずれかでトランスフェクトしたU937-DC細胞に由来する上清を、インターフェロン刺激応答エレメントにより駆動されるルシフェラーゼレポーター(ISRE-luc)を含むHEK-293T細胞でインキュベートした。上清と共に6時間インキュベーションした後、ルミネセンスを測定した。バーは、三重重複トランスフェクションの平均±SDを示し、データは、2つの独立実験を代表するものである。統計的有意差は、両側スチューデントt-検定を使用して決定した(
*P≦0.05、
**P≦0.01、
***P≦0.001、
****P≦0.0001)。(B)immRNAまたはポリI:Cのいずれかで事前に24時間処置したU937-DC細胞を、DENV-2 TSV01(MOI-1)に感染させた。感染の24時間後に、NS1を標的とする抗体およびE-タンパク質融合ループを標的とする抗体(4G2)によるフローサイトメトリーを使用して感染生存細胞を定量化した。バーは、三重重複トランスフェクションの平均±SDを示し、データは、2つの独立実験を代表するものである。各細胞タイプ内の処置方法間の統計的有意差は、両側スチューデントt-検定を使用して決定した(
*P≦0.05、
***P≦0.001)。(C)NS1を標的とする抗体およびE-タンパク質を標的とする抗体(4G2)で染色された生存U937-DC細胞の代表的なFACSプロット。HMW:高分子量、LMW:低分子量。(D)3p10LG9の抗ウイルス効果は、I型インターフェロン依存性である。10ug/mLの抗IFNAR阻止抗体またはアイソタイプ対照のいずれかを添加する前に6時間にわたって、U937-DC SIGN細胞を、immRNA、ポリI:Cでトランスフェクトしたか、またはIFNβで処置した。一晩インキュベーションした後、上清を収集し、インターフェロン刺激応答エレメントにより駆動されるルシフェラーゼレポーター(ISRE-luc)を含むHEK-293T細胞でインキュベートした。上清と共に6時間インキュベーションした後、ルミネセンスを測定した。バーは、2つの独立実験の三重重複トランスフェクションの平均±SDを示す。統計的有意差は、両側スチューデントt-検定を使用して決定した(
*P≦0.05、
**P≦0.01、
****P≦0.0001)。(E)U937-DC細胞を、DENV-2 TSV01(MOI-1)に感染させた。感染の24時間後に、NS1を標的とする抗体およびE-タンパク質を標的とする抗体(抗体4G2)によるフローサイトメトリーを使用して感染生存細胞を定量化した。バーは、2つの独立実験の三重重複トランスフェクションの平均±SDを示す。統計的有意差は、両側スチューデントt-検定を使用して決定した(
***P≦0.001、
****P≦0.0001)。
【
図20】一次ヒト皮膚細胞による3p10LG9取込み。皮膚細胞を、Alexa Fluor647で標識された種々の濃度の3p10LG9でトランスフェクトした。細胞を、感染の24時間後にフローサイトメトリーを使用して分析した。様々な濃度の3p10LG9-redを有する様々な細胞タイプ間の統計的有意差は、反復測定の二元配置ANOVAを使用して算出した(p=0.0026)。記号は、平均±SD、n=3を示す。
【
図21】immRNAによる処置後のA549細胞生存率アッセイ。様々な濃度の3p10LG9(配列番号26)、3p10LA9(配列番号25)または5’三リン酸を有していない3p10LG9でトランスフェクションした24時間後の生存細胞の定量化。Dox(ドキソルビシン)を、細胞死の陽性対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の詳細な説明では、例示のために、本発明を実施することができる具体的な詳細および実施形態が参照される。こうした実施形態は、当業者が本発明を実施することができる程度に十分に詳述されている。他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲を逸脱することなく構造的および論理的変更をなすことができる。種々の実施形態は、必ずしも相互に排他的ではなく、一部の実施形態を1つまたは複数の他の実施形態と組み合わせて新しい実施形態を形成することができる。
【0033】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される技術的および科学用語は全て、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。単数の用語「a」、「an」、「the」は、状況が明らかにそうではないと示さない限り、複数の指示物を含む。同様に、単語「または」は、状況が明らかにそうではないと示さない限り、「および」を含むことが意図されている。用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が優先することになる。
【0034】
本発明は、RIG-Iシグナル伝達の活性化に対する、短鎖5’三リン酸化RNAの構造修飾の効果を精査する本発明者らの努力に基づく。こうした研究中に、既知の短鎖ヘアピンRNA、3p10L(配列番号37)にミスマッチを導入して、RNAステムに沿って挿入を創出することが、生物学的活性に著しい影響を及ぼすことを見出した。研究したRNAは、概して、RIG-Iが単一の配向性で結合することを保証するように、一方の末端が熱力学的に安定なUUCGテトラループの末端であるヘアピンRNAとして設計されていた。したがって、上方(upper)鎖および下方(lower)鎖のキンクを効果的に研究することができた。
【0035】
以前に得られた結晶学的データに基づくと、RIG-IのCTDおよびHEL1は、RNA分子の5’末端および3’末端から最初の4個のヌクレオチドに強固なホールドを形成するが、HEL2iドメインは、上方鎖の5番目のヌクレオチド以降から塩基9までのステム領域と相互作用することが示された(PDB id:4AY2、5F9H、3ZD6、3ZD7、および5E3H)。HEL2iドメインは、RNAのステム領域をスキャンすることが観察された。CARDドメインは、不活性コンフォメーションのHEL2iドメインと相互作用するため、HEL2iの相対的位置が、RIG-I活性化に影響を及ぼすことが示された。RNAのステムに創出された挿入が、ドメインの相対的な動きに対してアロステリック効果を示し、それにより、RIG-IによるI型インターフェロン活性化のロバストネスも達成されることが観察された。特に、RNAステムの9位にプリンを挿入することにより、より高いI型インターフェロン応答が引き起こされる。HDX-MSによるコンフォメーション動力学研究は、RIG-Iに対する3p10LG9(配列番号26)の結合が、既知の3p10L RNA(配列番号37)と比較して、CARD露出を増加させることを証明した。こうした知見は、短鎖ヘアピンRNAの構造修飾が、RIG-IによるI型インターフェロン活性化を増強することができることを強調する。
【0036】
細胞ベースアッセイは、上方鎖(3p10LG9)の9位に導入される挿入が、I型インターフェロン活性化を増強することを示した。3p10LG9のモデルに基づくと、3p10LG9に存在する挿入の付加は、RIG-Iのヘリカーゼ2iドメインの背面と相互作用する。多数の異なるRNAリガンドおよびATP類似体が捕捉されている結晶構造では、HEL2iドメインは、最も可動性のあるドメインであり、RNA鎖をサンプリングする。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、9位のキンクは、おそらくは、HEL2iのα-ヘリックスバンドルを、伸長コンフォメーションに、およびHEL2iドメインにあるCARDドメインを押し出す位置に固定することができるという仮説がたてられる。ATPase活性およびシグナル伝達の提案されている機序に基づくと、より長期間にわたって活性コンフォメーションに固定されたRIG-Iは、I型インターフェロン産生を持続させる能力を向上させることになるだろう。
【0037】
この仮説をさらに検証するために、HDX-MSを実施して、より迅速な水素重水素交換を起こすRIG-Iの内の領域を比較した。HDX-MSでは、より動的な領域はより高い重水素組込みを起こすが、強固な領域はより低い重水素組込みを示すことになる。3p10LG9と結合すると、3p10Lと比較してより高い重水素組込みを示すRIG-Iタンパク質の幾つかの領域が観察された。より高い重水素交換を呈する領域の1つは、不活性コンフォメーションではRIG-I HEL2iドメインに結合する、CARDドメインのラッチペプチド(latch peptide)(Y103~114)である。したがって、RIG-Iが3p10LG9に結合すると、3p10Lに結合したRIG-Iと比較して、CARDがより露出され、重水素組込みからの保護がより少なくなる。3p10LG9と結合した場合に重水素組込みからの高い保護を呈した別の領域は、ヘリカーゼ1ドメインのモチーフIaおよびモチーフIcである。これは、3p10Lと比較して、3p10LG9が、HEL1ドメインとより緊密に結合することを示す。その上、HEL1ドメイン、CTDのキャッピングループ、および3p10LG9に対するCTD結合部位も、3p10Lと比較して3p10LG9がより緊密に結合することを示す、より低い水素-重水素交換を呈した。HEL1ドメインおよびCTDドメインは、CARDドメインと直接相互作用していなかったが、RNAに対してHEL1およびCTDが全体的により緊密に結合することは、ヘリカーゼドメインの全体的なコンパクト化を示す。以前の生化学および構造研究から、ATP結合時のヘリカーゼのコンパクト化は、CTDドメインおよびCARDドメインを接近させ、ドメインの衝突により、下流のシグナル伝達事象のためにCARDが解放される。
【0038】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、得られたデータからは、3p10LG9とのより緊密な結合のため、よりコンパクトなRIG-IヘリカーゼドメインのRNAとの相互作用が、CARDドメインのより持続的な解放に結び付くことになると仮定される。
【0039】
ヘアピンRNAの5位にGを挿入することにより創出されたキンク(3p10LG5)は、I型インターフェロンの活性化を消失させる。3p10LG5のモデルに基づくと、3p10LG5に導入されたキンクは、HEL1ドメインと相互作用する。HEL1は、主にRNA結合に関与する。キンクがHEL1ドメインと相互作用する領域は、モチーフIIaと共に存在する。SF2ヘリカーゼの構造に基づくと、モチーフIIaは、RNAと相互作用し、DEAD-ボックスファミリーメンバー内で構造的保存を呈することが示されている。このモチーフIIaは、RNAとの安定的相互作用を形成するのに重要なモチーフであり得る。以前に観察されたように、hsRIG-IのモチーフIIaにおける重要な残基である残基Q380のプロリンへの突然変異は、I型インターフェロン活性化を消失させた(ルーバーら(Louber et al.)(2015),BMC biology 13:54)。ヘアピンRNAの上方鎖の5位に導入されたキンクは、潜在的には、RNA結合、およびRIG-I活性化に必要なRNAに対するHEL1ドメインのグリップを妨害する可能性がある。RIG-Iがヌクレオチドを判別する能力、およびウラシルの伸長を有する一部のRNAに対する選好性が以前報告されている(ルンゲら(Runge et al.)(2014),PLoS pathogens 10:e1004081;シュネルら(Schnell et al.)(2012),PLoS Pathog 8:e1002839)。9位キンクの異なるヌクレオチドに関して、HEL2iドメイン妨害には、ピリミジンのより小さな側鎖と比較して、より嵩高いプリンの存在が必要とされる可能性がより高い。
【0040】
このように、本発明者らは、ステムRNAの構造修飾が、I型インターフェロン活性化のロバストネスを変更することができることを実証した。I型インターフェロン活性化を消失させるステムの5位へのグアノシン挿入の導入とは異なり、RNAのステムの9位へのプリンに基づく挿入(purine based insertion)は、RIG-I活性化およびI型インターフェロンシグナル伝達を増強することが見出された。
【0041】
インターフェロン活性化に必要な最小RNAリガンドを決定するための以前の研究に基づき、本発明者らは、元の配列に種々の修飾を施し、そうした新たに設計された免疫調節性RNA(immRNA)が宿主細胞にてRIG-I-媒介性自然免疫応答を活性化する能力を試験した。新たに設計された候補immRNAは、親構築物と比較してI型インターフェロン応答の活性化により大きな効力を有することを見出し、それらを使用して、ヒト細胞株ならびにヒト皮膚細胞アッセイモデルの両方において、DENV感染に対するそれらの保護効果を研究し、予防用および治療用分子としてのそれらの可能性を評価した。
【0042】
したがって、本発明は、5’から3’の方向に、構造X1-L-X2を有する新たに発見された低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子に関する。
本明細書では同義的に使用される「低分子ヘアピンRNA」または「shRNA」は、リボース単位を含み、核酸塩基アデニン、グアニン、ウラシル、およびシトシンを含む糖リン酸骨格を有するポリヌクレオチドである低分子ヘアピンリボ核酸分子に関する。それぞれのヌクレオチド単位は、本明細書では、IUPAC命名法に従って、A、G、U、およびCと標記される。さらに、IUPAC命名法に準拠して、記号WおよびSは、弱い相互作用(2つのH結合)、つまりA/U、および強い相互作用(3つのH結合)、つまりG/Cのために使用される。記号YおよびRは、それぞれ、ピリミジン(CおよびU)核酸塩基を有するヌクレオチド、およびプリン(GおよびA)核酸塩基を有するヌクレオチドのために使用される。
【0043】
本明細書に記載のRNA分子は、典型的には最大で80個のヌクレオチド、好ましくは21~65個のヌクレオチド、より好ましくは約25個のクレオチドを含む。RNAは典型的には一本鎖であるが、分子の5’末端および3’末端の自己相補性は、典型的にはループ構造により接続されている2つの相補的アームである5’アームおよび3’アームのステム領域で構成される、慣例的には「ヘアピン構造」と名付けられている二次構造の形成に結び付く。
