(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099810
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】可溶性生体分子の生物学的活性を阻害するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20240718BHJP
A61K 47/50 20170101ALI20240718BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240718BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240718BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240718BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240718BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/50
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/36
A61K47/32
A61P35/00
A61K47/34
A61K47/30
A61K47/42
A61P37/06
A61K45/00
A61K38/20
A61K38/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】124
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074584
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2022089328の分割
【原出願日】2015-10-02
(31)【優先権主張番号】62/059,628
(32)【優先日】2014-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/198,519
(32)【優先日】2015-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/198,541
(32)【優先日】2015-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517114827
【氏名又は名称】ナノティックス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100170221
【弁理士】
【氏名又は名称】小瀬村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ホーソーン,ルイス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD21A
4C076DD60H
4C076EE12A
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4C076EE41
4C076EE41H
4C076EE59
4C076FF02
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA25
4C084NA13
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB261
4C084ZB262
(57)【要約】 (修正有)
【課題】腫瘍の防御システムを弱めることを含む、がんに対する対象自身の免疫系を利用するための代替的なアプローチに基づく方法及び組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの表面及び前記表面に固定された薬剤を有する粒子であって、前記薬剤は、特異的結合ペアの第1のメンバーである標的と選択的に結合し、前記標的の前記粒子との結合は、前記標的と前記特異的結合ペアの第2のメンバーとの相互作用を阻害する、粒子である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面及び前記表面に固定された薬剤を有する粒子であって、
前記薬剤は、特異的結合ペアの第1のメンバーである標的と選択的に結合し、
前記標的の前記粒子との結合は、前記標的と前記特異的結合ペアの第2のメンバーとの相互作用を阻害する、粒子。
【請求項2】
表面及び前記表面に固定された薬剤を含む粒子であって、
前記薬剤は、標的と選択的に結合することができ、
薬剤と前記標的との結合は、前記標的と細胞との間の相互作用を阻害する、粒子。
【請求項3】
前記薬剤は、細胞の表面にある分子と結合する前記薬剤の能力が低減するよう前記粒子上で配向される、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
前記薬剤は、細胞の表面に発現する標的と結合する前記薬剤の能力が低減するよう前記粒子上で配向される、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
前記薬剤は、細胞の表面にある分子との前記薬剤の結合が立体的に阻害されるよう前記粒子上で配向される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記薬剤は、細胞の表面にある標的との前記薬剤の結合が立体的に阻害されるよう前記粒子上で配向される、請求項5に記載の粒子。
【請求項7】
前記表面は、細胞の表面にある分子と結合する前記薬剤の能力が低減するよう配向される、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記細胞はヒト細胞である、請求項2~7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
前記標的の最大寸法は、500nmを超えない、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
前記標的の最大寸法は、200nmを超えない、請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
前記標的の最大寸法は、100nmを超えない、請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
前記標的の最大寸法は、50nmを超えない、請求項11に記載の粒子。
【請求項13】
前記標的の最大寸法は、5nmを超えない、請求項12に記載の粒子。
【請求項14】
前記標的の最大寸法は、1nmを超えない、請求項13に記載の粒子。
【請求項15】
前記標的は、可溶性生体分子である、請求項1~14のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項16】
前記標的は、小分子、タンパク質又は核酸である、請求項1~15のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項17】
前記標的は、ウイルスタンパク質である、請求項1~16のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項18】
前記ウイルスタンパク質は、構造タンパク質である、請求項17に記載の粒子。
【請求項19】
前記ウイルスタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質又はウイルスエンベロープタンパク質である、請求項17又は18に記載の粒子。
【請求項20】
前記標的は毒素である、請求項1~19のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項21】
前記毒素は、細菌毒素、植物毒素又は動物毒素である、請求項20に記載の粒子。
【請求項22】
前記標的は、可溶型の細胞膜結合タンパク質である、請求項16に記載の粒子。
【請求項23】
前記細胞膜結合タンパク質は、細胞表面受容体タンパク質である、請求項22に記載の粒子。
【請求項24】
前記標的は、細胞表面受容体に対するリガンドである、請求項1~23のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項25】
前記リガンドは、サイトカイン、ケモカイン又はリンホカインである、請求項24に記載の粒子。
【請求項26】
前記リガンドは、インターロイキンタンパク質である、請求項25に記載の粒子。
【請求項27】
前記リガンドは、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーリガンド又はその変異体である、請求項24に記載の粒子。
【請求項28】
前記TNFファミリーリガンドは、TNFα又はその変異体である、請求項27に記載の粒子。
【請求項29】
前記TNFファミリーリガンドは、Fasリガンド、リンホトキシン、リンホトキシンアルファ、リンホトキシンベータ、4-1BBリガンド、CD30リガンド、EDA-A1、LIGHT、TLA1、TWEAK、TNFβ、TRAIL又は前述のいずれかの変異体である、請求項27に記載の粒子。
【請求項30】
前記リガンドは、ケモカインである、請求項25に記載の粒子。
【請求項31】
前記標的は、サイトゾル受容体又は核受容体に対するリガンドである、請求項1~21のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項32】
前記薬剤は、細胞表面受容体タンパク質のリガンドである、請求項1~31のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項33】
前記薬剤は、細胞表面受容体タンパク質の天然のリガンドである、請求項32に記載の粒子。
【請求項34】
前記薬剤は、前記薬剤の前記細胞表面受容体タンパク質との結合又は前記薬剤による前記細胞表面受容体タンパク質の活性化が立体的に阻害されるよう前記粒子上で配向される、請求項32又は33に記載の粒子。
【請求項35】
少なくとも1つの表面及び前記表面に固定された薬剤を有する粒子であって、
前記薬剤は、可溶性生体分子と選択的に結合し、
前記可溶性生体分子は、細胞表面受容体タンパク質の形態であり、
前記薬剤は、前記薬剤による前記細胞表面受容体タンパク質との結合又は前記細胞表面受容体タンパク質の活性化が立体的に阻害されるよう前記粒子上で配向される、粒子。
【請求項36】
前記細胞表面受容体タンパク質は、がん細胞によって発現される、請求項32~35のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項37】
前記細胞表面受容体タンパク質は、がん細胞によって可溶型の細胞表面受容体タンパク質として脱離されるタンパク質である、請求項36に記載の粒子。
【請求項38】
前記細胞表面受容体タンパク質は、活性化されると、アポトーシスを誘導する、請求項32~37のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項39】
前記細胞表面受容体タンパク質は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)タンパク質である、請求項38に記載の粒子。
【請求項40】
前記細胞表面受容体タンパク質は、Fas受容体タンパク質である、請求項38に記載の粒子。
【請求項41】
前記細胞表面受容体タンパク質は、TNF関連アポトーシス誘導リガンド受容体(TRAILR)タンパク質、4-1BB受容体タンパク質、CD30タンパク質、EDA受容体タンパク質、HVEMタンパク質、リンホトキシンベータ受容体タンパク質、DR3タンパク質又はTWEAK受容体タンパク質である、請求項38に記載の粒子。
【請求項42】
前記細胞表面受容体タンパク質は、インターロイキン受容体タンパク質である、請求項32~38のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項43】
前記インターロイキン受容体タンパク質は、IL-2受容体タンパク質である、請求項42に記載の粒子。
【請求項44】
前記薬剤は、小分子、大員環化合物、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣化合物、核酸又は核酸類似体である、請求項1~43のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項45】
前記薬剤は、抗体又は抗体の生体分子結合フラグメントである、請求項44に記載の粒子。
【請求項46】
前記薬剤は、抗体の生体分子結合フラグメントであり、前記生体分子結合フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab)2フラグメント、scFvフラグメント及びドメイン抗体から選択される、請求項45に記載の粒子。
【請求項47】
前記薬剤は、非抗体足場タンパク質である、請求項44に記載の粒子。
【請求項48】
前記薬剤は、インターロイキンタンパク質又はその変異体である、請求項44に記載の粒子。
【請求項49】
前記インターロイキンタンパク質は、IL-2タンパク質又はその変異体である、請求項48に記載の粒子。
【請求項50】
前記薬剤は、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーリガンド又はその変異体を含む、請求項44に記載の粒子。
【請求項51】
前記TNFファミリーリガンドは、TNFα又はその変異体である、請求項50に記載の粒子。
【請求項52】
前記TNFファミリーリガンドは、Fasリガンド、リンホトキシン、リンホトキシンアルファ、リンホトキシンベータ、4-1BBリガンド、CD30リガンド、EDA-A1、LIGHT、TLA1、TWEAK、TNFβ、TRAIL及び前述のいずれかの変異体から選択される、請求項50に記載の粒子。
【請求項53】
前記細胞表面受容体タンパク質を活性化する前記薬剤の能力が、前記細胞表面受容体タンパク質の天然のリガンドの前記能力と比較して低減されている、請求項32~52のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項54】
前記薬剤は、前記細胞表面受容体タンパク質を活性化しない、請求項53に記載の粒子。
【請求項55】
前記粒子は、立方体又は球状である、請求項1~54のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項56】
前記粒子は多孔質であり、前記粒子の外側表面及び前記孔の内側表面を含む、請求項1~55のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項57】
前記薬剤は、前記内側表面に固定される、請求項56に記載の粒子。
【請求項58】
複数の孔は、少なくとも50nmの断面寸法を有する、請求項56又は57に記載の粒子。
【請求項59】
複数の孔は、少なくとも100nmの断面寸法を有する、請求項58に記載の粒子。
【請求項60】
前記粒子は球状であり、前記粒子は前記粒子の球面から延びる2つの交差する隆線部をさらに含み、前記隆線部は、(i)前記球状粒子の表面に固定された薬剤の、細胞表面受容体タンパク質との結合、若しくは該薬剤の細胞表面受容体タンパク質の活性化、を阻害する、及び/又は(ii)前記標的が前記薬剤と結合したとき、前記標的と、前記標的が前記第1のメンバーである特異的結合ペアの第2のメンバーとの相互作用を阻害する大きさにされ、配向される、請求項55に記載の粒子。
【請求項61】
前記粒子は、環状(toroidal)である、請求項1~54のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項62】
前記薬剤は、前記粒子の内側円周表面に固定されている、請求項61に記載の粒子。
【請求項63】
前記粒子の直径は、300nmを超えない、請求項1~62のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項64】
前記粒子の直径は、250nmを超えない、請求項63に記載の粒子。
【請求項65】
前記粒子は、角錐、四面体、六面体、八面体、十二面体又は二十面体である、請求項1~64のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項66】
前記粒子は、その頂点の少なくとも1つから外側へ向かう少なくとも1つの突起物を含む、請求項55~65のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項67】
前記粒子は、その頂点から外側へ向かう2つ以上の突起物を含む、請求項66に記載の粒子。
【請求項68】
1つ以上の突起物は、(i)前記球状粒子の表面に固定された前記薬剤の、細胞表面受容体タンパク質との結合、若しくは前記薬剤による細胞表面受容体タンパク質の活性化、を阻害する及び/又は(ii)前記標的が前記薬剤と結合したとき、前記標的と、前記標的が前記第1のメンバーである特異的結合ペアの第2のメンバーとの相互作用を阻害する大きさにされ、配向される、請求項66又は67に記載の粒子。
【請求項69】
前記粒子は、対象の脈管構造中を循環する形状及び大きさにされる、請求項1~68のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項70】
前記粒子の最大寸法は、約1μmを超えない、請求項1~69のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項71】
前記粒子の最大寸法は、750nmを超えない、請求項70に記載の粒子。
【請求項72】
前記粒子の最大寸法は、500nmを超えない、請求項71に記載の粒子。
【請求項73】
前記粒子の最小寸法は、少なくとも約300nmである、請求項1~72のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項74】
複数の薬剤を含み、その複数の薬剤は、約10~約109の薬剤からなる、請求項1~73のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項75】
前記複数の薬剤は、約103~約107の薬剤からなる、請求項74に記載の粒子。
【請求項76】
前記複数の薬剤は、約104~約106の薬剤からなる、請求項75に記載の粒子。
【請求項77】
前記粒子は、2つ以上の薬剤を含む、請求項1~76のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項78】
前記粒子は、少なくとも2つの薬剤を含み、各薬剤は、異なる標的に選択的に結合することができる、請求項1~77のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項79】
前記粒子の表面は、それぞれが異なる薬剤を含む複数の番地(address)を含む、請求項78に記載の粒子。
【請求項80】
前記粒子の表面は、排出誘発因子化合物(excretion inducer compound)を含む、請求項1~79のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項81】
前記粒子は環状形状を有し、前記排出誘発因子は環の外側円周表面と結合している、請求項80に記載の粒子。
【請求項82】
前記粒子の本体は、アルミナ、金属、ガラス、シリカ、ラテックス、プラスチック、アガロース、ポリアクリルアミド、メタアクリレート又はポリマーを含む、請求項1~81のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項83】
前記粒子は、シリコンを含む、請求項1~82のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項84】
前記シリコンは、多孔質シリコンである、請求項83に記載の粒子。
【請求項85】
複数のコーティング分子をさらに含む、請求項1~84のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項86】
前記複数のコーティング分子の少なくとも1つの分子は、前記表面と結合している、請求項85に記載の粒子。
【請求項87】
第2の表面をさらに含み、前記複数のコーティング分子の少なくとも1つの分子は前記第2の表面と結合している、請求項85又は86に記載の粒子。
【請求項88】
リザーバーをさらに含み、前記リザーバーの壁は前記第2の表面を含む、請求項87に記載の粒子。
【請求項89】
部材をさらに含み、前記部材は、前記リザーバーへの開口部を覆う、請求項88に記載の粒子。
【請求項90】
前記部材は、生分解性である、請求項89に記載の粒子。
