(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099838
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】先進的な呼吸モニターおよびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
A61B5/08
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075692
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2022105576の分割
【原出願日】2017-08-01
(31)【優先権主張番号】62/369,583
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514016740
【氏名又は名称】レスピラトリー・モーション・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー・イー・フリーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン・ブライヤノフ
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・ジー・ボック
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・パナシュク
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS04
4C038SS09
4C038ST01
4C038SV03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者をモニタリングするための新しいツールおよび方法を提供する。
【解決手段】開示されているのは、生体インピーダンス測定システムである:安定化された高周波電流発生器が、患者ケーブルを介してパッドセット電極に接続されている。電極が、適合回路に接続されており、適合回路は、結果として生じる電圧信号を調整し、それをデジタル形式に変換する。ファームウェアが、信号獲得を実施し、データをデバイスへ中継する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸モニタリングシステムであって、
コンピューティングデバイスと、
患者に連結されるように構成されている電極パッドセットとを備え、
コンピューティングデバイスは、
プロセッサーと、
プロセッサーと通信する少なくとも1つのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)と、
プロセッサーと通信する少なくとも1つのセンサーインプットとを備え、
電極パッドセットは、センサーインプットに連結可能であり、コンピューティングデバイスから電気信号を受信し、患者の胴体を通して生体インピーダンス信号を検出し、
プロセッサーは、知られている値への較正と、正常換気の間に収集されたベースラインの、どちらの必要性もなしに、および、患者の協力なしに、検出された生体インピーダンス信号に基づいて、分時換気量(MV)、予想されるMVのパーセント、1回換気(TV)、予想されるTVのパーセント、呼吸速度(RR)、および、予想されるRRのパーセントのうちの1つまたは複数をリアルタイムに決定し、
GUIは、分時換気量(MV)、予想されるMVのパーセント、1回換気(TV)、予想されるTVのパーセント、呼吸速度(RR)、および予想されるRRのパーセントのうちの決定された1つまたは複数をリアルタイムで出力する、
呼吸モニタリングシステム。
【請求項2】
システムが、過換気、正常換気、および低換気のうちの少なくとも1つのインディケーションを提供する、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項3】
システムが、オピオイド誘発性呼吸抑制に基づいて、少なくとも1つの低換気、呼吸信号波形の変化、吸気呼気比率の変化、および吸気プラトーの発達のインディケーションを提供する、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項4】
コンピューティングデバイスが、患者デモグラフィックスをデバイスの中へ入力してから1分以内に、換気の連続的な測定を提供するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項5】
デモグラフィックスが、患者の身長、体重、および性別のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項6】
コンピューティングデバイスが、ベンチレーターへの患者特有の較正の必要性も、患者が正常に呼吸しているときのベースラインの必要性もなしに、換気の連続的な測定を提供するように構成されている、請求項4に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項7】
コンピューティングデバイスが、電極がデバイスに取り付けられるとすぐに、および、デモグラフィックデータを入力することなく、換気の連続的な測定を提供するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項8】
患者の呼吸に対する患者の協力および制御が要求されない、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項9】
知られているベンチレーター、スパイロメーター、およびニューモタコメーターの読み値に対するデバイスの較正が要求されない、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項10】
コンピューティングデバイスが、HR-RRカットオフフィルターをさらに備える、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項11】
HR-RRカットオフフィルターが、所定の心拍数カットオフポイントに基づいて、呼吸信号および心臓信号をフィルタリングする、請求項10に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項12】
心拍数カットオフポイントが、30、40、50、または60ビートパーミニット(bpm)のうちの1つである、請求項10に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項13】
心拍数カットオフポイントが、患者デモグラフィックス、MVまたは予想されるMVのパーセンテージ、および急速表在呼吸指数のうちの少なくとも1つに基づいている、請求項11に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項14】
心拍数カットオフポイントが、手動で入力されるか、または、コンピューティングデバイスによって自動的に更新される、請求項11に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項15】
HR-RRカットオフフィルターが、インピーダンス信号のゲインの測定値、GUIの上に表示されるインピーダンストレースの絶対値に関するスケーリングファクター、1回換気量の減少のインディケーション、鎮静レベルのインディケーション、および、呼吸疾患の診断のうちの少なくとも1つを提供する、請求項10に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームをさらに備える、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームが、患者疾患状態、医師の査定、臨床的環境または治療環境、生理学的測定、または外部参照のうちの少なくとも1つに基づいて設定される、請求項16に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項18】
少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームが適合的である、請求項16に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項19】
予想されるMVが、患者の身長、体重、および性別に基づいて計算される、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項20】
予想されるMV計算が、患者特有の生理学、解剖学、形態学、またはトポロジーのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項19に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項21】
システムが、意識がしっかりしているか、意識を失っているか、警戒しているか、死に臨んでいるか、ベンチレーターをつけて挿管されているか、呼吸窮迫になっているか、または、鎮静した後であるかのうちの1つになっている患者に関して使用するように構成されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項22】
システムが非侵襲性である、請求項1から21のいずれか一項に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項23】
