(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099863
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電気化学式水素昇圧システム
(51)【国際特許分類】
C25B 15/00 20060101AFI20240719BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20240719BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240719BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C25B15/00 302A
C25B1/02
C25B9/00 Z
C25B15/00 303
C25B15/08 302
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003445
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】清水 航
(72)【発明者】
【氏名】大門 鋭刀
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BB05
4K021BC09
4K021CA08
4K021CA11
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電解質膜が乾燥した場合、電解質膜に含有させる水分布を短時間で略均一化することができ、水素昇圧スタックを早期に始動することができる、電気化学式水素昇圧システムを提供する。
【解決手段】電気化学式水素昇圧システム(10)は、電源装置(26)、水素供給弁(50)、経路接続器(62)および給水器(60)を制御する制御装置(18)を備える。制御装置(18)は、運転開始指令を受けると、所定の給水期間が経過するまで水源から水素昇圧スタックに液水を供給させる。その後、制御装置(18)は、水素昇圧スタック(24)への水素ガスの供給を開始させる。所定の水素ガス供給期間が経過した以降に、制御装置(18)は、水素昇圧スタック(24)への電流の供給を開始させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む単位セルが備えられる水素昇圧スタックと、
前記水素昇圧スタックに電流を供給して、前記水素昇圧スタックに供給される水素ガスよりも高い圧力の高圧水素ガスを前記水素昇圧スタックに発生させる電源装置と、
前記単位セルのアノード側に連通する供給経路を介して前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給する水素供給源と、
を備える電気化学式水素昇圧システムであって、
前記供給経路に設けられる水素供給弁と、
給水経路を介して水源を前記供給経路に接続し、または、前記接続を切断する経路接続器と、
前記水源の液水を前記水素昇圧スタックに供給する給水器と、
前記電源装置、前記水素供給弁、前記経路接続器および前記給水器を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、運転開始指令を受けると、所定の給水期間が経過するまで前記水源から前記水素昇圧スタックに前記液水を供給させ、その後、前記水素昇圧スタックへの前記水素ガスの供給を開始させ、所定の水素ガス供給期間が経過した以降に、前記水素昇圧スタックへの前記電流の供給を開始させる、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
導出経路を介して水蒸気を前記供給経路に供給する加湿器と、
前記導出経路に設けられ、前記制御装置に制御される導出弁と、
を備え、
前記制御装置は、前記液水の供給が停止されてから、前記電流の供給が開始されるまでの間、前記導出弁を閉弁し、前記電流の供給が開始された後に、前記導出弁を開弁する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記水素昇圧スタックの電圧または抵抗を示す電気値を検出する検出器を備え、
前記水素ガス供給期間が経過した後、前記水素昇圧スタックの電流が所定値である場合の前記電気値が所定の閾値以下である場合、前記制御装置は、前記導出弁を開弁する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記水素ガス供給期間が経過した後、前記水素昇圧スタックの電流が所定値である場合の前記電気値が所定の閾値以下にならない場合、前記制御装置は、前記水素昇圧スタックへの前記水素ガスおよび前記電流の供給を停止させる、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項5】
請求項3に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記水素ガス供給期間が経過した後、前記水素昇圧スタックの電流が所定値である場合の前記電気値が所定の閾値以下にならない場合、前記制御装置は、設定時間を経過するまで、前記電流の供給を停止させるか、前記電流の大きさを小さくさせる、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項6】
