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特開2024-99883タービンハウジング、タービン及びターボチャージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099883
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】タービンハウジング、タービン及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240719BHJP
   F02B 37/22 20060101ALI20240719BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20240719BHJP
   F01D 17/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F02B39/00 E
F02B37/22
F01D25/24 E
F01D17/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003485
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 信仁
【テーマコード(参考)】
3G005
3G071
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA36
3G005GB26
3G005GB87
3G071AB06
3G071DA01
(57)【要約】
【課題】エネルギーの有効利用とエンジンの出口圧の低減の両立を実現可能なタービンハウジングを提供する。
【解決手段】タービンハウジングであって、スクロール連通流路と、弁体を所定の回転軸線の周りに回転させることで弁体の開度を調節可能に構成されたスクロールコネクションバルブと、を備え、ヘッド部の位置におけるスクロール連通流路の流路面積をスクロール連通面積と定義すると、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積は0よりも大きく、弁体の開度が全閉から所定の第1開度までの範囲では、弁体の開度が大きくなるにつれてスクロール連通面積が小さくなるか又は弁体の開度によらずスクロール連通面積が一定である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのスクロール流路が形成されたタービンハウジングであって、
前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路に一端が接続し、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路に他端が接続するスクロール連通流路であって、タービンホイールを通過した排ガスが流れる排気流路に連通口を介して連通するスクロール連通流路と、
前記タービンハウジングのシート壁面に当接することで前記連通口を閉塞可能なシート部と、前記シート部から突出して設けられ、前記スクロール連通流路の流路面積を調節可能なヘッド部と、を含む弁体を備え、前記弁体を所定の回転軸線の周りに回転させることで前記弁体の開度を調節可能に構成されたスクロールコネクションバルブと、
を備え、
前記ヘッド部の位置における前記スクロール連通流路の流路面積をスクロール連通面積と定義すると、前記弁体の開度が全閉のときの前記スクロール連通面積は0よりも大きく、前記弁体の開度が全閉から所定の第1開度までの範囲では、前記弁体の開度が大きくなるにつれて前記スクロール連通面積が小さくなるか又は前記弁体の開度によらず前記スクロール連通面積が一定である、タービンハウジング。
【請求項2】
前記弁体の開度が全閉から前記第1開度までの範囲では、前記弁体の開度が大きくなるにつれて前記スクロール連通面積が小さくなる、請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記弁体の開度が全閉のときに前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁は、前記シート部の第1位置から前記排気流路と反対側に向けて延在する第1外縁部と、前記シート部の第2位置から前記排気流路と反対側に向けて延在する第2外縁部とを含み、前記第1位置と前記回転軸線との距離は前記第2位置と前記回転軸線との距離よりも大きく、
前記スクロール連通流路は、前記ヘッド部を収容可能なヘッド収容室と、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路と前記ヘッド収容室とを連通する第1流路と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路と前記ヘッド収容室と連通する第2流路とを含み、
前記弁体の開度が全閉のときに前記第1流路から前記回転軸線の方向に沿って前記第2流路を視ると、前記第2流路における前記ヘッド収容室側の開口端縁と前記第1外縁部とが交差する、請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項4】
前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁は凹部を含む、請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項5】
前記弁体の開度が全閉のときに前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁は、前記シート部の第1位置から前記排気流路と反対側に向けて延在する第1外縁部と、前記シート部の第2位置から前記排気流路と反対側に向けて延在する第2外縁部とを含み、前記第1位置と前記回転軸線との距離は前記第2位置と前記回転軸線との距離よりも大きく、
前記凹部は前記第1外縁部に形成された、請求項4に記載のタービンハウジング。
【請求項6】
前記スクロール連通流路は、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路に接続する第1流路と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路に接続する第2流路とを含み、
前記第1流路と前記第2流路とは、前記弁体の開度が全閉のときに前記凹部の内側の空間を介して連通する、請求項4に記載のタービンハウジング。
【請求項7】
