(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099894
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/958 20130101AFI20240719BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240719BHJP
【FI】
A61F2/958
A61M25/10 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003500
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松崎 洋平
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB10
4C267BB12
4C267BB28
4C267BB38
4C267CC07
4C267CC09
4C267EE11
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】本発明では、ステント脱落のリスクを低減し、デリバリー時の通過性の低下の少ないステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】ステントの先端から基端にかかる軸方向の位置にある拡張部およびステントの先端よりも先端側の軸方向の位置にある先端側非拡張部を有するバルーンを有し、先端側非拡張部の肉厚は拡張部の肉厚よりも厚く、バルーンの収縮状態において、拡張部はラッピングされた形態であり、先端側非拡張部はラッピングされていない形態であり、先端側非拡張部の少なくとも一部の外径がステントの内径より大きいことを特徴とするステントデリバリーシステム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントデリバリーシステムであって、軸方向に延び、先端および基端を有する外管と、前記外管内に置かれ、軸方向に延び、前記外管の先端より先端側に置かれた先端および前記外管の先端より基端側に置かれた基端を有する内管と、軸方向に延び、前記内管の先端側と接続された先端および前記外管の先端側と接続された基端を有し、径方向に拡張および収縮可能なバルーンと、前記バルーンの外表面上に置かれ、軸方向に延び、前記バルーンの先端より基端側に置かれた先端および前記バルーンの基端より先端側に置かれた基端を有し、隙間および肉厚を有する筒状の形状で、径方向に拡張および収縮可能なステントと、を有し、前記バルーンは前記ステントの先端から基端にかかる軸方向の位置にある拡張部および前記ステントの先端よりも先端側の軸方向の位置にある先端側非拡張部を有し、前記先端側非拡張部の肉厚は前記拡張部の肉厚よりも厚く、前記バルーンの収縮状態において、前記拡張部はラッピングされた形態であり、前記先端側非拡張部はラッピングされていない形態であり、前記先端側非拡張部の少なくとも一部の外径が前記ステントの内径より大きいことを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記先端側非拡張部の最大外径が、前記ステントの外径と同程度であることを特徴とする請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項3】
前記先端側非拡張部は、前記先端側非拡張部の先端から最大外径となる位置までテーパー状であることを特徴とする請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記先端側非拡張部は、前記先端側非拡張部の基端から最大外径となる位置までテーパー状で、前記先端側非拡張部の基端から最大外径となる位置まで軸方向と成すテーパー角が、前記先端側非拡張部の先端から最大外径となる位置までのテーパー角より大きいことを特徴とする請求項3に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項5】
前記バルーンは前記ステントの基端よりも基端側の軸方向の位置にある基端側非拡張部を有し、前記基端側非拡張部の肉厚は前記拡張部の肉厚よりも厚く、前記バルーンの収縮状態において、前記基端側非拡張部はラッピングされていない形態であり、前記基端側非拡張部の少なくとも一部の外径が前記ステントの内径より大きいことを特徴とする請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項6】
前記基端側非拡張部の構造は、前記先端側非拡張部の構造と同等の構造を有する請求項5に記載のステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の生体管腔における病変部の治療方法として、カテーテルのような治療器具を経皮的に生体管腔に導入し、体内埋込型の医療器具であるステントを留置する治療方法が知られている。ステントの形状は管状で、その表面に隙間が形成されているため、術者はステントを径方向に収縮または拡張することができる。また、ステント留置後の生体管腔内の再狭窄を予防するため、ステントの表面に免疫抑制剤などの薬剤がコートされた薬剤溶出ステントも知られている。
【0003】
ステントは、収縮された状態でステントデリバリーシステムによって狭窄部や閉塞部などの生体管腔内の病変部まで送達された後、拡張され、生体管腔内に留置される。ステントの拡張方式には、バルーン拡張型と自己拡張型が存在する。このうち、バルーン拡張型のステントは、収縮されてバルーンカテーテルのバルーンに圧着(クリンプ)される。目的の病変部まで送達(デリバリー)した後、術者がバルーンを拡張することにより、ステントは生体管腔内に留置される。自己拡張型のステントは、収縮されてシース内に拘束される。目的の病変部までデリバリーした後、シースによるステントの拘束が解除されることにより、ステントは生体管腔内に留置される。
【0004】
ステントデリバリーシステムを目的の病変部までデリバリーするにあたり、ステントデリバリーシステムには通過性が求められる。特に、蛇行した病変部または管腔内経路を傷つけずにステントデリバリーシステムが通過するためには、ステントデリバリーシステムの先端側が病変部または管腔内経路の形状に追従して通過できること、すなわちステントデリバリーシステムの先端側の柔軟性の向上が求められる。
【0005】
バルーン拡張型ステントのステントデリバリーシステムでは、デリバリー中にステントがバルーンから脱落する可能性があり、ステント脱落リスクの低減が求められる。
【0006】