【請求項91】
前記部材は、生分解性ポリマーである、請求項90に記載の粒子。
【請求項92】
前記部材は、生体液に約1日~約4年間曝露された後、生物分解するよう構成される、請求項90又は91に記載の粒子。
【請求項93】
前記部材は、生体液に約1日~約1年間曝露された後、生物分解するよう構成される、請求項92に記載の粒子。
【請求項94】
前記表面は前記粒子の内部表面であり、前記第2の表面は前記粒子の外部表面である、請求項87に記載の粒子。
【請求項95】
第2の複数のコーティング分子をさらに含み、
前記第2の複数のコーティング分子の少なくとも1つの分子は、前記第2の表面と結合しており、
前記第2の複数のコーティング分子は、インビボにおける前記粒子のクリアランスを低下させる、請求項94に記載の粒子。
【請求項96】
前記第2の複数のコーティング分子は、前記複数のコーティング分子と細胞及び/又は細胞外タンパク質との間の相互作用を阻害し、それによりインビボにおける前記粒子のクリアランスを低下させる、請求項95に記載の粒子。
【請求項97】
前記第2の複数のコーティング分子は、生分解性である、請求項95又は96に記載の粒子。
【請求項98】
前記第2の複数のコーティング分子は、生分解性ポリマーを含む、請求項97に記載の粒子。
【請求項99】
前記第2の複数のコーティング分子は、生体液に約1日~約4年間曝露された後、生物分解するよう構成される、請求項97又は98に記載の粒子。
【請求項100】
前記第2の複数のコーティング分子は、生体液に約1日~約1年間曝露された後、生物分解するよう構成される、請求項99に記載の粒子。
【請求項101】
前記第2の複数のコーティング分子は、CD47を含む、請求項95~100のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項102】
前記複数のコーティング分子は、インビボにおける前記粒子のクリアランスを増加させる、請求項85~101のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項103】
前記複数のコーティング分子は、病原体関連分子パターンを含む、請求項85~102のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項104】
前記病原体関連分子パターンは、非メチル化CpG DNA、二本鎖RNA、リポ多糖、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ザイモサン、マイコプラズマリポタンパク質、フラジェリン、ポリ(イノシン-シチジル)酸、リポテイコ酸又はイミダゾキノリンである、請求項103に記載の粒子。
【請求項105】
前記複数のコーティング分子は、カルレティキュリンを含む、請求項102に記載の粒子。
【請求項106】
前記複数のコーティング分子は、ファゴサイトーシスによる前記粒子のクリアランスを増加させる、請求項102~105のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項107】
前記複数のコーティング分子は、前記粒子の腎クリアランスを増加させる、請求項102に記載の粒子。
【請求項108】
前記複数のコーティング分子は、前記粒子の胆肝道クリアランスを増加させる、請求項102に記載の粒子。
【請求項109】
前記複数のコーティング分子は、疎水性分子を含む、請求項108に記載の粒子。
【請求項110】
前記複数のコーティング分子は、インビボにおける前記粒子のクリアランスを低下させる、請求項85に記載の粒子。
【請求項111】
前記複数のコーティング分子は、生分解性である、請求項110に記載の粒子。
【請求項112】
前記複数のコーティング分子は、生分解性ポリマーを含む、請求項111に記載の粒子。
【請求項113】
請求項1~112のいずれか一項に記載の複数の粒子を含む組成物。
【請求項114】
薬学的に許容される担体及び請求項1~112のいずれか一項に記載の粒子又は請求項113に記載の組成物を含む医薬組成物。
【請求項115】
請求項114に記載の医薬組成物を含む充填されたシリンジ。
【請求項116】
対象中の可溶性生体分子の生物学的活性を阻害するための方法であって、前記対象に請求項113に記載の組成物又は請求項114に記載の医薬組成物を、前記可溶性生体分子の生物学的活性を阻害するのに十分な量で投与することを含む、方法。
【請求項117】
可溶型の少なくとも1つのサイトカイン受容体を脱離するがん細胞を含むがんに罹患している対象を治療するための方法であって、前記対象に請求項1~112のいずれか一項に記載の複数の粒子を、前記脱離した可溶型の前記少なくとも1つのサイトカイン受容体の生物学的活性を阻害するのに有効な量で投与し、それにより前記がんを治療することを含む、方法。
【請求項118】
前記がん細胞は、可溶型のTNF受容体を脱離する、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記複数の粒子は、TNFαポリペプチド又はその変異体を含む薬剤を含む、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記がん細胞は、可溶型のIL-2受容体を脱離する、請求項117に記載の方法。
【請求項121】
前記複数の粒子は、IL-2ポリペプチド又はその変異体を含む薬剤を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記対象は、哺乳動物である、請求項116~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記哺乳動物は、ヒトである、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記対象は、がん又は自己免疫疾患を有する、請求項116~123のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、2014年10月3日に出願された米国仮出願第62/059,628号、2015年7月29日に出願された米国仮特許出願第62/198,519号及び2015年7月29日に出願された米国仮特許出願第62/198,541号に対する優先権を主張するものであり、それらの各々がその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
臨床的に利用可能であるか、又は開発中の多数の抗がん療法は、がんを認識するか、若しくは破壊するかのいずれか、又はその両方の免疫系の能力を刺激することを含む。最も著名な3つは、抗チェックポイント阻害剤(anti-checkpoint inhibitor)である、Bristol-Myers Squibbのヤーボイ(Yervoy; イピリムマブ)、Merckのキイトルーダ(Keytruda; ペンブロリズマブ、かつてはランブロリズマブ)、及びMoffitt Cancer Center/National Cancer Instituteの腫瘍浸潤リンパ球(ACT/TIL)を用いた養子細胞移植として知られる細胞療法である。しかしながら、これらのアプローチ及びその他のアプローチは、対象の免疫系の正味のアップレギュレーションを伴い、自己免疫障害と類似した深刻な症状及び/又はその他の重大な副作用を誘発するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当該技術分野には、自己免疫を回避するための対象の能力を乱すことなく、がん、特に転移性がんに対処するためのさらに効果的な薬理学的アプローチが必要とされている。特に、本開示は、免疫細胞を刺激するというよりも、腫瘍微小環境の脱抑制、すなわち、腫瘍の防御システムを弱めることを含む、がんに対する対象自身の免疫系を利用するための代替的なアプローチに基づく方法及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、特に、可溶性生体分子と結合し、その生物学的活性を阻害する組成物並びにその医薬組成物を提供する。本組成物が有用な多くの適用も本明細書において提供される。例えば、本明細書に記載されている組成物は、がん細胞などの細胞の増殖、成長及び/又は生存を阻害するのに有用である。別の例において、本明細書に記載されている組成物は、対象の血液循環中の毒素(例えば、動物毒素、細菌毒素及び/又は植物毒素)、ウイルス又はその他の外来性化合物と結合し、それを中和するのに有用でありうる。
【0005】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は互換的に使用され、長さ又は翻訳後修飾にかかわらず、任意の、アミノ酸のペプチド結合鎖を意味する。
【0006】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。好ましい方法及び材料が以下に示されるが、本明細書に記載されているものと類似又は等価の方法及び材料も、本開示の方法及び組成物の実施又は試験に使用することができる。本明細書において言及されるすべての公報、特許出願、特許及びその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0007】
本開示は、任意の前述の態様及び実施形態のすべての組合せ並びに詳細な説明及び実施例に記載されている任意の実施形態との組合せを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】可溶型のTNF受容体(TNFR)と結合する粒子の例示的な実施形態を示す図である。粒子は、1立方ミクロンである。粒子の内側表面は固定されたTNFを含み、それは可溶性TNFRと結合でき、可溶性TNFRをその天然のリガンドから隔離すること(捕捉すること)ができる。
【
図2】可溶型のTNF受容体(TNFR)と結合する粒子の例示的な実施形態を示す図である。環状粒子は175nmの直径を有する。粒子の内側表面は固定されたTNFを含み、それは可溶性TNFRと結合でき、可溶性TNFRをその天然のリガンドから隔離すること(捕捉すること)ができる。
【
図3】可溶型のTNF受容体(TNFR)と結合する粒子の例示的な実施形態を示す図である。図面の左側の粒子は、最大寸法が100~150nmのコアを有する八面体である。図面の右側の粒子は、最大寸法が200~300nmのコアを有する二十面体である。それぞれの粒子は、コア多面体構造の頂点から外側に向かう分子突起物をさらに含む。その突起物は「細胞よけ(cell repeller)」として働き、それが粒子と結合したTNFと細胞表面TNFRとの間の相互作用を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、可溶性生体分子をその天然の環境から隔離するための組成物及び方法を特徴とし、例えば、それにより可溶性生体分子の生物学的活性を阻害する。例えば、本開示は、可溶性生体分子と選択的に結合する(例えば、粒子の表面に固定された)薬剤を含む表面を有する粒子又は複数の粒子を提供する。薬剤が可溶性生体分子に結合すると、その可溶性生体分子は、可溶性生体分子の他の天然の結合パートナーと相互作用する能力が低下する(例えば、実質的に能力が低下する又は能力がなくなる)ように粒子によって隔離される。それにより、可溶性生体分子は不活性になる。
【0010】
I.生体分子(biomolecule)
可溶性生体分子は、一般に特異的結合ペアの第1のメンバーである。本明細書中で使用される場合、「結合パートナー」、「特異的結合パートナー」又は「特異的結合ペアのメンバー」は、一般に実質的な親和性及び特異性により互いに結合する結合メンバーのペアの任意のメンバーを含む。結合パートナーのペアは、サンプルのその他の構成成分の少なくとも大半又は少なくとも実質的にすべてを、実質的に排除して互いに結合することができ、及び/又はとりわけ約10-4、10-5、10-6、10-7又は10-8M未満の解離定数を有してもよい。結合パートナーのペアは、協調して特異性及び親和性を増加させるために複数の原子相互作用に依存する予め定義された様式で組み合わさる(fit together)ことができる。結合パートナーは、とりわけ生物系(例えば、受容体-リガンド相互作用)、化学的相互作用及び/又は分子インプリンティング技術に由来するものであってもよい。特異的な結合ペアとも称される、結合パートナーの例となる対応するペアを表1に提示する。表記「第1の」及び「第2の」は、任意であり、互換性がある。
【0011】
「生体分子」という用語は、本明細書中で使用される場合、生きた生物に作用し得るあらゆる分子を指す。一部の実施形態において、生体分子は、リチウム又は鉛などの原子である(例えば、生体分子は、金属カチオンであってもよい)。一部の実施形態において、生体分子は、原子又は金属イオンではない。例えば、生体分子は、有機化合物又は無機化合物などの分子であってもよい。一部の実施形態において、生体分子は、ワルファリンなどの薬物でありうる。生体分子は、ジアセチルモルフィンなどの向精神薬であってもよい。生体分子は、毒、毒素又は毒液であってもよい。生体分子は、アレルゲンであってもよい。生体分子は、発がん物質であってもよい。生体分子は、神経ガスなどの化学兵器の薬剤であってもよい。生体分子は、ウイルス又はウイロイドであってよい。生体分子は、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、可溶性細胞外受容体、抗体又は可溶性基質タンパク質などの生物に内在する分子であってもよい。生体分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物又は糖である。生体分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物又は糖を含んでもよい。生体分子は、脂質、ステロイド又はコレステロールであってもよい。
【0012】
生体分子は、細胞表面受容体のリガンドであってもよい。リガンドは、天然に存在するリガンドであってもよく、又は合成リガンドであってもよい。リガンドは、受容体の天然のリガンド(例えば、インビボで対象によって産生されるリガンド)であってもよく、又は非天然のリガンド(例えば、ウイルス若しくは薬物などの対象に導入されるリガンド)であってもよい。生体分子は、サイトゾル受容体(cytosolic receptor)又は核受容体に対するリガンドであってもよい。
【0013】
【0014】
上記のとおり、腫瘍細胞は、腫瘍微小環境において免疫細胞によって産生されたサイトカインと結合する可溶型のサイトカイン受容体を脱離することによって、宿主の免疫監視から自身を保護することが知られる。例えば、がん細胞は、可溶型のTNF受容体並びにIL-2受容体及びTRAIL受容体などの他のサイトカイン受容体を脱離する。これらの可溶性受容体は、当該細胞に対するTNFα、IL-2及びTRAILのアポトーシス促進効果を軽減することによって増殖優位性をがん細胞に与える。Karpatovaらは、ヒトがん細胞による67kDラミニン受容体の脱離を報告しており、これは、腫瘍浸潤及び転移を増大する可能性がある((1996年) J Cell Biochem 60(2):226~234ページ)。それゆえに、本明細書に記載されている粒子を、例えば、がんの治療に使用するために、可溶型の細胞表面受容体タンパク質を捕捉するよう操作することができる。
【0015】
したがって、一部の実施形態において、細胞表面受容体タンパク質は、がん細胞によって発現されるものであるか、及び/又は細胞表面受容体タンパク質は、がん細胞によって可溶型の細胞表面受容体タンパク質として脱離されるタンパク質である。一部の実施形態において、細胞表面受容体タンパク質は、活性化されると、アポトーシスを誘導する(例えば、デスレセプター)。一部の実施形態において、細胞表面受容体タンパク質は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)タンパク質(例えば、TNFR-1又はTNFR-2)である。一部の実施形態において、細胞表面受容体タンパク質は、Fas受容体タンパク質である。一部の実施形態において、細胞表面受容体タンパク質は、TNF関連アポトーシス誘導リガンド受容体(TRAILR)タンパク質、4-1BB受容体タンパク質、CD30タンパク質、EDA受容体タンパク質、HVEMタンパク質、リンホトキシンベータ受容体タンパク質、DR3タンパク質又はTWEAK受容体タンパク質である。一部の実施形態において、細胞表面受容体タンパク質は、インターロイキン受容体タンパク質、例えば、IL-2受容体タンパク質である。そのような実施形態において、標的可溶性生体分子は、例えばがん細胞から脱離された、可溶型の細胞表面受容体であってもよいことは理解されよう。
【0016】
当業者はまた、本明細書に記載されている粒子が、その生物学的活性が、例えば、望ましくない場合もあるより広範な種類の可溶性生体分子を捕捉するのにも有用であることを理解するであろう。例えば、粒子は、ウイルスカプシド又はエンベロープの構成成分と結合することにより対象の血液からウイルスを隔離するよう操作することができる。粒子は、一部の実施形態では、対象の血液循環中の毒素(例えば、細菌毒素、植物毒素及びヘビ毒液の1つ以上の構成成分などの動物毒素)と結合し、それを隔離するように操作されてもよい。一部の実施形態において、粒子は、小分子(例えば、違法薬物又は小分子の毒素)と結合し、それを対象の血液循環から隔離するように操作することができる。そのような実施形態において、粒子は、例えば、ヘビに噛まれた又は昆虫に刺された後、体から毒素を除去するのに有用でありうる。一部の実施形態において、粒子は、(例えば、アナフィラキシー免疫応答を引き起こす抗原を捕捉することによって)対象のアナフィラキシーショックを治療するため、予防するため、その発症を遅延させるため又はその重症度を低減するために使用することができる。
【0017】
一部の実施形態において、可溶性生体分子は、薬剤が結合するウイルス、例えば、ウイルス構造タンパク質(ウイルスカプシド又はウイルスエンベロープタンパク質など)である。そのような実施形態において、粒子は、例えば、ウイルスに感染したか、又はウイルスに感染したリスクのある対象に対する抗ウイルス療法として有用である。
【0018】
一部の実施形態において、可溶性生体分子は、小分子又は巨大分子である。一部の実施形態において、可溶性生体分子の最大寸法は、600nmを超えない(例えば、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50又は25nm未満)。生体分子は、約1Å~約1μm、例えば、約1Å~約100nm、約1Å~約20nm、約1nm~約1μm、約1nm~約100nm又は約1nm~約20nmの分子半径を有してもよい。生体分子は、約3amu~約107amu、例えば、約100amu~約107amu、約3amu~約106amu、約3amu~約105amu、約100amu~約106amu又は約400amu~約106amuの分子量を有してもよい。
【0019】
「特異的結合」、「特異的に結合する」、「選択的な結合」、「選択的に結合する」という用語及び同様の文法用語は、本明細書中で使用される場合、2つの分子が、生理学的条件下において比較的安定した複合体を形成することを指す。通常、結合は、結合定数(ka)が106M-1s-1よりも高いときに特異的であると考えられる。このように、特異的結合ペアの第1のメンバーは、結合ペアの第2のメンバーと、少なくとも106(又はそれより大きい)(例えば、少なくとも107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015若しくはそれ以上又はそれより大きい)M-1s-1であるkaで、特異的に結合することができる。一部の実施形態において、選択的な相互作用は、10-3(例えば、8×10-4、5×10-4、2×10-4、10-4又は10-5)s-1以下の解離定数(kd)を有する。
【0020】
一部の実施形態において、選択的な相互作用は、10-8、10-9、10-10、10-11又は10-12M未満のKDを有する。平衡定数KDは、反応速度定数の比、すなわちkd/kaである。一部の実施形態において、選択的な相互作用は、1×10-9M未満のKDを有する。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「相互作用」という用語は、2つの分子間の相互作用に言及する場合、分子の互いの物理的接触(例えば、結合)を指す。一般に、そのような相互作用は、上記分子の一方又は両方の活性をもたらす(生物学的効果を生じる)。そのような相互作用を阻害することにより、相互作用に関与する1つ以上の分子の活性の破壊がもたらされる。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「阻害すること」という用語及びその文法的等価語は、特定の作用、機能又は相互作用の低減、制限及び/又は遮断を指す。一実施形態において、この用語は、所与の結果又はパラメーターのレベルを、対応する対照の量の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又はそれより低い量(例えば、特異的結合ペアの2つのメンバー間の相互作用のバックグラウンドレベル)に低減することを指す。所与の結果又はパラメーターの低減されたレベルは、結果又はパラメーターの完全な欠如を意味する必要はない(完全な欠如であってもよいが)。本発明は、結果又はパラメーターを完全に無くす方法である必要はなく、それに限定されない。実質的な阻害は、例えば、2つの生体分子(例えば、結合ペアの第1及び第2のメンバー)間の相互作用の少なくとも50(例えば、55、60、65、70、75、80、85、90又は95以上)%の阻害であってもよい。
