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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099772
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電池システム、制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20240718BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240718BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073392
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2022532221の分割
【原出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CC02
5G503DA07
5G503DA15
5H030AA01
5H030AS03
5H030BB01
5H030BB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2次電池のサイクル寿命を向上させる電池システム、制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】電池システム1は、負極に負極活物質を含まない2次電池セル10を少なくとも1つ含む複数の電池ユニット110及び電池ユニットが充電経路又は放電経路に接続された第1状態と、そのどちらにも接続されない第2状態との間を切り替え可能な複数のスイッチ120を含む電池パック100と、充電制御部及び放電制御部を含むバッテリ・マネジメント・システム(BMS)400と、備える。充電制御部は、選択されたa個(aは2以上の整数)のスイッチを同時に第1状態にし、且つ、a個のスイッチ以外のスイッチを同時に第2状態にする第1スイッチ制御部を含み、放電制御部は、選択されたb個(bはaより小さい整数)のスイッチを同時に第1状態にし、且つ、b個のスイッチ以外のスイッチを同時に第2状態にする第2スイッチ制御部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極に負極活物質を含まない電池セルを少なくとも1つ含み、互いに並列に接続可能に配置された複数の電池ユニットと、
前記複数の電池ユニットの各々に対応付けて設けられ、電池ユニットが充電経路又は放電経路に接続された第1状態と、電池ユニットが充電経路及び放電経路のいずれにも接続されない第2状態との間を切り替え可能な複数のスイッチと、
前記複数のスイッチの切り替えを制御することにより、前記複数の電池ユニットの充電制御を実行する充電制御部と、
前記複数のスイッチの切り替えを制御することにより、前記複数の電池ユニットの放電制御を実行する放電制御部と、
を備える電池システムであって、
前記充電制御部は、前記複数のスイッチのうち選択されたa個(aは2以上の整数)のスイッチを同時に前記第1状態にし、且つ、前記複数のスイッチのうち前記a個のスイッチ以外のスイッチを同時に前記第2状態にする第1スイッチ制御部を含み、
前記放電制御部は、前記複数のスイッチのうち選択されたb個(bはaより小さい整数)のスイッチを同時に前記第1状態にし、且つ前記複数のスイッチのうち前記b個のスイッチ以外のスイッチを同時に前記第2状態にする第2スイッチ制御部を含む、電池システム。
【請求項2】
前記複数の電池ユニットに対して直列に接続されるバッファキャパシタと、
前記複数の電池ユニットに接続される充電器から供給される供給電流が第1閾値以上である場合、前記供給電流の少なくとも一部を吸収することにより前記複数の電池ユニットに供給される電流を低減させるように前記バッファキャパシタを制御する、バッファキャパシタ制御部と、を更に備える、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記バッファキャパシタは、前記供給電流を前記第1閾値に低減する、請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記第1スイッチ制御部は、所定の第1切替条件が満たされた場合、前記第1状態にある前記a個のスイッチから選択された1つのスイッチを前記第1状態から前記第2状態に切り替え、且つ、前記第2状態にある前記a個のスイッチ以外の前記スイッチから選択された1つのスイッチを前記第1状態に切り替える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項5】
前記所定の第1切替条件は、前記第1状態にある前記a個のスイッチに対応付けられた少なくともいずれかの電池ユニットの充電状態が第2閾値以上となったことを含む、請求項4に記載の電池システム。
【請求項6】
前記所定の第1切替条件は、前記第1状態にある前記a個のスイッチの少なくともいずれかが前記第2状態から前記第1状態に切り替わってから所定時間が経過したことを含む、請求項4又は5に記載の電池システム。
【請求項7】
前記複数の電池ユニットに対して直列に接続されるコンバータと、
前記複数の電池ユニットに接続される負荷の要求電流が第3閾値以下である場合、前記複数の電池ユニット側の電圧を降圧して前記負荷側に印加することにより、前記複数の電池ユニットの放電電流を低減させて前記負荷に供給させるように前記コンバータを制御する、コンバータ制御部と、を更に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項8】
前記コンバータは、前記複数の電池ユニットの放電電流が前記第3閾値となるように、前記複数の電池ユニット側の電圧を降圧して前記負荷側に印加する、請求項7に記載の電池システム。
【請求項9】
前記第2スイッチ制御部は、所定の第2切替条件が満たされた場合、前記第1状態にある前記b個のスイッチから選択された1つのスイッチを前記第1状態から前記第2状態に切り替え、且つ、前記第2状態にある前記b個のスイッチ以外の前記スイッチから選択された1つのスイッチを前記第1状態に切り替える、請求項1から8のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項10】
前記所定の第2切替条件は、前記第1状態にある前記b個のスイッチに対応付けられた少なくともいずれかの電池ユニットの充電状態が第4閾値以下となったことを含む、請求項9に記載の電池システム。
【請求項11】
前記所定の第2切替条件は、前記第1状態にある前記b個のスイッチの少なくともいずれかが前記第2状態から前記第1状態に切り替わってから所定時間が経過したことを含む、請求項9又は10に記載の電池システム。
【請求項12】
前記複数の電池ユニットの数は、3以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項13】
前記複数の電池ユニットの各々は、互いに並列に接続された3個の前記電池セルを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項14】
