(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099858
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20240719BHJP
H01L 21/428 20060101ALI20240719BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01L21/268 Z
H01L21/428
H01L21/324 J
H01L21/324 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003436
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹林 基成
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】坂野 敦哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 克彦
(57)【要約】
【課題】電磁波を用いた熱処理における基板への加熱の均一性を改善することが可能な技術を提供する。
【解決手段】基板を処理する処理室と、第1電磁波と第2電磁波を少なくとも一部同時に前記処理室に出力する電磁波源と、前記第1電磁波と前記第2電磁波とのうち少なくとも一方の周波数を制御可能に構成される周波数制御部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
第1電磁波と第2電磁波を少なくとも一部同時に前記処理室に出力する電磁波源と、
前記第1電磁波と前記第2電磁波とのうち少なくとも一方の周波数を制御可能に構成される周波数制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記第1電磁波と前記第2電磁波との位相差を変更可能に構成される位相差制御部をさらに有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に前記処理室内へ供給するA処理と、
前記A処理の後に、前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の周波数が前記A処理と異なるように、前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に前記処理室内へ供給するB処理と、
が実行されるように、前記電磁波源と前記周波数制御部とを制御可能に構成される制御部をさらに有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記B処理の後に、前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の周波数が前記B処理と異なるように、前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に前記処理室内へ供給するC処理、
が前記A処理と前記B処理に加えて実行されるように、前記電磁波源と前記周波数制御部とを制御することが可能に構成される、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に前記処理室内へ供給するA処理と、
前記A処理の後に、前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の周波数と、前記位相差と、のうち少なくとも一方が前記A処理と異なるように、前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に前記処理室内へ供給するB処理と、
が実行されるように、前記周波数制御部と前記位相差制御部とのうち少なくとも1つと、前記電磁波源と、を制御可能に構成される制御部をさらに有する、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記B処理の後に、前記周波数と前記位相差とのうち少なくとも一方が前記B処理と異なるように、前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に前記処理室内へ供給するC処理、
が前記A処理と前記B処理に加えて実行されるように、前記周波数制御部と前記位相差制御部とのうち少なくとも1つと、前記電磁波源と、を制御することが可能に構成される、
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記B処理における前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の前記周波数が前記A処理と異なり、前記C処理における前記位相差が前記B処理と異なるように、前記周波数制御部と前記位相差制御部と前記電磁波源とを制御することが可能に構成される、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記B処理における前記位相差が前記A処理と異なり、前記C処理における前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の前記周波数が前記B処理と異なるように、前記周波数制御部と前記位相差制御部と前記電磁波源とを制御することが可能に構成される、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記A処理と前記B処理のうち少なくとも一方において供給される前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の周波数は、前記基板の少なくとも一部を構成する物質に電磁波を照射した際に発生する熱量が最大となる周波数である、請求項3または5に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板の複数の箇所の温度を測定可能に構成される温度測定部をさらに有し、
