(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099903
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】道路情報生成装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/06 20120101AFI20240719BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240719BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60W40/06
B60W60/00
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003515
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼人
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BB31
3D241CD12
3D241CE02
3D241CE04
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3D241DC59Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】良好な運転支援を可能にする道路情報を生成する。
【解決手段】道路情報生成装置50は、自車両の周囲の外部状況を検出するカメラ1aと、カメラ1aにより検出された外界状況に基づき、自車両が走行する道路を規定する境界線を認識する路端認識部111と、自車両の進行方向に沿って延在する基準線から路端認識部111により認識された境界線までの距離の変化の割合に基づいて、自車両の前方に存在する交差点の入口位置または出口位置を設定する設定部114と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の外部状況を検出する外界状況検出部と、
前記外界状況検出部により検出された前記外界状況に基づき、自車両が走行する道路を規定する境界線を認識する認識部と、
自車両の進行方向に沿って延在する基準線から前記認識部により認識された前記境界線までの距離の変化の割合に基づいて、自車両の前方に存在する交差点の入口位置または出口位置を設定する設定部と、を備えることを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路情報生成装置において、
自車両の前方に前記交差点が存在するか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部は、前記基準線から前記認識部により認識された前記境界線までの前記距離の変化の割合が所定閾値を越えているか否かを判定し、前記距離の変化の割合が所定閾値を超えるとき、自車両の前方に前記交差点が存在すると判定し、前記距離の変化の割合が所定閾値以下であるとき、自車両の前方に前記交差点が存在しないと判定することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の道路情報生成装置において、
前記設定部は、前記判定部により前記交差点が存在すると判定されたとき、前記外界状況検出部により検出された前記外界状況に基づき前記交差点に対応した停止線が認識されないことを条件として、前記基準線から前記認識部により認識された前記境界線までの前記距離の変化の割合に基づいて前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を設定することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の道路情報生成装置において、
前記道路の地図情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記設定部は、前記判定部により前記交差点が存在すると判定されたとき、前記地図情報に前記交差点に対応した停止線に関する情報が含まれないことを条件として、前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を設定することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項5】
請求項2に記載の道路情報生成装置において、
前記外界状況検出部は、フレーム単位の画像データを取得するカメラであり、
前記認識部は、前記カメラにより取得された前記画像データに基づき、自車両が走行する前記道路を規定する前記境界線を認識し、
前記判定部は、前記基準線から前記認識部により認識された前記境界線までの前記距離の変化の割合に基づいて、自車両の前方に前記交差点があるか否かを判定し、
前記設定部は、前記判定部により前記交差点が存在すると判定された複数フレームの前記画像データのそれぞれに基づき前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を認識し、前記複数フレームの前記画像データのそれぞれから認識された前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を平均化して、平均化した前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を設定することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の道路情報生成装置において、
前記道路の地図情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記設定部は、前記基準線から前記認識部により認識された前記境界線までの前記距離の変化の割合に基づいて前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を認識し、該入口位置または該出口位置の情報が含まれるように、前記記憶部に記憶された前記地図情報を更新することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の道路情報生成装置において、
前記設定部は、前記外界状況検出部により検出された前記外界状況に基づき前記交差点に対応した停止線が認識された場合には、該停止線に基づいて前記交差点の前記入口位置または前記出口位置を設定することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の道路情報生成装置において、
前記設定部は、さらに、前記交差点に対応して仮想的な停止線を設定することを特徴とする道路情報生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の道路情報生成装置において、
