IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-99850ナチュラルキラー細胞の活性化のための多重特異性結合タンパク質およびがんを処置するためのその治療的使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099850
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞の活性化のための多重特異性結合タンパク質およびがんを処置するためのその治療的使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240718BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/17 100
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C07K16/46
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077012
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2022077006の分割
【原出願日】2018-02-08
(31)【優先権主張番号】62/456,535
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ピー. チャン
(72)【発明者】
【氏名】アン エフ. チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ヘイニー
(72)【発明者】
【氏名】アシャ グリンバーグ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084CA56
4C084DA39
4C084MA16
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085CC32
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】ナチュラルキラー細胞の活性化のための多重特異性結合タンパク質およびがんを処置するためのその治療的使用の提供。
【解決手段】腫瘍関連抗原、NKG2D受容体、およびCD16に結合する多重特異性結合タンパク質、ならびにがんの処置に有用な医薬組成物および治療方法が記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年2月8日に出願された米国仮特許出願番号第62/456,535号に基づく利益および優先権を主張しており、この仮特許出願の全体の内容は、すべての目的のために本明細書中に参考として援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含み、その全体は、参照により本明細書に組み込まれている。前記ASCIIコピーは2018年2月6日に作成され、DFY-001PC_SL.txtという名称であり、71,169バイトのサイズである。
【0003】
発明の分野
本発明は、腫瘍関連抗原、NKG2D受容体、およびCD16に結合する多重特異性結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
がんは、この疾患を処置するための文献に報告されている十分な研究努力および科学進歩にもかかわらず、重大な健康問題であり続けている。最も頻繁に診断されるがんの中には、前立腺がん、乳がん、および肺がんが含まれる。前立腺がんは、男性におけるがんの最も一般的な形態である。乳がんは依然として女性における主要な死因である。これらのがんに対する現在の処置選択肢は、すべての患者に効果的というわけではなく、および/または実質的な有害副作用を有する可能性がある。他の種類のがんも、既存の治療選択肢を使用して処置することが依然として困難である。
【0005】
がん免疫療法は、それらが非常に特異的であり、患者自身の免疫系を使用してがん細胞の破壊を促進することができるので望ましい。二重特異性T細胞エンゲージャーなどの融合タンパク質は、腫瘍細胞の破壊を促進するために腫瘍細胞およびT細胞に結合する、文献に記載されているがん免疫療法である。ある特定の腫瘍関連抗原およびある特定の免疫細胞に結合する抗体は文献に記載されている。例えば、WO2016/134371およびWO2015/095412を参照されたい。
【0006】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天性免疫系の構成要素であり、循環リンパ球の約15%を構成する。NK細胞は実質的にすべての組織に浸潤し、最初は、事前感作を必要とせずに腫瘍細胞を効果的に殺傷するそれらの能力によって特徴付けられた。活性化されたNK細胞は、細胞傷害性T細胞と同様の手段によって、すなわち、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞傷害性顆粒を介して、ならびに死受容体経路を介して、標的細胞を殺傷する。活性化されたNK細胞はまた、標的組織への他の白血球の動員を促進するIFN-ガンマおよびケモカインなどの炎症性サイトカインを分泌する。
NK細胞は、それらの表面における様々な活性化受容体および阻害受容体を介してシグナルに応答する。例えば、NK細胞が健康な自己細胞に遭遇すると、それらの活性は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の活性化によって阻害される。あるいはNK細胞が外来細胞またはがん細胞に遭遇すると、それらは、それらの活性化受容体(例えば、NKG2D、NCR、DNAM1)を介して活性化される。NK細胞はまた、それらの表面におけるCD16受容体を介していくつかの免疫グロブリンの定常領域によって活性化される。活性化に対するNK細胞の全体的な感受性は、刺激シグナルおよび阻害シグナルの合計に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/134371号
【特許文献2】国際公開第2015/095412号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本発明は、がん細胞における腫瘍関連抗原ならびにナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体に結合してナチュラルキラー細胞を活性化させる多重特異性結合タンパク質、かかる多重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物、ならびに、がんの処置などのためにかかる多重特異性タンパク質および医薬組成物を使用する治療方法を提供する。かかるタンパク質は2種類以上のNK活性化受容体と会合することができ、天然リガンドのNKG2Dへの結合を阻止し得る。ある特定の実施形態では、タンパク質は、ヒトならびにげっ歯動物およびカニクイザルなどの他の種においてNK細胞を刺激し得る。本発明の様々な態様および実施形態を以下にさらに詳細に記載する。
【0009】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、腫瘍関連抗原に結合する第2の抗原結合部位と、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位とを組み込むことができる。
【0010】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は三価であり、これは、両方とも同じ腫瘍関連抗原に結合する第1および第2の抗原結合部位と、NKG2Dに結合する第3の抗原結合部位と、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメイン、その一部分とを含む。
【0011】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は四価であり、これは、両方とも同じ腫瘍関連抗原に結合する第1および第2の抗原結合部位と、両方ともNKG2Dに結合する第3および第4の抗原結合部位と、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメイン、その一部分とを含む。
【0012】
抗原結合部位は各々、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメイン(例えば、抗体のように配列されるか、またはscFvを形成するために一緒に融合される)を組み込んでいてもよいか、または抗原結合部位の1つもしくは複数は、ラクダ科抗体のようなVH抗体もしくは軟骨魚類に見出されるもののようなVNAR抗体などの単一ドメイン抗体であってもよい。一部の例では、腫瘍関連抗原は、HER2、CD20、CD33、B細胞成熟抗原(BCMA)、EpCAM、CD2、CD19、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、およびPD1からなる群から選択されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、患者におけるがんを処置する方法を提供する。方法は、がんを処置するために、本明細書に記載の治療有効量の多重特異性結合タンパク質を、それを必要とする患者に投与することを含む。多重特異性結合タンパク質を使用する処置のための例示的ながんには、例えば、HER2を発現する癌腫が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、NKG2D結合ドメイン(右アーム)、腫瘍関連抗原結合ドメイン(左アーム)およびCD16に結合するFcドメインまたはその一部分を含有する多重特異性結合タンパク質の図である。
【0015】
図2図2は、scFvフォーマットにおけるNKG2D結合ドメイン(右アーム)、腫瘍関連抗原結合ドメイン(左アーム)およびCD16に結合するFcドメインまたはその一部分を含有する多重特異性結合タンパク質の図である。
【0016】
図3図3は、IgG様形状を維持する三機能性の二重特異性抗体であるTriomab形態におけるTriNKETの図である。このキメラは、2つの親抗体に由来する2つの半抗体からなり、各半抗体が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。Triomab形態は、ラット抗体の1/2およびマウス抗体の1/2を含有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0017】
図4図4は、ノブ・イントゥ・ホール(KIH:knobs-into-holes)技術を用いるKiH共通軽鎖(LC)形態におけるTriNKETの図である。KiHは、標的1および2に結合する2つのFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。KiHフォーマットにおけるTriNKETは、2つの異なる重鎖と、両方のHCと対合する共通の軽鎖とを含有する、標的1および標的2に結合する2つのfabを有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0018】
図5図5は、自然起源の可動性リンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態におけるTriNKETの図である。DVD-Ig(商標)とは、抗原2を標的とする可変ドメインが、抗原1を標的とするFabの可変ドメインのN末端に融合しているホモ二量体構築物である。構築物は通常のFcを含有する。
【0019】
図6図6は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つのFabを含有するヘテロ二量体構築物である、直交性Fab界面(オルト-Fab)形態におけるTriNKETの図である。LC-HCの対合は、直交界面によって確実になっている。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっている。
【0020】
図7図7は、2in1 IgフォーマットにおけるTrinKETの図である。
【0021】
図8図8は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つの異なるFabを含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態におけるTriNKETの図である。ヘテロ二量体化は、Fcにおける静電的ステアリング突然変異によって確実になっている。
【0022】
図9図9は、Fabアーム交換形態におけるTriNKET、すなわち、重鎖(HC)および結合した軽鎖(LC)(半分子)を別の分子の重-軽鎖対とスワップすることによりFabアームを交換した結果、二重特異性抗体となった抗体の図である。Fabアーム交換形態(cFae)は、標的1および2に結合する2つのFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。
【0023】
図10図10は、標的1および2に結合する2つのFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である、SEED Body形態におけるTriNKETの図である。
【0024】
図11図11は、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーを使用する、LuZ-Y形態におけるTriNKETの図である。LuZ-Y形態は、Fcに融合した標的1および2に結合する2つの異なるscFabを含有するヘテロ二量体である。ヘテロ二量体化は、FcのC末端に融合したロイシンジッパーモチーフによって確実になっている。
【0025】
図12図12は、Cov-X-Body形態におけるTriNKETの図である。
【0026】
図13図13Aおよび13Bは、ヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、κλ-Body形態におけるTriNKETの図である。抗原1を標的とするFab1はカッパLCを含有し、一方、抗原2を標的とする第2のFabはラムダLCを含有する。図13Aは、κλ-Bodyの一形態の例示的な図であり、図13Bは、別のκλ-Bodyの例示的な図である。
【0027】
図14図14は、ELISAアッセイにおけるヒト組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示すグラフである。
【0028】
図15図15は、ELISAアッセイにおけるカニクイザル組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示すグラフである。
【0029】
図16図16は、ELISAアッセイにおけるマウス組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示すグラフである。
【0030】
図17図17は、バックグラウンドに対する平均蛍光強度(MFI)倍率を示すフローサイトメトリーによる、ヒトNKG2Dを発現するEL4細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合を示すグラフである。
【0031】
図18図18は、バックグラウンドに対する平均蛍光強度(MFI)倍率を示すフローサイトメトリーによる、マウスNKG2Dを発現するEL4細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合を示すグラフである。
【0032】
図19図19は、天然リガンドのULBP-6と競合することによる、組換えヒトNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示すグラフである。
【0033】
図20図20は、天然リガンドのMICAと競合することによる、組換えヒトNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示すグラフである。
【0034】
図21図21は、天然リガンドのRae-1デルタと競合することによる、組換えマウスNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示すグラフである。
【0035】
図22図22は、ヒトNKG2D-CD3ゼータ融合タンパク質を発現するTNF-アルファ陽性細胞のパーセンテージを定量することにより、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNKG2Dの活性化を示すグラフである。
【0036】
図23図23は、マウスNKG2D-CD3ゼータ融合タンパク質を発現するTNF-アルファ陽性細胞のパーセンテージを定量することにより、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNKG2Dの活性化を示すグラフである。
【0037】
図24図24は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNK細胞の活性化を示すグラフである。
【0038】
図25図25は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNK細胞の活性化を示すグラフである。
【0039】
図26図26は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNK細胞の活性化を示すグラフである。
【0040】
図27図27は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNK細胞の活性化を示すグラフである。
【0041】
図28図28は、腫瘍細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の細胞傷害効果を示すグラフである。
【0042】
図29図29は、示差走査型蛍光定量法によって測定された、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の融解温度を示すグラフである。
【0043】
図30図30は、多重特異性結合タンパク質によるヒトNK細胞の増強された活性化を示すグラフである。
【0044】
図31図31は、ヒトNK細胞によって腫瘍標的細胞に対してより高いレベルの細胞傷害性を誘導した多重特異性結合タンパク質を示すグラフである。
【0045】
図32図32は、ヒトNK細胞によって腫瘍標的細胞に対してより高いレベルの細胞傷害性を誘導した多重特異性結合タンパク質を示すグラフである。
【0046】
図33図33は、ヒトNK細胞によって腫瘍標的細胞に対してより高いレベルの細胞傷害性を誘導した多重特異性結合タンパク質を示すグラフである。
【0047】
図34図34は、ヒトNK細胞によって腫瘍標的細胞に対してより高いレベルの細胞傷害性を誘導した多重特異性結合タンパク質を示すグラフである。
【0048】
図35図35は、マウスNK細胞によって腫瘍標的細胞に対してより高いレベルの細胞傷害性を誘導した多重特異性結合タンパク質を示すグラフである。
【0049】
図36図36は、マウスNK細胞によって腫瘍標的細胞に対してより高いレベルの細胞傷害性を誘導した多重特異性結合タンパク質を示すグラフである。
【0050】
図37図37は、EL4細胞において発現したNKG2Dに対するCD33を標的とするTriNKETの結合プロファイルである。図37は、CD33結合ドメインが第2の標的化アームとして使用される場合の2つのTriNKETの結合を示す。
【0051】
図38図38は、EL4細胞において発現したNKG2Dに対するHER2を標的とするTriNKETの結合プロファイルである。図38は、同じ2つのNKG2D結合ドメインがここでHER2の第2の標的化アームと対合したことを示す。
【0052】
図39図39は、EL4細胞において発現したNKG2Dに対するBCMAを標的とするTriNKETの結合プロファイルである。
【0053】
図40図40は、EL4細胞において発現したNKG2Dに結合するCD20を標的とするTriNKETのヒストグラムである。未染色のEL4細胞を蛍光シグナルについての陰性対照として使用した。未染色:黒塗り;CD20-TriNKET-F04:実線;CD20-TriNKET-C26:破線。
【0054】
図41図41は、MV4-11ヒトAML細胞において発現したCD33に対するCD33を標的とするTriNKETの結合プロファイルである。
【0055】
図42図42は、ヒト786-O腎細胞癌細胞において発現したHER2に対するHER2を標的とするTriNKETの結合プロファイルである。
【0056】
図43図43は、MM.1Sヒト骨髄腫細胞において発現したBCMAに対するBCMAを標的とするTriNKETの結合プロファイルである。
【0057】
図44図44は、Rajiヒトリンパ腫細胞において発現したCD20に結合するCD20を標的とするTriNKETのヒストグラムである。未染色の細胞を蛍光シグナルについての陰性対照として使用した。未染色:黒塗り;CD20-TriNKET-F04:実線;CD20-TriNKET-C26:破線。
【0058】
図45図45A~45Cは、CD16およびNKG2Dを使用したNK細胞の相乗的活性化の棒グラフである。図45Aは、CD107aのレベルを示し、図45Bは、IFNγのレベルを示し、図45Cは、CD107aおよびIFNγのレベルを示す。グラフは平均(n=2)±SDを示す。データは、5人の異なる健康なドナーを使用した5つの独立した実験の代表的なものである。
【0059】
図46図46は、NKG2DおよびCD16を標的とするTriNKETを使用したNK細胞の活性化を示す棒グラフである。試験した抗体はヒトIgG1アイソタイプであった。グラフは平均(n=2)±SDを示す。
【0060】
図47-1】図47A~47Cは、TriNKETおよびトラスツズマブが、HER2陽性ヒト腫瘍細胞との共培養において初代ヒトNK細胞を活性化することができたことを示す棒グラフであり、CD107a脱顆粒およびIFNγサイトカイン産生の増加によって示される。モノクローナル抗体トラスツズマブと比較して、両方のTriNKETは、様々なヒトHER2がん細胞でヒトNK細胞の優れた活性化を示した。図47Aは、ヒトNK細胞が、SkBr-3細胞と培養された場合、TriNKETによって活性化されることを示す。図47Bは、ヒトNK細胞が、Colo201細胞と培養された場合、TriNKETによって活性化されることを示す。
図47-2】図47Cは、ヒトNK細胞が、HCC1954細胞と培養された場合、TriNKETによって活性化されることを示す。
【0061】
図48図48Aおよび48Bは、CD33発現ヒトAML細胞株MV4-11との共培養における休止ヒトNK細胞またはIL-2活性化ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化を示す線グラフである。図48Aは、休止ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化を示す。図48Bは、同じドナー由来のIL-2活性化ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化を示す。
【0062】
図49図49Aおよび49Bは、IL-2活性化ヒトNK細胞および休止ヒトNK細胞を使用した細胞傷害活性のTriNKET増強を示すグラフである。図49Aは、休止ヒトNK細胞によるSkBr-3腫瘍細胞の特異的溶解率(パーセント)を示す。図49Bは、IL-2活性化ヒトNK細胞によるSkBr-3腫瘍細胞の特異的溶解率(パーセント)を示す。
【0063】
図50図50Aおよび50Bは、TriNKETが、トラスツズマブと比較して、HER2が中程度のがんおよび低いがんに対してより大きな利点を提供することを示すグラフである。図50Aは、HER2高-SkBr-3腫瘍細胞の活性化ヒトNK細胞の殺傷を示す。図50Bは、HER2低-786-O腫瘍細胞のヒトNK細胞の殺傷を示す。TriNKETは、低いHER2発現を有するがん細胞に対してトラスツズマブと比較してより大きな利点を提供する。
【0064】
図51図51A~51Cは、3種のヒトAML細胞株、Molm-13細胞株(図51A)、Mv4-11細胞株(図51B)、およびTHP-1細胞株(図51C)における高親和性FcRγI(CD64)の発現を示すヒストグラムである。
【0065】
