(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099923
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】油分の除去方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240719BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240719BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B01D53/04 240
B01D53/96 ZAB
B01D53/56 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003558
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522019328
【氏名又は名称】日栄薬品興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522019764
【氏名又は名称】株式会社フレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】浅井 靖史
(72)【発明者】
【氏名】村上 薫
(72)【発明者】
【氏名】手塚 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩義
(72)【発明者】
【氏名】内場 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】菅野 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】多羅 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安河内 武志
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
【Fターム(参考)】
4D002AA12
4D002AA40
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA05
4D002BA16
4D002CA07
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002EA01
4D002EA09
4D002GA01
4D002GA03
4D002GB09
4D002GB20
4D012BA01
4D012BA02
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4D012CB11
4D012CD08
4D012CD10
4D012CE01
4D012CE03
4D012CF01
4D012CF10
4D012CH10
(57)【要約】
【課題】 吸着材の吸着性能を向上させ、吸着材を再利用することができる方法を提供すること。
【解決手段】 吸着材に付着した油分を除去する方法は、吸着材が収容された透水性を有する容器を、過酸化水素を含む洗浄液に投入する工程と、容器内に管を挿入し、管を通して容器内に空気を供給しながら、吸着材を洗浄液に浸漬させる工程と、容器を洗浄水に投入する工程と、容器内に管を挿入し、管を通して容器内に空気を供給しながら、吸着材を洗浄水に浸漬させる工程とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材に付着した油分を除去する方法であって、
前記吸着材が収容された透水性を有する容器を、過酸化水素を含む洗浄液に投入する工程と、
前記容器内に管を挿入し、前記管を通して前記容器内に空気を供給しながら、前記吸着材を前記洗浄液に浸漬させる工程と、
前記容器を洗浄水に投入する工程と、
前記容器内に管を挿入し、前記管を通して前記容器内に空気を供給しながら、前記吸着材を前記洗浄水に浸漬させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記容器内に第2の管を挿入し、溶液循環手段により前記容器の外部の前記洗浄液を吸引し、前記第2の管を通して前記容器内に供給することにより該洗浄液を循環する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記管は、管壁に1以上の孔を有する有孔管である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄液に浸漬させる工程後、前記洗浄液に加えて、前記容器から前記吸着材を排出させ、透水性を有する別の容器で受け、洗浄後の吸着材を回収する工程を含み、