請求項2に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記水源は、前記加湿器である、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項7】
請求項1または2に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記供給経路から分岐し、分岐部分よりも前記供給経路の下流に接続される除湿経路に設けられ、前記水素ガスを除湿する除湿器と、
前記水素供給源から供給される前記水素ガスを、前記制御装置の制御にしたがって前記除湿経路に流すか否かを切り替える経路切替器と、
を備え、
前記制御装置は、前記液水の供給が停止されてから、前記電流の供給が開始されるまでの間、前記除湿経路に前記水素ガスを流し、前記除湿器により除湿された前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給させる、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記水素昇圧スタックの運転停止期間が所定の停止期間閾値を超える場合、前記制御装置は、前記水源から前記水素昇圧スタックに前記水を供給させる、電気化学式水素昇圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学式水素昇圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する電気化学式水素昇圧システムに関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1の電気化学式水素昇圧システムは、水素を昇圧する電気化学式水素昇圧装置を含む。電気化学式水素昇圧装置は、水素昇圧スタック(水素昇圧部)と、電源装置(電源)とを備える。水素昇圧スタックには、電解質膜、アノード給電体、カソード給電体を含む単位セルが備えられる。電源装置は、水素昇圧スタックに電流を供給して、水素昇圧スタックに供給される水素ガスよりも高圧の高圧水素ガスを水素昇圧スタックに発生させる。
【0004】
特許文献1には、電解質膜の湿潤状態に関する情報に基づいて、未反応の水素ガスが排出される水素昇圧スタックの排出口を規制し、水蒸気を単位セルに滞留させて電解質膜を湿潤状態にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電気化学式水素昇圧装置の停止期間が長くなるほど、電解質膜が乾燥する傾向にある。電解質膜が乾燥した場合、電解質膜に含水する水分の分布が不均一になり易い。特許文献1の上記技術を用いると、電解質膜が再び湿潤状態になると考えられる。しかし、電解質膜に含水する水分の分布が概ね均一になるまでには大幅に時間が必要になるという課題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む単位セルが備えられる水素昇圧スタックと、前記水素昇圧スタックに電流を供給して、前記水素昇圧スタックに供給される水素ガスよりも高い圧力の高圧水素ガスを前記水素昇圧スタックに発生させる電源装置と、前記単位セルのアノード側に連通する供給経路を介して前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給する水素供給源と、を備える電気化学式水素昇圧システムであって、前記供給経路に設けられる水素供給弁と、給水経路を介して水源を前記供給経路に接続し、または、前記接続を切断する経路接続器と、前記水源の液水を前記水素昇圧スタックに供給する給水器と、前記電源装置、前記水素供給弁、前記経路接続器および前記給水器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、運転開始指令を受けると、所定の給水期間が経過するまで前記水源から前記水素昇圧スタックに前記液水を供給させ、その後、前記水素昇圧スタックへの前記水素ガスの供給を開始させ、所定の水素ガス供給期間が経過した以降に、前記水素昇圧スタックへの前記電流の供給を開始させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。その結果、水素昇圧スタックを早期に始動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、スタック始動処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、変形例による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。電気化学式水素昇圧システム10は、電気化学式水素昇圧装置12と、水素供給源14と、加湿器16と、制御装置18とを備える。
【0012】
電気化学式水素昇圧装置12は、電気化学的に水素ガスを圧縮する装置である。電気化学式水素昇圧装置12は、水素昇圧スタック24と、電源装置26とを有する。
【0013】
水素昇圧スタック24は、導入ポートPT1と、排出ポートPT2と、高圧水素ポートPT3とを有する。導入ポートPT1は、水素ガスを導入するポートであり、各単位セル28のアノード側に連通する。排出ポートPT2は、未反応の水素ガスを排出するポートであり、各単位セル28のアノード側に連通する。高圧水素ポートPT3は、単位セル28において生成される高圧水素ガスを排出するポートであり、各単位セル28のカソード側に連通する。