特許文献1では、先端側および基端側に位置する固定部の拡張径が中央部に位置する拡張機能部の拡張径よりも大きなバルーンにより、病変部での拡張時のバルーンの位置ずれを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、収縮状態のバルーンは、バルーンカテーテルの軸方向に垂直な断面上で、バルーンの延在方向に沿って凸部、平滑部、凹部が交互に配置され、一つの平滑部に別の平滑部が巻き付いた(ラッピング)構造をしている。特許文献1のバルーンは、固定部の耐圧性を高める方法として、固定部の肉厚を拡張機能部よりも厚くすることが開示されているが、この場合、固定部の径は拡張機能部の径よりも増加する。拡張状態にあるときの径の増加は、固定部と拡張機能部の肉厚の差のおよそ2倍に相当するが、収縮状態にあるときの径の増加は、ラッピング構造によりそれより大きくなる。このためデリバリー時の通過性が低下する。本発明では、ステント脱落のリスクを低減し、デリバリー時の通過性の低下の少ないステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するステントデリバリーシステムは、軸方向に延び、先端および基端を有する外管と、前記外管内に置かれ、軸方向に延び、前記外管の先端より先端側に置かれた先端および前記外管の先端より基端側に置かれた基端を有する内管と、軸方向に延び、前記内管の先端側と接続された先端および前記外管の先端側と接続された基端を有し、径方向に拡張および収縮可能なバルーンと、前記バルーンの外表面上に置かれ、軸方向に延び、前記バルーンの先端より基端側に置かれた先端および前記バルーンの基端より先端側に置かれた基端を有し、隙間および肉厚を有する筒状の形状で、径方向に拡張および収縮可能なステントと、を有し、前記バルーンは前記ステントの先端から基端にかかる軸方向の位置にある拡張部および前記ステントの先端よりも先端側の軸方向の位置にある先端側非拡張部を有し、前記先端側非拡張部の肉厚は前記拡張部の肉厚よりも厚く、前記バルーンの収縮状態において、前記拡張部はラッピングされた形態であり、前記先端側非拡張部はラッピングされていない形態であり、前記先端側非拡張部の少なくとも一部の外径が前記ステントの内径より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したステントデリバリーシステムにおいては、先端側非拡張部の少なくとも一部の外径がステントの内径より大きいことにより、ステント脱落のリスクが低減される。また、先端側非拡張部がバルーンの収縮状態においてラッピングされていないため、バルーンが収縮状態にあるときの先端側非拡張部の径が過度に増加することなく、デリバリー時のステントデリバリーシステムの通過性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るステントデリバリーシステムの全体図である。
【
図2】本実施形態に係るステントデリバリーシステムの先端側の拡大図である。
【
図3】本実施形態に係る、バルーンおよびステントが収縮状態にあるステントデリバリーシステムのバルーンとその近傍の位置における軸方向に平行な断面図である。
【
図4】本実施形態に係るステントデリバリーシステムの中間シャフトとその近傍の位置における軸方向に平行な断面図である。
【
図5】本実施形態に係る、バルーンが収縮状態にあるステントデリバリーシステムのバルーンの拡張部の位置におけるステントを除いた軸方向に垂直な断面図である。
【
図6】本実施形態に係る、バルーンおよびステントが収縮状態にあるステントデリバリーシステムのステントとその近傍の位置における拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0013】
本明細書に添付する図面において、ステントデリバリーシステムが延在する方向を軸方向、軸方向に垂直な平面上でバルーンおよびステントが拡張および収縮する方向を径方向、軸方向に垂直な平面上で径方向に垂直な方向を周方向とする。また、図面上の軸方向において、ステントデリバリーシステムが生体内に挿入される側を先端側、術者が操作する側を基端側とする。また、単に先端および基端と称する場合、それぞれ先端側および基端側の端面を指すものとする。
【0014】
本実施形態に係るステントデリバリーシステム10は、
図1~6に示すように、内管20、先端外管30、中間シャフト40、基部外管50、コネクタ60、補強体70、バルーン80、ステント90を有する。
【0015】
内管20は、ステントデリバリーシステム10の先端から中間位置にかけて軸方向に延在している。内管20の先端はステントデリバリーシステム10の先端となっている。内管20のルーメンではガイドワイヤが通過可能となっている。また、
図3に示すように、内管20の先端側では先端造影マーカー23および基部造影マーカー24が配置されている。また、内管20の先端側と基端側では構成する材料が異なっている。内管20の先端側である先端内管21は、内管20の基端側である基部内管22より柔らかい材料で構成されている。
【0016】
先端外管30は、ステントデリバリーシステム10の先端側から中間位置にかけて軸方向に延在している。先端外管30のルーメンには内管20が配置されている。先端外管30の先端は内管20の先端よりも基端側にあり、先端外管30の基端は内管20の基端よりも先端側にある。
【0017】
中間シャフト40は、ステントデリバリーシステム10の中間位置において軸方向に延在している。中間シャフト40の先端は先端外管30の基端と接続し、中間シャフト40の基端は内管20の基端より基端側に位置している。また、
図4に示すように、中間シャフト40の壁面には開口部41が存在し、基部内管22は開口部41を通過しており、開口部41と基部内管22の外周の間に隙間はない。中間シャフト40と基部内管22の間のルーメンは、先端外管30と基部内管22の間のルーメンと連通している。
【0018】
基部外管50は、ステントデリバリーシステム10の中間位置から基端側にかけて軸方向に延在している。基部外管50の先端は中間シャフト40の基端と接続している。基部外管50のルーメンは中間シャフト40のルーメンおよび中間シャフト40と内管20の間のルーメンと連通している。
【0019】
コネクタ60は、ステントデリバリーシステム10の基端側において軸方向に延在している。コネクタ60の先端は基部外管50の基端と接続しており、コネクタ60の基端はステントデリバリーシステム10の基端となっている。コネクタ60のルーメンは基部外管50のルーメンと連通している。コネクタ60の基端は開口しており、ここからルーメン内に流体を供給、またルーメン内から流体を吸引することが可能である。コネクタ60の基端はシリンジやインデフレータ等の流体を供給または吸入可能な器具と接続可能である。
【0020】
補強体70は、中間シャフト40および基部外管50のルーメンにおいて軸方向に延在している。また、
