(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099846
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】過酸化リチウムの粒度調節方法および粒度が調節されたリチウム酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 15/043 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C01B15/043
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076570
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2022538272の分割
【原出願日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172033
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェ ミュン
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ジュン―キュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、 ウ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 キ エク
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジュン クァン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 サン ウォン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酸化リチウムの粒度および形状を調節可能な酸化リチウムの製造方法を提供する。
【解決手段】2段階水酸化リチウム湿式変換法を使用する、酸化リチウムの製造方法とする。第1段階で水酸化リチウムを過酸化水素水と反応させて中間物質としてLi
2O
2を合成する時に、反応器内攪拌機のチップ速度を調節して、酸化リチウムの粒度および形状を製造過程で制御できる。第2段階で、中間生成物Li
2O
2がLi
2Oに変換中にLi
2O
2の直径が10~40%程度減少するが、中間生成物と同一な形状のLi
2Oが合成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化リチウム水和物を過酸化水素と反応器内で反応させて過酸化リチウムを製造する
方法で生成される過酸化リチウムの粒度を調節する方法であって、
前記過酸化リチウムの形状は球形であり、
粒度は反応器内攪拌機のチップ速度を調節して決定され、
前記チップ速度は、下記式:
V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/60
(上記式中、V-tipはチップ速度であり、Piは円周率であり、R-impell
orは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)
によって計算される、
過酸化リチウムの粒度を調節する方法。
【請求項2】
前記生成される過酸化リチウムの粒子大きさは、1μm~130μmの範囲である、請
求項1に記載の過酸化リチウムの粒度を調節する方法。
【請求項3】
前記過酸化水素と水酸化リチウム水和物の当量比は1:4~1:1である、請求項1に
記載の過酸化リチウムの粒度を調節する方法。
【請求項4】
前記反応温度は30~60℃の範囲であり、反応時間は1分以上であるか、30分~9
0分である、請求項1に記載の過酸化リチウムの粒度を調節する方法。
【請求項5】
(1)水酸化リチウム水和物を過酸化水素と反応させて過酸化リチウムを製造する段階
;および
(2)前記過酸化リチウムを不活性雰囲気下で高温分解して酸化リチウムを製造する段
階
を含む、粒度が調節されたリチウム酸化物の製造方法であって、
前記(1)段階で過酸化リチウムの粒度は反応器内攪拌機のチップ速度を調節して決定
され、
前記チップ速度は下記式:
V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/60
(上記式中、V-tipはチップ速度であり、Piは円周率であり、R-impell
orは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)
によって計算される、
粒度が調節されたリチウム酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記(2)段階で生成される酸化リチウムの粒度は下記式:
(酸化リチウム粒度)=a×exp(b×V-tip)、a、bは工程定数
(a、bはエンジニアリング定数値であって、20<a<60であり、-0.3<b<
