(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099928
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】波長変換部材、波長変換装置、および、光源装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240719BHJP
F21V 7/26 20180101ALI20240719BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240719BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20240719BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20240719BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20240719BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240719BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240719BHJP
【FI】
G02B5/20
F21V7/26
F21V9/30
F21V29/502 100
F21V29/70
G02B5/08 A
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003567
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】八谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】坂 慎二
(72)【発明者】
【氏名】桜井 利之
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA10
2H042DA15
2H042DC04
2H042DE04
2H148AA00
2H148AA07
2H148AA25
(57)【要約】
【課題】 波長変換部材において、接合強度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 波長変換部材は、入射する光の波長を変換するセラミック蛍光体と、セラミック蛍光体上に配置され、光を反射する第1金属と、第1金属よりも融点が高い材料からなる高融点粒子と、を含む反射膜と、反射膜に対してセラミック蛍光体とは反対側に配置される部材と反射膜との間に配置される接合層と、反射膜と、の間に配置される接合補助層であって、第2金属を主成分とする焼結組織を有する接合補助層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換部材であって、
入射する光の波長を変換するセラミック蛍光体と、
前記セラミック蛍光体上に配置され、光を反射する第1金属と、前記第1金属よりも融点が高い材料からなる高融点粒子と、を含む反射膜と、
前記反射膜に対して前記セラミック蛍光体とは反対側に配置される部材と前記反射膜との間に配置される接合層と、前記反射膜と、の間に配置される接合補助層であって、第2金属を主成分とする焼結組織を有する接合補助層と、を備える、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
請求項1に記載の波長変換部材であって、
前記接合補助層は、ガラスを含む、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項3】
波長変換装置であって、
請求項1または請求項2に記載の波長変換部材と、
前記セラミック蛍光体の熱を外部に放出する、前記部材としての放熱部材と、
前記放熱部材と前記接合補助層とを接合する前記接合層と、を備え、
前記接合層は、前記反射膜と前記接合補助層とのそれぞれの側面を覆うように形成されている、
ことを特徴とする波長変換装置。
【請求項4】
光源装置であって、
請求項1または請求項2に記載の波長変換部材と、
前記セラミック蛍光体に光を照射する光源と、を備える、
ことを特徴とする光源装置。
【請求項5】
光源装置であって、
請求項3に記載の波長変換装置と、
前記セラミック蛍光体に光を照射する光源と、を備える、
