(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099960
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】塗布治具
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B05C1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003616
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】杷野 満
【テーマコード(参考)】
4F040
【Fターム(参考)】
4F040AA12
4F040AB20
4F040BA04
4F040BA05
4F040CA03
4F040CA09
4F040CA10
4F040CA12
(57)【要約】
【課題】シリコンコンパウンドを均一に薄く塗布可能な塗布治具を提供することである。
【解決手段】実施形態の塗布治具は、電力変換ユニットの平型圧接素子表面に粒子含有材を塗布する。前記被塗布面が円形輪郭を有する平面である。前記被塗布面に沿った塗布面を有する。前記塗布面から所定厚さを有する弾性体である。前記塗布面を複数の塗布区画に分割する溝を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換ユニットの平型圧接素子の被塗布面に粒子含有材を塗布する塗布治具であって、
前記被塗布面が円形輪郭を有する平面であり、
前記被塗布面に沿った塗布面を有し、
前記塗布面から所定厚さを有する弾性体であり、
前記塗布面を複数の塗布区画に分割する溝を有する
塗布治具。
【請求項2】
前記塗布区画の輪郭となる前記溝の側壁は、前記塗布面と直交する
請求項1記載の塗布治具。
【請求項3】
前記溝は、前記塗布面に沿って互いに交差して形成される、
請求項1記載の塗布治具。
【請求項4】
交差する前記溝のうち少なくとも一方は、両端が前記塗布面の輪郭まで連続して形成される、
請求項3記載の塗布治具。
【請求項5】
前記溝で囲まれて形成された前記塗布区画は矩形輪郭を有し、
前記塗布区画の輪郭において交差する辺のうち、一方の辺が隣り合う前記塗布区画で一致するように前記塗布区画が列をなすとともに、他方の辺が隣り合う前記塗布区画で一致しないように配置される、
請求項1記載の塗布治具。
【請求項6】
前記塗布区画のうち前記塗布面において中心に位置する中心塗布区画が、隣接する前記塗布区画よりも前記列に沿って長く形成される、
請求項5記載の塗布治具。
【請求項7】
前記塗布区画が、前記中心塗布区画を除いて同じ輪郭形状を有する、
請求項6記載の塗布治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は塗布治具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電力変換装置として平型圧接素子を採用した電力変換ユニットがある。電力変換ユニットは、半導体スタック装置として知られる。電力変換ユニットは、交互に重ねて配置した複数の平型半導体素子および放熱体と、平型半導体素子および放熱体を重ね方向に加圧する加圧手段と、これらを固定するスタッド等を用いたフレームと、を有する構成を有する。
このような例が特許文献1に記載される。
【0003】
電力変換ユニットでは、素子の接触部に電気抵抗の上昇を抑止するため、シリコーン・オイルコンパウンド(以下、シリコンコンパウンドと称する)を組み立て時に塗布する。シリコンコンパウンドは、均一に薄く塗布することが要求される。シリコンコンパウンドの塗布作業を自動化したいという要求があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シリコンコンパウンドを均一に薄く塗布可能な塗布治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の塗布治具は、電力変換ユニットの平型圧接素子の被塗布面に粒子含有材を塗布する。前記被塗布面が円形輪郭を有する平面である。前記被塗布面に沿った塗布面を有する。前記塗布面から所定厚さを有する弾性体である。前記塗布面を複数の塗布区画に分割する溝を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の塗布治具を組み立てに用いる電力変換ユニットを示す正面図。