図52図52Aおよび52Bは、Molm-13細胞(図52B)またはTHP-1細胞(図52A)のいずれかとの共培養におけるヒトNK細胞のモノクローナル抗体またはTriNKET媒介活性化の線グラフである。
【0066】
図53-1】図53A~53Cは、標的として3種のヒトAML細胞株を使用したヒトNK細胞傷害性アッセイの線グラフである。図53Aは、CD64を発現するが、THP-1より低いレベルであるMv4-11細胞が、モノクローナル抗CD33で減少した効力を示したことを示す。図53Bは、CD33に対するモノクローナル抗体が、CD64を発現しないMolm-13細胞に対して良好な効力を示すことを示す。
図53-2】図53Cは、THP-1細胞が、モノクローナル抗CD33単独で効果を示さなかったことを示す。図53Cに示される線グラフの同一性は、図53Aおよび53Bにおける線グラフにも適用可能である。
【0067】
図54-1】図54Aおよび54Bは、健康なドナー由来のB細胞が、TriNKET媒介溶解に感受性があることを示す棒グラフである。
【0068】
図54-2】図54Cおよび54Dは、骨髄細胞が、TriNKET媒介溶解に対して耐性があることを示す棒グラフである。
【0069】
図55図55は、長期共培養におけるSkBr-3腫瘍細胞のTriNKET媒介hPBMC殺傷の線グラフである。
【0070】
図56図56は、RMA/S-HER2皮下SC2.2の有効性の研究デザインのフローチャートである。
【0071】
図57図57は、SC2.2が、皮下RMA/S-HER2腫瘍成長に影響を及ぼさないことを示す線グラフである。
【0072】
図58図58Aおよび58Bは、mcFAE-C26.99 TriNKETによるin vitro結合を示すグラフである。4倍希釈した60μg/mLの示した抗体を、2×10個のB16F10腫瘍細胞(図58A)またはEL4-mNKG2D細胞(図58B)に添加した。ヤギ抗マウスPE二次抗体を使用して結合を評価した後、フローサイトメトリー分析を行った。
【0073】
図59図59は、mcFAE-C26.99 TriNKETによって媒介されたNK細胞傷害性の増加を示すグラフである。
【0074】
図60図60Aおよび60Bは、B16F10 s.c.モデルにおけるmcFAE-C26.99 TriNKETの抗腫瘍効果を示す。マウスを、150μgの用量(6、8、10、12、14、16および21日目)で注射した、(図60A)アイソタイプ対照マウスIgG2a mab C1.18.4およびマウス抗Tyrp-1モノクローナル抗体または(図60B)アイソタイプ対照マウスIgG2a mab C1.18.4およびmcFAE-C26.99 TriNKETを用いて腹腔内処置した。腫瘍成長を28日間評価した。グラフは、個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す。
【0075】
図61図61Aおよび61Bは、B16F10 i.v.モデルにおけるmcFAE-C26.99 TriNKETの抗腫瘍効果を示す。図61Aは、抗体が150μg用量(4、6、8、11、13、15日目)で投与された場合の腫瘍負荷を表す。図61Bは、抗体が150μg用量(7、9、11、13、15日目)で投与された場合の腫瘍負荷を表す。腫瘍チャレンジの18日後、マウスを安楽死させ、表面肺転移をスコア化した。
【0076】
図62図62は、ヒトNK細胞が、CD20+ Raji細胞と培養された場合に、TriNKETによって活性化されることを示す棒グラフである。
【0077】
図63図63は、BCMA陽性MM.1Sヒト骨髄腫細胞との培養におけるヒトNK活性化を示す棒グラフである。
【0078】
図64図64は、TriNKETが、KMS12-PE骨髄腫細胞のヒトNK細胞溶解を増強することを示すグラフである。
【0079】
図65図65は、異なるNKG2D結合ドメインを有するBCMAを標的とするTriNKETが、KMS12-PE骨髄腫細胞のヒトNK細胞溶解を増強することを示すグラフである。
【0080】
図66図66は、1つの分子における三重特異的結合が、最大NK細胞活性にとって重要であることを示す線グラフである。
【0081】
図67図67は、Fcに融合した、標的1に結合するFabと、標的2に結合するscFabとを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体構築物である。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっている。
【0082】
図68図68は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMabである。Fab 1および2は、LCおよびHCの正確な対合を確実にする特異な(differential)S-S架橋を含有する。
【0083】
図69図69は、ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した標的1および2に結合する2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAbである。CLドメインおよびCH1ドメインと、VhドメインおよびVLドメインとが切り換わっており、例えば、CH1は、VLとインラインで融合しており、一方、CLは、VHとインラインで融合している。
【0084】
図70図70は、抗原2に結合するFabが、抗原1に結合するFabのHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Igである。この構築物は、野生型Fcを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
本発明は、がん細胞における腫瘍関連抗原ならびにナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体に結合してナチュラルキラー細胞を活性化させる多重特異性結合タンパク質、かかる多重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物、ならびに、がんの処置などのためにかかる多重特異性タンパク質および医薬組成物を使用する治療方法を提供する。本発明の様々な態様を複数のセクションに分けて以下に記述する。しかしながら、1つの特定のセクションに記載される本発明の態様は、いずれかの特定のセクションに限定されるものではない。
【0086】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を以下に定義する。
【0087】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、「1つまたは複数」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0088】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の一部分を指す。ヒト抗体において、抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチは、「フレームワーク領域」または「FR」として公知である、より保存された隣接するストレッチの間に介在している「超可変領域」と称される。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンにおける超可変領域の間におよびそれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列を指す。ヒト抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、抗原結合表面を形成するように三次元空間において互いに対して配置される。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面と相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。ラクダおよび軟骨魚類などのある特定の動物において、抗原結合部位は、「単一ドメイン抗体」を提供する単一抗体鎖によって形成される。抗原結合部位は、インタクトな抗体中、抗原結合表面を保持する抗体の抗原結合断片中、またはscFvなどの組換えポリペプチド中に存在し、ペプチドリンカーを使用して単一ポリペプチドにおいて重鎖可変ドメインを軽鎖可変ドメインに連結することができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「腫瘍関連抗原」という用語は、がんに関連するタンパク質、糖タンパク質、ガングリオシド、炭水化物、脂質を含むがこれらに限定されない、任意の抗原を意味する。このような抗原は、悪性細胞において、または腫瘍関連血管、細胞外マトリックス、間葉系間質、もしくは免疫浸潤物におけるような腫瘍微小環境中で発現され得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の方法および組成物によって処置される生物を指す。かかる生物には、好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が含まれ、より好ましくはヒトが含まれる。
【0091】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬量で投与されてもよく、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。本明細書中で使用される場合、「処置する」という用語は、何らかの効果、例えば、状態、疾患、障害などの好転をもたらす、減少、低減、モジュレート、改善もしくは除去、またはそれらの症状の改善を含む。
【0092】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、組成物を、in vivoまたはex vivoでの診断的使用または治療的使用に特に適切にする、活性剤と、不活性または活性な担体との組合せを指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水または水/油エマルションなど)、および種々の種類の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含んでもよい。担体、安定剤およびアジュバントの例に関しては、例えば、Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publ.Co.、Easton、PA[1975年]を参照されたい。
【0094】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与すると、本発明の化合物またはその活性代謝産物もしくは残留物を提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に公知であるように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導され得る。例示的な酸には、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが含まれる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体では薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に利用され得る。
【0095】
例示的な塩基には、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニアおよび式NW (式中、WはC1~4アルキルである)の化合物などが含まれる。
【0096】
例示的な塩には、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。塩の他の例には、Na、NH およびNW (式中、WはC1~4アルキル基である)などの適切なカチオンと配合された本発明の化合物のアニオンが含まれる。
【0097】
治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されると意図される。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用することができる。
【0098】
組成物が特定の成分を有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されているか、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されている説明全体にわたって、さらに、列挙された成分から本質的になる、またはそれからなる本発明の組成物が存在すること、ならびに列挙されたプロセスステップから本質的になる、またはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが意図される。
【0099】
一般的事項として、パーセンテージを特定する組成物は、特に明記しない限り、重量による。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の以前の定義が優先する。
I.タンパク質
【0100】
本発明は、がん細胞における腫瘍関連抗原ならびにナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体に結合してナチュラルキラー細胞を活性化させる多重特異性結合タンパク質を提供する。多重特異性結合タンパク質は、本明細書に記載の医薬組成物および治療方法において有用である。ナチュラルキラー細胞のNKG2D受容体およびCD16受容体に多重特異性結合タンパク質が結合すると、がん細胞の破壊を目的としたナチュラルキラー細胞の活性が増強される。がん細胞の腫瘍関連抗原に多重特異性結合タンパク質が結合すると、がん細胞がナチュラルキラー細胞に近接するため、ナチュラルキラー細胞によるがん細胞の直接的および間接的な破壊が容易になる。例示的な多重特異性結合タンパク質のさらなる記載を以下に提供する。
【0101】
多重特異性結合タンパク質の第1の構成要素は、NK細胞、γδT細胞およびCD8αβT細胞を含み得るがこれらに限定されない、NKG2D受容体発現細胞に結合する。多重特異性結合タンパク質は、NKG2Dに結合すると、ULBP6およびMICAなどの天然リガンドがNKG2Dに結合することを阻止し得る。
【0102】
多重特異性結合タンパク質の第2の構成要素は、HER2、CD20、CD33、BCMA、EpCAM、CD2、CD19、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、およびPD1を含み得るがこれらに限定されない、1つまたは複数の腫瘍関連抗原に結合する。
【0103】
多重特異性結合タンパク質の第3の構成要素は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、マスト細胞、および濾胞性樹状細胞を含む白血球の表面にあるFc受容体であるCD16を発現する細胞に結合する。
【0104】
多重特異性結合タンパク質は、以下の実施例に示されるがこれらに限定されない、いくつかのフォーマットをとることができる。1つのフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第2の免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含む、ヘテロ二量体の多重特異性抗体である。第1の免疫グロブリン重鎖は、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第1の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第1のCH1重鎖ドメインとを含む。免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。免疫グロブリン軽鎖は、第1の免疫グロブリン重鎖と一緒に、NKG2Dに結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第2の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第2のCH1重鎖ドメインとを含み、この第2のCH1重鎖ドメインは、免疫グロブリン軽鎖が第2の免疫グロブリン重鎖と対合する場合、得られる抗原結合部位が腫瘍抗原に結合することを除いて、第1の免疫グロブリン重鎖と対合するものと同一の免疫グロブリン軽鎖と対合し得る。第1のFcドメインおよび第2のFcドメインは一緒にCD16に結合することができる(図1)。
【0105】
別の例示的なフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖および第2の免疫グロブリン重鎖を含む、ヘテロ二量体の多重特異性抗体に関する。第1の免疫グロブリン重鎖は、NKG2Dに結合する一本鎖Fv(scFv)とリンカーまたは抗体ヒンジのいずれかを介して融合している、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインを含む。様々なリンカーが、scFvを第1のFcドメインに連結するか、またはscFv自体内で連結するために使用され得る。さらに、scFvは、scFv構造全体を安定化させるためにジスルフィド結合の形成を可能にする突然変異を組み込んでいてもよい。scFvはまた、第1の免疫グロブリン重鎖全体の等電点を修飾するために、および/またはより容易な下流の精製を可能にするために突然変異を組み込んでいてもよい。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第2の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第2のCH1重鎖ドメインとを含む。免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。第2の免疫グロブリン重鎖は、免疫グロブリン軽鎖と対合し、腫瘍抗原に結合する。第1のFcドメインおよび第2のFcドメインは一緒にCD16に結合することができる(図2)。
【0106】
ヘテロ二量体多重特異性タンパク質の代替のフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖と、第2の免疫グロブリン重鎖と、第1の免疫グロブリン軽鎖と、第2の免疫グロブリン軽鎖とを含む。第1の免疫グロブリン重鎖は、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第1の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第1のCH1重鎖ドメインとを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の免疫グロブリン重鎖と一緒に、腫瘍抗原に結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第2の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第2のCH1重鎖ドメインとを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。免疫グロブリン軽鎖は、第2の免疫グロブリン重鎖と一緒に、同じ腫瘍抗原に結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖は免疫グロブリン軽鎖と対合することができ、この免疫グロブリン軽鎖は、免疫グロブリン軽鎖が第2の免疫グロブリン重鎖と対合する場合、得られる抗原結合部位が腫瘍抗原に結合する第2の抗原結合部位であることを除いて、第1の免疫グロブリン重鎖と対合する免疫グロブリン軽鎖と同一であってもよい。ある特定の実施形態では、第1のFcドメインおよび第2のFcドメインは一緒にCD16に結合することができる(図1)。
【0107】
1つまたは複数のさらなる結合モチーフが、必要に応じてリンカー配列を介して、定常領域CH3ドメインのC末端に融合され得る。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、一本鎖もしくはジスルフィド安定化可変領域(ScFv)であり得るか、または四価もしくは三価の分子を形成し得る。
【0108】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、IgG様形状を維持する三機能性の二重特異性抗体である、Triomab形態である。このキメラは、2つの親抗体に由来する2つの半抗体からなり、各半抗体が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。
【0109】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)技術を用いるKiH共通軽鎖(LC)形態である。KIHは、ヘテロ二量体化を促進するために、C3ドメインを工学操作して各重鎖に「ノブ」または「ホール」のいずれかを作出することを伴う。「ノブ・イントゥ・ホール(KiH)」Fc技術の背後にある概念は、小さな残基を嵩高の残基で置換することにより、1つのCH3ドメイン(CH3A)に「ノブ」(すなわち、EU付番でT366WCH3A)を導入することであった。この「ノブ」に適応するように、他方のCH3ドメイン(CH3B)において、ノブに最も近い隣接残基をより小さな残基に置き換えること(すなわち、T366S/L368A/Y407VCH3B)により、相補的な「ホール」表面が作出された。「ホール」突然変異は、構造情報に基づくファージライブラリスクリーニング(Atwell S、Ridgway JB、Wells JA、Carter P.、Stable heterodimers from remodeling the domain interface of a homodimer using a phage display library、J Mol Biol(1997年)270巻(1号):26~35頁)によって最適化された。KiH Fc変異体のX線結晶構造(Elliott JM、Ultsch M、Lee J、Tong R、Takeda K、Spiess Cら、Antiparallel conformation of knob and hole aglycosylated half-antibody homodimers is mediated by a CH2-CH3 hydrophobic interaction. J Mol Biol(2014年)426巻(9号):1947~57頁、Mimoto F、Kadono S、Katada H、Igawa T、Kamikawa T、Hattori K. Crystal structure of a novel asymmetrically engineered Fc variant with improved affinity for FcgammaRs. Mol Immunol(2014年)58巻(1号):132~8頁)は、CH3ドメイン間のコア界面では、立体的相補性によって推進される疎水性相互作用がヘテロ二量体化に熱力学的に有利に働くが、ノブ-ノブおよびホール-ホールの界面は、それぞれ立体障害および好ましい相互作用の妨害が原因でホモ二量体化に有利に働かないことを示した。
【0110】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、自然起源の可動性リンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態におけるものである。
【0111】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、直交性Fab界面(オルト-Fab)形態におけるものである。オルト-Fab IgGアプローチ(Lewis SM、Wu X、Pustilnik A、Sereno A、Huang F、Rick HLら、Generation of bispecific IgG antibodies by structure-based design of an orthogonal Fab interface. Nat. Biotechnol.(2014年)32巻(2号):191~8頁)では、構造に基づく領域デザインにより、一方のFabにおけるLCおよびHCVH-CH1の界面にのみ相補的突然変異が導入され、他方のFabが変化することはない。