前記制御部は、前記温度測定部から取得される温度データに基づいて処理条件を決定することが可能に構成される、
請求項3~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、実行中の処理に取得される前記温度データに基づいて、次以降に実行される処理における前記処理条件を決定することが可能に構成される、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記処理条件のうち少なくとも一つは、前記処理室内への前記第1電磁波と前記第2電磁波の供給が継続される時間である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記処理条件のうち少なくとも一つは、前記処理室内に供給される前記第1電磁波の振幅と前記第2電磁波の振幅とのうち少なくとも一方である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記処理条件のうち少なくとも一つは、前記第1電磁波と前記第2電磁波のうち少なくとも一方の周波数である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記処理条件のうち少なくとも一つは、前記第1電磁波と前記第2電磁波との位相差である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記電磁波源は、前記第1電磁波を出力する第1電磁波源と、前記第2電磁波を出力する第2電磁波源と、を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記電磁波源における電磁波の出力方式は、ソリッドステート式である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
基板を処理する処理室と、第1電磁波と第2電磁波とを出力する電磁波源と、前記第1電磁波と前記第2電磁波とのうち少なくとも一方の周波数を制御可能に構成される周波数制御部と、を有する基板処理装置に基板を搬入する工程と、
前記処理室に前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に出力する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項19】
基板を処理する処理室と、第1電磁波と第2電磁波とを出力する電磁波源と、前記第1電磁波と前記第2電磁波とのうち少なくとも一方の周波数を制御可能に構成される周波数制御部と、を有する基板処理装置に基板を搬入する工程と、
前記処理室に前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に出力する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板を処理する処理室と、第1電磁波と第2電磁波とを出力する電磁波源と、前記第1電磁波と前記第2電磁波とのうち少なくとも一方の周波数を制御可能に構成される周波数制御部と、を有する基板処理装置に基板を搬入する手順と、
前記処理室に前記第1電磁波と前記第2電磁波とを少なくとも一部同時に出力する手順と、
を含む手順をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(基板)の処理による半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、電磁波を用いた基板の熱処理(アニール)が用いられることがある。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電磁波を用いた熱処理において、基板への加熱が不均一となることで、基板の反りや割れが発生する場合がある。
【0005】
本開示は、電磁波を用いた熱処理における基板への加熱の均一性を改善することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
第1電磁波と第2電磁波を少なくとも一部同時に前記処理室に出力する電磁波源と、
前記第1電磁波と前記第2電磁波とのうち少なくとも一方の周波数を制御可能に構成される周波数制御部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電磁波を用いた熱処理における基板への加熱の均一性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成を示した縦断面図である。
【
図2】
図2は本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の枚葉型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図3】
図3は本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の電磁波供給部の制御系を示す図である。
【
図4】
図4は周波数制御によってMW1とMW2の周波数を変更して処理したアモルファスシリコン膜の収縮量分布を示す図である。
【
図5】
図5は
図4に示す条件3で処理した後、条件6で処理したアモルファスシリコン膜の収縮量分布を示す図である。
【
図6】
図6は位相制御によってMW1とMW2の位相差を変更して処理したシリコン酸炭化膜の収縮量分布を示す図である。
【
図7】
図7は本開示で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【
図8】
図8(a)は本開示における基板処理のフローの一例を示す図である。