【
図2】実施形態の塗布治具による塗布をおこなう圧接素子を示す斜視図。
【
図6】実施形態の塗布治具を用いた塗布方法を示す工程図。
【
図7】実施形態の塗布治具を用いた塗布方法を示す工程図。
【
図8】実施形態の塗布治具における塗布中を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る塗布治具の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態における塗布治具を組み立てに用いる電力変換ユニットを示す正面図である。図において、符号10は、電力変換ユニットである。
【0009】
本実施形態に係る電力変換ユニット10は、
図1に示すように、平型半導体素子(平型圧接素子)11と、電極端子板(接続端子板)12と、放熱体13と、絶縁スペーサ14と、球面座15と、加圧機構と、加圧支持板16aと、加圧支持板16bと、スタッドボルト17と、固定ナット18aと、固定ナット18bと、を有する。
【0010】
電力変換ユニット10は、複数の平型半導体素子11が積層される。電力変換ユニット10は、平型半導体素子11のスタック装置である。電力変換ユニット10は、
図1に示す例において、平型半導体素子11が4つ積層される。電力変換ユニット10は、平型半導体素子11の積層数は適宜設定できる。
複数の平型半導体素子11は、それぞれの主面が平行に積層される。複数の平型半導体素子11は、直列に接続される。
【0011】
平型半導体素子11は、円盤状または短円筒状である。平型半導体素子11は、円形輪郭の外囲器を有する。平型半導体素子11は、軸方向の一方の端面が電極11aである(
図2参照)。平型半導体素子11は、軸方向の他方の端面が電極11aである(
図2参照)。電極11aは、いずれも平型半導体素子11の軸方向に突出している。
【0012】
平型半導体素子11は、その主面に直交する軸線F0に沿った方向(積層方向)に放熱体13が積層される。平型半導体素子11と放熱体13とは、交互に重ね合わせるように配置される。平型半導体素子11と放熱体13とは、中心位置が軸線F0と一致して配置される。平型半導体素子11と放熱体13とは、互いに軸心が軸線F0と一致するように位置合わせされる。
【0013】
放熱体13は、矩形輪郭を有する。放熱体13は、略方形である。放熱体13は、厚板状である。放熱体13は、伝熱性に優れた導電性材料から形成される。放熱体13は、例えば銅やアルミニウム、あるいはこれらを含む合金等から形成される。放熱体13は、内部に図示しない冷媒流路が設けられている。冷媒流路は、図示しない配管に接続される。
【0014】
放熱体13は、配管を通じて水や油、空気、ガス等の冷媒が冷媒流路に流れる。放熱体13は、冷媒流路に流れる冷媒により放熱を促進する。放熱体13は、冷媒流路の導入口および排出口を有する。導入口および排出口は、配管に接続される。導入口は、冷媒を冷媒流路に導入する。排出口は、冷媒を冷媒流路から排出する。導入口および排出口は、軸線F0と交差する位置に設けられる。導入口および排出口は、軸線F0と直交する側面に設けられる。
【0015】
放熱体13は、平型半導体素子11が熱的に接触する。放熱体13は、平型半導体素子11から伝わる熱を放出する。あるいは、放熱体13は、平型半導体素子11に接触する。放熱体13は、平型半導体素子11を冷却する。平型半導体素子11は、放熱体13との接触面の中心位置が軸線F0と一致する。放熱体13は、平型半導体素子11との端面の中心位置が軸線F0と一致する。平型半導体素子11の接触面の中心位置と、放熱体13の端面の中心位置とが一致する。
【0016】
放熱体13は、軸線F0に沿った積層数が平型半導体素子11の積層数と同じでもよい。なお、放熱体13は、平型半導体素子11と積層数が異なっていてもよい。放熱体13は、平型半導体素子11よりも積層数が大きくてもよい。放熱体13は、平型半導体素子11よりも積層数が小さくてもよい。
【0017】
