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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099836
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】可変時計部品
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/12 20060101AFI20240718BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240718BHJP
   G04B 19/30 20060101ALI20240718BHJP
   G04B 19/32 20060101ALI20240718BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G04B19/12
G04B19/06 S
G04B19/30 A
G04B19/32 A
G04B45/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075594
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2019115319の分割
【原出願日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】18179672.3
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ ルナ, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ピュジョル, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルーレ, アレクサンドラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単純であり、魅力的な審美的効果を達成可能な、可変時計部品の解決策を提供する。
【解決手段】時計用の時計部品1であって、部品は、第1部分10及び第2部分20を含み、第1部分は、第2部分の上部に少なくとも部分的に重ね合された、少なくとも1つの不透明素材製の箇所を含み、第2部分は、少なくとも1つの励起光波により励起されたときに少なくとも1つの発光波を発することが可能な素材を含み、第1部分の箇所は、時計部品が、昼間に少なくとも第1外観と、第2部分が発する発光波により第1部分がバックライトで照らされる夜間に少なくとも1つの異なる第2外観を示すように、第2部分が発する発光波を、時計部品の外側に向けて少なくとも部分的に透過することを可能にする構造状態13を含む、時計部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用の時計部品(1)であって、前記部品は、第1部分(10)及び第2部分(20)を含み、前記第1部分(10)は、前記第2部分(20)の上部に少なくとも部分的に重ね合された、少なくとも1つの不透明素材製の箇所を含み、前記第2部分(20)は、少なくとも1つの励起光波により励起されたときに少なくとも1つの発光波を発することが可能な素材を含み、前記第1部分(10)の前記箇所は、前記時計部品が、昼間に少なくとも第1外観と、前記第2部分(20)が発する発光波により前記第1部分(10)がバックライトで照らされる夜間に少なくとも1つの異なる第2外観を示すように、前記第2部分(20)が発する発光波を、時計部品の外側に向けて少なくとも部分的に透過することを可能にする構造状態(13)を含む、
時計部品。
【請求項2】
前記第1部分(10)の前記箇所の前記構造化(13)は、前記時計部品の外部から来る励起光波を少なくとも一部、前記第2部分へ透過可能にする、
請求項1に記載の時計部品(1)。
【請求項3】
前記第1部分(10)の前記箇所は、前記第2部分を励起する励起光波に、及びまたは前記第2部分が発する発光波に、不透明である少なくとも1つの素材で形成される、
請求項1または2に記載の時計部品。
【請求項4】
前記第1部分(10)の前記箇所は、外部表面(11)に、及びまたは内部表面(12)に形成された開口、及びまたは前記第1部分(10)の前記箇所の厚みに形成された開口、及びまたは前記第1部分(10)の前記箇所のアブレーション、からなる構造状態(13)を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項5】
前記第1部分(10)の前記箇所は、前記第1部分(10)が製造される素材の前記透明性質の少なくとも局所的変更を採用する構造化(13)を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項6】
前記第1部分(10)の前記箇所は、昼間は裸眼に不可視のまたはわずかに可視の構造化(13)を、とりわけミクロ開口またはナノ開口といった十分に小さな寸法の開口を、とりわけ100ミクロン以下の、または60ミクロン以下の、及び250nm以上の直径を有する、開放端円筒または完全に貫通する円筒に等しい、ミクロ開口を含む、及びまたは昼間は可視の装飾を形成するために、昼間は裸眼に可視の構造化(13)を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項7】
前記第1部分(10)の前記箇所は、均一に分布される構造化を、またはパターン、情報を形成する、及びまたは階調度を示すために、不均一に分布される構造化を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項8】
前記第1部分(10)は、均一または不均一の少なくとも部分的な透明素材製であり、構造化を含む少なくとも1つの不透明素材を含む少なくとも1つの箇所と並置される、少なくとも1つの箇所を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項9】
前記第2部分(20)は、燐光及びまたは蛍光性質を有する素材から形成される、塊状構造の形態である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項10】
前記第2部分(20)は、蛍光及びまたは燐光セラミックの、とりわけイットリウム安定化ジルコニアとDy/Euドープアルミン酸ストロンチウムに基づく複合セラミックの、とりわけ発光ジルコニアの形態である、
請求項9に記載の時計部品。
【請求項11】
前記第2部分(20)は、前記第1部分用の支持部を形成する、及びまたは前記時計部品を時計に固定するための固定装置を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項12】