【0044】
本明細書で開示されたヌクレオチド配列全ては、別様の指定がない限り、常に5’から3’方向に示されている。同様に、分子内のヌクレオチドの位置が言及される場合、前記位置は、常に5’末端から開始してヌクレオチドを数えることにより決定され、5’末端の最初のヌクレオチドは1位である。
【0045】
以下では一般にRNA分子が参照されており、開示されている具体的な分子は全て、5’末端が全て二リン酸化または三リン酸化されていることを除いて非修飾であるが、例えば代謝安定性を向上させるために例えば糖リン酸骨格が修飾されているそうした分子の修飾誘導体を提供することができることが理解される。例示的な修飾としては、限定ではないが、天然骨格の代わりにホスホロチオエートを使用すること、または2’-フルオロ修飾が挙げられる。したがって、非修飾RNA分子に関係して本明細書で開示されている実施形態は全て、本明細書に記載の本質的な構造決定要因が維持される限り、修飾RNA分子でも同様に実施することができる。
【0046】
本発明のshRNA分子は、5’末端が二リン酸化または三リン酸化されている。これは、5’末端ヌクレオチドのリボース単位の5’炭素の一リン酸基が、二リン酸基または三リン酸基に置き換えられていることを意味する。したがって、それらのヌクレオチド配列について本明細書で開示されている分子は全て、それが具体的に示されていなくとも、その5’末端で二リン酸化または三リン酸化されている。三リン酸化分子が特に好ましい。
【0047】
本発明のRNA分子では、X1およびX2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列である。「相補性」が言及される場合、典型的なワトソン-クリック型塩基対合相補性が意味されている。つまり、AはUと相補的であり、GはCと相補的である。相補性は、所与の一本鎖配列伸長の対合ヌクレオチドをこの伸長のヌクレオチドの総数で除算し、それを100倍することにより算出される、%の数値として得ることができる。例えば、10ヌクレオチド長の配列伸長のうち9ヌクレオチドがワトソン-クリック型塩基対合で対合することができる場合、相補性は90%になるだろう。これに準拠すると、「十分な相補性」は、所与の配列伸長の全てのヌクレオチドが、対応する相補的配列とワトソン-クリック型塩基対合で対合することができることを意味する。本発明の分子との関係では、これは、X1の全てのヌクレオチドが、X2の全てのヌクレオチドと塩基対合することができ、その逆も同様であることを意味する場合がある。
【0048】
X1領域は、shRNA分子の5’末端配列であり、したがって本明細書では5’アームとも標記される。同様に、X2領域は、3’末端部分であるため、3’アームとも名付けられる。両配列は、ループ領域Lにより互いに共有結合で連結されている。ループ領域は、X1およびX2の対合配列伸長を連結する1つまたは複数の非対合ヌクレオチドを含むループ領域を形成するヌクレオチド配列である。ループは、1~10ヌクレオチド長、例えば、2~8、2~6、3~5、2~4、または3もしくは4ヌクレオチド長であってもよい。種々の実施形態では、本発明の分子のループ領域Lは、配列YYYR、WWSS、UYYG、YUCR、UUSS、WWCG、UUCS、UUCR、YYCG、YUCG、WUCG、またはUUCGの4ヌクレオチドを含むかまたはからなる。
【0049】
従来の命名法によると、上記で定義されているように、X1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、X2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは、RNA分子のヌクレオチドの総数を示す整数である。典型的には、xは25~65の整数である。したがって、n1は5’末端ヌクレオチドであり、nxは3’末端ヌクレオチドである。この命名法に従うと、n9は、5’末端から数えて9位のヌクレオチドを示し、nx-1(xマイナス1)は、最後から2番目のヌクレオチド、つまり3’末端ヌクレオチドnxの上流のヌクレオチドを示す。「上流」は、本明細書で使用される場合、基準ヌクレオチドに対して5’方向に位置することを指し、「下流」は、本明細書で使用される場合、基準点に対して3’方向に位置することを意味する。
【0050】
本発明のshRNA分子は、二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンクを創出するヌクレオチド挿入を、X1のn7位もしくはそれより上にまたはX2のnx-6位もしくはそれよりも下に含むことを特徴とする。「n7またはそれよりも上に」は、5’末端から数えて7位、または8、9、10、および11位などを含む、その下流(つまり3’方向)の任意の位置を意味し、したがって「nx-6またはそれよりも下に」は、x-6(xマイナス6)位、つまり3’末端ヌクレオチドの6位上流を意味する。したがって、25ヌクレオチド長のRNA分子では、nx-6位は、n(25-6)=n19位になるだろう。用語「キンク」は、本明細書で使用される場合、別の二本鎖ステム構造の一方の鎖のみにある非対合ヌクレオチドにより創出される、ステム構造の歪み(「バルジ」)を記述する。
【0051】
種々の実施形態では、本発明のshRNA分子は、平滑末端化されており、つまりX1およびX2は、キンクを創出する挿入は数えずに、同じ長さであり、分子の5’末端および3’末端ヌクレオチドは、好ましくは、二本鎖ステム構造が両方末端ヌクレオチドを含むようにワトソン-クリック型塩基対合により互いにハイブリダイズしている。
【0052】
種々の実施形態では、X1およびX2は各々、10~25ヌクレオチド長、好ましくは10、11、20、21、30、もしくは31、または10~20ヌクレオチド長、より好ましくは10もしくは11ヌクレオチド長のヌクレオチド配列である。一般に、X1およびX2は、構造にキンクを創出するために挿入されたヌクレオチドである1ヌクレオチドのみだけ長さが異なることが好ましい。生物学的活性は、長さが10ヌクレオチド長、または10ヌクレオチドの倍数、つまり10、20、30塩基対長などであるステム領域の場合に、最も高いと考えられることが見出された。10塩基対長の二本鎖ステム領域を有する低分子RNA分子が好ましい。
【0053】
X1およびX2が、キンクを創出するヌクレオチド挿入を除き、互いに完全に相補的であるshRNA分子が特に好ましい。
キンクを創出するヌクレオチド挿入は、原理的には任意の長さを有してもよいが、最大で5個のみ、好ましくは最大で3個、より好ましくは1または2個、最も好ましくは1個のみのヌクレオチド長の短いヌクレオチド挿入であることが好ましい。挿入は、任意のヌクレオチドで作製することができるが、挿入は、プリンヌクレオチド、つまりAまたはGからなることが好ましい。種々の実施形態では、挿入は、AおよびGから選択される単一のヌクレオチドであることが好ましい場合があり、そうした実施形態の一部では、活性がより高いためAがさらにより好ましい。
【0054】
shRNAの生物学的活性を調節することに関して言えば、5’アーム、つまりX1配列への挿入が、一般により効果的であると考えられることが見出された。したがって、挿入はX1配列にあることが好ましい。
【0055】
さらに、上記でも考察されているように、挿入の位置は、活性に著しい影響を及ぼすことが見出された。X1配列のn7位またはそれより上から、X1配列の3’末端前の1ヌクレオチドまで、つまりループ領域が始まる前の最後の対合ヌクレオチドの上流にあるヌクレオチド(X1配列の最後から2番目のヌクレオチド)までにおける挿入が好ましい。7位および8位における挿入が機能的であり得るが、生物学的活性は、挿入が9位またはそれよりも上にある場合に著しく増加されることが見出された。好ましい位置は、9位、および9位~最初のループヌクレオチドの2または3位ヌクレオチド上流、好ましくは3位ヌクレオチド上流の位置である。5’アームが11ヌクレオチド長である分子では、これは、少なくとも5’末端から下流の位置であり、同時に最初のループヌクレオチドの3位上流であるため、9位が特に好ましいことを意味するだろう。
【0056】
代替的な実施形態では、3’アームに挿入を配置することも可能であり得る。そのような実施形態では、挿入は、X2配列の2番目のヌクレオチド、つまり、X2配列の最初の対合ヌクレオチドのすぐ下流のヌクレオチド、またはnx-6位までの任意の次位置、つまりX2配列の3’末端から7位上流であってもよい。そのような位置としては、nx-7、nx-8、およびnx-9が挙げられる。
【0057】
種々の実施形態では、X1は、
【0058】
【化4】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、から本質的になるか、またはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである。これら配列では、太字ヌクレオチドは、好ましくは挿入であり、つまり対合しない。本明細書で開示されている全ての例示的なX
1配列では、挿入されたヌクレオチド、つまり非対合ヌクレオチドは、好ましくは9位にある。そのような実施形態では、X
2配列は、挿入されたヌクレオチドを除いて、この配列の完全相補体であることが好ましい。
【0059】
したがって、種々の実施形態では、X2は、
【0060】
【化5】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、から本質的になるか、またはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである。こうした実施形態では、X
2は、好ましくはヌクレオチド挿入を含まず、したがって、挿入は5’アームに位置する。また、こうした実施形態では、X
1配列は、挿入されたヌクレオチドを除いて、この配列の完全相補体であることが好ましい。
【0061】
好ましいループ配列と共に、本発明のshRNA分子は、好ましくは、
【0062】
【化6】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、から本質的になるか、またはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである。これら配列では、太字ヌクレオチドは、挿入であり、つまり対合しない。したがって、挿入されたヌクレオチドは、好ましくは9位にある。
【0063】
本発明は、配列番号25~32および42~43、特に25、26、42、および43を含むか、から本質的になるか、またはからなるshRNA分子にさらに関する。
本発明の種々の実施形態では、shRNA分子は、自然免疫受容体レチノイン酸誘導性遺伝子1(RIG-I)、特にホモサピエンス(Homo sapiens)RIG-Iに結合することをさらに特徴とする。結合は、好ましくは、他の免疫受容体またはRLRファミリーの他のメンバーなどの他の潜在的な結合パートナーよりも好ましくはRIG-Iに対して生じるという点で特異的である。この選好性は、結合親和性が、他の受容体に対するものよりも少なくとも10×、好ましくは少なくとも100×高いことを意味する場合がある。
【0064】
また、本発明により包含される種々の代替的な実施形態では、shRNAは、上記で規定されている位置ではなく、むしろ5’アームのさらに上流に、または3’アームのさらに下流にヌクレオチド挿入を有してもよい。一部の実施形態では、n5位の挿入が好ましい場合があるが、本発明はそれに制限されない。そのような分子、特に配列番号30に示されているヌクレオチド配列を有するshRNAは、RIG-Iアンタゴニストとして作用し、したがってRIG-I媒介性シグナル伝達を抑制することができることが見出された。ヌクレオチド挿入の位置が異なることは別にして、上記に記載のようにX1のn7位もしくはそれより上にまたはX2のnx-6位もしくはそれよりも下にヌクレオチド挿入を有するshRNAについて本明細書で開示されている全ての実施形態は、ステムの末端により近い非対合ヌクレオチドの挿入を有するそうしたshRNA分子にも同様に適用可能である。
【0065】
本発明のshRNA分子は、免疫調節性RNA(immRNA)であり、つまり免疫系を調節するという点で有用性を有する。典型的には、これは、それらが免疫刺激性であることを意味するが、一部の実施形態では、免疫抑制活性が所望な場合もある。
【0066】
したがって、本発明は、本発明による少なくとも1つのshRNA分子を含む組成物にも関する。また、種々の実施形態では、そのような組成物は、配列または構造が異なる多数のshRNA分子を含んでいてもよい。本発明によるそのような複数のshRNA分子は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種、またはそれよりも多くの異なる種のshRNA分子を含んでいてもよい。本発明のRNA分子に加えて、こうした組成物は、これらに限定されないが、本発明によるものではない他のRNA分子を含む種々の他の成分を追加で含んでいてもよい。
【0067】
組成物は、医薬組成物、特に免疫刺激組成物であってもよい。そのような組成物では、shRNA分子はアジュバントとして作用し、したがって、そのような組成物に共に含まれていてもよく、または別々に製剤化されていてもよい選択された抗原に対する免疫応答を増加させることができる。そのような組成物では、shRNAは、その代わりにまたはそれに加えて、アジュバントとして作用するだけでなく、それ自体が免疫刺激活性を有していてもよく、したがって例えば、抗ウイルス剤または抗がん剤として作用することができる。
【0068】
例示的な免疫刺激組成物としては、病原体または毒素などの、実際のワクチン、例えば弱毒化ウイルスもしくは細菌、またはウイルスタンパク質もしくは細菌タンパク質をさらに含んでもよいワクチン組成物が挙げられる。そのような実施形態では、shRNA分子は、アジュバントとして使用されてもよい。
【0069】
その代わりに、組成物は、任意選択で活性抗ウイルス剤をさらに含む抗ウイルス組成物であってもよい。
