(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009983
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】保護素子及びバッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20240116BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240116BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240116BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240116BHJP
H01M 50/581 20210101ALI20240116BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H02J7/00 S
H02H7/18
H02H3/087
H01M50/581
H01H37/76 P
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178511
(22)【出願日】2023-10-16
(62)【分割の表示】P 2019074956の分割
【原出願日】2019-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小森 千智
(57)【要約】
【課題】高電圧が印加された場合でもスパークが発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供する。
【解決手段】絶縁基板2と、ヒューズエレメント3と、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する発熱体4と、発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体4を被覆する絶縁層6と、絶縁層6上に発熱体4に沿って形成され、ヒューズエレメント3の溶融導体3aが保持される発熱体引出電極7とを有し、発熱体4は、通電されると、発熱体給電電極5側が高電位部とされ、発熱体引出電極7側が低電位部とされ、発熱体引出電極7は、発熱体4の高電位部側に延在する先端部7aと発熱体4との重畳面積が、発熱体4の低電位部側に延在する基部7bと発熱体4との重畳面積よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、
上記発熱体を被覆する絶縁層と、
上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、
上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極側が低電位部とされ、
上記発熱体引出電極は、上記発熱体の高電位部側に延在する先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいことを特徴とする保護素子。
【請求項2】
上記発熱体の通電方向と直交する方向を幅方向としたときに、
発熱体引出電極は、上記先端部の幅が上記基部の幅よりも細い請求項1記載の保護素子。
【請求項3】
上記先端部が上記基部と同等の幅を有すると想定した場合における当該想定領域において、上記発熱体との重畳面積が、上記想定領域における上記発熱体との非重畳面積よりも狭い請求項2記載の保護素子。
【請求項4】
上記発熱体引出電極は、上記先端部の面積が、上記基部の面積よりも小さい請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項5】
上記発熱体引出電極は、上記先端部の全部が上記発熱体と重畳する請求項1~4のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項6】
上記発熱体引出電極は上記ヒューズエレメントが搭載され、
上記発熱体引出電極の先端部は、上記ヒューズエレメントの側縁よりも上記発熱体給電電極側に突出しない請求項1~5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項7】
複数の上記発熱体が上記絶縁基板上に離間して並列して設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項8】
上記発熱体引出電極は、上記先端部が上記2つの発熱体の間の領域上に形成され、
上記先端部は、上記2つの発熱体と重畳されていない請求項7記載の保護素子。
【請求項9】
上記発熱体引出電極は、上記先端部が上記2つの発熱体の間の領域上に形成され、上記先端部の一部が、少なくとも一つの上記発熱体と重畳する請求項7記載の保護素子。
【請求項10】
上記絶縁基板の一面と反対側の他面には、上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極が形成され、
上記発熱体引出電極と上記保持電極とが、上記絶縁基板を貫通する貫通孔を介して連続され、
上記絶縁基板は、溶融した上記ヒューズエレメントの溶融導体を、上記貫通孔を介して上記保持電極側に吸引する請求項7~9のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項11】
上記絶縁基板は、上記発熱体、上記発熱体給電電極及び上記発熱体引出電極が、上記ヒューズエレメントが設けられた上記絶縁基板の一面と反対側の他面に形成され、
上記絶縁基板の一面には、上記ヒューズエレメントを支持する支持電極が形成され、
上記発熱体引出電極と上記支持電極とが、上記絶縁基板を貫通する貫通孔を介して連続され、
上記絶縁基板は、溶融した上記ヒューズエレメントの溶融導体を、上記貫通孔を介して上記発熱体引出電極側に吸引する溶断部材を構成する請求項7~10のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項12】
上記ヒューズエレメントが上記溶断部材に挟持されている請求項11記載の保護素子。
【請求項13】
上記発熱体給電電極に印加される電圧は100V以上である請求項1~12のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項14】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、
上記発熱体を被覆する絶縁層と、
上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、
上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極側が低電位部とされ、
上記発熱体引出電極は、上記発熱体の高電位部側に延在する先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいことを特徴とするバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
多くのリチウムイオン二次電池を用いた電子装置においては、バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加され、瞬間的な大電流が流れた場合、或いはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力した場合であってもバッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態においても、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられている。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が用いられている。
【0005】
リチウムイオン二次電池の用途は、近年拡大しており、より大電流の用途、例えば電動ドライバ等の電動工具や、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等の輸送機器に採用が検討され、一部採用が開始されている。これらの用途において、特に起動時等には、数10A~100Aを超えるような大電流が流れる場合がある。このような大電流容量に対応した保護素子の実現が望まれている。
【0006】
このような大電流に対応する保護素子を実現するために、断面積を増大させた可溶導体を用い、この可溶導体の表面に、発熱体を形成した絶縁基板を接続した保護素子が提案されている。
【0007】
図25は、従来の保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。
図25に示す保護素子100は、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面上に形成された第1、第2の電極102、103と、絶縁基板101の表面に形成された発熱体104と、発熱体104を被覆する絶縁層105と、絶縁層105上に積層されるとともに発熱体104と接続された発熱体引出電極106と、第1の電極102、発熱体引出電極106、及び第2の電極103にわたって接続用ハンダを介して搭載されるヒューズエレメント107とを備える。
【0008】
第1、第2の電極102,103は、保護素子100が接続される外部回路の電流経路上に接続される端子部であり、それぞれ絶縁基板101の裏面に形成された第1、第2の外部接続電極102a,103aとキャスタレーションを介して接続されている。保護素子100は、第1、第2の外部接続電極102a,103aが、保護素子100が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント107が外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0009】
