(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099925
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ガラス物品、及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60S 1/02 20060101AFI20240719BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240719BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240719BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240719BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20240719BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60S1/02 400A
H05K1/18 F
C09J7/38
C09J201/00
B60J1/20 C
H05B3/20 327A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003564
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】523220503
【氏名又は名称】セントラル硝子プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 将
(72)【発明者】
【氏名】高信 尚史
【テーマコード(参考)】
3D225
3K034
4J004
4J040
5E336
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AB01
3D225AC11
3D225AD02
3K034AA02
3K034AA12
3K034AA15
3K034AA24
3K034BB05
3K034BB08
3K034BB13
3K034BB14
3K034BC12
3K034CA02
3K034CA17
3K034CA28
3K034FA33
3K034GA10
3K034JA01
3K034JA06
3K034JA10
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004EA05
4J004FA05
4J040DF021
4J040EF001
4J040EK031
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4J040MA05
4J040NA19
5E336AA04
5E336BB12
5E336BB15
5E336CC59
5E336DD02
5E336EE01
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】電線の引っ張りによる樹脂フィルムの剥離を抑制する。
【解決手段】ガラス基板と、前記ガラス基板に粘着剤層によって貼付され、電極と電気回路が搭載された樹脂フィルムと、前記電極と電気的に接続する通電端子が設けられる導線と、前記導線を前記ガラス基板に保持する固定部材と、を備えるガラス物品である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板に粘着剤層によって貼付され、電極と電気回路が搭載された樹脂フィルムと、
前記電極と電気的に接続する通電端子が設けられる導線と、
前記導線を前記ガラス基板に保持する固定部材と、を備えるガラス物品。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス物品であって、
前記粘着剤層と前記樹脂フィルムが透明であり、
前記ガラス基板、前記粘着剤層及び前記樹脂フィルムが重複した領域における可視光透過率が70%以上であるガラス物品。
【請求項3】
請求項2に記載のガラス物品であって、
前記粘着剤層の前記ガラス基板に対する粘着強度が2N/20mm以上50N/20mm以下であるガラス物品。
【請求項4】
請求項3に記載のガラス物品であって、
20℃の温度環境下で、前記導線を前記固定部材と前記ガラス基板の接触面と垂直方向に80Nの荷重で引っ張っても、前記固定部材及び前記樹脂フィルムが前記ガラス基板から剥離しない強度で、前記固定部材が前記ガラス基板に固定されることを特徴とするガラス物品。
【請求項5】
請求項1に記載のガラス物品であって、
前記固定部材は、
前記導線を保持する保持部と、
前記固定部材を前記ガラス基板に固定する固定部と、を有するガラス物品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記固定部材は、接着剤又は両面テープで構成されるガラス物品。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記固定部材は、はんだで構成されるガラス物品。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記導線の他端にはカプラーが設けられるガラス物品。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記通電端子と前記固定部材の間の導線が編組線であり、