前記第2部分(20)は、前記第1部分(10)の前記内部表面(12)に、または前記内部表面(12)の空洞に、または前記第1部分(10)の前記内部表面(12)に対向して位置する他の部分の表面に、塗布される、蛍光及びまたは燐光性質を含むワニスの形態を取る、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項13】
前記第1部分(10)は、塊状構造の形態を取る、及びまたは前記第2部分(20)の被覆の形態を取る、
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項14】
前記第1部分は、真珠層、特に黒真珠層;化石素材;べっこう;マンガン方解石;レピドライト;石化した木;サンゴ;琥珀;真珠;象牙;白金またはフェライトまたは隕石といった金属または金属合金;着色であってもなくても、ジルコニア及びまたはアルミナに基づくエンジニアリングセラミック;宝石用原石;鉱物;有機物起源の石または貴物質;閃亜鉛鉱;ホタル石;めのう;アレキサンドライト;アメジスト;アナターゼ;アベンチュリンクオーツ;玉髄;クリソベリル;緑玉髄;黄水晶;碧玉;トラ目石;オパール;石英;スピネル;アラゴナイト;アジュライト;くじゃく石;紅鉛鉱;アパタイト;天藍石;トルコ石;藍玉;緑柱石;トルマリン;黒曜石;または雪片黒曜石製である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項15】
前記部品は、前記第1及び第2部品(10;20)間に、接合により、または機械的結束またはセッティングといった機械的装置を用いて、または毛管接着を用いて、着脱可能または不能の組立を含む、または前記第1部分(10)は、前記第2部分(20)の表面被覆、とりわけ金属、金属合金、ポリマーの被覆、またはラッカー、またはエナメル、またはセラミック、またはガラス質セラミック、またはハイブリッド材料、またはワニスである、または前記第2部分(20)は、前記第1部分(10)下で前記第1部分の内部表面(12)に、または前記内部表面(12)の空洞に、または他の部分の表面に、塗布されたワニスである、または前記第2部分(20)は、他の部分に塗布されたワニスであり、前記第1部分(10)は前記第2部分(20)を形成するワニスに塗布される被覆である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項16】
前記第1部分は、2mm以下の平均厚さを、または5nm以上2mm以下の、または5nm以上1mm以下の、または5nm以上0.8mm以下の平均厚さを有する、及びまたは前記第2部分(20)は、0.01mm以上の厚さを、または平均で0.01mm以上5mm以下の厚さを有する、及びまたは前記第2部分(20)は、1mm以上の表面積を、とりわけ0.01cm以上15cm以下の表面積を有する、
請求項1から15のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項17】
前記部品は、前記第1部分(10)と前記前記第2部分(20)からなり、または前記部品は、前記第2部分(20)の上にまたは実質的に同じ高さに配置される、または前記第1及び第2部分の間に介在される、第3部分(30)を含む、
請求項1から16のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項18】
前記第3部分(30)は、選択的であってもなくてもよいマスクである、及びまたは前記第3部分(30)は、前記時計部品を固定するための固定装置を含む、及びまたは前記第3部分(30)は、前記第2部分(20)のいくつかの別個の箇所を支持する、及びまたは前記第3部分(30)は、前記第1及び第2部分を組み立てる機能に寄与する、及びまたは前記第3部分(30)は、光ファイバといった光学要素を含む、
請求項17に記載の時計部品。
【請求項19】
前記部品は、文字盤、ダイアルカウンタ、時マーカ、数字マーカ、ベゼルディスク、または装飾プレートである、
請求項1から18のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の時計部品を含む、時計、特に腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変時計部品に関する。当該時計部品は、文字盤、ダイアルカウンタ、目盛(時マーカ、数字マーカ、または他のマーカ)、ベゼルディスク、またはより一般的には、装飾プレートであってもよい。本発明はまた、当該可変時計部品を含む、腕時計などの時計に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾効果を生成するために明度に応じてその審美性が変化する、時計部品、特に文字盤が現存する。当該時計部品は、伝統的に、発光ワニスの被覆を含む。こうした現存の時計部品は、
複雑な製造工程、難しい取扱い、限定的な使用及びまたは全体コストの高騰につながる、複雑な構造、及びまたは
審美的観点から表現が限定される、
といった欠点を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2730636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の全体の目的は、従来技術の欠点の全部または一部を有さず、現存する解決策を改善する解決策を形成する、可変時計部品の解決策を提供することにある。
【0005】
より具体的には、本発明の目的の1つは、単純であり、魅力的な審美的効果を達成可能な、可変時計部品の解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、時計用の時計部品であって、当該部品は、第1部分及び第2部分を含み、前記第1部分は、前記第2部分の上部に少なくとも部分的に重ね合された、少なくとも1つの不透明素材製の少なくとも1つの箇所を含み、前記第2部分は、少なくとも1つの励起光波により励起されたときに少なくとも1つの発光波を発することが可能な素材を含み、前記第1部分の少なくとも1つの前記箇所は、前記時計部品が、昼間に少なくとも第1外観と、前記第2部分が発する発光波により前記第1部分がバックライトで照らされる夜間に少なくとも1つの異なる第2外観を示すように、前記第2部分が発する発光波を、時計部品の外側に向けて少なくとも部分的に透過することを可能にする構造状態を含む、時計部品に関する。
【0007】
当該時計部品は、文字盤、ダイアルカウンタ、目盛(時マーカ、数字マーカ、または他のマーカ)、ベゼルディスク、または装飾プレートであってもよい。
【0008】