発熱体104は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。また、発熱体104は、絶縁基板101の表面上に形成された発熱体給電電極108と接続されている。発熱体給電電極108は、絶縁基板101の裏面に形成された第3の外部接続電極108aとキャスタレーションを介して接続されている。保護素子100は、第3の外部接続電極108aが、保護素子100が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、発熱体104が外部回路に設けられた外部電源と接続されている。そして、発熱体104は、図示しないスイッチ素子等により常時、電流及び発熱が制御されている。
【0010】
発熱体104は、ガラス層等からなる絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に発熱体引出電極106が形成されることにより、絶縁層105を介して発熱体引出電極106が重畳されている。また、発熱体引出電極106上には第1、第2の電極102,103間にわたって接続されたヒューズエレメント107が接続されている。
【0011】
これにより、保護素子100は、発熱体104とヒューズエレメント107が重畳されることにより熱的に接続され、発熱体104が通電によって発熱するとヒューズエレメント107を溶断することができる。
【0012】
ヒューズエレメント107は、Pbフリーハンダなどの低融点金属やAg、Cu又はこれらを主成分とする合金などの高融点金属により形成され、あるいは低融点金属と高融点金属の積層構造を有する。そして、ヒューズエレメント107は、第1の電極102から発熱体引出電極106を跨って第2の電極103にかけて接続されることにより、保護素子100が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント107は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱体104の発熱により溶断し、第1、第2の電極102,103間を遮断する。
【0013】
そして、保護素子100は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じると、スイッチ素子により発熱体104へ通電される。これにより、保護素子100は、発熱体104が高温に発熱され、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント107が溶融される。ヒューズエレメント107の溶融導体は、濡れ性の高い発熱体引出電極106及び第1、第2の電極102,103に引き寄せられることによりヒューズエレメント107が溶断される。したがって、保護素子100は、第1の電極102~発熱体引出電極106~第2の電極103の間を溶断させ、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0014】
なお、保護素子としては、
図25に示す構成の他にも
図26に示すように、2つの発熱体104を備えたものも提案されている。
図26に示す保護素子110は、絶縁基板101の表面上の第1、第2の電極102,103間に、2つの発熱体104が並列して設けられている。各発熱体104は絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に設けられた発熱体引出電極106が、両発熱体104間にわたって跨るように重畳形成されている。
【0015】
また、
図26に示す保護素子110では、絶縁基板101の裏面に集電極111が形成されるとともに、発熱体引出電極106と集電極111間を貫く複数の貫通孔112が設けられている。集電極111及び貫通孔112は、発熱体引出電極106上で溶融したヒューズエレメント107の溶融導体を吸引して大電流用途に対応して大型化したヒューズエレメント107の溶融導体の保持容量を増加させるものであり、貫通孔112の内周面には導電層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図25に示す保護素子100や
図26に示す保護素子110のような従来構造では、大電流用途のリチウムイオン二次電池の保護回路に用いられた場合、発熱体104に電力を供給する外部電源として当該大電流用途のリチウムイオン二次電池が用いられることから、保護素子100の作動時に発熱体給電電極108に高電圧が印加されることとなる。
【0018】
このため、保護素子100においては、
図27に示すように、発熱体給電電極108から発熱体引出電極106の先端へスパーク(放電)が発生し、発熱体引出電極106が破損する場合がある。そして、発熱体引出電極106が破損すると、破損個所においてヒューズエレメント107への熱伝導率が下がり、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがある。
【0019】
また、
図28に示すように、保護素子110においても、発熱体給電電極108から発熱体引出電極106の先端へスパークが発生し発熱体引出電極106が破損すると、破損個所においてヒューズエレメント107への熱伝導率が下がり、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがある。また、絶縁層(ガラス層)105は発熱体104の熱を効率よく発熱体引出電極106やヒューズエレメント107へ伝えるために、厚みが10~40μmと薄く形成されており、長時間にわたって発熱体104の熱が加わることにより破損が生じることがある。そして、
図29に示すように、絶縁層105の破損個所において発熱体104の高電位側から発熱体引出電極106の中央部へスパークが発生する恐れがある。これにより発熱体引出電極106が破損すると、絶縁層105の破損に加え発熱体引出電極106の破損により、ヒューズエレメント107への熱伝導率が下がり、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがある。
【0020】
このようなスパークに伴う電極破壊によってヒューズエレメントが融け残り、電流遮断が阻害されるリスクは、高電圧、大電流化に伴ってヒューズエレメントが大型化するにつれて、また、電流定格が向上し電界強度が高くなるにつれて、さらには、保護素子の小型化に伴う発熱体給電電極108と発熱体引出電極106との近接化や絶縁層の薄型化に伴って、大きくなる。
【0021】
したがって、発熱体を内蔵した保護素子において、高電圧、大電流化に対応するとともに、素子内部で電極破壊を起こすことなく、より安全に且つ速やかに作動する対策が求められている。
【0022】
そこで、本技術は、高電圧が印加された場合でもスパークが発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極側が低電位部とされ、上記発熱体引出電極は、上記発熱体の高電位部側に延在する先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいものである。
【0024】
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、上記保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極側が低電位部とされ、上記発熱体引出電極は、上記発熱体の高電位部側に延在する先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいものである。
【発明の効果】
【0025】
本技術によれば、発熱体引出電極の先端部は、発熱体の高電位部側に延在されているが、発熱体との重畳面積が基部と発熱体との重畳面積よりも小さい。これにより、先端部は、発熱体の高電位部との距離や対向面積(重畳面積)が小さくされ、その分、放電経路が形成されにくくなりスパークが発生しにくくされている。したがって、高電圧が印加された場合でもスパークが発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本技術が適用された保護素子の第1の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図2】
図2は、本技術が適用された保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図3】
図3は、本技術が適用された保護素子において発熱体引出電極の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図4】
図4は、本技術が適用された保護素子において発熱体引出電極の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図5】
図5は、ヒューズエレメントの外観斜視図である。
【
図6】
図6は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態に係る保護素子の回路図である。
【
図8】
図8は、比較例に係る保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図9】
図9は、比較例に係る保護素子において、ヒューズエレメント溶け残り溶断されない状態を示す平面図である。
【
図10】
図10は、本技術が適用された保護素子の第2の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施の形態に係る保護素子において、発熱体引出電極の変形例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態に係る保護素子の回路図である。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態に係る保護素子において、発熱体引出電極の変形例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、第2の実施の形態に係る保護素子において、発熱体引出電極の変形例を示す平面図である。
