(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099912
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】蓋体、および即席食品容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240719BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B65D77/20 E
B65D81/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003536
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】今井 健一郎
【テーマコード(参考)】
3E013
3E067
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC13
3E013BC14
3E013BC17
3E013BD20
3E013BE02
3E013BH45
3E013BH46
3E067AA11
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BC02A
3E067BC07A
3E067CA07
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB27
3E067EE48
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA06
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】デッドホールド性を高める蓋体構成に破れが生じることを抑制可能にした蓋体、および即席食品容器を提供する。
【解決手段】蓋本体部からフランジ11Fの外側に向けて突き出る摘まみ部12Pを備え、摘まみ部12Pは、摘まみ部12Pを貫通する切れ込み12Sを備え、切れ込み12Sは、摘まみ部12Pの縁から離間するように配置され、かつ摘まみ部12Pが突き出る方向とは反対方向に突き出る曲線状を有し、切れ込み12Sの延びる方向に切れ込み12Sの端12Eから延びる仮想直線が端延長線L2であり、切れ込み12Sの両端間の中心を通り反対方向に延びる仮想直線が中心線L1であり、端延長線L2と中心線L1との形成する角度θが10°以上80°以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
即席食品容器の容器本体部が備えたフランジに接合されるシーラント層と、前記シーラント層に重なる紙層と、を備え、かつ金属箔層を備えない積層体である蓋体であって、
前記フランジに縁取られた開口を閉じる蓋本体部と、
前記蓋本体部から前記フランジの外側に向けて突き出る摘まみ部と、を備え、
前記摘まみ部は、前記摘まみ部を貫通する切れ込みを備え、
前記切れ込みは、前記摘まみ部の縁から離間し、かつ前記摘まみ部が突き出る方向とは反対方向に突き出る曲線状を有し、
前記切れ込みの延びる方向に沿って前記切れ込みの端から延びる仮想直線が端延長線であり、前記切れ込みの両端間の中心を通り前記反対方向に延びる仮想直線が中心線であり、前記端延長線と前記中心線との形成する角度が10°以上80°以下である
ことを特徴とする蓋体。
【請求項2】
前記紙層における紙目の向きは、前記摘まみ部の突き出る方向と直交する
請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記端延長線と前記中心線との形成する角度が30°以上70°以下である
請求項1に記載の蓋体。
【請求項4】
前記紙層における紙目の向きは、前記反対方向であり、
前記端延長線と前記中心線との形成する角度が30°以上70°以下である
請求項1に記載の蓋体。
【請求項5】
前記切れ込みは、
前記中心線が通る曲線部分と、
前記端から前記曲線部分まで延びる直線部分と、から構成され、
前記中心線を対象軸とする線対称であり、
前記端延長線は、前記直線部分を延長した直線である
請求項1に記載の蓋体。
【請求項6】
前記切れ込みは、1つの弧状を有し、
前記中心線を対象軸とする線対称であり、
前記端延長線は、前記端における前記切れ込みの接線である
請求項1に記載の蓋体。
【請求項7】
前記摘まみ部において前記摘まみ部の突き出る方向に沿う破断強度が9.7N以上である
請求項1に記載の蓋体。
【請求項8】
前記端延長線と前記中心線との形成する角度が45°以下である
請求項5または6に記載の蓋体。
【請求項9】
前記蓋本体部の開封方向を示す指標を備え、
前記反対方向が前記開封方向である
請求項1に記載の蓋体。
【請求項10】
開口を縁取るフランジを備えて即席食品を収容するための容器本体部と、
前記容器本体部の前記開口を閉じる蓋体と、を備える即席食品容器であって、
前記蓋体は、
前記フランジに接合されるシーラント層と、前記シーラント層に重なる紙層と、を備え、かつ金属箔層を備えない積層体であり、
前記開口を閉じる蓋本体部と、
前記蓋本体部から前記フランジの外側に向けて突き出る摘まみ部と、を備え、
前記摘まみ部は、前記摘まみ部を貫通する切れ込みを備え、
前記切れ込みは、前記摘まみ部の縁から離間し、かつ前記摘まみ部の突き出る方向とは反対方向に突き出る曲線状を有し、
前記切れ込みの延びる方向に沿って前記切れ込みの端から延びる仮想直線が端延長線であり、
前記切れ込みにおける両端の中心を通り前記反対方向に延びる直線が中心線であり、
前記端延長線と前記中心線との形成する角度が10°以上80°以下である
ことを特徴とする即席食品容器。
【請求項11】
前記フランジと前記蓋体との剥離強度が6.2N以上である
請求項10に記載の即席食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓋体、および即席食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺や即席スープなどの即席食品を収容する容器の蓋体は、調理の利便性を高める観点からデッドホールド性を求められる。即席食品容器の蓋体が容器本体部の開口から一部を剥がされることによって、容器本体部にお湯を注ぐための注入口が蓋体に区切られる。蓋体のデッドホールド性は、注入口を塞ぐような姿勢に剥離後の蓋体を自ら戻しにくい性質である。
【0003】