図8(b)は本開示における基板処理のフローの他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一態様について、主に
図1~
図7、
図8(a)および
図8(b)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
本実施形態における基板処理装置100は、1枚または複数枚のウエハに各種の熱処理を施す枚葉式熱処理装置として構成されている。基板処理装置100を後述する電磁波を用いたアニール処理(改質処理)を行う装置として説明を行う。基板処理装置100では、基板としてのウエハ200を内部に収容した収納容器(キャリア)としてFOUP(Front Opening Unified Pod:以下、ポッドと称する)110が使用される。ポッド110は、ウエハ200を種々の基板処理装置間を搬送する為の搬送容器としても用いられる。
【0011】
図1に示すように、基板処理装置100は、ウエハ200を搬送する搬送室(搬送エリア)203を内部に有する搬送筐体(筐体)202と、搬送筐体202の側壁に設けられ、ウエハ200を処理する処理室201を内部に有する後述する処理容器としてのケース102とを備えている。搬送室203の筐体前側である
図1の向かって右側には、ポッド110の蓋を開閉し、ウエハ200を搬送室203に搬送・搬出するための、ポッド開閉機構としてのロードポートユニット(LP)106が配置されている。ロードポートユニット106は、筐体106aと、ステージ106bと、オープナ106cとを備える。ステージ106bは、ポッド110を載置し、搬送室203の筐体前方に形成された基板搬入搬出口134にポッド110を近接させるように構成される。オープナ106cはポッド110に設けられている図示しない蓋を開閉する。また、筐体202は、搬送室203内を不活性ガスなどのパージガスを循環させるためのクリーンユニット166を設けたパージガス循環構造を有している。
【0012】
搬送室203の筐体202後側である
図1の向かって左側には、後述する処理室201を開閉するゲートバルブ205が配置されている。搬送室203には、ウエハ200を移載する基板移載機構(基板移載ロボット)としての移載機125が設置されている。移載機125は、ウエハ200を載置する載置部としてのツィーザ(アーム)125a-1、125a―2と、ツィーザ125a-1、125a―2のそれぞれを水平方向に回転または直動可能な移載装置125bと、移載装置125bを昇降させる移載装置エレベータ125cとで構成されている。ツィーザ125a-1、125a-2、移載装置125b、移載装置エレベータ125cの連続動作により、後述する基板保持具としてのボート217やポッド110にウエハ200を装填(チャージング)または脱装(ディスチャージング)することを可能な構成としている。なお、後述する処理室201が複数設けられる場合、ゲートバルブ205は処理室201の数に対応した数が設けられる。
【0013】
図1に示すように、搬送室203の上方空間であって、クリーンユニット166よりも下方には処理したウエハ200を冷却するためのウエハ冷却用載置具108がウエハ冷却テーブル109上に設けられている。ウエハ冷却用載置具108は、後述するボート217と同様の構造を有しており、複数のウエハ保持溝(保持部)によって複数枚のウエハ200を垂直多段に水平保持することが可能なように構成されている。ウエハ冷却用載置具108およびウエハ冷却テーブル109は、基板搬入搬出口134およびゲートバルブ205の設置位置よりも上方に設けられる。これにより、ウエハ200を移載機125によってポッド110から処理室201へ搬送する際の動線上から外れる。このため、ウエハ処理のスループットを低下させることなく、処理後のウエハ200を冷却することが可能となる。以降、ウエハ冷却用載置具108とウエハ冷却テーブル109を合わせて冷却エリア(冷却領域)と称する場合もある。
【0014】
ここで、ポッド110内の圧力、搬送室203内の圧力および処理室201内の圧力は、すべて大気圧、または大気圧よりも10Pa以上200Pa以下(ゲージ圧)程度の高い圧力にて制御される。搬送室203内の圧力の方が処理室201の圧力よりも高く、また、処理室201内の圧力の方がポッド110内の圧力よりも高くするのが好ましい。
【0015】
(処理炉)
図1の破線で囲まれた領域Aには、
図2に示すような基板処理構造を有する処理炉が構成される。なお、処理炉は複数設けられてもよい。
【0016】
図2に示すように、処理炉は、金属などの電磁波を反射する材料で構成されるキャビティ(処理容器)としてのケース102を有している。また、ケース102の天井面には金属材料で構成されたキャップフランジ(閉塞板)104が、封止部材(シール部材)としてのOリング(図示せず)を介してケース102の天井面を閉塞するように構成する。主にケース102とキャップフランジ104の内側空間をウエハ200を処理する処理室201として構成している。ケース102の内部に電磁波を透過させる石英製の図示しない反応管を設置してもよく、反応管内部が処理室となるように処理容器を構成してもよい。また、キャップフランジ104を設けずに、天井が閉塞したケース102を用いて処理室201を構成するようにしてもよい。
【0017】
処理室201内には載置台210が設けられており、載置台210の上面には、ウエハ200を保持するボート217が載置されている。ボート217には、処理対象であるウエハ200と、ウエハ200を挟み込むようにウエハ200の垂直方向上下に載置された断熱板としての石英プレート101a、101bが所定の間隔で保持されている。また、石英プレート101a、101bとウエハ200のそれぞれの間には、例えば、シリコンプレート(Si板)や炭化シリコンプレート(SiC板)などの、サセプタ103a、103bを載置してもよい。本実施形態において、石英プレート101a、101b、および、サセプタ103a、103bは、それぞれ同一の部品であり、以後、特に区別して説明する必要が無い場合には、石英プレート101、サセプタ103と称して説明する。