【0023】
相互作用を検出するための方法、又は一方の生体分子の他方のものに対する親和性を測定するための方法は、当該技術分野において知られている。例えば、2つの生体分子の結合は、以下に限定されるものではないが、バイオレイヤー干渉法(BLI)、ウエスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴法(SPR)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、AlphaScreen(登録商標)若しくはAlphaLISA(登録商標)アッセイ又は質量分析法ベースの方法などのさまざまな技術を使用して検出及び/又は定量することができる。
【0024】
一部の実施形態において、結合は、2つの生体分子の相互作用の反応速度パラメーターを特徴づけるための当該技術分野において既知の任意のSPRベースのアッセイを使用してアッセイすることができる。それらに限定されるものではないが、BIAcore機器(Biacore AB、ウプサラ、スウェーデン)、lAsys機器(Affinity Sensors、フランクリン、マサチューセッツ州)、IBISシステム(Windsor Scientific Limited、バークシャー、英国)、SPR-CELLIAシステム(日本レーザー電子株式会社、北海道、日本)及びSPR Detector Spreeta(Texas instruments、ダラス、テキサス州)を含む商業的に入手可能なあらゆるSPR機器が、本明細書に記載されている方法に使用することができる。例えば、Mullettら、(2000年) Methods 22: 77~91ページ、Dongら、(2002年) Reviews in Mol Biotech 82: 303~323ページ、Fivashら、(1998年) Curr Opin Biotechnol 9: 97~101ページ及びRichら、(2000年) Curr Opin Biotechnol 11: 54~61ページを参照のこと。
【0025】
一部の実施形態において、2つの生体分子間の生体分子相互作用は、Octet(ForteBio Inc.)によるBLIを使用してアッセイすることができる。BLIは、バイオセンサーの先端にあるタンパク質層の厚さの変化をリアルタイムに測定することによってバイオセンサーの先端に固定されたリガンドと溶液中の検体との間の結合を感知するラベルフリー光学的分析技術である。
【0026】
一部の実施形態において、AlphaScreen(PerkinElmer)アッセイは、2つの生体分子の結合を特徴づけるために使用することができる。頭字語ALPHAは、化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(Amplified Luminescent proximity Homogeneous Assay)を意味する。AlphaScreenは、ドナービーズとアクセプタービーズとの間のエネルギー移動によって生じたシグナルを測定することによってドナービーズ及びアクセプタービーズに結合した分子間の結合を感知するビーズベースのプロキシミティアッセイである。(例えば、Eglenら、(2008年) Curr Chem Genomics 1:2~10ページを参照のこと)。
【0027】
一部の実施形態において、AlphaLISA(登録商標)(PerkinElmer)アッセイは、2つの生体分子の結合を特徴づけるために使用することができる。AlphaLISAは、上記のAlphaScreenアッセイからユウロピウム含有アクセプタービーズを含むよう変更されており、従来のELISAアッセイに対する代替手段として機能する。(例えば、Eglenら、(2008年) Curr Chem Genomics 1:2~10ページを参照のこと。)
【0028】
競合及び非競合イムノアッセイを含むさまざまなイムノアッセイ技術を使用することができる。「イムノアッセイ」という用語は、フローサイトメトリー、FACS、酵素イムノアッセイ(EIA)、例えば、酵素増幅イムノアッセイ技術(enzyme multiplied immunoassay)(EMIT)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)及び微粒子酵素イムノアッセイ(microparticle enzyme immunoassay)(MEIA)、さらにキャピラリー電気泳動イムノアッセイ(CEIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射線アッセイ(immunoradiometric assay)(IRMA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)並びに化学発光アッセイ(CL)を含むが、それらに限定されない技術を包含する。必要に応じて、そのようなイムノアッセイは自動化することができる。イムノアッセイは、レーザー誘起蛍光とともに使用することもできる。フローインジェクションリポソームイムノアッセイ(flow-injection liposome Immunoassay)及びリポソーム免疫センサーなどのリポソームイムノアッセイも本発明に使用するのに適している。さらに、例えば、生体分子複合体の形成が光散乱を増加させ、この光散乱がマーカー濃度の関数としてピークレートシグナル(peak rate signal)に変換されるネフェロメトリーアッセイは、本発明の方法に使用するのに適している。本発明の好適な実施形態において、インキュベーション産物は、ELISA、RIA、フルオロイムノアッセイ(FIA)又は可溶性粒子免疫アッセイ(SPIA)によって検出される。
【0029】
一部の実施形態において、2つの生体分子の結合は、示差走査蛍光定量(DSF)及び示差静的光散乱(differential static light scattering)(DSLS)を伴う熱変性(thermodenaturation)法を使用してアッセイすることができる。
【0030】
一部の実施形態において、2つの生体分子の結合は、以下に限定されるものではないが、親和性選択連結質量分析(affinity selection coupled to mass spectrometry)(AS-MS)プラットフォームなどの質量分析ベースの方法を使用してアッセイすることができる。これは、タンパク質及び試験化合物がインキュベートされ、結合していない分子が洗い流され、タンパク質-リガンド複合体が解離ステップの後にリガンドの同定のためにMSによって分析されるラベルフリー法である。
【0031】
一部の実施形態において、2つの生体分子の結合は、イムノアッセイ或いはクロマトグラフィー検出により、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14C若しくは3H)、蛍光標識(例えば、FITC)など検出可能に標識されたタンパク質又は酵素的に標識された生体分子を使用して、定量化することができる。
【0032】
一部の実施形態において、本発明は、2つの生体分子間の相互作用の程度を直接又は間接的のいずれかで測定する際に蛍光偏光アッセイ及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを使用することを意図する。
【0033】
II.粒子
本明細書中で使用される場合、「粒子」という用語は、アルミナ、金属(例えば、金若しくはプラチナ)、ガラス、シリカ、ラテックス、プラスチック、アガロース、ポリアクリルアミド、メタクリレート又は任意の高分子材料などの任意の材料を含んでもよく、かつ任意の大きさ及び形状であってもよい小さな塊を指す。一部の実施形態において、粒子(複数可)は、シリコンを含む。例えば、それぞれの開示の全体が参照により組み込まれる、国際特許出願公開第WO2013/011764号、同第WO2013/029278号及び同第WO2014/151381号並びに米国特許出願公開第2014/0271886号を参照のこと。一部の実施形態において、粒子は、デンプンを含んでもよく、又はデンプンからなるものでもよい(例えば、国際特許出願公開第WO2010/084088号を参照のこと)。
【0034】
粒子の群も本明細書における特徴である。一部の実施形態において、複数の粒子は、狭い又は広い多分散性を有する。本明細書中で使用される場合、「多分散性」は、特定の粒子集団内の粒子のサイズの範囲を指す。すなわち、極めて多分散性の集団は、個々の粒子が0.1~4ミクロンに及ぶおよそ1ミクロンの平均サイズを有する粒子を含む。一部の実施形態において、「狭い多分散性」が好ましい。すなわち、特定の平均粒子サイズを前提とすると、集団中の個々の粒子が平均粒子サイズ~±20%以内、好ましくは±15%以内、最も好ましくは現在のところ±10%以内だけ異なるのが現在のところ好ましい。さらに具体的には、粒子集団は、約1ミクロン以下の平均粒子サイズを有するのが好ましい。よって、1ミクロンの平均粒子サイズが選択される場合、集団中の個々の粒子は、約0.8~約1.2ミクロンの範囲内であるのが最も好ましいであろう。一部の実施形態において、粒子集団は、約0.3~約1ミクロン、例えば、約0.4~約0.9、約0.5~約0.9、約0.4~約0.8、約0.5~約0.7、約0.3~約0.9又は約0.3~約0.7ミクロンの平均粒子サイズを有する。
【0035】
一部の実施形態において、本開示は、定義された平均粒子サイズを有する一群の又は複数の粒子を特徴とする。本明細書中で使用される場合、「平均粒子サイズ」は、個々の粒子のサイズを測定した後、粒子の総数で割ることによって得られる。平均粒子サイズの算出は、当該技術分野において周知である。通常、粒子の平均最大寸法は、1μmを超えない。一部の実施形態において、粒子は、ナノ粒子である。一部の実施形態において、粒子の平均最大寸法は、900nmを超えない(例えば、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、450、400、350、300、250、200又は150nm)。一部の実施形態において、粒子は、対象(例えば、ヒト対象)の血液又は脈管構造(例えば、動脈、静脈及び毛細血管)中を循環する形状及び大きさにされる。例示的な粒子デザインを、
図1~3に記載する。
【0036】
一部の実施形態において、複数の粒子は、多面体、例えば、立方体である。一部の実施形態において、複数の粒子は、球状である。一部の実施形態において、本明細書に記載されているいずれかの粒子は、多孔質であってもよい。そのような多孔質粒子は、外側表面及び粒子の孔の内側表面を含む。薬剤は、例えば、内側表面に固定されてもよい。一部の実施形態において、複数の孔は、少なくとも50nmの断面寸法を有する。一部の実施形態において、複数の孔は、少なくとも100nmの断面寸法を有する。多孔質ナノ粒子について、例えば、米国特許出願公開第20140199352号、同第20080277346号及び同第20040105821号に記載されており、これらのそれぞれの開示はその全体が参照により組み込まれる。球状粒子について、例えば、米国特許第8,778,830号及び同第8,586,096号に記載されており、それらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
一部の実施形態において、球状粒子は、粒子の球面から延びる2つの交差する隆線部をさらに含んでもよく、その構造のそれぞれの最大寸法は1μmを超えず、隆線部は、(i)球状粒子の表面に固定された薬剤の、細胞表面受容体タンパク質との結合、若しくは該薬剤による細胞表面受容体タンパク質の活性化、を阻害する及び/又は(ii)可溶性生体分子が薬剤と結合したとき、可溶性生体分子と、可溶性生体分子が第1のメンバーである特異的結合ペアの第2のメンバーとの相互作用を阻害する大きさにされ、配向される。
【0038】
一部の実施形態において、複数の粒子は、環状(toroidal)である。そのような実施形態において、薬剤は、粒子の内側円周表面に固定することができる(例えば、穴の周りに、
図2を参照)。一部の実施形態において、粒子の直径は、600nmを超えない(例えば、550、500、450、400、350、300、200又は150nm)。
【0039】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている粒子は樹枝状(dendritic)である。そのような粒子について、例えば、Duら、(2015年) Small 11(4):392~413ページ、米国特許第5,814,272号及び同第7,932,311号並びに米国特許出願公開第20040166166号に記載されており、それらのそれぞれの開示は参照により本明細書に組み込まれる。下記に詳しく述べられているとおり、一部の実施形態において、樹枝状粒子の形状は、粒子の内側表面に固定された薬剤の、細胞の表面にある生体分子と相互作用する能力が低減されるか、若しくは実質的に低減される及び/又は薬剤によって粒子と結合した可溶性生体分子の、その同種のリガンド(特異的結合ペアの第2のメンバー)と相互作用する能力が低減されるか、若しくは実質的に低減されるようになっている。
【0040】
一部の実施形態において、複数の粒子は、規則的又は不規則的であるかにかかわらず多面体、例えば、八面体又は二十面体(例えば、
図3を参照)である。粒子は、少なくとも1つのそれらの頂点からの少なくとも1つの突起物を含んでもよい(例えば、
図3を参照)。粒子は、それらの頂点からの2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7又は8つ以上)の突起物を含んでもよい。そのような突起物は、例えば、(i)球状粒子の表面に固定された薬剤の細胞表面受容体タンパク質との結合、若しくは該薬剤による細胞表面受容体タンパク質の活性化、を阻害する及び/又は(ii)可溶性生体分子が薬剤と結合したとき、可溶性生体分子と、可溶性生体分子が第1のメンバーである特異的結合ペアの第2のメンバーとの相互作用を阻害する大きさにされ及び/又は配向されてもよい。
【0041】
III.孔を含む粒子
一部の実施形態において、粒子を作製するために使用した材料(例えば、シリコン)は、約40%~約95%、例えば、約60%~約80%の多孔度を有してもよい。多孔度とは、本明細書中で使用される場合、材料中の空隙の尺度であり、材料の全体積に対する空間の体積の割合である。特定の実施形態において、担体材料は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又はさらに少なくとも約90%の多孔度を有する。特定の実施形態において、多孔度は、約40%超、例えば、約50%超、約60%超又はさらに約70%超である。
【0042】
特定の実施形態において、薬剤は、材料の表面から少なくとも約0.005マイクロメートル、少なくとも0.05マイクロメートル、少なくとも約0.1マイクロメートル、少なくとも約0.2マイクロメートル、少なくとも約0.3マイクロメートル、少なくとも約0.4マイクロメートル、少なくとも約0.5マイクロメートル、少なくとも約0.6マイクロメートル又は少なくとも約0.7マイクロメートルの孔深さに分布する。特定の実施形態において、薬剤は、担体材料の孔に実質的に均一に分布する。
【0043】
薬剤は、粒子の全幅に対する比として測定される深さまで粒子中に充填されてもよい。特定の実施形態において、薬剤は、粒子中の少なくとも約10%、粒子中の少なくとも約20%、粒子中の少なくとも約30%、粒子中の少なくとも約40%、粒子中の少なくとも約50%又は粒子中の少なくとも約60%の深さまで分布する。
【0044】
孔サイズは、生体分子の放出を制御するために薬剤及び標的生体分子の寸法特性に対して予め選択しうる。通常、小さ過ぎる孔サイズは、薬剤の充填及び/又は生体分子の結合を妨げる。例えば、材料に対する平均孔径は、高分子量、例えば、200,000~500,000amuの分子に対してより大きな孔、例えば、15nm~40nm、そしてより低分子量、例えば、10,000~50,0000amuの分子に対してより小さな孔、例えば2nm~10nmから選択してもよい。例えば、直径で約6nmの平均孔サイズは、分子量およそ14,000~15,000amu、例えば、約14,700amuの分子に適しうる。分子量およそ45,000~50,000amu、例えば、約48,000amuの分子に対して直径で約10nmの平均孔サイズが選択されてもよい。分子量およそ150,000nmの分子に対して直径で約25~30nmの平均孔サイズが選択されてもよい。
【0045】
孔サイズは、薬剤又は生体分子の分子半径と適合するよう予め選択されてもよい。例えば、直径で約25nm~約40nmの平均孔サイズは、約6nm~約8nmの大きな分子半径を有する分子に適しうる。分子半径は、任意の適した方法、例えば、X線結晶解析データに基づく分子の物理的寸法を使用すること又は分子の溶液状態サイズを表す流体力学半径を使用することによって算出してもよい。溶液状態の算出は、算出が行われる溶液の性質に依存するため、一部の測定にはX線結晶解析データに基づく分子の物理的寸法を使用するのが好ましい場合もある。本明細書中で使用される場合、最大分子半径は、治療剤の最大寸法の半分を示す。
【0046】
特定の実施形態において、平均孔径は、孔内の分子、例えば、タンパク質の凝集を制限するよう選択される。タンパク質などの生体分子が担体材料中で凝集するのを防ぐのが有利であろう。その理由は、それが分子の生物系への制御放出を妨げると考えられるためである。したがって、孔のサイズと生体分子のサイズとの間の関係により、例えば、常に1つの生体分子だけが孔に入ることを可能にしている孔は、複数の生体分子が一緒に孔に入り、孔内で凝集することを可能にしている孔よりも好ましいことになる。特定の実施形態において、複数の生体分子が孔中に充填されてもよいが、孔の深さのため、この孔の深さ全体に分布したタンパク質はそれ程ではないにせよ凝集することになる。
【0047】
IV.薬剤
一部の実施形態において、粒子の形状は、固定された薬剤の、細胞の表面にある生体分子と相互に作用する能力が低減されるか、又は実質的に低減されるようなものである。例えば、一部の実施形態において、本明細書に記載されている粒子の表面に固定されたTNFα又はIL-2は、遊離TNFα又はIL-2が細胞の表面にあるTNFα受容体又はIL-2受容体と結合する能力の50%未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%)の能力を有する。一部の実施形態において、粒子と結合した可溶性生体分子の、その同種のリガンド(特異的結合ペアの第2のメンバー)と相互作用する能力は、低減されているか、又は実質的に低減されている。例えば、本明細書に記載されている粒子と結合した可溶性TNFRは、遊離した可溶性TNFRが遊離TNFαと相互作用する能力の50%未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%)の能力を有する。別の例において、本明細書に記載されている粒子と結合した可溶性ビリオンは、遊離ビリオンがその同種の細胞表面受容体(複数可)と相互作用し、細胞に感染する能力の50%未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%)の能力を有する。薬剤と細胞表面にある生体分子との相互作用又は粒子と結合した生体分子とその同種のリガンドとの間の相互作用を低減するか、又は実質的に低減することができる例示的な粒子形状が
図1~3に示され、本明細書に記載されている。
【0048】
一部の実施形態において、粒子の表面に固定された薬剤は、小分子、大員環化合物、ポリペプチド、ペプチド模倣化合物、アプタマー、核酸又は核酸類似体である。「小分子」は、本明細書中で使用される場合、約6kDa未満、最も好ましくは約2.5kDa未満の分子量を有する薬剤を言及することが意図される。多くの製薬会社は、しばしば真菌、細菌又は藻類抽出物である、多数の小分子を含む化学的及び/又は生物学的混合物の広範囲なライブラリーを有し、これは、本出願のアッセイのいずれかを用いてスクリーニングすることができる。本出願は、特に、小さな化学物質ライブラリー、ペプチドライブラリー又は天然物の集合を使用することを意図する。Tanらは、小型化された細胞ベースのアッセイに適合した2百万を超える合成化合物を有するライブラリーについて記載した(J Am Chem Soc (1998年) 120:8565~8566ページ)。
