(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099897
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240719BHJP
F16F 7/104 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F7/104
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003503
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇輝
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AD07
3J048BF02
3J048BF20
3J048CB22
3J048EA15
3J048EA36
3J066AA26
3J066DA07
(57)【要約】
【課題】外側部材の両側壁に補強リブを設けて両側壁の剛性を高めることにより、左右方向の振動の発生を十分に抑制することできるダイナミックダンパーを提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパー11は、振動源に取り付けられたベースプレート12と、ベースプレートの上面12bに溶接固定された両側壁16,17及び両側壁の上端縁の間に有する上端片18とを備えたコ字形状の外側金具13と、外側金具の内側に配置されたマス部材14と、両側壁の各内面とマス部材の両外面との間に設けられた4つのゴム製の弾性体15と、を備え、一側壁16の幅方向の一端縁16aと、該一端縁と対角線上にある他側壁17の幅方向の他端縁にプレート状の2つの第1、第2補強リブ19,20を一体に設けた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源に取り付けられ、左右一対の側壁と、該両側壁の長手方向の各一端部の間に設けられた端壁と、を有する金属材からなる外側部材と、該外側部材の内側に配置されたマス部材と、前記外側部材の両側壁の各内面と前記両内面に対向する前記マス部材の両外面との間に設けられた複数の弾性体と、を備え、
前記外側部材の少なくとも前記一側壁の幅方向の一端縁と、該一端縁と対角線上にある前記他側壁の幅方向の他端縁にプレート状の補強リブを一体に設けたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記各補強リブは、前記一側壁と他側壁のそれぞれの端縁から各側壁に対して直角あるいは直角に近い角度で外方に折り曲げられていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項3】
請求項2に記載のダイナミックダンパーであって、
前記各補強リブは、互いに反対方向に延出していると共に、各側壁の長手方向の他端部から上方に延びて矩形板状に形成されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項4】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記補強リブを、前記各側壁の幅方向の各両端縁にそれぞれ設けたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項5】
請求項4に記載のダイナミックダンパーであって、
前記各補強リブは、幅方向の長さを変更可能に形成されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項6】
請求項3に記載のダイナミックダンパーであって、
前記外側部材の両側壁と補強リブは、それぞれの長手方向の他端部が金属材からなるベースプレートの上面に溶接固定されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項7】
請求項6に記載のダイナミックダンパーであって、
前記ベースプレートに上面に、前記両側壁と補強リブを溶接固定する際に、前記両側壁と補強リブを位置決めする複数の位置決め突起を設けたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項8】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記外側部材の端壁と前記マス部材の上端部との間に、マス部材の落下防止機構を設け、
前記落下防止機構は、
前記端壁に上下方向に沿って貫通形成された保持孔と、
外径が前記保持孔の内径よりも大きな頭部と、該頭部の下部に一体に設けられて、前記保持孔に挿入されつつ下端部が前記マス部材に固定された軸部と、を有する落下防止部材と、