前記通電端子と前記固定部材は前記編組線に溶接で取り付けられるガラス物品。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記通電端子と前記固定部材の間の導線の長さが、前記導線を前記ガラス基板に取り付けた状態における前記通電端子と前記固定部材の距離の1.0から1.5倍であるガラス物品。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記通電端子は、前記電極にはんだで接続されるガラス物品。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記電極は、前記電気回路の始点と終点の各々に設けられるガラス物品。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記粘着剤層がアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤のいずれかで構成されるガラス物品。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品であって、
前記ガラス基板には、開口部を有する不透明層が設けられており、
前記開口部の少なくとも一部に前記樹脂フィルムが設けられるガラス物品。
【請求項15】
請求項14に記載のガラス物品であって、
前記固定部材は、前記不透明層の上に設けられるガラス物品。
【請求項16】
請求項14に記載のガラス物品であって、
電子機器が取り付け可能なブラケットが、接着剤によって前記不透明層の上に設けられるガラス物品。
【請求項17】
請求項16に記載のガラス物品であって、
前記ブラケットには、前記導線の他端に設けられるカプラーが取り付けられるガラス物品。
【請求項18】
ガラス物品の製造方法であって、
電極と電気回路が形成される樹脂フィルムを、粘着剤層を介して、ガラス基板に貼付する工程と、
導線が接続された通電端子を、前記電極に電気的に接続する工程と、
前記導線を保持する固定部材を前記ガラス基板に固定する工程と、を含むガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス物品に関し、特に、フィルム上の電子回路に接続されるケーブルアセンブリが取り付けられたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の窓ガラスに設けられる電気回路には端子を介して電線が取り付けられ、この電線を通じて給電され、信号が伝送される。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2019-84953号公報)には、第1の陰極の箔状接続部材に電気的に接続された導線を、合わせガラスの車内側面に固定する固定手段(接着剤、両面テープ、平面に貼り付け可能なケーブルクリップ等)が取り付けられた合わせガラスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の窓ガラスに設けられる電気回路は、ガラス板に導電性ペーストを焼成して形成されるものが一般的であるが、電気回路が形成された樹脂フィルムをガラス板に貼り付けるものもある。樹脂フィルムをガラス板に固定する際には粘着剤が用いられることが多い。粘着剤は、焼成された導電性ペーストよりガラス板への接着強度が低く、接続される電線に印加される力によって樹脂フィルムが剥離する可能性がある。
【0006】
本開示は、ガラス物品に取り付けられる電線を強固に固定し、電線に接続する樹脂フィルムのガラス基板からの剥離を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本開示(1)は、ガラス基板と、前記ガラス基板に粘着剤層によって貼付され、電極と電気回路が搭載された樹脂フィルムと、前記電極と電気的に接続する通電端子が設けられる導線と、前記導線を前記ガラス基板に保持する固定部材と、を備えるガラス物品である。
【0008】
また、本開示(2)は、本開示(1)に記載のガラス物品であって、前記粘着剤層と前記樹脂フィルムが透明であり、前記ガラス基材、前記粘着剤層及び前記樹脂フィルムが重複した領域における可視光透過率が70%以上であるとよい。
【0009】
また、本開示(3)は、本開示(1)から(2)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記粘着剤層の前記ガラス基板に対する粘着強度が2N/20mm以上50N/20mm以下であるとよい。
【0010】