さらに別の代替形態では、組成物は、任意選択で活性抗がん剤をさらに含む抗がん組成物であってもよい。例示的な抗がん剤としては、限定ではないが、化学療法剤および細胞チェックポイント阻害剤が挙げられる。好適なチェックポイント阻害剤としては、限定ではないが、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤、およびPD-L1阻害剤が挙げられる。好適な化学療法剤としては、限定ではないが、抗体、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、および抗微小管剤が挙げられる。
【0070】
抗ウイルス剤および抗がん剤では両方とも、本発明のshRNA分子は、活性作用剤であってもよく、または活性作用剤である抗ウイルス剤または抗がん剤と共製剤化もしくは共投与されてもよい。後者の実施形態では、shRNAは、アジュバントまたは活性作用剤または両方として作用してもよい。
【0071】
組成物の具体的なタイプとは無関係に、組成物は、典型的には、薬学的に許容される賦形剤など、意図されている目的のために公知であるかまたは使用される1つまたは複数の賦形剤をさらに含んでいてもよい。そのような成分としては、助剤、溶媒などの担体、および保存剤などが挙げられる。
【0072】
したがって、アジュバントまたは抗ウイルス剤または抗がん剤としての本発明のshRNA分子の使用が、明示的に企図される。したがって、種々の実施形態では、本発明は、本発明のshRNA分子、あるいはそれを必要とする対象の免疫系を刺激するための、またはウイルス感染症もしくはがんを治療もしくは予防するための方法で使用するためのものを含む任意の組成物をさらに特徴とする。対象は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。同様に、本発明は、それを必要とする対象の免疫系を刺激するための、またはウイルス感染症を治療もしくは予防するための、またはがんを治療もしくは予防するための方法であって、本発明によるshRNA分子または本明細書に記載の組成物の有効量を前記対象に投与する工程を備える方法を包含する。「有効量」は、この関連で使用される場合、所望の生物学的応答、つまり、典型的には非刺激状態と比べた免疫系の活性化またはウイルス感染症の治療をもたらすのに必要な量を指す。したがって、有効量は、治療有効量または予防有効量であってもよい。そのような方法では、shRNA分子は、ワクチン接種剤などの活性作用剤、または抗ウイルス剤もしくは抗がん剤などの治療的活性作用剤と共に共投与してもよい。
【0073】
上記に記載の使用および方法では、投与は、局所的であってもよくまたは全身性であってもよい。
本発明の種々の実施形態では、治療または予防しようとするウイルス感染としては、これらに限定されないが、デングウイルス感染が挙げられる。
【0074】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示されているimmRNAは、がん治療または予防(防止)に使用される。したがって、ウイルス感染症を治療または予防するための上記に記載の方法は、同様に、がん治療または予防の様々な徴候のために実施することができる。
【0075】
本発明者らは、ヌクレオチド挿入をステム構造に創出する構造修飾により、shRNA活性を調節することができることを見出した。この知見の結果として、本発明は、前記知見を活用する方法であって、所与の低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子を、5’アームにヌクレオチドを挿入することにより修飾して、その生物学的活性を増加させるという方法にも関する。こうした方法では、鋳型shRNAは、好ましくは、5’から3’の方向に、
X1-L-X2
(式中、
X1およびX2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であり、
Lは、ループ領域を形成するヌクレオチド配列であり、
X1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、X2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは25~65の整数である)の構造を有する。種々の実施形態では、shRNAは、本発明の修飾shRNA分子について上記に記載のように定義された要素X1、X2、およびLに関わる。こうした鋳型は、二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンクを創出するヌクレオチド挿入を、X1のn7位もしくはそれよりも上にまたはX2のnx-6位もしくはそれよりも下に導入することにより修飾される。また、さらなる実施形態では、そのような挿入は、RIG-Iアンタゴニストとして作用するshRNAについて上記に記載されているように、異なる位置であってもよい。そのような挿入を生成するための好適な方法は当業者に公知であり、当該分野で日常的に実施されている。さらに、そのような分子を生成するための例示的な技法は、本明細書の例のセクションにて具体的な配列を参照することにより本明細書に記載されている。加えて、既に存在していない場合、鋳型分子を、それが二リン酸化または三リン酸化されるように5’末端をリン酸化することにより修飾してもよい。これに好適な方法は、当業者に公知である。
【0076】
本発明のRNA分子に関係して本明細書に開示されている全ての実施形態は、本明細書に記載の全ての組成物、使用、および方法に同様に適用可能であり、その逆も同様であることが理解される。
【0077】
本発明は、以下の例によりさらに説明される。しかしながら、本発明は、例示されている実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例0078】
物質および方法
タンパク質発現および精製
pETSUMO中のヒトRIG-I(hsRIG-I)構築物およびCARDを有していないヒトRIG-I(hsRC2)の構築物を、Rosetta II大腸菌(Escherichia coli)細胞(ノバジェン社(Novagen)、米国マディソン(Madison)所在)へと形質転換し、抗生物質カナマイシン(50mg/L)およびクロラムフェニコール(37mg/L)を有する2.5%(w/v)グリセロール50mMリン酸緩衝液pH7.4で補完されたLB培地で増殖させた。培養物を、OD600が0.8に到達するまで200rpmで振とうしながら37℃で増殖させ、培養物を18℃に冷却し、0.5mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)で20時間誘導した。細胞を、4℃で10分間4000rpmにて遠心分離することにより回収し、-80℃で保管した。回収した細胞を解凍し、25mM HEPES pH8.0、500mM NaCl、10%(v/v)グリセロール、および5mM β-MEを含む溶解緩衝液に再懸濁した。細胞を、800barでホモジナイザー(GEA社)に通すことにより、溶解した。溶解物を4℃で40分間40000rpmにて遠心分離することにより清澄化した。ヘキサヒスチジンタグを有する目的のタンパク質を含む上清をインキュベートし、Ni-NTAビーズ(サーモフィッシャー社(Thermofisher))で精製した。溶出した後、目的のタンパク質を、1:40(w/w)比のSUMOプロテアーゼを用いて4℃にて一晩切断した。タンパク質を、Ni-ヘパリンHPタンデムカラムでさらに精製して、プロテアーゼおよび切断されたHis-タグをトラップし、タンパク質をさらに仕上げた。それらを、HiLoad 16/600 Superdex200(GEヘルスケア社(GE Healthcare))カラムを使用してサイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製し、vivaspin30000MWCOカットオフ(GE,ヘルスケアライフサイエンス社(GE,Healthcare Life Sciences))で濃縮し、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析し、その後NanoDrop(登録商標)分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)、米国所在)を使用して280nmの吸光度を測定することにより定量化した。タンパク質を、25mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、5%(v/v)グリセロール、および2mM DTTを含む緩衝液で保管し、液体窒素で瞬間凍結した。
【0079】
RNAのin vitro転写
RNAを、IDT(インテグレイテイッドDNAテクノロジーインコポレイティッド社(Integrated DNA Technologies,Inc))で化学的に合成されたT7プロモーターを含む相補的DNAオリゴ対を使用して転写した。手短に言えば、相補的DNAオリゴ対を、95℃に加熱し、室温へとゆっくり冷却することによりアニーリングさせた。in vitro転写反応は、40mM Tris-HCl pH7.9、30mM MgCl2、2mMスペルミジン、10mM DTT、0.01%Triton-X100、5mM GTP、および4mM NTP(CTP、ATP、およびUTP)、1μMのアニーリングしたDNA鋳型、400nM T7 RNAポリメラーゼ、0.2U/mL熱安定性無機ピロホスファターゼ中で16時間37℃にて実施した。転写されたRNAを、1容積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)、続いてエタノール沈澱により精製した。RNAペレットを、10mM HEPES緩衝液pH7.4に再懸濁し、Hi-Trap Q HPカラムによるさらなる精製に供した。溶出したRNAを、エタノール沈澱に供し、20%変性尿素-PAGEでさらに精製した。予想サイズを有するRNAをゲルから切除し、抽出し、続いてエタノール沈澱した。精製したRNAを、10mM MOPS pH7、1mM EDTA、および50mM NaClを含む緩衝液に再懸濁した。
【0080】
このようにして産生されたRNA分子は、テーブル1に示されている。太字は、構造にキンクを創出するステム領域中の非対合ヌクレオチドを示す。使用されるimmRNAは全て、そうではないと明示的に示されていない限り、5’三リン酸化されていた。
【0081】
【表1】
NADH結合ATPaseアッセイ(NADH coupled ATPase assay)
hsRIG-IのATPaseアッセイを、1mM NADH、100U/ml乳酸デヒドロゲナーゼ、500U/mlピルビン酸キナーゼ、2.5mMホスホエノールピルビン酸を含む5×アッセイミックスの存在下の、25mM MOPs pH7.4、150mM KCl、2mM DTT、および0.01%TritonX-100を含む緩衝液で実施した。ATPのKmを決定するために、20nMの目的のタンパク質を使用した。飽和量のRNAを、1μMの濃度で添加し、タンパク質RNA混合物を、反応開始前に2時間インキュベートした。39nMから5000nMまでの範囲の8つの異なる濃度に希釈した1対1モル比のATPおよびMgCl
2を添加することにより反応を開始させ、96ウェルプレート形式でCytation 3 Cell Imaging Multimode Reader(バイオテック社(BioTek))を使用して340nmのAbを室温にて10分間にわたってモニターした。データは全て三重重複で取得し、ミカエリス-メンテン式を使用したGraphPad Prism(登録商標)バージョン6プログラム(グラフパッドソフトウェアインコポレイティッド社(GraphPad Software,Inc))を使用して、NADH加水分解の速度をATP濃度の関数としてプロットした。速度は、10分間の期間にわたって得た。速度はバックグラウンドNADH分解について補正されている。
【0082】
細胞培養およびIFN-β誘導アッセイ
HEK293細胞に由来するHEK-Lucia(商標)RIG-I細胞およびTHP-1細胞に由来するTHP1-Dual(商標)は、分泌Luciaルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するように生成された細胞株である。このレポーター遺伝子は、多量体IFN刺激応答エレメント(ISRE)により増強されるIFN誘導性ISG54プロモーターの制御下にある。細胞を、T-75フラスコ中の10%ウシ胎仔血清で補完されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、ギブコ社(GIBCO))で維持した。IFN-β誘導アッセイは、50,000細胞/ウェルの播種密度で96ウェルプレートにて実施した。細胞に、LyoVec(インビトロジェン社(Invivogen))を使用して、300nMから6nMまでの様々な濃度のRNAでトランスフェクトした。24時間後、10μLの細胞培養培地を収集し、50μlのQUANTI-Luc(商標)(Luciaルシフェラーゼの活性を定量的に測定するために必要な成分を全て含むアッセイ試薬)と混合した。Biotek Synergy H1プレートリーダ(バイオテック社(Biotek)、アメリカ合衆国バーモント州ウィヌースキー(Winooski)所在)を使用して、ルミネセンスを測定した。また、タイムポイント実験を、96ウェルプレート形式で100nM RNAを使用して最大で72時間にわたって実施した。
【0083】
細胞ベース阻害アッセイ
細胞ベース阻害アッセイを、HEK-Lucia(商標)RIG-I細胞を使用して実施した。HEK-Lucia(商標)RIG-I細胞を50,000細胞/ウェルの播種密度でプレーティングし、製造業者の推奨に従ってLyoVecを使用して、300nMから6nMまでの範囲の異なる濃度のアンタゴニスト3p10LG5と共に10nMの3p10Lでトランスフェクトした。24時間後、10μLの細胞培養培地を収集し、50μlのQUANTI-Luc(商標)と混合し、Biotek Synergy H1プレートを使用して、ルミネセンスを測定した。アッセイは全て、Corning96ウェルプレートにて三重重複で実施した。阻害剤の最大半量阻害濃度(IC50)を、GraphPad Prismバージョン6(グラフパッドソフトウエア社(GraphPad