【0018】
ケース102は、例えば横断面が円形であり、平らな密閉容器として構成されている。また、搬送筐体202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料などにより構成されている。なお、ケース102に囲まれた空間を処理空間としての処理室201は反応エリアと称し、搬送筐体202に囲まれた空間を搬送空間としての搬送室203は搬送エリアと称する場合もある。なお、処理室201と搬送室203は、本実施形態のように水平方向に隣接させて構成することに限らず、垂直方向に隣接させる構成としてもよい。
【0019】
図1および
図2に示すように、ケース102および搬送筐体202の側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入搬出口206が設けられており、ウエハ200は基板搬入搬出口206を介して処理室201と搬送室203との間を移動する。
【0020】
図2に示すように、ケース102の側面には、後に詳述する加熱装置としての電磁波供給部が設置されており、電磁波供給部から供給されたマイクロ波等の電磁波が処理室201に導入されてウエハ200等を加熱し、ウエハ200を処理する。
【0021】
載置台210は回転軸としてのシャフト255によって支持される。シャフト255は、ケース102の底部を貫通しており、更には搬送筐体202の外部で回転動作を行う駆動機構267に接続されている。駆動機構267を作動させてシャフト255及び載置台210を回転させることにより、ボート217上に載置されるウエハ200を回転させることが可能となっている。なお、シャフト255下端部の周囲はベローズ212により覆われており、処理室201および搬送室203内は気密に保持されている。
【0022】
ここで、載置台210は基板搬入搬出口206の高さに応じて、駆動機構267によって、ウエハ200の搬送時にはウエハ200がウエハ搬送位置となるよう上昇または下降し、ウエハ200の処理時にはウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇または下降するよう構成されていてもよい。
【0023】
処理室201の下方であって、載置台210の外周側には、処理室201の雰囲気を排気する排気部が設けられている。
図2に示すように、排気部には排気口221が設けられている。排気口221には排気管231が接続されており、排気管231には、処理室201内の圧力に応じて弁開度を制御するAPC(Auto Pressure Controller)バルブなどの圧力調整器244、真空ポンプ246が順に直列に接続されている。
【0024】
ここで、圧力調整器244は、処理室201内の圧力情報(後述する圧力センサ245からのフィードバック信号)を受信して排気量を調整することができるものであればAPCバルブに限らず、通常の開閉バルブと圧力調整弁を併用するように構成されていてもよい。
【0025】
主に、排気口221、排気管231、圧力調整器244により排気部(排気系または排気ラインとも称する)が構成される。なお、載置台210を囲むように排気口を設け、ウエハ200の全周からガスを排気可能に構成してもよい。また、排気部の構成に、真空ポンプ246を加えるようにしてもよい。
【0026】
キャップフランジ104には、不活性ガス、原料ガス、反応ガスなどの各種基板処理のための処理ガスを処理室201内に供給するためのガス供給管232が設けられている。
【0027】
ガス供給管232には、上流から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241、および、開閉弁であるバルブ243が設けられている。ガス供給管232の上流側には、例えば不活性ガス源が接続され、MFC241、バルブ243を介して処理室201内へ供給される。基板処理の際に複数種類のガスを使用する場合には、ガス供給管232のバルブ243よりも下流側に、上流側から順に流量制御器であるMFCおよび開閉弁であるバルブが設けられたガス供給管が接続された構成を用いることで複数種類のガスを供給することができる。なお、ガス種毎にMFC、バルブが設けられたガス供給管を設置してもよい。
【0028】
主に、ガス供給管232、MFC241、バルブ243によりガス供給系(ガス供給部)が構成される。ガス供給系に不活性ガスを流す場合には、不活性ガス供給系とも称する。
【0029】
(温度測定部)
キャップフランジ104には、非接触式の温度測定装置(温度測定部)として温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づき後述するマイクロ波発振器655の出力を調整することで、ウエハ200を加熱し、ウエハ200の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、例えばIR(Infrared Radiation)センサなどの放射温度計で構成されている。温度センサ263は、石英プレート101aの複数の箇所の表面温度、または、ウエハ200の複数の箇所の表面温度を測定するように設置される。上述したサセプタが設けられている場合にはサセプタの複数の箇所の表面温度を測定するように構成してもよい。
【0030】
なお、本開示においてウエハ200の温度(ウエハ温度)と記載した場合は、後述する温度変換データによって変換されたウエハ温度、すなわち、推測されたウエハ温度のことを意味する場合と、温度センサ263によって直接ウエハ200の温度を測定して取得した温度を意味する場合と、それらの両方を意味する場合を指すものとして説明する。
【0031】