前記洗浄水に投入する工程では、前記別の容器を前記洗浄水に投入する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
容器から前記洗浄液を排水するとともに、給水設備から洗浄水を供給して前記容器内を洗浄する工程と、
前記容器内の洗浄後、前記容器に前記洗浄水を溜める工程と
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄液は、pHが3~5に調整され、前記洗浄水は、pHが3~5に調整される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記洗浄液に浸漬させる工程では、前記吸着材を15分~30分浸漬させ、前記洗浄水に浸漬させる工程では、前記吸着材を15分~30分浸漬させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記洗浄液に浸漬させる工程において、前記管もしくは前記容器またはその両方を動かし、前記洗浄液を撹拌する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄水に浸漬させる工程において、前記管もしくは前記容器またはその両方を動かし、前記洗浄水を撹拌する、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材に付着した油分を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染物質が吸着した吸着材や、汚染物質により汚染された土壌等は、再利用のために、汚染物質が除去される。
【0003】
従来において、汚染土壌から汚染物質を除去する技術として、土嚢に汚染土壌を入れ、洗浄液を入れた槽内に、汚染土壌を入れた土嚢を一定時間浸漬させ、また、土嚢に透水管を挿入し、土嚢中心部から洗浄水を吸い出して還流させ、これらにより、汚染土壌から汚染物質を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の技術では、汚染物質に油分が含まれる場合に、油分を抽出して除去することはできない。これでは、細孔や表層を覆うように油分が付着し、吸着性能が低下している吸着材の吸着性能を向上させることはできず、吸着材を再利用することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、吸着材に付着した油分を除去する方法であって、
吸着材が収容された透水性を有する容器を、過酸化水素を含む洗浄液に投入する工程と、
容器内に管を挿入し、管を通して容器内に空気を供給しながら、吸着材を洗浄液に浸漬させる工程と、
容器を洗浄水に投入する工程と、
容器内に管を挿入し、管を通して容器内に空気を供給しながら、吸着材を洗浄水に浸漬させる工程と
を含む、方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸着材の吸着性能を向上させ、吸着材を再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】吸着材を使用して空気中の汚染物質を除去する装置の一例を示した図。
【
図2】吸着材に付着した油分を除去する処理の第1の例を示した図。
【
図3】吸着材に付着した油分を除去する処理の流れを示したフローチャート。
【
図4】吸着材に付着した油分を除去する処理の第2の例を示した図。
【
図5】吸着材に付着した油分を除去する処理の第3の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の油分の除去方法は、吸着材に付着した油分を除去する方法である。吸着材は、細孔を有するものであればいかなる材料であってもよく、活性炭、シリカ、ゼオライト等を挙げることができる。吸着材は、天然ガス、ガソリン、軽油、重油、タール、ピッチ等の燃料を燃焼することにより排出される排ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)等の有害ガスを吸着除去する。この排ガス中には、有害ガスのほか、煤等の粒状物質、オイルミスト等の油分が大気を汚染する汚染物質として含まれる。
【0010】
排ガスは、発電用・工業用ボイラ、車両、船舶、航空機、燃焼炉等から排出される。吸着材は、排ガス中の有害ガスを吸着して除去するため、排ガスラインやトンネルの換気口等に設置される大気浄化システム等が備える吸着層内に充填される。