電極パッドセットをコンピューティングデバイスに連結する患者ケーブルをさらに備え、患者ケーブルが、電極パッドセットを介して患者へ高周波電流を伝送するように構成されている、請求項1から22のいずれか一項に記載の呼吸モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、また、2016年8月1日に出願された「先進的な呼吸モニターおよびシステム」という標題の米国仮出願第62/369,583号明細書の優先権を主張し、その文献は、その全体が組み込まれている。
【0002】
本発明は、呼吸をモニタリングするためのデバイスおよびシステムに関する。具体的には、本発明は、また、インピーダンスを使用して呼吸をモニタリングするためのデバイスおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
生理学的なモニタリング-歴史および進化
患者モニタリングは必須である。その理由は、それが、患者悪化に対する警告を提供し、早期の介入の機会を可能にし、患者アウトカムを大きく改善するからである。たとえば、現代のモニタリングデバイスは、異常な心拍リズム、血液酸素飽和度、および体温の異常を検出することが可能であり、それは、そうでなければ見過ごされることとなる悪化を臨床医にアラートすることが可能である。
【0004】
患者モニタリングの最も初期の記録は、早くも1550BCに、古代エジプト人が末梢血管脈拍と心臓の鼓動との間の相関関係を知っていたということを明らかにしている。脈拍数を測定するために振り子を使用したGalileoによって、モニタリングに関して次の重要な進歩がなされる前に、3千年が経過した。1887には、Wallerは、彼が電極を使用することによって胸部を横切る電気的な活動を受動的に記録することが可能であるということを決定し、また、心臓からの活動に信号を相関させた。Wallerの発見は、生理学的な信号を測定するための方法として電気信号を使用することへの道を開いた。しかし、科学者が臨床的環境において生理学的な信号をモニタリングすることの利点を認識するまでには、依然として時間がかかることとなった。
【0005】
1925には、MacKenzieは、脈拍数および血圧などのような、生理学的な信号の連続的な記録およびモニタリングの重要性を強調した。具体的には、彼は、これらの信号のグラフィカルな表現図が患者の条件の査定において重要であるということを強調した。1960年代には、コンピューターの出現に伴い、同時に記録されている複数のバイタルサインのリアルタイムグラフィカルディスプレイの追加によって、患者モニターが改善した。また、アラームが、モニターの中へ組み込まれ、また、脈拍数または血圧などのような信号が特定の閾値に到達したときにトリガーされた。
【0006】
最初の患者モニターは、外科手術の間に患者につけて使用された。患者アウトカムが改善するということが示されたので、バイタルサインのモニタリングは、集中治療室および緊急部門などのような、病院の他のエリアに広がった。たとえば、パルスオキシメトリーは、非侵襲的に患者の酸素化を連続的に測定する方法として、手術室において最初に幅広く使用された。パルスオキシメトリーは、急速に、一般的な麻酔薬の投与のためのケアの標準となり、その後に、回復室および集中治療室を含む、病院の他の部分に広がった。
【0007】
改善された患者モニタリングへの高まる必要性
緊急部門に提供する重病患者の数は、高い割合で増加しており、これらの患者は、緊密なモニタリングを要求する。緊急部門の中の患者の1-8%の間で、心臓血管処置、または、胸郭および呼吸処置(機械的な換気、カテーテル挿入、動脈カニューレ法)などのような、救命救急処置が実施されることを要求しているということが推定されてきた。
【0008】
生理学的なスコア、たとえば、Mortality Probability Model(MPM)、Acute Physiology and Chronic Health Education(APACHE)、Simplified Acute Physiological Score(SAPS)、および、Therapeutic Intervention Scoring System(TISS)などが、患者アウトカムにおいて重大な改善を示した。臓器不全またはショックの前でも、病気の早期段階において、生理学的なスコアおよびバイタルサインを使用することによって病気の患者をモニタリングすることは、アウトカムを改善する。患者の緊密なモニタリングは、患者悪化の認識および適当な療法の適用を可能にする。
【0009】
しかし、現在のスコアリング方法は、ICU患者のおおよそ15%において、患者アウトカムを正確に予測せず、また、それは、呼吸集中治療室、これは病院において急性呼吸不全を患う多数の患者にケアを提供するのであるが、における患者に関して、さらに悪くなる可能性があり、。そのうえ、たとえば、血液酸素化など、現在モニタリングされているバイタルサインの差は、呼吸障害または循環器障害の進行において、後期に起こる。多くの場合に、患者悪化の最も早いサインは、患者の呼吸努力または呼吸パターンの変化である。
【0010】
呼吸速度は、患者健康のバイタルインジケーターとして認識されており、患者状態を査定するために使用される。しかし、呼吸速度は、単独で、呼吸体積の変化などのような、重要な生理学的な変化を示すことができない。連続的な体積測定から導出されるメトリクスは、広範囲の臨床的用途において患者状態を決定するために大きな可能性を有するということが示されてきた。しかし、現在では、呼吸体積を正確におよび便利よく決定することができる十分なシステムが存在しておらず、それは、呼吸体積の変化をトレースすることができる非侵襲性の呼吸モニターの必要性を動機付けする。
【0011】
現在の方法の欠点
現在では、患者の呼吸状態は、肺活量測定および呼気終末CO2測定などのような方法によってモニタリングされる。これらの方法は、使用するのが不便であり、および、不正確であることが多い。呼気終末CO2モニタリングは、さまざまな環境の中において挿管されている患者の評価において、および麻酔の間に有用であるが、それは、換気されていない患者に関して不正確である。スパイロメーターおよびニューモタコメーターは、それらの測定において限定されており、患者努力および臨床医による適正なコーチングに高度に依存している。効果的なトレーニングおよび品質保証は、成功的な肺活量測定にとって必要なものである。しかし、これらの2つの必要条件は、それらが調査研究および肺機能研究にあるときのような臨床的業務において、必ずしも強制されるわけではない。したがって、品質保証は、間違った結果を導くことを防止するために必須である。
【0012】
肺活量測定は、最も一般的に実施される肺機能テストである。スパイロメーターおよびニューモタコメーターは、呼吸体積の直接的な測定を与えることが可能である。それは、患者の身体に進入するおよび患者の身体を離れるときの空気の体積または流量を測定することによって、患者の呼吸パターンを査定することを伴う。肺活量測定処置および操作は、米国胸部学会(ATS)および欧州呼吸器学会(ERS)によって標準化されている。肺活量測定は、呼吸健康を評価するための、および、呼吸病変を診断するための、重要なメトリクスを提供することが可能である。メインストリームのスパイロメーターの主な欠点は、患者の呼吸の体積および/または流量が測定され得るように、チューブを通して呼吸することを患者に要求するということである。装置を通して呼吸することは、呼吸のフローに対する抵抗を導入し、患者の呼吸パターンを変化させる。したがって、患者の正常な呼吸を正確に測定するために、これらのデバイスを使用することは不可能である。装置を通して呼吸することは、意識のある従順な患者を要求する。また、ATSおよびERSによって提案されているメトリクスを記録するために、患者は、負担の掛かる呼吸操作を受けなければならず、それは、そのような試験を受け得ることから、ほとんどの高齢者、新生児患者、およびCOPD患者を排除してしまう。また、処置のアウトカムは、患者努力およびコーチング、ならびに、手術者の技能および経験に高度にさまざまに依存する。また、ATSは、肺活量測定を実践するヘルスケア専門家のための広範囲なトレーニングを推奨している。また、多くの医師は、肺機能テストから得られたデータを正確に解釈するのに必要な技能を有していない。米国胸部学会によれば、被検者内変動性の最大の供給源は、テストの不適正なパフォーマンスである。したがって、肺機能検査の患者内のおよび患者間の変動性のほとんどは、ヒューマンエラーによって作り出される。インピーダンスベースの呼吸モニタリングは、重要な空隙を埋めるが、その理由は、現在の肺活量測定は、患者の協力およびチューブを通した呼吸に関する要件故に、連続的な測定を提供することができないからである。したがって、誘発テストまたは治療介入に関連する呼吸の変化を示す可能性がある、挿管されていない患者において、長期の時間期間にわたって(1分以下にわたって続く肺活量測定テストに対して)、ほぼリアルタイムの情報を提供するデバイスに対する必要性が存在している。
【0013】
ATS規格によって指定されているような、許容可能な肺活量測定値を獲得するために、ヘルスケア専門家は、広範囲なトレーニングをおこない、リフレッシャーコースをとらなければならない。許容可能な肺活量測定値の量が、トレーニングワークショップを行った人に関して、著しく大きかったということをあるグループは示した(41%対17%)。許容可能な肺活量測定値を用いても、主治医によるデータの解釈は、呼吸器科医によって、50%の確率で正しくないとみなされた。しかし、コンピューターアルゴリズムからの支援が、十分な肺活量測定値が収集されたときに、スパイログラムを解釈する際の改善を示したということが留意された。プライマリーケア診療所が許容可能な肺活量測定値を獲得し、正確な解釈を行うために、厳格なトレーニングが必要とされる。しかし、多数の人々をトレーニングし、満足のいく品質保証を強化するための資源は、不合理および非効率的である。専用調査セッティングにおいても、技術者のパフォーマンスは、時間の経過とともに降下する。
【0014】