【0014】
複数の単位セル28は、それぞれ同じ構成である。各単位セル28は、電解質膜30と、電解質膜30の一方の面に設けられたアノード電極32と、電解質膜30の他方の面に設けられたカソード電極34とを有する。
【0015】
電解質膜30は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。電解質膜30は、そのアノード側が繊維状の骨格を含む保護シート(図示せず)で補強されてもよい。また、電解質膜30は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。電解質膜30は、アノード電極32およびカソード電極34に挟持される。
【0016】
アノード電極32は、電解質膜30の一方の面に接合されるアノード触媒層と、アノード触媒層に積層されるアノード給電体とを含む。カソード電極34は、電解質膜30の他方の面に接合されるカソード触媒層と、カソード触媒層に積層されるカソード給電体とを含む。アノード給電体およびカソード給電体は、水素ガスが流通可能な構造に形成される。
【0017】
アノード電極32とカソード電極34と間に電流が供給されると、導入ポートPT1からアノード電極32に供給される水素ガスの一部は触媒反応によりプロトン(H+イオン)に変換される。変換されたプロトンは、電解質膜30介してカソード電極34に輸送される。カソード電極34では、輸送されたプロトンを用いた電気化学反応により高圧水素ガスが発生する。
【0018】
高圧水素ガスは、高圧水素ポートPT3から流出する。高圧水素ポートPT3から流出する高圧水素ガスは、排出経路35を介して、例えばタンクに供給される。排出経路35は、水素昇圧スタック24から排出される高圧水素ガスを導く経路である。排出経路35には背圧弁等が設けられる。
【0019】
アノード電極32で未反応の水素ガスは、排出ポートPT2から流出する。排出ポートPT2から流出する水素ガスは、低圧排出経路36を介して密閉容器38内に供給されるか、低圧排出経路36から分岐するベント経路40を介して排気される。低圧排出経路36には排出弁42およびポンプ44が設けられる。ベント経路40にはベント弁45が設けられる。排出弁42およびベント弁45の各々は、制御装置18の制御に応じて開弁または閉弁する。ポンプ44は、制御装置18の制御に応じて駆動し、上流側から下流側への流動力を水素ガスに付与する。
【0020】
電源装置26は、水素昇圧スタック24に電流を供給する。これにより、水素昇圧スタック24に供給される水素ガスよりも高い圧力の高圧水素ガスが水素昇圧スタック24に発生する。
【0021】
電源装置26は、各単位セル28のアノード電極32およびカソード電極34に電圧を印加し、当該単位セル28に電流を供給する。電源装置26は、制御装置18の制御に応じて、各単位セル28に供給される電流の大きさを調整可能に形成される。単位セル28に供給される電流値が大きくなるほど、当該単位セル28において発生する高圧水素ガスの発生量が多くなる。
【0022】
水素供給源14は、水素ガスを供給可能な装置である。水素供給源14は、水素ガスが貯留されたガスシリンダを複数集結したカードルであってもよい。或いは、水素供給源14は、水素ガスが貯留されたタンクであってもよい。水素供給源14は、供給経路46を介して水素ガスを水素昇圧スタック24に供給する。
【0023】
供給経路46は、水素供給源14から水素昇圧スタック24に水素ガスを導く経路である。供給経路46の上流端は、水素供給源14の図示しない出力ポートに接続される。供給経路46の下流端は、水素昇圧スタック24の導入ポートPT1に接続される。供給経路46には、上流側から下流側に向かって、減圧弁48、水素供給弁50、流量調整弁52がこの順に設けられる。
【0024】
減圧弁48は、
図1では1つであるが、2つ以上であってもよい。水素供給弁50は、制御装置18の制御に応じて開弁または閉弁する。流量調整弁52は、制御装置18の制御に応じて、水素昇圧スタック24に供給される水素ガスの流量を調整する。
【0025】
加湿器16は、水素ガスを加湿する装置である。加湿器16は、密閉容器38を有する。加湿器16は、密閉容器38に貯留される液水を気化する。加湿器16は、導出経路54を介して供給経路46に水蒸気を供給する。
【0026】
導出経路54は、加湿器16から供給経路46に水蒸気を導く経路である。導出経路54の上流端は、密閉容器38の気相空間に配置される。導出経路54の下流端は、水素供給弁50と流量調整弁52との間の供給経路46に接続される。導出経路54には、導出弁56が設けられる。導出弁56は、制御装置18の制御に応じて開弁または閉弁する。
【0027】
密閉容器38は、給水経路58を介して供給経路46に連通する。給水経路58は、密閉容器38に貯留された液水を供給経路46に導く経路である。給水経路58には、給水器60が設けられる。給水経路58と供給経路46との接続部分には経路接続器62が設けられる。
【0028】
給水器60は、密閉容器38に貯留される液水を水素昇圧スタック24に供給する機器である。給水器60は、制御装置18の制御に応じて駆動し、上流側から下流側への流動力を水素ガスに付与する。給水器60として、ポンプ等が挙げられる。
