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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099961
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】浮体構造物
(51)【国際特許分類】
   B63B 13/00 20060101AFI20240719BHJP
   B63J 2/12 20060101ALI20240719BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B63B13/00 A
B63J2/12 A
B63B35/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003618
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 健佑
(72)【発明者】
【氏名】小野林 稔
(57)【要約】
【課題】内容物を目標温度に向かってより効率よく加熱又は冷却することができる浮体構造物を提供すること。
【解決手段】水上干潟1は、海2に浮かせる干潟槽10と、干潟槽10内に収容された干潟環境20と、干潟環境20と熱交換が可能に流体を流すことができるよう構成された第1配管12及び第2配管14と、流体として温度の異なる海水2aと空気16cとを切り替えて流通させる蓋及び封鎖弁14bを有する。海水2aと空気16cとが、干潟環境20及び流体の測定温度と干潟環境20の目標温度とに基づいて切り替えられるようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物であって、
水域に浮かせる浮体槽と、前記浮体槽内に収容された内容物と、前記内容物と熱交換が可能に流体を流すことができるよう構成された少なくとも一つの流路と、前記流体として温度の異なる第1流体と第2流体とを切り替えて流通させる切替手段とを有し、
前記第1流体と前記第2流体とが、前記内容物及び前記流体の測定温度と前記内容物の目標温度とに基づいて切り替えられるようになっている浮体構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の浮体構造物であって、
前記第1流体又は前記第2流体を加熱又は冷却する熱源を更に有する浮体構造物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の浮体構造物であって、
前記切替手段が、前記流体の種類に基づいて前記第1流体又は前記第2流体の流量を調整する調整手段を有する浮体構造物。
【請求項4】
請求項2に記載の浮体構造物であって、
前記浮体槽が、前記熱源を収容する内部空間を有する浮体構造物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の浮体構造物であって、
前記切替手段が、前記流路の端部に手作業で取り付けられる蓋である浮体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体構造物に関する。詳しくは、水域に浮かせる浮体槽と、浮体槽内に収容された内容物と、内容物と熱交換が可能に流体を流すことができるよう構成された少なくとも一つの流路と、流体として温度の異なる第1流体と第2流体とを切り替えて流通させる切替手段と、を有する浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-54577号公報には、洋上に浮揚して、上面にプラント設備を備えた直方体形状の浮体構造物が開示されている。浮体構造物は内部を貫通する流路を有し、流路には海水が流通可能になっている。プラント設備は圧縮機等の動力源を冷却させる冷却水と冷却水用の配管を備えた冷却水系統を有し、冷却水系統は上記流路に設けられる熱交換器を有する。熱交換器により、冷却水が海水によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-54577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記浮体構造物においては、海水の温度が冷却水の温度よりも高い場合には熱交換により冷却水を加熱してしまい、プラント設備の動力源が適切に冷却できない懸念がある。そこで、内容物を目標温度に向かってより効率よく加熱又は冷却することができる浮体構造物を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の浮体構造物は次の手段をとる。