患者およびヘルスケア提供者に起因するヒューマンエラーに加えて、肺活量測定は、呼吸変動性測定を損なうシステマティックなエラーを含有する。呼吸ごとのパターンおよび変動性の有用な測定が、フェイスマスクまたはマウスピースなどのような、気道取り付け具によって悪化することが示されてきた。また、これらのデバイスによる測定の間に伴われる不快感および不便さは、ルーチン測定のためにまたは長期間モニターとして使用されることを妨げる。サーミスタまたは歪みゲージなどのような、より侵入的でない他の技法は、体積の変化を予測するために使用されてきたが、これらの方法は、呼吸体積について乏しい情報を提供する。また、呼吸ベルトは、呼吸体積を測定するのに有望であるということが示されてきたが、それらが、インピーダンスニューモグラフィーからの測定よりも正確性が低く、大きい変動性を有するということを、グループが示してきた。したがって、患者および臨床医の相互作用が最小である、長い時間期間にわたって、体積を測定することができるシステムが必要とされている。
【0015】
肺機能検査、および、手術前ケア、手術後ケア
手術前ケアは、手術の間に何の患者特性が患者を危険な状態におく可能性があるかということを識別し、それらのリスクを最小化するということに集中される。医療歴、喫煙歴、年齢、および、他のパラメーターが、手術前ケアにおいてとられるステップを指定する。具体的には、高齢者患者および肺疾患を患う患者は、外科手術に関してベンチレーター下に置かれるときに、呼吸器合併症に関して危険な状態になる可能性がある。外科手術に関してこれらの患者をクリアするために、肺活量測定などのような肺機能テストが実施され、それは、患者がベンチレーターを利用することができるかどうかを決定するために、より多くの情報を与える。また、胸部X線が撮られ得る。しかし、これらのテストは、外科手術の中間に、または、麻酔をかけられた患者において、もしくは、協調することができないかまたは協調することとならない患者において、反復されることができない。検査は、手術後セッティングにおいて快適でない可能性があり、また、患者の回復に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0016】
呼気終末CO2および患者モニタリング
呼気終末CO2は、患者の肺の状態を決定するための別の有用なメトリクスである。その値は、パーセンテージまたは分圧として提示され、カプノグラフモニターを使用して連続的に測定され、それは、他の患者モニタリングデバイスと連結され得る。これらの器具は、カプノグラムを作り出し、それは、CO2濃度の波形を表す。カプノグラフィーは、吐き出された空気および動脈血液の中の二酸化炭素濃度を比較する。次いで、カプノグラムは、過換気および低換気などのような、呼吸に伴う問題を診断するために分析される。呼気終末CO2のトレンドは、ベンチレーターパフォーマンスを評価するために、および、薬物活動、挿管に伴う技術的問題、および気道障害物を識別するために、とりわけ有用である。米国麻酔学会(ASA)は、呼気終末CO2が、気管内チューブまたは喉頭のマスクが使用されるときはいつでもモニタリングされるべきであり、また、一般的な麻酔を必要とする任意の治療に関しても高度に奨励されるということを命じている。また、カプノグラフィーは、患者換気のモニタリングに関するパルスオキシメトリーよりも有用であるということが分かった。残念なことに、換気されていない患者に実現することは、一般的に不正確および困難であり、また、他の相補的な呼吸モニタリング方法が、大きな有用性を有することとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、現在の戦略および設計に関連付けられる問題および不利益を克服し、患者をモニタリングするための新しいツールおよび方法を提供する。
【0018】
本発明デバイスは、好ましくは、分時換気量(MV)、1回換気量(TV)、および呼吸速度(RR)に関して定量的なおよびグラフィカルな情報を提供する、連続的な非侵襲的な呼吸モニターである。以前のデバイスでは、デバイスは、デバイスを使用する前にそれぞれの患者に対してスパイロメーターまたはベンチレーターによって単一ポイントの較正を実施することを臨床医に要求する。このステップを行うことは、MVおよびTVに関して正確な体積測定を可能にする。代替的に、以前のデバイスでは、正常な呼吸のベースラインデータの収集が要求され、個人の正常ベースラインのパーセントとしての呼吸(TVおよびMV)のほぼリアルタイムの計算のその後の送達および表示を伴う。同様の技術による正確で臨床的に有用な測定値を取得することについての多数の成功しなかった試みに関わらず、正確な測定は、患者特有の較正の必要性なしに取得されることができなかった。本発明デバイスは、ベンチレーターによる患者特有の較正の必要性、または、正常ベースラインを取得する必要性を除去し、以前にベンチレーターをつけていないか、または、正常な呼吸を有していないか、または、正常ベースラインを収集することに協力することができない患者に関して、技術の使用を可能にする。これは、呼吸窮迫になっているか、または、鎮静または他の療法もしくは触診の後の患者に対して、デバイスの使用を可能にする。
【0019】
広範囲な臨床的データ収集によって過去3年にわたって蓄積された臨床的検討からのフィードバックに基づいて、デバイスは、本発明において、この単一ポイントの較正の必要性、または正常ベースライン参照の必要性を除去する。デバイスに対する修正は、単一ポイントの較正の必要性も、正常ベースライン参照の必要性もなしに、正確な呼吸体積データがユーザーに提供されることを可能にする。
【0020】
デバイスは、単一ポイントの較正の必要性も、正常ベースライン参照の必要性もなしに、時間に対する肺の体積をグラフィカルに表示し、呼吸速度、1回換気量、および分時換気量を報告する、非侵襲的な呼吸モニターである。
【0021】
提案されている発明は:
・ 生体インピーダンス測定システム: 安定化された高周波電流発生器が、患者ケーブルを介してパッドセット(PadSet)電極に接続されている。電極は、適合回路に接続されており、適合回路は、結果として生じる電圧信号を調整し、それをデジタル形式に変換する。ファームウェアが、信号獲得を実施し、データをコンピューティングデバイスへ中継する。
・ 1つの実施形態では、本発明は、コンピューティングデバイスを利用し、コンピューティングデバイスは、信号処理および較正を実施し、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を起動させる。コンピューティングデバイスは、バーチャルキーボードおよびマウスを通してタッチスクリーンからユーザーインプットを取り入れる。GUIは、患者データを記録するために使用され、また、呼吸トレース、ならびに、分時換気量、1回換気量、および呼吸速度に関するスカラー値およびトレンドを表示するために使用される。他の実施形態では、埋め込み式のもしくはシングルボードのコンピューター、セルラーフォン、または任意のコンピューティングデバイスなどのような、マイクロプロセッサーを含む他のコンピューターシステムまたはデバイスが使用され得る。
・ 単一の患者使用のパッドセット電極: 胴体の上に設置されるように設定されている電極。それは、電流を送達し、インピーダンス測定値を記録する。好適な実施形態では、これは、単一のコネクターを伴ったプリント回路パッドセットであり、容易で正確な設置を可能にする
からなる。
【0022】
1つの実施形態では、デバイスは、大人(21歳より上)の患者における呼吸をモニタリングするために、手術後ケアおよび救命救急室などのような、ヘルスケア施設の中のヘルスケア専門家によって使用することが意図されている。1つの実施形態では、デバイスは、小児患者または新生児患者のために使用される。1つの実施形態では、デバイスは、家庭または他の外来セッティングにおいて使用される。1つの実施形態では、デバイスは、フィットネス環境、ウェルネス環境、または観察環境において使用され、そこでは、測定値は、ヘルスケア専門家からのインプットなしで価値あるものであることとなる。
【0023】
1つの実施形態では、提案されている発明からの測定値は、他の臨床的情報の付属物として使用される。1つの実施形態では、測定値は、ヘルスケア専門家、介護者、または、測定されている個人に対して、自動化されるかまたは方向付けられるかのいずれかで、決定サポートのために利用される。
【0024】
本発明の1つの実施形態は、呼吸モニタリングシステムに関する。システムは、コンピューティングデバイスと、患者に連結されるように構成されている電極パッドセットとを備える。コンピューティングデバイスは、プロセッサーと、プロセッサーと通信する少なくとも1つのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)と、プロセッサーと通信する少なくとも1つのセンサーインプットとを備える。電極パッドセットは、センサーインプットに連結可能であり、コンピューティングデバイスから電気信号を受信し、患者の胴体を通して生体インピーダンス信号を検出する。プロセッサーは、知られている値の較正と、正常換気の間に収集されたベースラインの、どちらに対する必要性もなしに、および、患者の協力なしに、検出された生体インピーダンス信号に基づいて、分時換気量(MV)、予想されるMVのパーセント、1回換気(TV)、予想されるTVのパーセント、呼吸速度(RR)、および、予想されるRRのパーセントのうちの1つまたは複数をリアルタイムに決定する。GUIは、分時換気量(MV)、予想されるMVのパーセント、1回換気(TV)、予想されるTVのパーセント、呼吸速度(RR)、および予想されるRRのパーセントのうちの決定された1つまたは複数をリアルタイムで出力する。
【0025】