アルミニウムをはじめとする金属箔層を備えた即席食品容器の蓋体は、金属箔層の塑性によって蓋体のデッドホールド性を高める。一方、環境保護や資源循環の機能付与を目的として、即席食品容器の蓋体から金属箔層を省くことが求められはじめている。
【0004】
金属箔層を備えない蓋体の第1例は、蓋体の縁部に差込突片と孔片とを備える。孔片は、開封方向で差込突片に対向するように配置されている。即席食品の利用者が即席食品容器を開封するとき、まず、利用者の指に摘ままれた差込突片が開封方向に沿って引っ張られる。次に、蓋体が蓋体の中央付近まで容器本体部から剥がされると、差込突片が容器本体部に固定されている孔片に差し込まれて、差込突片が容器本体部に固定される。これにより、金属箔層を備えない蓋体においてデッドホールド性が高まる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、差込突片が孔片に差し込まれる上述した即席食品容器の第1例は、蓋体の縁部が備える片同士の嵌合によってデッドホールド性を高める。金属箔層を備えない片同士の嵌合は、孔片に差込突片を嵌め込むときに孔片に破れを招きやすい。このため、上述した即席食品容器には、デッドホールド性を高める技術が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための蓋体は、即席食品容器の容器本体部が備えたフランジに接合されるシーラント層と、前記シーラント層に重なる紙層と、を備え、かつ金属箔層を備えない積層体である蓋体である。この蓋体は、前記フランジに縁取られた開口を閉じる蓋本体部と、前記蓋本体部から前記フランジの外側に向けて突き出る摘まみ部と、を備え、前記摘まみ部は、前記摘まみ部を貫通する切れ込みを備える。前記切れ込みは、前記摘まみ部の縁から離間し、かつ前記摘まみ部が突き出る方向とは反対方向に突き出る曲線状を有し、前記切れ込みの延びる方向に沿って前記切れ込みの端から延びる仮想直線が端延長線であり、前記切れ込みの両端間の中心を通り前記反対方向に延びる仮想直線が中心線であり、前記端延長線と前記中心線との形成する角度が10°以上80°以下である。
【0008】
上記課題を解決するための即席食品容器は、開口を縁取るフランジを備えて即席食品を収容するための容器本体部と、前記容器本体部の前記開口を閉じる蓋体と、を備える即席食品容器である。前記蓋体は、前記フランジに接合されるシーラント層と、前記シーラント層に重なる紙層と、を備え、かつ金属箔層を備えない積層体であり、前記開口を閉じる蓋本体部と、前記蓋本体部から前記フランジの外側に向けて突き出る摘まみ部と、を備え、前記摘まみ部は、前記摘まみ部を貫通する切れ込みを備える。前記切れ込みは、前記摘まみ部の縁から離間し、かつ前記摘まみ部の突き出る方向とは反対方向に突き出る曲線状を有し、前記切れ込みの延びる方向に沿って前記切れ込みの端から延びる仮想直線が端延長線であり、前記切れ込みにおける両端の中心を通り前記反対方向に延びる仮想直線が中心線であり、前記端延長線と前記中心線との形成する角度が10°以上80°以下である。
【0009】
ここで、摘まみ部が突き出る方向とは反対方向に突き出るような曲線状を有する切れ込みは、第1摘まみ部分と、第2摘まみ部分と、に1つの摘まみ部を区切る。第1摘まみ部分は、摘まみ部のなかで、摘まみ部の突端と切れ込みとに挟まれる。第2摘まみ部分は、摘まみ部のなかで第1摘まみ部以外の部分である。
【0010】
また、容器本体部の開口を縁取る閉環状を有したフランジは、第1フランジ部分と、第2フランジ部分と、を備える。第1フランジ部分は、フランジのなかで、摘まみ部に接する部分である。第2フランジ部分は、第1フランジ部分と第2フランジ部分とがフランジの中央を挟むように配置される。
【0011】
こうした構成によれば、摘まみ部が当該摘まみ部の突き出る方向に引っ張られることによって、蓋体がフランジから剥がされはじめる。このとき、端延長線と中心線との形成する角度が10°以上80°以下であるため、切れ込みを備える摘まみ部に破断や剪断などの破れが生じにくい。
【0012】
そして、第1フランジ部分から第2フランジ部分に向けて引っ張られる摘まみ部が、第2フランジ部分に到達すると、第1摘まみ部分と第2摘まみ部分とが第2フランジ部分を挟むように、第2フランジ部分に掛け止められる。容器本体部のフランジに掛け止められた摘まみ部は、容器本体部の開口を塞ぐように蓋体の姿勢が戻ることを抑える。結果として、蓋体の縁部における片同士の嵌合によって蓋体の姿勢が戻ることを抑える場合と比べて、デッドホールド性を高める蓋体構成に破断や剪断などの破れが生じることが抑えられる。
【0013】
上記蓋体において、前記紙層における紙目の向きは、前記摘まみ部の突き出る方向と直交してもよい。この構成によれば、紙層における紙目の向きが摘まみ部の突き出る方向と直交するため、蓋体がフランジから剥がされはじめるとき、切れ込みの端から剪断がさらに進みにくい。このため、デッドホールド性を高める蓋体構成において破れの抑制効果が高まる。
【0014】
上記蓋体において、前記端延長線と前記中心線との形成する角度が30°以上70°以下でもよい。この構成によれば、端延長線と中心線との形成する角度が30°以上70°以下であるため、切れ込みの端から破れが進むことが高い確度の下で抑制される。
【0015】
上記蓋体において、前記紙層における紙目の向きは、前記反対方向であり、前記端延長線と前記中心線との形成する角度が30°以上70°以下でもよい。
上記構成によれば、紙層における紙目の向きが反対方向である。このため、紙目の向きが摘まみ部の突き出る方向と直交する場合と比べれば、蓋体がフランジから剥がされはじめるとき、引き剥がし力による剪断が切れ込みの端から進みやすい。一方、端延長線と中心線との形成する角度が30°以上70°以下であれば、切れ込みの端から破れが進むことが抑えられる。結果として、紙目の向きが摘まみ部の突き出る方向と直交する場合と比べて、端延長線と中心線との形成する角度が30°以上70°以下であることが、より効果的に破れを抑制する。
【0016】
上記蓋体において、前記切れ込みは、前記中心線が通る曲線部分と、前記端から前記曲線部分まで延びる直線部分と、から構成され、前記中心線を対象軸とする線対称であり、前記端延長線は、前記直線部分を延長した直線でもよい。
【0017】