図4に示すように、補強体70の先端は開口部41より先端側にあり、補強体70の基端は基部外管50の先端より基端側で基部外管50と接続している。補強体70は中実部材である。
【0021】
バルーン80はステントデリバリーシステム10の先端側において軸方向に延在しており、先端側にある先端側非拡張部84、基端側にある基端側非拡張部85、その間にある拡張部86から構成される。バルーン80の先端は内管20の先端側に接続して、バルーン80の基端は先端外管30の先端側に接続している。バルーン80の内部空間は先端外管30と内管20の間のルーメンと連通しており、流体が供給または吸引されることでバルーン80は加圧または減圧され、拡張部86が拡張または収縮する。先端側非拡張部84および基端側非拡張部85の外径は、先端および基端に向かってテーパー状に縮径しており、拡張部86の外径は軸方向に沿って略一定である。また、
図5に示すように、収縮状態にあるバルーン80の拡張部86は、軸方向に垂直な断面上で、バルーン80の延在方向に沿って凸部81、平滑部82、凹部83が交互に配置され、平滑部82が内管20や別の平滑部82に巻き付いたラッピング構造であり、凸部81は周方向に向かって凸となっている。拡張状態にあるバルーン80の拡張部86は周方向に沿って平滑であり、軸方向に垂直な断面において拡張部86の断面は円形である。なお、収縮状態にあるバルーン80の先端側非拡張部84および基端側非拡張部85はラッピング構造を有さない。軸方向に垂直な断面において先端側非拡張部84および基端側非拡張部85の断面は、バルーン80が収縮状態にあっても拡張状態にあっても円形である。
【0022】
ステント90は、
図6に示すように、線状部91と湾曲部92が交互に接続した波状の環状体93が軸方向に複数配置され、先端側から基端側にかけて、隣接する環状体93がリンク部94で接続されることにより形成された、隙間および肉厚を有する筒状の形状を呈している。収縮状態のステント90は湾曲部92に隣接する線状部91の成す角度(湾曲部92の開き)が小さく、ステント90はバルーン80と接触している。バルーン80を拡張させると、湾曲部92の開きが大きくなることでステント90が拡張する。
【0023】
以下、本実施形態に係るステントデリバリーシステム10を構成する各部材を補足する。
【0024】
基部内管22の内径はガイドワイヤを挿通できる径であれば特に限定されないが、例えば0.1~2.0mmであり、好ましくは0.2~0.8mmである。基部内管22の外径は特に限定されないが、例えば0.2~2.5mmであり、好ましくは0.4~1.0mmである。基部内管22の肉厚は特に限定されないが、例えば0.01~0.3mmであり、好ましくは0.03~0.15mmである。基部内管22の長さは特に限定されないが、例えば100~1000mmであり、好ましくは200~600mmである。基部内管22の内径または外径は軸方向に沿って一定でもテーパー状でもよい。基部内管22は引き落とし等の二次加工を行ってもよい。基部内管22の外径が小さいほど、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。
【0025】
先端内管21の内径は特に限定されないが、内管20のルーメン内でのガイドワイヤの通過性を低下させないため、基部内管22の内径と同程度であることが望ましい。先端内管21の外径は特に限定されないが、基部内管22の外径と同程度であることが望ましい。先端内管21の肉厚は特に限定されないが、基部内管22の肉厚と同程度であることが望ましい。先端内管21の長さは特に限定されないが、例えば1~80mmであり、好ましくは、2~50mmである。先端内管21の外径は軸方向に沿って一定でもテーパー状でもよいが、テーパー状であることが望ましい。先端内管21の基端側の外径は一定で先端側の外径がテーパー状でもよい。先端内管21の外径が小さいほど、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。先端内管21の先端はR加工が施されていることが望ましい。先端内管21の基端と基部内管22の先端は、接着や融着などの公知の技術を適用して接続してよい。また、基部内管22を製造した後に先端側の硬度を熱処理、化学的処理、機械研磨等で低下させる等の方法で、先端内管21と基部内管22を一体的に製造してもよい。
【0026】
基部内管22の素材は公知の素材を適用でき、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン等が適用できる。先端内管21の素材は公知の素材を適用でき、例えばポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の熱可塑性エラストマー等が適用できる。基部内管22および先端内管21は顔料を含んでいてもよい。先端内管21の硬度は特に限定されないが、基端側の硬度より低いことが望ましい。先端内管21の硬度が基部内管22よりも低いことにより、先端内管21の硬度が基部内管22と同等以上の場合と比較して、ステントデリバリーシステム10の先端の柔軟性が向上し、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。先端内管21の基端の軸方向の位置は特に限定されないが、バルーン80の先端付近、バルーン80の基端付近、またはその間の位置が望ましい。
【0027】
基部内管22は径方向に沿って硬度が異なる多層構造であってもよい。径方向の外側の硬度が径方向の内側の硬度より低い、または径方向の内側の硬度が径方向の外側の硬度より低い基部内管22は、硬度の高い材料で単層の基部内管22より柔軟性が向上し、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。層数は特に限定されないが、例えば2~3層である。3層以上の場合、中間層の硬度が最も高くてもよい。各層の素材は特に限定されないが、例えば上述した基部内管22や先端内管21の素材を適用できる。先端内管21も同様に硬度が異なる多層構造であってもよい。
【0028】