【0112】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2in1 Igフォーマットにおけるものである。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つの異なるFabを含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態におけるものである。ヘテロ二量体化は、Fcにおける静電的ステアリング突然変異によって確実になっている。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、κλ-Body形態におけるものである。抗原1を標的とするFab1はカッパLCを含有し、一方、抗原2を標的とする第2のFabはラムダLCを含有する。図13Aは、κλ-Bodyの一形態の例示的な図であり、図13Bは、別のκλ-Bodyの例示的な図である。
【0113】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fabアーム交換形態(重鎖および結合した軽鎖(半分子)を別の分子の重鎖-軽鎖対とスワップすることによりFabアームを交換した結果、二重特異性抗体となった抗体)である。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、SEED Body形態におけるものである。SEED(strand-exchange engineered domain)プラットフォームは、天然抗体の治療用途を広げる可能性がある非対称かつ二重特異性抗体様の分子を生成するためにデザインされた。このタンパク質工学操作プラットフォームは、保存されたCH3ドメインにおける免疫グロブリンの構造的に関連した配列の交換に基づく。SEEDデザインは、AGおよびGA SEED CH3ドメインのホモ二量体化を回避しつつ、AG/GAヘテロ二量体の効果的な生成を可能にする(Muda M.ら、Protein Eng. Des. Sel.(2011年、24巻(5号):447~54頁))。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーを使用する、LuZ-Y形態におけるものである(Wranik, BJ.ら、J. Biol. Chem.(2012年)、287巻:43331~9頁)。
【0114】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Cov-X-Body形態におけるものである。二重特異性CovX-Bodyでは、分枝状のアゼチジノンリンカーを使用して2つの異なるペプチドをひとつに結合させ、温和な条件下にてスキャフォールド抗体に部位特異的様式で融合させる。機能的活性に関与するのはファルマコフォアだが、抗体スキャフォールドは長い半減期およびIg様の分布をもたらす。最適化された、または独特の二重特異性抗体を生成するために、ファルマコフォアは化学的に最適化するか、または他のファルマコフォアに置き換えることができる(Doppalapudi VRら、PNAS(2010年)、107巻(52号);22611~22616頁)。
【0115】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合した、標的1に結合するFabと、標的2に結合するscFabとを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体形態におけるものである。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっている。
【0116】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMab形態におけるものである。Fab1および2は、LCおよびHCの正確な対合を確実にする特異なS-S架橋を含有する。
【0117】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した、標的1および2に結合する2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAb形態におけるものである。CLドメインおよびCH1ドメインと、VHドメインおよびVLドメインとが切り換わっており、例えば、CH1は、VLとインラインで融合しており、CLは、VHとインラインで融合している。
【0118】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原2に結合するFabが、抗原1に結合するFabのHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Ig形態におけるものである。この構築物は、野生型Fcを含有する。
【0119】
表1は、組み合わせてNKG2Dと結合することができる重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのペプチド配列を記載している。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0120】
代替的に、US9,273,136において説明されているように、配列番号69によって定義される重鎖可変ドメインを、配列番号70によって定義される軽鎖可変ドメインと対合させて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成してもよい。
【化1】
【化2】
【0121】
代替的に、US7,879,985において説明されているように、配列番号71によって定義される重鎖可変ドメインを、配列番号72によって定義される軽鎖可変ドメインと対合させて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成してもよい。
【化3】
【0122】
Fcドメイン内で、CD16結合はヒンジ領域およびCH2ドメインによって媒介される。例えば、ヒトIgG1内で、CD16との相互作用は主に、アミノ酸残基Asp265~Glu269、Asn297~Thr299、Ala327~Ile332、Leu234~Ser239、およびCH2ドメインにおける炭水化物残基N-アセチル-D-グルコサミンに焦点が当てられている(Sondermannら、Nature、406巻(6793号):267~273頁を参照されたい)。既知のドメインに基づいて、突然変異は、ファージディスプレイライブラリもしくは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリを使用することなどによって、CD16に対する結合親和性を増強もしくは低減させるように選択され得るか、または相互作用の既知の三次元構造に基づいてデザインされ得る。
【0123】
ヘテロ二量体抗体重鎖の構築は、同じ細胞内で2つの異なる抗体重鎖配列を発現させることによって達成することができ、これにより、各抗体重鎖のホモ二量体の構築およびヘテロ二量体の構築をもたらすことができる。ヘテロ二量体の選択的構築の促進は、US13/494870、US16/028850、US11/533709、US12/875015、US13/289934、US14/773418、US12/811207、US13/866756、US14/647480、US14/830336に示されているように、各抗体重鎖定常領域のCH3ドメイン内に異なる突然変異を組み込むことによって達成することができる。例えば、突然変異は、ヒトIgG1に基づき、これらの2つの鎖が互いに選択的にヘテロ二量体化することを可能にする第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド内にアミノ酸置換の異なる対を組み込んでいるCH3ドメイン内で作製され得る。以下に例示したアミノ酸置換の位置は、Kabatにおけるように、すべてEUインデックスに従って番号付けしている。
【0124】
1つの状況では、第1のポリペプチドにおけるアミノ酸置換は、元のアミノ酸を、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)またはトリプトファン(W)から選択される、より大きなアミノ酸で置換し、第2のポリペプチドにおける少なくとも1つのアミノ酸置換は、元のアミノ酸を、より大きなアミノ酸置換(突出)が、より小さなアミノ酸置換(空洞)の表面に適合するように、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、またはバリン(V)から選択される、より小さなアミノ酸で置換する。例えば、一方のポリペプチドはT366W置換を組み込むことができ、他方のポリペプチドは、T366S、L368A、およびY407Vを含む3つの置換を組み込むことができる。
【0125】
本発明の抗体重鎖可変ドメインは、必要に応じて、CH1ドメインを有するまたは有さないヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むIgG定常領域などの、抗体定常領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と連結され得る。一部の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、またはIgG4定常領域などの、ヒト抗体定常領域と少なくとも90%同一である。一部の他の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、またはウマなどの別の哺乳動物由来の抗体定常領域と少なくとも90%同一である。1つまたは複数の突然変異が、ヒトIgG1定常領域と比較して、例えば、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411および/またはK439において定常領域に組み込まれ得る。例示的な置換には、例えば、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eが含まれる。
【0126】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCH1に組み込まれ得る突然変異は、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、P171、および/またはV173であり得る。ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCκに組み込まれ得る突然変異は、アミノ酸E123、F116、S176、V163、S174、および/またはT164であり得る。
【0127】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表2にされる置換のセットから選択され得る。
【表2】
【0128】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表3に示される置換のセットから選択され得る。
【表3】
【0129】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表4に示される置換のセットから選択され得る。
【表4-1】
【表4-2】
【0130】
代替的に、各ポリペプチド鎖における少なくとも1つのアミノ酸置換は表5から選択され得る。
【表5】
【0131】
代替的に、以下の表6における置換のセットから少なくとも1つのアミノ酸置換を選択してもよく、ここで「第1のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられ、「第2のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の正に帯電したアミノ酸に置き換えられる。
【表6】
【0132】
代替的に、以下の表7におけるセットから少なくとも1つのアミノ酸置換を選択してもよく、ここで「第1のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられ、「第2のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられる。
【表7】
【0133】
代替的に、以下の表8におけるセットからアミノ酸置換を選択してもよい。
【表8】
【0134】
代替的にまたは付加的に、ヘテロ多量体タンパク質の構造安定性は、第1または第2のポリペプチド鎖のいずれかにS354Cを導入し、反対のポリペプチド鎖にY349Cを導入することによって増加させることができ、これにより、2つのポリペプチドの界面内で人工ジスルフィド架橋が形成する。
【0135】
上記の多重特異性タンパク質は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して作製され得る。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列を第1の発現ベクターにクローニングすることができ、第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を第2の発現ベクターにクローニングすることができ、免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を第3の発現ベクターにクローニングすることができ、第1、第2および第3の発現ベクターを一緒に宿主細胞に安定にトランスフェクトして多量体タンパク質を産生することができる。
【0136】
多重特異性タンパク質の最も高い収率を達成するために、第1、第2および第3の発現ベクターの異なる比率を調べて宿主細胞へのトランスフェクションのための最適比率を決定することができる。トランスフェクション後、限界希釈、ELISA、FACS、顕微鏡法、またはClonepixなどの当技術分野において公知の方法を使用して、細胞バンク生成のために単一クローンを単離することができる。
【0137】
クローンは、バイオリアクタスケールアップに適した条件下で培養することができ、多重特異性タンパク質の発現を維持することができる。多重特異性タンパク質は、遠心分離、深層濾過、細胞溶解、均質化、凍結融解、親和性精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィー、およびミックスモードクロマトグラフィーを含む、当技術分野において公知の方法を使用して単離され、精製され得る。
II.TriNKETの特徴
【0138】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載のTriNKETは、ヒトNKG2Dを発現する細胞に結合する。ある特定の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原に対する結合ドメインを含む、TriNKETは、同じ腫瘍関連抗原結合ドメインを有するモノクローナル抗体のものと比較可能なレベルで腫瘍関連抗原に結合する。例えば、トラスツズマブ由来のNKG2D結合ドメインおよびHER2結合ドメインを含むTriNKETは、トラスツズマブのものと比較可能なレベルで細胞において発現されたHER2に結合することができる。
【0139】
しかしながら、本明細書に記載のTriNKETは、腫瘍成長を低減させ、がん細胞を殺傷するのにより有効である。例えば、HER2発現腫瘍/がん細胞を標的とする本開示のTriNKETは、NKG2Dに対するリガンドである、ULBP-6に連結したトラスツズマブに由来するscFvから構築された一本鎖二重特異性分子であるSC2.2よりも効果的である。SC2.2は、HER2+がん細胞およびNKG2D+NK細胞に同時に結合する。したがって、HER2+がん細胞の数の減少におけるSC2.2の有効性を調べた。in vitro活性化および細胞傷害性アッセイにより、SC2.2がNK細胞を活性化させ、殺傷するのに有効であることが示された。しかしながら、SC2.2は、RMA/S-HER2皮下腫瘍モデルにおいて有効性を示すことができなかった。SC2.2の有効性も、RMA/S-HER2過剰発現同系マウスモデルを使用してin vivoで試験した。このマウスモデルにおいて、SC2.2は、ビヒクル対照と比較して腫瘍成長の制御を示すことができなかった。したがって、SC2.2はNK細胞を活性化させ、殺傷し、HER2+がん細胞に結合するが、これらの特性はHER2+腫瘍成長を効果的に制御するには不十分であった。
【0140】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載のTriNKETは、抗原を発現する腫瘍細胞と共に培養すると初代ヒトNK細胞を活性化させる。NK細胞の活性化は、CD107aの脱顆粒およびIFNγサイトカイン産生量の増加によって示される。さらに、腫瘍関連抗原結合ドメインを含むモノクローナル抗体と比較して、TriNKETは、抗原を発現する腫瘍細胞の存在下において、ヒトNK細胞の優れた活性化を示す。例えば、モノクローナル抗体トラスツズマブと比較して、HER2結合ドメインを有する本開示のTriNKETは、HER2発現がん細胞の存在下においてヒトNK細胞の優れた活性化を有する。
【0141】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載のTriNKETは、抗原を発現する腫瘍細胞の存在下において、休止ヒトNK細胞およびIL-2活性化ヒトNK細胞の活性を増強する。休止NK細胞は、IL-2活性化NK細胞よりも少ないバックグラウンドIFNγ産生およびCD107aの脱顆粒を示した。ある特定の実施形態では、休止NK細胞は、IL-2活性化NK細胞と比較して、IFNγ産生およびCD107aの脱顆粒においてより大きな変化を示す。ある特定の実施形態では、IL-2活性化NK細胞は、TriNKETでの刺激後、より多くのパーセンテージの細胞がIFNγ+;CD107a+になることを示す。
【0142】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載のTriNKETは、抗原を発現する腫瘍細胞の存在下において、休止ヒトNK細胞およびIL-2活性化ヒトNK細胞の細胞傷害活性を増強する。さらに、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、TriNKET(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)は、同じ腫瘍関連抗原結合部位を含むモノクローナル抗体と比較して、腫瘍細胞に対する活性化NK細胞応答および休止NK細胞応答をより強力に指向する。ある特定の実施形態では、TriNKETは、同じ腫瘍抗原結合部位を含むモノクローナル抗体と比較して、中程度および低度の腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に対する利点を提示する。したがって、TriNKETを含む治療は、モノクローナル抗体治療よりも優れている可能性がある。
【0143】
ある特定の実施形態では、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載のTriNKET(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)は、モノクローナル抗体と比較して、Fc受容体(FcR)を高発現するがん、またはFcRのレベルが高い腫瘍微小環境に存在するがんを処置するのに有利である。モノクローナル抗体は、とりわけADCC、CDC、食作用、およびシグナル遮断を含む複数の機構により、腫瘍成長に対するそれらの効果を発揮する。FcγRの中でも、CD16がIgG Fcに対して最も低い親和性を有し、FcγRI(CD64)は、CD16の約1000倍強くIgG Fcに結合する高親和性FcRである。CD64は通常、骨髄系列などの多くの造血系列で発現し、これらの細胞型に由来する腫瘍、例えば急性骨髄性白血病(AML)で発現する場合がある。MDSCおよび単球などの腫瘍に浸潤する免疫細胞もCD64を発現し、腫瘍微小環境に浸潤することが公知である。腫瘍による、または腫瘍微小環境におけるCD64の発現は、モノクローナル抗体療法に有害作用を及ぼし得る。抗体は高親和性受容体に優先的に結合するため、腫瘍微小環境でCD64が発現すると、これらの抗体がNK細胞表面上のCD16と会合することが困難になる。TriNKETは、NK細胞の表面にある2つの活性化受容体を標的とすることにより、CD64発現(腫瘍におけるものか腫瘍微小環境におけるものかを問わない)がモノクローナル抗体療法に及ぼす有害作用を克服することができる。NK細胞にある2つの活性化受容体の二重標的化により、NK細胞に対するより強い特異的結合がもたらされるため、腫瘍細胞におけるCD64発現にかかわらず、TriNKETは、あらゆる腫瘍細胞に対するヒトNK細胞応答を媒介することができる。
【0144】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載のTriNKET(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)は、オンターゲット・オフ腫瘍(on-target off-tumor)副作用の低減によって、より良好な安全性プロファイルをもたらす。ナチュラルキラー細胞およびCD8 T細胞が腫瘍細胞から正常な自己を認識する機構は異なるが、NK細胞およびCD8 T細胞はいずれも、腫瘍細胞を直接的に溶解させることができる。NK細胞の活性は、活性化受容体(NCR、NKG2D、CD16など)および阻害性受容体(KIR、NKG2Aなど)からのシグナルのバランスによって調節される。これらの活性化シグナルおよび阻害性シグナルのバランスにより、NK細胞が、ストレスを受けた自己細胞、ウイルスに感染した自己細胞、または形質転換した自己細胞から健康な自己細胞を判定することが可能になる。この「内蔵された」自己寛容機構は、正常で健康な組織をNK細胞応答から保護するのに役立つ。この原理を拡大適用すると、NK細胞の自己寛容により、TriNKETが、腫瘍外の副作用を伴わず、または治療域の増加を伴って、自己および腫瘍の両方で発現する抗原を標的とすることが可能になる。ナチュラルキラー細胞とは異なり、T細胞は、活性化およびエフェクター機能のために、MHC分子によって提示される特定のペプチドの認識を必要とする。T細胞は免疫療法の主要な標的であり、腫瘍に対するT細胞応答を再指向するために多くの方策が立てられてきた。T細胞二重特異性薬、チェックポイント阻害剤、およびCAR-T細胞はすべてFDAに承認されているが、用量制限毒性を有することが多い。T細胞二重特異性薬およびCAR-T細胞は、結合ドメインを使用して腫瘍細胞の表面にある抗原を標的とすること、および工学操作されたシグナル伝達ドメインを使用して活性化シグナルをエフェクター細胞に伝達することにより、TCR-MHC認識システムを回避する。これらの療法は、抗腫瘍免疫応答を誘発するのに効果的ではあるが、サイトカイン放出症候群(CRS)およびオンターゲット・オフ腫瘍副作用を伴うことが多い。これに関連して、TriNKETが独特であるのは、NK細胞の活性化および阻害の天然のシステムを「無効化」しないからである。むしろTriNKETは、このバランスを傾け、NKの健康な自己に対する寛容性を維持しながら、さらなる活性化シグナルをNK細胞にもたらすようにデザインされている。
【0145】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、NKG2D結合ドメイン(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)を含む本明細書に記載のTriNKETは、同じ腫瘍抗原結合ドメインを含むモノクローナル抗体より効果的に腫瘍の進行を遅延させる。一部の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍抗原結合ドメインを含むTriNKETは、同じ腫瘍抗原結合ドメインを含むモノクローナル抗体よりがん転移に対して効果的である。
【0146】
上記の説明は本発明の複数の態様および実施形態を記載している。本出願は特に、態様および実施形態のすべての組合せおよび置換を意図する。
III.治療用途
【0147】