前記スクロール連通流路は、前記ヘッド部を収容可能なヘッド収容室と、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路と前記ヘッド収容室とを連通する第1流路と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路と前記ヘッド収容室と連通する第2流路とを含み、
前記弁体の開度が全閉のときに前記第1流路から前記回転軸線の方向に沿って前記第2流路を視ると、前記第2流路における前記ヘッド収容室側の開口端縁の一部が前記凹部の内側に位置する、請求項4に記載のタービンハウジング。
【請求項8】
前記回転軸線の方向に沿って前記第1流路から前記第2流路を視たときに前記第2流路の前記ヘッド収容室側の開口端縁と前記第2外縁部とが接するような前記弁体の開度を所定開度と定義すると、
前記弁体の開度が前記所定開度のときに前記回転軸線の方向に沿って前記第1流路から前記第2流路を視ると、前記開口端縁と前記第2外縁部との接点における前記開口端縁の曲率は、前記接点における前記第2外縁部の曲率より大きい、請求項3に記載のタービンハウジング。
【請求項9】
タービンホイールと、
請求項1に記載のタービンハウジングと、
を備える、タービン。
【請求項10】
請求項9に記載のタービンを備える、ターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンハウジング、タービン及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのスクロール流路が形成されたタービンハウジングが開示されている。このタービンハウジングは、スクロール連通流路とスクロールコネクションバルブを備える。スクロール連通流路の一端は2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路に接続し、スクロール連通流路の他端は2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路に他端接続する。また、スクロール連通流路は、タービンホイールを通過した排ガスが流れる排気流路に連通口を介して連通する。スクロールコネクションバルブは、所定の回転軸線の周りに回転することによって連通口の流路面積及びスクロール連通流路の流路面積を調節可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10883416号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスクロールコネクションバルブは、弁体の開度が全閉から大きくなるにつれてスクロール連通流路の流路面積が大きくなるように構成されており、エンジンの回転数や負荷等の燃焼条件によって最適条件が変化するエネルギーの有効利用とエンジンの出口圧の低減の両立を実現することはできなかった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、エネルギーの有効利用とエンジンの出口圧の低減の両立を実現可能なタービンハウジング並びにこれを備えるタービン及びターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンハウジングは、
2つのスクロール流路が形成されたタービンハウジングであって、
前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路に一端が接続し、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路に他端が接続するスクロール連通流路であって、タービンホイールを通過した排ガスが流れる排気流路に連通口を介して連通するスクロール連通流路と、
前記タービンハウジングのシート壁面に当接することで前記連通口を閉塞可能なシート部と、前記シート部から突出して設けられ、前記スクロール連通流路の流路面積を調節可能なヘッド部と、を含む弁体を備え、前記弁体を所定の回転軸線の周りに回転させることで前記弁体の開度を調節可能に構成されたスクロールコネクションバルブと、
を備え、
前記ヘッド部の位置における前記スクロール連通流路の流路面積をスクロール連通面積と定義すると、前記弁体の開度が全閉のときの前記スクロール連通面積は0よりも大きく、前記弁体の開度が全閉から所定の第1開度までの範囲では、前記弁体の開度が大きくなるにつれて前記スクロール連通面積が小さくなるか又は前記弁体の開度によらず前記スクロール連通面積が一定である。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンは、タービンホイールと、前記タービンハウジングと、を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、前記タービンを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、エネルギーの有効利用とエンジンの出口圧の低減の両立を実現可能なタービンハウジング並びにこれを備えるタービン及びターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るターボチャージャ100のタービン1における軸方向と直交する概略断面の一例を示す概略断面図である。
図2】一実施形態に係るタービンハウジング2のスクロールコネクションバルブ4の軸線LBに沿った概略断面の一例を示す概略断面図である。
図3図2に示されるタービンハウジング2の弁体5の位置における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、弁体5の開度が全閉のとき(弁体5の開度が0%のとき、すなわち、シート部51がシート壁面291に当接しているとき)に第2流路25及びヘッド部53を第1流路24側から回転軸線LCの方向に沿って視た概略断面図である。
図4】弁体5の開度Vとスクロール連通面積Ss及び排気連通面積Shの各々との関係の一例を示す図である。
図5】他の実施形態に係るタービンハウジング2のスクロールコネクションバルブ4の軸線LBに沿った概略断面の一例を示す概略断面図である。
図6図5に示されるタービンハウジング2のA-A断面図、すなわち弁体5の位置における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、より詳細には、弁体5の開度が全閉のとき(弁体5の開度が0%のとき、すなわち、シート部51がシート壁面291に当接しているとき)に第2流路25及びヘッド部53を第1流路24側から回転軸線LCの方向に沿って視た概略断面図である。