-0.1である)
によって決定される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(2)段階で生成される酸化リチウムの粒子大きさは、(1)段階で生成される過
酸化リチウム粒子大きさの50~80%、または60~70%である、請求項5に記載の
製造方法。
【請求項8】
前記(2)段階で生成される酸化リチウムの粒子大きさは、(1)段階で生成される過
酸化リチウム粒子大きさの60~70%である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(1)段階で反応器内攪拌機のチップ速度は0.2m/sec.~20m/sec
.の範囲である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
または1μm~100μmの範囲の大きさである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
チップ速度が速くなるほど生成される粒子の大きさが小さくなる、請求項5に記載の製
造方法。
【請求項12】
前記(2)段階で反応温度は300℃以上である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項13】
前記(2)段階の反応時間は10分以上であるか、30分~3時間である、請求項5に
記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化リチウムを製造する新たな方法に関する。本発明では酸化リチウムの粒
度が製造過程で制御できる。また、本発明は、このような製造方法によって製造された粒
度が制御された酸化リチウムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高価の高純度酸化リチウム(Li2O)がリチウムリッチ遷移金属酸化物の合成
原料として使用されている。リチウムリッチ遷移金属酸化物は、リチウムイオン電池不可
逆容量改善用正極添加剤(あるいは過電圧防止剤)、LIC(Lithium ion
capacitor)および負極材リチオ化処理(Lithiation)で高反応性リ
チウム原料として使用される。リチウムリッチ金属酸化物は、金属酸化物と酸化リチウム
を混合後、不活性雰囲気下で熱処理して合成される。
【0003】
従来、酸化リチウムを製造する複数の方法が公知されている。一例として、酸化リチウ
ムは、乾燥雰囲気下、250℃以上の温度でH2OおよびCO2を調節して金属リチウム
を酸化させることによって製造された。この方法は、反応が速いという長所があるが、液
状Liが反応ルツボに吸着され、反応でH2OおよびCO2を調節する過程が必要である
という短所がある。
【0004】
水酸化リチウムを分解して酸化リチウムを製造する方法では、真空下、700℃以上の
温度または真空下、200~300℃の温度で下記反応式によって、水酸化リチウムを分
解して液体水酸化リチウムを得て、これを再び分解して酸化リチウムを得た。
【0005】
LiOH-H2O(s)->LiOH(s);2LiOH(L)->Li2O(s)+
H2O(g)or2LiOH(s)->Li2O(s)+H2O(g)
【0006】
700℃以上の温度で反応を行う場合、反応が速いという長所があるが、また液状Li
が反応ルツボに吸着され反応時にCO2を制御しにくいという短所があり、200~30
0℃の温度で反応を行う場合、低い反応温度が要求されるという長所があるが、反応に高
度な真空状態が要求されるという短所がある。
【0007】
水酸化リチウム湿式変換法で酸化リチウムを製造する方法では、常温で下記反応式によ
って過酸化リチウムを得て、これを再び分解して酸化リチウムを得た。
【0008】
2LiOH-xH2O(s)->Li2O2(s);Li2O2(s)->Li2O(
s)+1/2O2(g)
【0009】
この方法では低い反応温度が要求されるという長所があるが、H2O2、MeOHなど
の試薬が必要であるという短所がある。
【0010】
炭酸リチウム分解法で酸化リチウムを製造する方法では、反応式Li2CO3(s)-
>Li2O(s)+CO2(g)によって低いPCO2雰囲気下、900℃以上の温度で
反応が行われ、原料費用が低廉であるという長所があるが、反応速度が遅く、実際活用の
ためには1200℃以上の高温が要求されるという短所がある。
【0011】
硝酸リチウム分解法で酸化リチウムを製造する方法では、反応式2LiNO3(s)-
>Li2O(s)+2NO2(g)+1/2O2(g)によって900℃以上の温度で反
応が行われ、反応速度が速いという長所があるが、原料が高くNOx除去工程が伴われる
という短所がある。
【0012】
前記金属リチウムから酸化リチウムを製造する方法、水酸化リチウム分解法、炭酸リチ
ウム分解法、および硝酸リチウム分解法は、原料の溶解点以上の温度で反応が行われるた
め、原料粉末の粒度に関係なく酸化リチウムは巨大な塊り形態に合成される。したがって