本発明は、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)および/または本明細書に記載の医薬組成物を使用してがんを処置するための方法を提供する。方法は、固形腫瘍、リンパ腫、および白血病を含む、様々ながんを処置するために使用され得る。処置されるがんの種類は、望ましくは、多重特異性結合タンパク質が結合するがん細胞の種類と一致する。例えば、多重特異性結合タンパク質に結合する、上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現する結腸がんなどの、EpCAMを発現するがんの処置は、望ましくは、本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質を使用して処置される。治療方法のさらなる態様および実施形態を以下に記載する。
【0148】
したがって、本発明の一態様は、がんを処置するために腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本明細書に記載の治療有効量の多重特異性結合タンパク質(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)を、それを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるがんを処置する方法を提供する。処置のための例示的ながんには、固形腫瘍、白血病、およびリンパ腫が含まれる。
【0149】
治療方法は、処置されるがんによって特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、がんは固形腫瘍である。ある特定の他の実施形態では、がんは、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、白血病、肺がん、肝がん、黒色腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、胃がん、精巣がん、または子宮がんである。さらに他の実施形態では、がんは、血管新生化腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆道がん(bilary tract cancer)、甲状腺が
ん、末端黒子型黒色腫、日光角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌(adenoid cycstic carcinoma)、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管がん、肛門
がん、肛門直腸がん、星細胞系腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆管がん、骨がん、骨髄がん、気管支がん、気管支腺癌、カルチノイド、胆管細胞癌、軟骨肉腫(chondosarcoma)、脈絡叢乳頭腫(choriod plexus papilloma)/細胞腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織がん、嚢胞腺腫、消化器系がん、十二指腸がん、内分泌系がん、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼および眼窩のがん、女性性器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、胃噴門がん、胃底部がん、ガストリン産生腫瘍、神経膠芽腫、グルカゴン産生腫瘍、心臓がん、血管芽腫(hemangiblastoma)、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道がん、肝細胞癌、ホジキン病、回腸がん、インスリノーマ、上皮内新生物(intaepithelial neoplasia)、上皮間扁平細胞新生物(interepithelial squamous cell neoplasia)、肝内胆管がん、浸潤性扁平上皮癌、空腸がん、関節がん、カポジ肉腫、骨盤がん、大細胞癌、大腸がん、平滑筋肉腫、悪性黒子由来黒色腫、リンパ腫、男性生殖器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮がん、転移性癌、口がん、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉がん、鼻腔がん、神経系がん、神経上皮腺癌結節性黒色腫、非上皮性皮膚がん、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠細胞がん、口腔がん、骨肉腫、漿液性乳頭腺がん、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸がん、腎細胞癌、呼吸器系がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性細胞腫、副鼻腔がん、皮膚がん、小細胞癌、小腸がん、平滑筋がん、軟部組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎がん、扁平上皮癌、横紋筋がん、中皮下がん、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化癌、尿管がん、尿道がん、膀胱がん、泌尿器系がん、子宮頸部がん、子宮体がん、ぶどう膜黒色腫、膣がん、疣状癌、VIP産生腫瘍、外陰部がん、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0150】
ある特定の他の実施形態では、がんは、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫などのB細胞リンパ腫である。ある特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫である。
【0151】
処置されるがんは、がん細胞の表面で発現する特定の抗原の存在によって特徴付けられ得る。ある特定の実施形態では、がん細胞は、以下:HER2、CD20、CD33、BCMA、EpCAM、CD2、CD19、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、およびPD1のうちの1つまたは複数を発現する。
【0152】
ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本開示のタンパク質(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)に腫瘍またはがん細胞およびナチュラルキラー細胞を曝露することによって、腫瘍細胞死(溶解、殺傷、アブレーション、生存または細胞増殖の低減などと同義)を直接的もしくは間接的に増強する方法、または腫瘍細胞死(溶解、殺傷、アブレーション、生存または細胞増殖の低減などと同義)を直接的もしくは間接的に増強する方法に使用するための医薬の製造において使用される。上記のように、タンパク質に応答する腫瘍細胞は、タンパク質の第2の抗原結合部位が結合する腫瘍関連抗原を発現する。例えば、例示的な実施形態では、C26-TriNKET-CD20は、CD20発現腫瘍またはがん細胞(休止または活性化のいずれか)を標的とするために使用され、別の例示的な実施形態では、C26-TriNKET-BMCAは、BMCA発現腫瘍またはがん細胞(休止または活性化のいずれか)を標的とするために使用される。
【0153】
ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法、またはそれを必要とする対象におけるがんを処置する方法に使用するための医薬の製造において使用され、この方法は、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、本開示のタンパク質(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)を含むタンパク質または製剤の対象への投与を含む。上記のように、タンパク質に応答するがん細胞は、タンパク質の第2の抗原結合部位が結合する腫瘍関連抗原を発現する。例えば、例示的な実施形態では、C26-TriNKET-CD20はCD20発現がん細胞(休止または活性化のいずれか)を標的とするために使用され、別の例示的な実施形態では、C26-TriNKET-BMCAはBMCA発現腫瘍またはがん細胞(休止または活性化のいずれか)を標的とするために使用される。
IV.併用療法
【0154】
本発明の別の態様は併用療法を提供する。本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質は、がんを処置するためにさらなる治療剤と組み合わせて使用される。
【0155】
がんを処置する際の併用療法の一部として使用され得る例示的な治療剤には、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、酢酸エリプチニウム、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキンディフティトックス、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出因子、ならびにその同種受容体に対して特異な結合、および増加したまたは減少した血清半減期を示し得る上述の薬剤の変形型が含まれる。
【0156】
がんを処置する際の併用療法の一部として使用され得る薬剤のさらなるクラスは免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、(i)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、および(vii)TIM3のうちの1つまたは複数を阻害する薬剤が含まれる。CTLA4阻害剤であるイピリムマブは、黒色腫を処置するために米国食品医薬品局によって承認されている。
【0157】
がんを処置する際に併用療法の一部として使用され得るさらに他の薬剤は、非チェックポイント標的を標的とするモノクローナル抗体薬剤(例えば、ハーセプチン)および非細胞傷害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)である。
【0158】
抗がん剤のさらに他のカテゴリーには、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKおよびmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤+2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、PARP1およびDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ-II阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、ならびにWEE1阻害剤から選択される阻害剤;(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25、またはICOSのアゴニスト;ならびに(iii)IL-12、IL-15、GM-CSF、およびG-CSFから選択されるサイトカインが含まれる。
【0159】
本発明のタンパク質はまた、原発病巣の外科的除去の補助として使用され得る。
【0160】
多重特異性結合タンパク質およびさらなる治療剤の量ならびに投与の相対的タイミングは、所望の併用療法効果を達成するために選択され得る。例えば、このような投与を必要とする患者に併用療法を投与する場合、組み合わせる治療剤、または治療剤を含む1つもしくは複数の医薬組成物は、例えば、連続的に、併せて、一緒に、同時になどの任意の順序で投与され得る。さらに、例えば、多重特異性結合タンパク質は、さらなる治療剤がその予防効果または治療効果を発揮する時間の間投与されてもよく、またはその逆であってもよい。
V.医薬組成物
【0161】
本開示はまた、腫瘍関連抗原(CD20、BCMA、およびHER2を含む腫瘍関連抗原の非限定的な例)に対する結合ドメインを含む、治療有効量の本明細書に記載のタンパク質(例えば、A40-TriNKET、A44-TriNKET、A49-TriNKET、C26-TriNKET、F04-TriNKET、F43-TriNKET、F47-TriNKET、およびF63-TriNKET)を含有する医薬組成物を特徴とする。組成物は、種々の薬物送達系で使用されるように製剤化することができる。適切な製剤を作るために、1種または複数の生理学的に許容される賦形剤または担体を組成物に含めることもできる。本開示で使用される好適な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、Pa.、第17版、1985年に見出される。薬物送達のための方法に関する簡潔な概説については、例えば、Langer(Science、249巻:1527~1533頁、1990年)を参照されたい。
【0162】
本開示の静脈内薬物送達製剤は、バッグ、ペン、または注射器に含有されてもよい。ある特定の実施形態では、バッグはチューブおよび/または針を含むチャネルに接続されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤または液体製剤であってもよい。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライ(凍結乾燥)されてもよく、約12~60個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライされてもよく、45mgのフリーズドライされた製剤が1個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、約40mg~約100mgのフリーズドライされた製剤が1個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、12、27、または45個のバイアルからのフリーズドライされた製剤は、静脈内薬物製剤中に治療用量のタンパク質を得るために組み合わされてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約250mg/バイアル~約1000mg/バイアルとして保存されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約600mg/バイアルとして保存されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約250mg/バイアルとして保存されてもよい。
【0163】
本開示は、製剤を形成する緩衝溶液中に治療有効量のタンパク質を含む液体水性医薬製剤中に存在することができる。
【0164】
これらの組成物は従来の滅菌技術によって滅菌されてもよく、または濾過滅菌されてもよい。得られた水溶液はそのままで使用するためにパッケージ化されてもよく、または凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。調製物のpHは、典型的に、3から11の間、より好ましくは5から9の間または6から8の間、最も好ましくは7から8の間、例えば7~7.5である。得られた固形の組成物は複数の単回用量単位でパッケージ化されてもよく、各々は一定量の上述の1つまたは複数の薬剤を含有する。固形の組成物はまた、柔軟な量のための容器にパッケージ化されてもよい。
【0165】
ある特定の実施形態では、本開示は、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、水、および酸化ナトリウムと組み合わせて本開示のタンパク質を含む、延長された貯蔵寿命を有する製剤を提供する。
【0166】
ある特定の実施形態では、pH緩衝溶液中に本開示のタンパク質を含む水性製剤が調製される。本発明の緩衝液は、約4~約8、例えば、約4.5~約6.0、もしくは約4.8~約5.5の範囲のpHを有してもよく、または約5.0~約5.2のpHを有してもよい。上記に列挙したpHの中間の範囲も、本開示の一部であることが意図される。例えば、上限および/または下限として上記に列挙した値のいずれかの組合せを使用する値の範囲が含まれることが意図される。pHをこの範囲内に制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸緩衝液が含まれる。
【0167】
ある特定の実施形態では、製剤は、pHを約4~約8の範囲に維持するためにクエン酸塩およびリン酸塩を含有する緩衝系を含む。ある特定の実施形態では、pHの範囲は、約4.5~約6.0、または約pH4.8~約5.5、または約5.0~約5.2のpH範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、緩衝系には、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、および/またはリン酸二水素ナトリウム二水和物が含まれる。ある特定の実施形態では、緩衝系は、約1.3mg/mlのクエン酸(例えば、1.305mg/ml)、約0.3mg/mlのクエン酸ナトリウム(例えば、0.305mg/ml)、約1.5mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば、1.53mg/ml)、約0.9mg/mlのリン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば、0.86)、および約6.2mg/mlの塩化ナトリウム(例えば、6.165mg/ml)を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系は、1~1.5mg/mlのクエン酸、0.25~0.5mg/mlのクエン酸ナトリウム、1.25~1.75mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、0.7~1.1mg/mlのリン酸二水素ナトリウム二水和物、および6.0~6.4mg/mlの塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態では、製剤のpHは水酸化ナトリウムを用いて調整される。
【0168】
トニシファイヤー(tonicifier)として作用し、抗体を安定化させることができるポリオールも、製剤に含めることができる。ポリオールは、製剤の所望の等張性に関して変化し得る量で製剤に添加される。ある特定の実施形態では、水性製剤は等張性であってもよい。添加されるポリオールの量も、ポリオールの分子量に関して変化し得る。例えば、二糖(トレハロースなど)と比較して、少量の単糖(例えば、マンニトール)が添加されてもよい。ある特定の実施形態では、等張化剤として製剤に使用され得るポリオールはマンニトールである。ある特定の実施形態では、マンニトール濃度は約5~約20mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約7.5~15mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約10~14mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約12mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、ポリオールソルビトールを製剤に含めることができる。
【0169】
洗剤または界面活性剤もまた、製剤に添加してもよい。例示的な洗剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)またはポロクサマー(例えば、ポロクサマー188)などの非イオン性洗剤が挙げられる。添加される洗剤の量は、製剤化された抗体の凝集を低減させ、かつ/または製剤中の微粒子の形成を最低限に抑え、かつ/または吸着を低減させるようなものである。ある特定の実施形態では、製剤は、ポリソルベートである界面活性剤を含み得る。ある特定の実施形態では、製剤は、洗剤のポリソルベート80またはTween 80を含有し得る。Tween 80は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを表すために使用される用語である(Fiedler、Lexikon der Hifsstoffe、Editio Cantor Verlag Aulendorf、第4版、1996年を参照されたい)。ある特定の実施形態では、製剤は、約0.1mg/mLから約10mg/mLの間のポリソルベート80、または約0.5mg/mLから約5mg/mLの間を含有し得る。ある特定の実施形態では、約0.1%のポリソルベート80が製剤に添加され得る。
【0170】
実施形態では、本開示のタンパク質産物は、液体製剤として製剤化される。液体製剤は、ゴム栓で閉じ、アルミニウムクリンプシールクロージャで密封した、USP/Ph EurいずれかのタイプI 50Rバイアルにおいて、10mg/mLの濃度で提供され得る。栓は、USPおよびPh Eurに準拠したエラストマーで作られていてもよい。ある特定の実施形態では、60mLの採取容量を可能にするために、バイアルに61.2mLのタンパク質産物溶液が充填され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、0.9%の生理食塩水で希釈され得る。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、安定化レベルで糖と組み合わせた10mg/mL濃度溶液として調製され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は水性担体中で調製され得る。ある特定の実施形態では、安定剤は、静脈内投与に望ましくないまたは不適切な粘度をもたらし得る量以下の量で添加され得る。ある特定の実施形態では、糖は、二糖、例えば、スクロースであり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、および保存剤のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0172】
ある特定の実施形態では、液体製剤のpHは薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0173】
凝集に加えて、脱アミドは、発酵、採取/細胞清澄化、精製、薬物物質/薬物製品貯蔵の間および試料分析の間に発生し得るペプチドおよびタンパク質の一般的な産物のバリアントである。脱アミドは、加水分解を受け得るスクシンイミド中間体を形成するタンパク質からのNHの喪失である。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17ダルトンの質量減少をもたらす。その後の加水分解は、18ダルトンの質量増加をもたらす。スクシンイミド中間体の単離は、水性条件下での不安定性に起因して困難である。したがって、脱アミドは、典型的に1ダルトンの質量増加として検出可能である。アスパラギンの脱アミドは、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかを生じる。脱アミドの速度に影響を及ぼすパラメータには、pH、温度、溶媒誘電率、イオン強度、一次配列、局所ポリペプチド立体配座および三次構造が含まれる。ペプチド鎖におけるAsnに隣接するアミノ酸残基は、脱アミド化速度に影響を及ぼす。タンパク質配列におけるAsnに続くGlyおよびSerは、脱アミドに対してより高い感受性を生じる。
【0174】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、タンパク質産物の脱アミノを阻止するためのpHおよび湿度の条件下で保存され得る。
【0175】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ無毒であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0176】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0177】
静脈内(IV)製剤は、患者が、移植後に入院しており、IV経路を介してすべての薬物を受けている場合などの特定の場合に好ましい投与経路であり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、投与前に0.9%の塩化ナトリウム溶液により希釈される。ある特定の実施形態では、注射のための希釈された薬物製品は等張であり、静脈内注入による投与に適している。
【0178】
