(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099885
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】外導体、及びシールド部材
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6582 20110101AFI20240719BHJP
【FI】
H01R13/6582
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003489
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 滉太
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA08
5E021FA14
5E021FA16
5E021FC21
5E021FC31
5E021LA11
5E021LA12
(57)【要約】
【課題】相手側外導体との導通を良好に図る。
【解決手段】上側外導体22Aは、第1内導体21が収容される第1誘電体23を包囲する。上側外導体22Aは、外周面から径方向に突出した弾性接触片42Dを有する前側外導体42Bと嵌合可能であり、軸線L1を前側外導体42Bとの嵌合方向と平行に向けた嵌合筒部22Cを備えている。嵌合方向において、嵌合筒部22Cは、前側外導体42Bとの嵌合が進むにつれて弾性接触片42Dの内向きの弾性変形量を増加させる傾斜面22Nを有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内導体が収容される誘電体を包囲する外導体であって、
外周面又は内周面のいずれかから径方向に突出した弾性接触片を有する相手側外導体と嵌合可能であり、軸線を前記相手側外導体との嵌合方向と平行に向けた嵌合筒部を備え、
前記嵌合方向において、前記嵌合筒部は、前記相手側外導体との嵌合が進むにつれて前記弾性接触片の弾性変形量を増加させる傾斜面を有している、外導体。
【請求項2】
前記嵌合筒部の前端は、前記相手側外導体を内挿させるための挿入口として開口しており、
前記傾斜面は、前記嵌合筒部の前記内周面に含まれ、後端に向かって縮径するように形成されている、請求項1に記載の外導体。
【請求項3】
前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって変化している、請求項2に記載の外導体。
【請求項4】
前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって徐々に大きくなる、請求項3に記載の外導体。
【請求項5】
前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって徐々に小さくなる、請求項3に記載の外導体。
【請求項6】
前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって段階的に大きくなる、請求項3に記載の外導体。
【請求項7】
前記相手側外導体に前記嵌合筒部を嵌合させ、前記弾性接触片を前記傾斜面に接触させた嵌合状態において、前記外周面と、前記傾斜面とは離間し、前記外周面と前記傾斜面との隙間は、前記弾性接触片が設けられた位置よりも先端部の方が小さい、請求項2に記載の外導体。
【請求項8】
請求項7に記載の外導体と、
前記傾斜面に弾性接触可能な弾性接触片を有する円筒状をなした相手側外導体と、
を備え、
前記相手側外導体は、前記弾性接触片を含み、外周面から突出する複数の突部を有し、
前記突部における前記傾斜面との接点を内接させる仮想円の直径は、前記内周面の前端の直径よりも大きい、シールド部材。
【請求項9】
前記相手側外導体の先端部の前記外周面は、前記弾性接触片が設けられた位置よりも拡径している、請求項8に記載のシールド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外導体、及びシールド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイキャスト鋳造によって成型された第2シールド部材を有するコネクタの構成が開示されている。第2シールド部材には、導電性材料で形成された第1シールド部材の筒部が挿入される。第1シールド部材の筒部には弾性接触片が設けられており、この弾性接触片によって、筒部と第2シールド部材との導通が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第2シールド部材はダイキャスト製であり、樹脂材料よりも硬い。このため、筒部が挿入される孔内面の抜きテーパを、樹脂材料を用いる場合に比べて大きく設定することが考えらえる。また、金型構造の都合によって抜きテーパを前端から後向きに拡がるように設定することもあり得る。このような場合、第2シールド部材に対する弾性接触片の接圧がばらつき易くなる懸念が生じる。
