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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099861
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20240719BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20240719BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240719BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B1/111
G02B1/14
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003443
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平出 稜
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA03
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA15
2H042BA20
2K009AA04
2K009AA15
2K009BB11
2K009CC09
2K009CC24
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AJ06B
4F100AK03B
4F100AK15B
4F100AK16B
4F100AK25A
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK49B
4F100AK51A
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA02H
4F100CA23A
4F100CA23H
4F100CC022
4F100CC02A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EJ422
4F100EJ42A
4F100EJ542
4F100EJ54A
4F100GB90
4F100JB14A
4F100JB14H
4F100JK09
4F100JN01
4F100JN06
(57)【要約】
【課題】チラつきが少なく視認性が良好である光学積層体の提供と共に、低屈折率層を付加することで更に優れた反射防止性をも付加可能な光学積層体を提供する。
【解決手段】光透過性を有する基材フィルムに光硬化性樹脂組成物の硬化層が積層されており、前記光硬化性樹脂組成物がフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートと、重合性官能基を有する化合物と、シリカと、光重合開始剤と、を含み、前記シリカが平均粒子径300~800nmであるナノシリカと、平均粒子径1.0~5.0μmである表面処理シリカを含むことを特徴とする光学積層体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基材フィルムに光硬化性樹脂組成物の硬化層が積層されており、前記光硬化性樹脂組成物がフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)と、重合性官能基を有する化合物(B)と、シリカ(C)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(C)が平均粒子径300~800nmであるナノシリカ(c1)と、平均粒子径1.0~5.0μmである表面処理シリカ(c2)を含むことを特徴とする光学積層体。
【請求項2】
前記(A)の配合量が、(A)と(B)の固形分合計に対し5~40重量%であることを特徴とする請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
前記(C)の配合量が、固形分全体に対し2~20重量%であることを特徴とする請求項2記載の光学積層体。
【請求項4】
前記(c1)の配合量が、(C)全体に対し70~95重量%であることを特徴とする請求項1記載の光学積層体。
【請求項5】
前記1~4いずれか記載の光学積層体の上に更に低屈折率層が積層されたことを特徴とする光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性を有する基材フィルムに光硬化性樹脂組成物の硬化層が積層された光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置と入力手段を兼ね備えたタッチパネルは幅広い分野で使用されているが、その代表例であるカーナビやスマートフォンなどは、画像の視認性を向上させるため、表面に微細な凹凸が形成された防眩性フィルムを用い、蛍光灯や太陽光などの反射光を散乱させることで映り込みを目立たなくしている。
【0003】
出願人はこうした用途に用いることが可能な防眩フィルムとして、過去に多官能(メタ)アクリレートと特定構造のフッ素変性樹脂と透光性微粒子と2種類以上のレベリング剤を含む樹脂組成物を硬化させた防眩性フィルムを発明している(特許文献1)。この発明は、指紋がつきにくく外光の光が乱反射しにくいため、視認性が非常に良好な優れたものであった。しかしながら、従来のディスプレイと比較し、ピクセル数が大幅に増加した高精細なディスプレイの場合は、従来の防眩フィルムを用いると、映像光の乱反射に起因するチラつきが顕著になり、画像の視認性を著しく損なうという課題が明らかになってきた。
【0004】
こうしたチラつきに対する視認性の向上要求に加え、最近では蛍光灯などの外部光源の反射が少ない反射防止特性を付加することにより、更に視認性を向上させる要求も強くなり、高精細でちらつき感がない良好な視認性と共に、反射防止性能を兼ね備えたハードコートフィルムを実現するためには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5602999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、チラつきが少なく視認性が良好である光学積層体の提供と共に、低屈折率層を付加することで更に優れた反射防止性をも付加可能な光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本出願に係る請求項1の発明は、光透過性を有する基材フィルムに光硬化性樹脂組成物の硬化層が積層されており、前記光硬化性樹脂組成物がフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)と、重合性官能基を有する化合物(B)と、シリカ(C)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(C)が平均粒子径300~800nmであるナノシリカ(c1)と、平均粒子径1.0~5.0μmである表面処理シリカ(c2)を含むことを特徴とする光学積層体を提供する。