蓋体がフランジから剥がされはじめるとき、摘まみ部は当該摘まみ部の突き出る方向に引っ張られながら引き起こされる。この際、容器本体部を開けはじめる利用者の操作に応じて、摘まみ部に作用する引き剥がし力は、摘まみ部の突き出る方向よりも若干右側に傾いたり、摘まみ部の突き出る方向よりも若干左側に傾いたりする。この点、引き剥がし力の作用する方向が摘まみ部の突き出る方向よりも右側に傾く場合であれ、左側に傾く場合であれ、線対称である切れ込みは、いずれにおいても破れの抑制効果を同様に奏しやすい。このため、破れの抑制効果にばらつきが生じにくい。
【0018】
また、フランジのなかで摘まみ部に掛け止められる部分は、フランジに摘まみ部を掛け止めやすい観点から、フランジの周方向に長いことが好ましい。この点、上記構成では、切れ込みの両端線部が直線部分である。このため、切れ込みの両端線部が反対方向に突き出る曲線である場合と比べて、切れ込みがフランジの周方向に広がりやすい。結果として、デッドホールド性を高めることの実効性が高まる。
【0019】
上記蓋体において、前記切れ込みは、1つの弧状を有し、前記中心線を対象軸とする線対称であり、前記端延長線は、前記端における前記切れ込みの接線でもよい。
蓋体がフランジから剥がされはじめるとき、摘まみ部は当該摘まみ部の突き出る方向に引っ張られながら引き起こされる。この際、容器本体部を開けはじめる利用者の操作に応じて、摘まみ部に作用する引き剥がし力は、摘まみ部の突き出る方向よりも若干右側に傾いたり、摘まみ部の突き出る方向よりも若干左側に傾いたりする。この点、引き剥がし力の作用する方向が摘まみ部の突き出る方向よりも右側に傾く場合であれ、左側に傾く場合であれ、線対称である切れ込みは、いずれにおいても破れの抑制効果を同様に奏しやすい。このため、破れの抑制効果にばらつきが生じにくい。
【0020】
また、フランジのなかで摘まみ部に掛け止められる部分は、摘まみ部がフランジから外れにくい観点から、フランジにおける径方向の全体にわたることが好ましい。この点、上記構成では、切れ込みの全体が反対方向に突き出る弧状である。このため、切れ込みが直線部分を備える場合と比べて、切れ込みがフランジの径方向に広がりやすい。結果として、デッドホールド性を高めることの実効性が高まる。
【0021】
上記蓋体は、前記摘まみ部において前記摘まみ部の突き出る方向に沿う破断強度が9.7N以上でもよい。この構成によれば、摘まみ部において反対方向に沿う破断強度が9.7N以上であるため、デッドホールド性を高める蓋体構成の破断抑制の実効性が高まる。
【0022】
上記蓋体において、前記端延長線と前記中心線との形成する角度が45°以下でもよい。この構成によれば、摘まみ部の破断強度が特に高まるため、デッドホールド性を高める摘まみ部における破断の抑制効果がさらに高まる。
【0023】
上記即席食品容器において、前記フランジと前記蓋体との剥離強度が6.2N以上でもよい。この即席食品容器によれば、フランジと蓋体との剥離強度が6.2N以上であるため、蓋体による封止性が高まる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の蓋体、および即席食品容器によれば、デッドホールド性を高める蓋体構成において破れが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】
図3は、
図1が示すIII-III線に沿う蓋体の断面図である。
【
図4】
図4は、蓋体が備えるタブを示す平面図である。
【
図5】
図5は、タブがフランジに掛け止めされる平面図である。
【
図6】
図6は、実施例、および比較例の評価結果を示す表である。
【
図7】
図7は、実施例、および比較例の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から
図7を参照して、即席食品容器10、および蓋体12を説明する。まず、
図1を参照して、蓋体12の平面構造を説明する。次に、
図2、および
図3を参照して、即席食品容器10の側面構造、および蓋体12の断面構造を説明する。
図4、および
図5を参照して、蓋体12が備える摘まみ部12Pの構造、および作用を説明する。そして、
図6、および
図7を参照して、試験例の即席食品容器10、および蓋体12が備える構成、および作用を説明する。
【0027】
[蓋体12の平面構造]
図1が示すように、蓋体12は、蓋本体部12Bと、摘まみ部12Pとを備える。蓋本体部12Bは、円板状を有する。摘まみ部12Pは、蓋本体部12Bの外縁から蓋本体部12Bの外側に向けて突き出ている。蓋本体部12Bは、多角形板状を有してもよい。多角形板状は、四角板状でもよいし、六角板状でもよい。蓋本体部12Bは、中心Cを備える。中心Cは、蓋本体部12Bの縁に属する全ての点から導かれる幾何中心である。
【0028】
蓋本体部12Bは、開封指示線Lを備える。開封指示線Lは、蓋本体部12Bの開封方向DBを示す指標の一例である。開封方向DBは、即席食品容器10の利用時に、利用者が容器11内にお湯を注ぐために、蓋本体部12Bを容器11のフランジ11Fから一旦剥がす際に、指で把持した摘まみ部12Pを移動させる方向である。
【0029】
図1が示す例では、蓋本体部12Bは、2本の開封指示線Lを備える。2本の開封指示線Lは、中心Cを通る同一の直線上に配置されている。各開封指示線Lは、蓋本体部12Bの外縁から中心Cに向かう方向に沿って延びる。開封指示線Lは、蓋本体部12Bの開封範囲における端を示している。蓋本体部12Bの開封方向DBは、開封指示線Lに対して直交する方向である。
【0030】
開封指示線Lは、インキによって形成された印刷層であってよい。なお、蓋本体部12Bは、開封指示線Lに代えて、開封指示線Lが延びる方向に沿って並ぶ文字列であってもよい。この場合には、文字列が並ぶ方向に直交する方向が開封方向DBである。文字列は、開封指示線Lと同様に、印刷層であってよい。
【0031】
なお、蓋本体部12Bは、開封方向DBの指標を備えなくてもよい。この場合には、開封方向DBは、摘まみ部12Pから蓋本体部12Bの中心Cに向かう方向である。また、蓋体12は、2つの摘まみ部12Pを備えてもよい。この場合には、2つの摘まみ部12Pは、蓋本体部12Bの周方向において間隔を空けて並ぶ。蓋体12が2つの摘まみ部12Pを備え、かつ、開封方向DBの指標を備えない場合には、蓋本体部12Bの周方向における摘まみ部12Pの間の中心から蓋本体部12Bの中心Cに向かう方向が、蓋本体部12Bの開封方向DBである。
【0032】