【0006】
一つの態様としての浮体構造物は、水域に浮かせる浮体槽と、浮体槽内に収容された内容物と、内容物と熱交換が可能に流体を流すことができるよう構成された少なくとも一つの流路と、流体として温度の異なる第1流体と第2流体とを切り替えて流通させる切替手段を有する。第1流体と第2流体とが、内容物及び流体の測定温度と内容物の目標温度とに基づいて切り替えられるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】水上干潟を模式的に示す断面図である。
図2】第1配管に蓋を付け外しする状態を示す断面拡大図である。
図3】水上干潟を模式的に示す平面図である。
図4】第1配管を模式的に示す平面図である。
図5】第2配管を模式的に示す平面図である。
図6】蓋に絞り孔が形成された状態を示す断面拡大図である。
図7】第1配管が傾斜した状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<水上干潟>
以下、種々の実施形態について図1-7を用いて説明する。1つの実施形態として、浮体構造物としての水上干潟1を例示する。水上干潟1は、干潟のない水域において、干潟に特有の水生生物を飼育するために干潟環境を再現した設備である。図1に示すように、水上干潟1は、例えば護岸等に隣接する海2に浮かべられる。水上干潟1は、護岸や海底等に対して、水平方向及び鉛直方向の移動を所定範囲内に拘束するチェーンやアンカー等の係留装置により係留されている。
【0009】
図1及び図3に示すように、水上干潟1は浮体槽を成す干潟槽10とその干潟槽10の内容物として天然の干潟を模した人工的な干潟環境20とを有する。干潟槽10は上面を開口する四角形の箱状に形成されており、干潟環境20を貯留する水槽11を有する。干潟環境20は、槽内水21、湿泥22、砂23、及び礫24を有し、それらが層状に堆積されている。槽内水21は海水であり、湿泥22は水を含む泥である。槽内水21の水量が給水装置30及び排水装置40によって増減されることにより、潮の干満が人工的に形成される。
【0010】
<水上干潟の背景>
近年、減少してきた干潟の環境の重要性が見直され、本来の干潟環境を取り戻したい実情がある。そこで、海の護岸付近に泥を埋め立てることで人工干潟を形成することが考えられる。しかし、海の護岸付近には泥が堆積しにくく、また、埋め立てた泥が波、風雨等により海へと持ち去られやすいため、人工干潟の環境を長期に亘って維持することが困難である。このため、海の護岸付近に、水上式の人工干潟いわゆる水上干潟を設置することが得策と考えられる。
【0011】
水上干潟1には、例えばシャコ等の甲殻類やアサリ等の貝類が飼育される。また、湿泥22には天然の干潟由来の微生物が生息する。これらの生物を水上干潟1で適切に飼育するためには、干潟環境20、特に湿泥22の温度を適温(例えば22~23℃)に保つことが望ましい。しかし、干潟環境20は直射日光が当たることで温度が上昇しやすく、天然の干潟と比べて広さや深さが制限されることで熱が籠りやすい構成となっている。干潟環境20の温度が上がりすぎると、例えば湿泥22の発酵が過剰に促進されて飼育環境の悪化を招くことになる。そこで、干潟環境20を適宜冷却又は加熱させることができる温度管理手段が必要となる。干潟環境20の温度を管理することで、水上干潟1の干潟環境20を長期に亘って維持することが可能となる。
【0012】
<第1配管>
図1及び図4に示すように、干潟槽10は、水槽11内の湿泥22を通るように干潟槽10を水平方向に貫通する複数の第1配管12を有する。各第1配管12は干潟槽10の喫水線2bよりも下方に位置するように設けられており、それぞれの両端が海中に向かって開口している。これにより、各第1配管12には海水2aが自然に流れ込むようになっている。各第1配管12を海水2aが流れることで、各第1配管12を介して海水2aと湿泥22の間で熱交換が行われる。例えば湿泥22の温度が高く海水2aの温度が低い場合には、湿泥22を冷却させることができる。また、各第1配管12が干潟槽10の側面において海2に向かって開口することで、干潟槽10の側面に向かって波が生じた場合に、各第1配管の内部に波を通すことで衝撃を逃がすことができる。これにより、干潟槽10の揺れを軽減させることができる。海水2aは本願でいう「第1流体」に相当する。第1配管12は本願でいう「流路」に相当する。