図1では、給水器60がポンプである場合の例が示されている。経路接続器62は、給水経路58を介して加湿器16の密閉容器38を供給経路46に接続し、または、当該接続を切断する機器である。経路接続器62として、三方弁等が挙げられる。
図1では、経路接続器62が三方弁である場合の例が示されている。経路接続器62が密閉容器38を供給経路46に接続する場合、水素供給源14から水素昇圧スタック24に水素ガスは供給されない。一方、経路接続器62が供給経路46への密閉容器38の接続を遮断する場合、水素供給源14から水素昇圧スタック24に水素ガスが供給される。
【0029】
加湿器16は、バブラー式加湿器であってもよい。
図1は、加湿器16がバブラー式加湿器である場合の例を示している。この場合、加湿器16は、気泡発生器64を有する。気泡発生器64は、密閉容器38内の液水中に配置される。気泡発生器64は、供給経路46から導入経路66を介して供給される水素ガスを気泡として液水中に放出する。これにより、水素ガスは、水分(水蒸気)を含有する。水分を含有する水素ガスは、導出経路54を介して供給経路46に供給される。
【0030】
導入経路66は、供給経路46を流れる水素ガスの一部を、供給経路46から気泡発生器64に導く経路である。導入経路66の上流端は、供給経路46における導出経路54の下流端の接続箇所よりも上流側の箇所に接続される。導入経路66の下流端は、気泡発生器64に接続される。導入経路66には、導入弁68が設けられる。導入弁68は、制御装置18の制御に応じて開弁または閉弁する。
【0031】
なお、密閉容器38に貯留される液水の温度を調整する温調装置70が備えられてもよい。温調装置70は、熱交換器72と、熱交換器72と密閉容器38とを循環する循環経路74と、循環経路74に設けられたポンプ76とを備える。温調装置70は、ポンプ76を駆動して、循環経路74を介して熱交換器72と密閉容器38との間で液水を循環させて、熱交換器72との熱交換により液水を設定温度に調整する。
【0032】
制御装置18は、電気化学式水素昇圧システム10を統括するコンピュータである。制御装置18は、1以上のプロセッサと、記憶媒体とを含む。記憶媒体は、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。プロセッサとしては、CPU、MCU等が挙げられる。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0033】
制御装置18には、検出器78が接続される。制御装置18は、検出器78を用いて、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の水素昇圧スタック24の電気値を取得する。電気値は、電圧または抵抗を示す値である。水素昇圧スタック24の電圧が、水素昇圧スタック24の運転に好適な電圧である基準電圧と比較して上昇するほど、単位セル28に滞留する水分が多くなる関係にある。同様に、水素昇圧スタック24の抵抗が、水素昇圧スタック24の運転に好適な抵抗である基準抵抗と比較して上昇するほど、単位セル28に滞留する水分が多くなる関係にある。そのため、制御装置18は、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の電気値を取得することで、単位セル28に滞留する水分量を捕捉し得る。
【0034】
検出器78は、水素昇圧スタック24に設けられる。検出器78は、電圧センサであってもよい。この場合、制御装置18は、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合に電圧センサによって検出される電圧値(検出電圧値)を、電気値として取得する。検出器78は、抵抗センサであってもよい。この場合、制御装置18は、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合に抵抗センサによって検出される抵抗値(検出抵抗値)を、電気値として検出する。
【0035】
電圧または抵抗は、オームの法則を用いて算出し得る。そのため、検出器78により検出される値を用いて、制御装置18が、検出電圧値または検出抵抗値を算出してもよい。
【0036】
検出電圧値は、水素昇圧スタック24に備えられる複数の単位セル28の両端に印加される電圧値であってもよい。或いは、検出電圧値は、複数の単位セル28の中から選択された1つの単位セル28の電圧値であってもよい。或いは、検出電圧値は、複数の単位セル28の各々の電圧値の統計値であってもよい。或いは、検出電圧値は、複数の単位セル28の中から選択された2つ以上の単位セル28の電圧値の統計値であってもよい。統計値としては、例えば、平均値、中央値、合計値等が挙げられる。
【0037】
同様に、検出抵抗値は、水素昇圧スタック24に備えられる複数の単位セル28の両端で検出される抵抗値であってもよい。或いは、検出抵抗値は、複数の単位セル28の中から選択された1つの単位セル28の抵抗値であってもよい。或いは、検出抵抗値は、複数の単位セル28の各々の抵抗値の統計値であってもよい。或いは、検出抵抗値は、複数の単位セル28の中から選択された2つ以上の単位セル28の抵抗値の統計値であってもよい。統計値としては、例えば、平均値、中央値、合計値等が挙げられる。
【0038】