好適な実施形態では、システムは、過換気、正常換気、および低換気のうちの少なくとも1つのインディケーションを提供する。好ましくは、システムは、オピオイド誘発性呼吸抑制に基づいて、少なくとも1つの低換気、呼吸信号波形の変化、吸気呼気比率の変化、および吸気プラトーの発達のインディケーションを提供する。好ましくは、コンピューティングデバイスは、患者デモグラフィックス(patient demographics)をデバイスの中へ入力したあと1分以内に、換気の連続的な測定を提供するように構成されている。デモグラフィックスは、好ましくは、患者の身長、体重、および性別のうちの少なくとも1つである。好ましくは、コンピューティングデバイスは、ベンチレーターへの患者特有の較正の必要性も、患者が正常に呼吸しているときのベースラインに対する必要性もなしに、換気の連続的な測定を提供するように構成されている。
【0026】
好適な実施形態では、電極がデバイスに取り付けられるとすぐに、および、デモグラフィックデータを入力することなく、コンピューティングデバイスは、換気の連続的な測定を提供するように構成されている。好ましくは、患者の呼吸に対する患者の協力および制御が要求されない。好ましくは、知られているベンチレーター、スパイロメーター、およびニューモタコメーターの読み値に対するデバイスの較正は要求されない。コンピューティングデバイスは、好ましくは、HR-RRカットオフフィルターをさらに備える。好ましくは、HR-RRカットオフフィルターは、所定の心拍数カットオフポイントに基づいて、呼吸信号および心臓信号をフィルタリングする。好適な実施形態では、心拍数カットオフポイントは、30、40、50、または60ビートパーミニット(bpm)のうちの1つである。
【0027】
好ましくは、心拍数カットオフポイントは、患者デモグラフィックス、MVまたは予想されるMVのパーセンテージ、および急速表在呼吸指数のうちの少なくとも1つに基づいている。心拍数カットオフポイントが、好ましくは、手動で入力されるか、または、コンピューティングデバイスによって自動的に更新される。好適な実施形態では、HR-RRカットオフフィルターは、インピーダンス信号のゲインの測定値、GUIの上に表示されるインピーダンストレースの絶対値に関するスケーリングファクター、1回換気量の減少のインディケーション、鎮静レベルのインディケーション、および、呼吸疾患の診断のうちの少なくとも1つを提供する。
【0028】
好ましくは、システムは、少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームをさらに備える。好ましくは、少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームは、患者疾患状態、医師の査定、臨床的環境または治療環境、生理学的測定、または外部参照のうちの少なくとも1つに基づいて設定される。好ましくは、少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームが適合的である。
【0029】
予想されるMVは、好ましくは、患者の身長、体重、および性別に基づいて計算される。好ましくは、予想されるMV計算は、患者特有の生理学、解剖学、形態学、またはトポロジーのうちの少なくとも1つをさらに備える。好適な実施形態では、システムは、意識がしっかりしているか、意識を失っているか、警戒しているか、死に臨んでいるか、ベンチレーターをつけて挿管されているか、呼吸窮迫になっているか、または、鎮静した後であるかのうちの1つになっている患者に関して使用するように構成されている。好ましくは、システムは非侵襲性である。システムは、好ましくは、電極パッドセットをコンピューティングデバイスに連結する患者ケーブルをさらに備え、患者ケーブルは、電極パッドセットを介して患者へ高周波電流を伝送するように構成されている。
【0030】
本発明の他の実施形態および利点は、次に続く説明の中に部分的に記載されており、部分的に、この説明から明らかになり得り、または、本発明の実践から学習され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のデバイスの実施形態の正面図である。
【
図2】本発明のデバイスの実施形態の背面図である。
【
図4】電極パッドセットの実施形態を示す図である。
【
図5】胴体の上の電極パッドセットの好適な設置の実施形態を示す図である。
【
図6A】グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の実施形態を示す図である。
【
図6B】グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の実施形態を示す図である。
【
図6C】グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の実施形態を示す図である。
【
図6D】グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の実施形態を示す図である。
【
図6E】グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
提案されている発明は、非侵襲的な呼吸モニターであり、それは、ベンチレーター、スパイロメーター、およびニューモタコメーターによる較正の必要性なしに、および、正常ベースラインを取得する必要性なしに、時間に対する肺の体積をグラフィカルに表示し、分時換気量、1回換気量、および呼吸速度を報告する。これは、以前にベンチレーターをつけていないか、または、正常な呼吸を有していないか、または、正常ベースラインを収集することに協力することができない患者に関して、技術の使用を可能にする。
【0033】
1つの実施形態では、提案されている発明は、以下のものからなる:
・ 生体インピーダンス測定システム: 安定化された高周波電流発生器が、パッドセット電極に接続されている。電極は、適合回路に接続されており、適合回路は、結果として生じる電圧信号を調整し、それをデジタル形式に変換する。ファームウェアが、信号獲得を実施し、データを処理デバイスへ中継する。
・ 処理デバイス: 処理デバイス(たとえば、タブレット、スマートフォン、コンピューター、専用デバイス、マイクロプロセッサー、または他のコンピューティングデバイス)は、信号処理および較正を実施し、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を起動させる。処理デバイスは、バーチャルキーボードおよびマウスを通してタッチスクリーンからユーザーインプットを取り入れる。GUIは、患者データを記録するために使用され、また、呼吸トレース、ならびに、分時換気量、1回換気量、および呼吸速度に関するスカラー値およびトレンドを表示するために使用される。
・ 単一の患者使用のパッドセット電極: 胴体の上に設置されるように設定されている電極。それは、電流を送達し、インピーダンス測定値を記録する。
【0034】
1つの実施形態では、モニターは、好ましくは、12インチ(h)x12インチ(w)x6インチ(d)のユニット寸法、および、8lbsのユニット重量を有しているが、しかし、ユニットは、別の寸法のものであることも可能である。患者ケーブルの長さは、おおよそ8フィートであるが、しかし、ケーブルは、別の長さのものであることも可能である。パッドセットの長さは、広範囲の患者にフィットするように調節可能である。1つの実施形態では、データが収集され、デバイスへ、たとえば、セルフォンスクリーン、スマートウォッチ、ページャー、または、他のポータブルレシーバーなどへ、無線で伝送される。
【0035】
好適な実施形態では、ユーザーインターフェースは、好ましくは、LEDバックライト、ポインティングデバイス、および/または、静電容量式タッチスクリーンを伴ったディスプレイである。デバイスは、好ましくは、以下の通りの測定精度を有している:
分時換気量(MV) - 20%よりも良い
1回換気量(TV) - 20%よりも良い
呼吸速度(RR) - 20%よりも良い
または、より好ましくは、
分時換気量(MV) - 15%よりも良い
1回換気量(TV) - 15%よりも良い
呼吸速度(RR) - 5%よりも良いか、もしくは、1分当たり1呼吸。
【0036】
1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、ANSI/AAMI 60601-1に準拠した患者測定電流を出力する。1つの実施形態では、デバイスのコンポーネントのいずれも、滅菌されて出荷される必要はない。1つの実施形態では、パッドセットコンポーネントは、滅菌およびオートクレーブされ得り、または、ガス滅菌され得る。デバイス自身は、患者接触を意図されておらず、また、滅菌現場の内側で使用されることは意図されていない。1つの実施形態では、電極パッドセットは、最大で24時間にわたり皮膚と接触するように意図されている。1つの実施形態では、電極パッドセットは、最大で1週間にわたり皮膚と接触した状態であることが可能である。1つの実施形態では、パッドセットは、好ましくは、ポリエステル(PE)から製造されている。パッドセットの上には、フォームドーナツ(foam donut)が存在していることが可能であり、フォームドーナツは、患者に接触しており、ポリエステルから作製されている。好適な実施形態では、パッドセットは、患者との接続の電気的な完全性のために、生体適合性グリセリンヒドロゲルを使用する。1つの実施形態では、モニターの動作温度範囲は、40-90°Fであり、動作湿度範囲は、20-80%(結露なし)であり、-4-149°Fの保存温度範囲を伴い、保存湿度範囲は、20-80%(結露なし)である。
【0037】
好適な実施形態では、パッドセットは、4-90°Fの好適な動作温度範囲、20-80%(結露なし)の好適な動作湿度範囲、=14-122°Fの好適な保存温度範囲、および、20-80%(結露なし)の好適な保存湿度範囲を有している。