電極端子板(接続端子板)12は、図示しない外部回路との接続をおこなう。電極端子板12は、導電性材料で形成される。電極端子板12は、薄い板体である。電極端子板12は、電極11aに接触する。電極端子板12は、平型半導体素子11に接触しない位置で折れ曲がっていてもよい。電極端子板12は、平型半導体素子11と放熱体13との間に配置される。なお、電極端子板12は、平型半導体素子11と放熱体13との間に配置されないこともできる。
【0018】
球面座15は、軸線F0に沿った方向における積層された平型半導体素子11と放熱体13との両端となる位置にそれぞれ配置される。球面座15は、平型半導体素子11および放熱体13と位置あわせされる。
絶縁スペーサ14は、軸線F0に沿った方向において平型半導体素子11および放熱体13の積層体と球面座15との間に配置される。球面座15は、球面部分が絶縁スペーサ14に当接するように配置される。球面座15は、球面部分の中心が軸線F0と一致する。
【0019】
球面座15は、軸線F0に沿った方向における積層体の外側で加圧支持板16aと加圧支持板16bと接触する。加圧支持板16aまと球面座15の間には、加圧機構が配置される。加圧支持板16bと球面座15の間には、加圧機構が配置される。
加圧機構は、複数の皿ばねで構成される。加圧機構は、複数の皿ばねの積層方向に付勢可能に構成される。加圧機構は、中心位置が軸線F0と一致する。
【0020】
加圧支持板16aは、2つのボルト孔が穿設される。加圧支持板16bは、2つのボルト孔が穿設される。加圧支持板16aと加圧支持板16bとは、平行に配置される。加圧支持板16aと加圧支持板16bとは、ボルト穴が対向する。加圧支持板16aと加圧支持板16bとの対向するボルト穴には、いずれもスタッドボルト17が立設される。
【0021】
スタッドボルト17は、軸線F0に沿って立設される。スタッドボルト17は、複数本が立設される。スタッドボルト17は、軸線F0を中心とする同一円周上に立設される。スタッドボルト17は、軸線F0を中心とする円周上で等距離離間して立設される。スタッドボルト17の両端は、それぞれ固定ナット18aと、固定ナット18bとが螺着される。加圧支持板16aと加圧支持板16bとは、スタッドボルト17と固定ナット18aと固定ナット18Bとにより、平型半導体素子11および放熱体13の積層体を挟持する。加圧支持板16aと加圧支持板16bとは、軸線F0に沿った方向に交互に重ね合わされた複数の平型半導体素子11と放熱体13とを挟持する。
【0022】
固定ナット18aと固定ナット18Bとは、スタッドボルト17に対する締込み量を調節する。加圧機構は、固定ナット18aと固定ナット18Bとは、スタッドボルト17に対する締込み量により皿ばねの撓み量が調節される。これにより、加圧支持板16aと加圧支持板16bとの間に加わる重ね方向の圧力が、適正に調節される。加圧支持板16aと加圧支持板16bとの間の圧力調節により、挟持された複数の平型半導体素子11と放熱体13とに加わる重ね方向の圧力が適正に調節される。
平型半導体素子11と放熱体13とに加わる重ね方向の圧力は、平型半導体素子11が大型化した場合には、例えば数十kNという高い圧力になることがある。
【0023】
電力変換ユニット10は、複数の平型半導体素子11と、電極端子板12と、放熱体13と、絶縁スペーサ14と、球面座15と、加圧機構と、加圧支持板16aと、加圧支持板16bとが、いずれも中心位置を軸線F0に合わせて積層される。
平型半導体素子11と電極端子板12とは、互いに接触する。平型半導体素子11と電極端子板12とは、互いに密着する。電極端子板12は、平型半導体素子11の電極11aの全面に接触する。
【0024】
図2は、実施形態における塗布治具を組み立てに用いる電力変換ユニットを示す斜視図である。
電力変換ユニット10は、組み立て時に平型半導体素子11と電極端子板12との間に粒子含有材を塗布する。
【0025】
平型半導体素子11は、電極端子板12に接触する電極11aの表面に粒子含有材が塗布される。粒子含有材は、平型半導体素子11と電極端子板12との接触する部分で電気抵抗の上昇を抑止するために塗布される。粒子含有材は、平型半導体素子11と電極端子板12との間の密着性を改善する。粒子含有材は、シリコーン・オイルコンパウンドである。粒子含有材は、サーマルコンパウンド(Thermal Compound)である。粒子含有材は、シリコーン・オイルに熱伝導率の良い金属酸化物等の粒子を混合して形成される。粒子含有材は、物性的に通常では自由流動性という特性を有している。粒子含有材は、シリコンコンパウンドと称することがある。