温度センサ263によって石英プレート101またはサセプタ103と、ウエハ200のそれぞれに対し、温度変化の推移を予め取得しておくことで石英プレート101またはサセプタ103と、ウエハ200の温度との相関関係を示した温度変換データを記憶装置121cまたは外部記憶装置123に記憶させてもよい。このように予め温度変換データを作成することによって、ウエハ200の温度は、石英プレート101の温度のみを測定することで、ウエハ200の温度を推測可能となる。そして、推測されたウエハ200の温度を基に、マイクロ波発振器655の出力、すなわち加熱装置の制御を行うことが可能となる。
【0032】
なお、ウエハ200の温度を測定する手段として、上述した放射温度計に限らず、熱電対を用いて温度測定を行ってもよいし、熱電対と非接触式温度計を併用して温度測定を行ってもよい。ただし、熱電対を用いて温度測定を行った場合、熱電対をウエハ200の近傍に配置して温度測定を行う必要がある。すなわち、処理室201内に熱電対を配置する必要があるため、後述するマイクロ波発振器から供給されたマイクロ波によって熱電対自体が加熱されてしまうので正確に測温することができない。したがって、非接触式温度計を温度センサ263として用いることが好ましい。
【0033】
また、温度センサ263は、キャップフランジ104に設けることに限らず、載置台210に設けるようにしてもよい。また、温度センサ263は、キャップフランジ104や載置台210に直接設置するだけでなく、キャップフランジ104や載置台210に設けられた測定窓からの放射光を鏡等で反射させて間接的に測定するように構成されてもよい。さらに、温度センサ263は1つ設置することに限らず、複数設置するようにしてもよい。
【0034】
(電磁波供給部)
ケース102の側壁には電磁波導入ポート653-1、653-2が設置されている。電磁波導入ポート653-1、653-2のそれぞれには処理室201内に電磁波を供給するための導波管654-1、654-2のそれぞれの一端が接続されている。導波管654-1、654-2それぞれの他端には処理室201内に電磁波を供給して加熱する加熱源としてのマイクロ波発振器(電磁波源、電磁波発振器)655-1、655-2が接続されている。第1電磁波源および第2電磁波源としてのマイクロ波発振器655-1、655-2はマイクロ波などの電磁波を導波管654-1、654-2にそれぞれ供給する。また、マイクロ波発振器655-1、655-2の出力方式は、例えば、ソリッドステート式(半導体式)やマグネトロン式のマイクロ波発振器などである。一般に、マグネトロン式のマイクロ波発振器は、電力制御および位相制御が可能であり、ソリッドステート式のマイクロ波発振器はこれらに加えて周波数制御が可能である。後述する第1改質工程、第2改質工程または第3改質工程は、MW1およびMW2の少なくとも一方の周波数が他の改質工程と異なるような処理条件で、行われる場合がある。このような場合、マイクロ波発振器655-1とマイクロ波発振器655-2の少なくとも一方として、ソリッドステート式のように周波数制御が可能なマイクロ波発振器を用いることが好ましい。以降、電磁波導入ポート653-1、653-2、導波管654-1、654-2、マイクロ波発振器655-1、655-2は、特にそれぞれを区別して説明する必要のない場合には、電磁波導入ポート653、導波管654、マイクロ波発振器655と記載して説明する。
【0035】
マイクロ波発振器655によって生じる電磁波の周波数は、好ましくは13.56MHz以上24.125GHz以下の周波数範囲となるように制御される。さらに好適には、2.45GHzまたは5.8GHzの周波数付近となるように制御されることが好ましい。ここで、マイクロ波発振器655-1、655-2のそれぞれの周波数は同一の周波数としてもよいし、異なる周波数で設置されてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、マイクロ波発振器655は、ケース102の側面に2つ配置されるように記載されているが、これに限らず、1つ以上設けられていればよく、また、ケース102の対向する側面等の異なる側面に設けられるように配置してもよい。主に、マイクロ波発振器655―1、655-2、導波管654-1、654-2および電磁波導入ポート653-1、653-2によって加熱装置としての電磁波供給部(電磁波供給装置、マイクロ波供給部、マイクロ波供給装置とも称する)が構成される。
【0037】
図3に示すように、マイクロ波発振器655-1、655-2のそれぞれには後述するコントローラ121、周波数制御部656および位相差制御部657が接続されている。コントローラ121には処理室201内に収容される石英プレート101aまたはサセプタ103a、若しくはウエハ200の温度を測定する温度センサ263が接続されている。温度センサ263は、上述した方法によって石英プレート101またはサセプタ103、若しくは、ウエハ200の温度を測定してコントローラ121に送信する。そして、コントローラ121は、周波数制御部656および位相差制御部657と共にマイクロ波発振器655-1、655-2の出力を制御し、ウエハ200の加熱を制御する。
【0038】
ここで、マイクロ波発振器655-1、655-2それぞれにコントローラ121、周波数制御部656および位相差制御部657からそれぞれ個別の制御信号を送信することでマイクロ波発振器655-1、655-2が個々に制御される。周波数制御部656および位相差制御部657はコントローラ121に制御される。
【0039】
周波数制御部656は、マイクロ波発振器655-1が生成する第1マイクロ波(第1電磁波、MW1)とマイクロ波発振器655-2が生成する第2マイクロ波(第2電磁波、MW2)とのうち少なくとも一方の周波数を制御する。これにより、処理室201内の電界及び磁界の大きさの分布(電磁界分布)が変化する。これを利用することで、ウエハ200上において加熱されやすい領域と加熱されにくい領域(加熱分布)を制御することが可能である。