本発明はまた、当該時計部品を含む、時計、とりわけ腕時計それ自体に関する。
【0009】
本発明は、請求項により、より具体的に定義される。
【0010】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照した、以下の特定の非限定的実施態様の説明において、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施態様の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図2図2は、本発明の第1実施態様の他の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図3図3は、本発明の第1実施態様の更に他の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図4図4は、本発明の第1実施態様の更に他の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図5図5は、本発明の第1実施態様の第2代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図6図6は、本発明の第2実施態様の特定の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図7図7は、図6の細部の拡大図を示す。
図8a図8aは、本発明の第2実施態様の特定の第1代替形態にかかる可変時計部品の、昼間の外観を図示する。
図8b図8bは、本発明の第2実施態様の特定の第1代替形態にかかる可変時計部品の、夜間の外観を図示する。
図9図9は、本発明の第2実施態様の更に他の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図10図10は、本発明の第2実施態様の更に他の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図11図11は、本発明の第2実施態様の更に他の第1代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
図12図12は、本発明の第2実施態様の第2特定代替形態にかかる可変時計部品の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の流れのため、様々な実施態様で同一または均等の特徴を示すために、同一の参照番号が用いられる。
【0013】
また、以下の説明を単純化するため、「外部」の形容詞を、とりわけ時計を見ている観察者に直接見える体積または表面を含む、時計の外側に向かって面することが意図される時計部品の体積または表面を呼ぶために用いる。反対に、「内部」の形容詞を、外側に向かって面する同じ時計部品の他の体積または表面に対して、時計の内側に向かって面することが意図される時計部品の体積または表面を呼ぶために用いる。
【0014】
更に、「不透明」の形容詞を、問題の素材が、実際には、スペクトルの少なくとも可視及びまたは紫外域の波長を含む、光放射の10%を下回る透過を有するときの、素材の性質を呼ぶために用いる。「不透明素材」は、その素材の特質が、使用する厚さと組み合わさると、上記光放射に不透明バリアを形成する素材を意味すると見做される。以下で詳細に説明するように、本発明の実施態様において、第1部分の素材は、第2部分の他の素材を励起する光の波長に関して、及びまたは他の励起された素材が発する光の波の波長に関して不透明となる。注記:同一の素材が、特定の厚さで使用されると不透明になり、より薄い厚さで使用されると非不透明になってもよい。同じ「不透明素材」の文言は、「不透明素材」の定義に関して上で説明した条件を満たす、いくつかの素材の組み合わせの配置を含む構造について、複数形で用いられる。「不透明区域」または「不透明箇所」の文言は、少なくとも1つの不透明素材で形成され、放射に関して上記の態様で反応し、最終的に当該不透明区域または部分を通した光波のあらゆる視覚効果を防止する、部品の局所的箇所を呼ぶために用いる。
【0015】
「透明」の形容詞を、不透明ではない素材または部品の部分を呼ぶために用い、このため完全に透明な実施態様と、例えば半透明や透光性といった部分的に透明な実施態様を包含する。「透明」の形容詞は、問題の素材が、実際には、スペクトルの少なくとも可視及びまたは紫外域の波長を含む、光放射の10%以上の透過を有するときの、素材の性質を呼ぶために用いる。「透明素材」は、その素材の特質が、使用する厚さと組み合わさると、上記光放射の少なくとも部分的な透過を許可する素材を意味すると見做される。以下で詳細に説明するように、本発明の実施態様において、第1部分の素材の全部または一部は、第2部分の他の素材を励起する光の波長に関して、及びまたは当該他の励起された素材が発する光の波の波長に関して、透明となる。注記:同一の素材が、特定の厚さで使用されると透明になり、より厚い厚さで使用されると非透明になってもよい。同じ「透明素材」の文言は、「透明素材」の定義に関して上で説明した条件を満たす、いくつかの素材の組み合わせの配置を含む構造について、複数形で用いられる。「透明区域」または「透明箇所」の文言は、少なくとも1つの透明素材で形成され、放射に関して上記の状態で反応し、最終的に当該透明区域または箇所を通した光波のあらゆる視覚効果を許可する、部品の局所的部分を呼ぶために用いる。以下で詳細に説明するように、当該透明箇所は、少なくとも1つの透明素材を用いて、または有利には特別な構造状態と組み合わせた少なくとも1つの透明素材を用いて、得ることができる。
【0016】
本発明の実施態様は全て、特定の波長の範囲の照明を、とりわけ外部照明またはその他適切な励起源からの照明を受けるまたは受けたときに、発光可能な時計部品内の部分の使用に基づく。これは、当該部分がとりわけ燐光性及びまたは蛍光性である素材製であるためである。このため、「励起光波」の文言を、光または明りを発することを可能にするため、当該部分の励起を可能にする波長の範囲の照明に用いる。実務上、当該波長の範囲は、スペクトラムの紫外及び可視部分に対応する波長の全部または一部を示す。最後に、「発光波」の文言は、特に夜間または光量が減少した状況下で、励起光波を受けた後に部品が発する、関連する時計部品を見ている観察者に可視の効果を生ずる、あらゆる照明または発光スペクトラムを呼ぶために用いられる。注記:単純化のため、2つの反対の状況を称するために、昼/夜と称するが、「夜」の文言は完全に暗い状況に限定されず、ほぼ昼と夜の間の部分的に暗い期間を含むよう拡大される。
【0017】