、リチウムリッチ遷移金属酸化物合成の原料として使用するためにはその後続工程として
生成された酸化リチウム塊りを粉砕/分級する工程が必要である。また、粒度を調節する
ための粉砕/分級工程で粉末の損失が発生し、大気を遮蔽しなければならない困難がある
。さらに、このような方法で生成された粉末はその最終粒度を制御することが非常に難し
い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、合成反応で反応収率向上のためには酸化リチウムの形状が球形であり、粒
度分布が均一なことが好ましく、酸化リチウム対金属酸化物の平均直径比率を調節するこ
とが非常に重要であるのを発見した。また、このために生成される酸化リチウムの粒度調
節が可能な酸化リチウムの製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では酸化リチウムを製造するために2段階水酸化リチウム湿式変換法を使用する
。第1段階では水酸化リチウムを過酸化水素水と反応させて中間物質としてLi2O2を
合成し、第2段階では合成されたLi2O2を不活性雰囲気で高温分解して酸化リチウム
(Li2O)に変換させる。
1段階:2LiOH-xH2O+H2O2->Li2O2+yH2O、xは0以上の整
数。
2段階:Li2O2->Li2O+1/2O2(g)
【0015】
前記第2段階で、中間生成物Li2O2がLi2Oに変換中にLi2O2の直径が10
~40%程度減少するが、中間生成物と同一な形状のLi2Oが合成される。したがって
、球形のLi2Oの目標直径の大きさはLi2O2中間物質の粒度を制御して得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の2段階工程のフローチャートである。
【
図2】本発明によって製造されたLi
2O
2粉末のSEM写真である。
【
図3】本発明によって製造されたLi
2O
2の粒度と反応器の線速度との関係グラフを示す。
【
図4】本発明によって製造されたLi
2O
2の粒度と反応器の線速度との関係グラフを示す。
【
図5】本発明によって製造されたLi
2O
2の粒度と反応器の線速度との関係グラフを示す。
【
図6】本発明によって製造されたLi
2OのSEM写真である。
【
図7】本発明によって製造されたLi
2O粉末のXRD結果を示す。
【
図8】本発明によって製造されたLi
2O粉末のXRD結果を示す。
【
図9】本発明によって製造されたLi
2O粉末のXRD結果を示す。
【
図10】本発明によって製造されたLi
2O粉末のXRD結果を示す。
【
図11】本発明によって製造されたLi
2Oの粒度と反応器の線速度との関係グラフを示す。
【
図12】本発明によって製造されたLi
2Oの粒度と反応器の線速度との関係グラフを示す。
【
図13】本発明によって製造されたLi
2Oの粒度と反応器の線速度との関係グラフを示す。
【
図14】本発明によって製造されたLi
2O粉末のSEM写真である。
【
図15】本発明によって製造されたLi
2NiO
2粉末のSEM写真である。
【
図16】本発明によって製造されたコインセル3個の充放電関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で酸化リチウムは2段階の水酸化リチウム湿式変換法によって生成される。本発
明の酸化リチウムは、第1段階で過酸化リチウムを生成し、第2段階でこれを酸素分解し
て生成される。生成される酸化リチウム粒子の形状は中間生成物である過酸化リチウム粒
子の形状と同一であるが、その粒度は約50~80%、好ましくは、約60~75%、さ
らに好ましくは、約65~70%に減少する。したがって、過酸化リチウムの粒子の形状
、大きさ、粒度、または直径を制御して所望の酸化リチウムの形状、大きさ、粒度または
直径を得ることができる。
【0018】
第1段階で、水酸化リチウムは水溶液内に解離されてリチウムイオンを生成し、これは
過酸化水素と反応して過酸化リチウム(Li2O2)として合成された後、沈殿する。過
酸化リチウム合成時、生成粒子間の衝突率および衝突エネルギーを調節して、生成される
過酸化リチウム粒子の粒度を制御することが可能である。粒子間の衝突エネルギーは反応
器の内部形状、反応物の流動現象、溶液の移動速度などによって変化し、これを主導する
変数として攪拌機のTIP VELOCITYを下記のように定義して調節することがで
きる。
【0019】
Tip velocity:V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/
60
【0020】
本発明の酸化リチウム製造工程は、下記水酸化リチウム原料湿式反応および不活性雰囲
気高温分解反応の2段階反応を含む。
1段階:2LiOH-xH2O+H2O2->Li2O2+yH2O、xは0以上の整
数。
2段階:Li2O2->Li2O+1/2O2(g)
【0021】
本発明の2段階工程のフローチャートが
図1に示されている。
【0022】
前記各段階で大気中の水分とCO2による汚染を防止し、物質変換を促進するために不