【0013】
図1及び図4に示すように、各第1配管12は、前後及び左右方向に延びる格子状に設けられており、互いに干渉しないように高さ方向の配置をずらして設けられる。これにより、各第1配管12は、水平方向及び高さ方向の広い範囲で湿泥22内を通過するように設けられる。このため、湿泥22と海水2aの間で効率よく熱交換を行うことができる。図1に示すように、各第1配管12は、湿泥22の高さ方向の中央部や下部を通るように配設されているが、これに限らず、別の実施形態として湿泥22の上部に配設してもよいし、湿泥22の高さ方向の全域に亘って広く配設しても良い。また、別の実施形態として、第1配管は、上流側で一つの配管から枝分かれ状に分岐し下流側で再び一つの配管に集約される構成であっても良い。
【0014】
図2に示すように、各第1配管12は、その両端の開口に付け外し可能な蓋13を有する。各蓋13は手作業で付け外しできるような構成とされる。詳しくは、各蓋13は雄ねじ13aを有しており、各第1配管12の開口に形成された雌ねじ12aに螺合できるようになっている。これにより、各蓋13は各第1配管12の開口にねじ込むことで取り付けられる。各蓋13を各第1配管12に取り付けることで、各第1配管12への海水2aの流出入を遮断できる。このように、蓋13は、第1配管12に海水2aを流通させるか否かを切り替えることができる。また、蓋13は、第1配管12を閉塞させることで第1配管12の内部に発生及び侵入したフジツボ等の貝類を酸欠により死滅させて、第1配管12の目詰まりを抑制させることができる。蓋13は本願でいう「切替手段」に相当する。
【0015】
別の実施形態として、図6に示すように、各第1配管12の流路断面積よりも小さい絞り孔113bを有する蓋113を用いても良い。この場合、各第1配管12に各蓋113を取り付けることで、各第1配管12に流れる海水2aの量が少なくなるように調整することができる。また、配管ごとに絞り孔113bの有無が異なる蓋13、113を選択的に取り付けても構わない。例えば、流路断面積が大きい第1配管12と流路断面積が小さい第1配管12を用意し、流路断面積が大きい第1配管12には絞り孔113bを有しない蓋13を取り付けて、流路断面積が小さい第1配管12には絞り孔113bを有する蓋113を取り付けても良い。蓋113は本願でいう「切替手段」に相当する。絞り孔113bは本願でいう「調整手段」に相当する。
【0016】
<内部空間>
図1に示すように、干潟槽10は、水槽11を側方及び下方から取り囲むように側面視でU字状に形成された内部空間16を有する。内部空間16の各上端は、封止弁16aにより閉じられる。内部空間16には、水槽11を下方から支持する支柱16bが形成されている。図3に示すように、内部空間16は、水槽11の周囲の一部を囲むように形成される。
【0017】
図1に示すように、水上干潟1は、内部空間16に収容される給水装置30、排水装置40、通気ファン50、コントローラ60、及び蓄電池70を有する。コントローラ60と蓄電池70は、給水装置30、排水装置40、及び通気ファン50にそれぞれ電気的に接続されている。
【0018】
<給水装置>
図1に示すように、給水装置30は、給水ポンプ31、給水管32、給水バルブ33、及びフィルタ34を有する。給水管32の一端は給水ポンプ31に接続されている。給水管32の他端は水槽11内の礫24の層に向かって開口している。給水ポンプ31は、給水バルブ33が開いた状態で海2から海水2aを汲み上げる。汲み上げられる海水2aはフィルタ34を通過することで塵等の不純物が除去される。汲み上げられた海水2aは給水管32を通って、水槽11内の礫24の層に向かって放出される。このようにして水槽11内に海水2aが供給される。海水2aを礫24に向けて放出することで、海水2aを湿泥22に向けて放出する場合と比べて、ポンピングの圧により湿泥22がかき乱されることを抑制できる。これにより、干潟環境20を好適に維持することができる。給水を行わないときには給水バルブ33を閉じることで、槽内水21が海2に漏れることを抑制できる。