【0011】
大気浄化システムは、排ガスを吸い込む換気ファン、集塵装置、脱硝装置、サイレンサー、電源設備や制御機器等の補機類から構成される。集塵装置は、換気ファンにより吸い込まれた排ガス中の粒状物質を帯電させ、集塵極に付着させることにより、粒状物質を除去する。脱硝装置は、吸着材が充填された吸着層を有し、排ガス中のNOxを吸着材に吸着させて除去する。脱硝装置は、NOx中のNO2を重点的に除去するタイプであってもよいし、NOとNO2の両方を除去するタイプであってもよい。
【0012】
NOとNO2の両方を除去するタイプの脱硝装置は、NOを酸化し、NO2を生成する酸化装置と、NO2の吸着性能を高める加湿装置と、NO2を吸着する吸着材が充填された吸着層を有する吸着装置とから構成される。一方、NO2を重点的に除去するタイプの脱硝装置は、酸化装置を省略し、加湿装置と吸着装置とから構成される。
【0013】
脱硝装置から排出される排ガスは、汚染物質が環境基準値以下の濃度まで低下されたガスである。このため、脱硝装置から排出される排ガスは、大気中に放出することができるが、放出音が問題となるため、消音するためのサイレンサーが設けられる。
【0014】
図1を参照して、NO
2を重点的に除去するタイプの脱硝装置について説明する。脱硝装置10は、酸化装置を省略し、加湿装置11と、吸着装置12とから構成される。なお、脱硝装置10は、吸着装置12のみから構成されてもよい。脱硝装置10は、道路トンネルに連続した換気通路13内に設置される。
【0015】
吸着装置12は、複数段からなる吸着材が充填された吸着層20を含み、加湿装置11を通過した排ガスが各吸着層20へ送られ、排ガスが各吸着層20を通過する際、排ガス中のNO2が吸着材に吸着される。
【0016】
吸着材は、活性炭、ゼオライト、シリカ等の多孔質材であり、形状はいかなる形状であってもよいが、例えばペレット状に成形したものを用いることができる。
【0017】
各吸着層20は、各吸着容器21内に設けられ、各吸着容器21の一方の側方には、排ガスを受け入れる供給口22が設けられ、他方の側方には、排ガスを排出する排出口23が設けられる。供給口22は、通路24により吸着層20の底部に連続しており、排出口23は、通路25により吸着層20の上部に連続している。吸着層20は、網状の板の上に吸着材が所定の高さに充填された層である。このため、排ガスは、供給口22から下側の通路24を通して吸着層20の底から上部へと通過し、吸着材と接触する間に排ガス中のNO2を吸着除去する。吸着層20を通過した排ガスは、上側の通路25を通して排出口23から排出される。
【0018】
吸着装置12は、再生溶液槽26と、再生溶液ポンプ27とを含み、所定の吸着時間が経過するごとに、あるいは任意の時間に、再生溶液槽26に貯留される再生溶液を、再生溶液ポンプ27により各吸着容器21へ供給する。再生溶液は、吸着材が浸漬する高さまで供給され、吸着材は、再生溶液に一定時間浸漬させることにより再生される。
【0019】
再生溶液は、吸着したNO2を除去するため、例えばNO2と化学反応する亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)を含む溶液、例えばNa2SO3水溶液を用いることができる。Na2SO3の水溶液中の濃度は、例えば1質量%(以下、単に%で表すことにする。)とされる。
【0020】
吸着装置12は、全ての吸着容器21の供給口22にダンパーが設けられ、ダンパーを閉じ、排ガスの流れを停止した後に、再生溶液を供給し、吸着材の再生を行うことができる。なお、吸着材の再生は、全ての吸着容器21のダンパーを一斉に閉じ、全ての吸着材の再生を一斉に行うと、脱硝装置10の運転を停止する必要があり、引いては脱硝装置10を含む大気浄化システムの運転を停止しなければならない。脱硝装置10の運転停止を回避するため、1段ずつ吸着容器21のダンパーを閉じ、その段の吸着容器21へ再生溶液を供給し、その段の吸着材の再生が終了したら、次の段の吸着容器21のダンパーを閉じ、再生が終了した段の吸着容器21のダンパーを開くというように、吸着材の再生を、各段の吸着層20を1つずつ順に実施することができる。なお、1段ずつではなく、2段ずつ、あるいは3段ずつ実施してもよい。
【0021】
加湿装置11は、必要に応じて設置することができるが、設置しない場合、NO2が吸着材の細孔に物理吸着するのみとなる。一方、加湿装置11により排ガスを加湿すると、NO2の細孔への物理吸着に加え、細孔内に毛管凝縮した水に吸収される液相吸着が生じ、吸着性能を向上させることができる。
【0022】