ことを特徴とする光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材、波長変換装置、および、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源が発した光の波長を変換する波長変換部材が知られている。波長変換部材は、一般的に、入射する光の波長を変換する蛍光体と、蛍光体に入射した光を入射方向に向けて反射する反射膜と、を備え、反射膜で光を所定の方向に向けて反射させることで、波長変換部材の発光強度を向上させている。例えば、特許文献1には、銀粒子とガラスとの混合物を焼結させることで反射膜を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、銀から形成されている反射膜中に銀よりも融点が高い高融点粒子が分散している波長変換部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-534396号公報
【特許文献2】国際公開第2022/163175号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のような先行技術によっても、波長変換部材において、反射膜を介した他の部材との接合強度を向上させる技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1の技術では、反射膜を形成するとき、軟化することで流動するガラスが蛍光体の表面に分布し、軟化したガラスと蛍光体とが反応するおそれがある。ガラスと蛍光体とが反応すると、反射膜と蛍光体との接合強度にばらつきが生じるため、例えば、反射膜を介した蛍光体と放熱部材との接合強度が低下するおそれがある。また、特許文献2の技術では、反射膜を形成するとき、高融点粒子は、反射膜の表面に現れやすい。反射膜の表面に高融点粒子が存在すると、反射膜と放熱部材とを接合する接合層の反射膜に対する濡れ性が低下するため、接合強度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、波長変換部材において、接合強度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、波長変換部材が提供される。この波長変換部材は、入射する光の波長を変換するセラミック蛍光体と、前記セラミック蛍光体上に配置され、光を反射する第1金属と、前記第1金属よりも融点が高い材料からなる高融点粒子と、を含む反射膜と、前記反射膜に対して前記セラミック蛍光体とは反対側に配置される部材と前記反射膜との間に配置される接合層と、前記反射膜と、の間に配置される接合補助層であって、第2金属を主成分とする焼結組織を有する接合補助層と、を備える。
【0008】
この構成によれば、セラミック蛍光体上に配置される反射膜は、反射膜の第1金属よりも融点が高い高融点粒子を含むため、セラミック蛍光体と反射膜との接合強度は向上する一方、接合層の濡れ性を低下させる高融点粒子が反射膜の表面に現れやすい。接合補助層は、接合層と反射膜との間に配置されるため、高融点粒子が表面に現れやすい反射膜と接合層とは直接接合されない。また、接合補助層は、第2金属を主成分とする焼結組織を有する。ここで、「第2金属を主成分とする焼結組織」とは、体積割合で80%以上が第2金属で構成されている焼結組織を指す。これにより、接合補助層は、表面に高融点粒子が現れている反射膜と良好に接合することができる。したがって、接合層を介した波長変換部材と他の部材との接合強度を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態の波長変換部材において、前記接合補助層は、ガラスを含んでもよい。この構成によれば、接合補助層に、高融点粒子との親和性が大きいガラスが含まれることで、表面に高融点粒子が現れている反射膜とさらに良好に接合することができる。したがって、接合層を介した波長変換部材と他の部材との接合強度をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)本発明の別の形態によれば、波長変換装置が提供される。この波長変換装置は、上述の波長変換部材と、前記セラミック蛍光体の熱を外部に放出する、前記部材としての放熱部材と、前記放熱部材と前記接合補助層とを接合する前記接合層と、を備え、前記接合層は、前記反射膜と前記接合補助層とのそれぞれの側面を覆うように形成されている。この構成によれば、接合層の濡れ性を低下させる高融点粒子が表面に現れやすい反射膜は、接合層とも良好に接合することができる接合補助層を介して接合層と接合する。これにより、接合層は、接合補助層と反射膜とのそれぞれの側面を覆うように形成されるため、波長変換部材と放熱部材との接合強度を向上させることができる。
【0011】
(4)本発明のさらに別の形態によれば、光源装置が提供される。この光源装置は、上述の波長変換部材と、前記セラミック蛍光体に光を照射する光源と、を備える。この構成によれば、光源装置は、接合層を介した他の部材と波長変換部材との接合強度が向上している波長変換部材を用いて発光する。これにより、波長変換部材と他の部材とを接合した状態が長期間にわたって維持されるため、光源装置の寿命を延ばすことができる。