また、本開示(4)は、本開示(1)から(3)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、20℃の温度環境下で、前記導線を前記固定部材と前記ガラス基板の接触面と垂直方向に80Nの荷重で引っ張っても、前記固定部材及び前記樹脂フィルムが前記ガラス基板から剥離しない強度で、前記固定部材が前記ガラス基板に接続固定されてもよい。
【0011】
また、本開示(5)は、本開示(1)から(4)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記固定部材は、前記導線を保持する保持部と、前記固定部材を前記ガラス基板に固定する固定部と、を有してもよい。
【0012】
また、本開示(6)は、本開示(1)から(5)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記固定部材は、接着剤又は両面テープで構成されてもよい。
【0013】
また、本開示(7)は、本開示(1)から(6)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記固定部材は、はんだで構成されてもよい。
【0014】
また、本開示(8)は、本開示(1)から(7)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記導線の他端にはカプラーが設けられてもよい。
【0015】
また、本開示(9)は、本開示(1)から(8)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記通電端子と前記固定部材の間の導線が編組線であり、前記通電端子と前記固定部材は前記編組線に溶接で取り付けられてもよい。
【0016】
また、本開示(10)は、本開示(1)から(9)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記通電端子と前記固定部材の間の導線の長さが、前記導線をガラス基板に取り付けた状態における前記通電端子と前記固定部材の距離の1.0~1.5倍であるとよい。
【0017】
また、本開示(11)は、本開示(1)から(10)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記通電端子は、前記電極にはんだで接続されてもよい。
【0018】
また、本開示(12)は、本開示(1)から(11)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記電極は、前記電気回路の始点と終点の各々に設けられてもよい。
【0019】
また、本開示(13)は、本開示(1)から(12)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記粘着剤層がアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤のいずれかで構成されてもよい。
【0020】
また、本開示(14)は、本開示(1)から(13)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記ガラス基板は、開口部を有する不透明層が設けられており、前記開口部の少なくとも一部に前記樹脂フィルムが設けられてもよい。
【0021】
また、本開示(15)は、本開示(1)から(14)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、前記固定部材は、前記不透明層の上に取り付けられてもよい。
【0022】
また、本開示(16)は、本開示(1)から(15)のいずれか一つに記載のガラス物品であって、電子機器が取り付け可能なブラケットが、接着剤によって前記不透明層の上に設けられてもよい。
【0023】
また、本開示(17)は、本開示(16)に記載のガラス物品であって、前記ブラケットには、前記導線の他端に設けられるカプラーが取り付けられ(例えば接着され)てもよい。
【0024】
また、本開示(18)は、ガラス物品の製造方法であって、電極と電気回路が搭載された樹脂フィルムを、粘着剤層を介して、ガラス基板に貼付する工程と、導線が接続された通電端子を、前記電極に電気的に接続する工程と、前記導線を保持する固定部材を前記ガラス基板に固定する工程と、を含むガラス物品の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、電線の引っ張りによる樹脂フィルムのガラス基板からの剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1のガラス物品の全体を示す図である。
【
図4】実施例1のケーブルアセンブリを示す図である。
【
図5】実施例1の変形例のガラス物品のAA断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0028】
<実施例1>
図1は、実施例1のガラス物品の全体を車内側から見た図である。
図2は、
図1に示すガラス物品の上側中央部を車内側から見た拡大図であり、
図3は、実施例1のガラス物品のAA断面図である。
【0029】