図7図5に示されるタービンハウジング2のB-B断面図、すなわちスクロール連通流路20の第2流路25における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、弁体5の開度が全閉のときの弁体5の輪郭を破線で示している。
図8図5に示されるタービンハウジング2のA-A断面図、すなわち弁体5の位置における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、より詳細には、弁体5の開度が全開と全閉の間の中間開度のときに第2流路25及びヘッド部53を第1流路24側から回転軸線LCの方向に沿って視た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るターボチャージャ100のタービン1における軸方向と直交する概略断面の一例を示す概略断面図である。図2は、一実施形態に係るタービンハウジング2のスクロールコネクションバルブ4の軸線LBに沿った概略断面の一例を示す概略断面図である。
【0013】
本明細書では、特記しない限り、「軸方向」はターボチャージャ100の軸方向すなわちタービン1のタービンホイール3の軸方向を意味し、「径方向」はターボチャージャ100の径方向すなわちタービン1のタービンホイール3の径方向を意味し、「周方向」はターボチャージャ100の周方向すなわちタービン1のタービンホイール3の周方向を意味することとする。
【0014】
例えば図1に示されるように、タービン1は、所謂ダブルスクロール式のタービンであり、2つのスクロール流路21、22が形成されたタービンハウジング2と、タービンハウジング2に回転可能に収容されたタービンホイール3と、を含む。上記2つのスクロール流路21、22は、第1スクロール流路21と、第1スクロール流路21と軸方向における同一の領域に形成された第2スクロール流路22と、を含む。なお、「軸方向における同一の領域に形成された」とは、図1に示されるように、軸方向と直交する断面において、第1スクロール流路21のスクロール形状と第2スクロール流路22のスクロール形状の両方が現れることを意味する。
【0015】
例えば図1に示されるように、タービンハウジング2は、第1スクロール流路21を形成する第1スクロール流路形成部210と、第2スクロール流路22を形成する第2スクロール流路形成部220と、を備える。第1スクロール流路21及び第2スクロール流路22の各々は、不図示のエンジンから排出された排ガス(以下、単に「排ガス」という。)をタービン1のノズル流路23に導入するための流路である。ノズル流路23は、第1スクロール流路21や第2スクロール流路22よりも排ガスが流れる排ガス流路における下流側に設けられる。ノズル流路23は、タービンハウジング2の内部、且つタービンホイール3の外周側(径方向における外側)に形成される環状空間からなる。第1スクロール流路21及び第2スクロール流路22の各々は、タービンホイールの回転軸線LAの周りに渦状に形成される流路であり、ノズル流路23の外周側に設けられる。
【0016】
タービンハウジング2は、図1に示されるように、第1スクロール流路21を流れる排ガスが導入されるノズル流路23の第1範囲CR1と、第2スクロール流路22を流れる排ガスが導入されるノズル流路23の第2範囲CR2とが、周方向において重複しないように、構成されている。図示される実施形態では、第2スクロール流路22は、軸方向に直交する断面において、第1スクロール流路21よりも外周側(タービンホイール3の径方向における外側)に設けられており、第1スクロール流路21と第2スクロール流路22とは周方向において少なくとも一部が重複しているが、周方向において重複しないように構成されていてもよい。
【0017】
エンジンから排出されてタービン1に導入された排ガスは、第1スクロール流路21や第2スクロール流路22を流れて、ノズル流路23を通じてタービンホイール3の外周側からタービンホイール3に導かれる。タービンホイール3に導かれた排ガスは、排気流路28(図2参照)を通じて、タービン1の外部に排出される。
【0018】
例えば図1に部分的に示されるように、タービンハウジング2には、第1スクロール流路21と第2スクロール流路22とを連通するスクロール連通流路20がタービンホイール3の外周側に形成されている。スクロール連通流路20の一端271は第1スクロール流路21に接続し、スクロール連通流路20の他端272は第2スクロール流路22に接続する。例えば図2に示されるように、スクロール連通流路20は、タービンホイール3を通過した排ガスが流れる排気流路28に連通口29を介して連通している。タービンハウジング2は、スクロール連通流路20を形成する連通流路形成部270と、タービンホイール3を通過した排ガスが流れる排気流路28を形成する排気流路形成部280とを備える。
【0019】
例えば図2に示されるように、スクロール連通流路20は、ヘッド収容室26と、第1スクロール流路21とヘッド収容室26とを連通する第1流路24と、第2スクロール流路22とヘッド収容室26と連通する第2流路25とを含む。ヘッド収容室26は、後述するスクロールコネクションバルブ4のヘッド部53を収容可能に形成されている。図1又は図2に示されるように、第1流路24の一端271(スクロール連通流路20の一端)は、第1スクロール流路21に接続し、第1流路24の他端242は、ヘッド収容室26に接続する。第2流路25の一端272(スクロール連通流路20の他端)は、第2スクロール流路22に接続し、第2流路25の他端252は、ヘッド収容室26に接続する。
【0020】
図3は、図2に示されるタービンハウジング2の弁体5の位置における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、弁体5の開度が全閉のときに第2流路25及びヘッド部53を第1流路24側から回転軸線LCの方向に沿って視た概略断面図である。
【0021】
例えば図2及び図3に示されるように、タービンハウジング2は、スクロールコネクションバルブ4を備える。スクロールコネクションバルブ4は、シート部51及びシート部51からヘッド収容室26に向かって突出するヘッド部53を有する弁体5と、弁体5に連結され、弁体5を所定の回転軸線LCの回りに回転させるように構成されたアーム部6と、を含む。
【0022】