【0019】
<排水装置>
図1に示すように、排水装置40は、排水ポンプ41、排水管42、及び排水バルブ43を有する。排水管42の一端は水槽11内の礫24の層に向かって開口している。排水管42の他端は排水ポンプ41に接続されている。排水ポンプ41は、排水バルブ43が開いた状態で水槽11から槽内水21を汲み取る。槽内水21は排水管42及び排水ポンプ41を通って海2に排出される。このようにして水槽11内から槽内水21が排水される。礫24の層から槽内水21を汲み取ることで、湿泥22や砂23の層から槽内水21を汲み取る場合と比べて、排水ポンプ41が湿泥22や砂23を吸い込みにくくできる。これにより、湿泥22や砂23による海2の汚染を抑制することができる。排水を行わないときは排水バルブ43を閉じることで、槽内水21が海2に漏れることを抑制できる。
【0020】
<通気ファン>
図1に示すように、通気ファン50は、給水装置30、排水装置40、コントローラ60、及び蓄電池70に向かって風を送るように配置される。これにより、通気ファン50は給水装置30、排水装置40、コントローラ60、及び蓄電池70を冷却させることができる。また、通気ファン50は、給水装置30、排水装置40、コントローラ60、及び蓄電池70から生じる熱により高温となっている空気16cを後述する第2配管14に送り込むことができる。給水装置30、排水装置40、コントローラ60、及び蓄電池70は本願でいう「熱源」に相当する。
【0021】
<第2配管>
図1に示すように、干潟槽10は、水槽11内の湿泥22を通って水槽11を水平方向に貫通する第2配管14を有する。第2配管14の両端は、内部空間16に向かって開口している。第2配管14は湿泥22の上部を通るように配設されているが、これに限らず、別の実施形態として湿泥22の高さ方向の中央部や下部を通るように配設されても良い。図5に示すように、第2配管14は、その両端の間に枝分かれ状に分岐する分岐路14aを有する。第2配管14は、分岐路14aが水平方向に広がって形成されることで、湿泥22内を水平方向の広い範囲に亘って配設されるようになっている。第2配管14は本願でいう「流路」に相当する。
【0022】
図1に示すように、第2配管14には、上記通気ファン50により送られた給水装置30、排水装置40、コントローラ60、及び蓄電池70の熱により加熱された空気16cが内部空間16を通って流入するようになっている。第2配管14に上記加熱された空気16cが流れることで、第2配管14の壁を介して内部の空気16cと外部の湿泥22の間で熱交換が行われる。例えば湿泥22の温度が低く空気16cの温度が高い場合には、湿泥22の温度を上げることができる。第2配管14を通った空気16cは内部空間16に放出される。図1の矢印に示すように、空気16cは通気ファン50により内部空間16と第2配管14を循環する。空気16cは本願でいう「第2流体」に相当する。
【0023】
図1及び図5に示すように、第2配管14は、その両部に第2配管14を開閉可能な封鎖弁14bを有する。封鎖弁14bは、例えば不図示の制御装置により電気的に切替制御される電磁弁であるが、これに限らず、別の実施形態として空気圧や手作業によって切り替えられるものでも良い。封鎖弁14bは、第2配管14を閉じることで第2配管14への空気16cの流入を遮断できる。このように、封鎖弁14bは、第2配管14に空気16cを流通させるか否かを切り替えることができる。封鎖弁14bは本願でいう「切替手段」に相当する。なお、封鎖弁14bは、例えばステッピングモータにより駆動されて開度を調整できる構成であっても良い。その場合、封鎖弁14bは、第2配管14に流れる空気16cの流量を調整することができる。
【0024】
<温度センサ>
図1に示すように、水上干潟1は複数の温度センサ80を有する。具体的には、水上干潟1は湿泥用温度センサ81と海水用温度センサ82と空気用温度センサ83を有する。湿泥用温度センサ81は湿泥22内に複数設けることができ、例えば湿泥22の高さ方向の上部、中央部、及び下部の温度をそれぞれ測定する3つの湿泥用温度センサ81を設けることができる。海水用温度センサ82は、水上干潟1近傍の海水2aの温度を測定する。空気用温度センサ83は、内部空間16内の空気16cの温度を測定する。空気用温度センサ83は、特に第2配管14に流入する直前の空気16cの温度を測定すると良い。不図示の制御装置により、各温度センサ80の温度測定値を定期的にモニタすると良い。