【0012】
(5)本発明のさらに別の形態によれば、光源装置が提供される。この光源装置は、上述の波長変換装置と、前記セラミック蛍光体に光を照射する光源と、を備える。この構成によれば、接合層を介した放熱部材と波長変換部材との接合強度が向上している波長変換装置を用いて、発光することができる。これにより、波長変換部材と放熱部材とを接合した状態が接合強度の向上によって長期間にわたって維持されるため、セラミック蛍光体の温度消光を抑制しつつ、光源装置の寿命を延ばすことができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、波長変換部材を含む装置、光源装置を含むシステム、波長変換部材および光源装置の製造方法、反射膜の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の波長変換部材の断面模式図である。
【
図3】波長変換部装置の断面模式図の一部を拡大した図である。
【
図4】波長変換部材の評価試験の結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の波長変換部材1の断面模式図である。本実施形態の波長変換部材1は、セラミック蛍光体10と、反射膜20と、接合補助層30と、を備える。波長変換部材1は、光が入射すると、入射する光とは異なる波長の光を発する。本実施形態の波長変換部材1は、プロジェクタ、ヘッドランプ、照明、ヘッドアップディスプレイなどの各種光学機器に用いられる。
図1には、セラミック蛍光体10と反射膜20と接合補助層30とが積層される方向である積層方向を鎖線矢印DLで示す。なお、
図1における、セラミック蛍光体10と反射膜20と接合補助層30とのそれぞれの大きさおよび厚みの関係は、説明の便宜上、実際の大きさまたは厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0016】
セラミック蛍光体10は、セラミック焼結体であり、本実施形態では、略円柱状に形成されている。セラミック蛍光体10は、光が入射する入射面11と、入射面11の反対側に位置する裏面12と、を有する。セラミック蛍光体10は、入射面11から入射する光のうちの少なくとも一部の波長を変換し、入射する光とは異なる波長の光を発する。セラミック蛍光体10は、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を主体とする透光相を有するセラミック焼結体から構成されている。透光相の結晶粒子は、化学式Al2O3で表される組成を有し、蛍光相の結晶粒子は、化学式A3B5O12:Ceで表される組成(いわゆる、ガーネット構造)を有することが好ましい。「A3B5O12:Ce」とは、A3B5O12の中にCeが固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。
【0017】
化学式A3B5O12:Ce中の元素Aおよび元素Bは、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種類の元素から構成されている。
元素A:Sc、Y、Ceを除くランタノイド(ただし、元素AとしてさらにGdを含んでいてもよい)
元素B:Al(ただし、元素BとしてさらにGaを含んでいてもよい)
セラミック蛍光体10として、セラミック焼結体を使用することで、蛍光相と透光相との界面で光が散乱し、光の色の角度依存性を減らすことができる。これにより、色の均質性を向上することができる。なお、セラミック蛍光体10の材料は、上述の材料に限定されない。
【0018】
反射膜20は、セラミック蛍光体10の裏面12上に配置されている。反射膜20は、光を反射する銀(Ag)21と、銀よりも融点が高い材料からなる高融点粒子22と、を含んでいる。高融点粒子22を形成する材料は、例えば、アルミナ(Al2O3)である。反射膜20に含まれる高融点粒子22の粒径は、1μm~50μmが好ましい。反射膜20における高融点粒子22の体積割合は、3%~30%が好ましい。本実施形態では、反射膜20は、30μm~100μmの厚みを有する。反射膜20では、セラミック蛍光体10を透過した光や、セラミック蛍光体10で発生した光が銀21によって反射される。これにより、波長変換部材1を備える装置では、発光強度を向上させることができる。なお、反射膜20に含まれる金属の材料と、高融点粒子を形成する材料との関係はこれに限定されない。反射膜20に含まれる金属は、銀に限定されず、アルミニウム(Al)や白金(Pt)、パラジウム(Pd)などであってもよい。高融点材料を形成する材料は、反射膜20に含まれる金属よりも融点が高い材料であればよく、例えば、反応性が比較的低い酸化物が好ましい。また、高融点粒子22を形成する材料は、アルミナに限定されず、、YAG、TiO2、Y2O3、SiO2、Cr2O3、Nb2O5、Ta2O2、AlN、Si3N4などのセラミックや、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)などの金属であってもよい。