例えば図2に示されるように、シート部51は、排気流路形成部280に形成されたシート壁面291に接離可能なシート当接面52を含む。図示される実施形態では、シート部51は、弁体5の軸線LBに直交するシート当接面52を含む円板形状を有しており、シート当接面52がシート壁面291に当接することにより、シート部51が連通口29を閉塞する。
【0023】
ヘッド部53は、弁体5の軸線LBの延在方向におけるシート当接面52から離隔する方向に向かってシート部51から突出して設けられており、ヘッド収容室26に収容可能に構成されている。ヘッド部53は、矢印r1に示すように弁体5が回転軸線LCの回りに回転することによって、ヘッド部53の位置でのスクロール連通流路20の流路面積を調節可能に構成されている。
【0024】
スクロールコネクションバルブ4は、不図示のアクチュエータから伝達された駆動力によってアーム部6及びアーム部6に連結された弁体5を所定の回転軸線LCの回りに回転させることで、弁体5の開度を回転軸線LCの周りの周方向における角度位置に対応した開度に調整できる。
【0025】
ここで、図2及び図3に示されるように、シート部51がシート壁面291に当接している状態における弁体5の開度Vを0%と定義し、ヘッド部53の位置でのスクロール連通流路20の流路面積(ヘッド部53によって調節されたスクロール連通流路20の流路面積)をスクロール連通面積Ssと定義し、弁体5によって調節された連通口29の流路面積を排気連通面積Shと定義する。
【0026】
図4は、弁体5の開度Vとスクロール連通面積Ss及び排気連通面積Shの各々との関係の一例を示す図である。図4に示されるグラフにおいて、太い実線は上記実施形態における弁体5の開度Vとスクロール連通面積Ssとの関係の一例を示しており、細い実線は上記実施形態における弁体5の開度Vと排気連通面積Shとの関係の一例を示しており、一点鎖線は比較形態における弁体5の開度Vとスクロール連通面積Ssとの関係を示しており、破線は比較形態における弁体5の開度Vと排気連通面積Shとの関係を示している。
【0027】
図4に示される実施形態では、弁体5の開度Vが全閉のとき(弁体5の開度が0%のとき、すなわち、シート部51がシート壁面291に当接しているとき)のスクロール連通面積Ssは0よりも大きく、弁体5の開度Vが全閉から所定の第1開度V1までの範囲では、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが徐々に小さくなる。ここでの第1開度V1は、例えば50%以下であってもよく、30%以下であってもよい。
【0028】
また、弁体5の開度Vが所定の第1開度V1から全開となるまでは、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが徐々に大きくなる。また、弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssは、弁体5の開度Vが全開のときのスクロール連通面積Ssよりも小さい。図4に示される実施形態では、排気連通面積Shは、弁体5の開度Vが全閉から全開まで弁体5の開度Vが大きくなるにつれて徐々に大きくなる。
【0029】
図4に示される比較形態では、弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssは0であり、弁体5の開度Vが全閉から全開の開度まで、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが徐々に大きくなる。また、図4に示される比較形態では、排気連通面積Shは、弁体5の開度Vが全閉から徐々に増加し、中間開度から急激に増加している。
【0030】
図3に示される例示的形態では、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視ると、ヘッド部53の外縁54(ヘッド部53の輪郭)は、シート部51の第1位置P1から排気流路28と反対側に向けて延在する第1外縁部541(第1輪郭部)と、シート部51の第2位置P2から排気流路28と反対側に向けて延在する第2外縁部542(第2輪郭部)とを含む。また、弁体5の開度Vが全閉のときには、シート部51の第1位置P1と回転軸線LCとの距離はシート部51の第2位置P2と回転軸線LCとの距離よりも大きい。また、弁体5の開度Vが全閉のときに第1流路24から回転軸線LCの方向に沿って第2流路25を視ると、第2流路25におけるヘッド収容室26側の開口端縁252a(他端側接続口252の輪郭)と第1外縁部541とが交差する。
【0031】
図3に示される例示的形態では、回転軸線LCの方向に沿って視ると、開口端縁242a,252aの各々は丸みを帯びた三角形状を有しており、第1外縁部541には凹部55(切り欠き部)が形成されている。また、弁体5の開度Vが全閉のときに第1流路24から回転軸線LCの方向に沿って第2流路25を視ると、第2流路25の他端側接続口252(第2流路25におけるヘッド収容室26との接続口)の一部が凹部55の内側に位置する。このため、第1流路24と第2流路25とは、弁体5の開度Vが全閉のときに凹部55の内側の空間551を介して連通する。弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssは、凹部55の内側において第1外縁部541と開口端縁252aとで挟まれた領域A1の面積に相当する。
【0032】
図3に示される例示的形態では、回転軸線LCの方向に沿って視たときに第2流路25のヘッド収容室26側の開口端縁252aと第2外縁部542とが接するような弁体5の開度を所定開度Va(図3に示される例では全閉の開度)と定義すると、弁体5の開度Vが所定開度Vaのときに回転軸線LCの方向に沿って視た場合に、開口端縁252aと第2外縁部542との接点Paにおける開口端縁252aの曲率は、接点Paにおける第2外縁部542の曲率より大きく、第2外縁部542は略直線状に延在する。
【0033】
図3に示される例示的形態では、回転軸線LCに直交する断面において、ヘッド部53の先端縁543は回転軸線LCを中心とする円弧に沿って略円弧状に形成されており、ヘッド収容室26の内壁面は、先端縁543に沿って略円弧状に形成された第1壁面部261と、第2外縁部542に沿って略直線状に延在する第2壁面部262とを含む。図示される構成では、弁体5が回転軸線LCの周りに回転したときに先端縁543が第1壁面部261に接触しないように、先端縁543と第1壁面部261との間には隙間が形成されている。
【0034】
以下、上記実施形態が奏する効果について説明する。