実施例1のガラス物品は、自動車用の前面窓ガラスであり、ガラス基板10で構成される。ガラス基板10は、通常は内層に合成樹脂の中間膜を挟んだ合わせガラスである。中間膜の材質としては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)などが用いられる。ガラス基板10の周縁部には、不透明層11が設けられる。
【0030】
不透明層11は、低融点ガラスの粉末と顔料とをペースト状にした絶縁性のセラミックペーストを、ガラス基板10の上に印刷した後、焼き付けることによって形成される有色(通常は黒色)の層である。不透明層11は、ガラス基板10の上側中央部において下側に広がっており、この部分には不透明層11がなく、ガラス基板10を透過して映像などの車外の情報を取得可能な開口部12を有する。
【0031】
開口部12には、ガラス基板10を通して車両の外部を監視する電子機器が取り付けられる。例えば、電子機器は、車両の前方の映像を撮影する撮像素子(CCDカメラ、CMOSカメラなど)である。電子機器は、前方監視レーダ、近赤外線レーザ送受信機、超音波送受信機、ミリ波送受信機でもよい。開口部12は、電子機器の検知範囲が長方形である場合、一般的には、ガラス基板10が傾斜して装着されるため、下側が広い台形となる。
【0032】
開口部12の周囲には、電子機器を取り付け可能なブラケット20が接着剤21によってガラス基板10の不透明層11の上に取り付けられる。接着剤21は、図示したように開口部12の全周を囲っていなくても、開口部12の全周を囲うように設けられてもよい。
【0033】
開口部12に樹脂フィルム1を貼り付ける場合、開口部12の透明性を損なわないために、透明の樹脂フィルム1が透明の粘着剤層1Aによって貼付されることが好ましい。樹脂フィルム1は、開口部12の全体を覆ってもよいし、一部だけを覆ってもよい。樹脂フィルム1及び粘着剤層1Aは、全体が透明でも、一部(電子機器のセンサが車両の外部を監視する領域)が透明でもよい。ガラス基板10及び粘着剤層1Aと樹脂フィルム1の重複領域における可視光透過率が70%以上であることが好ましい。なお、本開示における可視光透過率は、以下の手順で算出される。
【0034】
(1)不透明層11などがない、人の目で透明と認識できる位置を選定する。
(2)その位置について、1平方cmの測定領域において、JIS R3212:2021に規定された方法で測定する。
JIS R 3212:2021では、可視光の波長域を380nm~780nmとしている。
【0035】
粘着剤層1Aは特に限定されないが、いわゆる、OCAと呼ばれる光学透明粘着剤と呼ばれるものを使用することが好ましい。粘着剤層1Aは、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤のいずれかで構成してもよく、特にアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層1Aのガラス基板10に対する粘着強度が2~50N/20mm、好ましくは10~30N/20mmであるとよい。粘着強度は、JIS Z0237:2022に規定する23±1℃での180度引きはがし粘着力を意味する。ただし、粘着力を測定する試験板としてガラス基板10と同じガラス板を利用する。
【0036】
本明細書において、接着剤(adhesive)は対象物を接着した状態で固体である材料であり、粘着剤(pressure-sensitive adhesive)は、対象物を接着した状態で液体(濡れた状態のまま)である材料である。
【0037】
樹脂フィルム1上には、電気回路2と電極3が形成される。例えば、電気回路2の始点と終点の各々に電極3が設けられ、電気回路2は二つの電極3間を接続する抵抗線であり、電極3の間に印加された電圧によって電気回路2に生じるジュール熱によって、開口部12に付着した水滴を除去し、曇りを除去し、開口部12を通した視界を確保する。電気回路2は、メアンダ状に折り返され、開口部12のできるだけ広い範囲を加熱するように設けられている。実施例1では、電極3がブラケット20の外側に設けられており、樹脂フィルム1は、ブラケット20からはみ出す形状となっているが、電極3がブラケット20の内側に設けられ、樹脂フィルム1もブラケット20からはみ出さない形状となってもよい。
【0038】
樹脂フィルム1の材質としてはアクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
【0039】
電気回路2としては、
図2で示すような、幅0.1mm~1mm程度の、銀や銅、アルミニウムなどの導線性材料の線以外に、幅1mm~50mm程度、好ましくは幅2mm~10mm程度の帯状の透明導電材料を用いることができる。幅広の帯状の透明導電材料を用いることで、均一に発熱をすることができる。
【0040】