ある特定の実施形態では、塩または緩衝成分は10mM~200mMの量で添加することができる。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミンを用いて種々の公知の酸(無機および有機)から誘導される。ある特定の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液であってもよく、これらの場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0179】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0180】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ無毒であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0181】
本開示は、タンパク質およびリオプロテクタントを含む凍結乾燥製剤として存在することもできる。リオプロテクタントは糖、例えば二糖であり得る。ある特定の実施形態では、リオプロテクタント(lycoprotectant)は、スクロースまたはマルトースであり得る。凍結乾燥製剤は、緩衝剤、界面活性剤、増量剤、および/または保存剤のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0182】
凍結乾燥された薬物製品の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、少なくとも1:2のタンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比であり得る。ある特定の実施形態では、タンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比は1:2~1:5であり得る。
【0183】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥前の製剤のpHは、薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0184】
凍結乾燥前に、本開示のタンパク質を含有する溶液のpHは6から8の間に調整され得る。ある特定の実施形態では、凍結乾燥した薬物製品についてのpH範囲は7~8であり得る。
【0185】
ある特定の実施形態では、塩または緩衝成分は10mM~200mMの量で添加することができる。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミンを用いて種々の公知の酸(無機および有機)から誘導される。ある特定の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液であってもよく、これらの場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0186】
ある特定の実施形態では、「増量剤」を添加することができる。「増量剤」は、凍結乾燥混合物に質量を付加し、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開放気孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)化合物である。例示的な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが含まれる。本発明の凍結乾燥製剤はこのような増量剤を含有し得る。
【0187】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0188】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥薬物製品は水性担体で構成され得る。本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(例えば、ヒトへの投与に安全かつ無毒であり)、凍結乾燥後、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な希釈剤には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0189】
ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥薬物製品は、注射用滅菌水、USP(SWFI)または0.9%の塩化ナトリウム注射液、USPのいずれかで再構成される。再構成の間、凍結乾燥粉末は溶液に溶解する。
【0190】
ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥タンパク質製品は、約4.5mLの注射用水に構成され、0.9%の生理食塩水溶液(塩化ナトリウム溶液)により希釈される。
【0191】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に毒性を生じず、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように変化し得る。
【0192】
特定の用量は、各患者に対して均一な用量、例えば、50~5000mgのタンパク質であってもよい。代替的に、患者の用量は、患者のおおよその体重または表面積に合わせられ得る。適切な投薬量を決定する際の他の要因には、処置または予防される疾患または状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別および医学的状態が含まれ得る。処置のための適切な投薬量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に、本明細書に開示される投薬量情報およびアッセイを考慮して当業者によって慣用的になされる。投薬量はまた、適切な用量応答データと併せて使用される投薬量を決定するための公知のアッセイの使用によって決定することができる。個々の患者の投薬量は、疾患の進行がモニターされるにつれて調節されてもよい。患者における標的化可能な構築物または複合物の血中レベルは、有効濃度に達するか、または有効濃度を維持するように投薬量が調節される必要があるかどうかを調べるために測定され得る。どの標的化可能な構築物および/または複合物、ならびにそれらの投薬量が、所与の個体に対して効果的である可能性が高いかを決定するために薬理ゲノム学が使用され得る(Schmitzら、Clinica Chimica Acta 308巻:43~53頁、2001年;Steimerら、Clinica Chimica Acta 308巻:33~41頁、2001年)。
【0193】
一般に、体重に基づく投薬量は、約0.01μg~約100mg/kg体重、例えば、約0.01μg~約100mg/kg体重、約0.01μg~約50mg/kg体重、約0.01μg~約10mg/kg体重、約0.01μg~約1mg/kg体重、約0.01μg~約100μg/kg体重、約0.01μg~約50μg/kg体重、約0.01μg~約10μg/kg体重、約0.01μg~約1μg/kg体重、約0.01μg~約0.1μg/kg体重、約0.1μg~約100mg/kg体重、約0.1μg~約50mg/kg体重、約0.1μg~約10mg/kg体重、約0.1μg~約1mg/kg体重、約0.1μg~約100μg/kg体重、約0.1μg~約10μg/kg体重、約0.1μg~約1μg/kg体重、約1μg~約100mg/kg体重、約1μg~約50mg/kg体重、約1μg~約10mg/kg体重、約1μg~約1mg/kg体重、約1μg~約100μg/kg体重、約1μg~約50μg/kg体重、約1μg~約10μg/kg体重、約10μg~約100mg/kg体重、約10μg~約50mg/kg体重、約10μg~約10mg/kg体重、約10μg~約1mg/kg体重、約10μg~約100μg/kg体重、約10μg~約50μg/kg体重、約50μg~約100mg/kg体重、約50μg~約50mg/kg体重、約50μg~約10mg/kg体重、約50μg~約1mg/kg体重、約50μg~約100μg/kg体重、約100μg~約100mg/kg体重、約100μg~約50mg/kg体重、約100μg~約10mg/kg体重、約100μg~約1mg/kg体重、約1mg~約100mg/kg体重、約1mg~約50mg/kg体重、約1mg~約10mg/kg体重、約10mg~約100mg/kg体重、約10mg~約50mg/kg体重、約50mg~約100mg/kg体重である。
【0194】
用量は、1日に1回もしくは複数回、1週間に1回もしくは複数回、1ヶ月に1回もしくは複数回または1年に1回もしくは複数回、またはさらに2~20年に1回与えられ得る。当業者は、体液または組織中の標的化可能な構築物または複合体の測定された滞留時間および濃度に基づいて投薬のための反復率を容易に推定することができる。本発明の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内であってもよく、カテーテルを介する潅流によってでもよく、または直接的な病巣内注射によってでもよい。これは、1日に1回または複数回、1週間に1回または複数回、1ヶ月に1回または複数回、および1年に1回または複数回、投与され得る。
【0195】
上記の説明は本発明の複数の態様および実施形態を記載している。本出願は特に、態様および実施形態のすべての組合せおよび置換を意図する。
【実施例0196】
ここで概して記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、これらの実施例は本発明のある特定の態様および実施形態の例示の目的のためにのみ含まれ、本発明を限定することを意図していない。
(実施例1)
NKG2D結合ドメインはNKG2Dに結合する
NKG2D結合ドメインは精製した組換えNKG2Dに結合する
【0197】
ヒト、マウスまたはカニクイザルNKG2D細胞外ドメインの核酸配列を、ヒトIgG1 Fcドメインをコードする核酸配列と融合させ、発現させる哺乳動物細胞に導入した。精製後、NKG2D-Fc融合タンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させた。非特異的結合を防ぐためにウシ血清アルブミンでウェルを阻止した後、NKG2D結合ドメインを滴定し、NKG2D-Fc融合タンパク質を予め吸着させたウェルに添加した。一次抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートし、Fc交差反応を回避するためにヒトカッパ軽鎖を特異的に認識する二次抗体を使用して検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼに対する基質である3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)をウェルに添加して結合シグナルを可視化し、その吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。NKG2D結合ドメインクローン、アイソタイプ対照または陽性対照(配列番号45~48、またはeBioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択した)を各ウェルに添加した。
【0198】
アイソタイプ対照は組換えNKG2D-Fcタンパク質に対してわずかな結合を示したが、陽性対照が組換え抗原に対して最も強く結合した。クローン毎に親和性は異なったが、すべてのクローンによって産生されたNKG2D結合ドメインが、ヒト(図14)、マウス(図16)、およびカニクイザル(図15)の組換えNKG2D-Fcタンパク質のすべてで結合を示した。概して、各抗NKG2Dクローンは、ヒト(図14)およびカニクイザル(図15)の組換えNKG2D-Fcに同様の親和性で結合したが、マウス(図16)の組換えNKG2D-Fcに対する親和性は比較的低かった。
NKG2D結合ドメインはNKG2Dを発現する細胞に結合する
【0199】
EL4マウスリンパ腫細胞株を、ヒトまたはマウスのNKG2D-CD3ゼータシグナル伝達ドメインキメラ抗原受容体を発現するように工学操作した。NKG2D結合クローン、アイソタイプ対照または陽性対照を100nM濃度にて使用して、EL4細胞において発現した細胞外NKG2Dを染色した。フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して抗体結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、親EL4細胞と比較したNKG2D発現細胞の平均蛍光強度(MFI)を使用してバックグラウンドに対する倍率(FOB)を計算した。
【0200】
すべてのクローンによって産生されたNKG2D結合ドメインが、ヒトおよびマウスのNKG2Dを発現するEL4細胞に結合した。陽性対照抗体(配列番号45~48、またはeBioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択される)が最も良好なFOB結合シグナルをもたらした。各クローンのNKG2D結合親和性は、ヒトNKG2Dを発現する細胞(図17)とマウスNKG2Dを発現する細胞(図18)との間で同様であった(それぞれ図17~18)。
(実施例2)
NKG2D結合ドメインはNKG2Dへの天然リガンドの結合を阻止する
ULBP-6との競合
【0201】
組換えヒトNKG2D-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウシ血清アルブミンでウェルを阻止した。飽和濃度のULBP-6-His-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインクローンを添加した。2時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、NKG2D-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったULBP-6-His-ビオチンを、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびTMB基質とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、ウェル中のNKG2D-Fcタンパク質への結合を阻止されたULBP-6-His-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号45~48から選択される)および種々のNKG2D結合ドメインは、NKG2DへのULBP-6結合を阻止したが、アイソタイプ対照はULBP-6との競合をほとんど示さなかった(図19)。
MICAとの競合
【0202】
組換えヒトMICA-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウシ血清アルブミンでウェルを阻止した。NKG2D-Fc-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインを添加した。インキュベーションおよび洗浄後、MICA-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったNKG2D-Fc-ビオチンを、ストレプトアビジン-HRPおよびTMB基質を使用して検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、MICA-Fcでコーティングされたウェルへの結合を阻止されたNKG2D-Fc-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号45~48から選択される)および種々のNKG2D結合ドメインはNKG2DへのMICA結合を阻止したが、アイソタイプ対照はMICAとの競合をほとんど示さなかった(図20)。
Rae-1デルタとの競合
【0203】
組換えマウスRae-1デルタ-Fc(R&D Systemsから購入した)をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウェルをウシ血清アルブミンで阻止した。マウスNKG2D-Fc-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインを添加した。インキュベーションおよび洗浄後、Rae-1デルタ-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったNKG2D-Fc-ビオチンを、ストレプトアビジン-HRPおよびTMB基質を使用して検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、Rae-1デルタ-Fcでコーティングされたウェルへの結合を阻止されたNKG2D-Fc-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号45~48、またはeBioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択される)および種々のNKG2D-結合ドメインクローンはマウスNKG2DへのRae-1デルタ結合を阻止したが、アイソタイプ対照抗体はRae-1デルタとの競合をほとんど示さなかった(図21)。
(実施例3)
NKG2D結合ドメインクローンはNKG2Dを活性化させる
【0204】
CD3ゼータシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列に、ヒトおよびマウスNKG2Dの核酸配列を融合させて、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を得た。次に、ギブソンアセンブリを使用してNKG2D-CAR構築物をレトロウイルスベクターにクローニングし、レトロウイルス産生のためにexpi293細胞にトランスフェクトした。8μg/mLのポリブレンと共にNKG2D-CARを含有するウイルスにEL4細胞を感染させた。感染の24時間後、EL4細胞中のNKG2D-CARの発現レベルをフローサイトメトリーによって分析し、細胞表面で高レベルのNKG2D-CARを発現するクローンを選択した。
【0205】
NKG2D結合ドメインがNKG2Dを活性化させるかどうかを判定するために、それらをマイクロプレートのウェルに吸着させ、抗体断片でコーティングされたウェルにおいてNKG2D-CAR EL4細胞をブレフェルジン-Aおよびモネンシンの存在下で4時間にわたって培養した。NKG2D活性化の指標である細胞内TNF-アルファ産生をフローサイトメトリーによってアッセイした。陽性対照で処置した細胞に対してTNF-アルファ陽性細胞のパーセンテージを正規化した。すべてのNKG2D結合ドメインがヒトNKG2D(図22)およびマウスNKG2D(図23)の両方を活性化させた。
(実施例4)
NKG2D結合ドメインはNK細胞を活性化させる
初代ヒトNK細胞
【0206】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細胞(CD3CD56)を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>95%であった。次に、単離されたNK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で24~48時間にわたって培養した後、それらを、NKG2D結合ドメインを吸着させたマイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジュゲート抗CD107a抗体、ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中で培養した。培養後、CD3、CD56、およびIFN-ガンマに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3CD56細胞におけるCD107aおよびIFN-ガンマの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した。CD107a/IFN-ガンマ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体の会合による、より良好なNK細胞の活性化を示す。NKG2D結合ドメインおよび陽性対照(配列番号45~48から選択される)は、アイソタイプ対照よりも高いパーセンテージのNK細胞がCD107aおよびIFN-ガンマになることを示した(図24および図25は、NK細胞の調製のために異なるドナーのPBMCをそれぞれ使用した、2つの独立した実験を表す)。
初代マウスNK細胞
【0207】
C57Bl/6マウスから脾臓を得、70μmのセルストレイナーを通して押しつぶして、単一細胞懸濁液を得た。細胞をペレット化し、ACK溶解緩衝液(Thermo Fisher Scientificから購入した、#A1049201;155mM塩化アンモニウム、10mM炭酸水素カリウム、0.01mM EDTA)に再懸濁して赤血球を除去した。残りの細胞を100ng/mLのhIL-2と共に72時間にわたって培養し、その後採取し、NK細胞単離の準備をした。次に、磁気ビーズを用いたネガティブディプリーション技術を使用し、典型的には>90%の純度で脾臓細胞からNK細胞(CD3NK1.1)を単離した。精製されたNK細胞を、100ng/mLのmIL-15を含有する培地中で48時間にわたって培養した後、NKG2D結合ドメインを吸着させたマイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジュゲート抗CD107a抗体、ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中で培養した。NKG2D結合ドメインでコーティングされたウェルにおいて培養した後、CD3、NK1.1、およびIFN-ガンマに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3NK1.1細胞におけるCD107aおよびIFN-ガンマの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した。CD107a/IFN-ガンマ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体の会合による、より良好なNK細胞の活性化を示す。NKG2D結合ドメインおよび陽性対照(eBioscienceから入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択される)は、アイソタイプ対照よりも高いパーセンテージのNK細胞がCD107aおよびIFN-ガンマになることを示した(図26および図27は、NK細胞の調製のために異なるマウスをそれぞれ使用した、2つの独立した実験を表す)。
(実施例5)
NKG2D結合ドメインは標的腫瘍細胞の細胞傷害性を可能にする
【0208】
ヒトおよびマウス初代NK細胞活性化アッセイは、NKG2D結合ドメインとのインキュベーション後、NK細胞にある増加した細胞傷害性マーカーを示す。これが腫瘍細胞溶解の増加につながるかどうかに対処するために、各NKG2D結合ドメインが単一特異的抗体になる細胞ベースのアッセイを利用した。Fc領域を1つの標的化アームとして使用し、一方、Fab領域(NKG2D結合ドメイン)はNK細胞を活性化するための別の標的化アームとして作用した。ヒト起源であり、高レベルのFc受容体を発現するTHP-1細胞を腫瘍標的として使用し、Perkin Elmer DELFIA細胞傷害性キットを使用した。THP-1細胞をBATDA試薬で標識化し、10/mLにて培養培地に再懸濁した。次に、標識化したTHP-1細胞をNKG2D抗体と合わせ、マイクロタイタープレートのウェル中で37℃にて3時間、マウスNK細胞を単離した。インキュベーション後、20μlの培養上清を取り出し、200μlのユーロピウム溶液と混合し、暗所で15分間振盪しながらインキュベートした。時間分解蛍光モジュール(励起337nm、発光620nm)を備えたPheraStarプレートリーダーによって蛍光を経時的に測定し、キットの説明書に従って特異的溶解率を計算した。
【0209】
NKG2Dに対する天然リガンドである陽性対照のULBP-6は、マウスNK細胞によるTHP-1標的細胞の特異的溶解率の増加を示した。NKG2D抗体も、THP-1標的細胞の特異的溶解率を増加させたが、アイソタイプ対照抗体は特異的溶解率の低減を示した。点線は、抗体を添加していないマウスNK細胞によるTHP-1細胞の特異的溶解率を示す(図28)。
(実施例6)
NKG2D抗体は高い熱安定性を示す
【0210】