加湿装置11は、排ガス中に水分を霧状に噴霧する噴霧ノズル、水を収容する水槽、水槽から噴霧ノズルへ水を供給するポンプを備えることができる。
【0023】
吸着材は、再生溶液を使用し、適宜再生することで、繰り返し使用することができる。このため、吸着材は、永遠に使用できるように思われる。しかしながら、排ガス中には、オイルミスト等の油分が含まれており、これが蓄積されていくと、吸着材の細孔や表層を覆い、吸着材の吸着性能を低下させる。
【0024】
油分は、再生溶液により除去することができないため、再生溶液による再生のみでは、吸着材の細孔や表層に蓄積していくのみとなる。したがって、油分を除去しなければ、長時間の使用で所望の吸着性能が得られなくなり、最終的には産業廃棄物として処分しなければならない。
【0025】
本発明では、吸着材に付着した油分を除去する方法を提供する。これにより、再生溶液による再生でも除去できない油分を除去し、吸着性能を向上させ、吸着材として再利用することが可能になる。また、吸着材として再利用することができれば、産業廃棄物として処分される吸着材の量を少なくすることができる。
【0026】
図2を参照して、吸着材に付着した油分を除去する第1の方法について説明する。本方法では、例えば1段の吸着容器21内に充填され、所定の吸着時間が経過した使用済みの吸着材を、透水性を有する容器に収容して回収し、容器ごと洗浄液に浸漬させる等して、油分を除去する。
【0027】
透水性を有する容器としては、鉄や銅、改良剤等の粉状の材料を運ぶために使用され、土嚢としても使用されるフレキシブルコンテナバック(以下、フレコンと略す。)を用いることができる。フレコンは、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の化学繊維で織られた円筒形もしくは方形のバッグである。フレコンは、糸状の化学繊維を布のように編み込んで作られるため、細かい網目を有する。このため、フレコンは、水や水溶液が透過することが可能な透水性を有している。なお、透水性を有する容器は、ステンレス鋼等の金属製の網籠等であってもよい。金属製の網籠は、フレコンより構造が頑丈で、耐久性が高いメリットを有するが、重量が重く、コストが高いというデメリットを有する。以下、透水性を有する容器として、フレコンを用いるものとして説明するが、透水性を有する容器であれば、フレコンや網籠以外の容器であってもよい。
【0028】
フレコンは、吸着材等の材料を投入する投入口、吊りベルトを備える。吊りベルトは、クレーン、ユニック車、フォークリフト等でフレコンを吊り上げるために使用される。なお、フレコンには、排出口を備えるものもある。
【0029】
吸着材に付着した油分を除去する処理を実施するために、洗浄液を収容する容器30と、フレコン31内に挿入する管32と、管32を通してフレコン31内に空気を供給する圧縮機33と、フレコン31を吊り上げるために引っ掛けられるフック34を有するクレーン等の吊り上げ装置とが使用される。空気を供給する手段は、圧縮機33に限定されるものではなく、ブロワを用いてもよい。
【0030】
管32は、単なる円管等であってもよいが、フレコン31内に挿入される先端部の管壁に複数の孔を有する有孔管とすることができる。有孔管は、管の長手方向へ向けて先端の開口から空気を噴射させるとともに、管壁に設けられた複数の孔から、当該長手方向に対して垂直な方向に空気を噴射させることが可能である。したがって、フレコン31の投入口から底へ向けてフレコン31内に管32を挿入した場合、容器30の底面だけではなく、容器30の内側面へ向けて空気を噴射させることができる。
【0031】
容器30は、フレコン31が浸漬可能な容積を有し、洗浄液や洗浄水が収容される。容器30は、フレコン31が投入可能なサイズであれば、いかなる形状であってもよく、その材料としては、洗浄液による分解を極力少なくするために、接触する表面を不活性化処理したアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属材料や、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂等のプラスチック材料を用いることができる。
【0032】
容器30には、吸着材を洗浄するために、最初に洗浄液35が溜められる。洗浄液35は、吸着材に付着した油分を酸化分解させる過酸化水素(H2O2)を含む。洗浄液35は、洗浄水にH2O2を添加した水溶液とされ、H2O2の濃度は、1%~5%とすることができ、1%が好ましい。
【0033】
フレコン31は、径や幅が広いフレコンが好ましい。これは、吸着材を水平方向に広げて浸漬させることができ、洗浄液35との接触面を増やすことができるからである。