を備えたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項9】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記外側部材とマス部材との間に、前記外側部材の両側壁に対向する両側片を有する金属材の内側部材を配置し、前記外側部材の両側壁の各内側面と前記内側部材の両側片の各外側面に前記各弾性体を加硫接着すると共に、内側部材の内側に前記マス部材を配置し、前記内側部材に前記マス部材を固定させる連結部材を設けたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の車体などの振動源に取り付けられて、特定周波数の振動を減衰するダイナミックダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイナミックダンパーとしては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
図7は従来のダイナミックダンパーを示す正面図、
図8は従来のダイナミックダンパーのアウター金具が左右方向へ振動している状態を示す説明図である。
【0003】
このダイナミックダンパー1は、
図7に示すように、車両のメンバーなどの振動源に取り付けられる門型のアウター金具2と、該アウター金具2に有する一対の側壁3,3と該両側壁3、3の上端部を結合する上端壁4とによって囲まれた内部に配置されたマス部材5と、マス部材5の両外側面と前記両側壁3、3の対向内面との間に加硫接着された左右一対のゴム弾性体6、6と、を有している。
【0004】
また、アウター金具2は、両側壁3、3の下端部に一体に有する一対の固定用ブラケット片3a、3aに設けられた4つの取付孔を挿通する固定用ボルト7,7によって車体を構成するメンバーなどの振動部材8に固定されている。
【0005】
なお、上端壁4の中央には、貫通孔4aが形成されていると共に、マス部材5の上面に前記貫通孔4aから上方へ突出するゴム材からなる係合突起部9が設けられており、ゴム弾性体6、6が破断してマス部材5が落下しても、アウター金具2と振動部材8との間で係合突起部9が貫通孔4aに引っ掛かってマス部材5の抜け落ちが防止されるようになっている。
【0006】
そして、このダイナミックダンパー1は、車体メンバーなどの振動部材8の車両上下方向(鉛直方向)の振動を低減するのに用いられ、ゴム弾性体6、6のばね定数とマス部材5の質量とをチューニングすることにより所望の共振周波数に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-353826号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のダイナミックダンパー1にあっては、アウター金具2が比較的薄肉の金属プレートによって形成されて全体の剛性が低くなっていることから、車両の上下方向の振動に対しては対応が可能であるが、左右方向の振動に対しては両側壁3、3が左右に倒れこみ易くなる。
【0009】
すなわち、アウター金具2は、
図8に示すように、マス部材5の左右方向の振動に伴って両側壁3、3が左右方向(図中矢印方向)に振動し易くなる。このように、アウター金具2が左右に方向へ振動してしまうと、このアウター金具2自体がばねの役割をしてエネルギーを吸収してしまう。この結果、ダイナミックダンパーの振動減衰性能が低下して十分な減衰効果が得られないおそれがある。
【0010】
本発明は、前記従来のダイナミックダンパーの技術的課題に鑑みて案出されたもので、外側部材の両側壁に補強リブを設けて両側壁の剛性を高めることにより、左右方向の振動の発生を十分に抑制することできるダイナミックダンパーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願請求項1に係る発明は、車両の振動源にベースプレートを介して取り付けられ、左右一対の側壁と、該両側壁の長手方向の各一端部の間に設けられた端壁と、を有する金属材からなる外側部材と、該外側部材の内側に配置されたマス部材と、前記外側部材の両側壁の各内面と前記両内面に対向する前記マス部材の両外面との間に設けられた複数の弾性体と、を備え、前記外側部材の少なくとも前記一側壁の幅方向の一端縁と、該一端縁と対角線上にある前記他側壁の幅方向の他端縁にプレート状の補強リブを一体に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外側部材の両側壁に補強リブを設けて該両側壁の剛性を高めることにより、左右方向の振動の発生を十分に抑制することできる。この結果、ダイナミックダンパーによる左右方向の振動減衰性能が向上して十分な減衰効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るダイナミックダンパーの第1実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明のダイナミックダンパーの第2実施形態を示す平面図である。