NKG2D結合ドメインの融解温度を、示差走査型蛍光定量法を使用してアッセイした。外挿した見かけの融解温度は典型的なIgG1抗体と比較して高い(図29)。
(実施例7)
多重特異性結合タンパク質はNK細胞を活性化させる能力の増強を示す
【0211】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細胞(CD3CD56)を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>95%であった。次に、単離されたNK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で24~48時間にわたって培養した後、それらを、多重特異性および二重特異性結合タンパク質をそれぞれ吸着させたマイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジュゲート抗CD107a抗体、ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中で培養した。培養後、CD3、CD56、およびIFN-ガンマに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3CD56細胞におけるCD107aおよびIFN-ガンマの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した。CD107a/IFN-ガンマ二重陽性細胞の増加は、より良好なNK細胞の活性化を示す。AL2.2は、HER2結合ドメイン(トラスツズマブ)、NKG2D結合ドメイン(ULBP-6)およびヒトIgG1 Fcドメインを含有する多重特異性結合タンパク質である。それは、トラスツズマブホモ二量体およびULBP-6-Fcホモ二量体から開始する、制御されたFabアーム交換反応(cFAE)によって作製した(Labrijnら、Nature Protocols 9巻、2450~2463頁を参照されたい)。SC2.2は、トラスツズマブに由来するscFv、およびULBP-6(配列番号73)を含む一本鎖タンパク質である。
【化4】
【0212】
CD107aおよびIFN-ガンマ染色の分析により、アイソタイプ対照IgGはNK細胞の活性化を示さなかったが、多重特異性結合タンパク質での刺激後、二重特異性タンパク質と比較して、より高いパーセンテージのNK細胞がCD107aおよびIFNガンマになることが示され、ただ1つ(NKG2D)よりもむしろ2つの活性化受容体(NKG2DおよびCD16)の会合による、より強力なNK細胞の活性化が示された(図30)。NK細胞活性化のこの増加は、より強力な腫瘍細胞殺傷につながると予想される。
(実施例8)
多重特異性結合タンパク質は標的腫瘍細胞に対して増強した細胞傷害性を示す
初代ヒトNK細胞傷害性アッセイ
【0213】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細胞(CD3CD56)を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>95%であった。次に、NK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で一晩培養し、その後、細胞傷害性アッセイに使用した。翌日、NK細胞を5×10/mLにて新鮮な培養培地に再懸濁した。ヒト乳がん細胞SkBr-3細胞を、Perkin Elmer DELFIA細胞傷害性キットに従ってBATDA試薬で標識化し、5×10/mLにて培養培地に再懸濁した。多重特異性結合タンパク質の種々の希釈を培養培地中で行った。次に、NK細胞、標識化したSkBr-3細胞および多重特異性結合タンパク質をマイクロタイタープレートのウェル内で合わせ、37℃にて3時間インキュベートした。インキュベーション後、20μlの培養上清を取り出し、200μlのユーロピウム溶液と混合し、暗所で15分間振盪しながらインキュベートした。時間分解蛍光モジュール(励起337nm、発光620nm)を備えたPheraStarプレートリーダーによって蛍光を経時的に測定し、キットの説明書に従って特異的溶解率を計算した。AL0.2は、HER2結合ドメイン(トラスツズマブ)、NKG2D結合ドメイン(配列番号1~44から選択される))およびヒトIgG1 Fcドメインを含有する多重特異性結合タンパク質である。それは、トラスツズマブホモ二量体および抗NKG2Dホモ二量体から開始する、制御されたFabアーム交換反応(cFAE)によって作製した。AL0.2siはAL0.2に基づき、CD16結合を無効にするFcドメイン内のさらなるD265A突然変異を含有する。トラスツズマブ-siはトラスツズマブに基づき、CD16結合を無効にするFcドメイン内のさらなるD265A突然変異を含有する。AL2.2は、HER2結合ドメイン(トラスツズマブ)、NKG2D結合ドメイン(ULBP-6)およびヒトIgG1 Fcドメインを含有する多重特異性結合タンパク質である。SC2.2は、トラスツズマブに由来するscFv、およびULBP-6を含む一本鎖タンパク質である。
【0214】
AL0.2は、用量依存的にトラスツズマブよりヒトNK細胞によるSkBr-3標的細胞の増強した溶解を示し、EC50において0.0311のp値であった(図31)。AL0.2si(図32)およびトラスツズマブ-si(図33)は、AL0.2と比較してSkBr-3細胞の効力および最大特異的溶解率の両方の低減を示し、それぞれEC50において0.0002、および0.0001のp値であった(図32~33)。さらに、AL0.2は、用量依存的にAL2.2よりSkBr-3細胞の増強した溶解を示した(図34)。アイソタイプ対照IgGは、試験した濃度のいずれにおいても特異的溶解率の増加を示さなかった。データを合わせると、NK細胞における2つの活性化受容体および1つの腫瘍抗原と会合する多重特異性結合タンパク質は、NK細胞における1つの活性化受容体および1つの腫瘍抗原と会合する二重特異性タンパク質と比較して、ヒトNK細胞による腫瘍細胞のより強力な殺傷を誘導することが示された。
初代マウスNK細胞の細胞傷害性アッセイ
【0215】
C57Bl/6マウスから脾臓を得、70μmのセルストレイナーを通して押しつぶして、単一細胞懸濁液を得た。細胞をペレット化し、ACK溶解緩衝液(Thermo Fisher Scientificから購入した、#A1049201;155mM塩化アンモニウム、10mM炭酸水素カリウム、0.01mM EDTA)に再懸濁して赤血球を除去した。残りの細胞を100ng/mLのhIL-2と共に72時間にわたって培養し、その後採取し、NK細胞単離の準備をした。次に、磁気ビーズを用いたネガティブディプリーション技術を使用し、典型的には>90%の純度で脾臓細胞からNK細胞(CD3NK1.1)を単離した。精製されたNK細胞を、100ng/mLのmIL-15を含有する培地中で48時間にわたって培養した後、細胞傷害性アッセイのために10/mLにて培養培地に再懸濁した。HER2およびdTomatoを発現するように工学操作されたマウス腫瘍細胞株であるRMA-HER2-dTomato、ならびにその対照対応物である、zsGreenを発現するRMA細胞を標的として使用した。それらを2×10/mLにて培養培地に再懸濁し、1:1の比にてマイクロプレートのウェルに播種した。多重特異性タンパク質の希釈を培養培地中で行い、NK細胞と共にRMA細胞に添加した。37℃にて5%COでの一晩のインキュベーション後、RMA-HER2-dTomatoおよびRMA-zsGreen細胞のパーセンテージを、蛍光レポータを使用するフローサイトメトリーによって決定して2つの細胞型を同定した。特異的標的細胞死=(1-((処置群におけるRMA-Ca2T-dTomato細胞の%対照群におけるRMA-zsGreen細胞の%)/(対照群におけるRMA-Ca2T-dTomato細胞の%処置群におけるRMA-zsGreen細胞の%)))100%。
【0216】
AL2.2は、SC2.2(図36)およびトラスツズマブ(図35)よりも腫瘍標的に対するNK細胞応答の再指向においてより強力である。対照タンパク質は、特異的標的死にほとんど影響を与えないことが示された。これらのデータは、NK細胞における2つの活性化受容体および1つの腫瘍抗原と会合する多重特異性結合タンパク質が、NK細胞における1つの活性化受容体および1つの腫瘍抗原と会合する二重特異性タンパク質と比較して、マウスNK細胞による腫瘍細胞のより強力な殺傷を誘導することを示す。
(実施例9)
多重特異性結合タンパク質はNKG2Dに結合する
【0217】
図1に示すように、NKG2D結合ドメイン、腫瘍関連抗原結合ドメイン(CD33結合ドメイン、HER2結合ドメイン、CD20結合ドメイン、またはBCMA結合ドメインなど)、およびCD16に結合するFcドメインを各々含有するヒトNKG2D三重特異性結合タンパク質(TriNKET)を発現するように、EL4マウスリンパ腫細胞株を工学操作し、EL4細胞において発現した細胞外NKG2Dに対するそれらの親和性について試験した。NKG2Dへの多重特異性結合タンパク質の結合を、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、親EL4細胞と比較したNKG2D発現細胞の平均蛍光強度(MFI)を使用してバックグラウンドに対する倍率(FOB)を計算した。
【0218】
試験したTriNKETには、CD33-TriNKET-C26(ADI-28226およびCD33結合ドメイン)、CD33-TriNKET-F04(ADI-29404およびCD33結合ドメイン)、HER2-TriNKET-C26(ADI-28226およびHER2結合ドメイン)、HER2-TriNKET-F04(ADI-29404およびHER2結合ドメイン)、CD20-TriNKET-C26(ADI-28226およびCD20結合ドメイン)、CD20-TriNKET-F04(ADI-29404およびCD20結合ドメイン)、BCMA-TriNKET-C26(ADI-28226およびBCMA結合ドメイン)、BCMA-TriNKET-F04(ADI-29404およびBCMA結合ドメイン)、BCMA-TriNKET-F43(ADI-29443およびBCMA結合ドメイン)、およびBCMA-TriNKET-F47(ADI-29447およびBCMA結合ドメイン)が含まれる。試験した分子に使用したHER2結合ドメインは、トラスツズマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成された。CD33結合ドメインは、以下に列記した重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成された。
【化5】
試験した分子に使用したCD20結合ドメインは、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成された。試験した分子に使用したBCMA結合ドメインは、以下に列記したように重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成された。
EM-801重鎖可変ドメイン(配列番号82):
【化6】
EM-801軽鎖可変ドメイン(配列番号83):
【化7】
EM-901重鎖可変ドメイン(配列番号76)
【化8】
EM-901軽鎖可変ドメイン(配列番号77)
【化9】
【0219】
データは、タンパク質がCD33、HER2、CD20、およびBCMAなどの腫瘍抗原結合ドメインを含む場合、本開示のTriNKETがNKG2Dに結合することを示す。
(実施例10)
多重特異性結合タンパク質はヒト腫瘍抗原に結合する
三重特異性結合タンパク質はCD33、HER2、CD20およびBCMAに結合する
【0220】
CD33を発現するヒトAML細胞株MV4-11を使用して、腫瘍関連抗原へのTriNKETの結合をアッセイした。TriNKETおよび親抗CD33モノクローナル抗体を細胞とインキュベートし、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、バックグラウンドに対する倍率(FOB)を、二次抗体対照に対して正規化したTriNKETおよび親モノクローナル抗CD33抗体からの平均蛍光強度(MFI)を使用して計算した。CD33-TriNKET-C26、およびCD33-TriNKET-F04は、親抗CD33抗体と比較してCD33への結合の同等のレベルを示す(図41)。
【0221】
HER2を発現するヒトがん細胞株を使用して、腫瘍関連抗原へのTriNKETの結合をアッセイした。腎細胞癌細胞株786-Oは低レベルのHER2を発現する。TriNKETおよび必要に応じて親抗HER2モノクローナル抗体(トラスツズマブ)を細胞とインキュベートし、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、バックグラウンドに対する倍率(FOB)を、二次抗体対照に対して正規化したTriNKETおよびトラスツズマブからの平均蛍光強度(MFI)を使用して計算した。HER2-TriNKET-C26、およびHER2-TriNKET-F04は、トラスツズマブと比較して786-O細胞において発現したHER2への結合の同等のレベルを示す(図42)。
【0222】
BCMAを発現するMM.1Sヒト骨髄腫細胞を使用して、腫瘍関連抗原BCMAへのTriNKETの結合をアッセイした。TriNKETおよび必要に応じて親抗BCMAモノクローナル抗体(EM-801)を細胞とインキュベートし、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、バックグラウンドに対する倍率(FOB)を、二次抗体対照に対して正規化したTriNKETおよびEM-801からの平均蛍光強度(MFI)を使用して計算した。C26--TriNKET-BCMA、F04-TriNKET-BCMA、F43-TriNKET-BCMA、およびF47-TriNKET-BCMAは、EM-801と比較してMM.1S細胞において発現したBCMAへの結合の同等のレベルを示す(図43)。
【0223】
CD20を発現するRajiヒトリンパ腫細胞を使用して、腫瘍関連抗原CD20へのTriNKETの結合をアッセイした。TriNKETを細胞とインキュベートし、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、ヒストグラムをプロットした。図44に示すように、CD20-TriNKET-C26およびCD20-TriNKET-F04は、CD20に同様に良好に結合する。
(実施例11)
多重特異性結合タンパク質はNK細胞を活性化させる
【0224】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細胞(CD3CD56)を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>90%であった。単離されたNK細胞を、活性化のために100ng/mLのIL-2を含有する培地中で培養したか、またはサイトカインなしで一晩休止させた。IL-2活性化NK細胞を、活性化後24~48時間以内に使用した。
【0225】
腫瘍抗原を発現するヒトがん細胞を採取し、2×10/mLにて培養培地に再懸濁した。腫瘍抗原を標的とするモノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地中で希釈した。活性化NK細胞を採取し、洗浄し、培養培地に2×10/mLにて再懸濁した。次に、がん細胞をモノクローナル抗体/TriNKETと混合し、IL-2の存在下でNK細胞を活性化させた。ブレフェルジン-Aおよびモネンシンも混合培養物に添加して、細胞内サイトカイン染色のために細胞からのタンパク質輸送を阻止した。フルオロフォアコンジュゲート抗CD107aを混合培養物に添加し、培養物を4時間インキュベートした後、CD3、CD56およびIFN-ガンマに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したFACS分析のために試料を調製した。CD107aおよびIFN-ガンマ染色をCD3CD56細胞において分析してNK細胞活性化を評価した。CD107a/IFN-ガンマ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体よりもむしろ2つの活性化受容体の会合による、より良好なNK細胞活性化を示す。
【0226】
TriNKETは、CD107a脱顆粒およびIFN-ガンマ産生の増加によって示されるように、HER2を発現する、SkBr-3細胞(図47A)、Colo201細胞(図47B)、およびHCC1954細胞(図47C)のそれぞれと共培養したヒトNK細胞の活性化を媒介する。SkBr-3細胞およびHCC1954細胞は高レベルの表面HER2を発現し、Colo201は中程度のHER2を発現する。モノクローナル抗体トラスツズマブと比較して、TriNKETはヒトがん細胞の存在下でヒトNK細胞の優れた活性化を示す。NK細胞単独、NK細胞+SkBr-3細胞を陰性対照として使用する。
【0227】
TriNKET(C26-TriNKET-HER2およびF04-TriNKET-HER2)は、CD33発現ヒトAML Mv4-11細胞と共培養したヒトNK細胞の活性化を媒介し、CD107a脱顆粒およびIFN-ガンマ産生の増加を示した。モノクローナル抗CD33抗体と比較して、TriNKET(C26-TriNKET-HER2およびF04-TriNKET-HER2)は、HER2を発現するヒトがん細胞の存在下でヒトNK細胞の優れた活性化を示した(図47A~47C)。
初代ヒトNK細胞は、標的発現ヒトがん細胞株との共培養においてTriNKETによって活性化される
【0228】
初代ヒトNK細胞をCD20陽性ヒトがん細胞と共培養すると、初代ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化が生じた(図62)。CD20を標的とするTriNKET(例えば、C26-TriNKET-CD20およびF04-TriNKET-CD20)は、CD107a脱顆粒およびIFNγサイトカイン産生の増加によって示されるように、CD20陽性Raji細胞と共培養したヒトNK細胞の活性化を媒介した(図62)。モノクローナル抗体リツキシマブと比較して、両方のTriNKET(例えば、C26-TriNKET-CD20およびF04-TriNKET-CD20)はヒトNK細胞の優れた活性化を示した(図62)。
【化10】
【0229】
初代ヒトNK細胞をBCMA陽性MM.1S骨髄腫細胞と共培養すると、初代ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化が生じた。BCMAを標的とするTriNKET(例えば、C26-TriNKET-BMCAおよびF04-TriNKET-BMCA)は、CD107a脱顆粒およびIFNγサイトカイン産生の増加によって示されるように、MM.1S骨髄腫細胞と共培養したヒトNK細胞の活性化を媒介した(図63)。アイソタイプTriNKETと比較して、BCMAを標的とするTriNKET(例えば、A44-TriNKET-BMCA、A49-TriNKET-BMCA、C26-TriNKET-BMCA、F04-TriNKET-BMCA、F43-TriNKET-BMCA、F43-TriNKET-BMCA、F47-TriNKET-BMCA、およびF63-TriNKET-BMCA)は、増加したNK細胞活性を示した(図63)。
(実施例12)
三重特異性結合タンパク質は標的がん細胞の細胞傷害性を可能にする
【0230】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細胞(CD3CD56)を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>90%であった。単離されたNK細胞を、活性化のために100ng/mLのIL-2を含有する培地中で培養したか、またはサイトカインなしで一晩休止させた。IL-2活性化NK細胞または休止NK細胞を、翌日、細胞傷害性アッセイにおいて使用した。
【0231】
TriNKETの存在下でがん細胞を溶解するヒトNK細胞の能力を試験するために、Promega(G1780)からのcyto Tox 96非放射性細胞傷害性アッセイを製造業者の説明書に従って使用した。簡潔に述べると、腫瘍抗原を発現するヒトがん細胞を採取し、洗浄し、1~2×10/mLにて培養培地に再懸濁した。休止NK細胞および/または活性化NK細胞を採取し、洗浄し、がん細胞の培養培地と同じ培養培地に10~2.0×10/mLにて再懸濁した。96ウェルプレートの各ウェルにおいて、50μlのがん細胞懸濁液を、がん細胞において発現した腫瘍抗原を標的とするTriNKETを有するか、または有さない50μlのNK細胞懸濁液と混合した。37℃にて5%COでの3時間および15分間のインキュベーション後、10×溶解緩衝液を、がん細胞のみを含有するウェル、ならびに最大限の溶解および陰性試薬対照のための培地のみを含有するウェルにそれぞれ添加した。次に、プレートをインキュベーターにさらに45分間戻して合計4時間のインキュベーションを達成した。次に、細胞をペレット化し、培養上清を新たな96ウェルプレートに移し、発色のために基質と混合した。新たなプレートを室温にて30分間インキュベートし、吸光度をSpectraMax i3xにおいて492nmにて読み取った。がん細胞の特異的溶解率(パーセンテージ)を以下のように計算した:特異的溶解%=((実験的溶解-NK細胞単独からの自発的溶解-がん細胞単独からの自発的溶解)/(最大溶解-陰性試薬対照))×100%。
【0232】
TriNKETは、CD33陽性Molm-13ヒトAML細胞株に対するヒトNK細胞の細胞傷害性を媒介する。図53Bに示すように、休止ヒトNK細胞をMolm-13がん細胞と混合すると、TriNKET(例えば、C26-TriNKET-CD33およびF04-TriNKET-CD33)は、がん細胞に対して用量応答的に休止ヒトNK細胞の細胞傷害活性を増強することができる。点線はTriNKETを有さない休止NK細胞の細胞傷害活性を示す。活性化ヒトNK細胞をMolm-13がん細胞と混合すると、TriNKETは、抗CD33抗体と比較して、がん細胞に対して用量応答的に活性化ヒトNK細胞の細胞傷害活性をさらにもっと増強する(図53B)。
【0233】
TriNKETは、抗HER2モノクローナル抗体であるトラスツズマブの細胞傷害活性と比較して低い表面発現で標的に対するNK細胞の細胞傷害性を増強する。休止ヒトNK細胞を高HER2発現SkBr腫瘍細胞および低HER2発現786-Oがん細胞と混合し、高および低HER2発現がん細胞に対する休止ヒトNK細胞の細胞傷害活性を用量応答的に増強するTriNKETの能力をアッセイした。図50Aおよび図50Bの点線は、TriNKETの非存在下でのがん細胞に対する休止NK細胞の細胞傷害活性を示す。図50Bに示すように、活性化ヒトNK細胞を低HER2発現786-O細胞、およびTriNKET(例えば、CD26-TriNKET-HER2およびF04-TriNKET-HER2)と混合すると、がん細胞に対する活性化ヒトNK細胞の用量応答性細胞傷害活性が観察された。
【0234】
BCMA陽性骨髄腫細胞のTriNKET媒介溶解をアッセイした。図64は、休止ヒトNKエフェクター細胞によるBCMA陽性KMS12-PE骨髄腫細胞のTriNKET媒介溶解を示す。同じNKG2D結合ドメイン(A49)であるが、異なるBCMAを標的とするドメインを使用する2つのTriNKET(cFAE-A49.801およびcFAE-A49.901)を、in vitroでの有効性について試験した。両方のTriNKETはKMS12-PE細胞のNK細胞溶解を同程度増強したが、EM-901を標的とするドメインを使用するTriNKETは効力の増加をもたらした。
【0235】
図65は、異なるNKG2D結合ドメイン(A40、A44、A49、C26、およびF47)を使用するが、同じBCMAを標的とするドメインを使用するいくつかのTriNKETの細胞傷害活性を示す。BCMAを標的としたTriNKETのNKG2D結合ドメインを変化させると、TriNKETの最大殺傷および効力に変動が生じた。すべてのTriNKETは、EM-901モノクローナル抗体と比較してKMS12-PE標的細胞の増加した殺傷を示した(図65)。
(実施例13)
【0236】
NKG2DおよびCD16の架橋によるヒトNK細胞の相乗的活性化を調べた。
初代ヒトNK細胞活性化アッセイ
【0237】