前記充電制御における各電池セルに対する充電レートに対する、前記放電制御における各電池セルに対する放電レートの割合は、2以上である、請求項1から13のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項15】
負極に負極活物質を含まない電池セルを少なくとも1つ含み、互いに並列に接続可能に配置された複数の電池ユニットと、
前記複数の電池ユニットの各々に対応付けて設けられ、電池ユニットが充電経路又は放電経路に接続された第1状態と、電池ユニットが充電経路及び放電経路のいずれにも接続されない第2状態との間を切り替え可能な複数のスイッチと、を備える電池システムの制御装置であって、
前記複数のスイッチの切り替えを制御することにより、前記複数の電池ユニットの充電制御を実行する充電制御部と、
前記複数のスイッチの切り替えを制御することにより、前記複数の電池ユニットの放電制御を実行する放電制御部と、を備え、
前記充電制御部は、前記複数のスイッチのうち選択されたa個(aは2以上の整数)のスイッチを同時に前記第1状態にし、且つ、前記複数のスイッチのうち前記a個のスイッチ以外のスイッチを同時に前記第2状態にする第1スイッチ制御部を含み、
前記放電制御部は、前記複数のスイッチのうち選択されたb個(bはaより小さい整数)のスイッチを同時に前記第1状態にし、且つ前記複数のスイッチのうち前記b個のスイッチ以外のスイッチを同時に前記第2状態にする第2スイッチ制御部を含む、制御装置。
【請求項16】
負極に負極活物質を含まない電池セルを少なくとも1つ含み、互いに並列に接続可能に配置された複数の電池ユニットと、
前記複数の電池ユニットの各々に対応付けて設けられ、電池ユニットが充電経路又は放電経路に接続された第1状態と、電池ユニットが充電経路及び放電経路のいずれにも接続されない第2状態との間を切り替え可能な複数のスイッチと、を備える電池システムの制御方法であって、
前記複数のスイッチの切り替えを制御することにより、前記複数の電池ユニットの充電制御を実行する充電ステップと、
前記複数のスイッチの切り替えを制御することにより、前記複数の電池ユニットの放電制御を実行する放電ステップと、を備え、
前記充電ステップは、前記複数のスイッチのうち選択されたa個(aは2以上の整数)のスイッチを同時に前記第1状態にし、且つ、前記複数のスイッチのうち前記a個のスイッチ以外のスイッチを前記第2状態にする第1スイッチ制御ステップを含み、
前記放電ステップは、前記複数のスイッチのうち選択されたb個(bはaより小さい整数)のスイッチを同時に前記第1状態にし、且つ前記複数のスイッチのうち前記b個のスイッチ以外のスイッチを前記第2状態にする第2スイッチ制御ステップを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池システム、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。これに伴い、多くの電気エネルギーを蓄えることができ、かつ安全性が高い蓄電デバイスとして、様々な電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間を金属イオンが移動することで充放電を行う2次電池は高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られており、典型的には、リチウムイオン2次電池が知られている。典型的なリチウムイオン2次電池としては、正極及び負極にリチウムを保持することのできる活物質を導入し、正極活物質及び負極活物質の間でのリチウムイオンの授受によって充放電をおこなうものが挙げられる。
【0004】
また、負極表面上にリチウム金属を析出させることでリチウムを保持するリチウム金属2次電池が開発されている。例えば、特許文献1には、極薄のリチウム金属アノードを用いた高出力リチウム金属アノード2次電池が開示されている。また、特許文献2には、金属粒子が形成された負極集電体上にリチウム金属を形成するリチウム2次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2019-517722号公報
【特許文献2】特表2019-537226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、負極表面上にリチウム等のキャリア金属を析出させることでキャリア金属を保持する2次電池は、充放電を繰り返すことにより負極表面上にデンドライト(負極からの電位が印可されない不活性化したキャリア金属)が形成されやすい。そのため、容量低下が生じやすく、サイクル特性が十分でない。
【0007】
本出願人が鋭意実験を重ねた結果、このような2次電池では、充放電サイクルにおいて低い充電レートで充電を行う一方で高い放電レートで放電を行うことにより、サイクル特性が向上することが見出された。
【0008】
本発明は、負極表面上にキャリア金属を析出させることでキャリア金属を保持する2次電池のサイクル特性を向上させることの可能な電池システム、制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る電池システムは、負極に負極活物質を含まない電池セルを少なくとも1つ含み、互いに並列に接続可能に配置された複数の電池ユニットと、複数の電池ユニットの各々に対応付けて設けられ、電池ユニットが充電経路又は放電経路に接続された第1状態と、電池ユニットが充電経路及び放電経路のいずれにも接続されない第2状態との間を切り替え可能な複数のスイッチと、複数のスイッチの切り替えを制御することにより、複数の電池ユニットの充電制御を実行する充電制御部と、複数のスイッチの切り替えを制御することにより、複数の電池ユニットの放電制御を実行する放電制御部と、備える電池システムであって、充電制御部は、複数のスイッチのうち選択されたa個(aは2以上の整数)のスイッチを同時に第1状態にし、且つ、複数のスイッチのうちa個のスイッチ以外のスイッチを同時に第2状態にする第1スイッチ制御部を含み、放電制御部は、複数のスイッチのうち選択されたb個(bはaより小さい整数)のスイッチを同時に第1状態にし、且つ複数のスイッチのうちb個のスイッチ以外のスイッチを同時に第2状態にする第2スイッチ制御部を含む。
【0010】
この態様によれば、負極に負極活物質を含まない2次電池を含んで構成される電池ユニットについて、充電制御においては、第1スイッチ制御部によりa個の電池ユニットが充電経路に接続され、放電制御においては、第2スイッチ制御部によりa個より少ないb個の電池ユニットが放電される。そのため、各電池セルの充電レートは低減し、放電レートは増加する。これにより、各電池セルのサイクル特性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、負極表面上にキャリア金属を析出させることでキャリア金属を保持する2次電池のサイクル特性を向上させることの可能な電池システム、制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電池システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】2次電池セル10の概略構成の一例を示す図である。
図3】充放電サイクルの実験結果の一例を示す図である。