【
図15】
図15は、第2の実施の形態に係る保護素子において、絶縁基板の裏面にヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極を形成した変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図16】
図16は、
図15に示す保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図17】
図17(A)~(D)は、第2の実施の形態に係る保護素子において、発熱体の変形例を示す平面図である。
【
図18】
図18は、本技術が適用された保護素子の第3の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図19】
図19は、第3の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図20】
図20は、ヒューズエレメントを複数の溶断部材に挟持させた構成を示す断面図である。
【
図22】
図22は、
図20に示す保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図23】
図23は、比較例に係る保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図24】
図24は、比較例に係る保護素子において、ヒューズエレメント溶け残り溶断されない状態を示す平面図である。
【
図25】
図25は、従来の保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図26】
図26は、従来の保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【
図27】
図27は、
図25に示す保護素子において、スパークが発生した状態を示す平面図である。
【
図28】
図28は、
図26に示す保護素子において、スパークが発生した状態を示す平面図である。
【
図29】
図29は、
図26に示す保護素子において、スパークが発生した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本技術が適用された保護素子及びバッテリパックについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0028】
[第1の実施の形態:発熱体オーバーラップ構造]
本技術が適用された保護素子の第1の実施の形態について説明する。本技術が適用された保護素子1は、
図1(A)~(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられたヒューズエレメント3と、絶縁基板2に形成され、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する発熱体4と、発熱体4の一端と接続され発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体4を被覆する絶縁層6と、発熱体4の他端と接続され、絶縁層6上に発熱体4に沿って形成され、ヒューズエレメント3の溶融導体3aが保持される発熱体引出電極7とを有する。
【0029】
また、発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5側が高電位部とされ、発熱体引出電極7側が低電位部とされる。そして、発熱体引出電極7は、発熱体4の高電位部側に延在する先端部7aと発熱体4との重畳面積が、発熱体4の低電位部側に延在する基部7bと発熱体4との重畳面積よりも小さいことを特徴とする。
【0030】
これにより、保護素子1は、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。これは以下の理由によるものと思われる。
【0031】
すなわち、スパークは絶縁層を介して対向する電極間において、高電位部から低電位部にかけて絶縁破壊が生じることにより瞬間的に大電流が流れる現象である。外部電源と接続され、高電圧が印加される発熱体4は、発熱体給電電極5と接続されている一端側が、発熱体引出電極7と接続されている他端側よりも高電位である。発熱体引出電極7の先端部7aは、発熱体4の高電位部側に延在されているが、発熱体4との重畳面積が基部7bの発熱体4との重畳面積よりも小さい。これにより、先端部7aは、発熱体4の高電位部との距離や対向面積(重畳面積)が小さくされ、その分、放電経路が形成されにくくなりスパークが発生しにくくされている。
【0032】
また、発熱体引出電極7の基部7bは相対的に発熱体4との重畳面積が大きいが、発熱体4の高電位部から離間した位置に設けられ、且つ基部7bと重畳されている発熱体4の他端側は電圧降下によって低電位部であるため、スパークが発生しにくい部位である。このため、基部7bにおいてもスパークが発生しにくくされている。
【0033】
このような保護素子1は、外部回路に組み込まれることにより、ヒューズエレメント3が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、発熱体4の発熱、あるいは定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断する。以下、保護素子1の各構成について詳細に説明する。
【0034】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0035】
絶縁基板2の相対向する両端部には、第1、第2の電極11,12が形成されている。第1、第2の電極11,12は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極11,12の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の電極11,12の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、ヒューズエレメント3を接続する接続用ハンダが溶融することにより第1、第2の電極11,12を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0036】
また、第1、第2の電極11,12は、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第1、第2の外部接続電極11a,12aと連続されている。保護素子1は、絶縁基板2の裏面2bに形成された第1、第2の外部接続電極11a,12aが、保護素子1が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント3が回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0037】
第1、第2の電極11,12は、接続ハンダ9等の導電接続材料によりヒューズエレメント3が搭載されることにより電気的に接続されている。また、
図2に示すように、第1、第2の電極11,12は、保護素子1に定格を超える大電流が流れヒューズエレメント3が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、あるいは発熱体4が通電に伴って発熱しヒューズエレメント3が溶断することにより、遮断される。
【0038】
[発熱体]
発熱体4は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体4は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0039】
また、発熱体4は、一端が発熱体給電電極5と接続され、他端が発熱体電極8と接続されている。発熱体給電電極5及び発熱体電極8は、絶縁基板2の第1、第2の電極11,12が設けられた側縁と異なる相対向する側縁に形成されている。発熱体給電電極5は、発熱体4の一端と接続され発熱体4への給電端子となる電極であり、キャスタレーションを介して絶縁基板2の裏面2bに形成された第3の外部接続電極5aと連続されている。発熱体電極8は、発熱体引出電極7が接続されている。
【0040】
また、発熱体4は、絶縁層6に被覆されるとともに、絶縁層6上に形成された発熱体引出電極7と重畳されている。発熱体引出電極7は、接続ハンダ9等の接合材料を介して、第1、第2の電極11,12間にわたって設けられているヒューズエレメント3が接続されている。
【0041】
絶縁層6は、発熱体4の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体4の熱を効率よく発熱体引出電極7及びヒューズエレメント3へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。絶縁層6は発熱体4の熱を効率よく発熱体引出電極7やヒューズエレメント3へ伝えるために、厚みが例えば10~40μmと薄く形成されている。
【0042】
発熱体4は、保護素子1が外部回路基板に実装されることにより、第3の外部接続電極5aを介して外部回路に形成された電流制御素子等と接続され、平常時においては電流及び発熱が規制されている。そして、発熱体4は、外部回路の通電経路を遮断する所定のタイミングで第3の外部接続電極5aを介して通電され、発熱する。このとき、発熱体4は、発熱体給電電極5側が高電位部とされ、発熱体引出電極7側が低電位部とされる。保護素子1は、発熱体4の熱が絶縁層6及び発熱体引出電極7を介してヒューズエレメント3に伝達することにより、第1、第2の電極11,12を接続しているヒューズエレメント3を溶融させることができる。ヒューズエレメント3の溶融導体3aは発熱体引出電極7上及び第1、第2の電極11,12に凝集し、これにより第1、第2の電極11,12間の電流経路が遮断される。また、発熱体4は、ヒューズエレメント3が溶断することにより、自身の通電経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0043】