【0025】
<湿泥の温度管理方法>
以下、上述した各構成による湿泥22の温度管理の方法を例示する。一つのパターンとして、各第1配管12は開通された状態にあり、第2配管14は封鎖弁14bにより閉じられた状態にあるとする。そして、各温度センサ80により例えば湿泥22が平均して15℃、海水2aが10℃、内部空間16内の空気16cが25℃と測定されたとする。この場合、目標温度が例えば23℃だとすれば、湿泥22の温度が目標温度よりも低いため、湿泥22の温度を上げる必要がある。このため、まず、作業者は各第1配管12の両端に各蓋13を取り付けて各第1配管12を閉じる。次に、封鎖弁14bを開いて第2配管14に空気16cを流通させる。これにより、第2配管14の壁を介して内部の空気16cと外部の湿泥22との間で熱交換が行われる。それにより、湿泥22の温度を上昇させることができる。
【0026】
また、別のパターンとして、各第1配管12と第2配管14がいずれも閉じられた状態にあるとする。そして、各温度センサ80により例えば湿泥22が平均して30℃、海水2aが15℃、内部空間16内の空気16cが20℃と測定されたとする。この場合、目標温度が例えば23℃だとすれば、湿泥22の温度が目標温度よりも高いため、湿泥22の温度を下げる必要がある。そして、湿泥22の温度が海水2a及び空気16cの温度よりも高いため、作業者は、場合に応じて湿泥22の温度を下げる方法を選択的に決定できる。
【0027】
すなわち、例えば湿泥22の温度を急速に下げたい場合には、第2配管14を閉じたまま、各第1配管12から各蓋13を取り外して各第1配管12に海水2aを流通させる。これにより、湿泥22がより温度の低い海水2aと熱交換することで、湿泥22の温度をより素早く低下させることができる。一方、湿泥22の温度を比較的緩やかに下げたい場合には、各第1配管12を閉じたまま、封鎖弁14bを開いて第2配管14に空気16cを流通させる。これにより、湿泥22が海水2aよりも比較的高温な空気16cと熱交換することで、湿泥22の温度を比較的緩やかに低下させることができる。
【0028】
<実施形態の効果>
以上をまとめると、浮体構造物(水上干潟1)は、水域(海2)に浮かせる浮体槽(干潟槽10)と、浮体槽(干潟槽10)内に収容された内容物(干潟環境20)と、内容物(干潟環境20)と熱交換が可能に流体を流すことができるよう構成された少なくとも一つの流路(第1配管12、第2配管14)と、流体として温度の異なる第1流体(海水2a)と第2流体(空気16c)とを切り替えて流通させる切替手段(蓋13、蓋113、封鎖弁14b)とを有する。第1流体(海水2a)と第2流体(空気16c)とが、内容物(干潟環境20)及び流体の測定温度と内容物(干潟環境20)の目標温度とに基づいて切り替えられるようになっている。このように、流路に流れる流体を温度の異なる第1流体と第2流体に切り替えることで、第1流体と第2流体のうち内容物を目標温度により適切に近づけられる方を選択することができる。これにより、内容物を目標温度に向かってより効率よく加熱又は冷却することができる。
【0029】
また、浮体構造物(水上干潟1)は第1流体(海水2a)又は第2流体(空気16c)を加熱又は冷却する熱源(給水装置30、排水装置40、コントローラ60、蓄電池70)を更に有する。このため、熱源により第1流体又は第2流体を更に加熱又は冷却させた上で、内容物と熱交換させることができる。これにより、流体の温度範囲を広げることで内容物をより広い範囲で加熱又は冷却させることができる。
【0030】
また、切替手段(蓋113)が、流体の種類に基づいて第1流体(海水2a)又は第2流体(空気16c)の流量を調整する調整手段(絞り孔113b)を有する。このため、流路に第1流体又は第2流体のいずれかを流通させるかを選択したのちに、内容物を目標温度に近づけるに当たって最適な流量を流すように調整することができる。これにより、内容物を目標温度に向かってより精度よく加熱又は冷却することができる。
【0031】