注記:励起光波は外部から入り、第1部分を通過した後に第2部分に到達してもよい。代替的に、励起光波はあらゆる他の手段で、とりわけ内部光源により発せられてもよい。例として、励起光波は、時計の内部の、第2部分の下に位置する、LEDを含む光源により発せられてもよい。
【0018】
時計用が意図される時計部品の観点から、本発明のいくつかの実施態様を以下に説明する。
【0019】
当該時計部品1は、例えば、時計用、とりわけ腕時計用文字盤であってもよい。時計部品は、少なくとも1つの不透明素材製の第1部分10と、一定範囲内の周波数の励起光波に曝されるまたは曝されたときに、とりわけ燐光及びまたは蛍光で発光波を発することができる少なくとも1つの素材製の第2部分20とを含む。
【0020】
第1部分10は、第2部分20が照明に、とりわけ外部照明に曝され、第2部分20が発する光が時計部品を見ている観察者に可視の視覚効果を発することができるように、当該第1部分を少なくとも部分的に透明にすることを可能にする、少なくとも1つの構造状態13を含む。換言すれば、第1部分は、構造状態がなければ不透明である、少なくとも1つの不透明素材を含む。
【0021】
「構造状態」は、第1部分の表面にまたは厚みの中に形成されたあらゆる開口であってもよい。このため、開口13の文言を、構造状態13に言及するために用いてもよい。当該開口は、第1部分の厚みの中で、止め穴でも開放端でも貫通でも内部に多孔性を示してもよい。当該開口は、好ましくは昼間は裸眼では不可視でまたは事実上不可視であるために、十分に小さな寸法の、ミクロ開口またはナノ開口であってもよい。代替的に、当該開口は、意図的に可視とするために、より大きな、肉眼で見える寸法を有してもよい。当該開口は、昼間は装飾的効果にも寄与することになる。代替的に、意図的に不可視とするため、止め穴を非可視面に形成してもよい。当該開口は、昼間は装飾的効果に寄与しない。全ての場合において、全体を貫通するか否かに係らず、開口は、必ずしも円形でなく、あらゆる断面を有してもよい。当該断面は、例えば有効に四角または星型であってもよく、その他の適切な形状を有してもよい。
【0022】
代替的に、構造状態は、第1部分が当該素材製である素材の透明性質への、当該第1部分の厚さの全体または一部における少なくとも局所的変更であってもよい。
【0023】
当該構造状態は、とりわけあらゆる従来の機械加工技術を用いて、またはレーザ加工により、とりわけフェムト秒レーザ加工または深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)により、またはその他化学腐食により、得られてもよい。
【0024】
時計用が意図される時計部品の観点から、本発明の第1実施態様を以下に説明する。
【0025】
第1実施態様によれば、第1部分10は、塊状部分の形状を取る。第1部分は、腕時計の外側に面することが意図され、観察者に可視または部分的に可視な外部表面11を含む。第1部分はまた、反対の、平行または実質的に平行な、観察者に不可視の内部表面12を含む。第1部分は、2mm以下の厚さを、または0.05mm以上2mm以下の厚さを有してもよい。部分は、とりわけ、他の部分と独立して検討されたときに、当該部分を変形させることなく支持するために構造的に機械的支持物を必要としない固形物を構成する場合に、塊状と見做される。
【0026】
第1部分は、以下の非包括的リストから選択される1以上の素材から形成されてもよい。特に黒の、一部の真珠層;一部の化石素材;べっこう; マンガン方解石; レピドライト; 石化した木; サンゴ; 琥珀; 真珠; 象牙; 白金またはフェライトまたは隕石といった金属または金属合金; 着色であってもなくても、ジルコニア及びまたはアルミナに基づくエンジニアリングセラミック; 宝石用原石; 鉱物; 有機物起源の石または貴物質; 閃亜鉛鉱; ホタル石; めのう; アレキサンドライト; アメジスト; アナターゼ; アベンチュリンクオーツ; 玉髄; クリソベリル; 緑玉髄; 黄水晶; 碧玉; トラ目石; オパール; 石英; スピネル; アラゴナイト; アジュライト; くじゃく石; 紅鉛鉱; アパタイト; 天藍石; トルコ石; 藍玉; 緑柱石; トルマリン; 黒曜石; または雪片黒曜石。
【0027】
第1実施態様の第1代替形態によれば、第2部分20は、塊状部分の形状を取る。このような第2部分は、有利には、その体積にわたり分布された発光素材を包含する塊状構造を含む。当該第2部分の利点は、大量の発光素材を包含することから、より多くの光を発することができ、構造の機械的支持部として使用可能にする機械的特性を第2部分に与える十分な剛性を有していることである。当該第2部分は、平均で0.01mmから5mmの、実質的に一定の厚さを有してもよい。当該第2部分は、1mm以上の表面積を、または0.01cm以上15cm以下の表面積を有してもよい。当該第2部分は、蛍光及びまたは燐光セラミック製の、とりわけイットリウム安定化ジルコニアとDy/Euドープアルミン酸ストロンチウムに基づく複合セラミック製の、有利には例えば特許文献1に開示の「発光ジルコニア」製のプレートでもよい。
【0028】
当該第2部分の利点は、構造の機械的支持部として使用可能にする機械的特性を第2部分に与える、十分な剛性を有していることである。このため、第2部分は、第1部分の機械的支持部及びまたは時計部品を時計内に取付け可能にする支持部を形成してもよい。最後に、第2部分は、夜間に照らす、すなわち発光波を生成可能な役割と、時計部品の第1部分を支持する役割の二重の役割を果たしてもよい。この機械的性質を通じて、第2部品は、2つの組立部分のみからなる時計部品を形成することができる。このため、時計部品は、最大限単純化される。
【0029】
このため、第1実施態様の第1代替形態によれば、時計部品の2つの部分10、20は、互いに組み立てられた、2つの別個の塊状または固体要素の形状を取る。図1は、例えば接合による、例えば、互いに組み立てられた、2つの別個の塊状または固体部分のみが設けられた当該時計部品を実施するある特定の方法を図示する。
【0030】
より具体的には、当該時計部品は、いくつかの貫通開口の形状を取る構造状態13を含む第1部分10が設けられる。当該貫通開口の目的は、第1部分を少なくとも部分的に透明にすることである。このために、第1部品は、第2部分に存在する発光素材が提供する可視のバックライト効果を得るため、十分な数の開口を含んでも良い。このため、貫通開口は、一方では、外側から第2部分へ来る励起光波の透過を可能とし、他方では、第2部品の励起に続き第2部品が発する光波の透過を可能とするのに十分である。より具体的には、第1部品は、第2部分に存在する発光素材の励起と放出を可能にする波長に対して少なくとも部分的に透明になる。これは、具体的に使用された発光素材の励起を許可する範囲内の少なくとも一定の波長が、発光素材が励起の必要なレベルに到達するのに十分な効率で第1部分を通過し、反対に同じ発光素材の発光範囲内の少なくとも一定の波長が、必要な放出レベルに到達する、とりわけ夜間に視覚効果を得るのに十分な効率で第1部分を通過することを意味する。
