IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図1
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図2
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図3
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図4
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図5
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図6
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図7
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図8
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図9
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図10
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図11
  • 特開-タイヤブラダー用のモールド 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099922
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】タイヤブラダー用のモールド
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240719BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20240719BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003557
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 倫子
(72)【発明者】
【氏名】笠原 隆弘
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AH20
4F202AJ08
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CK52
4F202CP01
4F202CT01
4F202CX01
4F202CY11
4F202CZ01
4F203AA45
4F203AB03
4F203AC03
4F203AG13
4F203AH20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F203DM23
(57)【要約】
【課題】高品質なタイヤ用ブラダーが効率よく製造されうるモールドの提供。
【解決手段】モールドは、上型、下型6及び中子を有している。下型6は、フレーム22、クランプ24、主部26、スペーサー28及びボルト30を有している。主部26は、キャビティ面32を有している。主部26はさらに、ステージ34を有しているステージ34は、その上面にリセス36を有している。スペーサー28は、ステージ34の上に置かれている。スペーサー28は、リセス36に嵌め込まれている。スペーサー28の内径D2は、ステージ34の外径D3よりも小さく、かつステージ34の内径D1よりも大きい。ステージ34の上面は、スペーサー28の内側において、スペーサー28に覆われることなく露出している。この露出したゾーンは、ランド38である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの製造に使用されるブラダーのためのモールドであって、
上記ブラダーの材料であるゴム片が置かれうるステージ、
及び
上記ステージの上にあり、リング状であり、その内径が上記ステージの外径よりも小さくかつ上記ステージの内径よりも大きいスペーサー
を備えた、モールド。
【請求項2】
上記スペーサーを貫通して上記ステージに至っており、中空であるパイプをさらに備えており、
上記ステージが、上記パイプに連続するベントホールを有する、請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
ブラダーの材料であるゴム片を準備する工程、
ステージと、このステージの上にありリング状でありその内径がこのステージの外径よりも小さくかつこのステージの内径よりも大きいスペーサーとを有するモールドに、上記ゴム片を投入し、このゴム片を上記ステージの上であってかつ上記スペーサーの内側に位置させる工程、
及び
上記ゴム片を上記モールドにおいて加圧及び加熱する工程
を備えた、タイヤ用ブラダーの製造方法。
【請求項4】
ブラダーの材料であるゴム片が置かれうるステージを有する、既存モールドを準備する工程
及び
上記ステージの上に、リング状でありその内径がこのステージの外径よりも小さくかつこのステージの内径よりも大きいスペーサーを取り付ける工程
を備えた、タイヤ用モールドの改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、タイヤの加硫装置の部材であるブラダーの製造に適したモールドを開示する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程では、予備成形されたローカバー(グリーンタイヤ)が、モールドに投入される。このローカバーは、モールドとブラダーとによって形成されるキャビティにおいて、加熱される。ブラダーに気体が充填されてこのブラダーが膨張することで、ローカバーは加圧される。加熱と加圧とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0003】