活性雰囲気を維持することが好ましい。
【0023】
1)段階
1-1)原料物質の混合
本段階では、水酸化リチウム1水和物あるいは水酸化リチウムを含むリチウム原料と過
酸化水素水を混合する。水酸化リチウムと過酸化水素水の理論上反応比はリチウム当量:
過酸化水素当量が2:1であるが、反応収率向上のために前記比率を調整することができ
る。好ましい反応当量比は、水酸化リチウム対過酸化水素水4:1~1:1の比率になり
得る。
【0024】
出発原料物質として、水酸化リチウム1水和物(LiOH-H2O)、水酸化リチウム
無水和物(LiOH)あるいは水酸化リチウム多水和物(LiOH-xH2O)を使用す
ることができる。反応収率向上のためには水酸化リチウム無水和物を使用することが好ま
しい。
【0025】
過酸化水素は、水溶液(H2O2-zH2O、zは0以上の整数)で使用することがで
きる。反応収率向上のために、純粋な過酸化水素を使用することが良いが、保管および安
全上の理由で35%濃度の水溶液を使用することが好ましい。
【0026】
1-2)反応器インペラ攪拌で中間物質の析出および粒度調節
反応器の形態、内部バッフルおよびインペラの形態および長さ(dimension)
、インペラ回転数、反応器温度などを調節することによって、生成されるLi2O2中間
物質粒度を調節することができる。一般に、インペラ回転数が増加するにつれて、粒子の
平均大きさは減少し形状は球形に近い粒子に形成される。
【0027】
反応器温度が高いほど粒子の平均大きさは大きくなり、形状は球形から非定型に変化す
る。反応器温度が低いほど粒子の平均大きさは小さくなり、形状は非定型から球形に近く
変化する。
【0028】
反応時間は原料投入後1分以上であり、好ましくは30分~90分が適合する。反応器
の温度は必ず調節する必要はないが、反応率を調節するためには30~60℃の範囲内で
調節することが好ましい。
【0029】
過酸化リチウム合成時、生成粒子間の衝突率および衝突エネルギーを調節して、生成さ
れる過酸化リチウム粒子の粒度を制御することが可能である。粒子間の衝突エネルギーは
反応器の内部形状、反応物の流動現象、溶液の移動速度などによって変化し、これを主導
する変数として攪拌機のTIP VELOCITYを下記のように定義して調節すること
ができる。
【0030】
Tip velocity:V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/
60
【0031】
上記式中、piは円周率(3.141592…)を意味し、R_impellorは攪
拌機ブレードの半径を意味し、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数を意味する。
【0032】
本発明で、R_impellorは反応器形状およびモータの可動範囲によって制限さ
れ、通常の技術者は目標とするtip velocityに合うようにモータ仕様を考慮
して値を決定することができる。
【0033】
本発明で、攪拌機のチップ速度は0.2m/sec.~20m/sec.の範囲、好ま
しくは1m/sec.~10m/sec.の範囲である。
【0034】
本発明でチップ速度は生成される粒子の大きさに反比例し、これはチップ速度が速くな
るほど粒子の大きさは小さくなり得るのを意味する。
【0035】
1-3)製造されたスラリー析出物回収および乾燥
反応器内インペラの攪拌で中間物質のスラリーが製造される。製造されたスラリーを沈
降させるか、フィルターを通過するか、遠心分離などの方法で溶液と固形分を分離するこ
とができる。回収された溶液は過量のリチウムが溶解された水酸化リチウム水溶液であっ
て、リチウム化合物製造に使用可能である。回収されたLi2O2固形分は真空乾燥を通
じて表面吸着水を乾燥することができる。
【0036】
前記段階で製造されるLi2O2粒子は球形に近いかほとんど球形、または球形である
。生成される過酸化リチウムの粒子大きさは1μm~130μmの範囲、好ましくは、5
μm~50μmの範囲である。
【0037】
2)段階
2-1)不活性雰囲気での熱処理
1)段階で製造された固形分はLi2O2であって、不活性雰囲気あるいは真空雰囲気
の高温でLi2Oに変換できる。変換温度は300℃以上であり、好ましくは350℃~
650℃である。変換時間(反応時間)は変換温度(反応温度)によって変わり、変換時
間と変換温度は反比例する。変換時間と変換温度が反比例するということは、同一反応で
変換時間が長くなるほど変換温度は低くなり得るのを意味する。一実施形態で、変換時間
は10分以上、好ましくは30分以上、より一層好ましくは1時間以上、より具体的には
30分~3時間、または1時間~2時間である。変換温度が420℃の時、変換時間は3
0分以上が好ましい。
【0038】
生成された酸化リチウムの粒子形状は1)段階の中間生成物である過酸化リチウム粒子
の形状と同一であるが、その粒度(粒子の大きさ、直径)は約50~80%、好ましくは