また、浮体槽(干潟槽10)が、熱源(給水装置30、排水装置40、コントローラ60、蓄電池70)を収容する内部空間(16)を有する。これにより、浮体槽の内部に熱源を収容することで構成をコンパクト化できる。また、熱源を浮体槽の外周側に設ける構成と比べて水没などによる故障を起きにくくできて安全性を高めることができる。
【0032】
また、切替手段(蓋13、蓋113)が、流路(第1配管12)の端部に手作業で取り付けられる蓋(13、113)である。これにより、例えば流体が海水等の水である場合、切替手段に電気的制御を用いる構成と比べて簡便な構成で切替手段の浸水などによる故障や破損を抑制することができる。このため、切替手段のメンテナンス性を向上させることができる。
【0033】
<その他の実施形態>
別の実施形態として、浮体構造物は水上干潟でなくても良く、船体や養殖装置など浮体式の構造物であれば広く適用することができる。浮体槽は干潟槽ではなく貯留槽であっても良い。内容物は例えば油など任意のもので良い。
【0034】
別の実施形態として、流路は格子状でなくても良くその他任意の形状であって良い。前述の実施形態では、流路が、第1流体が流れる第1の流路と、第1の流路とは別に第2流体が流れる第2の流路を有する構成を例示したが、別の実施形態として、一つの流路に対して第1流体と第2流体が切り替えられて流通する構成であっても良い。その場合、例えば流路は第1流体に接続される端部と第2流体に接続される端部を枝分かれ状に有し、その分岐点において三方弁等の切替手段により第1流体と第2流体が切り替えられる構成でも良い。図7に示すように、流路は、水平方向に対して傾斜して設けられる構成であっても良い。流路が傾斜する場合、流体を重力作用により流路内から排出しやすくできる。
【0035】
別の実施形態として、第1流体や第2流体は、海水や空気でなくその他任意の流体であって良い。
【0036】
別の実施形態として、熱源は、給水装置と排水装置とコントローラと蓄電池を例示したが、上記のうちいずれかでも良いしその他任意の構成であって良い。これらの熱源はいずれも温熱源の例であるが、さらに別の実施形態として、熱源は第1流体又は第2流体を冷却する冷熱源であっても良い。熱源は浮体槽の内部に収容されるものでも良いし、浮体槽の外部に設けられるものでも良い。
【0037】
前述の実施形態では、第1の流路の切替手段として蓋を例示し第2の流路の切替手段として封鎖弁を例示したが、別の実施形態として、第1の流路の切替手段として封鎖弁を設けて第2の流路の切替手段として蓋を設けても良いし、どちらの流路にも蓋又は封鎖弁を設けても良い。封鎖弁はリフト式やスロットルバルブ式など任意の方式を用いて良い。電磁弁はDCモータやリニアソレノイドにより駆動されても良い。
【0038】
別の実施形態として、調整手段は、蓋に設けた絞り孔の他、電気的制御により弁体を駆動させることによって流路断面積を連続的に変化させるものでも良い。蓋は、前述の実施形態に示した絞り孔とは異なる大きさの絞り孔を備えた複数の種類を用意することでより精度よく流量を調整する構成でも良い。
【0039】
以上、様々な実施形態を説明したが、本開示はそれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば他にも各種の変形、置換、改良などが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 水上干潟(浮体構造物)
2 海(水域)
2a 海水(第1流体)
2b 喫水線
10 干潟槽(浮体槽)
11 水槽
12 第1配管(流路)
12a 雌ねじ
13 蓋(切替手段)
13a 雄ねじ
14 第2配管(流路)
14a 分岐路
14b 封鎖弁(切替手段)
16 内部空間
16a 封止弁
16b 支柱
16c 空気(第2流体)
20 干潟環境(内容物)
21 槽内水
22 湿泥
23 砂
24 礫
30 給水装置(熱源)
31 給水ポンプ
32 給水管
33 給水バルブ
34 フィルタ
40 排水装置(熱源)
41 排水ポンプ
42 排水管
43 排水バルブ
50 通気ファン
60 コントローラ(熱源)
70 蓄電池(熱源)
80 温度センサ
81 湿泥用温度センサ
82 海水用温度センサ
83 空気用温度センサ
113 蓋
113b 絞り孔(調整手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7