【0005】
本開示は、相手側外導体との導通を良好に図ることができる外導体、及びシールド部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つ目の開示の外導体は、
内導体が収容される誘電体を包囲する外導体であって、
外周面又は内周面のいずれかから径方向に突出した弾性接触片を有する相手側外導体と嵌合可能であり、軸線を前記相手側外導体との嵌合方向と平行に向けた嵌合筒部を備え、
前記嵌合方向において、前記嵌合筒部は、前記相手側外導体との嵌合が進むにつれて前記弾性接触片の弾性変形量を増加させる傾斜面を有している。
【0007】
2つ目の開示のシールド部材は、
1つ目の開示の外導体と、
前記傾斜面に弾性接触可能な弾性接触片を有する円筒状をなした相手側外導体と、
を備え、
前記相手側外導体は、前記弾性接触片を含み、外周面から突出する複数の突部を有し、
前記突部における前記傾斜面との接点を内接させる仮想円の直径は、前記内周面の前端の直径よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の外導体、及びシールド部材は、相手側外導体との導通を良好に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1のシールドコネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、嵌合状態のシールドコネクタの側断面図である。
【
図3】
図3は、前側外導体のリブが設けられた側の先端部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、前側外導体の弾性接触片が設けられた側の先端部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第2誘電体が挿入された前側外導体の正面図である。
【
図6】
図6は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合の途中の状態を示す側断面図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態における嵌合筒部を示す側断面図であって、傾斜面の角度が前端から後端に向かって徐々に大きくなる様子を示す。
【
図8】
図8は、他の実施形態における嵌合筒部を示す側断面図であって、傾斜面の角度が前端から後端に向かって徐々に小さくなる様子を示す。
【
図9】
図9は、他の実施形態における嵌合筒部を示す側断面図であって、傾斜面の角度が前端から後端に向かって段階的に大きくなる様子を示す。
【
図10】
図10は、他の実施形態における前側外導体の側面図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態におけるシールド部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
1つ目の開示の外導体は、
(1)内導体が収容される誘電体を包囲する外導体であって、
外周面又は内周面のいずれかから径方向に突出した弾性接触片を有する相手側外導体と嵌合可能であり、軸線を前記相手側外導体との嵌合方向と平行に向けた嵌合筒部を備え、
前記嵌合方向において、前記嵌合筒部は、前記相手側外導体との嵌合が進むにつれて前記弾性接触片の弾性変形量を増加させる傾斜面を有している。この構成によれば、嵌合筒部への相手側外導体の嵌合を進めるほど嵌合筒部に対する弾性接触片の接圧が大きくなるので、相手側外導体との導通を良好に図ることができる。
【0011】
(2)前記嵌合筒部の前端は、前記相手側外導体を内挿させるための挿入口として開口しており、
前記傾斜面は、前記嵌合筒部の前記内周面に含まれ、後端に向かって縮径するように形成されていることが好ましい。この構成によれば、相手側外導体を嵌合筒部に内挿する際に、傾斜面によって相手側外導体の弾性接触片を内向きに押圧するように作用させることができるので、相手側外導体との導通を安定させ易い。
【0012】
(3)(2)において、前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって変化していることが好ましい。この構成によれば、弾性接触片を弾性変形させる度合いを嵌合方向において調整し易い。