【0019】
接合補助層30は、反射膜20に対してセラミック蛍光体10とは反対側に配置されている。接合補助層30は、銀31を主成分とする焼結組織を有する。なお、「銀31を主成分とする焼結組織」とは、体積割合で80%以上が銀31で構成されている焼結組織を指す。このため、接合補助層30は、多孔質状に形成されており、内部に複数の空隙を有する。接合補助層30が焼結組織を有しているか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像されるSEM画像の観察によって判定される。具体的には、SEM画像において、空隙が規則的に分布していること、および、複数の銀粒子のそれぞれについて一部が融けることなく残っていることが観察される場合、接合補助層30は、焼結組織を有していると判定される。本実施形態の接合補助層30は、SEM画像全体の面積に対する空隙が占める面積の割合である空隙率が50%以上となっている。本実施形態では、接合補助層30は、30μm~100μmの厚みを有する。なお、接合補助層30の焼結組織を形成する金属の材料は、銀に限定されない。反射膜20に含まれる金属とは異なる金属であってもよい。
【0020】
本実施形態では、接合補助層30は、ガラス32を含む。本実施形態のガラス32は、珪素(Si)やビスマス(Bi)を含む酸化物であって、接合補助層30には、体積割合で、数%程度含まれている。本実施形態では、接合補助層30に含まれるガラス32の体積割合とは、上述のSEM画像における、銀31の面積とガラス32の面積との合計に対する、ガラス32の面積の比を指す。ガラス32は、反射膜20と接合補助層30との界面、および、後述する接合層50と接合補助層30との界面とのいずれにおいても、連続層を形成していないことが好ましい。接合補助層30に含まれるガラス32は、反射膜20に含まれる、アルミナからなる高融点粒子22との親和性が高い。これにより、反射膜20と接合補助層30との接合強度を向上させることができる。
【0021】
図2は、第1実施形態の光源装置2の模式図である。本実施形態の光源装置2は、波長変換装置3と、光を発する光源4と、を備える。波長変換装置3は、波長変換部材1と、セラミック蛍光体10の熱を外部に放出する放熱部材40と、波長変換部材1と放熱部材40とを接合する接合層50と、を備える。波長変換装置3では、
図2に示すように、セラミック蛍光体10、反射膜20、接合補助層30、接合層50、放熱部材40の順に積層される。
図2には、セラミック蛍光体10、反射膜20、接合補助層30、接合層50、放熱部材40の積層方向を示す鎖線矢印DLを示す。
【0022】
光源装置2では、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD:Laser Diode)などの光源4が発する光L1を波長変換装置3のセラミック蛍光体10に照射する。光L1が照射されたセラミック蛍光体10は、光L1とは異なる波長の光を発する。これにより、波長変換装置3は、光源4が発する光L1とは異なる色の光L2を放出する。このような波長変換装置3は、例えば、プロジェクタ、ヘッドランプ、照明、ヘッドアップディスプレイなどの各種光学機器において使用される。なお、
図2における、セラミック蛍光体10、反射膜20、接合補助層30、放熱部材40、および、接合層50のそれぞれの大きさおよび厚みの関係は、説明の便宜上、実際の大きさまたは厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0023】
放熱部材40は、例えば、銅(Cu)、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、Al、AlNなど、セラミック蛍光体10よりも高い熱伝導性を有する材料から形成されている平板形状の部材である。放熱部材40は、接合層50を介して伝わるセラミック蛍光体10の熱を、波長変換装置3の外部に放出する。なお、放熱部材40は、上述した材料からなる単層構造の部材でなくてもよく、同種または異なる材料から形成されている多層構造の部材であってもよい。また、放熱部材40のセラミック蛍光体10側の面には、接合層50との密着性を高めるめっきが配置されていてもよい。
【0024】