なお、発熱体給電電極5は、第3の外部接続電極5aと接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して発熱体給電電極5上に這い上がり、発熱体給電電極5上に濡れ拡がることを防止する規制壁17を設けることが好ましい。規制壁17は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、発熱体給電電極5上に印刷等により形成することができる。規制壁17を設けることにより、溶融した接続用ハンダが発熱体給電電極5まで濡れ広がることを防止し、保護素子1と外部回路基板との接続性を維持することができる。
【0044】
[発熱体引出電極]
発熱体引出電極7は、第1、第2の電極11,12と同様に、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、発熱体引出電極7の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
【0045】
発熱体引出電極7は、一端を発熱体電極8と接続されるとともに、絶縁層6上に形成され、絶縁層6を介して発熱体4と重畳されている。上述したように、発熱体引出電極7は、通電時における発熱体4の高電位部側に延在する先端部7aと低電位部側に延在する基部7bとを有し、先端部7aと発熱体4との重畳面積S1が、基部7bと発熱体4との重畳面積S2よりも小さい。これにより、保護素子1は、外部回路より高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0046】
ここで、保護素子1は、発熱体引出電極7が、発熱体4の通電方向と直交する方向を幅方向としたときに、低電位部側に設けられた幅が広い部位と、高電位部側に設けられ幅が広い部位から突出する幅が細い部位とを有し、当該幅広い部位を基部7bとし、基部7bから突出する幅が細い部位を先端部7aとする。そして、発熱体引出電極7は、先端部7aと発熱体4との重畳面積S1が、基部7bと発熱体4との重畳面積S2よりも小さい。
【0047】
これにより、
図1に示すように、先端部7aの全部が発熱体4と重畳している場合にも、保護素子1は、外部回路より高電圧が印加された場合にスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0048】
また、発熱体引出電極7に幅広の基部7bを設けることで、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する容量を増加させることができ、確実にヒューズエレメント3を溶断することができる。すなわち、発熱体引出電極7は、幅の狭い先端部7aを設けることによりスパークを防止することができるが、一方で発熱体引出電極7の面積が縮小するとヒューズエレメント3の溶融時に、溶融導体3aを保持する容量が減ってしまい、発熱体引出電極7から溢れた溶融導体3aが第1、第2の電極11,12上の溶融導体3aと接触して通電経路が遮断できないおそれもある。この点、発熱体引出電極7は幅が広い基部7bを形成することで溶融導体3aを保持する容量を増加させることができ、確実にヒューズエレメント3を溶断することができる(
図2)。
【0049】
また、保護素子1は、
図1に示すように、発熱体引出電極7の先端部7aが基部7bと同等の幅を有すると想定した場合における当該想定領域において、発熱体4との重畳面積S1が、上記想定領域における上記発熱体との非重畳面積S3よりも狭いことが好ましい。
図1に示す保護素子1では、想定領域における非重畳面積S3は先端部7aの両側の合計面積をいう。
【0050】
先端部7aは、当該想定領域において、発熱体4の高電位部との重畳面積S1が高電位部との非重畳面積S3よりも小さくされることにより、放電経路が形成されにくくなりスパークが発生しにくくされている。
【0051】
また、発熱体引出電極7は、
図1に示すように、先端部7aの面積が、基部7bの面積よりも小さいことが好ましい。これにより、先端部7aの全部が発熱体4と重畳している場合にも、保護素子1は、外部回路より高電圧が印加された場合にスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0052】
図3、
図4は、発熱体引出電極7の変形例である。発熱体引出電極7は、先端部7aを略台形状、あるいは三角形状に形成してもよい。なお、
図3、
図4ではヒューズエレメント3を省略している。
【0053】
また、
図1に示すように、発熱体引出電極7は、ヒューズエレメント3が搭載され、発熱体引出電極7の先端部7aは、ヒューズエレメント3の側縁よりも発熱体給電電極5側に突出しないことが好ましい。発熱体給電電極5には高電圧が印加され、高電位となることから、発熱体引出電極7がヒューズエレメント3から低電位部側に退避することにより発熱体引出電極7を高電位部から離間させることができる。また、発熱体引出電極7の先端部7aは、ヒューズエレメント3の側縁よりも発熱体給電電極5側に突出すると、当該先端部7aが避雷針的に作用するおそれもあるが、このような避雷針的な部位が形成されず、スパークの発生リスクを低減することができる。さらに、発熱体引出電極7とヒューズエレメント3とが重畳することで高電位となる発熱体給電電極5と対峙する金属(すなわち、先端部7a及びヒューズエレメント3)の体積が増加し、スパークが発生した場合にも衝撃に対する耐性が向上され破損が防止される。
【0054】
[ヒューズエレメント]
次いで、ヒューズエレメント3について説明する。ヒューズエレメント3は、第1及び第2の電極11,12間にわたって実装され、発熱体4の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を遮断するものである。
【0055】
ヒューズエレメント3は、発熱体4の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0056】
また、ヒューズエレメント3は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、
図5に示すように、ヒューズエレメント3は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層13、低融点金属層13に積層された外層として高融点金属層14を有する。ヒューズエレメント3は、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極7上に接続ハンダ9等の接合材料を介して接続される。
【0057】
低融点金属層13は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層13の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層14は、低融点金属層13の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極7とヒューズエレメント3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0058】
このようなヒューズエレメント3は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。このとき、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13の全面が高融点金属層14によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、ヒューズエレメント3は、高融点金属層14を内層とし、低融点金属層13を外層として構成してもよく、また低融点金属層と高融点金属層とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
【0059】
ヒューズエレメント3は、内層となる低融点金属層13に、外層として高融点金属層14を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層13の溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント3として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極7とヒューズエレメント3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによってもヒューズエレメント3の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0060】
また、ヒューズエレメント3は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。また、発熱体4が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。
【0061】
このとき、ヒューズエレメント3は、溶融した低融点金属層13が高融点金属層14を浸食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層14が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13による高融点金属層14の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、ヒューズエレメント3の溶融導体3aは、発熱体引出電極7及び第1、第2の電極11,12の物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断することができる(
図2)。
【0062】