【0049】
ペプチド模倣物は、対象ポリペプチドの少なくとも一部が変更されているが、ペプチド模倣物の三次元構造は、依然として対象ポリペプチドの三次元構造と実質的に同じままである化合物であってもよい。ペプチド模倣物は、本開示の対象ポリペプチドの類似体であってもよく、それは、それ自体が対象ポリペプチド配列内に1つ以上の置換又はその他の改変を含むポリペプチドである。或いは、対象ポリペプチド配列の少なくとも一部は、対象ポリペプチドの三次元構造が実質的に保持されるよう非ペプチド構造で置換されてもよい。言い換えると、対象ポリペプチド配列内の1つ、2つ又は3つのアミノ酸残基は、非ペプチド構造によって置換されてもよい。さらに、対象ポリペプチドの他のペプチド部分が非ペプチド構造で置換されてもよいが、その必要はない。ペプチド模倣物(ペプチド及び非ペプチジル類似体の両方)は、改善された特性(例えば、低減されたタンパク質分解、増加した残留率又は増加したバイオアベイラビリティ)を有してもよい。ペプチド模倣物は、一般に、それをとりわけヒト又は動物の治療に適したものにする改善された経口有効性を有する。ペプチド模倣物は、類似した二次元の化学構造を有してもよく、又は有していなくてもよいが、共通の三次元構造的特徴及び形状を共有することに留意すべきである。各ペプチド模倣物は、1つ以上の特有の付加的な結合要素をさらに有してもよい。
【0050】
アプタマーは、細胞表面タンパク質を含むほぼ任意の分子を認識し、それと特異的に結合するために使用することができる短いオリゴヌクレオチド配列である。試験管内進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX)法は効果的であり、これを使用してそのようなアプタマーを容易に特定することができる。治療及び診断法に重要な成長因子及び細胞表面抗原などの広い範囲のタンパク質に対してアプタマーを作製することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、抗体が結合するのと同様の親和性及び特異性でそれらの標的と結合する(例えば、Ulrich (2006年) Handb Exp Pharmacol 173:305~326ページを参照のこと)。
【0051】
上述のとおり、「抗体」という用語は、さまざまなアイソタイプの抗体、例えば、IgM、IgG、IgA、IgD及びIgE抗体を含む全抗体を指す。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ化又はキメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体(primatized antibody)、脱免疫化抗体(deimmunized antibody)及び完全ヒト抗体を含む。抗体は、さまざまな種、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、オラウータン、ヒヒ若しくはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、スナネズミ、ハムスター、ラット及びマウスなどの哺乳動物において作製されても、又はそれ由来であってもよい。抗体は、精製されてもよく、又は組み換え抗体であってもよい。
【0052】
「抗体フラグメント」、「生体分子結合フラグメント」という用語又は類似の用語は、標的抗原と結合する能力を保持した抗体のフラグメントを指す。そのようなフラグメントとしては、例えば、単鎖抗体、単鎖Fvフラグメント(scFv)、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab'フラグメント又はF(ab')2フラグメントが挙げられる。scFvフラグメントは、scFvが由来する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む単一のポリペプチド鎖である。さらに、細胞内抗体、ミニボディ、トリアボディ(triabody)及びダイアボディ(diabody)も抗体の定義に含まれ、本明細書に記載されている方法における使用に適合する(例えば、それぞれの開示の全体を参照によって本明細書に組み込んだものとするTodorovskaら、(2001年) J Immunol Methods 248(1):47~66ページ、Hudson及びKortt、(1999年) J Immunol Methods 231(1):177~189ページ、Poljak、(1994年) Structure 2(12):1121~1123ページ、Rondon及びMarasco、(1997年) Annual Review of Microbiology 51:257~283ページを参照のこと)。二重特異性抗体(DVD-Ig抗体を含む)も「抗体」という用語に包含される。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0053】
本明細書において使用されるとおり、「抗体」という用語は、例えば、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体などの単一ドメイン抗体も含む。例えば、そのすべてが参照によってその全体を本明細書に組み込んだものとされるMuyldermansら、(2001年) Trends Biochem Sci 26:230~235ページ、Nuttallら、(2000年) Curr Pharm Biotech 1:253~263ページ、Reichmannら、(1999年) J Immunol Meth 231:25~38ページ、PCT出願公開第WO94/04678号及び同第WO94/25591号並びに米国特許第6,005,079号、同第6,015,695号及び同第7,794,981号を参照のこと。一部の実施形態において、本開示は、単一ドメイン抗体が形成されるような改変を含む2つのVHドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0054】
一部の実施形態において、薬剤は、非抗体足場タンパク質(non-antibody scaffold protein)である。これらのタンパク質は、一般に既存のリガンド結合タンパク質又は抗原結合タンパク質のコンビナトリアルケミストリーベースの適合により得られる。例えば、ヒトトランスフェリン受容体に対するヒトトランスフェリンの結合部位は、コンビナトリアルケミストリーを使用して改変して、トランスフェリン変異体の種々のライブラリーを作り出すことができ、その一部は、異なる抗原に対する親和性を獲得している(Aliら、(1999年) J Biol Chem 274:24066~24073ページを参照のこと)。受容体との結合に関与しないヒトトランスフェリンの部分は、変わらないまま残され、抗体のフレームワーク領域のように足場として働いて、さまざまな結合部位を提示する。ライブラリーは、抗体ライブラリーである場合、その後、標的抗原に対して最適な選択性及び親和性を有するそれらの変異体を特定するために、目的とする標的抗原に対してスクリーニングされる。非抗体足場タンパク質は、機能は抗体と類似しているが、抗体と比較して多くの利点を有するとよく言われており、その利点としては、特に、向上した溶解性及び組織浸透性、より安価な製造並びに目的とする他の分子との結合の容易さが挙げられる(Heyら、(2005年) TRENDS Biotechnol 23(10):514~522ページを参照のこと)。
【0055】
当業者は、非抗体足場タンパク質の足場部分が、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)プロテインAのZドメイン、ヒトトランスフェリン、10番目のヒトフィブロネクチンIII型ドメイン、ヒトトリプシンインヒビターのkunitzドメイン、ヒトCTLA-4、アンキリンリピートタンパク質、ヒトリポカリン、ヒトクリスタリン、ヒトユビキチン若しくはテッポウユリ(E. elaterium)由来のトリプシンインヒビターのすべて又は一部を含んでもよいことを理解するであろう(Heyら、(2005年) TRENDS Biotechnol 23(10):514~522ページを参照のこと)。
【0056】
一部の実施形態において、薬剤は、標的生体分子の天然のリガンドである。例えば、薬剤は、サイトカインであってもよい。本明細書中で使用される場合、「サイトカイン」という用語は、細胞の機能に影響を及ぼすあらゆる分泌ポリペプチドを指し、免疫反応、炎症反応又は造血反応における細胞間の相互作用を調節する分子である。サイトカインとしては、以下に限定されるものではないが、どの細胞が産生したかにかかわらず、モノカイン及びリンホカインが挙げられる。例えば、モノカインは、一般にマクロファージ及び/又は単球などの単核細胞によって産生され、分泌されると言われている。しかしながら、ナチュラルキラー細胞、線維芽細胞、好塩基球、好中球、内皮細胞、脳星状細胞、骨髄間質細胞、表皮角化細胞及びBリンパ球などの多くの他の細胞もモノカインを産生する。リンホカインは、一般にリンパ球細胞によって産生されると言われる。サイトカインの例としては、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)及び腫瘍壊死因子ベータ(TNF-β)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
一部の実施形態において、薬剤は、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーリガンドである、例えば、TNFファミリーリガンドは、TNFα、TNFβ、Fasリガンド、リンホトキシン、リンホトキシンアルファ、リンホトキシンベータ、4-1BBリガンド、CD30リガンド、EDA-A1、LIGHT、TLA1、TWEAK、TNFβ及びTRAILから選択される。
【0058】
一部の実施形態において、薬剤は、標的生体分子に対する天然のリガンドの変異体、例えば、変異体IL-2又は変異体TNFαなどの変異体インターロイキンポリペプチドである。本発明の一部の実施形態による変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失又は挿入を含んでもよい。置換は、保存的であってもよく、又は非保存的であってもよい。本明細書中で使用される場合、「保存的置換」という用語は、類似の立体的特性を有する天然の若しくは天然に生じないアミノ酸による、所与のポリペプチドの天然の配列に存在するアミノ酸の置換を指す。置換される天然のアミノ酸の側鎖が極性又は疎水性のいずれかである場合、保存的置換は、これも極性又は疎水性である天然のアミノ酸又は天然に生じないアミノ酸によるものでなければならず、当該アミノ酸は、任意に、置換されるアミノ酸の側鎖と同じ又は類似の立体的特性を有する。保存的置換は、一般に以下の群内における置換を含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びトレオニン;リシン、ヒスチジン及びアルギニン;並びにフェニルアラニン及びチロシン。一文字のアミノ酸の略語は以下のとおりである:アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グリシン(G)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びバリン(V)。変異体はまた、完全長で野生型の天然リガンドのフラグメント、及び該フラグメントが由来する野生型で完全長の天然のリガンドに対して1つ以上のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含むフラグメントを含む。
【0059】
「非保存的置換」という語句は、本明細書中で使用される場合、異なる電気化学的特性及び/又は立体的特性を有する別の天然のアミノ酸又は天然に生じないアミノ酸による、親配列に存在するアミノ酸の置換を指す。よって、置換後のアミノ酸の側鎖は、置換される天然のアミノ酸の側鎖よりも著しく大きく(若しくは小さく)てもよく、及び/又は置換されるアミノ酸とは著しく異なる電子的特性をもつ官能基を有してもよい。
【0060】
一部の実施形態において、変異体ポリペプチドは、それが由来する野生型の完全長ポリペプチドに対して少なくとも2個の(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又は100個を超える)アミノ酸置換、欠失又は挿入を含む。一部の実施形態において、変異体ポリペプチドは、それが由来する野生型の完全長ポリペプチドに対して150個を超えない(例えば、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2個を超えない)アミノ酸置換、欠失又は挿入を含む。
【0061】
一部の実施形態において、変異体ポリペプチド(例えば、変異体IL-2又はTNFαポリペプチド)は、それが由来する野生型の完全長ポリペプチドが標的生体分子(例えば、野生型の完全長ポリペプチドがメンバーである特異的結合ペアのメンバー)と結合する能力の少なくとも10(例えば、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100)%の能力を保持する。一部の実施形態において、変異体ポリペプチドは、標的生体分子に対し、変異体が由来した野生型の完全長ポリペプチドよりも大きな親和性を有することになる。例えば、一部の実施形態において、変異体ポリペプチドは、変異体ポリペプチドが由来した野生型の完全長ポリペプチドが有するよりも、標的生体分子に対して2(3、4、5、10、20、30、40、50、100、200、500又はさらに1000)倍大きな親和性を有する。2つのタンパク質間の相互作用を検出又は測定するための方法は、当該技術分野において知られており、上に記載されている。
【0062】
一部の実施形態において、野生型で完全長の天然リガンドは、細胞表面受容体の活性を調節する。それゆえに、天然リガンドの変異体は、野生型の天然リガンドの活性と比較して、受容体の活性を調節する能力が増強又は低減される場合がある。例えば、一部の実施形態において、変異体ポリペプチドは、変異体が由来した完全長の野生型ポリペプチドが細胞表面受容体タンパク質を活性化する能力の90%未満(例えば、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10又は5%未満)の能力を有する。一部の実施形態において、変異体ポリペプチドは、それが結合する受容体を活性化しない。
【0063】
そのような例となる変異体ポリペプチドは、当該技術分野において知られている。例えば、国際特許出願公開第WO2012/085891号は、三量体を形成する低減された能力、よって、TNFファミリー受容体を活性化する低減された能力を有するTNFファミリーリガンド変異体について記載している(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0096274号も参照のこと)。しかし、変異体TNFリガンドは、TNFファミリー受容体と結合する能力を保持する。変異体リガンドと野生型の天然のリガンドとの間の活性を比較するための適した方法は当該技術分野において知られている。
【0064】
一部の実施形態において、可溶性生体分子は、細胞表面受容体に対するリガンド、例えば、当該技術分野において既知の又は本明細書に記載されているもののいずれかなどのサイトカイン又はケモカインである。一部の実施形態において、リガンドは、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーリガンド又はその変異体である。一部の実施形態において、TNFファミリーリガンドは、TNFα又はその変異体である。一部の実施形態において、TNFファミリーリガンドは、Fasリガンド、リンホトキシン、リンホトキシンアルファ、リンホトキシンベータ、4-1BBリガンド、CD30リガンド、EDA-A1、LIGHT、TLA1、TWEAK、TNFβ、TRAIL又は前述のいずれかの変異体である。)。
【0065】
一部の実施形態において、可溶性生体分子は、表2において特定されているものである。
【0066】
【0067】
一部の実施形態において、それぞれの粒子は、複数の薬剤を含む。複数の薬剤は、10~約109コピーの薬剤、例えば、約103~約107コピーの薬剤又は約104~約106コピーの薬剤を含んでもよい。
【0068】
V.抗体を作製するための方法
上述のとおり、一部の実施形態において、粒子(複数可)の表面に固定された薬剤は、抗体又はその抗原結合フラグメントである。抗体は、当該技術分野において既知の方法によって誘発されてもよい。例えば、マウス、ハムスター又はウサギなどの哺乳動物が、可溶性生体分子(例えば、可溶性TNFR、毒素又はウイルスタンパク質)の免疫原性形態により免疫されてもよい。或いは、免疫化は、観察される免疫原性応答を生じる反応を引き起こす生体分子(例えば、可溶性タンパク質)をインビボで発現する核酸を使用することによって行われてもよい。タンパク質又はペプチドに免疫原性を与えるための技術としては、担体との結合又は当該技術分野において周知のその他の技術が挙げられる。例えば、本発明のポリペプチドのペプチジル部分が、アジュバントの存在下において投与されてもよい。免疫化の進行は、血漿又は血清中の抗体価の検出によって監視することができる。標準的なELISA又はその他のイムノアッセイは、抗体のレベルを評価するために抗原としての免疫原とともに使用することができる。
【0069】
免疫化後、本発明のポリペプチドと反応する抗血清を得ることができ、必要に応じて、ポリクローナル抗体を血清から単離してもよい。モノクローナル抗体を産生するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫した動物から採取し、標準的な体細胞融合手順によって骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合してハイブリドーマ細胞を得てもよい。そのような技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、(1983年) Immunology Today, 4: 72ページ)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら、(1985年) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc. 77~96ページ)などのハイブリドーマ技術(もとはKohler及びMilsteinによって開発された、(1975年) Nature、256: 495~497ページ)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、本発明のポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生のために免疫化学的にスクリーニングされ、モノクローナル抗体が単離されてもよい。
【0070】
VI.粒子のクリアランス
一部の実施形態において、粒子は、排出剤(clearance agent)を含む。排出剤は、尿への排出、分解、胆肝道経路による排出及び/又はファゴサイトーシスによるなどの生物学的経路による粒子のクリアランスを促進することができる。
【0071】
例えば、粒子は、リザーバー(reservoir)を含んでもよく、この場合、リザーバーは排出剤を含む。リザーバーは、粒子の本体にある穴又は空間、例えば、多孔質シリコン粒子の本体にある空間であってもよい。
【0072】
孔を含む粒子に関して、リザーバーは孔であってもよく、又はリザーバーは平均孔サイズよりも大きくても、若しくは小さくてもよい。リザーバーは、粒子の本体にある凹部(例えば、浅い凹部)からなるものでもよく、この場合、凹部の幅又は直径は、平均孔サイズの幅又は直径よりも大きい。リザーバーの幅又は直径は、平均孔サイズの幅又は直径の少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200、250、300、400又はさらに約500倍の大きさであってもよい。リザーバーの幅又は直径は、平均孔サイズの幅又は直径の約2倍~約10倍、例えば、約2倍~約8倍又は約2倍~約6倍の大きさであってもよい。リザーバーの幅又は直径は、平均孔サイズの幅又は直径の約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200、250、300、400又はさらに約500倍の大きさであってもよい。