制御装置18は、運転開始指令を受けると、スタック始動処理を実行する。スタック始動処理は、プログラムによって規定されてもよい。或いは、スタック始動処理は、ASIC、FPGA等の集積回路によって実現されてもよい。或いは、スタック始動処理は、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。スタック始動処理の詳細は、後述する。
【0039】
スタック始動処理が完了すると、水素供給弁50、導入弁68および導出弁56が開弁された状態となる。また、経路接続器62は、供給経路46への密閉容器38の接続を遮断した状態になる。この場合、水素供給源14から供給経路46を介して水素昇圧スタック24に水素ガスが供給される。また、供給経路46を流れる水素ガスの一部は、導入経路66を介して加湿器16に流入し、加湿される。加湿された水素ガスは、導出経路54を介して供給経路46に戻る。したがって、水蒸気を含有するウェット水素ガスが水素昇圧スタック24に供給される。
【0040】
また、スタック始動処理が完了すると、電源装置26から水素昇圧スタック24の各単位セル28に所定の電圧が印加された状態となる。この場合、各単位セル28には電源装置26から電流が供給される。各単位セル28では、水素供給源14から供給される水素ガスに基づいて電気化学反応が実施される。その結果、高圧水素ガスが各単位セル28のカソード側で発生する。
【0041】
制御装置18は、スタック始動処理を実行した後、ポンプ44を駆動する。また、制御装置18は、排出弁42を開弁し、ベント弁45を閉弁する。これにより、水素昇圧スタック24で未反応の水素ガスが密閉容器38に供給される。
【0042】
また、制御装置18は、スタック始動処理を実行した後、水素供給弁50の開度および導入弁68の開度の少なくとも一方を制御して、加湿器16を経由する水素ガスと、加湿器16を経由しない水素ガスとの流量比を調整する。
【0043】
また、制御装置18は、スタック始動処理を実行した後、高圧水素ガスの目標発生量に基づいて、流量調整弁52の開度を制御して、水素昇圧スタック24に供給される水素ガスの流量を調整する。
【0044】
次に、制御装置18によるスタック始動処理を説明する。
図2は、スタック始動処理の手順を示すフローチャートである。スタック始動処理の開始前に、水素昇圧スタック24は停止した状態にある。また、排出弁42、水素供給弁50、ベント弁45、導入弁68および導出弁56は閉弁した状態にある。また、ポンプ44および給水器60は停止した状態にある。また、経路接続器62は、供給経路46への密閉容器38の接続を遮断した状態にある。スタック始動処理は、運転開始指令が制御装置18に与えられると、開始される。
【0045】
ステップS1において、制御装置18は、水素昇圧スタック24の運転停止期間を、所定の停止期間閾値と比較する。運転停止期間は、水素昇圧スタック24への電流の供給が停止されてからの経過期間である。
【0046】
運転停止期間が所定の停止期間閾値以下の場合、制御装置18は、各単位セル28の電解質膜30の乾燥の進行度が小さいと判定する。この場合、制御装置18は、平常始動サブルーチンRT1を実行する。平常始動サブルーチンRT1において、制御装置18は、水素供給弁50、導入弁68および導出弁56を開弁して、ウェット水素ガスを水素昇圧スタック24に供給する。また、制御装置18は、電源装置26を制御して水素昇圧スタック24に所定の電圧を印加し、水素昇圧スタック24に電流を供給する。これにより、スタック始動処理は完了する。
【0047】
一方、運転停止期間が所定の停止期間閾値を超える場合、制御装置18は、各単位セル28の電解質膜30の乾燥の進行度が大きいと判定する。この場合、制御装置18は、非常始動サブルーチンRT2を開始し、ステップS2に移行する。
【0048】
ステップS2において、制御装置18は、経路接続器62を制御して、給水経路58を介して加湿器16の密閉容器38を供給経路46に接続する。また、制御装置18は、給水器60を駆動して、加湿器16の密閉容器38から水素昇圧スタック24への液水の供給を開始させる。その後、制御装置18は、ステップS3に移行する。
【0049】
ステップS3において、制御装置18は、水素昇圧スタック24への液水の供給が開始されてから所定の給水期間が経過したか否かを判定する。給水期間が経過していない場合、制御装置18は、ステップS3に留まる。一方、給水期間が経過すると、制御装置18は、ステップS4に移行する。
【0050】
ステップS4において、制御装置18は、給水器60を停止して、水素昇圧スタック24への液水の供給を停止させる。その後、制御装置18は、ステップS5に移行する。
【0051】
ステップS5において、制御装置18は、導入弁68および導出弁56を開弁せずに、水素供給弁50を開弁し、水素供給源14から水素昇圧スタック24にドライ水素ガスの供給を開始させる。ドライ水素ガスは、加湿器16により加湿されていない水素ガスである。水素供給弁50の開弁後、制御装置18は、ステップS6に移行する。
【0052】
ステップS6において、制御装置18は、水素昇圧スタック24へのドライ水素ガスの供給が開始されてから所定の水素ガス供給期間が経過したか否かを判定する。水素ガス供給期間が経過していない場合、制御装置18は、ステップS6に留まる。一方、所定の水素ガス供給期間が経過すると、制御装置18は、ステップS7に移行する。
【0053】