【
図5】本発明のダイナミックダンパーの第3実施形態を示す平面図である。
【
図7】従来のダイナミックダンパーを示す正面図である。
【
図8】従来のダイナミックダンパーのアウター金具が左右方向へ振動している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るダイナミックダンパーの各実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ダイナミックダンパーを、自動車のフロントサスペンションメンバーに取り付けたものを示している。
図1は本発明に係るダイナミックダンパーの第1実施形態を示す平面図、
図2は
図1のA-A線断面図である。
【0015】
自動車の振動源である図外のフロントサスペンションメンバーは、周知のように、走行時の車体の捩れを抑え、路面からの衝撃を緩和し、乗り心地、操縦安定性を向上させるもので、剛性の高い溶接構造用熱間圧延鋼板などによって成形された四角形のフレームによって構成されている。このフロントサスペンションメンバーは、フロントサスペンションの他に、エンジンやステアリングなどを支持するようになっている。
【0016】
そして、振動抑制装置であるダイナミックダンパー11は、
図2に示すように、上下方向(矢印X方向)が車体上下方向と、左右方向(矢印Y方向)が車体幅方向にほぼ一致するように配置されている。
【0017】
そして、このダイナミックダンパー11は、
図1及び
図2に示すように、振動源(振動部材)であるフロントサスペンションメンバーのフレームに図外の2本のボルトによって固定されるベースプレート12と、このベースプレート12の上面に溶接によって固定される門型の外側部材である外側金具13と、この外側金具13の内側に配置された質量部材であるマス部材14と、外側金具13とマス部材14との間に配置された複数(本実施形態では上下4つ)のゴム製の弾性体15と、を備えている。
【0018】
ベースプレート12は、金属板によって図中横方向に長い矩形状に形成されて、下面がフロントサスペンションメンバーのフレームの所定の上面に当接配置されると共に、長手方向の両端部に前記2本のボルトが挿入される2つのボルト挿入孔12a、12aが上下方向に沿って貫通形成されている。
【0019】
外側金具13は、細長い金属板をコ字形に折り曲げて形成されており、矩形状の両側壁16、17と、該両側壁16、17の長手方向の各上端縁の間に設けられた上端壁18と、を有している。
【0020】
前記両側壁16、17は、対向する内側面16a、17aに前記各弾性体15の軸方向の外端が加硫接着されていると共に、それぞれの幅方向の一端縁と他端縁にプレート状の2つの第1補強リブ19と第2補強リブ20が一体に設けられている。
【0021】
すなわち、第1補強リブ19は、一側壁16の幅方向の一端縁16aに一体に設けられ、第2補強リブ20は、前記一端縁16aと対角線上にある他側壁17の幅方向の他端縁17aに一体に設けられている。
【0022】
この第1、第2補強リブ19,20は、外側金具13のプレス成形時に一緒に成形されて、一側壁16の一端縁16aと他側壁17の他端縁17aから各側壁16、17に対してほぼ直角に外方へ折り曲げられていると共に、上下方向に長いプレート状に形成されている。また、各補強リブ19、20は、それぞれの幅長さ、つまり突出長さW、Wがほぼ同一に設定されていると共に、各下端縁19a、20aから各上端縁19b、20bまでの高さH、Hが同じ高さに設定されている。また、各下端縁19a、20aは、両側壁16、17の各下端縁16b、17bと面一、つまり同一高さに設定されているが、各上端縁19b、20bは上端壁18の高さよりも低くほぼ上側2つの弾性体15の高さとほぼ同じに設定されている。
【0023】
また両側壁16、17の各下端縁16b、17bと各補強リブ19,20の各下端縁19a、20aは、ベースプレート12の上面12bに例えばアーク溶接法などによって溶接固定されている。この溶接部21、22は、各下端縁16b、17b、19a、20aのそれぞれの内側に位置している。
【0024】
マス部材14は、