図4】BMS400の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5】BMS400による充電制御の動作フローの一例を示す図である。
図6】BMS400による放電制御の動作フローの一例を示す図である。
図7】2次電池セル10の変形例の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0014】
[電池システムの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る電池システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
電池システム1は、例えば、電池パック100と、充電器200と、負荷300と、バッテリ・マネジメント・システム(BMS)400と、を含む。電池パック100は、後述するように、互いに並列に接続可能に配置された複数の2次電池セル10を含んで構成される。電池パック100に含まれる2次電池セル10は、例えば、充電器200に接続され、BMS400の制御によって充電器200が供給する充電電流によって充電され得る。また、電池パック100に含まれる2次電池セル10は、例えば、負荷300に接続され、BMS400による制御によって負荷300に電流を供給し得る。
【0016】
電池パック100は、例えば、複数の電池ユニット110と、電池ユニット110毎に設けられたスイッチ120と、電池ユニット毎に設けられた電流センサ130と、電圧センサ140と、コンバータ150と、バッファキャパシタ160とを含む。
【0017】
複数の電池ユニット110は、互いに並列に接続可能に配置される。電池パック100が含む電池ユニット110の数は、特に限定されない。電池ユニット110は、互いに並列に接続された少なくとも1つの2次電池セル10を含む。図1に示す例では、各電池ユニット110は、3つの2次電池セル10を含む。2次電池セル10は、単一の単位電池セルによって構成されてもよいし、複数の単位電池セルが直列に接続されて構成されてもよい。2次電池セル10の構成は、例えば負荷300に応じて調整されてもよい。電池ユニット110が含む2次電池セル10は、それぞれ同一の特性を有していてもよいし、異なる特性を有していてもよい。2次電池セル10の構成の詳細については後述する。
【0018】
スイッチ120は、例えば、電界効果トランジスタやMOSFET等の半導体スイッチ素子によって構成される。スイッチ120の一端は、電池ユニット110の一端と接続される。スイッチ120の他端は、コンバータ150を介して充電器200及び/又は負荷300に接続される。スイッチ120は、BMS400から供給される制御信号に基づいて、電池ユニット110が充電経路及び/又は放電経路に接続した状態(第1状態)と、電池ユニット110が充電経路及び放電経路のいずれにも接続しない状態(第2状態)との間を切り替え可能である。ここで、充電経路は、充電器200からの電流の供給経路(充電経路)である。また、放電経路は、負荷300への電流の供給経路(放電経路)である。
【0019】
電流センサ130は、電池ユニット110に直列に接続される。電流センサ130は、電池ユニット110に流れる電流を検知し、当該電流値をBMS400に供給する。
【0020】
電圧センサ140は、複数の電池ユニット110に対して並列に接続される。電圧センサ140は、各電池ユニット110の両端の電圧を検知し、当該電圧値をBMS400に供給する。
【0021】
バッファキャパシタ160は、BMS400から供給される制御信号に基づいて、充電器300から電池ユニット110に供給される電流の少なくとも一部を吸収することにより、電池ユニット110の充電電流を低減することができる。これにより、充電器200の供給電流が大きい場合であっても、電池ユニット110の充電レートを低く保つことが可能となる。
【0022】
コンバータ150は、BMS400から供給される制御信号に基づいて、電池ユニット110側の電圧を降圧して負荷300側に印加することにより、電池ユニット110の放電電流を低減させた上で負荷300に供給すことができる。これにより、負荷300の要求電流が小さい場合であっても、電池ユニット110の放電レートを高く保つことが可能となる。
【0023】
充電器200は、例えば、外部電源に接続された充電プラグが接続可能な充電コネクタが設けられ、外部電源からの供給電力を2次電池セル10の充電電力に変換するように構成される。
【0024】
電流センサ201は、充電器200に直列に接続され、充電器200から電池パック100への電流(供給電流)を検知して、当該電流値をBMS400に供給する。
【0025】
負荷300は、特に限定されないが、例えば、電動車両(電気自動車、ハイブリッド自動車)の駆動装置等として構成されてよい。
【0026】
電流センサ301は、負荷300に直列に接続され、電池パック100から300への電流(負荷電流)を検知して、当該電流値をBMS400に供給する。
【0027】
BMS400は、例えば、メモリ401と、CPU402と、を含んで構成されるコントローラであって、電池パック100に含まれる2次電池セル10の充電及び放電を制御する。
【0028】
メモリ401は、例えば、RAM、ROM、半導体メモリ、磁気ディスク装置及び光ディスク装置等によって構成され、CPU402による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。各種プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部22にインストールされてもよい。
【0029】
CPU402は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備え、BMS400の全体的な動作を統括的に制御する。CPU402は、メモリ401に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。
【0030】
[2次電池セル10]
図2は、2次電池セル10の概略構成の一例を示す図である。図2に示すように、2次電池セル10は、正極11、負極活物質を有しない負極12及び正極11と負極12との間に配置されたセパレータ13等が外装体14内に封止されたパウチセルであり、正極11及び負極12にそれぞれ接続された正極端子15、負極端子16が外装体14の外部に延出して外部回路に接続できるように構成されている。2次電池セル10の上面及び下面は平面であり、その形状は、方形であるが、これに限定されるものではなく、用途等に応じて任意の形状(例えば、円形等)にすることができる。
【0031】
(正極)
正極11としては、一般的に2次電池に用いられるものであれば、特に限定されないが、2次電池の用途及びキャリア金属の種類によって、公知の材料を適宜選択することができる。2次電池の安定性及び出力電圧を高める観点から、正極11は、好ましくは正極活物質を有する。
【0032】
正極活物質は、金属イオンを正極に保持するための物質であり、金属イオンのホスト物質となる。正極活物質の材料としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物等が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。