【0038】
好ましくは、モニターおよびケーブルの露出された表面は、消毒剤によって拭かれ得る。ディスプレイスクリーンは、商用グレードのクリーニング溶液によってクリーニングされ得る。好ましくは、システムは、100-240V、50/60Hzのインプット電圧および周波数、ならびに、<600Wのパワー消費の、好適なパワー要件を有している。
【0039】
デバイスは、好ましくは、以下の環境:ICU、処置上の鎮静、監視下麻酔管理、非手術室麻酔、周術期環境、手術室、一般病院フロア、診療所、長期看病施設、家庭、ジム、リハビリテーションセンター、または、呼吸モニタリングを実施することを望むこととなる任意の他の環境において使用され得る。提案されている発明は、低MVを報告し、低MVは、低換気(呼吸抑制)の定義である。提案されている発明によってMVをモニタリングすることは、呼吸抑制を検出することを助ける。提案されている発明は、呼吸障害のインディケーションを提供する。
【0040】
デバイスによって提供されるMV測定は、好ましくは、オピオイド誘発性呼吸抑制を検出および査定することを助ける。提案されている発明を使用して、低換気および/または過換気をより早く検出することは、一般的に呼吸ケアおよびヘルスケアの送達を改善することを助けることが可能である。デバイスは、好ましくは、高MVを報告し、高MVは、過換気の定義であり、呼吸不全、拡散勾配、敗血症、および、呼吸の増加した働きに関連付けされる他の条件についての洞察を提供する。デバイスは、好ましくは、患者安全を改善し得る呼吸状態についての客観的データを提供する。デバイスは、好ましくは、ベッドサイドにおいてまたは遠隔から、呼吸状態の変化を臨床医にアラートする。デバイスは、好ましくは、挿管されていない患者の中の追加的な呼吸情報を提供し、それは、患者の安全を強化することが可能である。
【0041】
1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、分時体積、1回換気量、先進的な呼吸パラメーター、一般的な呼吸状態、および、以前に呼吸モニタリングをしていない患者に関する呼吸状態の変化の定量的な査定のうちの1つまたは複数を測定および表示する。この実施形態では、モニタリングが始まるときに、患者は、低換気、正常換気、過換気のスペクトルの上のどこかにいることが可能であり、または、さまざまな呼吸パターンのいずれかを示すことが可能である。好適な実施形態では、換気の連続的な測定が、患者デモグラフィックスをモニターの中へ入力してから1分以内に提供される。1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、電極がデバイスに取り付けられるとすぐに、デモグラフィックデータの要件なしに、換気の連続的なモニタリングを提供する。好適な実施形態では、デバイスは、好ましくは、十分な精度および使用しやすさを有しており、身長、体重、および性別をデバイスの中へ入力することだけを伴い、ならびに、患者が正常に呼吸しているときのベースラインに関する要件、または、ベンチレーター、スパイロメーター、もしくはニューモタコメーターからの測定値による較正に関する要件を伴わず、デバイスは、好ましくは、患者が以下の臨床的シナリオ:死に臨んでいる、重大な呼吸窮迫を有している、明らかな呼吸不全を有している、無呼吸症状の発作を有している、呼吸停止を経験した、心臓停止を経験した、重大な不整脈を有している、心不全を有している、敗血症から過換気になっている、肺塞栓症または他の原因からの低酸素症に起因して過換気を有している、不明な原因から過換気または低換気を有している、のうちの1つまたは複数になっているときに、使用され得るデバイスを初めて提供する。
【0042】
1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、低MVを報告し、低MVは、低換気(呼吸抑制、呼吸障害)の定義である。1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、オピオイド誘発性呼吸抑制を経験しているかまたはそれに関して危険な状態にある患者を識別する。驚くことには、好適な実施形態では、デバイスは、好ましくは、オピオイドの投与された1つまたは複数の服用の後のMVの絶対値またはMVの変化を定量化することによって、患者の基礎的なオピオイド感度のインディケーションを提供し、また、ベースラインを収集するための必要性も較正するための必要性も存在しないので、デバイスの使用は、オピオイドが投与された後に開始させられ、低換気(呼吸抑制、呼吸障害)を査定および定量化することが可能である。好適な実施形態では、デバイスによるモニタリングは、好ましくは、呼吸障害の疑いまたはオピオイド過量服用の疑いのある患者において開始させられ、評価および/または蘇生法の間に正確にモニタリングされる。提案されている発明からのデータは、呼吸障害を有するかまたは呼吸障害(低換気または過換気のいずれか)の可能性を有すると臨床的に査定された患者に対して、介護者によって使用され、治療を開始させ、刺激、ポジショニング、オピオイドまたはベンゾジアゼピン反転(reversal)、酸素投与、CPAP、BiPAP、フロセミド、高流量酸素、または他の呼吸療法のうちの1つまたは複数の効果を観察する。
【0043】
好適な実施形態では、デバイスは、好ましくは、較正の必要性もベースライン測定の収集の必要性もなしに、患者をリスク階層化する方法を提供する(たとえば、80/40方法。80/40方法では、オピオイド服用の前に2分を超える時間にわたってMV<80%MVPREDを持続した患者は、「危険な状態にある」と考えられ、オピオイド服用に続いて15分以内に少なくとも2分にわたってMV<40%MVPREDを持続した患者は、「低MV」を有するかまたは「安全でない」と考えられる)。デバイスは、好ましくは、外科的処置の後に80/40リスク階層化方法をサポートし、鎮静の前のベースラインの必要性もベンチレーターに対する較正の必要性もなしに、オピオイド誘発性呼吸抑制に関して危険な状態にある患者を検出することを助ける。以前には、このリスク階層化は、患者がスパイロメーターで手術前に較正された後か、または収集された正常ベースラインの後か、または、ベンチレーターによって手術中に較正された後にのみ行われることができた。本発明は、任意の手術後患者に階層化が行われることを可能にし、階層化では、呼吸状態が、麻酔薬、オピオイド、または鎮静剤によって修正され、多くの場合に低下する。この実施形態は、患者が手術後セッティングにおいて呼吸抑制に関して危険な状態にあるということの識別を可能にし、それは、一般病院フロアにおいて呼吸抑制に関して危険な状態にある患者の識別を含む。好ましくは、患者の呼吸状態に関する情報は、中央介護ステーションに、または、ナースもしくは他の介護者によって携帯されている電話に連絡されることとなる。1つの実施形態では、患者呼吸状態およびリスクに関連する情報は、ナースコールシステムによって連絡される。1つの実施形態では、情報は、独立した分析、または、他の生理学的情報、デモグラフィック情報、および研究室情報とのペアリングのために、任意の有線または無線接続によって、中央化された場所へ中継される。好ましくは、提案されている発明は、70%を超える感度によって、75%を超える感度によって、80%を超える感度によって、より好ましくは、85%を超える感度によって、および、最も好ましくは、90%を超える感度によって、オピオイド誘発性呼吸抑制に関して危険な状態にある患者を識別することを助ける。提案されている発明は、70%を超える感度によって、75%を超える感度によって、80%を超える感度によって、85%を超える感度によって、より好ましくは、90%を超える感度によって、および、最も好ましくは、95%を超える感度の手術後の精度によって、オピオイド誘発性呼吸抑制を発達させることとはならない患者を識別することを助ける。
【0044】
驚くことには、好適な実施形態では、デバイスの精度は、好ましくは、患者特有のベースラインに対する必要性も、知られているベンチレーター、スパイロメーター、およびニューモタコメーターの読み値に対する、デバイスの個々の較正の必要性もなしに、および、患者の協力の必要性なしに、使用することを可能にする。このデバイスによって、好ましくは、患者の呼吸に対する患者の協力または制御は、呼吸パフォーマンスの測定を提供するために(患者または外部ベンチレーターのいずれかによって)必要ではない。これは、任意の患者条件(意識がしっかりしている、警戒しているか、死に臨んでいる、挿管されているベンチレーターをつけているなど)においてモニターが使用されることを可能にする。
【0045】
この実施形態では、デバイスは、MV、TV、およびRRを報告するだけでなく、患者サイズに基づいて予想されるパーセントMVも報告する。好適な実施形態では、身長、体重、性別のうちの1つまたは複数の患者デモグラフィックスが、デバイスの中へインプットされ、予想されるMVが、理想的な体重または身体の表面積などのような公式に基づいて計算される。次いで、計算されたMVPREDは、患者の呼吸のリアルタイム信号に基づいて、測定されたMVをそれらの予想される分時換気量のパーセント(%MVPRED)に変換するために使用され、また、呼吸状態のインディケーションを介護者に提供し、呼吸状態のインディケーションは、患者サイズおよび性別に関して補正されており、正常換気のパーセントに基づいてプロトコルの確立を可能にする。
【0046】