前記道路の地図情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記設定部は、前記交差点の前記入口位置より前記進行方向に所定距離手前の位置を前記仮想的な停止線の位置に決定し、決定した前記仮想的な停止線の位置が含まれるように前記記憶部に記憶された前記地図情報を更新することを特徴とする道路情報生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路情報を生成する道路情報生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の車両の走行履歴情報に基づき停止線や信号機が設けられていない地点に仮想停止線を設定し、車両がその地点を走行する際にその仮想停止線で停止するように運転支援を行うようにした装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、複数の車両の走行履歴情報に基づき仮想停止線を設定するようにしたのでは、車両の走行台数が少ない地点などにおいて仮想停止線が適切な位置に設定されず、良好な運転支援が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である道路情報生成装置は、自車両の周囲の外部状況を検出する外界状況検出部と、外界状況検出部により検出された外界状況に基づき、自車両が走行する道路を規定する境界線を認識する認識部と、自車両の進行方向に沿って延在する基準線から認識部により認識された境界線までの距離の変化の割合に基づいて、自車両の前方に存在する交差点の入口位置または出口位置を設定する設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、良好な運転支援を可能にする道路情報を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る道路情報生成装置を有する自車両の車両制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図。
【
図2】本実施形態に係る道路情報生成装置が適用される走行シーンの一例を示す図。
【
図3】本実施形態に係る道路情報生成装置の要部構成を示すブロック図。
【
図4】
図2の交差点を上方から見たときの俯瞰図である。
【
図5A】距離をプロットしたグラフの一例を示す図。
【
図7】
図3のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】
図2の交差点を上方から見たときの俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図9を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る道路情報生成装置は、例えば自動運転機能を有する車両、すなわち自動運転車両に搭載される。なお、本実施形態に係る道路情報生成装置が搭載される車両を、他車両と区別して自車両と呼ぶことがある。自車両は、内燃機関(エンジン)を走行駆動源として有するエンジン車両、走行モータを走行駆動源として有する電気自動車、エンジンと走行モータとを走行駆動源として有するハイブリッド車両のいずれであってもよい。自車両は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
まず、自動運転に係る自車両の概略構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る道路情報生成装置を有する自車両の車両制御システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御システム100は、コントローラ10と、コントローラ10にそれぞれ通信可能に接続された外部センサ群1と、内部センサ群2と、入出力装置3と、測位ユニット4と、地図データベース5と、ナビゲーション装置6と、通信ユニット7と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
【0010】
外部センサ群1は、自車両の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサ(外部センサ)の総称である。例えば外部センサ群1には、自車両の全方位の照射光に対する散乱光を測定して自車両から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで自車両の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、自車両に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
【0011】
内部センサ群2は、自車両の走行状態を検出する複数のセンサ(内部センサ)の総称である。例えば内部センサ群2には、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、走行駆動源の回転数を検出する回転数センサ、自車両の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群2に含まれる。
【0012】
入出力装置3は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置3には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供するディスプレイ、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。
【0013】
測位ユニット(GNSSユニット)4は、測位衛星から送信された測位用の信号を受信する測位センサを有する。測位衛星は、GPS衛星や準天頂衛星などの人工衛星である。測位ユニット4は、測位センサが受信した測位情報を利用して、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0014】
地図データベース5は、ナビゲーション装置6に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えば磁気ディスクや半導体素子により構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース5に記憶される地図情報は、コントローラ10の記憶部12に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
【0015】