【0033】
金属イオンがリチウムイオンである場合、正極活物質としては、例えば、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA,LiNiCoAlO2)、リチウムニッケルコバルトマグネシウム酸化物(LiNiCoMnO2、NCMと称される。なお、元素比の違いによりNCM622、NCM523、NCM811等と表記されることもある。)、コバルト酸リチウム(LCO,LiCoO2)、リン酸鉄リチウム(LFP,LiFePO4)が挙げられる。上記のような正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。正極活物質の含有量は、正極11全体に対して、例えば、50質量%以上100質量%以下であってもよい。
【0034】
正極11は、正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、公知の導電助剤、バインダ、固体ポリマー電解質、及び無機固体電解質が挙げられる。
【0035】
例えば、正極11は、バインダを含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、フッ素系バインダ、水系バインダ、イミド系バインダが用いられる。このようなバインダとしては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PvDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、アラミドなどが用いられる。バインダの含有量は、正極11全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下であってもよい。
【0036】
例えば、正極11は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック(AB)、カーボンナノファイバー(VGCF)、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が挙げられる。導電助剤の含有量は、正極11全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下あってもよい。
【0037】
正極11の単位面積当たりの重量は、例えば、10-40mg/cm2である。正極活物質層12の厚さは、例えば、30~150μmである。正極11の密度は、例えば、2.5~4.5g/mlである。正極11の面積容量は、例えば、1.0~10.0mAh/cm2である。
【0038】
正極11の面積は、好ましくは、10cm2以上300cm2以下であり、より好ましくは20cm2以上250cm2以下であり、更に好ましくは50cm2以上200cm2以下である。
【0039】
正極11の厚さ(上下方向の長さ)は、好ましくは20μm以上150μm以下であり、より好ましくは40μm以上120μm以下であり、更に好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0040】
(負極)
負極12は、負極活物質を有しないものである。負極活物質を有する負極を備える電池は、その負極活物質の存在に起因して、エネルギー密度を高めることが困難である。一方、本実施形態の2次電池セル10は負極活物質を有しない負極12を備えるため、そのような問題が生じない。すなわち2次電池セル10は、金属が負極12の表面に析出し、及び、その析出した金属が溶解することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高い。
【0041】
「負極活物質」とは、電池において電荷キャリアとなる金属イオン又はその金属イオンに対応する金属(以下、「キャリア金属」という。)を負極12に保持するための物質を意味し、キャリア金属のホスト物質と換言してもよい。そのような保持の機構としては、特に限定されないが、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられる。負極活物質は、典型的には、リチウム金属又はリチウムイオンを負極12に保持するための物質である。
【0042】
そのような負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、炭素系物質、金属酸化物、及び金属又は合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン系化合物、酸化スズ系化合物、及び酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記金属又は合金としては、キャリア金属と合金化可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、ガリウム、及びこれらを含む合金が挙げられる。
【0043】
負極12としては、負極活物質を有さず、集電体として用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。なお、負極12にSUSを用いる場合、SUSの種類としては従来公知の種々のものを用いることができる。上記のような負極材料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。なお、「Liと反応しない金属」とは、2次電池セル10の動作条件においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属を意味する。
【0044】
負極12は、好ましくはリチウムを含有しない電極である。そのような態様によれば、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、2次電池セル10は、より安全性及び生産性に優れるものとなる。同様の観点及び負極12の安定性向上の観点から、その中でも、負極12は、より好ましくは、Cu、Ni、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものである。同様の観点から、負極12は、更に好ましくは、Cu、Ni、又はこれらからなる合金からなるものであり、特に好ましくはCu、又はNiからなるものである。
【0045】
「負極が負極活物質を有しない」とは、「ゼロアノード」又は「アノードフリー」ともいうことができ、負極における負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であることを意味する。負極における負極活物質の含有量は、負極全体に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.0質量%以下である。
【0046】
負極12は、好ましくは、表面に、析出するキャリア金属と負極との接着性を高めるための接着層が形成されている。そのような態様によれば、負極12上にキャリア金属、特にリチウム金属が析出する際に、負極12と析出金属との接着性をより向上させることができる。その結果、負極12から析出金属が剥離することを抑制することができるため、2次電池セル10のサイクル特性が向上する。
【0047】