【0026】
シリコンコンパウンドは、所定粒径の粒子を含有する。シリコンコンパウンドは、金属系の粒子を含有する。シリコンコンパウンドは、金属酸化物等の粒子を含有する。金属酸化物等の粒子の平均粒径は、数十μm程度である。金属酸化物等の粒子の平均粒径は、10μm~90μm程度である。金属酸化物等の粒子の平均粒径は、10μm~50μm程度である。金属酸化物等の粒子の平均粒径は、10μm~30μm程度である。金属酸化物等の粒子の平均粒径は、15μm~25μm程度である。
【0027】
電極11aの表面は、被塗布面11cである。
被塗布面11cは、平面である。被塗布面11cは、円形輪郭を有する。被塗布面11cは平坦である。被塗布面11cは、全域にシリコンコンパウンドが塗布される。被塗布面11cは、全域で均一厚さにシリコンコンパウンドが塗布される。被塗布面11cは、全域に極めて薄い厚さでシリコンコンパウンドが塗布される。
【0028】
被塗布面11cは、塗布されたシリコンコンパウンドによって、電極端子板12との間の断熱空気層をなくして熱抵抗を低減させる。被塗布面11cは、塗布されたシリコンコンパウンドによって、電極端子板12との間の熱結合度を高める。
被塗布面11cは、塗布治具20によって、シリコンコンパウンドを塗布される(
図3参照)。
【0029】
図3は、実施形態における塗布治具を示す斜視図である。
図4は、実施形態における塗布治具を示す平面図である。
図5は、実施形態における塗布治具の溝を示す側面図である。
塗布治具20は、
図3~
図5に示すように、塗布面20aを有する。塗布治具20は、塗布面20aから所定厚さを有する弾性体である。塗布治具20は、塗布面20aと同じ輪郭形状を有する。塗布治具20は、塗布面20aに沿って均一厚さを有する。塗布治具20は、シリコンコンパウンドを吸収しない材質である。塗布治具20は、例えばゴムシートから形成される。塗布治具20は、例えばシリコンゴムから形成される。
【0030】
塗布面20aは、平面である。塗布面20aは、X軸とY軸とに沿ったXY平面である。塗布面20aは、Z軸に沿った法線を有する。塗布面20aは、円形輪郭を有する。塗布面20aは、被塗布面11cとほぼ同じ輪郭形状を有する。塗布面20aは、被塗布面11cより若干大きい輪郭形状を有する。
塗布面20aは表面粗さが小さい。塗布面20aの表面粗さは、シリコンコンパウンドに含有される粒子の平均粒径と同程度である。塗布面20aの表面粗さは、シリコンコンパウンドに含有される粒子の平均粒径より若干小さい。
【0031】
塗布面20aは、長区画溝(溝)21と、短区画溝(溝)22と、を有する。
長区画溝21と短区画溝22とは、互いに交差する。長区画溝21と短区画溝22とは、互いに直交する。長区画溝21と短区画溝22とは、塗布面20aに形成される。長区画溝21と短区画溝22とは、同じZ方向深さを有する。長区画溝21と短区画溝22とは、塗布面20aにおいて、同じ幅寸法を有する。
長区画溝21と短区画溝22とは、塗布面20aを複数の塗布区画25に分割する。
【0032】
長区画溝21は、X方向に延在する。長区画溝21は、塗布面20aに沿った直線状に形成される。長区画溝21は、X方向の全長で、同じY方向幅寸法を有する。長区画溝21は、X方向の全長で、同じZ方向深さ寸法を有する。長区画溝21は、複数本形成される。複数本の長区画溝21は、互いに平行である。隣り合う長区画溝21は、Y方向で同じ幅寸法を有する。長区画溝21は、Y方向における離間距離が互いに等しい。長区画溝21は、X方向の両端がいずれも塗布面20aの輪郭に到達する。隣り合う長区画溝21は、X方向の長さが異なることができる。
隣り合う長区画溝21の間において、塗布区画25は、列を形成する。
【0033】
短区画溝22は、Y方向に延在する。短区画溝22は、塗布面20aに沿った直線状に形成される。短区画溝22は、Y方向の全長で、同じX方向幅寸法を有する。短区画溝22は、Y方向の全長で、同じZ方向深さ寸法を有する。短区画溝22は、複数本形成される。複数本の短区画溝22は、互いに平行である。隣り合う短区画溝22は、X方向で同じ幅寸法を有する。短区画溝22は、X方向における離間距離が互いに等しい。短区画溝22は、Y方向の両端がいずれも隣り合う長区画溝21に到達する。両端がいずれも長区画溝21に到達した短区画溝22は、X方向の長さが等しい。隣り合う長区画溝21の間において、短区画溝22は、Y方向の長さが等しい。