【0073】
リザーバーは、開口部を含んでもよい。開口部は、キャップ又は部材によって覆われていてもよく、それにより排出剤と細胞及び/又は細胞外タンパク質(例えば、抗体)との間の相互作用を阻害する。キャップ又は部材は、生分解性ポリマーなどのポリマーを含んでもよい。キャップ又は部材は、所定の期間の後に(例えば、加水分解によって)分解してもよく、それにより、排出剤を細胞及び/又は細胞外タンパク質に曝露する。キャップ又は部材は、生体液(例えば、血漿又は細胞外液)に約1日間~約5年間、例えば、約1日間~約3年間又は約1日間~約1年間曝露された後、分解してもよい。
【0074】
所定の期間は、粒子が液体(例えば、水性液体)中にある期間であってもよい。所定の期間は、粒子のインビボにおける滞留期間であってもよい(例えば、生体液、pH、酵素及び/又は温度への曝露)。所定の期間は、少なくとも部分的には、粒子の生体分子との結合によって決定されうる。例えば、粒子は、生体分子の結合が、排出剤を細胞及び/又は細胞外タンパク質に曝露するよう構成されてもよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT特許出願公開第WO2014/170899号を参照のこと)。所定の期間は、約1日間~約5年間、例えば、約1日間~約3年間又は約1日間~約1年間であってもよい。
【0075】
キャップ又は膜として使用するのに適した例となる材料は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,918,842号に記載されている。一般に、これらの材料は、インビボ若しくはインビトロにおける酵素的加水分解又は水への曝露によって、或いは表面若しくは全体の崩壊(bulk erosion)によってのいずれかで分解または溶解する。代表的な合成生分解性ポリマーとしては、以下のものが挙げられる:ポリ(アミド)、例えば、ポリ(アミノ酸)及びポリ(ペプチド);ポリ(エステル)、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)及びポリ(カプロラクトン);ポリ(無水物);ポリ(オルトエステル);ポリ(カーボネート);及びその化学的誘導体(化学基の置換、付加、例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化及び当業者によって慣行的に行われるその他の変性)、それらのコポリマー並びに混合物。キャップ又は膜に使用されてもよいその他のポリマーとしては、以下のものが挙げられる:ポリ(エーテル)、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(テトラメチレンオキシド);ビニルポリマー、ポリ(アクリレート)及びポリ(メタアクリレート)、例えば、メチル、エチル、その他のアルキル、ヒドロキシエチルメタアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸、並びにその他、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)及びポリ(ビニルアセテート);ポリ(ウレタン);セルロース及びその誘導体、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、エステル、ニトロセルロース、及び各種酢酸セルロース;ポリ(シロキサン);並びに任意のその化学的誘導体(化学基の置換、付加、例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者によって慣行的に行われるその他の変性)、それらのコポリマー並びに混合物。特定の実施形態において、リザーバーキャップは、1つ以上の架橋ポリマー、例えば、架橋ポリビニルアルコールから形成される。
【0076】
一部の実施形態において、粒子は、コーティングを含む。一部の実施形態において、コーティングは、排出剤を含む。コーティングは、排出剤をマスクしてもよい。
【0077】
粒子は第1の表面及び第2の表面を含んでもよく、薬剤は第1の表面に固定されてもよく、コーティングは第2の表面の少なくとも一部を覆ってもよい。第1の表面は、内部表面又は内側表面であってもよく、例えば、第1の表面は、細胞表面にある分子と結合する薬剤の能力が低減されるよう、配向されてもよい。内部表面又は内側表面の例としては、孔、リザーバー若しくは管の内壁、環状体の内側円周表面又は凹面のくぼみが挙げられる。内部表面又は内側表面のその他の例には、1つ以上の突起物によって外側表面が細胞との相互作用から保護されている粒子の外側表面が含まれる。第2の表面は、外部表面であってもよく、例えば、第2の表面は、コーティングが細胞と相互作用できるよう配向されてもよい。
【0078】
コーティングは、粒子間の相互作用を阻害してもよい、例えば、コーティングは、凝集体を形成する粒子の傾向を低下させてもよい。コーティングは、例えば、生物学的に不活性な表面を提示することによって、粒子と細胞との間の相互作用を阻害してもよい。コーティングは、細胞外分子との非特異的な相互作用、例えば、生体分子の非特異的な吸着を阻害してもよい。コーティングは、細胞又は細胞外分子との特異的な相互作用を阻害してもよく、例えば、コーティングは、粒子の排出若しくはファゴサイトーシスを退けるか、又は遅延させてもよい。コーティングは、粒子を排出又はファゴサイトーシスの標的としてもよい。粒子を排出若しくはファゴサイトーシスの標的とするコーティング又はその他の特徴(例えば、「排出誘導化合物(excretion -inducing compound)」)が、例えば、所定期間の血流中に粒子を維持することを促進するために粒子の排出又はファゴサイトーシスを遅延させるコーティング(例えば、第2のコーティング)によってマスクされてもよい。
【0079】
粒子は、第2のコーティングを含んでもよく、例えば、この場合、第2のコーティングは、第2の複数のコーティング分子からなる。粒子は、第2の複数のコーティング分子を含んでもよい。第2のコーティング及び/又は第2の複数のコーティング分子は、例えば、コーティング及び/又は複数のコーティング分子をマスクすることによってインビボにおける粒子のクリアランスを低下させることができる。第2のコーティング及び/又は第2の複数のコーティング分子は、例えば、所定の期間後にコーティング及び/又は複数のコーティング分子を細胞及び/又は細胞外タンパク質に曝露するために生分解性であってもよい。第2のコーティング及び/又は第2の複数のコーティング分子は、生分解性ポリマーを含んでもよく、例えば、第2の複数のコーティング分子の各分子が生分解性ポリマーを含んでもよい。第2のコーティング及び/又は第2の複数のコーティング分子は、ファゴサイトーシスを阻害するCD47を含んでもよい。
【0080】
一部の実施形態において、粒子は第1の表面(例えば、内部表面)及び第2の表面(例えば、外部表面)を含み、薬剤は第1の表面に固定され、コーティングは第2の表面の少なくとも一部を覆う。第1の表面の配向は、細胞表面にある分子と相互作用する薬剤の能力を低減することができる。第2の表面の配向は、コーティングと細胞、細胞外分子及び/又は異なる粒子との間の相互作用を可能にすることができる。コーティングと細胞、細胞外分子及び/又は異なる粒子との間の「相互作用」は、弱いか、中立であるか、又は好ましくない相互作用でありうるし、それは例えば、粒子の細胞、細胞外分子若しくは他の粒子との安定した結合を退けるためのものでありうる。或いは、コーティングと、細胞及び/又は細胞外分子のいずれかとの間の相互作用は、特異的な相互作用であっても設計された相互作用であってもよく、例えば、ファゴサイトーシスなどの生物学的経路による粒子のクリアランスを促進するためのものであってもよい。特定の好適な実施形態において、第2の表面は、実質的に薬剤を含まない。特定の好適な実施形態において、第1の表面は、実質的にコーティングを含まない。特定の好適な実施形態において、コーティングは、第2の表面の実質的にすべてを覆う。
【0081】
一部の実施形態において、粒子は第1の表面(例えば、内部表面)及び第2の表面(例えば、外部表面)を含み、薬剤は第1の表面及び第2の表面に固定され、コーティングは第2の表面の少なくとも一部を覆う。そのような実施形態において、コーティング(及び/又は第2のコーティング)は、薬剤と細胞表面にある分子との間の相互作用を阻害することができる。特定の好適な実施形態において、コーティングは、第2の表面の実質的にすべてを覆う。
【0082】
一部の実施形態において、粒子は第1の表面(例えば、内部表面)及び第2の表面(例えば、外部表面)を含み、薬剤は第1の表面に固定され、コーティングは第1の表面の少なくとも一部及び第2の表面の少なくとも一部を覆う。そのような実施形態において、コーティングは、生体分子と特異的に結合する薬剤の能力に影響を及ぼさないのが好ましい。特定の好適な実施形態において、コーティングは、第2の表面の実質的にすべてを覆う。
【0083】
一部の実施形態において、粒子は表面を含み、薬剤は表面に固定され、コーティングは表面の少なくとも一部を覆う。そのような実施形態において、コーティングは、薬剤の生体分子と特異的に結合する能力に影響を及ぼさなくてもよい。コーティングは、一部の薬剤が生体分子と特異的に結合し、一部の薬剤と生体分子との間の相互作用を阻害することを可能にする。コーティングは、薬剤と細胞表面にある分子との間の相互作用を阻害してもよい。特定の好適な実施形態において、コーティングは表面の実質的にすべてを覆う。
【0084】
コーティングは、コーティング分子を含んでもよく、例えば、コーティングは、複数のコーティング分子からなってもよく、又はコーティングは、コーティング分子の集団からなってもよい。本明細書中で使用される場合、「複数のコーティング分子」及び「コーティング分子の集団」という用語はそれぞれコーティングを指す。ただし、「コーティング」という用語は、ハイドロゲルなどの付加的な組成物を指してもよい。コーティング分子は、排出剤であってもよい(よって、排出剤がコーティング分子であってもよい)。
【0085】
粒子は、複数のコーティング分子を含んでもよい。粒子は、表面及び表面に固定された複数の薬剤を含んでもよく、複数のコーティング分子の少なくとも1つの分子が表面に結合していてもよい。例えば、複数のコーティング分子のすべて又は実質的にすべての分子は、表面に結合していてもよい。
【0086】
粒子は、表面及び第2の表面を含んでもよく、この場合、表面に固定された複数の薬剤及び複数のコーティング分子の少なくとも1つの分子は、第2の表面に結合していてもよい。例えば、複数のコーティング分子のすべて又は実質的にすべての分子は、第2の表面に結合していてもよい。一部の実施形態において、複数のコーティング分子の一部の分子は表面に結合しており、複数のコーティング分子の一部の分子は第2の表面に結合している。
【0087】
一部の実施形態において、コーティング分子は、インビボにおける粒子のクリアランスを増加させる。例えば、コーティング分子は、病原体関連分子パターンを含んでもよい。
【0088】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている粒子は、排出誘導化合物を含むコーティングを有し、この化合物は、例えば、(例えば、胆汁による)腎臓、肝臓/腸又は(例えば、抗原提示細胞による)ファゴサイトーシスによる血液循環からの粒子の除去を促進する。複数のコーティング分子は、複数の排出誘導化合物であってもよい。例えば、粒子が環状体の実施形態において、内側円周表面(例えば、第1の表面)は、固定された薬剤を含んでもよく、外側表面(例えば、第2の表面)は、例えば、腎臓、肝臓又はマクロファージによる粒子のクリアランスを誘導する化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、排出誘導化合物がプログラムされる。すなわち、化合物が、時間とともに(例えば、所定期間)(例えば、酵素の作用、加水分解又は段階的な溶解により)分解し、最終的に排出誘導化合物又はクリアランスの速度を増加させるその他の特徴を曝露するコーティングによって覆われていてもよい。コーティングは、生体液(例えば、血漿又は細胞外液)に約1日間~約5年間、例えば、約1日間~約3年間又は約1日間~約1年間曝露された後、分解してもよい。よって、インビボにおける粒子の滞留は、変更されても、及び/又は制御されてもよい。
【0089】
コーティングは、有機ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでもよい。有機ポリマーは、粒子に結合されてもよく、例えば、粒子の表面に結合される。有機ポリマーとしては、PEG、ポリラクテート、ポリ乳酸、糖、脂質、ポリグルタミン酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)及びそれらの組合せを挙げることができる。特定の実施形態において、粒子は、PEGと共有結合し、これは、血清タンパク質の吸着を妨げ、効率的な尿中排泄を促進し、粒子の凝集を低減する(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれるBurnsら、Nano Letters, 9(1):442~448ページ(2009年)並びに米国特許出願公開第2013/0039848号及び同第2014/0248210号を参照のこと)。
【0090】
一実施形態において、コーティングは、少なくとも1つの親水性成分、例えば、Pluronic(登録商標)タイプのポリマー(一般式HO(C2H4O)a(-C3H6O)b(C2H4O)aHの非イオン性ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、トリブロックコポリマーである、ポリ(エチレングリコール-b-(DL-乳酸-co-グリコール酸)-b-エチレングリコール)(PEG-PLGA-PEG)、ジブロックコポリマーである、ポリカプロラクトン-PEG(PCL-PEG)、ポリ(ビニリデンフルオリド)-PEG(PVDF-PEG)、ポリ(乳酸-co-PEG)(PLA-PEG)、ポリ(メチルメタアクリレート)-PEG(PMMA-PEG)などを含む。そのような成分を有する一実施形態において、親水性成分は、PEG成分、例えば、[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン(例えば、CH3(OC2H4)6~9(CH2)OSi(OCH3)3)、[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-ジメトキシシラン(例えば、CH3(OC2H4)6~9(CH2)OSi(OCH3)2)又は[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-モノメトキシシラン(例えば、CH3(OC2H4)6~9(CH2)OSi(OCH3))である。適したコーティングについては、例えば、米国特許出願公開第2011/0028662号に記載されている(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0091】
コーティングとしては、ポリヒドロキシル化ポリマー、例えば、天然高分子若しくは多重ヒドロキシル化ポリマーを含むヒドロキシル含有ポリマー、多糖、炭水化物、ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、例えば、ポリセリン若しくはその他のポリマー、例えば、2-(ヒドロキシエチル)メタアクリレート、又はそれらの組合せを挙げることができる。一部の実施形態において、ポリヒドロキシル化ポリマーは多糖である。多糖としては、マンナン、プルラン、マルトデキストリン、デンプン、セルロース及びセルロース誘導体、ガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム又はペクチン、それらの組合せが挙げられる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0337070号を参照のこと)。
【0092】
一部の実施形態において、コーティングは、双性イオンポリマーを含む(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0235803号、同第2014/0147387号、同第2013/0196450号及び同第2012/0141797号並びに米国特許第8,574,549号を参照のこと)。
【0093】
その他の適したコーティングとしては、ポリアルファヒドロキシ酸(ポリアクチック酸又はポリラクチド、ポリグリコール酸又はポリグリコリドを含む)、ポリベータヒドロキシ酸(ポリヒドロキシブチレート又はポリヒドロキシバレレートなど)、エポキシポリマー(ポリエチレンオキシド(PEO)を含む)、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアミドエステル、ポリエステルアミド、ポリリン酸エステル及びポリリン酸エステルウレタン(polyphosphoester-urethane)が挙げられる。分解性ポリエステルの例としては、以下のものが挙げられる:例えば、ポリ(乳酸)又は(ポリラクチド、PLA)、ポリ(グリコール酸)又はポリグリコリド(PGA)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)を含むポリ(ヒドロキシアルカノエート)及びポリ(カプロラクトン)又はポリ(バレロラクトン)。ポリオキサエステルの例としては、ポリ(アルキレンオキサレート)、例えば、ポリ(エチレンオキサレート))及びアミド基を含むポリオキサエステルが挙げられる。その他の適したコーティング材料としては、ポリグリコール、エーテルエステルコポリマー(コポリ(エーテルエステル))及びポリカーボネートを含むポリエーテルが挙げられる。生分解性ポリカーボネートの例としては、ポリオルトカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリアルキルカーボネート、例えば、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(1,3-ジオキサン-2-オン)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(6,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2-オン)、ポリ(1,4-ジオキセパン-2-オン)及びポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)が挙げられる。適した生分解性コーティングとしてはまた、ポリ酸無水物、ポリイミン(ポリ(エチレンイミン)(PEI)など)、ポリアミド(ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミドを含む)、ポリ(アミノ酸)(ポリ-L-リシンなどのポリリシン又はポリ-L-グルタミン酸などのポリグルタミン酸を含む)、ポリホスファゼン(例えば、ポリ(フェノキシ-co-カルボキシラトフェノキシホスファゼン)、ポリオルガノホスファゼン、ポリシアノアクリレート及びポリアルキルシアノアクリレート(ポリブチルシアノアクリレートを含む)、ポリイソシアネート並びにポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0094】
ポリマー性コーティング分子の鎖長は、約1~約100モノマー単位、例えば、約4~約25単位であってもよい。
【0095】
粒子は、フィブリン、フィブリノーゲン、エラスチン、カゼイン、コラーゲン、キトサン、細胞外基質(ECM)、カラギナン、コンドロイチン、ペクチン、アルギネート、アルギン酸、アルブミン、デキストリン、デキストラン、ゼラチン、マンニトール、n-ハラミン、多糖、ポリ-1,4-グルカン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ジアルデヒドデンプン、グリコーゲン、アミラーゼ、ヒドロキシエチルアミラーゼ、アミロペクチン、グルコソグリカン(glucoso-glycan)、脂肪酸(及びそのエステル)、ヒアルロン酸、プロタミン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、D-マンヌロン酸、L-グルロン酸、ゼイン及びその他のプロラミン、アルギン酸、グアーガム及びホスホリルコリン、並びにそれらのコポリマー及び誘導体を含む天然に生じるポリマーでコーティングされてもよい。コーティングはまた、セルロース、キチン、デキストラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ポリグルコネート、ヒアルロン酸及びエラチン並びにそれらのコポリマー及び誘導体などの修飾多糖を含んでもよい。