【0013】
(4)(3)において、前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって徐々に大きくなることが好ましい。この構成によれば、 弾性接触片を弾性変形させる度合いを嵌合が進むにつれて大きくすることができ、弾性接触片の接圧を高める位置を、嵌合方向における嵌合筒部の奥部に設定することができる。
【0014】
(5)(3)において、前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって徐々に小さくなることが好ましい。この構成によれば、弾性接触片の接圧を高める位置を、嵌合方向における嵌合筒部の前部に設定することができる。
【0015】
(6)(3)において、前記嵌合方向に対する前記傾斜面の角度は、前記嵌合筒部の前端から後端に向かって段階的に大きくなることが好ましい。この構成によれば、弾性接触片の接圧を段階的に大きくする設定が可能となる。
【0016】
(7)(2)から(6)のいずれかにおいて、前記相手側外導体に前記嵌合筒部を嵌合させ、前記弾性接触片を前記傾斜面に接触させた嵌合状態において、前記外周面と、前記傾斜面とは離間していることが好ましい。前記外周面と前記傾斜面との隙間は、前記弾性接触片が設けられた位置よりも先端部の方が小さいことが好ましい。この構成によれば、嵌合状態において、相手側外導体の外周面と傾斜面との隙間は、弾性接触片が設けられた位置よりも相手側外導体の先端部の位置が小さくなり、シールド性能を高め易い。
【0017】
2つ目の開示シールド部材は、
(8)(2)から(7)のいずれかに記載の外導体と、
前記傾斜面に弾性接触可能な弾性接触片を有する円筒状をなした相手側外導体と、
を備え、
前記相手側外導体は、前記弾性接触片を含み、外周面から突出する複数の突部を有し、
前記突部における前記傾斜面との接点を内接させる仮想円の直径は、前記内周面の前端の直径よりも大きい。この構成によれば、相手側外導体を嵌合筒部に内挿し、突部が内周面の前端に進入したところで突部と内周面との導通を確保する。さらに嵌合状態に至ることによって、弾性接触片と内周面との接圧が増加して外導体と相手側外導体との導通をより確実なものにすることができる。
【0018】
(9)(8)において、前記相手側外導体の先端部の前記外周面は、前記弾性接触片が設けられた位置よりも拡径していることが好ましい。この構成によれば、弾性接触片が設けられた位置よりも先端部の外周面が拡径しているので、先端部における相手側外導体の外周面と傾斜面との隙間をより狭めることができ、シールド性能の向上に寄与し得る。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
<実施形態1>
本開示を具体化した実施形態1の外導体、及びシールド部材を備えるシールドコネクタ10について、
図1から
図6を参照して説明する。図中、「前側」、「後側」、「上側」、「下側」、「右側」、及び「左側」は、それぞれ「F」、「B」、「U」、「D」、「R」、及び「L」で表される。図中における前側「F」は、第1コネクタ20において、第2コネクタ40に対向する側である。なお、第2コネクタ40の説明における前側は、第1コネクタ20に対して対向する面側として説明する。第1コネクタ20、及び第2コネクタ40は前後方向に嵌合可能である。つまり、前後方向は、嵌合方向に相当する。
【0020】
シールドコネクタ10は、図示しない回路基板に設置される基板用の同軸コネクタとして構成される。
図1に示すように、シールドコネクタ10は、第1コネクタ20、及び第2コネクタ40を有している。第1コネクタ20は、第1内導体21と、第1内導体21を包囲する第1外導体22と、第1内導体21と第1外導体22との間に配置される第1誘電体23と、第1外導体22が連結される第1ハウジング24と、を備えている。第1外導体22は、外導体である上側外導体22Aと、下側外導体22Bと、を有している。上側外導体22Aは、シールド部材30の構成要素である。第1ハウジング24は、第2コネクタ40が有する第2ハウジング44に嵌合される。
【0021】
図2に示すように、第2コネクタ40は、第2内導体41と、第2外導体42と、第2誘電体43と、第2ハウジング44と、リテーナ45と、を備えている。第2外導体42は、後側外導体42Aと、相手側外導体である前側外導体42Bと、を有している。前側外導体42Bは、シールド部材30の構成要素である。シールド部材30は、上側外導体22Aと、前側外導体42Bと、を備えている。
【0022】
[第1内導体の構成]
第1内導体21は、導電金属製であって、全体としてピン状又はタブ状をなしている。