【0034】
短区画溝22は、Y方向の一が長区画溝21に到達し、他端が塗布面20aの輪郭に到達する。他端が塗布面20aの輪郭に到達した短区画溝22は、X方向の長さが異なる。他端が塗布面20aの輪郭に到達した短区画溝22は、両端がいずれも長区画溝21に到達した短区画溝22よりも、X方向の長さが短い。他端が塗布面20aの輪郭に到達した短区画溝22は、Y方向の長さが異なることができる。
【0035】
隣り合う長区画溝21の間において、短区画溝22は、Y方向の長さが等しい。隣り合う長区画溝21の間において、X方向に塗布面20aを分割して塗布区画25を形成する。
長区画溝21を挟んで、Y方向に隣り合う塗布区画25の列は、X方向の位置が互いにずれている。1つの塗布区画25の列を挟んで、Y方向に並ぶ塗布区画25の列では、X方向における塗布区画25の位置が互いに等しい。塗布区画25の列では、一つおきにX方向における塗布区画25の位置が互いに等しい。塗布区画25は、Y方向において互い違いになっている。塗布区画25は、Y方向において千鳥状に配置されている。
【0036】
複数の塗布区画25は、軸線F1方向に見て、いずれも矩形輪郭を有する。複数の塗布区画25は、軸線F1方向に見て、いずれも長方形輪郭を有する。複数の塗布区画25は、軸線F1方向に見て、いずれも正方形輪郭を有する。複数の塗布区画25は、軸線F1方向に見て、いずれも同じ輪郭形状を有する。複数の塗布区画25は、X方向に沿った列を形成する。塗布区画25の列は、Y方向に複数本が並ぶ。複数の塗布区画25の列は、互いに平行に配置される。X方向に隣り合う塗布区画25は、X方向に延在する辺が同一直線上に配置される。X方向に隣り合う塗布区画25は、短区画溝22の幅寸法と等しい離間距離を有する。
【0037】
複数の塗布区画25のうち、塗布面20aの輪郭に重なる位置の塗布区画25は、塗布面20aの輪郭に合わせて円弧状部分の輪郭を有する。
【0038】
複数の塗布区画25のうち、塗布面20aの輪郭の中心である軸線F1が位置する中心塗布区画25aは、X方向の寸法が他の塗布区画25よりも長い。具体的には、中心塗布区画25aは、他の塗布区画25の約3倍となるX方向の寸法を有する。中心塗布区画25aは、3つの塗布区画25をX方向に接続した形状を有する。中心塗布区画25aは、他の塗布区画25が形成する列と同じ方向に長辺となる輪郭形状を有する。
【0039】
中心塗布区画25aの輪郭形状は、軸線F1に対して対称に配置される。中心塗布区画25aの輪郭形状は、軸線F1を中心として配置される。中心塗布区画25aは、軸線F1が輪郭形状の内部に位置していれば、中心以外に軸線F1が位置する配置とされてもよい。
塗布区画25は、中心塗布区画25aを除いて同じ輪郭形状を有する。
【0040】
塗布区画25は、その周囲を長区画溝21および短区画溝22により囲まれる。塗布区画25の輪郭は、長区画溝21および短区画溝22により形成される。塗布区画25の輪郭は、長区画溝21の側壁21aと塗布面20aとの境界により形成される。塗布区画25の輪郭は、短区画溝22の側壁22aと塗布面20aとの境界により形成される。
【0041】
長区画溝21は、側壁21aが平面である。長区画溝21は、側壁21aがZX面に沿って延在する。長区画溝21は、側壁21aが塗布面20aと交差する。長区画溝21は、側壁21aが塗布面20aと直交する。長区画溝21は、側壁21aが軸線F1に沿って延在する。側壁21aは、長区画溝21の内部において対向する側壁21aと平行である。長区画溝21は、側壁21aが短区画溝22の側壁22aと直交する。
【0042】
短区画溝22は、側壁22aが平面である。短区画溝22は、側壁22aがYZ面に沿って延在する。短区画溝22は、側壁22aが塗布面20aと交差する。短区画溝22は、側壁22aが塗布面20aと直交する。短区画溝22は、側壁22aが軸線F1に沿って延在する。側壁22aは、短区画溝22の内部において対向する側壁22aと平行である。短区画溝22は、側壁22aが側壁22aと直交する。
【0043】