【0096】
粒子は、ハイドロゲルでコーティングされてもよい。ハイドロゲルは、例えば、任意の適したポリマー、例えば、ポリ(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(ビニルピロリドン)又はポリビニルアルコールから選択されるベースのポリマーを使用して形成されてもよい。架橋剤は、過酸化物、硫黄、二塩化硫黄、金属酸化物、セレン、テルル、ジアミン、ジイソシアネート、アルキルフェニルジスルフィド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、4,4'-ジチオモルホリン、p-キニンジオキシム(quinine dioxime)及びテトラクロロ-p-ベンゾキノンの1つ以上であってもよい。ボロン酸含有ポリマーも任意の光重合性基(photopolymerizable group)とともにハイドロゲルに組み込まれてよい。
【0097】
特定の好適な実施形態において、コーティングは、米国食品医薬品局(FDA)に使用が認可された材料を含む。FDAが認可したこうした材料としては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグラクチン910(1ラクチド単位当たり9:1の比のグリコリドを含み、VICRYL(商標)としても知られている)、ポリグリコナート(1トリメチレンカーボネート単位当たり9:1の比のグリコリドを含み、MAXON(商標)としても知られている)及びポリジオキサノン(PDS)が挙げられる。
【0098】
コーティングの粒子との結合は、共有結合或いはイオン性結合、水素結合、疎水結合、配位、粘着物又は物理的吸収若しくは相互作用によってなど非共有結合によって達成されてもよい。
【0099】
従来のナノ粒子コーティング方法としては、乾式及び湿式アプローチが挙げられる。乾式方法としては、以下のものが挙げられる:(a)物理蒸着(Zhang, Y.ら、Solid State Commun. 115:51ページ(2000年))、(b)プラズマ処理(Shi, D.ら、Appl. Phys. Lett. 78:1243ページ(2001年); Vollath, D.ら、J. Nanoparticle Res. 1:235ページ(1999年))、(c)化学蒸着(Takeo, O.ら、J. Mater. Chem. 8:1323 (1998年))、及び(d)基材内のナノ粒子をその場で析出させるためのポリマー又は非ポリマーの有機材料の熱分解(Sglavo, V. M.ら、J. Mater Sci. 28:6437ページ(1993年))。粒子をコーティングするための湿式方法としては、以下のものが挙げられる:(a)ゾルゲルプロセス及び(b)乳化及び溶媒蒸発技術(Cohen, H.ら、Gene Ther. 7:1896ページ(2000年); Hrkach、J. S.ら、Biomaterials 18:27ページ(1997年); Wang、D.ら、J. Control. Rel. 57:9ページ(1999年))。コーティングは、電気めっき、スプレーコーティング、ディップコーティング、スパッタリング、化学蒸着又は物理蒸着によって塗布されてもよい。さらに、さまざまなナノ粒子を多糖でコーティングするための方法は、当該技術分野において知られている(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,685,538号及び米国特許出願公開第2013/0323182号を参照のこと)。
【0100】
一部の実施形態において、粒子は、腎排泄によるクリアランスを促進するように適合化されてもよい。腎機能が正常な対象に関する腎クリアランスには、一般に15nm未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子が必要である(例えば、Choi, H.S.ら、Nat Biotechnol 25(1):1165ページ(2007年); Longmire, M.ら、Nanomedicine 3(5):703ページ(2008年)を参照のこと)。それにもかかわらず、それより大きな粒子が尿中に排出される場合もある。それにもかかわらず、粒子が腎クリアランスには大き過ぎる実施形態について、粒子は、インビボにおいてより小さなサイズへ分解された後、除去されうる。
【0101】
一部の実施形態において、粒子は、胆肝道排泄によるクリアランスを促進するように適合化されてもよい。肝臓のクッパー細胞を含む単核食細胞系(MPS)は、ナノ粒子の肝臓取り込み及びそれに続く胆汁排出に関与する。ナノ粒子の特定のサイズ及び表面特性が肝臓のMPSによる取り込みを増加させることが知られている(例えば、それぞれが参照により組み込まれるChoiら、J. of Dispersion Sci. Tech. 24(3/4):475~487ページ(2003年);及びBrannon-Peppasら、J. Drug Delivery Sci. Tech. 14(4):257~264ページ(2004年)を参照のこと)。例えば、粒子の疎水性を高めることが、MPSによる取り込みを増加させることが知られている。それにより、当業者は、胆汁排出を調節するための特定の特徴を有する粒子を選択することができる。胆肝道系は、腎臓系により排出され得る粒子(例えば、10~20nm)よりもやや大きな粒子の排出を可能にする。それにもかかわらず、粒子が肝胆汁排泄には大き過ぎる実施形態について、粒子は、インビボにおいてより小さなサイズへ分解された後、除去されうる。そのような実施形態において、肝胆汁排泄によるクリアランスを促進するコーティングが、粒子の分解後にコーティングが露出するよう粒子の内側表面の一部を覆ってもよい。粒子は、複数のコーティング分子、例えば、表面の一部を覆う疎水性分子を含んでもよい。表面は、粒子の分解後に曝露されてもよく、それが分解された粒子のクリアランスを可能にする。
【0102】
一部の実施形態において、粒子は、ファゴサイトーシスによるクリアランスを促進するように適合化される。例えば、粒子は、排出剤を含んでもよく、この場合、排出剤は、例えば、マクロファージによる認識のための病原体関連分子パターンを含む。病原体関連分子パターン(PAMP)としては、非メチル化CpG DNA(細菌)、二本鎖RNA(ウイルス)、リポポリサカルリド(細菌)、ペプチドグリカン(細菌)、リポアラビノマンナン(細菌)、ザイモサン(酵母菌)、マイコプラズマのリポタンパク質、例えば、MALP-2(細菌)、フラジェリン(細菌)、ポリ(イノシン-シチジル)酸(細菌)、リポテイコ酸(細菌)、及びイミダゾキノリン(合成)が挙げられる。好適な実施形態において、PAMP排出剤は、1つ以上の標的と粒子が結合する前にマクロファージが粒子を貪食しないようマスクされる。例えば、PAMP排出剤は、上記コーティング(例えば、生分解性ポリマーコーティングなどのポリマーコーティング)の任意の1つによってマスクされてもよい。マクロファージは、20μmの大きさの粒子を貪食することができる(例えば、Cannon、G.J.及びSwanson、J.A., J. Cell Science 101:907~913ページ(1992年); Champion、J.A.ら、Pharm Res 25(8):1815~1821ページ(2008年)を参照のこと)。一部の実施形態において、ファゴサイトーシスによるクリアランスを促進する排出剤は、排出剤が粒子の分解後に露出されるよう粒子の内側表面の一部を覆ってもよい。粒子は、表面の一部を覆う複数の排出剤、例えば、PAMPを含んでもよい。表面は、粒子の分解後に曝露されてもよく、それが分解された粒子のクリアランスを可能にする。排出剤は、薬剤を含む表面と重なる表面の一部を覆ってもよい。排出剤(例えば、PAMP)は、例えば、第2のコーティングの分解後又は粒子の分解後に粒子に対する免疫応答を誘発してもよい。
【0103】
一部の実施形態において、排出剤(例えば、PAMP)に対する免疫応答が薬剤及び/又は薬剤/生体分子複合体に対する免疫応答を上回ってもよく、それにより薬剤及び/又は薬剤/生体分子複合体に対する免疫応答の開始を阻害するか、或いは遅延させる。例えば、粒子の分解が排出剤並びに薬剤(及び/又は薬剤/生体分子複合体)を白血球に曝露させてもよい。PAMP排出剤は、分解された粒子のマクロファージによる急速なクリアランスを可能にし、それにより、薬剤及び/又は薬剤/生体分子複合体に対する免疫応答(例えば、B細胞が関係する免疫応答)を遅延させることができる。
【0104】
排出剤はカルレティキュリンであってもよく、これは、ファゴサイトーシスを誘導する。
【0105】
一部の実施形態において、粒子は、生物によって約1日間~約5年間以内、例えば、約1日間~約3年間又は約1日間~約1年間以内に、除去されてもよい。
【0106】
VII.投与の方法
本開示は、本明細書に記載されている組成物(例えば、概して若しくは具体的に記載されている粒子のいずれか又は本明細書に記載されている複数の粒子)が、インビトロ及び/又はインビボで細胞及び組織に投与されてもよいことを意図する。インビボでの投与としては、がんの動物モデルなどの疾患の動物モデルへの投与又はそれを必要とする対象への投与が挙げられる。適した細胞、組織又は対象は、愛玩用動物、家畜、動物園の動物、絶滅の危機に瀕している種、希少動物、非ヒト霊長類及びヒトなどの動物を含む。例となる愛玩用動物は、イヌ及びネコを含む。
【0107】
培養物中の細胞若しくは組織へ及び/又はその周囲へなどのインビトロでの送達に対して、組成物は、微小環境に接触する若しくは培養培地中の可溶性物質に接触する若しくは細胞に接触する又はさらに細胞に浸透するなどのために培養培地に添加されてもよい。活性の所望の部位は、組成物(例えば、本明細書に記載されている粒子)を投与するための送達メカニズム及び手段に影響を与える。
【0108】
インビボでの細胞若しくは組織へ(細胞及び組織の微小環境へを含む)及び/又はそれを必要とする対象へのなどインビボでの送達に対して、多数の投与方法が想起される。特定の方法は、粒子組成物及び特定の適用及び患者に基づいて選択されてもよい。さまざまな送達システムが知られており、本開示の薬剤を投与するために使用することができる。任意のそのような方法は、本明細書に記載されている薬剤のいずれかを投与するために使用することができる。導入の方法は、経腸又は非経口(以下に限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、心筋内、静脈内、皮下、経肺、鼻腔内、眼内、硬膜外を含む)及び経口経路が可能である。本開示の組成物は、任意の都合のよい経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮若しくは皮膚粘膜のライニング(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜及び腸管粘膜など)を介した吸収によって投与されてもよく、他の生物活性剤と一緒に(同時又は連続的のいずれかで)投与されてもよい。投与は、全身的であっても、又は局所的であってもよい。
【0109】
特定の実施形態において、組成物は、ボーラス注射又は注入などによって静脈内に投与される。特定の実施形態において、組成物は、経口的に、皮下に、筋肉内に又は腹腔内に投与される。
【0110】
特定の実施形態において、本開示の組成物を局所的に治療の必要な領域に(例えば、腫瘍への注射などによって腫瘍の部位に)投与することが望ましい場合もある。
【0111】
肝臓は、転移の好発部位である。したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物の送達は肝臓に向けられる。例えば、肝臓に本開示の薬剤を送達するために肝門脈に静脈カテーテルが配置されてもよい。肝門脈経由の送達のその他の方法も予想される。
【0112】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、静脈内注入によって投与される。特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20又は少なくとも30分間の期間にわたって注入される。他の実施形態において、本薬剤は、少なくとも60、90又は120分間の期間にわたって注入される。注入期間にかかわらず、本開示は、特定の実施形態では、それぞれの注入が全体の治療計画の一部であり、その場合、薬剤は、規則的なスケジュール(例えば、週単位で、月に1回など)に従っていくらかの期間投与されることを意図する。ただし、他の実施形態において、組成物は、例えば、全体の治療計画の一部としてボーラス注射によって送達され、その場合、薬剤は、規則的なスケジュールに従っていくらかの期間投与される。
【0113】
前述のいずれかに関して、(1つの薬剤又は2つ以上のそのような薬剤の組合せを含む)本開示の組成物は、インビトロ又はインビボで任意の適切な経路又は方法により投与されてもよいことが意図される。組成物は、治療計画の一部として投与されてもよく、その場合、組成物は、特定のスケジュールに従ってなど1回又は複数回投与される。さらに、本開示の組成物は、投与経路及び特定の用途に適切なように製剤化されることが意図される。本開示は、前述の特徴の任意の組合せ並びに本明細書に記載されている本開示の任意の態様及び実施形態との組合せを意図する。
【0114】
前述のことは、単独又は組合せで使用され、且つ本明細書に記載されている任意の方法のために使用される本開示の任意の組成物(例えば、粒子又は複数の粒子)に当てはまる。本開示は、特に、本開示のそのような組成物の特徴の任意の組合せ、組成物、並びにこのセクション及び以下に記載されている各種医薬組成物及び投与の経路に関して記載されている特徴を有する方法を意図する。
【0115】
VIII.医薬組成物
特定の実施形態において、本開示の対象粒子(複数可)は、薬学的に許容される担体とともに製剤化される。(例えば、本明細書に記載されている粒子又は複数の粒子を含む)1つ以上の組成物は、単独で、又は医薬製剤(組成物)の構成成分として投与することができる。本明細書において概して又は具体的に記載されている本開示のあらゆる組成物は、本明細書に記載されているとおり製剤化されてもよい。特定の実施形態において、本組成物は、第2の治療剤とともに製剤化された本開示の2つ以上の粒子又は本開示の粒子を含む。
【0116】
本開示の組成物は、ヒト又は動物用薬剤に使用するのに都合のよい任意の方法で投与するために製剤化されてもよい。湿潤剤、乳化剤並びにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤並びに着色剤、離型剤(release agent)、コーティング剤、甘味料、香味料、香料(perfuming agent)、保存料並びに酸化防止剤も組成物中に存在してよい。
【0117】
対象粒子(複数可)の製剤としては、例えば、経口、経鼻、局所、非経口、直腸及び/又は腟内投与に適したものが挙げられる。本製剤は、単位剤形として便利に提供されてもよく、薬学の分野において周知の任意の方法によって調製されてもよい。単一剤形を生成するために担体材料と混合され得る活性成分の量は、治療される宿主及び投与の特定の様式により変化することになる。単一剤形を生成するために担体材料と混合され得る活性成分の量は、一般に治療効果をもたらす化合物の量になる。
【0118】
特定の実施形態において、これらの製剤又は組成物を調製する方法は、1つ以上の粒子及び担体並びに任意に1つ以上の付加的な成分を混合することを含む。一般に、本製剤は、液体担体若しくは細かく分割された固体担体又はその両方を用いて調製することができ、その後、必要に応じて、生成物を成形する。
【0119】
経口投与のための製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、薬用ドロップ(風味づけられた主成分、通常、スクロース及びアカシアゴム若しくはトラガントを使用)、散剤、顆粒剤の形態又は水性若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤として、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンとして、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として、又はトローチ剤(ゼラチン及びグリセリン若しくはスクロース及びアカシアゴムなどの不活性主材料を使用)及び/又は口腔洗浄薬並びに同種のものであってもよく、それぞれが所定量の本開示の粒子を含有する。懸濁剤は、活性化合物に加えて、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガント並びにそれらの混合物などの懸濁化剤を含んでもよい。
【0120】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、及び同種のもの)において、本開示の1つ以上の組成物は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム及び/又は以下の任意のものなどの1つ以上の薬学的に許容される担体と混合されてもよい:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/若しくはケイ酸などの充填剤又は増量剤、(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/若しくはアカシアゴムなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保水剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶解遅延剤、(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイト粘土などの吸着剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物などの滑沢剤並びに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、本医薬組成物は、緩衝剤も含んでもよい。同様のタイプの固体組成物も、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール及び同種のもののような賦形剤を使用して軟及び硬ゼラチンカプセル剤(hard-filled gelatin capsule)中の充填剤として利用することができる。経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般的に使用される不活性の希釈剤、例えば、水又はその他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル並びにそれらの混合物を含んでもよい。不活性の希釈剤の他に、経口用組成物は、補助薬、例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、香味料、着色剤、香料及び保存料も含んでよい。
【0121】
特定の実施形態において、本開示の方法は、頸部及び膣のものなどの皮膚又は粘膜のいずれかへの局所投与を含む。局所用製剤は、皮膚又は角質層浸透促進剤として有効であることが知られている1つ以上の多種多様の薬剤をさらに含んでもよい。これらの例は、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチル又はイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド及びアゾンである。化粧料製剤上許容される製剤を作製するために付加的な薬剤をさらに含んでもよい。これらの例は、脂肪、ワックス、油、染料、芳香剤、保存料、安定剤及び表面活性剤である。当該技術分野において既知のものなどの角質溶解剤も含まれてよい。例は、サリチル酸及び硫黄である。局所又は経皮投与用の剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤及び吸入剤が挙げられる。本開示の対象薬剤は、滅菌条件下で薬学的に許容される担体及び必要とされる場合もある任意の保存料、バッファー又は高圧ガスとともに混合されてもよい。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤は、本開示の対象薬剤に加えて、動物及び植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク並びに酸化亜鉛又はそれらの混合物などの賦形剤を含んでもよい。散剤及びスプレー剤は、本開示の対象薬剤に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレー剤は、従来の高圧ガス、例えば、ハイドロクロロフルオロカーボン並びにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素をさらに含んでもよい。