ナビゲーション装置6は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置3を介して行われる。目標経路は、測位ユニット4により測定された自車両の現在位置と、地図データベース5に記憶された地図情報とに基づいて演算される。外部センサ群1の検出値を用いて自車両の現在位置を測定することもでき、この現在位置と記憶部12に記憶される高精度な地図情報とに基づいて目標経路を演算するようにしてもよい。
【0016】
通信ユニット7は、インターネット網や携帯電話網等に代表される無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報、走行履歴情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。走行履歴情報を取得するだけでなく、通信ユニット7を介して自車両の走行履歴情報をサーバに送信するようにしてもよい。ネットワークには、公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。取得した地図情報は、地図データベース5や記憶部12に出力され、地図情報が更新される。
【0017】
アクチュエータACは、自車両の走行を制御するための走行用アクチュエータである。走行駆動源がエンジンである場合、アクチュエータACには、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータが含まれる。走行駆動源が走行モータである場合、走行モータがアクチュエータACに含まれる。自車両の制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータと転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータもアクチュエータACに含まれる。
【0018】
コントローラ10は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。より具体的には、コントローラ10は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部11と、ROM,RAM等の記憶部12と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。なお、エンジン制御用ECU、走行モータ制御用ECU、制動装置用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、
図1では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ10が示される。
【0019】
記憶部12には、自動走行用の高精度の詳細な道路地図情報が記憶される。道路地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、道路の勾配の情報、交差点や分岐点の位置情報、白線などの区画線の種別やその位置情報、車線数の情報、車線の幅員および車線毎の位置情報(車線の中央位置や車線位置の境界線の情報)、地図上の目印としてのランドマーク(信号機、標識、建物等)の位置情報、路面の凹凸などの路面プロファイルの情報が含まれる。記憶部12に記憶される地図情報には、通信ユニット7を介して取得した自車両の外部から取得した地図情報(外部地図情報と呼ぶ)と、外部センサ群1の検出値あるいは外部センサ群1と内部センサ群2との検出値を用いて自車両自体で作成される地図情報(内部地図情報と呼ぶ)とが含まれる。
【0020】
外部地図情報は、例えばクラウドサーバを介して取得した地図(クラウド地図と呼ぶ)の情報であり、内部地図情報は、例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いてマッピングにより生成される点群データからなる地図(環境地図と呼ぶ)の情報である。外部地図情報は、自車両と他車両とで共有されるのに対し、内部地図情報は、自車両の独自の地図情報(例えば自車両が単独で有する地図情報)である。なお、内部地図情報を、通信ユニット7を介してサーバ装置や他車両に提供するようにしてもよい。記憶部12には、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報についての情報も記憶される。
【0021】
演算部11は、機能的構成として、自車位置認識部13と、外界認識部14と、行動計画生成部15と、走行制御部16と、地図生成部17とを有する。
【0022】
自車位置認識部13は、測位ユニット4で得られた自車両の位置情報および地図データベース5の地図情報に基づいて、地図上の自車両の位置(自車位置)を認識する。記憶部12に記憶された地図情報と、外部センサ群1が検出した自車両の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。内部センサ群2の検出値に基づいて自車両の移動情報(移動方向、移動距離)を算出し、これにより自車両の位置を認識することもできる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット7を介して通信することにより、自車位置を認識することもできる。
【0023】
外界認識部14は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群1からの信号に基づいて自車両の周囲の外部状況を認識する。例えば自車両の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、自車両の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。路面上の区画線(白線など)や停止線等の標示も他の物体(道路)に含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。他の物体のうち静止している物体の一部は、地図上の位置の指標となるランドマークを構成し、外界認識部14は、ランドマークの位置と種別も認識する。
【0024】
行動計画生成部15は、例えばナビゲーション装置6で演算された目標経路と、記憶部12に記憶された地図情報と、自車位置認識部13で認識された自車位置と、外界認識部14で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの自車両の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部15は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部15は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。行動計画生成部15は、先行車両を追い越すための追い越し走行、走行車線を変更する車線変更走行、先行車両に追従する追従走行、走行車線を逸脱しないように車線を維持するレーンキープ走行、減速走行または加速走行等に対応した種々の行動計画を生成する。行動計画生成部15は、目標軌道を生成する際に、まず走行態様を決定し、走行態様に基づいて目標軌道を生成する。