先端造影マーカー23および基部造影マーカー24の形状は特に限定されないが、円筒状が望ましい。先端造影マーカー23および基部造影マーカー24の内径は基部内管22の外径と同程度である。肉厚は特に限定されないが、例えば0.01~0.2mmである。先端造影マーカー23および基部造影マーカー24の軸方向の長さは特に限定されないが、例えば0.1~10mmである。先端造影マーカー23および基部造影マーカー24の素材は、金、白金、タンタル、イリジウム等の公知のX線不透過素材を適用できる。基部内管22の柔軟性の低下の抑制のため、X線透視時に視認できる限りにおいて、肉厚は小さく、長さは短い方が望ましい。先端造影マーカー23および基部造影マーカー24の軸方向の位置は特に限定されないが、例えばステント90の先端側付近および基端側付近の位置が望ましい。先端造影マーカー23の先端および基端がステント90の先端より先端側または基端側に位置してもよいし、先端造影マーカー23の先端がステント90の先端より先端側かつ、先端造影マーカー23の基端がステント90の先端より基端側に位置してもよい。同様に、基部造影マーカー24の先端および基端がステント90の基端より基端側または先端側に位置してもよいし、基部造影マーカー24の基端がステント90の基端より基端側かつ、基部造影マーカー24の先端がステント90の基端より先端側に位置してもよい。先端造影マーカー23または基部造影マーカー24はどちらか1つのみでもよい。先端造影マーカー23および基部造影マーカー24と基部内管22は、かしめ加工や接着や融着などの公知の技術を適用して接続されてよい。先端造影マーカー23および基部造影マーカー24は内管20の外表面が凹むように、内管20に対して押し込まれていてもよい。先端造影マーカー23または基部造影マーカー24は先端内管21と接続されてもよい。
【0029】
先端外管30の内径は内管20を挿通できる径であれば特に限定されないが、例えば、0.5~2.5mmであり、好ましくは0.6~2.0mmである。先端外管30の外径は特に限定されないが、例えば0.7~3.0mmであり、好ましくは0.9~1.6mmである。先端外管30の肉厚は特に限定されないが、例えば0.01~0.3mmであり、好ましくは0.03~0.15mmである。先端外管30の長さは特に限定されないが、例えば100~1000mmであり、好ましくは200~600mmである。先端外管30の内径または外径は軸方向に沿って一定でもテーパー状でもよい。先端外管30は引き落とし等の二次加工を行ってもよい。先端外管30の外径が小さいほど、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。
【0030】
先端外管30の素材は公知の素材を適用でき、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィンや、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の熱可塑性エラストマー等が適用できる。先端外管30の素材は、例えば内管20と同じ素材が適用できる。顔料を含んでいてもよい。
【0031】
先端外管30は径方向に沿って硬度が異なる多層構造であってもよい。径方向の外側の硬度が径方向の内側の硬度より低い、または径方向の内側の硬度が径方向の外側の硬度より低い先端外管30は、硬度の高い材料で単層の先端外管30より柔軟性が向上し、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。層数は特に限定されないが、例えば2~3層である。3層以上の場合、中間層の硬度が最も高くてもよい。各層の素材は特に限定されないが、上述した先端外管30の素材を適用できる。
【0032】
中間シャフト40の内径は、先端から開口部41の領域で基部内管22を挿通できる径であれば特に限定されないが、例えば0.5~2.5mmであり、好ましくは0.6~2.0mmである。中間シャフト40の外径は特に限定されないが、例えば0.7~3.0mmであり、好ましくは0.9~1.6mmである。中間シャフト40の肉厚は特に限定されないが、例えば0.01~0.3mmであり、好ましくは0.03~0.15mmである。中間シャフト40の長さは特に限定されないが、例えば10~200mmであり、好ましくは20~100mmである。中間シャフト40の軸の延在方向はステントデリバリーシステム10の軸方向と略平行であるが、開口部41がある位置とその近傍ではステントデリバリーシステム10の軸方向から傾いていてもよい。
【0033】
中間シャフト40の開口部41の位置は特に限定されないが、例えば中間シャフト40の先端から2~30mmの範囲内に位置する。開口部41の位置における基部内管22の軸の延在方向は、ステントデリバリーシステム10の軸方向に平行でもよいし、ステントデリバリーシステム10の径方向に平行でもよいし、これら2方向の間に相当する傾いた方向でもよい。基部内管22の基端は開口部41より中間シャフト40の外側にあってもよいし、開口部41の位置と同じもしくは部分的に重なる位置にあってもよい。
【0034】
中間シャフト40の先端と先端外管30の基端は、接着や融着などの公知の技術を適用して接続される。両端面同士を接続してもよいし、中間シャフト40のルーメンに先端外管30を挿通して接続してもよいし、先端外管30のルーメンに中間シャフト40を挿通して接続してもよい。中間シャフト40または先端外管30のルーメンに先端外管30または中間シャフト40を挿通して接続する場合、軸方向で両者が重なる位置の全体を接続してもよいし、一部を接続してもよい。両者は、接続部からの流体の漏れがないように接続される。
【0035】
中間シャフト40の素材は公知の素材を適用でき、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィンや、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の熱可塑性エラストマー等が適用できる。中間シャフト40の素材は、例えば内管20または先端外管30と同じ素材が適用できる。顔料を含んでいてもよい。
【0036】
中間シャフト40の開口部41から基端にかかる領域は、内管20が存在しないため剛性が低下している。ルーメン内に補強体70が存在し得るが、中間シャフト40の素材が柔らかい場合、やはり剛性が低下する。この場合、開口部41から先端にかかる領域も剛性が低下する。ステントデリバリーシステム10の中で中間シャフト40の領域の剛性が相対的に低い場合、デリバリー時の伝達性が低下するため、中間シャフト40の長さは短い方が好ましい。
【0037】
基部外管50の内径は、補強体70を挿通できる径であれば特に限定されないが、例えば0.5~2.5mmであり、好ましくは0.6~2.0mmである。基部外管50の外径は特に限定されないが、例えば0.7~3.0mmであり、好ましくは0.9~1.6mmである。基部外管50の肉厚は特に限定されないが、例えば0.01~0.3mmであり、好ましくは0.03~0.15mmである。基部外管50の長さは特に限定されないが、例えば100~2000mmであり、好ましくは500~1500mmである。基部外管50の内径または外径は軸方向に沿って一定でもテーパー状でもよい。基部外管50は引き落とし等の二次加工を行ってもよい。基部外管50の外径が小さいほど、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。
【0038】
基部外管50の素材は公知の素材を適用でき、例えばステンレスやチタン合金などの金属が適用できる。内管20や先端外管30と同じ素材を適用してもよい。