【0122】
非経口投与に適した医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される滅菌した等張の水性若しくは非水系の溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン或いは使用の直前に滅菌した注射可能な溶液又は分散液に再構成することができる滅菌された粉末とともに1つ以上の本開示組成物を含んでもよく、これは、酸化防止剤、バッファー、静菌剤、製剤を意図された対象の受け手の血液と等張にする溶質、懸濁化剤又は増粘剤を含んでもよい。本開示の医薬組成物に利用されてもよい適した水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び同種のものなど)及び適したそれらの混合物、オリーブ油などの植物油並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって適切な流動性を保持することができる。
【0123】
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助薬を含んでもよい。さまざまな抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸及び同種のものを含めることによって微生物の作用を確実に防止してもよい。本組成物に糖、塩化ナトリウム及び同種のものなどの等張化剤(isotonic agent)を含めることが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによって注射可能な医薬品形態の長期の吸収をもたらすことができる。
【0124】
注射可能なデポ形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に1つ以上の粒子のマイクロカプセルマトリックス(microencapsule matrix)を形成することによって作製されてもよい。ポリマーに対する薬物の比及び利用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度は制御することができる。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射可能な製剤はまた、体組織に適合したリポソーム又はマイクロエマルジョンに薬物を封入することによって調製される。
【0125】
好適な実施形態において、本開示の組成物は、ヒト又は愛玩用動物などの動物に対する静脈内投与に適合した医薬組成物として通常の手順に従って製剤化される。必要であれば、本組成物はまた、可溶化剤及び注射の部位の疼痛を緩和するためのリドカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。本組成物が注入によって投与される場合、滅菌した医薬品グレードの水又は生理的食塩水を入れた点滴ボトルを用いて投与することができる。本組成物が注射によって投与される場合、注射用の滅菌水又は生理的食塩水のアンプルが提供されてもよく、投与に先立って成分が混合されてもよい。
【0126】
別の実施形態では、本明細書に記載されている組成物(例えば、粒子(複数可))は、ヒト又は愛玩用動物などの動物に対する皮下、腹腔内又は筋肉内投与用に製剤化される。
【0127】
特定の実施形態において、本開示の薬剤及び粒子は、腫瘍への局所送達のため、例えば、腫瘍内注射用の送達のために製剤化される。
【0128】
特定の実施形態において、本組成物は、肝門脈経由の肝臓への局所投与を対象とし、薬剤及び粒子はそれに応じて製剤化されてもよい。
【0129】
特定の実施形態において、特定の製剤は、2つ以上の経路を介した送達との関連で使用するのに適している。このように、例えば、静脈内注入に適した製剤は、肝門脈を介した送達にも適している場合もある。ただし、他の実施形態において、製剤は、ある経路の送達に関して使用するのに適しているが、第2の経路の送達に関して使用するのに適していない。
【0130】
がんなどの状態の治療に有効であろう及び/又は可溶性TNFRを中和する際に有効であろう及び/又は可溶性TNFR、特に腫瘍微小環境及び任意に血漿中に存在する可溶性TNFRの量若しくはそのTNFアルファ結合活性を低減する際に有効であろう及び/又はインビトロ若しくはインビボにおける腫瘍細胞の増殖、成長又は生存を阻害する際に有効であろう本開示の薬剤又は粒子の量は、標準的な臨床又は実験技術によって決定することができる。さらに、最適な投与量範囲を特定することを支援するために、インビトロアッセイが任意に利用されてもよい。製剤に利用される正確な用量はまた、投与経路及び状態の重篤度に左右されることになり、専門家の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。ヒト又は動物に対する投与の有効量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから導き出された用量応答曲線から推定することができる。
【0131】
特定の実施形態において、医薬調製物を含む本開示の組成物は、発熱性ではない。言い換えると、特定の実施形態において、本組成物は、実質的に発熱物質フリーである。一実施形態において、本開示の製剤は、エンドトキシン及び/又は関連する発熱物質を実質的に含まない発熱物質フリー製剤である。エンドトキシンは、微生物の内部に閉じ込められており、微生物が分解されるか、又は死んだときにのみ放出される毒素を含む。発熱物質は、細菌及びその他の微生物の外膜由来の発熱を誘発する耐熱性物質(糖タンパク質)も含む。これらの両物質は、ヒトに投与されると、発熱、血圧低下及びショックを引き起こす可能性がある。有害な影響の可能性のため、少量のエンドトキシンでも静脈内に投与される医薬品溶液から除去されなければならない。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬物適用に対し1回1時間に体重1キログラム当たり1用量につき5エンドトキシン単位(EU)の上限を定めた(The United States Pharmacopeial Convention, Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000年))。治療効果のあるタンパク質が比較的多い投与量で及び/又は長期間(例えば、患者の一生涯など)にわたって投与される場合、たとえ少量でも有害で危険なエンドトキシンは危険であろう。ある特定の実施形態において、組成物中のエンドトキシン及び発熱物質のレベルは、10EU/mg未満又は5EU/mg未満又は1EU/mg未満又は0.1EU/mg未満又は0.01EU/mg未満又は0.001EU/mg未満である。
【0132】
前述のことは、本開示の薬剤、本明細書に記載の組成物及び方法のいずれにも当てはまる。本開示は、特に、本明細書に記載されている本開示の薬剤、組成物及び方法(単独又は組合せで)の特徴と、このセクション及び上に記載されている各種医薬組成物及び投与の経路に関して記載されている特徴とのあらゆる組合せを意図する。
【0133】
本開示は、本開示の方法に使用するのに適した薬剤及び薬剤のカテゴリーの数々の一般的及び具体的な例(「本開示の薬剤」)を提供する。本開示は、任意のそのような薬剤又は薬剤のカテゴリーは、インビトロ又はインビボにおける投与について本明細書に記載されているように製剤化することができることを意図する。
【0134】
さらに、特定の実施形態において、本開示は、1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とともに製剤化された本明細書に記載されている任意の本開示の薬剤を含む組成物を薬学的に含む組成物を意図する。そのような組成物は、本明細書において提供される本開示の薬剤の任意の機能的及び/又は構造的特徴を使用して示される場合もある。任意のそのような組成物又は医薬組成物は、インビトロ又はインビボにおいて本開示の任意の方法で使用することができる。
【0135】
同様に、本開示は、単離された又は精製された本開示の薬剤を意図する。本明細書に記載されている薬剤の任意の機能的及び/又は構造的特徴に基づいて記載されている本開示の薬剤は、単離された薬剤又は精製された薬剤として提供されてもよい。そのような単離された薬剤又は精製された薬剤は、本明細書に記載のインビトロ又はインビボでの任意の方法における使用法を含むインビトロ又はインビボでの数々の使用法を有する。
【0136】
IX.適用
本明細書に記載されている組成物(例えば、粒子及びその医薬組成物)は、さまざまな診断及び治療的適用において有用である。例えば、本明細書に記載されている粒子は、がんを治療する、対象から毒を除去する又はウイルス若しくは細菌感染症を治療するために使用することができる。
【0137】
治療的適用は、本明細書に記載されている1つ以上の組成物を対象、例えば、ヒト対象に投与経路に部分的に依存したさまざまな方法を使用して投与することを含む。経路は、例えば、静脈注射若しくは注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内(IP)注射又は筋肉内注射(IM)が可能である。
【0138】
投与は、例えば、局所注入、注射によって、又はインプラントによって行うことができる。インプラントは、シアラスティック膜などの膜又は線維を含む多孔質、非多孔質又はゼラチン質の材料からなるものであってもよい。インプラントは、組成物を対象に持続的又は周期的に放出するよう構成されてもよい。例えば、それぞれの開示はその全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第20080241223号、米国特許第5,501,856号、同第5,164,188号、同第4,863,457号及び同第3,710,795号、EP488401並びにEP430539を参照のこと。本組成物は、例えば、拡散性、侵食性(erodible)又は対流性システム、例えば、浸透圧ポンプ、生分解性インプラント、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電気分解ポンプ(electrolytic pump)、起泡ポンプ(effervescent pump)、圧電ポンプ、侵食ベースのシステム又は電気機械システムベースの埋め込み型のデバイスによって対象に送達されてもよい。
【0139】
本明細書中で使用される場合、インビボ環境における「有効量」又は「治療有効量」という用語は、治療される障害の1つ以上の症状を治療、阻害若しくは緩和する又は別の方法で所望の薬理学的及び/若しくは生理学的効果をもたらす、例えば、抗原に対する免疫応答を調節する(例えば、向上させる)のに十分な投与量を意味する。正確な投与量は、対象に依存する変化要素(例えば、年齢、免疫系の健康など)、疾患及び行われる治療などのさまざまな要因により変化することになる。
【0140】
本明細書中で使用される場合、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ若しくはチンパンジー)、ウマ、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、テンジクネズミ、スナネズミ、ハムスター、ラット又はマウスが可能である。一部の実施形態において、哺乳動物は、乳児(例えば、ヒト乳児)である。
【0141】
本明細書中で使用される場合、「予防を必要とする」、「治療を必要とする」又は「それを必要とする」対象哺乳動物とは、適切な医療従事者(例えば、ヒトの場合は医師、看護師又はナースプラクティショナー、非ヒト哺乳動物の場合は獣医師)の判断により与えられる治療によって合理的に利益を得るであろう哺乳動物を指す。
【0142】
「予防すること」という用語は、当該技術分野において認められ、状態に関して使用される場合、当該技術分野において十分に理解されており、組成物を投与されない対象と比較して対象哺乳動物における医学的状態の症状の頻度を低減するか、又はその発症を遅延させる組成物の投与を含む。
【0143】
本明細書に記載されている任意の組成物の適したヒトの用量は、例えば、第I相用量漸増試験においてさらに評価されてもよい。例えば、van Gurpら、 (2008年) Am J Transplantation 8(8):1711~1718ページ; Hanouskaら、(2007年) Clin Cancer Res 13(2、パート1):523~531ページ;及びHetheringtonら、(2006年) Antimicrobial Agents and Chemotherapy 50(10): 3499~3500ページを参照のこと。
【0144】
そのような組成物の毒性及び治療効果は、細胞培養又は実験動物(例えば、がん、毒性又は感染の動物モデル)における既知の薬学的手順によって決定されてもよい。これらの手順は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療効果のある用量)を求めるために使用することができる。毒作用と治療効果の間の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す薬剤が好ましい。毒性副作用を示す組成物が使用されてもよいが、そのような化合物を冒された組織の部位に導く送達システムを設計し、正常な細胞に対する損傷の可能性を最小限にし、それにより副作用を低減するよう注意を払わなければならない。
【0145】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための投与量の範囲を処方する際に使用することができる。そのような組成物の投与量は、一般に毒性がわずかか、又はないED50を含む組成物の循環濃度(circulating concentration)の範囲内にある。投与量は、利用される剤形及び利用される投与経路によりこの範囲内で変化してもよい。治療有効用量は、まず細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、動物モデルにおいて細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の最大の阻害の半分を達成する抗体の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するよう処方されてもよい。そのような情報は、ヒトで有用な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定されてもよい。一部の実施形態において、例えば、局所投与が所望の場合、細胞培養又は動物モデル化を使用して局所部位内において治療有効濃度を達成するのに必要とされる用量を決定することができる。
【0146】
本明細書に記載されている任意の方法の一部の実施形態において、粒子は、哺乳動物に1つ以上の付加的な治療用薬剤(例えば、感染を治療するため又はがんを治療するための治療用薬剤)とともに投与することができる。
【0147】
一部の実施形態において、粒子及び付加的な治療用薬剤は、哺乳動物に異なる投与の経路を使用して投与されてもよい。例えば、付加的な治療用薬剤は皮下又は筋肉内に投与することができ、粒子は静脈内に投与することができる。
【0148】
X.新生物に関連する選ばれた適用
一部の実施形態において、本明細書に記載されている粒子は、がんのある対象を治療するのに有用な場合がある。本明細書に記載されている粒子組成物に有用な例となる薬剤及び/又はそのような粒子によって捕捉され得る可溶性生体分子は、本明細書に記載されており(例えば、表2)、当該技術分野において知られている。例えば、sTNFR、MMP2、MMP9、sIL-2R、sIL-1受容体及び同種のものを捕捉することができる粒子は、がんを治療するのに及び/又は免疫脱抑制(immune dis-inhibition)を軽減することによってがんに対する免疫応答を向上させるのに有用である。
【0149】
免疫療法に対する免疫脱抑制アプローチは、多くのがん患者が、一般に、総合的には免疫学的に十分であるが、その免疫系は、腫瘍の微小環境において局所的に抑制されているという概念に部分的に基づく。本開示の粒子を投与することによって免疫系のこの抑制が軽減されれば、患者自身の免疫系が腫瘍に作用する可能性がある。このように、特定の実施形態において、本開示の粒子は、免疫応答を誘発するために細胞表面受容体と結合することが意図される外来性の活性サイトカインを加えることによって患者の免疫系を過剰刺激する必要のない及び/又は別の方法で患者の免疫系を過剰刺激しない免疫療法アプローチを提供する。
【0150】
理論に縛られるものではないが、がん患者は、一般に、免疫学的に十分であるため、腫瘍抗原を認識するリンパ球の能力は、腫瘍によって一般に影響を受けない。したがって、リンパ球は、あらゆる異常な細胞塊に引き寄せられるであろうため、腫瘍微小環境に引き寄せられ、その場所でサイトカイン及び腫瘍壊死因子(免疫系の主要な細胞傷害性の「剣」であるTNF、例えば、TNFアルファ)などの細胞傷害性因子はリンパ球から微小環境に突き進む。がん細胞が代わりにウイルス感染細胞である場合、TNF(TNFアルファなど)が感染細胞の表面にあるTNF受容体(TNFR)と結合することになり、TNFに対するR1若しくはR2型受容体が結合しているかどうかに応じてアポトーシス又は酸化ストレスのいずれかによって結果として急速に破壊される。言い換えると、腫瘍及び/又は腫瘍抗原の存在に刺激されない通常の免疫応答の状況において、リンパ球によって配置されるTNFは、免疫応答を開始する一部として細胞表面TNF受容体(R1及び/又はR2受容体)と結合することができるであろう。腫瘍の状況であっても、リンパ球は腫瘍部位に動員される。
【0151】
しかしながら、多くのタイプのがん細胞は、TNF受容体(両タイプ)を過剰産生し、それを腫瘍の周囲に雲状に脱離する点でウイルス感染細胞などの他の異常な細胞タイプとは異なる挙動をする。それにより、がん細胞及び/又は腫瘍の微小環境は、ある量の可溶性TNF受容体を含む。理論に縛られるものではないが、腫瘍微小環境における可溶性TNF受容体レベルは、健康な細胞、例えば、同じ組織タイプの健康な細胞の微小環境において見られるレベルを上回る。さらに又は或いは、TNF受容体の脱離の率及び程度は、健康な細胞からよりもがん細胞で大きい。さらに、理論に縛られるものではないが、がん患者の血漿において見られる可溶性TNF受容体のレベルは、特定の実施形態では、健康な患者においてよりもさらに高い場合もある。
【0152】
上記のメカニズムにかかわらず、このモデルにおいて、これらの脱離された可溶性TNF受容体は、動員されたリンパ球によって内因的に放出されたTNFと結合して、内因性TNFを中和し、腫瘍の周囲に免疫学的恩恵の泡を効果的に作り出し、その中で腫瘍は増大し続け、さらにTNF受容体を脱離する。言い換えると、脱離された可溶性TNF受容体は、リンパ球によって内因的に産生されたTNFアルファを吸い取り、TNFががん細胞にある細胞表面TNF受容体と結合するのを妨げるか又は抑制する。これが、がん細胞上の細胞表面TNF受容体と結合することができるTNFを減少させるか、又は除去する。可溶性TNF受容体は、TNFアルファとの結合に関して本質的に打ち勝ち、それにより細胞表面のTNF受容体と結合するためのTNFアルファなどのTNFの活性を低下させる。
【0153】
上記のシナリオがIL-2及び脱離された可溶性IL-2受容体との関連で同様に展開される可能性がある。
【0154】
本開示は、がんにおいて脱離された受容体によって作り出される免疫系の抑制を軽減する(例えば、免疫脱抑制)ために全身又は局所的に展開することができる薬理学的アプローチを提供する。本開示は、がん細胞及び腫瘍の微小環境においてなど可溶性TNF受容体及び/又は可溶性IL-2受容体(若しくは免疫脱抑制をもたらすあらゆる他の可溶性生体分子)の量及び/又は活性を低減する(例えば、活性を中和する)ための方法及び組成物を提供する。理論に縛られるものではないが、例えば、可溶性TNF受容体(例えば、腫瘍微小環境にあるものなど)の量及び/又は活性の低減は、がん細胞などの細胞の増殖、成長又は生存を阻害するための方法の一部として使用することができる。特定の実施形態において、これは、がん細胞などの細胞の生存を阻害するために使用されてもよい。例となる方法及び薬剤は、本明細書に記載されている。
【0155】