【0008】
また請求項2の発明は、前記(A)の配合量が、(A)と(B)の固形分合計に対し5~40重量%であることを特徴とする請求項1記載の光学積層体を提供する。
【0009】
また請求項3の発明は、前記(C)の配合量が、固形分全体に対し2~20重量%であることを特徴とする請求項2記載の光学積層体を提供する。
【0010】
また請求項4の発明は、前記(c1)の配合量が、(C)全体に対し70~95重量%であることを特徴とする請求項1記載の光学積層体を提供する。
【0011】
また請求項5の発明は、前記1~4いずれか記載の光学積層体の上に更に低屈折率層が積層されたことを特徴とする光学積層体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学積層体は、画像のチラつき感を抑制でき視認性が良好であると共に、反射防止特性も付与することが可能であるため、高精細なディスプレイ用のハードコート(以下HCという)フィルムとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の光学積層体に用いる光硬化性樹脂組成物は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)と、重合性官能基を有する化合物(B)と、シリカ(C)と、光重合開始剤(D)を含む。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0015】
本発明で使用するフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)は、HC樹脂層を高屈折率化するため配合する。反射防止フィルムの反射率を低くするためには、HC樹脂層の上に積層された低屈折率層との屈折率差を大きくすることが有効であるため、HC樹脂層の屈折率をより高くするか、低屈折率層の屈折率をより低くする必要がある。(A)の配合によりHC樹脂層の屈折率を高くすることで、低屈折率層を付加した際に、フィルムの反射率を低減することができる。
【0016】
前記(A)の屈折率(nD25、硬化後)は、一般的な(メタ)アクリレートが1.5前後であるのに対し、1.6前後と約0.1高いため、ハードコート樹脂層の屈折率をより高くできる。(A)の屈折率(nD25、硬化後)は1.555~1.675が好ましく、1.600~1.655が更に好ましい。この範囲とすることで、ハードコート樹脂層の屈折率を高くする効果が顕著となり、反射率低く抑えることが可能となる。
【0017】
前記(A)のフルオレン骨格は、3環構造を有する芳香族の炭化水素である。特にベンゼン環を結合させた9,9-ビスアリールフルオレン骨格の場合は、嵩高いカルド(ちょうつがい)構造となり、多数の芳香環を有することに起因して高屈折率、高耐熱性、低収縮、低複屈折等の特性を有しており好ましい。官能基数は、硬化物の剛性を高めすぎないようにする点で4官能以下が好ましく、2官能以下が更に好ましい。
【0018】
前記9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレートとしては、例えば一般式[2]で表すことができる。
・・・式[2]
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、L1及L2はそれぞれ独立に、置換基を含んでいてもよいフェニレン基を表し、L3及びL4はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、m及びnは、0≦m≦40、0≦n≦40及び0≦m+n≦40を満たす整数を表す)
【0019】
前記(A)の市販品としては、例えばオグゾールEA-0200、EA-0300、EA-F5710(商品名:大阪ガスケミカル社製)等が挙げられる。これらの中では、屈折率及び硬化収縮が小さく、入手性が良好な点でオグゾールEA-0200(9,9-ビス(4-アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン、硬化後nD25:1.626)が好ましい。
【0020】
前記(A)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し5~35重量%であることが好ましく、10~30重量%であることが更に好ましく、15~28重量%であることが特に好ましい。5重量%以上とすることで屈折率を高くすることが可能となり、35重量%以下とすることで充分な硬度を確保することができる。またバインダー成分である(A)と(B)の合計に対しては、5~40重量%であることが好ましく、10~35重量%であることが更に好ましく、20~32重量%であることが特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する重合性官能基を有する化合物(B)は、(A)と共にHC層を形成する主要樹脂である。例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。また低分子量バインダーとしては、脂肪族、脂環族、ポリエーテル骨格、水酸基及びアミノ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート等(但し(A)を除く)を挙げることができ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、ウレタン結合に由来する水素結合の凝集力により優れた耐擦傷性を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(以下ウレアクという)を含むことが好ましい。
【0022】
前記多官能ウレアクは、例えばポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応で得ることができる。使用するポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、HDIイソシアヌレート体、IPDIイソシアヌレート体などがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中では耐候性が高く黄変しにくい脂肪族及び脂環族のジイソシアネートが好ましく、特にそれらの中では延伸性が高いHDIが好ましい。