図1に示すように、第1内導体21は、前後方向に延びる水平部21Aと、水平部21Aの後端部から下方に延びる延出部21Bと、を有し、側面から視るとL字形をなしている。水平部21Aの前端部は、細径の端子接続部21Cとされている。後述する第1ハウジング24と、後述する第2ハウジング44と、が嵌合状態にあるときに、端子接続部21Cが後述する第2内導体41に接続される(
図2参照)。延出部21Bの下端部は、細径の基板接続部21Dとされている。基板接続部21Dは、回路基板の接続孔に挿入され、回路基板の導電部に半田付けして接続される。
【0023】
[第1外導体の構成]
第1外導体22の上側外導体22A及び下側外導体22Bの各々は、亜鉛合金、又はアルミ合金等のダイキャスト製の導電性剛体として構成される。上側外導体22Aは、ブロック状をなした本体部22Eと、本体部22Eから前方に突出する円筒状の嵌合筒部22Cと、を有している。本体部22Eは、矩形板状の上壁22Fと、上壁22Fの左右方向の両端から下方に垂下する一対の側壁22Gと、を有している。本体部22Eの内側は、下方及び後方に開放された組付空間22Hになっている。組付空間22Hには、後述する第1誘電体23の引出部23Bが収容され、且つ下方から下側外導体22Bの後述する背部22Jが組み付けられる。上側外導体22Aは、各側壁22Gの下端縁から下向きに突出する4つの脚部22Kを有している。各脚部22Kは、回路基板の固定孔に挿入される。
【0024】
嵌合筒部22Cの軸線L1は、前後方向(嵌合方向)と平行である。嵌合筒部22Cの前端は、後述する前側外導体42Bを内挿させるための挿入口22Pとして開口している(
図2参照)。嵌合筒部22C内には、後方から第1誘電体23の保持部23Aが挿入される。嵌合筒部22Cの内周面は、前端から後端に向かって縮径するように傾斜した傾斜面22Nを含んでいる(
図2参照)。第2コネクタ40の第2ハウジング44がフード部24Bに嵌合されると、嵌合筒部22Cの傾斜面22Nには、第2外導体42の後述する弾性接触片42Dが弾性接触して接続される(
図2参照)。
【0025】
下側外導体22Bは、底部22Lと、底部22Lの後端部から上向きに立ち上がる背部22Jと、底部22Lの前端部から上向きに立ち上がる係合部22Dと、を有している。底部22Lには、矩形の開口部22Mが上下方向に貫通して形成されている。開口部22Mには、第1誘電体23の引出部23Bの下端部が上方から挿入される(
図2参照)。背部22Jは、矩形の平板状をなし、開口部22Mの後方から立ち上がっている。背部22Jが上側外導体22Aの組付空間22Hに配置されることによって、上側外導体22Aの本体部22Eの後面が閉塞される(
図2参照)。
【0026】
[第1誘電体の構成]
第1誘電体23は、合成樹脂製である。第1誘電体23は、前後方向に延びる円筒状の保持部23Aと、保持部23Aの後端部から下方に突出する引出部23Bと、を有し、側面から視るとL字形をなしている。保持部23Aには、第1内導体21の水平部21Aが挿入される(
図2参照)。引出部23Bの後面には、上下方向に延びるガイド溝23Cが形成されている。ガイド溝23Cは、後向きに開放されている。ガイド溝23Cには、後方から第1内導体21の延出部21Bが挿入される(
図2参照)。
【0027】
[第1ハウジングの構成]
第1ハウジング24は、合成樹脂製である。
図1に示すように、第1ハウジング24は、連結部24Aと、連結部24Aから前方に突出するフード部24Bと、を有している。フード部24Bは、角筒状をなしている。
図2に示すように、フード部24Bの上壁の前端には、ロック部24Cが下向きに突出して形成されている。ロック部24Cが後述する第2ハウジング44のロック突起44Dに嵌合方向から係止することによって、第1ハウジング24と、第2ハウジング44と、が嵌合状態に保持される。
【0028】
図1に示すように、連結部24Aは、フード部24Bの後面を閉塞する奥壁部分を有し、前後方向に貫通する円形の挿通孔24Dを有している。挿通孔24Dには、第1外導体22の嵌合筒部22Cが圧入状態で挿通される。挿通孔24Dに挿通された嵌合筒部22Cの前部は、フード部24B内に配置される(
図2参照)。連結部24Aは、後部に連結凹部24Eを有している。連結凹部24Eは、連結部24Aにおいて挿通孔24Dの貫通方向(前後方向)と交差して下方に延び、連結部24Aの下方及び後方に開放されている。連結凹部24Eの後方は、左右一対の規制部24Fによって部分的に閉塞されている。各規制部24Fは、連結部24Aの後部の左右側壁24Gから左右方向の内向きに張り出し、上下方向にリブ状をなして延びている。各規制部24Fが下側外導体22Bの係合部22Dと係合することによって、第1外導体22が第1ハウジング24から抜け出すことを規制して、第1外導体22と、第1ハウジング24と、の連結状態が維持される。