図4は、周波数制御によってMW1とMW2の周波数を条件1~条件6のように変更して処理した、アモルファスシリコン(a-Si)膜の収縮量分布を示す図である。ここで、a-Si膜の収縮量が大きい領域は、処理中に加熱されやすい領域であることを表している。
図4に示すように、MW1またはMW2の周波数を条件1~条件6のように変えると、a-Si膜の収縮量分布、つまり加熱分布が変化する。
【0040】
図5は、
図4に示す条件3で処理した後に条件6で処理する条件7によって、a-Si膜の収縮量分布を示す図である。
図5から、条件7では、条件6の処理によって、主に条件3の処理では加熱が不十分であった領域が加熱されたことで、a-Si膜の収縮量分布が変化してより均一になったことがわかる。このように、MW1とMW2のうち少なくとも一方の周波数が異なっている二つの改質処理を組み合わせることによって、一方の改質処理で加熱が不十分であった領域を、もう一方の改質処理によって加熱する、といった処理が可能である。
【0041】
位相差制御部657は、MW1とMW2との位相差を制御する。これにより、処理室201内の電磁界分布が変化する。ただし、位相差の変化は、電磁界分布に与える影響が周波数の変化よりも小さい。そのため、ウエハ200内における加熱されやすい領域と加熱されにくい領域を、周波数を変化させた場合と比べて精密に制御することが可能である。
【0042】
図6は位相制御によってMW1とMW2の位相差を条件8~条件10のように変更して処理した、シリコン酸炭化(SiOC)膜の収縮量分布を示す図である。ここで、SiOC膜の収縮量が大きい領域は、処理中に加熱されやすい領域であることを表している。
図6に示すように、MW1とMW2の位相差を変えると、SiOC膜の収縮量分布、つまり加熱分布が変化する。
図6に示す例では、条件9(位相差が140°)の場合のSiOC膜の収縮量分布が条件8、10よりも均一である。ここで、位相差は0°以上360°未満であり、例えば、MW2の位相がMW1に比べて波長の4分の1(1/4)ずれている場合、MW1とMW2の位相差は360°×1/4=90°になる。
【0043】
コントローラ121は、温度センサ263から取得される温度データに基づいて処理条件を決定する。ここで、処理条件は、例えば、MW1およびMW2の出力条件、処理室201内の圧力、ガスの供給条件、ガスの排気条件、ボート217の回転速度などである。MW1およびMW2の出力条件は、例えば、MW1および/又はMW2の供給を継続する時間、振幅(エネルギー)、位相差、周波数などである。温度データはウエハ200内の最高温度や平均温度、ウエハ200内の温度分布、それらの時間に対する変化などである。同一の処理条件で基板処理を行った場合であっても、処理毎に処理結果にばらつきが生じることがある。温度センサ263によって測定したウエハ200の温度データを基に、処理条件(例えば、MW1およびMW2の出力条件)を変更することで、処理結果のばらつきを抑制することが可能である。
【0044】
マイクロ波発振器655を二つ搭載することにより、MW1とMW2の周波数や位相、振幅を独立に制御することが可能である。また、MW1とMW2における、位相差や供給のタイミング、振幅の比などのパラメータを詳細かつ簡易に変更することが可能となる。これらにより、ウエハ200の処理条件を詳細に制御することが可能であるため、加熱の均一性の向上や処理時間の短縮、処理結果のばらつきの抑制などが可能となる。
【0045】
(制御装置)
図7に示すように、制御部(制御装置、制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0046】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、アニール(改質)処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単にレシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0047】
I/Oポート121dは、上述のMFC241、バルブ243、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、駆動機構267、マイクロ波発振器655、周波数制御部656および位相差制御部657等に接続されている。
【0048】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、下記の制御対象を制御することが可能なように構成されている。制御対象は、例えば、MFC241による各種ガスの流量調整動作、バルブ243の開閉動作、圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263や周波数制御部656、位相差制御部657に基づくマイクロ波発振器655の出力調整動作、駆動機構267による載置台210(またはボート217)の回転および回転速度調節動作、または、昇降動作等である。
【0049】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、SSD等の半導体メモリである。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0050】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、例えば、基板上に形成されたシリコン含有膜としてのa-Si膜の改質(結晶化)方法の一例について、
図8(a)に示した処理フローに沿って説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は
図7で説明した制御部により制御される。
【0051】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0052】