Software)、米国カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla)所在)を使用して決定した。
【0084】
水素/重水素交換(HDX)と組み合わせた質量分析法(HDX-MS、Hydrogen/Deuterium exchange coupled with mass spectrometry)
25mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5%グリセロール、および2mM DTT中の5μlの10μM RIG-Iタンパク質を、10倍過剰のRNAリガンド3p10LG5、3p10LG9、および3p10LA9と共に4℃で1時間インキュベートした。タンパク質複合体混合物を、20μlのD2O交換緩衝液(50mM
HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、2mM DTT)に希釈し、4℃でインキュベートし、25μlの氷冷4M gHCL、1%トリフルオロ酢酸と混合することによりクエンチした。試料を、3M gHCLを含むD2O交換緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、2mM DTT、および3M gHCL)中で一晩室温でインキュベートした。反応をクエンチした後、試料をHDXプラットフォームに注入するまで、試料チューブを直ちにドライアイスに置いた。注入に際して、試料を、200μl min-1で固定ペプシンカラム(2mm×2cm)に通し、消化ペプチドを2mm×1cm C8 trapカラム(アジレント社(Agilent))で捕捉し、脱塩した。ペプチドを、2.1mm×5cm C18カラム(1.9 m□Hypersil Gold、サーモフィッシャー社(Thermofisher))で、5分間にわたって4%-40%CH3CNおよび0.3%ギ酸の線形勾配を用いて分離した。試料取り扱い、タンパク質消化、およびペプチド分離は、4℃で実施した。質量分析データは、Orbitrap質量分析計(Q Exactive、サーモフィッシャー社(Thermofisher))を使用して取得した。測定分解能は、m/z400で65,000だった。HDX分析は、各タンパク質リガンド複合体の単一調製物を用いて三重重複で実施した。各ペプチドエンベロープの強度加重平均m/zセントロイド値を算出し、続いて重水素組込みのパーセンテージに変換した。推定70%の重水素リカバリーに基づき、および重水素交換緩衝液の既知80%の重水素含有量を考慮して逆交換の補正を行った。2つの試料を比較する場合、2つの試料間の差異を算出することにより摂動%Dを決定する。HDX Workbenchにより、各々の表示されている図に示されている滑らかな色勾配のHDX摂動キー(%D)に従って各ペプチドを着色する。-5%~5%の%D差異は、有意ではないとみなして、HDX摂動キーに従って灰色に着色する(パスカルら(Pascal et al)、2012)。加えて、独立t-検定を算出して、各時点での試料間の統計的有意(p<0.05)差を検出した。0.05未満のp値を有する少なくとも1つの時点が、データセットの各ペプチドに存在し、差異が有意であることがさらに確認された。
【0085】
データレンダリング:全ての重複ペプチドのHDXデータを、残基平均手法を使用して個々のアミノ酸値に統合した。手短に言えば、各残基について、全ての重複ペプチドの重水素組込み値およびペプチド長をまとめた。より短いペプチドにより重い重みをかけ、より長いペプチドにより軽い重みをかける重み関数を適用した。その後、重みを加えた重水素組込み値の各々を平均して、各アミノ酸について単一の値を得た。各ペプチドの最初の2残基ならびにプロリンを計算から除外した。この手法は、以前記載されているものと同様である(ケッペル&ワイス(Keppel&Weis),2015)。
【0086】
ヒト皮膚DC単離
ヒト皮膚から単離細胞を単離するためのプロトコールは、以前詳細に記載されていた(セルニーら(Cerny et al.)(2014),PLoS Pathog.2014;10(12):e1004548)。ヒト皮膚細胞を単離するための、300mmの真皮節切片を、0.8mg/mlコラゲナーゼ(IV型、ワーシングトン-バイオケミカル社(Worthington-Biochemical))および0.05mg/ml DNaseI(ロシュ社(Roche))を含む、RPMI+10%加熱不活性化FBS(ギブコ社(Gibco))中で12時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を70μmストレーナーで濾過して、単離細胞懸濁物を得た。
【0087】
細胞株
HEK-293T、U937、およびA549細胞(ATCC)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(ギブコ社(Gibco))で補完されたRPMIで増殖させた。DC-SIGNを発現するU937細胞を、レンチウイルストランスフェクションにより生成した(ズストら(Zust et al.)(2013),PLoS Pathog 9:e1003521)。MX1P-lucを発現するHEK-293T細胞は、ゲオルグ コクスにより生成された(コクスら(Georg Kochs et al.),J Gen Virol 90:2990-2994)(ユニバーシティオブフライブルク(University of Freiburg)、ドイツ所在)。ISRE-lucレポータープラスミドを含むHEK-293T細胞を、293fectinトランスフェクション試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))を使用して、0.5μgのISRE-lucプラスミドをトランスフェクトすることにより生成した。
【0088】
RIG-Iノックアウト細胞株を、RIG-Iのエクソン1を標的とするgRNA配列を含むpRRL-gRNA-Cas9-T2AプラスミドによるU937-DC細胞のレンチウイルス形質導入により生成した。RIG-I gRNA含有プラスミドは、アルビン タン博士(Alvin Tan)(ゲノムインスティチュートオブシンガポール(Genome Institute of Singapore)、A*スター社(A*STAR)、シンガポール所在)から得た。レンチウイルス粒子を、以下の3つのプラスミドと共に293fectinトランスフェクション試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))を使用することにより293T細胞で産生した:(i)ビリオン主要構造タンパク質をコードするgag;レトロウイルス特異的酵素に関わるpol;および核からのRNA搬出を促進するrevタンパク質の結合部位であるRREを含むpMDLg/pRRE。(ii)RSV U3プロモーターの転写制御下のHIV-1 revをコードするpRSV-Rev;(iii)VSV-Gエンベロープ発現プラスミドであるpMD2.G。pMDLg/pRRE(addgene #12251)、pRSV-Rev(addgene #12253)、およびpMD2.Gは、ディディエ トロノ教授(スイスローザンヌ(Lausanne)所在)により生成された。形質導入が成功した細胞を、2μg/mlピューロマイシンを有する培養培地を補完することにより選択した。(トルエットら(Truett
et al.)(2000),BioTechniques 29:52-54)に記載の「HotSHOT」ゲノムDNA調製法を使用することにより、ゲノムDNAを細胞から抽出した。精製したDNAを、エクソン1を隣接するプライマー(フォワード:5’GGAGGGAAACGAAACTAGCC3’(配列番号46)およびリバース:5’GCTCCTCAAACTCTGGCAAC3’(配列番号47)を使用した配列決定のために送付した(ファーストベース社(First Base))。配列を、Ensembl(ENSG00000107201.9)のヒトDDX58の公的に入手可能な配列と比較した。
【0089】
ウイルス
ヒト細胞株での感染実験に使用したDENV-2菌株TSV01(NCBI受託番号AY037116.1)は、C6/36蚊細胞にて5~20継代にわたって継代された患者単離株である。一次ヒト皮膚DCの感染に使用したD2Y98Pは、感染性クローンに由来していた。D2Y98Pの増強されたウイルスRNA合成を、NS4bタンパク質の天然突然変異にマッピングした。この突然変異は、ウイルスのIFN阻害能力に影響を及ぼさなかった(グラントら(Grant et al.)(2011),Journal of Virology 85:7775-7787)。
【0090】
I型インターフェロンバイオアッセイでのRNAスクリーニング
HEK-293T MX1P-luc細胞を、1ウェル当たり2.5×104細胞の密度で白色96ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。immRNAを適切な濃度に希釈し、製造業者の使用説明書に従って293fectinトランスフェクション試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))でトランスフェクトした。細胞を24時間インキュベートし、その後溶解し、製造業者の使用説明書に従ってBright-Gloルシフェラーゼアッセイ系(プロメガ社(Promega))を使用してGloMax-Multiマイクロプレートリーダ(プロメガ社(Promega))で分析した。
【0091】
定量PCR(qPCR)
U937-DC SIGN細胞を、24ウェルプレートの10%FBSを有する500μl RPMIに、1ウェル当たり3.0×105細胞の密度で播種し、一晩インキュベートした。immRNAを適切な濃度に希釈し、製造業者の使用説明書に従ってHilymax(ドウジンドウモレキュラーテクノロジー社(Dojindo Molecular Technologies))でトランスフェクトした(三重重複で)。24時間インキュベーションした後、細胞を、500×gで4分間遠心分離し、Trizol試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))に回収し、全RNAを、製造業者の使用説明書に従って回収した。SuperScript VILO cDNA合成キット(インビトロジェン社(Invitrogen))を使用してRNAを逆転写した。PCRプライマーを、インテグレイテイッドDNAテクノロジー社(Integrated DNA Technology)から購入し、定量RT-PCRを、iTaq Universal SYBR Green Supermix(バイオ-ラッドラボラトリー社(Bio-rad Laboratories))を使用して、ABI 7900 HTリアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems))で実施した。プライマー配列は、下記の表に見出すことができる。qPCRデータの分析は、ベータアクチンを参照遺伝子対照として使用して、ΔΔCt方法による相対的定量化により行った。
【0092】
【表2】
I型インターフェロン産生のバイオアッセイ
immRNAトランスフェクト細胞に由来する上清を、0.5μgのISRE-lucプラスミドで前日にトランスフェクトしたHEK-293T細胞でインキュベートし、翌日に96ウェル白色不透明プレートにプレーティングした。上清を6時間インキュベートしてから、溶解し、製造業者の使用説明書に従ってBright-Gloルシフェラーゼアッセイ系(プロメガ社(Promega))を使用してGloMax-Multiマイクロプレートリーダ(プロメガ社(Promega))で分析した。
【0093】
immRNAでトランスフェクトしたRLR発現HEK-293T細胞のI型インターフェロンバイオアッセイ。
HEK-293T細胞を、24ウェルプレートの10%FBSを有するRPMIに1ウェル当たり1.25×105細胞の密度で播種した。50ngのpUNO-hRIG-IまたはpUNO-hMDA5(ルオら(Luo et al.)(2011)、Cell
147:409-422)を、Lyovec(インビトロジェン社(Invivogen))を使用してトランスフェクトし、細胞を一晩インキュベートした。RLRを発現するHEK-293T細胞を、immRNAでトランスフェクトした。細胞に由来する上清を、dsRNAでトランスフェクションした24時間後に回収し、ISRE-lucを発現するHEK-293T細胞を使用してI型インターフェロンバイオアッセイを行った。
【0094】
U937-DC SIGN細胞IFNAR阻止アッセイ
U937-DC SIGN細胞を、1ウェル当たり0.6×105細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、製造業者の使用説明書に従ってHilymax(ドウジンドウモレキュラーテクノロジー社(Dojindo Molecular Technologies))を用いてimmRNAでトランスフェクトした(三重重複で)。6時間後、抗ヒトIFNAR阻止抗体(クローンMMHAR-2、PBLインターフェロンソース(PBL Interferon Source))またはIgGアイソタイプ対照(R&Dシステムズ社(R&D systems))を、10ug/mLの濃度で添加した。一晩のインキュベーション後、上清を回収し、I型インターフェロンのバイオアッセイを行った。U937-DC SIGN細胞を、DENV-2(TSV01)にMOI-1で感染させ、感染を定量化した。
【0095】
DENV-2感染およびフローサイトメトリー分析。