接合層50は、波長変換部材1と放熱部材40との間に配置されている。すなわち、接合補助層30は、反射膜20に対してセラミック蛍光体10とは反対側に配置される部材(放熱部材40)と反射膜20との間に配置される接合層50と、反射膜20と、の間に配置される。接合層50は、金と錫とから形成されており、反射膜20および接合補助層30を介して、セラミック蛍光体10と放熱部材40とを接合する。本実施形態では、接合層50は、反射膜20と接合補助層30とのそれぞれの側面20a,30aを覆うように形成されている、
【0025】
次に、光源装置2の製造方法を説明する。最初に、蛍光相と透光相が、例えば、6:4となるように、原料を秤量する。秤量した原料をエタノールまたは純水とともにボールミルに投入し、16時間粉砕混合をおこなうことで、セラミック蛍光体用のスラリーを作製する。セラミック蛍光体用のスラリーを乾燥し、造粒した後、バインダと、水とを加え、せん断力を加えながら混練を行うことで、坏土を作製する。作製した坏土を押出成形機でシート状に成形し、成形したシート状の成形体を大気雰囲気中において約1700℃で焼成する。焼成によって得られた焼成体を所定の厚みとなるように切断し、セラミック蛍光体10を作製する。
【0026】
セラミック蛍光体10を作製したのち、銀粉末と、アルミナ粉末と、アクリル系のバインダと、溶剤とを混合し、反射膜用のペーストを作製する。作製した反射膜用のペーストを、セラミック蛍光体10の裏面12に塗布し、乾燥させた後、反射膜用のペーストが塗布されたセラミック蛍光体10を加熱する。反射膜用のペーストが塗布されたセラミック蛍光体10を加熱することで、反射膜用のペーストがセラミック蛍光体10の裏面12に焼き付き、セラミック蛍光体10に反射膜20が成膜される。
【0027】
セラミック蛍光体10に反射膜20を成膜したのち、銀粉末と、ガラス粉末と、バインダと、溶剤とを混合し、接合補助層用のペーストを作製する。作製した接合補助層用のペーストを、反射膜20のセラミック蛍光体10とは反対側の面に塗布し、乾燥させた後、加熱する。これにより、波長変換部材1が完成する。
【0028】
波長変換部材1が完成したのち、波長変換部材1の接合補助層30と放熱部材40との間にAuSn半田箔を挟み込み、例えば、リフロー炉で加熱し、AuSn半田箔を溶融させる。これにより、波長変換部材1と放熱部材40とが接合し、波長変換装置3が完成する。最後に、波長変換装置3の入射面11に対して光L1が照射されるように、光源4を配置する。これにより、光源装置2が完成する。
【0029】
次に、本実施形態の波長変換部材1が備える反射膜20と接合補助層30の特徴について説明する。本実施形態では、反射膜20は、光を反射する銀21と、銀21よりも融点が高いアルミナからなる高融点粒子22と、を含む。接合補助層30は、反射膜20に対してセラミック蛍光体10とは反対側に配置される放熱部材40と反射膜20との間に配置される接合層50と、反射膜20との間に配置され、銀を主成分とする焼結組織を有している。
【0030】
図3は、波長変換装置3の断面模式図の一部を拡大した図である。
図3には、波長変換装置3における積層方向DLに沿った断面の一部を示している。
図3に示すように、反射膜20中には、複数の高融点粒子22が存在している。これは、セラミック蛍光体10上に反射膜20を形成するとき、反射膜用のペーストとして、銀粉末とアルミナ粉末との混合物を使用しているためである。銀粉末とアルミナ粉末との混合物を反射膜用のペーストとして使用することで、セラミック蛍光体10との濡れ性を高まるため、セラミック蛍光体10と反射膜20との接合強度は向上する。高融点粒子22は、銀21よりも融点が高いため、反射膜用のペーストが塗布されたセラミック蛍光体10を加熱するときでも溶融しない。これにより、高融点粒子22とセラミック蛍光体10との反応が抑制されることで反射率の低下を抑制しつつ、高融点粒子22が反射膜20内に適度に分散することでセラミック蛍光体10と反射膜20との接合強度のばらつきの発生を抑制することができる。
【0031】
接合補助層30は、銀31を主成分とする焼結組織を有している。これにより、接合補助層30は、表面に高融点粒子22が現れている反射膜20と良好に接合することができる。
図3に示すように、接合補助層30には、複数のガラス32が存在している。接合補助層30に含まれるガラス32は、波長変換部材1の製造時に、接合補助層用のペーストに含まれるガラス粉末が加熱によって溶融し、固化したものである。波長変換部材1の製造時に、溶融したガラスは、接合補助層用のペーストに含まれる銀粉末の間を移動し、反射膜20の表面20bに現れている高融点粒子22と結びつきやすい。これにより、反射膜20と接合補助層30との接合強度を向上させることができる。
【0032】
次に、波長変換部材の評価試験について説明する。本評価試験では、波長変換部材において接合補助層の有無がセラミック蛍光体の表面温度に与える影響を評価した。
【0033】