ブラダーは、弾性を有している。このブラダーの典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。このブラダーは、加硫工程を経て製造される。ブラダーの加硫工程に適したモールドが、特開2022-91576公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-91576公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラダーの材料である未架橋ゴム組成物は、モールドに投入される。このモールドが有するランドの上に、ゴム組成物が置かれる。加圧されたゴム組成物は流動し、キャビティへと進入する。従来のモールドのランドのサイズは、大きい。このモールドにおいてゴム組成物がキャビティに十分に充填されるには、長時間を要する。従って、ゴム組成物がキャビティに十分に充填される前に、ゴム分子の架橋反応が相当程度進行する。この現象は、「ゴム焼け」と称される。ゴム焼けは、ブラダーの品質を阻害する。加硫温度が低く設定されれば、ゴム焼けは抑制されうる。しかし、低い加硫温度は、加硫工程の長時間を招く。
【0006】
本出願人の意図するところは、高品質なタイヤ用ブラダーが効率よく製造されうるモールドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、タイヤの製造に使用されるブラダーのためのモールドを開示する。このモールドは、
ブラダーの材料であるゴム片が置かれうるステージ、
及び
このステージの上にあり、リング状であり、その内径がステージの外径よりも小さくかつステージの内径よりも大きいスペーサー
を有する。
【発明の効果】
【0008】
このモールドはスペーサーを有するので、ランドの実効サイズは小さい。このモールドでは、ゴム組成物が、短時間でキャビティに十分に充填される。このモールドは、高品質である。このモールドによるブラダーの製造は、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るモールドが示された平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図2のモールドが示された分解図である。
図4図4は、図3のモールドの下型が示された断面図である。
図5図5は、図4の下型の一部が示された平面図である。
図6図6は、図3のモールドがゴム片と共に示された断面図である。
図7図7は、図6のモールドの下型がゴム片と共に示された平面図である。
図8図8は、図3のモールドがゴム片と共に示された断面図である。
図9図9は、図2のモールドがゴム片のゴム組成物と共に示された拡大断面図である。
図10図10は、図1-9のモールドで得られたブラダーが示された断面図である。
図11図11は、図3のモールドの下型の一部が示された拡大断面図である。
図12図12は、図3のモールドの下型の一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0011】
図1-3に、ブラダー用モールド2が示されている。このモールド2は、上型4、下型6及び中子8を有している。上型4は、下型6に対して相対的に下降及び上昇しうる。上型4と下型6とが合わされて、空間が形成されうる。中子8は、この空間に収容されうる。中子8は、下型6に固定されている。
【0012】
図3に示されるように、上型4は、フレーム10、複数のクランプ12、主部14及びフット16を有している。それぞれのクランプ12は、フレーム10から径方向外向きに突出している。主部14は、フレーム10と一体である。主部14は、キャビティ面18を有している。フット16は、プッシュ面20を有している。
【0013】
図4及び5に、下型6が示されている。この下型6は、フレーム22、複数のクランプ24、主部26、スペーサー28及び複数のボルト30を有している。それぞれのクランプ24は、フレーム22から径方向外向きに突出している。図5では、クランプ24の図示が省略されている。主部26は、フレーム22と一体である。主部26は、キャビティ面32を有している。主部26はさらに、ステージ34を有している。ステージ34の平面形状は、概してリング状である。ステージ34は、その上面にリセス36(凹み)を有している。スペーサー28は、ステージ34の上に置かれている。スペーサー28の一部は、リセス36に嵌め込まれている。スペーサー28の平面形状は、リング状である。それぞれのボルト30は、スペーサー28を貫通し、ステージ34に至っている。このボルト30は、スペーサー28をステージ34に固定する。
【0014】
図4において、矢印D1はステージ34の内径を表し、矢印D2はスペーサー28の内径を表し、矢印D3はステージ34の外径を表す。本実施形態では、ステージ34の外径D3は、スペーサー28の外径と一致している。
【0015】
スペーサー28の内径D2は、ステージ34の外径D3よりも小さく、かつステージ34の内径D1よりも大きい。従ってステージ34の上面は、スペーサー28の内側において、このスペーサー28に覆われることなく露出している。この露出したゾーンは、ランド38と称される。
【0016】
図2に示されるように、上型4と下型6とが合わされると、キャビティが形成される。上型4のキャビティ面18(図3参照)と中子8の表面とに挟まれたスペースは、キャビティの一部である。下型6のキャビティ面32(図4参照)と中子8の表面とに挟まれたスペースも、キャビティの一部である。
【0017】
このモールド2が使用されたブラダー製造方法では、基材ゴム、架橋剤、補強材、充填剤等が混練され、ゴム組成物が得られる。このゴム組成物に押出、切断等の加工が施され、長尺のゴム片が得られる。このゴム片では、ゴム分子同士は架橋していない。
【0018】
このゴム片が、開いたモールド2に投入される。図6に示されるように、ゴム片40は、ランド38に置かれる。図7に示されるように、ゴム片40は、概してリング状を呈する。ゴム片40は、下型6からの熱を受けて昇温する。この昇温により、ゴム組成物は流動性を有する。
【0019】
図6において矢印A1で示されるように、下型6に対して上型4が、相対的に下降する。上型4は、徐々に下降する。上型4のプッシュ面20は、ゴム片40に当接する。この状態のモールド2が、図8に示されている。図8では、ゴム片40は、プッシュ面20とランド38とに挟まれている。
【0020】