図2に示すように、所定質量のほぼ立方体形状に形成されて、両外側面14a、14bに各弾性体15の軸方向の内端が加硫接着されていると共に、該各弾性体15を介して下面14cがベースプレート12から所定距離Sだけ離間して配置され、また上面14dが後述する落下防止機構23の保持ボルト25を介して上端壁18から所定距離だけ離間して配置されている。また、マス部材14は、上端部の上面中央位置に後述する保持ボルト25の軸部25bの雄ねじ部25cが螺着する雌ねじ孔14dが形成されている。
【0025】
前記上端壁18とマス部材14との間には、マス部材14の落下防止機構23が設けられている。この落下防止機構23は、上端壁18のほぼ中央に上下方向へ貫通形成された保持孔24と、この保持孔24の孔縁で保持可能な落下防止部材である保持ボルト25と、を有している。
【0026】
保持孔24は、所定の内径dを有し、保持ボルト25の後述する頭部25aの外径d1よりも小さく形成されている。
【0027】
保持ボルト25は、ほぼ六角状の頭部25aと、該頭部25aの下部に一体に設けられて、前記保持孔24に挿入されつつマス部材14の上端部に固定された軸部25bと、を有している。頭部25aは、保持孔24よりも上方に配置され、外径d1が前述のように保持孔24の外径dよりも大きく形成されて、マス部材14が不用意に落下した際に、下端面の外周部が保持孔24の孔縁に引っ掛かるようになっている。軸部25bは、頭部25a側の大径部が保持孔24内に挿入配置され、大径部よりも下部に有する段差小径状の先端部の外周に雄ねじ部25cが形成されている。
【0028】
また、前記保持ボルト25の雄ねじ部25cが、マス部材14の雌ねじ孔14dに螺着固定している状態では、頭部25aの下面と上端壁18の上面との間の距離S1が、ベースプレート12の上面とマス部材14の下面との間の距離Sよりも小さく設定されている。
〔本実施形態におけるダイナミックダンパーの作用効果〕
以上の構成を有する本実施形態のダイナミックダンパー11によれば、外側金具13の両側壁16、17にそれぞれ第1、第2補強リブ19,20を設けたことによって、両側壁16、17の剛性を十分に高めることができる。このため、たとえ外側金具13の高さを高くしたとしても、左右振動の発生を十分に抑制することができる。この結果、ダイナミックダンパー11の振動減衰性能が十分に発揮されて高い減衰効果を得ることができる。
【0029】
しかも、各補強リブ19,20が、各側壁16、17に対してほぼ直角に折り曲げられて左右の外方向へ延出していることから、各側壁16、17に対する剛性力、つまり各側壁16、17の左右方向の剛性力を効果的に高めることができる。また、各補強リブ19,20は、各側壁16、17に沿って上下方向に長い矩形板状に形成されていることから、各側壁16、17に対する剛性力を効率よく高めることが可能になる。
【0030】
また、外側金具13の両側壁16、17と各補強リブ19,20のそれぞれの各下端縁19a、20aがベースプレート12の上面12bに溶接固定されていることから、特に、各補強リブ19,20の下端縁19a,20aがベースプレート12に溶接固定されていることによって、両側壁16、17に対する支持力、つまり両側壁16、17の左右方向の振動に対する支持力が大きくなる。したがって、両側壁16、17に対する剛性の向上と相俟って外側金具13の左右方向の振動がさらに抑制されて、ダイナミックダンパー11の左右方向の振動減衰効果が大きくなる。
【0031】
さらに、各補強リブ19,20は、両側壁16、17の一部に設けられるだけであるから全体の重量の増加が抑制できると共に、コストの上昇も抑制できる。
【0032】
また、本実施形態における落下防止機構23は、通常時は、
図2に示すように、保持ボルト25の雄ねじ部25cを、マス部材14の雌ねじ孔14dに螺着固定した状態では、頭部25aが軸部25bの大径部を介して保持孔24の上方に位置しているが、各弾性体15の経時的劣化などに起因して破断によりマス部材14が落下した場合は、頭部25aの下面が保持孔24の孔縁に引っ掛かって、マス部材14は保持ボルト25と保持孔24を介して上端壁18に宙吊り状態になり、ベースプレート12の上面12aに干渉することがなくなる。また、落下防止機構23は、単に保持孔24と保持ボルト25によって構成されて構造が簡素化されていることから、製造が簡単になりコストの高騰が抑制できる。
〔本発明の第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を説明する。
図3は本発明のダイナミックダンパーの第2実施形態を示す平面図、
図4は
図3のB-B線断面図である。
【0033】
この第2実施形態のダイナミックダンパー11は、基本構造は第1実施形態のものと同じであるが、異なるところは、外側金具13の一側壁16と他側壁17のそれぞれの幅方向の両端縁に各一対(全部で4つ)の第1補強リブ19,19と第2補強リブ20,20を設けたものである。