【0039】
基部外管50の先端と中間シャフト40の基端は、接着や融着などの公知の技術を適用して接続される。両端面同士を接続してもよいし、中間シャフト40のルーメンに基部外管50を挿通して接続してもよいし、基部外管50のルーメンに中間シャフト40を挿通して接続してもよい。中間シャフト40または基部外管50のルーメンに基部外管50または中間シャフト40を挿通して接続する場合、軸方向で両者が重なる位置の全体を接続してもよいし、一部を接続してもよい。両者は、接続部からの流体の漏れがないように接続される。
【0040】
基部外管50の外表面上に、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の生体内への挿入長さの目安を目視できる深度マーカーを設けてもよい。深度マーカーは基部外管50と別部材でもよいし、基部外管50の外表面を表面処理することによって設けてもよい。
【0041】
コネクタ60の形状は公知の形状が適用でき、例えば円筒の外表面に平板状の突起を有する形状を有してよい。コネクタ60の内径は特に限定されないが、例えば0.5~2.5mmであり、好ましくは0.6~2.0mmである。コネクタ60の長さは特に限定されないが、例えば10~50mmである。コネクタ60の素材は公知の素材を適用でき、例えばポリカーボネートやアクリル等の樹脂素材が適用される。
【0042】
補強体70の外径は基部外管50のルーメンに挿通可能であれば特に限定されないが、例えば0.05~1.5mmであり、好ましくは0.1~0.5mmである。補強体70の長さは特に限定されないが、例えば50~1500mmである。補強体70の基端は基部外管50の先端より基端側で基部外管50と接続される。補強体70の外表面と基部外管50の内表面が接着や融着などの公知の技術を適用して接続される。基部外管50の基端側または先端側またはその間で接続される。接続箇所の数は1箇所でも複数箇所でもよい。補強体70の先端は、開口部41より先端側に位置することが望ましく、中間シャフト40または先端外管30の範囲内に位置する。補強体70の先端が開口部41より先端側にあることで、剛性の低い中間シャフト40の基端から開口部41にかかる領域の剛性が向上し、ステントデリバリーシステム10の伝達性が向上する。補強体70の先端は、中間シャフト40または先端外管30と接続されないが、接続していてもよい。補強体70の径は軸方向に沿って一定でもよいし、テーパー状でもよい。また、補強体70の全体がテーパー状でもよいし、補強体70の一部がテーパー状でもよい。補強体70がテーパー状の場合、テーパー領域の傾きは一定でも一定でなくてもよい。テーパー領域は複数あってもよい。傾きやその変化率は領域毎に異なっていてもよい。補強体70は中実部材が望ましいが、中空部材であってもよい。
【0043】
バルーン80の収縮状態における拡張部86の外径は特に限定されないが、例えば0.5~2mmであり、好ましくは、0.7~1.5mmである。バルーン80の拡張状態における拡張部86の外径は特に限定されないが、推奨拡張圧にて拡張した際の外径において、例えば1~10mmであり、好ましくは、1.5~4.0mmである。拡張部86の長さは特に限定されないが、例えば3~100mmであり、好ましくは5~60mmである。拡張部86の肉厚は特に限定されないが、例えば0.01~0.2mmであり、好ましくは0.02~0.05mmである。収縮状態のバルーン80において、拡張部86は、軸方向に垂直な断面上で拡張部86の延在方向に沿って凸部81、平滑部82、凹部83が交互に配置され、平滑部82が内管20や別の平滑部82に巻き付いたラッピング構造となっており、凸部81は周方向に向かって凸となっている。凸部81の数は特に限定されないが、例えば2~8であり、好ましくは3~6である。
【0044】
バルーン80の収縮状態における拡張部86の外径は軸方向に沿って略一定であるが、一定でなくてもよい。特に、先端側および基端側においては、肉厚の増減によって外径の増減が起こりえる。ただし、拡張部86の最大外径は先端側非拡張部84または基端側非拡張部85の最大外径よりも小さい。
【0045】
バルーン80の拡張状態における拡張部86の外径は、先端側および基端側で小さく、拡張部86の先端および基端に向かって縮径することで、先端側非拡張部84の基端および基端側非拡張部85の先端に接続している。中央の領域では略一定である。
【0046】
拡張部86の肉厚は、先端側において先端側非拡張部84の基端に向かって、また基端側において基端側非拡張部85の先端に向かって厚くなり、ラッピング構造が非ラッピング構造に変化していく。拡張部86の肉厚は、先端側および基端側において一定でもよいが、この場合、拡張部86の外径が、先端側において先端側非拡張部84の基端に向かって、また基端側において基端側非拡張部85の先端に向かって小さくなり、ラッピング構造が非ラッピング構造に変化していく。拡張部86の肉厚は、中央の領域において略一定であるが、一定でなくてもよい。
【0047】
先端側非拡張部84の外径は先端から基端に向かってテーパー状に拡径しており、バルーン80の収縮状態における先端側非拡張部84の最大外径は、拡張部86にクリンプされたステント90の内径よりも大きく、例えば0.7~2mmである。先端側非拡張部84の最大外径がステント90の内径より大きいことにより、ステント脱落のリスクが低減される。好ましくは、ステント90の外径と同程度であり、具体的にはステント90の外径からステント90の肉厚の0.5倍内側の位置からステント90の外径からステント90の肉厚の0.5倍外側の位置の範囲内にある。先端側非拡張部84の最大外径がステント90の外径と同程度であることにより、ステント脱落のリスクがより低減される。また、先端側非拡張部84の最大外径が大きすぎず、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の通過性の低下が抑制される。
【0048】
先端側非拡張部84はラッピング構造を有さないため、バルーン80を拡張させた際に、先端側非拡張部84の拡張量は拡張部86の拡張量より低い。バルーン80の拡張状態における先端側非拡張部84の外径は、推奨拡張圧にて拡張した際の外径において、例えば0.7~2mmである。先端側非拡張部84がバルーン80の収縮状態においてラッピングされていないことにより、バルーン80が収縮状態にあるときの先端側非拡張部84の径が過度に増加することなく、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の通過性の低下が抑制される。
【0049】
先端側非拡張部84の肉厚は、拡張部86の肉厚よりも大きく、例えば0.05~2mmである。先端側非拡張部84の肉厚が拡張部86の肉厚よりも大きいことで、先端側非拡張部84がラッピング構造を有さなくとも、バルーン80の収縮状態における先端側非拡張部84の少なくとも一部の外径がステント90の内径より大きい状態となる。