【0031】
第1部分の開口13は、この場合、好ましくは裸眼で特定不可能な十分に小さな寸法の、完全に貫通するミクロ開口、または完全に貫通するナノ開口である。例として、これら開口は、直径が60μm以下の実質的に円筒形状を取るが、これは20cmの距離から、裸眼でこれ以上の寸法の詳細を知覚可能であると一般に認められているためである。換言すれば、昼間にこれら貫通開口が不可視となるためには、その寸法は、好ましくは小型時計にかかる標準状態下の目の最大解像力より小さい。目の解像力は、約角度の1分の長さである。最後に当該実施態様のミクロ開口の2つの性質から、第1部分は、不透明素材製であっても、第2部分20が照明に、とりわけ外部照明に曝されることを可能にし、第2部分20が発する光が、時計部品を見ている観察者に可視の視覚効果を発生させることを可能にする。
【0032】
もちろん、開口13の量、そのそれぞれの寸法、及びその分布は、所望の審美的結果に基づいて到達した妥協を示す。特に、構造状態の形状、配置、及び密度は、得られるパターン、及びまたは求めるのが一瞬の装飾効果なのか数時間持続する表示なのかに基づく、残光のレベルの点で、所望の効果に左右される。この妥協はまた、第2部分のために選択された発光素材に左右される。このため、可能性の数は非常に多い。しかしながら、直径が100ミクロン以下で、または60ミクロン以下で、約250nmの値以上の直径であって、開口の小さな寸法は、励起及びまたは発光波の通過を物理的に可能にするものである、開放端円筒または完全に貫通する円筒と等しいミクロ開口は、所望の目標を十分に達成可能にすることを注記する。もちろん、開口は、励起及びまたは発光波の通過に適切なあらゆる寸法を有してもよい。
【0033】
もちろん、残りの素材を通して励起及び発光波の通過を可能にするほど深い、少なくとも1つの止め穴を用いて、均等の、追加のまたは代替の視覚効果を得ることもできる。当該少なくとも1つの開口は、第1部分の外部表面から始まって、または内部表面から始まって形成されてもよい。開口は、直線または傾斜した側面を有してもよい。選択的に、当該開口は、光ファイバといった光学手段を含んでもよく、あらゆる少なくとも部分的透明素材で充填されてもよい。
【0034】
加えてまたは代替的に、第1部分は、第1部分が製造される素材の透明特性を少なくとも局所的に変更する構造状態を含んでもよい。換言すれば、所望の視覚効果を生成するために、様々な構造状態を組み合わせてもよい。例えば、図2は、貫通開口13と止め開口15の両方を含む第1部分が設けられた、第1実施態様の第1代替形態の部品を実施するある特定の方法を図示する。
【0035】
更に、構造状態は均一でもよい。特に、均一効果を形成するために、全ての開口は同一であり、第1部分の全表面にわたり均等に分布されてもよい。代替的に、異なる視覚効果を与える、不均一効果を形成するために、分布及びまたは形状は、第1部分内で異なってもよい。例えば、時計部品は、階調度に基づき徐々に変化する深さの止め開口を含んでもよい。これは、時計部品の区域によって漸進的に変化する光度の変化を見ることを可能にする。
【0036】
代替的に、特に図1で図示する実施におけるように、開口の分布は均一ではないが、開口は、発光第2部分によるバックライトで明らかになる、夜間に知覚可能なデザインを形成するように位置される。この場合開口は、第1部分を少なくとも部分的に透明にする役割と同時に、審美的デザインを、すなわち夜間に可視の装飾を形成する役割の、二重の役割を果たす。ある有利な実施態様によれば、当該デザインは、例えば、装飾を提供するだけではなく、夜間に可視のある種類の表示または情報を提供するパターンであってもよい。
【0037】
図1に示す特定の構造において、第1部分10は、時計部品の昼間の審美性を定義する。この場合観察者は、第1部分を透かして見ることはできない。昼間は、観察者は、時計部品を、開口部のない第1部分のみからなるように見る。このため、得られた時計部品は、部品の外観が実質的に第1部分の外観に対応する昼間の少なくとも第1外観を有し、第2部分が発する可視の発光波により第1部分がバックライトで照らされる夜間の少なくとも1つの第2外観を有する点で、可変時計部品である。このため、暗闇の、とりわけ部分的暗闇のレベルが存在し、当該レベルを超えると少なくとも第1外観と少なくとも第2外観との差異が可視となる。更に、バックライトは、時間の経過により減退する第2部分が発する発光波の強度により変化してもよい。このため、部品の夜間外観は、徐々に変化してもよい。
【0038】
昼間に全部または一部の開口が可視の代替シナリオにおいて、こうした開口は、時計部品の昼間審美性に寄与する。更に、時計部品の夜間審美性は、第2部分が発する光のバックライトで照らされる第1部分の審美性である。このため、得られた時計部品は、昼間の少なくとも1つの第1外観を有し、夜間の少なくとも1つの第2外観を有し、第1及び第2外観が異なるため、可変時計部品である。
【0039】
第1実施態様の第1代替形態において、時計部品の2つの部分は、互いに組み立てられる2つの別個の固体要素の形状を取る。部品の2つの部分の組立は、例えば、接合により達成される。代替的に時計部品の2つの部分の組立は、毛管接着により達成されてもよい。組立は有利には、2つの部分を、多かれ少なかれ着脱可能な態様で固定されることを可能にする。代替的に、2つの部分は、リベット締め、補助機械的手段のセッティングまたは打ち込みにより組み立てられてもよい。例えば、2つの部分は、機械的結束により接触され保持されてもよい。
【0040】
第1実施態様の第1代替形態にかかる時計部品の特定の実施において、当該時計部品の第2部品が生じる視覚効果を変更、または昇華するために、そして時計部品の昼間及びまたは夜間審美性を変更するために、第3部分を設けてもよい。この第3部分は、第1及び第2部分の間に介在させてもよい。例えば、当該第3部分は、その上に存在する第1部分の構造状態がどうであれ、光の透過を制限するマスクの形状を取ってもよい。当該第3部分はまた、層の、例えば第2部分により励起可能な蛍光層の形状を、とってもよい。有利には、当該第3部分は、時計部品の第1及び第2部分を組み立てる機能に寄与することが意図されてもよい。
【0041】
図3は、当該時計部品を実施するある方法を図示する。第3部分30は、時計部品の固定が意図される内向延長部32を含むスカートを形成するために、第1部分の周囲で、2つの第1部分間に介在される。中央部において、2つの部分10、20は、第3部分30の厚さに対応する空間5により分離され、重ね合されるが接触しない。このため、有利には、当該第3部分は、第1及び第2部分を一定距離離して維持することで、時計部品の昼間及びまたは夜間審美性を変更することを可能にする。