一般に、2つのスクロール流路を備えるターボチャージャでは、1つのスクロール流路のみからタービンホイールにおける周方向の一部の範囲にエンジンの排ガスを供給する片側挿入よりも、2つのスクロール流路の両方からタービンホイールにおける周方向の全範囲にエンジンの排ガスを供給する全挿入の方がタービンの効率が高くなりやすい。
【0035】
上記実施形態では、弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssが0よりも大きく、弁体5の開度Vが全閉から所定の第1開度V1までの範囲では、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが小さくなる。このため、脈動が強く片側挿入の傾向が強いトルク点近傍(エンジンの低回転数領域)では、弁体5の開度を全閉又は全閉近傍の開度として効率の良い全挿入状態でタービンを駆動することができ、タービン1の入口の脈動を低減することでターボチャージャ100の過給圧の向上、タービン入口圧の低減及びエンジンの燃費向上を実現することができる。このため、エンジンの回転数及び燃焼条件(エンジンの負荷等)によって最適条件が変化するエネルギーの有効利用とタービン入口圧の低減を両立することができる。
【0036】
また、エンジンの低回転数領域と比較して脈動幅が小さくなりやすい領域付近の作動点(エンジンの中回転数領域及び高回転数領域、すなわちエンジンの低回転数領域よりも回転数が高い領域)やエンジン負荷が低い作動点においては、弁体5の開度をスクロール連通面積Ssが最小値となる第1開度V1又はその近傍の開度とすることにより、第1スクロール流路21から第2スクロール流路22への流れ及び第2スクロール流路22から第1スクロール流路21への流れを抑制して低回転数領域よりも片側挿入の傾向を強め、更に排気連通面積Shを大きくすることで脈動を立たせてより高いタービン駆動力を実現することができる。
【0037】
図4を用いて説明した実施形態を実現するための弁体5の形状やスクロール連通流路20の断面形状等は、図2及び図3等に示した形状に限らず、例えば図5図8に示される形状であってもよい。
【0038】
図5は、他の実施形態に係るタービンハウジング2のスクロールコネクションバルブ4の軸線LBに沿った概略断面の一例を示す概略断面図である。図6は、図5に示されるタービンハウジング2のA-A断面図、すなわち弁体5の位置における回転軸線LCに直交する概略断面図であり、より詳細には、弁体5の開度が全閉のとき(弁体5の開度が0%のとき、すなわち、シート部51がシート壁面291に当接しているとき)に第2流路25及びヘッド部53を第1流路24側から回転軸線LCの方向に沿って視た概略断面図である。図7は、図5に示されるタービンハウジング2のB-B断面図、すなわちスクロール連通流路20の第2流路25における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、弁体5の開度が全閉のときの弁体5の輪郭を破線で示している。図8は、図5に示されるタービンハウジング2のA-A断面図、すなわち弁体5の位置における回転軸線LCに直交する概略断面の一例を示す概略断面図であり、より詳細には、弁体5の開度が全開と全閉の間の中間開度のときに第2流路25及びヘッド部53を第1流路24側から回転軸線LCの方向に沿って視た概略断面図である。
【0039】
図1図3を用いて説明した実施形態における基本的な構成については、図5図8に示される構成においても共通であるためここでは同一の符号を付して説明を省略し、以下では図5図8に示される形状の特徴について説明する。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば図6図8に示されるように、スクロールコネクションバルブ4の弁体5には上述の凹部55が形成されていない。例えば図6図8に示される構成では、回転軸線LCの方向に沿って視ると、弁体5のヘッド部53、第1流路25の他端側接続口242及び第2流路25の他端側接続口252の各々は丸みを帯びた四角形状を有している。また、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視ると、第1流路25の他端側接続口242の中心C1(他端側接続口242の図心)及び第2流路25の他端側接続口252の中心C2(他端側接続口252の図心)は、弁体5のヘッド部53の中心Ch(ヘッド部53の図心)から回転軸線LCと反対側にずれており、第1流路25の他端側接続口242の一部及び第2流路25の他端側接続口252の一部は弁体5のヘッド部53から回転軸線LCと反対側にはみ出ている。
【0041】
例えば図6に示されるように、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視ると、ヘッド部53の外縁54は、シート部51の第1位置P1から排気流路28と反対側に向けて直線状に延在する第1外縁部541と、シート部51の第2位置P2から排気流路28と反対側に向けて直線状に延在する第2外縁部542とを含む。ここで、第1位置P1と回転軸線LCとの距離は第2位置P2と回転軸線LCとの距離よりも大きい。また、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視ると、第2流路25におけるヘッド収容室26側の開口端縁252aと第1外縁部541とが交差する。
【0042】
例えば図6に示されるように、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視ると、第1流路24と第2流路25とは、第2流路25の他端側接続口252のうち弁体5のヘッド部53からはみ出た部分252b(及び第1流路24の他端側接続口242のうち弁体5のヘッド部53からはみ出た部分)を介して連通する。弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssは、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視た場合における上記はみ出た部分252bの面積に相当する。
【0043】
例えば図6に示されるように、弁体5の開度Vが全閉のときに回転軸線LCの方向に沿って視ると、ヘッド部53の先端縁543は直線状に形成されており、ヘッド収容室26の内壁面は、第1外縁部541に沿って略直線状に延在する第1壁面部261と、第2外縁部542に沿って略直線状に延在する第2壁面部262と、ヘッド部53の先端縁543に沿って略直線状に延在する第3壁面部263とを含む。図示される構成では、弁体5が回転軸線LCの周りに回転したときにヘッド部53が第1壁面部261、第2壁面部262及び第3壁面部263の各々に接触しないように、第1外縁部541と第1壁面部261との間、第2外縁部542と第2壁面部262との間及び先端縁543と第3壁面部263との間にはそれぞれ隙間が形成されている。