接着層としては、例えば、負極以外の金属、その合金、及び炭素系物質が挙げられる。限定することを意図するものではないが、接着層の例としては、Au,Ag,Pt,Sb,Pb,In,Sn、Zn,Bi,Al,Ni,Cu,グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。接着層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1nm以上300nm以下、より好ましくは50nm以上150nm以下である。接着層が上記態様であると、一層負極12と析出金属との接着性を向上させることができる。なお、接着層が上述した負極活物質に該当する場合、接着層は、負極に対して、10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0048】
負極12の面積は、正極11の面積よりも大きいことが好ましく、例えば、その四方が正極11よりも僅かに(例えば、0.5~1.0mm程度)大きく構成されている。
【0049】
負極12の厚さ(上下方向の長さ)は、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは、1μm以下である。
【0050】
(セパレータ)
セパレータ13は、正極11と負極12を隔離して短絡を防ぎつつ、正極11と負極12との間の電荷キャリアとなる金属イオンのイオン伝導性を確保する部材であり、金属イオンと反応しない部材により構成される。電解液を用いる場合には、セパレータ13は当該電解液を保持する役割も担う。
【0051】
セパレータ13は、セパレータ基材と、セパレータ基材の表面を被覆するセパレータ被覆層とを有することが好ましい。セパレータ基材は、上記役割を担う限りにおいて限定はないが、例えば、多孔質のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はこれらの積層構造により構成される。セパレータ13の面積は、正極11及び負極12の面積よりも大きいことが好ましく、厚さは、例えば、5~20μmであることが好ましい。
【0052】
セパレータ被覆層は、セパレータ基材の両面を被覆しても、片面のみを被覆していてもよい。セパレータ被覆層は、電荷キャリアとなる金属イオンと反応せずにイオン伝導性を確保しつつ、上下に隣接する層にセパレータ基材を強固に接着させるものである。セパレータ被覆層は、そのような特性を備える限りにおいて限定はないが、例えば、ポリビニリデンフロライド(PvDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、アラミドなどからなるバインダにより構成される。セパレータ被覆層は、上記バインダにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機粒子を添加させてもよい。
【0053】
(電解液)
2次電池セル10は、電解液を有していてもよい。電解液は、セパレータ13に浸漬させる。この電解液は、電解質を溶媒に溶解させて作った、イオン伝導性を有する溶液であり、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、電解液を有することにより、2次電池セル10の内部抵抗が低下し、エネルギー密度及びサイクル特性を向上できる。
【0054】
電解質としては、好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiPF6、LiBF4、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClO4、リチウムビスオキサラートボラート(LiBOB)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)が挙げられる。電池1のサイクル特性が一層優れるようになる観点から、リチウム塩としては、LiFSIが好ましい。なお、上記のリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0055】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジエチルカーボネート(DEC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、1,3-ジオキソラン(DOL)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。
【0056】
(外装体)
外装体14は、2次電池セル10の正極11,負極12、セパレータ13、電解液等を収容して密閉封止するものであり、材料としては、例えば、ラミネートフィルムが用いられる。
【0057】
(正極端子及び負極端子)
正極端子15は、一端が正極11の上面(セパレータ13に対向する面と反対側の面)に接続され、外装体14の外部に延出して、他端が外部回路(図示せず)に接続される。負極端子16は、一端が負極12の下面(セパレータ13に対向する面と反対側の面)に接続され、外装体14の外部に延出して、他端が外部回路(図示せず)に接続される。正極端子15、負極端子16の材料としては、導電性のあるものであれば特に限定されないが、例えば、Al、Ni等が挙げられる。
【0058】
[充放電サイクルの実験結果]
ここで、図2に示された構成を有する2次電池セル10を製作した上で、充電レート及び放電レートを様々な値に設定して充放電サイクルを繰り返す実験を行った。製作した2次電池セル10の概要は、以下のとおりである。正極には、面積約16cm2、厚さ約75μmのLiNi2-xAlxO2(x=0.01~0.5)を用いた。負極には、面積約25cm2、厚さ約8μmの銅箔(Cu箔)を用いた。セパレータには、PvDFをコートした微多孔性ポリエチレンフィルムを用いた。電解液には、体積比80%のジメトキシエタン(DME)と、体積比20%のフッ素化エーテルとに、1molのLiN(SO2F)2を混合したものを用いた。
【0059】
図3は、その実験結果の一例を示す図である。図3に示す実験結果のうち、行は充電レート、列は放電レートを示す。また、各セル内の数値は、容量維持率が90%未満となるサイクル数を示す。
【0060】
図3に示すとおり、概ね、充電レートが低い程、又、放電レートが高い程、容量維持率が90%未満となるサイクル数は多いことが分かる。したがって、負極表面上にキャリア金属(例えば、リチウム金属)を析出させることにより該キャリア金属を保持する2次電池においては、充電レートは低く、放電レートは高いほど、サイクル特性が向上すると言える。
【0061】
これは、以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、上述したとおり、本実施形態に係る2次電池セル10では、負極12は負極活物質を有しないため、充電によってキャリア金属が負極12の表面に析出し、又、放電によってその析出したキャリア金属が溶解する。このとき、充電レートが低い程、負極12におけるキャリア金属の析出反応が緩やかになり、不活性化したキャリア金属の析出が抑制される。また、放電レートが高い程、負極12におけるキャリア金属の溶解反応が激しくなり、不活性化したキャリア金属の生成が抑制される。
【0062】