本評価試験に用いたサンプルは、光源装置であって、上述した本実施形態の光源装置2の製造方法で作成した。本評価試験では、反射膜と接合補助層とのそれぞれは、以下の条件で作成した。
・反射膜(厚み:30μm)
金属種:銀
高融点粒子の材料:アルミナ
製造時に添加したアルミナ粒子の粒径:10μm
製造時に添加したアルミナ粒子の量(体積割合):15%
・接合補助層(厚み30μm)
金属種:銀
製造時に添加したガラスに含まれる成分:Si、Biを含む酸化物
製造時に添加したガラスの量(体積割合):1%
本評価試験では、接合補助層を有していないサンプル1と、接合補助層を有しているサンプル2との2種類のサンプルを作成した。サンプル2が有する接合補助層には、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察において空隙が観察されたことから、サンプル2が有する接合補助層は、銀の焼結組織を有していることを確認している。サンプル2の接合補助層における空隙率は、2%であった。
【0034】
本評価試験では、作成したサンプルに対してレーザ光を一定時間照射したときのセラミック蛍光体の表面温度を放射温度計によって測定し、試験前の温度を取得した。試験前の温度を取得したのち、サンプルに対して加熱と冷却とを一定回数繰り返す熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験を行ったのち、再度、レーザ光を一定時間照射したときのセラミック蛍光体の表面温度を放射温度計によって測定し、試験後の温度を取得した。最後に、試験前の温度に対する試験後の温度の比を算出した。本評価試験における熱衝撃試験の試験条件と、表面温度の測定条件に関する具体的な情報は、以下の通りである。
・熱衝撃試験の試験条件
最高温度:200℃ 最低温度:0℃ 保持時間:30分 繰り返し回数:500回
・表面温度の測定条件
レーザ光の波長:450nm レーザ光の照射径:直径1mm
レーザ光の出力:70W 照射時間:1分
【0035】
図4は、波長変換部材の評価試験の結果を説明する図である。
図4には、2種類のサンプル1,2のそれぞれについて、試験前の温度に対する試験後の温度の比に100を掛けた値(
図4の「Rtmax(%)」)を示している。
図4に示すように、接合補助層を有していないサンプル1では、Rtmaxが180%となるのに対し、接合補助層を有しているサンプル2では、Rtmaxが100%となった。接合補助層を有していないサンプル1の結果は、反射膜と接合層との接合強度が比較的小さいため、反射膜と接合層との界面で剥離が進行し、放熱性が低下していることを示している。一方、接合補助層を有しているサンプル2の結果は、接合補助層を介した反射膜と接合層との接合強度が大きいため、剥離することなく、放熱部材による放熱が十分に行われていることを示している。
【0036】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材1によれば、セラミック蛍光体10上に配置される反射膜20は、銀21よりも融点が高い高融点粒子22を含む。このため、セラミック蛍光体10と反射膜20との接合強度は向上する一方、接合層50の濡れ性を低下させる高融点粒子22が反射膜20の表面に現れやすい。接合補助層30は、接合層50と反射膜20との間に配置されるため、高融点粒子22が表面に現れやすい反射膜20と接合層50とは直接接合されない。さらに、接合補助層30は、銀31を主成分とする焼結組織を有しており、表面に高融点粒子22が現れている反射膜20と良好に接合することができる。したがって、接合補助層30と接合層50を介した波長変換部材1と、放熱部材40などの他の部材との接合強度を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態の波長変換部材1によれば、接合補助層30は、銀31を主成分とする焼結組織を有していることから、銀31の融点以下で加熱されることで形成されている。すなわち、接合補助層30を形成するための温度は、銀の融点以下であるため、波長変化部材1を製造するとき、すでに形成されている銀を含む反射膜20が、接合補助層30を形成するときに再び溶融することを抑制することができる。したがって、再溶融による反射膜20の反射率の低下を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の波長変換装置3によれば、接合補助層30は、セラミック蛍光体10と放熱部材40との間に配置されている。これにより、セラミック蛍光体10と放熱部材40との熱膨張差による応力を緩和することができる。したがって、波長変換装置3の破損を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の波長変換部材1によれば、接合補助層30に、高融点粒子22との親和性が大きいガラス32が含まれることで、表面に高融点粒子22が現れている反射膜20とさらに良好に接合することができる。