まず、基板取出し工程(S801)の後、基板搬入工程(S802)が実施され、ウエハ200はゲートバルブ205の開閉動作によって所定の処理室201に搬入(ボートローディング)される。つまり、低温用のツィーザ125a-1および高温用のツィーザ125a-2はそれぞれに載置されているウエハ200を、処理室201に搬入する。
【0053】
(炉内圧力・温度調整工程:S803)
処理室201へウエハ200の搬入が完了したら、所定の圧力(例えば10Pa以上102000Pa以下)となるよう処理室201内の雰囲気が制御される。具体的には、真空ポンプ246により排気しつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整器244の弁開度がフィードバック制御され、処理室201内が所定の圧力にされる。また、圧力調整と並行して電磁波供給部が制御され、所定の温度まで加熱される。電磁波供給部によって、所定の基板処理温度まで昇温させる場合、ウエハ200が変形・破損しないように、電磁波供給部が後述する改質工程の出力よりも小さな出力で昇温を行うことが好ましい。本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0054】
(不活性ガス供給工程:S804)
炉内圧力・温度調整工程S803によって処理室201内の圧力と温度を所定の値に制御されると、駆動機構267は、シャフト255を回転させ、載置台210上のボート217を介してウエハ200を回転させる。このとき、不活性ガスがガス供給管232を介して供給される。さらにこのとき、処理室201内の圧力は10Pa以上102000Pa以下の範囲となる所定の値であって、例えば101300Pa以上101650Pa以下となるように調整される。なお、シャフト255は基板搬入工程S802時、すなわち、ウエハ200を処理室201内に搬入完了後に回転させてもよい。
【0055】
不活性ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガスやヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスおよび窒素(N2)ガスを用いることができる。この点は、後述する各工程においても同様である。
【0056】
(予備加熱工程:S805)
続いて、処理室201内を所定の圧力になると、マイクロ波発振器655-1は上述した各部を介して処理室201内にMW1を所定の出力条件で供給すると共に、マイクロ波発振器655-2は上述した各部を介して処理室201内にMW2を所定の出力条件で供給する。このようにして、ウエハ200を加熱する予備加熱処理を行う。所定の温度まで昇温させる場合、ウエハ200が変形・破損しないように、電磁波供給部が後述する改質工程の出力よりも小さな出力で昇温を行うことが好ましい。
【0057】
(第1改質工程:S806a)
処理室201内を所定の圧力となるように維持しながら、マイクロ波発振器655-1とマイクロ波発振器655-2は、上述した各部を介して処理室201内にMW1とMW2を少なくとも一部同時に供給する。
【0058】
(第2改質工程:S806b)
処理室201内を所定の圧力となるように維持しながら、マイクロ波発振器655-1とマイクロ波発振器655-2は、上述した各部を介して処理室201内にMW1とMW2を少なくとも一部同時に供給する。
【0059】
第2改質工程は、第1改質工程とはMW1およびMW2の少なくとも一方の周波数と、MW1とMW2との位相差と、のうちの少なくとも一方が異なる処理条件で行う。これにより、ウエハ200に対して加熱分布が異なる処理を行うことが可能になる。例えば、一方の改質処理(第2改質工程の処理、B処理)では、もう一方の改質処理(第1改質工程の処理、A処理)で加熱が不十分であった領域を加熱する、といった処理が可能である。これにより、基板全体に渡って均一に加熱を行うことが可能になる。
【0060】
なお、
図8(b)に示すように、第2改質工程後、第3改質工程を設けてもよい。
【0061】
(第3改質工程:S806c)
処理室201内を所定の圧力となるように維持しながら、マイクロ波発振器655-1とマイクロ波発振器655-2は、上述した各部を介して処理室201内にMW1とMW2を少なくとも一部同時に供給する。
【0062】
例えば、第3改質工程は、第2改質工程とはMW1およびMW2の少なくとも一方の周波数と、MW1とMW2との位相差と、のうちの少なくとも一方が異なる処理条件で行う。
【0063】
例えば、第2改質工程におけるMW1とMW2のうち少なくとも一方の周波数が第1改質工程と異なり、第3改質工程におけるMW1とMW2との位相差が第2改質工程と異なるようにしてもよい。
【0064】
また、第2改質工程におけるMW1とMW2との位相差が第1改質工程と異なり、第3改質工程におけるMW1とMW2のうち少なくとも一方の周波数が第2改質工程と異なるようにしてもよい。
【0065】
これにより、第1改質工程と第2改質工程とに加えて、ウエハ200に対して加熱分布が異なる処理を行うことが可能になる。例えば、第3改質工程によって、第1改質工程と第2改質工程とで加熱が不十分だった領域を主に加熱することが可能である。これにより、さらにウエハ200全体に渡って均一に加熱を行うことが可能である。
【0066】
第1改質工程および第2改質工程、または第1改質工程から第3改質工程においてマイクロ波発振器655-1,655-2が制御されることで、ウエハ200が所定の処理温度まで加熱されて、予め定められた時間、当該処理温度が維持される。このようにマイクロ波発振器655-1,655-2が制御されることでウエハ200の表面上に形成されたa-Si膜の改質処理が行われる。
【0067】