また、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13の体積を、高融点金属層14の体積よりも多く形成することが好ましい。ヒューズエレメント3は、過電流による自己発熱又は発熱体4の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13の体積を高融点金属層14の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の外部接続電極11,12間を遮断することができる。
【0063】
また、ヒューズエレメント3は、内層となる低融点金属層13に高融点金属層14が積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0064】
また、ヒューズエレメント3は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント3は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、ヒューズエレメント3は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層14が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0065】
なお、ヒューズエレメント3は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)を塗布してもよい。また、保護素子1は、絶縁基板3がケース部材(図示せず)に覆われることによりその内部が保護されている。ケース部材は、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。また、ケースは、絶縁基板2の表面2a上に、ヒューズエレメント3が溶融時に球状に膨張し、溶融導体3aが発熱体引出電極7や第1、第2の電極11,12上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
【0066】
[回路構成例]
このような保護素子1は、
図6に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック20内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック20は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21a~21dからなるバッテリスタック25を有する。
【0067】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路26と、バッテリスタック25の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル21a~21dの電圧を検出する検出回路27と、検出回路27の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子28とを備える。
【0068】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21a~21dが直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置22に接続され、充電装置22からの充電電圧が印加される。充電装置22により充電されたバッテリパック20は、正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0069】
充放電制御回路26は、バッテリスタック25と充電装置22との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子23a、23bと、これらの電流制御素子23a、23bの動作を制御する制御部24とを備える。電流制御素子23a、23bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部24によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部24は、充電装置22から電力供給を受けて動作し、検出回路27による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子23a、23bの動作を制御する。
【0070】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック25と充放電制御回路26との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子28によって制御される。
【0071】
検出回路27は、各バッテリセル21a~21dと接続され、各バッテリセル21a~21dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路26の制御部24に供給する。また、検出回路27は、いずれか1つのバッテリセル21a~21dが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子28を制御する制御信号を出力する。
【0072】
電流制御素子28は、たとえばFETにより構成され、検出回路27から出力される検出信号によって、バッテリセル21a~21dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子23a、23bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0073】
以上のような構成からなるバッテリパック20に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、
図7に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極11aがバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極12aが正極端子20a側と接続され、これによりヒューズエレメント3がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体4が発熱体給電電極5及び第3の外部接続電極5aを介して電流制御素子28と接続されるとともに、発熱体4がバッテリスタック25の開放端と接続される。これにより、発熱体4は、一端を発熱体引出電極7を介してヒューズエレメント3及びバッテリスタック25の一方の開放端と接続され、他端を第3の外部接続電極5aを介して電流制御素子28及びバッテリスタック25の他方の開放端と接続され、電流制御素子28によって通電が制御される発熱体4への給電経路が形成される。
【0074】
[保護素子の動作]
検出回路27がバッテリセル21a~21dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子28へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子28は、発熱体4に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック25から、発熱体4に電流が流れ、これにより発熱体4が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体4の発熱によりヒューズエレメント3が溶断し、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。また、保護素子1は、ヒューズエレメント3を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間でヒューズエレメント3を溶解させることができる。
【0075】
このとき、保護素子1は、通電時における発熱体4の高電位部側に延在する先端部7aと発熱体4との重畳面積S1が、低電位部側に延在する基部7bと発熱体4との重畳面積S2よりも小さくされている。これにより、保護素子1は、大電流用途に対応するバッテリスタック25より発熱体給電電極5に高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0076】
また、保護素子1は、発熱体引出電極7の基部7bから突出する幅が細い先端部7aを有することから発熱体4の熱が先端部7aに集中し、先端部7aからヒューズエレメント3へ速やかに高熱を伝えることができる。すなわち、保護素子1は、幅が細い先端部7aを有することにより、矩形状の発熱体引出電極に比して発熱体4の熱が拡散することなく先端部7aに集中し、効率的にヒューズエレメント3へ伝達することができる。したがって、保護素子1は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させた場合にも、先端部7aに熱を集中させて速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0077】
保護素子1は、ヒューズエレメント3が溶断することにより、発熱体4への給電経路も遮断されるため、発熱体4の発熱が停止される。
【0078】
なお、保護素子1は、バッテリパック20に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント3が自己発熱により溶融し、バッテリパック20の充放電経路を遮断することができる。
【0079】
このように、保護素子1は、発熱体4の通電による発熱、あるいは過電流によるヒューズエレメント3の自己発熱によってヒューズエレメント3が溶断する。このとき、保護素子1は、回路基板へのリフロー実装時や、保護素子1が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、低融点金属が高融点金属によって被覆された構造を有することから、ヒューズエレメント3の変形が抑制されている。したがって、ヒューズエレメント3の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体4の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0080】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【第1の実施例】