、約60~75%、さらに好ましくは、約65~70%に減少する。本段階で生成された
酸化リチウムの粒度は下記式:
(酸化リチウム粒度)=a×exp(b×Tip velocity)、a、bは工程
定数
(上記式中、aおよびbはエンジニアリング定数値であって、20<a<60であり、
-0.3<b<-0.1である)
によって決定できる。
【0039】
上記式中、aは粒子の大きさに与えるtip velocityの影響をエネルギー観
点から説明するパラメータであって、同一tip velocityで衝突回数およびエ
ネルギーが高いほど大きくなる。a値は粒子大きさに与えるバッフルの数字、バッフル断
面積影響のパラメータであってもよく、詳細値は溶液の粘度、粒子大きさ、温度など多様
な因子によって変わるようになり得る。通常の技術者はこのような工程条件を考慮して前
記範囲内でa値を決定することができる。
【0040】
bは粒子の大きさに与えるtip velocityの影響を粒子粉砕および再成長活
性化エネルギー観点から説明するパラメータであって、同一なtip velocity
に対比して粒子の欠陥エネルギー、再結晶エネルギーなどによって変わる。詳細値は溶液
の濃度、温度、物質の種類、不純物含量などの多様な因子によって変わるようになり得る
。通常の技術者はこのような工程条件を考慮して前記範囲内でb値を決定することができ
る。
【0041】
2-2)Li2O粉末回収および包装
変換されたLi2Oを大気中変性を防止するために窒素充填および真空包装することが
できる。特にLi2Oは、大気中の水分とCO2と同時に接触時、水酸化リチウムおよび
炭酸リチウムに変性されることがあるので、保管に注意が要求される。
【0042】
前記段階で製造されるLi2O粒子は球形に近いかほとんど球形、または球形である。
酸化リチウムの粒子大きさは1μm~100μmの範囲であり、好ましくは、5μm~5
0μmの範囲である。
【0043】
以下、本発明の実施形態を下記実施例を通じてより詳しく説明する。但し、これは例示
として提示されるものであって、これによって本発明が制限されるわけではなく、本発明
は後述の請求範囲の範疇によってのみ定義される。
【実施例0044】
実施例1
試薬級水酸化リチウム1水和物(98%、森田化学)3kg、過酸化水素水(森田化学
、34.5%)3.4kgを反応器内で混合した。反応器内部には4機の長方形バッフル
が設置され、反応器ローターは二重構造で構成された。機械式インペラの回転数を150
~750rpmで回転させながら1時間反応させた。アイボリー色のスラリー約1.2k
gを回収し、金属フィルターが装着されたcone-type filter drye
rを通過させて、固体と液体を分離させた。湿潤Li2O2粉末1.7kgおよび水溶液
4.7kgを回収した。湿潤Li2O2粉末を真空乾燥オーブンに130℃3時間保管後
、乾燥されたLi2O2粉末1.2kgを回収した。XRD相分析結果、Li2O2 9
8.5%、Li2CO3 1.3%、LiOH-H2O 0.2%と分析された。Li2
CO3は、移送およびXRD測定時、大気のCO2によって生成されたと推定される。
【0045】
回収されたLi
2O
2粉末のSEM写真は
図2に示されている。前記
図2から分かるよ
うに、RPMが増加するにつれて粒子の大きさが小さくなった。平均粒子の大きさD50
は150rpmで約50±20μm、500rpmで約30±15μm、750rpmで
約20±10μmと測定された。
【0046】
実施例2
試薬級水酸化リチウム1水和物(98%、森田化学)5.2kg、過酸化水素水(森田
化学、34.5%)6.0kgを反応器内で混合した。反応器内部には4機の長方形バッ
フルが設置され、反応器ローターは二重構造で構成された。機械式インペラの回転数を1
50~750rpmで回転させながら1時間反応させた。アイボリー色のスラリー約11
.2kgを回収し、金属フィルターが装着されたcone-type filter d
ryerを通過させて、固体と液体を分離させた。湿潤Li2O2粉末2.5kg、およ
び水溶液8.7kgを回収した。湿潤Li2O2粉末を真空乾燥オーブンに130℃3時
間保管後、乾燥されたLi2O2粉末2.1kgを回収した。XRD相分析結果、Li2
O2 98.5%、Li2CO3 1.3%、LiOH-H2O 0.2%と分析された
。
【0047】
実施例1と2の合成方法で製造されたLi2O2の粒度と合成反応時反応器の線速度と
の関係を下記表に整理した。
【0048】
【0049】
上記表の数値に基づいて、実施例1と2の合成方法で製造されたLi
2O
2の粒度と合
成反応時反応器の線速度との関係を
図3にグラフで示した。
【0050】
実施例3
試薬級水酸化リチウム1水和物(98%、森田化学)30kg、過酸化水素水(森田化
学、34.5%)32kgを反応器で混合した。合成反応器内部には4機の長方形バッフ
ルが設置され、反応器ローターは二重構造で構成された。機械式インペラの回転数を15
0~500rpmで回転させながら1時間反応させた。アイボリー色のスラリー約12.