【0034】
前記4つの補強リブ19~20は、第1実施形態のものと同じく外側金具13のプレス成形時に一緒に成形されて、各側壁16,17のそれぞれの両端縁16a,16b,17a,17bから各側壁16、17に対してほぼ直角に外方へ折り曲げられていると共に、上下方向に長いプレート状に形成されている。また、各補強リブ19、20は、第1実施形態のものと同じく、それぞれの突出長さWがほぼ同一に設定されていると共に、各下端縁19a、20aから各上端縁19b、20bまで同じ高さに設定されている。また、各下端縁19a、20aは、両側壁16、17の各下端縁と同一の高さに設定されているが、各上端縁19b、20bは上端壁18の高さよりも低くほぼ上側2つの弾性体15の高さとほぼ同じに設定されていることは第1実施形態のものと同じである。
【0035】
また両側壁16、17の各下端縁と各補強リブ19~20の各下端縁19a、20aは、ベースプレート12の上面に例えばアーク溶接法などによって溶接固定されている。
【0036】
さらに、前記ベースプレート12の上面には、
図3及び
図4に示すように、前記両側壁16、17と各補強リブ19~20を溶接固定する際に、両側壁16、17と補強リブ19~20を位置決めする複数(本実施形態では6つ)の位置決め突起26が設けられている。この各位置決め突起26は、ベースプレート12をプレス成形する際に下面側から押し出すエンボス加工によって形成されており、その形成位置は、両側壁16、17の幅方向の中央位置の各外端縁位置と、各補強リブ19~20のそれぞれの先端部の各内端縁位置になっている。
【0037】
なお、上端壁18とマス部材14との間には、落下防止機構23が設けられている。この落下防止機構23は、構造が第1実施形態のもと同じであるから、具体的な説明は省略する。
【0038】
この第2実施形態のダイナミックダンパー11によれば、第1、第2補強リブ19~20を、両側壁16、17の幅方向の各両端縁に4つ設けたことによって、該両側壁16、17の剛性をさらに高めることができる。これにより、外側金具13の左右方向の振動の発生を一層抑制できることから、ダイナミックダンパー11の振動減衰効果が促進される。
【0039】
また、両側壁16、17の各両端縁に4つの補強リブ19~20を設けたことによって、全体の重量バランスが図れる。
【0040】
また、ベースプレート12の上面12bに6つの位置決め突起26を設けたことから、ベースプレート12の上面12bに両側壁16、17と各補強リブ19~20を溶接固定する前に、前記各位置決め突起26によって両側壁16、17と各補強リブ19~20をベースプレート12の上面上に位置決めすることから、これらの両側壁16、17と各補強リブ19~20を上面12b上の適正な位置でかつ精度良く溶接固定することができる。
【0041】
〔本発明の第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を説明する。
図5本発明のダイナミックダンパーの第3実施形態を示す平面図、
図6は同第3実施形態の正面図である。
【0042】
この第3実施形態のダイナミックダンパー11は、
図5及び
図6に示すように、フロントサスペンションメンバーのフレームに図外の3本のボルトによって固定されるベースプレート12と、このベースプレート12の上面12bのほぼ中央位置に配置されて、左右一対の側壁16、17を有する外側金具13と、該外側金具13の内側に配置されて、前記両側壁に対向する両側片を有する内側部材である内側金具27と、外側金具13の両側壁16、17の各内面と内側金具27の両側片27b、27cの各外面との間に加硫接着された複数(本実施形態では上下4つ)のゴム製の弾性体15と、内側金具27の内側に配置されたマス部材14と、内側金具27にマス部材14を固定させる4本の連結部材である締結ボルト28と、を備えている。
【0043】
ベースプレート12は、平面から視てほぼく形状の異形状に形成された金属板状に形成され、
図5中の両端部と中央位置に前記3本のボルトが挿入される3つのボルト挿入孔12aが貫通形成されている。
【0044】
外側金具13は、第1実施形態のものとほぼ同じ構造であって左右の両側壁16、17と、該両側壁16、17の上端縁を連結する上端壁18と、を有している。両側壁16、17は、第1実施形態のものよりも上下方向に長く形成されていると共に、
図6の右側の他側壁17は、上端部18aが他部品との干渉を避けるために傾斜凹状に形成されている。
【0045】
また、両側壁16、17は、第1実施形態と同じくそれぞれの幅方向の一端縁と他端縁にプレート状の2つの第1補強リブ19と第2補強リブ20が一体に設けられている。すなわち、一側壁16の幅方向の一端縁16aと、この一端縁16aと対角線上にある他側壁17の幅方向の他端縁17aにそれぞれ第1、第2補強リブ19,20が一体に設けられている。