長区画溝21と塗布面20aとの境界は、塗布面20aに鉛直に切り立っている。側壁21aは、塗布面20aに鉛直に切り立っている。側壁21aは、X方向の全長において、同じZ方向高さを有する。長区画溝21は、X方向の全長において、同じZ方向深さを有する。
長区画溝21は、底部が平面である。長区画溝21は、底部がXY面に沿って延在する。長区画溝21は、底部が塗布面20aと平行である。長区画溝21は、底部が側壁21aと直交する。
【0044】
短区画溝22と塗布面20aとの境界は、塗布面20aに鉛直に切り立っている。側壁22aは、塗布面20aに鉛直に切り立っている。短区画溝22は、Y方向の全長において、同じZ方向深さを有する。側壁22aは、Y方向の全長において、同じZ方向高さを有する。
短区画溝22は、底部が平面である。短区画溝22は、底部がXY面に沿って延在する。短区画溝22は、底部が塗布面20aと平行である。短区画溝22は、底部が側壁22aと直交する。
【0045】
塗布区画25および中心塗布区画25aは、全周で同じZ方向高さを有する。塗布面20aの全域に同じZ方向の圧力が印加された場合に、塗布区画25および中心塗布区画25aは、同じように変形する。
【0046】
図6は、実施形態の塗布治具を用いた塗布方法工程を示す斜視図である。
図7は、実施形態塗布治具を用いた塗布方法工程を示す斜視図である。
図8は、実施形態の塗布時における塗布治具の溝の変形を示す側面図である。
塗布治具20によって被塗布面11cに塗布をおこなう際は、塗布面20aにシリコンコンパウンドを付着させる。
【0047】
塗布面20aにシリコンコンパウンドを付着するには、
図6に示すように、まず、シリコンコンパウンドを貯留する貯留容器26を用意する。
貯留容器26は、塗布治具20よりも若干大きい径寸法を有する。貯留容器26は、有底円筒状である。貯留容器26は、上部が開放される。貯留容器26は、上部開口が若干大きい径寸法を有する。貯留容器26は、内部にシリコンコンパウンドが貯留される。貯留容器26の底面26aは平面である。
【0048】
塗布面20aにシリコンコンパウンドを付着するには、貯留容器26の内部に塗布治具20を挿入する。このとき、底面26aに対して塗布面20aが対向する姿勢を維持する。貯留容器26に向けて塗布治具20を下降する。塗布面20aを底面26aに接触させる。
【0049】
塗布面20aが底面26aに接触したら、塗布面20aにシリコンコンパウンドをなじませる。塗布治具20を軸線F1のまわりに回す動作をおこなう。塗布治具20は、軸線F1のまわりに往復動作する。この際、塗布面20aは、シリコンコンパウンドを吸収しない。底面26aが平面であることで、塗布面20aにシリコンコンパウンドに含有される金属系の粒子が均一に付着する。
【0050】
塗布面20aに充分な量のシリコンコンパウンドを付着したら、塗布面20aを底面26aから離間する。塗布治具20を上昇させて、塗布面20aを貯留容器26の外部となる位置とする。塗布面20aには、シリコンコンパウンドに含有される金属系の粒子が均一に付着した状態を維持する。
【0051】
次に、
図7に示すように、平型半導体素子11にシリコンコンパウンドを付着した塗布治具20を当接する。シリコンコンパウンドの付着した塗布面20aを被塗布面11cに当接する。被塗布面11cと塗布面20aとを平行に維持する。シリコンコンパウンドの付着した塗布面20aを被塗布面11cに押圧する。被塗布面11cに塗布面20aをZ方向に押し付ける。被塗布面11cに塗布面20aの全域を均一に押圧する。被塗布面11cと塗布面20aとは、軸線F0と軸線F1とが一致する。
【0052】
被塗布面11cに向けて押圧すると、
図8に示すように、塗布治具20は変形する。塗布治具20は、長区画溝21のX方向幅寸法が小さくなるように変形する。長区画溝21は、対向する側壁21aが互いに近接するように変形する。対向する側壁21aは、長区画溝21の内側に向けて膨らむように変形する。塗布面20aの輪郭では、軸線F1から離間する向きに膨らむように変形する。側壁21aは、Z方向高さが小さくなるように変形する。側壁21aは、X方向の全長において、同じZ方向高さを維持する。
【0053】
塗布治具20は、短区画溝22のY方向幅寸法が小さくなるように変形する。短区画溝22は、対向する側壁22aが互いに近接するように変形する。対向する側壁22aは、短区画溝22の内側に向けて膨らむように変形する。塗布面20aの輪郭では、軸線F1から離間する向きに膨らむように変形する。側壁22aは、Z方向高さが小さくなるように変形する。側壁22aは、X方向の全長において、同じZ方向高さを維持する。