蓋体12は、表面12Fと、表面12Fとは反対側の裏面12Rと、を備える。裏面12Rは、容器11に接する部分を含む。表面12Fは、即席食品容器10の外表面を構成している。
【0033】
[即席食品容器10]
図2が示すように、即席食品容器10は、容器11と、蓋体12とを備える。容器11は、容器本体部11Bと、フランジ11Fと、を備える。容器本体部11Bは、即席食品を収容するための開口を備える。容器本体部11Bは、即席食品を収容する。
【0034】
フランジ11Fは、容器本体部11Bの開口を縁取る。蓋体12の蓋本体部12Bは、容器11のフランジ11Fに熱融着されている。蓋本体部12Bは、容器本体部11Bの開口を閉じる。蓋本体部12Bは、蓋本体部12Bからフランジ11Fの外側に摘まみ部12Pを突き出すように、容器本体部11Bに配置される。フランジ11Fは、第1フランジ部分と、第2フランジ部分と、を備える。第1フランジ部分は、フランジ11Fのなかで、摘まみ部12Pに接する部分である。第2フランジ部分は、第1フランジ部分に対する開封方向DBに配置される。
【0035】
即席食品容器10は、蓋体12が摘まみ部12Pから開封方向DBに向けてフランジ11Fから剥がされる。これによって、容器本体部11Bにお湯を注ぐための注入口が蓋体12とフランジ11Fとによって区切られる。
【0036】
[蓋体12の断面構造]
図3が示すように、蓋体12は、積層体である。蓋体12は、表面樹脂層25、第1接着樹脂層26、紙層21、第2接着樹脂層22、およびシーラント層23を備える。表面樹脂層25において第1接着樹脂層26と対向する面は、開封指示線Lを含む印刷層を備えてもよい。第2接着樹脂層22は、紙層21とシーラント層23との間に位置し、かつ紙層21とシーラント層23とに接している。第2接着樹脂層22と表面樹脂層25との間に、紙層21が配置されている。表面樹脂層25において、第1接着樹脂層26に接する面とは反対側の面が、蓋体12の表面12Fである。シーラント層23において、第2接着樹脂層22に接する面とは反対側の面が、蓋体12の裏面12Rである。
【0037】
蓋体12は、金属箔層を備えていない。蓋体12が金属箔層を備えていないことは、金属箔からなる層を蓋体12が含まないことを意味する。蓋体12は、金属箔からなる層を含まず、かつ蓋体12を構成する少なくとも1つの層における構成元素に、金属元素または半金属元素を含有してもよい。構成元素に金属元素または半金属元素を含有する層は、酸化物蒸着層でもよい。
【0038】
表面樹脂層25は、延伸樹脂層でもよい。延伸樹脂層である表面樹脂層25は、閉蓋姿勢に蓋体12を延ばすように、蓋体12に内部応力を与える。そのため、蓋体12の再封保持性が高まる。表面樹脂層25は、延伸フィルムでもよい。延伸フィルムは、二軸延伸フィルムでもよいし、一軸延伸フィルムでもよい。表面樹脂層25は、一層の延伸フィルムからなる単層体でもよいし、延伸フィルムを含む二層以上のフィルムからなる積層体でもよい。表面樹脂層25の構成材料は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートから構成される群から選択される少なくとも一種でもよい。なお、表面樹脂層25が単層体であり、かつ表面樹脂層25の構成材料がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートから構成される群から選択されるいずれか一種でもよい。
【0039】
第1接着樹脂層26は、各種の接着剤から構成されてよい。第1接着樹脂層26の構成材料は、ポリウレタン系接着剤でもよい。
紙層21の坪量は、50g/m2以上100g/m2以下でもよい。紙層21の坪量が50g/m2以上であれば、摘まみ部12Pがフランジ11Fから剥がされるときの摘まみ部12Pの引っ張りに十分な剛性が得られる。また、紙層21の坪量が50g/m2以上であれば、摘まみ部12Pが開口を塞ぐための摘まみ部12Pの折り曲げに十分な剛性が得られる。紙層21の坪量が100g/m2以下であれば、蓋本体部12Bを反らせることに抗する反力を得やすい。
【0040】
紙層21において紙繊維の配向する方向である紙目は、開封方向DBと平行でもよいし、開封方向DBと直交してもよいし、紙層21の広がる面内において不規則であってもよい。摘まみ部12Pの剥がしなどにおいて摘まみ部12Pに破れの抑制をさらに要求される場合、紙層21における紙目の向きは、開封方向DBと直交することが好ましい。
【0041】
第2接着樹脂層22は、押出ラミネート法によって形成された押出成形体でもよい。第2接着樹脂層22の構成材料は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂から構成される群から選択されるいずれか一種でもよい。第2接着樹脂層22の厚さは、10μm以上40μm以下でもよい。
【0042】
シーラント層23は、フランジ11Fに接合される。シーラント層23は、押出ラミネート法によって形成された押出成形体でもよい。シーラント層23は、イージーピール性と、ヒートシール性と、を備える。シーラント層23は、容器11の構成材料と同種の材料から形成されてよい。シーラント層23の構成材料は、ポリスチレン系樹脂であってよい。シーラント層23の厚さは、10μm以上40μm以下でもよい。シーラント層23によるフランジ11Fと蓋体12との剥離強度は、6.2N以上でもよい。フランジ11Fと蓋体12との剥離強度が6.2N以上である場合、蓋体12による封止性が高まる。
【0043】
[摘まみ部12Pの平面構造]
図4は、蓋本体部12Bが容器本体部11Bにおける開口の全体を閉じる状態で、表面樹脂層25と対向する視点から見た摘まみ部12Pを示す。
【0044】
図4が示すように、摘まみ部12Pは、摘まみ部12Pを貫通する切れ込み12Sを備える。切れ込み12Sは、摘まみ部12Pの縁から離間している。切れ込み12Sは、摘まみ部12Pが突き出る方向とは反対方向に突き出る1つの曲線状を有する。
【0045】
切れ込み12Sは、切れ込み12Sの延びる方向における両端に、それぞれ端12Eを備える。切れ込み12Sは、2つの端12Eを結ぶ1つの弧状を有してもよい。
摘まみ部12Pのなかで、切れ込み12Sの端12Eと、摘まみ部12Pの縁との間の領域は、第1摘まみ部分12P1である。第1摘まみ部分12P1は、摘まみ部12Pのなかで、摘まみ部12Pの縁から切れ込み12Sの端12Eを離間させる部分である。第1摘まみ部分12P1の幅は、切れ込み12Sの端12Eと、摘まみ部12Pの縁との間の最短距離である。第1摘まみ部分12P1の幅は、2mm以上でもよい。摘まみ部12Pに破れの抑制をさらに要求される場合、第1摘まみ部分12P1の幅は、3mm以上であることが好ましい。また、第1摘まみ部分12P1の幅は、5mm以下でもよい。