【0029】
[第2コネクタの構成]
図2に示すように、第2コネクタ40は、シールド電線Wの端部に取り付けられる。シールド電線Wは、いわゆる同軸線である。シールド電線Wは、芯線51と、被覆52と、編組線53と、シース54(
図1参照)と、を有している。芯線51は、導電性を有し、複数の素線を撚り合わせて形成されている。被覆52は、絶縁性を有し、芯線51の外周を包囲する。編組線53は、導電性を有し、被覆52の外周を包囲し、素線を網状に編成して形成されている。シース54は、絶縁性を有し、編組線53の外周を包囲する。芯線51は、高周波信号を伝送する機能を有している。編組線53は、電磁波をシールドする機能を有している。シールド電線Wは、シース54と被覆52とを皮剥ぎすることによって、先端側から順に芯線51と、編組線53と、が露出する形態になっている。編組線53の外周には、環状のスリーブ70が配置され、折り返された編組線53の先端部によってスリーブ70の外面が覆われている。
【0030】
[第2内導体の構成]
第2内導体41は、金属板を曲げ加工等して成形されている。第2内導体41は、円筒状をなしている。第2内導体41の前部は、周方向に二分割されて二股に形成されている。第2内導体41に前方から第1内導体21の端子接続部21Cが挿入されると、第2内導体41の前部は、径方向に拡開して端子接続部21Cを誘い込むとともに、端子接続部21Cを挟み込む。第2内導体41の後部は、芯線51に加締め付けられている。
【0031】
[第2外導体の構成]
第2外導体42の後側外導体42A及び前側外導体42Bの各々は、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。後側外導体42Aの後部は、折り返された編組線53の先端部に覆われたスリーブ70を包囲している。後側外導体42Aの後部は、シールド電線Wの外周面に対して加締め付けられている。
【0032】
前側外導体42Bの後部には、後方から後側外導体42Aの前部が挿入されている。前側外導体42Bと、後側外導体42Aとは、スポット溶接等によって固定されている。
【0033】
図3、4に示すように、前側外導体42Bの前部には、外周面から外向きに突出する複数の突部42Fが設けられている。突部42Fは、四つのリブ42C、及び三つの弾性接触片42Dを含んでいる。各リブ42Cは、前側外導体42Bの軸線方向に延び、且つ外周面から外向きに突出して形成されている。これらリブ42Cは、周方向に所定の間隔を設け並んで配置されている。
【0034】
三つの弾性接触片42Dは、前側外導体42Bの前部に周方向に並んで配置されている。各弾性接触片42Dは、後端から前端部にかけて外向きに徐々に広がるように延び、前端部が内向きに屈曲している。各弾性接触片42Dは、外周面から外向きに突出する山型に形成されている。各弾性接触片42Dの山型の頂部には、外向きに膨らむように丸みを帯びて突出するビード42Eが形成されている。各弾性接触片42Dは、嵌合筒部22Cの傾斜面22Nに弾性接触可能である(
図2参照)。
【0035】
図5に示すように、複数の突部42F(四つのリブ42C、及び三つの弾性接触片42D)は、前側外導体42Bの外周面において周方向に並んで配置されている。四つのリブ42Cのうちの一部、及び三つの弾性接触片42Dのうちの一部のビード42Eの先端(すなわち、傾斜面22Nとの接点)を内接させる仮想円Vcの直径は、嵌合筒部22Cの内周面の前端の直径よりも大きい。
【0036】
[第2誘電体の構成]
図2に示すように、第2誘電体43は、筒状をなす。第2誘電体43には、前後方向に貫通する断面円形の内導体挿入孔43Aが形成されている。内導体挿入孔43Aには、後方から第2内導体41が挿入される。第2誘電体43は、前側外導体42Bに挿入される。第2誘電体43は、第2内導体41と第2外導体42との間に配置される。第2外導体42は、第2内導体41を包囲する。
【0037】
[第2ハウジングの構成]
第2ハウジング44は、前後方向に貫通するキャビティ44Aが形成され前後方向に延びたブロック状をなしている。第2ハウジング44は、第1ハウジング24のフード部24Bに嵌合可能とされている。第2ハウジング44の上部には、ロックアーム44C、及びロック突起44Dが設けられている。ロックアーム44Cは、左右方向に幅を有した平板状をなして、前後方向に延びて配置されている。ロック突起44Dは、ロックアーム44Cの上面から上向きに突出して設けられている。ロック突起44Dは、第1ハウジング24のロック部24Cに嵌合方向から係止して、第2ハウジング44と第1ハウジング24とを嵌合状態に保持する機能を有している。