上型4がさらに下降し、ゴム片40が加圧される。加圧及び加熱により、ゴム片40のゴム組成物はキャビティへと流れ出す。上型4は、下型6と合う。この状態のモールド2が、図9に示されている。図9では、ゴム組成物42がキャビティを満たしている。さらに加熱が継続され、ゴム分子同士の架橋反応が進行し、ブラダーが得られる。モールド2が開かれて、ブラダーが取り出される。このブラダー44が、図10に示されている。
【0021】
図11に、下型6の断面が示されている。図11において、矢印W1はランド38の幅を表し、矢印W2はステージ34の上面の幅を表す。幅W1は、ランド38の実効サイズである。もし下型6がスペーサー28を有さない場合、ランド38の幅はステージ34の幅W2と一致する。本実施形態に係るモールド2はスペーサー28を有しているので、ランド38の幅W1は幅W2よりも小さい。換言すれば、ランド38の外端46からキャビティまでの距離は、短い。このモールド2では、ゴム組成物42が、短時間でキャビティに充填される。このモールド2では、ゴム焼けが抑制されうる。このモールド2から得られたブラダー44は、高品質である。このモールド2によるブラダー44の製造のサイクルタイムは、短くて足りる。このモールド2は、ブラダー44の生産性に寄与しうる。
【0022】
このブラダー44は、タイヤ加硫装置に組み込まれる。この装置は、モールドを含んでいる。このモールドに、ローカバー(グリーンタイヤ)が投入される。このローカバーは、モールドとブラダー44とによって形成されるキャビティにおいて、加熱される。ブラダー44に気体が充填されてこのブラダー44が膨張することで、ローカバーは加圧される。加熱と加圧とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。高品質なブラダー44は、タイヤの高品質に寄与しうる。
【0023】
幅W2が大きい従来のモールドに、スペーサー28が取り付けられれば、ランド38の幅W1が小さい下型6が得られうる。従来のモールドの上型の一部は、スペーサー28のために切除される。このような、スペーサー28によるモールドの改良は、容易である。本明細書は、モールドの改良方法にも向けられる。
【0024】
ブラダー44の品質及び生産性の観点から、ステージ34の幅W2とランド38の幅W1との差(W2-W1)の、幅W2に対する比((W2-W1)/W2)は、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が特に好ましい。比((W2-W1)/W2)は、0.30以上が好ましい。差(W2-W1)は5.0mm以上が好ましく、7.0mm以上がより好ましく、10.0mm以上が特に好ましい。
【0025】
幅の異なる複数種のスペーサー28が、準備されてもよい。下型6に装着されるスペーサー28の幅に応じ、ランド38の幅W1が調整されうる。ゴム片40の組成等に応じ、適正な幅を有するスペーサー28が選択されうる。
【0026】
図12に、下型6の他の断面が示されている。図12には、パイプ48が示されている。このパイプ48は、中空であって、孔50を有している。パイプ48は、スペーサー28を貫通している。パイプ48の一部は、ステージ34に至っている。ステージ34はベントホール52を有している。このベントホール52は、孔50と連続している。ブラダー44の加硫工程では、下型6とゴム片40との間に存在するエアーが、パイプ48及びベントホール52を通じて排出される。パイプ48は、スペーサー28とステージ34との境界を跨いでいる。換言すれば、ベントホール52は、スペーサー28とステージ34との境界を跨いでいない。このモールド2では、スペーサー28とステージ34との間へのゴム組成物の流入が、抑制されうる。このモールド2では、パイプ48に生じたスピューが、ブラダー44と共に容易に脱型されうる。このモールド2のメンテナンスは、容易である。
【0027】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0028】
[項目1]
タイヤの製造に使用されるブラダーのためのモールドであって、
上記ブラダーの材料であるゴム片が置かれうるステージ、
及び
上記ステージの上にあり、リング状であり、その内径が上記ステージの外径よりも小さくかつ上記ステージの内径よりも大きいスペーサー
を備えた、モールド。
【0029】
[項目2]
上記スペーサーを貫通して上記ステージに至っており、中空であるパイプをさらに備えており、
上記ステージが、上記パイプに連続するベントホールを有する、項目1に記載のモールド。
【0030】
[項目3]
ブラダーの材料であるゴム片を準備する工程、
ステージと、このステージの上にありリング状でありその内径がこのステージの外径よりも小さくかつこのステージの内径よりも大きいスペーサーとを有するモールドに、上記ゴム片を投入し、このゴム片を上記ステージの上であってかつ上記スペーサーの内側に位置させる工程、
及び
上記ゴム片を上記モールドにおいて加圧及び加熱する工程
を備えた、タイヤ用ブラダーの製造方法。
【0031】
[項目4]
ブラダーの材料であるゴム片が置かれうるステージを有する、既存モールドを準備する工程
及び
上記ステージの上に、リング状でありその内径がこのステージの外径よりも小さくかつこのステージの内径よりも大きいスペーサーを取り付ける工程
を備えた、タイヤ用モールドの改良方法。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明されたモールドは、種々のカテゴリーのタイヤのための、ブラダーの製造に適している。
【符号の説明】
【0033】
2・・・モールド
4・・・上型
6・・・下型
8・・・中子
10・・・フレーム
14・・・主部
16・・・フット
18・・・キャビティ面
20・・・プッシュ面
22・・・フレーム
26・・・主部
28・・・スペーサー
32・・・キャビティ面
34・・・ステージ
36・・・リセス
38・・・ランド
40・・・ゴム片
42・・・ゴム組成物
44・・・ブラダー
48・・・パイプ
50・・・孔
52・・・ベントホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12