【0046】
摘まみ部12Pのなかで、切れ込み12Sによって区切られ、かつ2つの端12Eに挟まれる領域は、第2摘まみ部分12P2である。第2摘まみ部分12P2は、摘まみ部12Pが突き出る方向とは反対方向に突き出る舌片状を有する。第2摘まみ部分12P2の高さは、切れ込み12Sにおける2つの端12Eを通る直線と、切れ込み12Sの突き出る先端との間の距離である。第2摘まみ部分12P2の高さは、1mm以上でもよい。デッドホールド性の向上をさらに要求される場合、第2摘まみ部分12P2の高さは、2mm以上であることが好ましい。また、第2摘まみ部分12P2の高さは、5mm以下でもよい。
【0047】
摘まみ部12Pの突き出る方向は、開封方向DBとは反対方向でもよい。摘まみ部12Pの突き出る方向は、開封方向DBとは反対方向と45°以下の鋭角を形成する方向でもよい。摘まみ部12Pを摘まむ利用者は、即席食品容器10の開封時に、摘まみ部12Pの突き出る方向とは反対方向に摘まみ部12Pを引き起こしやすい。即席食品容器10の開封が利用者の直観的な操作によって円滑に進みやすい観点から、蓋体12が1つの摘まみ部12Pを備える場合、摘まみ部12Pが突き出る方向は、開封方向DBとは反対方向であることが好ましい。蓋体12が2つの摘まみ部12Pを備える場合、摘まみ部12Pが突き出る方向は、開封方向DBとは反対方向と45°以下の鋭角を形成する方向であることが好ましい。
【0048】
中心線L1は、切れ込み12Sの両端12Eの間の中心を通る仮想直線である。中心線L1は、摘まみ部12Pの突き出る方向とは反対方向に延びる。
容器本体部11Bから蓋体12を剥がしはじめる利用者は、蓋体12が1つの摘まみ部12Pを備える場合であれ、蓋体12が2つの摘まみ部12Pを備える場合であれ、摘まみ部12Pの突き出る方向に摘まみ部12Pを引っ張りながら引き起こしやすい。このため、蓋体12を剥がしはじめるための応力である引き剥がし力は、蓋体12が1つの摘まみ部12Pを備える場合であれ、蓋体12が2つの摘まみ部12Pを備える場合であれ、摘まみ部12Pの突き出る方向に作用しやすい。摘まみ部12Pに作用する引き剥がし力の抗力は、フランジ11Fと蓋本体部12Bとの融着によって、摘まみ部12Pの突き出る方向とは反対方向に作用しやすい。これら、摘まみ部12Pに作用する引き剥がし力と、当該引き剥がし力の抗力とは、第1摘まみ部分12P1に引っ張り破断力や剪断力に変換される。中心線L1は、切れ込み12Sの各端12Eに対する基準線であり、かつ第1摘まみ部分12P1に作用しやすい引き剥がし力の方向を延在方向に定める。
【0049】
なお、中心線L1は、摘まみ部12Pの先端12PEを通ってもよいし、摘まみ部12Pの先端12PEを通らなくてもよい。中心線L1は、蓋本体部12Bの中心Cを通ってもよいし、蓋本体部12Bの中心Cを通らなくてもよい。例えば、蓋本体部12Bが円板状を有し、かつ摘まみ部12Pが蓋本体部12Bの径方向に突き出る三角板状を有する場合、中心線L1は、摘まみ部12Pの先端12PEを通り、かつ蓋本体部12Bの中心Cを通る。
【0050】
端延長線L2は、切れ込み12Sの端12Eから延びる仮想直線である。端延長線L2は、切れ込み12Sの延びる方向に沿って延びる。切れ込み12Sの延びる方向は、切れ込み12Sの端線分に基づいて定められる。切れ込み12Sの端線分は、切れ込み12Sの端12Eを含み、かつ切れ込み12Sの端12Eから1mmの長さを有する。
【0051】
切れ込み12Sの端線分が一定の曲率を有する場合、また切れ込み12Sの端線分の曲率が端12Eに向けて単調に減少する場合、切れ込み12Sの延びる方向は、切れ込み12Sの端12Eにおける接線の延びる方向である。すなわち、端延長線L2は、切れ込み12Sの端12Eにおける接線である。切れ込み12Sの端12Eにおける接線の延びる方向は、切れ込み12Sの端12Eが破れの起点であるとき、切れ込み12Sの端線分から破断や剪断をはじめやすい方向である。
【0052】
切れ込み12Sの端線分の曲率が端12Eに向けて単調に増加する場合、また切れ込み12Sの端線分における曲率が一定、あるいは単調であるといえない場合、切れ込み12Sの延びる方向は、切れ込み12Sの端線分における両端を結ぶ方向である。すなわち、端延長線L2は、切れ込み12Sにおける端線分の両端を通る直線である。切れ込み12Sにおける端線分の両端を通る直線の延びる方向は、切れ込み12Sの端12Eが破れの起点であるとき、切れ込み12Sの端線分から破断や剪断をはじめやすい方向である。
【0053】
このように、切れ込み12Sの端12Eから1mmの長さを有した端線分に基づいて定められる切れ込み12Sの延びる方向は、切れ込み12Sの各端12Eにおいて破れやすい方向である。
【0054】
中心線L1と端延長線L2とが形成する角度θは、10°以上80°以下である。
摘まみ部12Pに作用する引き剥がし力は、摘まみ部12Pから蓋本体部12Bに伝わる。切れ込み12Sは、引き剥がし力の伝搬を切れ込み12Sの位置で途切れさせると共に、第1摘まみ部分12P1に引き剥がし力を集中させる。
【0055】
第1摘まみ部分12P1のみを通じて蓋本体部12Bに作用する引き剥がし力は、切れ込み12Sの端12Eを起点とした引っ張り破断力や剪断力として第1摘まみ部分12P1に作用しやすい。中心線L1と端延長線L2とが形成する角度θは、引き剥がし力の作用しやすい方向と、端12Eにおいて破れやすい方向との乖離の度合いを示す。角度θが90°に近いほど、引き剥がし力の作用しやすい方向と、端12Eにおいて引っ張り破断の生じやすい方向とが近い。角度θが0°に近いほど、引き剥がし力の作用しやすい方向と、端12Eにおいて剪断しやすい方向とが近い。中心線L1と端延長線L2との形成する角度θが10°以上80°以下であれば、破断や剪断などの破れが端12Eに生じることが抑制される。
【0056】
切れ込み12Sの2つの端12Eに破れのばらつき抑制をさらに要求される場合、中心線L1が摘まみ部12Pの先端12PEを通ると共に、切れ込み12Sが中心線L1を対象軸とする線対称であることが好ましい。特に、蓋体12が1つの摘まみ部12Pを備える場合、中心線L1が蓋本体部12Bの中心Cを通ると共に、切れ込み12Sが中心線L1を対象軸とする線対称であることが好ましい。