【0042】
図4は、第3部分30が、時計部品の2つの部分10、20の間に包含される装飾マスクの形状をとる、当該時計部品を実施する他の方法を図示する。当該マスクは不透明であってもよく、励起及び発光波の通過を許可する開口31を有してもよく、当該開口31は場合により装飾デザインを形成する。このため、有利には、当該第3部分は、時計部品の昼間及びまたは夜間審美性を変更することを可能にする。また有利には、当該第3部分は、例えば光ファイバなど第2部分からのバックライトを変更するための光学手段を含んでもよい。代替的に、当該第3部分は層の、とりわけ半透明層の形状を、例えば第2部分により励起可能な半透明蛍光層の形状をとってもよい。
【0043】
第1実施態様の第2代替形態において、第2部分20は、塊状部品の形状を取らず、及びまたは上述の機械的支持機能を発揮しない。第2部品は、あらゆる発光、燐光及びまたは蛍光素材または他の素材に基づき、照明機能を発揮可能にするあらゆる形状を取っても良い。例えば、第2部品は、第1部分10の下に、すなわち第1部分10の内部面12上に塗布されたワニスの形状を取っても良い。図5は、例えば、時計部品の当該実施方法を図示する。
【0044】
代替的にまたは加えて、第2部分は、第1部分の内部表面12に形成された開口に塗布されたワニスの形状を取ってもよい。
【0045】
このため、時計部品は、多かれ少なかれ着脱可能な態様で組み立てられた2つの別個の要素ではなく、一体時計部品の形状を取ってもよい。
【0046】
更に代替的に、第2部分は、第1部分とは別個で第1部分の下に位置する要素に塗布されたワニスの形状を取ってもよい。当該別個要素は、例えば、有利には構造において機械的支持部として使用可能な機械的性質を与えるために十分な剛性を有する、塊状要素の形状の支持部分であってもよい。
【0047】
このため、支持部分は、第1及び第2部分の機械的支持部、及びまたは時計部品を時計内に取付け可能にする支持部を形成してもよい。
【0048】
第1実施態様の第2代替形態にかかる時計部品のある特定の実施において、第3部分は、当該時計部品の第2部分が発する効果を変更する、または昇華するために、そしてすなわち時計部品の昼間及びまたは夜間審美性を変更するために設けられても良い。当該第3文は、第1及び第2部分の間に介在されてもよい。当該第3部分は、例えば、その上に存在する第1部分の構造状態がどうであれ、光の透過を制限するマスクの形状を取ってもよい。当該第3部分はまた、層の、とりわけ半透明層の形状を、例えば第2部分により励起可能な半透明蛍光層の形状を、とってもよい。有利には、当該第3部分は、時計部品の第1及び第2部分を組み立てる機能に寄与することが意図されてもよい。
【0049】
第2実施態様によれば、第1部分10は、第2部分20に塗布された被覆の形状を取る。当該被覆の厚さは、被覆の素材が不透明になるものである。構造状態13は、例えば、上述のように、当該被覆に設けられたミクロ開口またはナノ開口である。被覆は、金属、金属合金、ポリマー、ラッカー、ワニス、エナメル、セラミック、ガラス質セラミック、またはハイブリッド材料製であってもよい。被覆は、例えば、物理的気相成長法(PVD)により物理的に、化学蒸着(CVD)により化学的に、電子層成長法(ALD)により、(空気圧により液体を微細な液滴に気化させることを可能にする)噴霧により、ゾル・ゲル法を用いて、など、あらゆる手段で塗布されてもよい。被覆を塗布するための、当業者に既知のあらゆる他の方法が想定される。
【0050】
第2実施態様の第1代替形態によれば、第2部分20は、塊状部分の形状を取る。このような第2部分は、有利には、その全体積にわたり分布された発光素材を包含する塊状構造を含む。このような第2部分は、平均で0.01mmから5mmの間の実質的に一定の厚さを有してもよい。このような第2部分は、発光セラミック、有利には発光ジルコニア製の板であってもよい。
【0051】
当該第2部分の利点は、構造物において機械的支持部として用いられることを可能にする機械的性質を与えるのに十分な剛性を有することである。このため、第2部分は、第1部分の機械的支持部及びまたは時計部品を時計内に取付け可能にする支持部を形成してもよい。最後に、第2部分は、夜間に発光する、すなわち発光波を生成可能な役割と、時計部品の第1部分を支持する役割の二重の役割を果たしてもよい。当該機械的性質を通じ、2つの部分のみを含む時計部品を形成することが可能になる。このため、時計部品は、最大限単純化される。
【0052】
このため、第2実施態様の第1代替形態によれば、第1部分は、第2部分の外部表面に塗布された、被覆の形態を取る。このため、第2実施態様の第1代替形態にかかる時計部品は、多かれ少なかれ着脱可能な態様で組み立てられた2つの別個の要素ではなく、一体時計部品の形状を取る。
【0053】
図6は、第2実施態様の第1代替形態にかかる時計部品を実施するある特定の方法を図示する。前述の通り、当該被覆には、図7に拡大して図示された、ミクロ開口に基づく構造状態13が形成される。
【0054】
図8a及び8bは、塊状発光ジルコニア製の第2部分20上の被覆を形成する、100nmの厚さのチタンの不透明層上のグレーシェーディングで形成された第1部分10を含む、第2実施態様の第1代替形態にかかる時計部品を実施するある特定の方法を図示する。チタン層は、とりわけフェムト秒レーザを用いて穿孔され、観察者が昼間に知覚可能な、グレーシェーディングを形成するために、穿孔の度合いが漸進的に増加される。より具体的には、チタン層は、ミクロ開口を含み、その密度は局所的に異なる。図8aは、陰影がつけられた、メタリックな灰色の外観を有する、昼間の時計部品を図示し、図8bは、発光の強さが前述の陰影により変化する発光外観を有する、夜間の同じ時計部品を図示する。代替的に、チタン層は、フェムト秒レーザを用いて薄層化されてもよく、アブレーションの度合いは漸進的に増加される。これは、図8及び図8bに図示の審美的効果を提供する、観察者が昼間に知覚可能または不能のグレーシェーディングを形成する。ここで「アブレーション」とは、第1部分10を形成する被覆の少なくとも局所的薄層化を意味する。
【0055】
図9は、第2部分20が、その固定を促進するための内部延長24を有する、第2実施態様の第1代替形態にかかる時計部品を実施する他の特定の方法を図示する。
【0056】
図10は、第1部分10が、発光ジルコニアといった発光素材を包含する塊状第2部分20上の、不透明な白金被覆の形状を取る、第2実施態様の第1代替形態にかかる時計部品を実施する他の特定の方法を図示する。第1部分は、図示しないミクロ開口と、昼間に視覚可能な装飾を形成する、肉眼的開口13とを含む。肉眼的開口の全部または一部は、任意で、装飾または文字を構成してもよい少なくとも1つの第2被覆で充填されてもよい。