【0034】
フック34を有する吊り上げ装置のフック34に、フレコン31の吊りベルトを引っ掛け、洗浄液35を入れた容器30内に、吸着材を収容したフレコン31ごと投入する。容器30内にフレコン31を投入した後、フレコン31の開放された上部の方向から管32の一端をフレコン31内に挿入する。これにより、フレコン31内の吸着材間に管32が差し込まれた状態となる。管32の他端は、圧縮機33にホース等を使用して接続されている。
【0035】
圧縮機33を起動し、管32内へ圧縮空気を供給すると、洗浄液35内に大量の気泡が発生し、気泡により吸着材に付着した油分が剥離する。また、気泡は、過酸化水素による酸化分解に必要とされる酸素を供給し、洗浄液35中の酸素濃度を高める。さらに、気泡は、フレコン31内に収容された吸着材を上下左右に動かし、吸着材を撹拌する効果を有する。
【0036】
気泡の粒径は、ミリバブル、マイクロバブル、ナノバブルの順に小さくなり、粒径が小さいほど、吸着材から油分の剥離が容易になるとともに、洗浄液中の溶存酸素の濃度が高くなる。
【0037】
圧縮機33から供給する空気の圧力は、洗浄液35中に空気を供給することができればいかなる圧力であってもよいが、例えば0.3MPa~1MPaとすることができる。
【0038】
洗浄液35は、洗浄水にH2O2を添加しただけの水溶液であってもよいが、洗浄水に塩酸等の酸性溶液を添加し、pHを3~5に調整し、pHを調整した洗浄水にH2O2を添加した水溶液を用いてもよい。pHを3~5とし、酸性側に調整することで、H2O2の酸化分解を促進させることができる。
【0039】
吸着材を収容したフレコン31内に管32を挿入し、フレコン31内に空気を供給しながら、吸着材を洗浄液35に所定時間浸漬させる。洗浄液35に浸漬させる時間は、15分~30分とすることができる。
【0040】
フレコン31内への空気の供給によりエアレーションを行うことで、吸着材に付着した油分が剥離し、剥離した油分は、フレコン31の上部開口を通り抜け、容器30の洗浄液35の液面に浮く。このため、所定時間の浸漬後、容器30へ給水設備から洗浄水を供給し、洗浄液35をオーバーフローさせることにより、液面に浮いた油分を除去することができる。
【0041】
液面に浮いた油分を除去した後、洗浄水を供給し続け、洗浄水ですすぎ洗いをしながら、容器30の底に設けられた排水口36を開き、洗浄液35を排水する。
【0042】
洗浄液35を排水した後、排水口36を閉め、容器30に清浄な洗浄水37を溜める。その後、管32から空気を供給し、エアレーションを行いながら、吸着材のすすぎ洗いを行う。このすすぎ洗いも、洗浄水に15分~30分浸漬させることにより行う。
【0043】
ちなみに、吸着材にH2O2が残存していると、吸着材を再利用した場合に、排ガス中のNO2をNOに還元し、NOが吸着材に吸着されないまま大気中に放出されることになる。しかしながら、上記の洗浄水37によるすすぎ洗いを行うことで、再付着する油分や残存するH2O2を取り除くことができる。
【0044】
洗浄液35による洗浄が終了し、洗浄液35を排水する際、圧縮機33の運転を停止し、フレコン31内への空気の供給を停止してもよいし、圧縮機33の運転を継続してもよい。
【0045】
すすぎ洗いを行う洗浄水37も、塩酸等の酸性溶液によりpHを3~5に調整し、酸性側に調整した洗浄水により、すすぎ洗いを行ってもよい。なお、酸性側に調整した洗浄水により、すすぎ洗いを行うことで、吸着材の細孔等に残存するH2O2による酸化分解を促進させ、残存する油分を除去することができる。また、エアレーションを行いながら、洗浄水に浸漬させることで、洗浄水37中の溶存酸素の濃度を高め、吸着材を撹拌する。これにより、吸着材から残存する油分を剥離させ、酸化分解を促進させることができる。
【0046】
フレコン31の洗浄水37への15分~30分浸漬させた後、容器30の底に設けられた排水口36を開き、排水する。排水口36には、弁が設けられ、弁を開閉することにより、排水口36を開き、または排水口36を閉じることができる。そして、容器30からフレコン31を吊り上げ、吸着材に付着した油分を除去する処理を終了する。
【0047】
洗浄液35での吸着材の洗浄を1回だけではなく、2回以上行ってもよい。すなわち、過酸化水素を添加した洗浄液35でエアレーションを行いながら、15分~30分浸漬させることを1回の洗浄工程とし、洗浄液を排水した後、再び洗浄液35で満たし、エアレーションを行いながら、15分~30分浸漬させることで、2回目の洗浄工程を行うことができる。また、洗浄水37でのすすぎ洗いも、1回だけではなく、2回以上行ってもよい。