【0057】
摘まみ部12Pに作用する引き剥がし力は、摘まみ部12Pを引き起こす利用者の操作に応じて、摘まみ部12Pの突き出る方向よりも若干右側に傾いたり、若干左側に傾いたりする。この点、線対称である切れ込み12Sは、引き剥がし力の作用する方向が摘まみ部12Pの突き出る方向よりも右側に傾く場合であれ、左側に傾く場合であれ、いずれにおいても破れの抑制効果を同様に奏しやすい。このため、摘まみ部12Pにおける破れの抑制効果にばらつきが生じにくい。
【0058】
切れ込み12Sの端12Eに剪断の抑制をさらに要求される場合、紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向と直交することが好ましい。摘まみ部12Pの突き出る方向とは摘まみ部12Pの突き出る方向と直交する紙目は、当該反対方向に沿う紙目と比べて、摘まみ部12Pに作用する引き剥がし力によって剪断されにくい。このため、蓋体12がフランジ11Fから剥がされはじめるとき、切れ込み12Sの端12Eから剪断がさらに進みにくい。
【0059】
切れ込み12Sの端12Eに破れの抑制をさらに要求される場合、角度θは、30°以上70°以下であることが好ましい。上述したように、紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向である場合、紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向と直交する場合と比べて、引き剥がし力による剪断が切れ込み12Sの端12Eから進みやすい。このため、紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向である場合、角度θは、30°以上70°以下であることが特に好ましい。
【0060】
切れ込み12Sの端12Eに破断の抑制をさらに要求される場合、摘まみ部12Pにおいて摘まみ部12Pの突き出る方向に沿う破断強度は9.7N以上であることが好ましい。これにより、引き剥がし力による破断を抑制することの実効性が高まる。また、切れ込み12Sの端12Eに破断の抑制をさらに要求される場合、角度θは、45°以下であることが好ましい。角度θが45°以下であれば、引き剥がし力による摘まみ部12Pの破断強度が特に高まるため、破断の抑制効果がさらに高まる。
【0061】
図2に戻り、蓋体12がフランジ11Fから剥がされるとき、フランジ11Fのなかの第1フランジ部分から第2フランジ部分に向けて、摘まみ部12Pが引っ張られながら引き起こされる。引き起こされた摘まみ部12Pは、表裏を反転させた状態で第2フランジ部分まで引っ張られる。
【0062】
図5が示すように、第2フランジ部分に到達した摘まみ部12Pは、第1摘まみ部分12P1と第2摘まみ部分12P2とが第2フランジ部分でフランジ11Fを表裏で挟むように、第2摘まみ部分12P2を折り曲げ部12Lで折り曲げる。そして、摘まみ部12Pがフランジ11Fに掛け止められる。
【0063】
フランジ11Fに掛け止められた摘まみ部12Pは、容器本体部11Bの開口を塞ぐように蓋体12の姿勢が戻ることを抑える。これにより、摘まみ部12Pの係合対象にフランジ11Fを用いる分だけ、蓋体12の縁部における片同士の嵌合によって蓋体12の姿勢が戻ることを抑える場合と比べて、デッドホールド性を高める蓋体構成に破断や剪断などの破れが生じることが抑えられる。
【0064】
フランジ11Fに掛け止められた摘まみ部12Pがフランジ11Fから外れることの抑制をさらに要求される場合、切れ込み12Sの全体が摘まみ部12Pの突き出る方向とは反対方向に突き出る弧状を有することが好ましい。弧状を有する切れ込み12Sは、角度θを相互に等しくする前提において、端線分が直線状を有する切れ込み12Sと比べて、フランジ11Fの径方向に広がりやすい。すなわち、弧状を有する切れ込み12Sは、フランジ11Fの径方向における第2摘まみ部分12P2の長さを大きくできる。このため、フランジ11Fに掛け止められた摘まみ部12Pがフランジ11Fから外れることをさらに抑制できる。
【0065】
[実施例]
即席食品容器10、および蓋体12の実施例、および比較例を説明する。
表面樹脂層25として、下記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を用い、かつ第1接着樹脂層26を形成するために下記接着剤を用いた。そして、表面樹脂層25の一側面に印刷を施すとともに、印刷を施された一側面に接着剤を塗工し、ドライラミネート法によって、紙層21に表面樹脂層25を接着した。
【0066】
次に、第2接着樹脂層22として、下記低密度ポリエチレン(LDPE)を用い、かつシーラント層23として、下記ポリスチレン系樹脂(PS)を用いた。そして、紙層21、第2接着樹脂層22、およびシーラント層23がこの順に接合するように、第2接着樹脂層22とシーラント層23とを押出ラミネート法を用いて個別に形成した。この際、紙層21と第2接着樹脂層22との間、および第2接着樹脂層22とシーラント層23との間にアンカーコートを用いなかった。これにより、表面樹脂層25、第1接着樹脂層26、紙層21、第2接着樹脂層22、およびシーラント層23から構成される積層体を得た。
【0067】
次に、蓋体12を形成するための刃を用いて積層体から蓋体12を打ち抜くことによって、実施例1の蓋体12を得た。また、容器11のフランジ11Fに蓋体12を熱融着することによって、実施例1の即席食品容器10を得た。
【0068】
この際、蓋体12の摘まみ部12Pとして、開封方向DBに摘まみ部12Pの突き出る方向を一致させると共に、円板状の蓋本体部12Bから蓋本体部12Bの径方向に突き出る1つの摘まみ部12Pを形成した。また、切れ込み12Sの形状として、下記幅と高さを有して摘まみ部12Pの突き出る方向とは反対方向に突き出る1つの弧状、かつ角度θが80°である形状を形成した。そして、紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向であるMD水準の試料と、紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向と直交するTD水準の試料とを、積層体から別々に打ち抜いた。
【0069】
・OPP :FOR(品種名)フタムラ化学社製/厚さ20μm
・接着剤 :A626/A50(製品名)三井化学社製