U937-DC SIGN細胞を、1ウェル当たり0.6×105細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、製造業者の使用説明書に従ってHilymax(ドウジンドウモレキュラーテクノロジー社(Dojindo Molecular Technologies))を使用してimmRNAでトランスフェクトした(三重重複で)。A549細胞を、1ウェル当たり1.0×104細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、製造業者の使用説明書に従って293fectinトランスフェクション試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))を使用してimmRNAでトランスフェクトした。24時間インキュベーションした後、トランスフェクトしたU937-DC-SIGNおよびA549細胞を、DENV-2(TSV01菌株)にそれぞれMOI-1およびMOI-5で感染させた。DENV-2を含むRPMIで細胞を2時間インキュベートした。2回洗浄した後、感染細胞を、10%FBSを有するRPMIに再懸濁し、インキュベーターに24時間入れた。FACS分析のために、細胞をCytofix/Cytoperm緩衝液(BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))に再懸濁することにより、洗浄した細胞を固定および透過処理した。デングEタンパク質を、Alexa 647にコンジュゲートされた抗Eタンパク質抗体(4G2)(ATCC)、およびAlexa 488にコンジュゲートされた抗NS1抗体で染色した。こうした細胞の蛍光を、BD FACS Canto IIアナライザー(BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))で測定し、Flowjo(ツリースター社(TreeStar))で分析を行った。NS1およびEタンパク質の両方が陽性染色された細胞を、感染とみなした。
【0096】
ヒト皮膚DCを単離し、以前記載のようにimmRNAをトランスフェクトした。予防研究の場合、トランスフェクションの24時間後、単離したヒト皮膚DCを、DENV-2(D2Y98P菌株)にMOI-5で感染させた。治療研究の場合、単離したヒト皮膚DCを、DENV-2(D2Y98P菌株)にMOI-5で感染させ、感染の4時間、6時間、および24時間後に、immRNAのトランスフェクションを行った。感染72時間後に、フローサイトメトリーを使用して感染細胞を分析して、感染細胞のパーセンテージを決定した。感染4時間後に、1000Uのヒト組換えIFN-b(イムノツールズ社(Immunotools))を細胞に添加した。フローサイトメトリーを、LSRII(ベクトンディッキンソン社(Becton Dickinson)[BD])で実施し、FlowJo(ツリースター社(TreeStar))を使用してデータを分析した。以下の試薬をヒト皮膚DCの染色に使用した:固定可能な生/死色素(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))、抗CD1a(HI149)(バイオレジェンド社(Biolegend))、抗CD11c(B-ly6)、抗CD45(HI30)、抗HLA-DR(L243)(全てBDバイオサイエンス社(BD Biosciences)から)、抗CD141(AD5-14H12)(ミルテニー社(Miltenyi))、抗CD14(RMO52)(ベックマンコールター社(Beckman Coulter))、およびAlexa647にコンジュゲートされた抗Eタンパク質(4G2)(ATCC)。
【0097】
RNAseq実験
単一細胞RNAseq:皮膚細胞サブセットを、フローサイトメトリー分析に記載されているように特定し、96ウェルPCRプレートへと個々に選別(sort)し、直ちに凍結した。単一細胞を、以下のように改変されたSMARTseq2プロトコール(ピセリら(Picelli et al.)(2014),Nature Protocols 9:171-181))を使用して処理した。
【0098】
1. 1mg/ml BSA溶解緩衝液(Ambion(登録商標)サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)、米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在)
2. 1/5反応のIllumina Nextera XTキット(イルミナ社(Illumina)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在)による200pg cDNAの使用
cDNAライブラリーの長さ分布を、DNA高感度試薬キットを使用してPerkin
Elmer Labchip(パーキンエルマー社(Perkin Elmer)、米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在)でモニターした。試料は全て、Illumina HiSeq 4000システム(イルミナ社(Illumina)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在)での2×151サイクルのインデックス付きペアエンドシーケンシング(indexed paired-end sequencing)実行に供した(309試料/レーン)。
【0099】
ペアエンド生リードを、RSEMバージョン1.3.0(36)を使用してヒト参照ゲノムにアラインした。Gencodeによるヒト参照ゲノムGRCh38バージョン25リリースを使用した(https://www.gencodegenes.org/human/release_25.html)。100万リード当たりの転写物(TPM)値を、RSEMバージョン1.3.0(リ&デューイ(Li&Dewey)(2011),BMC Bioinformatics 12:323)を使用して算出し、下流での分析のために対数変換(log2(発現+1))した。品質管理、高度バリアブル遺伝子の選択、主成分分析(PCA)、および差次的遺伝子分析を、Seurat Rパッケージバージョン2.0(バトラーら(Butler et al.)(2018),Nat Biotechnol 36:411-420)を使用して実施した。本発明者らのデータセットの低品質細胞を、検出された遺伝子数の閾値(1細胞当たり最低で200個の固有遺伝子)に基づいてフィルタリングし、本発明者らの全ての単一細胞の少なくとも1.9%で検出されなかった遺伝子を全て破棄し、全てのさらなる分析のために159個の細胞および15174個の遺伝子を残した。データをスケーリングした後、810個の高度バリアブル遺伝子に対して主成分分析(PCA)を実施した。負の二峰性ワルド検定(negative bimodal Wald test)を使用して差次的遺伝子発現を分析し、推定倍数変化の調整されたp値(ベンジャミニ-ホッホバーグ補正)が<0.05だった遺伝子を選択した。
【0100】
バルクRNAseq:1サブセットおよび1ドナー当たり500個の細胞を選別し、PicoPure RNA単離キットを使用してRNAを単離した。cDNAライブラリーを、以下のように改変したピセリら(Picelli et al.)(上記)に従って調製した。
【0101】
1. 1mg/ml BSA溶解緩衝液(Ambion(登録商標)サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)、米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在)
2. 20μM TSOの添加
3. 1/5反応のIllumina Nextera XTキット(イルミナ社(Illumina)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在)による200pg cDNAの使用
cDNAライブラリーの長さ分布を、Perkin Elmer Labchip(パーキンエルマー社(Perkin Elmer)、米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在)でDNA高感度試薬キットを使用してモニターした。試料は全て、Illumina HiSeq 4000システム(イルミナ社(Illumina)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在)での2×151サイクルのインデックス付きペアエンドシーケンシング実行に供した(309試料/レーン)。
【0102】
長さ150bp(対では300bp)のペアエンドリードを、Salmon(バージョン0.11.3)(パトロら(Patro et al.)(2017),Nat Rev Immunol 14:417-419)を使用して、Gencodeバージョン29(フランキッシュら(Frankish et al.)(2018),Nucleic Acids Research 47:D766-D773)から得たヒトトランスクリプトーム配列にマッピングした。Salmonから得られた転写物毎のリード計数を、tx2gene R/Bioconductorパッケージを使用して遺伝子毎の計数に要約した(ソネソンら(Soneson et al.)(2015),F1000Res 4:1521-18)。比較されている条件に関連する試料の遺伝子毎に要約された計数を、DESeq2にロードした(ラブら(Love et al.)(2014),Genome Biol 15:31-21)。少なくとも1つの試料中で少なくとも1つの計数を有する遺伝子を、データセットに維持した。DESeq2を使用して、計数データを、負の二項性一般化線形モデルにフィッティングした。ライブラリーサイズ正規化のためのサイズ係数ならびに各遺伝子の平均および分散パラメーターを、estimateSizeFactorsおよびestimateDispersion機能を使用して推定した。差次的遺伝子発現を、負の二項ワルド検定(negative binomial Wald test)を使用して分析した。推定倍数変化のp値を、多重検定のためにベンジャミニ-ホッホバーグ法を使用して補正し、調整したp値<0.05に基づいて発現が異なる遺伝子を選択した。各細胞タイプにおいてG9刺激時に発現が異なると特定された遺伝子のリストを、それぞれの倍数変化およびp値と共に、Ingenuity Pathway Analysis(商標)(IPA)ソフトウェアに供給した。各細胞タイプにおいて刺激により有意に調節される経路を決定するために、発現の差異に基づく経路濃縮分析をIPAで実施した。
【0103】
実施例1:HEL2iドメインは、RIG-I活性化のためにRNA PAMPをサンプリングする
RIG-Iタンパク質によるRNA検知の構造的基盤を推論するために、ヒトRIG-I HEL-CTD dsRNA複合体構造の5つの入手可能な構造を比較した。インバリアントHEL1-dsRNA-CTDドメインを重ね合わせることにより、HEL2-HEL2iドメインが、dsRNA骨格に沿って相対的に移動することを見出した。HEL2iは、RNA PAMPとの結合時のCARDドメイン解放に中心的な役割を果たす。これは、2つの反対の機能的表面:保存されているRNA認識残基(ヒトRIG-IではK508~Q511)を有する1つのRNAサンプリング表面、およびCARD2ドメインと相互作用し、その解放を抑え込む1つの表面により媒介される(ルオ(Luo)(2014)RNA Biol 11:25-32;ゼンら(Zheng et al.),上記)。5つの構造にわたって、HEL2iは、およそ5塩基対をサンプリングする(上部鎖の5’末端三リン酸化ヌクレオチドから数えて塩基対5~10)。それに固執するわけではないが、この領域の任意の構造的摂動は、互いに対するHEL-CTDドメインの分子内移動に影響を及ぼし、CARD解放の速度論、つまり活性化の閾値を変更することになるという仮説が成り立つ。この仮説を試験するために、RNAヌクレオチド挿入および点突然変異を、コールウエイら(Kohlway et al.)(2013年、上記)により記載されているように、開始immRNA-3p10L(10塩基対のステム領域を有する5’三リン酸化RNA;配列番号37)に導入し、生化学アッセイおよび細胞ベースアッセイの両方を使用して評価した。
【0104】
実施例2:位置特異的グアノシン挿入はRIG-I活性化を変化させる
挿入されたヌクレオチドが、RIG-Iを活性化する3p10L(配列番号37)の能力にどのような影響を及ぼすのかを評価するために、3p10LのdsRNAステムに沿って1つのグアノシン挿入を有する6つのRNA種、すなわち3p10LG5(配列番号30)、3p10LG7(配列番号29)、3p10LG9(配列番号26)、3p10LG17(配列番号28)、3p10LG19(配列番号31)、および3p10LG21(配列番号27)を生成し、これらRNAの相対的IFN産生活性を、3p10Lの活性と比較した(
図1A)。これらRNA分子を、IFN-β発現についてHEK-Lucia(商標)RIG-Iレポーター細胞株を使用して試験して(対照としてHEK-Lucia(商標)null細胞を用いた)、ステム領域におけるどの挿入がより高いIFN-β活性をもたらすことができるかを決定した。ヘアピンRNAのステムの9位にグアノシンが挿入されたRNAの1つ(3p10LG9;配列番号26)は、親免疫調節性RNA(immRNA)3p10Lと比較して少なくとも3倍高いIFN-β誘導を示す、RIG-I活性化の強力な誘導因子だった(
図1B)。7位または17位にGが挿入されたRNAは、3p10Lと同等の活性を示した。飽和濃度のimmRNA(1μM)と共に20nMのhsRIG-Iタンパク質を使用して実施したATPaseアッセイは、3p10Lおよび3p10LG9において、ATPのKcatが、それぞれ9.01s
-1および11.7s
-1であることを明らかにした(
図1C)。したがって、5’ppp末端から少なくとも6塩基対遠ざかるG挿入を有するimmRNAは、アゴニストのままであり、G9位における挿入は、RIG-Iの最も強力な活性化因子である。
【0105】
上記に記載のそうした活性化immRNAとは対照的に、immRNA 3p10LG5(配列番号30)は、酵素活性アッセイでも細胞活性アッセイでも活性を示さず(
図1Bおよび1C)、3p10LG5はRIG-Iを不活化することができることが示唆された。これをさらに証明するために、細胞ベース競合阻害アッセイを使用した。3p10LG5の最大半量阻害濃度(IC