【0044】
かかる構成においても、弁体5が矢印r2に示すように回転軸線LCの周りに回転するにつれて、スクロール連通流路20のスクロール連通面積Ssが変化し、例えば図4に示したような弁体5の開度Vとスクロール連通面積Ss及び排気連通面積Shの各々との関係を示すスクロールコネクションバルブ4を実現することができる。
【0045】
すなわち、図5図8に示す実施形態においても、弁体5の開度Vが全閉のとき(弁体5の開度が0%のとき、すなわち、シート部51がシート壁面291に当接しているとき)のスクロール連通面積Ssは0よりも大きく、弁体5の開度Vが全閉から所定の第1開度V1までの範囲では、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが徐々に小さくなる。また、弁体5の開度Vが所定の第1開度V1から全開となるまでは、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが徐々に大きくなる(図8参照)。また、弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssは、弁体5の開度Vが全開のときのスクロール連通面積Ssよりも小さい。また、排気連通面積Shは、弁体5の開度Vが全閉から全開まで弁体5の開度Vが大きくなるにつれて徐々に大きくなる。
【0046】
図5図8に示す実施形態においても、脈動が強く片側挿入の傾向が強いトルク点近傍(エンジンの低回転数領域)では、弁体5の開度を全閉又は全閉近傍の開度として効率の良い全挿入状態でタービンを駆動することができ、タービン1の入口の脈動を低減することでターボチャージャ100の過給圧の向上、タービン入口圧の低減及びエンジンの燃費向上を実現することができる。このため、エンジンの回転数及び燃焼条件(エンジンの負荷等)によって最適条件が変化するエネルギーの有効利用とタービン入口圧の低減を両立することができる。
【0047】
また、エンジンの低回転数領域と比較して脈動幅が小さくなりやすい領域付近の作動点(エンジンの中回転数領域及び高回転数領域、すなわちエンジンの低回転数領域よりも回転数が高い領域)やエンジン負荷が低い作動点においては、弁体5の開度をスクロール連通面積Ssが最小値となる第1開度V1又はその近傍の開度とすることにより、第1スクロール流路21から第2スクロール流路22への流れ及び第2スクロール流路22から第1スクロール流路21への流れを抑制して低回転数領域よりも片側挿入の傾向を強め、更に排気連通面積Shを大きくすることで脈動を立たせてより高いタービン駆動力を実現することができる。
【0048】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、ダブルスクロール式のタービンを例示したが、本開示は、第1スクロール流路と第2スクロール流路が軸方向に並んで形成された所謂ツインスクロール式のタービンにも適用可能である。
【0050】
また、例えば、上述した実施形態では、弁体5の開度Vが全閉のときのスクロール連通面積Ssは0よりも大きく、弁体5の開度Vが全閉から所定の第1開度V1までの範囲では、弁体5の開度Vが大きくなるにつれてスクロール連通面積Ssが徐々に小さくなる構成を例示したが、弁体5の開度Vが全閉から所定の第1開度V1までの範囲では、弁体5の開度Vによらずスクロール連通面積Ssが一定であってもよい。
【0051】
この場合においても、脈動が強く片側挿入の傾向が強いトルク点近傍(エンジンの低回転数領域)では、弁体5の開度Vを全閉又は全閉近傍の開度として効率の良い全挿入状態でタービンを駆動することができ、タービン1の入口の脈動を低減することでターボチャージャ100の過給圧の向上、タービン入口圧の低減及びエンジンの燃費向上を実現することができる。
【0052】
また、エンジンの低回転数領域と比較して脈動幅が小さくなりやすい領域付近の作動点(エンジンの低回転数領域よりも回転数が大きい中回転数領域及び高回転数領域)やエンジン負荷が低い作動点においてもスクロール連通面積Ssが比較的狭い一定の面積に維持されるため、第1スクロール流路から第2スクロール流路への流れ及び第2スクロール流路から第1スクロール流路への流れの増大を抑制し、片側挿入の傾向を維持して脈動が強い状態を実現し、高いタービン駆動力を実現することができる。
【0053】
また、スクロール連通面積Ssと排気連通面積Shとの相対的な大きさの関係は特に限定されない。例えば図4に示した例示的な実施形態では、弁体5の開度Vが第1開度V1であるときに、Sh>Ssを満たしているが、他の実施形態では、弁体5の開度Vが第1開度V1であるときに、Sh≦Ssを満たしていてもよい。また、図4に示した例示的な実施形態では、スクロール連通面積Ssと排気連通面積Shは開度Vに対して線形に変化しているが、他の実施形態では、スクロール連通面積Ssと排気連通面積Shは開度Vに対して非線形に変化してもよい。
【0054】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0055】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンハウジング(例えば上述のタービンハウジング)は、
2つのスクロール流路(例えば上述の第1スクロール流路21及び第2スクロール流路22)が形成されたタービンハウジングであって、
前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路に一端が接続し、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路に他端が接続するスクロール連通流路であって、タービンホイール(例えば上述のタービンホイール3)を通過した排ガスが流れる排気流路(例えば上述の排気流路28)に連通口(例えば上述の連通口29)を介して連通するスクロール連通流路(例えば上述のスクロール連通流路20)と、
前記タービンハウジングのシート壁面(例えば上述のシート壁面291)に当接することで前記連通口を閉塞可能なシート部(例えば上述のシート部51)と、前記シート部から突出して設けられ、前記スクロール連通流路の流路面積を調節可能なヘッド部(例えば上述のヘッド部53)と、を含む弁体(例えば上述の弁体5)を備え、前記弁体を所定の回転軸線(例えば上述の回転軸線LC)の周りに回転させることで前記弁体の開度を調節可能に構成されたスクロールコネクションバルブ(例えば上述のスクロールコネクションバルブ4)と、