・紙層21:はまゆう(登録商標)北越コーポレーション社製/坪量35g/m2
・LDPE:LC600A(製品名)日本ポリエチレン社製/厚さ20μm
・PS :VN503(製品名)三井ダウポリケミカル社製/厚さ20μm
・第1摘まみ部分12P1の幅:3mm
・第2摘まみ部分12P2の高さ:1.3mm
なお、70°、60°、45°、30°、10°のそれぞれに角度θを変更し、かつ各角度θが得られる高さに第2摘まみ部分12P2の高さを大きくし、それ以外を実施例1と同様にして、実施例2~6の蓋体12、および即席食品容器10を得た。角度θと第2摘まみ部分12P2の高さとの組を[角度θ(°),高さ(mm)]と表記すると、実施例2の蓋体12は[70,2.2]であり、実施例3の蓋体12は[60,2.6]である。実施例4の蓋体12は[45,3.0]であり、実施例5の蓋体12は[30,3.4]であり、実施例6の蓋体12は[10,3.4]である。
【0070】
また、切れ込み12Sが摘まみ部12Pの突き出る方向と直交する直線状であるように、角度θと第2摘まみ部分12P2の高さとを変更し、それ以外を実施例1と同様にして、角度θが90°である比較例1の蓋体12、および即席食品容器10を得た。比較例1の蓋体12は[90,0]である。
【0071】
また、切れ込み12Sが摘まみ部12Pの突き出る方向に沿う直線状であるように、角度θ、第1摘まみ部分12P1の幅、および第2摘まみ部分12P2の高さを変更し、それ以外を実施例1と同様にして、比較例2の蓋体12、および即席食品容器10を得た。この際、切れ込み12Sの端12Eと、摘まみ部12Pの先端12PEとの距離が、実施例における第1摘まみ部分12P1の幅と等しいように、比較例2の切れ込み12Sを形成した。また、切れ込み12Sの延在方向における長さが、6.8mmであるように、比較例2の切れ込み12Sを形成した。比較例2の蓋体12は[0,6.8]である。
【0072】
[評価]
[開封強度]
JIS S0022 6.2に準じた方法を用いて、実施例1~6、および比較例1、2の即席食品容器10における開封強度をそれぞれ測定した。
【0073】
この際、容器11の底面と水平面との形成する角度が45°であるように、即席食品容器10を傾けた状態で固定すると共に、摘まみ部12Pをクランプに固定した。そして、500mm/minの速度でクランプを鉛直方向の上方に引き上げることによって即席食品容器10を開封すると共に、開封開始から開封終了までにクランプに加えられた荷重のなかの最大値を開封強度として測定した。実施例1~6、および比較例1、2の開封強度を
図6に示す。
【0074】
[破断強度]
テンシロン(登録商標)試験機を用いて、実施例1~6、および比較例1、2の溶着前の蓋体12における摘まみ部12Pの破断強度をそれぞれ測定した。
【0075】
この際、鉛直面に沿って蓋体12の表面12Fを配置すると共に、摘まみ部12Pのなかの一部である先端12PEと切れ込み12Sとの間の部分をクランプに固定した。また、蓋体12のなかの中心Cを挟んで摘まみ部12Pと対向し、切れ込み12Sの中心Cから10mmに位置する部分を支持台に固定した。そして、300mm/minの速度で一方のクランプを鉛直方向の上方に引き上げることによって摘まみ部12Pを破断すると共に、引き上げ開始から破断までにクランプに加えられた荷重のなかの最大値を破断強度として測定した。実施例1~6、および比較例1、2の破断強度を
図6、および
図7に示す。
【0076】
[開封容易性]
実施例1~6、および比較例1、2の即席食品容器10を用いて、蓋体12の開封容易性を評価した。開封容易性は、蓋体12の中心Cまで蓋体12を剥がしたときの摘まみ部12Pの外観に基づいて評価した。この際、即席食品容器10の開封は、摘まみ部12Pのなかの一部である先端12PEと切れ込み12Sとの間の部分を摘まみながらフランジ11Fから摘まみ部12Pを引き上げる様式で行われた。実施例1~6、および比較例1、2における開封容易性の評価結果を
図6に示す。
【0077】
なお、
図6は、肉眼で確認される大きさの破れが摘まみ部12Pに認められない水準に「〇」印を示す。また、肉眼で確認される大きさの破れではあるが、摘まみ部12Pの縁まで達していない破れを認められた水準に「△」印を示す。また、摘まみ部12Pの一部が切り離される大きさの破れが認められ、蓋体12の中心Cまで蓋体12を剥がすことに支障を生じた水準に「×」印を示す。また、蓋本体部12Bにまで達する破れが認められ、蓋体12の中心Cまで蓋体12を剥がすことに支障を生じた水準に「-」印を示す。
【0078】
[デッドホールド性]
実施例1~6、および比較例1、2の即席食品容器10を用いて、蓋体12のデッドホールド性を評価した。デッドホールド性は、フランジ11Fの第2フランジ部分に達した摘まみ部12Pの引っ掛かり具合に基づいて評価した。実施例1~6、および比較例1、2におけるデッドホールド性の評価結果を
図6に示す。
【0079】
なお、
図6は、フランジ11Fに第2摘まみ部分12P2を円滑に引っ掛けられた水準に「〇」印を示す。また、フランジ11Fに第2摘まみ部分12P2を引っ掛けられたものの、2回以上の引っ掛け操作を要するなど、第2摘まみ部分12P2を円滑に引っ掛けられなかった水準に「△」印を示す。また、フランジ11Fに第2摘まみ部分12P2を引っ掛けられなかった水準に「×」印、あるいは「-」印を示す。「×」印の水準は、第1摘まみ部分12P1と、第2摘まみ部分12P2とによってフランジ11Fを挟めず、開封途中の姿勢に自ら姿勢を戻すような蓋体12の内部応力によって引っ掛けが不能であることを示す。
【0080】
図6が示すように、実施例1~6、および比較例1、2の全ての即席食品容器10が6.2Nの開封強度を有することが認められた。
また、10°以上80°以下の角度θを有した実施例1~8の蓋体12が9.7N以上の高い破断強度を有することが認められた。そして、10°以上80°以下の角度θを有した蓋体12が0°あるいは90°の角度θを有した蓋体12よりも良好な開封容易性、および良好なデッドホールド性を有することが認められた。特に、実施例2~5の蓋体12が示すように、30°以上70°以下の角度θが優れた開封容易性、および優れたデッドホールド性を両立させることも認められた。
【0081】
なお、摘まみ部12Pの一部が切り離されて蓋体12を剥がすことに支障を生じるような大きな破れが、比較例1の蓋体12に認められた。また、摘まみ部12Pから蓋本体部12Bに達して蓋体12を剥がすことに支障を生じるような大きな破れが、比較例2の蓋体12に認められた。