以上より、サイクル特性の観点からは、充電レートに対する放電レートの割合(放電レートを充電レートで除した値)は、より大きい方が好ましいと言える。より具体的には、充電レートに対する放電レートの割合は、1以上が好ましく、1.5以上が更に好ましく、2以上が更に好ましく、3以上が更に好ましく、5以上が更に好ましい。
【0063】
[BMSの機能構成]
図4は、BMS400の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るBMS400は、上述の実験結果等を踏まえて、例えば、充電制御においては充電レートが低くなるようにスイッチ120等を制御し、放電制御においては放電レートが高くなるようにスイッチ120等を制御することが可能である。
【0064】
図4に示すとおり、BMS400は、例えば、充電状態算出部410と、設定記憶部420と、充電制御部430と、放電制御部440と、を含む。BMS400が有するこれら機能モジュールは、メモリ401に記憶されたプログラムをCPU402が実行することによって実現される。また、BMS400は、例えば、設定記憶部420を含む。設定記憶部420は、メモリ402の一部として構成される。
【0065】
(充電状態算出部)
充電状態算出部411は、例えば所定の周期毎に、電流センサ130から取得した電池ユニット110の電流値及び電圧センサ140から取得した電池ユニット110の電圧値に基づいて、2次電池セル10の充電状態を算出し、算出した充電状態を充電制御部430及び/又は放電制御部440等に供給する。ここで、充電状態は、2次電池セル10の充電の状態を示す任意の情報であってよいが、例えば、満充電容量に対する現在の残容量を百分率で示したSOC(State of Charge)を含んでもよい。
【0066】
(設定記憶部)
設定記憶部420は、BMS400による制御に関する各種の設定事項を記憶する。例えば、設定記憶部420は、2次電池セル10の充電制御の具体的内容を規定した充電計画を記憶する。また、例えば、設定記憶部420は、2次電池セル10の放電制御の具体的内容を規定した放電計画を記憶する。これら充電計画及び放電計画は、それぞれ任意に設定可能であってよい。
【0067】
(充電制御部)
充電制御部430は、例えば設定記憶部420に記憶された充電計画に基づいて、充電制御を実行する。充電制御部430は、例えば、第1スイッチ制御部431と、バッファキャパシタ制御部432とを含む。
【0068】
第1スイッチ制御部431は、充電制御において、電池パック100が含むスイッチ120の各々に対して制御信号を供給して各スイッチ120を第1状態と第2状態との間で切り替えることにより、電池パック100が含む各電池ユニット110の充電を制御することができる。例えば、第1スイッチ制御部431は、複数のスイッチ120のうち選択されたa個のスイッチ120を同時に第1状態にし、且つ、複数のスイッチ120のうち当該a個のスイッチ120以外のスイッチ120を同時に第2状態にすることが可能である。このとき、第1状態であるa個のスイッチ120のそれぞれに対応する電池ユニット110は充電経路に接続され、当該a個のスイッチ120以外のスイッチ120のそれぞれに対応する電池ユニット110は充電経路に接続されない。これにより、充電器200から電池パック100に供給される供給電流が、複数の電池ユニット110のうち充電経路に接続された当該a個の電池ユニット110の各々に流入する。ここで、aは、2以上の整数であって、後述するb(放電制御において同時に第1状態となるスイッチ120の個数)より大きい整数として設定され得る。そのため、各2次電池セル10の充電レートが低くなる。
【0069】
第1スイッチ制御部431は、所定の第1切替条件が満たされた場合、第1状態にあるa個のスイッチ120から選択された1つのスイッチ120を第1状態から第2状態に切り替え、且つ、第2状態にあるa個のスイッチ120以外のスイッチ120から選択された1つのスイッチ120を第1状態に切り替える。当該選択の基準は特に限定されないが、例えば、スイッチ120の充電状態、放電充電計画において予め設定されたスイッチ120の序列等を含んでもよい。第1切替条件は、第1状態にあるa個のスイッチ120に対応付けられた少なくともいずれかの電池ユニット110の充電状態が第2閾値以上となったことを含んでもよい。また、第1切替条件は、複数の第2閾値を設けてもよい。また、第1切替条件は、第1状態にあるa個のスイッチ120の少なくともいずれかが第2状態から第1状態に切り替わってから所定時間が経過したことを含んでもよい。また、第1切替条件は、上述した複数の条件を組み合わせて規定されてもよい。
【0070】
バッファキャパシタ制御部432は、充電器200から供給される供給電流が所定の閾値(第1閾値)以上である場合、供給電流の少なくとも一部を吸収することにより電池ユニット110に供給される電流を低減させるようにバッファキャパシタ160を制御することができる。ここで、第1閾値は、任意に設定可能であってよいが、例えば、2次電池セル10の所望する充電レート(例えば、0.1C)に、上述したa(例えば、3)を乗じて得られる値(例えば、0.3C)に設定してもよい。バッファキャパシタ160が電池ユニット110の充電電流を低減させる大きさは、特に限定されないが、例えば、バッファキャパシタ160は、上述した第1閾値まで当該充電電流を低減させてもよい。これにより、2次電池セル10の充電レートが所望する充電レートとなる。
【0071】
放電制御部440は、例えば設定記憶部420に記憶された放電計画に基づいて、放電制御を実行する。放電制御部440は、例えば、第2スイッチ制御部441と、コンバータ制御部442とを含む。
【0072】
第2スイッチ制御部441は、放電制御において、電池パック100が含むスイッチ120の各々に対して制御信号を供給して各スイッチ120を第1状態と第2状態との間で切り替えることにより、電池パック100が含む各電池ユニット110の放電を制御することができる。例えば、第2スイッチ制御部441は、複数のスイッチ120のうち選択されたb個のスイッチ120を同時に第1状態にし、且つ、複数のスイッチ120のうち当該b個のスイッチ120以外のスイッチ120を同時に第2状態にすることが可能である。このとき、第1状態であるb個のスイッチ120のそれぞれに対応する電池ユニット110は放電経路に接続され、当該b個のスイッチ120以外のスイッチ120のそれぞれに対応する電池ユニット110は放電経路に接続されない。これにより、電池パック100から負荷300に供給される放電電流は、複数の電池ユニット110のうち放電経路に接続された当該b個の電池ユニット110から供給される。ここで、bは、整数であって、上述したa(充電制御において同時に第1状態となるスイッチ120の個数)より小さい整数として設定され得る。そのため、各2次電池セル10の放電レートが高くなる。
【0073】
第2スイッチ制御部441は、所定の第2切替条件が満たされた場合、第1状態にあるb個のスイッチ120から選択された1つのスイッチ120を第1状態から第2状態に切り替え、且つ、第2状態にあるb個のスイッチ120以外のスイッチ120から選択された1つのスイッチ120を第1状態に切り替える。当該選択の基準は特に限定されないが、例えば、スイッチ120の充電状態、放電計画において予め設定されたスイッチ120の序列等を含んでもよい。第2切替条件は、第1状態にあるb個のスイッチ120に対応付けられた少なくともいずれかの電池ユニット110の充電状態が第4閾値以下となったことを含んでもよい。また、第2切替条件は、複数の第4閾値を設けてもよい。また、第2切替条件は、第1状態にあるb個のスイッチ120の少なくともいずれかが第2状態から第1状態に切り替わってから所定時間が経過したことを含んでもよい。また、第2切替条件は、上述した複数の条件を組み合わせて規定されてもよい。