【0050】
先端側非拡張部84の軸方向の長さは特に限定されないが、例えば0.5~20mmである。先端側非拡張部84の肉厚は軸方向に沿って一定でも一定でなくてよく、一定でない場合、必ずしも先端側非拡張部84の全長にわたって拡張部86の肉厚より大きい必要はない。先端側非拡張部84の先端側の肉厚は拡張部86の肉厚と同程度でもよいし、それ以下でもよい。ただし、先端側非拡張部84の最大外径となる位置において、その肉厚は拡張部86の肉厚よりも大きい。先端側非拡張部84の最大外径となる位置は、先端側非拡張部84の基端側にあることが好ましい。これにより、ステント90の先端から先端側非拡張部84の最大外径となる位置の間に存在し得る隙間が減少し、当隙間からカテーテルや体腔内表面がステント90に当接して、ステント90に生じる軸方向の外力が低減するため、ステント脱落のリスクが低減する。
【0051】
先端側非拡張部84の先端から最大外径となる位置まではテーパー状であることが好ましい。これにより、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。また、先端側非拡張部84の基端から最大外径となる位置まではテーパー状で、軸方向と成すテーパー角が、先端側非拡張部84の先端から最大外径となる位置までのテーパー角より大きいことが好ましい。90°以上でも以下でもよい。これにより、デリバリー時において、カテーテルや体腔内表面がステント90に当接してステント90を先端側に動かす外力が作用した際に、先端側非拡張部84によるステント90の先端側への位置ずれ防止効果が向上する。先端側非拡張部84のテーパー状の外径は、肉厚が軸方向に沿ってテーパー状に増加することで実現されてもよいし、ステントデリバリーシステム10の軸方向に平行な断面上での先端側非拡張部84の延在方向が軸に対して角度を成すことで実現されてもよい。
【0052】
先端側非拡張部84の肉厚は、拡張部86の肉厚が径方向外側に向かって増加するように増加してもよいし、拡張部86の肉厚が径方向内側に向かって増加するように増加してもよい。両側に向かって増加するように、先端側非拡張部84の肉厚が増加してもよい。また、先端側非拡張部84の肉厚は周方向にわたって一定でもよいし、一定でなくてもよい。
【0053】
先端側非拡張部84の最大外径の位置で、先端側非拡張部84の形状は特に限定されず、丸みを帯びていても、尖っていてもよい。
【0054】
先端側非拡張部84の基端からステント90の先端までは短いことが好ましく、例えば0.01~5mmである。これにより、ステント90の先端から先端側非拡張部84の間に存在し得る隙間が減少し、当隙間からカテーテルや体腔内表面がステント90に当接して、ステント90に生じる軸方向の外力が低減するため、ステント脱落のリスクが低減する。
【0055】
基端側非拡張部85の構造は、先端側非拡張部84の構造と同等である。ただし、基端側非拡張部85の構造が先端側非拡張部84の構造と同一でなくてもよい。
【0056】
基端側非拡張部85の外径は先端から基端に向かってテーパー状に拡径しており、バルーン80の収縮状態における基端側非拡張部85の最大外径は、拡張部86にクリンプされたステント90の内径よりも大きく、例えば0.7~2mmである。基端側非拡張部85の最大外径がステント90の内径より大きいことにより、ステント脱落のリスクが低減される。好ましくは、ステント90の外径と同程度であり、具体的にはステント90の外径の0.7~1.3倍である。基端側非拡張部85の最大外径がステント90の外径と同程度であることにより、ステント脱落のリスクがより低減される。また、基端側非拡張部85の最大外径が大きすぎず、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の通過性の低下が抑制される。
【0057】
基端側非拡張部85はラッピング構造を有さないため、バルーン80を拡張させた際に、基端側非拡張部85の拡張量は拡張部86の拡張量より低い。バルーン80の拡張状態における基端側非拡張部85の外径は、推奨拡張圧にて拡張した際の外径において、例えば0.7~2mmである。基端側非拡張部85がバルーン80の収縮状態においてラッピングされていないことにより、バルーン80が収縮状態にあるときの基端側非拡張部85の径が過度に増加することなく、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の通過性の低下が抑制される。
【0058】
基端側非拡張部85の肉厚は、拡張部86の肉厚よりも大きく、例えば0.05~2mmである。基端側非拡張部85の肉厚が拡張部86の肉厚よりも大きいことで、基端側非拡張部85がラッピング構造を有さなくとも、バルーン80の収縮状態における基端側非拡張部85の少なくとも一部の外径がステント90の内径より大きい状態となる。
【0059】
基端側非拡張部85の軸方向の長さは特に限定されないが、例えば0.5~20mmである。基端側非拡張部85の肉厚は軸方向に沿って一定でも一定でなくてよく、一定でない場合、必ずしも基端側非拡張部85の全長にわたって拡張部86の肉厚より大きい必要はない。基端側非拡張部85の基端側の肉厚は拡張部86の肉厚と同程度でもよいし、それ以下でもよい。ただし、基端側非拡張部85の最大外径となる位置において、その肉厚は拡張部86の肉厚よりも大きい。基端側非拡張部85の最大外径となる位置は、基端側非拡張部85の先端側にあることが好ましい。これにより、ステント90の基端から基端側非拡張部85の最大外径となる位置の間に存在し得る隙間が減少し、当隙間からカテーテルや体腔内表面がステント90に当接して、ステント90に生じる軸方向の外力が低減するため、ステント脱落のリスクが低減する。
【0060】
基端側非拡張部85の基端から最大外径となる位置まではテーパー状であることが好ましい。これにより、デリバリー時のステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。また、基端側非拡張部85の先端から最大外径となる位置まではテーパー状で、軸方向と成すテーパー角が、基端側非拡張部85の基端から最大外径となる位置までのテーパー角より大きいことが好ましい。90°以上でも以下でもよい。これにより、デリバリー時において、カテーテルや体腔内表面がステント90に当接してステント90を基端側に動かす外力が作用した際に、基端側非拡張部85によるステント90の基端側への位置ずれ防止効果が向上する。基端側非拡張部85のテーパー状の外径は、肉厚が軸方向に沿ってテーパー状に増加することで実現されてもよいし、ステントデリバリーシステム10の軸方向に平行な断面上での基端側非拡張部85の延在方向が軸に対して角度を成すことで実現されてもよい。