デバイスは、好ましくは、呼吸抑制に関して危険が増大する状態にあるものとして、MV<40%を有する患者を識別する。デバイスは、好ましくは、以前の較正の必要性もベースラインの必要性もなしに、呼吸状態に対する処置上の鎮静の間の気道操作の有効性を測定することを助ける。デバイスは、好ましくは、処置上の鎮静の間の気道操作の必要性を指示することを助ける。デバイスは、好ましくは、処置上の鎮静の間の呼吸状態に対する鎮静剤およびオピオイドの効果を定量化することを助ける。驚くことには、デバイスは、好ましくは、処置前のベースラインの必要性も個々の較正の必要性もなしに、分時体積、予想されるパーセント分時体積を正確に報告することが可能である。デバイスは、好ましくは、鎮静の間の呼吸状態に対する麻酔薬の効果を定量化することを助け、デバイスの実現形態は、鎮静剤または麻酔薬の送達に続いて開始させられ得る。好ましくは、デバイス測定は、処置上の鎮静/監視下麻酔管理/および非手術室麻酔の間のカプノグラフィー測定値と比較して、より確実に利用可能である。デバイスは、好ましくは、PCAオピオイドを受けている患者に関する呼吸抑制を識別することを助ける。デバイスは、好ましくは、PCAオピオイドを受けている患者に関する呼吸状態を査定することを助ける。デバイスは、好ましくは、呼吸状態に対するベンゾジアゼピンの効果を測定する。デバイスは、好ましくは、呼吸状態に対するオピオイドの効果を測定し、また、呼吸窮迫または明らかな呼吸不全の状態にある非協力的な患者に対して即座に開始させられ、定量的な方式で、改善または悪化を報告するために使用され得る。デバイスは、好ましくは、個人に合わせた疼痛管理プロトコルの基礎を形成することが可能である。1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、薬物過量服用プロトコルを駆動し、また、薬物過量服用、迅速な追加的な投与におけるNarcan療法の実効性を評価するために使用され、または、挿管の必要性を決定するために使用され得る。
【0047】
1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、呼吸状態に対する神経筋遮断剤の効果を測定する。1つの実施形態では、デバイスは、好ましくは、呼吸状態に対する麻酔薬の効果を測定する。デバイスは、好ましくは、MV測定を提供し、MV測定は、SpO2よりも早い、呼吸抑制のインジケーターである。提案されている発明のMV測定は、呼吸抑制を検出するときにカプノメトリーよりも良い感度および信頼性を有している。デバイスMV測定は、呼吸状態の変化を検出するときにカプノメトリーよりも良い感度および信頼性を有している。デバイスMV測定は、呼吸抑制、低換気、呼吸障害を規定する際に、呼吸速度よりも良い感度および特異性を有している。好適な実施形態では、提案されている発明は、病院フロア、PACU、内視鏡検査を含む複数の環境の中で、呼吸速度測定値単独によって見逃された患者のおおよそ80%において、呼吸抑制を識別する。デバイスの体幹の電極設置は、好ましくは、不快なアラームの発生を最小化する。
【0048】
HR-RRカットオフフィルター
クリアされたデバイスの中のインピーダンスデータの事前処理の間に、心臓信号および呼吸信号の分離のために使用されるデフォルトフィルターは、40bpmのレートで設定された。小さい割合の患者(たとえば、アスリート)では、心臓信号は、40bpmよりも低いベース周波数(心拍数)を有している可能性がある。他の患者(たとえば、小児科の患者)では、呼吸速度は、40よりも高い可能性がある。そのような患者におけるパフォーマンスを改善するために、提案されているデバイスでは、デバイスが呼吸信号および心臓信号をより良好に分離することを可能にするために、カスタマイズされたフィルタリングが利用可能である。このカスタマイズされたフィルタリングは、さまざまなHR/RRカットオフポイント(たとえば、30、40、50、60bpmなど。
図6Eを参照)を伴ったフィルターを含有する適合可能なフィルターまたはフィルターバンクのいずれかとして実現され得る。
【0049】
1つの実施形態では、RR/HRカットオフは、連続的に(たとえば、より大きい患者は、より小さいカットオフを有している)、または、(たとえば、大人対小児、体重ベースの、身長ベースの、BSAベースの)ステップ関数として、患者サイズに基づいている。1つの実施形態では、HR/RRカットオフは、患者身長および体重などのような、選択基準のうちの1つに基づいており、また、HRもしくはRRのいずれかまたは両方の実際の測定値によって精密化されている。1つの実施形態では、カットオフは、HRおよびRRに基づいており、また、患者サイズによって精密化されている。いずれのケースでも、サイズに関するHRおよび/または予期されるRRは、外部デバイスから、もしくは、臨床的査定から、手動でインプットされ得り、または、(たとえば、BiPAP、ベンチレーターなどから)デバイスの中へのHRおよびRRのインプットから計算され得り、または、HRまたはRRの外部測定値から(たとえば、RRはBiPAPもしくはベンチレーターから、または、HRはEKGもしくはパルスオキシメーターから)自動的にインポートされ、または、RVMおよびパルスオキシメーター、心電図、もしくはプレス(pleth)、または、脈拍数の他の証拠の両方から同時測定を必要とすることによって、HRを修正する。1つの実施形態では、HRは、信号の中の周波数、知られているRR周波数からの差、RR周波数に対する比率、および、HR対RRによるインピーダンスの変化のサイズの差のうちの1つまたは複数を使用して決定される。1つの実施形態では、予想される%MVまたはMVは、リアルタイムでHR/RRカットオフを定義するために使用され得る(たとえば、%MVpredが高い場合には、カットオフがより高くなることとなり、%MVpredが低い場合には、カットオフがより低くなることとなる)。
【0050】
1つの実施形態では、HR/RRカットオフは、急速表在呼吸指数(RSBI=RR/TV)に基づいて調節され得り、RSBIが高い場合には、カットオフが自動的に調節されるか、または、デバイスがユーザーにアラートし、カットオフを変化させ、または、RRもしくはHRまたはその両方をチェックさせるかのいずれかになっている。提案されているデバイスは、RRが事前定義された限界値(たとえば、大人に関して>35、小児科の患者に関して>50など)を超える場合には、正しいHRをチェックおよびインプットするようにユーザーに警告することが可能であり、または、カットオフを自動的に調節することが可能である。1つの実施形態では、呼吸検出アルゴリズムは、RRに対するHRの比率によって連続的に更新される。
【0051】
デバイスは、インピーダンスベースの呼吸トレース、または、このトレースのスケーリング(ゲイン、変換ファクター、もしくはスケーリング係数)が計算されるインターバルを提示するときに、好ましくは、カットオフポイントもしくはHR/RR比、または、2つの組み合わせを使用し、インピーダンス信号のゲインを決定するかまたは自動的に設定することが可能である。1つの実施形態では、心臓信号の相対的なサイズ(フィルターによって識別されるようなHRと関連付けられる)が、呼吸信号の相対的なサイズと比較され、スクリーンの上に表示されるときに、インピーダンストレース(y軸)の絶対値に関するスケーリングファクター/ゲインを作り出すことが可能である。心臓信号の相対的なサイズは、他の手段によるストローク体積の測定値に基づいて入力もしくは推定され得り、または、平均的な大人に関して70ccであると仮定され得り、または、BSA、BMI、もしくは身長などに関係付けられ得る。
【0052】
適正にフィルタリングされた心臓信号を所与として、HR信号対RR信号のサイズ、または、HR信号対RR信号の相対的なサイズの変化は、好ましくは、呼吸トレースの中の1回換気量の全体的な減少を示しており、また、より小さい体積に関して最適化された呼吸検出アルゴリズムに対する変化をトリガーするために使用され得る。
【0053】
デバイスは、HR/RRカットオフ、または、呼気持続期間に対する吸入持続期間の比率(I/E比)、または、2つの組み合わせを使用し、鎮静のレベルまたは呼吸疾患の診断を示すことが可能である。1つの実施形態では、吸気の終わりにおける長期のプラトーの持続期間は、オピオイド誘発性鎮静を示している(
図6A-Cを参照)。1つの実施形態では、プラトーの持続期間は、HR/RRカットオフを調節するために使用される。1つの実施形態では、呼吸から呼吸への持続期間は、呼気の終わりから呼気の終わりまでと定義されるような呼吸インターバル、または、呼気の終わりと吸気の始まりとの間のインターバルに対応している。
【0054】
デバイスは、好ましくは、入力されたTVまたはMV測定値(体積同期化モードで)を、測定されたまたは入力されたHRおよび/または心臓信号と組み合わせて使用し、HRからRRをより良好に差別化するために、HR/RRフィルターカットオフを調節することを助けることが可能である。1つの実施形態では、TVおよびRRの両方が、ベンチレーター、BiPAP、スパイロメーター、ニューモタコメーター、または別のデバイスから入力される。MVがベンチレーターから入力され、RRがベンチレーターから入力され、RRがベンチレーターRRとは異なっている場合には、HR/RRフィルターまたは呼吸検出アルゴリズムが調節される。
【0055】
デバイスが、臨床的測定技法または他の測定技法によって実際に観察されるものよりも高いものとして、RRを報告する場合には、これは、HRがHR/RRカットオフの下方にあるとき、または、カットオフの直ぐ上方であるが近くにあるときのいずれかのとき、および、トランジションバンド(パスバンドとストップバンドとの間)の中にあるときに、起因している可能性がある。そのような場合には、RRまたはHRの外部インプットの有無に関わらず、デバイスは、情報を自動的に選択するか、促すか、または受け取ることが可能であり、より低いカットオフポイントを伴ったフィルターを選択し、HRから離れるようにトランジションバンドをシフトさせ、新しく選択されたフィルターのストップバンドの中にHRを効果的に設置し、RRカウンティングの精度を改善する。