【0074】
コンバータ制御部442は、負荷300の要求電流が所定の閾値(第3閾値)以下である場合、電池ユニット110側の電圧を降圧して負荷300側に印加することにより、電池ユニット110の放電電流を低減させて負荷300に供給させるようにコンバータ150を制御することができる。ここで、第3閾値は、任意に設定可能であってよいが、例えば、2次電池セル10の所望する放電レート(例えば、0.3C)に設定してもよい。コンバータ150が電池ユニット110の放電電流を低減させる大きさは、特に限定されないが、例えば、コンバータ150は、上述した第3閾値まで当該放電電流を低減させてもよい。これにより、2次電池セル10の放電レートが所望する放電レートとなる。
【0075】
[動作]
(充電制御)
図5は、BMS400による充電制御の動作フローの一例を示す図である。当該動作処理は、主に充電制御部430が、設定記憶部412に記憶された充電計画に基づいて実行する。
【0076】
充電制御が開始されると、充電状態算出部411は、例えば所定の周期毎に、電池ユニットの充電状態を算出した上で、当該充電状態を充電制御部430に送信する。
【0077】
(S101)
まず、バッファキャパシタ制御部432は、充電器200の供給電流の電流値を電流センサ201から取得した上で、当該供給電流が充電計画に含まれる第1閾値以上であるか否かを判定する。取得された充電器200の供給電流が第1閾値以上でないと判定された場合(S101;No)、処理はS103に進む。
【0078】
(S102)
取得された充電器200の供給電流が第1閾値以上であると判定された場合(S101;Yes)、バッファキャパシタ制御部432は、バッファキャパシタ160に制御信号を供給することにより、当該供給電流を低減させて各電池ユニット110に供給する。
【0079】
(S103)
次に、第1スイッチ制御部431は、充電状態算出部411から供給される電池ユニット110の充電状態に基づいて、全ての電池ユニット110が充電済みか否かを判定する。例えば、電池ユニット110の充電状態が所定の閾値(第5閾値)以上である場合、当該電池ユニット110については充電済みであると判定する。当該第5閾値は特に限定されないが、例えば、80%、85%、90%、95%、99%等であってよい。
【0080】
(S104)
全ての電池ユニット110が充電済みと判定された場合(S103;Yes)、第1スイッチ制御部431は、電池パック100が含む全てのスイッチ120に対して制御信号を供給することにより、全てのスイッチ120を第2状態に切り替える。これにより、当該全てのスイッチ120が第2状態となり、処理が終了する。
【0081】
(S105)
全ての電池ユニット110が充電済みであると判定されなかった場合(S103;No)、第1スイッチ制御部431は、充電計画に基づいて、電池パック100に含まれるスイッチ120のうち、S103で充電状態が所定の閾値(第5閾値)以上であると判定されなかった電池ユニット110に対応するスイッチ120からa個(aは2以上の整数)のスイッチ120を選択する。当該選択の基準は特に限定されないが、例えば、スイッチ120の充電状態、充電計画において予め設定されたスイッチ120の序列等を含んでもよい。
【0082】
(S106)
次に、第1スイッチ制御部431は、選択されたa個のスイッチ120を第1状態に切り替え、当該a個のスイッチ120以外のスイッチ120を第2状態に切り替える。これにより、電池パック100に供給される充電電流は、第1状態である当該a個のスイッチ120に供給される。
【0083】
(S107)
次に、第1スイッチ制御部431は、所定の第1切替条件が満たされるまで、充電を継続する。所定の第1切替条件が満たされると判定された場合(S107;Yes)、処理はステップS103に戻る。上述したとおり、所定の第1切替条件は、例えば、第1状態にあるスイッチ120に対応付けられた電池ユニット110の充電状態が所定の閾値(第2閾値)以上となったことを含んでもよい。また、所定の第1切替条件は、例えば、第1状態にあるいずれかのスイッチ120が第2状態から第1状態に切り替わってから所定時間が経過したことを含んでもよい。
【0084】
(放電制御)
図6は、BMS400による放電制御の動作フローの一例を示す図である。当該動作処理は、主に放電制御部440が、設定記憶部412に記憶された放電計画に基づいて実行する。
【0085】
放電制御が開始されると、充電状態算出部411は、例えば所定の周期毎に、電池ユニットの充電状態を算出した上で、当該充電状態を放電制御部440に送信する。
【0086】
(S201)
まず、コンバータ制御部442は、負荷300の要求電流の電流値を電流センサ301から取得した上で、当該要求電流が放電計画に含まれる第2閾値以下であるか否かを判定する。取得された負荷300の要求電流が第3閾値以下でないと判定された場合(S201;No)、処理はS203に進む。
【0087】
(S202)
取得された負荷300の要求電流が第3閾値以下であると判定された場合(S201;Yes)、コンバータ制御部442は、コンバータ150に制御信号を供給することにより、各電池ユニット110からの放電電流を増加させて負荷300に供給する。
【0088】
(S203)
次に、第2スイッチ制御部441は、充電状態算出部411から供給される電池ユニット110の充電状態に基づいて、全ての電池ユニット110が放電済みか否かを判定する。例えば、電池ユニット110の充電状態が所定の閾値(第6閾値)以下である場合、当該電池ユニット110については放電済みであると判定する。当該第6閾値は特に限定されないが、例えば、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%等であってよい。
【0089】
(S204)
全ての電池ユニット110が放電済みと判定された場合(S203;Yes)、第2スイッチ制御部441は、電池パック100が含む全てのスイッチ120に対して制御信号を供給することにより、全てのスイッチ120を第2状態に切り替える。これにより、当該全てのスイッチ120が第2状態となり、処理が終了する。
【0090】
(S205)
全ての電池ユニット110が放電済みであると判定されなかった場合(S203;No)、第2スイッチ制御部441は、放電計画に基づいて、電池パック100に含まれるスイッチ120のうち、S203で充電状態が所定の閾値(第6閾値)以下であると判定されなかった電池ユニット110に対応するスイッチ120からb個(bはaより小さい整数)のスイッチ120を選択する。当該選択の基準は特に限定されないが、例えば、スイッチ120の充電状態、放電計画において予め設定されたスイッチ120の序列等を含んでもよい。
【0091】
(S206)