【0061】
基端側非拡張部85の肉厚は、拡張部86の肉厚が径方向外側に向かって増加するように増加してもよいし、拡張部86の肉厚が径方向内側に向かって増加するように増加してもよい。両側に向かって増加するように、基端側非拡張部85の肉厚が増加してもよい。また、基端側非拡張部85の肉厚は周方向にわたって一定でもよいし、一定でなくてもよい。
【0062】
基端側非拡張部85の最大外径の位置で、基端側非拡張部85の形状は特に限定されず、丸みを帯びていても、尖っていてもよい。
【0063】
基端側非拡張部85の基端からステント90の先端までは短いことが好ましく、例えば0.01~5mmである。これにより、ステント90の基端から基端側非拡張部85の間に存在し得る隙間が減少し、当隙間からカテーテルや体腔内表面がステント90に当接して、ステント90に生じる軸方向の外力が低減するため、ステント脱落のリスクが低減する。
【0064】
バルーン80の基端側と先端外管30の先端側は、接着や融着などの公知の技術を適用して接続される。バルーン80の基端領域内および先端外管30の先端領域内の接続範囲は特に限定されないが、両者は接続部からの流体の漏れがないように接続される。バルーン80の先端側と基部内管22または先端内管21の先端側も同様に接続される。
【0065】
バルーン80の素材は公知の素材を適用でき、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィンや、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の熱可塑性エラストマー等が適用できる。また、硫酸バリウム等の公知のX線不透過素材を含んでいてもよい。バルーン80は規定する圧力以下において破断しないように設計される。破断強度の低い素材は、肉厚を厚くすることにより規定圧力以下でのバルーン80の破断が防止される。破断強度の高い素材は、破断強度の低い素材よりも肉厚を薄く設計しても規定圧力以下でのバルーン80の破断が防止される。このため、バルーン80の素材として破断強度の高い素材を適用することで、肉厚を薄く設計でき、ステントデリバリーシステム10の通過性が向上する。なお、先端側非拡張部84および基端側非拡張部85および拡張部86は一体的に製造されるため、これらを構成する素材は同一である。それぞれ別の素材で構成してもよいが、その場合には各部材を接続する必要があり、接続位置でのバルーン80の耐圧性の低下が懸念される。このため、先端側非拡張部84および基端側非拡張部85および拡張部86は同一の素材であることが好ましい。また、先端側非拡張部84または基端側非拡張部85のみにX線不透過素材が含まれていてもよい。この場合、ステント90を病変部に留置する際のX線投影下での位置を、先端造影マーカー23または基部造影マーカー24を設置することなく把握できる。
【0066】
バルーン80は径方向に沿って多層構造であってもよい。層毎に硬度の異なる素材を適用してもよい。層毎に樹脂の配向方向が異なっていてもよい。樹脂の配向方向が異なる場合、層毎に同種の素材を適用してもよい。一般に、樹脂が配向している場合、配向方向に沿った破断強度が向上するため、層毎に配向方向が異なる場合、各層の配向方向に沿った破断強度が向上する。層毎の配向方向が同一の場合、配向方向以外の破断強度が層毎の配向方向が異なる場合より低下するため、バルーン80が破断しやすくなる。よって、層毎の配向方向が異なる多層バルーン80は、層毎に同素材の配向方向が同一の多層バルーン80よりも肉厚を薄く設計しても規定圧力以下でのバルーン80の破断が防止され得る。また、層毎に配向方向が異なる多層バルーン80は、少なくとも一部の層より硬度の高い素材から構成される単層バルーン80よりもバルーン80が破断しにくくなる可能性がある。従って、バルーン80は層毎の配向方向が異なる多層バルーン80が望ましい。バルーン80の製造方法として例えば延伸ブロー成形が知られているが、この場合、成形時の軸方向の延伸率、周方向の延伸率、素材、各層の成形のタイミングを調整することで、層毎の配向方向が異なる多層バルーン80が製造できる。
【0067】
多層バルーン80の層数は特に限定されないが、例えば2~3層である。硬度の高さは内層から外層に向かって増加してもよいし、外層から内層に向かって増加してもよい。内層と外層の間の層が最も高い硬度を有していてもよい。
【0068】
ステント90は、バルーン80の拡張により拡張が可能で、隙間を有する筒状の形状であれば特に限定されず、公知の形状、寸法、素材の組み合わせを有するステント90が適用される。ステント90の形状は、例えば、線状部91と湾曲部92が交互に接続した波状の環状体93が軸方向に複数配置され、先端側から基端側にかけて、隣接する環状体93がリンク部94で接続されることにより形成された、隙間を有する筒状の形状である。ステント90の寸法として、例えば収縮状態の内径が0.5~2.0mmであり、拡張状態の内径が1.5~10mmであり、肉厚が0.05~0.2mmであり、軸方向長さが5~100mmである。ステント90は、外径が略一定であるバルーン80の中間領域内にクリンプされている。外径が略一定であるバルーン80の中間領域の先端または基端からステント90の先端または基端までの長さは特に限定されないが、例えば0.01~20mmである。なお、ステント90の先端または基端が、外径がテーパー状であるバルーン80の先端側または基端側の領域にあってもよい。ステント90の素材は、例えば、ステンレスやCoCr合金などの金属やポリ乳酸などのポリマーである。
【0069】
以下、本実施形態に係るステントデリバリーシステム10の製造方法を記載する。
【0070】
本実施形態に係るステントデリバリーシステム10は、公知のバルーンカテーテル製造方法によりバルーンカテーテルを製造した後、公知のステント製造方法によりステント90を製造した後、公知のクリンプ方法によりステント90をバルーンカテーテルにクリンプすることにより製造される。
【0071】
バルーンカテーテルの製造において、バルーン80と内管20および先端外管30を接続する前のバルーン80を、一般的な二軸延伸ブロー成形法によりバルーン80を製造する場合、バルーン80の元となるパリソンの先端側非拡張部84および基端側非拡張部85に相当する領域が拡張しないように、パリソンの外側から拘束しておくことが好ましい。先端側非拡張部84および基端側非拡張部85に相当する領域のパリソンの内部に非拡張性のチューブを配置してもよい。先端側非拡張部84および基端側非拡張部85に相当する領域の温度が低くなるように、金型に温度分布を設定してもよい。先端側非拡張部84および基端側非拡張部85に相当する領域の肉厚が拡張部86に相当する領域の肉厚よりも厚いパリソンを用いてもよい。そのようなパリソンは、例えば先端側非拡張部84および基端側非拡張部85に相当する領域を加熱収縮等の手法で厚くする、拡張部86に相当する領域を研磨や切削などの手法で薄くする、等の方法で製造できる。また、先端側非拡張部84および基端側非拡張部85および拡張部86を別々に製造した後に、接着や融着などの公知の技術を適用して接続することで、バルーン80を製造してよい。