【0025】
走行制御部16は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部15で生成された目標軌道に沿って自車両が走行するように各アクチュエータACを制御する。より具体的には、走行制御部16は、自動運転モードにおいて道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮して、行動計画生成部15で算出された単位時間毎の目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群2により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。すなわち、自車両が目標車速および目標加速度で走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部16は、内部センサ群2により取得されたドライバからの走行指令(ステアリング操作等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
【0026】
地図生成部17は、手動運転モードで走行しながら、外部センサ群1により検出された検出値を用いて、3次元の点群データからなる環境地図を生成する。具体的には、カメラにより取得された画像データ(以下、カメラ画像データまたは単にカメラ画像と呼ぶ。)から、画素ごとの輝度や色の情報に基づいて物体の輪郭を示すエッジを抽出するとともに、そのエッジ情報を用いて特徴点を抽出する。特徴点は例えばエッジ上の点やエッジの交点であり、路面上の区画線、建物の角、道路標識の角などに対応する。地図生成部17は、抽出された特徴点までの距離を求めて、特徴点を順次、環境地図上にプロットし、これにより自車両が走行した道路周辺の環境地図が生成される。カメラに代えて、レーダやライダにより取得されたデータを用いて自車両の周囲の物体の特徴点を抽出し、環境地図を生成するようにしてもよい。地図生成部17は、生成した環境地図を記憶部12に記憶する。
【0027】
自車位置認識部13は、地図生成部17による地図生成処理と並行して、自車両の位置推定処理を行う。すなわち、特徴点の時間経過に伴う位置の変化に基づいて、自車両の位置を推定する。地図生成処理と位置推定処理とは、例えばカメラやライダからの信号を用いてSLAMのアルゴリズムに従って同時に行われる。地図生成部17は、手動運転モードで走行するときだけでなく、自動運転モードで走行するときにも同様に環境地図を生成することができる。既に環境地図が生成されて記憶部12に記憶されている場合、地図生成部17は、新たに得られた特徴点により環境地図を更新してもよい。
【0028】
ところで、新設された道路等、外部地図情報が存在しない領域においては、カメラにより取得されたカメラ画像に基づき自車両自らによって環境地図が作成される。このようにして作成された環境地図には、カメラ画像に基づき認識された、道路標識や路面標示の種別や位置に関する情報(以下、道路標識情報と呼ぶ。)が含まれる。また、環境地図には、道路標識情報の他、道路上に設けられた車線を規定する区画線の種別や位置が含まれる。走行制御部16は、自車位置認識部13により認識された自車位置と環境地図に含まれる区画線情報とに基づいて、自車両が自車線の中央を走行するようにアクチュエータACを制御する。また、走行制御部16は、自車位置と環境地図に含まれる道路標識情報とに基づいて、自車両が遵守すべき道路標識や路面標示を認識すると、自車両がその道路標識に従って走行するようにアクチュエータACを制御する。
【0029】
しかしながら、停止線などの路面標示は、擦れ等によりカメラによって認識できない場合がある。
図2は、本実施形態に係る道路情報生成装置が適用される走行シーンの一例を示す図である。道路SRは、外部地図情報が存在しない領域に設けられた、左側通行の道路である。道路SRと道路IRとが交差する交差点ISの進行方向手前側(
図2において下側)には、自車線に対応する路面標示(停止線)SL1が設けられている。交差点ISの進行方向前方(
図2において上側)には、対向車線に対応する停止線SL2が設けられている。道路SRを自車両が初めて走行(手動運転モードで走行)する際、カメラ画像に基づき自車両自らによって道路SRの環境地図が作成される。このとき、停止線SL1が擦れていてカメラにより認識できない場合、停止線SL1に関する道路標識情報が生成されず、停止線SL1に関する道路標識情報が含まれない環境地図が作成される。その後、環境地図に従って自動運転モードで道路SRを再度走行するとき、環境地図に停止線SL1に関する道路標識情報が含まれないため、自車両は、環境地図に基づき停止線SL1を認識することができない。また、停止線SL1が依然として擦れた状態のままであると、自車両は、カメラ画像に基づいても停止線SL1を認識できないおそれがある。このような状況においては、自車両は、停止線SL1で停止するように減速する停止制御を適切に行うことが困難になる。そこで、
図2に示すように停止線が擦れ等により認識でいない場合でも停止制御が良好に行われるように、本実施形態では以下のように道路情報生成装置を構成する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る道路情報生成装置50の要部構成を示すブロック図である。この道路情報生成装置50は、
図1の車両制御システム100の一部を構成する。
図3に示すように、道路情報生成装置50は、コントローラ10と、カメラ1aと、入出力装置3と、アクチュエータACと、を有する。
【0031】
カメラ1aは、CCDやCMOS等の撮像素子(イメージセンサ)を有する単眼カメラであり、
図1の外部センサ群1の一部を構成する。カメラ1aはステレオカメラであってもよい。カメラ1aは、例えば自車両の前部の所定位置に取り付けられ、自車両の前方空間を連続的に撮像して対象物の画像(カメラ画像)を取得する。対象物には、道路上の路面標示や区画線、道路上や道路の周囲に設置された道路標識や構造物等が含まれる。なお、カメラ1aに代えて、あるいはカメラ1aとともに、ライダなどにより対象物を検出してもよい。
【0032】
図3のコントローラ10は、演算部11(
図1)が担う機能的構成として、路端認識部111と、距離算出部112と、交差点判定部113と、設定部114と、アクチュエータ制御部115と、報知部116と、を有する。また、コントローラ10は、記憶部12を有する。なお、アクチュエータ制御部115と報知部116とは、道路情報生成装置50に含まれなくてもよい。
【0033】