当該開口は、被覆を堆積させる際に、局所的堆積により、またはマスキングを用いて、達成することができる。
【0057】
図11は、第2実施態様の第1代替形態にかかる時計部品を実施する他の特定の方法を図示する。時計部品は、時計部品の基板の役割を果たす塊状部品の形状を取る第3部分30を包含し、例えば、時計へ、例えば時計ムーブメントへ固定するための足部34を包含する。第2部分20は、第3部分30の外部表面の空洞に含まれ、その体積にわたり分布される発光ジルコニアといった発光素材を包含する、いくつかの別個の塊状箇所を含む。第2及び第3部分の外部表面は、実質的に同じ高さにあり、被覆といった第1部分10により覆われる。第2部分20は、追加の数字または時マーカを構成してもよい。代替として、追加の数字及び時マーカは、第3部分30と同一平面にあるのではなく、レリーフであってもよい。当該数字及び時マーカは、例えば、第3部分30を構成する文字盤に追加されてもよい。このため、有利には、当該第3部分は、支持部の機能を果たしてもよい、及びまたは時計部品の昼間及びまたは夜間の審美性を変化させることを可能にしてもよい。
【0058】
実施がどれであれ、第3部分は、第1及び第2部分の間に介在されてもよい。当該第3部分は、例えば、その上に位置する第1部分の構造状態が何であれ、光の透過を制限するマスクの形状を取ってもよい。代替的にまたは追加として、当該第3部分は同様に、層の、とりわけ半透明層の形状を、例えば第2部分により励起可能な半透明蛍光層の形状を取ってもよい。
【0059】
第2実施態様の第2代替形態において、第2部分は、塊状部品の形状を取らない、及びまたは上述の機械的支持機能を果たさない。第2部分は、発光、燐光、または他の素材に基づく、その発光機能を発揮可能にするあらゆる他の形状を取ることができる。例えば、第2部分は、有利には構造において機械的支持部として使用可能な機械的性質を与えるために十分な剛性を有する、塊状要素の形状を取る支持部分といった別個の要素に塗布されたワニスの形状を取ってもよい。このため、支持部分は、第2部分及びまたは時計部分のための機械的支持部を形成してもよい。
【0060】
図12は、支持部分40がその外部表面を第2部分20で覆われ、その上を第1部分10で覆われた、当該実施を示す。当該支持部分40は、時計部品の基板の役割を果たす塊状部品の形状を取り、例えば時計へ、例えば時計ムーブメントへ固定するための足部44を包含する。
【0061】
このため、第2実施態様の第2代替形態によれば、第1部分は、支持部分に支持された第2部分に塗布された被覆の形状を取る。このため、第2実施態様の第2代替形態にかかる時計部品は、少なくとも部分的に重なり合う第1及び第2部分により2度覆われた、支持部分の形状を取る。
【0062】
検討する実施態様が何であれ、時計部品は、文字盤、ダイアルカウンタ、時マーカ、数字マーカ、ベゼルディスク、または、より一般的に、装飾プレートであってもよい。後者の場合、装飾プレートは、その他の時計部品と、当該部品を装飾するために、組み立てられても良い。装飾プレートは、上述の特定の実施の形態にあるように、自身が文字盤を形成するのではなく、実質的に伝統的構造の文字盤を補完してもよい。このため、より一般的に、本発明は、そのクラッディングまたは装飾が上述の解決策を実施する、あらゆる対象物に適用される。本発明はまた、本発明のある実施態様にかかる可変時計部品を包含する、時計、とりわけ腕時計に関する。
【0063】
時計部品は、上記で、非限定的に説明されてきた。多数の他の実施が考えられる。
【0064】
検討する実施態様が何であれ、数字及び時マーカや転写といった他の追加要素を第1部品上に重ね合せ、特定の区域を隠してもよい。こうした追加要素の性質に応じて、発光効果が維持されても除去されてもよい。
【0065】
もちろん、上述の実施態様の代替形態や実施を組み合わせることも可能である。更に、時計部分の2つの部分10、20は、部分的に重ね合されてもよい。2つの部分は、例えば、文字盤の全体を形成しても、例えば数字及び時マーカやカウンタといった文字盤の一部のみを形成してもよく、あらゆる形状を取ってよい。加えて、第1部分は、透明素材製の1以上の区域と組み合わされた上述の不透明素材製の1以上の区域を含んでもよい。ここでは、構造状態は必須ではなく、当該区域の透明性を変更するために選択的に考えることができる。第1部分は、2mm以下の、または5nm以上2mm以下の、または5nm以上1mm以下の、または5nm以上0.8mm以下の、薄い厚さを有してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 時計部品
10 第1部分
11 外部表面
12 内部表面
13 構造状態
20 第2部分

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用の時計部品(1)であって、前記部品は、第1部分(10)及び第2部分(20)を含み、前記第1部分(10)は、前記第2部分(20)の上部に少なくとも部分的に重ね合された、少なくとも1つの不透明素材製の箇所を含み、前記第2部分(20)は、塊状構造の形態であり、少なくとも1つの励起光波により励起されたときに少なくとも1つの発光波を発することが可能な素材を含み、前記第1部分(10)の前記箇所は、前記時計部品が、昼間に少なくとも第1外観と、前記第2部分(20)が発する発光波により前記第1部分(10)がバックライトで照らされる夜間に少なくとも1つの異なる第2外観を示すように、前記第2部分(20)が発する発光波を、時計部品の外側に向けて少なくとも部分的に透過することを可能にする構造状態(13)を含む、
時計部品。
【請求項2】
前記第1部分(10)の前記箇所の前記構造状態(13)は、前記時計部品の外部から来る励起光波を少なくとも一部、前記第2部分へ透過可能にする、
請求項1に記載の時計部品(1)。
【請求項3】
前記第1部分(10)の前記箇所は、前記第2部分を励起する励起光波に、及びまたは前記第2部分が発する発光波に、不透明である少なくとも1つの素材で形成される、
請求項1または2に記載の時計部品。
【請求項4】
前記第1部分(10)の前記箇所は、前記第1部分(10)の外部表面(11)に、及びまたは前記第1部分(10)の内部表面(12)に形成された開口、及びまたは前記第1部分(10)の前記箇所の厚みに形成された開口、及びまたは前記第1部分(10)の前記箇所のアブレーション、からなる構造状態(13)を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項5】