【0056】
予想されるMV
既存のデバイスでは、予想されるMV(MVPRED)は、患者の身長、体重、および性別に基づく簡単な公式を使用して計算されるが、これは、参照値として使用され、世界平均との呼吸パフォーマンスの比較のための相対的なスケールを提供し、知られているガイドラインに対する時間の経過に伴うトレンディングを可能にする。本デバイスでは、MVPREDは、患者特有の生理学、解剖学、形態学、またはトポロジーを考慮に入れるためにさらに調節され得る。デバイスの1つの実施形態では、高いBMIを有するアスリートは、同様のBMIを有するデスクワークの肥満患者と比較したときに、上昇したMVPREDを有することとなる。1つの実施形態では、慢性の肺疾患を有する患者は、酸素およびCO2を交換する彼らの肺の能力の低下に起因して、同じ身長、体重、および性別のより健康な患者よりも高いMVPREDを有することとなり、したがって、彼らの「ベースライン」呼吸の必要性を増加させる。
【0057】
アラーム限界値
現在のデバイスは、患者のサイズ(身長および体重)に応じて計算された予想されるMVに基づいて、事前定義された標準的なアラーム限界値を使用する。1つの実施形態では、標準的なアラーム限界値を使用する代わりに、アラーム限界値は、以下のもの:患者疾患状態(甲状腺、糖尿病、COPDなど)、医師の査定、臨床的環境または治療環境(ICU、家庭、高圧チャンバー、ベンチレーターの使用、BIPAPの使用、CPAPの使用、高流量酸素の使用、負圧換気、交互換気、たとえば、高周波またはオシレーター、ECMOなど)、追加的な生理学的測定(BP、HR、EtCO2、SpO2、流体レベルなど)、または外部参照(CPAP、ベンチレーター、PFTテストなど)のうちの1つまたは複数に基づいて適合的である。これらの適合的なアラーム限界値は、悪化しつつある患者条件をアラートするために使用され得るが、療法/治療と関連して、治療の改善および/または利益を追跡するためにも使用され得る。
【0058】
以下の例は、本発明の実施形態を例証しているが、本発明の範囲を限定するものとして見られるべきではない。
【0059】
例
既存の市販されているデバイスと比較した本デバイス
本デバイスが、Respiratory Motion,Inc.(Waltham、MA)によって市販されているExSpiron 1Xiと比較された。また、提案されている発明は、nSpire Health,Inc.(Longmont、CO)によって市販されているWright/Haloscale Respirometerと比較された。2つの同様のデバイスによって生成されることとなる干渉に起因して、複数のデバイスからの同時測定値を取得することは可能ではないので、既存のデバイスの上で実施されたものと本質的に同一の設計による臨床的検討がボランティアの人間被検者ともに行われ、本デバイスから、FDAクリアされたモニタリングスパイロメーター(Wright/Haloscale Respirometer、nSpire Health Inc.、Longmont、CO)へ、分時換気量(MV)、1回換気量(TV)を比較した。
【0060】
Wright/Haloscale Respirometerの意図する使用は:麻酔および手術後の回復の間に集中治療患者によって達成される肺換気のレベルの測定およびモニタリングである。それは、吐き出された体積を測定し、したがって、十分な換気が達成されているかどうか、開回路になっているかもしくは閉回路になっているか、または、自発呼吸している患者であるかもしくは機械的に換気されている患者であるかを示す。
【0061】
Philips Intellivue Monitors’は、患者の生理学的なパラメーターをモニタリングするための必要性が存在するときにはいつでも、ヘルスケア専門家による使用を意図されている。ヘルスケア施設の中の大人、小児、および新生児の複数の生理学的なパラメーターをモニタリングし、記録し、およびアラームすることが意図されている。MP20、MP30、MP40、およびMP50は、追加的に、ヘルスケア施設の中の輸送状況における使用を意図している。ST Segmentモニタリングは、大人患者のみに制限されている。経皮的なガス測定(tcpO2/tcpCO2)は、新生児患者のみに制限されている。(注記:Philipsモニターは、多くの生理学的な変数をモニタリングすることが可能である。このテストのこの目的のために、呼吸周波数機能だけが適用可能である。)
【0062】
本デバイスは、生体インピーダンス測定を使用し、体積および呼吸速度値を計算する。Wright/Haloscale Respirometerは、インラインタービンを使用し、流量を測定し、体積および流量を計算する。Philips Intellivue Monitorは、呼吸速度を測定するためにインピーダンス測定を使用する。
【0063】
測定の精度は、本デバイスおよびWright/Haloscale Respirometerの両方によって患者の換気を同時に測定する臨床的検討によって決定され得る。ストップウォッチが、実際の呼吸速度を決定するために使用された。生体インピーダンス測定は、生きている人間において行われなければならないので、検討は、臨床的実験であった。
【0064】
データは、スパイロメーターによる較正の必要性なしに、体積および速度(rate)に関して本デバイスに表示される値が、体積および流量に関してWright/Haloscale Respirometerに表示される値と同等であるということを実証している。本デバイス生体インピーダンス測定の電気的な安全は、生体インピーダンス測定を使用し、電気的な安全標準に準拠する既存のデバイスと、一貫している。
【0065】
臨床的パフォーマンス検査:
臨床的検討は、基礎的なモニタリングを伴った本デバイスおよびWright/Haloscale Respirometerからの同時測定を比較した。(呼吸速度が、ストップウォッチを使用して計算された。)広範囲の意図された患者を代表する20人の被検者が、検討に参加した。(9人の女性および11人の男性について、年齢範囲:22-80、BMI範囲:18.7-41.8。)検討は、それぞれの被検者に関して2つのセッションを伴い、初期セッションでは、電極が適用され、それぞれの被検者が20回の呼吸テストを実施した。
1回換気量、分時換気量、および呼吸速度が、本デバイスおよびWrightスパイロメーターによって同時に測定された。それぞれの被検者は、オリジナル電極を依然として取り付けたままで、第1のセッションの24時間後に戻った。第2のセットの20回の呼吸テストが実施された。
【0066】
検討の結果が、表1に示されている:
【0067】
【0068】
結果は、24時間の期間にわたる臨床的に関連のある精度を示している。非臨床的検査および臨床的検査の結果、ならびに意図される使用の比較に基づいて、本デバイスは、意図される使用、安全、および有効性に関して、本デバイスおよびWright/Haloscale Respirometerと実質的に同等である。
【0069】
例示的なデバイス
図1は、本発明の好適なデバイス100の実施形態を示している。好ましくは、デバイス100は、外側ケース105およびタッチスクリーン110を備える。タッチスクリーンが示されているが、他の形態のインプットデバイス(たとえば、キーボード、マウス、マイクロホン)も、デバイス100の中へ情報をインプットするために使用され得る。
図2は、デバイス100の背面図である。デバイス100は、インプットポート115A-C、パワーコネクター120、およびポールクランプ125を追加的に含むことが可能である。デバイス100は、聴覚的なまたは視覚的なアラートシステム、たとえば、スピーカーまたはライトなどを追加的に含むことが可能である。デバイス100は、有線接続および/または無線のいずれかによって、ローカルエリアネットワークおよび/またはワイドエリアネットワークに接続することが可能であり得る。
【0070】
3つのポート115A-Cが示されているが、デバイス100は、任意の数のポートを含有することが可能である。好ましくは、ポート115A-Cは、周辺デバイス(たとえば、ベンチレーター、EKGマシン、スパイロメーター、および他の医療用デバイス)およびセンサーに接続し、それらから情報を受信し、および/または、それらを制御するように構成されている。ポート115A-Bは、すべて、同じタイプのポート、または、異なるタイプのポート(たとえばUSBポート、プロプライエタリなポート、シリアルポートまたはパラレルポート、ファイアーワイヤーポート、およびイーサネットポート)であることが可能である。たとえば、デバイス100は、
図3に示されているケーブル330に接続するように構成され得る。ケーブル330は、好ましくは、パッドセット440(
図4に示されている)とデバイス100を連結するように、ならびに、パッドセット440から、および、パッドセット440へ、信号を送るように構成されている。ケーブル330は、プロプライエタリなコネクターを伴ったプロプライエタリなケーブルであることが可能であり、または、汎用ケーブル(たとえば、USBケーブル)であることが可能である。いくつかの実施形態では、パッドセット440は、デバイス100と無線で通信することが可能であり得る。
図5は、人間の胴体の上のパッドセット440の好適な設置を示している。また、パッドセット440の他の構成および設置も可能である。
【0071】
図6A-Eは、デバイス100のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)のスクリーンショットを示している。