【0081】
次いで、保護素子1の実施例について説明する。第1の実施例では、
図1に示す保護素子1と、
図25及び
図8に示す矩形状の発熱体引出電極が設けられた保護素子を用意し、それぞれ50V、100V、200Vの電圧を印加した際のスパークの有無を判定した。また、ヒューズエレメントの溶断時間を評価し、所定時間(60秒)以内に溶断した場合を○(良好)、所定時間以内に溶断しなかった場合を×(不良)と評価した。
【0082】
実施例及び比較例に係る保護素子の各部の寸法は、以下のように定義される。また、表1に示す各部の数値はEを1とした際の割合を示す数値である。
D:発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離
E:発熱体の通電方向の長さ
F:発熱体引出電極の最小幅
G:発熱体引出電極の最大幅
L:発熱体引出電極の先端部の側縁と基部の側縁間の幅
P:発熱体引出電極と発熱体との重畳長さ
Q:発熱体引出電極の基部の長さ
【0083】
【0084】
[実施例1]
実施例1に係る保護素子は、
図1に示すものを用いた。実施例1に係る保護素子では、発熱体引出電極に基部(幅G:0.33)及び先端部(幅F:0.1)が設けられ、基部は先端部よりも片側0.06だけ幅広に形成されている。また、発熱体引出電極はヒューズエレメントよりも発熱体給電電極側に突出することなく、発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離Dは0.38を確保し、また発熱体引出電極と発熱体との重畳長さPは0.62とされている。
【0085】
[比較例1]
比較例1に係る保護素子は、
図25に示すものを用いた。比較例1に係る保護素子では、矩形状の発熱体引出電極(幅:0.21)が形成されている。また、発熱体引出電極はヒューズエレメントよりも発熱体給電電極側に突出し、発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離Dは0.07と短く、また発熱体引出電極と発熱体との重畳長さPは0.93とされている。
【0086】
[比較例2]
比較例2に係る保護素子は、
図8に示すものを用いた。比較例2に係る保護素子も、比較例1と同様に、矩形状の発熱体引出電極(幅:0.21)を用いている。比較例1との相違点は、比較例2に係る保護素子では、発熱体引出電極がヒューズエレメントよりも発熱体給電電極側に突出していない点である。これにより、比較例2では、発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離Dを0.38確保し、また発熱体引出電極と発熱体との重畳長さPは0.62とされている。
【0087】
【0088】
表2に示すように、実施例1では、いずれの電圧を印加した場合も、スパークの発生がなく、また所定時間内にヒューズエレメントを溶断させることができた。一方、比較例1では、いずれの電圧を印加した場合も、スパークが発生し、所定時間内にヒューズエレメントを溶断させることができなかった。また、比較例2では、いずれの電圧を印加した場合もスパークは発生しなかったが、幅:0.21と幅が狭い矩形状の発熱体引出電極を使用しているため、ヒューズエレメントの溶融導体を保持する容量が不足し、
図9に示すように、第1、第2の電極との間で溶融導体が連続し、所定時間内にヒューズエレメントを溶断させることができなかった。
【0089】
[第2の実施の形態:表面発熱体両サイド構造]
次いで、本技術が適用された保護素子の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第2の実施の形態に係る保護素子30は、
図10(A)~(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられたヒューズエレメント3と、絶縁基板2に形成され、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する複数の発熱体4と、発熱体4の一端と接続され発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体4を被覆する絶縁層6と、発熱体4の他端と接続され、絶縁層6上に発熱体4に沿って形成され、ヒューズエレメント3の溶融導体3aが保持される発熱体引出電極7とを有する。
【0090】
そして、保護素子30は、複数の発熱体4が絶縁基板2上に離間して並列して設けられている。各発熱体4は、一端が発熱体給電電極5と接続され、他端が発熱体電極8と接続されている。発熱体電極8は発熱体引出電極7と接続されている。各発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5側が高電位部とされ、発熱体電極8及び発熱体引出電極7側が低電位部とされる。また、各発熱体4は、絶縁層6に被覆されるとともに、絶縁層6上に形成された発熱体引出電極7と重畳されている。
【0091】
保護素子30に形成された発熱体引出電極7は、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0092】
発熱体引出電極7は、通電時における各発熱体4の高電位部側に延在する先端部7aと低電位部側に延在する基部7bとを有し、先端部7aと発熱体4との重畳面積S1が、基部7bと発熱体4との重畳面積S2よりも小さい。これにより、保護素子30は、保護素子1と同様に、外部回路より高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0093】
また、
図10に示す保護素子30においては、発熱体引出電極7は、基部7bにおいて各発熱体4と重畳され、先端部7aが2つの発熱体4間の領域上に形成され、先端部7aが、2つの発熱体4と重畳されていない。発熱体引出電極7の先端部7aは、発熱体4の高電位部側に延在されているが、発熱体4との重畳面積と重畳されていない、すなわち発熱体4との重畳面積はゼロであり、基部7bの発熱体4との重畳面積よりも小さい。これにより、先端部7aは、発熱体4の高電位部との距離や対向面積(重畳面積)が小さくされ、その分、放電経路が形成されにくくなりスパークが発生しにくくされている。
【0094】
なお、保護素子30は、
図11に示すように、発熱体引出電極7の先端部7aが2つの発熱体4の間の領域上に形成され、先端部7aの一部が、少なくとも一つ、好ましくは2つの発熱体4と重畳させてもよい。
図11に示す構成においても、保護素子30は、先端部7aと発熱体4との重畳面積S1が、基部7bと発熱体4との重畳面積S2よりも小さくされ、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。また、先端部7aが発熱体4と一部重畳されることにより、発熱体4の熱が効率よく先端部7aに伝わり、より速やかにヒューズエレメント3を加熱することができる。
【0095】
図12は、保護素子30の回路図である。保護素子30は、複数の発熱体4の各一端が絶縁基板2に形成された発熱体給電電極5を介して発熱体4を発熱させるための電源に接続され、各発熱体4の他端が発熱体引出電極7を介してヒューズエレメント3と接続されている。
【0096】
[発熱体引出電極7の変形例]
図13、
図14は、発熱体引出電極7の変形例である。
図13に示すように、発熱体引出電極7は、先端部7aを矩形状に形成するとともに、先端部7aと基部7bを、斜面を介して連続させてもよい。また、発熱体引出電極7は、
図14に示すように先端部7aを略台形状に形成してもよく、あるいは三角形状に形成してもよい。
【0097】
また、保護素子30は、
図15に示すように、絶縁基板2の裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32を形成し、発熱体引出電極7と保持電極32とを、絶縁基板2を貫通する貫通孔33を介して連続させ、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して保持電極32側に吸引するようにしてもよい。
【0098】
貫通孔33は、ヒューズエレメント3が溶融すると、毛管現象によってこの溶融導体3aを吸引し、発熱体引出電極7上で保持する溶融導体3aの体積を減少させることができる。これにより、
図16に示すように、保護素子の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント3が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、大量の溶融導体3aを保持電極32、発熱体引出電極7及び第1、第2の電極11,12によって保持することができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0099】
保持電極32は、発熱体引出電極7と同様に、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0100】
貫通孔33は、内面に導電層34が形成されている。導電層34が形成されることにより、貫通孔33は、溶融導体3aを吸引しやすくすることができる。導電層34は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、貫通孔33の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層34は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を貫通孔33内に挿入することにより形成してもよい。