前記第1部分(10)の前記箇所は、前記第1部分(10)が製造される素材の透明性質の少なくとも局所的変更を採用する構造化(13)を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項6】
前記第1部分(10)の前記箇所は、昼間は裸眼に不可視のまたはわずかに可視の構造化(13)を含む、及びまたは昼間は可視の装飾を形成するために、昼間は裸眼に可視の構造化(13)を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項7】
前記第1部分(10)の前記箇所は、均一に分布される構造化を、またはパターン、情報を形成する、及びまたは階調度を示すために、不均一に分布される構造化を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項8】
前記第1部分(10)は、均一または不均一の少なくとも部分的な透明素材製であり、構造化を含む少なくとも1つの不透明素材を含む少なくとも1つの箇所と並置される、少なくとも1つの箇所を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項9】
前記第2部分(20)は、燐光及びまたは蛍光性質を有する素材から形成される、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項10】
前記第2部分(20)は、蛍光及びまたは燐光セラミックの形態である、
請求項9に記載の時計部品。
【請求項11】
前記第2部分(20)は、前記第1部分用の支持部を形成する、及びまたは前記時計部品を時計に固定するための固定装置を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項12】
前記第1部分(10)は、塊状構造の形態を取る、または前記第2部分(20)の被覆の形態を取る、
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項13】
前記第1部分は、真珠層;化石素材;べっこう;マンガン方解石;レピドライト;石化した木;サンゴ;琥珀;真珠;象牙;白金またはフェライトまたは隕石といった金属または金属合金;着色であってもなくても、ジルコニア及びまたはアルミナに基づくエンジニアリングセラミック;宝石用原石;鉱物;有機物起源の石または貴物質;閃亜鉛鉱;ホタル石;めのう;アレキサンドライト;アメジスト;アナターゼ;アベンチュリンクオーツ;玉髄;クリソベリル;緑玉髄;黄水晶;碧玉;トラ目石;オパール;石英;スピネル;アラゴナイト;アジュライト;くじゃく石;紅鉛鉱;アパタイト;天藍石;トルコ石;藍玉;緑柱石;トルマリン;黒曜石;または雪片黒曜石製である
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項14】
前記部品は、前記第1部分及び前記第2部分(10;20)間に、接合により、または機械的結束またはセッティングといった機械的装置を用いて、または毛管接着を用いて、着脱可能または不能の組立を含む、または前記第1部分(10)は、前記第2部分(20)の表面被覆、またはラッカー、またはエナメル、またはセラミック、またはガラス質セラミック、またはハイブリッド材料、またはワニスである、または前記第2部分(20)は、前記第1部分(10)下で前記第1部分の内部表面(12)に、または前記内部表面(12)の空洞に、または他の部分の表面に、塗布されたワニスである、または前記第2部分(20)は、前記第1部分とは別の部分に塗布されたワニスであり、前記第1部分(10)は前記第2部分(20)を形成するワニスに塗布される被覆である
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項15】
前記第1部分は、2mm以下の平均厚さを、または5nm以上2mm以下の、または5nm以上1mm以下の、または5nm以上0.8mm以下の平均厚さを有する、及びまたは前記第2部分(20)は、0.01mm以上の厚さを、または平均で0.01mm以上5mm以下の厚さを有する、及びまたは前記第2部分(20)は、1mm 以上の表面積を有する
請求項1から14のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項16】
前記部品は、前記第1部分(10)と前記第2部分(20)からなり、または前記部品は、前記第2部分(20)の上にまたは実質的に同じ高さに配置される、または前記第1及び第2部分の間に介在される、第3部分(30)を含む
請求項1から15のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項17】
前記第3部分(30)は、選択的であってもなくてもよいマスクである、及びまたは前記第3部分(30)は、前記時計部品を固定するための固定装置を含む、及びまたは前記第3部分(30)は、前記第2部分(20)のいくつかの別個の箇所を支持する、及びまたは前記第3部分(30)は、前記第1及び第2部分を組み立てる機能に寄与する、及びまたは前記第3部分(30)は、光ファイバといった光学要素を含む、
請求項16に記載の時計部品。
【請求項18】
時計用の時計部品(1)であって、前記部品は、第1部分(10)及び第2部分(20)を含み、前記第1部分(10)は、前記第2部分(20)の上部に少なくとも部分的に重ね合された、少なくとも1つの不透明素材製の箇所を含み、前記第2部分(20)は、少なくとも1つの励起光波により励起されたときに少なくとも1つの発光波を発することが可能な素材を含み、前記第1部分(10)は、塊状構造の形態を取るまたは前記第2部分(20)の被覆の形態を取り、前記第1部分(10)の前記箇所は、前記時計部品が、昼間に少なくとも第1外観と、前記第2部分(20)が発する発光波により前記第1部分(10)がバックライトで照らされる夜間に少なくとも1つの異なる第2外観を示すように、前記第2部分(20)が発する発光波を、時計部品の外側に向けて少なくとも部分的に透過することを可能にする構造状態(13)を含む、
時計部品。
【請求項19】
前記第2部分(20)は、前記第1部分(10)の内部表面(12)に、または前記第1部分(10)の内部表面(12)の空洞に、または前記第1部分(10)の内部表面(12)に対向して位置する他の部分の表面に、塗布される、蛍光及びまたは燐光性質を含むワニスの形態を取る
請求項18に記載の時計部品。
【請求項20】
前記部品は、文字盤、ダイアルカウンタ、時マーカ、数字マーカ、ベゼルディスク、または装飾プレートである、
請求項1から19のいずれか一項に記載の時計部品
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の時計部品を含む、時計。