50)は34nMだったことが決定された。これは、漸増濃度の3p10LG5と共に10nM 3p10L(配列番号37)をトランスフェクトすることにより測定した(
図1D)。結果は、3p10LG5が、RIG-Iのアンタゴニストとして作用することを示した。G挿入を有するimmRNAが全てRIG-Iと結合することを保証するため、hsRC2の精製タンパク質およびimmRNAを使用して分析的ゲル濾過実験を実施した。immRNAは全て、生理学的濃度の電解質を有する緩衝液中で安定したRIG-I:RNA複合体を形成することができることが見出された(データ非表示)。まとめると、3p10Lの様々な位置にG挿入を導入することにより、3p10LG9が、試験したものの中で最も強力なRIG-Iアゴニストとして、および3p10LG5がRIG-Iアンタゴニストとして特定された。
【0106】
実施例3:immRNAの9位におけるプリン塩基挿入は効力を増加させる
3p10Lの9位における様々な塩基の挿入がRIG-I活性化を変化させるか否かを評価するために、3p10LG9を、アデノシン、ウリジン、またはシトシンに置き換えた(
図2A)。HEK-Lucia(商標)RIG-I細胞を刺激した24時間後、3p10LG9(配列番号26)およびA9(配列番号25)は、3p10Lで観察された活性の約2倍である同様のIFN-β活性化活性を有する。それに比べて、ピリミジン挿入を有するimmRNA(3p10LC9(配列番号43)およびU9(配列番号42))は、3p10Lと比較して同様のレベルの活性を示した(
図2B)。プリン挿入を有するImmRNA(3p10LG9およびA9)は、ATPaseアッセイにおいてピリミジン挿入を有するものよりも優れており、より高いkcat値(11.7および12.6対8.3および7.3s
-1)およびより高い触媒効率(25.3および29.3対18.9および19.3mM
-1s
-1)が観察された(
図2C)。こうした結果は、9位におけるプリン塩基の挿入は、RIG-I酵素活性およびIFN誘導活性を増加させることにより3p10Lを強化することを明らかにした。
【0107】
実施例4:HDX-MSは、3p10Lと比較して、3p10LG9とRIG-Iと結合に対してより強力なアロステリック効果があることを明らかにした
HDX-MSは、リガンド結合に際するタンパク質動力学を研究するための高感度でロバストな方法である(ゼンら(Zheng et al.)(2017),Nat Commun 8:923;ゼンら(Zheng et al.)(2015)、上記)。HEL2iとCARDとの分子内相互作用、およびRIG-IによるRNA認識中のCARDのアロステリックな解放が明らかにされた。手短に言えば、タンパク質RNA複合体を重水と接触させ、変性させてペプチドにし、ゼンら(Zhengら)(2015年、上記)により記載のようにLC-MSに供した。以前記載のように、HDX Workbenchを使用し、残基平均手法を使用して、HDXデータを統合し、構造モデルにマッピングした(ケッペル&ワイス(Keppel&Weis)82015),Journal of the American Society for Mass Spectrometry 26:547-554;パスカルら(Pascal et al.)(2012),Journal of the American Society for Mass Spectrometry 23:1512-1521;ゼンら(Zheng
et al.)(2015)、上記)。
【0108】
3p10Lよりも増加した3p10LG9の酵素活性および細胞活性の物理学的説明を提供するため、水素/重水素交換と組み合わせた質量分析法(HDX-MS)を使用して、3p10LG9および3p10Lとの結合に際するRIG-Iの構造動力学を分析した。HDXプロファイルは、CARDドメインおよび特にCARD2ラッチペプチド(Y103~114)が、hsRIG-Iとの3p10LG9では、3p10Lと比較してより高い重水素組込みを呈したことを明らかにした。3p10Lと3p10LG9との重要な差異は、3p10LG9が、HEL1ドメイン、特に、RNAと相互作用することが知られているモチーフIa(F296~310)およびIc(I343~366)においてhsRIG-Iとより緊密に結合することを含む。別の観察は、3p10LG9に対するCTDキャッピングループ(F842~856)およびCTD結合領域(V893~904)の結合が、3p10Lと比較してより緊密であることだった(データ非表示)。HDX-MSは、3p10Lよりも緊密にHEL-CTDと結合した3p10LG9は、CARD2-HEL2i分子内阻害インターフェースをさらに不安定化させ、より露出したCARDおよびより大きなRIG-I刺激に結び付くことを明らかにした(データ非表示)。RIG-I 3p10LG9複合体をモデル化すると、挿入されたG9塩基は、HEL2iの後部近傍に位置すると考えられ、G9挿入がHEL2i移動を制限し、CARDをHEL-CTD:3p10LG9複合体から解放する追加の反発力を提供したという結論に結び付いた。
【0109】
実施例5:3p10LA9は、3p10LG9と比較して、時間依存性および細胞タイプ依存性の活性増強を呈した
リードimmRNAの細胞活性をさらに調査するために、細胞ベースの速度論的実験を、3p10L(配列番号37)に対する2つの最良のimmRNA 3p10LG9(配列番号26)およびA9(配列番号25)の濃度依存性応答および刺激後時間の時間応答を見ることにより実施した。HEK-Lucia(商標)RIG-I細胞では、3p10LG9およびA9は、トランスフェクション24時間後、3p10Lよりも高い同様の活性を示した(
図3A)。時間依存性実験では、3つのimmRNAの刺激活性が、24時間後に明らかに検出され、トランスフェクション48時間後および72時間後に継続して増加した。顕著には、3p10A9は、24時間後、3p10LG9よりも強力になり、より多くのルシフェラーゼシグナルを刺激した(
図3B)。その後、第2のタイプの細胞、IRF-Lucレポーターを有する単球細胞であるTHP1-Dual(商標)を使用した。EC
50値を正確に決定することはできなかったが、3p10LA9が最も強力なimmRNAであり、3p10LG9が2番目であり、3p10Lが最弱であると考えられた(
図3C)。THP-1レポーター細胞では、3p10LA9と3p10LG9との差異は、濃度依存性および時間依存性の両様式でもより明白になった(
図3Cおよび3D)。
【0110】
実施例6:様々なimmRNA分子の生化学的特徴付け
様々なimmRNAがRIG-Iを活性化する能力を試験するために、精製組換え全長RIG-Iを、様々な濃度のATPとの反応を開始させる前に、飽和量のimmRNAとのNADH結合ATPaseアッセイに供した。手短に言えば、アッセイは、1mM NADH、100U/ml乳酸デヒドロゲナーゼ、500U/mlピルビン酸キナーゼ、2.5mMホスホエノールピルビン酸を含む5×アッセイミックスの存在下の、25mM MOP pH7.4、150mM KCl、2mM DTT、および0.01%TritonX-100を含む緩衝液中で実施した。こうした実験は、一部のimmRNAは、RIG-I、例えばOHYr05(配列番号26)およびOHYr23(3p10L;配列番号37)を活性化するが、OHYr22(配列番号45)およびOHYr12(配列番号33)などの他のRNA分子は、RIG-Iを活性化することができなかったことを実証した(
図4)。使用した全てのRNAの配列情報は、上記のテーブル1に示されている。
【0111】
テーブル2は、様々なimmRNAに対するmmRIG-I結合のATPase活性のKcat、Km、およびKcat/Km値を示す。
【0112】
【表3】
実施例7:ヒト細胞における様々なimmRNAのインターフェロン誘導能力
immRNAの生物学的機能を、異なるアッセイで試験した。まず、ヒト胚腎臓(HEK-293T)レポーター細胞を、トランスフェクション試薬として293fectinを使用して直接トランスフェクトした。ルシフェラーゼレポーターは、MX1、IFN受容体に結合するインターフェロン(IFN)βの下流にあるIFN刺激遺伝子により駆動される。以前発表された構築物OHYr23/3p10L(配列番号37)を、比較のために使用した。2つの構築物OHYr05およびOHYr06(配列番号26および25;テーブル1を参照)は、IFN産生誘導にOHYr23よりもほとんど10倍のより高い効力を有することを見出した(
図5)。また、インターフェロン誘導能力をTHP1-Dual(商標)細胞で試験した。THP1-Dual(商標)細胞は、ISG54により駆動されるルシフェラーゼレポーターが安定ライゲーションされたヒトTHP-1単球細胞株に由来する。OHYr05のEC50値は、OHYr23と比較してより低かった。これは、OHYr05が、3.47nMというより低い濃度で最大半量インターフェロン応答を誘発することができることを示す(
図6)。また、ImmRNAを試験するための細胞ベースアッセイを、HEK-Lucia(商標)RIG-I細胞(これらは、高レベルのヒトRig-Iを発現するHEK-Lucia(商標)null細胞である)およびHEK-Lucia(商標)null細胞を使用して実施した(
図7)。細胞を、100nM immRNAでトランスフェクトし、アッセイには2つの市販RNAポリI:Cおよび3p-hpRNA(インビトロジェン社(Invivogen))が比較のために含まれていた。3p-hpRNAは、87ヌクレオチド長さの長さを有するA型インフルエンザ(H1N1)に由来するin vitro転写RNA配列である。3p-hpRNAは、RIG-I特異的アゴニストである(
図8aおよび8b)。
【0113】
OHYr16、ポリI:C、および3p-hpRNAの安定性を試験するために、こうしたRNA分子を、HEK-Lucia(商標)RIG-I細胞およびTHP1-Dual(商標)細胞でのトランスフェクション前に、室温で24、48、72、および96時間にわたって無血清培地でインキュベートした。試験したRNAは、無血清培地中で最大96時間安定していた(
図9aおよび9b)。
【0114】
実施例8:OHYr23の生物学的活性を向上させる配列修飾
OHYr23(配列番号37)に幾つかの配列修飾を施し、MX1Pルシフェラーゼレポーターを読出しとして使用して、生物学的活性に対するそれらの影響を試験した。
【0115】
immRNAキンク(ヌクレオチド挿入)の位置およびヌクレオチドの変化
OHYr23(配列番号37)にはキンクがない。しかしながら、OHYr23よりもIFN誘導がより強力であるOHYr05(配列番号26)には、ステムの一方の側にグアニンを付加することによりキンクが創出されている。キンクの位置がimmRNA機能に影響を及ぼすか否かを試験した。ヌクレオチド5位(OHYr10;配列番号30)、19位(OHYr11;配列番号31)、および21位(OHYr01;配列番号27)を含むステム末端に近いキンクが、IFN産生を減少させたことを見出した(
図10A)。したがって、生物学的機能を増加させるには、ステムから9位またはそれよりも上のヌクレオチドでのキンクが好ましい。さらに、ヘアピンの5’側のキンクが、ステムから同じ距離にあるヘアピンの3’側のキンクよりも性能が良好である(OHYr02をOHYr05と比較する)(
図10B)。
【0116】
次に、immRNAの生物学的活性が、キンク位置にあるヌクレオチドの性質により影響を受けたか否かを評価した。9位キンクのプリン(OHYr05ではグアニンおよびOHYr16ではアデニン)は、9位キンクのピリミジン(OHYr17ではウラシルおよびOHYr18ではシトシン)よりも良好に作動する(
図10C)。
【0117】
自然免疫活性化に対するimmRNAステムの長さの影響
immRNAステム長が、RNA結合性分子との結合およびその後の下流シグナルにどのように影響を及ぼすかを見出すために、本発明者らは、種々の長さのimmRNAを比較した。
図11Aに示されているように、10ヌクレオチド長のOHYr05が、最も高い活性を有する。OHYr23(10ヌクレオチド長、
図11)、OHYr06(20ヌクレオチド長、
図10A)、およびOHYr08(30ヌクレオチド長、
図11)にも高い活性が見出された。対照的に、より短い構築物OHYr12(6ヌクレオチド長)およびOHYr20(9ヌクレオチド長)、ならびにより長い構築物OHYr03(11ヌクレオチド長)、OHYr07(12ヌクレオチド)、およびOHYr13(14ヌクレオチド長)は、生物学的活性が低いかまたは生物学的活性を示さなかった(
図11)。
【0118】
こうしたデータは、10ヌクレオチドの単位のステム長が、生物学的に最も活性な種であり、10ヌクレオチド単位ルール外のより短いステムまたはより長いステムは活性がより低いことを示す。
【0119】
実施例9:ヒト細胞におけるimmRNAの抗ウイルス効果
IFNの誘導は、細胞の幾つかの抗ウイルス防御戦略の1つである。immRNA誘導性抗ウイルスエフェクター機序が、その後の感染を阻止することができるか否かを試験するため、U937-DC-SIGN細胞(安定的にDC-SIGNを発現する単球細胞)およびヒト肺線維芽細胞細胞株A594を、3p10LG9/OHYr05(配列番号26)または3p10L/OHYr23(配列番号37)でトランスフェクトし(
図12A)、続いてDENVに感染させた(
図12B)。陰性対照として、5’三リン酸化されていない3p10LG9構築物を使用した(G9neg)。E-タンパク質特異的蛍光標識抗体およびNS1タンパク質特異的蛍光標識抗体を使用してフローサイトメトリーにより細胞内の感染を検出することにより感染細胞のパーセンテージを定量化した。両ヒト細胞株において、3p10LG9は、3p10Lよりも効率的に、用量依存的な様式でIFN応答を活性化した。
【0120】
immRNAが、DENV感染を阻害することができるかどうかを決定するため、本発明者らは、U937-DC-SIGN細胞およびA549細胞を3p10Lおよび3p10LG9でトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、細胞をDENV-2に感染させた。E-タンパク質特異的蛍光標識抗体およびNS1タンパク質特異的蛍光標識抗体を使用してフローサイトメトリーにより細胞内のウイルスタンパク質を検出することにより感染細胞のパーセンテージを定量化した。U937-DC-SIGN細胞およびA549細胞の両方において、3p10LG9および3p10Lは、用量依存的な様式でDENV感染を低減し、3p10LG9は、3p10Lよりも強力だった(