透明導電材料としては、格子状に組み合わされた複数の細い金属導体のメッシュや、透明酸化物導電膜、膜厚50nm以下の銀や銅、アルミニウムなどの金属薄膜を使用できる。金属導体は銀や銅、アルミニウムなどの導電性材料を使用できる。格子状を形成する金属導体の幅と厚さが0.0001mm~0.1mmであることが好ましく、0.005mm~0.05mmであることがより好ましい。また、格子のピッチは0.005mm~5mmであることが好ましく、0.25mm~2.5mmであることがより好ましい。また、導体幅とピッチの関係が、導体幅:ピッチ=1:10~1:100であることが好ましい。
【0041】
透明酸化物導電膜の材質は、可視光が透過可能で導電性を有せば特に限定しないが、例えば、ZnSnO(SnドープZnO)、ITO(SnドープIn2O3)、FTO(FドープSnO2)、ATO(SbドープSnO2)、AZO(AlドープZnO)、GZO(GaドープZnO)などが挙げられる。
【0042】
電極3としては、樹脂フィルム1の上に形成された、銀や銅、アルミニウムなどの導線性材料の膜を用いることができる。
【0043】
電極3には、ケーブルアセンブリが接続される。ケーブルアセンブリは、
図4に示すように、電極3に接続される金属製の通電端子5と、車載電子装置や他のケーブルに接続されるカプラー8と、通電端子5が一端にカプラー8が他端に取り付けられる導線6と、導線6を保持する固定部材7で構成される。
【0044】
通電端子5を構成する金属としては、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、クロム、コバルト、又はクロムが挙げられ、2つ以上の元素が含まれた合金でもよい。例えば、銅、黄銅(真鍮)、鉄クロム合金、鉄ニッケル合金、鉄ニッケルコバルト合金などが挙げられる。
【0045】
電極3と通電端子5は、はんだで接続されてもよい。カプラー8は、ブラケット20に接着で取り付けられてもよく、ブラケット20に取り付けられる電子機器のコネクタに接続されてもよい。
【0046】
固定部材7は、通電端子5とカプラー8との間で導線6を保持し、ガラス基板10に固定される。固定部材7は、通電端子5とは異なる場所でおいて、粘着剤層1Aよりも強固に導線6をガラス基板10に固定している。なお、導線6の引っ張り力を樹脂フィルム1に伝えないように、導線6は固定部材7において動かないように固定されている。また、通電端子5と固定部材7は、合わせガラスの車内側の面に取り付けられるとよい。固定部材7は、導線6を挟み込む樹脂製又は金属製のクリップ部(保持部材)7Aと、固定部材7をガラス基板10の不透明層11上に取り付ける接着剤や両面テープで構成される固定部7Bとで構成した固定端子でもよい。なお、固定部7Bは、不透明層11上に取り付けられるため、不透明でもよい。固定部材7は、導線6の通電端子5から1~10cm、好ましくは、1.5~3cmの位置に設けるとよい。また、
図5に示すように、固定部材7を接着剤又は両面テープで構成される固定部7Bだけで構成してもよい。また、固定部7Bははんだであり、ハンダ付けで導線6をガラス基板10に取り付けてもよい。この場合、固定部7Bに対向する位置のガラス基板10に導電セラミックを焼成して形成した接続領域を設ける。固定部材7のガラス基板10に固定される部位の面積が10~300平方mmであるとよく、30~100平方mmでもよい。
【0047】
固定部7Bが接着剤である場合、例えば、接着剤が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、可視光硬化性樹脂又は湿気硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。UV硬化性樹脂又は可視光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。湿気硬化性樹脂としてはシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0048】
固定部7Bが両面テープである場合、基材と基材の両面に設けられた粘着樹脂層からなることが好ましい。基材はPET(ポリエチレンテレフタレート)、アクリル樹脂等が好ましい。粘着樹脂層を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ゴムなどが挙げられ、特に透明で粘着力が高いアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0049】
固定部7Bがはんだである場合、使用できるはんだの種類に特に限定はなく、有鉛はんだ、インジウム含有無鉛はんだ、Sn-Ag系無鉛はんだ、Sn-Ag-Cu系無鉛はんだなどを使用できる。
【0050】
インジウム含有無鉛はんだの例として、インジウム:5~95質量%、スズ:5~95質量%、銀:0~10質量%、アンチモン:0~10質量%、銅:0~10質量%、亜鉛:0~10質量%、ニッケル:0~10質量%の合金からなるものが挙げられる。また、より好ましい例としてインジウム:65~95質量%、スズ:5~35質量%、銀:0~10質量%、アンチモン:0~3質量%、銅:0~5質量%、亜鉛:0~5質量%、ニッケル:0~5質量%の合金からなるものが挙げられる。インジウム含有無鉛ハンダとしては、融点が120℃~140℃、さらに好ましくは125℃~135℃のものが使用されてもよい。
【0051】