密度勾配遠心分離を使用し、末梢ヒト血液軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。ネガティブ磁気ビーズ(StemCell #17955)を使用してPBMCからNK細胞を精製した。NK細胞は、フローサイトメトリーによって決定して>90%のCD3CD56であった。次に、細胞を、活性化アッセイに使用する前に100ng/mLのhIL-2(Peprotech #200-02)を含有する培地中で48時間増殖させた。抗体を、100μlの滅菌PBS中で2μg/ml(抗CD16、Biolegend #302013)および5μg/mL(抗NKG2D、R&D #MAB139)の濃度にて4℃で一晩、96ウェル平底プレート上にコーティングし、続いてウェルを十分に洗浄して過剰の抗体を除去した。脱顆粒の評価のために、IL-2活性化NK細胞を、100ng/mLのhIL2および1μg/mLのAPCコンジュゲート抗CD107a mAb(Biolegend #328619)を補充した培養培地に5×10個の細胞/mLにて再懸濁した。次に、1×10個の細胞/ウェルを、抗体でコーティングされたプレート上に添加した。タンパク質輸送阻害剤であるブレフェルジンA(BFA、Biolegend #420601)およびモネンシン(Biolegend #420701)を、それぞれ1:1000および1:270の最終希釈にて添加した。播いた細胞を、37℃にて4時間にわたって5%COにおいてインキュベートした。IFN-γの細胞内染色のために、NK細胞を、抗CD3(Biolegend #300452)および抗CD56 mAb(Biolegend #318328)で標識化し、続いて固定し、透過処理し、抗IFN-γ mAb(Biolegend #506507)で標識化した。NK細胞を、生CD56CD3細胞においてゲーティングした後、フローサイトメトリーによってCD107aおよびIFN-γの発現について分析した。
【0238】
受容体の組合せの相対的効力を調査するため、プレート結合刺激により、NKG2DまたはCD16の架橋および両受容体の共架橋を行った。図45図45A~45C)に示したように、CD16およびNKG2Dの組み合わせた刺激は、CD107a(脱顆粒)レベル(図45A)および/またはIFN-γ産生レベル(図45B)の大きな上昇をもたらした。点線は、各受容体の個々の刺激の相加効果を表す。
【0239】
抗CD16、抗NKG2Dまたは両方のモノクローナル抗体の組合せを用いた4時間のプレート結合刺激の後、IL-2活性化NK細胞のCD107aレベルおよび細胞内IFN-γ産生を分析した。グラフは平均(n=2)±SDを示している。図45AはCD107aのレベルを示し、図45BはIFNγのレベルを示し、図45CはCD107aおよびIFN-γ産生のレベルを示す。図45A~45Cに示したデータは、5名の異なる健康なドナーを使用した、5つの独立した実験を代表するものである。
【0240】
トラスツズマブ、抗NKG2D、またはトラスツズマブおよび抗NKG2D抗体の結合ドメインに由来するTriNKETを用いた4時間のプレート結合刺激の後、IL-2活性化NK細胞のCD107a脱顆粒および細胞内IFN-γ産生を分析した(図46)。すべての場合において、試験した抗体はヒトIgG1アイソタイプのものであった。グラフは平均(n=2)±SDを示す。
(実施例14)
細胞により発現されたヒトNKG2DへのTriNKET結合の評価
【0241】
ヒトNKG2Dを形質導入したEL4細胞を使用して、細胞により発現されたヒトNKG2Dへの結合を試験した。TriNKETを20μg/mLに希釈し、次に連続希釈した。mAbまたはTriNKET希釈液を使用して細胞を染色し、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用してTriNKETまたはmAbの結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、結合MFIを二次抗体対照に対して正規化してバックグラウンド値に対する倍率を得た。
細胞により発現されたヒトがん抗原へのTriNKET結合の評価
【0242】
CD33またはHER2のいずれかを発現するヒトがん細胞株を使用して、異なるNKG2Dを標的とするクローンに由来するTriNKETの腫瘍抗原結合を評価した。ヒトAML細胞株MV4-11を使用して、細胞により発現されたCD33へのTriNKETの結合を評価した。ヒト腎細胞癌細胞株786-Oは低レベルのHER2を発現し、細胞により発現されたHER2へのTriNKET結合を評価するために使用した。TriNKETを20μg/mLに希釈し、それぞれの細胞とインキュベートした。TriNKETの結合を、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、細胞により発現されたCD33およびHER2への結合MFIを二次抗体対照に対して正規化してバックグラウンド値に対する倍率を得た。
ヒトHER2陽性がん細胞株の抗体結合能の決定
【0243】
HER2陽性ヒトがん細胞株の抗体結合能(ABC)を測定した。Bangs Lab製のQuantum Simply Cellularキットを使用し(#815)、製造業者の説明書に従って抗体標識化ビーズを準備した。簡潔に述べると、ビーズの4つの集団の各々を飽和量の抗HER2抗体で染色し、細胞集団も飽和量の同じ抗体で染色した。試料データを各ビーズ集団、および細胞集団について獲得した。キットに備えられたQuickCalワークシートを、標準曲線の作成および細胞株の各々についてのABC値の外挿のために使用した。
TriNKETによる初代NK細胞の活性化
【0244】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜からPBMCを単離した。単離されたPBMCを洗浄し、NK細胞単離のために準備した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクション技術を使用してNK細胞を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>90%のCD3-CD56+であった。単離されたNK細胞を、活性化のために100ng/mLのIL-2を含有する培地中で培養したか、またはサイトカインなしで一晩休止させた。IL-2活性化NK細胞を24~48時間後に使用した。休止NK細胞は常に精製の翌日に使用した。
【0245】
目的のがん標的を発現するヒトがん細胞株を培養物から採取し、細胞を2×10/mLに調整した。目的のがん標的を標的とするモノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地中で希釈した。休止NK細胞および/または活性化NK細胞を培養物から採取し、細胞を洗浄し、2×10/mLにて培養培地に再懸濁した。IL-2、およびフルオロフォアコンジュゲート抗CD107aを、活性化培養のためにNK細胞に添加した。ブレフェルジン-Aおよびモネンシンを培養培地中で希釈して、細胞内サイトカイン染色のために細胞からのタンパク質輸送を阻止した。96ウェルプレートに、50μlの腫瘍標的、mAb/TriNKET、BFA/モネンシン、およびNK細胞を200μlの総培養体積で添加した。プレートを4時間培養した後、試料をFACS分析のために準備した。
【0246】
4時間の活性化培養後、細胞を、CD3、CD56およびIFNγに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによる分析のために準備した。CD107aおよびIFNγ染色をCD3-CD56+集団において分析してNK細胞活性化を評価した。
初代ヒトNK細胞の細胞傷害性アッセイ
【0247】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜からPBMCを単離した。単離されたPBMCを洗浄し、NK細胞単離のために準備した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクション技術を使用してNK細胞を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的に>90%のCD3-CD56+であった。単離されたNK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で培養したか、またはサイトカインなしで一晩休止させた。翌日、IL-2活性化NK細胞または休止NK細胞を細胞傷害性アッセイに使用した。
Cyto Tox96 LHD放出アッセイ:
【0248】
腫瘍細胞を溶解するヒトNK細胞の能力を、Promega(G1780)製のcyto Tox96非放射性細胞傷害性アッセイを使用して、TriNKETを添加してまたは添加せずに測定した。目的のがん標的を発現するヒトがん細胞株を培養物から採取し、細胞をPBSで洗浄し、標的細胞として使用するために1~2×10/mLにて成長培地に再懸濁した。50μlの標的細胞懸濁液を各ウェルに添加した。目的のがん抗原を標的するモノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地中で希釈し、50μlの希釈したmAbまたはTriNKETを各ウェルに添加した。休止NK細胞および/または活性化NK細胞を培養物から採取し、細胞を洗浄し、所望のE:T比に応じて培養培地に10~2.0×10/mLにて再懸濁した。50μlのNK細胞をプレートの各ウェルに添加して合計150μlの培養体積にした。プレートを37℃にて5%CO2で3時間および15分にわたってインキュベートした。インキュベーション後、10×溶解緩衝液を、最大溶解および体積調節のために標的細胞のみのウェルおよび培地のみを含有するウェルに添加した。次に、プレートをインキュベーターにさらに45分間戻し、発色前に合計4時間のインキュベーションを行った。
【0249】
インキュベーション後、プレートをインキュベーターから取り出し、細胞を200gにて5分間の遠心分離によってペレット化した。50μlの培養上清を清浄なマイクロプレートに移し、50μlの基質溶液を各ウェルに添加した。プレートを光から保護し、室温にて30分にわたってインキュベートした。50μlの停止溶液を各ウェルに添加し、吸光度をSpectraMax i3xにおいて492nmにて読み取った。特異的溶解%を以下のように計算した:特異的溶解%=((実験的放出-エフェクターからの自然放出-標的からの自然放出)/(最大放出-自然放出))100%。
DELFIA細胞傷害性アッセイ:
【0250】
目的の標的を発現するヒトがん細胞株を培養物から採取し、細胞をPBSで洗浄し、BATDA試薬(Perkin Elmer AD0116)で標識化するために10/mLにて成長培地に再懸濁した。製造業者の説明書に従って標的細胞を標識化した。標識化後、細胞をPBSで3回洗浄し、0.5~1.0×10/mLにて培養培地に再懸濁した。バックグラウンドウェルを準備するために、標識化した細胞のアリコートを取っておき、細胞を培地からスピンアウトした。100μlの培地を、ペレット化した細胞を乱さないように3連でウェルに注意深く添加した。100μlのBATDA標識化細胞を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。ウェルを標的細胞からの自然放出のために保存し、ウェルを1%のTriton-Xの添加による標的細胞の最大溶解のために準備した。目的の腫瘍標的に対するモノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地で希釈し、50μlの希釈したmAbまたはTriNKETを各ウェルに添加した。休止NK細胞および/または活性化NK細胞を培養物から採取し、細胞を洗浄し、所望のE:T比に応じて培養培地に10~2.0×10/mLにて再懸濁した。50μlのNK細胞をプレートの各ウェルに添加して合計200μlの培養体積にした。アッセイの発色前にプレートを37℃にて5%CO2で2~3時間にわたってインキュベートした。
【0251】
2~3時間培養した後、プレートをインキュベーターから取り出し、細胞を200gにて5分間の遠心分離によってペレット化した。20μlの培養上清を、製造業者から提供された清浄なマイクロプレートに移し、200μlの室温ユーロピウム溶液を各ウェルに添加した。プレートを光から保護し、プレートシェーカーにおいて250rpmにて15分にわたってインキュベートした。プレートを、Victor 3またはSpectraMax i3X機器のいずれかを使用して読み取った。特異的溶解%を以下のように計算した:特異的溶解%=((実験的放出-自然放出)/(最大放出-自然放出))100%。
長期のヒトPBMC細胞傷害性アッセイ:
【0252】
SkBr-3標的細胞を、BacMam 3.0 NucLight Green(#4622)で標識化して標的細胞の追跡を可能にした。製造業者のプロトコルに従って、SkBr-3標的細胞を標識化した。アネキシンVレッド(Essen Bioscience #4641)を希釈し、製造業者の説明書に従って準備した。モノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地中で希釈した。50μlのmAbまたはTriNKET、アネキシンV、および休止NK細胞を、既に標識化したSkBr-3細胞を含有する96ウェルプレートのウェルに添加した。50ulの完全培養培地を合計200μlの培養体積で添加した。
【0253】
画像収集をIncuCyte S3においてセットアップした。フェーズ、緑色、および赤色チャネルについての画像を1時間毎に収集し、ウェル当たり2つの画像を得た。画像分析はIncuCyte S3ソフトウェアを使用して行った。緑色および赤色チャネルのためのマスクを作製して、腫瘍細胞、およびアネキシンV陽性細胞の数をそれぞれ計数した。アネキシンV陽性Mv4-11標的細胞の%を計算するために以下の式を使用した。アネキシンV陽性SkBr-3細胞の%=((重複物体数)/(緑色物体数))100%。
HER+がん細胞を標的とするTriNKETとSC2.2との比較
【0254】
HER2を標的とするTriNKETは、SkBr-3細胞数を低減させるのにトラスツズマブより効果的であり、時間ゼロからの細胞の60%のみが60時間後に残っていた。HER2発現腫瘍/がん細胞を標的とする本開示のTriNKETは、NKG2Dに対するリガンドであるULBP-6に連結したトラスツズマブに由来するscFvから構築された一本鎖二重特異性分子であるSC2.2より効果的である。SC2.2は、HER2+がん細胞およびNKG2D+NK細胞に同時に結合する。したがって、HER2+がん細胞数を低減させる際のSC2.2の有効性を調査した。in vitro活性化および細胞傷害性アッセイは、SC2.2がNK細胞を活性化させ、殺傷するのに効果的であることを示した。しかしながら、SC2.2は、RMA/S-HER2皮下腫瘍モデルにおいて有効性を示すことができなかった。SC2.2の有効性をまた、RMA/S-HER2過剰発現同系マウスモデルを使用してin vivoで試験した。このマウスモデルにおいて、SC2.2は、ビヒクル対照と比較して腫瘍成長の制御を示すことができなかった。したがって、SC2.2は、NK細胞を活性化させ、殺傷することができ、HER2+がん細胞に結合するが、これらの特性はHER2+腫瘍成長を効果的に制御するには不十分であった。
C57Bl/6マウスにおけるSC2.2血清半減期の評価
【0255】
C57Bl/6マウスにおけるSC2.2の血清半減期を判定するために、SC2.2を蛍光タグで標識化してin vivoでその濃度を追跡した。SC2.2をIRDye 800CW(Licor #929-70020)で標識化した。標識化したタンパク質を3匹のC57Bl/6マウスに静脈内注射し、示した時点において各マウスから血液を採取した。採取後、血液を1000gにて15分間遠心分離し、血清を各試料から採取し、すべての時点が採取されるまで4Cにて保存した。
【0256】
血清を、Odyssey CLx赤外線イメージングシステムを使用して画像化し、800チャネルからの蛍光シグナルをImage Jソフトウェアを使用して定量した。画像強度を第1の時点に正規化し、データを二相減衰方程式に適合させた。この実験系では、SC2.2のベータ半減期は約7時間であると計算した。
RMA/S-HER2皮下腫瘍に対するSC2.2のin vivo試験
【0257】
皮下RMA/S-HER2腫瘍に対するSC2.2の有効性を試験するために、in vivo研究を図56に従って設計した。ヒトHER2を形質導入した10個のRMA/S細胞を、20匹のC57Bl/6マウスの脇腹に皮下注射した。腫瘍接種(innoculation)の2日後から開始して、SC2.2をIP注射により毎日投与した。SC2.2をビヒクル対照と共に高濃度および低濃度にて投与した。腫瘍接種の4日後から開始して、腫瘍を、研究期間中、月曜日、水曜日、および金曜日に測定した。腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=長さ×幅×高さ。
TriNKETはヒトNKG2Dを発現する細胞に結合する
【0258】
ヒトNKG2Dを発現する細胞に結合するTriNKETの能力を決定した。図37および図38は、異なるNKG2D結合ドメインを含有する2つのTriNKETの用量応答結合を示す。図37は、CD33結合ドメインが第2の標的化アームとして使用される場合の2つのTriNKETの結合を示す。図38は、同じ2つのNKG2D結合ドメインがここでHER2の第2の標的化アームと対合したことを示す。6つのNKG2D結合ドメインは、両方の腫瘍標的化ドメインと同じ結合プロファイルを保持する。
TriNKETはヒトがん抗原を発現する細胞に結合する
【0259】
ヒトがん抗原を発現する細胞に結合するTriNKETの能力を決定した。図41および図42は、細胞により発現されたCD33(図41)およびHER2(図42)へのTriNKETの結合を示す。細胞により発現された抗原へのTriNKET結合はNKG2D結合ドメイン間で一致した。TriNKETは親モノクローナル抗体と同等のレベルで結合した。
ヒトHER2陽性がん細胞株の抗体結合能
【0260】
表9はHER2表面定量の結果を示す。SkBr-3およびHCC1954細胞は高い(+++)レベルの表面HER2を有することが確認された。ZR-75-1およびColo201は中レベル(++)の表面HER2を示し、786-Oは最も低いレベルのHER2(+)を示した。
【0261】
【表9】
初代ヒトNK細胞は、様々なレベルのHER2を発現するヒトがん株との共培養においてTriNKETによって活性化される
【0262】
図47A~47Cは、TriNKETおよびトラスツズマブがHER2陽性ヒト腫瘍細胞との共培養において初代ヒトNK細胞を活性化させることができたことを示し、このことはCD107a脱顆粒およびIFNγサイトカイン産生の増加によって示される。モノクローナル抗体トラスツズマブと比較して、両方のTriNKETは、様々なヒトHER2がん細胞でヒトNK細胞の優れた活性化を示した。
【0263】
図47Aは、ヒトNK細胞が、SkBr-3細胞と培養された場合、TriNKETによって活性化されることを示す。図47Bは、ヒトNK細胞が、Colo201細胞と培養された場合、TriNKETによって活性化されることを示す。図47Cは、ヒトNK細胞が、HCC1954細胞と培養された場合、TriNKETによって活性化されることを示す。
TriNKETは休止ヒトNK細胞およびIL-2活性化ヒトNK細胞の活性を増強する
【0264】
図48A~48Bは、CD33発現ヒトAML細胞株MV4-11との共培養における休止ヒトNK細胞またはIL-2活性化ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化を示す。図48Aは、休止ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化を示す。図48Bは、同じドナー由来のIL-2活性化ヒトNK細胞のTriNKET媒介活性化を示す。休止NK細胞は、IL-2活性化NK細胞より少ないバックグラウンドIFNγ産生およびCD107a脱顆粒を示した。休止NK細胞は、IL-2活性化NK細胞と比較してIFNγ産生およびCD107a脱顆粒において、より大きな変化を示した。IL-2活性化NK細胞は、TriNKETでの刺激後、より多くのパーセンテージの細胞がIFNγ+;CD107aになることを示した。
TriNKETは休止ヒトNK細胞およびIL-2活性化ヒトNK細胞の細胞傷害性を増強する
【0265】
図49A~49Bは、IL-2活性化ヒトNK細胞および休止ヒトNK細胞を使用した細胞傷害活性のTriNKET増強を示す。図49Aは、休止ヒトNK細胞によるSkBr-3腫瘍細胞の特異的溶解パーセントを示す。図49Bは、IL-2活性化ヒトNK細胞によるSkBr-3腫瘍細胞の特異的溶解パーセントを示す。IL-2活性化NK細胞集団および休止NK細胞集団は同じドナーに由来した。トラスツズマブと比較して、TriNKETは、活性化NK細胞集団または休止NK細胞集団のいずれかによるSkBr-3細胞に対する応答をより強力に指向する。
TriNKETは表面発現が低い標的に対するNK細胞の細胞傷害性を増強する
【0266】
図50A~50Bは、TriNKETが、トラスツズマブと比較してHER2が中程度のがんおよび低度のがんに対して、より大きな利点をもたらすことを示す。図50Aは、HER2高SkBr-3腫瘍細胞の活性化されたヒトNK細胞殺傷を示す。図50Bは、HER2低786-O腫瘍細胞のヒトNK細胞殺傷を示す。TriNKETは、HER2発現が低いがん細胞に対してトラスツズマブと比較して、より大きな利点をもたらす。TriNKETは、表面発現が低い標的に対して最大の利点をもたらす。
FcRの発現が高いがんを処置する際のTriNKETの利点、または高レベルのFcRを有する腫瘍微小環境におけるTriNKETの利点
【0267】
モノクローナル抗体療法は、血液系腫瘍および固形腫瘍の両方を含む、多くのがんの種類の処置のために承認されている。がんの処置におけるモノクローナル抗体の使用は患者の転帰を改善したが、依然として限界がある。機構研究により、モノクローナル抗体が、とりわけ、ADCC、CDC、食作用、およびシグナル遮断を含む複数の機構を介して腫瘍成長に対してそれらの効果を発揮することが示されている。
【0268】
中でも注目すべきは、ADCCは、モノクローナル抗体がそれらの効果を発揮する主要な機構であると考えられている。ADCCは、腫瘍細胞の直接溶解を媒介するナチュラルキラー細胞の表面における低親和性FcγRIII(CD16)の抗体Fc会合に依存する。FcγRの中で、CD16はIgG Fcに対して最も低い親和性を有し、FcγRI(CD64)は高親和性FcRであり、CD16よりもIgG Fcに対して約1000倍強く結合する。
【0269】
CD64は、通常、骨髄細胞系列などの多くの造血系列において発現され、急性骨髄性白血病(AML)などの、これらの細胞型に由来する腫瘍において発現され得る。MDSCおよび単球などの、腫瘍に浸潤する免疫細胞も、CD64を発現し、腫瘍微小環境に浸潤することが知られている。腫瘍による、または腫瘍微小環境におけるCD64の発現は、モノクローナル抗体療法に対して有害な効果を有し得る。腫瘍微小環境におけるCD64の発現は、抗体が高親和性受容体に結合することを好むので、これらの抗体がNK細胞の表面におけるCD16と会合することを困難にする。NK細胞の表面における2つの活性化受容体を標的とすることにより、TriNKETは、モノクローナル抗体療法に対するCD64発現の有害な効果を克服することができる。
3つのAML細胞株におけるFcRγI(CD64)発現
【0270】
高レベルおよび低レベルのCD64を表面発現する腫瘍に対するTriNKETおよびモノクローナル抗体の活性を試験するためにin vitro培養系を開発した。Molm-13およびTHP-1は、表面CD33と同様に発現する2つのヒトAML細胞株であるが、Molm-13細胞はCD64を発現せず、一方で、THP-1細胞はそれらの表面においてCD64を発現する(図51A~51C)。CD33を標的とするように指向されたモノクローナル抗体またはTriNKETを使用して、モノクローナル抗体またはTriNKET療法に対する腫瘍によるCD64発現の効果を試験した。図51A~51Cは、3つのヒトAML細胞株である、Molm-13細胞株(図51A)、Mv4-11細胞株(図51B)、およびTHP-1細胞株(図51C)における高親和性FcRγI(CD64)の発現を示す。Molm-13細胞はCD64を発現せず、一方で、Mv4-11細胞は低レベルの細胞表面CD64を有し、THP-1は高レベルの細胞表面CD64を有する。