【0023】
前記多官能ウレアクにおいて使用する水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2官能ではトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどが、3官能以上ではジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがある。これらの中では3官能で、硬化性の高いペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETAという)が好ましい。
【0024】
前記(B)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し50~90重量%が好ましく、55~80重量%が更に好ましく、60~70重量%が特に好ましい。50重量%以上とすることで十分な皮膜硬化性が確保でき、90重量%以下とすることで反射率やチラつきを低減し、良好な視認性を確保することができる。
【0025】
本発明で使用するシリカ(C)は、画像のチラつき感を抑制し視認性を向上させる目的で配合する。(C)は、平均粒子径300~800nmであるナノシリカ(c1)と、平均粒子径1~5μmである表面処理シリカ(c2)の2種類を含む。特に(c1)はチラつきの低減に効果があり、(c2)は防眩性を向上させて外光の映り込みを抑制し、両者の併用効果により、高精細な画像に対して視認性を向上させることができる。
【0026】
本発明で使用するナノシリカ(c1)は、チラつきを低減させると共に、反射率の低減にも寄与する。バインダーへの分散性が向上できる点で、表面処理されたナノシリカであることが好ましい。平均粒子径は300~800nmであり、400~700nmが好ましく、450~600nmが更に好ましい。300nm未満では高精細な視認性を確保できない場合があり、800nm超では同じく高精細な視認性確保と、低い反射率を確保できない場合がある。なお平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0027】
前記(c1)の配合量は、組成物の固形分全量に対し1.0~15重量%が好ましく、2.0~10重量%が更に好ましく、3.0~8.0重量%が特に好ましい。また(C)に対する配合比率は70~95重量%が好ましく、75~93重量%が更に好ましく、80~92重量%が特に好ましい。70重量%以上とすることで高精細な視認性を確保でき、95重量%以下とすることで十分な防眩性を確保することが可能となる。市販の(c1)としてはSC2050-LNJ(商品名:アドマテックス社製、平均粒子径500nm)等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する表面処理シリカ(c2)は、硬化層表面に凹凸を形成して入射光を乱反射させ、外部光源の映り込みを軽減して視認性を向上させるために配合する。平均粒子径は1.0~5.0μmであり、1.5~4.0μmが好ましく、2.0~3.0μmが更に好ましい。1.0μm未満では表面の凹凸形成がうまく行かず、防眩性が低下する場合があり、5.0μm超の場合は凹凸が大きくなりすぎ、その構造がレンズの働きをして明るさにムラが生じチラつきが生じやすくなる。なお平均粒子径は、MEK中に固形分10%で分散させた後、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0029】
前記(c2)の配合量は、組成物の固形分全量に対し0.1~3.0重量%が好ましく、0.3~2.0重量%が更に好ましく、0.6~1.5重量%が特に好ましい。0.1重量%以上とすることで防眩性の発現が期待でき、3.0重量%以下とすることで十分な全光線透過率を確保できる。また(c1)と(c2)を含む(C)全体の配合量は、組成物の固形分全量に対し1.0~16重量%が好ましく、3.0~15重量%が更に好ましい。この範囲内とすることで、高精細な画像に対しても、十分に視認性を向上させることができる。
【0030】
本発明で使用される光重合開始剤(D)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad184及び同2959(商品名:iGM社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)などがある。
【0031】
前記(D)の光硬化樹脂成分100重量部に対する比率は、1~10重量部が好ましく、3~8重量部が更に好ましい。1重量部以上とすることで充分な硬化性が発現し、10重量部以下とすることで過剰添加とならず塗膜の黄変や保存性低下を防ぐことができる。
【0032】
また、本発明に用いる光硬化性樹脂組成物(以下HC樹脂組成物という)には必要に応じて撥水化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、スリップ剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0033】
本発明に用いるHC樹脂組成物は、光透光性を有する基材フィルムへの塗工性を向上させるため、溶剤にて固形分が10~70%に希釈される。溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン(以下MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGM),ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
本発明に用いるHC樹脂が塗布される光透光性を有する基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム(以下TACフィルムという)、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、シクロオレフィン(コ)ポリマーフィルム等を例示することができる。
【0035】
なかでも価格、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが、また光学異方性がなく良好な光学特性を有する点からTACフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね23μm~250μmであればよい。