コントローラ121は、実行中の処理における温度センサ263から取得される温度データに基づいて、次工程以降に実行される処理における処理条件を決定するようにしてもよい。例えば、第1改質工程においてウエハ200が基準温度に到達するまでの時間が基準値よりも長かった場合、第2改質工程および第3改質工程の少なくとも一方においてMW1とMW2の供給を継続する時間を長くするのが好ましい。これにより、処理結果のばらつきを抑制することが可能であるので、均一に加熱を行うことが可能になる。
【0068】
上述では、ウエハ200全体を加熱する処理を例について記載したが、ウエハ200の少なくとも一部の物質、例えばウエハ200上に存在する特定の物質(例えば、a-Si)を、選択的に加熱する処理に用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0069】
また、第1改質工程と第2改質工程と第3改質工程のうち少なくとも1つにおいて供給されるMW1とMW2のうち少なくとも一方の周波数は、ウエハ200の少なくとも一部を構成する物質にマイクロ波を照射した際に発生する熱量が最大となる周波数であるのが好ましい。
【0070】
(基板搬出工程:S807)
処理室201内の圧力が大気圧復帰された後、ゲートバルブ205が開放されて処理室201と搬送室203とが空間的に連通される。その後、ボート217に載置されている加熱(処理)後の1枚のウエハ200が移載機125の高温用のツィーザ125a-2によって、搬送室203に搬出される。
【0071】
(基板冷却工程:S808)
高温用のツィーザ125a-2によって搬出された加熱(処理)後の1枚のウエハ200は、移載装置125b、移載装置エレベータ125cの連続動作により、ウエハ冷却用載置具108まで移動される。そして、高温用のツィーザ125a-2によって、ウエハ冷却用載置具108内に、2枚のウエハ200が載置され、所定時間載置されることで冷却される。
【0072】
(基板収容工程:S809)
基板冷却工程S808によって冷却された2枚のウエハ200は、ウエハ冷却用載置具108から取り出され、所定のポッド110に搬送されて収容される。
【0073】
以上説明した実施形態は、適宜変更して用いることができ、その効果も得ることができる。例えば、上述の説明では、シリコンを主成分とする膜として、a-Si膜をポリシリコン膜に改質する処理について記載した。これに限らず、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)のうち、少なくとも1つ以上を含むガスを供給させて、ウエハ200の表面に形成された膜を改質しても良い。例えば、ウエハ200に、高誘電体膜としてのハフニウム酸化膜(HfxOy膜)が形成されている場合に、酸素を含むガスを供給しながらマイクロ波を供給して加熱させることによって、ハフニウム酸化膜中の欠損した酸素を補充し、高誘電体膜の特性を向上させることができる。
【0074】
なお、ここでは、ハフニウム酸化膜について示したが、これに限らず、下記の少なくともいずれかを含む金属元素を含む酸化膜、すなわち、金属系酸化膜を改質する場合においても、好適に適用可能である。金属元素は、例えば、アルミニウム(Al)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)等である。すなわち、上述の成膜シーケンスは、ウエハ200上に形成される下記の金属系酸化膜を改質する場合にも、好適に適用することが可能となる。金属系酸化膜は、例えば、TiOCN膜、TiOC膜、TiON膜、TiO膜、ZrOCN膜、ZrOC膜、ZrON膜、ZrO膜、HfOCN膜、HfOC膜、HfON膜、HfO膜、TaOCN膜、TaOC膜、TaON膜、TaO膜、NbOCN膜、NbOC膜、NbON膜、NbO膜、AlOCN膜、AlOC膜、AlON膜、AlO膜、MoOCN膜、MoOC膜、MoON膜、MoO膜、WOCN膜、WOC膜、WON膜およびWO膜等である。
【0075】
また、高誘電体膜に限らず、不純物がドーピングされたシリコンを主成分とする膜を加熱させるようにしてもよい。シリコンを主成分とする膜としては、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)、SiOC膜、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜がある。不純物としては、例えば、臭素(B)、炭素(C)、窒素(N)、Al、リン(P)、ガリウム(Ga)、砒素(As)などの少なくとも1つ以上を含む。
【0076】
また、メタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェニール樹脂などの少なくともいずれかをベースとするレジスト膜であってもよい。
【0077】
また、上述では、半導体装置の製造工程の一工程について記したが、これに限らず、液晶パネルの製造工程のパターニング処理、太陽電池の製造工程のパターニング処理や、パワーデバイスの製造工程のパターニング処理などの、基板を処理する技術にも適用可能である。
【0078】
なお、本開示は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0079】
更に、上述した各構成、機能、制御部であるコントローラ等は、それらの一部又は全部を実現するプログラムを作成する例を中心に説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。すなわち、処理部の全部または一部の機能は、プログラムに代え、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。
【0080】
上述の態様では、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
100・・・基板処理装置
201・・・処理室
655・・・マイクロ波発振器(電磁波源)
656・・・周波数制御部