Sn-Ag系無鉛はんだ又はSn-Ag-Cu系無鉛はんだ中のスズの含有量は、無鉛はんだの全質量に対して、95質量%以上であることが好ましく、95~99質量%であることがより好ましく、96~98質量%であることが特に好ましい。Sn-Ag系無鉛はんだ又はSn-Ag-Cu系無鉛はんだ中の銀の含有量は、無鉛はんだの全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、1.5~5質量%であることがより好ましく、2~4質量%であることが特に好ましい。Sn-Ag-Cu系無鉛はんだ中の銅の含有量は、無鉛はんだの全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましく、0.2~1質量%であることが特に好ましい。
【0052】
無鉛はんだは、上記金属以外の金属を含んでもよい。無鉛はんだが含み得る他の金属として、例えば、銀、銅、ビスマス、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモン、ニッケル、鉄などがある。
【0053】
20℃の温度環境下で、導線6を固定部材7とガラス基板10の接触面と垂直方向に80Nの荷重で引っ張っても、固定部材7がガラス基板10から剥離しない強度で、固定部材7をガラス基板10に固定するとよい。また、105℃の温度環境下で、二つの通電端子5の間に14Vの電圧を印加しながら、導線6を固定部材7とガラス基板10の接触面と垂直方向に10Nの荷重で96時間引っ張っても、固定部材7がガラス基板10から剥離しない強度で、固定部材7をガラス基板10に固定するとよい。なお、固定部材7がガラス基板10から剥離しなければ、導線6の引っ張り力が樹脂フィルム1に加わらないので、樹脂フィルム1がガラス基板10から剥離することもない。
【0054】
導線6のうち、通電端子5と固定部材7の間の導線が細い導線を編んだ編組線でもよい。通電端子5及び固定部材7は、編組線に溶接で取り付けられるとよい。
【0055】
編組線は、複数の細い金属線を編んで形成される導線である。編組線を構成する金属線の太さ、いわゆる素線径が0.05mm以上0.2mm以下、好ましくは0.1mm以上0.15mm以下であり、使用する金属線の本数、いわゆる素線数が40本以上200本以下、好ましくは50本以上150本以下であると、編組線の屈曲耐性が向上してよい。金属線は、銅、アルミニウム、これらを含む合金の線を使用できる。編組線の断面積は、例えば、0.3平方mm以上2平方mm以下、好ましくは0.5平方mm以上1.25平方mm以下とすることができる。編組線は、厚さより幅が大きい平型であるとよく、編組線の幅が1mm以上5mm以下、好ましくは1.5mm以上4mm以下であるとよい。また、編組線は、細い銅線を平面状に編んだ平編銅線であるとよい。平編銅線としては、日本電線工業会規格(JCS)1236:2001に規定された、素線径0.12mmで公称断面積が2.0平方mm以下の平編銅線を使用することができ、素線径0.12mm又は素線径0.08mmの公称断面積0.75平方mmの平編銅線を使用することが好ましい。
【0056】
また、通電端子5と固定部材7の間の導線6の長さを、ケーブルアセンブリをガラス基板10に取り付けた状態における通電端子5と固定部材7の距離の1.0~1.5倍として、取り付け状態における導線6に余裕を持たせるとよい。
【0057】
<実施例2>
実施例2は、前述した実施例1のガラス物品の製造方法である。
【0058】
まず、電極3と電気回路2が形成された樹脂フィルム1を、粘着剤層1Aを介して、ガラス基板10に貼付する。例えば、粘着剤層1Aとなる粘着シートをガラス基板10に貼付し、粘着シート上に樹脂フィルム1を貼付することが、粘着剤層1Aを塗布により形成するより製造が容易であり好ましい。次に、導線6が接続された通電端子5を電極3に電気的に接続する。その後、導線6を保持する固定部材7をガラス基板10に固定する。以上の工程によって、実施例1のガラス物品が製造できる。
【0059】
以上に説明したように、本明細書に開示した実施例によると、電線(導線6)の引っ張りによる樹脂フィルム1の剥離を抑制できる。特に、焼成された導電性ペーストよりガラス基板10への接着力が弱い透明な粘着シートにより、樹脂フィルム1をガラス基板10に固定する場合でも、開示した実施例によると、接続される電線(導線6)に印加される力は固定部材7に加わり、樹脂フィルム1には伝わらないため、樹脂フィルム1のガラス基板10からの剥離を抑制できる。
【0060】
以上、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこのような具体的構成に限定されるものではなく、願書に添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。
【符号の説明】
【0061】
1 樹脂フィルム
1A 粘着剤層
2 電気回路
3 電極
5 通電端子
6 導線
7 固定部材
7A クリップ部
7B 固定部
8 カプラー
10 ガラス基板
11 不透明層
12 開口部
20 ブラケット
21 接着剤