【0101】
貫通孔33の導電層34は、絶縁基板2の表面2aに形成された発熱体引出電極7と連続されている。発熱体引出電極7は、ヒューズエレメント3を支持するとともに溶断時には溶融導体3aが凝集するため、発熱体引出電極7と導電層34とが連続することにより、溶融導体3aを貫通孔33内に導きやすくすることができる。
【0102】
また、貫通孔33の導電層34は、絶縁基板2の裏面2bに形成された保持電極32と連続されている。これにより、ヒューズエレメント3が溶融すると、貫通孔33を介して吸引された溶融導体3aを保持電極32に凝集させることができ(
図16参照)、より多くの溶融導体3aを吸引し、発熱体引出電極7及び第1、第2の電極11,12によって保持されるヒューズエレメント3の溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0103】
なお、保護素子30は、貫通孔33を複数形成することにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体3aを吸引することで、溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0104】
[発熱体の変形例]
なお、保護素子30は、複数の発熱体4の形状を略矩形状に形成する他、
図17に示すように、低電位部側の端部にかけてL字状に形成された張出し部4aを有し、当該張出し部4aを互いに対向させるように形成してもよい。張出し部4aは、
図17(A)(B)に示すように、発熱体4の長手方向に対して略直交して形成してもよく、
図17(C)(D)に示すようにテーパ面を有してもよい。また、発熱体引出電極7、あるいは保持電極32は、当該張出し部4aに重畳させてもよい。
[第3の実施の形態:裏面発熱体構造]
【0105】
次いで、本技術が適用された保護素子の第3の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第3の実施の形態に係る保護素子40は、
図18(A)(B)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられたヒューズエレメント3と、絶縁基板2に形成され、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する複数の発熱体4と、発熱体4の一端と接続され発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体4を被覆する絶縁層6と、発熱体4の他端と接続され、絶縁層6上に発熱体4に沿って形成され、ヒューズエレメント3の溶融導体3aが保持される発熱体引出電極7とを有する。
【0106】
そして、保護素子40は、各発熱体4、発熱体給電電極5及び発熱体引出電極7が、ヒューズエレメント3が設けられた絶縁基板2の表面2aと反対側の裏面2bに形成され、絶縁基板2の表面2aには、ヒューズエレメント3を支持する支持電極41が形成されている。裏面2bに形成された発熱体引出電極7と支持電極41とは、絶縁基板2を貫通する貫通孔42を介して連続され、これにより、絶縁基板2は、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔42を介して発熱体引出電極7側に吸引しヒューズエレメント3を溶断する溶断部材43を構成する。
【0107】
各発熱体4は、一端が発熱体給電電極5と接続され、他端が発熱体電極8と接続されている。発熱体電極8は発熱体引出電極7と接続されている。各発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5側が高電位部とされ、発熱体電極8及び発熱体引出電極7側が低電位部とされる。また、各発熱体4は、絶縁層6に被覆されるとともに、絶縁層6上に形成された発熱体引出電極7と重畳されている。
【0108】
発熱体引出電極7は、通電時における各発熱体4の高電位部側に延在する先端部7aと低電位部側に延在する基部7bとを有し、先端部7aと発熱体4との重畳面積S1が、基部7bと発熱体4との重畳面積S2よりも小さい。これにより、保護素子20は、保護素子1と同様に、外部回路より高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。また、保護素子40においても、保護素子30と同様に、発熱体引出電極7は、
図10~13に示す種々の構成を採用することができる。
【0109】
支持電極41は、接続ハンダ9等の接合材料を介してヒューズエレメント3と接続され、ヒューズエレメント3が溶融すると溶融導体3aが凝集、保持される。また、支持電極41には、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを毛管現象によって吸引する貫通孔42が形成され、これにより支持電極41上で保持する溶融導体3aの体積が減少される。そして、
図19に示すように、保護素子40は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させることにより、溶融導体3aの量が増大した場合にも、貫通孔42に吸引させるとともに発熱体引出電極7で保持することで、支持電極41で保持する溶融導体3aの量を減少させることができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0110】
支持電極41は、発熱体引出電極7と同様に、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0111】
また、貫通孔42は、上述した貫通孔33と同様に、その内面に支持電極41及び発熱体引出電極7と連続する導電層44が形成されている。導電層44は上記導電層34と同様の構成、作用を有するため、詳細は省略する。また、保護素子40は、貫通孔42を複数形成することにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体3aを吸引することで、溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0112】
なお、絶縁基板2の表面2aには、支持電極41とともに、ヒューズエレメント3に接続されるとともに、溶融導体3aを保持する補助電極45が設けられている。また、ヒューズエレメント3は、絶縁基板2とは別に設けられ、外部回路と接続された第1、第2の電極端子46,47と接続ハンダ9等の接合材料を介して接続されている。また、発熱体給電電極5も、同様に絶縁基板2とは別に設けられ、外部回路と接続された第3の電極端子48と接続されている。
【0113】
このような構成を有する絶縁基板2は、補助電極45及び支持電極41が接合材料を介してヒューズエレメント3に接続され、発熱体4が通電、発熱されるとこの熱によりヒューズエレメント3を溶融させ、その溶融導体3aを貫通孔42を介して発熱体引出電極7側に吸引し遮断する溶断部材43を構成する。
【0114】
また、保護素子40は、
図20に示すように、ヒューズエレメント3を複数の溶断部材43に挟持させてもよい。
図20に示す保護素子40は、溶断部材43が、ヒューズエレメント3の一方の面及び他方の面にそれぞれ配設されている。
図21は、保護素子40の回路図である。ヒューズエレメント3の表面及び裏面に配設された各溶断部材43は、それぞれ発熱体4の一端が、各絶縁基板2に形成された発熱体引出電極7及び支持電極41を介してヒューズエレメント3と接続され、発熱体4の他端が各絶縁基板2に形成された発熱体給電電極5を介して発熱体4を発熱させるための電源に接続される。
【0115】
また、
図22に示すように、保護素子40は、発熱体4の発熱によりヒューズエレメント3を溶断する際には、ヒューズエレメント3の両面に接続された各溶断部材43,43の発熱体4が発熱し、ヒューズエレメント3の両面から加熱する。したがって、保護素子40は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させた場合にも、速やかにヒューズエレメント3を加熱し、溶断することができる。
【0116】
また、保護素子40は、ヒューズエレメント3の両面から溶融導体3aを、各溶断部材43の絶縁基板2に形成した各貫通孔42内に吸引する。したがって、保護素子40は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させ溶融導体3aが多量に発生した場合にも、複数の溶断部材43によって吸引し、確実にヒューズエレメント3を溶断させることができる。また、保護素子40は、複数の溶断部材43によって溶融導体3aを吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント3を溶断させることができる。
【0117】
保護素子40は、ヒューズエレメント3として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属で被覆されたヒューズエレメント3は、発熱体4が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子40は、複数の溶断部材43を備え、同時に各発熱体4を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子40によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0118】
また、保護素子40は、
図20に示すように、一対の溶断部材43,43が対向してヒューズエレメント3に接続されることが好ましい。これにより、保護素子40は、一対の溶断部材43,43で、ヒューズエレメント3の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに溶融導体3aを吸引することができ、より速やかにヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる。