【0054】
このとき、塗布区画25および中心塗布区画25aは、長区画溝21および短区画溝22の底部に対して、Z方向高さが小さくなるように変形する。塗布区画25および中心塗布区画25aにおいて、塗布面20aは、XY面に沿って延在する。塗布区画25および中心塗布区画25aは、同じZ方向の力で被塗布面11cを押圧する。
【0055】
この状態で、塗布治具20を軸線F1のまわりに回転する。塗布治具20を回転する間、被塗布面11cに塗布面20aを押圧する状態を維持する。シリコンコンパウンドの付着した塗布面20aを被塗布面11cに対して相対的に回転する。シリコンコンパウンドの付着した塗布面20aを被塗布面11cに対して回転動作する。シリコンコンパウンドの付着した塗布面20aを被塗布面11cに対して往復回転動作する。
【0056】
塗布治具20の回転により、被塗布面11cにシリコンコンパウンドが塗布される。塗布治具20の回転により、被塗布面11cの全面にシリコンコンパウンドが塗布される。このとき、塗布治具20の回転に従って、塗布区画25および中心塗布区画25aは、軸線F1のまわりに回転する。塗布区画25および中心塗布区画25aは、その輪郭が軸線F1のまわりの回転方向と交差している。
【0057】
塗布面20aと被塗布面11cとの間には、シリコンコンパウンドが薄膜として存在する。また、塗布区画25および中心塗布区画25aは、その輪郭が余分なシリコンコンパウンドを被塗布面11cから除去する。長区画溝21と短区画溝22とは、余分なシリコンコンパウンドを被塗布面11cから除去する。側壁21aおよび側壁22aは、溢れたシリコンコンパウンドを被塗布面11cから除去する。被塗布面11cへの過剰なシリコンコンパウンドの塗布を防止する。
【0058】
塗布区画25が矩形輪郭を有することで、塗布区画25と被塗布面11cとの間の摩擦を低減できる。中心塗布区画25aが矩形輪郭を有することで、中心塗布区画25aと被塗布面11cとの間の摩擦を低減できる。中心塗布区画25aがX方向に長いため、被塗布面11cからの中心付近で塗布漏れが起きることを防止できる。中心塗布区画25aがX方向に長いため、被塗布面11cからの中心付近でも過剰なシリコンコンパウンドの塗布を防止する。中心塗布区画25aがX方向に長いため、被塗布面11cからの中心付近でも均一にシリコンコンパウンドを塗布することができる。
【0059】
千鳥状に配置された塗布区画25は、軸線F1のまわりに回転することで、被塗布面11cの全域を摺動する。つまり、被塗布面11cは、いずれかの塗布区画25の輪郭が通過するか、接触している塗布面20aが摺動する。これにより、被塗布面11cの全域に均一にシリコンコンパウンドを塗布することができる。
【0060】
塗布面20aの中心において、中心塗布区画25aがX方向に長いことで、均一にシリコンコンパウンドを塗布することができる。塗布面20aの中心において、中心塗布区画25aがX方向に長いことで、シリコンコンパウンドが含有する金属系の粒子の塗布ムラが発生することを防止できる。
【0061】
これにより、被塗布面11cの全域に、シリコンコンパウンドが含有する金属系の粒子を均一に塗布することができる。被塗布面11cにおいて、シリコンコンパウンドが含有する金属系の粒子の塗布ムラが発生することを防止できる。被塗布面11cの全域に、シリコンコンパウンドのオイルのみが塗布されることを防止できる。
【0062】
弾性体である塗布治具20の被塗布面11cに対する押圧力を制御することで、金属系の粒子を被塗布面11cに均一に塗布することができる。弾性体である塗布治具20の被塗布面11cに対する押圧力を制御することで、被塗布面11cへの金属系の粒子の塗布厚さを制御することができる。塗布治具20の被塗布面11cに対する押圧力を制御することで、塗布治具20の弾性変形の程度を制御することができる。
塗布治具20が弾性体であることで、塗布面20aと被塗布面11cとの間の押圧力を全域で均一な状態に維持することが容易にできる。
【0063】