を備え、
前記ヘッド部の位置における前記スクロール連通流路の流路面積をスクロール連通面積(例えば上述のスクロール連通面積Ss)と定義すると、前記弁体の開度が全閉のときの前記スクロール連通面積は0よりも大きく、前記弁体の開度が全閉から所定の第1開度(例えば上述の第1開度V1)までの範囲では、前記弁体の開度が大きくなるにつれて前記スクロール連通面積が小さくなるか又は前記弁体の開度によらず前記スクロール連通面積が一定である。
【0056】
一般に、2つのスクロール流路を備えるターボチャージャでは、1つのスクロール流路のみからタービンホイールにおける周方向の一部の範囲にエンジンの排ガスを供給する片側挿入よりも、2つのスクロール流路の両方からタービンホイールにおける周方向の全範囲にエンジンの排ガスを供給する全挿入の方がタービンの効率が高くなりやすい。
【0057】
この点、上記(1)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積が0よりも大きく、弁体の開度が全閉から所定の第1開度までの範囲では、弁体の開度が大きくなるにつれてスクロール連通面積が小さくなるか又は弁体の開度によらずスクロール連通面積が一定である。このため、脈動が強く片側挿入の傾向が強いトルク点近傍(エンジンの低回転数領域)では、弁体の開度を全閉又は全閉近傍の開度として効率の良い全挿入状態でタービンを駆動することができ、タービンの入口の脈動を低減することでターボチャージャの過給圧の向上、タービン入口圧の低減及びエンジンの燃費向上を実現することができる。
【0058】
また、エンジンの低回転数領域と比較して脈動幅が小さくなりやすい領域付近の作動点(エンジンの低回転数領域よりも回転数が大きい中回転数領域及び高回転数領域)やエンジン負荷が低い作動点においては、弁体の開度を第1開度又はその近傍の開度としてスクロール連通面積をエンジンの低回転数領域よりも減少させ又は一定とすることにより、第1スクロール流路から第2スクロール流路への流れ及び第2スクロール流路から第1スクロール流路への流れの増大を抑制し、片側挿入の傾向を維持して又は強めて脈動を立たせることによって、高いタービン駆動力を実現することができる。
【0059】
したがって、エンジンの回転数及び燃焼条件(エンジンの負荷等)によって最適条件が変化するエネルギーの有効利用とタービン入口圧の低減を両立することができる。
【0060】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービンハウジングにおいて、
前記弁体の開度が全閉から前記第1開度までの範囲では、前記弁体の開度が大きくなるにつれて前記スクロール連通面積が小さくなる。
【0061】
上記(2)に記載のタービンハウジングによれば、エンジンの低回転数領域と比較して脈動幅が小さくなりやすい領域付近の作動点(エンジンの中回転数領域及び高回転数領域)やエンジン負荷が低い作動点においては、弁体の開度をエンジンの低回転数領域よりも小さい第1開度又はその近傍の開度とすることにより、第1スクロール流路から第2スクロール流路への流れ及び第2スクロール流路から第1スクロール流路への流れを抑制して低回転数領域よりも片側挿入の傾向を強め、脈動を立たせてより高いタービン駆動力を実現することができる。
【0062】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のタービンハウジングにおいて、
前記弁体の開度が全閉のときに前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁は、前記シート部の第1位置(例えば上述の第1位置P1)から前記排気流路と反対側に向けて延在する第1外縁部(例えば上述の第1外縁部541)と、前記シート部の第2位置(例えば上述の第2位置P2)から前記排気流路と反対側に向けて延在する第2外縁部(例えば上述の第2外縁部542)とを含み、前記第1位置と前記回転軸線との距離は前記第2位置と前記回転軸線との距離よりも大きく、
前記スクロール連通流路は、前記ヘッド部を収容可能なヘッド収容室(例えば上述のヘッド収容室26)と、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路と前記ヘッド収容室とを連通する第1流路(例えば上述の第1流路24)と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路と前記ヘッド収容室と連通する第2流路(例えば上述の第2流路25)とを含み、
前記弁体の開度が全閉のときに前記第1流路から前記回転軸線の方向に沿って前記第2流路を視ると、前記第2流路における前記ヘッド収容室側の開口端縁(例えば上述の開口端縁252a)と前記第1外縁部とが交差する。
【0063】
上記(3)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の構成を簡素化しつつ、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積を0よりも大きくすることができる。
【0064】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のタービンハウジングにおいて、
前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁(例えば上述の外縁54)は凹部(例えば上述の凹部55)を含む。
【0065】
上記(4)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の構成を簡素化しつつ、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積を0よりも大きくすることができる。
【0066】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載のタービンハウジングにおいて、
前記弁体の開度が全閉のときに前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁は、前記シート部の第1位置(例えば上述の第1位置P1)から前記排気流路と反対側に向けて延在する第1外縁部(例えば上述の第1外縁部541)と、前記シート部の第2位置(例えば上述の第2位置P2)から前記排気流路と反対側に向けて延在する第2外縁部(例えば上述の第2外縁部542)とを含み、前記第1位置と前記回転軸線との距離は前記第2位置と前記回転軸線との距離よりも大きく、