【0046】
この各補強リブ19,20は、外側金具13のプレス成形時に一緒に成形されて、一側壁16の一端縁16aと他側壁17の他端縁17aから各側壁16、17に対してほぼ直角に外方へ折り曲げられていると共に、上下方向に長いプレート状に形成されている。また、各補強リブ19、20は、それぞれの幅長さが異なっており、一側壁16側の第1補強リブ19の突出長さWよりも他側壁17の第2補強リブ20の突出長さW1の方が長く設定されている。また、各補強リブ19,20は、各下端縁19a、20aから各上端縁19b、20bまで同じ高さH1、H1に設定されている。また、各下端縁19a、20aは、両側壁16、17の各下端縁と同一の高さに設定されているが、各上端縁19b、20bは上側2つの弾性体15の高さよりも低く設定されている。
【0047】
内側金具27は、外側金具13と同じく金属板材を逆コ字形状に折曲されてなり、底片27aと、該底片27aの長手方向の両側縁から立ち上がった一対の側片27b、27cと、を有している。また、内側金具27は、板材の肉厚t1が外側金具13の肉厚tよりも薄肉に形成されていると共に、両側片27b、27cが外側金具13の両側壁16、17との間に所定のすき間をもって平行に配置されている。
【0048】
前記両側片27b、27cは、上端部に後述する各締結ボルト28の軸部25bの先端に有する小径な雄ねじ部が挿通される図外の挿入孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0049】
前記4つの弾性体15は、
図6に示すように、それぞれ円柱状に形成されていると共に、左右幅方向(Y方向)に延びて、この矢印Y方向の両端部が両側壁16、17の内面と両側片27b、27cの外面に加硫接着されている。なお、この弾性体15の断面形状の大きさは、ダイナミックダンパー11の取り付け対象、つまり低減すべき振動の周波数に応じて任意に変更することが可能である。
【0050】
マス部材14は、例えば鉄系金属材によって上下方向に長いほぼ長方体に形成されて、上下方向(X方向)の長さLが左右横方向(Y方向)の長さL1より長さよりも大きく形成されて、内側金具27の内部に収容配置されている。また、マス部材14は、上端部の両側が4本の締結ボルト28によって内側金具27の両側片27b、27cに固定されている。
【0051】
また、落下防止機構23は、各実施形態のものと同一であるから同一符番を付して具体的な説明を省略する。
【0052】
以上のように、第3実施形態のダイナミックダンパー11は、第1、第2実施形態とは異なり、内側金具27を設けていることから、振動源を第1、第2実施形態のものとは異なる対象の特定の固定周波数に合わせて設定することができる。
【0053】
また、例えば、ダイナミックダンパー11の取付位置によっては、このダイナミックダンパー11の近傍に他の部品が配置されている場合があるが、この場合は、本実施形態のように、各補強リブ19,20の突出長さW、W1を変更することによって、他の部品との干渉を回避することができる。
【0054】
さらに、マス部材14は、4本の締結ボルト28によって内側金具27に締結されていることから、内側金具27からの不用意な脱落が防止される。
【0055】
各補強リブ19,20を設けることや、これらがベースプレート12に外側金具13と共に溶接固定されことなどの構成は、第1、第2実施形態と同じであるから、前述した第1、第2実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0056】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、外側金具13の形状や、マス部材5の形状をさらに変更することも可能である。また、補強リブの大きさや数、延出方向などは、ダイナミックダンパー11の大きさや取付位置などの仕様に応じて任意に変更することが可能である。
【0057】
また、ダイナミックダンパーの適用対象部材としては、車体の他の振動部材や自動車以外の船舶などの振動部材に適用することも可能であり、振動部材に対して逆さまに取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
11…ダイナミックダンパー
12…ベースプレート
13…外側金具(外側部材)
14…マス部材
15…弾性体
16…一側壁
16a…一側縁
17…他側壁
17a…他側縁
18…上端壁
19・20…第1、第2補強リブ
23…落下防止機構
25…ボルト
26…位置決め突起
27…内側金具(内側部材)
27a…底片
27b・27c…両側片