7kgを回収し、金属フィルターが装着されたcone-type filter dr
yerを通過させて、固体と液体を分離させた。湿潤Li2O2粉末14kg、および水
溶液48kgを回収した。湿潤Li2O2粉末を真空乾燥オーブンに130℃3時間保管
後、乾燥されたLi2O2粉末12.7kgを回収した。XRD相分析結果、Li2O2
98.5%以上と分析した。
【0051】
実施例3の合成方法で製造されたLi2O2の粒度と合成反応時反応器の線速度との関
係を下記表に整理した。
【0052】
【0053】
上記表の数値に基づいて、実施例3の合成方法で製造されたLi
2O
2の粒度と合成反
応時反応器の線速度との関係を
図4にグラフで示した。
【0054】
実施例1~3の結果分析
実施例1~3のデータを分析した結果、反応器大きさに関係なく、tip veloc
ityとLi2O2の平均粒度D50は下記のような関係を有するのを発見した。
【0055】
【0056】
上記表の数値に基づいて、Li2O2の粒度と合成反応時反応器の線速度との関係を図
5にグラフで示した。
【0057】
実施例4-Li2O2のLi2Oへの変換
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、425℃の窒素雰囲気
炉で7時間露出させた。粉末を回収して、Li2O 6.5gを得た。
【0058】
製造されたLi
2Oの形状をSEMで観察した。
図6では、製造されたLi
2OのSE
Mイメージを示す。その形状は、
図6に示されているように球形に示された。
【0059】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、400℃の窒素雰囲気
炉で1時間30分露出させてLi2Oに変換した。総91.2%変換され、一部LiOH
が確認された。回収されたLi2Oは6.8gであった。
【0060】
回収された粉末のXRD結果は、
図7で示される通りであった。
【0061】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、600℃の窒素雰囲気
炉で1時間30分露出させてLi2Oに変換した。回収されたLi2Oは6.5gであっ
た。
【0062】
製造された粉末のXRD結果は、
図8で示される通りであった。
【0063】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、700℃の窒素雰囲気
炉で14時間露出させてLi2Oに変換した。回収されたLi2Oは6.5gであった。
【0064】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、750℃の窒素雰囲気
炉で12時間露出させてLi2Oに変換した。回収されたLi2Oは6.5gであった。
【0065】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、425℃の窒素雰囲気
炉で3時間露出させ、その後、950℃で1時間露出させてLi2Oに変換した。回収さ
れたLi2Oは6.5gであった。
【0066】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、425℃の窒素雰囲気
炉で3時間露出させ、その後、950℃で2時間露出させてLi2Oに変換した。回収さ
れたLi2Oは6.5gであった。
【0067】
乾燥されたLi2O2粉末500gをアルミナルツボに入れた後、425℃の窒素雰囲
気炉で3時間露出させてLi2Oを回収した。回収された粉末は320gであった。
【0068】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、600℃の電気炉で1
時間30分露出させてLi2Oを回収した。高純度酸素(99.98%)200cc/m
in、高純度窒素(99.98%)800cc/min.供給した。回収された粉末は6
.5gであった。
【0069】
製造された粉末のXRD結果は、
図9で示される通りであった。
【0070】
乾燥されたLi2O2粉末10gをアルミナルツボに入れた後、600℃の電気炉で1
時間30分露出させてLi2Oを回収した。高純度酸素(99.98%)500cc/m
in、高純度窒素(99.98%)500cc/min.供給した。回収された粉末は6
.5gであった。
【0071】
製造された粉末のXRD結果は、
図10で示される通りであった。
【0072】
前記実施例4で製造されたLi2O2およびLi2Oの粒度と合成反応時反応器の線速
度との関係を下記表に整理した。
【0073】
【0074】
上記表の数値に基づいて、Li
2Oの粒度と合成反応時反応器の線速度との関係を
図1
1-
図13にグラフで示した。以上のようにTip velocityと酸化リチウムは
次の関係式に従うので、tip velocityを調節して酸化リチウムの粒度を調節