【0082】
図6の実施例1、2、4~6、および
図7が示すように、TD水準の破断強度がMD水準の破断強度よりも高まりやすいことが認められた。すなわち、紙層21における紙目の向きを摘まみ部12Pの突き出る方向に直交させることによって優れた開封容易性を得やすいことが認められた。特に、実施例1の蓋体12のように、MD水準において破断強度が10Nを下回る場合、紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向に直交することによって、開封容易性の向上が著しいことも認められた。
【0083】
また、摘まみ部12Pの破断強度が45°以下の角度θにおいておよそ一定値を示し、45°を上回る角度θにおいて急峻に低下することも認められた。すなわち、10°以上45°以下の角度θは、摘まみ部12Pにおける破断の抑制効果を特に高めると共に、破断の抑制効果を安定させることも認められた。
【0084】
以上、蓋体12、および即席食品容器10によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)中心線L1と端延長線L2との形成する角度θが10°以上80°以下であるため、摘まみ部12Pに破断や剪断などの破れが生じにくい。
【0085】
(2)紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向に直交する場合、切れ込み12Sの端12Eから剪断がさらに進みにくい。
(3)角度θが30°以上70°以下である場合、破れの抑制効果がさらに高まる。特に、紙層21における紙目の向きが摘まみ部12Pの突き出る方向である場合のように、引き剥がし力による剪断を生じやすい層構成である場合、30°以上70°以下の角度θが効果的に破れを抑制する。
【0086】
(4)切れ込み12Sが中心線L1を対象軸とする線対称である場合、破れの抑制効果にばらつきが生じにくい。
(5)摘まみ部12Pにおいて摘まみ部12Pの突き出る方向に沿う破断強度が9.7N以上である場合、摘まみ部12Pにおける破断抑制の実効性が高まる。
【0087】
(6)切れ込み12Sの全体が反対方向に突き出る弧状である場合、角度θを相互に等しくする前提において、第2摘まみ部分12P2がフランジ11Fの径方向に広がりやすい。このため、デッドホールド性を高めることの実効性が高まる。
【0088】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[切れ込み12S]
・切れ込み12Sは、2つ以上の弧状の連なりによって2つの端12Eを結ぶような1つの波状を有してもよい。
【0089】
・切れ込み12Sは、切れ込み12Sの一部に直線部分12ELを備えてもよい。
例えば、
図8が示すように、切れ込み12Sは、中心線L1が通る曲線部分12Mと、端12Eから曲線部分12Mまで延びる直線部分12ELと、から構成されてもよい。曲線部分12Mは、1つの弧状を有してもよい。曲線部分12Mは、2つ以上の弧状の連なりによる1つの波状を有してもよい。切れ込み12Sは、中心線L1を対象軸とする線対称でもよい。なお、端延長線L2は、切れ込み12Sの端12Eを含み、かつ切れ込み12Sの端12Eから1mmの長さを有した切れ込み12Sの端部の全体を含む直線である。
【0090】
(7)上記変更例によれば、切れ込み12Sが中心線L1を対象軸とする線対称であるため、破れの抑制効果にばらつきが生じにくい。また、フランジ11Fに摘まみ部12Pを掛け止めやすい観点から、第2摘まみ部分12P2は、フランジ11Fの周方向に長いことが好ましい。この点、切れ込み12Sの両端線部が直線部分であるため、角度θを相互に等しくする前提において、切れ込み12Sの両端線部が曲線である場合と比べて、切れ込み12Sがフランジ11Fの周方向に広がりやすい。結果として、デッドホールド性を高めることの実効性が高まる。
【0091】
[フランジ11F]
・フランジ11Fは、容器本体部11Bの径方向に延びる鍔状を有してもよいし、容器本体部11Bの開口縁から底に向けて折れ曲がる形状を有してもよい。
【0092】
摘まみ部12Pに破れが生じることを抑制し、かつフランジ11Fに摘まみ部12Pを引っ掛かりやすくすることをさらに要求される場合、フランジ11Fは、容器本体部11Bの径方向に延びる鍔状であることが好ましい。フランジ11Fが容器本体部11Bの径方向に延びる鍔状を有する場合、摘まみ部12Pに形成される折り曲げ箇所を折り曲げ部12Lのみとして、第2摘まみ部分12P2をフランジ11Fの裏側に配置することが容易ともなる。
【0093】
[蓋体12]
・蓋体12は、表面樹脂層25と第1接着樹脂層26とを割愛してもよい。蓋体12は、第2接着樹脂層22を割愛してもよい。蓋体12は、紙層21とシーラント層23とから構成されてもよい。
【0094】
・実施例1~6において、角度θが得られるように第2摘まみ部分12P2の高さを変えることは、第1摘まみ部分12P1の幅と第2摘まみ部分12P2の高さとを以下のように変更することもできる。例えば、第1摘まみ部分12P1の幅が2mmである場合、角度θと第2摘まみ部分12P2の高さとの組に、[80,1.5]、[70,2.6]、[60,3.1]、[45,3.8]、[30,4.3]、[10,4.6]を変更してもよい。例えば、第1摘まみ部分12P1の幅が4mmである場合、角度θと第2摘まみ部分12P2の高さとの組に、[80,1.1]、[70,1.7]、[60,2.0]、[45,2.4]、[30,2.5]、[10,2.5]を設定してもよい。これらの変更例においても、実施例1~6に認められた破断強度における角度θの依存性が認められると共に、実施例1~6と同じく破れの抑制効果が得られる。すなわち、弧状の切れ込み12Sを備える構成において、第1摘まみ部分12P1の幅が2mm以上4mm以下でもよいし、10°以上80°以下の角度θが得られるように第2摘まみ部分12P2の高さが1mm以上5mm以下でもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…即席食品容器
11…容器
11B…容器本体部
11F…フランジ
12…蓋体
12B…蓋本体部
12P…摘まみ部
21…紙層
22…第2接着樹脂層
23…シーラント層
25…表面樹脂層
26…第1接着樹脂層
DB…開封方向