【0048】
上記の処理をまとめると、
図3に示す流れになる。この処理では、pHを調整した洗浄液35および洗浄水37を用いるものとして説明する。
【0049】
ステップ100から処理を開始し、ステップ101では、pH3~5に調整した洗浄水にH2O2を添加して作成した洗浄液35を溜めた容器30に、使用済み吸着材を収容したフレコン31ごと投入する。
【0050】
ステップ102では、フレコン31の開口した上部方向から見て、フレコン31の中心付近に管32を挿入し、管32を通して圧縮機33から空気を供給し、エアレーションを行いながら、吸着材を洗浄液35に15分~30分浸漬させる。
【0051】
ステップ103では、洗浄液35への15分~30分の浸漬後、容器30内にフレコン31を入れたままの状態で、給水設備から洗浄水37を供給してすすぎ洗いを行いながら、容器30の底の排水口36を開き、洗浄液35を排水する。
【0052】
ステップ104では、洗浄水37の排水後、容器30の排水口36を閉め、給水設備から洗浄水37を供給し、容器30に溜め、pHを3~5に調整し、エアレーションを行いながら、吸着材を洗浄水37に15分~30分浸漬させる。これにより、吸着材をすすぎ洗いする。
【0053】
ステップ105では、洗浄水37への15分~30分の浸漬後、容器30の排水口36を開き、洗浄水37を排水する。排水後、フレコン31を吊り上げて水切りし、フレコン31内から洗浄後の吸着材を回収し、ステップ106で、この処理を終了する。
【0054】
処理後の吸着材は、
図1に示した脱硝装置10の回収した段の吸着容器21内に戻され、再びNO
2を吸着除去する吸着材として再利用される。
【0055】
管32は、フレコン31内に挿入し、固定した状態であってもよいが、作業員がフレコン31内の吸着材をかき混ぜるように動かし、あるいは揺れ動かし、フレコン31内での空気を噴射させる位置を変えてもよい。空気を噴射させる位置を変えることで、フレコン31内の各所での酸素濃度を高め、洗浄液35を撹拌し、より効果的に油分の酸化分解を促進させることができる。なお、空気を噴射させる位置の変更は、油分の酸化分解時に加え、洗浄水37を使用した洗浄時にも実施することができる。
【0056】
また、管32を動かすほか、管32の位置は固定した状態で、クレーン等の揚重機でフレコン31自体を上下等に動かし、フレコン31内の空気を噴射させる位置を変えてもよい。なお、管32の移動とフレコン31自体の移動の両方を実施してもよい。管32の位置を固定した状態で、フレコン31自体を動かす場合、フレコン31を動かせる範囲が非常に限定されるため、フレコン31と管32の両方を動かすことが望ましい。
【0057】
図2に示した例では、容器30の底に排水口36を備える場合の処理について説明した。排水口36から洗浄液35や洗浄水37を排水することで、フレコン31を移し替える必要がないので、作業性が良く、作業をスムーズに行うことができる。なお、作業性は低下するが、2つの容器30を用い、1つの容器に洗浄液35を入れ、もう1つの容器に洗浄水37を入れ、最初に、洗浄液35を入れた容器に吸着材を収容したフレコン31を投入し、洗浄後、フレコン31を吊り上げ、すすぎ洗いのために、洗浄水37を入れた容器に投入してもよい。
【0058】
洗浄液35を排水する際、液面に浮遊する油分は、オーバーフローにより除去することができるが、その他の方法を使用して除去してもよい。
【0059】
図4を参照して、吸着材に付着した油分を除去する第2の方法について説明する。フレコン31には、排出口38を備えたフレコンがある。排出口38を備えたフレコン31を使用し、排出口38を開閉ロープ等で閉じた状態とし、フレコン31内に使用済みの吸着材を収容し、洗浄液35で満たした容器30内にフレコン31ごと投入する。なお、フレコン31は、排出口38を備えたものでなくてもよい。そして、フレコン31内に管32を挿入し、圧縮機33を起動して、エアレーションを行いながら、所定時間、吸着材を洗浄液35に浸漬させ、洗浄液35で洗浄する。ここまでは、
図2に示した例と同様である。
【0060】
上記の所定時間が経過し、容器30の排水口36から洗浄液35を排水する際、開閉ロープを緩める等してフレコン31の排出口38を少しずつ開き、吸着材39を含めて洗浄液35を排水する。排出口38を備えていないフレコン31については、フレコン31の底をカッター等で切断し、その切断箇所から排出してもよい。フレコン31内には、底側に吸着材39が存在するため、洗浄液35の排水は、吸着材39を押し出しながらの排水となる。このため、吸着材39が全て排水口36から排出されても、容器30内には洗浄液35が残っており、残った洗浄液35の液面に、剥離した油分が浮遊して残存する。したがって、吸着材39が全て排出されたところで排水口36を閉め、吸着材39と浮遊する油分とを分離することができる。