【0036】
本発明に用いるHC樹脂組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などを利用できる。また乾燥膜厚は、0.5μm~10μmが好ましい。
【0037】
本発明に用いるHC樹脂組成物を塗布した後は60~120℃で乾燥し、紫外線照射機を用いて硬化させる。紫外線を照射する場合の光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプなどがあげられ、硬化条件としては500mW/cm~3000mW/cmの照射強度で、積算光量として50~2,000mJ/cmが例示される。また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
【0038】
本発明に用いるHC樹脂層の上に低屈折率層を形成することで、反射防止機能を有する反射防止フィルムとすることができる。反射率を低くするためには、HC樹脂層と低屈折率層との屈折率差を大きくすれば良く、屈折率は1.45以下が好ましく、1.40以下が更に好ましい。低屈折率層を形成するための市販のコーティング剤としてはZ-825-18AF-5M(商品名:アイカ工業社製、屈折率1.36)等が挙げられる。
【0039】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。また表記が無い場合は、室温は25℃、相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は重量部を示す。
【0040】
実施配合例1~7
(A)としてEA-0250P(商品名:大阪ガスケミカル社製、9,9-ビス(4-アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン、固形分50重量%)を、(B)としてウレアクA(HDIとPETAの反応物)を、(c1)としてSC2050-LNJ(商品名:アドマテックス社製、平均粒子径500nm、固形分重量70%)を、(c2)としてSS-50F(商品名:東ソー社製、疎水性シリカ、平均粒子径2.5μm)を、(D)としてOmnirad2959(商品名:iGM社製)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌してHC樹脂組成物である実施配合例1~7を調整した。
【0041】
比較配合例1~6
実施例で用いた材料の他、(c1)とは平均粒子径が異なるナノシリカとしてMEK-ST(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO量30%、MEK分散)及びMEK-ST-ZL(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径100nm、SiO量30%、MEK分散)を、(c2)とは平均粒子径が異なるシリカとしてC-543(商品名:水澤化学社製、疎水性シリカ、平均粒子径6.2μm)を用い、固形分が10%となるよう希釈溶剤としてMEKを配合し、表2記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌してHC樹脂組成物である比較配合例1~6を調整した。
【0042】
光学積層体(HCフィルム)の作成
A4サイズのTACフィルムTD80UL(商品名:富士フィルム社製、80μm)に、上記で調製した実施配合例及び比較配合例のHC樹脂組成物を、硬化時の膜厚が5μmとなるよう塗布し、恒温槽で80℃×1分乾燥後、フュージョンUVシステムジャパン製の無電極UV照射装置F300S/LC-6Bを用い、Hバルブで出力1200mW/cm2、積算光量200mJ/cm2で紫外線硬化させた。
【0043】
光学積層体(反射防止フィルム)の作成
上記で得られたHCフィルムの上にZ-825-18AF-5M(商品名:アイカ工業社製、低屈折率アクリル系コーティング剤)を膜厚が100nmとなるように塗布し、恒温槽で80℃×1分乾燥後、同上のUV照射装置を用い、N2雰囲気下で、Hバルブで出力1200mW/cm2、積算光量200mJ/cm2で紫外線硬化させ、実施例1~7及び、比較例1~6の光学積層体を調製した。
【0044】
表1
【0045】
表2
【0046】
評価方法は以下の通りとした。
【0047】
塗膜ヘイズ:JIS K7361-1に準拠し、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用い測定し、3~6%を〇、そこから外れる場合を×とした。
【0048】
最低反射率:塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて380nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットし、最小の反射率を測定した。評価は0.5%以下を〇、0.5%超を×とした。
【0049】
鉛筆硬度:JIS K5600-5-4(1999年版)に準拠し、東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いて750g荷重で測定し、3H以上を○、3H未満を×とした。
【0050】
防眩性:iPad(登録商標:アップル社製)の電源を消した画面上にハードコートフィルムを配置し、フィルム上で反射させた蛍光灯の光を目視で確認し、蛍光灯の輪郭がぼやけて見える場合を○、輪郭がはっきりと見える場合を×とした。
【0051】
高精細性:iPad(登録商標:アップル社製)に表示した緑色画面上にハードコートフィルムを配置し、目視にてチラつきが無い場合を○、ある場合を×とした。
【0052】
実施例評価結果

【0053】
比較例評価結果
【0054】
実施例は塗膜ヘイズ、鉛筆硬度、防眩性、高精細性すべての面で問題はなく良好であった。またHC層上に低屈折率層を設けることで最小反射率を低減でき、反射防止層を形成することができた。
【0055】
一方、(c2)を含まない比較例1はヘイズが低く防眩性も劣り、(c1)を含まない比較例2及び、(c1)とは平均粒子径が異なるナノシリカを用いた比較例3及び4は、最小反射率と高精細性が劣っていた。また(c2)とは平均粒子径が異なる表面処理シリカを用いた比較例5はヘイズが高くまた高精細性も劣り、(A)を含まない比較例6は最小反射率が劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。