路端認識部111は、カメラ1aにより検出された外界状況に基づき、自車両が走行する道路の車幅方向の端部、すなわち、道路を規定する境界線を認識する。距離算出部112は、自車両の進行方向に沿って延在する仮想的な直線(以下、基準線と呼ぶ。)を設定し、基準線から路端認識部111により認識された境界線までの距離を算出する。路端認識部111は、
図1の外界認識部14の一部を構成する。
【0034】
図4は、
図2の交差点ISを上方から見たときの俯瞰図である。
図4に示すように、道路SRは、自車両101の進行方向に対して右側に位置する境界線REと左側に位置する境界線LEとにより規定される。路端認識部111は、自車両101が走行しているとき、カメラ画像に基づき境界線RE,LEを道路SRの路端として認識する。なお、境界線REと境界線LEとの認識方法は同様であるため、以下では、境界線REを認識する場合の動作についてのみ説明する。道路SRに沿って道路SRの右側に歩道が設けられている場合、道路SRと歩道との境界(縁石など)や、道路SRと路肩との境界(車道外側線など)が境界線REとして認識される。また、道路SRに沿って道路SRの右側に路側帯が設けられている場合、道路SRと路側帯との境界(車道外側線など)が、境界線REとして認識される。道路SRの右側に歩道等が設けられていない場合には、道路SRと、道路SRに沿って道路脇に設けられた構造物、例えば、道路SRに面して設けられたブロック塀や分離帯、建物などの壁との境界が境界線REとして検出される。
【0035】
図4に示す直線AXは、距離算出部112により自車両101の前方に設定された基準線を表す。基準線AXは、内部センサ群2(例えばヨーレートセンサ)により検出される自車両101の重心の鉛直軸回りの回転角に基づき、自車両101の進行方向に沿って設定される。距離算出部112は、基準線AX上にn+1個の計測ポイントp
0~p
nを設定し、計測ポイントp
0~p
nのそれぞれから路端認識部111により認識された境界線REまでの距離d
0~d
nを算出する。以下、計測ポイントp
0から計測ポイントp
nまでの区間(自車両101の進行方向の区間)を、計測区間と呼ぶ。なお、
図4では、計測ポイントp
0~p
nが進行方向に等間隔で設定されているが、計測ポイントの間隔は、自車両101から遠方に設定された計測ポイントほど短くしてもよい。これにより、自車両101からの距離によらずに境界線REの位置を精度よく認識できる。また、計測ポイントp
0の位置や、計測区間の長さ、計測ポイントの間隔等は、カメラ1aの認識精度を考慮して決定されてもよいし、自車両101の走行速度を考慮して決定されてもよい。
【0036】
交差点判定部113は、距離算出部112により算出された基準線AXから境界線REまでの距離に基づいて、境界線REまでの距離の変化の割合を算出し、その変化の割合に基づいて自車両101の前方に交差点が存在するか否かを判定する。具体的には、まず、交差点判定部113は、計測ポイントp0から計測ポイントpnまでの距離に対して基準線AXから境界線REまでの車幅方向の距離がどの程度変化するか、すなわち、計測区間に対応した境界線REの車幅方向の変化の割合を算出する。
【0037】
ここで、
図5Aおよび
図5Bを用いて距離の変化の割合に基づいて説明する。
図5Aは、計測ポイントp
0~p
nのそれぞれに対応づけて距離d
i(i=0,・・・,n)をプロットしたグラフの一例を示す図である。特性f1は、直線路における基準線から境界線までの各計測ポイントにおける距離を示す。特性f2は、カーブ路における基準線から境界線までの各計測ポイントにおける距離を示す。特性f3は、自車両の前方に交差点の入口が存在するときの基準線から境界線までの各計測ポイントにおける距離を示す。特性f1,f2,f3の傾きは、基準線に対する境界線の車幅方向の位置の変化の割合、すなわち基準線から境界線までの距離の変化の割合を表す。
図5Bは、距離の変化の割合を説明するための図である。特性f10,f20,f30は、
図5Aの特性f1,f2,f3により示される、各計測ポイントから境界線までの距離を微分したグラフであり、該距離の変化の割合を示す。
【0038】
図4の例のように自車両101の前方に交差点ISが存在するとき、特性f30で示されるように、ある計測ポイントp
xにおいて、境界線までの距離(特性f3)の変化の割合が所定閾値TH1を超える。計測ポイントp
xは、道路SRの右側の境界線REと、道路SRと交差する交差道路IRの自車両101に近い側の境界線NEとにより形成される隅切り等の隅角部CN1に対応した位置に設定された計測ポイントである。したがって、特性f30のように、境界線の車幅方向の位置の変化の割合が所定閾値TH1を超える計測ポイントが存在するとき、交差点判定部113は、自車両101の前方に交差点ISが存在すると判定する。なお、所定閾値TH1には、経験則等に基づき予め決定された曲率半径や、道路構造令等で規定される最小曲率半径(例えば、R=30)、道路に設定された制限速度に基づき算出された曲率半径(より具体的には、車両がその制限速度で逸脱することなく走行可能な最小曲率半径)のカーブ路を想定し、該カーブ路に対応した距離のグラフ(
図5Aのグラフ)を微分した結果(傾き)の最大値が設定される。
【0039】
設定部114は、交差点判定部113により交差点ISが存在すると判定されると、交差点ISに対応した停止線SL1が認識されないことを条件として、交差点ISの入口位置を設定する。より詳細には、設定部114は、カメラ1aにより取得されたカメラ画像に基づき停止線SL1が認識されないとき、または、記憶部12に記憶された地図情報に停止線SL1に関する情報が含まれないとき、計測ポイントp
0~p
nのうち計測ポイントpxよりも進行方向手前の計測ポイントp
0~p
xの中から、距離が増加し始めた計測ポイントp
sを探索する。設定部114は、探索により得られた計測ポイントp
sの位置(進行方向の位置)を交差点ISの入口位置と認識する。設定部114は、認識した交差点ISの入口位置の情報(位置情報等)が含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新する。このようにして、交差点ISの入口位置が設定される。また、設定部114は、交差点ISの入口位置より進行方向に所定距離手前の位置を仮想的な停止線(以下、仮想停止線と呼ぶ。)の位置に決定する。
図6は、仮想停止線を説明するための図である。
図6の破線ETは、設定部114により認識された交差点ISの入口位置を示す。
図6に示すように、仮想停止線VLの位置は、交差点ISの入口位置ETより進行方向に所定距離D手前の位置に決定される。設定部114は、仮想停止線VLに関する情報(位置情報等)が含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新する。このようにして、交差点ISに対応して仮想停止線が設定される。設定部114は、