図12Cおよび12D)。興味深いことには、62nMよりも多くのいずれかのimmRNAによるU937-DC SIGN細胞のトランスフェクションは、I型インターフェロン産生の効力低減および抗ウイルス効果の消失をもたらした。全体として、こうした結果は、3p10LG9が、IFNシグナル伝達、ならびにU937-DCおよびA549ヒト細胞株でのDENV2感染に対する抗ウイルス応答の誘導に、3p10Lと比較してより大きな効力を有することを示す。
【0121】
実施例10:ex vivoヒト抗原提示細胞での自然免疫活性化(アジュバント効果)
樹状細胞およびマクロファージを含む抗原提示細胞(APC)は、適応免疫応答および免疫記憶を生成するための必須メディエーターである。感染またはワクチン接種後、APCは、表面のまたはAPC内部の病原体認識受容体(PRR)に結合する病原体関連分子パターン(PAMP)により活性化される。RNA結合性分子RIG-IおよびMDA5は、APCを活性化するために特異的に標的とすることができるPRRの例である。immRNAがRIG-Iを介して一次ヒト細胞を活性化する可能性を試験するために、ヒト皮膚をモデル器官として使用した。皮膚(乳房切除手術から)は、ヒト研究のために入手できる少数の器官の1つであり、一般にヒト組織でのAPC集団に代表的な数多くの樹状細胞サブセットおよびマクロファージを含むため非常に価値がある。
【0122】
健康な皮膚試料を処理して、immRNAによるトランスフェクションおよび下流分析に使用することができる単離細胞懸濁物を調製した。皮膚細胞の調製およびDENVによる感染の方法は、以前記載されている(サーニーら(Cerny et al.)(2014),PLoS Pathog.2014;10(12):e1004548)。CD14+皮膚樹状細胞(DDC)、CD11c+ DDC、CD141+ DDC、およびランゲルハンス細胞(LC)を、染色およびゲーティング戦略により区別した。
【0123】
皮膚におけるDCの効率的なDENV感染は、DENVの全身蔓延にそれらが重要な役割を果たすことを示唆する。感染DCは、感染部位からリンパ節などの二次リンパ器官までウイルスを運搬する可能性がある。immRNAが一次ヒト皮膚細胞の感染を阻止することができるか否かを試験するため、健康な皮膚試料を処理して、immRNAによるトランスフェクションおよびその後のフローサイトメトリー分析のための単離細胞懸濁物を調製した(サーニーら(Cerny et al.)、上記)。まず、どの細胞が最も効率的にimmRNAでトランスフェクトされたかを、フローサイトメトリーにより追跡することができる蛍光標識型の3p10LG9(3p10LG9-RED)を使用して試験した。全ての細胞タイプがトランスフェクト可能であり、取込みは、CD141
+ DDCが最も効率的であり、その次がCD11c
+ DDCおよびランゲルハンス細胞であり、CD14
+ DDCが最も低効率の取込みを示した。トランスフェクション試薬を用いずにimmRNA-REDを細胞に添加した場合、取込みは最小限であった。これは、ファゴサイトーシスによるimmRNA取込みが最小限だったことを実証した(
図20)。
【0124】
まず、どの細胞が最も効率的にトランスフェクトされるかを、フローサイトメトリーにより追跡することができる蛍光標識型のOHYr05(OHYr5-RED)を使用して試験した。全ての細胞タイプがトランスフェクトされたが、取込みは、MP、CD14+
DDC、およびCD11c+ DDCが最も効率的だった(データ非表示)。トランスフェクション試薬を用いずにimmRNA-REDを細胞に添加する場合、取込みは最小限であった。これは、ファゴサイトーシスによるimmRNA取込みが最小限であることを実証する。
【0125】
実施例11:ex vivoヒトAPCでのimmRNAの予防的および治療的抗ウイルス効果
immRNAで処置したヒト皮膚APCがDENV感染から保護されたか否かを試験した。そのため、皮膚単離細胞懸濁物を、250nM、125nM、および62nMのOHYr05(配列番号26)、OHYr23(配列番号37)、およびOHYrNEG(5’リン酸化されていない配列番号26)で処置し、続いて24時間後に、上清をISREルシフェラーゼアッセイのために収集し、細胞をMOI 5でDENVに感染させた。感染48時間後、細胞を、フローサイトメトリーに基づく感染定量化のために染色した(サーニーら(Cerny et al.)、上記)。3p10LG9によるヒト皮膚APCの予防的処置は、ISREルシフェラーゼアッセイに基づくと、3p10Lで処置されたものと比較してより効率的にI型IFNを誘導した(
図13A)。また、immRNAによるヒト皮膚APCの予防的処置は、用量依存的な様式で細胞をDENV感染から保護した。EC50値は、3p10LG9が、CD11c
+ DDC(3p10LG9:13.6nM、3p10L:81.0nM)、LC(3p10LG9:15.5nM、3p10L:123.3nM)、およびCD14
+ DDC(3p10LG9:15.5nM、3p10L:121.6nM)では、3p10Lと比較して抗ウイルス応答の誘導がより強力だったことを示した(
図13B)。試験した最も低い濃度(62nM)では、3p10LG9は、感染したCD11c
+ DDC(p≦0.01)およびCD14
+ DDC(p≦0.05)の数の低減において、3p10Lよりも有意に、より効果的だった(
図13C~13E)。
【0126】
immRNAが、DENV感染皮膚APCの治療剤として作用することができるかどうかを決定するために、皮膚単離細胞懸濁物を、MOI 5でDENVに感染させ、感染の4、6、および24時間後に62nMの3p10LG9で処置した。感染48時間後、細胞を、フローサイトメトリーに基づく感染定量化のために染色した。感染効力は、個々の皮膚試料間で最大40%のばらつきがあったため、感染を、感染後4時間の時点に由来するG9negに対して正規化した。3p10LG9の阻害効果は全体的には中程度だった。3p10LG9で処置した後の感染細胞の有意な減少は、ランゲルハンス細胞でのみ、ならびに感染後4時間および6時間の初期時点でのみ見られた(
図14B)。CD11c
+ DDC(
図14A)およびCD14
+ DDC(
図14C)では、わずかな治療効果が初期時点で見られた。感染24時間後に処置した場合、48時間後の感染3p10LG9処置CD11c
+ DDC細胞のパーセンテージは、G9neg処置細胞と比較してより高くなる傾向があった。いかなる理論にも束縛されることは望まないが、ウイルスが、この細胞サブセットでは抗ウイルス応答をより効率的に阻害し、RIG-Iリガンドの活性を覆したと考えることが可能である。全体として、こうしたデータは、3p10LG9が、一次ヒト皮膚APCにおけるDENV-2感染に対して中程度の治療的抗ウイルス効果を有していたことを示唆する。
【0127】
実施例12:immRNAのアジュバント活性
自然免疫細胞刺激因子としてのRIG-Iアゴニストは、ワクチンのアジュバントとして使用することができる。ワクチンアジュバントとしてのimmRNAの能力をin vivoで試験するため、マウスを、3p10LG9(配列番号26)と混合した市販のDENV-2ウイルス様粒子(VLP)で、トランスフェクション試薬JetPEIとの混合物を注射することにより免疫した。陰性対照として、3p10Lneg(5’末端に三リン酸基を有していない3p10LG9)と混合したVLP、およびアジュバントを有していないVLPを使用した。陽性対照として、VLPをpolyICと混合した。3p10LG9を、VLPと組み合わせてアジュバントとして使用した場合、G9negとの製剤と比較して、VLPに対する抗体応答を増加させた(
図15)。3p10LG9アジュバントVLPで免疫したマウスは、デングウイルス菌株D2Y98Pで負荷した後、G9neg処置群および非アジュバントVLP処置群と比較して、ウイルス量の低減を示した。また、3p10LG9アジュバントVLPで免疫したマウスは、負荷後の非アジュバントVLP処置群と比較して、生存優位性を示した(
図15)。
【0128】
in vivoでのアジュバント活性に加えて、ヒト細胞におけるimmRNAのアジュバント能力も研究した。この実験では、ヒト一次皮膚抗原提示細胞を、immRNAで処置して、免疫共刺激分子CD80を上方制御した(
図16)。
【0129】
immRNA処置の活性化プロファイルを、トランスフェクション35時間後に、単離およびバルク選別皮膚APCサブセットのmRNA配列決定(RNAseq)により評価した。1人のドナーに由来する合計159個の単離APC(CD11c
+ DDC、CD141
+ DDC、CD14
+細胞、およびLCの組合せ)中で発現が異なる遺伝子(DEG)の主成分分析は、3G10LG9処置細胞およびG9neg処置細胞を明白に分離した。3G10LG9処置細胞中の上位6つの下方制御遺伝子には、ケモカインCXCL5およびサイトカインIL-1Bおよびリボソームタンパク質が含まれていた(データ非表示)。上位6つの上方制御遺伝子は、5つのインターフェロン誘導性遺伝子(ISG15、ISG20、IFI6、IFIT3、およびIFITM3)および免疫細胞ホーミングケモカイン受容体CCR7を含んでいた(
図17)。1人よりも多くのドナーでのimmRNA活性化後のトランスクリプトーム変化をさらに評価するため、5人のドナーに由来するバルク選別皮膚APCサブセットを配列決定した。単離細胞分析と同様に、CD14
+細胞は、他のAPCサブセットとは転写が異なっていた(データ非表示)。それにもかかわらず、細胞タイプ間にはDEGの大きな重複が存在し、immRNA媒介性活性化の少なくとも一部は、皮膚APCサブセット全てに共通していたことを示した。同時に、単離細胞分析で特定された上位12個のDEGの幾つかが、バルク細胞分析で確認された(データ非表示)。宿主細胞での抗ウイルス応答に関連する規定されたセットの遺伝子に基づき選択されたDEGのヒートマップは、種々の遺伝子が、3p10LG9処置細胞およびpIC処置細胞の両方で上方制御されたことを示した。しかしながら、3p10LG9は、pICと比較して、抗ウイルス宿主応答遺伝子の一般により強力な活性化因子であると考えられた。これは、immRNAおよびpICのリガンドであるRIG-IおよびTLR3の細胞タイプ特異的発現レベルに関係する可能性がある。1細胞タイプ毎のDEGのIngenuity Pathway Analysisは、個々のAPCサブセットには上位3つの経路が共通していたことを明らかにした。しかしながら、他の経路は、CD141
+細胞でより著しかった「抗ウイルス自然免疫におけるRIG-I様受容体の役割」など、より細胞タイプ特異的だった。次いで、この細胞タイプは、抗原提示経路には関連していなかった。
【0130】
こうしたデータは、immRNAが、一次ヒトAPCにおいて抗ウイルス転写プログラムを効率的に活性化することを強調した。これは、APCが、自然感染中の抗ウイルス応答に重要な役割を果たすことが知られているため重要である。
【0131】
実施例13:ImmRNA媒介性ウイルス阻害は、RIG-I依存性およびI型IFN依存性である
短鎖ヘアピンimmRNA分子が、RIG-Iに結合してMDA5には結合しないか否かを実験的に試験した。そのために、immRNA構築物を、HEK293T細胞に、RIG-Iを過剰発現するプラスミドまたはMDA5を過剰発現するプラスミドのいずれかと共に共トランスフェクトした。IFNシグナル伝達の3p10LG9活性化が、RIG-I過剰発現により著しく増強され、この増強は、MDA5過剰発現と比較してより大きかったことが見出された(
図18A)。次に、ヒトRIG-Iのエクソン1を標的とするように設計されたgRNAによるCRISPR-cas9媒介性遺伝子ノックダウンを使用したRIG-Iノックアウト(RIG-I KO)U937-DC-SIGN細胞を生成し、そうした細胞をimmRNAおよびG9negでトランスフェクトした。RIG-I KO U937-DC SIGN細胞でのインターフェロン刺激性遺伝子(ISG)発現は、3p10LG9または3p10Lによるトランスフェクション後、有意に阻害された(
図18B)。この阻害は、G9neg(対照)処置RIG-I KO細胞でのIFNB転写物レベルがWT細胞と比較してわずかに増加したにも関わらず(1.3倍増)、観察された。RT-qPCRで使用したプライマーは、gRNAによる妨害の標的領域だったエクソン1から遠く離れた領域に対して設計されていたため、DDX58転写物レベルは、タンパク質の非存在にも関わらず依然として検出可能だった。RIG-I KO G9neg対照処置細胞でのDDX58転写物レベルは、WT細胞と比較して有意により高かった(2.4倍)。しかしながら、RIG-I KO細胞におけるISGのベースラインレベルのこの増加は、ISREルシフェラーゼアッセイで検出されたルシフェラーゼシグナルに増加がなかったため、I型インターフェロン活性化に対して有意な効果を示さなかった(
図19A)。こうした結果は、3p10LG9が、親構築物3p10Lと比較して、IFN刺激遺伝子のより強力な誘導因子であり、IFNおよびISGの上方制御は、RIG-I依存性だったことを示した。抗ウイルス効果が、RIG-I依存性だったか否かを決定するため、WTおよびRIG-I KO U937-DCを、immRNAまたはポリI:C(低分子量または高分子量)のいずれかで予防的に処置し、24時間後に細胞をDENV-2に感染させた。I型インターフェロン活性は、WTでのみ観察され、RIG-IノックアウトU937-DC細胞では観察されなかった(
図19A)。RIG-I KO U937-DC細胞は、WT U937-DC細胞と比較して、有意により高いパーセンテージのDENV-2感染を示した。immRNAまたはポリI:Cで事前に処置した場合、DENV複製は、WTでは有意に阻害されたが、RIG-I KO U937-DC SIGN細胞では有意には阻害されなかった(