TriNKETはFcRの表面発現が高い腫瘍細胞を標的とするのに有利である
【0271】
図52A~52Bは、Molm-13細胞(図52B)またはTHP-1細胞(図52A)のいずれかとの共培養におけるヒトNK細胞のモノクローナル抗体またはTriNKET媒介活性化を示す。ヒトCD33に対するモノクローナル抗体は、増加したCD107a脱顆粒およびIFNγ産生によって証明されるようにMolm-13共培養系において、ヒトNK細胞の良好な活性化を示した。モノクローナル抗体は、高レベルのCD64が腫瘍に存在するTHP-1共培養系において効果を有さない。興味深いことに、TriNKETはMolm-13細胞(図52B)およびTHP-1細胞(図52A)の両方に対して効果的であったが、モノクローナル抗体はFcR-Hi THP-1細胞との培養においてNK細胞を活性化することができず、このことは、TriNKETが腫瘍におけるCD64への結合を克服し、活性化のためにNK細胞を効果的に標的とすることができることを示す。NK細胞における2つの活性化受容体の二重標的化により、NK細胞に対するより強い特異的結合がもたらされた。NK細胞におけるCD16のみを標的とするモノクローナル抗体は、他の高親和性FcRに結合することができ、NK細胞におけるCD16の会合を阻止する。
【0272】
Molm-13およびTHP-1共培養系を使用するヒトNK細胞の細胞傷害性アッセイは、高レベルのCD64の存在下でTriNKETの有効性を支持するさらなる証拠を提供する。これらの細胞傷害性アッセイにおいて、第3のヒトAML細胞株である、Mv4-11を使用した。Mv4-11細胞(図51B)は低レベルのCD64を発現し、それらの表面におけるCD64のレベルについてはTHP-1細胞(図51C)とMolm-13細胞(図51A)との間にある。
TriNKETは、FcγRI発現にかかわらず、AML細胞株に対する有効性を示す
【0273】
図53A~53Cは、標的として3つのヒトAML細胞株を使用するヒトNK細胞傷害性アッセイを示す。CD33に対するモノクローナル抗体は、CD64を発現しないMolm-13細胞に対して良好な有効性を示す(図53B)。CD64を発現するが、THP-1より低いレベルであるMv4-11細胞(図53A)はモノクローナル抗CD33で低減した有効性を示した。THP-1細胞(図53C)は、モノクローナル抗CD33単独では効果を示さなかった。腫瘍細胞におけるCD64発現にかかわらず、TriNKETは、ここで試験したすべての腫瘍細胞に対してヒトNK細胞応答を媒介することができた。
【0274】
図53A~53Cは、THP-1細胞が、それらの表面における高レベルの高親和性FcR発現に起因して、モノクローナル抗体療法に対して保護されたことを示す。TriNKETは、NK細胞の表面における2つの活性化受容体を標的とすることによってこの保護を回避した。細胞傷害性データは、共培養活性化実験において見られたものと直接相関した。TriNKETは、THP-1細胞で見られたmAb療法からの保護を回避することができ、高レベルのFcRにもかかわらず、NK細胞媒介溶解を誘導することができた。
PBMC培養における正常な骨髄細胞および正常なB細胞の殺傷:TriNKETは、少ないオンターゲット・オフ腫瘍副作用によって、より良好な安全性プロファイルを提供する
【0275】
ナチュラルキラー細胞およびCD8 T細胞は両方とも腫瘍細胞を直接的に溶解させることができるが、NK細胞およびCD8 T細胞が腫瘍細胞から正常な自己を認識する機構は異なる。NK細胞の活性は、活性化受容体(NCR、NKG2D、CD16など)および阻害受容体(KIR、NKG2Aなど)からのシグナルのバランスによって調節される。これらの活性化シグナルおよび阻害シグナルのバランスにより、NK細胞が、ストレスを受けた自己細胞、ウイルスに感染した自己細胞、または形質転換した自己細胞から健康な自己細胞を判定することが可能になる。この「内蔵された」自己寛容機構は、正常で健康な組織をNK細胞応答から保護するのに役立つ。この原理を拡大適用すると、NK細胞の自己寛容により、TriNKETが、腫瘍外の副作用を伴わず、または治療域の増加を伴って、自己および腫瘍の両方で発現する抗原を標的とすることが可能になる。
【0276】
ナチュラルキラー細胞とは異なり、T細胞は、活性化およびエフェクター機能のために、MHC分子によって提示される特定のペプチドの認識を必要とする。T細胞は免疫療法の主要な標的であり、腫瘍に対するT細胞応答を再指向するために多くの方策が立てられてきた。T細胞二重特異性薬、チェックポイント阻害剤、およびCAR-T細胞はすべてFDAに承認されているが、用量制限毒性を有することが多い。T細胞二重特異性薬およびCAR-T細胞は、結合ドメインを使用して腫瘍細胞の表面にある抗原を標的とすること、および工学操作されたシグナル伝達ドメインを使用して活性化シグナルをエフェクター細胞に伝達することにより、TCR-MHC認識システムを回避する。これらの療法は、抗腫瘍免疫応答を誘発するのに効果的であるが、サイトカイン放出症候群(CRS)およびオンターゲット・オフ腫瘍副作用を伴うことが多い。これに関連して、TriNKETが独特であるのは、それらが、NK細胞の活性化および阻害の天然のシステムを「無効化」しないからである。むしろTriNKETは、このバランスを傾け、NKの健康な自己に対する寛容性を維持しながら、さらなる活性化シグナルをNK細胞にもたらすようにデザインされている。
【0277】
密度勾配遠心分離によって全血からPBMCを単離した。あらゆる混入赤血球を、ACK溶解緩衝液中でのインキュベーションによって溶解した。PBMCをPBS中で3回洗浄し、総PBMCを計数した。PBMCを初代細胞培養培地中で10/mLに調整した。1mLのPBMCを24ウェルプレートのウェルに播種し、示したTriNKETまたはmAbを10ug/mLにてPBMC培養物に添加した。細胞を37Cにて5%CO2で一晩培養した。翌日(24時間後)、PBMCを培養物から採取し、FACS分析のために調製した。CD45+;CD19+B細胞およびCD45+;CD33+;CD11b+骨髄細胞のパーセンテージを、異なる処置群にわたって分析した。
【0278】
図54Bおよび54Dは、自己骨髄細胞がTriNKET媒介NK細胞応答から保護されることを示す。図54Aおよび54Bは、健康なドナー由来のB細胞がTriNKET媒介溶解に対して感受性があり、一方で、骨髄細胞がTriNKET溶解に対して耐性があることを示す。CD20を標的とするTriNKETで処置したPBMCは、CD45+リンパ球集団を有するCD19+B細胞の低減した頻度を示したが(図54A)、CD45+、CDD3-、CD56-リンパ球集団では効果がなかった(図54C)。これらの培養物では、CD45+、CD19+骨髄細胞の頻度(図54B)、またはCD33+、CD33+、CD11b+骨髄細胞の頻度(図54D)は変化しなかった。
TriNKETは長期の共培養においてSkBr-3腫瘍細胞のhPBMC殺傷を媒介する
初代ヒトPBMC細胞傷害性アッセイ
【0279】
図55は、ヒトPBMCとの培養におけるSkBr-3細胞の長期殺傷を示す。単独で培養すると、SkBr-3細胞は増殖し、60時間でほぼ倍増する。ヒトPBMCを培養物中のSkBr-3細胞に添加すると、増殖速度が遅くなり、CD33を標的とするアイソタイプ対照TriNKETを添加しても、比較的程度は少ないが、増殖が遅くなる。培養物をトラスツズマブSkBr-3で処置すると、もはや増殖せず、60時間後、時間ゼロからの細胞の80%のみが残る。SkBr-3細胞はHER2シグナル遮断に対して感受性があるので、SkBr-3細胞成長に対する効果は、HER2シグナル遮断によって、またはADCCなどのFcエフェクター機能を介して媒介され得る。
(実施例15)
in vitroでのmcFAE-C26.99 TriNKETの抗腫瘍効果
【0280】
ネズミcFAE-C26.99 TriNKETの結合活性を検証するために、Tyrp-1陽性B16F10黒色腫細胞(図58A)およびネズミNKG2Dを過剰発現するEL4株(EL4-mNKG2D、図58B)に対するフローサイトメトリーアッセイによって、そのモノクローナル抗体と比較して直接結合を測定した。
【0281】
mcFAE-C26.99 TriNKETが細胞傷害性を媒介する能力を保持しているかどうかを試験するために、ネズミIL-2活性化NK細胞によるTyrp-1陽性B16F10腫瘍標的の殺傷を測定した。図59に示すように、ネズミNK細胞は、mcFAE-C26.99の存在下でそれらの細胞傷害活性を増加させた。重要なことに、抗Tyrp-1モノクローナル抗体TA99は、わずかな効果しか示さなかった。
mcFAE-C26.99 TriNKETによって媒介されるNK細胞傷害性の増加
【0282】
1つのウェル当たり約5×10個のB16F10黒色腫細胞をアッセイの2日前に播種した。実験の日に、5×10個のネズミIL-2活性化NK細胞を、TA99 mabまたはmcFAE-C26.99 TriNKETの存在下で添加した(mcFAE-C26.99は、FcとしてマウスIgG2cを有するmC26およびTA99のヘテロ二量体である。Gm突然変異とは、ヘテロ二量体を生成するために使用されるヘテロ二量体化突然変異を指す)。4倍希釈した20μg/mLの抗体を使用した。共培養の4時間後、細胞傷害性のパーセンテージを、LDH放出についてのCytoTox96キットを使用して評価した。点線は、抗体の非存在下でのベースライン細胞傷害性を表す。
【化11-1】
【化11-2】
(実施例16)
in vivoでのmcFAE-C26.99 TriNKETの抗腫瘍効果
【0283】
mcFAE-C26.99が、in vivoで抗腫瘍機能を引き起こすかどうかを試験するために、C57BL/6マウスに2×10個のB16F10腫瘍細胞を皮下注射した。マウスを、アイソタイプ対照であるモノクローナルTA99抗体またはmcFAE-C26.99 TriNKETのいずれかで処置した。モノクローナルTA99抗体での処置は、アイソタイプで処置した対照群におけるものと同様の腫瘍進行を示した。しかしながら、mcFAE-C26.99 TriNKETの投与の結果、アイソタイプ処置群と比較して腫瘍進行が遅延した。約2×10個のB16F10黒色腫細胞をC57BL/6マウスの脇腹に皮下注射した。腫瘍接種の6日後に、マウスを無作為化した(n=10/群)。マウスを、150μgの用量(6、8、10、12、14、16、および21日目)にて注射した、(図60A)アイソタイプ対照マウスIgG2a mab C1.18.4およびマウス抗Tyrp-1モノクローナル抗体または(図60B)アイソタイプ対照マウスIgG2a mab C1.18.4およびmcFAE-C26.99 TriNKETで腹腔内処置した。腫瘍成長を28日間評価した。グラフは個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す。
【0284】
皮下B16F10腫瘍モデルに加えて、mcFAE-C26.99 TriNKETもまた、播種性腫瘍環境におけるその腫瘍効果について試験した。1×10個のB16F10細胞をマウスに静脈内注射した。低い抗体用量(300μg/注射)および高い抗体用量(600μg/注射)で4日目または7日目のいずれかに処置を開始した。腫瘍接種後の18日目に、肺転移を計数した。TA99モノクローナル抗体またはmcFAE-C26.99 TriNKETを、アイソタイプ処置した対照群と比較して高濃度で使用した場合、腫瘍接種後の4日目および7日目に開始した処置の結果、肺転移の数が低減した。低濃度では、mcFAE-C26.99 TriNKETのみが腫瘍負荷を減少させた(図61A)。同様の効果が、抗体を腫瘍接種後の7日目に開始して投与した場合にも見られた。全体として、mcFAE-C26.99 TriNKET療法の結果、すべての試験した条件においてモノクローナルTA99抗体と比較して肺転移の数が少なくなった。約1×10個のB16F10黒色腫細胞をC57BL/6マウスの尾静脈に静脈内注射した(n=8/群)。マウスを未処置のままにしたか、または対照mab(アイソタイプ、クローンC1.18.4)、モノクローナルTA99抗体もしくはTA99 TriNKET(mcFAE-C26.99)で腹腔内処置した。図61Aは、抗体を150μg用量(4、6、8、11、13、15日目)で投与した場合の腫瘍負荷を表す。図61Bは、抗体を150μg用量(7、9、11、13、15日目)で投与した場合の腫瘍負荷を表す。腫瘍チャレンジの18日後、マウスを安楽死させ、表面肺転移をスコア化した(図61B)。
(実施例17)
HER2陽性細胞に対する、TriNKET、モノクローナル抗体、または二重特異性抗体によって媒介される休止ヒトNK細胞の細胞傷害活性
【0285】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜からPBMCを単離した。単離されたPBMCを洗浄し、NK細胞単離の準備をした。磁気ビーズを用いたネガティブセレクション技術を使用してNK細胞を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>90%のCD3-CD56+であった。単離されたNK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で培養したか、またはサイトカインなしで一晩休止させた。IL-2活性化NK細胞または休止NK細胞を、翌日、細胞傷害性アッセイに使用した。
【0286】
DELFIA細胞傷害性アッセイ:
【0287】
目的の標的を発現するヒトがん細胞株を培養物から採取し、細胞をHBSで洗浄し、BATDA試薬(Perkin Elmer AD0116)で標識化するために10/mLにて成長培地に再懸濁した。製造業者の説明書に従って標的細胞を標識化した。標識化後、細胞をHBSで3回洗浄し、0.5~1.0×10/mLにて培養培地に再懸濁した。バックグラウンドウェルを準備するために、標識化した細胞のアリコートを取っておき、細胞を培地からスピンアウトした。100μlの培地を、ペレット化した細胞を乱さないように3連でウェルに注意深く添加した。100μlのBATDA標識化細胞を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。ウェルを標的細胞からの自然放出のために保存し、ウェルを1%のTriton-Xの添加による標的細胞の最大溶解のために準備した。目的の腫瘍標的に対するモノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地中で希釈し、50μlの希釈したmAbまたはTriNKETを各ウェルに添加した。休止NK細胞および/または活性化NK細胞を培養物から採取し、細胞を洗浄し、所望のE:T比に応じて培養培地に10~2.0×10/mLにて再懸濁した。50μlのNK細胞をプレートの各ウェルに添加して合計200μlの培養体積にした。アッセイの発色前にプレートを37℃にて5%CO2で2~3時間にわたってインキュベートした。
【0288】
2~3時間培養した後、プレートをインキュベーターから取り出し、細胞を200gにて5分間の遠心分離によってペレット化した。20μlの培養上清を、製造業者から提供された清浄なマイクロプレートに移し、200μlの室温ユーロピウム溶液を各ウェルに添加した。プレートを光から保護し、プレートシェーカーにおいて250rpmにて15分にわたってインキュベートした。プレートを、Victor 3またはSpectraMax i3X機器のいずれかを使用して読み取った。特異的溶解%を以下のように計算した:特異的溶解%=((実験的放出-自然放出)/(最大放出-自然放出))100%。
モノクローナル抗体および二重特異性NK細胞エンゲージャーの組合せはTriNKET活性を再現しない:
【0289】
図66は、HER2陽性Colo-201細胞株に対するTriNKET、モノクローナル抗体、または二重特異性抗体によって媒介される休止ヒトNK細胞の細胞傷害活性を示す。HER2を標的とするTriNKET(ADI-29404(F04))は、休止ヒトNK細胞によるColo-201細胞の最大溶解を誘導した。D265A突然変異をTriNKETのCH2ドメインに導入してFcR結合を無効にした。HER2-TriNKET(ADI-29404(F04))-D265AはColo-201細胞の溶解を媒介することができず、NK細胞に対するCD16およびNKG2Dの二重標的化の重要性が示される。NK細胞に対する二重標的化の重要性をさらに実証するために、モノクローナル抗体トラスツズマブを使用してHER2を標的とし、NK細胞によりADCCを媒介した。トラスツズマブ単独ではColo-201細胞のNK細胞溶解を増加させることができたが、トラスツズマブ単独によって達成された最大溶解はTriNKETと比較して約4分の1だった。CD16およびNKG2Dが同じ分子を標的とすることの重要性を理解するために、TriNKET(ADI-29404(F04))活性を、トラスツズマブと組み合わせたHER2およびNKG2Dを標的とする二重特異性抗体の活性と比較した。等モル濃度で使用した場合、二重特異性およびトラスツズマブの組合せは、休止ヒトNK細胞によるColo-201細胞の最大溶解を媒介することができなかった。トラスツズマブ+二重特異性の組合せの不成功は、1つの分子中にTriNKETの三重特異性結合を含有することの重要性を示す。
参照による組み込み
【0290】
本明細書で参照される特許文献および科学論文の各々の開示全体は、すべての目的のために参照により組み込まれる。
等価物
【0291】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱せずに他の特定の形態で実現されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書で記載している本発明を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入るすべての変更はその中に包含されることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)腫瘍関連抗原に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
(項目2)
前記第1の抗原結合部位が、ヒト、非ヒト霊長類、およびげっ歯動物のNKG2Dに結合する、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
前記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、項目1または2に記載のタンパク質。
(項目4)
前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じポリペプチド上に存在する、項目3に記載のタンパク質。
(項目5)
前記第2の抗原結合部位も、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、項目3または4に記載のタンパク質。
(項目6)
前記第1の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、項目5に記載のタンパク質。
(項目7)
前記第1の抗原結合部位が、単一ドメイン抗体である、項目1または2に記載のタンパク質。
(項目8)
前記単一ドメイン抗体が、VH断片またはVNAR断片である、項目7に記載のタンパク質。
(項目9)
前記第2の抗原結合部位が、単一ドメイン抗体である、項目1から4または7から8のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目10)
前記第2の抗原結合部位が、VH断片またはVNAR断片である、項目9に記載のタンパク質。
(項目11)
前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、項目1、2、7または8に記載のタンパク質。
(項目12)
前記第1の抗原結合部位が、配列番号1と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目13)
前記第1の抗原結合部位が、配列番号41と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号42と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、項目1から11のいずれかに記載のタンパク質。
(項目14)
前記第1の抗原結合部位が、配列番号43と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号44と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、項目1から11のいずれかに記載のタンパク質。
(項目15)
前記第1の抗原結合部位が、配列番号69と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号70と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、項目1から11のいずれかに記載のタンパク質。
(項目16)
前記第1の抗原結合部位が、配列番号71と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号72と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、項目1から11のいずれかに記載のタンパク質。
(項目17)
前記腫瘍関連抗原が、HER2、CD20、CD33、BCMA、EpCAM、CD2、CD19、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、およびPD1からなる群から選択される、先行する項目のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目18)
前記タンパク質が、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインの一部分を含み、前記抗体Fcドメインが、ヒンジおよびCH2ドメインを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目19)
ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1から17のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目20)
先行する項目のいずれか一項に記載のタンパク質および薬学的に許容される担体を含む製剤。
(項目21)
項目1から19のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞。
(項目22)
項目1から19のいずれか一項に記載のタンパク質に腫瘍およびナチュラルキラー細胞を曝露することを含む、腫瘍細胞死を直接的または間接的に増強する方法。
(項目23)
項目1から19のいずれか一項に記載のタンパク質または項目20に記載の製剤を患者に投与することを含む、がんを処置する方法。
(項目24)
前記がんが、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、B細胞リンパ腫、膀胱がん、乳がん、大腸がん、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、食道がん、ユーイング肉腫、濾胞性リンパ腫、胃がん、消化管がん、消化管間質腫瘍、神経膠芽腫、頭頸部がん、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、腎細胞癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、および膵がん、前立腺がん、肉腫、小細胞肺がん、T細胞リンパ腫、精巣がん、胸腺癌、甲状腺がん、尿路上皮がん、骨髄由来抑制細胞が浸潤したがん、細胞外マトリックス沈着を伴うがん、高レベルの反応性間質を伴うがん、ならびに血管新生を伴うがんからなる群から選択される、項目23に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47-1】
図47-2】
図48
図49
図50
図51
図52
図53-1】
図53-2】
図54-1】
図54-2】
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
図65
図66
図67
図68
図69
図70
【配列表】
2024099850000001.app
【外国語明細書】