【0061】
排水口36から排水された洗浄液35と吸着材39は、透水性を有する別のフレコン40で受ける。これにより、洗浄液35は透過して別のフレコン40の外部へ流れ出るが、吸着材39は別のフレコン40内に残り、洗浄後の吸着材39のみを回収することができる。
【0062】
それ以降の処理は、
図2に示した処理と同様で、容器30を洗浄水37で洗浄し、容器30を洗浄水37で満たし、別のフレコン40を投入し、別のフレコン40内に管32を挿入し、圧縮機33を起動させる。これにより、エアレーションを行いながら、所定時間、吸着材39を洗浄水37に浸漬させ、洗浄水37ですすぎ洗いを行う。
【0063】
この場合も、洗浄液35や洗浄水37について、酸性溶液を添加し、pHを3~5に調整したものを用いてもよい。また、容器30を2つ使用してもよく、洗浄回数やすすぎ洗いの回数も1回に限定されるものではなく、2回以上であってもよい。
【0064】
図5を参照して、吸着材に付着した油分を除去する第3の方法について説明する。フレコン31内に使用済みの吸着材を収容し、洗浄液35で満たした容器30内にフレコン31ごと投入する。そして、フレコン31内に管32と管50とを挿入し、圧縮機33と溶液ポンプ51とを起動して、エアレーションに加えて、洗浄液35の循環を行いながら、所定時間、吸着材を洗浄液35に浸漬させ、洗浄液35で洗浄する。洗浄液35に浸漬させる時間は、15分~30分とすることができる。
【0065】
溶液ポンプ51は、フレコン31と容器30との間に配置されたホース等を介して洗浄液35を吸い込み、管50を通してフレコン31内へ吐出して、洗浄液35を循環する。すなわち、フレコン31の外部の洗浄液35は、溶液ポンプ51により吸引され、管50を通してフレコン31内に吐出される。吐出された洗浄液35は、フレコン31を透過してフレコン31の外部へ移動する。この流れが繰り返されることにより、洗浄液35が循環される。管50は、管32と同様、有孔管とすることができ、溶液ポンプ51から供給された洗浄液35を、容器30の底面および側面へ向けて吐出する。
【0066】
エアレーションのみでは、吸着材の全体に接触させるように洗浄液35を行き渡らせる効果が低い。しかしながら、管50および溶液ポンプ51の使用により洗浄液35を循環することで、吸着材と洗浄液35の接触を促進させることができ、吸着材の再生効率を高めることができる。
【0067】
それ以降の処理は、
図2に示した処理と同様で、給水設備から洗浄水を供給し、洗浄水ですすぎ洗いをしながら、容器30の底に設けられた排水口36を開き、洗浄液35を排水する。
【0068】
洗浄液35を排水した後、排水口36を閉め、容器30に清浄な洗浄水37を溜める。その後、管32から空気を供給し、エアレーションを行いながら、吸着材のすすぎ洗いを行う。このすすぎ洗いも、洗浄水に15分~30分浸漬させることにより行う。
【0069】
この場合も、洗浄液35や洗浄水37について、酸性溶液を添加し、pHを3~5に調整したものを用いてもよい。また、容器30を2つ使用してもよく、洗浄回数やすすぎ洗いの回数も1回に限定されるものではなく、2回以上であってもよい。さらに、洗浄液35の液面に浮遊する油分をオーバーフローにより除去してもよい。また、洗浄液35で洗浄後、
図4に示した例のように、吸着材を別のフレコン40で受け、別のフレコン40を洗浄水37に浸漬させ、すすぎ洗いを行ってもよい。
【0070】
以上のように、予め吸着材を容器に入れ、容器のまま洗浄作業を行うため、吸着材と洗浄液35および洗浄水37の固液分離を容易にし、水切りを容易に行うことができ、吸着材の再生処理の効率化と処理コストの低減が可能となる。また、エアレーションによりフレコン31内の撹拌効率を向上させることができる。さらに、洗浄液35の循環によりフレコン31内の吸着材と洗浄液35との接触を促進させることができる。
【0071】
これまで本発明の方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10…脱硝装置
11…加湿装置
12…吸着装置
13…換気通路
20…吸着層
21…吸着容器
22…供給口
23…排出口
24、25…通路
26…再生溶液槽
27…再生溶液ポンプ
30…容器
31…フレコン
32…管
33…圧縮機
34…フック
35…洗浄液
36…排出口
37…洗浄水
38…排出口
39…吸着材
40…別のフレコン
50…管
51…溶液ポンプ