図1の地図生成部17の一部を構成する。
【0040】
一方、特性f10,f20に示されるように、境界線REの車幅方向の位置の変化の割合が所定閾値TH1を超えないとき、交差点判定部113は、自車両101の前方に交差点が存在しないと判定する。より詳細には、特性f10に示されるように境界線REの車幅方向の位置の変化の割合がほぼ0であるとき、交差点判定部113は、自車両101が直線路を走行中であってその直線路が自車両前方に延在していると判定する。また、特性f20に示されるように境界線REの車幅方向の位置の変化の割合が緩やかに増加するとき、右カーブ路が自車両101の前方に延在していると判定する。さらに、境界線REの車幅方向の位置の変化の割合が緩やかに減少するとき、左カーブ路が自車両101の前方に延在していると判定する。なお、境界線LEの車幅方向の位置の変化の割合が緩やかに増加するときは、左カーブ路が自車両101の前方に延在していると判定される。また、境界線LEの車幅方向の位置の変化の割合が緩やかに減少するときは、右カーブ路が自車両101の前方に延在していると判定される。
【0041】
アクチュエータ制御部115は、自車両101が自動運転モードで道路SRを走行するとき、記憶部12に記憶された地図情報(環境地図)に基づき交差点ISに設定された仮想停止線VLの位置を認識する。アクチュエータ制御部115は、仮想停止線VLより進行方向手前の位置で自車両101が一時停止するように、アクチュエータACを制御する停止制御を行う。アクチュエータ制御部115は、
図1の走行制御部16の一部を構成する。
【0042】
報知部116は、自車両101が手動運転モードで道路SRを走行するとき、記憶部12に記憶された地図情報(環境地図)に基づき交差点ISに設定された仮想停止線VLの位置を認識すると、自車両101の前方に交差点ISが存在することと、仮想停止線VLの位置で自車両101が停止すべきことを示す警告情報としての表示情報を、入出力装置3(ディスプレイやスピーカ)を介して出力する。これにより、警告情報が乗員に報知される。なお、報知部116は、警告情報としての音声情報を、入出力装置3(スピーカ)を介して出力してもよい。
【0043】
なお、カメラ1aにより取得されるカメラ画像が動画像データ(フレーム単位の画像データ)であるとき、1フレームごとに、路端認識部111により自車両が走行する道路の境界線が認識され、距離算出部112により基準線から境界線までの距離が算出される。交差点判定部113は、1フレームごとに、基準線から境界線までの距離の変化の割合に基づいて自車両101の前方に交差点が存在するか否かを判定する。設定部114は、交差点判定部113により交差点が存在すると判定されている間に認識した交差点の入口位置を平均化して、すなわち、交差点判定部113により交差点が存在すると判定された複数フレームのそれぞれから認識した交差点の入口位置を平均化して、平均化した交差点の入口位置に基づいて仮想停止線を設定する。
【0044】
図7は、コントローラ10で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば自車両101が走行しているとき、所定周期で繰り返される。
【0045】
まず、ステップS11で、カメラ1aにより取得されたカメラ画像(フレーム画像)に基づき、自車両101が走行する道路SRを規定する境界線(路端)RE,LEを認識する。ステップS12で、自車両101の進行方向前方に基準線AXを設定し、基準線AX上に計測ポイントp0~pnを設定する。ステップS13で、ステップS12にて設定された計測ポイントp0~pnのそれぞれからステップS11にて認識された境界線RE,LEまでの距離d0~dnを算出する。ステップS14で、ステップS13にて算出された距離d0~dnに基づき、境界線RE,LEの車幅方向の位置の変化の割合を算出し、算出した変化の割合が所定閾値TH1を越えているか否かを判定する。
【0046】
ステップS14で否定されると、処理を終了する。ステップS14で肯定されると、自車両101の前方に交差点ISが存在すると判断し、ステップS15で、フレーム画像または記憶部12に記憶された地図情報に基づき交差点ISに対応した停止線SL1が認識できたか否かを判定する。ステップS15で肯定されると、ステップS19に進む。ステップS15で否定されると、ステップS16で、境界線RE,LEの車幅方向の位置が変化し始めた位置(
図5の計測ポイントp
s)を交差点ISの入口位置として認識する。このとき、境界線RE,LEのそれぞれに対応した計測ポイントp
sの平均値を認識結果として取得する。なお、境界線RE,LEのいずれか一方に対応した計測ポイントp
sを認識結果として取得してもよい。例えば、自車両101に近い側の計測ポイントp
sを認識結果として取得してもよい。
【0047】
ステップS17で、所定数のフレーム画像から、交差点ISの入口位置の認識結果が取得されたか否かを判定する。ステップS17で否定されると、処理を終了する。
ステップS17で肯定されると、ステップS18で、所定フレーム数分の認識結果を平均化する。具体的には、各フレーム画像のそれぞれから認識された交差点ISの入口位置を平均化して、平均化された交差点の入口位置より進行方向に所定距離D手前の位置に仮想停止線を設定し、ステップS19で、ステップS16で認識した交差点ISの入口位置の情報と、ステップS18で設定した仮想停止線の情報とが含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新する。なお、ステップS15でフレーム画像に基づき停止線SL1が認識されたときは、停止線SL1の情報(位置情報等)が含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新する。このとき、停止線SL1の位置から進行方向に所定距離D奥側の位置を交差点の入口位置と認識し、その位置の情報が含まれるように記憶部12に記憶された環境地図を更新してもよい。
【0048】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)道路情報生成装置50は、自車両101の周囲の外部状況を検出するカメラ1aと、カメラ1aにより検出された外界状況に基づき、自車両101が走行する道路SRを規定する境界線RE,LEを認識する路端認識部111と、自車両101の進行方向に沿って延在する基準線AXから路端認識部111により認識された境界線(
図4の境界線REと境界線LEの少なくとも一方)までの距離の変化の割合に基づいて、自車両101の前方に存在する交差点の入口位置ETを設定するとともに、交差点ISに対応して仮想的な停止線(仮想停止線)VLを設定する設定部114を備える。
【0049】