前記凹部は前記第1外縁部に形成される。
【0067】
上記(5)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の構成を簡素化しつつ、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積を0よりも大きくすることができる。
【0068】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載のタービンハウジングにおいて、
前記スクロール連通流路は、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路に接続する第1流路と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路に接続する第2流路とを含み、
前記第1流路と前記第2流路とは、前記弁体の開度が全閉のときに前記凹部の内側の空間を介して連通する。
【0069】
上記(6)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の構成を簡素化しつつ、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積を0よりも大きくすることができる。
【0070】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れかに記載のタービンハウジングにおいて、
前記スクロール連通流路は、前記ヘッド部を収容可能なヘッド収容室(例えば上述のヘッド収容室26)と、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路と前記ヘッド収容室とを連通する第1流路(例えば上述の第1流路24)と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路と前記ヘッド収容室と連通する第2流路(例えば上述の第2流路25)とを含み、
前記弁体の開度が全閉のときに前記第1流路から前記回転軸線の方向に沿って前記第2流路を視ると、前記第2流路における前記ヘッド収容室側の開口端縁(例えば上述の開口端縁252a)の一部が前記凹部の内側に位置する。
【0071】
上記(7)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の構成を簡素化しつつ、弁体の開度が全閉のときのスクロール連通面積を0よりも大きくすることができる。
【0072】
(8)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(7)の何れかに記載のタービンハウジングにおいて、
前記弁体の開度が全閉のときに前記回転軸線の方向に沿って視ると、前記ヘッド部の外縁は、前記シート部の第1位置(例えば上述の第1位置P1)から前記排気流路と反対側に向けて延在する第1外縁部(例えば上述の第1外縁部541)と、前記シート部の第2位置(例えば上述の第2位置P2)から前記排気流路と反対側に向けて延在する第2外縁部(例えば上述の第2外縁部542)とを含み、前記第1位置と前記回転軸線との距離は前記第2位置と前記回転軸線との距離よりも大きく、
前記スクロール連通流路は、前記ヘッド部を収容可能なヘッド収容室(例えば上述のヘッド収容室26)と、前記2つのスクロール流路のうちの一方のスクロール流路と前記ヘッド収容室とを連通する第1流路(例えば上述の第1流路24)と、前記2つのスクロール流路のうちの他方のスクロール流路と前記ヘッド収容室と連通する第2流路(例えば上述の第2流路25)とを含み、
前記回転軸線の方向に沿って前記第1流路から前記第2流路を視たときに前記第2流路の前記ヘッド収容室側の開口端縁(例えば上述の開口端縁252a)と前記第2外縁部とが接するような前記弁体の開度を所定開度(例えば上述の所定開度Va)と定義すると、
前記弁体の開度が前記所定開度のときに前記回転軸線の方向に沿って前記第1流路から前記第2流路を視ると、前記開口端縁と前記第2外縁部との接点(例えば上述の接点Pa)における前記開口端縁の曲率は、前記接点における前記第2外縁部の曲率より大きい。
【0073】
上記(8)に記載のタービンハウジングによれば、弁体の構成を簡素化しつつ、弁体の開度を上記所定開度(全閉又は全閉近傍の開度)から増加させる際にスクロール連通面積を減少させるか一定とすることができる。
【0074】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン(例えば上述のタービン1)は、
タービンホイール(例えば上述のタービンホイール3)と、
上記(1)乃至(8)の何れかに記載のタービンハウジングと、
を備える。
【0075】
上記(9)に記載のタービンによれば、上記(1)乃至(8)の何れかに記載のタービンハウジングを備えるため、エネルギーの有効利用とエンジンの出口圧の低減の両立を実現することができる。
【0076】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ(例えば上述のターボチャージャ100)は、
上記(9)に記載のタービンを備える。
上記(10)に記載のターボチャージャによれば、上記(9)に記載のタービンを備えるため、エネルギーの有効利用とエンジンの出口圧の低減の両立を実現することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 タービン
2 タービンハウジング
3 タービンホイール
4 スクロールコネクションバルブ
5 弁体
6 アーム部
20 スクロール連通流路
21 第1スクロール流路
22 第2スクロール流路
23 ノズル流路
24 第1流路
25 第2流路
26 ヘッド収容室
28 排気流路
29 連通口
51 シート部
52 当接面
53 ヘッド部
54 外縁
55 凹部
100 ターボチャージャ
210 第1スクロール流路形成部
220 第2スクロール流路形成部
242,252 他端側接続口
242a,252a 開口端縁
252b 部分
261 第1壁面部
262 第2壁面部
263 第3壁面部
270 連通流路形成部
280 排気流路形成部
291 シート壁面
541 第1外縁部
542 第2外縁部
543 先端縁
551 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8