【0072】
以下、本実施形態に係るステントデリバリーシステム10の作用効果の1つである、先端側非拡張部84および基端側非拡張部85によるステント脱落リスクの低減に関し補足する。
【0073】
ステントデリバリーシステム10を生体管腔内の目的の病変部までデリバリーする間、ステントデリバリーシステム10に先行して生体管腔内に導入されているガイディングカテーテルなど先端の端面や内部で径方向内側に向かって突出している部分や、生体管腔内で径方向内側に向かって突出している部分が、先端側非拡張部84に当接した場合、基端側に向かう外力がステント90の先端ではなく先端側非拡張部84に加わるため、ステント90の基端側への位置ずれが防止される。基端側非拡張部85に当接した場合、先端側に向かう外力がステント90の基端ではなく基端側非拡張部85に加わるため、ステント90の先端側への位置ずれが防止される。また、生体管腔内の狭窄部や湾曲部がステント90の先端と基端の間に当接して、当接部からステント90を先端側に移動させる外力が作用した場合、ステント90と先端側非拡張部84の当接により、先端側非拡張部84を超えるステント90の先端側への位置ずれが防止される。当接部からステント90を基端側に移動させる外力が作用した場合、ステント90と基端側非拡張部85の当接により、基端側非拡張部85を超えるステント90の基端側への位置ずれが防止される。以上のように、先端側非拡張部84および基端側非拡張部85により、ステント脱落のリスクが低減される。
【0074】
以上を踏まえ、本発明の内容を改めて以下に記載する。
【0075】
[1]ステントデリバリーシステムであって、軸方向に延び、先端および基端を有する外管と、前記外管内に置かれ、軸方向に延び、前記外管の先端より先端側に置かれた先端および前記外管の先端より基端側に置かれた基端を有する内管と、軸方向に延び、前記内管の先端側と接続された先端および前記外管の先端側と接続された基端を有し、径方向に拡張および収縮可能なバルーンと、前記バルーンの外表面上に置かれ、軸方向に延び、前記バルーンの先端より基端側に置かれた先端および前記バルーンの基端より先端側に置かれた基端を有し、隙間および肉厚を有する筒状の形状で、径方向に拡張および収縮可能なステントと、を有し、前記バルーンは前記ステントの先端から基端にかかる軸方向の位置にある拡張部および前記ステントの先端よりも先端側の軸方向の位置にある先端側非拡張部を有し、前記先端側非拡張部の肉厚は前記拡張部の肉厚よりも厚く、前記バルーンの収縮状態において、前記拡張部はラッピングされた形態であり、前記先端側非拡張部はラッピングされていない形態であり、前記先端側非拡張部の少なくとも一部の外径が前記ステントの内径より大きいことを特徴とするステントデリバリーシステム。
【0076】
[2]前記先端側非拡張部の最大外径が、前記ステントの外径と同程度であることを特徴とする上記[1]に記載のステントデリバリーシステム。
【0077】
[3]前記先端側非拡張部は、前記先端側非拡張部の先端から最大外径となる位置までテーパー状であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のステントデリバリーシステム。
【0078】
[4]前記先端側非拡張部は、前記先端側非拡張部の基端から最大外径となる位置までテーパー状で、前記先端側非拡張部の基端から最大外径となる位置まで軸方向と成すテーパー角が、前記先端側非拡張部の先端から最大外径となる位置までのテーパー角より大きいことを特徴とする上記[3]に記載のステントデリバリーシステム。
【0079】
[5]前記バルーンは前記ステントの基端よりも基端側の軸方向の位置にある基端側非拡張部を有し、前記基端側非拡張部の肉厚は前記拡張部の肉厚よりも厚く、前記バルーンの収縮状態において、前記基端側非拡張部はラッピングされていない形態であり、前記基端側非拡張部の少なくとも一部の外径が前記ステントの内径より大きいことを特徴とする上記[1]~[4]に記載のステントデリバリーシステム。
【0080】
[6]前記基端側非拡張部の構造は、前記先端側非拡張部の構造と同等の構造を有する上記[5]に記載のステントデリバリーシステム。
【0081】
上記[1]の特徴を有することにより、先端側非拡張部の少なくとも一部の外径がステントの内径より大きいことにより、ステント脱落のリスクが低減される。また、先端側非拡張部がバルーンの収縮状態においてラッピングされていないため、バルーンが収縮状態にあるときの先端側非拡張部の径が過度に増加することなく、デリバリー時のステントデリバリーシステムの通過性の低下が抑制される。
【0082】
上記[2]の特徴を有することにより、ステント脱落のリスクがより低減される。また、先端側非拡張部の最大外径が大きすぎず、デリバリー時のステントデリバリーシステムの通過性の低下が抑制される。
【0083】
上記[3]の特徴を有することにより、デリバリー時のステントデリバリーシステムの通過性が向上する。
【0084】
上記[4]の特徴を有することにより、ステントの先端側への位置ずれ防止効果が向上する。
【0085】
上記[5]の特徴を有することにより、基端側非拡張部の少なくとも一部の外径がステントの内径より大きいことにより、ステント脱落のリスクが低減される。また、基端側非拡張部がバルーンの収縮状態においてラッピングされていないため、バルーンが収縮状態にあるときの基端側非拡張部の径が過度に増加することなく、デリバリー時のステントデリバリーシステムの通過性の低下が抑制される。
【0086】
上記[6]の特徴を有することにより、基端側非拡張部も上記[1]~[5]の特徴を有する先端側非拡張部と同等の効果が得られる。
【0087】
以上、本発明に係るステントデリバリーシステムを説明したが、本発明は説明した各構成のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により適宜変更することが可能であり、それら変更は本発明の技術的範囲に含まれると判断されるべきである。
【符号の説明】
【0088】
10 ステントデリバリーシステム
20 内管
21 先端内管
22 基部内管
23 先端造影マーカー
24 基部造影マーカー
30 先端外管
40 中間シャフト
41 開口部
50 基部外管
60 コネクタ
70 補強体
80 バルーン
81 凸部
82 平滑部
83 凹部
84 先端側非拡張部
85 基端側非拡張部
86 拡張部
90 ステント
91 線状部
92 湾曲部
93 環状体
94 リンク部