することができた。(酸化リチウム粒度)=a X exp(b X Tip velo
city)、a、bは工程定数
【0075】
a、bはエンジニアリング定数値であって設備による実験値として得ることができる。
【0076】
実施例5-Li2Oを原料にしてリチウムリッチ遷移金属酸化物を合成した例
NiO 20gと製造されたLi2O 8.85gを小型ミキサーを使用して5分間混
合した。混合された粉末を窒素雰囲気炉で700℃で12時間露出させてLi2NiO2
を合成した。合成された粉末は28.86gであった。
【0077】
混合物の形状は、
図14で示されるように球形であった。特に、
図14のように球形の
NIO表面に粉砕されたLi
2O微分が均一に分布していることが確認された。
【0078】
高温に熱処理後合成されたLi
2NiO
2の形状は、
図15で示される通りであった。
図15のように球形のLi
2NiO
2が形成され、未反応したNiOとLi
2Oは観察さ
れなかった。
【0079】
製造されたLi2NiO2を使用してCR2032コインセルを製造し、その電気化学
特性を評価した。電極は14mm厚さのアルミニウム薄板の上にコーティングした。コー
ティング層の厚さは50~80μmであった。
【0080】
電極スラリーはLi2NiO2:デンカブラック(D.B.):PvdF=85:10
:5wt%で混合し、製造された電極は真空乾燥後に加圧プレシングし、最終的なコーテ
ィング層の厚さは40~60μmであった。電解液はEC:EMC=1:2溶媒にLiP
F6塩が1M濃度で溶解された有機溶液であった。
【0081】
製造されたコインセルは4.25~3.0V区間で0.1C-rate、1%条件のC
C/CVモードで充放電した。コインセル3個の充放電曲線は
図16に示された。
【0082】
総3回の充放電試験を実施し、各試験で毎回同一な結果を示した。
【0083】
1赤色:コインセルの平均電気化学特性は充電容量389.88mAh/g、放電容量
130.99mAh/g、不可逆容量258.88mAh/g、可逆効率33.60%と
測定された。
2緑色:コインセルの平均電気化学特性は充電容量388.19mAh/g、放電容量
130.82mAh/g、不可逆容量257.38mAh/g、可逆効率33.70%と
測定された。
【0084】
実施例6
NiO 100gと開発品Li2O 41.2gを小型ミキサーを使用して10分間混
合した。混合された粉末を窒素雰囲気炉で700℃で12時間露出させてLi2NiO2
を合成した。合成された粉末140g回収した。
【0085】
NiO 100gと比較材として購入したLi2O 41.2gを小型ミキサーを使用
して10分間混合した。混合された粉末を窒素雰囲気炉で700℃で12時間露出させて
Li2NiO2を合成した。合成された粉末140g回収した。
【0086】
製造された粉末の粒度分析結果は次の通りである。経過のように開発品はD50基準で
4.1μm大きくなり、Dmin.およびDmax全て増加した。これは、LNO合成過
程で開発品はsintering効果を促進させるためであった。
【0087】
【0088】
製造された粉末の相分析のためにXRDを測定し、測定された結果に基づいて相分析し
た結果は下記表6の通りであった。結果のように、開発品を使用した場合、LNO相分率
は3.6wt%向上、残留NiO含量は2.7wt%減少の効果があるのを確認すること
ができた。
【0089】
【0090】
製造された粉末の残留リチウム量を中和滴定法で測定した。測定されたLiOHの含量
は下記表7のように開発品で58.2%節減された。Li2CO3含量は大気露出による
変性と判断された。
【0091】
【0092】
回収された粉末を原料にしてCR2032コインセルを製造し、その電気化学特性を評
価した。製造されたLi2NiO2を誘発粉砕後、#325meshを通過させて不純物
および大型粒子を除去した。電極は14mm厚さのアルミニウム薄板の上にコーティング
した。コーティング層の厚さは50~80μmであった。電極スラリーはLi2NiO2
:デンカブラック(D.B.):PvdF=85:10:5wt%で混合し、製造された
電極は真空乾燥後に加圧プレシングし、最終的なコーティング層の厚さは40~60μm
であった。電解液はEC:EMC=1:2溶媒にLiPF6塩が1M濃度で溶解された有
機溶液であった。製造されたコインセルは4.25~3.0V区間で0.1C-rate
、1%条件のCC/CVモードで充放電した。
【0093】
結果のように、開発品は充電容量2.7%、放電容量3.6%、不可逆容量2.2%の
改善効果があった。以上の結果は、反応率が向上した開発品によってLNO合成率が増加
したためであった。
【0094】
【0095】
前記コインセル製造実験から分かるように、既存のLi2Oに対比してLNO合成過程
で変換率が増加して電気化学容量増加、残留リチウム含量減少、物質効率増加効果を確認
することができた。