これにより、自車両101の前方に存在する交差点ISの入口位置を認識でき、交差点ISに対応した停止線SL1が擦れ等により認識しづらいときでも、交差点ISの入口位置を精度よく設定できる。また、設定した交差点ISの入口位置に基づき仮想停止線VLを適切な位置に設定できる。それにより、交差点ISにおいて良好な運転支援が行われるようになる。具体的には、交差点ISを自車両が再度走行するときに仮想停止線VLに基づいて、交差点ISの手前の適切な位置で自車両を停止させることができる。その結果、交通の安全性を向上できる。
【0050】
(2)設定部114は、基準線AXから路端認識部111により認識された境界線RE,LEまでの距離の変化の割合に基づいて交差点ISの入口位置ETを認識し、該入口位置ETの情報が含まれるように、記憶部12に記憶された地図情報(環境地図)を更新する。また、設定部114は、交差点ISの入口位置ETより進行方向に所定距離D手前の位置を仮想停止線VLの位置に決定し、決定した仮想停止線VLの位置が含まれるように記憶部12に記憶された地図情報(環境地図)を更新する。これにより、自車両101が走行する道路に停止線が認識しづらい交差点が存在するとき、その交差点に対応した入口位置や仮想停止線の情報が地図情報(環境地図)に追加される。その結果、自車両が同じ道路を再度走行するとき、その地図情報を用いることで交差点での停止制御を良好に行うことができる。
【0051】
(3)道路情報生成装置50は、自車両101の前方に交差点ISが存在するか否かを判定する交差点判定部113をさらに備える。交差点判定部113は、基準線AXから路端認識部111により認識された境界線RE,LEまでの距離の変化の割合が所定閾値を越えているか否かを判定し、距離の変化の割合が所定閾値を超えるとき、自車両101の前方に交差点ISが存在すると判定し、距離の変化の割合が所定閾値以下であるとき、自車両101の前方に交差点ISが存在しないと判定する。これにより、道路の境界線の曲率半径を計測するための装置等を用いることなく、基準線AXから境界線RE,LEまでの距離を計測するだけで道路SRの曲率半径を取得できる。したがって、簡易な構成で自車両101の前方に交差点があるか否かを精度よく判定できる。
【0052】
(4)設定部114は、交差点判定部113により交差点ISが存在すると判定されたとき、カメラ1aにより検出された外界状況に基づき交差点ISに対応した停止線SL1が認識されないことを条件として、基準線AXか路端認識部111により認識された境界線RE,LEまでの距離の変化の割合に基づいて交差点ISの入口位置ETを設定する。カメラ1aにより検出された外界状況に基づき交差点ISに対応した停止線SL1が認識された場合には、設定部114は、停止線SL1に基づいて交差点ISの入口位置を設定する。これにより、カメラ画像に基づき停止線SL1が認識可能なときは、交差点ISの入口位置の設定に停止線SL1の位置が優先して用いられるので、より精度の良く交差点ISの入口位置の設定できる。
【0053】
(5)道路情報生成装置50は、道路SRの地図情報を記憶する記憶部12をさらに備える。設定部114は、交差点判定部113により交差点ISが存在すると判定されたとき、地図情報に交差点ISに対応した停止線SL1に関する情報が含まれないことを条件として、交差点ISの入口位置ETを設定する。これにより、交差点の入口位置の設定処理が必要以上に行われることを抑制でき、処理負荷を低減できる。
【0054】
(6)カメラ1aは、フレーム単位の画像データを取得する。路端認識部111は、カメラ1aにより取得された画像データに基づき、自車両101が走行する道路SRを規定する境界線RE,LEを認識する。交差点判定部113は、基準線AXから路端認識部111により認識された境界線RE,LEまでの距離の変化の割合に基づいて、自車両101の前方に交差点ISがあるか否かを判定する。設定部114は、交差点判定部113により交差点ISが存在すると判定された複数フレームの画像データのそれぞれに基づき交差点ISの入口位置ETを認識し、複数フレームの画像データのそれぞれから認識された交差点ISの入口位置ETを平均化して、平均化した交差点ISの入口位置ETを設定する。これにより、カメラ画像に基づき交差点ISの入口位置ETを精度よく設定できる。
【0055】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、交差点判定部113により交差点ISが存在すると判定されると、設定部114が、交差点ISの入口位置を設定するとともに仮想停止線VLの位置を決定するようにした。そして、自車両101が自動運転モードで道路SRを走行するとき、アクチュエータ制御部115が、仮想停止線VLで自車両101が一時停止するようにアクチュエータACを制御するようにした。しかしながら、設定部114およびアクチュエータ制御部115の構成はこれに限定されない。例えば交差点ISに信号機が設置されている場合、自車両101が交差点ISに進入するタイミングによっては、自車両101が交差点ISを通過する前に自車線に対応する信号機が進行許可を示す青色(緑色)表示から進行禁止を示す赤色表示に切り替わってしまうときがある。そのとき、交差道路IR側の信号機が青色表示に切り替わってしまうと、道路SR上の交差道路IRを越えた位置に
図8に示すように横断歩道CWが設けられている場合、自車両101と横断歩道CWを渡り始めた歩行者等とが接近や接触するおそれがある。また、歩行者等との接近や接触を回避するために自車両101が横断歩道の手前で減速や停止をすると、自車両101が交差点IS内に残留し、交差道路IRを走行する他車両の妨げになるおそれがある。そこで、このような問題に対処するため、設定部114は、交差点ISの出口位置を設定し、アクチュエータ制御部115は、交差点ISの出口位置に基づいて、自車線に対応する信号機が青色表示から赤色表示に切り替わる前に自車両101が交差点ISを退出可能なようにアクチュエータACを制御してもよい。ここで、本変形例に係る道路情報生成装置を詳細に説明する。
【0056】
図9は、
図8の計測ポイントp
0~p
nから境界線REまでの距離の変化の割合を説明するための図である。
図9には、
図8の計測ポイントp
0~p
nから境界線REまでの距離d
iを微分したグラフの一例が示されている。
図9に示すように、交差点ISの出口付近では、基準線AXに対する境界線REの車幅方向の位置の変化の割合の大きさ(絶対値)が、ある計測ポイントp
yにおいて、所定閾値TH2を超えた状態から所定閾値TH2以下の状態に遷移する。計測ポイントp
yは、道路SRの右側の境界線REと、交差道路IRの進行方向奥側(