【0119】
また、保護素子40は、一対の溶断部材43,43の各絶縁基板2に形成された補助電極45及び支持電極41がヒューズエレメント3を介して互いに対向することが好ましい。これにより、一対の溶断部材43,43が対称に接続されることで、リフロー実装時等において、ヒューズエレメント3に対する負荷のかかり方がアンバランスとなることもなく、変形への耐性を向上させることができる。
【0120】
なお、発熱体4は、絶縁基板2の表面2a、裏面2bに形成するいずれの場合においても、貫通孔42の両側に形成することが、支持電極41及び発熱体引出電極7を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【第2の実施例】
【0121】
次いで、保護素子30の実施例について説明する。第2の実施例では、
図10に示す保護素子30と、
図26及び
図23に示す矩形状の発熱体引出電極が設けられた保護素子を用意し、それぞれ50V、100V、200Vの電圧を印加した際のスパークの有無を判定した。また、ヒューズエレメントの溶断時間を評価し、所定時間(60秒)以内に溶断した場合を○(良好)、所定時間以内に溶断しなかった場合を×(不良)と評価した。
【0122】
実施例及び比較例に係る保護素子の各部の寸法は、以下のように定義される。また、表
3に示す各部の数値は実施例2のEを1とした際の割合を示す数値である。
D:発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離
E:発熱体の通電方向の長さ
F:発熱体引出電極の最小幅
G:発熱体引出電極の最大幅
L:発熱体引出電極の先端部の側縁と基部の側縁間の幅
M:発熱体の基板外側側縁部と発熱体引出電極の(先端部の)側縁間の幅
N:発熱体引出電極の(先端部の)側縁と発熱体側縁の発熱体幅方向の距離
P:発熱体引出電極の長さ
Q:発熱体引出電極と発熱体との重畳長さ
【0123】
【0124】
[実施例2]
実施例2に係る保護素子は、
図10に示すものを用いた。実施例2に係る保護素子では、発熱体引出電極に基部(幅G:0.71)及び先端部(幅F:0.21)が設けられ、基部は先端部よりも片側0.25だけ幅広に形成されている。また、発熱体引出電極はヒューズエレメントよりも発熱体給電電極側に突出することなく、発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離Dは0.04であり、また発熱体引出電極と発熱体との重畳長さQは0.54とされている。
【0125】
[比較例3]
比較例3に係る保護素子は、
図26に示すものを用いた。比較例3に係る保護素子では、矩形状の発熱体引出電極(幅:0.44)が形成されている。また、発熱体引出電極はヒューズエレメントよりも発熱体給電電極側に突出することなく、発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離Dは0.04であり、また発熱体引出電極と発熱体との重畳長さQは0.96とされている。
【0126】
[比較例4]
比較例4に係る保護素子は、
図23に示すものを用いた。比較例4に係る保護素子も、比較例3と同様に、矩形状の発熱体引出電極(幅:0.21)を用いている。比較例3との相違点は、比較例4に係る保護素子では、発熱体引出電極が発熱体と重畳されていない点である(Q=0.00)。また、比較例4では、発熱体引出電極の先端部と発熱体給電電極との距離Dは0.04である。
【0127】
【0128】
表4に示すように、実施例2では、いずれの電圧を印加した場合も、スパークの発生がなく、また所定時間内にヒューズエレメントを溶断させることができた。一方、比較例3では、100V及び200Vの電圧を印加した場合にスパークが発生し、所定時間内にヒューズエレメントを溶断させることができなかった。また、比較例4では、いずれの電圧を印加した場合もスパークは発生しなかったが、幅:0.21と幅が狭い矩形状の発熱体引出電極を使用しているため、ヒューズエレメントの溶融導体を保持する容量が不足し、
図24に示すように、第1、第2の電極との間で溶融導体が連続し、所定時間内にヒューズエレメントを溶断させることができなかった。
【符号の説明】
【0129】
1 保護素子、2 絶縁基板、2a 表面、2b 裏面、3 ヒューズエレメント、3a 溶融導体、4 発熱体、4a 張出し部、5 発熱体給電電極、5a 第3の外部接続電極、6 絶縁層、7 発熱体引出電極、7a 先端部、7b 基部、8 発熱体電極、9 接続ハンダ、11 第1の電極、11a 第1の外部接続電極、12 第2の電極、12a 第2の外部接続電極、13 低融点金属層、14 高融点金属層、17 規制壁、20 バッテリパック、20a 正極端子、20b 負極端子、21a~21d バッテリセル、22 充電装置、23 電流制御素子、24 制御部、25 バッテリスタック、26 充放電制御回路、27 検出回路、28 電流制御素子、30 保護素子、32 保持電極、33 貫通孔、34 導電層、40 保護素子、41 支持電極、42 貫通孔、43 溶断部材、44 導電層、45 補助電極、46 第1の電極端子、47 第2の電極端子、48 第3の電極端子
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、
上記発熱体を被覆する絶縁層と、
上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、
上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極と接続された側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極と接続された側が低電位部とされ、
上記発熱体引出電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向に一定の幅で形成された基部と、上記基部から延在され上記基部の幅よりも狭い幅を有する先端部を有し、
上記発熱体引出電極は、上記発熱体と重畳する部位において、上記発熱体の高電位部側に延在する上記先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する上記基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいことを特徴とする保護素子。
【請求項2】
上記先端部の幅は、上記基部側から先端にかけて漸次減少する、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子と
を備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、
上記発熱体を被覆する絶縁層と、
上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、
上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極と接続された側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極と接続された側が低電位部とされ、
上記発熱体引出電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向に一定の幅で形成された基部と、上記基部から延在され上記基部の幅よりも狭い幅を有する先端部を有し、
上記発熱体引出電極は、上記発熱体と重畳する部位において、上記発熱体の高電位部側に延在する上記先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する上記基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいことを特徴とするバッテリパック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極と接続された側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極と接続された側が低電位部とされ、上記発熱体引出電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向に一定の幅で形成された基部と、上記基部から延在され上記基部の幅よりも狭い幅を有する先端部を有し、上記発熱体引出電極は、上記発熱体と重畳する部位において、上記発熱体の高電位部側に延在する上記先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する上記基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいことを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、上記保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記発熱体の一端と接続され上記発熱体への給電端子となる発熱体給電電極と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体の他端と接続され、上記絶縁層上に上記発熱体に沿って形成され、上記ヒューズエレメントの溶融導体が保持される発熱体引出電極とを有し、上記発熱体は、上記発熱体給電電極を介して通電されると、上記発熱体給電電極と接続された側が高電位部とされ、上記発熱体引出電極と接続された側が低電位部とされ、上記発熱体引出電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向に一定の幅で形成された基部と、上記基部から延在され上記基部の幅よりも狭い幅を有する先端部を有し、上記発熱体引出電極は、上記発熱体と重畳する部位において、上記発熱体の高電位部側に延在する上記先端部と上記発熱体との重畳面積が、上記発熱体の低電位部側に延在する上記基部と上記発熱体との重畳面積よりも小さいことを特徴とするものである。