図19Bおよび19C)。これは、観察された抗ウイルス効果がRIG-I依存性だったことを示唆した。
【0132】
3p10LG9で観察された抗ウイルス効果が、I型インターフェロン依存性だったかどうかを決定するため、U937-DC SIGN細胞を、3p10LG9でトランスフェクトし、インターフェロンアルファ受容体(IFNAR)阻止抗体を使用して、RIG-Iシグナル伝達に応答して産生されるI型インターフェロンによるIFN活性化を防止した。抗IFNAR抗体の存在下では、ISRE誘導性ルシフェラーゼシグナルが効率的に阻害され、アッセイの機能性が実証された(
図19D)。重要なことには、抗IFNAR阻止抗体は、3p10LG9の抗ウイルス効果を消失させ、DENV-2は、G9neg処置U937-DC SIGN細胞と同様に効率的に複製した(
図19E)。要約すると、実験は、3p10LG9で処置されたU937-DC SIGN細胞で観察された抗ウイルス効果が、RIG-I依存性およびI型インターフェロンシグナル依存性だったことを示した。
【0133】
実施例14:がん細胞株A549に対するimmRNAの細胞傷害効果
ImmRNA 3p10LG9(配列番号26)および3p10LA9(配列番号25)は、濃度の増加と共に細胞傷害効果の増加を示した。5’三リン酸を有していない3p10LG9は、対照として含まれており、細胞傷害効果を示さなかった。この対照は、トランスフェクション手順が細胞に対して細胞傷害効果を示す可能性を除外した。この実験では、A549細胞を96ウェルプレートに播種した。1日後、細胞を、239fectinを使用してimmRNAでトランスフェクトし、37℃で24時間インキュベーターでインキュベートした。その後、CCK-8試薬(ドウジンドウ社(Dojindo))を細胞に添加し、30分間暗所でインキュベートしてから、停止溶液を添加した。比色定量試験は、生細胞中のデヒドロゲナーゼ活性に依存し、1ウェル当たりのOD値は、生細胞の数に比例する。OD450値を、プレートリーダで測定した(
図21)。
【0134】
本発明は、本明細書にて幅広くおよび一般的に記載されている。属の開示内に入るより狭義の種および亜属群の各々も、本発明の一部を形成する。これは任意の主題をその属から除去する条件または否定の制限を有する本発明の属の記載を含み、これは取り除かれた題材が本明細書に具体的に記述されているか否かに関わらない。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群の観点で記載されている場合、当業者であれば、本発明は、それによりマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群の観点でも記載されていることを認識するだろう。
【0135】
当業者であれば、本発明は、目的を実施し、言及されている結果および利点ならびにそれらに伴うものを得るように十分に構成されていることを容易に理解するだろう。さらに、本明細書で開示された本発明には、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに様々な置換および改変をなすことができることは、当業者であれば直ちに明らかであろう。本明細書に記載されている組成物、方法、手順、処置、分子、および特定の化合物は、現時点での好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲に対する限定とは意図されていない。当業者であれば、それらにおける変化および他の使用を企図することになり、それらは、特許請求の範囲により定義されている本発明の趣旨内に包含される。本明細書における以前に発表された文献の列挙または考察は、そうした文献が技術水準の一部であるかまたはありふれた一般知識であることを認めるものとしては必ずしも解釈されるべきではない。
【0136】
本明細書で例示的に記載されている本発明は、本明細書にて具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で好適に実施することができる。したがって、例えば、用語「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含むこと(containing)」などは、拡張的におよび非限定的に解釈されるものとする。したがって、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、表記されている整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を排除しないことを意味すると理解されることになる。加えて、本明細書中で採用されている用語および表現は、説明のための用語として使用されており、限定のための用語ではない。そのような用語および表現には、図示または記載されている特徴またはそれらの部分の任意の均等物を除外する意図はないが、特許請求されている本発明の範囲内で種々の修飾が可能であることが認識される。したがって、本発明は、例示的な実施形態および任意選択の特徴により具体的に開示されているが、本明細書に開示されておりそれらにて具現化されている本発明の改変および変異は、当業者であれば実施することができ、そのような改変および変異は、本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0137】
本明細書で引用された文献および特許文献全ての内容は、参照によりそれらの全体が援用される。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子であって、
5’から3’の方向に、
X
1-L-X
2
(式中、
X
1およびX
2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であり、
Lは、ループ領域を形成するヌクレオチド配列であり、
X
1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、二リン酸化または三リン酸化されており、X
2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは25~65の整数である)
の構造を有し、
前記二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンクを創出するヌクレオチド挿入を、X
1のn7位もしくはそれよりも上にまたはX
2のnx-6位もしくはそれよりも下に含むshRNA分子。
[項目2]
Lは、1~10ヌクレオチド長の、好ましくは2~4ヌクレオチド長のヌクレオチド配列である、項目1に記載のshRNA分子。
[項目3]
前記5’末端のヌクレオチドは、三リン酸化されている、項目1または2に記載のshRNA分子。
[項目4]
平滑末端化されている、項目1~3のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目5]
X
1およびX
2は各々、10~25ヌクレオチド長、好ましくは10、11、20、21、30、もしくは31、または10~20ヌクレオチド長、より好ましくは10もしくは11ヌクレオチド長のヌクレオチド配列である、項目1~4のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目6]
X
1およびX
2は、前記キンクを創出する前記ヌクレオチド挿入を数えずに、同じ長さであり、10、20、または30ヌクレオチド長、好ましくは10である、項目1~5のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目7]
X
1およびX
2は、前記キンクを創出する前記ヌクレオチド挿入を除き、互いに完全に相補的である、項目1~6のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目8]
前記ヌクレオチド挿入は、1~2ヌクレオチドの、好ましくは単一ヌクレオチドのヌクレオチド挿入である、項目1~7のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目9]
前記ヌクレオチド挿入は、X
1におけるヌクレオチド挿入である、項目1~8のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目10]
前記ヌクレオチド挿入は、n7からX
1の最後から2番目の位置までの範囲の位置、またはX
2の2番目の位置からnx-6までの範囲の位置から選択される位置にある、項目1~9のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目11]
前記ヌクレオチド挿入は、n9から前記ループ領域の最初のヌクレオチドの2もしくは3ヌクレオチド上流の位置までの範囲の位置から、または前記ループ領域の最後のヌクレオチドの2もしくは3ヌクレオチド下流の位置からnx-8までの範囲の位置から選択される位置にある、項目10に記載のshRNA分子。
[項目12]
前記ヌクレオチド挿入は、前記X
1配列のn9位にある、項目11に記載のshRNA分子。
[項目13]
前記ヌクレオチド挿入は、プリンヌクレオチドまたはピリミジンヌクレオチド、好ましくはGおよびAから選択されるプリンヌクレオチドである、項目1~12のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目14]
前記ヌクレオチド挿入は、GまたはAである、項目13に記載のshRNA分子。
[項目15]
前記ループ領域Lは、配列UUCGを含むかまたはからなる、項目1~14のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目16]
X
1は、
【化7】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcであり、前記X
1配列は、好ましくは挿入された非対合ヌクレオチドを含み、この非対合ヌクレオチドは、好ましくは9位のヌクレオチドである、項目1~15のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目17]
X
2は、
【化8】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである、項目1~16のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目18]
前記shRNA分子は、
【化9】
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、
配列中、rはgまたはaであり、yはuまたはcであり、wはaまたはuであり、sはgまたはcであり、nは、a、g、u、またはcである、項目1~17のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目19]
ヒトレチノイン酸誘導性遺伝子1受容体(RIG-I)と特異的に結合する、項目1~18のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目20]
前記RNAは修飾されており、任意選択で、ホスホロチオエートRNAであるかまたは2’-フルオロ基により修飾されている、項目1~19のいずれか一項に記載のshRNA分子。
[項目21]
項目1~20のいずれか一項に記載のshRNA分子を少なくとも1つ含む組成物。
[項目22]
項目1~20のいずれか一項に記載のshRNA分子を複数含む、項目21に記載の組成物。
[項目23]
医薬組成物である、項目21または22に記載の組成物。
[項目24]
免疫刺激組成物である、項目23に記載の組成物。
[項目25]
前記免疫刺激組成物は、ワクチンをさらに含むワクチン組成物であり、前記shRNA分子はアジュバントである、項目24に記載の組成物。
[項目26]
任意選択で活性抗ウイルス剤をさらに含む抗ウイルス組成物である、項目23に記載の組成物。
[項目27]
任意選択で活性抗がん剤、好ましくは化学療法剤またはチェックポイント阻害剤をさらに含む抗がん組成物である、項目23に記載の組成物。
[項目28]
1つまたは複数の賦形剤をさらに含む、項目21~27のいずれか一項に記載の組成物。
[項目29]
アジュバントとしての、または抗ウイルス剤としての、または抗がん剤としての、項目1~20のいずれか一項に記載のshRNA分子の使用。
[項目30]
それを必要とする対象の免疫系を刺激するための、またはウイルス感染症もしくはがんを治療もしくは予防するための方法に使用するための、項目1~20のいずれか一項に記載のshRNA分子または項目21~28のいずれか一項に記載の組成物。
[項目31]
それを必要とする対象の免疫系を刺激するための方法であって、項目1~20のいずれか一項に記載のshRNA分子または項目21~25もしくは25~28のいずれか一項に記載の組成物の有効量を前記対象に投与する工程を備える方法。
[項目32]
それを必要とする対象のウイルス感染症またはがんを予防または治療するための方法であって、項目1~20のいずれか一項に記載のshRNA分子または項目20~24もしくは26~28のいずれか一項に記載の組成物の有効量を前記対象に投与する工程を備える方法。
[項目33]
前記投与は、局所的または全身性である、項目31または32に記載の方法。
[項目34]
低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子を修飾するための方法であって、
前記shRNA分子は、
5’から3’の方向に、
X
1-L-X
2
(式中、
X
1およびX
2は各々、二本鎖ステム構造を形成するのに十分な互いに対する相補性を有する8~30ヌクレオチド長のヌクレオチド配列であり、
Lは、ループ領域を形成するヌクレオチド配列であり、
X
1の5’末端に位置する最初のヌクレオチドは、n1と標記され、X
2の3’末端の最後のヌクレオチドは、nxと標記され、xは25~65の整数である)
の構造を有し、
前記二本鎖ステム構造において非対合のままでありキンクを創出するヌクレオチド挿入を、X
1のn7位もしくはそれよりも上にまたはX
2のnx-6位もしくはそれよりも下に導入する工程を備える方法。