ステップS7において、制御装置18は、電源装置26を制御して、水素昇圧スタック24の各単位セル28への電流の供給を開始させる。その後、制御装置18は、ステップS8に移行する。
【0054】
ステップS8において、制御装置18は、検出器78を用いて、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の電気値を取得する。制御装置18は、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の電気値を取得すると、その電気値を所定の閾値と比較する。水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の電気値が閾値を超える場合、制御装置18は、単位セル28に含まれる水分が過多であると判定する。この場合、制御装置18は、ステップS9に移行する。一方、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の電気値が閾値以下である場合、制御装置18は、単位セル28に含まれる水分が適度であると判定する。この場合、制御装置18は、ステップS10に移行する。
【0055】
ステップS9において、制御装置18は、電源装置26を制御して、設定時間を経過するまで、単位セル28への電流の供給を停止させる。これにより、単位セル28に含まれる水分の電解が回避される。制御装置18は、設定時間が経過すると、ステップS8に戻る。
【0056】
ステップS10において、制御装置18は、導入弁68および導出弁56を開弁して、水素昇圧スタック24へのウェット水素ガスの供給を開始させる。ウェット水素ガスの供給が開始されると、非常始動サブルーチンRT2が完了する。この場合、スタック始動処理は終了する。
【0057】
以上のように本実施形態では、制御装置18は、まず、所定の給水期間が経過するまで水素昇圧スタック24に液水を供給させる。その後、制御装置18は、水素昇圧スタック24への水素ガスの供給を開始させる。所定の水素ガス供給期間が経過した以降、制御装置18は、水素昇圧スタック24への電流の供給を開始させる。
【0058】
したがって、単位セル28の電解質膜30に一様に水を含ませた後に、その電解質膜30の水の含有量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。これにより、電解質膜30に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。その結果、水素昇圧スタック24を早期に始動することができる。
【0059】
また、本実施形態では、制御装置18は、水の供給が停止されてから電流の供給が開始されるまでの間、導出弁56を閉弁する。電流の供給が開始された以降、制御装置18は、導出弁56を開弁する。これにより、電流の供給が開始されるまではドライ水素ガスを水素昇圧スタック24に供給することができる。したがって、電解質膜30の水の含有量の調整を早期に完了させることができる。また、電流の供給が開始された以降はウェット水素ガスを水素昇圧スタック24に供給することができる。したがって、水素昇圧スタック24の運転中に電解質膜30が乾燥することを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、制御装置18は、検出器78を用いて、水素昇圧スタック24の電流が所定値である場合の電気値を取得する。制御装置18は、所定の水素ガス供給期間が経過した後の電気値が所定の閾値以下である場合、導出弁56を開弁する。これにより、電解質膜30に含まれる水量を適量にしてから、ウェット水素ガスを水素昇圧スタック24に供給することができる。
【0061】
また、本実施形態では、制御装置18は、水素ガス供給期間が経過した後の電気値が所定の閾値以下にならない場合、設定時間を経過するまで、水素昇圧スタック24への電流の供給を停止させる。これにより、単位セル28に含まれる水分の電解を抑制することができる。その結果、水分の電解により生じる酸素ガスが不純ガスとして水素ガスとともに水素昇圧スタック24から排出されることを低減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、水素昇圧スタック24の運転停止期間が所定の停止期間閾値を超えない場合、制御装置18は、水素昇圧スタック24に水を供給させない。一方、水素昇圧スタック24の運転停止期間が所定の停止期間閾値を超える場合に、制御装置18は、水素昇圧スタック24に水を供給させる。これにより、電解質膜30が乾燥していないにも関わらず、水素昇圧スタック24に水を供給することを回避することができる。その結果、水素昇圧スタック24を早期に始動することができる。これに加えて、電解質膜30の劣化の進行度が早まることを抑制し、また制御装置18の処理負荷を低減することができる。
【0063】
上記実施形態は、以下のように変形することができる。
【0064】
(変形例1)
図3は、変形例による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。
図3では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は割愛する。
【0065】
本変形例では、除湿器80と、除湿経路82と、経路切替器84とが新たに備えられる。
【0066】