制御性T細胞(TREG)は、例えば、過活動のT細胞又は長期のT細胞作用が原因となる自己免疫疾患を回避するために免疫応答を抑える手段としてがん細胞と同じリガンドを分泌することができる。例えば、CD80/B7-1及びCD86/B7-2は、T細胞にあるCTLA-4受容体と結合し、T細胞の活性を抑制する。本明細書に記載されている粒子は、CTLA-4受容体を遮断するよりむしろ、CD80/B7-1及び/又はCD86/B7-2を捕捉するよう設計されてもよい。同様に、本明細書に記載されている粒子は、例えば、PD-1受容体を含む粒子を使用してPD-1Lなどの他の免疫チェックポイント阻害剤を捕捉するよう設計されてもよい。そのような粒子組成物は、がんの治療のために免疫系を刺激することに対する他のアプローチを超えたいくつかの利益をもたらす。
【0156】
一部の実施形態において、対象は、がんを有するか、がんが疑われるか、又はがんを発症するリスクがある対象である。一部の実施形態において、対象は、自己免疫疾患を有するか、自己免疫疾患が疑われるか、又は自己免疫疾患を発症するリスクがある対象である。
【0157】
本明細書中で使用される場合、がんを「発症するリスクがある」対象とは、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7又は8個以上)のがんを発症するリスク因子を有する対象である。例えば、がんを発症するリスクがある対象は、がんを発症する素因(すなわち、腫瘍抑制遺伝子における突然変異などのがんを発症する遺伝的素因(例えば、BRCA1、p53、RB若しくはAPCに突然変異)を有する可能性があるか、又は状態をもたらす可能性のある条件に曝露されたことがある。このように、対象は、対象が突然変異誘発レベル又は発がんレベルの特定の化合物(例えば、アクロレイン、ヒ素、ベンゼン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ポロニウム210(ラドン)、ウレタン又はビニルクロリドなどのタバコの煙にある発がん性化合物)に曝露されると「がんを発症するリスクがある対象である場合がある。さらに、対象は、対象が、例えば、大量の紫外線若しくはX線照射に曝露されたか、又は腫瘍の原因/関連ウイルス、例えば、パピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、B型肝炎ウイルス若しくはヒトT細胞白血病・リンパ腫ウイルスに曝露された(例えば、感染した)場合に「がんを発症するリスクがある」可能性がある。がんは、無制御の細胞の分裂及び浸潤により隣接する組織へ直接増大すること又は転移(この場合、がん細胞が血流若しくはリンパ系により運ばれる)により遠隔部位に植え込まれることのいずれかによるその広がる能力によって特徴づけられる疾患又は障害の種類である。がんは、あらゆる年齢の人に発症する可能性があるが、リスクは、年齢とともに増加する傾向にある。がんのタイプとしては、例えば、肺がん、乳がん、結腸がん、膵がん、腎がん、胃がん、肝がん、骨がん、血液がん、神経組織のがん(例えば、多形神経膠芽腫などの膠芽腫)、メラノーマ、甲状腺がん、卵巣がん、精巣がん、前立腺がん、子宮頸がん、膣がん又は膀胱がんを挙げることができる。
【0158】
同様に、感染症を発症するリスクがある対象とは、病原性微生物への曝露の可能性を高める1つ以上のリスク因子を有する対象である。
【0159】
がん又は感染症「の疑いがある」対象とは、がん又は感染症の1つ以上の症状がある対象である。当然のことながら、がん又は感染症を発症するリスクがあるか、又はそれがある疑いがある対象は、目的とする種内のすべての対象を含む訳ではない。
【0160】
一部の実施形態において、本方法は、対象ががん又は自己免疫疾患であるかどうかを判定することを含む。
【0161】
XI.炎症性障害及び自己免疫障害に関連する選ばれた適用
一部の実施形態において、本明細書に記載されている粒子は、炎症性障害及び/又は自己免疫障害を治療するために使用することができる。本明細書に記載されている粒子組成物に有用な例となる薬剤及び/又はそのような粒子によって捕捉され得る可溶性生体分子は、本明細書に記載されており(例えば、表2)、当該技術分野において知られている。例えば、サイトカイン(例えば、TNFα又はIL-2、IL-6若しくはIL-1などインターロイキン)或いはケモカイン(例えば、CXCL8又はCXCL1)を捕捉することができる粒子は、さまざまな自己免疫障害及び/又は炎症性障害を治療するのに有用な場合がある。
【0162】
一部の実施形態において、自己免疫障害又は炎症性障害は過敏症反応である。本明細書中で使用される場合、「過敏症」とは、望ましくない免疫系の応答を指す。過敏症は、4つのカテゴリーに分けられる。I型過敏症は、アレルギーを含む(例えば、アトピー、アナフィラキシー又は喘息)。II型過敏症は、細胞傷害型/抗体関連型である(例えば、自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、胎児赤芽球症又はグッドパスチャー症候群)。III型は、免疫複合体病である(例えば、血清病、アルサス反応又はSLE)。IV型は、遅延型過敏症(DTH)、細胞性免疫メモリ応答(Cell-mediated immune memory response)及び抗体非依存性である(例えば、接触皮膚炎、ツベルクリン皮膚テスト又は慢性移植拒絶反応)。本明細書中で使用される場合、「アレルギー」は、IgEによる肥満細胞及び好塩基球の過剰な活性化によって特徴づけられる障害を意味する。特定の例において、IgEによる肥満細胞及び好塩基球の過剰な活性化は、結果として(部分的又は完全にのいずれかで)炎症反応をもたらす。特定の例において、炎症反応は、局所的である。特定の例において、炎症反応は、気道狭窄(すなわち、気管支収縮)をもたらす。特定の例において、炎症反応は、鼻の炎症(すなわち、鼻炎)をもたらす。特定の例において、炎症反応は、全身的(すなわち、アナフィラキシー)である。
【0163】
XII.病原体及び毒素に関連する選ばれた適用
一部の実施形態において、本明細書に記載されている粒子は、微生物(例えば、ウイルス若しくは細菌)又はエンドトキシンなどの微生物の構成成分と結合するよう設計されてもよい。それゆえに、本明細書に記載されている粒子は、例えば、感染性疾患を治療するのに有用な場合がある(例えば、HPV、HBV、C型肝炎ウイルス(HCV)、レトロウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)、ヘルペスウイルス、例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、HSV-1及びHSV-2並びにインフルエンザウイルスを含むウイルス感染性疾患。さらに、アスペルギルス(Aspergillus)、ブルギア(Brugia)、カンジダ(Candida)、クラミジア(Chlamydia)、コクシジウム(Coccidia)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ディロフィラリア(Dirofilaria)、淋菌(Gonococcus)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、リーシュマニア(Leishmania)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ゾウリムシ(Paramecium)、百日咳(Pertussis)、プラスモジウム(Plasmodium)、肺炎球菌(Pneumococcus)、ニューモシスチス(Pneumocystis)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、トキソプラズマ(Toxoplasma)及びコレラ菌(Vibriocholerae)などの細菌、真菌及びその他の病原性感染症が含まれる。例となる種としては、淋菌(Neisseria gonorrhea)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ヘモフィルス・バギナリス((Haemophilus vaginalis)、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus)種、マイクロプラズマ・ホミニス(Microplasma hominis)、軟性下疳菌(Hemophilus ducreyi)、鼡径肉芽腫(Granuloma inguinale)、性病性リンパ肉芽腫(Lymphopathia venereum)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ウシ流産菌(Brucella abortus)。ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、イヌ流産菌(Brucella canis)、カンピロバクター・フィータス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・フィータス・インテスティナリス(Campylobacter fetus intestinalis)、レプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、ヒツジ流産菌(Brucella ovis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、トリトリコモナス・フィータス(Trichomonas foetus)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、大腸菌(Escherichia coli)、アクチノバチルス・エクーリ(Actinobacillus equuli)、サルモネラ・アボルトゥス・オヴィス(Salmonella abortus ovis)、サルモネラ・アボルトゥス・エクイ(Salmonella abortus equi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コリネバクテリウム・エクイ(Corynebacterium equi)、コリネバクテリウム・ピオゲネス(Corynebacterium pyogenes)、アクチノバチルス・セミニス(Actinobaccilus seminis)、マイコプラズマ・ボヴィゲニタリウム(Mycoplasma bovigenitalium)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アブシディア・ラモサ(Absidia ramosa)、媾疫トリパノソーマ(Trypanosoma equiperdum)、大形馬バベシア(Babesia caballi)、破傷風菌(Clostridium tetani)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum);又は例えば、パラコクシディオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)などの真菌;又はその他の病原体、例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が挙げられる。米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)優先病原体(priority pathogen)も含まれる。これらとしては、カテゴリーA病原体、例えば、大痘瘡(痘瘡)、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)、クロストリジウム・ボツリヌム毒素(ボツリヌス中毒)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、フィロウイルス(エボラ出血熱、マールブルグ出血熱)、アレナウイルス(ラッサ(ラッサ熱)、フニン(アルゼンチン出血熱)及び関連ウイルス);カテゴリーB病原体、例えば、コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetti)(Q発熱)、ブルセラ(Brucella)属種(ブルセラ症)、鼻疽菌(鼻疽)、アルファウイルス(ベネズエラ馬脳脊髄炎ウイルス(Venezuelan encephalomyelitis)、東部及び西部馬脳脊髄炎)、トウゴマ(Ricinus communis)のリシン毒素(ヒマシマメ)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)のイプシロン毒素;ブドウ球菌(Staphylococcus)エンテロトキシンB、サルモネラ種、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、大腸菌O157株:H7、コレラ菌(Vibrio cholerae)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum);カテゴリーC病原体、例えば、ニパウイルス、ハンタウイルス、ダニ媒介性出血熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱及び多剤耐性結核菌;蠕虫、例えば、住血吸虫及びサナダムシ;及び原虫、例えば、リーシュマニア(Leishmania)(例えば、メキシコリーシュマニア(L. mexicana))、及びマラリア原虫(Plasmodium)が挙げられる。
【0164】
XIII.薬剤を投与するためのキット
特定の実施形態において、本開示はまた、本開示の少なくとも1つの組成物(例えば、粒子(複数可))が充填された1つ以上の容器を含む薬学的パッケージ又はキットを提供する。そのような容器(複数可)に任意に関連づけられた、医薬品若しくは生物学的製品の製造、使用若しくは販売を規制する政府機関によって指示される形態の表示であってもよく、その表示は、(a)ヒト投与のための製造、使用若しくは販売の機関による承認、(b)使用のための説明書又はその両方を示す。
【0165】
特定の実施形態において、キットは、対象薬剤の送達を容易にするための付加的な材料を含む。例えば、キットは、1つ以上のカテーテル、チューブ、注入バッグ、シリンジ及び同種のものを含んでもよい。特定の実施形態において、(例えば、本明細書に記載されている粒子を含む)組成物は、凍結乾燥された形態で包装され、キットは、少なくとも2つの容器、すなわち凍結乾燥組成物を含む容器及び凍結乾燥材料を再構成するための適切な量の適した水、バッファー又はその他の液体を含む容器を含む。
【0166】
前述のことは、本明細書に記載されているあらゆる組成物及び方法に当てはまる。本開示は、特に、そのような組成物及び方法の特徴(単独又は組合せ)とこのセクションに記載されているさまざまなキットに関して記載されている特徴とのあらゆる組合せを意図する。
【0167】
本開示のこれらの態様及びその他の態様は、以下の実施例を考慮することによりさらに理解されるであろう。実施例は、本開示のある特定の実施形態を説明するためのものであり、請求項によって定義されるその範囲を限定するものではない。
【実施例0168】
[実施例1]
がんを治療するための方法
ヒト患者は、可溶性TNFR又は可溶性IL-2Rを脱離するがん(例えば、肺がん、結腸がん、乳がん、脳腫瘍、肝がん、膵がん、皮膚がん若しくは血液がん)を有すると医療従事者によって特定されている。その患者に、可溶性TNFR又はIL-2Rと結合し、それを隔離する(本明細書に記載されている)粒子を含む組成物を、がんを治療するのに有効な量で投与する。任意に、患者に、可溶性TNFR又はIL-2Rの作用の阻害を維持するために「維持用量」の組成物を投与し、それにより患者のがんに対する免疫監視を強化し続ける。
【0169】
[実施例2]
ヒトを解毒するための方法
ヒト患者は、ボツリヌス毒素に関連する毒性の症状を示している。その患者に、可溶性ボツリヌス毒素と結合し、それを隔離する(本明細書に記載されている)粒子を含む組成物を、毒性に関連する1つ以上の症状を改善するのに有効な量で投与する。
【0170】
[実施例3]
ウイルス感染症を治療するための方法
ヒト患者は、HIV-1感染を有すると医療従事者によって特定されている。その患者に、可溶性HIV-1ビリオンと結合し、それを隔離する(本明細書に記載されている)粒子を含む組成物を患者の血液循環中のウイルスの力価を低下させるのに有効な量で投与する。患者に、HIV-1ビリオン力価の低下を維持するために「維持用量」の組成物を投与し、それにより患者の感染を抑制するとともに、他者へのウイルスの伝染の可能性を低減する。
【0171】
[実施例4]
シリコン粒子を製造するための方法
多様な孔サイズを有する1000nm×400nm及び1000nm×800nmのサイズの多孔質シリコンディスクを製造する。ディスクのサイズ及び形態並びに孔径は、走査電子顕微鏡法によって特性解析される。金(Au)ナノ粒子を多孔質シリコンディスクの孔に蒸着する。腫瘍壊死因子(TNF)は、配位結合(dative covalent bond)により金ナノ粒子の表面に結合している。リガンド密度及びTNF-Au結合の安定性を評価する。
【0172】
[実施例5]
ポリマー粒子を製造するための方法
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)粒子をエマルジョンにより作製する。PLGA粒子のサイズ及び形態を走査電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法及び透過型電子顕微鏡法によって特性解析される。その粒子を、マクロファージ動員(すなわち、ファゴサイトーシス)のために四級アンモニウムベータサイクロデキストリンでコーティングする。コーティングを原子間力顕微鏡法及び透過型電子顕微鏡法によって確認する。コーティング密度及び均一性を、透過型電子顕微鏡法及び動的光散乱によって特性解析する。
【0173】
ベータサイクロデキストリンでコーティングしたPLGA粒子を、マクロファージとともにインキュベートし、蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリーによってファゴサイトーシスを観察する。
【0174】
ベータサイクロデキストリンでコーティングしたPLGA粒子をポリエチレングリコール(PEG)及びチオール成分の混合物でコーティングして、オプソニン化の予防及びマクロファージ取り込み並びに他の粒子との結合を回避させる。PEG及びチオールコーティングの均一性及び密度を、原子間力顕微鏡法によって特性解析する。コーティングの安定性を、媒体中で粒子をさまざまな期間インキュベートすることによって特性解析する。さまざまな時点における粒子の回避及び取り込みを、上記のとおりマクロファージとともに粒子をインキュベートすることによって観察する。
【0175】
PLGA粒子を、腫瘍壊死因子(TNF)でコーティングし、粒子を、ジスルフィド結合によって合体させて、スポンジ内部表面にTNFを含む「スポンジ」を形成する。スポンジのTNFと細胞との間の相互作用を防ぐために、スポンジの外部表面をTNFを含まない粒子で任意にブロッキングする。
【0176】
[実施例6]
ポリマーベースの粒子の薬物動態
実施例5のスポンジ(すなわち、実施例5の「スポンジ」、例えば、103~1012のスポンジを含む組成物)を原発性及び転移性がんのマウスモデル並びに健康な対照の静脈内又は腫瘍内のいずれかに投与する。各投与経路に対するLD50を特定することによってスポンジの毒性を判定する。スポンジの半減期は、各投与経路に関するスポンジの血漿中濃度をLC/MS及びICPによりモニタリングすることによって決定する。マウスの生検材料を採取し、LC/MS、ICP及び共焦点顕微鏡法によりスポンジ及びその構成成分に関して組織を分析することによってスポンジの体内分布を確認する。
【0177】
[実施例7]
ポリマーベースの粒子の有効性
実施例5のスポンジ(すなわち、実施例5の「スポンジ」、例えば、103~1012のスポンジを含む組成物)を、MDA-MB-231又は4T1異種移植片(xenograph)を含むマウスに投与する。腫瘍サイズの縮小及び増大を評価するためにMDA-MB-231モデルを使用し、転移の抑制を評価するために4T1モデルを使用する。スポンジを週に1回6週間にわたりMDA-MB-231マウスの腫瘍内に投与し、体重及び腫瘍サイズを定期的にモニタリングする。スポンジを週に1回6週間にわたり4T1マウスの静脈内に投与し、転移の数をモニタリングする。
【0178】
[実施例8]
シリコン/金ベースの粒子の薬物動態及び有効性
実施例6及び7の実験を、実施例5の多孔質シリコン粒子を用いて繰り返す。
【0179】
本開示をその特定の実施形態を参照して示してきたが、本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が行われてもよく、等価物は置換され得ることを当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスステップ又はステップに適合させるために本開示の目的、趣旨及び範囲に多くの改変が行われてもよい。すべてのそのような改変は、本開示の範囲内にあることが意図される。