【0038】
キャビティ44Aには、スリーブ70、第2内導体41、第2誘電体43、及び第2外導体42が取り付けられたシールド電線Wが後方から挿入される。これにより、第2ハウジング44には、第2外導体42が収容される。第2ハウジング44には、下方からリテーナ45が取り付けられる。リテーナ45を取り付けることによって、キャビティ44Aに対してシールド電線Wが抜け止めされる。つまり、リテーナ45は、第2ハウジング44に収容された第2外導体42を抜け止めする。
【0039】
[シールドコネクタと相手側コネクタとの組付け]
第1ハウジング24と、第2ハウジング44とを、互いに正対した状態から嵌合する。具体的には、第2ハウジング44の前端部を第1ハウジング24のフード部24Bに嵌合させる。
【0040】
図6に示すように、嵌合が進むと、前側外導体42Bの前端部(先端部)が嵌合筒部22Cに挿入される。そして、四つのリブ42C、及び三つの弾性接触片42Dのビード42Eが嵌合筒部22Cの傾斜面22N(内周面)の前端に接触する。さらに、嵌合を進めると、嵌合筒部22Cの傾斜面22N(内周面)に対して四つのリブ42C、及びビード42Eが接触した状態を保ちつつ、三つの弾性接触片42Dが軸線L1に近づく方向(内向き)に弾性変形する。このとき、嵌合筒部22Cに対する前側外導体42Bの嵌合が進むにつれ、嵌合筒部22Cの傾斜面22Nによって、三つの弾性接触片42Dの内向きの弾性変形量が増加する。言い換えると、傾斜面22Nは、前後方向(嵌合方向)において、前側外導体42Bとの嵌合が進むにつれて弾性接触片42Dの弾性変形量を増加させる。これとともに、第2ハウジング44のロック突起44Dが第1ハウジング24のロック部24Cによって下向きに押圧されて、ロックアーム44Cが下向きに弾性変形する。
【0041】
図2に示すように、嵌合方向において、ロック突起44Dがロック部24Cを通過するとロックアーム44Cが弾性復帰する。こうして、ロック突起44Dは、ロック部24Cに嵌合方向から係止し、第1ハウジング24と、第2ハウジング44との嵌合が完了し、第1ハウジング24と、第2ハウジング44と、が嵌合状態に保持される。嵌合状態において、弾性接触片42Dは、傾斜面22Nに接触している。嵌合状態において、前側外導体42Bの外周面と、嵌合筒部22Cの傾斜面22Nと、は離間している。前側外導体42Bの外周面と、嵌合筒部22Cの傾斜面22Nとの隙間は、弾性接触片42Dが設けられた位置よりも前側外導体42Bの先端部の方が小さくなっている。
【0042】
次に、本構成の効果を例示する。
上側外導体22Aは、第1内導体21が収容される第1誘電体23を包囲する。上側外導体22Aは、外周面から径方向に突出した弾性接触片42Dを有する前側外導体42Bと嵌合可能であり、軸線L1を前側外導体42Bとの嵌合方向と平行に向けた嵌合筒部22Cを備えている。嵌合方向において、嵌合筒部22Cは、前側外導体42Bとの嵌合が進むにつれて弾性接触片42Dの内向きの弾性変形量を増加させる傾斜面22Nを有している。この構成によれば、嵌合筒部22Cへの前側外導体42Bの嵌合を進めるほど嵌合筒部22Cに対する弾性接触片42Dの接圧が大きくなるので、前側外導体42Bとの導通を良好に図ることができる。
【0043】
嵌合筒部22Cの前端は、前側外導体42Bを内挿させるための挿入口22Pとして開口している。傾斜面22Nは、嵌合筒部22Cの内周面に含まれ、嵌合筒部22Cの後端に向かって縮径するように形成されている。この構成によれば、前側外導体42Bを嵌合筒部22Cに内挿する際に、傾斜面22Nによって前側外導体42Bの弾性接触片42Dを内向きに押圧するように作用させることができるので、前側外導体42Bとの導通を安定させ易い。
【0044】
前側外導体42Bに嵌合筒部22Cを嵌合させ、弾性接触片42Dを傾斜面22Nに接触させた嵌合状態において、前側外導体42Bの外周面と、嵌合筒部22Cの傾斜面22Nとは離間している。外周面と傾斜面22Nとの隙間は、弾性接触片42Dが設けられた位置よりも前側外導体42Bの前端部(先端部)の方が小さい。この構成によれば、嵌合状態において、前側外導体42Bの外周面と嵌合筒部22Cの傾斜面22Nとの隙間は、弾性接触片42Dが設けられた位置よりも前側外導体42Bの前端部(先端部)の位置が小さくなり、シールド性能を高め易い。
【0045】