除湿器80は、水素ガスを除湿する機器である。除湿器80は、除湿経路82に設けられる。除湿器80は、例えば、除湿経路82の上流から流れる水素ガスを冷却して、水素ガスから水分を分離する。
【0067】
除湿経路82は、供給経路46から分岐し、当該分岐部分よりも供給経路46の下流に接続される。本実施形態では、除湿経路82は、供給経路46において流量調整弁52よりも下流の箇所から分岐する。除湿経路82は、除湿器80により水分が分離されたドライ水素ガスを供給経路46に導く。
【0068】
経路切替器84は、水素供給源14から供給される水素ガスを、制御装置18の制御にしたがって除湿経路82に流すか否かを切り替える。経路切替器84として、三方弁等が挙げられる。
図3では、経路切替器84が三方弁である場合の例が示されている。
【0069】
本変形例では、制御装置18は、液水の供給が停止されてから電流の供給が開始されるまでの間、除湿経路82に水素ガスを流す。すなわち、本変形例の場合、ステップS5において、制御装置18は、導入弁68および導出弁56を開弁せずに、水素供給弁50を開弁することに加えて、経路切替器84を制御する。この場合、制御装置18は、経路切替器84から下流の経路を、供給経路46から除湿経路82に切り替える。また、本変形例の場合、ステップS10において、制御装置18は、導入弁68および導出弁56を開弁することに加えて、経路切替器84を制御する。この場合、制御装置18は、経路切替器84から下流の経路を、除湿経路82から供給経路46に切り替える。
【0070】
このように本変形例では、制御装置18は、液水の供給が停止されてから電流の供給が開始されるまでの間、除湿器80により除湿されたドライ水素ガスを水素昇圧スタック24に供給させる。これにより、一様に水が含まれた電解質膜30の含水量の調整を早期に完了させることができる。
【0071】
(変形例2)
水素ガス供給期間が経過した後の電気値が所定の閾値以下にならない場合(
図2:ステップS8:NO)、制御装置18は、水素昇圧スタック24の始動を停止させてもよい。この場合、制御装置18は、水素供給弁50を閉弁し、水素昇圧スタック24への水素ガスの供給を停止させる。また、制御装置18は、電源装置26を制御して、水素昇圧スタック24への所定の電圧の印加を停止させて、当該水素昇圧スタック24への電流の供給を停止させる。これにより、高圧水素ガスの発生効率が不良の状態において水素昇圧スタック24を運転させ続けることを抑制することができる。
【0072】
(変形例3)
水素ガス供給期間が経過した後の電気値が所定の閾値以下にならない場合(
図2:ステップS8:NO)、制御装置18は、設定時間を経過するまで、水素昇圧スタック24に供給される電流の大きさを小さくさせてもよい。この場合、制御装置18は、水素昇圧スタック24に供給される電流の大きさを、ステップS7で供給を開始したときよりも小さくさせる。これにより、単位セル28に含まれる水分の電解を抑制することができる。その結果、水分の電解により生じる酸素ガスが不純ガスとして高圧水素ガスとともに水素昇圧スタック24から排出されることを低減することができる。
【0073】
(変形例4)
水源は、加湿器16でなくてもよい。例えば、水源は、水タンク、浄水施設等であってもよい。
【0074】
(変形例5)
気泡発生器64、導入経路66および導入弁68は、電気化学式水素昇圧システム10から除外されてもよい。気泡発生器64、導入経路66および導入弁68を設けなくても、供給経路46を流れる水素ガスを加湿することができる。したがって、気泡発生器64、導入経路66および導入弁68を設けなくても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0076】
(1)本発明は、電解質膜(30)、アノード電極(32)およびカソード電極(34)を含む単位セル(28)が備えられる水素昇圧スタック(24)と、前記水素昇圧スタックに電流を供給して、前記水素昇圧スタックに供給される水素ガスよりも高い圧力の高圧水素ガスを前記水素昇圧スタックに発生させる電源装置(26)と、前記単位セルのアノード側に連通する供給経路(46)を介して前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給する水素供給源(14)と、を備える電気化学式水素昇圧システム(10)である。電気化学式水素昇圧システムは、前記供給経路に設けられる水素供給弁(50)と、給水経路(58)を介して水源を前記供給経路に接続し、または、前記接続を切断する経路接続器(62)と、前記水源の液水を前記水素昇圧スタックに供給する給水器(60)と、前記電源装置、前記水素供給弁、前記経路接続器および前記給水器を制御する制御装置(18)と、を備える。前記制御装置は、運転開始指令を受けると、所定の給水期間が経過するまで前記水源から前記水素昇圧スタックに前記液水を供給させ、その後、前記水素昇圧スタックへの前記水素ガスの供給を開始させ、所定の水素ガス供給期間が経過した以降に、前記水素昇圧スタックへの前記電流の供給を開始させる。
【0077】
本発明によれば、単位セルの電解質膜に一様に水を含ませた後に、その電解質膜の水の含有量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。これにより、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。その結果、水素昇圧スタックを早期に始動することができる。