次に、第2スイッチ制御部441は、選択されたb個のスイッチ120を第1状態に切り替え、当該b個のスイッチ120以外のスイッチ120を第2状態に切り替える。これにより、電池パック100から負荷300に供給される放電電流は、第1状態である当該b個のスイッチ120から供給される。
【0092】
(S207)
次に、第2スイッチ制御部441は、所定の第2切替条件が満たされるまで、放電を継続する。所定の第2切替条件が満たされると判定された場合(S207;Yes)、処理はステップS203に戻る。上述したとおり、所定の第2切替条件は、例えば、第1状態にあるスイッチ120に対応付けられた電池ユニット110の充電状態が所定の閾値(第4閾値)以下となったことを含んでもよい。また、所定の第2切替条件は、例えば、第1状態にあるいずれかのスイッチ120が第2状態から第1状態に切り替わってから所定時間が経過したことを含んでもよい。
【0093】
[変形例]
上記実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0094】
例えば、2次電池セルは、セパレータではなく固体電解質層を有していてもよい。図7は、変形例にかかる2次電池セル10Aの概略断面図である。図7に示すように、2次電池セル10Aは、正極11と負極と13との間に固定電解質層17が形成された固体電池である。2次電池セル10Aは、実施形態にかかる2次電池セル10(図2)において、セパレータ13を固体電解質層17に変更した上、外装体を有しないようにしたものである。
【0095】
一般に、液体電解質を備える電池は、液体の揺らぎに起因して、電解質から負極表面に対してかかる物理的圧力が場所によって異なる傾向にある。これに対し、2次電池セル10Aは、固体電解質層17を備えるため、負極12の表面にかかる圧力がより均一なものとなり、負極12の表面に析出するキャリア金属の形状をより均一化することができる。これにより、負極12の表面に析出するキャリア金属が、デンドライト状に成長することがより抑制されるため、2次電池(2次電池セル10A)のサイクル特性がさらに優れたものとなる。
【0096】
固体電解質層17としては、2次電池の用途及びキャリア金属の種類によって、公知の材料を適宜選択することができる。固体電解質17は、好ましくはイオン伝導性を有し、電子伝導性を有さないものである。これにより、2次電池セル10Aの内部抵抗を低下させ、2次電池セル10A内部の短絡を抑制することができる。その結果、2次電池(2次電池セル10A)のエネルギー密度、容量、及びサイクル特性を向上させることができる。
【0097】
固体電解質層17としては、例えば、樹脂及び塩を含むものが挙げられる。そのような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、主鎖及び/又は側鎖にエチレンオキサイドユニットを有する樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリビニリデンフロライド、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリアセタール、ポリスルホン、及びポリテトラフロロエチレン等が挙げられる。上記のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0098】
固体電解質層17に含まれる塩としては、特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiB(O2C2H4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4等が挙げられる。上記のようなリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0099】
一般に、固体電解質層における樹脂とリチウム塩との含有量比は、樹脂の有する酸素原子と、リチウム塩の有するリチウム原子の比([Li]/[O])によって定められる。固体電解質層17において、樹脂とリチウム塩との含有量比は、上記比([Li]/[O])が、好ましくは0.02以上0.20以下、より好ましくは0.03以上0.15以下、更に好ましくは0.04以上0.12以下になるように調整される。
【0100】
固体電解質層17は、上記樹脂及び塩以外の成分を含んでいてもよい。例えば、例えば、2次電池セル10が含み得る電解液と同様の電解液を含んでも良い。なお、この場合は、2次電池セル10Aを外装体により封止することが好ましい。
【0101】
固体電解質層17は、正極と負極とを確実に離隔する観点からある程度の厚みを有することが好ましく、他方、2次電池(2次電池セル10A)のエネルギー密度を大きくする観点からは厚みを一定以下に抑えることが好ましい。具体的には、固体電解質層17の平均厚さは、好ましくは5μm~20μmであり、より好ましくは7μm~18μm以下であり、さらに好ましくは、10μm~15μmである。
【0102】
なお、本明細書において、「固体電解質」とは、ゲル電解質を含むものとする。ゲル電解質としては、特に限定されないが、例えば、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含むものが挙げられる。ゲル電解質における高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等が挙げられる。
【0103】
また、例えば、2次電池セル10は、正極又は負極に接触するように配置される集電体を有していてもよい。この場合、正極端子及び負極端子は、集電体に接続される。集電体としては、特に限定されないが、例えば、負極材料に用いることのできる集電体が挙げられる。なお、2次電池セル10が集電体を有しない場合、負極及び正極自身が集電体として働く。
【0104】
また、例えば、2次電池セル10は、負極とセパレータ又は固体電解質層と、正極とを複数積層させて、電池の容量や出力電圧を向上させるようにしてもよい。積層数は、例えば、3以上、好ましくは、10~30である。
【0105】
なお、本明細書において、エネルギー密度が高いとは、電池の総体積又は総質量当たりの容量が高いことを意味するが、好ましくは800Wh/L以上又は350Wh/kg以上であり、より好ましくは900Wh/L以上又は400Wh/kg以上であり、更に好ましくは1000Wh/L以上又は450Wh/kg以上である。
【0106】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…電池システム、10…2次電池セル、11…正極、12…負極、13…セパレータ、14…外装体、15…正極端子、16…負極端子、17…固体電解質、100…電池パック、110…電池ユニット、120…スイッチ、130…電流センサ、140…電圧センサ、150…コンバータ、160…バッファキャパシタ、200…充電器、201…電流センサ、300…負荷、301…電流センサ、400…バッテリ・マネジメント・システム(BMS)、401…メモリ、402…CPU、410…充電状態算出部、420…設定記憶部、430…充電制御部、431…第1スイッチ制御部、432…バッファキャパシタ制御部、440…放電制御部、441…第2スイッチ制御部、442…コンバータ制御部
図1
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図7