シールド部材30は、上側外導体22Aと、傾斜面22Nに弾性接触可能な弾性接触片42Dを有する円筒状をなした前側外導体42Bと、を備えている。前側外導体42Bは、弾性接触片42Dを含み、外周面から突出する複数の突部42Fを有している。突部42Fにおける嵌合筒部22Cの内周面との接点を内接させる仮想円Vcの直径は、嵌合筒部22Cの内周面の前端の直径よりも大きい。この構成によれば、前側外導体42Bを嵌合筒部22Cに内挿し、突部42Fが内周面の前端に進入したところで突部42Fと内周面との導通を確保する。さらに嵌合状態に至ることによって、弾性接触片42Dと内周面との接圧が増加して上側外導体22Aと前側外導体42Bとの導通をより確実なものにすることができる。
【0046】
<他の実施形態>
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0047】
実施形態1とは異なり、
図7に示すように、嵌合方向に対する嵌合筒部122Cの傾斜面122Nの角度を嵌合筒部122Cの前端から後端に向かって変化している構成としてもよい。具体的には、嵌合方向に対する傾斜面122Nの角度を、嵌合筒部122Cの前端から後端に向かって徐々に大きくなるようにしてもよい。この構成によれば、弾性接触片を弾性変形させる度合いを嵌合方向において調整し易い。さらに、弾性接触片を弾性変形させる度合いを嵌合が進むにつれて大きくすることができ、弾性接触片の接圧を高める位置を、嵌合方向における嵌合筒部122Cの奥部に設定することができる。
また、
図8に示すように、嵌合方向に対する傾斜面222Nの角度を嵌合筒部222Cの前端から後端に向かって徐々に小さくなるようにしてもよい。この構成によれば、弾性接触片の接圧を高める位置を、嵌合方向における嵌合筒部222Cの前部に設定し易い。
また、
図9に示すように、嵌合方向に対する傾斜面322Nの角度を嵌合筒部322Cの前端から後端に向かって段階的に大きくなるようにしてもよい。この構成によれば、弾性接触片の接圧を段階的に大きくする設定が可能となる。
【0048】
実施形態1とは異なり、
図10に示すように、前側外導体142Bの前端部(先端部)の外周面を弾性接触片142Dが設けられた位置よりも拡径した構成としてもよい。この構成によれば、前端部(先端部)の外周面が弾性接触片142Dが設けられた位置よりも拡径しているので、前端部(先端部)における前側外導体142Bの外周面と嵌合筒部の傾斜面との隙間をより狭めることができ、シールド性能の向上に寄与し得る。
【0049】
実施形態1とは異なり、
図11に示すように、シールド部材130を構成してもよい。具体的には、嵌合筒部422Cの外周面を前端から後端に向かって拡径する傾斜面422Nとして形成し、嵌合筒部422Cに対し、前側外導体242Bを外挿する構成としてもよい。この場合、前側外導体242Bには、径方向の内向きに内周面から突出する弾性接触片242Dを設ける。さらに、軸線L1を挟み、弾性接触片242Dと反対側の前側外導体242Bの内周面には、径方向の内向きに内周面から突出するリブ242Cを設ける。前側外導体242Bを嵌合筒部422Cに嵌合させると、嵌合筒部422Cの傾斜面422Nによって弾性接触片242Dが外向きに弾性変形する。前側外導体242Bと嵌合筒部422Cとの嵌合を進めるにつれ、弾性接触片242Dの外向きの弾性変形量が増加する。
【0050】
突部の数は、実施形態1の数に限らない。
【符号の説明】
【0051】
10…シールドコネクタ
20…第1コネクタ
21…第1内導体
21A…水平部
21B…延出部
21C…端子接続部
21D…基板接続部
22…第1外導体
22A…上側外導体(外導体)(シールド部材)
22B…下側外導体
22C,122C,222C,322C,422C…嵌合筒部
22D…係合部
22E…本体部
22F…上壁
22G…側壁
22H…組付空間
22J…背部
22K…脚部
22L…底部
22M…開口部
22N,122N,222N,322N,422N…傾斜面
22P…挿入口
23…第1誘電体
23A…保持部
23B…引出部
23C…ガイド溝
24…第1ハウジング
24A…連結部
24B…フード部
24C…ロック部
24D…挿通孔
24E…連結凹部
24F…規制部
24G…左右側壁
30,130…シールド部材
40…第2コネクタ
41…第2内導体
42…第2外導体
42A…後側外導体
42B,142B,242B…前側外導体(相手側外導体)(シールド部材)
42C,242C…リブ
42D,142D,242D…弾性接触片
42E…ビード
42F…突部
43…第2誘電体
43A…内導体挿入孔
44…第2ハウジング
44A…キャビティ
44C…ロックアーム
44D…ロック突起
45…リテーナ
51…芯線
52…被覆
53…編組線
54…シース
70…スリーブ
L1…嵌合筒部の軸線
Vc…仮想円
W…シールド電線