図8において上側)の境界線FEとにより形成される隅角部CN2に対応した位置に設定された計測ポイントである。交差点判定部113は、特性f4のように、境界線の車幅方向の位置の変化の割合の大きさ(絶対値)が所定閾値TH2を超えた状態から所定閾値TH2以下の状態に遷移するとき、自車両101の前方に交差点ISの出口が存在すると判定する。一方、特性f5のように、境界線REの車幅方向の位置の変化の割合の大きさ(絶対値)が所定閾値TH2を超えない範囲で緩やかに減少するときは、カーブ路が自車両101の前方に延在していると判定される。なお、交差点の出口の判定に用いられる所定閾値TH2は、交差点の有無の判定に用いられる所定閾値TH1と同様に設定される。また、交差点の出口の判定に用いられる所定閾値TH2と交差点の有無の判定に用いられる閾値TH1とはその大きさ(絶対値)が同じでもあってもよいし異なっていてもよい。また、計測ポイントp
0の位置や、計測区間の長さ等は、交差点の入口位置を認識するときと交差点の出口位置を認識するときとで異ならせてもよい。例えば、距離算出部112は、交差点の出口位置を認識するときは、自車両101から計測ポイントp
0までの距離が交差点の入口位置を認識するときよりも長くなるように、計測ポイントp
0の位置を設定してもよい。
【0057】
設定部114は、交差点判定部113により交差点ISの出口が存在すると判定されると、交差点ISの出口位置を設定する。より詳細には、計測ポイントp0~pnのうち計測ポイントpyよりも進行方向奥側の計測ポイントpy~pnの中から、距離が0になった計測ポイントpeを探索する。設定部114は、探索により得られた計測ポイントpeの位置(進行方向の位置)を交差点ISの出口位置と認識する。設定部114は、認識した交差点ISの出口位置の情報(位置情報等)が含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新する。このようにして、交差点ISの出口位置が設定される。なお、設定部114は、交差点の入口位置と出口位置との両方を設定してもよい。この場合、距離算出部112は、基準線AX上に交差点の入口位置を認識するための第1計測ポイントp10~p1nと交差点の出口位置を認識するための第2計測ポイントp20~p2nとをそれぞれ設定し、第1計測ポイントp10~p1nから境界線までの第1距離d10~d1nと、第2計測ポイントp20~p2nから境界線までの第2距離d20~d2nとを算出する。設定部114は、第1距離d10~d1nに基づき交差点の入口位置を設定し、第2距離d20~d2nに基づき交差点の出口位置を設定する。
【0058】
アクチュエータ制御部115は、自車両101が自動運転モードで道路SRを走行するとき、記憶部12に記憶された地図情報(環境地図)に基づき交差点ISの出口位置を認識する。アクチュエータ制御部115は、自車位置認識部13により認識された自車位置から交差点ISの出口位置までの距離(進行方向の距離)と、自車線に対応する信号機の切換情報とに基づき、該信号機が青色表示から赤色表示に切り替わる前に自車両101が交差点ISを退出可能なようにアクチュエータACを制御する。例えば、信号機が青色表示から赤色表示に切り替わるまでに十分な時間がないときには、自車両101が加速するようにアクチュエータACを制御する。アクチュエータ制御部115は、通信ユニット7を介して路側機(不図示)等と無線通信可能であり、路側機等から信号機の切換情報を受信する。なお、アクチュエータ制御部115は、自車線に対応する信号機の切換情報の代わりに交差道路IR側の信号機の切換情報に基づき、交差道路IR側の信号機が赤色表示から青色表示に切り替わる前に自車両101が交差点ISを退出可能なようにアクチュエータACを制御してもよい。
【0059】
このような構成により、カメラ1aにより取得されたカメラ画像や記憶部12に記憶された地図情報に基づき停止線SL2や横断歩道CWが認識されないときでも、交差点の出口位置を設定できる。また、設定された交差点の出口位置に基づき交差点ISの通過制御を行うことで、上記のように自車両101が交差点IS内に残留することを防止できる。これにより、交差点ISにおいてさらに良好な運転支援が行われるようになる。なお、設定部114は、カメラ画像や地図情報に基づき交差点ISに対応した停止線SL2が認識されないことを条件として、交差点ISの出口位置を設定してもよい。また、カメラ画像に基づき停止線SL2が認識されたときは、停止線SL2の情報(位置情報等)が含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新してもよい。このとき、停止線SL2の位置から進行方向に所定距離D手前の位置を交差点の出口位置と認識し、その位置の情報が含まれるように記憶部12に記憶された環境地図を更新してもよい。さらに、カメラ1aにより取得されるカメラ画像が動画像データであるとき、設定部114は、交差点判定部113により交差点が存在すると判定された複数フレームのそれぞれから認識した交差点の出口位置を平均化して、平均化した交差点の出口位置の情報(位置情報等)が含まれるように、記憶部12に記憶された環境地図を更新してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、外界状況検出部としてのカメラ1aが、自車両の周囲の外部状況を検出するようにしたが、外界状況検出部は、ライダ等、カメラ1a以外であってもよい。また、上記実施形態では、路端認識部111が、カメラ画像に基づき自車両が走行中の道路SRの境界線RE,LEを認識するようにしたが、認識部は、道路SRの境界線RE,LEのいずれか一方を認識してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、アクチュエータ制御部115が、仮想停止線VLより進行方向手前の位置で自車両101が停止するようにアクチュエータACを制御するようにした。しかしながら、アクチュエータ制御部は、仮想停止線VLで停止した自車両101が走行を再開するとき、交差点ISの見通しが悪いとき、すなわち、カメラ画像に基づき交差道路IRの交通状況(交差道路IRを走行する他車両の位置や走行速度など)が認識しづらい場合には、自車両101が徐行しながら交差点ISを通過するようにアクチュエータACを制御してもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、自動運転車両に道路情報生成装置を適用する例を説明した。すなわち、自動運転車両が道路情報を生成する例を説明したが、本発明は、運転支援機能を有する手動運転車両が道路情報を生成する場合にも同様に適用することができる。また、本発明は、運転支援機能を有しない手動運転車両が道路情報を生成する場合にも同様に適用することができる。
【0063】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1a カメラ、10 コントローラ、12 記憶部、16 走行制御部、50 道路情報生成装置、111 路端認識部、112 距離算出部、113 交差点判定部、114 設定部、115 アクチュエータ制御部、116 報知部