【0078】
(2)本発明は、上記(1)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、導出経路(54)を介して水蒸気を前記供給経路に供給する加湿器(16)と、前記導出経路に設けられ、前記制御装置に制御される導出弁(56)と、を備え、前記制御装置は、前記液水の供給が停止されてから、前記電流の供給が開始されるまでの間、前記導出弁を閉弁し、前記電流の供給が開始された後に、前記導出弁を開弁してもよい。
【0079】
これにより、電流の供給が開始されるまではドライ水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、電解質膜の水の含有量の調整を早期に完了させることができる。また、電流の供給が開始された以降はウェット水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、水素昇圧スタックの運転中に電解質膜が乾燥することを抑制することができる。
【0080】
(3)本発明は、上記(2)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記水素昇圧スタックの電圧または抵抗を示す電気値を検出する検出器(78)を備え、前記水素ガス供給期間が経過した後、前記水素昇圧スタックの電流が所定値である場合の前記電気値が所定の閾値以下である場合、前記制御装置は、前記導出弁を開弁してもよい。
【0081】
これにより、電解質膜に含まれる水量を適量にしてから、ウェット水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。
【0082】
(4)本発明は、上記(3)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記水素ガス供給期間が経過した後、前記水素昇圧スタックの電流が所定値である場合の前記電気値が所定の閾値以下にならない場合、前記制御装置は、前記水素昇圧スタックへの前記水素ガスおよび前記電流の供給を停止させてもよい。
【0083】
これにより、高圧水素ガスの発生効率が不良の状態において水素昇圧スタックを運転させ続けることを抑制することができる。
【0084】
(5)本発明は、上記(3)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記水素ガス供給期間が経過した後、前記水素昇圧スタックの電流が所定値である場合の前記電気値が所定の閾値以下にならない場合、前記制御装置は、設定時間を経過するまで、前記電流の供給を停止させるか、前記電流の大きさを小さくさせてもよい。
【0085】
これにより、単位セルに含まれる水分の電解を抑制することができる。その結果、水分の電解により生じる酸素ガスが不純ガスとして高圧水素ガスとともに水素昇圧スタックから排出されることを低減することができる。
【0086】
(6)本発明は、上記(2)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記水源は、前記加湿器であってもよい。
【0087】
これにより、水源をタンク等にする場合に比べて、電気化学式水素昇圧システムの部品点数を低減することができる。
【0088】
(7)本発明は、上記(1)または(2)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記供給経路から分岐し、分岐部分よりも前記供給経路の下流に接続される除湿経路(82)に設けられ、前記水素ガスを除湿する除湿器(80)と、前記水素供給源から供給される前記水素ガスを、前記制御装置の制御にしたがって前記除湿経路に流すか否かを切り替える経路切替器(84)と、を備え、前記制御装置は、前記液水の供給が停止されてから、前記電流の供給が開始されるまでの間、前記除湿経路に前記水素ガスを流し、前記除湿器により除湿された前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給させてもよい。
【0089】
これにより、これにより、一様に水が含まれた電解質膜の含水量の調整を早期に完了させることができる。
【0090】
(8)本発明は、上記(1)または(2)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記水素昇圧スタックの運転停止期間が所定の停止期間閾値を超える場合、前記制御装置は、前記水源から前記水素昇圧スタックに前記水を供給させてもよい。
【0091】
これにより、単位セルに含まれる水分の電解を抑制することができる。その結果、水分の電解により生じる酸素ガスが不純ガスとして高圧水素ガスとともに水素昇圧スタック24から排出されることを低減することができる。
【0092】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0093】
10…電気化学式水素昇圧システム 12…電気化学式水素昇圧装置
14…水素供給源 16…加湿器
18…制御装置 24…水素昇圧スタック
26…電源装置 28…単位セル
30…電解質膜 32…アノード電極
34…カソード電極 38…密閉容器
46…供給経路 54…導出経路
56…導出弁 58…給水経路
60…給水器 62…経路接続器
78…検出器 80…除湿器
82…除湿経路 84…経路切替器