したがって、接合補助層30と接合層50を介した波長変換部材1と放熱部材40との接合強度をさらに向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の波長変換部材1によれば、接合補助層30に含まれるガラスは、波長変換部材1の製造時に溶融し、反射膜20に含まれる高融点粒子22と結びつきやすい。これにより、接合補助層30の反射膜20とは反対側、すなわち、接合層50と接合する側には、接合層50の濡れ性を低下させるガラスが存在しないため、接合層50との良好な接合をすることができる。
【0041】
また、本実施形態の波長変換装置3によれば、接合層50の濡れ性を低下させる高融点粒子22が表面に現れやすい反射膜20は、接合層50とも良好に接合することができる接合補助層30を介して接合層50と接合する。これにより、接合層50は、接合補助層30と反射膜20とのそれぞれの側面20a,30aを覆うように形成されるため、波長変換部材1と放熱部材40との接合強度を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の光源装置2によれば、接合層50を介した放熱部材40と波長変換部材1との接合強度が向上している波長変換部材1を用いて発光する。これにより、波長変換部材1と放熱部材40とを接合した状態が長期間にわたって維持されるため、セラミック蛍光体10の温度消光を抑制しつつ、光源装置2の寿命を延ばすことができる。
【0043】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0044】
[変形例1]
上述の実施形態では、反射膜が含む「第1金属」を銀とし、接合補助層が含む「第2金属」も銀とした。しかしながら、「第1金属」と「第2金属」とは同じ種類の金属でなくてもよい。異なっていてもよい。波長変換部材の製造時に、接合補助層を形成する際に反射膜が再溶融しないように、第1金属の融点が、第2金属の融点以上であることが望ましい。しかしながら、接合補助層を形成するときには、第2金属は融点よりも低い温度で焼結組織を形成するため、これにも限定されない。
【0045】
[変形例2]
上述の実施形態では、接合補助層は、ガラスを含むとした。しかしながら、接合補助層にガラスはなくてもよい。ガラスがなくても、銀の焼結組織を有する接合補助層は、反射膜との接合強度を向上しつつ、接合層と良好に接合することができる。
【0046】
[変形例3]
上述の実施形態では、波長変換装置3は、波長変換部材1と、接合層50と、放熱部材40とを備え、波長変換部材1は、セラミック蛍光体10と、反射膜20と、接合補助層30と、を備えるとした。しかしながら、波長変換部材1および波長変換装置3の構成は、これらに限定されない。封止膜やめっき層などを備えていてもよい。
【0047】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0048】
[適用例1]
波長変換部材であって、
入射する光の波長を変換するセラミック蛍光体と、
前記セラミック蛍光体上に配置され、光を反射する第1金属と、前記第1金属よりも融点が高い材料からなる高融点粒子と、を含む反射膜と、
前記反射膜に対して前記セラミック蛍光体とは反対側に配置される部材と前記反射膜との間に配置される接合層と、前記反射膜と、の間に配置される接合補助層であって、第2金属を主成分とする焼結組織を有する接合補助層と、を備える、
ことを特徴とする波長変換部材。
[適用例2]
適用例1に記載の波長変換部材であって、
前記接合補助層は、ガラスを含む、
ことを特徴とする波長変換部材。
[適用例3]
波長変換装置であって、
適用例1または適用例2に記載の波長変換部材と、
前記セラミック蛍光体の熱を外部に放出する、前記部材としての放熱部材と、
前記放熱部材と前記接合補助層とを接合する前記接合層と、を備え、
前記接合層は、前記反射膜と前記接合補助層とのそれぞれの側面を覆うように形成されている、
ことを特徴とする波長変換装置。
[適用例4]
光源装置であって、
適用例1または適用例2に記載の波長変換部材と、
前記セラミック蛍光体に光を照射する光源と、を備える、
ことを特徴とする光源装置。
[適用例5]
光源装置であって、
適用例3に記載の波長変換装置と、
前記セラミック蛍光体に光を照射する光源と、を備える、
ことを特徴とする光源装置。
【符号の説明】
【0049】
1…波長変換部材
2…光源装置
3…波長変換装置
4…光源
10…セラミック蛍光体
20…反射膜
20a…(反射膜の)側面
21…銀
22…高融点粒子
30…接合補助層
30a…(接合補助層の)側面
31…銀
32…ガラス
40…放熱部材
50…接合層