図6A-Cにおいて見ることができるように、GUIは、患者の呼吸650のグラフ、患者のMVおよび予想されたMV655および関連のグラフ657、患者のTV660および関連のグラフ663、ならびに、患者のRR665および関連のグラフ667を表示することが可能である。追加的に、いくつかの選択可能なアイコン670A-Dが存在することが可能である。追加的に、GUIの中のさまざまなディスプレイは、より多くの情報を提供するために選択可能であり得る。GUIは、カスタマイズ可能であり得る。たとえば、異なるデータが、GUIの中の異なる場所に表示され得り、より多くのデータが、GUIに追加されるか、またはGUIから除去され得る。そのうえ、より多くのまたはより少ないアイコンが、GUIの上に表示され得る。
【0072】
図6Aに示されている例示的な患者は、彼らの呼吸に対するオピオイド効果のない患者である。
図6Bに示されている例示的な患者は、その呼吸がオピオイドに起因してプラトー化した患者である。
図6Cに示されている例示的な患者は、その呼吸がオピオイドに起因して長期間にわたってプラトー化した患者である。追加的に、
図6Cは、呼吸信号の上に重ね合わせられた心臓信号を示している。
【0073】
図6Dは、GUIの中のメニューの例を示しており、示されているメニューは、MV/TV/RRおよび無呼吸検出期間(No Breath Detected)の期間に起因するアラームを設定するための選択肢を示している。これらの選択肢は、モニタリングされている患者に基づいて介護者によって設定され得り、または、受信されたデータに基づいてデバイスによって自動的に設定され得る。そのうえ、
図6Eに示されているように、メニューは、本明細書で開示されているようなカスタムRR-HR カットオフを設定するためのオプションを有している。
【0074】
本発明の他の実施形態および使用は、ここで開示されている本発明の明細書および実施化を考慮することから当業者に明らかになることとなる。すべての刊行物、米国および外国の特許および特許出願を含む、本明細書で引用されているすべての参考文献は、具体的におよび全体的に、参照により組み込まれている。「備える(comprising)」という用語は、使用される場合にはいつでも、「からなる(consisting of)」および「本質的に…からなる(consisting essentially of)」という用語を含むことが意図されている。そのうえ、「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、限定になることは意図されていない。明細書および例は、以下の特許請求の範囲によって示されている本発明の真の範囲および精神によって、例示的にのみ考慮されるべきであるということが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸モニタリングシステムであって、
コンピューティングデバイスと、
患者に連結されるように構成されている電極パッドセットとを備え、
コンピューティングデバイスは、
プロセッサーと、
プロセッサーと通信する少なくとも1つのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)と、
プロセッサーと通信する少なくとも1つのセンサーインプットとを備え、
電極パッドセットは、センサーインプットに連結可能であり、コンピューティングデバイスから電気信号を受信し、患者の胴体を通して生体インピーダンス信号を検出し、
プロセッサーは、生体インピーダンス信号の較正と、正常換気の間に収集されたベースラインの、どちらの必要性もなしに、および、患者が意識することなく、検出された生体インピーダンス信号に基づいて、リアルタイムに予想される分時換気量(MV)のパーセントおよびMVを決定するように構成されており、予想されるMVのパーセントは、プロセッサーによって計算された患者の予想されるMVと、MVとの、比率に基づいており、
少なくとも1つのGUIは、リアルタイムに予想される決定されたMVのパーセントを出力する、
呼吸モニタリングシステム。
【請求項2】
少なくとも1つのGUIが、過換気、正常換気、および低換気のうちの少なくとも1つのインディケーションを提供するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項3】
少なくとも1つのGUIが、オピオイド誘発性呼吸抑制に基づいて、少なくとも1つの低換気、呼吸信号波形の変化、吸気呼気比率の変化、および吸気プラトーの発達のインディケーションを提供するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項4】
プロセッサーが、少なくとも1つのセンサーインプットが電極パッドセットと結合するとき患者デモグラフィックスをコンピューティングデバイスの中へ入力してから1分以内に、換気の連続的な測定を提供するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項5】
デモグラフィックスが、患者の身長、体重、および性別のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項6】
プロセッサーが、ベンチレーターへの患者特有の較正の必要性も、患者が正常に呼吸し且つ少なくとも1つのセンサーインプットが電極パッドセットと結合しているときのベースラインの必要性もなしに、換気の連続的な測定を提供するように構成されている、請求項4に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項7】
プロセッサーが、電極パッドセットがコンピューティングデバイスに取り付けられるとすぐに、および、デモグラフィックデータを入力することなく、換気の連続的な測定を提供するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項8】
プロセッサーが、患者の呼吸に対する制御が要求されることなく予想されるMVのパーセントおよびMVを決定するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項9】
プロセッサーが、予想されるMVのパーセントおよびニューモタコメーターMV、スパイロメーター、あるいは、知られているベンチレーターに対するプロセッサーの較正が要求されることなく予想されるMVのパーセントおよびMVを決定するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項10】
コンピューティングデバイスが、HR-RRカットオフフィルターをさらに備える、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項11】
HR-RRカットオフフィルターが、心拍数カットオフポイントに基づいて、呼吸信号および心臓信号をフィルタリングする、請求項10に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項12】
心拍数カットオフポイントが、30、40、50、または60ビートパーミニット(bpm)のうちの1つである、請求項11に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項13】
心拍数カットオフポイントが、患者デモグラフィックス、MVまたは予想されるMVのパーセンテージ、および急速表在呼吸指数のうちの少なくとも1つに基づいている、請求項11に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項14】
心拍数カットオフポイントが、HR-RRカットオフフィルターに手動で入力されるか、または、プロセッサーによって自動的に更新される、請求項11に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項15】
HR-RRの出力が、生体インピーダンス信号のゲインの測定値、少なくとも1つのGUIの上に表示される生体インピーダンストレースの絶対値に関するスケーリングファクター、1回換気量の減少のインディケーション、鎮静レベルのインディケーション、および、呼吸疾患の診断のうちの少なくとも1つである、請求項11に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームをさらに備える、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームが、患者疾患状態、医師の査定、臨床的環境または治療環境、追加の生理学的測定、または外部参照のうちの少なくとも1つに基づいて警報を発するように構成されている、請求項16に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項18】
少なくとも1つの聴覚的なまたは視覚的なアラームが適合的であるように構成されている、請求項16に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項19】
予想されるMVが、患者の身長、体重、および性別に基づいて計算される、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項20】
システムが、意識がしっかりしているか、意識を失っているか、警戒しているか、死に臨んでいるか、ベンチレーターをつけて挿管されているか、呼吸窮迫になっているか、または、鎮静した後であるかのうちの1つになっているときの患者に関して使用するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項21】
システムが非侵襲性の使用に向けられている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。
【請求項22】
電極パッドセットをコンピューティングデバイスに連結する患者ケーブルをさらに備え、患者ケーブルが、電極パッドセットを介して患者へ高周波電流を伝送するように構成されている、請求項1に記載の呼吸モニタリングシステム。