塗布治具20が弾性体であることで、金属系の粒子が塗布治具20に吸収されることを防止できる。塗布面20aが肌理の細かい表面を有することで、塗布面20aに金属系の粒子を均一に付着することができる。塗布面20aが肌理の細かい表面を有することで、被塗布面11cに金属系の粒子を均一に塗布することができる。塗布面20aが肌理の細かい表面を有することで、金属系の粒子が塗布治具20に吸収されることを防止できる。
【0064】
シリコンコンパウンドの粘度に応じて、塗布面20aと被塗布面11cとの相対回転速度を制御することで、膜厚管理も可能となる。
【0065】
被塗布面11cへのシリコンコンパウンドの塗布が終了したら、塗布治具20を平型半導体素子11から離間する。平型半導体素子11は、一方の被塗布面11cへのシリコンコンパウンドの塗布が終了したら、平型半導体素子11の他方の被塗布面11cにシリコンコンパウンドの塗布を、同様におこなう。
【0066】
平型半導体素子11へのシリコンコンパウンドの塗布が終了したら、
図1に示すように電力変換ユニット10を組み立てる。
この際、複数の平型半導体素子11と、電極端子板12と、放熱体13と、絶縁スペーサ14と、球面座15と、加圧機構と、加圧支持板16aと、加圧支持板16bとの軸心を合わせる。
【0067】
平型半導体素子11は、被塗布面11cにシリコンコンパウンドが均一に塗布されている。平型半導体素子11は、被塗布面11cにシリコンコンパウンドが所定の膜厚で塗布されている。これにより、シリコンコンパウンドの膜厚が厚くなることがない。平型半導体素子11の接触面付近で熱抵抗が増加することがない。電力変換ユニット10における装置性能を損ねることがない。
【0068】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、塗布治具を持つことにより、シリコンコンパウンドの膜厚が厚くなることがない。また、塗布治具を持つことにより、電力変換ユニット10における装置性能を損ねることがない。
【0069】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0070】
なお、貯留容器26は、
図6に示すように、内部にスポンジ等の多孔質体27が収納されてもよい。多孔質体27は、シリコンコンパウンドに浸漬される。多孔質体27の上面27aは平面である。シリコンコンパウンドは、多孔質体27の上面27aと同じ高さに液面が位置する。シリコンコンパウンドは、多孔質体27の上面27aよりも若干低い高さに液面が位置する。シリコンコンパウンドは、多孔質体27の上面27aよりも低い高さに液面が位置する。
【0071】
塗布面20aにシリコンコンパウンドを付着するには、貯留容器26の内部に塗布治具20を挿入する。このとき、上面27aに対して塗布面20aが対向する姿勢を維持する。貯留容器26に向けて塗布治具20を下降する。塗布面20aを上面27aに接触させる。
【0072】
塗布面20aが上面27aに接触したら、塗布面20aにシリコンコンパウンドをなじませる。塗布治具20を軸線F1のまわりに回す動作をおこなう。塗布治具20は、軸線F1のまわりに往復動作する。このとき、塗布面20aが上面27aから必要以上に下降しないように維持する。この際、塗布面20aは、シリコンコンパウンドを吸収しない。
塗布面20aに充分な量のシリコンコンパウンドを付着したら、塗布面20aを上面27aから離間する。塗布面20aには、シリコンコンパウンドの粒子が均一に付着している。
平型半導体素子11の他方の被塗布面11cにシリコンコンパウンドの塗布を、同様におこなうことができる。
【0073】
また、塗布区画25は、正方形でなく、菱形とすることもできる。この場合、X軸とY軸とが直交していないことができる。この場合、塗布面20aと被塗布面11cとの相対回転を、塗布区画25が正方形である場合に比べて大きくすることもできる。
【0074】
さらに、塗布治具20をロボットハンド先端に装着して、シリコンコンパウンドの塗布を自動化することもできる。この場合、平型半導体素子11を径方向の側面から保持した状態で、ロボットハンドを駆動して、シリコンコンパウンドの塗布をおこなうことができる。
【符号の説明】
【0075】
10…電力変換ユニット
11…平型半導体素子(平型圧接素子)
11c…被塗布面
20…塗布治具
20a…塗布面
21…長区画溝(溝)
21a…側壁
22…短区画溝(溝)
22a…側壁
25…塗布区画
25a…中心塗布区画